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平成 26 年度 解析力学 講義ノート [12](担当:井元信之)
2014 年 7 月 24 日
前回の演習問題の答
[問 4.6]より、ポアソン括弧式の性質の一つ {uv, w} = u {v, w} + v {u, w} を証明せよ。
解答:
{uv, w}
=
! " ∂uv ∂w
∂uv ∂w
−
∂qi ∂pi
∂pi ∂qi
i
=
u
! " ∂v ∂w
#
∂v ∂w
−
∂qi ∂pi
∂pi ∂qi
i
#
=
! " ∂v ∂w
i
+v
#
∂u ∂w
∂v ∂w
∂u ∂w
u
+v
−u
−v
(1)
∂qi ∂pi
∂qi ∂pi
∂pi ∂qi
∂pi ∂qi
! " ∂u ∂w
i
∂qi ∂pi
−
∂u ∂w
∂pi ∂qi
#
= u {v, w} + v {u, w}
(2)
[問 4.8]中心力場の質点の運動を極座標を用いてハミルトン形式で解いて得られる (4.121) 式
pr = ±
$
2m[E − U (r)] −
α2
r2
は何を意味しているか。少し変形して説明せよ。
解答:両辺二乗して 2m で割ると
1 2
1 α2
pr = E − U (r) −
2m
2m r2
移項して、また α = pθ の関係を使うと
E=
1 2
1
pr +
p2θ + U (r) = T + U
2m
2mr2
すなわちエネルギー保存を意味する。
4.3. ハミルトン・ヤコビの方程式とリウビルの定理
4.3.3
83
シンプレクティック変換
正準変換の条件として
[1] 変換後の変数とハミルトニアンが正準方程式を満たすこと[(4.38) 式]
[2] 適切な母関数によって表現されること
[3] ポアソンの括弧式を変えないこと
があることを見て来た。ここではさらに
[4] シンプレクティック変換
を紹介する。これは正準変換の条件を多面的に見るのみならず、次項のリウビルの定理の導入となる。
いま変換前の一般座標と一般運動量を並べた 2n 次元のベクトルを
w ≡ (q1 , · · · , qn , p1 , · · · , pn )
とすると、ハミルトンの正準方程式は

 













dq1
dt
..
.
dqn
dt
dp1
dt
..
.
dpn
dt
 
 
 
 
 
 
=
 
 
 
 
 
 
0
0
0
···
..
.
0
1
0
0
···
0
0
0
0
−1 · · ·
..
.
0
0
···
···
..
.
0 0
1
· · · −1 0 · · ·
となる。真ん中の 2n × 2n の行列を J と書くと、これは
˙ = J ∇w H
w
···
..
.
または成分ごとに
0
(4.124)



0 



1
×1 


0 



0 

0
w˙ i =
'
∂H
∂q1
..
.
∂H
∂qn
∂H
∂p1
..
.
∂H
∂pn
Jij














∂H
(4.125)
(4.126)





dp1
dt
..
.
dpn
dt





 −1 · · · 0 0


 0 ... 0 0

0 · · · −1 0
0 



0 

0
···
..
.
···
となる。真ん中の 2n × 2n の行列を J と書くと、これは
˙ = J ∇w H
w
84
または成分ごとに
w˙ i =
'
j
∂H
∂p1
..
.
∂H
∂pn





∂H
Jij
(4.126)
∂w
第 4 j章 ハミルトン形式の力学
と書かれる。J は
0 および単位行列
1 を用いて
となる。ただし
(Mnt次元のゼロ行列
) は M の転置行列で、
(M t )kl はその
kl 成分である。ベクトルと行列で書けば、


