SRパイルアンカー工法 (杭頭半剛接合工法) 技術資料 (設計

SRパイルアンカー工法
(杭頭半剛接合工法)
技術資料
(設計・施工マニュアル)
2014 年 2月
SRパイルアンカー工法研究会
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SRパイルアンカー工法
-技術資料-
目次
1.概要
1.1 技術の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1.2 標準仕様 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.3 体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2.設計マニュアル
2.1 適用範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.2 用語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
2.3 設計方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
2.4 使用材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2.5 杭頭接合部の曲げモーメントに対する設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2.6 杭頭接合部のせん断力に対する設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
2.7 ねじ接合部に関する設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
2.8 端板の設計と仕様表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
2.9 検討依頼書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
2.10 設計例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
3.施工マニュアル
3.1 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
3.2 標準施工方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
3.3 施工管理チェックシート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
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1.概要
1.1 技術の概要
(1)SRパイルアンカー工法の概要
本工法の概要を図 1.1.1 に示す。本工法は、既製コンクリート杭の杭頭端板に定着筋(丸鋼)
と定着板からなるSRパイルアンカーを接合することにより、杭頭接合部を半剛接合にする工法
である。
具体的には、杭頭接合部に曲げモーメントが作用した場合、曲げに伴う引張側定着筋の伸びに
より、杭頭接合部に回転変形が生じて半剛接合となる。
N
M
埋め込長:Lb
ひずみ度:ε
・定着筋の伸び出し量:Δb=ε Lb
・回転角:θj=Δb/(Dp/2+rs-xn0)
・xn0:断面の圧縮縁から中立軸
までの距離
N.A.
Δb
回転角:θj
xn0
Dp /2
+ r -x
D
s
n0
p
Dp /2
-r
s
M
N
図 1.1.1 杭頭部の回転モデル
(2)SRパイルアンカー工法の特徴
本工法は、以下に示す特徴を有する。
a) 杭頭半剛接合方法により杭頭に集中する曲げモーメントを低減し、杭中央部にも曲げモー
メントを負担させる合理的な設計ができる。
b) 基礎梁への曲げ戻しモーメントを低減し、基礎梁断面を軽減できる。
c) 施工が容易である。
d) 品質管理および品質確保が行いやすい。
e) 構造が単純で、特殊な材料を必要としない。
(3)SRパイルアンカー工法の適用範囲
本工法を適用する杭は、既製コンクリート杭(PHC 杭(節杭を含む)
、PRC 杭(節杭を含む)
、
SC 杭)とする。その杭径は PHC 杭:300~1200mm、PRC 杭:300~1000mm、SC 杭:500
~1200mmとする。また、杭工法は埋込み工法(プレボーリング拡大根固め工法など)とする。
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1.2 標準仕様
(1)杭頭接合部の仕様
杭頭接合部の標準図および杭頭接合部周辺の記号の定義を図 1.2.1 中に示す。また、接合部の
形状の仕様を表 1.2.1 に示す。
杭中アンカー筋取付
位置(端板裏側)
rs
SRパイルアンカー
アンボンドアンカー
定着筋
直径:db
断面積:Ab
定着板
直径:Da
厚:ta
定着筋
直径:db
断面積:Ab
定着板
直径:Da
厚:ta
rs
SRパイルアンカー
アンボンドアンカー
定着板
定着板
定着筋
定着筋長
Lb
定着筋長
Lb
定着筋
杭のみ込み高さ
hp
杭のみ込み高さ
hp
補強バンド
外殻鋼管
既製杭
既製杭
杭中アンカー筋
PC鋼棒または異形鉄筋
PHC杭または
PRC杭の場合
Dp
SC杭の場合
杭の肉厚(補強バンド厚含む)
tp
Dp
杭の肉厚(外殻鋼管厚含む)
tp
図 1.2.1 杭頭接合部の標準図
表 1.2.1 接合部の形状の仕様
項目
範囲(単位:mm)
杭種
既製コンクリート杭
(PHC 杭(節杭を含む)
,PRC 杭(節杭を含む)
,SC 杭)
杭径(Dp)
300≦Dp≦1200
杭のみ込み高さ(hp)
定着筋の直径(db)
※1
hp=50(Dp≦450), hp=100(450<Dp)
db=21.88 or 24.88
定着筋の埋め込み長さ(Lb)
Lb=25 db or 35 db
定着筋の本数(n)
