平成 25 年度 エネルギー需給緩和型 インフラ・システム

平成 25 年度 エネルギー需給緩和型
インフラ・システム普及等促進事業に関する報告書
(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査:
ベトナム国・ビンズン新都市における商業施設等の
電力供給信頼性向上およびエネルギー利用効率化)
平成 26 年 3 月
東京急行電鉄株式会社
目次
はじめに ......................................................................................................................................................... 4
略語表 ............................................................................................................................................................. 5
調査概要 ......................................................................................................................................................... 7
第 1 部 市場分析書 ...................................................................................................................................... 8
1.1
相手国に関する動向 ......................................................................................................................... 8
1.1.1
相手国の経済情勢に関する動向 ............................................................................................. 8
1.1.2
ビンズン新都市の開発に関する動向 ................................................................................... 11
1.2
電力分野に関する動向 ................................................................................................................... 14
1.2.1
「べ」国の電力分野に関する政策動向 ............................................................................... 14
1.2.2
「べ」国の電力需給の現状および見通し ........................................................................... 16
1.2.3
ビンズン省における電力需給の状況 ................................................................................... 20
1.2.4
新都市における電力インフラの整備計画 ........................................................................... 22
1.3
省エネルギー分野の政策動向・市場環境 ................................................................................... 24
1.3.1
省エネルギーに関する政策動向 ........................................................................................... 24
1.3.2
省エネルギー分野に関する現地ニーズの確認 ................................................................... 27
1.4
停電対応分野の市場環境 ............................................................................................................... 34
1.4.1
現地電力会社の電力供給信頼性 ........................................................................................... 34
1.4.2
停電対応分野に関する現地ニーズの確認 ........................................................................... 35
1.5
「べ」国における大規模商業施設の整備状況 ........................................................................... 39
第 2 部 事業計画書 .................................................................................................................................... 41
2.1
省エネルギーシステムに関する検討 ........................................................................................... 41
2.1.1
検討対象とする省エネルギー手法 ....................................................................................... 41
2.1.2
現地商業施設におけるエネルギー消費モデルの検討 ....................................................... 42
2.1.3
省エネ手法の費用対効果 ....................................................................................................... 62
2.2
停電対応システムに関する基本検討 ........................................................................................... 74
2.2.1
大容量蓄電池に関する現状整理 ........................................................................................... 74
2.2.2
停電時対応方法の検討 ........................................................................................................... 78
2.2.3
エネルギー管理システム(BEMS 等)の活用 ................................................................... 86
2.3
エネルギー管理事業体の実現可能性検討 ................................................................................... 88
2.3.1
エネルギーサービスの概要 ................................................................................................... 88
2.3.2
エネルギー管理事業体の運用体制 ....................................................................................... 92
2.3.3
エネルギー管理事業体の事業採算性試算 ........................................................................... 94
2.3.4
事業体設立に関する課題の整理 ......................................................................................... 101
3
はじめに
本報告書は、経済産業省から東京急行電鉄株式会社が受託した「平成 25 年度エネルギー需給
緩和型インフラ・システム普及等促進事業(グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の
事業可能性調査)」の成果をとりまとめたものです。
調査では、ベトナム国全体を対象とした調査結果を背景に、東京急行電鉄株式会社とベカメッ
クス IDC 社との合弁会社であるベカメックス東急が都市開発を進めている地域における、電力
システム構築計画の詳細を踏まえた電力供給信頼度の現状と見通しを取りまとめると共に、将来
的に電力供給信頼度を向上させる為の方策を提言しています。また、省エネルギーシステムに関
しては、ベトナム国政府の政策動向を調査すると共に、ベトナム国のビルシステムの現状を把握
し、エネルギーコストと環境負荷を効果的に低減できるシステム構成を提案しています。
本報告書が新都市開発における電力供給信頼度向上と、効率的なエネルギーシステム構築の一
助となることを期待します。
平成 26 年 3 月
東京急行電鉄株式会社
4
略語表
略語
正式名称
日本語訳
ADB
Asian Development Bank
アジア開発銀行
AHU
Air Handling Unit
空調機
ATS
Automatic transfer Switch
電源自動切替スイッチ
BAS
Building Automation System
ビル集中監視システム
BAU
Business As Usual
特別な対策を講じない場合
BCP
Business Continuity Plan
事業継続計画
BECAMEX
IDC
Investment and Industrial Development Corporation
ベカメックス IDC
BEMS
Building Energy Management System
ビルエネルギー管理システム
BOT
Built Operate Transfer
建設・運営・譲渡
CDC
Vietnam investment consulting and construction ベトナム投資コンサルティン
designing joint stock company
グ建築設計会社
CIE
Commission internationale de l'éclairage
国際照明委員会
CM
Construction Management
施工管理
COP
Coefficient Of Performance
成績係数
DSCR
Debt Service Coverage Ratio
返済余裕指数
ECC
Energy Conservation Center
省エネルギーセンター
EIA
U.S. Energy Information Administration
米国エネルギー情報局
EIRR
Economic Internal Rate of Return
経済的内部収益率
ERAV
Electricity Regulatory Authority of Vietnam
電力規制局
EV
Electric Vehicle
電気自動車
EVN
Electricity of Vietnam
ベトナム電力公社
FDI
Foreign Direct Investment
外国直接投資
GDP
Gross Domestic Product
国内総生産
GHG
Greenhouse Gas
温室効果ガス
HCMC
Ho Chin Ming City
ホーチミン市
IFC
International Finance Corporation
国際金融公社
JCM
Joint Crediting Mechanism
二国間クレジット制度
JETRO
Japan External Trade Organization
日本貿易振興機構
JICA
Japan International Cooperation Agency
国際協力機構
LCC
Life Cycle Cost
ライフサイクルコスト
LCEM
Life Cycle Energy Management
ライフサイクルエネルギーマ
ネジメント
LED
Light Emitting Diode
発光ダイオード
LLCR
Loan Life Coverage Ratio
借入期間中返済能力指標
MOIT
Ministry Of Industry and Trade
商工省
5
略語
正式名称
日本語訳
NEDO
New Energy and Industrial Technology Development 独立行政法人新エネルギー・
Organization.
産業技術総合開発機構
NPTC
National Power Transmission Corporation
国家送電公社
PCM
Project Cost Management
プロジェクト費用管理
PCS
Power Conditioning System
パワーコンディショナー
PDP
Power Development Master Plan
電力マスタープラン
PPS
Power Producer and Supplier
特定規模電気事業者
QS
Quantity Surveyor
工事費積算管理
RMU
Ring Main Unit
リングメインユニット
SAIDI
System Average Interruption Duration Index
需要家 1 軒あたりの停電時間
SAIFI
System Average Interruption Frequency Index
需要家 1 軒あたりの停電回数
SPC
Southern Power Corporation
南部配電公社
SPC
Specific Purpose Company
特定目的会社
UNDP
United Nations Development Programme
国連開発計画
UPS
Uninterruptible Power Supply
無停電電源装置
USRT
United States Refrigerating ton
アメリカ冷凍トン
VACEE
Vietnam Association of Civil Engineering Environment ベトナム建築技術環境協会
VAV
Valuable Air Volume
可変定風量装置
VND
Vietnam Dong
ベトナムドン
6
調査概要
(1) 調査目的
東京急行電鉄株式会社(以下、当社という)は、2012 年 3 月にベトナム社会主義共和国の
デベロッパーである「INVESTMENT AND INDUSTRIAL DEVELOPMENT CORPORATION」との合弁会社
であるベカメックス東急を設立し、同国に所在するビンズン省において都市開発事業に着手し
ている。具体的には、本年 2 月にビンズン省の省庁舎が移転した新都市エリアの街区約 110ha
を対象に、総額 1,000 億円規模の投資を行い、住宅、商業施設、オフィスビル等からなる「東
急ビンズンガーデンシティ」として開発を進めている。
一方で、ビンズン省は、1需要家当りの年間停電時間が、平均 101 時間(2012 年実績)と
長く、電力の供給信頼性が低い状況にある。そのため、業務用ビルや工場など、比較的、電力
供給の信頼性が重要視されるような建物では、自家発電設備の設置などによる対策を行ってい
る。将来的には、送配電系統自体の信頼度向上が求められるものの、地域配電会社による広域
的な取組みについては、なお時間がかかることが予想されることから、建物内や限定された地
域における省エネルギー(以下、省エネという。)およびエネルギーの効率利用を達成するこ
とで、電力供給の信頼性を向上させる必要がある。
(2) 調査内容
本調査では、新都市の電力供給の信頼性向上を重要課題として捉えた上で、停電時におけ
る重要負荷への電力の供給及びエネルギーの効率利用を可能とするエネルギーシステムの導
入の検討を行った。
まず、将来的に新都市において建設が想定される商業施設(単体の建物)を対象に、具体
的なエネルギーシステムを特定し、その最適な運用方法を検討した。その上で、新規開発エ
リアにおける複数の建物に上記エネルギーシステムを導入することを前提に、将来的に、エ
リア全体のエネルギー管理を行う事業体の設立可能性に関する検討を行った。
7
第 1 部 市場分析書
1.1 相手国に関する動向
1.1.1
(1)
相手国の経済情勢に関する動向
ベトナム国の概要
ベトナム社会主義共和国(以下、「べ」国という)は、インドシナ半島東部に位置する
社会主義国家である。国土は南北に長く、北部を中華人民共和国、西部をラオス・カンボ
ジアと国境を接している。国土面積は日本の 85%ほどの約 33 万平方キロメートルであり、
人口は約 8,970 万人である(2012 年時点)
。首都ハノイ市、ホーチミン市、ハイフォン市、
ダナン市、カントー市の 5 つの中央直轄市と 58 の省からなる。政治的・社会的に安定し
ており、また、日本は「べ」国にとって最大の援助国であり、両国の関係は順調に発展し
てきている。
出典:外務省ウェブサイト
図 1 ベトナム位置図
(2)
「ベ」国の経済情勢
「べ」国では、1986 年の第 6 回党大会にて、市場経済システムの導入と対外開放化を
柱としたドイモイ(刷新)路線を採択し、外資導入に向けた構造改革や国際競争力強化
に取り組んでいる。特に 1989 年頃よりドイモイの成果が上がり始め、巨額の海外直接投
資(FDI)が流入したことで、1995 年~1996 年には 9%台の高い経済成長を続けた。しか
し、1997 年のアジア通貨危機により、アジア諸国から「ベ」国への海外直接投資(FDI)
が急激に減少したため、
「ベ」国経済は失速し経済成長率は 1999 年には 4%台まで下落し
た。2000 年以降は海外直接投資が流入し始め、7%台の高い成長率を維持するようになっ
8
たものの、2008 年の世界的な金融不安の影響により、近年の成長率は鈍化傾向にある。