0 1t
W H
J ∇W
H
= M JM ∇
(4.132)
J=
(4.127)
−1 0
を意味する。この式は Ax = Bx の形をしている。ここで行列 A = J 、B = M JM t 、ベクトル x= ∇W H で
とも書かれる。同様に変換後の一般座標と一般運動量を並べた 2n 次元のベクトルを
ある。もし A と B が先に与えられている問題ならばこれは x を決める固有方程式であるが、今の場合 x は変
W ≡ (Q1 , · · · , Qn , P1 , · · · , Pn )
(4.128)
分 {δq , δp } と {δQ , δP } を関係づける量とみなせる(証略)ため、逆に、
x が変化しても成り立つためには
i
i
i
i
A
= B でなければならない、ということを主張する式となっている。すなわち
とすると、変換後もハミルトンの正準方程式が成り立つとすれば
Jまたは
= M JM t W
˙i=
˙ = J ∇W H
W
'
j
Jij
∂H
∂Wj
(4.133)
(4.129)
でなければならない。このような変換 M を シンプレクティック変換(symplectic transform)という。
である。一方、
4.3.4
' ∂Wi dwj
' ∂Wi '64 ∂H
' ∂Wi '
' ∂H ∂Wl
dWi
=
=
Jjk
=
Jjk
dt
∂wj dt
∂wj
∂wj
∂Wl ∂wk
4.1.3∂wk1次元調和振動子
リウビルの定理とリウビル方程式
j
j
j
k
k
(4.130)
第4章
ハミルトン
l
バネ定数
m の質点が x 軸に沿って往復運動をしている。バネの自然
i
であるから、いま dw から dW への変換行列 M を成分で
Mijk のバネに付けられた質量
≡ ∂W
リウビルの定理
∂wj と定義すると
質点の座標を x = 0 とすると、この系のハミルトニアン H = T + U は
'
' ∂Wi '
' ∂Wl ∂H
'
∂H
∂H
1
再び 4.1.3 節の1次元調和振動子を思い出そう。図
Jil
=
Jjk 4.3 すなわち規格化する前の元の
=
Mij Jjk (M t )kl xHと= px1 の位相空間での
p2 + kx2(4.131)
∂Wl
∂w
∂w
∂W
∂W
2m x 2
j
k
l
l
j
l
k
l
jkl
軌跡を考える。ここで一点の軌跡を追うのでなく、点の確率分布を考え、その確率密度関数
ρ(x, px ) の動きを
である。正準方程式は
dx
dt
1
m
= px および
追う17 。初期条件の情報が確率的にしかわからない状況は、統計力学ではよくあることである。
dpx
= −kx
dt
となる。x = x0 cos ωt の解を仮定すると
第 4 章 ハミルトン形式の力学
mω 2 x
84
px = −mωx0 sin ωt
および
0
x=
k
となる。ただし (M ) は M の転置行列で、(M )kl はその
kl 成分である。ベクトルと行列で書けば、
となる。よって
k = mω 2 である。以後 k を ω で表すと、
t
cos ωt
t
J ∇W H = M JM t ∇W H
1 2 1 2
m
m
p + kx = ω 2 x20 (sin2 ωt + cos2 ωt) = ω 2 x20 = E (const.)
(4.132)
2m x 2
2
2
さらに x0 の代わりに保存量であるエネルギー E を使うことにすると、(4.20) は
t
を意味する。この式は Ax = Bx の形をしている。ここで行列 A = J 、B = M!
JM
Hで
2E 、ベクトル x= ∇W√
x=
cos ωt および px = − 2mE sin ωt
2
mω
ある。もし A と B が先に与えられている問題ならばこれは x を決める固有方程式であるが、今の場合
x は変
となる。この軌跡を位相空間(x, px 平面)にプロットすると図 4.3 の一番外側の楕円になる。図で
分 {δqi , δpi } と {δQi , δPi } を関係づける量とみなせる(証略)ため、逆に、x が変化しても成り立つためには
小さいいくつかの E の値について軌跡を示した。エネルギー E がより大きい場合も、原点を中心
A = B でなければならない、ということを主張する式となっている。すなわち
い楕円が重なって行くだけである。媒介変数である時間 t が経つにつれ、どの楕円上も (x, px ) 点
時計回りに回転する。しかしそのようなアニメーションがなくても動きは容易に想像でき、この図
J =次元調和振動子の運動はただ一種類
M JM t
(4.133) ω で回る — だけである
— 位相空間内の同心楕円のどれかを
かる。
でなければならない。このような変換 M を シンプレクティック変換(symplectic transform)という。
4.3.4
リウビルの定理とリウビル方程式
リウビルの定理
√
− 2mE sin
px
=x
=
!
2E
mω 2
再び 4.1.3 節の1次元調和振動子を思い出そう。図 4.3 すなわち規格化する前の元の x と px の位相空間での
図 4.3: 1次元調和振動子の位相空間上の軌跡。
軌跡を考える。ここで一点の軌跡を追うのでなく、点の確率分布を考え、その確率密度関数
ρ(x, px ) の動きを
追う17 。初期条件の情報が確率的にしかわからない状況は、統計力学ではよくあることである。
もう一つ付け足すならば、x = px = 0 の原点は、バネの力や重力などが釣り合って質点が静止状
とを示す。すなわち自分からはそこから動かない固定点(fixed point)であるが、固定点には安定
安定なものと中立なもの6 がある。今の場合は安定な釣り合いを表す「安定な固定点」である。
17 一点の運動を追うということは確率密度関数が
位置
(x0 , p0x )
δ 関数すなわち ρ(x, px ) = δ(x − x0 , px − p0x ) となる場合であるが、その δ 関数の
が時間とともにどう動くかを追うことである。
4.1.4 剛体棒単振り子
長さ " の重さのない剛体棒の先に付いた質量 m の質点が重力加速度 g の重力場の中で運動してい
しては例題 2.4(図 2.2)と同じく、鉛直面内(紙面内)を動く。質点が紙面の手前や奥に振れる運
6 床に置かれたボールのように、ずらしたとき戻るわけでもどこかに行くわけでもないが、ずれたままとどまる。
4.3. ハミルトン・ヤコビの方程式とリウビルの定理
85
図 4.5 はその様子を概念的に描いたものである。初期時刻に x 軸上で負のところに示す濃淡のついた縦長の楕
円は初期の ρ(x, px ) の分布を濃淡で表したものである。時間とともに ρ(x, px ) は動くので ρ(t, x, px ) と書いて
4.3.
ハミルトン・ヤコビの方程式とリウビルの定理
85
もよい。調和振動子の場合それは
px 軸上に来たときは横長の楕円になり、再び x 軸上の正の地点に来ると元
と同じ縦長の楕円になる。図では確率分布を濃淡で表しているが、もしその分布が一様分布 — すなわち楕円
図 4.5 はその様子を概念的に描いたものである。初期時刻に x 軸上で負のところに示す濃淡のついた縦長の楕
の内側で一様確率で外側で確率が 0 — とすると、この楕円の形は横長になったり縦長になったりはするが、面
円は初期の ρ(x, px ) の分布を濃淡で表したものである。時間とともに ρ(x, px ) は動くので ρ(t, x, px ) と書いて
積は変わらない。そのことは x と px を伸縮して規格化し円軌道にした位相空間では全ての点が等角速度 ω で
もよい。調和振動子の場合それは px 軸上に来たときは横長の楕円になり、再び x 軸上の正の地点に来ると元
回転することから明らかである。
と同じ縦長の楕円になる。図では確率分布を濃淡で表しているが、もしその分布が一様分布 — すなわち楕円
の内側で一様確率で外側で確率が 0 — とすると、この楕円の形は横長になったり縦長になったりはするが、面
px
積は変わらない。そのことは x と px を伸縮して規格化し円軌道にした位相空間では全ての点が等角速度 ω で
回転することから明らかである。
=x
px
=x
図 4.5: 1 次元調和振動子の位相空間上の確率密度分布の変化。
このことは一般的に言えるだろうか? すなわち調和振動子に限らず一般に
• 位相空間上で初期の点が何らかの形状をした有限の領域で一様分布しているとして、正準方程式を満た
図 4.5: 1 次元調和振動子の位相空間上の確率密度分布の変化。
しつつ時間とともに動くとき、その形状は変われど領域の体積は変わらない
このことは一般的に言えるだろうか
? すなわち調和振動子に限らず一般に
と言えるだろうか? 系が散逸的でなければこれが言えるというのが
リウビルの定理(Liouville’s theorem)で
18
ある
。これが言えれば、微小領域に分けて重みを付けた確率密度分布としても、それぞれの微小領域の体積
• 位相空間上で初期の点が何らかの形状をした有限の領域で一様分布しているとして、正準方程式を満た
は変わらない。あるいはもう少し確率論的表現をとるならば、位相空間上での測度(
measure)は系の自然な
しつつ時間とともに動くとき、その形状は変われど領域の体積は変わらない
運動に伴って変わることはない。それを示そう。
と言えるだろうか? 系が散逸的でなければこれが言えるというのが リウビルの定理(Liouville’s theorem)で
(4.133) の両辺は行列なので、その行列式をとる。行列 A の行列式を |A| と書くと
ある18 。これが言えれば、微小領域に分けて重みを付けた確率密度分布としても、それぞれの微小領域の体積
|J| = |M | · |J| · |M t | = |M |2 · |J|
(4.134)
は変わらない。あるいはもう少し確率論的表現をとるならば、位相空間上での測度(
measure)は系の自然な