4≦n(Dp≦450), 6≦n(450<Dp)
定着板の直径(Da)
Da =55 or 65(定着板が多角形の場合はその内接円の直径)
定着板の厚さ(ta)
ta=19 or 22
端板厚さ(te)
12≦te
杭中アンカー筋の呼び径
D25
杭中アンカー筋の長さ
1025
杭中アンカー筋の材質
SD345
※1:端板のねじ穴サイズに合わせて選択する。
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(2)SRパイルアンカーの標準仕様
SRパイルアンカーの形状寸法を表 1.2.2 に示す。また、材料の仕様を表 1.2.3 に示す。
定着板は円形を基本とし、角形の場合は必要面積を満足する円直径と同じ辺長とする。ただし、
SC 杭に適用する場合は、円形のみとする。
表 1.2.2 SRパイルアンカーの形状寸法
基準寸法(mm)
ねじ部
定着筋
定着板
記号
呼び径
db
22
21.88
25
24.88
SR-M24-25d
SR-M24-35d
SR-M27-25d
SR-M27-35d
L
Lb
680
550
900
770
770
625
1020
875
呼び
有効
断面積
(mm2)
a
b
軸部
断面積※1
(mm2)
50
80
376.0
19
55
25
M24
353
55
90
486.2
22
65
28
M27
459
Lb
a
※2
ta
Da
d1
ta
Da
b
マーキング※3
100
db
d1
ねじ部
軸部
ねじ部
※1 設計に用いる断面積。
※2 定着板は円形または角形とする。
※3 マーキングはこれを基本とし、位置・形状等は変更する場合がある。
表 1.2.3 材料の仕様
使用材料
材質または強度区分
規格
定着筋
SNR490B
JIS G 3138(2005)
定着板
SM490A
JIS G 3106(2004)
六角ナット
強度区分:5 以上
JIS B 1181(2004)
端板
SS400,SM400A,SM490A
JIS G 3101(2004)
JIS G 3106(2004)
パイルキャップ
コンクリート
普通コンクリート:
設計基準強度 21N/mm2≦Fc≦40N/mm2
-----
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(3)SRパイルアンカーの取付
SRパイルアンカーと杭頭端板の接合形式を図 1.2.2 に示す。定着筋と杭の端板は、ねじ込み
接合とする。定着筋と定着板の接合は、六角ナットによる締付けとする。定着筋のねじは転造加
工によって形成し、ねじ形状については JIS B 0205-4(2001)、旧 JIS B 0206(1965)に準拠す
る。
定着板
アンボンド部分
定着筋
定着筋ねじ部
端板
図 1.2.2 SRパイルアンカーと杭頭端板の接合形式
定着筋の配置例を図 1.2.3 に示す。SRパイルアンカーが端板上で平面的に偏らないように、
かつなるべく等間隔になるように取り付ける。
図 1.2.3 定着筋の配置例
本工法では、錆止め剤を定着筋のアンボンド部分に塗布することによって定着筋の付着が減少
し無視できることを実験により確認しているため、定着筋のアンボンド部分に錆止め剤(JIS K
2241(切削油剤)、JIS K 2246(さび止め油)、JIS K 5621(一般用さび止めペイント)を塗布す
る。錆止め剤は均一になるようにスプレーまたは刷毛塗りに準ずる方法よって塗布する。
-4-
1.3 体制
本工法の設計支援は、ジャパンパイル(株)が行う。また、本工法の施工は岡部(株)が行う。設計
者・施工者・岡部(株)・ジャパンパイル(株)の関係図を図 1.3.1 に示す。
また、本工法の施工管理体制を図 1.3.2 に示す。
構造設計者
(設計事務所)
施工者
(ゼネコン)
SR パイルアンカー
SRパイルアンカーを含む
の販売・施工
基礎杭の設計支援
杭の販売・施工
岡部㈱
ジャパンパイル㈱
図 1.3.1 関係図
SRパイルアンカ-工法研究会
設計,施工基準の配布
施工管理報告
施工,施工管理の教育
指定施工店の認定
施工管理技術者の認定
SRパイルアンカ-工法指定施工店 本工法の材料発注
(施工・施工管理)
・施工管理技術者
岡部株式会社
本工法材料の供給
・作業者
承認
施工管理報告
施工者(工事現場)
工事管理者
図 1.3.2 施工体制
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図 1.3.2 中の用語について以下に示す。
(1)SR パイルアンカー工法研究会
a) SR パイルアンカー工法研究会は、岡部(株)・ジャパンパイル(株)・(株)フジタ・(株)安藤・間の4
社にて構成する。
b)
SR パイルアンカー工法研究会は、本工法の設計基準および施工基準に関して責任を負う。
さらに、SR パイルアンカー工法指定施工店に対して、設計・施工基準に関する教育と指導、
助言を行い、SR パイルアンカー工法指定施工店に所属する施工管理技術者の育成及び認定
に関して責任を負う。
(2)SR パイルアンカー工法指定施工店
a) SR パイルアンカー工法指定施工店は、施工管理技術者と作業者により構成される。
b) SR パイルアンカー工法指定施工店の施工管理技術者は、SR パイルアンカー工法研究会よ
り教育と指導を受け、施工管理技術者の資格認定を受けた者とする。
c) ねじ込み式の作業者は、施工管理技術者より施工指導を受けた者とする。特に資格認定は
必要としない。
(3)施工者(工事現場)
a) 施工者(工事現場)は、本工法の施工が正しく行われたか確認し、施工管理記録によって
承認する。
b) 施工者(工事現場)は、当該作業所における SR パイルアンカー工法の施工の実施に関す
る責任を負う。
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2.設計マニュアル
2.1 適用範囲
本マニュアルは,埋込み工法により施工された既製杭(PHC 杭(節杭を含む)
、PRC 杭(節杭
