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1 日本語と中国語の複合動詞の語形成 Word

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「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
汉日对比语言学研究(协作)会。北京大学出版社。
日本語と中国語の複合動詞の語形成
Word Formation in Compound Verbs in Japanese and Chinese
東京外国語大学 総合国際学研究院 望月圭子
早稲田大学
非常勤講師
申亜敏
要旨
影山(1993)指出日语的补句关系型复合动词(例如:~終える/終わる、~尽くす等)具
有很强的孳生能力。与日语相同,汉语里也存在着许多“动词+动词/形容词”结构的复合动
词。然而,在汉语里最典型的类型却是具有“先行事件+结果事件”的事件结构的述补式复
合动词(例如:打死,走累等)
,而且这种述补式复合动词的复合机制与日语补句关系型复合
动词截然不同。
本篇论文尝试从语言类型学(typology)的角度来阐明上述两者不同的原因何在。以 SOV
为基本语序的日语,允许在动词前面出现补句,而这种句法特征也反映在词法里,因此出现
许多补句关系型复合动词。相对于此,以 SVO 为基本语序的汉语,允许在动词后出现包括补
语在内的许多动后成分,也因此时序原则更优先于语序原则,同样地这种句法特征也反映在
汉语的词法里,因此出现许多述补式复合动词。这个结果也说明了句法特征反映在词法结构
里乃是人类语言的一种普遍原则。
キーワード:結果複合動詞、語彙概念構造、
{語彙的/統語的}複合動詞、
{主語/目的語}補文関係の複合動詞、時間順原則
1. 日本語と中国語の「動詞+動詞/形容詞」型複合動詞
日本語において、生産性が高い複合動詞の型は、影山(1993)で提案された「補文関係」
型複合動詞(e.g. ~終える/終わる、~尽くす、~始める/始まる、~続ける/続く、~そこなう、
~間違う/間違える、~忘れる等)である。
中国語も、
「動詞+動詞/形容詞」型複合動詞が非常に豊富な体系をもち、中国語動詞の
体系において重要な位置を占めている。しかし、最も卓越した複合動詞の型は、
「先行事象
+結果事象」という組み合わせの結果複合動詞、例えば、<打死、打破 、走累>といった
複合動詞であり、複合動詞形成のメカニズムが日本語とは大きく異なっている。
日本語と中国語における「動詞+動詞/形容詞」型複合動詞の語順には二種類あり、一つ
は、句構造の語順が語構造の語順に反映される統語的語順原則であり、もう一つは、時間
順原則である。日中語とも、この二つの原則に基づく複合動詞が存在するが、一方で、以
下のような類型的相違点がある。即ち、最も生産性の高い「動詞+動詞」型複合動詞の語
順が、日本語においては、
「SOV 語順」が語構造にも反映された、
「目的語補文+動詞」で
ある一方で、SVO 語順である中国語においては、動詞の後にさまざまな後置成分が生起可
能で、このため最も優先順位が高い語順が「時間順の語順」であるという相違がある。
2.中国語の統語構造と複合動詞の構造
本節では、中国語の統語構造の特徴がどのように複合動詞に反映されるかを考察する。
1
「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
汉日对比语言学研究(协作)会。北京大学出版社。
2.1. 中国語の統語構造
中国語の統語構造は、動詞句においては、英語と同様に SVO 語順で動詞句の主要部であ
る動詞が左にある。しかし、日本語と同様、副詞成分や、随意項である「介詞句」
(前置詞
句)は、動詞の前に位置し、さらに、名詞句においては、日本語と同様に「修飾部+名詞」
という語順で主要部名詞が右にある。こうした点で、中国語は、ちょうど英語と日本語の
統語構造の特徴をあわせもつといえる。本節では、中国語の複合動詞の語順に関連する語
順に焦点を絞って、中国語の統語構造の語順を紹介する。
まず、動詞の前に置かれる統語成分は、①主語、②副詞成分、③前置詞句が挙げられる。
例を挙げよう。
(1) 他
去年
在学校
主語 時間副詞
前置詞句
很认真地
学习 。
様態副詞
動詞
次に、動詞の後に置かれる統語成分は、①目的語、②補語(結果補語、方向補語、可能
補語、程度補語、数量補語)
、③疑問、推量、勧誘等のモダリティを表す終助詞である。例
を挙げると、以下の下線部が、動詞の後に置かれる成分である。
(2)(目的語)
读书
(3)(結果補語) 读书读得很累
(4)(方向補語) 从教室里走出来
(5) (可能補語) 走不动
(6) (程度補語) 走得很快
(7) (数量補語) 走了两次
(8) (終助詞)
走了吗?