運動に伴って変わることはない。それを示そう。
となるので、|M | = ±1 である。ところで M は dw から dW への変換行列であったから、その行列式は変換
(4.133) の両辺は行列なので、その行列式をとる。行列 A の行列式を |A| と書くと
前の位相空間の体積素片 dq1 · · · dqn dp1 · · · dpn から変換後の位相空間の体積素片 dQ1 · · · dQn dP1 · · · dPn への
伸縮率であるヤコビアンそのものである。すなわち
|J| = |M | · |J| · |M t | = |M |2 · |J|
(4.134)
!
!
dQ1 · · · dQn dPM
· · dP
= dW
|M | への変換行列であったから、その行列式は変換
dq1 · · · dqn dp1 · · · dpn
(4.135)
となるので、|M | = ±1 である。ところで
dwn から
1 ·は
前の位相空間の体積素片 dq1 · · · dqn dp1 · · · dpn から変換後の位相空間の体積素片 dQ1 · · · dQn dP1 · · · dPn への
である。今の場合 |M | = ±1 であるが、単なる変数変換なら |M | が −1 ということもあり得る。これは図形を
伸縮率であるヤコビアンそのものである。すなわち
裏返しにするような変換である。3 次元の場合右ネジを左ネジにするような変換であり、それを多次元に一般
!
!
化したものである。しかし今は系の運動とともに
ρ(q,
p)
dQ1 · · · dQn dP1 · · · dPn = は時間に対し連続的に変化して行くので、どこかの時
|M | dq1 · · · dqn dp1 · · · dpn
(4.135)
刻で急に裏返しの図形にするようなダイナミクス — 物理的運動 — は考えられない。したがって |M | = 1 で
である。今の場合 |M | = ±1 であるが、単なる変数変換なら |M | が −1 ということもあり得る。これは図形を
ある。したがって、初期時刻の領域を D とするとき D の形は変化して行くわけだが
裏返しにするような変換である。3 次元の場合右ネジを左ネジにするような変換であり、それを多次元に一般
!
dq1 ρ(q,
· · · dq
dp1 · · · dpn
(4.136)
化したものである。しかし今は系の運動とともに
p)nは時間に対し連続的に変化して行くので、どこかの時
D
刻で急に裏返しの図形にするようなダイナミクス — 物理的運動 — は考えられない。したがって |M | = 1 で
は運動の恒量となる。これがリウビルの定理である。
18 系が散逸的である場合は (4.59) のような時間に依存するハミルトニアンを使うと、この面積は小さくなって行き、調和振動子の場合
ある。したがって、初期時刻の領域を
D とするとき D の形は変化して行くわけだが
!
初期条件によらず最終的には x = px = 0 の原点に収まってしまう。なお量子力学の場合は
x と px の間に不確定関係があるため、散逸
があっても、時間が経っても最終的に面積は一定値となる。
dq1 · · · dqn dp1 · · · dpn
(4.136)
D
は運動の恒量となる。これがリウビルの定理である。
18 系が散逸的である場合は (4.59) のような時間に依存するハミルトニアンを使うと、この面積は小さくなって行き、調和振動子の場合
初期条件によらず最終的には x = px = 0 の原点に収まってしまう。なお量子力学の場合は x と px の間に不確定関係があるため、散逸
があっても、時間が経っても最終的に面積は一定値となる。
いことを言っている。一方、リウビル方程式は、位相空間の点 q, p を固定して定点観測した場合、ρ の時間変
化は(その時刻における){H, ρ} の値に一致することを言っている。
86 もう一つ、リウビル方程式と (4.83) 式
d
dt F
= {F, H} の類似性にも言及しておく。右辺の
H の位置が (4.138)
第 4 章 ハミルトン形式の力学
と逆になっている。(4.83) 式は質点(一つまたは複数)の運動に伴う物理量 F の時間変化を表す方程式である。
リウビル方程式
ρ は密度関数であって物理量ではない21 ので (4.83) 式を満たす必要はない。なお量子力学ではポアソンの括弧
d
「位相空間の領域 D は自然な運動によって形を変えても体積は変わらない」という様子は、流体力学におい
式を量子力学の交換子に換え、左辺に
i¯h を付ける。こうしてできる i¯h dt
F = [F, H] がハイゼンベルクの運動
86
第 4 章 ハミルトン形式の力学
19
d
22
て「
3 次元空間内の流体の領域
は流れと共に形を変えても体積は変わらない」のと同じである
。このこと
方程式であり、
i¯h dt
ρ = [H, ρ] D
がシュレーディンガー方程式である
。
20
86
第 4 章 ハミルトン形式の力学
は dρ/dt = 0 と表現される 。したがって
リウビル方程式
dρ
∂ρ ! ∂ρ dqj ! ∂ρ dpj
リウビル方程式
「位相空間の領域 D は自然な運動によって形を変えても体積は変わらない」という様子は、流体力学におい
=
+
+
= 0
(4.137)
dt
∂t
∂qj dt
∂pj dt
j
j
19
て「3 次元空間内の流体の領域 D は流れと共に形を変えても体積は変わらない」のと同じである 。このこと
「位相空間の領域 D は自然な運動によって形を変えても体積は変わらない」という様子は、流体力学におい
この
2 番目の等式にハミルトンの運動方程式を適用すると、
は
dρ/dt
= 0 と表現される20 。したがって
て「3 次元空間内の流体の領域 D は流れと共に形を変えても体積は変わらない」のと同じである19 。このこと
86
第 4 章 ハミルトン形式の力学
∂ρ 20 !dρ∂ρ ∂H
∂Hj ! ∂ρ dpj
∂ρ
∂ρ ! ∂ρ dq
は dρ/dt = 0 と表現される+
。したがって
−
= 0 すなわち = 0= {H, ρ}
(4.138)
=
+
+
(4.137)
∂t
∂p
∂t
dt∂qj ∂p
∂tj
∂qj ∂q
dtj
∂pj dt
リウビル方程式
j
j
j
dρ
∂ρ ! ∂ρ dqj ! ∂ρ dpj
=
+
+
= 0
(4.137)
が得られる。これを
リウビル方程式(
Liouville’s
equation
dρ/dt = 0 の別表現である。dρ/dt =
この
2 番目の等式にハミルトンの運動方程式を適用すると、
dt
∂t
∂q
∂pj dt
j dt )と呼ぶ。これは
「位相空間の領域
D は自然な運動によって形を変えても体積は変わらない」という様子は、流体力学におい
j
j
0て「
の意味するとことは、初期時刻に密度関数
ρ(q,∂ρ
p) を仮定したときに
ρ が大きな値の点
q, p もあれば小さな値
19
∂ρ !D ∂ρ
∂H !
∂H
∂ρ
32 次元空間内の流体の領域
は流れと共に形を変えても体積は変わらない」のと同じである
。このこと
この
番目の等式にハミルトンの運動方程式を適用すると、
+
−
= 0 すなわち
= {H, ρ}
(4.138)
∂t
∂q
∂p
∂p
∂q
∂t
の点もあるだろうが、任意の点から出発して質点の動きに乗って見れば、
ρ
の大きさは時間とともに変わらな
20
j
j
j
j
は dρ/dt = 0 と表現される 。したがって
j
j
∂ρ ! ∂ρ ∂H ! ∂ρ ∂H
∂ρ
いことを言っている。一方、リウビル方程式は、位相空間の点
q, p を固定して定点観測した場合、
ρ の時間変
+
− !
=!
0 すなわち
= {H, ρ}
(4.138)
が得られる。これを リウビル方程式(
Liouville’s
equation
)と呼ぶ。これは
dρ/dt
= 0 の別表現である。dρ/dt =
dρ
∂ρ
∂ρ
dq
∂ρ
dp
∂t
∂q
∂p
∂p
∂q
∂t
j
j
j
j
j
j
j
j
=
+
+
=
0
(4.137)
化は(その時刻における){H, ρ}
dtの値に一致することを言っている。
∂t
∂q
dt
∂pj dt ρ が大きな値の点 q, p もあれば小さな値
0 の意味するとことは、初期時刻に密度関数
ρ(q,
p)jを仮定したときに
j
j
d
が得られる。これを
リウビル方程式(
equation
)と呼ぶ。これは dρ/dt = 0 の別表現である。
=
もう一つ、リウビル方程式と
(4.83)Liouville’s
式 dt
F = {F,
H} の類似性にも言及しておく。右辺の
H の位置がdρ/dt
(4.138)
の点もあるだろうが、任意の点から出発して質点の動きに乗って見れば、
ρ の大きさは時間とともに変わらな
この 2 番目の等式にハミルトンの運動方程式を適用すると、
0と逆になっている。
の意味するとことは、初期時刻に密度関数
ρ(q, p) を仮定したときに ρ が大きな値の点
q, p もあれば小さな値
(4.83) 式は質点(一つまたは複数)の運動に伴う物理量
F の時間変化を表す方程式である。
いことを言っている。一方、リウビル方程式は、位相空間の点
q, p を固定して定点観測した場合、ρ の時間変
! ∂ρ ∂H
!
∂ρ
∂ρ
∂H
∂ρ
21
の点もあるだろうが、任意の点から出発して質点の動きに乗って見れば、
ρ は密度関数であって物理量ではない
ので
+
− (4.83) 式を満たす必要はない。なお量子力学ではポアソンの括弧
= 0 すなわち ρ の大きさは時間とともに変わらな
= {H, ρ}
(4.138)
19 これは液体のように非圧縮性流体の場合で、気体のように圧縮性流体の場合は運動とともに体積も変わり得る。
化は(その時刻における)
の値に一致することを言っている。
∂t {H,jρ}∂q
∂p
∂q
∂t
j ∂pj
j
j
d
j
∂