を含む)、SC 杭)の杭頭接合部を対象とし、定着筋に定着板を取り付けたSRパイルアンカーを
用いた杭頭半剛接工法(SR パイルアンカー工法)の接合部の許容応力度設計に適用する。
本工法において、杭頭の曲げモーメントに伴う引張ひずみが付着の無い定着筋(SRパイルア
ンカー)に生じる場合、定着筋の伸びにより杭頭接合部に回転変形が生じ、従来の杭頭固定工法に
比べて、杭頭接合部の回転剛性が低減し半剛接合部となる。本マニュアルでは、主として杭頭接
合部の長期および短期の曲げ耐力の算定方法、杭頭接合部の回転剛性の算定方法について示すも
のである。
2.2 用語
本マニュアルで用いる既製コンクリート杭の杭頭半剛接合法に関する用語の定義を以下に、記
号を図 2.2.1 に示す。
2)
3)
4)
5)
6)
7)
8)
9)
10)
11)
杭頭接合部;パイルキャップにのみこまれ
た杭頭部分。
杭のみ込み高さ(hp);パイルキャップ内に
のみこまれた杭の長さ。
SRパイルアンカー;定着筋(丸鋼)と定
着板からなる定着金物。
定着筋;杭の端板に接合された丸鋼。
定着筋径(db);定着筋の直径。
定着筋の断面積(Ab)。
定着板;定着筋の先端に設けられた鋼板。
SRパイルアンカー埋め込み長さ(Lb);パ
イルキャップ内における杭頭の端板と定
着板の間の距離。
杭径(Dp);既製杭の直径。
定着筋の配置半径(rs);定着筋が配置される
位置を示す半径。
杭の肉厚(tp);杭の補強バンドおよびコンク
リートを含む杭の厚さ。
定着筋
直径:db
断面積:A b
定着板
直径:Da
厚:ta
rs
SRパイルアンカー
アンボンドアンカー
定着板
埋め込み長さ
Lb
1)
定着筋
杭のみ込み高さ
hp
既製杭
Dp
杭の肉厚(補強バンド厚含む)
tp
図 2.2.1 杭頭接合部周辺の記号
-7-
2.3 設計方針
1) 長期および短期荷重時において、杭頭接合部に作用する曲げモーメント、せん断力が、各々
許容耐力以下であることを確認する。
許容応力度設計は、図 2.3.1 に示す設計フローにしたがって行う。本マニュアルでは、杭頭接
合部の許容曲げモーメントおよび回転剛性の算定は、定着筋およびパイルキャップのコンクリー
トの応力度-ひずみ度関係を仮定した断面の非線形解析に基づく方法で行うこととする。
スタート
・定着筋の配置、径および本数の変更
・杭の変更
地盤定数の設定
杭および杭頭接合部の断面の仮定
杭頭接合部の回転剛性のモデル化
長期および短期の応力算定
No
A法:断面の非線形解析による方法
B法:円環置換による線形解析に基づく方法
・非線形解析(増分解析,直接反復法)
・線形解析
A法:断面の非線形解析による方法
B法:円環置換による線形解析に基づく方法
各部の応力≦許容耐力
○検討が必要な耐力
・杭の許容曲げ耐力と許容せん断耐力
・杭頭接合部の許容曲げ耐力と許容せん断耐力
・定着板および定着部のコンクリートに対する
許容耐力
Yes
エンド
図 2.3.1 許容応力度設計のフロー
-8-
2) 水平力を受ける杭および杭頭接合部の応力算定は、杭頭接合部の回転剛性を考慮して行う。
検討対象は、単杭および群杭の杭頭接合部であるが、単杭の場合は、基礎梁あるいは剛なマット
スラブがある杭頭接合部のみを対象とする。
杭頭回転ばねの剛性評価については、後述の方法による。なお、基礎構造設計指針に従い、杭、
地盤を線形として扱うと、杭頭の固定度(α)と杭頭接合部の回転剛性(Kθ)の関係は次式で示すこ
とができる。
鉛直力
杭頭接合部
回転ばね
水平力
地盤水平ばね
杭
(線形梁)
図 2.3.2 杭頭接合部の応力算定のための解析モデル
α=
Kθ
EIβ + Kθ
(2.3.1)
kh B
4EI
(2.3.2)
ここで,
β =4
B:杭の見付幅
EI:杭の曲げ剛性
kh:地盤反力係数
である。
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3)
4)
杭頭接合部の形状およびSRパイルアンカーの適用範囲は、表 1.2.1 に従う。
地盤の鉛直支持力、引抜抵抗、水平地盤反力係数などの地盤定数については、国土交通省告
示を基本として、以下の指針類に準拠する。
a)日本建築学会「建築基礎構造設計指針」第 2 版,2001 年 10 月。
b)各都道府県の構造設計指針。
5)
杭頭接合部の設計に関し、本マニュアルに記載のない事項については、以下の規準、指針類
に準拠して設計を行う。
a)日本建築学会「建築基礎構造設計指針」第 2 版,2001 年 10 月。
b)日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 -許容応力度設計法-」1999 年 11
月。
c)日本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説」1985 年 2 月。
2.4 使用材料
(1)材料
材料の仕様は、表 1.2.3 に従う。
(2)材料の許容応力度および基準強度
1)定着筋の許容応力度および基準強度は、表 2.4.1 による。
表 2.4.1 定着筋の許容応力度と基準強度F値(単位;N/mm2)
種別
SNR490B
長期
短期
基準強度
引張/圧縮
せん断
引張/圧縮
せん断
F値
F/1.5
F/(1.5×√3)
F
F/√3
325
2)定着板および端板の許容応力度は、表 2.4.2 による。
表 2.4.2 定着板および端板の許容応力度と基準強度F値(単位;N/mm2)
種別
SM490A
長期
短期
基準強度
引張/圧縮
せん断
引張/圧縮
せん断
F値
F/1.5
F/(1.5×√3)
F
F/√3
325
3)パイルキャップのコンクリートの許容応力度は表 2.4.3 による。
表 2.4.3 コンクリートの許容応力度と設計基準強度(単位;N/mm2)
長期
圧縮
1/3×Fc
引張
短期
せん断
圧縮
1/30×Fc
かつ
0.49+1/100×Fc
引張
長期に対する値の2倍
- 10 -
せん断
設計基準
強度
Fc
2.5 杭頭接合部の曲げモーメントに対する設計
