日本株投資の着眼点は? - キャピタル・インターナショナル株式会社

機関投資家向け資料
Q&A
2014年12月
キャピタル日本株式運用
重要な岐路に立つ日本経済、
日本株投資の着眼点は?
郭 成慶
日本株式運用ポートフォリオ・マネジャー
経験年数:29年
在籍年数:11年
東京オフィス在籍
最近数ヵ月間で政府や日銀の決定に関連する様々なイベントを経験した日本
の株式市場ですが、今後はどのような展開が予想されるでしょうか。本書で
は、キャピタル・グループの日本株式運用のポートフォリオ・マネジャーが中長
期的な視点から注目点を解説します。循環要因と構造要因の双方に基づいて
日本経済を分析し、株式相場の先高見通しの背景を「リフレ好循環」と「日本
企業の株主価値の向上」という2つのポイントに求めます。また、弊社グループ
の日本株式運用の特色を、グローバルな調査アプローチと中小型銘柄の取り
込み、企業との建設的対話(日本版スチュワードシップ・コードにおけるエンゲ
ージメント)という3つのポイントに絞って説明いたします。
日本の株式市場を取り巻くマクロ環境とその見通し
堀口 章
日本株式運用ポートフォリオ・マネジャー
経験年数:20年
在籍年数:13年
東京オフィス在籍
布施 亮
インベストメント・スペシャリスト
経験年数:26年
在籍年数: 6年
東京オフィス在籍
月次ベースの現地通貨ベースの各インデックスのリターンと米国10
年国債利回りを基に算出
2013年9月30日現在
出所:Datastream
この数ヵ月間に、日銀の追加金融緩和や
政府の消費税増税延期の決定、衆議院の
解散・総選挙と、政治経済面で多くのイベ
ントがありました。
また、安倍政権の一連
の施策(「アベノミクス」)への期待も一部
で後退しているようです。
日本のマクロ環
境についてどのように見ていますか。
するのかどうかということです。
たとえ多少
の時間がかかっても、
これらが二つとも実
現するのであれば、
日本の株式市場の先行
きは明るいと私は見ています。
郭:確かに、私たちは最近、数多くの重要
なイベントを経験しましたが、一つ一つの
出来事に左右されて大局を見失わないよ
うにしたいものです。ポートフォリオ・マネ
ジャーとして日本株に投資するうえで、私
は、次の二つのポイントに絞って日本のマ
クロ環境の行く末を見極めたいと考えてい
ます。一つは、2年前の安倍政権誕生以降
の「アベノミクス」政策によってデフレ脱却
を実現した日本経済が、今後もリフレーシ
ョン政策と景気の自律的拡大(これを私た
ちは「リフレ好循環」
と呼んでいます)の波
に乗っていけるのかどうか、
もう一つは、投
資対象たる日本企業の
「株主価値」
が向上
郭:可能だと考えています。
まず、一つ目の
リフレ好循環ですが、
日本の消費者物価指
数(生鮮食品を除いたコアCPI)
は、2013年
4月の日銀の大規模な金融緩和開始以降、
大きく上昇しました。2014年は足踏み状
態が続いていますが、10月末の追加緩和
決定により、2%のコアインフレという政策
目標の達成に向けた日銀の強い意志(コミ
ットメント)
を改めて確認することができま
した。最近、
日銀の高官のお話を伺う機会
を得ましたが、彼らは2%のインフレ目標の
達成に向けて、
日本のマクロ経済指標の中
で雇用と賃金にとりわけ注目しているよう
です。
その
「リフレ好循環」
と
「日本企業の株主価
値の向上」
は実現可能と見ていますか。
thecapitalgroup.co.jp
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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機関投資家向け資料
Q&A
2014年12月
キャピタル日本株式運用
日本の雇用環境は逼迫していると見られま
す。
日銀短観の全産業雇用DIでも、有効求
人倍率でも、足下は2006-07年の好景気
期を超え、1990年代前半のバブル後期以
来、20数年ぶりの人手不足となっています
(図表1)。
これには、景気変動という循環
要因のみならず、人口動態などの構造的な
図表1:
労働需給は20数年ぶりの引き締まり状況
雇用判断DIは日銀短観の全産業の雇用判断DIを使用
