世界からワイロをなくす - トランスペアレンシー・ジャパン

世界からワイロをなくす
企業実務
英国大使館での読書会で
企業と弁護士が話し合ったこと
…
NPO法人トランスペアレンシー・ジャパン編著
Transparency International Japan
はじめに
NPO 法人トランスペアレンシー・ジャパンでは、2013 年 11 月から 2014 年 3 月まで、
企業の法務部・CSR部、弁護士に呼びかけ、贈賄防止の条約や欧米法、国際指標の書籍
や資料を毎月1冊ずつ読んで議論をする「世界からワイロをなくす読書会」を開きました。
幸いにも英国大使館の社会繁栄基金の後援を受け、皇居のお堀端にある英国大使館のニ
ューホールを会場とし、毎回 20-30 名の皆様にご参加いただきました。弁護士と企業の担
当者、元検察官までが参加し、素直で実務的な討論を繰り広げました。
ことに拡大会である国際セミナーには、英国大使館よりプロスペリティ部参事官ケン・
オフラヘルティ氏に開会の辞をいただき、60 社から 80 名の方々にお集まりいただきまし
た。トランスペアレンシー・UKから来た専門家と、英国、香港、中国の弁護士の報告を
受け、質疑は盛況でした。
これは、報告者の了承の得、参加者のプライバシーに配慮して読書会の記録をまとめた
ものです。
本書を贈賄防止の法務や国際指標の入門書としてお目通しいただければ幸いです。
2014 年 3 月
特定非営利活動法人 トランスペアレンシー・ジャパン
理事・事務局長 若林亜紀(ジャーナリスト)
1
目
次
第1回 反汚職のためのコンプライアンスの要点
3
第 2 回 Corruption Perceptions Index(腐敗認識指数)
7
第 3 回 OECD 外国公務員贈賄防止条約、UNCAC の履行状況等
15
第4回 国際セミナー(拡大会)
海外進出における贈賄法則、英国 Bribery Act の外国企業への適用の実態
1. 官民双方における汚職対策について:英国汚職法とその影響
25
2. 英国における贈賄防止規制、日本企業に及ぼす影響
30
3. 中国における適用の潮流
33
4. 東南アジアにおける適用の実際
36
5. トランスペアレンシー・UK調査部長と英国、中国、香港弁護士に
よる討論
37
第5回 世界の汚職、日本の汚職
43
付録
世界腐敗地図(CPI)
49
企業・団体会員へのお誘い
51
2
第1回
反汚職のためのコンプライアンスの要点
課題図書:
『海外進出企業の贈賄リスク対応の実務』
(ベーカー&マッケンジー法律事務所編、中央経済社発行)
講
師:ベーカー&マッケンジー法律事務所 弁護士 西垣建鋼
日
時:2013 年 11 月 29 日 15:30-17:00
1.反汚職関連法について
汚職関連法には次の二つがある。域外適用法と現地法である。
域外適用法には、米国の FCPA、英国 Bribery Act、日本の不正競争防止法がある。
現地法としては、次のようなものがある。
中国 刑法、反不正等競争法
インド 1860 年刑法、1988 年汚職防止法
インドネシア 贈収賄防止法、汚職根絶法
フィリピン 改正刑法、収賄及び汚職慣行防止法
タイ 刑法、腐敗防止に関する法律
日本企業が海外に子会社を置き、現地で従業員を雇用したとする。現地従業員が現
地の公務員と民間企業に賄賂を送ったとしよう。FCPA などの域外適用法が日本企業、
子会社、従業員に適用される。また、現地の刑法で現地の子会社、現地の従業員、現
地の公務員、現地の民間企業が裁かれる。
FCPA とは Foreign Corrupt Practices Act の略で、外国公務員に賄賂を渡すことを
禁止する米国の連邦法である。米国司法省(DOJ)と証券取引委員会(SEC)が規制す
る。違反した場合は、利得や損失の2倍を上限とする罰金と懲役が科される。
1977 年に制定され、2004 年頃から運用が強化された。2012 年に DOJ と SEC が
共同で FCPA の手引き( A Resource Guide to the U.S. Foreign Corrupt Practices
Act)を出した。
FCPA は、賄賂禁止条項と会計・内部統制条項からなる。
前者は(米国から見た)外国公務員への贈賄を禁止、後者は米国内での証券発行者
(主に上場企業)に対し、賄賂の支払いを防ぐため、適正に会計記録をつけ、内部統
3
制を確立する義務を課している。
適用範囲は、米国内での証券発行者、米国の法人、市民、住民、米国内で事業を行
う者、また、これらの共謀者、ほう助者、代理人である。
英国には贈賄防止法がある。
英国贈賄防止法とは、英国国内外での贈収賄を禁止する法である。外国の公務員だ
けでなく、民間人への贈賄も処罰対象とし、便宜的な業務のための少額の支払いも処
罰対象としているところが特徴である。
Serious Fraud Office (SFO)が規制し、違反すると、罰金に上限がなく、個人には
10 年以下の懲役が科される。
2010 年に制定され、2011 年7月から施行された。
英国で事業を行うすべての企業に適用される。
たとえば、日本企業グループが英国に法人をもっていると、中国の子会社が中国の
公務員や民間人に贈賄をしただけで裁かれる。ただし、捜査には費用がかかり、SFO
の予算が減らされたこともあり、罰せられるリスクは低いのが実情である。
日本には不正競争防止法がある。
不正競争防止法第 18 条では、
外国公務員への贈賄を禁止している。
所管が経産省で、
警察と検察が規制を行う。違反すると、法人なら 3 億円以下の罰金、個人は 5 年以下
の懲役又は 500 万円以下の罰金を科される。
日本は OECD(経済協力開発機構)の「国際商取引における外国公務員への贈賄防
止に関する条約」に 1997 年に署名した。このため、1998 年に不正競争防止法を改正
したのだ。
この法律は属地主義・属人主義が特徴である。属地主義とは、日本で行為の一部を
行った場合、つまり現地の贈賄に日本本社が指示をした場合に処罰されることだ。属
人主義とは、日本国民が海外で贈賄行為をした場合に処罰されることである。
この夏、トヨタ系の部品大手フタバ産業の元専務が逮捕され、略式起訴となり 50 万
円の罰金が科された。
中国の税関で罰金が科され、それを軽くするために地方政府の幹部に現金や高級
ブランド品を渡したところ、罰金額が大幅に減ったのが贈賄のきっかけである。
4
Q&A
―中国では贈賄は多いのになぜフタバ産業だけが捕まったのか?
「別件捜査で逮捕され、芋づる式に中国での贈賄が発覚した」
―数十万円払った程度で略式起訴とは厳しくないか。また、実際に賄賂額が数千万円
でも 50 万円で済んだことがあるようだが?
「罰金については対価関係の立証は難しいから 50 万円で済んだ。
日本の警察にとって、
中国人に対する取り調べは難しいので、できるだけ簡易な形で済まそうとする。略式
起訴なら認めればそれで終わりなので。
ただし、日本企業が日本法で罰せられると、罰則は小さくても大きく報道されるた
め評判が悪くなる。外国法で罰せられる限り国内報道は小さい」
2.コンプライアンスの導入の勧め
2012 年のモルガン・スタンレー(MS)事件
MS 中国法人で重役の米国人が中国の公務員に贈賄をした。
米当局は MS を罰せず、重役を禁固 9 か月に処した。
MS が処罰を免れたのは、反汚職規定が細かく決められ、定期的に更新され、アジア
地域において研修を 6 年間で 54 回行い、役員にも 7 回受けさせていたから。コンプラ
イアンス担当者が取引を継続的に監視し、違法な支払いを摘発していた点なども評価
され、重役個人の問題と認定された。
コンプライアンス導入は、第一段階でリスク調査と経営陣の誓約を行い、第二段階
で本社と現地の組織体制を整備し、規則と手続きを定め、研修を行う。第三段階で懲
戒や継続的な改善、買収時の対策を行う。
ビジネスにおける贈賄リスク評価の主な視点は、どこの国で事業をするか、どんな
事業を行うか、コンプライアンス体制の整備状況である。
国による腐敗度(贈賄の多さ)はトランスペアレンシー・インターナショナルが毎
年公表している CPI(腐敗認識指数)がよりどころとなる。
リスク評価を行うには、質問票をつくり、自社内または第三者を通じ担当者への面
接調査を行い、文書で報告を残しておくのがよい。なるべくコンプライアンス担当者
5
が自分でやるとよい。
3.ケーススタディ
A 氏は本社で法務・コンプライアンスを担当している。この会社がタイに工場をつく
ろうとしているが、土地規制や環境規制が厳しく、現地でコンサルタントを雇うこと
になった。このコンサルタントと法務の観点から協同することになったがどうしたら
よいか。
現地のコンサルタントを通じ何らかの賄賂を払うリスクがある。
まず、そのコンサルタントがどういう会社なのか現地の噂を調べろ。
コンプライアンス体制を整えても、なおコンサルタントが賄賂を贈ってしまう可能
性がある。完全にリスクを避けるには、合弁相手にすべて任せるのも一案である。ま
た、現地の不動産会社に土地規制をすべて処理してもらってから土地を買うのもよい。
会場からの提言とQ&A
―FCPA の適用を避けるには、アメリカで上場しなければよいのではないか?
「たとえば、事業費全額を本国から出資すればいい。アメリカの上場会社と合弁を
組むのも避けるとよい。N 社はアメリカで上場していないが、米上場企業と合弁した
JV でアフリカにおいて公務員に贈賄をしたとして FCPA で処罰された。
」
―自分が働く企業では外国の研究機関に高額を寄付しているが、賄賂になるか?