中国語の統語構造において重要な位置を占めているのは、(3)から(7)に挙げた補語である。
さらに、中国語の統語構造においては、
「連動式」と呼ばれる動詞句が二つ重なる構造があ
り、動詞句と動詞句の間にはポーズがおかれず、また二つの動詞句の動作主は一致してい
なければならない。
(9) (連動式) 他 喝酒
喝醉
了。
動詞句1+動詞句2
中国語の結果複合動詞は、歴史的に動詞の並列構造である「連動式」から発展してき
た。梁(2007:73-103)によれば、
「連動式」には、春秋戦国時代から、独立する二つの事象を
おこった時間順に並べる型と、同義の二つの動詞を並べる[他動詞 V1+他動詞 V2 +目的語]
型がみられるという。例を挙げよう。
(10) a.扑灭(撲滅する《尚书・盘庚上》)
2
「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
汉日对比语言学研究(协作)会。北京大学出版社。
b.战败(卫师)
(戦って~を負かす《左传・庄公二十八年》)
c.禁止(事上帝鬼神)
(禁止する《墨子・节葬下》
)
d.刺杀(之)
(刺殺する《战国策・燕策三》)
太田(1958:206-208)によれば、こうした例は、V2 がまだ他動詞であり、隋代以前には、
<殺>と<死>と同義の他動詞・自動詞のペアでは、必ず、<殺>が用いられて、現代中国語の
<殺死>のように、V2 に<死>自動詞が用いられることはなかったという。例えば、
(11) a. 見巨魚, 射殺一魚 (巨大な魚をみ、その一尾を射殺した《史記、秦始皇本紀》)
b. 拔刀刺殺解姊子(刀をぬき解の姉の子を刺殺した《史記、遊侠列傳》)
c. 項梁已擊殺之(項梁はすでにこれを撃ち殺した《史記、李斯列專》
)
(10)(11)のような動詞の時間順の並列構造は、六朝時代に入って、自他両用の能格
動詞から、使役他動詞用法が脱落し始め、V1V2 という結果複合動詞へ発展していくにと
もない、並列構造の V2 が非対格動詞へと固定化されるようになったという。連動式から
結果複合動詞への歴史的変化は、Heine & Hunnemeyer (1991)が指摘するように、
「事象の時
間順並列」が「因果関係」を表す使役起動へと拡張していくという“TIME TO CAUSE
metaphor”がみられる。
2.2 中国語の複合動詞の構造と語順
本節では、中国語の複合動詞全体像と、全体像の中での結果複合動詞の位置づけを示す。
湯(1989:154-151)は、中国語の複合動詞を、その内部構造から、以下のように五分類し
ている。下線をひいたものは、使役起動交替をおこし、起動自動詞用法と使役他動詞用法
の両方を兼ねる能格動詞としての複合動詞である。
(12) a. 「動詞+目的語」型 (Predicate-Object Type ):
种地、结婚、充电、动员
b. 「動詞+結果補語」型 (Predicate-Complement Type):
推开、打破、喊哑
c. 「副詞+動詞」型 (Modifier-Head Type):
迟到、热爱、瓦解
d. 「主語+述語」型 (Subject-Predicate Type):
面熟、头疼、眼熟、性急
e. 「並列型」(Coordinative Type):
发展、改变、成立、丰富、充实
まず、この五種類の複合動詞の語順をみると、全て 2.1 の(1)~(9)でみた中国語の句構造
の語順と合致している。中国語の句構造と複合動詞の構造の関係は以下のようになる。
3
「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
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表 1 中国語の複合動詞の構造と語順
前 項
後 項
統語 関係
1
動詞
目的語
動詞-目的語
2
動詞
結果補語
動詞-結果補語
3
V2 の副詞
動詞
副詞-動詞
迟到/热爱/瓦解/改组
4
主語
動詞
主語-動詞
面熟/头疼/眼熟/性急
動詞 1
動詞 2
並列式
5
例
种地/结婚/充电/动员
推开/打破/喊哑
发展/改变/成立/
丰富/充实
この五種類の複合動詞のうち、中国語の複合動詞形成において最も卓越性を示し、生産性
が高い結果複合動詞は、「動詞+結果補語」型の結果複合動詞であり、句構造における「連
動式」に対応する型である。この型は、<-完:~終える/終わる><-光:~尽くす/尽きる/
きる ><-遍:~尽くす/回る><-尽:~尽くす/尽きる/果たす><-惯:~慣れる/つける><-厌:~飽
きる> <-够:~飽きる>等、日本語の補文関係の複合動詞に対応することが多い。
次に、中国語の結果複合動詞は、事象構造と前項述語と後項述語の組み合わせという視
点からみると、以下のように一般化される。
(13) 結果複合動詞の事象構造及び述語の組み合わせ
前項述語(V1)
+
|
後項述語(V2)
|
a.事象
原因事象又は先行事象
結果事象
b.動詞
他動詞/非能格動詞 / 非対格動詞
非対格動詞 / 形容詞1
前項述語V1は、全ての種類の動詞が担うことが可能である。一方、後項述語V2は、結果
状態を表すために、ほとんどの場合、状態変化を表す非対格動詞または形容詞が担うが、
例外的に、(14d)に示すように、<-会>(~ができる)
、<-懂>(~を理解する)等の状態を表
す他動詞が担う場合もある。
最後に、中国語の結果複合動詞のV1とV2の動詞の特性と組み合わせについて、四種類の
具体例を挙げよう。下線部を引いた複合動詞は、使役起動交替が起こる例である。
(14) a. 動作を表す他動詞+{非対格動詞/形容詞}
喝醉、推开(门)
、打破(窗户)
b. 非能格動詞+{非対格動詞/形容詞}
哭湿(手帕)、喊哑(嗓子)
、坐直(身子)
c. {非対格動詞/形容詞}+{非対格動詞/形容詞}
累坏(身体)、醉倒
d. 動作を表す他動詞+状態を表す他動詞
学会(英语)、听懂(俄语)
1
中国語においては、形容詞、非対格動詞の区別が明確ではない。例えば、<累>は、形容詞につく程度副
詞<很>がついて<很累>といえるので形容詞として機能するのに対し、<我累了>の文では、非対格動詞と
もみなせる。
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中国語の結果複合動詞の V1V2 の特性は、(15)のようにまとめられる。
(15) 中国語の結果複合動詞の V1V2 の特性
a. V1 は、他動詞、非能格動詞、非対格動詞全てのタイプの動詞が生起する。
b. V2 は、(14d)のような<-会><-懂>等の状態他動詞を除き、ほとんどが「状態
を表す{非対格動詞又は形容詞}」である。
