1 - NIHS

シングルユースシステムを用いたバイオ医薬品製造に関する公開討論会
シングルユースシステムを用いて製造されるバイオ医薬品
の品質確保の課題
1st October, 2014
武田薬品工業
グローバル治験薬品質保証部
奥村 剛宏
なぜ製造設備にシングルユースシステムを導入するのか?
• 初期投資の費用を削減し、建設期間を短縮する
• 設備メンテナンスを削減できるため、設備のダウンタイム、メンテナンスコスト
が減少する
• 施設にFlexibilityをもたせ、幅広いスケール、製造ライン、製法に対応できる
• CIP/SIPを省略し、製造時間の短縮、洗浄バリデーションおよびエネルギーコ
ストを削減できる
• 製品間の交差汚染を防止する
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シングルユースシステムが製造や製品品質に影響を及ぼ
すリスクの要因は?
•
•
•
抗体医薬品は、生物材料を起源としたものであり、生産プロセスに変動要因が多
く、複雑で変化しやすい性質をもっている。
また、抗体医薬品は低分子と異なり、構造上不均一性を防ぐことはほとんど不可
能であるため、構造・組成、性質、生物活性などの特性解析から製品を評価する
シングルユースシステムはプラスチック製であり、これら製品由来の物質が製造
や製品品質に影響を及ぼす可能性がある
シングルユースシステムがバイオ医薬品の安全性、品質、生産性に影響を及ぼすリ
スク要因は?
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–
–
–
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バイオバーデン
エンドトキシン
異物
不溶性微粒子
Extractable/Leachable
完全性
BSE/TSE
シングルユースシステムが製造や製品品質に影響を及ぼ
すリスクの要因は?- 続き
• リスク要因が製造や製品にどのような影響を及ぼすのか?バイオ医薬品の
品質評価だけでは評価できない
– 製造プロセスへの影響(培養不良など)?
– 製品特性の同等性?
• 一方、製造プロセスで、これらの因子が取り除かれ、リスクが軽減できることも
ある
• シングルユースシステムが及ぼす影響は、品質試験だけでなく、その特性や
製造プロセスを含めた評価が必要である
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シングルユースシステムにおけるリスクは何か?
•
サプライヤーに依存するシングルユース製品の品質確保
– 理化学的・微生物学的品質試験はすべてサプライヤーのみで実施されている
– γ線照射後の無菌状態を保持するため、一重あるいは二重袋で梱包されており、中の
状態が確認しづらく、使用直前まで製品状況を確認できない
– 洗浄を実施しないReady to use製品では、異物管理はサプライヤーに依存する
•
複数のサプライヤーの製品から構成される複雑な製造ライン
– カスタマーごとに仕様が異なるいくつものアッセンブリ品かつ複数のサプライヤーの製
品を組み合わせている
•
Extractable/Leachableによる製品安全性への影響
– サプライヤーで持つ製品ごとのExtractableデータベース
– 複数のサプライヤーからの部品で構成されており、製品および製造プロセスは企業独
自となるため、Leachableが予測不能
•
シングルユース製品の破損や漏れに伴う製品の漏えい
– サプライヤーの品質管理体制
– カスタマイズ時のデザイン
– 輸送時の梱包形態、ユーザーのハンドリングおよびオペレーション
•
4
サプライヤーに依存するシングルユース製品の供給体制
シングルユースシステム導入に際して考えるべきポイントは?
• シングルユースシステムを製造するサプライヤーの評価
• 購入するシングルユースシステムの品質
• シングルユースシステムを使用する製造プロセスからの評価
デザイン
仕様
(URS)
– 生産能力、除去能力
納入
• 製造したバイオ医薬品の品質
組み立て、
設備変更
サプライヤーQualification
品質規格
品質契約
受入試験
製造
水運転、Eng.run
E/L評価
製品試験
Eng.run
出荷
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シングルユースシステムとサプライヤーの現状
その他シングルユース製品を受け入れる場合の注意点は?