「寄付の際に、公正取引規約をつくるとよい。この際に目的の公益性と対象の団体
性の二つが重要である。公益性とは何のためかということ。団体性とは、単に研究者
のグループというのではなく、病院といった団体要件を備えた法人などに寄付するこ
と。現地に行って団体の実在やどういう団体であるかを調査し写真を撮ってくること
もよい。
」
―監査(モニタリング)の手法について教えてほしい
「最後に評価(レビュー)や監査を行うこと。
監査はコンプライアンス部が行う。手法としてはたとえば接待規定があるか、接待
の前に申請を出してあるか、領収書があるかなどを確認するとよい」
6
第2回
Corruption Perceptions Index(腐敗認識指数)
課題図書: “Corruption Perception Index 2013”
(トランスペアレンシー・インターナショナル編)
講
師:麗澤大学准教授、トランスペアレンシー・ジャパン理事 溝口哲郎
日
時:2013 年 12 月 20 日 15:30-17:00
1. TI における CPI、BPI のデータの特徴
基本的に TI における指標データは、
「人々の認識による主観的なデータ」。
腐敗・汚職は表に出にくいという性質のため、客観的なデータ作成は難しい。
個々人の腐敗・汚職に対する主観的(Subjective)なデータをもとに、これらのデータ
は作成されている。
TI による腐敗の定義は、
「利益を得るために、公的に与えられた権限を濫用する行為」
地下経済の大きさ(% of GDP)では、米国 7.0%、日本 7.9%、UK9.9%、中国 13.4%、
インド 7.3%、ブラジル 33.6%、ペルー60.1%
7
2. CPI(腐敗認識指数)の概説
1995 年 7 月 10 日にドイツの新聞 Der Spiegel に発表されて以来、17 年の間、世
界各国の公共部門における腐敗の認識を測る複合指標として利用されている。
2011 年までは、独のパッサウ大学のラムズドルフ教授が作成していたが、2012 年
より米国コロンビア大学のジェルマン教授と英国のロンドン・スクール・オブ・エコ
ノミクスのフェローであるスタニッヒ氏に代わり、CPI の作成方法が変化した。
CPI 作成の方法論の変化により、2013 年からは時系列での CPI のスコア比較が可能
になった。
CPI の目的
指標を示すことにより、社会の腐敗のレベルの相対的な理解を高め、それにより大
衆の腐敗への認識を生み出し、腐敗に対する取組の機運を作り上げることが目的であ
る。また、貿易や投資など、経済活動に携わる専門家の方たちの考え方を人々に提示
し、客観的な科学的手法を用いて、国際あるいは国家的なレベルでの腐敗の原因と結
果の相補的かつ診断的な分析を進めることも狙いとしている。
CPI2012 とこれまでの CPI との相違点
① 集計指標
各国ごとにスコアを与え、指数上で順位をつけるために、少なくとも 3 つの異なる
国・地域でのデータ源を必要としている。異なる機関から複数のソースを引用するこ
とによって、ほぼ世界全域をカバーすることができる集計指標を作成することを可能
にしている。
② 人々の認識の測定
腐敗の度合いの認識に対する評価、もしくは各個別の調査によって、腐敗を測定し
ている。いわゆる「袖の下」の行動は、証拠ベースのデータを集計することが非常に
難しいが、そういった現象を測定する効果的な指標となっている。
③
公共部門
各データソースにおける質問対象は、国の公共部門での腐敗に対する見方を示して
いる。評価指数は、官僚への賄賂のような低レベルの小規模な腐敗から、国家的な収
賄につながるような高レベルでの腐敗に至るまで、公共サービスを提供する政府及び
公的機関の行動を反映している。
したがって、民間部門における腐敗や社会におけるその他の影響力のあるアクター
の腐敗に対する見方は反映していない。
8
④ 大局的な見地
CPI は、大局的な腐敗に対する認識の概観を提供可能にし、人々は、世界各国の腐敗
に対する認識を変化させることができる。
しかし、指数自体は、特定の行動や腐敗が特に問題とされる制度(機関)に対する
理解を深めるわけではなく、さらに、腐敗を抑制するためのメカニズムの特定化をす
ることもできない。CPI はむしろ「フラグを立てる指数」であり、他の政策ツールなど
と組み合わせて利用すべきものである。
⑤ 時系列での変化
CPI2012 は、CPI スコアをリスケーリングし、生成するためにデータとしてすべて
の情報源から、未加工・無作為のスコアを使用している。その結果として、国の CPI
のスコアの変化は当該国の基礎データソースのスコアの変化を直接反映しており、他
の国や地域によって影響を受けなくなった。
⑥ データソースの選択
CPI2012 では、腐敗の認識を補足した妥当なソース源を十分に確保するため、各デ
ータソースから直近の 1 年分だけ利用することになった。これにより、未加工データ
に基づく分析が可能になり、時系列データとして使用することが可能となった。
⑦
CPI2012 でのその他の変化
CPI2012 では、正規化と標準偏差による「一般的な方法」で、得点は 0-100 点で表
現される。これにより、2012 年以前のものとのデータ比較は不可能になった。
CPI の技術的方法論
① 元データソースの選択
腐敗の認識を補足している利用可能で、かつ一定の基準に従ったデータソースの中
から抽出される。
② 信用のおける機関からの信頼のおけるデータ集計と方法論
データの妥当性を証明する必要があるため、データ収集については、方法が明確に
文書化されている専門機関からのものが望ましい。
③ データが公共部門の腐敗を示していること
質問あるいは分析が明確に公共部門の腐敗の水準の認識に関連している必要がある。
腐敗は、定義されているタイプ(例:小規模腐敗)に関連しているものでなくてはな
らず、また、適切なものとして、腐敗防止の有効性を近似的にある国の人々に認識さ
れた腐敗水準として利用されることが必要である。
9
④ 量的細分化
データソースで使用される尺度は、国同士で人々に認識された腐敗水準からは、客
観的に公平性のある距離にあるものでなくてはならない。それによって、データを CPI
の 0-100 点のスコアにリスケール化できる。
⑤
横断的データで国別比較可能性
データは、その国特有のものあってはならず、各国家でスコア化されたものについ
ては、同じ尺度として測定しなくてはならない。
⑥ 複数年のデータセット化
ある年から次の年の国のスコアに、より一般的には指数自体を比較可能とした。
⑦
データの標準化
各データソースは、その他利用可能なデータソースと比較可能にするため、CPI のス
ケールに集計するために標準化される。
⑧ 不確実性の測定
CPI のスコアは標準偏差と CPI スコアを構成するソースデータの値に対する分散を
反映する信頼区間としてともに報告されている。データは原則的に正規分布を仮定し
ている。
CPI がカバーした国家数
2013 年は、177 の国と地域の公的部門における認知された腐敗の水準に基づき、順
位づけられた。
G7 での CPI 比較(日本)
180 か国中、G7 グループの順位は、カナダ 9 位、英国 12 位、ドイツ 16 位、日本
17 位、フランス 19 位、米国 20 位、イタリア 41 位
日本は得点数を見ると、ここ数年ではデータ収集、統計法の変化などにより、CPI
のスコアは改善傾向にあるといえる。
CPI の利用法
CPI の有効的な利用法としては、腐敗に対する人々の認識の高まりや、公での討論の
促進をもたらし、全世界的なメディア報道の実現。
強力な反腐敗運動の支援ツールとして、全世界的に TI ブランドを認知。
10
腐敗と人間開発
CPI が 2~4 のとき、人間開発指数とは弱い正の相関関係、4 以上だと強い正の相関
関係が見られる。
参考文献
CPI2013 に関しては、TI の CPI のページを参考。
http://cpi.transparency.org/cpi2013/
CPI の詳細については
http://cpi.transparency.org/cpi2013/in_detail/
溝口哲郎(2011)
『国家統治の質に関する経済分析』(三菱経済研究所)
3.BPI(贈賄指数)の概説
BPI は、主要輸出国、30 か国に本社を置く企業が海外で贈賄を行う傾向値を算出し、
国別にランクづけたもの。賄賂の供給側から見た指数。
1999 年より開始(OECD の贈賄防止協定の執行前)
。2002 年、2006 年、2008 年、
2011 年に行われ、2011 年で 5 回目となる。
贈賄調査
サンプル:
•
30 カ国、ビジネス役員 100 人への調査 (3,016)
•
2008 年(26 カ国への調査)+ 貿易水準と投資流入が多い 4 カ国の合計 30
カ国を対象。
•
異なる部門でのビジネス
11
現場調査:
•
Ipsos Mori がグローバル調査をコーディネート
•
電話、面会、オンラインの混合による調査
•
2011 年 5 月 5 日から 2011 年 7 月 8 日まで。
時系列による BPI の比較
Bribe Payers Index Score
Country/Territory
Netherlands
Switzerland
Belgium
Germany
Japan
Australia
Canada
Singapore
UK
USA
France
Spain
South Korea
Brazil
Hong Kong
Italy
South Africa
Taiwan
India
Mexico
China
Russia
Average
Bribe Payers Index Rank
2011
2008
Change
2011
2008
Change
8.8
8.8
8.7
8.6
8.6
8.5
8.5
8.3
8.3
8.1
8.0
8.0
7.9
7.7
7.6
7.6
7.6
7.5
7.5
7.0
6.5
6.1
7.9
8.7
8.7
8.8
8.6
8.6
8.5
8.8
8.1
8.6
8.1
8.1
7.9
7.5
7.4
7.6
7.4
7.5
7.5
6.8
6.6
6.5
5.9
7.8
0.1
0.1
-0.1
0.0
0.0
0.0
-0.3
0.2
-0.3
0.0
-0.1
0.1
0.4
0.3
0.0
0.2
0.1
0.0
0.7
0.4
0.0
0.2
1
1
3
4
4
6
6
8
8
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11
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0
0
ロシアと中国
進捗状況:
ロシア-2011 年 5 月に新しい法案が通過、OECD 外国人贈賄防止法への参加要請
中国-8 度目の刑事法の改正、外国人官僚に対する贈賄行為の刑事罰化、2011 年 5 月
1 日に施行。
12
Q&A
―CPI の指標で、最底辺と目されている国で、実際に政府との交渉を行ったが、指標程
の腐敗を感じなかった。実務的な経験からも、アカデミズムの知見からも絶対的に公
平明確な指標というものはないことは理解できるが、内政の情報が少ないからリソー
スが限定的となり、その結果スコアが低くなるとしたら、CPI の指標が信頼性を確立さ
せてしまうと、それらの発展途上の国家にとって悪評だけが先行してしまうという、
一種の開発阻害につながってしまうのではないか。
「指標は、あくまで指標にしか過ぎないので、その指標がどこまで信頼性を担保して
いるのか、モニタリングがあってもいい」
「TI の CPI 部門に今のご提言を伝える」
13
Transparency International Japan
14
第3回 OECD外国公務員贈賄防止条約、UNCACの履行状況
課題図書: “Exporting Corruption? Country Enforcement of the OECD Anti-Bribery
Convention Progress Report 2012 ”
(トランスペアレンシー・インターナショナル編)
講
師:麗澤大学教授、トランスペアレンシー・ジャパン理事長 梅田 徹
日
時:2014 年 1 月 24 日 15:30-17:00
1.腐敗に対するグローバルな取り組み
OECD 条約の概要
1992 年 2 月 発効
1997 年 5 月「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」を採択
現在までに OECD 加盟国 30 か国+非加盟国 8 か国が批准
外国公務員への贈賄行為を刑事罰化することを締約国に義務づける(第 1 条 1 項)
贈賄側のみを規制する「サプライサイド規制」
OECD 条約のフォローアップ
第 12 条 監視及び事後措置
(前文から抜粋)
「この分野において進展を図るためには、一国における努力のみならず、多数国間の
協力、監視及び事後措置が必要であることを認識し、締約国においてとられる措置の間
の同等性を達成することがこの条約に不可欠な目的であり、このためそのような同等性
から逸脱することなしに条約を批准することが必要であることを認識して……」
各国の法的措置の比較
■贈賄罪に適用される自由刑の最大年限
ベルギー(15 年)
、ポーランド(12 年)~
スロバキア、スウェーデン(2 年)
、ノルウェー(1年)
■罰金の最高額(自然人)
ベルギー(90 万ドル)
、ノルウェー(44 万ドル)
日本(2.5 万ドル)
、韓国(1.56 万ドル)
■出訴期限(公訴時効)
15
カナダ、オーストラリア、イギリス(無制限)~
日本、フランス(3 年)
、ノルウェー、デンマーク(2 年)
フォローアップの段階
■2 段階に分けて実施
Phase 1・・・条約国の法律体制についての情報を書面により収集し、WG が検
討し、必要な是正を勧告する。
Phase 2・・・条約国の法執行体制を評価するために関係者へのヒアリング等を
実施する
Phase 3 の追加 日本については、2011 年実施
経済産業省の HP
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/keii.html
日本の対応
■1998 年 9 月 国内立法措置として、改正不正競争防止法を公布
■1999 年 2 月 同改正法施行
・外国公務員贈賄禁止規定(第 10 条の 2)挿入
・罰則規定(第 13 条)改定
■その後、数回にわたり改正
課題(今後の展開)
■属人主義の法人への適用(日本では未対応・日本人が犯したら、日本法を適用)
■子会社の行為について親会社の責任が問われる傾向(日本では未対応)
■「企業と人権」対応への応用(域外管轄権の問題)
■国連腐敗防止条約の効果(UNCAC)
TI:フォローアップとの関わり
■2003 年、パリ会合で TI による監視が合意(TI-J より 梅田が出席)
■2004 年・2005 年 “TI Report Card”
■2006 年 TI Progress Report に改称
TI チャプター/エキスパートが報告したその国の法執行状況を TI がまとめ、OECD
へ提出している。
16
2.国連腐敗防止条約(UNCAC)の現状
国連腐敗防止条約(UNCAC)
■2003 年 10 月 国連総会において条約採択
■2003 年 12 月 メキシコ・メリダで署名式
■2005 年 12 月 国連腐敗防止条約発効
■2006 年 6 月 国会、批准承認案可決(未批准)
■2013 年末現在、170 か国が批准
■未批准は、先進国ではドイツ、日本、ニュージーランドだけ
国連腐敗防止条約の内容
■腐敗との闘いにおける初めてのグローバルな条約
■公務員に係る贈収賄、公務員による財産の横領等一定の行為を犯罪化することを義
務づける
■外国公務員贈賄の刑事罰化も義務に
■犯罪収益の没収、財産の返還、そうした問題に関わる国際的な技術的協力といった
広範な目的をカバー
国連組織犯罪防止条約(UNCTOC)
■1998 年 12 月 条約草案策定開始
■2000 年 11 月 国連総会で採択
■2000 年 12 月 日本署名
■2003 年 9 月 国連組織犯罪防止条約発効
■2003 年 5 月 国会、批准承認案可決(未批准)
■2013 年末現在、179 か国が批准(独も批准)
■先進国で未批准は、日本と韓国だけ
条約を批准できない理由
■「国内法の未整備」が主な理由
■「共謀罪」導入に対する抵抗のため法案成立が遅れる(日弁連の反対)
■「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部
を改正する法律案」
■組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)の改正
1.