3.日本語の複合動詞の構造
3.1 語彙的複合動詞と統語的複合動詞
影山(1993:74-97)では、日本語の複合動詞は、その統語的振る舞いの相違により、語彙的
複合動詞と統語的複合動詞の二種類あり、(16)のように区別されるとしている。
(16) a. 語彙的複合動詞
飛び上がる、押し開く、泣き叫ぶ、売り払う、受け継ぐ、解き放つ、飛び込む、
(隣の人に)話しかける、こびり付く、飲み歩く、歩き回る、踏み荒らす、
誉め讃える、語り明かす、聞き返す、震え上がる、呆れ返る、持ち去る
b. 統語的複合動詞
払い終える、話し終える、しゃべり続ける、食べすぎる、食べそこなう、
助け合う、動き出す、食べかける、しゃべりまくる、走りぬく、数え直す、
見なれる、登りきる、やりつける
影山(1993:74-97)の議論を要約すると、統語的複合動詞と語彙的複合動詞の区別は、以下
表 2 のような意味的・統語的対比に基づく。
表2 日本語の統語的複合動詞と語彙的複合動詞 (影山(1993:74-97)を筆者が要約)
統語的複合動詞
語彙的複合動詞
~終える、~続ける、~すぎる、 飛び上がる、押し開く、泣き
~出す、~直す、~なれる、~
叫ぶ、受け継ぐ、解き放つ、
きる
飛び込む
Ⅰ.前項動詞(V1)と後
・透明かつ合成的
・意味の不透明化や語彙化
項動詞(V2)の意味関係
・V1 が V2 の目的語節の動詞と
・種々雑多な意味関係
なるような補文関係をなす
Ⅱ.生産性
・語彙的な結合制限(他動性調
和の原則)を受けない。
・語彙的な結合制限(他動性
調和の原則等)有。
・辞書への登録必要。
Ⅲ.統語的操作
以下の統語操作が可能
・左の①から⑤の統語的操作
① 代用 ②尊敬語化
のいずれも適用不可能
③ 受身化
④ サ変動詞による置換
⑤ 重複
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3.2 日本語の語彙的複合動詞の意味関係と対応する中国語の複合動詞
本節では、日本語の語彙的複合動詞の意味関係とその語順の類型について、中国語との
対比から考察する。
影山(1993:113 -116 )は、V1 と V2 が表す事象の時間関係という視点から、日本語の語彙
的複合動詞の V1 と V2 の間の意味関係を、①「同時進行」及び②「V1 の表す事象(以降
E1 と表示)が V2 の表す事象(以降 E2 と表示)より先行する場合」に二分し、さらに、
日本語の語彙的複合動詞の意味関係を「語彙概念構造」
(Lexical Conceptual Structure, 以下
LCS と略称)を用いて、
「並列関係」「付帯状況」「手段・様態」関係の三分類を提示して
いる。
(17) 並列関係 (恋い慕う、忌み嫌う、泣き叫ぶ、堪え忍ぶ、恐れおののく)
V1(恋い) + V2(慕う) ⇒ LCS1 AND LCS2
(t1=t2)
(18) 付帯状況 (買い戻す、言い渡す、嘆き暮らす、言い寄る、降り注ぐ)
V1(嘆き) + V2(暮らす) ⇒
LCS2 WHILE LCS1 (t1=t2)
(19) 手段・様態 (押し倒す、切り倒す、掃き清める、薙ぎ倒す、張り倒す、拝み倒す)
V1(押し) + V2(倒す) ⇒ LCS2 BY LCS1 (t1≧t2)
(t1は、LCS1の時間、t2はLCS2の時間を表す。
“t1=t2”はLCS1とLCS2の同時性、
“t1≧t2”はLCS1がLCS2と同時に起こるか、先行することを示す)
由本(1996)では、影山(1993:113 -116 )の分析をさらに精密化し、日本語の語彙的複合動詞
は、①並列関係、②付帯状況・様態、③手段、④因果関係、⑤補文関係の五種類に分類し
ている。以下、この五種類の語彙的複合動詞について考察する。
3.2.1 並列関係の複合動詞
まず、並列関係の意味関係は、由本(2005:108)では、(20)のように形式化されている。
(20) 並列関係 (泣き叫ぶ、忌み嫌う、恐れおののく、恋い慕う)
V1(泣き) + V2(叫ぶ) ⇒[[LCS1] AND [LCS2]]
(t1=t2)
由本(2005:111-112)は、並列関係の動詞の複合について、他動性、動詞の語彙的アスペクト、
時空の共有に関して、全く同じタイプの類義語でなければ、並列関係の解釈が得られない
としている。
中国語のV1V2複合動詞も同様に「並列関係」型が存在するが、日本語の並列型複合動詞
と同様、非常に数が少なく、語彙化している。例えば、<哭喊/哭叫>(泣き叫ぶ)、<嫌恶/
厌恶>(忌み嫌う)
、<{爱/思}慕>(恋い慕う)
、<忍耐>(堪え忍ぶ)、<{请/祈}求>(請い願う)
等が挙げられるが、閉じられた語彙体系であるといえる。この点では、日本語の並列関係
の複合動詞と同じである。
しかし、他動性に関しては、日本語の並列型複合動詞が、同じ他動性の動詞しか組み合
わせることができないという他動性の制約があるのに対して、中国語の並列型複合動詞は、
以下に示すように、こうした他動性の制約が働かない場合がある。というのも、中国語は
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孤立語的特性を備えているため、形態を変えることなく、形容詞・自動詞・他動詞へと、
品詞間や自動詞・他動詞の間で派生がおこるためである。
发生(発生する)、动摇(動揺する/動揺させる)、发展(発展する/発展させる)
、
(21)
改变(変える/変わる)
、停止(停まる/停める)、成立(成立する/成立させる)
、
丰富(豊富である/豊富にする)
、充实(充実する/充実させる)
(21)の中国語の並列型複合動詞の例では、<发生(発生する)>が非対格動詞であるのを除
き、下線をひいた箇所では、全て起動自動詞にも、使役起動他動詞にも用いられ、自他の
形態的相違がない。
3.2.2 付帯状況・様態の複合動詞
次に、付帯状況・様態の意味関係は、E1 が E2 の表す行為・変化進行の際の様態を表し
ている。由本(2005:108)では、(22)のように形式化されている。
(22) 付帯状況・様態(持ち寄る、遊び暮らす、すすり泣く、はい寄る)
V1(持ち) + V2(寄る) ⇒ [LCS2]
(t1=t2)
WHILE [LCS1]
さて、付帯状況・様態型の複合動詞は、
「持ち寄る、這い寄る、忍び寄る、飲み歩く、食
べ歩く、売り歩く、探し回る、聞き回る、買い回る、持ち去る、飛び去る、走り去る、滑
り降りる、舞い降りる、転げ落ちる、舞い落ちる」等、移動に関わる V2 の様態を表す場
合が多い。松本(1997:145)では、
「移動の様態+方向性/経路位置関係」の組み合わせの複合
動詞として、以下のようなリストを挙げている。
(23) 「移動の様態+方向性」
a.