• アッセンブリ品は、構成部品の多さ、納入に時間を要することから、新しい製
品をすぐに入手することができない。そのため、企業としてシングルユースの
安全在庫は必ず手元に確保しておく(カスタマイズ品は最低数ヶ月は必要に
なる)
• サプライヤーに製品品質を依存するところが多い。しかし、大手サプライヤー
製造工場は海外であるため、円滑なコミュニケーションには、日本法人や代
理店と信頼関係を構築する
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–
6
担当者とは直接情報共有できる機会を設ける
納入に立ち会う
シングルユース品の取り扱いの指導をうける
日本法人を通して製造工場へフィードバックを行ってもらう
サプライヤーのQualification
• 製造プロセスに使用するシングルユース製品をリスト化
– 構成するシングルユース製品、サプライヤー、製造サイトを特定
• サプライヤーのQualification
– 複数のサプライヤーの多くの製品から構成されるため、すべてのサプライヤー・製
造サイトをOn-site auditするのは時間とコストを要する。
– 2ndサプライヤーはOn-site auditができないケースもある
– 製品品質に直結するシングルユース製品の品質、特性などのうち、サプライヤー
に依存する項目を特定し、リスク評価を行う。
•
•
•
•
•
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アッセンブリ品の仕様
発注と納入
Qualification(Questionnaire, On-site audit)ーリスク評価に基づいて決定
品質契約
供給能力、BCP(複数工場)
サプライヤーのリスク評価
適切なサプライヤー管理によるシングルユース製品の品質確保のために・・・
• すべてのシングルユース製品をリストアップ
• 品質特性(エンドトキシン、バイオバーデン、不溶性微粒子、完全性、異物)、
入手性、使用される製造プロセス、シングルユースと製品との接触などにつ
いてリスク分析、数値化(事業継続性、事業経験などビジネス観点も重要)
– 過去の経験、プロセスの理解度に基づいてRPNの計算式、判定基準を設定
– 製造部門のみで実施するのではなく、SME(製造、エンジニア、QC等)とQAを含
むチームで検証。必要に応じて社外専門家を活用
• RPNの高いものを特定
例) 培養工程のシングルユースバッグ:無菌性保証、アッセンブリ中のフイルタが
異物確認できない
例)精製工程のシングルユース品:微生物や微粒子を後工程で除去できない
• 適切なサプライヤー管理を行なう
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サプライヤーへの技術訪問、監査で確認すべきこと
•
通常の監査項目:
– 品質システム全般 (ISOまたはGMP基準)
– 製造エリア・倉庫等のレイアウト、グレード、環境管理
•
サプライヤーとして
– 事業継続計画(Business Continuity Plan)
加えて、アッセンブリ製品の製造サイトについては以下の事項をOn-siteで確認
(マニュアル組み立てであるため、規格試験だけでは完全に品質保証できない)
• 仕様を設定、変更するシステム
• ラインクリアランスの手順と記録(異物混入、間違った組み立ての防止)
• アッセンブリ作業の工程管理、記録、作業者の教育および適格性評価
• 工程管理による製品品質の保証- 異物、完全性試験、滅菌
• ガンマ線滅菌の手順、validation
• ベンダーQualificationのシステム(ガンマ線滅菌業者を含む)
• 輸送方法の検証方法(アッセンブリ品は壊れやすい)
• E/L試験施設(外部委託が多い)のデータ信頼性
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品質契約
• 製造に影響を与える製品のサプライヤー/製造サイトと品質契約を締結する
• 日本法人、代理店との売買契約があるため、その契約との整合性をはかる
• 品質契約に盛り込むべき項目は...
–
–
–
–
–
–
–
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品質基準(ISO9001, GMPなど)
製品規格・仕様
製造に影響する因子(γ線照射時間など)
記録管理、文書管理
監査
変更管理とカスタマーへの通知方法 (γ線照射時間
苦情と回収
シングルユースシステムの規格化と受入
製品規格
• 製造プロセス、製品品質に大きく影響を与えるシングルユースシステム(アッセン
ブリ、バック)については規格を設定し、管理する。
• アッセンブリ品については、仕様書を作成し、サプライヤーと共有し、また、規格
書にも盛り込む。
受入試験
• 受入れ時(梱包状態)と使用前(実際の製品)の2段階による確認を実施する。
•
受入試験時の検査項目
– 外観(破損等ないか)、
– Certificate of Release/Productの確認
– 滅菌済みインジケーターの確認(同梱の場合) など
•
使用前の検査項目
– 図面との照合
– アッセンブリの接続状態の確認
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設備のQualificationとEng.run
設備、製造プロセスとしての評価
• 個々のシングルユースが期待される設備である
ことを評価する
– 固定設備(たとえばステンレススチール)と同じよ
うな評価が望ましい
– しかし、IQ/OQと同じモノが使用されるわけでは
ない...
• プロセスを通して仕様にあった設備になってい
るかを保証する。
– 水運転、Eng.runによる製造プロセス全体として
の評価
要求仕様
(URS)
図面作成
DQ
IQ
OQ
水運転・Eng. run
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Extractable/Leachable評価のアプローチ
•
•
•
•
•
•
製造ラインは複数のサプライヤーの複数のシングルユース製品で構成される場
合がある。
製造プロセスは企業独自、あるいは製品独自のものである。
サプライヤーの情報でE/Lを特定するのは難しい。
製造プロセスごとにE/L発生のリスクを評価し、製造ラインで発生する可能性を総
合的に評価する。
E/L発生のリスク要因は?