「組織的な犯罪の共謀」の新設(第 6 条の 2)
17
2.
「証人等買収」の罪の新設(第 7 条の 2)
■その他
収賄罪の属人主義、犯罪収益の没収規定の拡大
UNCAC と UNCTOC の関係
■いくつかの条文が共通
CTOC
第 5 条 組織的な犯罪集団への参加の犯罪化
第 6 条 犯罪収益の洗浄の犯罪化
第 7 条 資金洗浄と戦うための措置
第 8 条 腐敗行為の犯罪化
第 9 条 腐敗行為に対する措置
第 23 条 司法妨害の犯罪化
UNCAC
第 15 条 自国の公務員に係る贈収賄
第 23 条 犯罪収益の洗浄
第 25 条 司法妨害(証人の買収)
締約国会議
■条約の目的達成に向けての締約国の能力の向上、締約国間の協力の促進のほか、
「条
約の実施を促進し、及び検討するため」に締約国会議を設置する(第 63 条)。また、
会議は目的達成のための活動、手続、作業方法について合意することになっている。
■2006 年 12 月、第 1 回締約国会議(CoSP1・バリ、TI-J からは梅田が出席)がヨルダ
ンで開催締約国は、条約の履行状況を監視するメカニズムを樹立する必要性につい
ても合意。
TI のスタンス
■腐敗と闘う他の団体と連合を組み、締約国会議に対して、以下を主張している。
(i)実効的なレビューメカニズムの実施を前進させる
(ii)財産の返還に関する条項を完全に実施する
18
(iii)締約国間の技術支援を既存の開発援助の中心的なテーマとする
(iv)腐敗の通報者や腐敗防止活動家らを報復から保護するための措置を講じる
国連腐敗防止条約で何が変わるのか
■2009 年の第 3 回締約国会議はレビューメカニズムについて合意したが、実効的な
ものとはほど遠い(実効性のある OECD 条約とは差がある)。したがって、途上国の
ガバナンスがすぐに改善されることは期待できないが、長期的には、条約への参加
により、途上国においてガバナンス強化の動きが強まることは期待されている。
一方、企業サイドとしては、明らかな贈賄は明白に禁止する措置を徹底させるほか、
FP についても最小化する努力が必要である。
3.東南アジアにおけるファシリテーション・ペイメントの実態(調査報告)
問題の所在
ファシリテーションペイメント(FP)は、OECD 外国公務員贈賄防止条約の規制の対
象外となっている。例えば、
「注釈 9」では、
「少額の‘円滑化のため’の支払いは、第 1 条
1 の意味における‘商取引又はその他の不当な利益を得る又は維持する’ための支払いには
相当せず、したがって犯罪とはならない」と規定されている。米国の FCPA(海外腐敗行
為防止法)では、1988 年改正時に「抗弁」defense 条項が追加されている。
締約国の実施立法
カナダ、オーストラリア、韓国の実施立法では、外国公務員贈賄規制の例外または「抗
弁」として規定されている。また、スイス、ニュージーランド、デンマーク、オランダ
においても、例外的な扱いがなされている。不正競争防止法(不競法)にはそのような
例外規定はないが、経済産業省発行『外国公務員贈賄防止方針』では、「(不競法では)
少額の FP に関する規定を置いておらず、少額の FP であるということを理由としては処
罰を免れることはできない」と述べている。
(当初は、処罰規定がなかったが、OECD か
らのクレームにより罰則事項に含まざるを得なくなった。)
科研費調査の内容
3 段階の調査に分かれている。
■「第一段階」
(A調査/国内企業対象(約 950 社)のアンケート調査)
・実施時期:2007 年 9 月
19
・製造業 78.5%、卸売・商業 11.1%、建設・鉱業・資源開発 6.4%、陸運・海運・航
空・倉庫/物流・その他運輸サービス業 4%
・目的:(a)日本企業における外国公務員贈賄防止規定の整備状況、ならびに(b)FP に
関する体制や姿勢を探ることを通じて、FP に対する意識や姿勢に関わる全体的な傾
向を把握すること。
・回答率:149 社(15.7%)
■「第二段階」
(B 調査/東南アジア 5 か国で操業している日系企業の子会社対象
(約 500 社)のアンケート調査)
・実施時期:2008 年 3 月
・目的:(1)当地で操業する日系企業の FP 経験認識および FP 対策の有無等に関する
情報を収集・確認すること。
(2)進出先地域の FP が発生する傾向を把握すること。
・対象企業:東南アジア 5 か国(フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベ
トナム)で進出し操業している日系企業約 500 社。
■「第三段階」
(C 調査/海外出先機関の職員対象のインタビュー調査(東南アジア 5
か国の首都)
・実施時期:2008 年 11 月から 2009 年 2 月
・場所:東南アジア 5 か国の首都(マニラ、ジャカルタ、クアラルンプール、バンコ
ク、ハノイ)
・協力の得られた機関;日本商工会議所、国際協力機構(JICA)
・JICA については、職員のほか、警察庁、海上保安庁、特許庁、財務省、厚生労働省
からの出向者が含まれた(総勢、現地人職員を含み 28 名)。
本国法による規制の認識
質問:
「貴社は、日本の不正競争防止法に、外国公務員贈賄禁止規定があり、違反者は
処罰されることを会社として認識していますか?」
回答:a. 認識している 63.9% b. 認識していない 36.1%
質問:
「貴社の従業員は、我が国の法律において、外国公務員に対する贈賄行為が刑事
的制裁の対象となることを認識していますか」
回答:
「ほとんどの従業員が認識している」 16.3%
20
「一部の従業員が認識」 31.2%
「ほとんどの従業員が認識していない」 50.1%
※出典:㈱日本能率協会総合研究所「平成 23 年度 中小企業の海外展開に係る不正競
争等のリスクへの対応状況に関する調査」
(外国公務員贈賄規制法制に関する海外動
向調査)報告書(調査実施時期は 2012 年)
FP 経験の認識
質問:
「貴社では、日本人であるか当地の国民であるかを問わず、従業員が、当地にお
いて、通関、許認可申請、納税、検問通過などの際に、行政官、警察官などの
現地公務員から、正当な理由があると思われない金銭(通常は少額)の支払い
その他を求められた事実があることを把握していますか」
回答:a. そのような事実があることを、会社として把握している 69.1%
b. 自社の従業員に関して、そのような事実があったことを把握していない、も
しくは、そのような事実はまったくないと考えている 25.8%
c. わからない(
「回答できない」を含む) 5.6%
21
表 1:企業における FP 発生状況の認識(国別集計データ)
国名
Yes
No
Do not know
Total
(horizontal)
Philippines
16(66.7%)
7(29.7%)
1(4.2%)
24(100%)
Indonesia
13(81.4%)
2(12.5%)
1(6.3%)
16(100%)
Malaysia
9(42.9%)
11(52.4%)
1(4.8%)
21(100%)
Thailand
13(68.4%)
5(26.3%)
1(5.3%)
19(100%)
Vietnam
15(93.8%)
0(0%)
1(6.3%)
16(100%)
Not
1(100%)
-
-
1(100%)
67(69.1%)
25(25.8%)
5(5.6%)
97(100%)
Identified
Total
(vertical)
FP 発生の場所または機会
・
「問い 1」で「a」と答えた企業のみ回答
・現地公務員によるそのような金銭の支払いの要求がおこりやすいのはどこですか?