d
いことを言っている。一方、リウビル方程式は、位相空間の点
q,
p
を固定して定点観測した場合、
ρ
の時間変
20
式を量子力学の交換子に換え、左辺に
i¯h=
i¯h0dt)において非圧縮性条件
F = [F, H] がハイゼンベルクの運動
圧縮性流体も含めた連続の式 ∂t ρ + div(ρv)
0(書き換えると dt ρ + ρ div v =
div v = 0 を使うと得
dを付ける。こうしてできる
もう一つ、リウビル方程式と
(4.83) 式 dt
F = {F, H} の類似性にも言及しておく。右辺の
H の位置が (4.138)
られる。
d
22
化は(その時刻における)
{H,
の値に一致することを言っている。
が得られる。これを
Liouville’s equation)と呼ぶ。これは
方程式であり、
h dtリウビル方程式(
ρ = [H,
ρ] ρ}
がシュレーディンガー方程式である
。 dρ/dt = 0 の別表現である。dρ/dt =
21 どちらも q と pi¯
の関数の形をとるが、
ρ はそのような q と p が実現される確率密度なので情報の曖昧さを分布で表したものだが、
F
と逆になっている。
(4.83) 式は質点(一つまたは複数)の運動に伴う物理量
F の時間変化を表す方程式である。
d
もう一つ、リウビル方程式と
(4.83) 21
式 dt F ρ(q,
= {F,
の類似性にも言及しておく。右辺の
の位置が (4.138)
q と p が確定したとき計算される角運動量や運動エネルギーなどの力学変数である。
0はの意味するとことは、初期時刻に密度関数
p) H}
を仮定したときに
ρ が大きな値の点 q, pHもあれば小さな値
22 (4.138) の ∂/∂t がシュレーディンガー方程式では
ρ は密度関数であって物理量ではない
ので (4.83)
式を満たす必要はない。なお量子力学ではポアソンの括弧
d/dt になっているが、量子力学では
q と p を同時に精密に指定することはできな
と逆になっている。
(4.83) 式は質点(一つまたは複数)の運動に伴う物理量
F の時間変化を表す方程式である。
の点もあるだろうが、任意の点から出発して質点の動きに乗って見れば、
いので、ρ を位相空間上の密度関数という形では表さず、考えられる全ての状態の重ね合わせあるいは確率的混合の係数の時間変化とい
d ρ の大きさは時間とともに変わらな
式を量子力学の交換子に換え、左辺に i¯
h を付ける。こうしてできる i¯
h dt F = [F, H] がハイゼンベルクの運動
21
う形で表現する。したがってシュレーディンガー描像では位相空間上の定点で(あるいは軌跡上の動きに沿って)状態変化を見るという
ρいことを言っている。一方、リウビル方程式は、位相空間の点
は密度関数であって物理量ではない
ので (4.83) 式を満たす必要はない。なお量子力学ではポアソンの括弧
q, p を固定して定点観測した場合、ρ の時間変
d
方程式であり、
i¯
h dt
ρ = [H, ρ] がシュレーディンガー方程式である22 。
見方をせず、状態変化に含まれる情報の中に、古典的極限として軌跡上の動きが含まれているのである。
d
式を量子力学の交換子に換え、左辺に
i¯h を付ける。こうしてできる i¯h dt
F = [F, H] がハイゼンベルクの運動
化は(その時刻における){H, ρ} の値に一致することを言っている。
d
22
d
方程式であり、
i¯h dt
ρ = [H, ρ] がシュレーディンガー方程式である
。
もう一つ、リウビル方程式と
(4.83) 式 dt
F = {F, H} の類似性にも言及しておく。右辺の
H の位置が (4.138)
と逆になっている。(4.83) 式は質点(一つまたは複数)の運動に伴う物理量 F の時間変化を表す方程式である。
ρ は密度関数であって物理量ではない21 ので (4.83) 式を満たす必要はない。なお量子力学ではポアソンの括弧
d
式を量子力学の交換子に換え、左辺に i¯
h を付ける。こうしてできる i¯
h dt
F = [F, H] がハイゼンベルクの運動
d
方程式であり、 i¯
h dt
ρ = [H, ρ] がシュレーディンガー方程式である22 。
19 これは液体のように非圧縮性流体の場合で、気体のように圧縮性流体の場合は運動とともに体積も変わり得る。
20 圧縮性流体も含めた連続の式 ∂ ρ + div(ρv)
∂t
= 0(書き換えると
div v = 0)において非圧縮性条件 div v = 0 を使うと得
られる。
21 どちらも q と p の関数の形をとるが、ρ はそのような q と p が実現される確率密度なので情報の曖昧さを分布で表したものだが、F
は q と p が確定したとき計算される角運動量や運動エネルギーなどの力学変数である。
22 (4.138) の ∂/∂t がシュレーディンガー方程式では d/dt になっているが、量子力学では q と p を同時に精密に指定することはできな
19 これは液体のように非圧縮性流体の場合で、気体のように圧縮性流体の場合は運動とともに体積も変わり得る。
いので、
ρ を位相空間上の密度関数という形では表さず、考えられる全ての状態の重ね合わせあるいは確率的混合の係数の時間変化とい
∂
d
20 圧縮性流体も含めた連続の式
ρ + div(ρv) = 0(書き換えると dt
ρ + ρ div v = 0)において非圧縮性条件 div v = 0 を使うと得
∂t
う形で表現する。したがってシュレーディンガー描像では位相空間上の定点で(あるいは軌跡上の動きに沿って)状態変化を見るという
られる。
19 これは液体のように非圧縮性流体の場合で、気体のように圧縮性流体の場合は運動とともに体積も変わり得る。
見方をせず、状態変化に含まれる情報の中に、古典的極限として軌跡上の動きが含まれているのである。
21
どちらも q と p の関数の形をとるが、ρ はそのような q と p が実現される確率密度なので情報の曖昧さを分布で表したものだが、F
d
ρ+ρ
dt
∂
d
20
ρ + div(ρv) = 0(書き換えると dt
ρ + ρ div v = 0)において非圧縮性条件 div v = 0 を使うと得
は q 圧縮性流体も含めた連続の式
と p が確定したとき計算される角運動量や運動エネルギーなどの力学変数である。
∂t
22 (4.138) の ∂/∂t がシュレーディンガー方程式では d/dt になっているが、量子力学では q と p を同時に精密に指定することはできな
られる。
21 どちらも q と p の関数の形をとるが、ρ はそのような q と p が実現される確率密度なので情報の曖昧さを分布で表したものだが、F
いので、
ρ を位相空間上の密度関数という形では表さず、考えられる全ての状態の重ね合わせあるいは確率的混合の係数の時間変化とい
は
q と p が確定したとき計算される角運動量や運動エネルギーなどの力学変数である。
う形で表現する。したがってシュレーディンガー描像では位相空間上の定点で(あるいは軌跡上の動きに沿って)状態変化を見るという
22 (4.138) の ∂/∂t がシュレーディンガー方程式では d/dt になっているが、量子力学では q と p を同時に精密に指定することはできな
見方をせず、状態変化に含まれる情報の中に、古典的極限として軌跡上の動きが含まれているのである。
いので、
ρ を位相空間上の密度関数という形では表さず、考えられる全ての状態の重ね合わせあるいは確率的混合の係数の時間変化とい
19 これは液体のように非圧縮性流体の場合で、気体のように圧縮性流体の場合は運動とともに体積も変わり得る。
う形で表現する。したがってシュレーディンガー描像では位相空間上の定点で(あるいは軌跡上の動きに沿って)状態変化を見るという
20 圧縮性流体も含めた連続の式 ∂ ρ + div(ρv) = 0(書き換えると d ρ + ρ div v = 0)において非圧縮性条件 div v = 0 を使うと得
∂t
dt
見方をせず、状態変化に含まれる情報の中に、古典的極限として軌跡上の動きが含まれているのである。
られる。
21 どちらも
q と p の関数の形をとるが、ρ はそのような q と p が実現される確率密度なので情報の曖昧さを分布で表したものだが、F
路をとる」と読み替えたことを思い出そう(図 1.1)。
第 5 章 最小作用の原理と特殊相対論における解析
力学
88
1.1
第 5 章 最小作用の原理と特殊相対論における解析力学
これは屈折の法則にも成り立つ。ただし距離ではなく所要時間3 を最小とするという表現をとる必要がある。図
5.1 左は屈折率の小さい媒質の点 P から大きな媒質の点 Q に至る経路を示す。考えられる経路の中で光が進む
5.1
最小作用の原理 C が選ばれるというのが フェルマーの原理(Fermat’s principle)である。
のに要する時間を最短にする経路
このとき屈折点でスネルの屈折の法則が満たされる(証略)。右の図は屈折率が縦方向に徐々に変わる媒質で、
5.1.1
フェルマーの原理
この場合も所要時間が最短となる経路が選ばれる。三次元的に屈折率が分布する場合も同様に考える。
解析力学は歴史的には変分原理に端を発しているが、それはハミルトンの最小作用の原理や位相空間でのハ
1
ミルトンの原理とは少し違った
モーペルテュイの最小作用の原理(
1747 年)と呼ばれるものであった。その
!"
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モーペルテュイはフェルマーの原理(1661 年)に触発されたという。フェルマーの原理もモーペルテュイの最
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小作用の原理も科学史的にはハミルトンの原理に昇華したと考えられようが、それ以上に、変分の考え方にい
