NEXCO東日本新潟支社管内における冬期長時間通行止

NEXCO東日本新潟支社管内に
における冬期長時間通行止め削減に向けた取り組み
大田
寛*1
星野
雅幸*2
1.はじめに
NEXCO東日本新潟支社は、北陸自動車道、関越自動車
通行止量・平均降
降雪量の推移
【冬期 12月
月~3月】
通行止量(㎞/h)
平均降雪量(㎝)
30,000
900
道、上信越自動車道、磐越自動車道、日本海東北
北自動車道の
25,000
750
5路線、管理延長429.9kmを4つの管理事
事務所で管理
20,000
600
している。このうち、大半の区間が重雪氷地域に
に属し、冬期
15,000
450
における高速道路の通行を確保するため、気象状
状況や路面状
10,000
300
況等に応じた雪氷体制を構築し、除雪・排雪・凍
凍結防止剤散
5,000
150
0
布・チェーン規制等の作業を実施している。
水蒸気を含ん
新潟支社管内の特徴として日本海から大量の水
だ湿った空気に、シベリアからの寒気が上空に流
流れ込み、脊
梁山脈にぶつかり大量の降雪をもたらすメカニズ
ズムから降雪
H21年度
H22年度
H23年
年度
H24年度
H25年度
その他
1,358
2,933
2,2 76
1,699
2,370
事故
1,165
2,341
2,5 75
3,371
1,434
155
282
42
14
164
93
17,188
2,864
088
11,0
12,720
1,824
548
551
55
75
582
411
登坂不能
降雪視界不良
平均降雪量
図1 新潟支社管内通行止量及
及び平均降雪量の推移
量が多く、世界でも有数の豪雪地帯を路線が通過
過している。
新潟支社管内は大雪による長時間の通行止めを
を数年毎に繰
り返されており、社会的にも大きな影響を与えて
ている。
これらの課題に対し、通行止めの開始から解除
除に至るなか
で、通行止め開始・解除の判断、通行止め区間の
の設定、通行
H26年度 検討
H25
5年度 検討
改善対策の検討(対策工、マニュアル整備)
実施対策の効果検証
通行
行止め実態の整理および問題点抽出
(対
対策の方向性を整理)
検証
証対象:H17~H24年通行止めデータ
• 通行止め解除に向けた
対応(作業)時間
• ケーススタディでの検
証・評価
効果の検証
(振り返り)
止め解除に向けた作業計画を迅速かつ合理的に行
行うことで通
行止めを最小化にできると考えられる。
改善・対策
の提案
そこで、大雪時の長時間化、広域化した通行止
止めの事例を
検証し、通行止めの実態整理、問題点の抽出、改
改善・対策案
により通行止めの開始から解除までの一連の流れ
れをルール化
路面悪化(積雪・凍結)
視程障害
事故・登坂不能滞留車
• ハード、ソフト面
• 事前対策と事後対策
• マニュアル化
過
過去の
事
事例検証
原因
因・課題
抽出
通行止め原因(引金)
長時間になった要因を検
証(長期化要因)
図2 冬期長時間通行止め
め削減検討手法
し、大雪による通行止めが発生する前若しくは余
余儀なく通行
止めが実施された際も早めに察知し、早期の対応
応を取ること
で長時間の通行止めを削減する事が可能と考えた
た。
2.新潟支社管内における降雪状況冬期通行止め
めの状況
近年の通行止め量を図1に示す。H22年度及
及びH25年
度を除き、通行止め量の約50%~80%以上が
が降雪・視程
障害に起因していることがわかる。
の検討
3.新潟支社管内における冬期長時間通行止めの
3.1 検討手法
新潟支社管内では数年かの割合で長時間の通行
行止が繰り返
されている。図2に示す通り、過去の長時間通行
行止の発生状
況を洗い出し、通行止実態及び問題点を抽出し、原因課題の
りを行うこと
追求、改善・対策の提案、効果の確認・振り返り
とした。
3.2 長時間通行止めの検証
た事例から
新潟支社管内において冬期通行止めが発生した
7時間以上通行止めした事例を抽出した。
その中で延べ通行止め時間が36時間であった
た平成24年
12月11日~12日関越道六日町IC~小千谷
谷IC間の長
※1 東日本高速道路㈱新潟支社 道路