(1)水平力によって杭頭接合部に生じる曲げモーメントが許容曲げモーメント以下であること
を確認する。杭頭接合部の許容曲げモーメントは、以下の a)~c)で決定される各曲げモー
メントのうち、いずれか小さいものとする。許容曲げモーメントの算定は、本節(2)に
示す断面の非線形解析による方法で行う。
a)杭頭接合部のコンクリート圧縮縁の応力度が、許容圧縮応力度に支圧効果による割増
係数φc を乗じた値に達する時の曲げモーメント。φc は、φc=3 とする。
b)杭頭接合部の曲げ圧縮側の定着筋の応力度が、許容圧縮応力度に達する時の曲げモー
メント。
c)杭頭接合部の曲げ引張側の定着筋の応力度が、許容引張応力度に達する時の曲げモー
メント。
(2)許容曲げモーメントの算定
杭頭接合部の曲げモーメントの算定は、コンクリートおよび定着筋の応力度-ひずみ度
関係を仮定した非線形解析による。
a)杭頭接合部の有効断面積は、杭が有効断面位置においてパイルキャップと接する部分
の面積とし、図 2.5.1 に示す断面積とする。
tp
有効断面
(斜線部)
Dp
有効断面位置
tp
有効断面積:Ap=π{Dp2-(Dp-2tp)2}/4
Dp
図 2.5.1 杭頭接合部の有効断面
- 11 -
b)定着筋の応力度(σ)-ひずみ度(ε)関係は次式による(図 2.5.2(a))。
σ = Es・ε ; ε <εy
σ = σ y ; ε ≥ ε y
σ = -σ y ; ε ≤ -ε y
(2.5.1a)
(2.5.1b)
(2.5.1c)
ここで、εy=σy/Es、σy は降伏点、Es はヤング係数である。
c)コンクリートの応力度-ひずみ度関係は次式による(図 2.5.2(b))。
{
}
-0.812( ε /ε )
-1.218( ε /ε )
σ = 6.75φ c Fc e
-e
; 0 < ε < ε B (2.5.2a)
σ = φ c Fc ; ε ≥ ε B (2.5.2b)
B
B
ここで、Fc:設計基準強度、εB=3×10-3 とする。
d)断面の平面保持と法線の保持を仮定して、作用軸力と仮定した断面の曲率に対する曲
げモーメントを繰返し計算により求める。
cfc;短期許容圧縮応力度
σ
5
Es=2.05×10 N/mm
-εy
εy
2
ε
φcFc
圧縮応力度 σ
σy
-σy
φc cfc
e関数
0
0.002
εB=0.3%
0.004
0.006
圧縮ひずみ度 ε(10-3)
(a)
(b)
図 2.5.2 杭頭接合部の定着筋およびコンクリートの応力度-ひずみ度の関係の仮定
(3)曲げモーメントが作用した場合の杭頭接合部の回転角は、軸力に応じて、定着筋の埋め込
み長さ、前述の曲げ耐力の算定時に求められる定着筋のひずみ度(ε)、中立軸位置より算定
する。
θj =
ε Lb
Δb
=
D p /2 + rs - xn0 D p /2 + rs - xn0
(2.5.3)
ここで、
θj:杭頭接合部の回転角
Δb:曲げ引張側の定着筋の伸び
ε:定着筋のひずみ度
xn0:断面の圧縮縁から中立軸位置までの距離
Lb:定着筋のパイルキャップへの埋め込み長さ
である。
(4)軸力に応じた許容曲げモーメント時の回転剛性(Kθ)は、上記方法により求めた許容曲げモ
ーメント(Ma)を許容曲げモーメント時の回転角(θj)で除した値とする。
Kθ =
(2.5.4)
Ma
θj
- 12 -
2.6 杭頭接合部のせん断力に対する設計
(1)杭頭接合部において、杭とパイルキャップ間のせん断力の伝達により生じる水平支圧応力
度が許容応力度以下であることを確認する。
(2)水平荷重によりパイルキャップに生じるパンチングシアーに対するせん断応力度が、許容
応力度以下であることを確認する。
2.7 ねじ接合部に関する設計
定着筋と端板のねじ接合部は、定着筋が降伏する前に、ねじ有効断面の破断あるいはねじ山の
せん断破壊が生じないようにする。ねじ山のせん断破壊が生じない為には、ねじ込み長さが表
2.7.1 の最少ねじ込み長さを満足しなければならない。
定着筋材質
SNR490B
SNR490B
表 2.7.1 ねじ接合における最小ねじ込み長さ
最小
端板材質
ねじ径
ねじ込み長さ
(mm)
M24
16
SN490,SM490
M27
19
M24
19
SS400,SN400,SM400
M27
19
2.8 端板の設計と仕様表
杭頭部の端板は、定着筋の引張力を杭体に伝達するために十分な強度を有している必要がある。
SR パイルアンカーを PHC 杭に適用する場合は、端板を梁でモデル化して PC 鋼棒の反力と端
板に発生する応力を算定し、それぞれが許容値以内となるように端板仕様を決定する。その一例
を表 2.8.1 に示す。なお、杭頭部端板の外周には補強バンドが溶接されているが、ここでは安全
側の検討として無視した。
また、SR パイルアンカーを CPRC 杭および SC 杭に適用する場合は、板曲げ解析(FEM 解析)
を用いて端板に発生する応力と支点の反力を算定し、それぞれが許容値以内となるように端板仕
様を決定する。CPRC 杭の検討の場合は、定着筋の引張力は PC 鋼棒と補強バンドで抵抗すると
考え、SC 杭の場合は杭中アンカー筋と外殻鋼管で抵抗すると考えた。CPRC 杭の端板仕様を表
2.8.2 に、SC 杭の端板仕様を表 2.8.3 に示す。
- 13 -
ジャパンパイル製造㈱茨城工場で製造するPHC杭にSRパイルアンカーを適用した場合の、
端板仕様および参考本数を表 2.8.1 に示す。なお、杭メーカー・製造工場によって、TP孔の仕
様が異なる場合があり、その際はSRパイルアンカーの仕様も下表と異なる。
表 2.8.1 PHC杭の端板仕様
杭径
300
350
400
450
500
600
700
800
900
1000
1100
1200
杭種
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
A
B
C
穴数
(個)
6
8
10
7
10
12
10
12
11
8
16
14
9
14
17
12
18
23
16
23
23
20
28
28
19
36
34
22
32