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ろいろ違いがあることを見るにはよい題材である。
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第 1 章 1.1 節の極値問題で光の反射の法則を「光は点 P から鏡に反射して点 Q に至る距離を最小2 にする経
#"
路をとる」と読み替えたことを思い出そう(図 1.1)。
#"
1 ラグランジュの運動方程式を導いたハミルトンの最小作用の原理
(2.17) は、n 次元配位空間における初期時刻 t0 での初期座標 q0
および終時刻 t1 での終座標 q1 を固定し、その中間では任意の経路を考える。しかし δ q˙ は δq と独立でなく δ q˙ = (d/dt)δq という関係
図 5.1: 左:屈折率の小さな媒質から大きな媒質へ進む経路。右:屈折率が徐々に変わる媒質での経路。
を使った。一方正準方程式を導いた位相空間でのハミルトンの原理 (4.32) は一見 (2.17) と同じ式に見えるが、2n 次元の位相空間におい
て初期時刻 t0 での q0 , p0 および終時刻 t1 での q1 , p1 を固定し、その中間で δq と δp を独立に動かして位相空間内での経路を動かし
た。両者にはこのような違いがあるが、共通点は初期時刻と終時刻を固定することである。
この場合の変分原理は、始点 P と終点 Q は固定されているが、所要時間は経路ごとに変わるので時刻 tP と
2 問 1.1 に示したように最大となる経路の場合もあるので停留と言うのが正しいが、それもわかった上で最小という言葉を使う習慣で
tある。
Q は固定できない。むしろ δT = 0(T ≡ tQ − tP )となる経路を求める、あるいは tP を固定したとして δtQ = 0
となる経路を求めることが課題となる。問題としては最速降下線で所要時間を線素による線積分であらわした
(1.4) 式を最小にしたのと同じで、フェルマーの原理はまさに (1.4) 式の速度の大きさ v を屈折率 n に直して
88
第 5 章 最小作用の原理と特殊相対論における解析力学
これは屈折の法則にも成り立つ。ただし距離ではなく所要時間3 を最小とするという表現をとる必要がある。図
5.1 左は屈折率の小さい媒質の点 P から大きな媒質の点 Q に至る経路を示す。考えられる経路の中で光が進む
のに要する時間を最短にする経路 C が選ばれるというのが フェルマーの原理(Fermat’s principle)である。
このとき屈折点でスネルの屈折の法則が満たされる(証略)。右の図は屈折率が縦方向に徐々に変わる媒質で、
この場合も所要時間が最短となる経路が選ばれる。三次元的に屈折率が分布する場合も同様に考える。
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は、n 次元配位空間における初期時刻 t0 での初期座標 q0
および終時刻 t1 での終座標 q1 を固定し、その中間では任意の経路を考える。しかし δ q˙ は δq と独立でなく δ q˙ = (d/dt)δq という関係
を使った。一方正準方程式を導いた位相空間でのハミルトンの原理 (4.32) は一見 (2.17) と同じ式に見えるが、2n 次元の位相空間におい
て初期時刻 t0 での q0 , p0 および終時刻 t1 での q1 , p1 を固定し、その中間で δq と δp を独立に動かして位相空間内での経路を動かし
た。両者にはこのような違いがあるが、共通点は初期時刻と終時刻を固定することである。
2 問 1.1 に示したように最大となる経路の場合もあるので停留と言うのが正しいが、それもわかった上で最小という言葉を使う習慣で
図 5.1: 左:屈折率の小さな媒質から大きな媒質へ進む経路。右:屈折率が徐々に変わる媒質での経路。
ある。
1 ラグランジュの運動方程式を導いたハミルトンの最小作用の原理
#"
#"
この場合の変分原理は、始点 P と終点 Q は固定されているが、所要時間は経路ごとに変わるので時刻 tP と
tQ は固定できない。むしろ δT = 0(T ≡ tQ − tP )となる経路を求める、あるいは tP を固定したとして δtQ = 0
となる経路を求めることが課題となる。問題としては最速降下線で所要時間を線素による線積分であらわした
(1.4) 式を最小にしたのと同じで、フェルマーの原理はまさに (1.4) 式の速度の大きさ v を屈折率 n に直して
3 この表現の方が正しく反射の法則も含む。屈折率に応じて変化する波長を単位とすると所要時間に比例するので、そのような距離を
光学では光路長とか光学距離ということがある。
5.1. 最小作用の原理
89
δT = 0 ただし T ≡
5.1.
最小作用の原理
で表される。
c は光速度である。
!
Q
P
ds
1
=
v
c
!
Q
(5.1)
n(r)ds
P
89
さて媒質中を進む光の速度の大きさが v = c n(r) のように空間の位置 r で決まっている状況は、ポテンシャ
! Q
!
ル U (r) 中を進む質点と同じである。最速降下線問題がまさにそうなっているが、一様重力場を一般化した
U (r)
ds
1 Q
δT = 0 ただし T ≡
=
n(r)ds
(5.1)
"
v 2 +cU (r)
P 1 mv
P = E から v(r) = 2
中を進む場合、r の関数として決まる速度の大きさ v は、
E − U (r) と書か
2
m
#Q"
で表される。c は光速度である。
れる。それならば (5.1) の力学バージョンは δ P
E − U (r)ds = 0 という変分原理にならないだろうか?
さて媒質中を進む光の速度の大きさが v = c n(r) のように空間の位置 r で決まっている状況は、ポテンシャ
ル U (r) 中を進む質点と同じである。最速降下線問題がまさにそうなっているが、一様重力場を一般化した U (r)
"
5.1.2 モーペルテュイの最小作用の原理
2
中を進む場合、r の関数として決まる速度の大きさ v は、 12 mv 2 + U (r) = E から v(r) = m
E − U (r) と書か
#Q"
れる。それならば
(5.1) の力学バージョンは δ P E − U (r)ds
= 0 という変分原理にならないだろうか
? )
前項で最後に述べた「フェルマーの原理の力学バージョン」が
モーペルテュイの原理(
Maupertuis’ principle
あるいはモーペルテュイの最小作用の原理あるいは最小作用の原理(principle of least action)である。これは
5.1.2
モーペルテュイの最小作用の原理
• 保存系で系のエネルギー
= E の条件の下に配位空間内の始点 P と終点 Q を通る任意の軌道の中で実際
に実現するのは
前項で最後に述べた「フェルマーの原理の力学バージョン」が モーペルテュイの原理(Maupertuis’ principle)
! Q$
! tQ
! Q"
あるいはモーペルテュイの最小作用の原理あるいは最小作用の原理(
principle
)である。これは
δ
pi dqi = 0 あるいは δ
2T dt = 0 あるいは
δ of least
E −action
U (r)ds
=0
(5.2)
P
i
tP
P
i
tP
P
• 保存系で系のエネルギー = E の条件の下に配位空間内の始点 P と終点 Q を通る任意の軌道の中で実際
を満たすものである。
に実現するのは
と表現される。
2T の 2 !は変分的には意味はないが、保存力下では
L = 2T − E なので
! 2Q 番目の積分における
! Q"
tQ
$
δ
pi dqi = 0 あるいは δ
2T dt = 0 あるいは δ
E −3U番目の積分にもルート
(r)ds = 0
(5.2)
この積分は作用積分になり「最小作用の原理」の名に相応しくなる。それを引きずり
P
の中を 2m 倍したりする。
を満たすものである。
いまデカルト座標で (5.2) を導こう。実際に起こる正しい経路を xi (t) とし、この経路を E 一定の下で仮想
と表現される。2 番目の積分における 2T の 2# は変分的には意味はないが、保存力下では
L = 2T − E なので
t
的に動かしたときの運動エネルギーの変分 δ tPQ T dt を考える。この積分で注意すべきは(tP を固定したとす
この積分は作用積分になり「最小作用の原理」の名に相応しくなる。それを引きずり 3 番目の積分にもルート
ると)tQ は仮想変位した軌道ごとに変化し得る。それは「始点 P と終点 Q を通る全エネルギー E の軌道」と
の中を 2m 倍したりする。
いう制約があるからである。ここがハミルトンの原理と異なる。終時刻だけでなく、軌道を仮想変位させると
いまデカルト座標で (5.2) を導こう。実際に起こる正しい経路を xi (t) とし、この経路を E 一定の下で仮想
き各時刻 t で軌道だけ勝手に x!i (t) = xi (t) + #δxi (t) とすると「エネルギー
E の軌道」にならない。これを満た
tQ
的に動かしたときの運動エネルギーの変分
δ
T
dt
を考える。この積分で注意すべきは(
tP を固定したとす
すためには時刻も t! = t + δt とずらし、x!i (t! )tP= xi (t) + δxi (t) として自由度をもたせなければならない。こう
ると)tQ は仮想変位した軌道ごとに変化し得る。それは「始点
P と終点 Q を通る全エネルギー E の軌道」と
して初めて速度 x˙ !i (t! ) が「エネルギー = E 」を満たすようにできる4 。このように時刻もずらすことを考える
いう制約があるからである。ここがハミルトンの原理と異なる。終時刻だけでなく、軌道を仮想変位させると
と、運動エネルギー T の積分の変分は
き各時刻 t で軌道だけ勝手に x!i (t) = xi!
