4. 頸動脈狭窄症の治療

マルチモダリティによる
Head & Neck
Imaging
2014
臨床編
Ⅳ DA のストラテジー & アウトカム
臨床施設からの報告
4.頸動脈狭窄症の治療
─ 頸動脈ステント留置術(CAS)
高山 勝年* 1/ 明珍 薫* 1/ 和田 敬* 2
中川 裕之* 2/ 吉川 公彦* 2
* 1 社会医療法人医真会八尾総合病院放射線科・脳血管内治療科
* 2 奈良県立医科大学放射線科
わが国で頸動脈ステント留置術(CAS)
その種類は大きくフィルタプロテクショ
適 応
が 2008 年 4 月から保険認可され,すでに
5 年以上経過した。保険認可当初は,遠
ン,バルーンプロテクション,プロキシ
マールプロテクションの 3 つに分けられ
位塞栓予防のエンボリックプロテクション
原則的に外科的手術である頸動脈内
る(表 1)。当院では,プロキシマールプ
デバイス(embolic‌ protection‌ device:
膜剥離術(CEA)のハイリスク患者で,
ロテクションである MU が認可されるま
EPD)は ANGIOGUARD‌ XP/RX(AG)
,
かつ症候性 50%以上,無症候性 80%以
では,フィルタ EPD を用いた標準手技
ステントは PRECISE(PS)ステント(共
上の頸動脈狭窄病変を CAS の適応とし
を行ってきたが,MU 薬事承認以降は
にジョンソン・エンド・ジョンソン社製)
ている。ただし,CAS の治療目的が,
第一選択として MU を用いている。
だけであったが,現在では EPD(図 1,2)
あくまでも脳梗塞予防であるため,当院
は FilterWire‌EZ(FW,ボストン・サイエ
ではまず第一に,合併症を起こすことな
ンティフィック社製)
,Spider‌FX(コヴィ
く治療に成功できるかどうか術前データ
1.フィルタ EPDを用いた CAS
フィルタ EPD を用いた CAS の標準手
ディエン社製)
,PercuSurge‌GuardWire,
から判断し,治療適応を決定している。
技を図 4 に示す。
Mo.Ma‌Ultra(MU)
(共に日本メドトロニッ
患者の生命予後を考慮し,特に術前に
① フィルタ EPD を病変通過させて内頸
ク社製)
,ステントは Carotid‌ Wallstent
心 機 能が極 端に低 下している患 者は
(CWS,ボストン・サイエンティフィック
CAS により重篤な心合併症につながる可
動脈遠位部に留置
② フィルタ EPD プロテクション下で前
能性が高く(術後の徐脈,低血圧が高頻
拡張施行
図 3)も保険適用されている。
度で起こるため)
,リスクが高いと判断さ
③ ステント留置
現在,わが国では複数の EPD およびス
れれば治療適応外あるいは心疾患の治療
④ 控えめな後拡張施行
テントが使 用可 能であるが,当院での
を優先している。
⑤ フィルタ EPD 回収,デバイス選択
社製)
,Protégé(コヴィディエン社製,
CAS における治療適応と治療手技,およ
エンボリックプロテクショ
ンデバイス(EPD)
びデバイス選択について述べる。
CAS では EPD の使用は必須であり,
2.EPD 選択
当院では,MU が保険適用されるまで
は,フィルタ EPD を用いた標準手技の
CAS を行っていた。しかし,フィルタ
a:PercuSurge GuardWire
a:ANGIOGUARD XP
b:FilterWire EZ
図 1 フィルタエンボリックプロテクションデバイス
〈0913-8919/14/¥300/ 論文 /JCOPY〉
c:Spider FX
b:Mo.Ma Ultra
図 2 ‌バルーンエンボリックプロテクションデバイスとプロキシ
マールバルーンプロテクションデバイス
INNERVISION (29・5) 2014 93