しかし、経済発展の方向性を示す基本方針である 2011 年~2020 年の 10 年に係る社会経
済発展戦略では、成長率を 7%~8%とする目標を掲げている。
(%)
出典:ベトナム統計局資料より作成
図 2
GDP 成長率推移
(百万 US ドル)
(US ドル)
出典:JETRO 資料より作成
図 3 名目 GDP 総額推移
名目 GDP 総額および一人当たりの名目 GDP については、ともに、2005 年~2012 年の
8 年間で 2 倍以上に増加している。2008 年の世界的金融危機以降、伸びが鈍化している
ものの、堅調に推移しており、2012 年には 1528 ドルとなった。2011 年~2020 年に係る
社会経済発展戦略では、2020 年の GDP を 2010 年比の 2.2 倍とし、1 人当たり名目 GDP
9
を 3,000~3,200 ドルまで引き上げる目標を掲げている。
(百万 US ドル)
出典:ベトナム統計局資料より作成
図 4 貿易収支推移
近年、輸出入額は増加傾向にあるが、輸入額が輸出額を上回り、貿易収支はマイナスと
なっていた。しかし 2012 年には伸び率は鈍化したものの、輸出額が輸入額を上回り、
1992 年以来となる貿易黒字を記録した。
(百万 US ドル)
出典:ベトナム統計局資料より作成
図 5 外国直接投資(FDI)推移
10
その他:4,873
日本:5,593
韓国:1,285
シンガポール
台湾:2,658
:1,938
(単位:百万 US ドル)
出典:ベトナム統計局資料より作成
図 6 国・地域別 FDI 認可額(2012 年)
「べ」国への FDI 認可額は 2008 年以降減少傾向にある。その一方で、日本の FDI 投資
額は増加しており、2012 年においては、55 億ドルで第 1 位となり、全投資額の約 35%を
占めた。また、2011 年に投資が急激に落ち込んだ不動産業については、当社のビンズン
省における 12 億ドルの不動産投資開発が認可されたことにより、2012 年は増加へと転じ
ている。
1.1.2
ビンズン新都市の開発に関する動向
(1) ビンズン省概要
ビンズン省は「ベ」国において、南部の主要経済ゾーン(ホーチミン市、ドンナイ省、
バリアブンタウ省およびビンズン省)の一角であり、ホーチミン市中心地から北に 17km
に位置する。ビンズン省政府はビジネス推進に積極的であり、2013 年の GDP 成長率が
12.8%と、「ベ」国平均の 5.3%と比較して非常に高い。かつては農業中心であったが、外
国直接投資が増加し、現在は工業が主体となっている。
「ベ」国は、成長著しい新興アジア諸国の中でも GDP 成長率が安定的に高い水準で推移
しているほか、国民の平均年齢が 20 代後半と若く、生産年齢人口が多いが、その中でも
ビンズン省は、同国で最大の人口を誇るホーチミン市の北部に隣接し、近年は日本企業等
の外資企業による工業団地への進出等により、今後の経済成長、郊外都市としての発展が
特に注目されるエリアである。
また、同省は、2020 年に「べ」国の中央直轄市(ハノイ市、ホーチミン市などと同
格)となる予定である。
11
出典:ベカメックス東急ウェブサイト
図 7 ビンズン省位置図
(2) ビンズン新都市開発概要
当社は、2012 年 3 月に「べ」国のデベロッパーである「INVESTMENT AND INDUSTRIAL
DEVELOPMENT CORPORATION」(以下、ベカメックス IDC)と、同国ビンズン省における都市
開発実施のための合弁会社(以下、ベカメックス東急)を設立した。これにより、国内で
の「東急多摩田園都市」における街づくりのノウハウや東急グループとしてのネットワー
クを活用し、日本企業としては、同国初の街づくりパッケージの輸出、同国最大級となる
街づくりを展開している。
ベカメックス東急では、ホーチミン市中心部から約 30kmに位置する、総面積約
1,000ha のビンズン新都市のうち、街区面積約 110ha(敷地面積約 71ha)を対象に事業を
実施している。ビンズン新都市では、ベカメックス IDC がインフラ、公園、大学、住宅な
どの整備を進めてきたが、当社が本合弁事業に参画することにより、日本の郊外住宅地で
実現してきた緑豊かで、利便性の高い、快適なコミュニティーの形成を行い、上質な街づ
くりに貢献していくことを目的としている。
新都市の中で、住宅、商業施設、業務施設などからなる「東急ビンズンガーデンシテ
ィ」を開発し、街の認知度を高めながら、定住に向けた街づくりを進めており、2013 年 4
月には、同社で最初となるマンションプロジェクト「SORA GARDENS(ソラ・ガーデン
ズ)」の一般販売を開始した。最終的には、人口 12 万 5 千人、雇用 40 万人の都市を目指
している。
12
出典:ベカメックス東急ウェブサイト
図 8 ビンズン新都市イメージパース
出典:ベカメックス東急ウェブサイト
図 9 「ソラ・ガーデンズ Ⅰ」イメージパース
13
1.2 電力分野に関する動向
1.2.1 「べ」国の電力分野に関する政策動向
(1)
電力分野に関する政策動向
「ベ」国のエネルギー政策は、経済発展の方向性を示す基本方針である社会経済発展
戦略(10 ヵ年戦略)および社会経済発展計画(5 ヵ年計画)を踏まえて策定されており、市
場経済導入と近代化の成功による高い経済成長率の持続が前提となっている。
電力分野については、2004 年に、電源の多様化やエネルギーの効率利用によるエネ
ルギー保障の実現や電力市場の規制緩和などを規定した「電力開発戦略」が策定されて
いる。その後、電力開発戦略を下敷きに、電力マスタープラン(PDP)が 5 年毎に策定し
ており、現在は、2011 年に策定された PDP7 が電力政策のベースとなっている。電力政
策に関する主な関連法令は以下である。
年度
2004
2006
2007
2009
2010
2011
表 1 電力政策に関連する主な法令
名称
2004~2010 年の電力開発戦略および 2020 年ビジョン(首相)
(別称:電力開発戦略)
電力法(国会)
電力市場改革のロードマップ(首相)
国家エネルギー開発戦略および 2050 年ビジョン
2006~2015 年の電力マスタープランおよび 2020 年ビジョン
(首相) (別称:PDP6)
電気料金に関わる決定(首相)
配電系統の設備形成や電力品質に係る通知(商工省)
電力料金改定に関する決定(首相)
2011~2020 年の電力マスタープランおよび 2030 年ビジョン
(首相) (別称:PDP7)
法令番号
176/2004/QD-TTg
28/2004/QH11
26/2006/QT-TTg
1855/2007/QD-TTg
110/2007/QD-TTg
21/2009-QD-TTg
32/2010-BCT
24/2011/QD-TTg
1208/2011/QD-TTg
出典:各種資料より調査団作成
(2)
電力市場の現状
「ベ」国では、1995 年より EVN が国営企業として、発電・送電・配電を一貫して運
用してきた。しかし、2010 年に国営企業法が廃止されたことで、EVN は国が単独で所
有する有限会社として運営されることになり、発電・送電・配電の各機能毎に分社化し、
子会社として運用している。子会社の形態は大きく3つ、①直轄企業(予算は EVN が割
振る)、②独立採算企業(100%子会社。独立採算で運営)、③JSC(Joint Stock Company。
EVN が部分的に株式を保有)に分けられる。
EVN は、主に、電力料金が政策的に安価に抑制されている影響から、財政状況が厳
しく、電源開発に対する投資が進んでいない一因となっている。そこで、政府としては、
料金施策の見直しや発電市場の開放による民間投資の誘致などの政策に取り組んでいる。
市場の自由化については、2006 年には、電力市場改革のロードマップが国会で承認さ
れており(26/2006/QT-TTg)、2014 年までに発電分野、2022 年までに卸売分野、2024 年
14
以降に小売分野の自由化が予定されている。
発電
〈JSC / BOT〉
〈EVNの直轄 / 独立採算企業〉
発電会社
発電会社
500KV・220kV・110KVの
系統運用、発電所の運転指令
南北の需給調整
〈EVNの直轄企業〉
National Load Dispatch Center
給電
5 Regional Dispatch Center
送電
110KV以下の系統運用
〈EVNの独立採算企業〉
National Power Transmission Corporation
110KV~500kV送電設備の
建設計画・投資・保守・O&M
〈EVNの独立採算企業〉
配電
5 Power Corporations
HNPC HCMC NPC
CPC
(ハノイ)
小売
コミューン
事業者
(ホーチミン)
(北部)
(中部)
ドンナイ
電力
SPC
配電系統計画・投資
(南部)
ビンズン
電力
110KV以下の送配電線の
運転保守・営業業務(料金徴収等)
出典:各種資料より調査団作成
図 10 電力市場の構造
自由化分野
発電市場
卸売市場
小売市場
表 2 電力市場改革ロードマップの概要
期間
改革の概要
試験
・主要発電所は EVN の直轄企業もしくは独立
2005-2008 年
運用
採算企業に、その他発電所は JSC に移行。
・EVN が出資していない発電事業者も PPA に
実運用
2009-2014 年
基づいた販売やスポット市場への参入を認
める(販売電力量は政府の規制対象)
試験
・卸電力市場の設立に向けて、卸電力事業者
2015-2016 年
運用
の設立を許可。
・配電会社を EVN の直轄企業もしくは JSC
に移行。発電事業者からの電力購入を認め
実運用
2017-2022 年
る。卸電力事業者は、配電会社や大口需要
家への電力販売が可能。
試験
・政府指定の配電網において以下を実施。配
2022-2024 年
運用
電会社の配電網運用と小売の機能を分離。
・需要家は、小売会社を選択、もしくは市場
実運用
2024 年以降
から直接購入する権利を有する。要件を満
たす組織は小売会社の設立が可能。
出典:各種資料より調査団作成
(3) 電気料金施策
「ベ」国は、産業育成の観点と貧困層の購買力不足から、政策的に電力料金を安価に
抑え、東南アジアの中でも低水準の電力単価を維持してきた。しかし、EVN の財政悪
化により電源への開発投資が進まない中、電気料金が安価な状態では、海外からの投資
15
の呼込みもままならないことから、電気料金施策を見直している。
2011 年の電力料金改定に関する首相決定では、年 4 回までの価格改定を認めている
他、所定の手続きを踏めば、5%を超える値上げも可能になった。実際、2012 年に 2 回、
2013 年に 1 回の値上げが行われており、2013 年 11 月現在の電力料金(平均販売単価)は、
1,509VND/kWh(約 6.8 円/kWh)と、2010 年の 1,058VND/kWh(約 4.9 円/kWh)に比較して、
約 43%の値上がりとなっている。政府は、EVN の赤字解消に向け、2015 年末までに平
均 1,840VND/kWh(約 8.6 円/kWh)としたいと発表しており、今後も、段階的に値上げが
行われる。(1VND=0.0047 円換算)
「ベ」国では、工業・建設・商業・サービス分野において時間帯別の料金制度を採用
しており、オンピーク時間帯は、オフピーク時間帯の 3 倍近い単価となっている。特に、
商業・サービス分野(6-22kV)の単価差は大きく、2013 年 8 月の料金表では、オンピ
ーク時間帯が 3,731ND/kWh(約 17.8 円/kWh)、オフピーク時間帯が 1,350VND/kWh(約 6.4
円/kWh)と、11.4 円/kWh もの差がある。2010 年から現在までの値上げ幅でみると、商
業・サービス分野のオンピーク時間帯が特に大きく、2010 年 3 月が 2,943VND/kWh(約
14.0 円/kWh)だったことから、約 3.8 円/kWh 上昇している。
時間帯別料金の区分
オンピーク時間帯
通常時間帯
オフピーク時間帯
平日 9:30-11:30/17:00-20:00
平日 4:00-9:30/11:30-17:00/20:00-22:00 日曜
全日 22:00-4:00
4:00-22:00
出典:JETRO 資料
図 11 電力料金の推移
1.2.2 「べ」国の電力需給の現状および見通し
(1)
「べ」国全体における電力需要見通し
2006 年~2010 年までに建設された発電所の総容量は、約 10,081MW であり、年間平
均 2,000MW ずつ整備された計算になる。PDP6 では、年間平均約 3,000MW の建設を予
16
定しており、計画を大きく下回る結果であった。一方で、政府と「ベ」国のエネルギー
研究所(IE)とでは需要見通しに大きな乖離が見られ、政府が期待する経済成長率が、結
果的に高すぎたとも言える。しかし、影響は限定的とはいえ、電源開発の遅延により、
実際に、北部での電力不足や南部の一部における 220kV 系統の過負荷が発生している。
IE は、電源開発が遅延した主な要因を以下のように分析している。
・
世界的な不況の影響
・
EVN の資金不足、投資家による資金調達の困難(複数のプロジェクトが同時に
進行したことで投資家の資金が不足)
・
コンサルタントや請負業者の能力不足による入札手続きおよび案件監理の不備
・
原油価格の高騰による資機材価格の高騰
・
開発サイトの用地の確保、補償問題
・
局所的な需要の伸びによる送変電設備の建設の遅延
PDP7 下の電源開発においても、上記に挙げられた状況は大きくは変わっていないこ
とから、総容量にして 2020 年までに 75,000MW、2015 年以降の年間平均開発容量約
7,000MW の目標について、達成は難しいと目されている。
但し、PDP7 においても、需要想定の前提となる経済成長率が高めに設定されている。
PDP7 では 7~8%と予想された成長率は、2013 年までの直近 3 年間では、5%程度に留
まっているほか、2013 年 11 月の政府表明では、2014 年が 5.8%、2015 年が 6%、2016
年~2020 年の年度平均が7%との見込みが示されており、PDP7 で計画された電源計画
自体が、余裕を持ったものとなる可能性もある。以下に、経済成長率を見直した場合の
電力需要を推定した。
シナリオ
Base case
High case
PDP7
Low case
GDP 見直し後(推定)
表 3 電力需要の推定
2010/05
2015/10
7.0%
7.5%
7.0%
9.1%
7.0%
7.1%
7.0%
6.0%
2020/15
8.0%
9.6%
7.7%
7.0%
2025/20
8.2%
9.8%
7.6%
7.0%
2030/25
7.7%
9.3%
7.4%
7.0%
出典:JICA 報告書、独自分析より調査団作成
電力需要については、経済成長率以外にも、エネルギー価格や電気料金施策、大型プ
ロジェクトの進捗状況、など様々な要因が絡むことから、2015 年以降の電源開発計画
については、2016 年頃を目途とした次期 PDP 策定に向け、見直されることになる。
17
800
(TWh)
High case (PDP7)
Base case (PDP7)
Low case (PDP7)
GDP見直し後(推定)
700
600
500
400
300
200
100
0
2010
2015
2020
2025
2030
出典:JICA 報告書、独自分析より調査団作成
図 12 「べ」国の電力需要の伸び(推定)
「べ」国南部における電力需要見通し
SPC が 2013 年 8 月に取りまとめた 2014 年から 2019 年までの電力需要予測では、2014
年 は 最 大 電 力 が 約 7,100MW 、 年 間 電 力 消 費 量 が 約 44TWh 、 2019 年 は 最 大 電 力 が
11,600MW、年間電力消費量が約 75TWh と試算されており、最大電力は 6 年間で 1.6 倍程
度に増加する見込みである。
8,000
(MW)
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1月
4月
7月
10月
1,000
2月
5月
8月
11月
3月
6月
9月
12月
0
1:
00
2:
00
3:
00
4:
00
5:
00
6:
00
7:
00
8:
00
9:
00
10
:0
0
11
:0
0
12
:0
0
13
:0
0
14
:0
0
15
:0
0
16
:0
0
17
:0
0
18
:0
0
19
:0
0
20
:0
0
21
:0
0
22
:0
0
23
:0
0
0:
00
(2)
出典:SPC 資料より調査団作成
図 13
SPC エリアの時間帯別電力需要・2014 年見込み
表 4
SPC エリアの最大需要および年間電力消費量(見込み)
2014
2015
2016
2017
2018
7,144
7,993
8,849
9,741
10,664
最大電力(MW)
44.030
52.281
57.880
63.579
68.078
年間電力消費量(TWh)
2019
11,563
74.677
出典:SPC 資料より調査団作成
18
商工省によると、SPC およびホーチミン電力を合わせた「べ」国南部について、PDP7
に承認された電源開発が予定通り進捗していない状況から、需給のバランスが取れない地
域が生じる可能性がある。政府としては、南部の需給逼迫に対応するため、北部・中部か
ら電力を融通すべく送電線の整備を進めているとのことである。
エリア
発電設備容量(MW)
電力需要(MW)
表 5 全国・南部の需給バランス
現状(2014 年現在)
2015 年予測
全国
南部
全国
南部
29,500
11,000
37,500
14,000
21,500
10,500
27,500
14,000
2020 年予測
全国
南部
64,500
30,000
50,000
24,000
出典:商工省資料より調査団作成
また、SPC やホーチミン電力等電力会社に対して、需要想定や電力設備に関する調査・
設計・建設を行うコンサルティング会社 PECC3(EVN が 51%出資する株式会社)は、南部
の電力需要を以下のように見込んでいる。
エリア
合計
南東部
Ho Chi Minh
Đong Nai
Vung Tau
Binh Duong
Binh Phuoc
南西部
Long An
Đong Thap
Tien Giang
Ben Tre
Vinh Long
Tra Vinh
Can Tho
Soc Trang
An Giang
Kien Giang
Ca Mau
Bac Lieu
表 6 べ「国」南部の最大需要(MW)
2012
2015
2020
8,649
12,527
21,117
6,241
9,038
14,525
2,813
3,952
6,000
1,225
1,678
2,796
570
1,077
1,740
1,166
1,568
2,570
197
331
546
2,408
3,489
6,592
405
608
1,177
286
390
699
263
359
735
126
193
383
104
148
307
88
126
292
277
398
715
101
143
307
231
355
648