2014年9月末現在
出所:日本銀行、厚生労働省
雇用判断DI(左目盛)
30
要因が大きく影響していると考えられます。
すなわち、2007年以降に定年を迎えた
「団
塊の世代」
の大量退職の一方で、
そもそも
の少子化による労働人口の減少に、
「失わ
れた15年」の間に企業が「雇用の非正規
化」を進めたことなどが重なり、労働市場
で担い手が不足してしまったのです。
有効求人倍率(右目盛)
雇用者過剰
20
↑
10
1.6
0
1.4
▲10
1.2
▲20
1.0
▲30
0.8
▲40
0.6
↓
↓
0.4
▲50
雇用者不足
求人<求職
0.2
▲60
(年)
'85 '87 '89 '91 '93 '95 '97 '99 '01 '03 '05 '07 '09 '11 '13
雇用環境の逼迫は必然的に賃金の上昇に
結びつきます。経済学で失業率とインフレ
の関係を説明する
「フィリップス曲線」
に表
れている通りです。
インフレ指標を
「毎月勤
労統計調査」
における
「所定内給与」
(月給)
の前年同月比変化率に代えて失業率との
関係を見てみると、完全失業率が3.5%を
下回ると所定内給与の伸びが急加速する
ようになります
(図表2)
。
デフレ時代に所定
内給与を含む社員の総賃金の引き下げを
進めた日本企業は、
ここ数年の景気回復や
労働者不足に際しても、
「所定外給与」
(残
業代等)
の支払いや
「特別に支払われた給
図表2:
失業率と所定内給与変化率の
フィリップス曲線
2.0
求人>求職
↑ 1.8
上
昇
与」
(賞与等)
の引き上げという一時的報酬
によって対処してきており、
ひとたび引き上
げてしまうとその後の再引き下げが難しい
所定内給与については引き上げに慎重で
した。
しかし、安倍政権の賃上げ要請に加
え、
ますます厳しさを増す雇用情勢によっ
て、
いよいよベースとなる所定内給与にも
引き上げの時期が到来したようです。雇用
者が増加し、高齢者や女性を中心に、
これ
まで働いていなかった層が収入を得始めた
うえに、一人あたりの給与も増加するとな
れば、
マクロ全体の所得増加の効果は非常
に大きなものがあると期待されます。
8%
7%
6%
所定内給与、
対前年比
2014年9月末現在
完全失業率:3.6%
所定内給与:+0.7%
5%
4%
3%
2%
1%
0%
-1%
-2%
低
下 -3%
出所:総務省統計局の毎月の完全失業率と厚生労働省「毎
月勤労統計調査」における所定内給与の前年同月比変化率
(1980年4月~2014年9月)
1.5
2.0
2.5
改善
3.0
3.5
4.0
4.5
失業率、%
5.0
5.5
6.0
悪化
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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機関投資家向け資料
Q&A
2014年12月
キャピタル日本株式運用
雇用・所得環境が改善するとして、それ以 います。雇用・所得環境の改善以外にも、
外のマクロ環境についてはどうですか。
「リ 企業は、収益の回復と設備年齢の高齢化
(長期化)、製造業の受注の拡大などの要
フレ好循環」
の波に乗れそうですか。
因を背景に、徐々にではあるものの、設備
郭:多くの日本企業は、長年続いた円高や 投資を増やしています。また、日銀の大規
デフレ、低成長率の環境下で、負債や設 模な金融緩和は、図表3にあるように、日
備、人員を削減する構造改革を断行し、収 本の実質金利(名目金利-物価変動率)
益マージン(売上高経常利益率)は過去 を主要先進国で最低水準に押し下げ、現
最高水準へ、逆に損益分岐点比率は過去 預金の貯め込みに代えて株式・不動産投
日銀
最低水準へと体質を改善させました。
こう 資を促す資産効果を発揮しています。
した
「ヒト、モノ、
カネ」の削減は、個々の企 が供給する資金の急激な伸びに比べれば
業としては極めて合理的な行動でしたが、 限定的ではありますが、銀行貸出は着実
マクロ面では、借入れの減少や設備投資 に増加しており、為替市場での円安誘発と
の抑制、雇用の削減など、経済が持続的 いう経路を通じて輸入物価を押し上げる