路事業部
図3 冬期長時間通行
行止め検証区間
※2 ㈱ネクスコ・エンジニ
ニアリング新潟
0
更に一旦通行止め解除を行った場
場合でも、通常走行が可能
時間通行止めの事象をケーススタディとして行っ
った。
3.3 長時間通行止め発生の原因、課題
な路面を確保できない状態、または
は路面悪化が予見される場
3.3.1
合は再び通行止めを余儀なくされ、解除まで長時間を要して
気象状況
当時の時間降雪量、積雪深、気温を図4に示す
す。(小出I
いる。
C:NEXCO東日本観測局調べ)時間降雪量が
が10cmを
超える降雪強度が強い時間帯が続いた後、通行止
止めとなって
いる。通行止め時の累計降雪量は約180cm、気温は日中
の時間帯でも最高気温0.9℃と終日低温状態が続
続いた。
写真1 H24.12.11 関越道越
越後川口付近圧雪状況
強い降雪,吹き溜まり
(5~8㎝/h)
初冬期
期 気象予測急変
(予
予測を上回る)
路面の悪化
(圧雪,部分圧雪)
図4 H 24.12.8~12.11 関越道小出IC気
気象状況
3.3.2 長時間通行止めの発生の原因、課題
通行止め
検証を行った結果、通行止めの事象、原因、課
課題について
表1に示すとおりであった。①スタック車両の発
発生に対する
スタック車の発生
対応、②除雪作業の遅延、③圧雪路面の抑制、④
④通行止め開
大型
型車の影響大
登坂不能車の発生
始・解除の判断、⑤円滑な応援除雪が大きな課題
題である。
事故の多発
交通の2次障害発生
B
通行止め実施前に発生メカニズムに示したA:交
交通障害の発
本線滞留車の発生
生B:交通の2次障害発生C:除雪障害の発生
生D路面悪化
IC出口渋滞の発生
(除雪能力を超える、または交通障害を誘発し易
易い)が負の
除雪障害の発生
C
スパイラルに陥ることで顕在化する。通行止めを
を適切なタイ
除雪作業の遅延・停滞
ミングで実施できない場合、この長時間化要因A
A~Dはその
巡回停滞⇒ 情報不足
影響度を一層大きくし、通行止めの長時間化に拍
拍車をかける
D
A及びBが排除されるまで継続
検証事例による長時間通行止めの原因から、通
通行止め長時
間化のメカニズムを図5にまとめた。通行止めの
の長時間化は、
交通障害の発生
A
雪氷基
基地の機能不全
除雪体制・能力を超える路面へ
へ悪化
(交通障害を誘発し易い路面
面)
ものと推察される。
また、通行止めを実施しない場合において、こ
この長時間化
要因のA~Dのいずれか一つでも解決しない場合
合、その状態
化
通行止めの長時間化
(解除後の再通行止め
め)
図5 長時間通行止め発
発生メカニズム
は容易に負のスパイラルに再び陥るものと考えら
られる。
表1 長時間通行止めの検
検証結果 (関越道長時間通行止めH24.12.11~12.12 事例)
事
路線
主な事象
区間名
発生
年月日
通行
行止
時 間
事 象
原 因
課 題
路面確保の遅れ
ス
スタック車発生防止
巡回による現場確認の限界
ス
スタック車早期発見
排除用レッカーのお客様手配の限界 スタック車の早期排除
ス
通行止め区間への車両進入
除 作業の遅延
除雪
路面悪化によるス 事故及び登坂不能車の滞留
タック車発生
除雪車(能力)の限界
圧 路面の抑制
圧雪
未熟な除雪車(圧雪)運転技術
凹凸圧雪路面 六日町IC
路面悪化によるス
H24.12.11
時間
関越道 とスタック車両 ~小千谷
厚い圧雪路面での通行止め解除
36時
タック(大型車)車
通 止め開始・解除判断
通行
~12.12
排除の遅延
IC
発生
長期化要因の把握遅れ(レッカー待ち)
応援体制の事前準備不足
円 な応援除雪
円滑
除雪運転者が不慣れな応援区間
IC出口渋滞による 除雪車の端末IC本線停滞に巻きこ
除雪障害
まれ
除 作業の遅延
除雪
端末IC渋滞によるUターン不可
基地IC渋滞による基地帰還不可
スタック車発生
4.冬期長時間通行止め削減に対する実効性ある
る取り組み
②登坂不能車両への対応
長時間通行止めの削減に向けた課題に対し、新
新潟支社管内
登坂不能車両が発生する、上信越
越道妙高高原~中郷間にお