220
297
487
135
193
332
89
126
217
2025
30,723
20,271
8,185
3,946
2,456
3,627
827
10,452
2,125
1,085
1,141
472
476
454
1,110
538
1,006
882
516
337
2030
44,143
28,617
11,339
5,595
3,482
5,143
1,228
15,526
3,156
1,612
1,695
702
707
675
1,648
799
1,495
1,310
766
501
出典:PECC3 資料
参考までに、PECC3 によると「べ」国の需要想定は以下のプロセスで行われている。
・
PECC1~PECC4 が省毎に需要見通しを調査する。
・
各省は PECC の調査結果を評価し、人民委員会における承認を経て、商工省の下
部組織であるエネルギー総局へ提出する。
・
エネルギー総局は、各省の需要想定を評価し EVN と評価結果のレビューを行っ
た上で最終案を首相に提出する。
・
首相による上記最終案の承認により需要想定が決定される。
19
1.2.3 ビンズン省における電力需給の状況
(1)
ビンズン省における電力需要
商工省が 2011 年に承認したビンズン省の 2015 年までの電力インフラの整備計画
(6178/QD-BCT。以下、「ビンズン省マスタープラン」と呼ぶ。) では、経済成長率を 13%
~13.5%と推定し、2015 年の最大電力が 2010 年の約 1.8 倍に増大するとしている。実際、
工業団地など大口需要家の増加による電力需要の伸びが著しいことから、ビンズン省で
は、220kV 以下の送配電線および変電所の新設や更新に注力している。
3,500
16,000
14,000
2,500
12,000
2,000
10,000
1,500
8,000
6,000
1,000
4,000
500
Electricity Sales (GWh)
Peak Demand (MW)
3,000
18,000
Peak Demand
Electricity Sales
2,000
0
0
2010
2015
2020
出典:6178/QD-BCT より調査団作成
図 14 ビンズン省の電力需要の伸び(6178/QD-BCT)
(2)
電力インフラ整備のプロセス
ビンズン省マスタープランでは、220kV 以下の送配電線および変電所の新設や更新に対
して、総額 54,254 億 VND(約 244 億円)の予算を見立てている。(1VND=0.0045 円換算)
現在、稼働している変電所は、900MVA・1 ヵ所と 126MVA・2 ヵ所の 1,152MVA であ
る。今後 2015 年までに、126MVA・4 ヵ所を稼働させる予定であり、220kV 系統の整備を
併せて進めることで、過負荷の回避を可能とする予定である。
表 7 建設・更新計画と 2011~2015 年までの予算見込み
分野
建設・更新
予算見込み
送電線
147km
220kV 系統
18,933 億 VND(約 85 億円)
変電所
2 ヵ所
送電線
49.2km
110kV 系統
15,480 億 VND(約 70 億円)
変電所
13 ヵ所
送電線
2,042km
中圧系統(11kV,22kV)
17,499 億 VND(約 79 億円)
配電変電所 2,658 ヵ所
配電線
750km
低圧系統(220/380kV)
2,342 億 VND(約 11 億円)
メーター
139,327 個
合計
-
54,254 億 VND(約 244 億円)
出典:6178/QD-BCT より調査団作成
20
ビンズン省における電力流通設備のうち、110kV を超える送電設備(110kV・220kV・
500kV)については、全国の送電設備を統括する国家送電公社(NPTC)が計画・投資・
維持管理を行っている。また、110kV 以下(110kV・22kV)の配電設備については、地
域の電力公社である南部配電公社(SPC)が整備計画を立案し、投資を行っている。配
電網の維持管理および料金徴収などの営業業務は、SPC 傘下の地域配電公社が行ってお
り、ビンズン省においては、ビンズン電力が所管する。
ビンズン省マスタープラン(第 2 条)には、計画の実行にあたっての関係機関の役割が以
下のように規定されている。
・
ビンズン省人民委員会は、計画策定や用地調整を行う。
・
ビンズン省商工局は電力設備調査・設計会社(PECC)に建設事業計画の作成を指示
する。PECC は作成した事業計画を商工局の他、商工省、電力規制局(ERAV)、ビ
ンズン省人民委員会に提案する。
・
EVN、SPC、NPTC は、計画実行を管理し、ビンズン省商工局は、商工省が承認
した進捗管理、テスト運用、運用計画の実行に責任を持つ。
ビンズン省商工局によると、需要想定およびマスタープラン見直しのプロセスは以下
の通りである。
1) 需要想定(→マスタープラン策定)
ビンズン電力による需要想定(10 年計画)→人民委員会・ビンズン省商工局との調整
→SPC による投資計画策定→商工省の承認(予算枠確定)→マスタープラン策定
2) マスタープラン見直し(5 年計画への反映)
ビンズン電力による需要想定および電力供給の優先順位(毎年)→ビンズン省商工
局による確認→(※整備計画の前倒しによる予算枠の見直しが必要な場合、)地方
人民委員会を通じた商工省の承認→マスタープランの修正(→商工局よりビンズン
電力(SPC)に修正計画を指示)
2013 年 12 月に開催されたビンズン省人民委員会第 8 回会議で行われた電力に関する
質疑では、ビンズン省商工局長より以下の方針が示されている。
ⅰ: ビンズン省マスタープランに沿ったインフラ整備の推進
ⅱ: 毎年の電力需要およびインフラ整備の進捗確認
ⅲ:
省エネに関する普及啓蒙活動の強化(ビンズン省を主体とした大規模な宣伝活動、
省エネに関するセミナーや訓練を行う組織の設立、省エネ法の遵守を求める大口
需要家の対象拡大(エネルギー消費量が、原油換算で 1,000TOE 以上の工場や、
500TOE 以上の商業施設 117 社を対象とする)
ⅳ: ビンズン電力の線路のループ化改修や改良による工事停電の最小化
ⅴ:
地方電化の強化による再販用メーターの削減(家庭分野には、郊外や独立エリアで
あっても、再販業者からではなく直接、電力会社から供給すべきとの考え方)
21
1.2.4 新都市における電力インフラの整備計画
(1)
給電計画
ビンズン省を含む「ベ」国南部の給電計画は、地方給電会社および SPC が管轄して
いる。地方給電会社は負荷遮断の順位を決定しており、電力不足の際には SPC がその
順位に従って計画停電を発動している。計画停電時に電力供給を継続する負荷は、電
力不足のレベル別(30%,50%及び 70%)に設定されており、その対象は、年度毎に地方給
電会社と地方人民委員会が協議の上決定し、地方配電会社(「べ」国南部の場合は SPC)
に通知される。電力供給の優先順位は負荷の重要度に応じて決定されており、行政関
係施設、病院及び軍関係施設が最優先される。加えて、地方経済の発展支援の観点か
ら工業団地等も電力供給の優先順位が高い。
(2)
配電系統計画
ホーチミン市を除く、「ベ」国南部各省の電力設備投資計画は、各省の人民委員会及
び省電力会社間との調整を経て SPC が決定している。
「べ」国南部の配電系統は、架空配電線では放射状系統(幹線から分岐線が放射状に
分岐)、地中配電線でループ状系統(1 変電所から 2 回線をループ状に接続)を採用してい
る。但し、日本のような配電自動化システムは普及しておらず、一部の RMU(ループ状
系統を構成する遮断器・開閉器)を除き、開閉器の操作は手動で行っている。
「べ」国では都心部を中心に地中化が進められおり、例えば、ホーチミン電力では、
2020 年までで約 400 億円の予算を組み、2015 年までに中圧の 3 割、低圧の 2 割に当た
る合計約 1,050km を地中化する計画を有する。そのため、通信会社等の関係機関と事務
局を設立、地方政府からの低金利融資等の活用を図っている。ビンズン省では、マスタ
ープラン(2.1.2 条)の中で、具体的に、新都市、ミーフックについて、最終的な地中化が
定められている。
また、ビンズン省マスタープラン(第 1 条)では、高圧系統(110kV・220kV)の配電方式
について、原則、ループ状系統の採用が規定されている。また、中圧系統についても、
都心部や新規開発エリア、特に電力供給を確保したい重要エリアについて、同じくルー
プ状系統を採用している。系統信頼性の確保のため、N-1 基準(配電線の 1 回線故障や配
電用変電所の変圧器 1 台故障など単一設備の故障を想定)を前提に対策することになっ
ている。
一方で、電力設備への投資計画は順次履行されているが、N-1 基準を満足する超高圧
系統を実現する為に必要な 500kV、220kV 受電の2変電所及び一部の 110kV 受電変電所
については、建設地点は決定しているものの具体的な建設計画は未定である。そのため、
都市開発事業者として、新都市の電力供給信頼度を確実に向上させる為には、マスター
プランの履行を継続的に促す必要がある。
加えて、過去日本の電力会社により行われた EVN の系統形成支援業務では、電力設
備の信頼度について 2 点の問題、①本来設備整備のステップ毎に行われるべき図面に基
づく確認がなされていない、②竣工試験が行われていない、が指摘されている。EVN
22
の業務品質は向上する方向にあるものの、設備に関する支障を未然に防ぎ、信頼度の高
い電力インフラを形成するには、都市開発事業者側における綿密な図面確認など留意が
必要である。
23
1.3 省エネルギー分野の政策動向・市場環境
1.3.1 省エネルギーに関する政策動向
(1)
省エネルギー分野の法規制・支援施策
「べ」国政府は、電力需要の急激な伸びへの対策として、1990 年代中盤から、省エ
ネのポテンシャル調査や需要抑制策の検討に取り組んでいる。2000 年代初盤からは、
現在の省エネ法につながる制度設計や運用を行っており、省エネ分野の関連法令が次々
と制定されている。
年度
2003
2004
2006
2010
2011
2012
2013
表 8 省エネに関連する主な法令
名称
エネルギーの効率利用および省エネに関する規定(政府)
工業設備の省エネに関する通達(商工省)
エネルギーの効率的利用および省エネに関する国家戦略プロ
グラム(首相)
省エネ法(国会)
省エネ法の詳細及び施行方法に関する政令(政府)
省エネ行政違反に対する罰則規定(政府)
エネルギーラベルの貼付・エネルギー最低効率レベルの適用
が必要な手段・設備のリスト及び実施に関する規定(首相)
エネルギー管理・エネルギー診断士の教育及び資格の発行に
関する通達(商工省)
エネルギー使用の手段・設備のエネルギーラベル貼付に関す
る通達(商工省)
省エネ計画策定及び計画実施報告、エネルギー診断の実施に
関する通達(商工省)
51/2011/QD-TTg の一部条項を補充・改正する規定(首相)
エネルギー高効率建物の技術基準策定に関する通達(建設
省)
法令番号
102/2003/ND-CP
01/2004/TT-BC
79/2006/QD-TTg
50/2010/QH12
21/2011/ND-CP
73/2011/NĐ-CP
51/2011/QD-TTg
39 /2011/TT-BCT
07/2012/TT-BCT
09/2012/TT-BCT
03/2013/QD-TTg
15/2013/TT-BXD
出典:各種資料より調査団作成
具体的な省エネ目標は、2006 年の首相決定「エネルギーの効率的利用および省エネ
に関する国家戦略プログラム」において定められた。この中では、2011 年から 2015 年
にかけて BAU 比 5~8%(工業部門については 8%)の省エネ目標が設定されており、
以降の省エネ分野の関連法令のベースになっている。また、2010 年の省エネ法制定を
受け、エネルギー大量使用施設の指定や大規模需要家への省エネ計画の策定・報告やエ
ネルギー診断の義務付けなど、具体的な枠組みが次々と整備された。
24
表 9 省エネ法の枠組み
項目
エネルギー大量使
用施設
21/2011/ND-CP
省エネ計画の策
定・報告
09/2012/TT-BCT
エネルギー診断の
実施
09/2012/TT-BCT
罰則規定
73/2011/NĐ-CP
概要
・以下に該当するエネルギーの大規模需要家。省エネ目標の公表、計
画の策定・報告等が義務付けられる。
1) 工場・農業・輸送機関 :1,000 石油換算トン以上
2) 商業施設・オフィス等 :500 石油換算トン以上
・年間計画および 5 ヵ年計画について、国家エネルギーデータベース
システムに登録。
・例えば商業施設の場合、以下の内容を登録。
1) 燃料使用計画/電力使用計画(受電容量・購入電力
量・購入費・自家発電設備容量・発電量・燃料費)
2) 適用予定の省エネ方法・効果(想定)・予定費用
3) 設備の代替計画
4) 昨年度計画の達成状況
5) 適用予定の省エネ方法
・エネルギーの使用状況を測定・分析し、省エネ手法の適用可能性を
精査するエネルギー診断を行い、その報告書を商工省に提出。
・上記の義務に違反する行為について、5~10 百万ドン(約 2.5~5 万
円)の罰金等。
出典:各種資料より調査団作成
例えば、2011 年の首相決定「エネルギーラベルの貼付・エネルギー最低効率レベル
の適用が必要な手段・設備のリスト及び実施に関する規定」では、2013 年 1 月 1 日よ
り、エネルギー消費効率が一定基準以上の製品にエネルギーラベルを貼付し、基準を満
たさない製品の生産・輸入を禁じている。しかし、エネルギー消費効率の試験設備や企
業の認識が不足し、環境が整わないことから、追加規定(03/2013/QD-TTg)により、以
下のように期限が延期された。
・ 家庭用機器(蛍光灯、エアコン、縦型洗濯機等)、工業用機器(配電変圧器、電気
モータ等)へのエネルギーラベルの貼付
(2)
:2013 年 7 月 1 日
・ 家庭用機器(冷蔵庫、テレビ、ドラム式洗濯機)
:2014 年 1 月 1 日
・ 基準を満たさない家庭用機器の生産・輸入の禁止
:2015 年 1 月 1 日
省エネルギー分野の支援施策
1) 需要家に対する優遇制度
省エネ技術を利用して生産ラインまたは生産規模を拡大する組織および個人は、次の
優遇策・補助の対象となる。
・ 輸出入税・企業所得税に対する優遇
・ 公的機関からの融資制度・補助金の支給(既存設備を省エネ型に更新した場合、更
新費の 30%について 20 万 USD を上限に商工省が助成金を支出、等。)
2) 省エネ製品メーカーに対する優遇制度
省エネ技術の研究開発用の資材や国内で生産できない省エネ製品、省エネ車両等のう
ち、政府が輸入税免除品目に指定するものは、輸入税が免除される。
25
(3)
建築物に関する省エネ基準
一定規模以上の建物に関しては、2013 年 9 月の建設省通達「エネルギー高効率建物の
技術基準策定に関する通達(15/2013/TT-BXD)」に基づき、ベトナム建築技術環境協会
(VACEE)により、省エネビル建築基準(Energy Efficiency Building Code)が規定されて
いる。上記通達は、2013 年 11 月から施行され、2,500 ㎡以上の建物に対して下記基準
の適用が義務付けられる。上記基準では、「外皮」「空調・換気」「照明」「昇降機」「電
気設備」「給湯」の仕様について個別に指標が設定されている。
項目
外壁/
屋根
表 10 省エネビル建築基準の指標例
指標
・外壁の断熱効率
熱還流率 U、 熱抵抗 R
・屋根の断熱効率
熱還流率 U、 熱抵抗 R
・冷凍機の成績係数(COP:Coefficient of performance)
種類
空調・
換気
スクリュー式水冷チラー
空冷一重効用吸収式冷凍機
空冷二重効用吸収式冷凍機
容量(kW)
<528
528≦ and <1,055
1,055
全て
全て
COP
5.00
5.55
6.10
0.6
0.7
・用途別の最大照度
照明
電気
設備
用途
商業施設
オフィス
ホテル
集合住宅
照度(W/㎡)
16
11
11
8
・建物全体の電力負荷(kVA)と電力量(kWh)を測定できるメーターに加え、
100kVA 以上の電力負荷について電力消費を確認できるチェック用メーター
を設置する。
・100A 以上の動力は、連系点において力率 90%以上を維持する
出典:15/2013/TT-BXD, Energy Efficiency Building Code より調査団作成
(4)
ビンズン省における省エネ施策
2011 年施行の省エネ法に基づき、省・市レベルでも省エネ施策の導入に取り組んで
いる。ビンズン省は、電力消費量について前年比 2%を削減目標に設定し、毎月、目標
の達成度を商工局より公表しているほか、省エネの促進を目的に、以下の支援制度を設
けている。
1) エネルギー監査を実施する中小企業に対する助成金(上限 5,000 万 VND)
2) 省エネ設備導入に対する助成金(設備更新した場合は更新費用の 3 割(上限 7,000
万 VND)。新規に設備導入した場合は上限 1 億 VND。)
3) 省エネプロジェクトを実施する企業への支援
26
表 11 ビンズン省におけるセクター別省電力目標(前年比削減割合)
全体
行政機関
公共照明
鉱工業生産
電灯・家庭
2%
10%
30%
2%
削減割合
なし
出典:ビンズン省商工局インタビューより調査団作成
1.3.2 省エネルギー分野に関する現地ニーズの確認
(1)
現地建物におけるエネルギー設備の状況
本件では、複数の大規模商業施設を対象に、照明・空調等の利用状況に関する調査を
行った。概観として、外壁や屋根など外皮の断熱性能に対する意識は高くない一方、照
度や空調の温度設定・運転制御など部分的に省エネに取組む建物がある。
・デパートの様子
デパート(左)とホテル(右)
デパート内・吹抜け
デパート内・フードコート
デパート内・映画館
・スーパーマーケットの様子
店内
野菜売場
27
魚売場
陳列棚
1) 建築
・窓
:商業施設という用途上、窓面積率は全体として低い。一部建物では、飲食ス
ペースにつき眺望を考慮して大開口を設けている。
・屋根
:屋根面を確認できた施設では、折板屋根上面にシート防水を張ったのみ。断
熱材の利用は無いように見受けられる。
2) 空調設備・熱源設備
・「ベ」国南部は年間を通して冷房需要のみ。暖房用途の温熱源は無い。室温は、26~
27℃前後の設定が多く、東南アジア諸国によく見られるような過剰冷房感はない。
・大規模施設では、インバータターボ冷凍機が普及しつつある。(「べ」国営建築設計
会社であるベトナム投資コンサルティング建築設計会社(CDC)によると、2013 年 11
月より一定容量以上の熱源にはインバータ制御の採用が義務づけられている。)
・(日本国内の大規模商業施設では標準的に採用される、)全熱交換器や外気量制御によ
る外気負荷の削減は見られない。また、一部施設では、一次ポンプの変流量制御や冷
却塔ファンの回転数制を採用されているが、大部分の施設で変流量制御は見られない。
・省エネ意識が高い外資系の大規模商業施設においても、冷凍機の入口出口温度差は、
標準温度差 (ΔT=5℃)で運転されており、大温度差水搬送(ΔT=10℃)は採用されてい
ない。
3) 照明