(t)tQ+ δxi (t) !
とすると「エネルギー
E の軌道」にならない。これを満た
! tQ
t!Q
! !
! dt =
δ x! (tT
T dt
(5.3)
すためには時刻も t! = t + δt とずらし、
) = x (t) +Tδxdt(t)−として自由度をもたせなければならない。こう
i
i
tPi
tP
tP
! !
4
! = E 」を満たすようにできる
!
して初めて速度
x
˙
(t
)
が「エネルギー
i
であるが、右辺第一項で積分変数を t から t に変更すると、dt → dt 。このように時刻もずらすことを考える
+ d(δt)、積分範囲の上限が t!Q → tQ 、そ
と、運動エネルギー
して被積分関数が T !T→の積分の変分は
T + δT となるので、
! tQ
! t!Q
! tQ
! tQ
! tQ ! tQ ! tQ
!
! !
δ
T
dt
=
T
dt
T dt T dδt −
δ
T dt =
(T + δT )[dt + d(δt)] − − T dt =
tP
tP
tP
tP
tP
tP
tP
tQ
δT dt
(5.3)
(5.4)
tP
!
!
!
であるが、右辺第一項で積分変数を
となる。変分の 2 次項は省略した。t から t に変更すると、dt → dt + d(δt)、積分範囲の上限が tQ → tQ 、そ
!
して被積分関数が
T ! δ→
T +=δT
となるので、
さて速度の変分は
x˙ i (t)
x˙ !i (t
) − x˙ i (t) であるので
! tQ
! tQ
! tQ
! tQ
! tQ
dx
dtT dt
d=
dxi
i
δ δ x˙ iT(t)
dt =≡ d(T[x+i (t)
δT+
)[dt
+
d(δt)]
−
T
dδt
−
δxi (t)] −
= ! [xi (t) + δxi (t)] − δT dt
!
dt tP dt dt
tP
tPdt
tP
tP dt
%
&
dxi dt
d
d(δt)
d
となる。変分の 2 次項は省略した。
=
− 1 + ! δxi (t) = −x˙ i (t)
+ δxi (t)
dt! dt!
dt
dt
dt
! !
さて速度の変分は
δ x˙ i (t) = x˙ it(t
) − x˙ i (t) であるので
4 軌道の空間的ずらし方を決めたら
! のずらし方が決まる。
δ x˙ i (t)
≡
=
4 軌道の空間的ずらし方を決めたら t!
d
dxi
dt d
dxi
[xi (t) + δxi (t)] −
= ! [xi (t) + δxi (t)] −
dt! %
dt
dt
dt
dt
&
dxi dt
d
d(δt)
d
− 1 + ! δxi (t) = −x˙ i (t)
+ δxi (t)
dt! dt!
dt
dt
dt
のずらし方が決まる。
(5.4)
(5.5)
(5.6)
(5.5)
(5.6)
第 5 章 最小作用の原理と特殊相対論における解析力学
90
である。ここで最後の等式では |d(δt)/dt| ! 1 に基づき
δT =
!
i
90
に代入すると
"1−
dt
dt!
dδt
dt
を用いた。これを
mi x˙ i (t)δ x˙ i (t)
第5章
(5.7)
最小作用の原理と特殊相対論における解析力学
"|d(δt)/dt| ! 1 に基づき# dt " !
!
である。ここで最後の等式では
1 − dδt
d(δt)
d
d(δt) !
d
dt!
dt を用いた。これを
δT =
mi x˙ i (t) −x˙ i (t)
+ δxi (t) = −
mi x˙ 2i
+
mi x˙ i δxi (t)
dt
dt
dt
dt
!
i
i
i
δT =
mi x˙ i (t)δ x˙ i (t)
i
積分して
$ tQ
$ tQ
! $ tQ
d
δT = −
2T d(δt) +
mi x˙ i δxi (t)dt
に代入すると
dt
tP
tP
tP
"
# i !
!
d(δt)
d
d(δt) !
d
右辺第二項を部分積分して
δT =
mi x˙ i (t) −x˙ i (t)
+ δxi (t) = −
mi x˙ 2i
+
mi x˙ i δxi (t)
dt
dt
dt
dt
i
i
$ tQ
$ tQ
$ tQ i!
δT = −
2T d(δt) −
mi x
¨i δxi (t)dt
積分して
$ ttQP
$ ttQP
!tP$ tQi
d
δT = −
2T d(δt) +
mi x˙ i δxi (t)dt
∂
dt
tP
tP
ここで mi a
¨i = Fi であり、Fi t=
P −
i
∂xi U であることから
右辺第二項を部分積分して
!
! ∂U
mi a
¨i δxi = −
T + U = E による。)
$ tQ ∂x δxi$=tQ−δU = δT (最後の等式は
$ tQ !
i
i
i
δT = −
2T d(δt) −
mi x
¨i δxi (t)dt
を使うと
tP
tP
tP
tP
tQ
(5.9)
(5.8)
(5.10)
(5.9)
(5.11)
(5.10)
δT dt
(5.12)
tP
!
! ∂U
これと (5.3) を比較すると
mi a
¨i δxi = −
δxi = −δU $=tQδT (最後の等式は T + U = E による。)
∂xi
i
i
δ
T =0
を使うと
を得る。
(5.7)
i
$ tQ
$ tQ
$
∂
ここで mi a
¨i = Fi であり、Fi = − ∂x
U
であることから
δT
dt
=
−
2T
d(δt)
−
i
tP
(5.8)
(5.11)
(5.13)
tP
$
tQ
tP
δT dt = −
$
tQ
tP
2T d(δt) −
$
tQ
δT dt
(5.12)
tP
このようにして、保存系で系のエネルギー = E の条件の下に配位空間内の始点 P と終点 Q を通る任意の
これと (5.3) を比較すると
$ tQ
軌道の中で実際 に実現するのはモーペルテュイの最小作用の原理を満たす経路であることが示された。これは
δ
T =0
(5.13)
フェルマーの原理の正当性も示したことになる。 tP
を得る。
ここまでモーペルテュイの原理を理論化したのはオイラーであると言われる。フェルマーの光の進行の考察
からモーペルテュイの原理を経て、それとは異なるハミルトンの原理が導かれ、正準方程式を導く一般化ハミ
このようにして、保存系で系のエネルギー = E の条件の下に配位空間内の始点 P と終点 Q を通る任意の
ルトンの原理と発展してきた。1905 年にアインシュタインが構築した特殊相対性理論においても、そして同
軌道の中で実際 に実現するのはモーペルテュイの最小作用の原理を満たす経路であることが示された。これは
じくアインシュタインが 1916 年構築した一般相対性理論においても最小作用の原理は依然として生きている。
フェルマーの原理の正当性も示したことになる。
最後に特殊相対性理論におけるそのありさまを概観する。
ここまでモーペルテュイの原理を理論化したのはオイラーであると言われる。フェルマーの光の進行の考察
からモーペルテュイの原理を経て、それとは異なるハミルトンの原理が導かれ、正準方程式を導く一般化ハミ
特殊相対性理論における解析力学
ルトンの原理と発展してきた。1905 年にアインシュタインが構築した特殊相対性理論においても、そして同
5.2
じくアインシュタインが 1916 年構築した一般相対性理論においても最小作用の原理は依然として生きている。
5.2.1 特殊相対性理論
最後に特殊相対性理論におけるそのありさまを概観する。
特殊相対性理論(special theory of relativity)はアインシュタインが 1905 年に提唱した理論5 で、「物理法
則はどの慣性系でも等しく成り立つ」ことと「光速度一定の原理は物理法則である」を謳う理論体系である。
5.2
特殊相対性理論における解析力学
一般相対性理論とともに今や実用的にも欠かせない理論である6 。
5 一般相対性理論はアインシュタインが
5.2.1
特殊相対性理論
1916 年に提唱した理論で、重力場と等加速度運動系が等価であることおよびそこまで広げて
物理法則はどの座標系でも同等であることを理論化した体系である。
6 最も身近な応用としては GPS や光ジャイロスコープがある。
特殊相対性理論(
special theory of relativity)はアインシュタインが
1905 年に提唱した理論5 で、「物理法
則はどの慣性系でも等しく成り立つ」ことと「光速度一定の原理は物理法則である」を謳う理論体系である。
一般相対性理論とともに今や実用的にも欠かせない理論である6 。
5 一般相対性理論はアインシュタインが
1916 年に提唱した理論で、重力場と等加速度運動系が等価であることおよびそこまで広げて
物理法則はどの座標系でも同等であることを理論化した体系である。
6 最も身近な応用としては GPS や光ジャイロスコープがある。
5.2. 特殊相対性理論における解析力学
5.2. 特殊相対性理論における解析力学
5.2. 特殊相対性理論における解析力学
91
91
91
5.2 特殊相対性理論における解析力学
5.2 特殊相対性理論における解析力学
5.2 特殊相対性理論における解析力学
5.2.1 特殊相対性理論
5.2.1 特殊相対性理論
5.2.1 特殊相対性理論
特殊相対性理論(special theory of relativity)はアインシュタインが 1905 年に提唱した理論5 で、「物理法
92 特殊相対性理論(special theory of relativity)はアインシュタインが
第 5 章 最小作用の原理と特殊相対論における解析力学
1905 年に提唱した理論5 で、「物理法
則はどの慣性系でも等しく成り立つ」ことと「光速度一定の原理は物理法則である」を謳う理論体系である。
特殊相対性理論(special theory of relativity)はアインシュタインが 1905 年に提唱した理論5 で、「物理法
