対セルビア共和国 国別援助方針(案)

対セルビア共和国 国別援助方針(案)
2015 年 4 月
1. 援助の意義
セルビアは,2008 年の世界金融危機および 2009 年のギリシャ財政危機の影響を
受け,2009 年にはマイナス成長(-3.5%)を経験した。2009 年から国際通貨基金
(IMF)等の支援を受け,財政改革や国営企業の民営化を進め,生産活動の回復,財
政赤字の縮小等,経済は回復の兆しを見せているところ,更なる経済成長のためには
民間セクター開発が重要な課題となっている。
セルビアは,EU 加盟を最大の目標としており,2012 年に EU 加盟候補国に認定さ
れ,2014 年 1 月に加盟交渉が開始された。かかる背景の下,同国は,行政運営基盤
の強化および持続可能な社会経済成長を国家開発目標としており,民間セクターの競
争力の強化や環境保全などを重点分野として掲げている。
我が国が同国の EU 加盟に向けた取組を支援していくことは,これまでの我が国の
支援に対する同国国民の高い評価と親日感情等を背景とする我が国と同国との伝統
的な友好関係を一層強化することに加え,同国のみならず,西バルカン地域の安定に
とっても極めて重要である。
2. 援助の基本方針(大目標):持続可能な経済成長の促進支援
民間セクター開発や環境保全といった我が国の優れた技術や知見を活用できる分
野を中心に,セルビアの持続可能な経済成長及び同国の EU 加盟に向けた取組を支援
する。また,周辺諸国と共通する課題については,地域協力による取組を支援する。
3. 重点分野(中目標)
(1)民間セクター開発
セルビアの経済成長のためには民間セクターの開発が重要な課題となっている。我
が国としては,投資促進に向けて,中小企業振興や観光振興等の分野において,我が
国の有する技術と知見を活用した支援を行っていく。
(2)環境保全
同国は,経済成長の一方で環境対策に遅れをとっており,EU 加盟に向けて,環境
分野で EU が定める様々な基準を達成するための更なる取組が喫緊の課題となってい
る。我が国の有する技術と知見を活用した,大気汚染対策や下水道整備等の分野にお
いて支援を行っていく。
(3)保健医療・教育
同国による都市部と地方部との間の経済社会サービスの格差是正に向けた取組を
支援する。具体的には,保健医療および教育分野を中心に,女性・児童を含む社会的
弱者が直接裨益する支援を行っていく。
4. 留意事項
援助の実施に際しては,過去の紛争の経緯から民族間の関係性に配慮する必要があ
る。
また,同国経済は EU 経済への依存度が高いため,EU 経済の動向が同国に及ぼす
影響にも留意する必要がある。
(了)
別紙: 事業展開計画
国別援助方針 別紙
対セルビア共和国 事業展開計画
2015年 4月 現在
基本方針
(大目標)
重点分野1
(中目標)
持続可能な経済成長の促進に向けた支援
民間セクター開発
【現状と課題】
【開発課題への対応方針】
セルビアは,EU加盟に向けて,国内の諸改革および経済開発に取り組んでいるものの,財政赤字や高い失業率を 本分野では,これまでも民間セクターの開発に向けて、専門家派遣や研修員受入を中心に
抱えており,今後の経済成長のためには民間セクターの開発が重要な課題である。
協力を進めてきているところ,今後も中小企業振興や観光振興等の分野における我が国の
知見を活用した協力により投資促進の支援を行っていく。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
備考
2013
年度以前
開発課題
(小目標)
西バルカン地域(セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ)にお
ける中小企業メンターサービス構築・普及促進プロジェクト
支援額
スキーム
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
(億円)
3か国広域協力(モ
ンテネグロ、ボスニ
ア・ヘルツェゴビ
ナ)
技プロ
民間セクター開発
観光振興
国別研修
市場経済主義にのっとり,投資・輸出
民間セクター開発プ 促進等の課題に取り組み,民間セク
生産管理
ログラム
ターの開発を通じたセルビアの経済成
長に寄与する。
SV
投資促進アドバイザー
個別専門家
民間セクター開発プログラム関連課題別研修等
重点分野2
(中目標)
課題別研修他
環境保全
【現状と課題】
【開発課題への対応方針】
セルビアは,EU加盟に向けて,環境分野でEUが定める様々な基準を達成するための更なる取組が喫緊の課題と 環境保全は日本に比較優位のある分野であり,大気汚染対策や上下水道管理等の分野にお