40
24
48
44
28
56
52
杭仕様
SRパイルアン
※1
※3
カーの仕様※2
TP孔
SR用端板仕様
参考
ねじ径 配置直径 板厚※4
材質※4 鉄筋径※4
本数※4
(mm)
(mm)
M22
240
***
***
***
***
M22
242
***
***
***
***
M22
242
***
***
***
***
M22
290
***
***
***
***
M22
292
***
***
***
***
M22
292
***
***
***
***
335
***
***
***
***
M22
337
***
***
***
***
M22
339
25
SM490
21.88
6
M24
M22
380
***
***
***
***
M22
380
***
***
***
***
M24
382
22
SM490
21.88
7
M22
420
***
***
***
***
M24
422
22
SM490
21.88
7
21.88
22
9
M24
422
SM490
M22
510
***
***
***
***
M24
512
22
SM490
21.88
9
M24
512
19
SM490
21.88
12
M22
600
***
***
***
***
M24
602
22
SM400
21.88
12
M27
604
22
SM490
24.88
12
M22
700
***
***
***
***
M24
702
19
SM400
21.88
16
M27
704
22
SM400
24.88
16
M24
800
22
SM490
21.88
10
M24
800
22
SM400
21.88
20
M27
802
22
SM400
24.88
20
M24
900
22
SM490
21.88
12
M27
900
22
SM400
24.88
16
M27
902
22
SM400
24.88
22
M24
1000
22
SM400
21.88
14
M24
1000
26
SM400
21.88
28
M27
1002
26
SM400
24.88
28
M24
1100
22
SM400
21.88
16
M24
1102
26
SM400
21.88
32
M27
1102
26
SM400
24.88
32
※1 : TP孔は、ジャパンパイル製造㈱茨城工場の仕様。
※2 : 参考本数は、軸力0kN時の杭体短期許容曲げモーメントと同等の接合部耐力を有する仕様。
通常は、杭頭に作用する設計外力よりSRパイルアンカー筋仕様を決定することを基本とする。
※3 : SR用端板仕様は、端板に生じる曲げ応力度の計算結果より決定した。
※4 : 表中の「***」はTP孔ねじ径が細いため、SRパイルアンカー工法が適用できない。
- 14 -
CPRC杭にSRパイルアンカーを適用した場合の、端板仕様および参考本数を表 2.8.2 に示す。
表 2.8.2 CPRC杭の端板仕様
杭径
300
350
400
450
500
600
700
800
900
1000
杭種
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
杭仕様
SR専用孔※1
SR用端板仕様※2
穴数
ねじ径 配置直径 板厚
材質
(個)
(mm)
(mm)
6
240
7
290
21.88
M24
8
SRパイルアン
カーの仕様※3
参考
鉄筋径
本数
335
22
10
385
12
435
SM490
16
535
16
635
M27
18
24.88
735
25
20
835
24
935
6
6
6
7
7
7
8
8
8
10
10
10
12
12
12
16
16
16
16
16
16
18
18
18
20
20
20
24
24
24
※1 : PC鋼棒緊張用TP孔とは別に、SRパイルアンカー専用のねじ孔を端板に加工する。
※2 : 端板に生じる曲げ応力度の計算結果(FEM解析)より決定した。
※3 : 参考本数は、杭径450㎜以下についてはⅠ種の、杭径500㎜以上についてはⅡ種の
杭体短期許容曲げモーメントと同等の接合部耐力を有する仕様。
通常は、杭頭に作用する設計外力よりSRパイルアンカー仕様を決定することを基本とする。
- 15 -
SC杭にSRパイルアンカーを適用した場合の、端板仕様および参考本数を表 2.8.3 に示す。
表 2.8.3 SC杭の端板仕様
杭径※1
肉厚※2
500
600
700
800
900
1000
1100
1200
特厚
特厚
標準厚
標準厚
標準厚
標準厚
標準厚
標準厚
※1 :
※2 :
※3 :
※4 :
※5 :
※6 :
杭仕様
SR専用孔※3
穴数 ねじ径配置直径
(個)
(mm)
450
18
22
550
650
26
30
750
M27
34
850
38
950
42
1050
48
1150
SR用端板仕様※4
板厚
(mm)
19
材質
SM490
SRパイルアン
カーの仕様※6
参考
鉄筋径 本数 鉄筋径
本数
杭中アンカー筋※5
D25
9
11
13
15
17
19
21
24
24.88
16
19
22
25
29
32
35
38
杭径はφ500以上に適用可。φ450以下は杭中アンカー筋を設置できないためSR適用不可。
杭中アンカー筋のかぶりを確保するために、φ500・600は肉厚を特厚とする。
SRパイルアンカー専用のねじ孔を端板に加工する。
端板に生じる曲げ応力度の計算結果(FEM解析)より決定した。
端板の面外変形を抑えるために、杭体内(端板裏)にアンカー筋を設置する。
参考本数は、鋼管厚6㎜のSC杭の短期許容曲げモーメントと同等の接合部耐力を有する仕様。
通常は、杭頭に作用する設計外力よりSRパイルアンカー仕様を決定することを基本とする。
- 16 -
2.9
検討依頼書
SR パイルアンカー検討依頼シート
下表に必要事項を記入し、検討に必要な資料・情報を添えて下記連絡先にお送り下さい。杭と
SR パイルアンカーの検討を行います。
会社名
ご依頼者
TEL
FAX
様
E-mail
依頼内容
依頼日
平成
年
月