表 2:FP 発生の場所または機会(国別集計データ)
国名
税関
警察
役所
病院
裁判所
合計
Philippines
15
7
6
0
3
31
Indonesia
10
7
2
1
2
22
Malaysia
1
4
1
0
0
6
Thailand
4
7
3
0
0
14
Vietnam
11
6
6
0
1
24
Not
0
0
1
0
0
1
41
31
19
1
6
98
Identified
Total
支払いの相場:ダブルスタンダード
インドネシアのインフォーマントによれば、現地人は 1 万ルピアか多くてもせいぜい 5
万ルピア。一方、別のインフォーマントは、
「現地人が 5 万ルピア、外国人は 10 万ルピ
ア」が相場だと証言している。マレーシアのインフォーマントは、交通違反時の「見
22
逃し」に対して「地元の人で 20 リンギ、外国人の場合は 50 リンギが相場」であると
話している。タイのインフォーマントは、高速道路ではスピード違反の一斉取締りを
行い時には、
「1 台あたり 100 バーツ」程度の「見逃し料」払うことがあると述べた。
別のインフォーマントは、交通違反の場合には「500 バーツぐらいが相場であるよう
だ」と話したほか、運転免許センターで免許の更新をする際、書類に 1,000 バーツ程
度挟み込んでおくと早く処理してもらえるようだとも証言している。
調査から得られた知見
調査を通じて、東南アジア 5 か国に進出している日系企業の FP 対応をつかむことがで
き、また、同時に FP 発生傾向も把握することができた(ただし、警察官が路上で求める
ものは、FP に該当しないものが含まれている可能性があり、その分割り引いて考える必
要がある)
。FP については、明確なルールを有している企業は 2 割を下回る程度であっ
たが、その中で半数近い企業が FP を許容していることがわかっている。調査対象企業の
中で、不正競争防止法の下で外国公務員贈賄が規制されていることを認識していない企
業が約 36%に達していた。
教訓として何を読み取るか
FP 調査分析に関しては、次の 3 つの観点がある。1 つは、立法政策的観点(legislative
perspective)
、2 つ目は、経営的観点(managerial perspective)
、そして 3 つ目が社会
経済的観点(socio-political perspective)
。立法政策的には、FP の実態は例外規定設定
を支持する証拠となる。企業経営的には、進出企業は自国の法規制を認識すべきである
し、認識している企業は FP について何らかの対策を講じるべきである。FP とは、現地
途上国社会の腐敗の一側面であるとともに、現実的な解決すべき社会課題としても長期
的な視野を持って改善する努力が求められている。
Q&A
―企業の anti-bribery rule の設定の仕方をみると、認めているところと認めていない
ところではっきりとその対処方針が明確に別れている。経産省が認めていた時代にも、
企業自身が独自に問題視し設定したところもあれば、実際に問題が顕在化されてから設
定したところとあるのでは。
「
『企業は少額であっても FP を廃止すべき』という OECD 勧告があってから、2009
年に経産省は、ルール変更を行っている。そういった意味では、日本の方針は後手に
23
まわっていると言わざるを得ない」
―最近相談で多いのは、禁止されていても実際にあった場合にそれに対処するにはど
ういうガイドラインを設定すべきかどうかということ。法務省に相談するというアドバ
イスになってしまう。
M 企業は、英国の法規制が厳しいため、それに準じた米国の強制執行を受け、関連す
るものすべてに禁止を断行した(生命、身体、財産に係るものは除く)。
「ルールの改定作業を全面的に進めているのは、リスクの低い、巻き込まれる頻度の少
ない企業であり、リスクの高い企業は、やはり法務省に相談するしかないのではないか。
実際には、FP に関しては、規制やガイドラインを定めていない企業が多い。贈収賄は防
止するが、FP に関しては現地の実態を考慮してもどうしても後手にまわらざるを得ない
のではないか」
24
第4回
国際セミナー(拡大会)
「海外進出における贈賄法制、英国 Bribery Act の外国企業への適用の実態」
日
時:2014 年 2 月 24 日 15:30-17:00
1.官民双方における汚職対策について:英国汚職法とその影響
トランスペアレンシー・インターナショナル UK
防衛、安全保障産業調査部長 マーク・パイマン
トランスペアレンシー・インターナショナルとは
1993 年に世界銀行の融資資金の流出に対して十分な対
策がとられないことに業を煮やした世界銀行職員らに
より設立された独立非営利組織。建設的な汚職排除への
注力を目的とし、全世界 100 か国以上に拠点を設置。各国政府、個人や企業などからの資
金提供を受けて活動の運営を行っている。独自に開発した Corruption Perception Index
(腐敗認識指数)は広く世界に認知されている。
2013 腐敗認識指数ランキングでは、英国は 14 位にランクしている。汚職が蔓延してい
る分野としては、スポーツ、議会、政党、刑務所、海外資金の信託(安全な避難所)があ
る。
英国-政治と議会
2013 年度の GCB(Global Corruption Barometer)の結果は、英国の政治システムの信頼
性が深刻な状況にあることを示している。調査対象者のうち、67%が英国政党は汚職に関
与していると考えており、55%がイギリス議会は汚職の問題を抱えていると考えている。
さらに問題なのは、国民の 90%がイギリス政府はごく少数の大企業の利益のために意思
決定を行っていると考えていることである。
英国-信頼と安全な避難場所
英国は、古くから世界金融の中心地としての信頼、またその租税回避地域との近い関係
から汚職関連資産の移転の中間地点あるいは最終目的地となっている。英国が汚職により
取得した資産を発見、凍結、押収するためには大きな変革が必要。
25
国際的な法整備の加速
1990 年代後半から贈賄に対する国際的な規制強化が OECD や地域ごとに設置されたグロ
ーバル機関を中心に進められている。
・Foreign Corrupt Practices Act (US 1977)
・OECD Anti-Bribery Convention (1997)
・Inter-American Convention Against Corruption (1997)
・ADB-OECD Action Plan for Asia-Pacific (2001)
・Council of Europe Criminal Convention on Corruption (2002)
・UN Convention Against Corruption (2003)
・African Union Convention on Preventing and Combating Corruption (2004)
・G20 Anti-Corruption Action plan (2010)
・Bribery Act (UK 2010)
・Amendment No.8 to Article 164(China 2011)
・Federal Law No.97-FZ (Russia 2011)
26
CPI 2013 Score
Surveys Used
Standard Error
DNK
128
EU
1
91
7
2.2
87
95
83
98
1
New
Zealand
NZL
196
AP
1
91
7
2.3
87
95
83
98
3
Finland
FIN
172
EU
3
89
7
1.7
86
92
83
98
3
Sweden
SWE
144
EU
3
89
7
2.3
85
93
83
98
5
Norway
NOR
142
EU
5
86
7
2.3
82
90
80
98
5
Singapore
SGP
576
AP
5
86
9
2.3
82
90
75
99
7
Switzerland
CHE
146
EU
7
85
6
2.5
81
89
73
89
8
Netherlands
NLD
138
EU
8
83
7
2
80
86
73
89
9
Australia
AUS
193
AP
9
81
8
1.5
79
83
74
88
9
Canada
CAN
156
AM
9
81
7
2.4
77
85
72
89
11
Luxembourg
LUX
137
EU
11
80
6
2.9
75
85
71
89
12
Germany
DEU
134
EU
12
78
8
2.4
74
82
73
89
12
Iceland
ISL
176
EU
12
78
6
2.8
73
83
71
89
14
United
Kingdom
GBR
112
EU
14
76
8
1.3
74
78
71
81
15
Barbados
BRB
316
AM
15
75
3
7.1
63
87
64
88
15
Belgium
BEL
124
EU
15
75
7
2.3
71
79
71
89
15
Hong Kong
HKG
532
AP
15
75
8
2.4
71
79
65
83
18
Japan
JPN
158
AP
18
74
9
2.4
70
78
57
81
/ Territory
Denmark
Country
1
Country Rank
Country Rank
range
Region
Confidence
IFS Code
Scores
WB Code
90%
interval
Lowe
Uppe
MI
MA
r
r
N
X
英国汚職対策法
英国では贈収賄を防ぐ手段として 4 つの違法行為の規定を新たに設置している。
1.不適切な行動を誘発させる意図をもった便宜の提示、約束または供与
2.不適切な行動をとることを予定した便宜の要求、受領の同意または受領行為
3.外国公務員への賄賂
4.贈収賄の直接的な支払いまたはその間接的支払を防ぐことができなかった企業の責任
特徴としては、以下のことが主なものとして挙げられる。
・英国域外に効力が及ぶ
・民民、官民双方の交流を規制
・贈賄及び収賄の双方が対象
・企業側にも「適切な防止策」を講じる責任
27
・取締役及び執行役の責任
・罰則:無制限の罰金及び 10 年間の懲役
問題の程度・影響
英国では、腐敗による汚職の歴史は古く、現在に至ってもなお、ほぼすべての企業が十
分な対策をとれていないという構造的な課題を抱えている。1990 年代後半以降、汚職関連
規制は、世界的なトレンドとなってきているが、今なお腐敗の発覚は、一般市民らによる
通報に頼るところが大きい。しかしながら、近年、合弁先や監査人の態度の変化も傾向と
して強まっており、今後の対策の強化が期待される。
問題解決に向けて
英国において企業は、以下の施策をとることが期待されている。
1.積極的な汚職リスク評価プロセスの構築
2.経営層の全面サポートとリーダーシップ
3.詳細な方針、手続、トレーニングの設計
4.通報者保護施策の導入
5.取締役会レベルでの厳格なモニタリングとレビュー
しかしながら、上記の内、多くの企業が、少しかも
しくは、一つも導入していない状況にある。
例:国際的な防衛産業企業の不正防止対策
企業倫理及び反汚職プログラムの詳細な分析を
行うための 129 の国際的な防衛関係の大企業の
分析の結果、1 社のみが A 評価となり、70%の企
業が不十分との評価結果がでている。
日系企業では、6 社が評価対象となっている。
富士通(B)
、NEC(C)、三菱電機(E)、三菱重工(E)
、IHI マリン(E)、川崎重工(F)
(注1)
※TI が発行しているガイダンス例は、以下のサイトから入手可能。
www.transparency.org.uk
28
結論
汚職対策規制は全世界的に急速に広がっており、企業や市民への企業内容の適性開
示は国際的なトレンドでもあるが、一方で英国の汚職対策法は注視すべきではあって
も一国の法制度にしか過ぎないという側面がある。ほぼすべての企業の汚職対策は現
状不十分な状況にある。その状況を改革するためにも高い倫理性と反汚職プログラム
