~LYON IS LIVE~Meyer Sound社プロダクト統括マネージャー Luke

~LYON
IS LIVE~Meyer Sound社プロダクト統括マネージャー
Luke Jenks氏 インタビュー
Q. プロフィールを簡単に教えてください。
Meyer Sound プロダクト統括マネージャーLuke Jenks で
す。勤続 25 年、製品製造部門に所属後、大学で数学・
科学を学び直し、その後ヨーロッパに拠点を移し、主にツ
アーのテクニカルサポート部門で 10 年間を過ごしました。
その後本社に戻りプロダクトマネージメントに従事、今は製
品開発部門とユーザーとの間で市場のニーズを見極め、
Meyer 社の持つビジョンやテクノロジーをクライアントに届
ける役割を担っています。より良い音をコンサート現場やリスナーに提供することはもちろん、本来テクノロジ
ーは進歩し続け生活を豊かにするべきものですので、Meyer 社製品の使用がビジネスにとってもプラスにな
るような手助けをしています。
Q. メイヤーサウンド社に貫かれた企業スピリットやジョンさんが持つスピーカー開発の哲学は。
John Meyer のスピーカー開発における哲学と言えば、誠実、責任、物理的・科学的な芸術です。
自社で音響予測プログラムを開発し、その予測プログラム(MappOnline)でシステムを予測し、その予測がど
れほど正確であったかを自社開発の SIM3 で測定します。Meyer 製品は常に誠実さを持って製造されてい
て口先だけのマーケティングの手法は取らないところが非常に信頼でき、働いていて誇りに思えます。我々
はアーティストではないのですが、John Meyer の哲学を合体させることによって素晴らしい製品を生み出し
ていけるのです。
Q. メイヤーサウンド製品、特にスピーカーシステムが持つ特徴とは。
最大の特徴としては、全ての製品が「ニュートラル」であること。最小スピーカーである MM4XP から大型の
LEO まで全て、入力されたサウンドが色づけされることなく、忠実に再生されます。John Meyer のカラーとい
ったものはありません。「リニア」とも言えますが、今回画期的なのは、スタジオモニターとして知られる HD-1
の「リニア」を大規模システム LEO や LYON に適合したことです。これは我々が長年取り組んで来た成果で
す。
日本は世界でも有数の進歩的なユーザーですが、Meyer 製品が受け入れられ使い続けていただいている
理由として、Meyer 社の哲学を知りシステムの使用方法がわかれば、一貫性のあるサウンドが心地よく満足
していただけるからだと思っています。
我々の仕事は余りロマンチックではないというか、感情的、非現実的なものではありません。哲学、信念、勇
敢さであり、デザイン、サウンドを含む Meyer Sound 製品全てに共通する特徴です。
Q. スピーカーシステムづくりにおいてこれまで最も苦労されたこととは。
これは良い質問ですね。数多くの苦労がありますので、答えも多岐に渡ります。
まず、スピーカーだけを製造するのも簡単ではありませんが、スピーカー以外に予測プログラムを含む様々
なソフトウェア、リギングシステムに携わるようになったことが、最も大変なことと言えます。以前リギングは外
注していましたが、今は自社で作成しています。また、サウンドシステム構築や現場で必要とされる各種ソフ
トウェアの開発は、スピーカー作成と同じ位大変です。
製品知識を共有する事も難しい問題です。我々は製品を作る上で様々なアイディアが浮かびますが、工場
でテストして上手くいかない時もあります。あるテクノロジーを製品に適応させようと思ったら、課題が満載で
す。我々は夢を語るだけではなく、実際に製品を製造しユーザーに届けなければなりません。デジタルオー
ディオネットワーク、イーサネットのパワーについて語るのは面白いのですが、それを製品に上手く適用する
のは本当に大変です。また我々が開発中の内容についてユーザーに発表するタイミングも難しいですね。
これまでのスピーカー製造において、一番苦労したのは、MSL-4 を開発しようとした時です。Meyer 社が大
規模 PA 用に初めてセルフパワード開発を決めた時で、業界からは大きな反発がありました。Meyer 社創業
以降初めて遭遇した苦労とも言えますが、セルフパワード MSL-4 の開発を推し進めました。John Meyer が
セルフパワードの利点を説明したビデオを作成し訴えたり、広告会社に依頼し市場調査をしてユーザーの意
見を聞いたりしました。中には ATL のように耳を傾けてくれるクライアントもいましたが、セルフパワードへの道
のりは本当に厳しかったです。
John Meyer は、市場がセルフパワードを拒む理由がわかっていましたので、開発に伴い様々なアイディアが
生まれました。ユーザーの声に耳を傾け、各種ソフトウェアや RMS リモートモニタリングシステムが開発され