縮小に陥る
「合成の誤謬」につながりまし リフレ効果も働いています。
た。ただし、今ではそれも改善に向かって
図表3:
日本と主要先進国の実質金利比較
(前年同月比)
米国
ドイツ
英国
日本
6%
2011-12年は
実質金利の
高止まりが
日本経済を圧迫
5%
4%
3%
2%
1%
0%
実質金利は、各国10年国債利回りからコア消費者物価指数の対
前年比伸び率を差し引いて算出
2014年10月末現在
出所:日本銀行、Bloomberg
▲1%
▲2%
2013年以降は日銀の大型
金融緩和により実質金利が
大幅に低下(マイナスへ)
'97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14
(年)
次に、
もう一つの着眼点の
「日本企業の株
主価値の向上」
についての見解を教えてく
ださい。
郭:私の「日本企業の株主価値の向上」に
関する見解は、先ほど申し上げました構造
改革の断行による日本企業の体質改善と、
日銀の大規模な金融緩和による様々な波
及効果の延長線上にあります。
人材に投資する」
ことに前向きになりつつ
あるうえ、積み上がった現預金を投資のみ
ならず、
「株主還元に振り向ける」
ことが重
要視される時代になりました。
実際、
日本企業が自社株買いと配当に振り
向けている合計額は、
「リーマン・ショック」
後の減少などを経ながらも増加傾向にあ
り、特に、2014年度は過去最高額を更新
する見込みです
(図表4)。
また、2014年に
「日本版スチュワードシップ・
日銀の大規模な金融緩和により、
日本の様 制度化された
や、2015年の制度化に向けて現在
々な経済主体が「バランスシート・シフト」 コード」
「日本版コーポレート・
を迫られていることが指摘できます。家計 策定が進んでいる
など、企業統治と株主
は
「預貯金から投資へ」
と資産構成を移し ガバナンス・コード」
始めていますし、政府部門ですら、公的年 責任について政府が規範を示し始めてい
金が投資先を日本の国債から株式や海外 る状況も背景に、社外取締役を採用する
日本企業はかつてよりも
資産などへとシフトし始めました。
こうした 企業が増すなど、
環境変化の結果、企業も、
かつての構造改 はるかに株主を意識した経営を行うように
革時代とは正反対に
「借入れをして設備や なりました。
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2014年12月
キャピタル日本株式運用
図表4:
日本企業の自社株買いと配当
14
(兆円)
自社株買い(普通株)
配当
12
10
8
6
4
自社株買いは整理回収機構からの購入、優先株式の買い戻しを除く普
通株式ベース。2013年度の配当は、各年度の一株当たり配当(DPS)予
想額に発行済み株数を乗じて求めた。なお、2013年度のDPSは2014
年3月28日現在の会社予想を、会社予想のない場合は東洋経済予想を
用いた。2014年度の配当は野村證券予想、自社株買いはキャピタル・
グループ予想。
出所:各社開示資料、及び東洋経済新報社資料より野村證券作成
2
(年度)
今後の
「日本企業の株主価値の向上」
の可
能性についてはどう見ていますか。
郭:今後について、私が重視しているのは
PBRの改善余地です。PBRは通常、
「株価純
資産倍率」
と訳されますが、
この
「純資産」
とは
「自己資本」、
すなわち、
「株主資本」
の
ことですから、PBRは「株主資本に対する
図表5:
日米欧のPBR比較
(倍)
6
2014(予)
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
0
株価」水準の評価ということで、企業の株
主価値を評価するうえで最も適当な指標
と言えます。
また、代表的な株価バリュエー
ション指標のうち、既に米欧と遜色ない水
準となっているPER(株価収益率)
に比べ、
日本企業のPBRは、
まだ米欧から水をあけ
られた低水準にある
(図表5)
ことも今後の
改善余地に注目する理由です。
日本
米国
欧州
5
4
3
2
1
実績ベース
2014年10月末現在
出所:Datastream、MSCI
0