・照度は 100~1,500Lx と建物間のばらつきが大きく、以下の傾向が得られた。
「ベ」国資本の旧型商業施設(国営百貨店等)
:全体的に照度は低い(100-200Lx)。
海外資本の大型商業施設
:照度は高め(500-800Lx)。間接照明併用による空間演
出がなされている。
海外資本の省エネ型商業施設:照度は低め(200-500Lx)。一部昼光利用。
・昼光利用により照度の確保が可能な場所の照明は消灯されている。
・ダウンライトは、電球型蛍光灯に加えて LED も普及している。直管型蛍光灯は、T-5
が一般的である。一部建物では、部分的に LED への置き換えが進められている。
・一部建物では、間引点灯を想定して「千鳥配列」が採用されている。
4) 集中監視システム/エネルギー管理システム(BAS/BEMS)
・大規模商業施設では、集中監視システム(BAS)が導入されており、エネルギー設備
28
の状態監視やテナントの電力消費量データの収集の他、受変電、照明、熱源、空調、
衛生、エレベータ、非常用発電機、防災設備の系統図、平面図、一覧表等のグラフ
ィック表示が可能である。
・特に省エネ意識の高い欧州企業系列の商業施設では、エネルギー消費データを蓄積
し、トレンドグラフとして表示・分析の上、設備運用の改善に活用している。ここ
では BAS/BEMS により、エネルギー設備のスケジュール運転、昼光センサ値によ
る光パイプと照明の切替え制御、店内温度による熱源機(空冷チラー)と空調機
(AHU)の制御、冷凍ケース用コンプレッサ廃熱の給湯利用等を行っている。
表 12 現地建物におけるエネルギー設備の状況(代表例)
商業施設 A
商業施設 B
概観
Big-C
照明
・室内照度:290Lx
・1F/2F 共用部:LED・
ダウンライト。
B1 駐車場/2F 売場:
T5・2 灯用。
・照明回路は千鳥配列
(間引きを配慮)。
B1/1F 共用部では 50%
間引き。
・室内照度:500Lx
・1F 共用部:蛍光灯・
ダウンライト
・1F/2F 売場:T5・2 灯
用、T5・3 灯用。
・全点灯。
空調
・26℃,相対湿度 50%
(1F 共用部)。
・空冷チラー+AHU(屋
上設置)。
・25~28℃
相対湿度 55~65%
・エリアにより温湿度
のムラが多い。
その他
・グリーン店舗を標榜。
駐車場に太陽光発電や
EV 充電器を設置。
商業施設 C
・室内照度:400Lx
・光パイプ/LED/T5・ダ
ウンライト。
・光パイプによる昼光利
用。昼光センサ値が一
定以上の場合,T5 を消
灯。
・洗面所は人感センサに
より点消灯。
・ 25.8 ℃ , 相 対 湿 度
58%(事務所)。
・空冷チラー+AHU。
・冷蔵・冷凍系統は、レ
シプロ圧縮機を利用し
て低温度を維持。圧縮
機は負荷に合わせ台数
制御し、冷蔵系統で熱
回収も行う。
・ BAS/BEMS を 導 入
し、全電気回路の電力
消費量(kWh)を計測。
出典:調査団作成
(2)
現地建物における省エネルギーに関する取組み
大規模商業施設には、タイやシンガポール、韓国、ドイツなど外資系企業が多く、地
域におけるブランド力の向上等を目的に、積極的に省エネに取り組んでいる。その中に
は、「グリーン店舗」を標榜し、太陽光発電や EV(充電器)を採用している企業もある。
上記企業の主な省エネ事例を以下に整理する。
29
1) 省エネ基準の設定及び社員の省エネ・省コスト意識の喚起
・建物規模やエリアの用途毎に照度や空調温度の基準を設定。社員に対して、ポスター
等を利用した呼びかけにより基準の遵守を徹底する。
・ベーカリーエリアにおいては、ピークタイム単価が課金される時間帯以外での電力機
器の利用を徹底(→省コスト)。
2) 省エネ技術の採用(具体例)
表 13 現地建物におけるエネルギー設備の導入状況と効果の具体例
スコープ
投資額
省エネ効果
(MVND)
(MVND/年)
・T8 照明の T5 照明への更新
・光パイプによる昼光利用
・直管蛍光灯について T8 照明を
T5 照明に更新
・冷蔵ショーケースの減圧蒸留装置のフ
ァンを高効率ファンに更新
・ショーケース熱ロス低減を目的とした
エアカーテンの採用
1,800
9,800
820
924
18,700
6,900
5,400
1,542
3,400
1,700
項目
T5 照明への更新
昼光利用
ショーケースの
照明
エコファン
エアカーテン
出典:各種資料より調査団作成
(3)
省エネルギービジネスの動向
1) 行政機関の取組み
「べ」国政府は、地方商工局もしくは地方科学技術局の下に省エネルギーの推進母
体となる組織として、省エネルギーセンター(ECC)を設置している。例えば、ホーチ
ミン市科学技術局傘下の ECC ホーチミンは、2002 年の設立から、行政への省エネに
関するアドバイスや企業へのエネルギー監査に加え、ESCO 事業の運営など幅広い活
動に取り組んでいる。
首相指令 No.1427/QD-TTG では、2011 年~2020 年までのエネルギー消費量 8~10%
削減(11,000~17,000 原油換算トン相当)が目標に設定されている。また、首相指令
No.1993/QD-TTG では、2011 年~2020 年までに 2010 年比で GHG 排出量 8~10%削減
(GDP 原単位当りのエネルギー消費量について毎年 1~1.5%削減)が目標となっている。
ECC ハノイは、上記の目標に加えて電力供給力の不足を考慮すると、2015 年の省エ
ネプロジェクトの市場規模(投資規模)は、約 850 億円程度になると試算している。
「べ」国政府は、地域開発金融機関からの支援を活用し、省エネプロジェクトを推
進している。2012 年の支援規模は、国際金融公庫(IFC)約 100 億円、デンマーク庁約
30 億円、アジア開発銀行(ADB)約 100 億円、世界銀行(WB)約 70~100 億円、国際協力
機構(JICA)約 50 億円である。
30
コンサルタント
サービス
行政機関への
アドバイス
ESCOプロジェクト
投資
エネルギー監査
再生可能エネルギー
エネルギー管理システムの
確立(ISO50001)
エネルギー利用効率化
プロジェクト
技術移転
研修コース
省エネプロジェクトの
実現可能性調査
エネルギー監査および
エネルギー管理
グリーン建築設計
BIM (Building Information
Modeling)
省エネ意識の喚起
(普及啓蒙活動)
※UCNデンマークとの協働
出典:ECC ホーチミン資料より調査団作成
図 15
金融機関
ADB
世界銀行
JICA
ECC ホーチミンの活動内容
表 14 地域開発金融機関の支援事例
支援対象
・省エネに関する法的枠組みの整備
・エネルギー管理士の訓練プログラムの開発
・EVN の既存プラントの改修
・EVN 内のデータ管理システムの構築支援
・需要家側の電力消費効率化プロジェクト
・国家データベースの開発
・MOIT 傘下の組織体(省エネルギーセンター
(ECC)含む)のキャパシティビルディング
支援規模(2012)
約 100 億円
約 70~100 億円
約 50 億円
出典:各種資料より調査団作成
2) ESCO 等省エネビジネスの動向
近年、省エネに関する法規制の強化や電力の供給力不足の見通しに伴い、ESCO を
含む省エネルギーサービスを提供する事業者が現れている。「ベ」国には現在、外資
系企業を中心に、ESCO 事業者を名乗る企業は 15 社程度存在するが、その多くは事
業規模が小さく資本力を持たない。そのため、日本国内の ESCO 事業者のように、金
融スキームや技術力を駆使するより、簡単な省エネサービスの提供に留まっている。
具体的には、ヒートポンプやインバータ制御装置、スチームボイラーの蒸気効率の改
善等、3 年以内で償却が可能な省エネ手法が採用されている。
現在、ECC ホーチミンや ECC ハノイが中心となって、海外金融機関の資金援助の
活用や EPC スキーム(契約体系や組織等)の確立などの環境整備を進めている。将来的
に、電気料金の値上げなど ESCO 事業に有利な環境変化が予想され、市場は拡大の方
向にある。
31
事業者名
Viet ESCO
HATECH ESCO
SYSTECH ESCO
Schneider
Vietnam
Electric
ENERTEAM
表 15 主な ESCO 事業者
事業概要
・ECC ホーチミンと日本の省エネ企業(ヴェリア、ファーストエスコ)
の支援により設立。国際金融公社(IFC)の支援を受け、2012 年設
立。
・金融スキームも含めた包括的な省エネサービスを提供。レジェン
ドサイゴンホテルを対象に省エネプロジェクトを実行中。
・国連開発計画(UNDP)とベトナム国家エネルギー効率化プログラ
ム(VNEEP)の支援を受けて設立された企業。2006 年設立。
・金融スキームも含めた包括的な省エネサービスを提供。食品工場
や製紙工場等へのサービス実績あり。
・省エネルギー関連機器を販売。2006 年設立。
・地域開発金融機関(JICA,WB,国連開発計画(UNDP)等)からの支援
を受け、省エネプロジェクトを実行。
・仏シュナイダーエレクトリック社のベトナム子会社。省エネルギ
ー関連機器を販売。2008 年設立。
・仏系小売店ビッグ C と節電プロジェクト契約(契約金額:約 1500
万円)を締結しエネルギー管理システム(EMS)を導入。全消費電力
の 10%を削減。インテル、ヒルトンホテル等にも EMS を導入。
・シュナイダー社は、MGE UPS Systems Viet Nam という UPS シス
テムのパッケージング・販売会社にも出資している。
・ベトナムで初めて省エネを専門分野として組織された NGO。
1995 年設立。
・エネルギー診断と研修、省エネプロジェクトに係るエンジニアリ
ング及びコンサルティングサービスを提供。
出典:ECC ハノイ資料より
(4)
二国間クレジット制度の活用
「ベ」国における省エネ関連設備の市場は拡大の方向にはあるが、現段階ではエネル
ギーの料金単価が低水準なので、設備の投資回収は難しい。加えて、日本企業のシステ
ム輸出につなげる場合、一般的に日本企業のシステム価格は現地水準に比較して高価な
ことから、収益事業としての展開のハードルは高い。
一方で、「べ」国政府は、省エネ活動の一層の普及促進を目指しており、温室効果ガス
削減に向けた国際的な支援スキームの活用に前向きである。その一つが、日本政府の推
進する二国間クレジット制度(JCM)である。「べ」国政府は 2013 年 7 月に、JCM プロジェ
クトの推進を旨とする二国間文書に署名した。同じく 9 月には、第一回の合同委員会(日
越関係者で組織される事務局)が開催されている。
ECC ホーチミンによると「べ」国から求める JCM 活用の要件は、ⅰ)エネルギー消費
(ベースライン)の 10-20%の省エネが実現可能である、2)コンサルティング会社ではなく技
術力を提供できる会社がプロジェクト運営の筆頭会社である、である。
32
表 16 「ベ」国における JCM フィージビリティ調査の具体例
参加企業
プロジェクト概要
三菱電機、三菱商事、 ・国営病院への高効率インバータエアコン(約 1,000 台)と
三菱モルガンスタンレー証券
BEMS、全熱交換器の導入による省エネ効果の実証
・アモルファス変圧器導入による無負荷損失の低減に関
日立金属
する方法論の策定
TOTO
・節水機器及び雨水利用浄化システムの導入による電力
三菱モルガンスタンレー証券
消費量削減に関する方法論の策定
出典:調査団作成
方法論の 方法論の
承認
提出
プロジェクト
参加者
政府
合同
委員会
PDD
作成
妥当性
確認
モニタリング
モニタリングの
実施/
登録申請書
の作成 モニタリング報告
書の準備
PDD及び
モニタリング計画の
作成
方法論
の準備
登録
方法論
ガイドライン
の準備
検証
クレジット
発行
クレジット
配分の決定/
クレジットの
配分申請
クレジットの
発行
完全性確認
↓
登録
方法論
の承認
両国関係者
で設立
妥当性の確認
妥当性確認・
検証ガイドライン
第三者
機関
完全性
排出削減
確認/
量の検証/
検証報告書の 発行クレジット
量の決定
準備
出典:各種資料より調査団作成
図 16
JCM のフロー
JCM の場合、日本企業の技術移転や低炭素技術・製品の普及も目的であるため、京都
メカニズムによるプロジェクト化に比較して、プロジェクトの追加性・妥当性の評価や
エネルギー消費量算定の方法論の設定が容易である。既に、複数の日本企業が ECC ホー
チミンの支援を得て、アモルファス変圧器や BEMS、家庭用インバータ空調機等の導入
ポテンシャル調査や方法論の作成を行っている。
但し、現時点で方法論が承認されているのは、モンゴルの送電ロス低減 1 件のみであ
り、クレジット化の実績はまだ無い。
33
1.4 停電対応分野の市場環境
1.4.1 現地電力会社の電力供給信頼性
(1)
ビンズン省における停電状況
「べ」国では、電力会社毎に SAIDI・SAIFI の目標値を設置し、停電時間・回数の低減に努
めている。具体事例として、ホーチミン電力では、停電通知や顧客クレームを受け付ける「事故
対応センター」を設立するなど、顧客サービスの品質向上への取組みが始まっている。
新都市に電力を供給しているビンズン電力でも、SAIDI・SAIFI を評価項目に設定し、
供給信頼度向上に努めている。実際、2013 年は年間事故停電目標を 384 分と設定してお
り、その目標を達成した。なお、ビンズン電力における最大の事故原因は、裸電線への
異物接触である。1.2.4 節で述べたように新都市の配電線は全て地中化される計画である
ことから、将来的に事故停電は大幅に低減する見込みである。
表 17 ビンズン電力の電力供給信頼度(2013 年)
事故停電
補修停電
合計
SAIDI
SAIFI
SAIDI
SAIFI
SAIDI
SAIFI
339
3.3
3,188
11.6
3,779
17.3
ビンズン電力
183
3.2
3,051
10.2
3,287
13.9
SPC 全体
出典:SPC 資料より調査団作成
現状、「べ」国の放射状架空配電系統の特性から、補修工事に際しては幹線全てを停止
する必要があり、2013 年実績では平均 4.6 時間程度の停電につながっている。
一方、1.2.4 節で述べたように、新都市の配電系統は、異なる変電所から供給されるケ
ーブル系統を RMU を用いてループ構成とする為、補修停電の頻度・時間共に大幅な低
減が期待される。参考までに、補修工事に際し、需要家は 1 ヶ月前に停電のタイミング
が通知されており、需要家によってはその要望に合わせ、時期と時間が調整されている。
停電範囲
ケーブルのみ停止
変電所
工事箇所
変電所
工事箇所
変電所
RMU による地中配電系統
放射状架空配電系統
出典:調査団作成
図 17 メンテナンス停電範囲の概念
(2)
新都市における停電状況および今後の見込み
ビンズン省に所在するタワーオフィス・オーナー会社へのインタビューによると、月 1~2 回、
34
10 時間/月程度、最大で 1 回あたり 8 時間の停電がある。停電時間は、上記ビンズン
電力エリアの平均の停電時間を、少し上回る状況である。
新都市については、現在、省庁舎やマンションなど大型施設の建設が進んでおり、
特に工事停電が多い状況と考えられる。そのため、近い将来には、工事停電の発生頻
度が低下する可能性がある。また、事故停電についても、新都市では電線の地中化が
進められており、主な要因である雷、鳥獣・樹木等の接触は防げる。加えて、計画停
電については、仮に電力の供給力が低下したとしても、新都市の場合、1.2.4 節に述
べたように、省庁舎を中心とした重要な行政・経済エリアが所在することから、供給
の優先順位が高く設定されており、停電範囲は限定的である可能性がある。
1.4.2 停電対応分野に関する現地ニーズの確認
(1)
大規模需要家における停電対応
国営の建築設計会社である CDC (Vietnam Investment Consulting and Construction
designing Joint Stock Company)へのインタビューによると、工場やオフィス、商業施設などの
大規模需要家では、建物内の全電力負荷への供給が可能な容量のディーゼル発電機と、
長時間停電への対応が可能な軽油備蓄タンクを設置している場合が多い。法制上の設置義
務はないが、CDC としても、自社が設計する建物の施主には、全負荷分の自家発の設置を
推奨している。
本件の現地調査においては、対象とした 2 ヵ所のタワーオフィス、1 ヵ所の商業施設にお
いて、全電力負荷分のディーゼル発電機を確認した。それぞれ、10 時間~約 1 週間の停電
にも対応可能な規模の軽油備蓄タンクを設置している。
表 18 自家発電設備の設置状況
タワーオフィス A
タワーオフィス B
商業施設
場所
ビンズン省
ホーチミン
ホーチミン
延床面積
41,774 ㎡
19,770 ㎡
6,800 ㎡
6,500kVA
6,000kVA
受電設備容量
2,800kVA 基
1,970kVA、
自家発容量
1,200kVA×2 基
910kVA、720kVA
1,270kVA×2 基
・月 7~8 回/月程度停
・月 1~2 回、10 時間/
・月 1 回程度。工事停
電。夜間の工事停電
月程度、最大で 8 時
電で EVN より事前
が多く、昼間の停電
間程度停電。(停電時
通知あり。
停電状況
は 2~3 回程度。
は自家発に切り替わ
・1 回の停電時間は 6
・1 回の停電時間は、1
るので、停電を意識
時間程度。
~2 時間。最大で半
する機会は少ない。)
日程度。
軽油備蓄
1 週間
6 日間
発電設備写真
-
出典:調査団作成
35
1) 停電時のフロー
大口需要家の場合、工事停電の際には、EVN より 1 週間前に停電の日時が通知され
る。また、天候や水力による発電量不足等の状況から EVN が供給力不足を予測した場
合も、事前に連絡がある。
停電時にはディーゼル発電設備を発動し、電力供給ラインが切り替えられる。発電機
には自動電源切替器(ATS:Automatic Transfer Switch)が併置されており、系統および非
常用発電設備側の停復電処理のフローは自動化されている。但し、停電時に系統から非
常発電設備に電力供給ラインを切り替えた後、電力負荷を投入するプロセスは手動で行
われており、その作業に係る時間が建物における停電時間の差につながっていると考え
られる。
EVN系統の停電
電圧
非常用発電機
建物内の停電
建物内の停電
電圧
電力負荷
EVNからの 負荷の 停電
通知
切離し
復電
非発
の停止
給電系統の切替
負荷の投入
出典:調査団作成
図 18 停復電のフロー
2) 停電対応設備のコスト負担
JETRO 調査によると、ホーチミン市の事務所賃料は月額 34~36USD/㎡程度であり、
加えて、月額 6USD/㎡が管理費として課金される。この管理費には、清掃や植栽管理
等に合わせて電力料金や空調などエネルギー料金が含まれている。
現地調査でインタビューを行ったタワーオフィス A では、管理費が月額 5~6USD/㎡
で、その内 2~3USD/㎡は空調代ということであった。管理費は、空調設備や停電対応
設備の費用回収を考慮して設定されている。参考までに、水冷式チラー、BEMS、空調
関連設備、非常用発電設備、左記の工事費を合算すると 300 万 USD ドルほどとのこと
である。
3) その他
現地調査でインタビューを行った商業施設では、非常用照明、中央管理設備、レジ、