は必須であり、TI はそのガイダンスとモニタリングの双方の実施において、深くコミ
ットしている。
注1 TI-J より補足
評価対象の某企業より、
「調査の時期がCSR部門の繁忙期にあたること、英語での証拠
書類の準備が負担である」との意見が寄せられた。後日、マーク・パイマン氏と TI-J でこ
の企業を訪問し、時期変更や TI-J による日本語書類の認証など、日本企業が時期や語学の
壁などで不当に不利にならないように調整すると約束した。
29
2.英国における贈収賄防止規制:日本企業に及ぼす影響
ハーバード・スミス・フリーヒルズ法律事務所弁護士(在東京)
デビッド・ギルモア
1.英国贈収賄法はなぜ、日本企業と関係があるのか
英国贈収賄法は、その広範囲に及ぶ域外適用の効果
により、日本企業とも密接な関係をもつことが予期さ
れる。
「贈収賄法の施行と共に、
(
「ロシア」企業のような)外国企業で、
(業種を問わず)英国
で事業を行い、世界中のどの国においてでも贈賄に関与している企業について、かかる贈
賄が英国のビジネスと一切関係がなかったにしても、管轄権を有することになる。」
-重大詐欺局(SFO)前局長 リチャード・オルダーマン氏
「重大詐欺局は贈収賄法の執行を取り締まる主導機関である。当局が取り締まりに力を
入れているのは、重大かつ国際的な汚職と贈収賄である。当局では現在進行中のプロジェ
クトがいくつかある。捜査に値する事案であれば、適切なタイミングで(捜査、そして正
当であれば訴追手続を)開始する。
」
「国内外において、重大詐欺局は訴追するだけの度胸がなく、民事上の和解という比較
的簡単な解決方法を好む傾向にある、という一般的な認識があった・・・重大詐欺局のレ
ベルは低下し、比較的簡単であまり複雑でない事案を選んでいた、という認識があった。
だがそんな時代は終わった・・・犯罪行為であり、重大詐欺局が有する権限の範囲内で
あれば、当局はそれを追求する。
」
-重大詐欺局局長 デイヴィッド・グリーン QC(王室顧問弁護士)
2.第 7 条について
第 7 条「法人の罪」
英国で設立・組成された、または英国で事業を行う会社もしくは、パートナーシップ
(
「C」
)は、次の場合、罰金刑に処せられる可能性のある罪を犯したことになる。
-C と関係を有する者(
「A」
)が別の者に賄賂を提供し、その際、C のために取引また
は取引上の便宜を獲得もしくは維持することを意図していたとき。
※C のためにまたは C を代理して役務を提供する者は、関係を有する者とされる。
30
第 7 条「管轄が及ぶ範囲」
・法人の罪:英国で役務(または事業の一部)を遂行する企業/パートナーシップ
・世界のどこで行われた行為であるのかは不問
・賄賂が英国内で営まれている事業に関連するものであることは、要件ではない
第 7 条「関係者」
・ここでいう「関係者」とは役務を提供していなければならない
販売代理店、従業員、コンサルタント、下請者、プロジェクト・マネージャー、そし
て弁護士は該当する。子会社/合弁事業は、該当する可能性はあるが、役務の提供を受け
ているかどうか、確認する必要がある。製品の供給をするサプライヤーは、役務は提供
していない。
第 7 条「十分な手続の抗弁」
法人の罪に対する唯一の抗弁は、法人がその関係者がそのような行為を行うことを防
ぐための十分な手続を講じていたことを立証できれば、それが抗弁となる。そのために
は、十分な手続(社内規定、手続要綱、デューディリジェンス、支払管理、監査/モニタ
リングなど)が重要となる。
3.ベストプラクティス-6 つの原則
原則1:均衡の取れた手続を進めるためには、組織の規模を的確に把握し、取引文書(SPA、
JOA など)を作成しておくことが重要である。
原則2:経営陣のコミットを証明するために、CEO は明確な公的声明を発表し、贈収賄・
腐敗行為防止手続の作成における経営陣の関与が重要である。
原則3:5 つの「頻繁に直面するリスク」
(国、業種、トランザクション、ビジネスチャ
ンス、業務提携に関連するリスク)を的確に把握したリスク評価を実施する。
原則4:実施したリスク評価を参考に、公開情報の検索をし、外部コンサルタントを起
用することで、
「現地」でのデューディリジェンスを実行可能とする。
原則5:贈収賄、腐敗行為防止に係る明確な社内規定及びその懲戒処分内容を確立させ、
研修を通じたコミュニケーションにより意識を浸透させる。
原則6:合弁事業における監査権、社内モニタリングと内部告発に係る社内規定を再検
証する。
31
4.近時の動向
法人が刑事犯罪について告訴されるものの、検察官との合意があれば、訴追手続が
自動的に停止される、訴追猶予の合意(DPA)制度が 2014 年 2 月 24 日から開始。(た
だし、条件が遵守されなければ、訴追手続は再開される可能性がある)
贈収賄法上の各罪に対する量刑ガイドラインが発表されたが、罰金その他の罰則が、
米国の水準に近づく旨が示されている。
32
3.中国における適用の潮流
ベーカー&マッケンジー法律事務所弁護士(在上海)
ミッシェル・ゴン
1.中国における課題
製薬会社と多国籍企業だけが精査の対象となるか
反汚職、反不平等競争に対する新しい法と規制が
必要
2.中国の適用方針
・ビジョンのある新しいリーダー
・明確な目的をもつ新しい適用チーム
・新しい適用地域
・既存の法への新しい観点
・新しい法と規則
3.中国における反汚職傾向
■国の汚職犯罪確定者データベース
デューディリジェンスもしくはコンプライアンス調査に有効
建設、金融、福祉の分野を含む様々な産業をカバーしている
■習近平国家主席による 8 規制
2012 年 12 月 4 日に採択
行政主義や会議そして中身のない話し合いを減らし、誘惑を拒否するよう集中する
異なる地域、公的機関で様々な関連のある規制を実施する
■SPC の汚職適用の解釈
2013 年 1 月 1 日に発効
汚職の供給者に対する実施に集中している
対象となる地域を明確化する。
自発的な自主の場合には刑罰を緩和する
■党と政府の癒着を禁止する新しい規制
2013 年 10 月 29 日に発効
公的な旅行、レセプション、会議、公的な乗り物、建物を含む様々な目的のための
適切なマネジメントのアウトライン
■資産の公開のような慣行の調査のための中央委員会
33
2013 年 11 月 29 日に宣告
資産や配偶者や子どもたちの職業、国際的な旅行の記録を開示するための指導的な
幹部を配置
パイロットプログラムが 2013 年初期に広州で実施
4.中国における厳格な反汚職環境
・薬品の価格を下げるために中国当局は 60 の薬局を調査(Nanfang Daily)
・英国の詐欺査証官が拘留(South China Morning Post)
・売り上げを伸ばすために 500 人以上の医師への賄賂疑惑で査察が実施(China news)
・英国籍のリスク調査官ピーター・ハンプフレイが、不正な手段による個人情報を得た
ことをテレビで告白(CCTV News)
・中国の A 株にリストされている 68 の薬品株の協議会合計費用が 2012 年に 30 億ドル
を達成(East money)
・中国共産党中央規律検査委員会(CCDI)と国務院監査部(MOS)は、汚職報告書を含
む公式の website を共同で立ち上げた(CPC News)
・食品産業の会社が、乳幼児用のミルクを売るために病院に賄賂を配ったことが報告
(Xinhua news agency)
・上海に本拠地のある会社が薬品の販売でアウトソーシングを行った会社が、薬を売る
一方で医者に賄賂を払った容疑がもたれている(21st Century Herald)
・中国共産党中央組織部は、現職もしくは退職した役人が、不正を摘発し汚職の発生を
抑制するため、様々な機関で働くことを規制するための規定を発効した。(Xinhua)
5.中国における現在のトレンド
昨年だけで収賄で三万件以上が立件され、4 人の高官が逮捕される事態も発生している。
それは、当初指摘されていたような医療関係の会社や多国籍企業にとどまらず、政府
による調達案件、アルコール等の酒類、原油や自動車、電気通信や食料の分野にも関わ
ってきており、食の安全が脅かされることへの懸念も指摘されている。
中国においては、贈収賄は、公務員、会社員問わず刑罰の対象となるが、過去におい
ては受け取る側に重大な罪が課せられていたのが、米国における海外腐敗行為防止法
(FCPA)と同様に渡す側にも罪が重く課せられるようになってきている。製造業、流通
業、委託業、サービスの提供分野は、それぞれに異なるコンプライアンス規定がある。
異なる産業分野のレンジの中で直接的な実施を進めて行かないと、調達の不法行為、
賄賂の取り締まりにはつながっていかない。
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中国の反贈賄法には、刑法と反不公正競争法があるが、厳しく施行されていく中で官
民問わず罰則規定が強化されてきている。特に公職にある者の場合は、個人的な賄賂の
受領については、時に死刑を課せられることもある。一方、民間セクターの場合は、禁
固刑などの刑罰が課せられることもあるが、個人ではなく法人に係る贈賄の場合、刑罰
は課せられず罰金だけの事例もみられる。公職にある者の場合は、贈賄側であれば、罰
金のみならず最大 5 年の禁固刑も課せられる。これは、経済発展の成長の陰で、これま
でみられなかった政府による民間への贈賄事例が増えてきたトレンドへの対抗手段でも
ある。また、贈収賄で判決を受けた法人企業に対しては、公共事業への調達・入札が 2
年間制限されるという新しい法規制が設けられてもきている。
不正競争防止法に関しては、AIC(工商行政管理局)が企業や中国の子会社等の評価を実
施し、商業贈収賄の取り調べに関する権限を握っているが、収集された情報に基づいて
企業のブラックリストを作成し、行政管理の浸透を図っているが、そうした事例におい
て、社外弁護士の介入を禁じる場合もあり、企業側のコンプライアンスからいえばそう
した制限があること自体が、規制退行につながりかねない危険をはらんでおり、商業行
為における透明化を進めていく上でもあってはならないことである。
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4.東南アジアにおける適用の実際
ベーカー&マッケンジー法律事務所弁護士(在香港)
ゲーリー・セーブ
海外においてビジネスを展開するとき、当然そこには
国に応じて様々な国内法がある。例えばアジア太平洋地
域で活動をする際に、英国の Bribery Act や米国の連邦
海外腐敗行為防止法(FCPA)だけではなく、その国・
地域独自の国内法を調べる必要がある。国内での贈賄や FP に起因する汚職に関しては、
FCPA では対処できないので、そこは Bribery Act が先行規範として適用され得るが、国内
産業の国際競争力をも阻害しかねない Bribery Act には、課題もある。
企業のコンプライアンスを積極的に進めていく中で、重要になって行くのはリーダーシ
ップだが、非常に厳しい汚職防止のプログラムをある企業が持っていたとしても、サプラ
イチェーンの末端の部分で、供給者側がどういう行為を行っているかまでは把握できず、
したがって、どんなに法整備が進み、予算がついたプロジェクトであったとしても、地域
レベル、あるいは現地で汚職に纏わる問題の発生する可能性が現前としてある。
そういった課題による被害を最小限に抑えるためにはどうすべきか、それには、導入さ
れたプログラムの現地語化とそれに合わせた研修が重要である。
東南アジアでは、特に医療機器と製薬の分野は、複数の国からも魅力ある標的として、
インフラや政府調達等と同様に、リスクベースのアプローチからリスクに基づいて優先分
野を決めていくことが重要となる。的確なリスク分析を行った上で対象国におけるプロジ
ェクト案件を作成していくことが求められている。
現地のプログラムで国別、ビジネス別にリスクを評価して現地に合ったプログラムを作
るということが、汚職に巻き込まれるリスクに対応するための最も有効な策である。日本
の企業と話をする際には、リスクへの対策が不十分であることを感じることが多いが、改
善に向けた努力の方向性が定まりつつあり、周辺環境からも企業に対してのリスクへの対