1998
2000
2002
2004
2006
2008
PBRの改善には、ROE(自己資本(株主資
本)利益率)水準の引き上げが欠かせませ
ん。
このROE自体も、
日本企業のそれは米
欧企業より低水準で推移し、日本の株価
低迷の元凶として引き上げの必要性が主
張されてきました。そして、最近では「JPX
日経インデックス400」
という時価総額の
みならずROEなども重視して構成銘柄を
決定する株価指数が開発され、大手公的
年金の運用のベンチマークに採用されたこ
ともあって、企業経営者の間でROE向上へ
の関心も高まってきたほか、経営目標とし
てROE水準を掲げる企業も珍しくなくなっ
てきました。
2010
2012
2014 (年)
日本企業の過去のROEとPBRの関係を見
てみると
(図表6)、概ね、ROEが8%、PBR
が1.0倍辺りに関係性の屈折ポイントが
観察されます。すなわち、同ポイントより
もROEが低下してもPBRはほぼ横ばいで
有意な変化がない一方、同ポイントよりも
ROEが上昇するとPBRもそれに足並みを
揃えて改善が進むというものです。足下の
アナリスト予想に基づく2014年度のROE
は8.8%程度が見込まれており、今後は更
なるROEの上昇に連れてPBRが切り上が
る、
すなわち、利益の拡大が株価上昇にス
トレートに結びつきやすい状況になると期
待されます。
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
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機関投資家向け資料
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2014年12月
キャピタル日本株式運用
図表6:
ROEとPBRの関係
高い
2.2
予想ROE: 8%
2.0
1.8
2014年10月末
現在
(PBR、倍)
1.6
1.4
1.2
1.0
PBR: 1.0倍
0.8
0.6
2004年10月末から2014年10月末まで毎月末のMSCI Japan
Indexの過去12ヵ月実績PBRとIBESによる12ヵ月先予想ROEを
集計して作成
2014年10月末現在
出所:Datastream、MSCI、IBES
低い 0.4
2.0
低い
4.0
6.0
8.0
予想ROE、%
PERが企業利益との対比で比較的短期の
循環的な株価水準の評価に適しているの
に対し、PBRはより絶対的な株価水準の評
価に向いています。
すなわち、PBRで1倍は
会社の解散価値を意味しますから、本来は
その水準が株価の下限になるはずです。過
去のMSCI Japan IndexはPBRで0.8倍程
度まで下げた実績がありますが、
これは解
散に伴うコストや、資産の時価評価により
自己資本が毀損するリスクなどを織り込ん
だ水準と理解しています。
いずれにせよ、
こ
れまで市場全体のPBRが0.8倍を割り込ん
10.0
12.0
高い
だことがないのですから、
その水準が株価
のサポート要因になると捉えることができ
ましょう。一方で上方はといえば、ROEの
改善と足並みを合わせ、PBRは2.0倍近辺
にまで上昇したことがあったのですから、
そう考えると、現在、PBRが1.2倍近辺の日
本株は、株主資本が一定ならば、約4割の
下落リスクに対し、その倍近い上昇余地
を有すると考えることができ、その意味で
も有望市場だと言えるのではないでしょう
か。
キャピタル・グループの日本株式運用の特徴
トが、業種の垣根を越えてアイデアなどを
発展させる
「クラスター」チーム、③調査・
運用担当者ならば原則として誰でも参加
でき、担当の垣根を越えて意見を表明でき
布施:キャピタル・グループでは、
日本株に るグローバル投資会議、④複数の調査・運
ついてもグローバルな体制の中で、
グロー 用担当者が合同で企業訪問を行う調査出
といった取り組み
バルな視点に基づいて調査を行っていま 張(リサーチ・トリップ)
と呼
す。世界標準で真に競争力のある銘柄を探 のほかに、⑤「SWARM(スウォーム)」
し出すことを目的とし、
そのために、
日本企 ばれる集団テーマ調査が行われており、調