なっている。
いて,我が国の技術及び知見を活用した支援を行っていく。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
備考
2013
年度以前
ニコラテスラ火力発電所排煙脱硫装置設置事業
開発課題
(小目標)
エネルギー消費セクターにおけるエネルギー管理制度拡大支援プロジェクト
支援額
スキーム
有償
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
(億円)
282.5
技プロ
環境保全
環境保全プログラム
環境問題の解決に向けて、各種支援を
実施する。
持続可能な資源開発実現のための空間環境解析と先進金属回収の融合システム
研究プロジェクト(SATREPS)
草の根・人間の安全保障無償資金協力(環境)
環境保全分野課題別研修等
日本方式普及ノン・プロジェクト無償資金協力(次世代パッケージ)
科学技術
3.00
草の根無償
0.29
課題別研修他
ノンプロ
5.00
重点分野3(中
目標)
保健医療・教育
【現状と課題】
【開発課題への対応方針】
セルビアでは都市部と地方との間の経済社会サービスの格差が課題となっており、同国はそれら格差の是正に向け 保健医療および教育分野を中心に社会的弱者が直接裨益するような支援を,引き続き行っ
た更なる取組が必要である。
ていく。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
プロジェクト名
備考
2013
年度以前
開発課題
(小目標)
国家乳がん対策プログラム改善プロジェクト
医療・教育サービ
スの向上
草の根・人間の安全保障無償資金協力(医療・教育等)
保健医療および教育分野を中心に,格
医療・教育サービス
差是正支援や社会的弱者に直接裨益す
の向上プログラム る支援を実施する。
医療・教育分野課題別研修等
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
教育・文化分野シニア海外ボランティア
中小企業ノン・プロジェクト無償資金協力
技プロ
草の根無償
0.55
日本語教育,剣道
SV
草の根文化
0.14
ノンプロ
2.00
スポーツセンター改
修
その他
【現状と課題】
【開発課題への対応方針】
実施期間
開発課題
(小目標)
(億円)
課題別研修他
草の根文化無償資金協力
重点分野4
(中目標)
支援額
スキーム
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
支援額
スキーム
備考
2013
年度以前
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
(億円)
その他
行政管理能力向上分野課題別研修
ガバナンス,情報通
信,地域開発
課題別研修他
草の根・人間の安全保障無償資金協力(社会福祉)
草の根無償
スメデレボ市ラーリャ地区,ベオグラード市カルジェリッツァ地区の子供たち
への心理社会支援事業
草の根技協
0.06
【凡例】 「協準」(=全ての協力準備調査)、「詳細設計」(=詳細設計)、「技プロ」(=技術協力プロジェクト)、「開発計画」(=開発計画調査型技術協力)、「個別専門家」、「個別機材」、「国別研修」、「課題別研修他」(=課題別研修及び青年研修)、「JOCV」(=青年海外協力
隊)、「SV」(=シニア海外ボランティア)、「第三国専門家」、「第三国研修」、「現地国内研修」、「科学技術」(=科学技術協力(技プロ型及び個別専門家型))、「草の根技協」(=草の根技術協力)、「○○省技協」(=外務省・JICA以外の省庁及び独立行政法人等が実施している技
術協力)、「民間提案型技協」(=開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業)、「無償」(=以下に特記するサブスキームを除く全ての無償資金協力)、「ノンプロ」(=ノン・プロジェクト無償及び中小企業ノン・プロジェクト無償資金協力)、「草の根無償」(=草の根・人間
の安全保障無償)、「日本NGO」(=日本NGO連携無償)、「一般文化」(=一般文化無償)、「草の根文化」(=草の根文化無償)、「有償」(=円借款)、「マルチ」(=国際機関等を通じた多国間協力スキーム)、「中小企業支援」(=中小企業製品・技術とODAのマッチング事業「ニー
ズ調査」、「案件化調査」および「普及・実証事業」、かつ中小企業連携促進基礎調査)、実線「―――」(=実施期間)、破線「- - - -」(=実施予定期間)
※この凡例にない略語を使用する場合は凡例に当概略語を記載したうえで使用する。