MR の卸訪問

Yakugyo Jiho 薬業時報 平成 26 年 2 月 10 日発行(毎月 10・25 日発行)
ISSN 1883-5678
2014
2/10
NO.117
MRの 卸 訪 問
13
特集
MR の卸訪問
2014
2.10
MRの卸訪問は強化されているのか。医療施設への MRとMS の同行は増えているのか。
主要製薬企業を対象としたアンケート調査結果や、メーカーや卸への取材を通じて MR
と MS の関係性を探る。
NO.117
3
Director's voice
持田 直幸 持田製薬社長
6
TREND
・MR 認定試験合格率は 70.9% 過去最低となった原因は何か
「SGLT―2」の薬価にも影響か
・「DPP―4」全製品を大幅引き下げ ・BS 共同開発中止と AG 第2弾 日医工―サノフィ今後の関係は
・門前薬局に「ダブルパンチ」 次期改定で調剤基本料にメス
・【話題のひとに一問一答】医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長 近藤 達也氏
11
ベテランアナリストが読む海外情報 三島茂
グラクソ・スミスクライン(GSK)の悪性黒色腫治療薬 MEK 阻害剤と BRAF 阻害剤の併用を FDA が承認[1/13]ほか
22
くすりの現場から〈112〉
駅前さくらぎ薬局(神奈川県箱根町)
かかりつけ薬局の役割を PR 「くすりの楽修館」を通じて
24
医師のつぶやきで学ぶ MR 活動 竹中洋介
事例 10「『自分(自社)本位』のディテールをしていませんか?」
25
営業活動とコンプライアンス〈21〉
白神誠
「再生医療と医薬品ネット販売」
26
エビデンス Up To Date 耳より学会トピック
第 48 回日本成人病(生活習慣病)学会学術集会
CAD / CKD 合併例にも有効 高尿酸血症治療薬「フェブリク」
28
パートナーの常識〈93〉 織田龍喜
「連載終了に向けて―良い MR―」
28
知ってナットク医薬品名の由来 笠原英城
「メプチン/ケタス」
29
News Summary & Topics
31
職場の流儀〈120〉
「飲み会でのヒヤリハット」
32
プロフェッショナル目指して〈60〉
近澤洋平
本誌内容の無断転写・転載は著作権法上で禁じられています。
本誌に掲載された著作物の複製・翻訳・上映・譲渡・公衆送
信(データベースへの取込および送信可能化権を含む)に関
する許諾権は、小社が保有しています。
「相互成長」
本誌の無断複写は著作権法上での例外を除き禁じられてい
ます。複写される場合は、そのつど事前に、
(社)出版者
著作権管理機構(電話 03-3513-6969、FAX 03-35136979、e-mail:info@ jcopy.or.jp)の許諾を得てください。
5
Yakugyo Jiho 2014.2.10
特集
MRの 卸 訪 問
接待の新ルールや透明性ガイドラインの施行、病院での訪問規制強化、後発医薬品の使用促進など
の影響でこの1∼2年、製薬企業が卸との連携強化に力を注いでいるという声をしばしば聞くように
なったが、実際は果たしてどうなのか。
本誌が製薬協加盟社や大手後発医薬品メーカーなどを対象に行ったアンケート調査結果、ファイ
ザー、MSD など医薬品メーカー4社の取材などを通じて卸訪問の実態や、MR と MS の関係性を探っ
た。大手卸 MS の本音も紹介する。
13
Yakugyo Jiho 2014.2.10
(樽味典明)
ますます伸長する切り替え市場の
使用促進がなされているが、今後
対 策 ﹂︵ 大 塚 製 薬 ︶、
﹁ 国 策 でG E
の強化のため、人脈構築、後発品
薬︶
、
﹁施設情報・他社情報の収集
性が増加してきたため﹂
︵日本新
手、後発医薬品への対策等の必要
うまく活用することで情報提供活
薬︶
、
﹁卸MSの顧客との関係性を
動が行えるから﹂
︵大日本住友製
ることで、スムーズな情報提供活
師からの信頼が高いMSと同行す