において実効性ある取り組みを実施している。下
下記に具体的
いて救出用のトラクターショベルを
を配備している。道路監視
な事例及び対策案を示す。
用カメラにより登坂不能車両を早期
期に発見し、上信越道では
4.1 現地状況の情報収集の強化
暫定2車線のため、早期通行止め、登坂不能車両及び滞留車
①道路監視用カメラ
両の排除、除雪による路面確保を行
行い、通行止めの早期解除
新潟支社管内では、登坂不能車両発生地点及び
び冬期事故が
に努めている。
多発する気象の変化点に設置している。平成26
6年度は上越
(管)管内の上信越道に増設する。
これにより事故、登坂不能車両等による高速道
道路の閉塞状
況を早期に発見する事が可能となる。
②自動積雪深計
に待機してい
積雪深、時間降雪量の計測は、雪氷作業基地に
る連絡員による人力計測に頼っていたため、除雪
雪作業時はリ
アルタイムに降雪記録が取れていなかった。新潟
潟支社管内で
は平成23年度から設置を開始し、24箇所設置
置している。
平成26年度は5箇所増設する。
写真3 救出用トラクターショベルと救出状況
③除雪車の応援運用
通常モーターグレーダ車は通行止
止め時の道路閉鎖、登坂不
能車両排除、圧雪処理等の緊急時遊
遊撃的に使用している。
長時間通行止め時、事務所間の応
応援派遣除雪車として臨機
これにより人力計測に頼ることなく自動計測が
が可能となる。
に対応できるよう新潟支社管内では11台配備している。
4.3 異常降雪量の設定
新潟支社管内では過去の長時間通
通行止め時の降雪量等の気
象統計分析により、表2に示す異常
常降雪量を設定している。
異常降雪とは通常の雪氷体制では
は交通の安全確保が困難と
なり、長時間通行止め(長時間とは
は過去の通行止め発生状況
から7時間以上をいう)に及ぶ気象
象状況をいう。異常降雪の
予測があった場合は、新潟支社管内
内は「除雪強化体制」とな
り、各管理事務所の人員・機械ともにフル体制となる。
支社異常降雪量
表2 NEXCO東日本新潟支
管理事務所
写真2 道路監視用カメラと自動積雪深
深計
4.2 効率的な除雪車等の運用
湯沢管理事務所
①GPS車両位置情報システム
長岡管理事務所
GPS車両位置情報システムは管理用無線とG
GPSを活用
した雪氷作業の総合管理システムである。新潟支
支社管内の除
関越自動車道
上越管理事務所
長岡管理事務所
北陸自動車道
新潟管理事務所
雪車両に搭載され、支社及び管理事務所にシステ
テムが整備さ
新潟管理事務所
磐越自動車道
れていることから、除雪車両の位置や作業状況の
のリアルタイ
新潟管理事務所
日本海東北自動車道
ムな把握が可能である。
上越管理事務所
上信越自動車道
り雪氷作業情
平成26年度は道路情報板との自動連動により
報を表示させ、管制業務の効率化及びお客様への
の迅速・的確
な情報提供を図る。
区間
IC区
道路名
自
水上IC
~
至
谷川岳
土樽
~
湯沢IC
湯沢IC
~
小千谷IC
小千谷IC
~
長岡JCT
名立谷浜IC
朝日IC
~
名立谷浜IC
~
柿崎IC
柿崎IC
~
三条燕IC
三条燕IC
~
新潟中央JCT
津川IC
~
安田IC
安田IC
~
新潟中央IC
新潟中央JCT
~
新潟空港IC
新潟空港IC
~
荒川胎内IC
信濃町IC
~
中郷IC
中郷IC
~
上越JCT
異常降雪量
予測値
24時間
3時間
(㎝)
(㎝)
60
130
100
100
40
60
60
30
60
40
30
20
100
60
20
30
30
30
20
20
20
15
20
15
15
10
30
20
5.道路管理者(関係機関)との連
連携について
5.1 情報連絡本部の設置
新潟支社管内では、過去に
国内でも有数の豪雪地帯である新
おいて豪雪による交通障害がたびた
たび発生している。従前か
開始 23:20
終了 --:--
ら道路管理者間で情報を共有する情
情報連絡本部を雪氷期前に
立ち上げ、国道事務所、県振興局、市等の関係機関が一同に
会し、道路・気象の一元的情報収集
集、除雪作業・事故処理等
除 雪車 両
ロータリー車
除 雪車 両
散 布車 両
左から 標識車、除雪車、圧雪処理