業であっても、競合他社やサプライヤー、 査手法の特徴の一つに挙げられます。今回
このSWARMに焦点を当て、説明しま
納入先に至るまで世界各地を対象に調査 は、
す。
しています。
キャピタル・グループは、
そのような日本の
株式市場で運用を行うに当たり、
どのよう
な特徴を備えていますか。
キャピタル・グループの調査については、①
アナリストが国の垣根を越え、業種別に
銘柄を担当する「グローバル・セクター」
制、②関連の深い複数業種の担当アナリス
SWARMは、長期かつグローバルな視点か
ら、今後の調査活動で重要なカギの一つ
となる可能性があり、通常の投資会議に
おける議論だけでは不十分で何らかの深
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
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2014年12月
キャピタル日本株式運用
掘りが必要と考えられる事項をテーマと
し、関連する調査・運用担当者などがプロ
ジェクト・チームを結成して調査に当たる
ものです。過去、テーマに設定された事項
には、
シェールガスやモバイル決済、日韓
台のIT企業比較などが挙げられます。
そし
て、必要に応じ、外部の専門家や有識者、
政府関係者などを招いての講習会や意見
交換、現地への調査出張なども行ったうえ
で、最後にプロジェクト・チームの見解を
整理し、個別銘柄の推奨にまとめます。テ
ーマの影響が広範囲に及ぶことが多いた
め、発表はオフサイトなど、普段の投資会
議よりも多数の調査・運用担当者が参加
する場となることが多く、会議参加者は、
そこで得られた新たな洞察を持ち帰り、銘
柄選択などに活かすことが期待されてい
ます。
図表7:
55歳以上の人口が全体に占める比率
──2013年から2025年(予想)への変化
最近のSWARMの具体例を教えてください。
堀口:私は
「日本とアジアの高齢化問題」
の
プロジェクトに参加し、
アメリカ西海岸在
住のグローバル株式のポートフォリオ・マ
ネジャーなどと、数ヵ月に亘って議論を進
めました。最大のポイントは図表7に集約
されている
「今後10数年の高齢化の進行
スピードの、国による違い」
です。それによ
ると、日本は2025年においても世界で最
も高齢化が進んだ国であり続けると予想
されていますが、
これまでに既に相当の高
齢化が進んでいるため、今後10数年で進
展する高齢化の度合いは、実はそれほど激
しくありません。一方、韓国や中国は、今後
10数年で急速な高齢化が進み、
日本が経
験した道を歩むことになります。
45%
2013年
40%
2025年
35%
30%
25%
20%
15%
10%
南アフリカ
インド
インドネシア
メキシコ
中国
ブラジル
オーストラリア
ロシア
米国
ノルウェー
英国
スウェーデン
フランス
スペイン
韓国
オランダ
スイス
フィンランド
イタリア
ドイツ
日本
5%
出所:国連データを基にゴールドマン・サックス証券作成
「高齢化先進国」
としての日本市場での経
験と知恵が、今後は中国市場でビジネス
をする日本企業への投資に応用できると
考えています。高齢化の恩恵が見込まれる
分野としては、医療や健康などの
「ヘルスケ
ア」関連がまず挙げられるでしょう。
日本で
は、60歳を過ぎると、59歳以下の成人に比
べ、一人当たりの医療支出が7割以上も増
加するとの統計があります。
最近では、
中国
でも糖尿病などの生活習慣病患者が急速
に増加しています。一方で、高齢者人口の
増加は、労働者人口比率の低下という点
でも社会に大きな変化を及ぼします。
その
変化からの恩恵が見込まれるのが、私たち
が予てより注目しているFA(ファクトリー・
オートメーション:工場の自動化)
などの機
械化・自動化に関連した分野です。
布施:キャピタル・グループでは、企業を担
当アナリストが調査するだけでなく、その
企業について投資会議で様々な調査・運
用担当者が発言し、調査出張時には同行
した調査・運用担当者のほぼ全員がその
企業のキーパーソンに面会して見解を述
べ合い、
さらには今回のSWARMのような
川上のテーマに基づく関連銘柄として採り