~上がる:駆け上がる、這い上がる、舞い上がる、跳ね上がる
b.
~降りる:飛び降りる、滑り降りる、舞い降りる
c. ~落ちる:滑り落ちる、転がり落ちる、流れ落ちる、舞い落ちる
d.
~戻る:駆け戻る、舞い戻る
(24) 「移動の様態+経路位置関係」
a.~出る:這い出る、転がり出る、飛び出る、流れ出る
b.~出す:飛び出す、逃げ出す
c.~込む:駆け込む、飛び込む、流れ込む
d.~回る:歩き回る、走り回る、駆け回る、這い回る、跳ね回る、転がり回る、
e.~去る:走り去る、飛び去る、流れ去る
f.~着く:泳ぎつく、流れ着く
g.その他:駆け抜ける、飛び越える、走り過ぎる
中国語においても、
「移動の様態+方向性/経路位置関係」の複合動詞は、
「方向補語」と
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して、非常に生産的に形成される。
(25) 「移動の様態+方向性」
a.
~上(~上がる):跑上(駆け上がる)
、爬上(這い上がる)
、{飞/飘}上(舞い上が
る)
、跳上(跳ね上がる)
b.
~下(~降りる):跳下(飛び降りる)、滑下(滑り降りる)、{飞/飘}下(舞い降り
る)
c. ~落(~落ちる):滑落(滑り落ちる)
、滚落(転がり落ちる)、流落(流れ落ちる)、
{飞/飘}落(舞い落ちる)
d. ~(~戻る):跑回(駆け戻る)、{飞/飘}回(舞い戻る)
(26)
「移動の様態+経路位置関係」
a. ~出(~出る):爬出(這い出る)
、滚出(転がり出る)
、飞出(飛び出る)
、
流出(流れ出る)
b. ~出(~出す):飞出(飛び出す)
、逃出(逃げ出す)
c. ~进(~込む):跑进(駆け込む)
、飞进(飛び込む)
、流进(流れ込む)
d.
到处 V1/V1 来 V2 去(~回る)
: 到处走/走来走去(歩き回る)
、
到处跑/跑来跑去(走り回る/駆け回る)
e. ~开/走/去(~去る)
:跑{开/走/去}(走り去る)
、飞{开/走/去}(飛び去る)、
流{开/走/去}(流れ去る)
f. ~到(~着く):游到(泳ぎつく)
、流到(流れ着く)
g.その他:~过/越(~抜ける/越える/過ぎる)跑过(駆け抜ける/走り過ぎる)、
飞{过/越}(飛び越える)
(25)(26)の中国語の対応例をみると、(26d)の「歩き回る」タイプを除いて、以下のような
整然とした V2 の日中語間の対応がみられる。
(27) a. ~上がる → <~上> / b.~降りる → <~下>
c. ~落ちる → < ~落>/ d. ~戻る → <~回 >
e. ~出る/出す→ <~出 >/f. ~込む → <~进>
g. ~去る → < ~开/走/去>/h. ~着く→ < ~到 >
i. ~抜ける/越える/過ぎる→ <~过/越>
ここで注意すべき点は、
「~回る」に対応する中国語の複合動詞が存在しないという現象
である。これは、
「~回る」が「あちこち V1 する」という行為のみを表し、
「完結性」(telicity)
をもたないからである。一方、(27)に挙げた V2 は、確かに方向や経路位置関係という意味
を担っているが、事象の完結性を内包する「到達動詞」(achievement verb)でもあり、結果
性を表している。これは、中国語の V1V2 複合動詞が、並列型を除いて、V2 に結果性が認
識されないと、成立しないことが示唆される。
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3.2.3 手段の複合動詞
「手段」を表す意味関係は、由本(2005:108)では、(28)のように形式化されている。
(28) 手段 (切り倒す、吸い取る、勝ち取る、泣き落とす、言い負かす)
V1(切り) + V2(倒す) ⇒
LCS2
(t1≧t2)
BY LCS1
中国語の結果複合動詞は、V2 はごくわずかの例外2を除き、非対格自動詞か形容詞に限
られていて、日本語のように「手段」という意味を設定する必要性はない。例えば、日本
語で「手段」型複合動詞は、中国語では以下の(29)のように V2 が非対格自動詞であり、実
際には、次に述べる第四の型、
「因果関係」の複合動詞に対応している。
(29) 砍倒(切り倒す)
、踢倒(蹴り倒す)
、喝 he{光/干净}(飲み切る、飲み干す)、
哭肿(泣き腫らす/泣き腫れる)
、说倒/驳倒/说服(言い負かす)
(29) のような「手段」型 LCS は、日本語の形態統語論的な制約、即ち「他動詞+他動詞」
又は「自動詞+自動詞」という組み合わせがデフォルトである、という形態統語的原則を
反映した日本語の個別言語的な LCS であるといえよう。
3.2.4 因果関係の複合動詞
「因果関係」を表す意味関係は、由本(2005:109)では、(30)のように形式化される。
(30) 因果関係(遊びくたびれる、泣きぬれる、溺れ死ぬ、焼け死ぬ、流れ着く)
V1(溺れ) + V2(死ぬ)⇒ LCS2
(t1≧t2)
FROM LCS1
同じ「原因-結果」という意味関係をもつと考えられる「手段」の意味関係と異なる点
は、V1にLCS2という結果をもたらす意図性がない、という点である。こうした場合に、
「手
段」の意味関係のLCSのように、BYという意味関数を使うのは適切ではないため、新たに
意図性をもたないFROMという関数を用いている。中国語においては、V1V2複合動詞の典
型例で最も生産性が高い型が、この「因果関係」型となる。LCS1がLCS2の結果を意図して
いない中国語の複合動詞の例を日本語の対応する「因果関係」型の複合動詞と対応させな
がら挙げると以下のようになる。
(31) a. 遊び疲れる/玩累、b. 飲み潰れる/醉倒、c. 溺れ死ぬ/淹死
d. 抜け落ちる/脱落、e. 焼け死ぬ/烧死
2
<输~に負ける, 赢~に勝つ, 会~ができる, 懂~がわかる>といった限られた他動詞が V2 にくること
があるが、いずれも状態他動詞である。
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3.2.5 補文関係の複合動詞
影山(1993:108-111)は、補文関係の意味関係をもつ語彙的複合動詞として、以下のよう
な例を挙げている。
(32) a. ~上げる/上がる(完了)
:
歌い上げる、洗い上げる、鍛え上げる、磨き上げる
b. ~払う(完全にその状態にある)
:
落ち着き払う、酔っ払う、出払う
c. ~渡る(隅々まで及ぶ)
:
響き渡る、晴れ渡る、澄み渡る、知れ渡る、鳴り渡る、行き渡る、冴え渡る
d. ~違う(動作を間違える):
聞き間違う、掛け違う
e. ~違う(動作が一致しない):
入れ違う、行き違う、すれ違う
f. ~逃がす(不成功)
:
見逃す、取り逃がす
さ
g. ~止す(中途放棄)
:
言い止す、食い止す、読み止す
f. ~果たす(完遂)
:
使い果たす、討ち果たす
h.~漏らす(失敗)
:
書き漏らす、聞きもらす
j. ~付く(着手)
:
寝付く、居付く、住み付く
k. ~落とす(不成功)
:
言い落とす、書き落とす、聞き落とす、見落とす、釣り落とす、取り落とす
l.