車、
トラクターショベル、ウニモグ(除雪)
左から 湿塩散布車、散水
車、ウニモグ(湿塩)
協議調整、ドライバー住民への情報
報提供等役割の確認を行っ
巡 回車 両
図6 GPS車両位置情報システム
交 通 管理 隊
ている。
尚、北陸地方整備局道路部とNE
EXCO東日本新潟支社で
は、降雪による通行止めの恐れがある場合並びに
に通行止め実
トルネック箇所について、図8のとおり取りまとめを行って
施時の解除見込みについて、携帯メールへ情報発
発信し情報共
いる。主要幹線道路の情報一元化により、各道路の強み弱み
有を図っている。更に、北陸地方整備局国道事務
務所とNEX
を把握することで相互の連携が可能
能となる。
CO東日本管理事務所では高速道路と一般国道の
の道路・気象、
例えば一般国道が通行困難な状況
況に陥りそうな時、地域の
通行止め等の情報について、速やかな情報提供の
のため所長間
主要な交通は高速道路に託されることとなる。その場合、平
の確認書を締結している。
行する高速道路のIC間を除雪強化
化し、地域交通が途絶しな
5.2 早期通行止め判断に基づく、一般国道との連
連携強化
いような検討が可能である。近年は一般国道の4車線化やバ
①高速道路の早期通行止め判断検討
イパスも整備も進んでいることから、暫定2車線の高速道路
めには、道路
過去の事例検証から長時間通行止め防止のため
状況や気象状況など様々な条件を考慮した上で、適切なタイ
ミングで早期に通行止め判断をすることが有効で
である。
通を託すための除雪強化の
の場合、平行する一般国道側へ交通
検討も可能である。
また高速道路の早期通行止め判断
断及び通行止め区間の設定
一定の条件下で適切な通行止めのタイミングを
を想定すると
まず事故、登坂不能車両等交通障害発生時である
る。通行止め
を行う上でも有効であり、相互の連
連携強化を図り、更なる地
域交通確保のための基礎資料と活用することができる。
実施のタイミングは様々な条件に影響されるため
め、その確実
性は低いと考えられる。しかし、高速道路の早期
期通行止め判
断をすることで、全体の通行止めの短縮を実現し
し、結果的に
冬期交通の確保につながる。
そこで図7に示すフロー案に基づき、異常降雪
雪予報時又は
自動積雪深計等の情報収集機器の活用による時間
間降雪量を確
認し、道路監視用カメラや雪氷巡回等から速やか
かに現地の状
況を的確に捉えることで、高速道路の早期通行止
止め判断が可
能であると考える。
強い降雪,吹き溜まり
(5~8㎝/h)
初冬期 気象予測急変
(予測を上回る)
路面の悪化
(圧雪,部分圧雪)
①
通行止め
NO
YES
A
交通障害発生
(事故,登坂不能等)
②
通行止め
NO
YES
B
交通2次障害発生
(滞留車)
③
通行止め
NO
YES
C
除雪障害
害発生
(停滞,情報
報不足)
④
通行止め
YES
S
図8 高速道路と一般国道の冬
冬期交通状況一覧表
6.まとめ
NO
⑤
D
通行止め早期解除
除雪能力超える
路面へ悪化
通行止めの長時間化
図7 高速道路早期通行止め判断フロ
ロー案
②通行止め区間の設定
これまでは高速道路の通行止めを
を極力避け、異常気象時に
無理してでも交通を確保することが
が使命としてきた。しかし、
数年かの割合で長時間の通行止が繰
繰り返され、その結果、立
ち往生車両を余儀なく発生させている。
現状の除雪体制で異常気象(降雪
雪)に対応し、長時間通行
通行止めの端末ICでの渋滞が想定され、その
の渋滞が除雪
止めを削減することは限界があるも
ものの、最新のICT機器
作業の支障になると予測される場合は、降雪の少
少ないICま
の活用し、関係機関との連携強化を
を図り、過去の経験を踏ま
で通行止め区間の延伸を検討する。
えた取り組みを行うことで、長時間
間通行止めの削減につなが
③高速道路と一般国道との連携強化
ると考える。
報共有は既に
冬期地域交通を確保するため、関連機関の情報
実施している。更に高速道路と一般国道の冬期道
道路特性、ボ
確保のため、長時間通行止
今後も冬期における地域の交通確
め削減に向けて取り組んでいきたい。