セキュリティシステムに限定して UPS(40kVA、30 秒)で保護している。
36
図 19 商業施設設置の UPS (鉛蓄電池・切替盤)
(2)
電力品質に関する考え方
1) 系統電力の電力品質
「ベ」国の電力法詳細規定(137/2013/ND-CP)では、電力の品質基準が定められて
い る 。 こ の 内 容 は 、 日 本 の 電 力 会 社 の 基 準 ( 電 圧 が 101V ± 6V/202V ± 20V 、
50Hz/60Hz±0.1~0.3Hz(努力目標))と比較しても遜色のないレベルである。日本では
「高調波抑制対策ガイドライン」において、高調波発生レベルにつき配電系統で
5%、特高系統で 3%を目標に設定している。SPC によると、電圧・周波数は制御で
きているものの、高調波については適当な対策が取れていない。
電圧階級
超高圧
表 19 「べ」国の電圧階級と電力品質基準
基準電圧
電圧品質基準
500kV
高圧
110kV,220kV
中圧
6kV,10kV,15kV,
22kV,35kV
低圧
項目
平時
事故時
電圧
重大
事故時
平時
周波数
事故時
高調波
380V,440V/220V
内容
基準電圧-5%,+5%
基準電圧-10%,+5%
基準電圧-10%,+10%
50Hz ± 0.2Hz
50Hz ± 0.5Hz
6.5% (SPC 基準)
出典:各種資料より調査団作成
2) 電力品質に関する整理
日本国内では過去調査において、電力品質レベルの分類と業種毎のニーズ調査が
行われている(「「品質別電力供給システム」に関する検討報告書」(平成 15 年 6 月、
(財)エネルギー総合工学研究所))。その中で、店舗(大手デパート)については、「現
状の品質で満足」という回答が得られている。「べ」国商業施設においても、非常
灯や POS システムなど必要最小限の負荷が UPS 等で保護されれば、現状以上の電
力品質レベルは求められない可能性は高いものと考えられる。
37
表 20 電力供給品質要件の分類と要求される電力供給品質
分類
電力供給品質
バックアップ時間
主な用途
汎用コンピュータ
製造設備(半導体製
無瞬断、電圧波形レベルでの 安全にシャットダウン
高品質 A
造装置等)、通信設
補償を行う品質
できる時間以上
備、
医療用機器
小容量コンピュータ
瞬断時間が 15msec 以下に限
高品質 B
200msec 以上
製造設備
定される品質
高圧放電ランプ
重要照明、換気・衛
瞬断時間が 1 分以下に限定さ 停電時間が 1 分
高品質 C
生ポンプ、エレベータ、
れる品質
程度に制限
製造動力
標準
-
-
-
(電力系統)
出典:(財)エネルギー総合工学研究所資料
業種
一般オフィスビル
銀行
電算センター
官公庁
店舗(大手デパート)
ホテル
表 21 電力供給品質のニーズ調査結果
電力供給品質へのニーズ
高品質 A(汎用コンピュータ、ビルディングオートメーション)、高品質 B(サーバ)
高品質 A(本店機能)、高品質 C(支店機能)
高品質 A
高品質 A(サーバ)、高品質 C
現状の品質で満足
高品質 A(ホストコンピュータ、ビル管理設備)、高品質 C
出典:(財)エネルギー総合工学研究所資料より調査団作成
38
1.5 「べ」国における大規模商業施設の整備状況
「べ」国ではハノイ市・ホーチミン市など都市部やその近郊を中心に、デパートやシ
ョッピングセンター、スーパーマーケット等、近代的な大規模商業施設の出店が相次い
でいる。平均的な所得層のベトナム人の買い物は依然、昔からある市場や商店街で行わ
れることが多いが、富裕層や都市部で働くビジネスマン、現地に駐在する外国人などを
中心に、大規模商業施設においても消費活動が盛んになってきている。また、最近では、
大規模商業施設を大規模集合住宅や大学・高校等の教育施設と一体的に整備した超大型
開発の事例も見受けられる。今後、「べ」国の高い経済成長率や中間層・富裕層の購買
力の増大、若者の新しい商品に対する購買意欲の高まりなどを背景に、商業施設近代化
の流れが一層進むと考えられる。
・従来型の市場・商店街の様子
市場 (ホーチミン市)
商店街(ハノイ市)
・超大型開発の様子
開発地区の全景(ハノイ市)
商業施設内部(ハノイ市)
商業施設内・スケートリンク(ハノイ市)
商業施設内・ボーリング場(ハノイ市)
2011 年の JETRO 報告書によると、2011 年 3 月時点におけるホーチミン市の大型商業
39
施設は 24 ケ所、延床面積にして 31 万㎡程度であった。「べ」国不動産コンサルティン
グ会社の公表する情報によると、2012 年時点におけるデパートの延床面積は約 11.6 万
㎡、ショッピングセンターは約 42.2 万㎡で合計して約 54 万㎡である。近年、大型開発
が立て続けに行われており、延床面積が大幅に拡大している。2013 年以降も郊外を中
心に複数の大型開発が予定されており、1 棟当りの延床面積は拡大の傾向にある。
表 22 ホーチミン市内の代表的な大規模商業施設
・ホーチミン市内の主なデパート
名称
設立年 売場面積
Vincom Center A
2012
38,000 ㎡
Pandra City
2012
40,000 ㎡
Vincom
Now zone
2010
2008
57,704 ㎡
12,000 ㎡
Parkson(Le Thanh Ton 店)
2005
17,000 ㎡
Diamond Plaza
1999
7,700 ㎡
Zen Plaza
1999
7,000 ㎡
特徴
ベトナム企業(VincomGroup)出資。エルメス
やラルフローレン等世界的な高級ブランド
が出店。総出店数は 250 店。
ベトナム企業出資。地元ブランドに加えて
BigC 等が出店。
アルマーニやベルサーチ等が出店。
台湾企業出資。アディダスやコンバース等
が出店。
マレーシア企業出資。カルバンクラインや
ラコステ等が出店。Le Thanh Ton 店他 3 ヶ所
に出店。
韓国企業出資。アディダスやコンバース等
が出店。
日本企業出資。ディーゼルやトミーヒルフ
ィガー等が出店。
・ホーチミン市内の主なスーパーマーケット
名称
店舗数
売場面積
特徴
Co.op Mart
21
2,000~13,000
ベトナム大手小売企業 Co.op Vietnam 出資。
全国で 50 店舗展開。
Big C
5
4,000~15,000
仏 Casino Group 出資。全国で 14 店舗展開。
Lotte Mart
3
12,500~33,400
韓 Lotte 出資。
Metro
3
20,000
独 Metro Cash&Carrt 出資。大手卸スーパ
ー。全国 13 店舗展開。
出典: JETRO 資料・各種資料を元に調査団作成
「べ」国不動産コンサルティング会社の公表する情報によると、ビンズン省の一般消
費者層の購買力は、現段階ではホーチミン市の 1/2 程度である。しかしその一方、省内
に大規模な工業団地を複数有しており、海外投融資はホーチミン市、ハノイ市に次いで
多いこと等の背景から、ビンズン省の実質経済成長率は 10%~15%程度と、「べ」国平
均に比較して高い水準を維持している。また、ビンズン省は 2020 年までにホーチミン
市やハノイ市と同じく「中央直轄市」に指定されるべく交通インフラの整備や住宅建設、
人材育成などを進めており、一層の経済成長が期待されている。そのため、ビンズン省
内における大型商業施設の建設も進んでおり 2010 年の延床面積は 5 万㎡程度であった
が、2014 年にはその 3 倍の 17 万㎡程度にまで拡大する予定である。
40
第 2 部 事業計画書
2.1 省エネルギーシステムに関する検討
2.1.1
検討対象とする省エネルギー手法
1.3.1 節で述べたように、「べ」国では省エネビル建築基準の導入等の規制強化によっ
て、外皮の断熱性能や熱源機の効率など比較的容易に導入が可能な単体の対策について
は、大規模建物を中心に普及する方向にある。一方で、蓄熱空調や空調設備の最適制御
を可能とするシステム技術はまだ定着していない。
そこで本検討では、日本が得意とするシステム技術の活用によるエネルギー利用の効
率化を目的に、ビルエネルギー管理システム(BEMS)の導入による熱源設備・空調設
備・照明の運転制御の高度化を評価する。具体的には、以下の省エネ手法について省エ
ネ効果と投資採算性を検討する。
分野
換気
熱源
空調設備
水搬送
空気搬送
照明
電気設備
非常用電源
自動制御
BAS/BEMS
表 23 検討対象とする省エネ手法
省エネ手法
外気量制御(CO2制御)
全熱交換器の導入
熱源(インバータターボ冷凍機)の台数分割
水蓄熱の導入
冷却水ポンプ変流量制御
一次ポンプ変流量制御
二次ポンプ吐出圧カスケード制御
大温度差水搬送(ΔT=10deg)
空調機変流量制御
低温冷風空調(10℃送風)
LED ダウンライト+調光制御
直管型 LED+調光制御
(自家発電設備 ※蓄電池の採用は 2019 年以降)
停電時電力制御
中央監視機能(BAS)
高機能停復電プログラム、最適効率化制御(BEMS)
出典:調査団作成
日本のオフィスビルにおいては、全エネルギー消費量に占める空調熱源、水・空気搬
送、照明の割合はそれぞれおよそ 1/4、1/4、1/5 程度である。また、照明の節電が進め
ば冷房負荷の削減によって、熱源や水・空気搬送にも相乗効果が得られる。建物の省エ
ネルギー推進のためには、熱源、水・空気搬送、照明がほぼ同程度に重要である。
41
出典:省エネルギーセンターホームページ
図 20 オフィスビルにおけるエネルギー消費構造
2.1.2
(1)
現地商業施設におけるエネルギー消費モデルの検討
モデル建物の設定
省エネの効果の算定にあたって、まず導入対象となる建物の条件を整理した。ここで
は、建物規模や営業時間等について、将来的に新都市内で建設される可能性のある大型
商業施設を念頭に、表 24のとおり設定した。
項目
施設規模
業態
営業時間
受電電圧
表 24 検討対象とする商業施設の概要
概要
延床面積 30,000 ㎡
商業施設 (大型のモールを想定)
10:00-22:00 (年中無休)
22kV(中圧)
ゾーン
ゾーニング
モール
フードコート
スーパーマーケット(食品売場)
テナント
バックヤード
面積
4,800 ㎡
1,200 ㎡
3,000 ㎡
15,000 ㎡
6,000 ㎡
割合
16%
4%
10%
50%
20%
出典:調査団作成
42
(2)
エネルギー消費モデル検討の前提条件
モデル建物の負荷については、空調、照明、その他(動力(昇降機・給排水)・コンセン
ト・屋外照明・看板照明)に分けて想定した。
1) 空調
熱負荷は、日本国内におけるモデル建物と同規模の商業施設(2 件)の熱負荷実績
値を参照し、ホーチミン市の外気温湿度により補正して設定した。空調エネルギー
消費量の試算には、国土交通省が公開しているエネルギーシミュレーション
「LCEM ツール」を利用して算出した。
負荷
割合(%)
負荷
割合(%)
表 25 空調負荷量(ピーク月平均時間帯別量・年間総量)
(単位:MJ/㎡)
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00
年間
0
0
0
0
0
0
0
0
0 0.23 0.3 0.33 空調負荷量
0
0
0
0
0
0
0
0
0
7.3 9.7 10.6
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00
8,623GJ
0.31 0.29 0.3 0.29 0.28 0.26 0.25 0.12 0.07 0.06 0
0
10.0 9.4 9.7 9.5 9.0 8.5 8.1 4.0 2.2 1.9
0
0
出典:調査団作成
2) 照明
「べ」国現地調査により測定した海外資本の大型商業施設における照度を参考に、
モデル建物の照度を 500lx と設定した。照明の電力消費量の試算には、上記の設定
照度と照明器具の効率から算定した。
3) その他(動力(昇降機・給排水)・コンセント・屋外照明・看板照明)
空調の熱負荷設定で参照した日本の同規模商業施設のうち、照明・空調が停止し
ている夜間の電力消費量を参考に電力負荷を設定した。夜間時間帯はコンセント
(待機電力)や屋外照明等の利用を、昼間時間帯はコンセントに加えて、昇降機や給
排水動力、看板照明等の利用を見込んでいる。
表 26 その他負荷量(時間帯別量・年間総量)
(単位:kWh/㎡)
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00
年間
0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.013 0.013 0.013 空調負荷量
負荷
3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 3.5 4.7 4.7 4.7
割合(%)
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00
0.013 0.013 0.013 0.013 0.013 0.013 0.013 0.013 0.013 0.013 0.01 0.01 3,103MWh
負荷
4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 3.5 3.5
割合(%)
出典:調査団作成
以下では、「べ」国商業施設の現地調査結果を踏まえ、上記モデル建物を対象に基準
となる設備グレード(以下、これを「ベースグレード」と呼ぶ)を設定した。さらに、今
回導入を考える省エネ手法を採用した先進的な設備グレード(以下、これを「アドバン
43
スグレード」と呼ぶ)を設定した。
上記前提条件による試算の結果、後述するベースグレードの延床面積当りの年間電力
消費量は約 321kWh/㎡・年であった。
「べ」国現地調査における商業施設 C の年間電力
消費量は約 657kWh/㎡であったが、そのうち冷凍冷蔵設備の電力消費量を除くと約
394kWh/㎡であることから、上記の前提条件とベースグレードの設備設定による電力消
費量は、現実的な数値と考えられる。
(3)
空調設備のエネルギー消費モデル
「べ」国の大型商業施設では熱源機として、主に外資系大手メーカー(米キャリア社、
米マッケイ社等)のターボ冷凍機や水冷チラーが採用されており、調査対象建物の中に
は、部分負荷特性に優れたインバータターボ冷凍機を導入している物件もあった。これ
らの冷凍機の成績係数(COP)は、日系メーカーの現行製品と遜色ない。また日系メーカ
ーの一部も、中国での生産や現地企業への出資等を通じて、現地の価格水準に見合う製
品を供給している。
そこで熱源機本体については、ベースグレードとアドバンスグレードとで共通とし、
アドバンスグレードでは、水蓄熱空調システムの採用による熱源機の運転平準化と、
BEMS による空調・照明関連設備の運転効率化による電力消費量の削減を考える。
1) ベースグレード
ⅰ
熱源
モデル建物の最大熱負荷量は 848USRT である。配管熱損失等(×1.05)や機器能力
劣化(×1.05)、能力補償係数(×1.05)等を加味すると、熱源機の容量は 981USRT 以
上である必要がある。ここでは、500USRT×3 台(うち 1 台は故障時に備えた予備
機)とした。自動制御は採用されておらず、時間帯により手動で ON/OFF 運転する
ものとした。
ⅱ
換気
調査対象建物では、外気負荷削減のための全熱交換器や取り入れ外気量の制御は
採用されていなかった。先進的な施設の設備設計を行う CDC へのインタビューに
おいても、外気負荷削減につながる手法の採用は聞かれなかったことから、ベース
グレードでは、営業時間中、常時一定の外気量が取り入れられるものとした。
ⅲ
水搬送
調査対象建物では、空調機側(二次側)で冷水を循環させる二次ポンプにインバー
タを付加し変流量制御を行っている事例が確認されたが、熱源側の一次ポンプや冷
却水ポンプは定流量運転であった。そのため、ベースグレードでは、二次ポンプの
み変流量制御(吐出圧一定制御)を行うものとした。なお、冷水の利用温度差は 5℃
差(往:7℃、還:12℃)とする。
44
空調機
(二次側)
吐出圧
インバータ×4
二次ポンプ
冷凍機
冷凍機
(一次側)
冷凍機
一次ポンプ
DDC
出典:調査団作成
図21 二次ポンプ吐出圧一定制御のシステム構成
ⅳ
空気搬送
調査対象建物での調査結果に倣い、ベースグレードでは、空調機ファンは定速運
転とし、負荷変動に対しては送風温度を調整することで対応する、「定風量方式」
とする。
2) アドバンスグレード
ⅰ
熱源
熱源機の台数分割の細分化と水蓄熱システムについて効果を試算し、効果が大き
い方を採用する。通年冷房の「べ」国南部では、暖房モードを考慮する必要がない
ので、水蓄熱に比較して氷蓄熱の方が蓄熱槽を縮小できる。しかし、水蓄熱に比較
して COP が下がることや保守管理上の困難※から本検討では水蓄熱を採用する。
※ 例えば以下の点への配慮が必要である。
- 氷蓄熱槽の循環液として利用する不凍液が漏れた場合、産廃処分が必要である。
- 不凍液の濃度管理が必要である。(漏れに気付かないと凍結故障を起こす。)
- 氷蓄熱槽の残氷管理を行うセンサ類のメンテナンスが必要である。
- 氷が残留したまま次回製氷時に過剰製氷した結果、氷塊が生成しコイルやタンクを破
損する可能性がある。
・台数分割の細分化
従来型の熱源機の運転制御では、運転台数をできるだけ少なくして稼働機の負
荷率を高めた方が COP は高くなる。しかし、インバータ冷凍機の場合、冷却水
の温度条件によっては、運転台数を増やして 40~60%程度の負荷率で運転した方
が、少ない台数を高負荷率で運転するより COP が高まる。
こうした冷凍機の特性と外気条件等を踏まえ、アドバンスグレードでは 350RT
×4 台(うち 1 台は予備機)とより細かく台数を分割し、負荷変動に機動的に対応
することでシステム効率の向上を図るシステムとする。
45
インバータ式冷凍機
従来機
出典:三菱重工㈱製品カタログ
図 22 冷凍機の部分負荷線図
・水蓄熱システム
熱需要が少ない夜間に生産した熱を蓄熱槽に溜め、熱需要が高まる時間帯に放
熱させて空調を行う。建物の消費電力量が熱源の運転にリアルタイムで影響する
ことはないので、高 COP となる負荷率において定常運転ができる。(満蓄直前以
外は、ほぼ一定運転が可能である。) 時間あたりの熱生産量を低減できることか
ら、熱源機や熱源補機 (一次ポンプ、冷却水ポンプ、冷却塔) の容量を縮小し、
消費電力量を削減できる。また、夜間は外気温度が下がり熱源機の運転効率が向
上する等の効果もある。
ここでは、電力単価が高いオンピーク(9:30~11:30、17:00~20:00)では熱源を
停止し、それ以外の時間帯(19 時間)において熱源を運転することを想定する。こ
の場合、熱源機の容量は 486USRT 以上である必要があることから、250USRT×3
台(うち 1 台は予備機)とする。
ダクト(風道)
熱源機
蓄えた
熱を利用
水配管
空調機
熱源を運転し
冷水を生成・蓄熱
熱源を運転し
すぐ使う冷水を生成
地下スラブ
冷房時間
水蓄熱槽
出典:(財)ヒートポンプ・蓄熱センターHP
図 23 冷凍機の部分負荷線図
46
空調機
DDC
冷凍機
冷凍機
水蓄熱槽
DDC
温度センサー
BEMS
出典:調査団作成