~交わす(動作のやりとり)
:
言い交わす、呼び交わす、見交わす、酌み交わす、取り交わす
m. ~習わす(習慣)
:
言い慣わす、書き習わす、呼び習わす
n. ~返る(完全にその状態になる)
:
沸き返る、しょげ返る、静まり返る、呆れ返る
しき
o.~頻る(事象の継続):
鳴き頻る、降り頻る
p.~こなす(習熟)
:
使いこなす、歌いこなす、着こなす、弾きこなす、読みこなす、乗りこなす
影山(1993:141-143)は、補文関係の複合動詞は、V2 が他動詞で目的語節を補文にとる場
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「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
汉日对比语言学研究(协作)会。北京大学出版社。
合と、V2 が意図性を含まない非対格動詞で主語節を補文にとる場合とで、異なる統語構造
をもつとしている。例えば、他動詞構文「学生たちが答案を書き上げる」は、以下のよう
な「他動詞型補文構造」をもつと想定される。
(33)
後項動詞が目的語補文をとる場合の句構造:他動詞型補文構造
VP2
V’2
NP2
|
学生たち i が
VP1 =V2 の補文
V2
V’1
NP1
|
PROi
NP
V1
|
|
答案を
-上げる
書き
(33)では、V2「-上げる」は、
「学生たち」という主語と、
「学生たちが答案を書く」という
目的語補文をとる構造となっている。
次に、主語節を補文にとる非対格自動詞構文「空が澄み渡る」は、(34)のような「非対
格型補文構造」をもつと想定される。
(34)
後項動詞が主語補文をとる場合の句構造:非対格型補文構造
VP2
V’2
NP2
VP1 =V2 の補文
V2
V’1
NP1
NP
V1
|
|
空が
わたる
澄み
V1「澄む」は非対格動詞であるため、その主語「空」は、その姉妹位置に生成すると想定
されている。また、V2「-わたる」も、非対格動詞であるため、その主語補文「空が澄む」
は、その姉妹位置に生成する。
中国語においては、補文構造は複合動詞として具現化するだろうか?
結論をいうと、
LCS2 が結果事象として認識されうる場合に限ってのみ、[LCS2...[LCS1]...]というような補
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文構造が中国語の複合動詞にも想定しうる。由本(2005)が挙げている日本語の補文関係の
語彙的複合動詞を例にして考えると、(35)に示すように、中国語においても結果複合動詞
が対応する場合が多い。
(35) a. 鳴り渡る:响遍/响彻
d. 書き落とす:写漏
b. 知れ渡る:传遍
c. 見逃す:看漏
e. 見落とす:看漏
f. 使い果たす:用尽/用光
g. 呼び慣わす:叫惯
(35)の V2 部分は、以下に示すように、中国語においてはかなり生産力の強い結果複合動
詞の V2 となる。
(36) a. ~遍: ~ということがあまねく行き渡る
b. ~漏: ~ということが抜け落ちている
c. ~尽: ~ということをし尽くす
d. ~光:(あるものを使った)結果、あるものが少しも残っていない
e. ~惯:
(ある行為の結果、その行為に)慣れる。
しかし、
「読みかける」
「読みさす」
「読み続ける」など、アスペクトに関わる V2 で、事
態全体が完結性をもたない場合は、中国語では複合動詞になることはできず、
「読むことを
始める」
「途中まで読んでやめる」
「読むことを続ける」というような動詞句としてしか表
せない。なぜなら、中国語の複合動詞の典型として、V2 が結果事象を表す述語でなければ
ならないという原則が働くからである。
3.2.6 「先行事象-結果事象」の複合動詞
日本語の複合動詞の意味関係として、このほか「先行事象-結果事象」型がある。
「~残
す」「~残る」がその例である。松本(1998)は、「~残す」「~残る」を、「前項動詞が後項
動詞の背景的情報を示し後項動詞が意味的主要部になる」タイプと述べている。対応する
中国語を併記しながら具体例をみよう。
(37)
V2 が「残存」の意を表す場合:
a.「~残す」
: 食べ残す/吃剩(下)、積み残す/装剩(下)、やり残す/做剩(下)
b.「~残る」
: 売れ残る /卖剩(下)、焼け残る/烧剩(下)、消え残る/还没完全消失
溶け残る/还没完全{融化/溶化}
「~残す」及び「~残る」は、V1 で表される行為又は非対格現象が起こった結果、対象が
残って存在する、という意味を表す。例えば、「子供はご飯を食べ残した」は、「子供がご
飯を食べる」という出来事を「残した」
(未遂に終わった)という意味ではなく、
「子供が
ご飯を食べた」結果として、
「ご飯が残っている」という意味で、以下のような LCS が想
定される。
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(38) [[xi] CONTROL[[xi] EAT
[yj]]] RESULT IN [[yj] BE AT-LEFT]]
意味述語 RESULT IN は、LCS1 が先行事象で、偶発的な結果として LCS2 が連結されて
いることを示す。このタイプの LCS の合成を一般化して書くと、以下のようになる。
(39)
LCS1
RESULT IN
LCS2
(t1≩ t2)
(39)は、先行事象と結果事象が、時間順に連結されることを表示している。
ここで、中国語との対比の上でもう一点、注目すべき点を挙げておきたい。中国語にお
いても、結果複合動詞のV2として生産性が高い動詞として、<~剩(下)>(「残る」という自
動詞に相当)がある。しかし、日本語の複合動詞と対応するのは、全て、V1が他動詞のと
きのみである。