補完データとしてワーストケースを想定したモデル液でのExtractables試験、毒
性評価を実施する。
課題点:
• 原料中に含まれる成分が明らかにされない場合が多く、E/Lの成分同定が困難
• E/L試験や毒性評価の方法はサプライヤーによって異なる。複数を組み合わせ
る場合は、企業が評価方法を判断している
• 自社データが多いサプライヤーのみの組み合わせや1社限定の仕様となってい
る
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Process Flow for Roadmap for Extractables and Leachables Evaluation
Initiate Extractables and Leachables Evaluation
リスクの高い
製造プロセス
の特定
Start process risk assessment
0. Single-use System identification
1. Location in process
2. Nature of product fluid (pH, polarity etc.)
3. Surface area
4. Contact temperature
5. Contact time
Start extractables evaluation using supplier’s data
当該プロセス
で用いるSU
製品のリスク
評価
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
Material compatibility
Conformity to “USP <88> Classification of Plastics”
Surface area
Contact temperature
Contact time
Pre-treatment steps
Flushing prior to use
Nature of product fluid (pH, polarity etc.)
Liquid movement
New risk was
found?
Continue to extractables and leachables evaluation
Develop procedure for process specific extractables testing
based on risk evaluation
1.
2.
3.
4.
Identify unit operations or devices to be tested
Select test fluid used
Set simulated process condition
Set acceptance criteria with the aid of certified
toxicologist(s) or according to PQRI approach
Perform process specific extractables testing
参考) BPSAのガイダンス
Submit evaluation report with
justification for no further testing on
extractables and leachables
Endorsed by CMC QA
No
Yes
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For New Process/Product
Essential
Accordingly
Endorsed by certified toxicologist(s)
when appropriate
Documentation of extractables data
Extractable/Leachableの評価
一般的な
ExtractablesとLeachablesの関係
Extractables
Leachables
リスクアセスメントの結果、
実際の製造プロセスに関して確認された
ExtractablesとLeachablesの想定
Extractables
一般的なAPI
製造プロセス
Leachables
in actual
process
Process Specific Extractables Testの範囲
Extractables
Leachables
in actual
process
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GMPにおける対応
 カスタマー側でのシングルユースシステムの規格設定、受入れ試験設定
 取り扱いに関連するSOP制定(組み立て、破損時の対応手順など)
 QCおよび製造作業者の教育
 設備・製品の変更管理
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•
•
•
•
•
サプライヤー評価
設備としての評価
規格、受け入れ試験の設定
シングルユースを用いての製造の評価
Media fillによる無菌性保証(無菌製剤の場合)
関連する手順や教育 など
 製品品質照査
 当局とのリスク共有、薬事手続き
• 定期GMP査察
• 申請書の変更手続き
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ライフサイクルにおける品質管理
• 定期的なサプライヤー監査、サプライヤーとの信頼関係の構築
• 技術部門との継続的な情報共有
• 同一サプライヤーにおけるマイナー変更
– 前提: 変更内容が開示され、サプライヤーがE/L等のデータ開示、同等性保証
=> コンパラビリティスタディをしないと評価できないような変更はほとんどない?
– リスク評価を行い、同等性を検証(Eng.Run等)
• サプライヤーの変更(安価品への切り替え、供給停止など)
– 前提: 組成の詳細は開示されないため、従来品との同等性は判断できない。
– E/L評価法が標準化されていないため、従来品との同等性は不明
=> 新規にリスク評価を実施、コンパラビリティスタディによる評価の要否を判断
– 必要に応じて薬事手続き
=> 申請書の記載内容が変わらなければ届出不要。定期査察で確認される。
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今後の課題
• サプライヤー側の製品規格、試験法の標準化(特にE/L、Particle)
=> ユーザーの受入試験で品質確認が可能
• サプライヤー側のE/L提供データのレベル合わせ
• ユーザー側での使用前完全性試験の開発
• バック以外のシングルユース製品(チューブ、コネクタなど)品質評価
• リスク評価の手法、ノウハウ
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製薬企業メンバー
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アステラス製薬株式会社 笠原信夫
協和発酵キリン株式会社 上野浩尚
第一三共株式会社 矢野高広
武田薬品工業株式会社 奥村剛宏
中外製薬株式会社 磯野哲也
参考) Bpsaのガイダンス
Recommendations For Testing And Evaluation Of Extractables From Single-use
Process Equipment, 2010
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