上げるなど、一つの企業に関する調査過程
が複層的に構成されていることが一つの
特徴と言えるでしょう。
このように、企業の
様々な側面を、様々な担当者が、様々な視
点で見つめ直すことで、見過ごされていた
アイデアを発見し、発展させ、
さらに精度を
高めることができるのだと、私たちは信じ
ています。
当資料に記載されている個別銘柄等への言及は、情報提供を目的として例示したものであり、特定の有価証券や業種、国等を推奨しようとするものではありません。
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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機関投資家向け資料
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2014年12月
キャピタル日本株式運用
グローバル・リサーチとうかがうと、
どうし
ても国際的に有名な輸出関連銘柄が調
査・運用の中心になるイメージがあります
が、実際のところはどうなのですか。
堀口:キャピタル・グループが、
グローバル
な調査体制の下、グローバルな視点で真
に競争力のある銘柄を長期的観点から探
し出そうとしている分野は、大型株に限っ
た話ではありません。日本では、技術力を
活かして世界中のニーズに対応し、高い市
場占有力を誇る
「グローバル・ニッチ・ガリ
バー」
と呼べるような企業が数多く存在す
るため、私たちはそうした中小型株式の発
掘にも力を入れています。
中小型株式投資
の魅力の一つは「情報の非対称性」、すな
わち、
ある銘柄に関する魅力が誰にでも知
図表8:
証券会社のリサーチカバレッジ状況
化学
建設関連
小売
医療機器
建機・鉱山機械の自動運転
主要15証券会社のうち、該当する銘柄に対し投資格付けを公表
している社数をキャピタル・グループにて集計
灰色の網掛けは、相対的にカバー数が少ない銘柄
2014年11月11日現在
出所:キャピタル・グループ
会社名
共通項目・業種
自動車関連
業務用冷蔵庫・
エレベーター
FA
れわたっているわけではないということで
す。
日本の株式市況が低迷した
「失われた
15年」
の間に、証券会社の中小型株に関す
る調査リソースは大きく削減され、
カバー
する銘柄数が減少しました。特に、本社が
地方にあり、調査する側にとって効率がよ
くないような中堅・中小企業ほど、その傾
向が顕著であるように思われます。
ただし、
実はそのような企業の中にも、十分な時価
総額があり、魅力的な利益成長の機会と
潤沢なキャッシュを有する企業は少なくあ
りません。図表8が示すように、証券会社に
よるカバレッジ数は銘柄によってさまざま
で、
中には、足下、同じような時価総額でも
カバレッジ数が大きく異なるようなケース
もあることにお気づきになるでしょう。
7203
7278
4005
4612
1802
9678
9699
3099
3349
4543
6965
7747
7716
6301
7732
6501
6465
6406
6481
6877
トヨタ自動車
エクセディ
住友化学
日本ペイント
大林組
カナモト
西尾レントオール
三越伊勢丹ホールディングス
コスモス薬品
テルモ
浜松ホトニクス
朝日インテック
ナカニシ
コマツ
トプコン
日立製作所
ホシザキ電機
フジテック
THK
OBARA GROUP
冒頭のマクロ環境見通しで「日本企業の
株主価値」について言及されていました
が、2014年は日本版スチュワードシップ・
コードが制定されたこともあり、企業と株
主の関係についての議論が盛り上がった
1年でもありました。キャピタル・グループ
は、投資家として投資先あるいは調査先
の企業との関係をどのように捉えていま
すか。
布施:キャピタル・グループは、1931年の創
業以来、徹底的なファンダメンタルズ調査
に基づき、長期的な視点で個別銘柄選択
時価総額
(百万円)
23,286,818
140,193
662,178
670,672
546,904
137,151
106,734
604,208
322,806
1,072,444
436,416
159,628
133,534
2,697,709