図 24 水蓄熱システムの構成
ベースグレード
台数分割
水蓄熱
ベースグレード
台数分割
水蓄熱
表 27 熱源機の電力消費量 (時間帯別量・年間総量)
(単位:kWh)
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00
0
0
0
0
0
0
0
0
0 288 378 417
0
0
0
0
0
0
0
0 277 373 410
0
268 267 266 266 265 199 0
0
0
0
0
288
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00 年間(MWh)
0
396 372 383 369 348 325 307 152 92 85
0
1,274
0
1,252
391 367 378 364 344 322 305 158 83 74
0
289 289 288 286 283 0
0
0
0 272 270 269
1,369
出典:調査団作成
ベースグレード
台数分割
水蓄熱
ベースグレード
台数分割
水蓄熱
表 28 水搬送の電力消費量 (時間帯別量・年間総量)
(単位:kWh)
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00
0
0
0
0
0
0
0
0
0 219 222 230
0
0
0
0
0
0
0
0 104 152 160
0
84 84 84
84 84 84
0
0
0
19 27 114
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00 年間(MWh)
0
223 221 222 222 221 220 220 113 111 111
0
925
0
547
153 151 152 151 150 150 149 101 53 53
0
112 111 111 111 110 26 25 13 10 93 84 84
542
出典:調査団作成
水蓄熱システムは、夜間蓄熱時の放熱ロスや熱源機-蓄熱槽間の循環ポンプの電力
消費などの増エネとなる要因があり、総合的には省エネにならない場合もある。上記
システムでは、ベースグレード並びに台数分割の細分化に比較して若干省エネ効果が
劣った。但し、後述の省コスト効果の試算では、オンピーク以外の電力単価が比較的
安価な時間帯に蓄熱し、オンピークに放熱することによるコスト削減メリットが大き
いことから、本事業計画では水蓄熱システムを採用する。
47
ⅱ
換気
外気量制御および全熱交換機の省エネ効果を試算する。
・外気量制御
室内からの還気の CO2 濃度を常時計測し、濃度が基準値以下であれば外気取
入量を減少させ外気負荷を低減する。
排気
FAN
還気
CO2濃度
センサ
モータ
ダンパ
外気
C
C
温湿度
センサ
温室度
センサ
給気
FAN
温湿度
センサ
空調機
DDC
建物内
BEMS
出典:調査団作成
図 25 外気量制御のシステム構成
・全熱交換器
換気により失われる空調エネルギーの全熱(顕熱:温度と潜熱:湿度)を回収再利
用する装置を導入する。外気流と排気流を伝熱性と透湿性を持つシートで仕切り、
温度と湿度の交換を同時に行う。この仕組みにより吸気流と外気流のエンタルピ
ー差を 1/2 に縮小できる。
小容量向けの固定式直交流型と大中容量向けの回転式対向流型があるが、本検
討では、後者を空調機に組み込み一体化したシステム型空調機の利用を想定する。
固定式直交流型
回転式対向流型
出典:左/省エネルギーセンターHP、右/(株)西部技研ホームページ
図 26 全熱交換器の構造
ⅲ
水搬送
冷却水ポンプ、一次・二次ポンプの変流量制御と、冷水搬送の大温度差制御の省
エネ効果を試算する。
48
・冷却水ポンプ変流量制御
冷却水の往環温度差が一定になるよう、最低流量以上の範囲で冷却水ポンプ流
量を制御し、ポンプ動力を削減する。また、熱源機の効率を高めるため、冷却水
の出口温度は、外気湿球温度により自動変更する。
冷却塔
外気温湿度
センサ
温度センサ
温度センサ
冷凍機
インバータ
DDC
BEMS
出典:調査団作成
図 27 冷却水ポンプ変流量制御のシステム構成
・一次ポンプ変流量制御
熱源側を循環する一次側冷水の最低流量は確保しつつ、一次側流量と二次側流
量が同じとなるように、負荷側流量に応じて一次ポンプ流量を制御する。二次側
負荷流量と熱源の運転系統数から最適な一次ポンプ流量を演算し、一次ポンプの
インバータ出力を制御する。
空調機
流量計
冷凍機
インバータ
冷凍機
インバータ
冷凍機
温度 流量計
センサ
インバータ
DDC
BEMS
出典:調査団作成
図 28 一次ポンプ変流量制御のシステム構成
・二次ポンプ吐出圧カスケード制御
二次側のポンプについて吐出圧が目標値と一致するよう二次ポンプ流量(イン
バータ回転数)と一次側ヘッダーと二次側ヘッダーをつなぐバイパス二方弁を制
御する。吐出圧の目標値は、二次側冷水の負荷流量の変化に合わせて変更する。
49
負荷流量が少ない場合は、二次ポンプの揚程を低下(回転数を低下)させることで
省エネにつなげる。(ベースグレードでは、吐出圧の目標値を固定し、二次ポン
プ流量とバイパス弁を制御している。)
空調機
吐出圧
二次往ヘッダー
流量計
バイパス弁
二次ポンプ
一次往ヘッダー
一次還ヘッダー
冷凍機
冷凍機
冷凍機
DDC
BEMS
出典:調査団作成
図 29 二次ポンプ変流量制御のシステム構成
・大温度差制御
冷凍機の入口出口温度差について、大温度差(ΔT=10℃、冷水往温度 17℃、冷
水還温度 12℃)を採用する。(ベースグレードでは標準温度差ΔT=5℃、冷水往温
度 12℃、冷水還温度 7℃、を採用している。) 空調機コイルの大型化や大温度差
仕様の冷凍機の導入が必要となるが、冷水の流量が少なくて済むため、配管サイ
ズやポンプ容量、蓄熱槽容量を縮小し、全体として導入費用と消費電力量を削減
できる。
表 29 水搬送動力等の電力消費量 (時間帯別量・年間総量)
(単位:kWh)
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 年間(MWh)
0
0
0
0
0
0
0
0
0 219 222 230
925
ベースグレード
アドバンスグレード
66 66 66
66 38
0
0
0
0
15 21
89
382
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00
0
0
ベースグレード 223 221 222 222 221 220 220 113 111 111
アドバンスグレード
87 87 87
87 87 22 21 12
8
8
66
66
出典:調査団作成
50
空調機
温度センサ
流量計
温度センサ
冷凍機
冷凍機
冷凍機
往温度17℃
還温度7℃
DDC
出典:調査団作成
図 30 冷水温度差制御のシステム構成
ⅳ
空気搬送
空調機変風量制御、空調機大温度差送風について省エネ効果を試算する。
・空調機変風量制御
室内環境の変化に合わせて風力を変化させる可変定風量装置(VAV: Valuable Air
Volume)を採用する。室温が目標とする設定温度に近づくに従いダンパーの羽根
を閉め(VAV 開度を絞り)、給気量を絞る。空調機の給気ファンと還気ファンの風
量(インバータ回転数)も各ダンパーの VAV 開度に合わせて絞る。その結果、給気
ファン、還気ファン動力の電力消費量が削減できる。
DDC
BEMS
インバータ
還気
FAN
排気
冷水
2方弁
C
外気
給気温度=10℃
インバータ
C
給気
FAN
給気
温度
センサ
VAV
VAV
コントロー
ラ
コントロー
ラ
VAV
VAV
空調機
温度センサ
温度センサ
建物内
出典:調査団作成
図 31 冷水温度差制御のシステム構成
・空調機大温度差送風
空調機の給気温度を従来標準の 16℃から 10℃程度まで下げることで、小風量
での冷房を可能とする。低温度の冷風を作るため、空調機コイルの大型化、空調
機やダクトの断熱強化などが必要となるが、空調機本体やファン、ダクトサイズ
51
が縮小できるほか、ファン動力が削減できる。
BEMS
DDC
還気
ファン
排気
冷水
2方弁
給気温度=10℃
VAV
コントローラ
C
外気
給気
ファン
C
給気
温度
センサ
VAV
コントローラ
VAV
VAV
空調機
温度センサ
温度センサ
店舗内
出典:調査団作成
図 32 空調機変風量制御のシステム構成
表 30 空気動力等の電力消費量 (時間帯別量・年間総量)
(単位:kWh)
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00
0
0
0
0
0
0
0
0
0 330 413 413
ベースグレート
アドバンスグレード 0
0
0
0
0
0
0
0
0 157 199 206
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00 年間(MWh)
0
0
1,610
ベースグレート 413 413 413 413 413 413 413 193 129 97
アドバンスグレード 199 194 198 197 197 196 194 99
57 46
0
0
776
出典:調査団作成
FCU
1%
空調機ファ
ン
39%
全熱交換器
ファン
0%
FCU
1%
空調機
ファン
29%
熱源機
36%
熱源機
54%
二次ポンプ電
力
4%
一次ポンプ
8%
二次ポンプ
電力
2%
冷却塔
3% 冷却水ポンプ
冷却塔 冷却水ポンプ
5%
9%
6%
一次ポンプ
3%
アドバンスグレード
ベースグレード
出典:調査団作成
図 33 設備毎の電力消費割合
52
1,200
熱源機以外
電力量(kWh)
1,000
熱源機
800
600
400
200
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間
出典:調査団作成
図 34 空調設備による電力消費量(ベースグレード)
700
熱源機以外
熱源機
電力量(kWh)
600
500
400
300
200
100
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間
出典:調査団作成
図 35 空調設備による電力消費量(アドバンスグレード)
4,000
3,8 08 MWh / 年
3,500
電力量【kWh/ 年】
3,000
FCU
2,500
3 6 % 削減
2 ,4 3 6 MWh /年
全熱交換器
空調機ファン
2,000
二次ポンプ
1,500
冷却塔
1,000
冷却水
ポンプ
一次ポンプ
500
熱源機
0
ベースグレード
アドバンスグレード
出典:調査団作成
図 36 年間電力消費量の比較
53
(4)
照明設備のエネルギー消費モデル
商業施設において照明に消費される電力は建物全体の 20~30%を占めている。また、
照明からの発熱は冷房負荷の増加につながることから、照明電力の削減が建物全体の省
エネに与えるインパクトは大きい。
1) ベースグレード
1.3.2 節で述べたように、「べ」国における商業施設の照度は、建物によりばらつ
きが大きい。ここでは、調査施設の中で新しくグレードも高い大型商業施設におけ
る照度を参考に、500lx と設定した。機器に関しても同様の調査結果から、ダウン
ライトは LED、直管型ライトは T5 管とする。
2) アドバンスグレード
共有通路のモール、フードコート、スーパーマーケットについて、一日の営業サ
イクルに従い照度を変えることで、時間帯に合わせた空間の演出と照明設備の消費
電力を削減する。
国際照明委員会(CIE)が定める国際基準 ISO8995 では、小売店販売エリアの照度
基準は 300~750Lx、玄関ホールや廊下は 75~150Lx である。本検討では、150Lx
を最小照度、500Lx を最大照度とした制御を想定した。(参考までに、日本の照度
基準 JISZ9110 では、大型店の店内全般について 350~750Lx を推奨照度としている。
東日本大震災後、推奨照度に幅(照度範囲)が認められ、例えば推奨照度 750Lx の場
合、500~1,000Lx の幅が容認されるようになった。)
機器に関しては、ダウンライト、直管型ライトとも LED とし、制御対象エリア
における機器には調光機能を持たせる。
時間
9:00~10:00
10:00~16:00
16:00~20:00
20:00~22:00
22:00~23:00
表 31 照明制御の設定
設定
照度 150Lx:開店前の準備中は、清掃等に必要な明るさ
照度 300Lx:開店と同時に活気のある明かり
照度 500Lx:人が混み合う時間帯。空間を活性化。
照度 300Lx:夜間のくつろぎ感を出す様な明かり
照度 150Lx:閉店後は、清掃等に必要な明るさ
出典:調査団作成
表 32 照明の電力消費量 (時間帯別量・年間総量)
(単位:kWh)
年間
1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00
0
0
0
0
0
0 104 104 104 104 104 570MWh
ベースグレード 0
アドバンスグレード
0
0
0
0
0
0
0
29 56 56 56 56 347MWh
13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 24:00
ベースグレード 104 104 104 104 104 104 104 104 104 104 104 0
アドバンスグレード 56
96 96 96 96 96 96 96 58 58 29
0
出典:調査団作成
54
600
(kW)
ベースグレード
アドバンスグレード
500
400
300
200
100
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間
出典:調査団作成
図 37 照明による電力消費量
LED の特徴は、高い発光効率と長寿命(約 4 万時間)にある。また 2011 年の価格は、
2009 年水準に比較して 1/3 にまで低減している(60W 相当で 6,000 円程度から 2,000 円程
度に低減)。日本政府による LED 照明の導入目標は、2020 年までにフローで 100%、
2030 年までにストックで 100%である。
海外においても、照明器具の生産について LED へのシフトが進んでいる。例えば、
中国は 2015 年までに照明市場の 30%を LED とすることを目標に掲げており、税優遇や
補助金、工場用地の斡旋など政策的に後押しをしている。そのため現在、大小合わせる
と約 4,000 社の LED メーカーが存在すると言われている。大手企業では蘭フィリップ
スや米 GE、オスラム(独シーメンス・グループ)など欧米企業も参入しており、中国国
内における生産量の 60~70%は国外に輸出している。
1.3.2 節で述べたように、最近「べ」国でも LED が導入されつつある。背景には、ア
ジア市場への海外 LED メーカーの参入がある。日本企業もベトナム市場に参入してお
り、2012 年には、信越化学工業㈱が LED のパッケージ材料(反射材や封止材等)の製
造・販売会社を設立しているほか、2013 年にはパナソニックが住宅用 LED 照明器具の
発光効率(lm/W)
販売開始を公表するなど取組みが進んでいる。
1850
1900
1950
2000
出典:経産省資料「LED 照明産業を取り巻く現状」より
図 38 発光効率の推移と白球電球・LED 電球の発熱比較
55
(5)
エネルギー制御システム
本検討では、省エネルギー効果を最大化するためビルエネルギー管理システム(BEMS)
の導入を想定する。
1) ベースグレード
「べ」国の大規模建物には、集中監視システム(BAS)が導入されている。主な機
能は、受変電設備や照明、空調設備の運転状況の遠隔監視や、各種センサのデータ
収集、運転スケジュールの設定、手動・タイマーによる ON/OFF 制御等である。
BAS機能
(データサーバ) (メインサーバ)
・設備・機器の遠隔監視
・各種センサのデータ収集
・運転スケジュールの設定
・手動によるON/OFF制御
・検針機能
・検針機能
・管理点数3千点程度
(監視端末)
(統合サーバ)
(熱源設備)
(照明設備)
(空調設備)
(計量設備)
電力メータ
DGP
コントローラ
コントローラ
(受電・動力設備)
コントローラ
DGP
出典:調査団作成
図 39 エネルギー制御システム(ベースグレード)
2) アドバンスグレード
BAS に加えて BEMS を導入する。設備自体にもインバータ制御等の機能が付帯
されているが、設備単体で可能なのは、センサから取得した環境情報のリアルタイ
ムでの運転制御への反映などに限定される。BEMS では、環境情報の履歴を蓄積し、
トレンドグラフや散布図等にて、運転制御に必要なパラメータ(制御パラメータ)の設
定値が適正かどうかを分析し、必要に応じて制御パラメータ値を変更することで、
運転制御を最適化する。
BEMS による省エネ効果は、空調設備自体が有する運転制御機能による省エネ効
果と切り離しての評価は極めて難しい。本検討では、LCEM ツールによる試算は理
想的な運転状態でのエネルギー消費量を算出しているとの立場に立ち、BEMS によ
る省エネ効果は上記空調設備の省エネ試算結果に織り込まれているものと評価する。
56
(監視端末)
(データサーバ)(メインサーバ)
BAS機能
・設備・機器の遠隔監視
・設備・機器の発停
(含スケジュール)
・各種センサのデータ収集
・グラフィック表示機能
・検針機能
・管理点数3千点程度
EMS機能
(EMS端末)
・各種データの収集・蓄積
・分析機能
・各種コントローラの
省エネ制御支援
+
(統合サーバ)
(熱源設備)
(照明設備)
(空調設備)
(計量設備)
電力メータ
コントローラ
・スケジュール調光制御
・昼光調光制御
・停電時減光制御
コントローラ
コントローラ
(受電・動力設備)
コントローラ
・熱源台数分割の適正化
・水蓄熱槽の導入
・冷却水ポンプ変流量制御
・二次ポンプ吐出圧カスケード制御
・冷水大温度差制御(Δt=10deg)
・外気量制御
・全熱交換器導入
・空調機変風量制御+VAV制御
・空調機大温度差送風制御
・停電時空調設定温度の緩和
DGP
出典:アズビル社提供資料を元に調査団作成
図 40 エネルギー制御システム(アドバンスグレード)
出典:アズビル社提供資料を元に調査団作成
図 41
BEMS 機能の一例(冷凍機の効率分析)
57
表 33
制御手法
外気量制御
(CO2 制御)
全熱交換器の
導入
冷凍機台数分
割の細分化
水蓄熱の導入
冷却水ポンプ
変流量制御
BEMS による運転制御の最適効率化の概要
最適効率化対象とする
制御パラメータ
分析する計測データ
CO2 濃度、各ダンパーの出力、
外気温湿度、給気温湿度、還気温
湿度等
全熱交換器稼働状況、外気温湿
度、給気温湿度、還気温湿度、全
熱交換器電力量等
冷水往還温度、負荷流量、冷凍機
の台数制御出力、各冷凍機及び 1
次ポンプのインバータ出力および
消費電力等
蓄熱槽温度、冷凍機出入口温度・
流量、冷凍機状態、三方弁開度、
蓄熱量、負荷熱量、冷凍機・ポン
プ電力量等
外気温湿度、冷却水往還温度、冷
却水ポンプのインバータ出力、ポ
ンプ電力量等
一次ポンプ変