本イーライリリー︶
、
﹁医師・薬剤
の早期な関係づくりのため﹂
︵日
︻特集︼MRの卸訪問
訪問軒数④MRの卸訪問での最近
製薬は﹁卸の自販力が昔よりも弱
一 方、﹁ い い え ﹂ と 回 答 し た の
は2社︵6%︶で、そのうち科研
望める﹂
︵沢井製薬︶からだろう。
単独プロモーション以上に効果が
され、複数チャネルのディテーリ
た。ヤクルトが実施していないの
以外のすべてが同行を実施してい
レーションを活用した面談機会の
第一三共は﹁社品採用・納入に
向 け た ク ロ ー ジ ン グ、 M S の リ
14
Yakugyo Jiho 2014.2.10
主要製薬企業アンケート
誌が主要な製薬企業を対象
薬品︶などと回答しており、MR
動をスムーズに行うため﹂
︵鳥居
の協力関係強化が今後の販売拡大
が医療施設との早期の関係づくり
大半を卸がカバーしており、卸と
のキーポイントの一つになる﹂︵ニ
やスムーズな情報提供活動のため
の主眼業務⑤MRがMSに期待す
プロ︶のように後発品対策を理由
にMSに同行してもらっている様
そ の 理 由 に つ い て は、﹁ 院 外 調
剤薬局の増加や訪問規制先の増加
くなっている。得意先情報は卸で
﹁卸の拡販力を期
持 田 製 薬 は、
待。 効 果 的 と 考 え る か ら ﹂
、大鵬
子がうかがえる。それは﹁MRの
に 伴 い、 特 約 店 と の パ ー ト ナ ー
の他社MRからの入手が多くなっ
に多かった︻図︼
。
として挙げる企業もあった。
に﹁MRの卸訪問﹂に関す
の5点。
卸へのアプローチを強化してい
る か と の 質 問 で は、﹁ は い ﹂ と 答
ること
︱
MRの卸訪問、9割超が強化
病院の訪問規制などが理由
本
るアンケート 調 査 を 実 施 し た と こ
いるとの回答が9割を超え、製薬
えた企業が 社︵ %︶と圧倒的
ろ、卸へのア プ ロ ー チ を 強 化 し て
各社が卸との 関 係 強 化 に 努 め て い
る実態が明ら か に な っ た 。 そ の 理
由としては、病院がMRの訪問規
制を強化して い る こ と な ど を 挙 げ
る意見が目立 っ た 。
シップを強化し情報共有していく
顧客へのアピール﹂とそれぞれ同
活動分担の相互確認、連携姿勢の
セイ薬品工業は
﹁顧客情報の共有、
増量などを目的とした同行﹂
、
キッ
社医薬品の新規採用、採用製品の
薬品工業は﹁適正使用の推進、自
のために特約店へ協力を求めるこ
ている﹂
ことを理由に挙げている。
を得た。質問項目は、①卸へのア
と が あ る ﹂︵M S D ︶、﹁ 得 意 先 の
間 で 必 要 と な っ た た め ﹂︵ フ ァ イ
ングが重要となっているため﹂︵ノ
は﹁主に病院市場である注射剤の
確保、MSのプロモーションスキ
行の狙いを説明している。
バ ル テ ィ ス フ ァ ー マ ︶ な ど、 病
情報提供に活動の主眼を置いてい
MSとの同行についてはどう
か。回答 社のうちヤクルト本社
院などの訪問規制強化を挙げる企
スキルアップも目的としている。
面談機会確保だけでなく、MSの
ル ア ッ プ の た め のOJ T 等 ﹂ と、
業が目立った。
また、﹁競合品情報のリサーチ、
調剤薬局のきめ細やかな情報入
同 行 の 理 由 や 内 容 に つ い て は、
﹁ 新 規・ 未 訪 問 先 で の 医 療 施 設 と
るため﹂だ。
ザー︶、﹁顧客訪問規制が年々強化
M S同 行 で 医 療 機 関 と の
関係構築
ことは必須。得意先との関係構築
91
プローチを強化しているかどう
調査は製薬 協 加 盟 社 な ど を 中 心
に1月中旬に実施、 社から回答
30
面会が困難となってきており、よ
(回答 33 社)
か、その理由②MSとの同行の有
いいえ 6%
33
33
はい 91%
り多くの情報交換がMS とMR
その他 3%
無と理由③MRの卸への1日平均
【図】卸へのアプローチを
強化しているか?