293,021
4,244,264
396,233
100,331
371,051
94,747
カバレッジ
合計(社)
15
5
14
5
13
1
0
13
3
12
3
3
0
15
2
13
2
0
15
0
を行うボトムアップ・アプローチのアクティ
ブ運用を続けてまいりました。そうした調
査活動において、企業の経営陣との意見
交換は非常に重要な項目の一つです。
いわ
ば、
日本でスチュワードシップに関する議論
が盛り上がるはるか以前から、私たちは長
期株主として、資金の委託者の利益の最大
化を目的に、企業との建設的な対話(「エン
ゲージメント」)
を行ってきました。
これは、
キャピタル・グループの投資プロセスの一
部に組み込まれたDNAだとも言えるので
はないでしょうか。
当資料に記載されている個別銘柄等への言及は、情報提供を目的として例示したものであり、特定の有価証券や業種、国等を推奨しようとするものではありません。
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
7
機関投資家向け資料
Q&A
2014年12月
キャピタル日本株式運用
とはいえ、私たちは投資先の企業の経営に
積極的に関与するアクティビストではあり
ませんし、極端な集中投資型ファンドでも
ありません。株主としての立場にものを言
わせ、企業に行動を迫るといったようなア
プローチは取っていません。
また、昨日、今
日、株式を買ったからと言って、企業がこち
らの意見に耳を傾けてくれるとは考えにく
いですし、企業側に立った提案を行うこと
や洞察力のある意見交換をしなければ、株
主であっても対話に応じてもらうことは難
しいでしょう。
になるのが、長期投資であることです。
キャ
ピタル・グループの日本株式運用ポートフ
ォリオにおける保有銘柄のうち、半数以上
が5年以上、約2割が10年以上保有してい
る銘柄です
(図表9)。
これだけ長期に亘っ
て株主であり続けることが、投資先の企業
にパートナーとしての信頼感を抱いてもら
う重要な要素だと考えられます。また、経
験豊かなアナリストが一貫して調査を担
当することも併せて重要でしょう。
キャピタ
ル・グループの株式アナリストは平均在籍
年数が9年、
同経験年数は15年に上ります
し、株式ポートフォリオ・マネジャーに至っ
私たちは、
スチュワードシップについて、
ま ては、平均在籍年数が21年の長期に亘り
ずは地道に会社を理解すること、知り尽く ます。あるアナリストが駆け出しの時代に
すことから始まると考えています。そして、 調査を担当していた企業の財務・経理課長
論理的な対話を時間をかけて繰り返すこ の方が、今やその会社のトップ・マネジメン
とにより、投資先の企業から信頼できる相 トに昇り詰めているといったケースは、弊
手だと認めてもらうことが、
エンゲージメン 社グループの場合、
よくあることなのです。
トの必要条件だと思います。
その際に重要
図表9:保有銘柄の投資期間別構成比
1年未満
(13)
8.0%
1年以上
10年以上
(12)
19.7%
3年未満
(19)
24.7%
7年以上
3年以上
カッコ内は全保有83銘柄の内訳(銘柄数)
日本株式運用代表口座で集計
2014年9月末現在
出所:キャピタル・グループ
5年未満
(12)
16.8%
10年未満
(17)
19.2%
5年以上
7年未満
(10)
11.6%
調査・運用担当者の多くは、
これまでの経
験から、
「心ある企業、真に投資に値する企
業の経営者は、株主以外に、従業員や顧客
(製品・サービスの提供先)など、数多く存
在するステークホルダー(利害関係者)の
それぞれにどう報いるべきか、常に真剣に
考えているものだ」
ということを強く印象づ
けられ、
そのような経営者の方々との対話
に、私たちは謙虚な姿勢で臨むべきと考え
ています。
また、意見が合わなければ、株式
を売ることでその企業から離れる自由が許
されている私たちアクティブ運用の投資家
の場合、短期的な利益処分よりも、
もっと
長期的な視点で企業の持続的成長・発展
に資する施策を評価すべきとも考えていま
す。
スチュワードシップに関連して申し上げ
るならば、私たちは、機関投資家の調査・
運用担当者としての受託者責任の下、株主