則はどの慣性系でも等しく成り立つ」ことと「光速度一定の原理は物理法則である」を謳う理論体系である。
6
ローレンツ変換
一般相対性理論とともに今や実用的にも欠かせない理論である
。
則はどの慣性系でも等しく成り立つ」ことと「光速度一定の原理は物理法則である」を謳う理論体系である。
一般相対性理論とともに今や実用的にも欠かせない理論である6 。
6
特殊相対性理論によるとどの慣性系でも光速度は一定値 c となるが、これは相当直観に反する。が、事実で
一般相対性理論とともに今や実用的にも欠かせない理論である
。
上の例では時空の一点のイヴェントと複数点のイヴェントの違いを強調したが、計算を進めるためにもう少
特殊相対性理論によるとどの慣性系でも光速度は一定値 c となるが、これは相当直観に反する。が、事実で
7
ある
。同一イヴェント(同一事象)を異なる慣性系に乗る観測者達から見た場合、それが時空の一点での出来
特殊相対性理論によるとどの慣性系でも光速度は一定値
c となるが、これは相当直観に反する。が、事実で
し簡単な例を挙げる。いま列車の中央に乗る観測者
A が観測者
B(ホームに立っている)の目前を通過する
ある7 。同一イヴェント(同一事象)を異なる慣性系に乗る観測者達から見た場合、それが時空の一点での出来
7
事ならば観測者によらず時空の一点の出来事として観測されるが、時空の複数点での出来事は観測者によって
ある 。同一イヴェント(同一事象)を異なる慣性系に乗る観測者達から見た場合、それが時空の一点での出来
瞬間に、観測者
A も B も列車の前方に向け光パルスを放ったとしよう。この二つのパルスは観測者 A にとっ
事ならば観測者によらず時空の一点の出来事として観測されるが、時空の複数点での出来事は観測者によって
同時に観測されたり時間差をもって観測されたりする。例として高速でホームを通過する長さ
L の列車内の前
事ならば観測者によらず時空の一点の出来事として観測されるが、時空の複数点での出来事は観測者によって
ても
B にとっても同時進行し、同時に列車の前端に到達したように見える10 。つまりどちらの人が光パルスを
同時に観測されたり時間差をもって観測されたりする。例として高速でホームを通過する長さ
L の列車内の前
端に後端に向けて光パルスを発射する光源があり、後端には前端に向けて光パルスを発射する光源があるとす
同時に観測されたり時間差をもって観測されたりする。例として高速でホームを通過する長さ L の列車内の前
放ったかは関係なく、どちらか一つの光パルスでよい。以上のことを整合性よく記述するには、二つの慣性系
端に後端に向けて光パルスを発射する光源があり、後端には前端に向けて光パルスを発射する光源があるとす
る。列車の真ん中に乗っている観測者
A が二つの光パルスを同時に受けたとすると、その観測者は「L/2c 秒前
端に後端に向けて光パルスを発射する光源があり、後端には前端に向けて光パルスを発射する光源があるとす
は「空間座標だけ相対的に等速直線運動をしているが絶対時間を共有している」としたのではダメで、時間も
る。列車の真ん中に乗っている観測者 A が二つの光パルスを同時に受けたとすると、その観測者は「L/2c 秒前
に前端と後端で光パルスが同時に発射された」と解釈する。この様子をホームに立つ観測者
B から見ると、観
る。列車の真ん中に乗っている観測者 A が二つの光パルスを同時に受けたとすると、その観測者は「
L/2c 秒前
それぞれ固有の時間を持っているとしなければならない。
に前端と後端で光パルスが同時に発射された」と解釈する。この様子をホームに立つ観測者 B から見ると、観
8
測者
A が同時に二つの光パルスを受けた出来事はその通りに時空の一点のイヴェントとして観測するが
、前
に前端と後端で光パルスが同時に発射された」と解釈する。この様子をホームに立つ観測者
B から見ると、観
いまホームに立つ観測者
B の慣性系を K、その時空座標を t, x, y, z とし、列車に乗る観測者
A の慣性系を
8
測者
A が同時に二つの光パルスを受けた出来事はその通りに時空の一点のイヴェントとして観測するが
、前
9
8 B
後から発射された光パルスの光速度は観測者
B にとっても同じく c なので 、先に後端の光源が光って観測者
測者
A
が同時に二つの光パルスを受けた出来事はその通りに時空の一点のイヴェントとして観測するが
、前
!
!
! ! !
K後から発射された光パルスの光速度は観測者
、その時空座標を t , x , y , z とする。観測者BAにとっても同じく
が B の目前を通過する瞬間を共通の初期時刻とする。これは
c なので9 、先に後端の光源が光って観測者 B
9
を追い、次に前端の光源が光って観測者
A に対向し、同時に観測者
A に届く出来事のように観測者
B は見る。
後から発射された光パルスの光速度は観測者
B
!
! にとっても同じく c なので
Kを追い、次に前端の光源が光って観測者
座標系では t = 0 に相当し、K 座標系では
t = 0 に相当する。その瞬間
K、先に後端の光源が光って観測者
座標系の原点 O(x, y, z) =B(0,
0, 0)B
A
に対向し、同時に観測者
A
に届く出来事のように観測者
は見る。
5 一般相対性理論はアインシュタインが 1916 年に提唱した理論で、重力場と等加速度運動系が等価であることおよびそこまで広げて
を追い、次に前端の光源が光って観測者
A に対向し、同時に観測者
に届く出来事のように観測者
B は見る。
(物理法則はどの座標系でも同等であることを理論化した体系である。
= 観測者 B のいる位置)と K! 座標系の原点
O’(x! , y ! , z ! ) = (0, 0, 0)A
(=
観測者 A のいる位置)は一致してい
6 最も身近な応用としては
GPS や光ジャイロスコープがある。
1983 年から長さの単位はメートル原器でも Kr86 の原子線遷移の波長でもなく、光速度不変の原理から定義されている。
8 いつその同時事象が起きたかは観測者 A と B の持っている時計で違い得るが。
れる。いま初期時刻に原点
O を(したがって O’ を)出た光が列車の前端に到達したとしよう。そのときの前
9 音波の場合は、列車の気密が保たれ列車内の空気が列車と共に動く場合は、観測者 A は本来の音速を感じ観測者 B は列車の速度ベ
端の時空座標を
K 座標系で t, x, y, z 、K! 座標系で t! , x! , y ! , z ! とすると、 B が本来の音速を目撃し観測者 A は列車の速
クトルが足された音速を見る。列車が筒抜けで列車内を空気が吹き抜ける場合は、観測者
度ベクトルが引かれた音速を感じる。光は空気を伝わるのでなく真空を伝わるので気密も吹き抜けもなく、それぞれの慣性系にしたがっ
2
2
2 B にとって列車は吹き抜けに見える。
2 2
!2
!2
!2
2 !2
て観測者 A にとって列車は気密に見え、観測者
る。時刻合わせと空間の目盛り合わせは、同じ性能の時計と物差しを事前にそれぞれが持つことによってなさ
7
x +y +z =c t
および
x +y +z =c t
(5.14)
である。光速度 c だけは両者共通である。簡単のため x 軸および x! 軸の向きは列車の進行方向に一致してい
92
第 5 章 最小作用の原理と特殊相対論における解析力学
るとし、y 軸と y ! 軸それに z 軸と z ! 軸は相対運動していないので向きだけでなく目盛りも等しいとする。す
なわち
y ! = y 、z ! = z である。このとき t, t! , x, x! の間にどのような変換関係があるかが問題である。これは
ローレンツ変換
両式の両辺同士の差をとれば、
上の例では時空の一点のイヴェントと複数点のイヴェントの違いを強調したが、計算を進めるためにもう少
x2 − c2 t2 = x!2 − c2 t!2
(5.15)
し簡単な例を挙げる。いま列車の中央に乗る観測者 A が観測者 B(ホームに立っている)の目前を通過する
となる。これを満足する変換は、列車の速度を
v として
瞬間に、観測者 A も B も列車の前方に向け光パルスを放ったとしよう。この二つのパルスは観測者
A にとっ
10
t − (vx/c2 )
x − vt
ても B にとっても同時進行し、同時に列車の前端に到達したように見える
。つまりどちらの人が光パルスを
t! = !
, x! = !
, y ! = y, z ! = z
(5.16)
2
2
1 − (v/c)
1 − (v/c)
放ったかは関係なく、どちらか一つの光パルスでよい。以上のことを整合性よく記述するには、二つの慣性系
となる。これを
ローレンツ変換(Lorentz transformation)という。これは x 軸方向に等速直線運動をする座
は「空間座標だけ相対的に等速直線運動をしているが絶対時間を共有している」としたのではダメで、時間も
標系との変換関係であり、座標軸の向きや等速直線運動の向きが異なる場合はより一般のローレンツ変換とな
それぞれ固有の時間を持っているとしなければならない。
る。ローレンツ変換によって変わらない量をローレンツ不変量という。
いまホームに立つ観測者 B の慣性系を K、その時空座標を t, x, y, z とし、列車に乗る観測者 A の慣性系を
K! 、その時空座標を
t! , x! , y ! , z ! とする。観測者
A が B の目前を通過する瞬間を共通の初期時刻とする。これは
5 一般相対性理論はアインシュタインが
1916 年に提唱した理論で、重力場と等加速度運動系が等価であることおよびそこまで広げて
[問 4.9](5.16) が (5.15) を満たすことを示せ。
5 一般相対性理論はアインシュタインが
物理法則はどの座標系でも同等であることを理論化した体系である。
1916 年に提唱した理論で、重力場と等加速度運動系が等価であることおよびそこまで広げて
K 座標系では