策を求める構造が生まれている。
■コーポレート・コンプライアンスにおける本質的な要素とは
ベーカー&マッケンジー法律事務所は、世界中の政府の規制者が期待しているコンプラ
イアンスプログラムから鍵となるテーマを抽出し、あらゆる法人のコンプライアンスのプ
ログラムにおいて挿入されている 5 つの本質的な要素(リーダーシップ、リスク評価、標
準化と管理、訓練とコミュニケーション、モニタリングと監査そして反応)へと導く。
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5.トランスぺアレンシー・UK調査部長と英国、中国、香港の弁護士による討論
ここから、日本語が堪能なハーバート・スミス・フリーヒルズ法律事務所弁護士のエマ・
ディーズ氏が参加した。
質問(1)
BA (Bribery Act) の適用事例について、インターネ
ットで調べると4事例しか見つけられなかったが、他
に適用事例があるか、またないのであれば、施行から 3
年経過している状況で、なぜこんなにも少ないのか、特段の事情があれば知りたい。
回答(1)
適用事例の少なさには失望しているというのが正直なところである。適用事例が少ない
理由はいくつか考えられる。一つには、新しい DPA(起訴猶予)の規定である。調査はど
うしても長期間になり、実際の起訴にいたるまでに時間がかかる。SFO は去年 9 月時点で
8つのケースに対して継続調査が行われていると発表されている。石油・ガスプロジェク
ト関連で事例がでるとの話もある。顧客の多くが非常に心配していたが、実際に検察側の
動きがないのは、恥ずかしい事だと思っている。昨年 SFO のトップが変わり、ドタバタし
ていたこと、また調査には多額のコストがかることも要因として考えられる。
このような課題は、今後劇的に改善していくだろうと考えている。米国の FCPA も 1970
年代から始まって、徐々に浸透して 90 年代以降、急速に適用事例が増えてきた。BA につ
いても同様、これから徐々にというところ。
質問(2)
BA の解釈について確認したい。ある個人が外国公務員に第三者を介して贈賄行為を行っ
た場合有罪になるが、この場合の第三者にロビイストは含まれるのか。日本にはいわゆる
ロビイストはいないが、英米にはロビイストがおり、なんらかの便宜を勝ち取る事を期待
して企業に採用されていると認識している。
回答(2)
Section 7 は法人の罪を規定しており、企業はサービスプロバイダーで、誰かが会社の代
理人として贈賄行為を行った場合、企業は責任を負うとされている。
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例えば、ロビイストが会社に採用されて、代理人として行為を行っていれば、Section 7
の Associated person に該当し、関係していたビジネスをイギリスで行っていれば会社は
罪に問われる。ロビイスト自身は、直接的な行為者として罪に問われることになるが、イ
ギリスで行為を行っていなければ免罪になる可能性がある。但し、その場合であっても会
社自体は罪に問われる。
質問(3)
当社は東京に本社があるが、英国に 100%子会社を有している。もし当社の英国完全子
会社がイギリスで贈賄行為を行った場合、東京本社は完全親会社であるというだけで、BA
上の罪に問われる可能性はあるか。
回答(3)
当該子会社が東京本社向けにサービス・役務を提供しているかどうかによって変わる。
BA 上確かに所有権(持分保有)に関する記述はあるが、持分の保有の事実をもって適用
とはならず、役務の提供も重要な考慮要素である。但し、100%持分を保有しているという
事実は、確かに非常に重要な事実である。
最終的には、親会社がその一部のビジネスをイギリスで行っているかどうかが判断され
る。イギリスではもちろん子会社が親会社と分離した独立企業体、別個の法人格を有する
事は当然理解しており、子会社が親会社に配当を払っているからといって、独立企業では
ないということにはならない。もう少し広範囲に考える必要があり、親会社が独自に、単
独で事業をイギリスで行っているかどうかがポイントである。そうでない限り、本社(親
会社)が Section 7 のもとでは責任は無いという事になると考える。つまり、当該子会社
までで責任は留まることになる。
但し、ガイダンスとなるような判例が出ない限り不確実性は残ってしまう。このような
潜在的なリスクに対応する抗弁や救済措置としては、やはりグループ本社及びイギリス子
会社において十分に備えることしかない。実は一部のグループでは非常に複雑になる。例
えば、親会社が子会社に対してサービスを提供している場合(会計や税務サービスなど)
には、親会社のやっていることもストレステストする必要がある。つまり、親会社の活動
が BA 上問題となり得るか、親会社において十分な BA 対策をとっており、それによって十
分に守られるかどうかをチェックしなければならない。企業は状況を分析し、経営トップ
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が意思決定をして、何があっても対抗できる守りをかためることが重要である。
質問(4)
プレゼンテーションにおいて、防衛産業に関わる汚職
対策のレベルは高くないと聞いたが、日本では、外交や
安全保障に関する機密情報を守るための「特定秘密保護
法」が今年1月に成立した。当該法案によれは、特に国
防に関わる防衛産業の腐敗行為を公開できないという
ことになってしまうと考えられるが、このような状況下で今後、私たちはどのように行動
すべきであるか。
回答(4) マーク・パイマン氏
防衛産業など国防に関わる産業においては、世界的にこのような機密情報の保護に関す
る法律が施行されている。しかし、過去においては多くの地域で、防衛産業分野における
汚職は見逃される傾向にあった一方、昨今においては、国防関連についても、腐敗を公に
していくという方向にむかっているのではないかと考えている。例えば、インドの防衛産
業の事例であるが、インドも機密情報に関する保護法令が施行されているが、その後であ
っても、腐敗に関する内部通報が減っているという事も無い。
質問(5)
小さなリスクマネジメントコンサルティング会社を経営しているが、途上国に進出する
企業に対して十分汚職に対して注意を払うようアドバイスしているが、そういった企業の
経営者からは「どうしたら賄賂を払わずに商売ができるか教えてほしい」と言われる。輸
入通関でファシリティ・ペイメントを払わなければそもそも商売もできないし、それでは
本社からクビにされてしまう。また、商売のみだけでなく、例えば、警察から嫌がらせを
受けないためになど、単に身を守るためにも賄賂を払わざるを得ない。実務的にはどのよ
うにして賄賂を払わずビジネスを行っていけば良いのか、法律の専門家はどのように考え
ているのか聞きたい。
また、賄賂をとっている国、許している国への経済制裁を行うべきではないか、賄賂を
とられる方は犠牲者であると考える。弁護士の方々がどう考えているかを聞いてみたい。
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回答(5)
ミシェル・ゴン氏
「中国の話をすると、中国では賄賂を求められるケースが多く、頭を悩ませる事が多い
かもしれないが、実は過去 25 年間でみると状況はかなり改善していると考える。まず、中
国は賄賂と贈答を明確に区別した。現在でも顧客や役人への感謝を込めた食事会や小さな
贈答などは認められているが、企業へのキックバックなどは明確に汚職とされ、認められ
てない。また、昨今にあっては、大企業であれば、賄賂の要求については明確に断る事が
できると考えている。私が以前勤めていた会社でも汚職に No を明言したが、十分にビジネ
スできた。多国籍企業として、コンプライアンス上賄賂を払う事はできないことをはっき
りいっても、十分にビジネスができる状況になってきている」
マーク・パイマン氏
「私は TI に入る前、汚職ゼロ(Zero tolerance)をとなえる石油大手シェルの財務責任
者(CFO)として西アフリカと中国を担当しており、多くの実務的な経験がある。3つヒント
を出すと、1つは汚職に対して No ということを明確にすることである。シェルは汚職に応
じない事で国際的に認知されている。例えば、私はある国の政府高官と話をしたときに直
接「私は君に賄賂を求めようとはしない。なぜならシェルは賄賂に一切応じないし、頼ん
でも断られる事も明らかだからだ」と言われた。2つ目は、大企業であれば、多くの国の
中央政府は味方してくれるため、助けを求めると良い。彼らは小さな企業は求めないが、
経済成長のため大規模な多国籍企業には積極的にビジネスを行ってほしいため、もし助け
をもとめて賄賂の要求をとめるように依頼すれば助けてくれるケースが多い。3つ目は、
経営陣のリーダーシップとして、汚職を断る事により潜在的なビジネスチャンスを逃す事
を受け入れる事である」
TI-J 事務局より 若林氏
「TI の活動として発展途上国において、子ども達への道徳教育や、企業への研修など、
腐敗防止教育も実施しており、賄賂に関して困った際には、是非 TI や TI-J にコンタクトし
てほしい」
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質問(6)
いつ頃 BA に関する詳細なガイドラインを得られる
か。
回答(6)
BA に関しては、現状基本的なガイダンスは概ね発行
済であると認識している。検察側によるガイダンス、
罰金の計算方法など含めた量刑ガイドラインなど。ただ、やはり訴訟事例の歴史がまだ浅
く、どのようなケースが訴追にいたるのかが明確ではない。DPA に関しては、より詳細な
ガイダンスが必要であると考えるが、待つ必要がある。
質問(7)
アルゼンチンで日本企業が中南米に進出するサポートをしているが、日本企業の場合、
法務部は賄賂禁止に納得してくれることも多いが、役員ら経営陣は営業出身者が多く、賄
賂はできないといっても、抜け道があるだろうとか、自身が間に入ってくれなどと頼まれ
る。こういった役員陣の意識をかえる政策など、アイディアはないか。
回答(7)
すべての役員がそういう考えであれば、会社を変えた方がよい(会場笑い)
。通常はそう
ではない、特に営業やビジネス開発部門の役員は賄賂容認派が多い傾向にあるが、CEO や
CFO はそうでない事も多い。役員の多くは過去、国際経験のある人が多く、彼らは過去の
経験を元に判断している可能性もある。しかし、先ほども話にあったが、中国は 10 年前と
は状況は一変した。10 年前であれば賄賂さえ払えば商談をとれたが今はそうではない。も
し CEO がそういった経験から賄賂を容認あるいは奨励しているのであれば、「あなたは間
違っている」と強く戦ってほしい。かなりハイリスクな戦略であるが、実際の事例で、そ
ういった役員の意識を変革すべく、営業部長が、社内でキャンペーンをはって意識改革を
おこなって変えていったというケースも知っている。役員全員が汚職に賛成しているとい
う会社はほぼ無いと思う。一部の役員が味方になってくれると思う。
多国籍企業の役員は FCPA や BA、関連する国内法などの影響をよくわかっており、汚職
に対して敏感な傾向があるが、中国では合弁会社が多く、中国現地側の取締役の多くはそ
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ういった国際法に疎いことが多い。私は Briefing と称して、そういった顧客企業の取締役
らをよんで、なぜ注意しなければならないのか、直近の動向や気をつけなければならない
事などを啓蒙している。当初はなぜそんなことをしなければならないのかと懐疑的であっ
た役員も、彼らも個人的に責任を負われるケースがある、外国に旅行をすると質問を受け
る可能性もあることなどを話すことで彼らも関心をよせ、味方についてくれるようになる。
最近、中国の大手国営企業を監督している官庁から、汚職関連コンプライアンスに関する
トレーニングをしてほしいとの依頼があったり、状況は改善してきているし、こういった
