EUV 用レジストの評価 -現像特性-

EUV 用レジストの評価
-現像特性Litho Tech Japan
1.まえがき
22nm 世代の半導体微細加工技術では、レジストの露光特性として、解像度 18nm 以下、
露光感度 10mJ/cm2 以下、エッジラフネス 2nm(3σ)以下の性能が要求されている。レジ
スト露光特性を、実露光スペクトルを用いて評価を行う必要がある。6 枚系の露光光学系が
主流になってきているのでこの露光光学系の反射率スペクトルを実現できるレジスト評価
装置[1]をニュースバル[2]BL3 ビームラインに設置し、レジストの評価を開始した。このシス
テムを用いることにより、露光感度や酸の拡散距離、光脱離特性等を評価することができ
る。本報告では、レジスト現像アナライザーRDA[3]を用いたレジスト現像特性評価につい
て報告する。
2.露光システム
図 1 にビームライン構成を示す。ニュースバルの偏向電磁石から出射される光を光源に
用いている。ニュースバルの電子ビームのエネルギーは 1.0GeV である。レジスト露光装置
の概要と写真をそれぞれ図 2 と図 3 に示す。この装置は光学系ミラーチャンバー、露光チ
ャンバー並びに、試料交換のためのロードロックチャンバーから構成される。各チャンバ
ーには磁気浮上型ターボ分子ポンプ、オイルフリースクロールが搭載されている。光学系
ミラーチャンバーの中には、1 枚の凹面ミラーと 2 枚の平面ミラーを設置している。凹面鏡
で 1 回の反射を行い、2 枚の平面ミラーで 6 回反射を行っている。入射角と反射角は法線か
ら 5 度である。このように Mo/Si の多層膜反射ミラーを用いた 7 回反射により、6 枚露光
光学系の実露光反射スペクトルを実現している(図 4)
。図 5(a)と図 5(b)に測定した Mo/Si
多層膜凹面ミラーと Mo/Si 多層膜平面ミラーの反射率スペクトルを示す。反射率スペクト
ルの測定はニュースバル BL10 ビームラインの反射率計を用いて行った。これらの測定し
た反射率スペクトルを用いた試料面上の反射率スペクトル計算結果を図 5(c)に示す。中心波
長は 13.57nm であり、中心波長での反射率は 2.3%である。試料面上のビームサイズは約 4
×4mm2 である。1 枚のサンプルの大きさは 4 インチあり、1 枚のサンプルに 9 ショット露
光できるのでレジスト感度曲線を容易に得ることができる。チャンバーのベースプレッシ
ャーは約 2×10‐5 Pa に保持されている。
レジストの露光量の調整はレジスト露光装置の上流側に設置した 4 象限スリットチャン
バー内に設置した高速電磁シャッターを用いて行う。この高速電磁シャッターは外部計算
機から制御できるようになっている。シャッター制御用のソフトウェアプログラムは
WindowsPC の C++言語ベースで作成されている。試料面上でのフラックスはリング蓄積
電流値が 200mA の条件下で約 0.33mW/cm2 である。
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従って、10mJ/cm2 の高感度レジストでは 30s 程度の照射時間であるので、感度曲線を得
るためには 100ms 程度の照射時間が必要である。
この高速シャッターの時間分解能は 11ms
であり、要求仕様を満足している。
図 1 ニュースバル放射光施設
図 2 レジスト露光用評価ライン(BL3)
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図 3 EUV 露光評価装置の外観
図 4 6 枚ミラー光学系
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図 5 Mo/Si 多層膜ミラーの反射率スペクトル
3.EUV レジストの評価結果
本露光装置を用いた EUV レジストの評価結果を示す。現像速度測定はリソテックジャパ
ン社製 Resist Development Analyzer(RDA-800)(以降 RDA-800 と表記)[3]を用いた。ニ
ュースバル内に RDA-800 を設置し、露光後、直ぐに PEB 及び現像評価が出来る様にした。
図 6 RDA-800 設置実験室
3.1 EUV ポジ型レジストの評価結果
EUV ポジ型レジストの評価結果を示す。図 7 に露光・PEB・現像後のサンプルの写真を
示す。
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図 7 EUV ポジ型レジストの露光・PEB・現像後のサンプルの写真
評価条件を示す。
基板:4 インチ Si
BARC:AR-9
60nm
レジスト膜厚:70nm
ベーク条件:PAB 105℃/60 秒 PEB 100℃/90 秒