t = 0 に相当し、K! 座標系では
t! = 0 に相当する。その瞬間 K 座標系の原点 O(x, y, z) = (0, 0, 0)
65最も身近な応用としては GPS や光ジャイロスコープがある。
一般相対性理論はアインシュタインが 1916 年に提唱した理論で、重力場と等加速度運動系が等価であることおよびそこまで広げて
物理法則はどの座標系でも同等であることを理論化した体系である。
!
年から長さの単位はメートル原器でも
Kr86 の原子線遷移の波長でもなく、光速度不変の原理から定義されている。
(物理法則はどの座標系でも同等であることを理論化した体系である。
=761983
観測者
B のいる位置)と
座標系の原点
O’(x! , y ! , z ! ) = (0, 0, 0)(= 観測者 A のいる位置)は一致してい
最も身近な応用としては
GPS K
や光ジャイロスコープがある。
867
いつその同時事象が起きたかは観測者
A と BKr86
の持っている時計で違い得るが。
固有時間
1983 年から長さの単位はメートル原器でも
の原子線遷移の波長でもなく、光速度不変の原理から定義されている。
最も身近な応用としては
GPS や光ジャイロスコープがある。
978
る。時刻合わせと空間の目盛り合わせは、同じ性能の時計と物差しを事前にそれぞれが持つことによってなさ
音波の場合は、列車の気密が保たれ列車内の空気が列車と共に動く場合は、観測者
A は本来の音速を感じ観測者 B は列車の速度ベ
いつその同時事象が起きたかは観測者
A と Kr86
B の持っている時計で違い得るが。
1983
年から長さの単位はメートル原器でも
の原子線遷移の波長でもなく、光速度不変の原理から定義されている。
89いつその同時事象が起きたかは観測者
クトルが足された音速を見る。列車が筒抜けで列車内を空気が吹き抜ける場合は、観測者
が本来の音速を目撃し観測者
A は列車の速
音波の場合は、列車の気密が保たれ列車内の空気が列車と共に動く場合は、観測者
ABは本来の音速を感じ観測者
B は列車の速度ベ
A
と
B
の持っている時計で違い得るが。
れる。いま初期時刻に原点
O を(したがって O’ を)出た光が列車の前端に到達したとしよう。そのときの前
列車の問題から離れて一般に時空座標の微小変化に伴い
9 音波の場合は、列車の気密が保たれ列車内の空気が列車と共に動く場合は、観測者 A は本来の音速を感じ観測者 B は列車の速度ベ
度ベクトルが引かれた音速を感じる。光は空気を伝わるのでなく真空を伝わるので気密も吹き抜けもなく、それぞれの慣性系にしたがっ
クトルが足された音速を見る。列車が筒抜けで列車内を空気が吹き抜ける場合は、観測者
B が本来の音速を目撃し観測者 A は列車の速
端の時空座標を
K 座標系で t, x, y, z 、KB! にとって列車は吹き抜けに見える。
座標系で t! , x! , y ! , z ! とすると、 B が本来の音速を目撃し観測者 A は列車の速
クトルが足された音速を見る。列車が筒抜けで列車内を空気が吹き抜ける場合は、観測者
て観測者
A にとって列車は気密に見え、観測者
度ベクトルが引かれた音速を感じる。光は空気を伝わるのでなく真空を伝わるので気密も吹き抜けもなく、それぞれの慣性系にしたがっ
2
慣性系
K
で
(ds)
≡ c2 (dt)2 − (dx)2 − (dy)2 − (dz)2
(5.17)
度ベクトルが引かれた音速を感じる。光は空気を伝わるのでなく真空を伝わるので気密も吹き抜けもなく、それぞれの慣性系にしたがっ
て観測者 A にとって列車は気密に見え、観測者 B にとって列車は吹き抜けに見える。
2
2
2
2
2
!2
!2
!2
2
!2
て観測者 A にとって列車は気密に見え、観測者 B にとって列車は吹き抜けに見える。
x +y +z =c t
および
x +y +z =c t
!
慣性系 K で (ds! )2 ≡ c2 (dt! )2 − (dx! )2 − (dy ! )2 − (dz ! )2
(5.14)
(5.18)
である。光速度 c だけは両者共通である。簡単のため x 軸および x! 軸の向きは列車の進行方向に一致してい
と定義すると、ローレンツ変換の関係から (ds)2 = (ds! )2 となるので、(ds)2 はローレンツ不変量である。こ
るとし、y 軸と y ! 軸それに z 軸と z ! 軸は相対運動していないので向きだけでなく目盛りも等しいとする。す
の線素 (ds) を 世界間隔(world distance)という。(ds)2 は正とは限らない。
なわち
y ! = y 、z ! = z である。このとき
t, t! , x, x! の間にどのような変換関係があるかが問題である。これは
10 再び、いつその同時事象が起きたかは観測者
A と B の持っている時計で違い得るが。
両式の両辺同士の差をとれば、
x2 − c2 t2 = x!2 − c2 t!2
(5.15)
x2 + y 2 + z 2 = c2 t2
および
x!2 + y !2 + z !2 = c2 t!2
(5.14)
である。光速度 c だけは両者共通である。簡単のため x 軸および x! 軸の向きは列車の進行方向に一致してい
るとし、y 軸と y ! 軸それに z 軸と z ! 軸は相対運動していないので向きだけでなく目盛りも等しいとする。す
なわち y ! = y 、z ! = z である。このとき t, t! , x, x! の間にどのような変換関係があるかが問題である。これは
両式の両辺同士の差をとれば、
x2 − c2 t2 = x!2 − c2 t!2
(5.15)
となる。これを満足する変換は、列車の速度を v として
t − (vx/c2 )
t! = !
,
1 − (v/c)2
x − vt
x! = !
,
1 − (v/c)2
y ! = y,
z! = z
(5.16)
となる。これを ローレンツ変換(Lorentz transformation)という。これは x 軸方向に等速直線運動をする座
標系との変換関係であり、座標軸の向きや等速直線運動の向きが異なる場合はより一般のローレンツ変換とな
る。ローレンツ変換によって変わらない量をローレンツ不変量という。
[問 4.9](5.16) が (5.15) を満たすことを示せ。
固有時間
列車の問題から離れて一般に時空座標の微小変化に伴い
慣性系 K で
(ds)2 ≡ c2 (dt)2 − (dx)2 − (dy)2 − (dz)2
(5.17)
慣性系 K で
(ds! )2 ≡ c2 (dt! )2 − (dx! )2 − (dy ! )2 − (dz ! )2
(5.18)
!
と定義すると、ローレンツ変換の関係から (ds)2 = (ds! )2 となるので、(ds)2 はローレンツ不変量である。こ
の線素 (ds) を 世界間隔(world distance)という。(ds)2 は正とは限らない。
10 再び、いつその同時事象が起きたかは観測者
A と B の持っている時計で違い得るが。
5.2. 特殊相対性理論における解析力学
93
いま K! を慣性系に対し等速直線運動する物体に固定すると、dx! = dy ! = dz ! = 0 なので (ds! )2 ≡ c2 (dt! )2
となり、これはローレンツ不変量であるから t! の代わりに τ を用いて、この τ を 固有時間(proper time)ま
たは固有時と呼ぶ。dτ を固有時間要素と呼ぶ。すると
!
" #2
" #2
" #2 $
"
#
1 dx
1 dy
1 dz
v2
2
2
(dτ ) = (dt) 1 − 2
− 2
− 2
= (dt)2 1 − 2
c
dt
c
dt
c
dt
c
すなわち
%
dτ = dt 1 −
& v '2
c
(5.19)
(5.20)
すなわち元の慣性系から見て速度 v で動いている物体の固有時間 τ の進み方は、元の慣性系から見ると遅れて
いる。
5.2.2
特殊相対性理論におけるラグランジアンとハミルトニアン
最小作用の原理とエネルギー
特殊相対性理論におけるハミルトンの最小作用の原理は、「運動法則は全ての慣性系で等しくあるべし」を
満足するためのローレンツ不変な作用 A の停留値として得られる。
%
( t1
& v '2
A(t0 , t1 ) =
L dt
ただし
L≡α 1−
c
t0
いま非相対論的極限すなわち (v/c) # 1 において
%
"
#
& v '2
1 v2
α 1−
=α 1−
+
·
·
·
c
2 c2
これは v 2 に比例する項は mv 2 /2 になるはずなので、α = −mc2 と決まる。すなわち
%
|˙r|
L = −mc2 1 − 2
c
(5.21)
(5.22)
(5.23)
いま非相対論的極限すなわち (v/c) # 1 において
%
"
#
& v '2
1 v2
α 1−
=α 1−
+
·
·
·
c
2 c2
これは v 2 に比例する項は mv 2 /2 になるはずなので、α = −mc2 と決まる。すなわち
%
|˙r|
L = −mc2 1 − 2
c
(5.22)
(5.23)
特殊相対性理論におけるラグランジアン
これより
p≡
∂L
= mv
∂ r˙
ただし
m
m(v) ≡ )
(有効質量/相対論的慣性質量)
1 − (|v|2 /c2 )
(5.24)
これより速度が c に近づくと有効質量は発散する。
特殊相対性理論におけるハミルトニアン
ハミルトニアンは
mc2
H ≡p·r−L= )
= const. = E
1 − (|v|2 /c2 )
(5.25)
非相対論的極限を考え、静止エネルギー
E = mc2
(5.26)
を得る。速度 v で運動しているときは
E=
)
m2 c4 + c2 p2
[問 4.10]上の三式を導け。
特に光子のように m = 0 の場合は E = cp
(5.27)
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