特集
MRの卸訪問
大塚製薬
小野薬品工業
各医療機関の処方情報、MR 未訪問施設で
の処方獲得
得意先別当月販売金額の確認、情報交換、 社品の優先販売、継続納入、情報収集・情
プロモーション代行依頼など
報提供
武田薬品工業
―
田辺三菱製薬
2∼4
採用のためのすり合わせ、納入促進、情報 有用情報の入手、MS 力による主要製品の
共有
採用・処方アップ
中外製薬
1∼2
自社製品説明勉強会や施設情報取得
東和薬品
1
鳥居薬品
1∼2
日医工
3.5
ニプロ
3
日本イーライ
リリー
日本化薬
日本ケミファ
日本新薬
0.5
2
3 程度
2.5
自社製品情報の施設案内と自社製品トレー
サビリティー
MS へ当社製品知識の情報提供と医療機関
当社製品の拡売
の情報共有
施設や顧客に関する情報共有と施策打ち合 顧客ニーズに合った最適な情報提供活動を
わせ
行うための情報共有と連携の強化
顧客情報の収集、製品の早期市場浸透の
自社製品の拡散による市場確保
ターゲティング、すり合わせ
ターゲット施設の情報収集と納入連携
ターゲット医療機関の情報提供(既採用品
目など)
精度の高いターゲット施設選定のための情 MR では入手することが難しい、各施設の
報収集
情報
医療機関や流通に関する適切な情報提供
MR の接触機会が少ない先への情報提供
採用工作のためのトータルな情報入手な
ど。その他、
処方元ドクターの処方意欲アッ
プへの協力依頼や、自社製品の適正使用推
進への協力依頼も重要な対 MS 業務 自社製品に関連する得意先や競合品の情報
提供。その他、適正使用情報の正確な伝達、
適正価格での納入、採用工作協力、採用品
の処方増量への動機づけなど
製品情報提供と協働強化
タイムリーな製品情報提供活動と、その情
報共有
既存納入先や新規納入目標先への自社品情
報の提供
ノバルティス
ファーマ
2
バイエル薬品
非開示
既存納入先や新規納入目標先の情報交換
ファイザー
非開示
MS 業務が多忙になっていることで、ゆっ
MS と情報交換をしながら共通する得意先
くりと情報交換ができにくくなっているの
に対し、情報提供の精度を高める
で、その時間を設定していただきたい
扶桑薬品工業
2
得意先の動向を素早く連絡、対処してくれ
施設情報、他社品情報収集、拡販施策の進
ること。採用を素早くできるよう協力して
行チェック
くれること
Meiji Seika ファルマ
2
持田製薬
ヤクルト本社
匿名(内資)
15
2∼3
―
2∼3
積み上げをもとにしたすり合わせ業務
得意先情報収集、分析・活用
他メーカーの活動状況などの情報収集や拡
情報力と拡販能力
販の打ち合わせ作業
他社情報、病院動向
施設動向(経営方針、DPC、急性期医療)
MRが訪問しきれない医療機関への製品の
医療機関情報の共有化
アプローチと情報収集
Yakugyo Jiho 2014.2.10
いう声も上がった。
医療機関の情報交換
得意先や製品に関する情報交換
﹁
︵自社品の︶採用を素早
また、
くできるように協力してくれる﹂
市場情報の入手や説明会後のフォローなど
医師の治療方針や自社品の使用感などに関 医師の治療方針や自社品の使用感などに関
する情報収集
する情報提供