啓蒙活動を続けて行く事が大切であると認識している。
参加者紹介
NGO
Mark Pyman, Director, TI Defense and Security Programme, Transparency
International – UK
弁護士
David Gilmore, Partner, Herbert Smith Freehills (Tokyo)
Emma Deas, Associate, Herbert Smith Freehills (Tokyo)
Michelle Gon, Parner, Juris Doctor, Baker & McKenzie LLP (Shanghai)
Gary Seib, Partner, Baker & McKenzie LLP (Hong Kong)
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第5回
世界の汚職、日本の汚職
課題図書:
『世界の汚職 日本の汚職』(石井陽一著、平凡社新書)
講
師:神奈川大学名誉教授、トランスペアレンシー・ジャパン前理事長
日
時:2014 年 3 月 20 日 15:30-17:00
石井陽一
本書を書いた 2003 年から丁度 10 年経ったところで振り返ると、大きな流れとして、国
際贈収賄、国際カルテルなどの国際不正、それに対する処罰がグローバル化してきたたこ
とを感じ取れる。超大国による処罰には国家主権の管轄権を超えるものもあるが、EITI(採
取産業透明性イニシアティブ)のような国際協力による腐敗の封じ込めの試みもある。
私は『世界の汚職日本の汚職』を上梓するために、在ベルリンの国際 NGO である
Transparency International(TI)を訪問、取材し、そのご縁で帰国後、有志のかたがた
と TI の在日拠点(chapter)として NPO 法人トランスペアレンシー・ジャパン(TI-J)を
2004 年 9 月に立ち上げた。立ち上げたといっても情報公開市民センターの四谷の事務所の
一角を転借するもので、同センターの事務局長であった黒田達郎さん(元銀行員)が理事
長、私が事務局長で始めたが、事務職員はゼロ、全員ボランティア‐での出発だった。
TI 本部は、日本の chapter 設立に熱心だったが、それは GDP 第 1 位の米国の chapter
が資金源豊かで、本部に上納したり、米国での fund raising に協力したりしているので、
GDP 第 2 位の日本の chapter にもそれに次ぐ貢献を期待していたようだが、大きな誤算で
あった。
私どもも経団連や経済同友会に挨拶に回り、打診したが、壁にぶつかり、日本には
donation culture がないことを改めて実感した。アジア、太平洋地域の chapter で最も資
金的に恵まれているのがバングラデシュ、一番貧しいのがニュージーランドと日本だ。私
はTIからは世代交代も要求されたこともあり、2012 年の 2 月で理事長を退任した。退任
してから内部にいると見えないものが見えて来たような気もする。
本日の話題は、すでに 4 人の講師のお話しがあり、私も出席して勉強させていただいた
が、参加の方々のご関心は米 FCPA(海外腐敗行為防止法。その制定動機はロッキード事件。
拙著 P.16)と英 Bribery Act にどう対処するかにあると思うので、若干視点を変えて、私
の 10 年前の旧著の update 調整という形で進めさせていただく。
先ずは、何かとお騒がせの多国籍企業シーメンスの行状の示唆するものから入りたい。
1.シーメンスの罪と罰
シーメンスは、160 年の歴史をもつドイツ最大の総合電気大手で、北朝鮮を除く世界 190
ヵ国に拠点を擁している。日本の大手重工業、電機メーカーとは入札で競争する機会が多
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い相手である。ドイツというと日本ではお堅いイメージがあるが、シーメンスは世界中に
賄賂を振りまく方でも大型である。拙著 P.119-121 で例示したように、フィレーサ事件
では下馬評では日本勢がスペインの新幹線を受注できたはずのところ、シーメンス・アル
ストムのコンソーシアムの贈賄工作にしてやられた。そのほかにもブラジルのベージャ誌
(2013 年 8 月 14 日号)の記事がその贈賄来歴を地図に載せたのでそれを引用する。
①ノルウェー 2004 年国防省の高官連がゴルフ、高級料亭の接待を受け、シーメンスは
34 万ドルの罰金を科された。
②イタリア 1999-2002 年シーメンスの元幹部 2 名は、
イタリアの電力公社 ENEL に 600
万ユーロを贈賄、タービン納入契約を獲得したが、5000 万ドル以上の罰金を科され、2
名は在宅監禁された。
③ベネズエラ 地下鉄 2 路線建設工事を落札するため、ベネズエラ・シーメンスは 2000
万ドルを当局に贈賄したが、同社は、後述のように 50 万ドルの罰金を科された。
④ロシア 病院の機器や交通のモニターシステム納入契約確保のため政府当局の公務員た
ちに約 5600 万ドルの賄賂をばらまいた。保健局次長が約 2 万ドルの罰金と 8 年間の労
役の罰を科された。
⑤ナイジェリア 02-05 年ナイジェリア電気通信機器納入契約を確保するため、シーメン
スは元閣僚2名に 1000 万ドルを贈賄、同社は 2 億 5 千万ドルの罰金を科された。
⑥ギリシャ アテネの地下鉄工事を確保するため、ギリシャの 2 大政党に 1200 万ドルの
賄賂をばらまき、取調べを受け、ギリシャ・シーメンスの社長はドイツに逃亡したが、
逮捕された。政治家にはお咎めはなし。
⑦イスラエル イスラエル電力公社の元総裁と役職員に 2000 万ドルをばらまいた廉でシ
ーメンスは取り調べを受けた。元総裁のダン・コーヘンはペルーに逃亡したが、強制送
還され、逮捕され、5 年の懲役に服している。
⑧イラク 1999-07年、国連の石油・食糧交換プログラムに基づく複数の契約を確保す
るため、当時のサダム・フセインを含む当局に 160 万ドルのキックバックを払った。
⑨中国 02-09 年、医療機器、電気通信機器を納入する契約を獲得するために、シーメン
スは 6000 万ドルの賄賂を振りまいた。11 年電気通信公社の重役 Shi Wanzhong が死刑
に処せられた。このシステムに関わった公務員 Tian Qu は懲役 15 年の刑に服している。
中国は腐敗国家のレッテルを貼られているが、汚職で死刑になる国はほかにないであ
ろう。腐敗を処罰する法律は、各国が、罪刑法定主義で決めているが、国別に同罪に対
する量刑の幅は広い。死刑から無罪まである。本年 3 月 5 日~13 日開催の全国人民代表
大会において、13 日閉幕式後の周永康首相の記者会見では「腐敗分子や腐敗行為への対
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処方針は『容認』ゼロだ」という決意を表明した。従来共産党の幹部は摘発を免れて来
たと言われる。
『容認ゼロ』は今後そんなことはないという意思表示かもしれないが、眉
唾ものである。
⑩アルゼンチン 1996 年シ-メンスは、新形式の ID カードの印刷と国境の営所のコンピ
ュータ化に関わる入札を落札するために、関係当局に 4000 万ドルの賄賂を払った。後述
のようにアルゼンチン・シーメンスは米司法省より 50 万ドルの罰金を科された。
⑪ブラジル ブラジルでは談合を価格設定カルテル(price fixing cartel)という扱いにして
いるので、独禁法上の問題になる。日本でも独禁法に米国流のリーニエンシー(最初に自
主申告した企業が課徴金を減免される制度)が導入されたが、ブラジルも同様のようで、
2012 年シーメンスは 2000 年-2007 年にかけて、サンパウロの地下鉄、郊外電車
(CPTM)、首都ブラジリアの地下鉄でラジリアの地下鉄で 5 件の入札で談合があったこと
を自主申告して減免された。
その一つにはフランスの大手アルストムとスペインの車両メーカーCAF のコンソーシ
アムが 1 億 5500 万レアル(66 億円)で落札し、カナダのボンバルディアと日本の三井
物産が部品とメンテナンスの下請けを引き受けるという談合もある。落札価格が不当に
吊り上げられると、それが地下鉄の運賃値上げという形で、乗客に負担を掛けることは
起こりうる。事実、2013 年 6 月 2 日にサンパウロで地下鉄の運賃値上げをきっかけに起
きたデモはブラジル全土に飛び火し、100 万人規模の政府に対する抗議デモに膨れ上が
ったことは日本でも大きく報道された。
⑫米独当局によるシーメンスの制裁(a) 米司法省での判決は、2001 年-2007 年に亘る不
正な支払 805.5 百万ドルに対し、シーメンス本社に 4 億 4850 万ドルの罰金;ID プロジ
ェクトに関し、アルゼンチン・シーメンスに 50 万ドルの罰金;メトロプロジェクトに関
し、ベネズエラ・シーメンスに 50 万ドルの罰金、携帯電話プロジェクトに関し、バング
ラデシュ・シーメンスに 50 万ドルの罰金。(b)連邦証券取引委員会(SEC)での民事訴
訟で、シ-メンスは SEC に 3.5 億ドルの不当利得を返還することに合意(司法取引) (c)
ミユンヘン検察局は、取締役会の監督責任懈怠に対し、3 億 9500 万ユーロの支払いを命
令。
出典:2009 年独法 日本貿易保険(NEXI)資料。
ミユンヘン検察局の支払い命令は極めてわかり易いが、米司法省、SEC の取り立てに
は権限上若干の疑問なしとはしない。
2.日本の日揮に対する米当局の制裁
日揮(株)は、ナイジェリア LNG プロジェクトの建設のため米仏蘭の各社との国際コンソ
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ーシアムで建設工事請負契約を獲得する目的で関係公務員に賄賂を払い、米司法省との司
法取引で 2011 年 2 億 1880 万ドル(約 182 億円)を支払った。
司法府が下した判断でなく、
行政府の一部である司法省が、これだけ払えば起訴を免除してやるとい地獄の沙汰もカネ
次第的な取引である。三権分立の建前を崩すものではないかという素朴な疑問もわく。コ
ンソーシアムを組む米仏蘭の各社は証券発行体(Issuer)であり、それがゆえに米 FCPA の適
用対象になるというのだが、日揮は Issuer でもなかったのにコンソーシアムを組んだがゆ
えに巻き添えにされたという。
そもそも会社の国籍の基準を決めるのは、国際私法の分野で、設立準拠法説、設立地法
説、定款作成地説などがあると思うが、証券発行体(issuer)説というのが学説的に成り立
つのか、ということも疑問だ。司法取引の方が安くて済むといわれるが、182 億円という
罰金は資本金 1 億円の会社を 182 社設立できる巨額である。これが罰金だろうか。
そこで、日本の不正競争防止法で裁かれれば、3 億円以下で済むと思ったのだが、FCPA
の法人の罰金の上限は 200 万ドル以下である。1ドル=100 円とすると2億円以下である
が、選択的罰金法(18 USC.3571(c)(2)、
(d)に基づき、利得・損失の 2 倍までの罰金
が科せられると、このような巨額になるようだ。
3.管轄権の範囲
ピーター・アイゲン(TI の生みの親にして育ての親))がベージャ誌(2014、1.8 日号)での
インタビューの中で「反腐敗の戦いはグローバル化するべきだという考えのようだが、ど
の よ う に 動 か す つ も り か 」 と い う 質 問 に 、「 各 国 は そ れ ぞ れ 腐 敗 を 抑 止 す る 管 轄 権
( jurisdiction)を持っているが、連邦型国家はグローバルな射程を持ち合わせていない。
国境をこえる進展も必要だ。反腐敗の行動で各国が共助の輪を作り、公正のための普遍
化した環境作りを助成することが必要だ」と答えているが、管轄権にこだわってみたい。
国家の管轄権とは、国家が人・物に対して統治機能を及ぼす権限で、国家主権の範囲と
一致する。国家主権の絶対性は、30 年戦争の終結になった 1648 年のウエストファリア条