日
工事名称
建設地
(都・道・府・県)
検討に必要な資料・情報
概算検討
基礎コンクリート強度
ボーリング図(近隣)
精算検討
○
○
ボーリング図(現地)、杭頭位置
○
敷地条件、平面図(柱位置)
○
○
搬入条件(住所)
○
○
E0 の扱い(LLT 試験)
○
柱軸力、地震時変動軸力
○
地震時水平力
○
【送り先】
ジャパンパイル㈱ 基礎設計部
TEL:03-5843-4193 FAX:03-5651-2791
- 17 -
2.10 設計例
(1) 設計方針
・ 既製コンクリート杭による基礎の設計を、許容応力度設計により行う。
・ 杭頭接合部にSRパイルアンカー工法を用いる。
・ 杭頭接合部の許容曲げモーメントは、接合部断面の非線形解析による方法で求める。
・ 水平力を受ける杭の応力算定は、地盤は多層地盤からモデル化される水平地盤ばね、杭
は曲げ剛性を有する線材、さらに杭頭部に回転ばねを持たせ、剛床仮定による弾性応力
解析による。
・ 杭頭変位が1cm を超える場合は、地盤ばねの変位低減を行う。
・ 設計フローは、図 2.3.1 に示す。
(2) 建物概要
・ 用途:集合住宅
・ 規模:地上 3 階、地下なし
・ 構造:鉄筋コンクリート造、ラーメン形式
・ 基礎:杭基礎(既製コンクリート杭)
図 2.10.1 杭配置図
表 2.10.1 杭仕様一覧
上杭仕様
杭番号
P1
杭種
PHC杭
105N/㎜2 C種
杭径
[肉厚]
(mm)
600
[90]
杭長
(m)
5
- 18 -
下杭仕様
節径-軸径-拡頭径
杭長 杭本数
杭種
[肉厚]
(m)
(mm)
節付PHC杭
650-500-600
5
36
[80]
85N/㎜2 A種
(3) 杭設計用軸力
図 2.10.2 長期軸力(単位:kN)
図 2.10.3 短期軸力(X・Y正方向加力)(単位:kN)
図 2.10.4 短期軸力(X・Y負方向加力)(単位:kN)
- 19 -
(4) 杭設計用せん断力
a) 直上階の水平力
・ 直 上 階 水 平 力 :Q1=5,904(kN)
b) 基礎部分の水平力
・ 床 ・ 地 中 梁 等 の 水 平 力 :Q2=1,376(kN)
・ 基礎自重(フーチング) :ΣWf=1,898(kN)
・ 基 礎 自 重 に よ る 水 平 力 :Q3=0.1×ΣWf=190(kN)
・ 基 礎 部 分 の 水 平 力 :Q2+Q3=1,566(kN)
c) 杭に作用する総水平力
・ ΣQ=Q1+Q2+Q3=7,470(kN)
(5) 地盤条件
・ 土質柱状図を図 2.10.5 に示す。
地盤の変形係数E0 は、地盤のN値より
E0=700N(kN/m2)として設定する。
・GL−1.6m∼−4.8mのシルト層
E0=2,100(kN/m2)
・GL−4.8m∼−6.7mのシルト混じり細砂層
E0=4,200(kN/m2)
・GL−6.7m∼−9.3mのシルト混じり細砂層
E0=10,500(kN/m2)
・GL−9.3m∼−11.3mの細砂層
E0=17,500(kN/m2)
図 2.10.5 土質柱状図
- 20 -
(6) 杭頭接合部の定着筋の設定
・ パイルキャップのコンクリート強度 Fc=21(N/mm2)
・ 定着筋及び定着板の仕様を表 2.10.2 に示す。
表 2.10.2 定着筋等の仕様
杭番号
P1
定着筋(丸鋼)
径
径
長さ
材質
M
(mm)
(mm)
(mm)
SR-M24-35d M24 φ21.88 900 SNR490B φ55
記号
定着板
配置直径
本数
板厚
(mm)
材質
(mm)
19
SM490A 11
512
・ SRパイルアンカーの取付状況を図 2.10.6 に示す。
上杭の端板のPC鋼棒緊張用ボルト孔を利用して、SRパイルアンカーを取り付ける。
SRパイルアンカーは偏りがないように、なるべく均等に配置する。
図 2.10.6 SRパイルアンカーの取付状況
- 21 -
(7) 杭頭接合部の短期許容曲げモーメントおよび回転剛性Kθの計算
「2.5 杭頭接合部の曲げモーメントに対する設計」に示される計算方法により、接合部の
短期許容曲げモーメントMaおよび回転剛性Kθを算出した。また、算出した回転剛性と地盤物性、
杭体のヤング係数、曲げ剛性から固定度αを式 2.10.1 により求めた。表 2.10.3 にMa、Kθ、α
の例を示す。例は短期軸力が最大の柱(Y4-X2)について示す。
α=
Kθ
EIβ + Kθ
(式 2.10.1)
表 2.10.3 杭の許容曲げモーメント、回転剛性および固定度
杭番号
(柱位置)
短期軸力
加力方向
X方向正加力
X方向負加力
P1
(Y4-X2) Y方向正加力
Y方向負加力
Na
(kN)
1,458
1,414
2,348
524
接合部の
許容曲げ
モーメント
jMa
(kN・m)
453
451
474
337
- 22 -
回転剛性
固定度
Kθ
(kN・m/rad)
1.47×105
1.44×105
2.18×105
1.03×105
α
0.735
0.731
0.805
0.661
杭の
許容曲げ
モーメント
bMa
(kN・m)
418
413
517
313
(8) 杭体応力・変位の検討
地盤は多層地盤からモデル化される水平地盤ばね、杭は曲げ剛性を有する線材にモデル化した。
また、杭頭部に回転ばねを持たせ、剛床仮定のもとに弾性応力解析を行った。水平地盤反力係数
は、 k h = 80 E0 D
-400
0
−3 / 4
M(kN・m),Q(kN)
-200
0
200
Q
400
-1.0
0
2
2
4
4
6
8
2.0
6
8
10
12
変位量(cm)
0.0
1.0
M
深度(杭天端-m)
深度(杭天端-m)
(kN/m3)とした。杭体の応力・変形例を柱位置Y4-X2 の杭について示す。
10
X方向正加力
X方向負加力
Y方向正加力
Y方向負加力
12
X方向正加力
X方向負加力
Y方向正加力
Y方向負加力
図 2.10.7 杭(柱位置Y4-X2)の応力分布図、変形図
- 23 -
(9) 杭体断面の検討
杭頭に作用する曲げモーメントとせん断力、杭体および杭頭接合部の許容耐力を表 2.10.4、図