今回の結果を見る限り、製薬企
業の多くは、﹁MRとの協働・共闘﹂
市場動向や変化などの情報入手
︵ 扶 桑 薬 品 工 業 ︶、﹁M S 力 に よ る
約2
大鵬薬品工業
をMSに期待しているようだ。
医療機関への自社医薬品の適切な情報提供
と、MR とのタイムリーな連携
非公表
主要製品の採用・処方アップ﹂
︵田
自社製品の情報提供、その他情報交換など
大日本住友製薬
辺三菱製薬︶
、
﹁MR未訪問施設で
MR でカバーできない施設、薬局での活動
機会が少ない先への情報提供﹂︵日
1
効果的・効率的に回れるかがMR
三和化学研究所
の処方獲得﹂
︵三和化学研究所︶
MS の豊富な医療機関への訪問活動を通し
MS との人間関係を築き、MR と MS との
て、医療機関のニーズに合った当社医薬品
連携に基づく両社にとって価値のある営業
の情報提供や提案を行ってもらい、その情
活動を行うこと
報の提供を受けること
本ケミファ︶などMRがカバーし
3
―
協働による取り組み
の勝負の分かれ目だろう。
沢井製薬
第一三共
情報の共有化
など、採用増につながる活動にも
約3
きれない施設や接触の難しい施設
興和創薬
期 待 を 寄 せ て い た。
﹁自社の敵に
個々の MS との情報交換、自社製品や当社の取
適時、的確な情報交換がお互いにできること
り組みをより深く理解してもらうための説明会
に対する情報提供活動を望む意見
延べ
3∼5
卸訪問でのMRの最近の主眼業
務は、情報収集・共有が各社共通
MR の行った医師への情報提供の効果確認、
自社の敵にはなってほしくない。医療施設
他社工作状況の確認、
医療施設での診療(処
の志向を正しく伝えてほしい
方含む)変化の確認、アポイント依頼
はなってほしくない﹂
︵科研︶と
2
が目立った。
4 月からの診療報酬改定に向けての医療機 地域における医療機関、薬局に関する情報
関などの動向などの情報収集
収集
だった。
2∼3
﹁協働・共闘﹂をMSに期待
キッセイ薬品
工業
情報収集の強化と作業の共有化、戦略的な
市場・施設の情報、人脈構築
打ち合わせ
最後にMRがMSに期待するこ
と を 尋 ね た と こ ろ、﹁M R の 接 触
科研製薬
約2
医療施設における自社製品に関わる情報提供
得意先の情報交換、販売促進、競合品に関 主力製品の販売促進に共に取り組むパート
する情報収集
ナーシップの強化
卸 訪 問 は 1日 1∼ 3軒
情報収集・共有など
3∼4
医療施設情報の入手
MRの1日平均の卸訪問軒数
は︻左表︼の通り。最も訪問軒数
MSD
2
得意先の情報提供、新発売時の採用
施設における同業他社の情報や競合品情
特約店施策の推進、他社・顧客の情報収集、
報、施設情報、処方促進につながる自社品
自社製品の紹介方法の共有、処方状況の把握
のプロモーションへの協力
が多いのはキッセイ薬品の3∼5
アッヴィ
3∼4
得意先の情報共有。進捗状況の確認
MR が MS に期待すること
軒。全体的におおむね1∼3軒と
アストラゼネカ
1.5
最近の主眼業務
いったところ だ 。 一 般 的 に 卸 へ の
あすか製薬
MR1日当
たり平均の
卸訪問軒数
訪問は午前中 が 中 心 だ が 、 い か に
企業名