となっている企業に適切な行動を求める
立場にありますが、それは、企業経営者を
監視し、誤りを見つけ出し、改善要求を突
き付けるということではなく、
むしろ相互の
信頼関係を構築し、共存共栄を目指すこと
ではないかと思うのです。
キャピタル・グル
ープの調査・運用担当者は皆、
自らの役割
に求められる責任を果たすべく、
たゆまぬ
努力を続けていることはもちろんですが、
そ
うした役職に就いているが故に企業の経
営者と面会することができるのだというこ
とをきちんと理解しています。
そのように謙
虚に、
かつ視点もプロセスも長期的にとい
うのが、企業とのエンゲージメントにおい
ては重要なことだと考えています。
ポートフォリオ・マネジャー及びアナリストの年数に関する記載は2013年12月末現在です。
当資料に記載されている個別銘柄等への言及は、情報提供を目的として例示したものであり、特定の有価証券や業種、国等を推奨しようとするものではありません。
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
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その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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機関投資家向け資料
金融商品取引業者
商号
関東財務局長(金商)
第 317 号
キャピタル・インターナショナル株式会社
代表取締役社長
トーマス・クワントリル
東京都千代田区丸の内二丁目 1 番 1 号 明治安田生命ビル
TEL : 03-6366-1050 (営業部代表)
加入協会
一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
投資リスクについて
当資料に記載されている有価証券運用は、国内外の株式及び債券などの値動きのある有価証券
等に投資するものであり、組入有価証券の価格の下落や、組入有価証券の発行者の業績悪化や倒
産、国内もしくは国際的な政治・経済情勢、市場の需給関係等の影響により、運用資産の投資価
値が下落し、損失を被ることがあります。従いまして、投資家の皆様の投資元本は保証されてい
るものではなく、投資価値の下落により損失を被り投資元本を割り込む可能性があります。当運
用における主要リスクには、有価証券等の価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスク、
信用状況の変動リスク、カントリーリスク、有価証券先物取引等のリスク等、グローバル運用に
おける通常のリスクに加え、新興諸国市場投資に伴うリスク(政治・社会的不確実性、決済シス
テム等市場インフラの未発達、情報開示制度や監督当局による法制度の未整備、為替レートの高
い変動、外国への送金規制、税制等)、低格付け債券のリスク(デフォルト、金利変動に対する価
格変動等)等があります。
ご負担いただく費用について
当資料に記載されている投資一任契約に係る運用報酬は以下の通りです。
 直接投資を行う運用の場合:0.972%(税込)を上限とします。
 外国籍投資信託を用いた運用の場合:投資信託に係る運用報酬、投資一任契約に係る報酬
などの総計は 1.200%(税込)を上限とします。
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じて変動するものであり、事前に具体的な料率や金額、上限または計算方法等を示すことができ
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りますので、その詳細につきましては信託銀行にご確認ください。
当資料の記載内容について
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特定の有価証券や業種、国等を推奨しようとするものではありません。また、当資料に記載され
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