2.10.8 に示す。
杭頭に作用する曲げモーメントとせん断力については、
(8)にて求めた。また、杭頭接合部の
許容曲げモーメントは、
(7)にて求めた。杭体の許容耐力はカタログ値を表示する。
これより、杭頭に作用する曲げモーメントは、杭体および杭頭接合部の許容曲げモーメント以
下であることが確認できる。また、杭頭に作用するせん断力は、杭体の許容せん断力以下である
ことが確認できる。
杭頭接合部のせん断力に対する検討は次項(10)にて検討する。
表 2.10.4
杭番号
(柱位置)
杭(柱位置Y4-X2)の荷重状態
短期軸力 固定度
加力方向
X方向正加力
X方向負加力
P1
(Y4-X2) Y方向正加力
Y方向負加力
Na
(kN)
1,458
1,414
2,348
524
α
0.735
0.731
0.805
0.661
杭の
杭の
杭頭
設計用
杭頭曲げ
許容
許容曲げ
せん断力 せん断力
モーメント
せん断力
モーメント
Ma
bMa
Qa
1.5×Qa
bQa
(kN・m)
(kN・m)
(kN)
(kN)
(kN)
318
418
210
314
457
315
413
209
313
453
367
517
222
333
515
271
313
197
296
385
杭頭接合部
杭体
杭頭曲げモーメント Ma
700
800
杭体
設計用せん断力 1.5×Qa
700
600
600
500
400
Q(kN)
M(kN・m)
500
400
300
300
200
200
100
0
-3000
100
0
3000
6000
9000
0
-3,000
0
3,000
N(kN)
N(kN)
図 2.10.8 杭(柱位置Y4-X2)のN-M相関図、N-Q相関図
- 24 -
6,000
(10) パイルキャップの検討
杭とパイルキャップ間のせん断力の伝達について、図 2.10.9 に示す。
杭とパイルキャップとの間におけるせん断力の伝達は、パイルキャップにのみこんだ杭側面の
支圧応力により伝達されるものとし、建築基礎構造設計指針に従い、水平支圧応力度σh を式
2.10.2 により求め、パイルキャップコンクリートの許容圧縮応力度fa 以下であることを確認す
る。表 2.10.5 にσh、fa の例を示す。
図 2.9.9 杭頭接合部のせん断力の伝達機構
σh=Qa/(D×h)
(式 2.10.2)
ここで、
Qa:水平せん断力
D:杭径
h:杭のパイルキャップへののみ込み高さ
である。
また、パイルキャップのコンクリート強度はFc=21(N/mm2)であり、fa は式 2.10.3 で与えら
れる。
fa=(2/3)Fc
(式 2.10.3)
- 25 -
また、水平荷重により生じるパイルキャップのパンチングシアー破壊を想定して、基礎構造設
計指針に従い、水平方向パンチングせん断強度τh を式 2.10.4 により求め、パイルキャップコン
クリートの許容せん断応力度τa 以下であることを確認する。表 2.10.5 にτh、τa の例を示す。
τh=Qa/(v(2h+D+2v))
ここで、
v:杭側面からパイルキャップ側面までの距離(へり空き)
である。
また、τa は式 2.10.5 で与えられる。
τa=(2/30)Fcかつ 2×(0.5+(1/100)Fc)
表 2.10.5
杭番号
(柱位置)
加力方向
X方向正加力
X方向負加力
P1
(Y4-X2) Y方向正加力
Y方向負加力
(式 2.10.5)
パイルキャップ(柱位置Y4-X2)に発生する応力
杭頭
のみ込み 水平支圧
杭径
せん断力
高さ
応力度
Qa
(kN)
210
209
222
197
(式 2.10.4)
D
(mm)
h
(mm)
600
100
σh
(N・m)
3.49
3.48
3.71
3.28
パイルキャップ
パンチング パイルキャップ
の
へり空き せん断
の
許容圧縮応力度
強度
許容せん断応力度
fa
v
τh
τa
(N・m)
(mm)
(N・m)
(N・m)
0.399
0.398
14.0
350
1.40
0.423
0.375
これより、杭とパイルキャップ間のせん断力の伝達により、パイルキャップコンクリートに発
生する応力は、コンクリートの許容応力度以内であることが確認できる。
(11) 端板厚さの検討
「2.8 端板仕様」に、軸力 0kN時において接合部耐力が杭体耐力と同等となるアンカー
筋の本数、およびその際のアンカー筋の配置に対する端板の応力解析を基に、安全となる端板の
厚さが示されている。
本設計の端板の仕様は、表 2.8.1 に従い、表 2.10.6 とする。
表 2.10.6 端板の仕様
上杭仕様
杭径
杭番号
杭長
杭種
[肉厚]
(m)
(mm)
PHC杭
600
5
P1
2
[90]
105N/㎜ C種
- 26 -
端板仕様
板厚
(mm)
材質
19
SM490
3.施工マニュアル
3.1 概要
SR パイルアンカー工法を適用する杭は、PHC 杭(節杭含む)、PRC 杭(節杭含む)、SC 杭で
ある。
SR パイルアンカー工法は、杭頭端板のねじ孔に SR パイルアンカーをねじ接合する工法である
ため、杭の設置後もねじ孔が健全な状態で残されている必要がある。
また、杭頭のパイルキャップへののみ込み高さは、杭頭の回転を妨げないように、表 3.1.1 に
示す値とする。杭施工において杭頭レベルが下がりすぎた場合は、パイルキャップ下端を下げて
所定のパイルキャップへの杭のみ込み高さを確保することとする。杭施工において杭頭レベルが
上がりすぎた場合は、構造設計者と別途検討することとする。
さらに、杭の中空部は施工時に残置された土またはソイルセメントのままとする。これは、中
空部がパイルキャップコンクリートに置き換わると杭頭の回転が妨げられるためである。
また、杭頭端板に杭の打設用回転金物(ヨーカン)がある場合は、杭の外周にはみ出ている部
分を切断する、又は金物そのものを除去する必要がある。これは、杭頭の金物が杭の外周にはみ
出ていると、杭頭の回転が妨げられるためである。
表 3.1.1 パイルキャップへの杭のみ込み高さ
杭径
杭のみ込み高さ
許容範囲