流量制御
負荷流量、各 1 次ポンプのインバ
ータ出力、ポンプ電力量、冷凍機
出入口温度・流量等
二次ポンプ吐
出圧カスケー
ド制御
吐出圧力、負荷流量、各二次ポン
プのインバータ出力、バイパス二
方弁開度、ポンプ電力量等
冷水大温度差
制御
負荷流量、往還温度差、負荷熱量
(温度差が縮小しがちな軽負荷域
において左記の関係を分析。)
空調機変風量
制御
各エリアの室内温度および VAV
開度、給気ファンおよび還気ファ
ンのインバータ出力、電力量等
空調機大温度
差送風制御
(変風量制御
含む)
給気温度、冷水二方弁開度、各エ
リアの室内温度、VAV 開度、給
気・還気ファンのインバータ出
力、電力量等
CO2 濃度設定値
効率等の異常を
監視する対象機器
モーターダンパ、
各種センサ
全熱交換器、各種
センサ
冷凍機の台数制御、各冷
凍機及び 1 次ポンプのイ
ンバータ出力等の設定パ
ラメータ
冷凍機の台数制御、負荷
パターン、カレンダー等
各種パラメータ
インバータ出力上下限
値、冷却水往還温度差設
定値、外気温湿度カスケ
ードパラメータ等
負荷流量、各 1 次ポンプ
のインバータ出力、ポン
プ電力量、冷凍機出入口
温度・流量等
インバータ出力上下限
値、負荷流量と吐出圧設
定値の関係式パラメータ
等
冷凍機台数制御、二次ポ
ンプ制御パラメータ等
インバータ出力上下限
値、各エリアの温度設定
値、各 VAV 開度とインバ
ータ出力値の関係式パラ
メータ等
給気温度設定値、インバ
ータ出力上下限値、各エ
リアの温度設定値、各
VAV 開度とインバータ出
力値の関係式パラメータ
等
冷凍機、インバー
タ、各種センサ
蓄熱槽、冷凍機、
インバータ、三方
弁、各種センサ
冷凍機、冷却水ポ
ンプ、インバー
タ、各種センサ
冷凍機、一次ポン
プ、インバータ、
各種センサ
二次ポンプ、イン
バータ、バイパス
二方弁、各種セン
サ
冷凍機、各種セン
サ
空調機、インバー
タ、VAV、各種セ
ンサ
空調機、インバー
タ、冷水二方弁、
VAV、各種センサ
出典:調査団作成
(6)
比較検討するエネルギーシステムのまとめ
以下に、今回検討対象とするエネルギーシステムについて、ベースグレードとアドバ
ンスグレードの設備および運転制御・機能を整理した。また、上記エネルギーシステム
の建物内への導入イメージ図も記載する。
58
換気
熱源
水搬送
空気
搬送
照明
BAS/
BEMS
表 34 設備及び運転制御・機能の比較
設備
運転制御・機能
ベースグレード
アドバンスグレード
ベースグレード
アドバンスグレード
CO2 濃度による外気量制御
全外気
空調機(外気処理)
全熱交換器導入による
取入れ
外気負荷低減
インバータターボ
インバータターボ
冷凍機
冷凍機
冷 凍 機 台 数 冷凍機台数分割の細分化に
500RT×3 台
350RT×4 台
制御
よる冷凍機効率改善
(1 台予備)
(1 台予備)
インバータターボ
インバータターボ
冷凍機
冷凍機 500RT× 冷 凍 機 台 数
水蓄熱制御
500RT×3 台
3 台(1 台予備)
制御
(1 台予備)
+水蓄熱
冷却水ポンプ
定流量
変流量制御
冷水一次ポンプ
定流量
変流量制御
変流量制御
変流量制御
冷水二次ポンプ
(吐出圧一
(吐出圧カスケード制御)
定制御)
冷水温度差
冷水大温度差制御
冷水(温度差)
Δt=5℃
Δt=10℃
空調機(送風量)
定風量
変風量制御
給 気 温 度 大温度差送風制御
空調機(給気温度)
=16℃
給気温度=10℃
LED ダウンライト
LED ダウンライト
ス ケジ ュ ール
スケジュール及び調光制御
直管型 T5
直管型 LED
点灯/消灯
設備・機器の遠隔監視
設備・機器の発停(含スケジュール)
BAS 装置
各種センサのデータ収集
グラフィック表示機能、検針機能
各種データの収集・蓄積・
無し
分析
-
EMS 装置
(設備無し)
各種コントローラの省エネ
制御支援
高機能停復電制御
停復電処理
標準
(停電時空調設定温度緩
和、照明減光制御)
出典:調査団作成
59
▼RF
空調機械室
空調機械室
T5
空調機
T5
店舗
フードコート
T5
空調機
冷却水
ポンプ
共用部
空調機
▼3F
T5
空調機
冷却塔
店舗
インバータ
二次
ポンプ 熱源機械室 ターボ冷凍機
一次
ポンプ
共用部
店舗
▼2F
中央監視室
T5
BAS
共用部
空調機
食品売場
▼1F
二次ポンプ吐出圧一定制御
【凡例】
・・インバータ
出典:調査団作成
図 42 エネルギーシステムのイメージ(ベースグレード)
外気量制御
空調機大温度差送風(変風量含む)
全熱交換器の導入
▼RF
二次ポンプ吐出圧カスケード制御
VAV
空調機械室
VAV
T5
空調機
LED
空調機械室
LED
空調機
冷水大温度差(Δt=5deg→10deg)
店舗
冷却水ポンプ変流量制御
冷却水
ポンプ
共用部
フードコート
VAV
▼3F
VAV
T5
空調機
LED
T5
空調機
冷却塔
店舗
二次
ポンプ 熱源機械室
インバータ
ターボ冷凍機
一次
ポンプ
共用部
店舗
中央監視室
LED
EMS
▼2F
VAV
LED
空調機
BEMS
BAS
共用部
食品売場
▼1F
【凡例】
・・VAV
・・インバータ
水蓄熱の導入
BEMS導入
照明設備の調光
・・CO2センサ
・・全熱交換器
・・モータダンパ
出典:調査団作成
図 43 エネルギーシステムのイメージ(アドバンスグレード)
(7)
省エネルギー評価結果(建物全体)
2012 年のホーチミン市の気象データにより想定した最大負荷日(9 月)において、ピーク
電力は、ベースグレードで 1,960kW、アドバンスグレードで 1,458kW となった。アドバン
60
スグレードの省エネ方策により約 500kW(約 25%)引き下げる結果となった。
2,500
空調
電力量[kWh]
2,000
照明
その他
1,500
1,000
500
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間
出典:調査団作成
図 44 ベースグレードの時間帯別電力消費量(最大負荷日)
2,500
空調
2,000
照明
電力量[kWh]
その他
1,500
1,000
500
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間
出典:調査団作成
図 45 アドバンスグレードの時間帯別電力消費量(最大負荷日)
ホーチミン市の気象データにより想定した月別のエネルギー消費量を以下に示す。
「べ」国南部は、年間を通して外気温度の変動が小さく、電力消費量も年間を通してほぼ
一定となる。年間の電力消費量は、ベースグレードで 9,649MWh、アドバンスグレードで
7,972MWh となった。アドバンスグレードの省エネ方策により、1,676MWh/年(約 20%)引き
下げる結果となった。
「べ」国の系統電源の排出係数は 0.6244t-CO2/MWh(2013 年 5 月政府発表)なので、CO2
排出削減量に換算すると、1,047t-CO2/年が削減される計算になる。
61
1,200
ベースグレード
アドバンスグレード
電力量[MWh]
1,000
800
600
400
200
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
月
図 46 建物全体の月別エネルギー消費量
2.1.3
(1)
省エネ手法の費用対効果
省エネ手法による電気料金削減メリット
上記省エネ手法による電力消費量の削減効果から電気料金削減メリットを算出した。
検 討 対 象 建 物 の 受 電 電 圧 は 22kV を 想 定 し て い る の で 、 電 力 単 価 は オ ン ピ ー ク
3,731VND/kWh(17.8 円/kWh)、通常時 2,255VND/kWh(10.7 円/kWh)、オフピーク
1,350VND/kWh(6.4 円/kWh)である。今回検討対象とした省エネ手法による電力料金
削減メリットは、全体で 5,852,206kVND/年(27,868 千円/年)であった。
電圧階級
~6kV
6~22kV
22kV~
区分
オンピーク
通常時
オフピーク
表 35 電圧階級毎の電力料金体系 (単位:VND)
オンピーク
通常時
オフピーク
3,900
2,285
1,410
3,731
2,255
1,350
3,607
2,104
1,199
想定建物の電力料金単価
1VND=0.0047 円換算
時間帯
単価(VND)
単価(円)
3,731
17.8
9 時半~11 時半/17~20 時
2,255
10.7
4~9 時/11~17 時/20~22 時
1,350
6.4
22~4 時
出典:商工省資料
62
63
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
省エネ手法
各手法の省エネルギー効果
ベースグレード
通常時
オフピーク
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,555
0
2,897
38
2,897
38
合計
オンピーク
3,808
1,226
3,808
1,203
3,808
1,112
3,808
571
3,808
1,199
3,808
1,162
3,808
1,242
3,808
1,202
3,808
1,156
3,808
1,122
4,378
1,378
4,378
435
電力消費量[MWh/年]
アドバンスグレード
通常時
オフピーク
2,487
0
2,430
0
2,296
0
2,209
741
2,448
0
2,372
0
2,531
0
2,453
0
2,371
0
2,310
0
2,693
11
1,583
684
電力料金[千円/年]
ベースグレード
アドバンスグレード
オンピーク
通常時
オフピーク
合計
オンピーク
通常時
オフピーク
外気量制御
22,267
27,434
0
49,701
21,790
26,709
0
全熱交換器
22,267
27,434
0
49,701
21,367
26,088
0
熱源台数分割(一次ポンプ、冷却水変流量制御含む)
22,267
27,434
0
49,701
19,760
24,656
0
水蓄熱槽(冷水大温度差含む)
22,267
27,434
0
49,701
10,139
23,718
4,761
冷却水ポンプ変流量制御
22,267
27,434
0
49,701
21,308
26,287
0
一次ポンプ変流量制御
22,267
27,434
0
49,701
20,645
25,468
0
二次ポンプ吐出圧カスケード制御
22,267
27,434
0
49,701
22,064
27,176
0
冷水大温度差(5deg→10deg)
22,267
27,434
0
49,701
21,355
26,344
0
空調機変風量制御
22,267
27,434
0
49,701
20,545
25,458
0
空調機大温度差送風(変風量含む)
22,267
27,434
0
49,701
19,941
24,808
0
照明設備の調光(空調分含む)
25,643
31,106
244
56,992
24,489
28,922
68
アドバンスグレード(全手法実施時)
25,643
31,106
244
56,992
7,735
16,994
4,395
※各省エネ手法の効果は相乗効果及び相殺効果があるため、12.アドバンスグレード(全手法実施時)の数値は各手法の合計とは一致しない。
省エネ手法
オンピーク
外気量制御
1,253
全熱交換器
1,253
熱源台数分割(一次ポンプ、冷却水変流量制御含む)
1,253
水蓄熱槽(冷水大温度差含む)
1,253
冷却水ポンプ変流量制御
1,253
一次ポンプ変流量制御
1,253
二次ポンプ吐出圧カスケード制御
1,253
冷水大温度差(5deg→10deg)
1,253
空調機変風量制御
1,253
空調機大温度差送風(変風量含む)
1,253
照明設備の調光
1,443
アドバンスグレード(全手法実施時)
1,443
表 36
合計
48,499
47,455
44,415
38,618
47,595
46,113
49,240
47,698
46,003
44,748
53,478
29,125
合計
3,714
3,632
3,408
3,520
3,647
3,534
3,773
3,655
3,527
3,433
4,082
2,702
電力料金
削減額
[千円/年]
1,202
2,246
5,286
11,083
2,106
3,588
461
2,002
3,698
4,952
3,514
27,868
電力消費
削減量
[MWh/年]
94
176
400
288
161
274
35
153
281
375
296
1,676
(2)
設備導入費用の概算
上記省エネ手法の費用対効果を評価するため、各手法の導入に係る費用を積算した。
「べ」国における費用水準推定の精度を高めるため、「機器費」「材料費」「労務費」に
ついて「べ」国水準を分析し、費用算定に反映した。
1) 機器費
・熱源機
インバータターボ冷凍機は技術の熟度が十分に高く、東南アジアにおいても日
本製品と遜色ない仕様の製品が出回っていることから、日本企業も市場追随型で
価格を設定している。国内メーカーA 社のインバータターボ冷凍機 500USRT は、
日本国内でのサブコン納入価格で 59 千円/USRT 程度である。一方で、同メーカー
が中国で生産する東南アジア向け製品(上記と同一仕様)の東南アジアにおけるサブ
コン納入価格は、31 千円/USRT 程度と日本の 5 割程度である。
表 37 熱源機の機器単価
250USRT
350USRT
82.4
64.5
日本
43.0
36.1
ベトナム
(単位:千円/USRT)
500USRT
58.5
31.0
出典:メーカーインタビュー
・BAS/BEMS
国内メーカーB 社の BAS/BEMS の機器本体価格は、ベースグレードで 3.5 千円/
㎡程度、アドバンスグレードで 3.9 千円/㎡程度である。国内メーカーB 社による
と、価格水準は日本と「ベ」国で変わらないということであった。BEMS の構成
要素であるセンサや計測器、制御装置等は世界的に規格標準品が流通している汎
用装置なので、各国間の価格差はほとんどない。
64
表 38
BAS/BEMS の仕様
ベースグレード
熱源
・DDC(熱源台数制御コントローラ)
・冷水二次側往還温度センサ、流量
計
冷却水
ポンプ
-
冷水
二次
ポンプ
・DDC
・吐出圧センサ
・二方制御弁
・ポンプインバータ
空調
分野
空調機
・DDC
・冷水二方制御
・給気温度センサ
電気
分野
照明
熱源
分野
統合機能
アドバンスグレード
・DDC(蓄熱制御コントローラ)
・水蓄熱槽内温度センサ
・冷凍機の往還温度センサ、
流量計、三方制御弁
・DDC
・冷却水出入口温度センサ
・外気温湿度センサ
・ポンプインバータ
・DDC
・吐出圧センサ
・二方制御弁
・ポンプインバータ
・冷水二次側往還温度センサ、
流量計
・DDC
・冷水二方制御
・給気/還気温湿度センサ
・CO2 センサ
・モータダンパ(OA、ExA、RA)
・外気温湿度センサ
・VAV、VAV コントローラ
・室内温度センサ
・ファンインバータ
・調光制御装置
・昼光センサ
-
・設備・機器の遠隔監視
・設備・機器の発停(含スケジュール)
・設備・機器の遠隔監視
・各種センサのデータ収集
・設備・機器の発停(含スケジュール) ・グラフィック表示機能
・各種センサのデータ収集
・検針機能
・グラフィック表示機能
・各種データの収集・蓄積
・検針機能
・分析機能
・各種コントローラの
省エネ制御支援
出典:メーカーインタビューにより調査団作成
・空調設備関連(ポンプ、ファン等)
「べ」国 D 商業施設建設プロジェクトの Bill Of Quantities(BOQ)にあるファン等
について、同等仕様の日本製品と比較したところ、平均して同程度、「べ」国の単
価が高い設備も見られた。
65
表 39 軸流ファンの価格水準
日本の建設物価(2012 年 7 月)
仕様
1USD=100 円換算
定格風量(cmh)
<テラル>モーター付き、軸流ファン
AF-40S-1
AF-55S-1
単価(円)
2,700
48,400
5,700
64,300
出典:各種資料より調査団作成
80,000
70,000
単価 [円]
60,000
50,000
y = 5.3x + 34090
40,000
ベトナム
30,000
日本
y = 13.514x + 25021
20,000
10,000
0
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
定格風量 [CMH]
※ 建設物価と当該 BOQ ではファンの定格風量の範囲に重複は少ないが、近似曲線
で比較した場合、「べ」国の方が比較的単価が高い。
出典:「べ」国にて開発を手掛ける事業者へのインタビュー等より調査団作成
2) 材料費
今回検討対象システムの材料費に占める割合の高い配管とコンクリートについ
て「べ」国水準の材料費を推定した。「べ」国 D 商業施設建設プロジェクトの
BOQ を確認したところ、配管用炭素鋼管は日本(東京)の建設物価の 4 割程度、コ
ンクリートは 6 割程度であった。
表 40 材料費の単価比較
配管用炭素鋼管
仕様
32A
50A
100A
平均
コンクリート
仕様
レディミクスコンクリート
1USD=100 円換算
建設物価(日本)
189.3 千円/トン
188.8 千円/トン
188.1 千円/トン
188.8 千円/トン
BOQ 単価(「べ」国)
63.0 千円/トン
69.5 千円/トン
80.3 千円/トン
69.5 千円/トン
1USD=100 円換算
建設物価(日本)
16,000 円/m3
BOQ 単価(「べ」国)
9,830 円/m3
出典:「べ」国にて開発を手掛ける事業者へのインタビュー等より調査団作成
3) 労務費
ホーチミン市における建設作業員の人件費は、基本給月額(正規雇用・実務経験
3 年程度)にして約 150USD/月、年間実負担額(基本給・諸手当・社会保障・残業
代 ・ 賞 与 等 を 含 む ) に し て 2,728USD と 、 日 本 に 比 較 し て 1/15 程 度 で あ る
(JETRO2012 年度調査)。但し、D 商業施設建設プロジェクトの関係者によると、
66
日本の建設作業員のように特定分野における専門性を有している訳ではなく、作
業効率は日本の 1/2 程度にしかならない。また、建設現場の一部に配置される留
学経験のある専門技術者を含むと、全体の労務費は日本の 1/5~1/3 程度である。
「べ」国の賃金は近年急激に上昇している。労務費の積算にあたっては留意が必
要である。
参考までに日本の場合、建物建設にあたっては施主がゼネコンに設計・施工を
一括発注するが、「べ」国では設計コンサルティング、施工監理 (CM:Constructon
Management)、工事費積算監理 (QS:Quantity Surveyor)やプロジェクト費用監理
(PCM:Project Cost Management)等の専門会社に分離発注している。
4) 維持管理費
ベースグレードからアドバンスグレードへの設備導入費用の増分に対する 2%を、
毎年の維持管理費用として費用項目に加える。この維持管理費用は保守費と整備