約で確立されて、それが国連憲章の 2 条まで貫通している。この管轄権を、立法管轄権
( legislative jurisdiction) 、 執 行 管 轄 権 ( jurisdiction to enforce )、 裁 判 管 轄 権
(competence of courts)に三分化される。立法管轄権と執行管轄権については、その国家
の領域が場所的な範囲になる。ただ、米 FCPA と後述の Bribery Act は立法管轄権の場所的
範囲を超えたと言える。
裁判管轄権については、刑事裁判については属地的なものであろうが、民事の国際売買、
国際貸借の契約では、各国の国際私法規定(日本でいえば法例)を勘案のうえ、契約当事
者の自治で当事者いずれかの国の管轄裁判所を決める場合が多い。多くの場合、契約当事
46
者の力関係で決まる場合が多いようだ。
ピーター・アイゲンは、まだ TI の諮問会議(Advisory Council)の議長はしているが、
各国は腐敗を抑止する管轄権をもっているという常識的な立場をとっているようだ。ただ、
TI は米 FCPA も英 Bribery Act も全面支持していると思う。それだけに意外感もあった。
4.在外適用ではより過激な英国 Bribery Act(2010)
国内の贈収賄と外国人(官、民)への贈収賄を含む法律で、外国人への贈収賄は 6 条、7 条
に集中しているが、英国外での贈賄行為に対する処罰対象の幅が広く、罰金額に上限がな
いことや企業の贈賄防止懈怠罪なども新設され、少額の facilitation payment 寛恕の規定
もなく、多国籍企業に戦慄が走った。しかし、実施上は極めて慎重で、検索で調べたとこ
ろでは、まだ域外適用例はない。
5.独禁法違反
カルテルが何故いけないかといえば、企業間協定で価格を高く設定し、消費者に被害を
及ぼすからである。課徴金は日本でも高額で、最近の例では海外に自動車を輸送する貨物
船の運賃を巡って国際的カルテルを結んだとして公正取引委員会は、本年 3 月 19 日。海運
4社に総額227億円の課徴金納付命令を出した。日本郵船131億円、川崎汽船67億
円の日産専用船4億円のほかに、ノルウェーのワレニウス社35億円が含まれている。商
船三井は、前述のリーニエンシー制度を利用して課徴金をまぬかれた。
6.米 FCPA と独禁法のダブル違反に問われたブリヂストン
米テキサス州ヒューストンの連邦地裁は、08 年 12 月 10 日、ブリヂストンの元部長日置
操被告に禁固 2 年罰金 8 万ドルの判決を下し、同氏は服役した、同氏は 04 年―07 年欧州
企業の幹部社員と談合、マリンホースの価格を高値に固定させ、かつラテンアメリカ諸国
の公務員にマリンホース受注のため贈賄し、独禁法と FCPA のダブル違反に問われた。
この件は、とも角、司法府の判決での処罰という点では正規の司法手続を踏んでいるの
で、日揮の司法取引よりはましである。服役者を出したが、罰金は非常識に高額ではない。
7.国際公正取引裁判所の設置(案)
国際贈収賄、国際カルテルの懲罰が、公正な国際取引、消費者の利益を守る効果がある
ことは否定できない。ただ、主権国家が他の主権国家の案件を処罰することは主権対等の
原則に反するし、その結果、特定国に巨額の財政収入が入ることにもどこか引っかかるも
のがある。国際協定に基づき世界の某所に国際贈収賄、国際カルテル等の裁判を所掌する
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国際公正取引裁判所を設立してはどうか。その運動に TI が一肌脱いではどうか。罰金収入
は国際管理されて、国際社会的に有意義な使途、例えば、難民救済やユニセフのような国
連の事業、国境なき医師団、トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)などの国
際 NGO に助成金として交付されてはどうか。
8.米 2008 年金融危機の裏側
一体に先進国や国際機関には corruption を途上国、新興国の特産物であるかのように思
い込んでいるところがある。たしかに公務員の給与が安いためもあり、チップ感覚で目に
付くところで小役人が賄賂をとることが慣習化している。
しかし、巨悪が眠っているのはむしろ先進国ではないか。ちなみに米 2008 年金融危機の
裏側にも米国における「回転ドア」とかロビイスト現象があった。「回転ドア」は一方的な
日本の「天下り」と異なり、
「天上がり」と「天下り」を組み合わせた両面通行である。
米財務省とゴールドマン・サックスの間には回転ドアがあり、元ゴールドマン・サック
ス会長のボブ・ルービンがクリントン政権の財務長官、同じく同社会長のハンク・ポール
ソンがブッシュ政権の財務長官となり、トップばかりでなく、課長クラスも回転ドアをく
ぐり、銀行業務と証券業務を分離していたグラス・スティーガル法を廃止(銀行が投機で
きるようになった)
、キャピタル・ゲイン課税を 15%まで引き下げ、そのほか金融緩和の
省令を公布した。法改正にはロビイストを使った。格付け会社は高額謝礼を払った金融機
関に高得点を与えた。挙句の果ての金融危機だった。
オバマ大統領は就任当時、ロビイスト政治、回転ドアの抑制を change に据えたが、間
もなくトーン・ダウンした。こういう不透明な制度を残している国が国際贈収賄で他国に
厳罰を科するにふさわしいであろうか。
まずは自らの襟を正すべきだ(拙著 P.126-127)
。
9.期待される EITI(採取産業透明性イニシアティブ)
2002 年ブレア英首相(当時)が提唱した構想で、鉱物や石油、ガスなどの開発を巡り、外
国開発企業が資源産出国政府に支払うロヤルティー、税金、配当などの支払い額と現地政
府の受取額を公開し、資源の開発、輸出入にかかわる収支の流れを透明化しようというス
キームである。それに差が出れば、腐敗も推定されるわけである。事務局は英国際開発局
内に設置されたが、間もなくオスロに移転した。ピーター・アイゲンは理事会議長を務め
ていたが、最近引退した。現在候補国が 16 ヵ国、EITI 基準を満たした遵守国が 23 ヵ国、
日本は支持国に入っている。すべての資源国、開発国、関連大企業が参加しないと効果を
挙げ得ない。ピータ―・アイゲンは、前出のインタビューの中でブラジルのペトロブラス
とバーレ(企業)は入っているが、ブラジル政府未参加は理解できないと述べている。
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Transparency International Japan
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企業・団体会員へのお誘い
NPO 法人トランスペアレンシー・ジャパン(TI-J)では、企業・団体会員を募集します。
TI-J は社会の腐敗を減らすために腐敗に関する情報を国内外から収集・分析し、その状
況や原因、防止策などを研修会・講演会などを通じて広報・啓発しています。
TI-J の活動をどうかご支援ください。
☆会員企業の特典
会員企業は公正で効率的な社会を目指す企業パートナーと位置づけ、
・トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)から届く、腐敗防止や情報公開、
ビジネス倫理についての国際的な最新情報を翻訳してお伝えします。
・TI-J ビジネスメールを2カ月に 1 回発行、CPI(世界腐敗認識指数)
、OECD の贈賄防
止条約の履行状況や、分野別・国別レポートをご紹介します。
・会員企業との交流の場を設け、いただいたご意見を、TI の活動に生かします。また、
G20 会合などにおいて条約策定や履行監視・運用に生かすよう働きかけます。
☆さらに、2口以上の会員様には、
TI 出版物(本)を年に5点郵送いたします。
腐敗防止やビジネス倫理、国際的な情報公開の体制づくりや研修のためのご質問に答
えます。
(年1回まで。2回目以降は時間に応じた実費をご請求します)
☆会費 一口 年2万円とする(入会金はなし。正会員/賛助会員とも)
正会員は総会での議決権があり、賛助会員にはありません。
☆入会 当法人のウェブページから TI-J の定款をお読みの上、事務局あてに FAX またはメ
ールにて申込書をお送りください。
☆会費納入方法
郵便振替 口座 00110-3-0389671 NPO 法人トランスペアレンシー・ジャパン
銀行振込 みずほ銀行四谷支店普通預金 1017846
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☆お問い合わせ
特定非営利法人トランスペアレンシー・ジャパン
〒160-0008 東京都港白金台郵便局留め
電話、FAX 03-3445-9364
お申込み:Eメール ⇒[email protected]
FAX ⇒03-3445-9364
★トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)は、反腐敗のための世界的な市民団
体で 1993 年に設立、ベルリンに本部があり、世界 110 カ国に支部があります。OECD の
会合で公式招待 NGO として発言権のある、世界的に大きな影響力のある NGO です。毎年、
認識指数指数(CPI)の公表を行っています。
http://www.transparency.org/
★トランスペアレンシー・ジャパン(TI-J)は、TI の日本側カウンターパートとして、2004
年に学者や市民オンブズマンのメンバーにより設立されました。東京都から特定非営利活
動法人の認証を得ています。TI と対等に連携しながら(独立採算)
、情報公開・腐敗防止に
係わる啓蒙・研究を行っています。
http://www.ti-j.org/
☆トランスペアレンシー・インターナショナルの出版物
2口以上の企業会員にお送りする基本の5点
Corruption perceptions index / Global corruption report / Global corruption
Barometer / Exporting Corruption - Progress Report /
Transparency in Corporate Reporting
そのほかの出版物の例(2口以上の会員企業さまに希望により送付可)
Business principles for countering bribery
Transparency in Corporate Reporting Assessing Emerging market multinationals
International principles for whistleblower legislation
IT belongs to you: public information in the Middle East and North Africa
Financial transparency glossary
UN convention against corruption progress report 2013
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左から大内穂トランスペアレンシー・ジャパン副理事長、石井陽一前理事長、
ナオミ・カウワン英国大使館社会繁栄基金マネージャー、
若林亜紀トランスペアレンシー・ジャパン理事・事務局長、梅田徹理事長
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奥付
企画・編集:NPO法人トランスペアレンシー・ジャパン事務局
03-3445-9364
タイトル:世界からワイロをなくす企業実務
サブタイトル:英国大使館後援の読書会で、企業と弁護士が話し合ったこと
編 著:トランスぺアレンシー・ジャパン
発 行:2014 年 3 月 28 日
価 格:無料
印 刷・製本:キンコーズ・ジャパン法人営業部/四谷店
無断転載・複製禁止
2013 年度「世界からワイロをなくす読書会」開催概要
(好評のうちに全会終了しました。今後も開催予定です)
http://www.ti-j.org