φ300~φ450
50mm
+(25mm)
,-(25mm)
φ500~φ1200
100mm
+(50mm)
,-(50mm)
※ただし、杭頭レベルがマイナスの場合は、パイルキャップ下端を下げ
て所定の杭のみ込み高さを確保する。
パイルキャップ
定着板
アンボンドアンカー
SRパイルアンカー
定着筋
端板
杭のみ込み高さ
(捨コン)
(砕石)
地盤
杭
ソイルセメント
土又はソイルセメント
図 3.1.1 工法概要図
- 27 -
3.2
標準施工方法
<標準施工フローチャート>
杭の搬入
(1)杭種、端板等の確認
(2)端板ねじ孔の養生
杭の打設
掘削
捨てコン打設
SR パイルアンカーの製造
(4)回転金具の切断又は除去
SR パイルアンカー工法
(5)端板の清掃
(6)ねじ込み位置の確認
(3)SR パイルアンカーの受入確認
(7)ねじ孔の清掃
(8)SR パイルアンカーのねじ込み
(9)接合部検査
(10)定着板の取り付け
(11)錆止め剤の塗布
(12)パイルキャップ等の配筋
内は SR パイルアンカー工法の施工範囲
- 28 -
<標準施工手順>
(1) 杭の受入検査時に杭種と杭径のほか、端板厚さとねじ孔径および数を確認する。
(2) 杭の施工前に、杭頭端板のねじ孔に土やソイルセメント等が入り込まないように、原則は
ゴムキャップで、やむをえない場合は布製ガムテープ等の養生材で養生する。プレボーリ
ング工法で用いる杭頭部回転ピン等の端板に溶接するものは、ねじ孔から避けて取り付け
る。
(3) 納入された SR パイルアンカーの径、全長、ねじ接合のためのねじ長さを確認する。また、
SR パイルアンカーに著しい錆、その他アンボンド効果に悪影響を及ぼす恐れのある物質
が付いていないか確認し、著しい錆等がある場合は除去する。
(4) 杭の施工完了後(捨てコン打設後)、杭頭端板に杭の打設用回転金物(ヨーカン)がある
場合は、金物の杭の外周にはみ出ている部分を切断する、または金物そのものを除去する。
また、金物がねじ孔を塞ぐために、規定本数のSRパイルアンカーを設置できない場合は、
金物を除去する。
(5) 端板のねじ孔の養生材を外して、端板を清掃する。養生に布製ガムテープを用いた場合に
はカワスキ等を用いて清掃を行う。また、ねじ孔の破損や端板の変形がないことを確認す
る。ねじ込みに支障があるような不具合が見つかった場合は対策を講じる。
(6) SR パイルアンカーの配置は、孔の数と SR パイルアンカーの本数により、等間隔になら
ない場合がある。その場合には、設計図書により指示された標準配置を確認して、十分注
意して、なるべく等間隔になるようにねじ込み位置を決定する。また、杭の施工後、ねじ
孔の破損等により予定したねじ孔が使えない場合には、設計図書の標準配置に最も近い配
置になるように、ねじ込み位置を決定する。SR パイルアンカーを片側に偏って配置する
と、設計上の耐力と剛性を確保できないので、そのような配置は行わない。
(7) SR パイルアンカーを取り付けるねじ孔を清掃する。土やソイルセメントによりねじ孔が
ふさがれている場合には、ねじ山を傷めないようにワイヤーブラシなどを使用してきれい
に除去する。ねじ孔を塞いでいるものが泥水などであれば、ブロアーにより泥水を吹き飛
ばして孔内をきれいにする。
(8) 締め付け金具(パイプレンチ・インパクトレンチなど)を用いて、SR パイルアンカーを
ねじ孔に端板の厚さ以上ねじ込む。
(9) ねじ込み量が端板の厚さ以上であることを、端板上面よりの長さで確認する。あらかじめ
SR パイルアンカーに施されたマーキングを利用して、ねじ込み後、マーキングと端板上
面までの距離を測定して、ねじ込み量が端板の厚さ以上であることを確認する。ねじ込み
量が十分とれない場合には、SR パイルアンカーやねじ孔のねじ部に汚れや傷などが無い
かどうか再確認し、無理やりねじ込まないよう適正な処置を取る。
※杭内部のコンクリートの影響により端板厚さ以上ねじ込めない場合は、最小ねじ込み深
さにて管理する事とする。
- 29 -
(10) 定着筋の上部に定着板を取り付ける。定着板は二つの六角ナットを用いて上下からはさん
で、締め付ける。
(11) 定着筋に錆止め剤(JIS K 2241(切削油剤)、JIS K 2246(さび止め油)
、JIS K 5621(一
般用さび止めペイント)
)を塗布する。
(12) パイルキャップや基礎梁の配筋を行う。その際に、SR パイルアンカーを曲げると付加的
なせん断応力がねじ部に作用してねじを痛めるおそれがあるため、SR パイルアンカーを
曲げてはならない。
- 30 -
3.3
施工管理チェックシート
ねじ込み式 SR パイルアンカー工法
・工 事 名 称
・施 工 場 所
・施 工 日
・指定施工店
平成
年
月
施工管理記録
(
)
・作 業 時 間
・施工管理技術者
日
注意事項
1.SR パイルアンカーの径、全長、ねじ長の確認
2.母材の規格をミルシートで確認
3.ねじ込み確認のためのマーキングが所定の長さか
(マーキング長 L=100mm)
4.ねじ孔の清掃をきちんと行ったか
・施工検査項目
検査項目
1)SR パイルアンカーの配置の著しい偏り
2)ねじ込み量
3)緩み
/
チェック欄
判定基準
あってはならない
端板厚さ以上
あってはならない
検査方法
目視
スケール
目視および手
検査数量
全数
全数
全数
・SR 取付仕様
杭径
杭種
(mm)
SR 仕様
(本)
端板厚
基準 La 長さ
最小ねじ込み長
最小 La 長さ
(mm)
(mm)
(mm)
(mm)
・各杭の仕様と検査結果
杭 No.
杭径
(mm)
杭種
定着筋
定着筋径
本数
(mm)
測定位置
La
(mm)
著しい偏り
ねじ込み量
L-La
緩み
備考
※記録の記載はねじ込み長が一番浅いものを記載する。備考に端板厚さを確保出来なかった本数を記載する。
・検査の結果、否の場合の処置
現場工事管理者
マーキング
印
- 31 -
スケール
で測定 La
L=100m
端板
SRパイルアンカー工法研究会 岡部株式会社 ジャパンパイル株式会社 株式会社フジタ 株式会社安藤・間 09.08③