「売れ(自動詞)+残る(自動詞)」の組み合わせに対応するのは、<卖(他
動詞)剩下(自動詞)>、「焼け(自動詞)+残る(自動詞)」に対応するのは、<烧(他動詞)
+剩下shengxia(自動詞)>であり、日本語では、V1は他動詞である。V1に非対格動詞が来
る場合、例えば<*消(自動詞)+剩下(自動詞)>(消え残る)というような複合動詞は中
国語では、できない。それは、中国語において、非対格事象をLCS1にとり、RESULT INで
単純な時間的先行関係を以って連結するような合成が有り得ない、ということを示唆する。
これは、中国語の結果複合動詞の典型的な概念鋳型が、以下のような使役状態変化型であ
ることと深く関連する。
(40) 中国語結果複合動詞における典型:使役状態変化の語彙概念構造
[x ACT ON y ] CAUSE
[y BECOME [BE AT-z]]
さらに、中国語においては、
「結果述語 V2 が叙述するのは、V1 の目的語(内項)であ
る」という、
「内項制約」が卓越しており、この「内項制約」
(影山 2001:162,「直接目的語
制約」Simpson1983, Levin and Rapparport Hovav1995)が、V1 が非対格自動詞である場合を
許さない要因と思われる。
3.3 日本語の統語的複合動詞
先に、語彙的複合動詞における補文関係の複合動詞を考察したが、影山(1993:96)は、統
語的複合動詞は、
すべて補文関係の複合動詞であるとして、以下のような例をあげている。
(41) a. 始動:~かける、~だす、~始める
b. 継続:~まくる、~続ける
c. 完了:~終える、~終わる、~尽くす、~きる、~通す、~抜く
d. 未遂:~そこなう、~損じる、~そびれる、~しかねる、~遅れる、~忘れる、
~残す、~誤る、~あぐねる
e. 過剰行為:~過ぎる
f. 再試行:~直す
g. 習慣:~つける、~慣れる、~飽きる
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h. 相互行為:~合う
j. 可能:~得る
影山(1993:141-143)は、補文関係の統語的複合動詞は、語彙的複合動詞における補文関係
と同様、V2 が他動詞で目的語節を補文にとる場合と、V2 が意図性を含まない非対格動詞
で主語節を補文にとる場合とで、異なる統語構造をもつとしている。まず、
「小坊主が除夜
の鐘をつき終えた」は、以下のような「他動詞型補文構造」をもつと想定される。
(42) 後項動詞が目的語補文をとる場合の句構造:他動詞型補文構造
VP2
V’2
NP2
|
小坊主 i が
VP1 =V2 の補文
V2
V’1
NP1
|
PROi
NP
V1
|
|
除夜の鐘を
終えた
つき
(42)では、V2「~終える」は、
「小坊主」という主語と、
「小坊主が除夜の鐘をつく」とい
う目的語補文をとる構造となっている。
さらに、非対格自動詞構文「除夜の鐘が鳴りかけた」は、(43)のような「非対格型補文
構造」をもつと想定されている。
(43)
VP2
V’2
NP2
VP1 =V2 の補文
V2
V’1
NP1
NP
V1
|
|
かけた
除夜の鐘が 鳴り
V1「鳴る」は非対格動詞であるため、その主語「除夜の鐘」は、その姉妹位置に生成する
と想定されている。また、V2「-かける」も、非対格動詞であるため、その主語補文「除夜
の鐘が鳴る」は、その姉妹位置に生成する。
また、
「小坊主が除夜の鐘をつきかけた」も、「小坊主が除夜の鐘をつく」は他動詞文で
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あっても、始動の意味の V2「-かける」は、意図性を含まず、非対格動詞とみなせるため、
(44)に示すように、(43)と同様の非対格型補文構造をとるとされる。
(44)
VP2
V’2
NP2
VP1 =V2 の補文
V2
V’1
NP1
|
小坊主が NP
V1
|
|
除夜の鐘を
かけた
つき
3.4 日本語の複合動詞の構造と語順
以上、日本語の語彙的複合動詞及び統語的複合動詞の類型を考察したが、日本語の統語
構造と複合動詞の語順の関連性という観点から捉えなおしてみると、次の表 3 のようにま
とめられる。表 3 は、日本語の複合動詞には、日本語の統語構造を反映した語順以外に、
時間順原則を反映した「因果関係」及び「先行-結果」関係の複合動詞が存在することも
示している。
表 3 日本語の語彙的複合動詞の構造と語順
V1
1
統
V2 の
V2
主動詞
統語関係
副詞-動詞
副詞成分
意味関係
1.付帯状況・様態の複合動
詞
持ち寄る、飲み歩く、探し
語
回る、聞き回る、持ち去る、
滑り降りる、転げ落ちる
的
2.手段の複合動詞
切り倒す、吸い取る、勝ち
語
取る、泣き落とす、言い負
かす
順
2
V2 の主語節
主動詞
主語節-動詞
3.主語補文関係
~かける、~だす、~過ぎ
る、~得る
3
V2 の目的語
主動詞
目的語節-動詞
節
4.目的語補文関係
~終える、~忘れる、~誤
る、~直す、~慣れる
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時
4
間
V2 の原因事
結果事象
5. 因果関係
象
を表す
遊びくたびれる、泣きぬれ
順
る、溺れ死ぬ、焼け死ぬ、
語
流れ着く
順
5
V2 の先行事
結果事象
象
を表す
6.「先行-結果」関係
~残る/残す
4. 日本語の補文関係型複合動詞に対応する中国語の結果複合動詞
日本語において最も生産性が高く、卓越した複合動詞の類型は、補文関係の複合動詞で
あるが、中国語には補文関係の複合動詞が存在するのだろうか。結論を先に述べれば、中
国語には、主語節を補文にとる「主語補文」型複合動詞は日本語と同様、存在するが、目