現像条件:TMAH 2.38%(23℃)
図 8 に残膜曲線、図 9 にγ値、図 10 にディスクリミネーションカーブ(現像速度曲線)
を示す。また、このレジストの感度(Eth60)は 8.7mJ/cm2 であった。
図 8 EUV ポジ型レジストの残膜曲線
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図 9 EUV ポジ型レジストのγ値(γ60=12.46)
図 10 EUV ポジ型レジストのディスクリミネーションカーブ(現像コントラスト=8.73)
図 11 に C.A. Mack による Original Mack モデル現像パラメータ[4]計算結果を示す。
Rmax=886.2(nm/s)
Rmin=0.0111(nm/s)
Mth=0.274
n=18.51
図 11 Original Mack モデルによる現像パラメータの算出
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本システムを用いる事で、EUV ポジ型レジストの現像特性の評価が可能である事がわか
った。
3.2 EUV ネガ型レジストの評価結果
EUV ネガ型レジストの評価結果を示す。図 12 に露光・PEB・現像後のサンプルの写真
を示す。
図 12 EUV ネガ型レジストの露光・PEB・現像後のサンプルの写真
評価条件を示す。
基板:4 インチ Si
BARC:AR-9
60nm
レジスト膜厚:250nm
ベーク条件:PAB 105℃/90 秒 PEB 115℃/60 秒
現像条件:TMAH 2.38%(23℃)
図 13 に残膜曲線、図 14 にγ値、図 15 にディスクリミネーションカーブ(現像速度曲線)
を示す。また、このレジストの感度(Eth90)は 1.3mJ/cm2 であった。
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図 13 EUV ネガ型レジストの残膜曲線
図 14 EUV ネガ型レジストのγ値(γ40=-0.50)
図 15 EUV ネガ型レジストのディスクリミネーションカーブ(現像コントラスト=-2.39)
図 16 に C.A. Mack による Original Mack モデル現像パラメータ[4]計算結果を示す。
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Rmax=3.698(nm/s)
Rmin=0.0022(nm/s)
Mth=1-0.980=0.02
n=3.38
図 16 Original Mack モデルによる現像パラメータの算出
本システムを用いる事で、EUV ネガ型レジストの現像特性の評価が可能である事がわか
った。
4. まとめ
本評価システムを用いる事で、EUV レジストの現像特性を評価することが出来る事がわ
かった。今後は、ABC パラメータや、酸の拡散長、脱保護反応パラメータの測定について
も検討してゆく。
謝辞
本研究を進めるにあたり、サンプル作成を行なった、リソテックジャパンの松本研究員、
露光実験を担当した山内研究員に感謝します。また、露光実験に際し、ご協力頂いた兵庫
県立大学 高度産業科学技術研究所の木下先生、渡邊先生、江村氏、山口氏に感謝いたしま
す。
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参考文献
[1] Takeo WATANABE, Hiroo KINOSHITA, Noriyuki SAKAYA, Tsutomu SHOKI and Seung
Yoon LEE, “Novel Evaluation System for Extreme Ultraviolet Lithography Resist in
NewSUBARU”, Japanese Journal of Applied Physics, Vol.44, No. 78, 2005, PP.5556-5559
[2]兵庫県立大学
高度産業科学技術研究所
ニュースバル放射光施設
http://www.lasti.u-hyogo.ac.jp/NS/facility/bl03/
[3] Atsushi SEKIGUCHI, “Study of the simulation parameter for EUVL”, Proc. SPIE,
Vol.72731G-1~72731G-11 (2009).
[4] C. A. Mack, T. Matsuzawa, A. Sekiguchi, and Y. Minami, Proc. SPIE, Vol. 2725, pp. 34-48
(1996).
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