ました。その後世界では急速にセルフパワードが浸透していき、Meyer 社でも様々なスピーカーシステムが
開発されていきました。
Q. LYON に採用されている独自の開発技術。また
その技術が搭載されることにより期待できる効果。
LYON での大きな変化は何かとよく聞かれます。全く
新しいアルゴリズムや、新発明が採用されたと言い
たいところですが、実際のところ、Meyer 社が長い間
行って来た研究の続きなのです。新しいドライバー・
アンプ・ホーンテクノロジー、またリミッターへの新しい
アプローチにより、得られるパワーが増大し、システ
ムに最大パワーをかけても音色が変わってしまうよう
なことはありません。大規模システムにとって Meyer
のハイホーンデザインは最高であると思いますし、
<Meyer Sound 社 本社工場内>
今回改良された各要素が一緒になり、サウンドを
大きく進化させたことは事実です。サウンドシステム重量 1kg あたりの SPL もこれまでで最高レベルです。
LYON アレイ 14 本で MILO16 本分のパワーを得られ、合計重量は 450kg も少なくなっています。LYON の
フェイズレスポンスは 18Hz から 16kHz で±30°です。サウンドシステムの存在意義が向上したと言え、ア
ンプのコントロール、リミッター、フェイズアライメント等を含め、これまでのパワードスピーカーよりも扱いやすく
なりました。
Meyer Sound にとっては長い道のりでしたが、ようやく我々の哲学を理解してもらえるようになって来ました。
今ではデジタルコンソールもプラグインも一般的になり、ミックスエンジニアは好きなサウンドを創り出すことが
できます。スタジオで作ったサウンドをライブでも再現したくても、リニアでない PA システムはそれを許さなか
ったのですが、大きな変化が起きたのです。Meyer 社が開発したテクノロジーにより、スタジオのリニアサウン
ドをライブで再現することが可能になりました。そして、そのテクノロジーは、Meyer 社が長い間、少なくとも私
が勤続している 25 年以上ずっと取り組んで来たものです。
Q. LYON がリリースされることで、音響シーンにどういった革新がもたらされるでしょうか。
一番喜ばしいことは、コンサートの全ての観客に、最前列であっても 2 階席であっても、同じサウンドが体験
できる機会が与えられることです。我々が一生懸命取り組んでいるサウンドシステムのトップは、ボトムよりも
ヘッドルームも少なく、長距離を飛ばさなければならないので、FOH も近くリニアでないシステムの場合、後
列の観客に影響が及びがちでした。今後は席によってサウンドが変わってしまうようなことはありません。
ミックスエンジニアの仕事も進化します。自分の耳に聞こえている音が観客にも届いているので安心して快
適に、またプラグインを使用して自由に仕事ができ、アーティストとしてバンドの一部になれるため、コンサー
トの質が上がります。
今後業界はサウンドに色づけしない方向に向かっていくと思います。最近のトレードショーでは、どのブースで
も口を揃えて「リニア」と叫ぶようになりました。今敢えて我々はリニアと言わず、Meyer 製品を「ニュートラル」
と呼びます。リニアであると謳うことはたやすいですが、リニアシステムを作るのは非常に難しいのです。既に
何千台もの LYON が世界で活躍していますが、我々の言葉が嘘だとすれば、今頃 Meyer Sound は相当な
クレームを受けている事でしょう。
Q. 今後次世代のスピーカーシステムには、どういった要素や性能が求められるでしょうか。
未来のことは断言できないのですが、キーワードとしては AVB。オーディオ業界に留まらず、AVB は伸びて
いくでしょう。Meyer Sound 社は、AVnu. Alliance との提携を誇りに思っていて、今後 AVB が可能にしてくれ
ることに期待しています。デジタルネットワーク、イーサネットパワーなど、AVB は Meyer Sound のソルーショ
ンを広げてくれますので、今後もユーザーにメリットがある限り責任を持って AVnu 認定の製品を推進して行
きます。
一口に音響業界と言っても、コンサート、スタジオ、レンタル、教会、スタジアム、商業施設など 20 種の異な
る市場があります。業界全体も大きく進歩していますので、我々はもっと様々な市場に目を向けていくべきだ
と思います。
今日コンサートでのライティングやビデオシステムの充実に伴い、サウンドシステムはより軽量化が求められ
がちです。サウンドデザインをする上で重量を抑えること、またスピーカーごとの重量も大切です。Meyer
Sound でも最近、より持ち運びしやすくなったセルフパワードステージモニターMJF-210 を発売しました。
(2014年6月18日 ラスベガスInfoComm
Meyer Sound社デモ会場にてインタビュー)