的語節を補文にとる「目的語補文」型複合動詞は存在しない。日本語と中国語におけるこ
の相違は、日本語が OV 語順であるのに対して、中国語が VO 語順であることと深い関連
がある。しかし注意すべき点は、中国語において「主語補文」型複合動詞が存在するとい
っても、結果複合動詞という性質をまず備えていなければならない、という点である。
4.1. 中国語における主語補文型結果複合動詞
中国語における主語補文型結果複合動詞には、意味的に、
「評価」
「完結性」
「程度の極限」
の三種類がある。まず、 V2 が主語節に対する評価形容詞となる例を挙げる。
(45) 先行事象に対する評価3:
a. 「~誤る」
:<-错>(~誤る)
、<-对>(~が正しい):
例:有的问题他处理对了,有的处理错了。(≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(ある問題は、彼はきちんと処理したが、ある問題は、処理を誤った。)
b. 「~過ぎる」
:<-多/少> (多過ぎる、少なすぎる)、<-早/晚> (早すぎる、遅すぎる)、
<-长/短>(長すぎる、短すぎる):
例: 我因为起晚了,所以没赶上汽车。(≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(私は起きるのが遅かったので、バスに乗り遅れた。)
c. 「~足りる」
:<-够> (~足りる、~尽くす)
例:这个老人尝够了没有文化的痛苦了。(≪汉语动词-结果补语搭配词典≫)
(この老人は教育を受けていない辛さを味わい尽くしている。)
次に、V2 が主語節に「完結性」を与える場合の例を挙げる。
3詹(2011)は、この評価型複合動詞を“主観評価型”結果複合動詞と呼んでいる。また、陆(1990,
2001) 及
び马・陆(1997)は、
「~過ぎる」に当たる中国語の評価型複合動詞を、‘偏离义’(逸脱の意味)を持つ複合
動詞として、<买贵>(買った結果、値段が高過ぎた)、<吃多>(食べ過ぎる)
、<来早>(来るのが早すぎる)
、
<起晚>(起きるのが遅すぎる)
、<挖浅>(掘った穴が浅すぎる)等の例を挙げている。
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(46) V2 が主語節に「完結性」を与える場合:
a. 「~終わる」
:<-完>
例:我写完论文了。(私は論文を書き終えた。)
b. 「~上げる/上がる」
:<-好>
例:我们的旅程早已安排好了。(≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(私たちの旅程は、とっくに組み上げてある。)
最後に、V2 が主語節に対して、完結性以外に、「程度の極限」に達しているという意味
を与える場合の例を挙げよう。
(47) 「程度の極限」
:
a.「~渡る」
:<-遍>
例:这份广告传单在城里都传遍了。(≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(この宣伝チラシは、街中に行き渡った。)
b. 「~尽くす」:<-尽>
例:他这一生受尽了各种苦难。(≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(彼は生涯でさまざまな苦難を味わい尽くした。)
中国語においても、日本語と同様、主語補文型の結果複合動詞が存在する要因を考える
と、いずれも、
「主語+述語」という語順の主述構造が複合動詞に反映されていることが示
唆される。
4.2 中国語における目的語補文型結果複合動詞
中国語は、日本語と同様、主語補文型の結果複合動詞が存在する一方で、目的語補文型
複合動詞は存在しないように思われる。以下、日本語の目的語補文型複合動詞が中国語で
はどのように表されるかについて考察してみよう。
例えば、始動、継続、未遂、再試行を表す目的語補文型複合動詞は、中国語においては、
(48)に示すように、[VPV2+[IP …V1…]]という目的語節をとる動詞句か、[IP 没能 [VP…V1
…]]のように過去の不可能な事態を表す助動詞文に対応し、複合動詞には対応していない。
(48) a. 「~始める」
([VP 开始
[IP…V1 …]])
b. 「~続ける」
([VP 继续 [IP…V1 …]])
c. 「~損なう/損ねる」
([IP 没能 [IP…V1 …]])
d. 「~忘れる」
([VP 忘
e. 「~直す」
([VP 重新 [IP…V1 …]])
[IP…V1 …]])
ここで、一見目的語補文をとるようにみえる<-定>という複合動詞を考えたい。
(49) a. 这本书我是用定了, 你找别的书吧。(≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(この本は、私が使うことに決めたから、他の本を探して。)
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b.这个角色我演定了,谁也别跟我抢。 (≪现代汉语述补结构用法数据库≫)
(この役柄は、演じることに決めたわ、誰も奪うことはできない。)
<-定>は、日本語に翻訳すると、
「~することを決めた」という意味になり、目的語補文を
とるようにみえる。しかし、中国語の結果複合動詞は、V2 に<-懂>、<-会>といった状態
他動詞を例外的にとる以外は、基本的に非対格動詞又は形容詞しかとることができないと
いう事実から考えると、<-定>は、
「~することになっている」という意味であり、主語補
文をとる結果複合動詞と分析される。
では、
中国語はなぜ目的語補文をとる複合動詞がないのだろうか?例えば、
「書き忘れる」
に対応する中国語として、なぜ<*忘写,
[忘れる+書く]>という複合動詞が不可能なのだ
ろうか?
その理由として、第一に、中国語においては、事象を時間順の語順で複合動詞を形成す
る因果関係型、或いは「先行-結果」語順型が、優先順位が最も高い複合動詞の型であるこ
とが挙げられる。第二に、中国語では、動詞の後置成分として、目的語以外に、補語(結
果補語、方向補語、可能補語、程度補語、数量補語)が置かれるという統語的要因が挙げ
られるであろう。以下に示すように、目的語と補語が共起する場合、動詞の後ろに隣接す
る位置に来るのは、補語であり、目的語は、<把~>という目的語を前置する前置詞を伴っ
て動詞の前に移動し、動詞直後の位置を補語に譲るという現象がある。
(50) a. 把事情办完。
b. 把他叫进来。
c. 把话又说了一遍。
中国語においては、目的語と補語が共起する場合、<‘把 ba’目的語+動詞+補語>とい
う語順となり、目的語よりも補語のほうが動詞の後に置かれる優先順位が高いという現象
があるのである。これは、OV 語順、主要部右側型の日本語では起こり得ない現象である。
こうした中国語の目的語に関わる現象が、目的語補文をもつ複合動詞が存在しないことと
深く関わっていることが示唆される。
5. 語順からみた日本語と中国語の複合動詞
日本語と中国語の複合動詞の語順には、並列型を除き、二種類の原則がある。第一の原
則は、
「句構造における語順が、複合動詞の語順にそのまま反映される」という「句構造と
語構造の一致原則」である。第二の原則は、
「事象の起こった順に動詞を並べる」という、
時間順と語順の間にみられる「表象性」(iconicity)に帰結される「時間順原則」(Tai 1985)
である。
日本語も中国語も、複合動詞の語順には、両方の原則が働いている。日本語においては、
「句構造と語構造の一致原則」が最も卓越性をもつ一方で、中国語においては、
「時間順原
則」が最も卓越性をもつ。
中国語において「時間順原則」が「句構造と語構造の一致原則」よりも卓越性をもつと
いう特徴を最も端的に示す例は、補文関係をもつ結果複合動詞の語順においてみられる。
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「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
汉日对比语言学研究(协作)会。北京大学出版社。
例えば、<腻吃(食べ飽きる)>、<跳烦(踊り飽きる)><穿惯(はき慣れる)>は、前項述語が表す
事象が時間的に先に起こり、後項述語が表す事象が時間的に後に起こる結果事象である。
中国語の動詞句は、VO 型語順で主要部が左にあるから、動詞句の主要部と補文の語順
が、複合動詞にも反映されるのであれば、複合動詞の語順は、<*腻吃(食べることに飽きる)>、
<*烦跳(踊ることに飽きる)>、<*惯穿(履くことに慣れる)>、のように、補文を表す部分が
後に来るはずである。これは、例えば「返事を出し忘れた」は、中国語では、複合動詞で
表現不可能なため、[vp 忘了 le [ IP 回信] ]と、
「動詞+目的語節」の語順で表すしかないこと
からも予測できる。しかし、実際には、<吃腻><穿惯><跳烦>では、動詞句の語順が複合動
詞の語順を決めているのではなく、時間順が複合動詞の語順を決めていることになる。
日本語の動詞句は、OV 型語順で、主要部が右にあり、統語的にも「目的語補文+主要
部動詞」という語順となるが、こうした統語的語順が、複合動詞にも反映され、時間順に
とらわれない多様な補文関係の複合動詞を形成するのである。
日本語と中国語における句構造及び複合動詞の語順原則と原則の優先順位について対比
させて本稿の結論とする。
表 4 日本語と中国語における句構造、複合動詞の構造と語順原則
日本語
1. 動詞句の構造
2.複合動詞の語順
中国語
1. OV 語順
1. VO 語順
2. 動詞句:
2. 動詞句:
主要部右
主要部左
動詞の後に結果述語は
動詞の後に結果述語が
許されない。
おかれる。
1.「句構造と語構造の一致
原則の優先順位
1.「時間順原則」
原則」
結果複合動詞の卓越性
→補文関係の複合動詞が卓
e.g. <吃腻>、<穿惯>
越
→目的語補文型複合動詞は
存在しない。
e.g.「書き忘れる」
「早過ぎる」
<
2. 「時間順原則」
<*
*腻吃(食べることに飽きる)
*惯穿(履くことに慣れる)
2. 「句構造と語構造の一致原
e.g.
・因果関係:溺れ死ぬ
則」→ 目的語補文型はないが、
・先行-結果関係: 食べ残す
売れ残る
主語補文型は存在する。
e.g. <-错>、<-多>、<-少>、
<-完>、<-遍>
使用コーパス
《汉语动词-结果补语搭配词典》1987. 王砚农・焦 群・庞颙编. 北京语言学院出版社.
《现代汉语述补结构用法数据库》2009. 早稲田大学砂岡和子研究室・北京大学中文系詹卫
19
「日本語と中国語の複合動詞の語形成」(2011)『汉日语言对比研究论丛第二辑』2巻, 46--72,
汉日对比语言学研究(协作)会。北京大学出版社。
东研究室共同制作。以下のサイトで閲覧可能。
http://ccl.pku.edu.cn/vc/
参考文献
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上海:学林出版社。
陆俭明(1990) < “ VA 了”述补结构语义分析>, ≪汉语学习≫.1990 年第 1 期。
陆俭明 (2001) < “ VA 了”述补结构语义分析补义>,≪汉语学习≫. 2001 年第 6 期。
马真・陆俭明(1997) <形容词作结果补语情况考察>,≪汉语学习≫.1997 年 1 ,4,6 期。
湯 廷池 (1989) 「詞法與句法的相關性:漢,英,日三種語言複合動詞的對比分析」,『漢語詞
法句法續集』, 147-211, 臺灣學生書局。
詹卫东 2011(近刊) <复合事件的语义结构与现代汉语述结式的成立条件分析>,
≪词-语界面 - 前沿研究及应用≫, 北京大学出版社。
太田辰夫(1958) 『中国語歴史文法』, 江南書院。
影山太郎(1993) 『文法と語形成』, ひつじ書房。
申亜敏(2005)「中国語の自他と結果表現類型」影山太郎編『レキシコンフォーラム No.1
pp.229-237. ひつじ書房.
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