費の合計で、日本国内の ESCO 事業者によるプロジェクト事例では平均 3%程度で
あった。ここでは、「べ」国内では人件費水準が低いことから割引いて 2%程度と
見積もった。
(3)
各省エネ手法の費用対効果
各省エネ手法の電力料金削減メリットと設備導入費用から単純投資回収年数を試算し
た結果を表 41 に示す。ここでは、最大電力の削減による非常用発電機(非発)容量の縮
小を見込み、非発の設備導入費用削減も織り込んだ。その結果、投資回収年数は 1.6 年
であった。ECC ホーチミンへのインタビューでは、「べ」国における省エネ設備の導入
は、投資回収年数 1~3 年以内が条件とのことであった。今回のエネルギーシステムは、
この条件を満たしており、「べ」国において広範に採用される可能性がある。
加えて表 42 に、停電時に一層の省エネ手法を取り入れた際の費用対効果の試算結果
を示した。ここでは、需要家の不便を最小限に抑えるため、①共用部の照度を 150Lx に
引き下げる、②熱源機の運転台数を 1 台に抑える、の二手法を採用している。その結果、
投資回収年数は 1.4 年程度に短縮される。
停電時については、BEMS 機能により一層の需要抑制も可能である。一方で現状、
「べ」国の大型商業施設では、停電時でも全負荷への電力供給が基本的な考え方とされ
ており、需要抑制の範囲の設定には、今後の省エネ意識の浸透度やテナントのニーズ等
を見極める必要がある。
また、上述の投資回収年数の試算は、モデル設定した建物を新設したという想定に
基づいた結果であるため、同規模の全ての建物において同様の結果が得られるというこ
とではなく、実際にシステム導入を検討する際には、この点にも十分留意する必要があ
る。
67
68
50,660
1,309
-
1,309
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
881
1,309
1,110
1,205
1,109
1,205
1,205
1,205
826
1,219
1,205
1,205
-
0
0
428
0
95
0
96
0
0
0
379
-14
最大電力削減効果
ベース アドバンス
削減量
グレード グレード
kW
kW
kW
0
6,423
-
1,425
0
1,440
0
0
0
5,685
-210
0
0
44,237
1,630
26,830
-39,105
25,500
-22,690
730
5,660
5,520
47,145
15,850
20,030
6,390
4,378
-
4,378
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
2,702
4,082
3,433
3,527
3,655
3,773
3,534
3,647
3,520
3,408
3,632
3,714
アップ
電力使用量
非発容量
グレード ベース アドバンス
削減効果
費※
グレード グレード
千円
千円
MWh/y
MWh/y
-
9,683,692
9,994,980
8,109,724
9,327,187
9,397,156
9,660,580
1676 11,968,422
-
6,116,216
-
296 11,968,422 11,230,477
375 10,437,163
281 10,437,163
153 10,437,163 10,016,659
35 10,437,163 10,340,332
274 10,437,163
161 10,437,163
288 10,437,163
400 10,437,163
9,965,594
94 10,437,163 10,184,747
176 10,437,163
MWh/y
削減量
電力料金
ベース アドバンス
グレード グレード
KVND/y
KVND/y
5852206
-
737,945
1,040,007
776,583
420,504
96,831
753,472
442,184
2,327,439
1,109,976
471,570
252,416
KVND/y
削減額
「No.3熱源台数分割」は、熱源分割による効果が最大限に得られるよう、一次ポンプ変流量制御及び冷却水ポンプ変流量制御を併せて実施する。
「No.4水蓄熱槽」は、蓄熱槽を最大限に活用するため冷水大温度差(5deg→10deg)を併せて実施する。
「No.10空調機大温度差送風」には「No.9空調機変風量制御」が必要のため、併せて実施する。
「No.12照明設備の調光」には照明の高効率化による空調負荷の削減効果を含むため、空調分と併せて評価する。
維持管理費(保守費と整備費の合計の年間平均値)はアップグレード費の2%とする。
アップグレード費用には、輸送費、CM(Construction Management)費、QS(Quantity Surveyor)費、PCM(Project Cost Management)費等は含まない。
各省エネ手法の効果は相乗効果及び相殺効果があるため、全手法実施時の数値は各手法の合計と一致しない。
アドバンスグレード(全手法実施)
1,630
BEMS(BAS→BEMS)
※
※
※
※
※
※
※
26,830
11 照明設備の調光(空調分含む)
25,500
-21,250
-37,680
空調機変風量制御
730
5,660
5,520
10 空調機大温度差送風(変風量含む)
冷水大温度差(5deg→10deg)
6
9
一次ポンプ変流量制御
5
8
冷却水ポンプ変流量制御
4
二次ポンプ吐出圧カスケード制御
水蓄熱槽(冷水大温度差含む)
3
7
15,640
熱源台数分割
(一次ポンプ、冷却水変流量制御含む)
52,830
20,030
全熱交換器
2
6,390
千円
外気量制御
手法
アップグ
レード費
省エネルギー手法の費用対効果
1
No.
表 41
56,992
0
56,992
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
ベース
グレード
千円/y
27,868
0
3,514
4,952
3,698
2,002
461
3,588
2,106
11,083
5,286
2,246
1,202
千円/y
削減額
1,013
0
537
-754
510
-425
15
113
110
1,057
313
401
128
千円/y
維持
管理費
1.6
1.6
2.8
4.7
3.2
10.9
5.9
1.6
-
9.0
(注)
8.0
(注)
y
単純投資
回収年数
(注):単純投資回収年数が0を下回る
(注):単純投資回収年数が0を下回る
29,125
0
53,478
44,748
46,003
47,698
49,240
46,113
47,595
38,618
44,415
47,455
48,499
電力料金
アドバン
ス
千円/y
※非発容量縮小による費用削減効果を反映した費用
69
※
※
※
※
※
※
※
1,630
1,309
-
1,309
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
1,205
kW
539
1,309
1,110
1,205
1,109
1,205
1,205
1,205
826
1,219
1,205
1,205
kW
ベース アドバンス
グレード グレード
-
kW
0
0
770
0
95
0
96
0
0
0
379
-14
削減量
0
0
11,553
0
1,425
0
1,440
0
0
0
5,685
-210
千円
39,107
1,630
26,830
-39,105
25,500
-22,690
730
5,660
5,520
47,145
15,850
20,030
6,390
千円
4,378
-
4,378
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
3,808
MWh/y
2,702
4,082
3,433
3,527
3,655
3,773
3,534
3,647
3,520
3,408
3,632
3,714
MWh/y
電力使用量
アップ
非発容量
グレード ベース アドバンス
削減効果
費※
グレード グレード
-
KVND/y
KVND/y
9,683,692
9,994,980
8,109,724
9,327,187
9,397,156
9,660,580
1676 11,968,422
-
6,116,216
-
296 11,968,422 11,230,477
375 10,437,163
281 10,437,163
153 10,437,163 10,016,659
35 10,437,163 10,340,332
274 10,437,163
161 10,437,163
288 10,437,163
400 10,437,163
9,965,594
94 10,437,163 10,184,747
176 10,437,163
MWh/y
削減量
ベース アドバンス
グレード グレード
電力料金
5852206
-
737,945
1,040,007
776,583
420,504
96,831
753,472
442,184
2,327,439
1,109,976
471,570
252,416
KVND/y
削減額
「No.3熱源台数分割」は、熱源分割による効果が最大限に得られるよう、一次ポンプ変流量制御及び冷却水ポンプ変流量制御を併せて実施する。
「No.4水蓄熱槽」は、蓄熱槽を最大限に活用するため冷水大温度差(5deg→10deg)を併せて実施する。
「No.10空調機大温度差送風」には「No.9空調機変風量制御」が必要のため、併せて実施する。
「No.12照明設備の調光」には照明の高効率化による空調負荷の削減効果を含むため、空調分と併せて評価する。
維持管理費(保守費と整備費の合計の年間平均値)はアップグレード費の2%とする。
アップグレード費用には、輸送費、CM(Construction Management)費、QS(Quantity Surveyor)費、PCM(Project Cost Management)費等は含まない。
各省エネ手法の効果は相乗効果及び相殺効果があるため、全手法実施時の数値は各手法の合計と一致しない。
50,660
BEMS(BAS→BEMS)
アドバンスグレード(全手法実施)
26,830
11 照明設備の調光(空調分含む)
25,500
-37,680
空調機変風量制御
9
-21,250
730
5,660
5,520
10 空調機大温度差送風(変風量含む)
冷水大温度差(5deg→10deg)
一次ポンプ変流量制御
6
二次ポンプ吐出圧カスケード制御
冷却水ポンプ変流量制御
5
8
水蓄熱槽(冷水大温度差含む)
4
7
15,640
熱源台数分割
(一次ポンプ、冷却水変流量制御含む)
3
52,830
20,030
全熱交換器
2
6,390
千円
外気量制御
手法
アップグ
レード費
最大電力削減効果
省エネルギー手法の費用対効果(停電時制御を適用した場合)
1
No.
表 42
56,992
0
56,992
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
49,701
千円/y
ベース
グレード
27,868
0
3,514
4,952
3,698
2,002
461
3,588
2,106
11,083
5,286
2,246
1,202
千円/y
削減額
1,013
0
537
-754
510
-425
15
113
110
1,057
313
401
128
千円/y
維持
管理費
5.9
1.6
1.6
2.8
4.7
3.2
10.9
1.4
-
9.0
(注)
8.0
(注)
y
単純投資
回収年数
(注):単純投資回収年数が0を下回る
(注):単純投資回収年数が0を下回る
29,125
0
53,478
44,748
46,003
47,698
49,240
46,113
47,595
38,618
44,415
47,455
48,499
電力料金
アドバン
ス
グレード
千円/y
※非発容量縮小による費用削減効果を反映した費用
【参考 1】変圧器の運用改善・高効率変圧器の利用について
予備検討にて簡易評価を行ったその他の省エネ手法を以下に紹介する。
稼働率の見直しによる効率改善
変圧器の効率は稼働率(負荷率)により異なる。そこで、なるべく最高効率になる
稼働率に近づくように変圧器の容量や台数を設定することで省エネにつなげること
ができる。
「べ」国現地調査で確認した大型施設での変圧器の稼働率は概ね 50%程度と容量
がやや小さめに選定されていた。そこで、稼働率 50%程度の場合(ベースグレード)
と、40%程度に下げた場合(アドバンスグレード)について省エネ効果を比較した。
表 43 変圧器の稼働率見直しによる省エネ効果(一試算)に示した結果の通り、省エ
ネ効果は 9MWh/年で電力料金削減メリットは約 136 千円/年であった。一方で、容
量拡大による設備費用の増加は 300 万円程度であることから、ここでは、費用対効
果は低いと判断し不採用とした。
98.9
ベースグレード
98.8
アドバンスグレード
効率(%)
98.7
98.6
98.5
98.4
98.3
98.2
98.1
98.0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
負荷(%)
出典:調査団作成
図 47 変圧器の部分負荷曲線
30
25
変圧器の損失(kWh)
ⅰ
無負荷損
負荷損
20
15
10
5
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間(h)
出典:調査団作成
図 48 変圧器の部分負荷曲線(ベースグレード)
70
30
変圧器の損失(kWh)
25
無負荷損
負荷損
20
15
10
5
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24
時間(h)
出典:調査団作成
図 49 変圧器の部分負荷曲線(アドバンスグレード)
表 43 変圧器の稼働率見直しによる省エネ効果(一試算)
電力使用量
電力料金
設備投資額
単位
kWh/年
千円/年
千円
175
2085
ベースグレード
166
1936
2750
アドバンスグレード
9
146
削減効果
出典:調査団作成
ⅱ
高効率変圧器(アモルファス変圧器)の利用
アモルファス変圧器は、鉄芯部分にアモルファス合金を利用することにより、無
負荷損失(負荷の有無に関わらず生じる損失)を 1/3 程度削減できる。一方で、材料
が高価なので、省エネ効果により十分な投資回収が期待できる建物への導入が適当
である。今回のモデル建物の場合、ⅰの分析と同様に負荷損低減のメリットは小さ
いことから、不採用とした。
71
【参考 2】中小規模の商業施設に対する省エネルギーシステムの適用について
中小規模の商業施設の場合、図 50に示すように、経済性や運転・維持管理に必要とさ
れる体制や手間等の理由により、中央式の熱源システムではなく個別方式を採用すること
が一般的である。
例えば、3,000 ㎡程度の建物を想定した場合、上記において 30,000 ㎡を対象に検討した
省エネ手法の中で採用可能な方策は、外気量制御、全熱交換器の導入、照明の調光制御、
BEMS に限定される。この場合の BEMS は、中央式に比較して必要な機能が限定される
(簡易 BEMS)。3,000 ㎡程度の建物を想定してこれらの省エネ手法を適用した場合のイメー
ジを図 51、図 52に示す。
延べ床面積[㎡]
30,000~
94.7%
20,000~30,000
66.7%
10,000~20,000
5,000~10,000
5.3%
33.3%
48.6%
12.9%
個別式
87.1%
~5,000 7.7%
0%
中央式
51.4%
92.3%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:建築設備士2009.12(事務所建築における竣工データ)
図 50 延べ床面積による中央方式と個別方式の比率
換気
空調
照明
表 44 設備及び運転制御・機能の比較
設備
運転制御・機能
ベースグレード
アドバンスグレード
ベースグレード
アドバンスグレード
(全外気取入れ)
給排気ファン
全熱交換器
全熱交換器導入による
外気負荷低減
ビルマルチエアコン
スケジュール発停
スケジュール発停
LED ダウンライト
直管型 T5
集中リモコン
(ビルマル用)
LED ダウンライト
直管型 LED
スケジュール点灯/
スケジュール及び調光制御
消灯
空調:スケジュー
ル発停、各種設
定
照明:分電盤組込
みタイマーによ
るスケジュール
点灯/消灯
簡易型 BEMS
空調:スケジュール発停、各
種設定、停電時空調設定温
度緩和
照明:スケジュール及び調光
制御、停電時照明減光制御
EMS 機能:各種データの収
集・蓄積、分析機能、各種コ
ントローラの省エネ制御支
援
出典:調査団作成
72
ビルマル室外機
▼RF
排気ファン
給気ファン
T5
T5
ビルマル室内機
店 舗
▼2F
共用部
排気ファン
給気ファン
T5
T5
ビルマル室内機
ビルマル
集中コントローラ
店 舗
▼1F
共用部
出典:調査団作成
図 51 中小規模建物のエネルギーシステムのイメージ(ベースグレード)
全熱交換器の導入
照明設備の調光
ビルマル室外機
▼RF
全熱交換器
LED
T5
ビルマル室内機
店
▼2F
CO2センサ
舗
共用部
全熱交換器
LED
T5
ビルマル室内機
ビルマル
集中コントローラ
▼1F
BEMS
店
CO2センサ
舗
簡易BEMS導入
共用部
外気量制御
出典:調査団作成
図 52 中小規模建物のエネルギーシステムのイメージ(アドバンスグレード)
73
2.2 停電対応システムに関する基本検討
2.2.1
(1)
大容量蓄電池に関する現状整理
大容量蓄電池の特性・開発動向
近年、自然災害時の BCP (Business Continuity Plan)対応や、再生可能エネルギーによる
系統に対する周波数・電圧への影響の緩和などを目的に、一部において、大容量蓄電池
の導入が進んでいる。また従来から、NAS 電池を中心に、電気料金の昼夜の価格差を
前提に、蓄電池のピークシフト効果による電気料金削減が図られており、蓄電池の用途
は拡大の一途にある。国内の蓄電池メーカーは、普及に向けた動きを加速するため、低
コスト化・量産化に向けた取組みを強化している。
ⅰ
リチウムイオン蓄電池
正極にリチウム化合物、負極に炭素等を用いる。高出力・長寿命(サイクル回
数)な蓄電池として、モバイル機器や EV に搭載されている。コスト低減・エネル
ギー密度向上に向け、高電圧電解液や高容量負極材料等が研究開発されており、大
容量化が図られている。メーカーが多く、将来の価格低下が期待できる。
ⅱ
ニッケル水素蓄電池
正極に水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金を用いる。高効率であるが、ニッケ
ル使用量が多く、比較的高価である。
ⅲ
レドックスフロー水素蓄電池
電解液に溶解させたバナジウムのイオン電荷差を用いる。長寿命で安全性も高く、
大容量電力貯蔵に適する。セルやタンクの必要から、設置面積を要する。
ⅳ
NAS 電池
正極に硫黄、負極にナトリウムを用いる。大容量・低価格であり、負荷平準化
(ピークカット・ピークシフト)用途での導入実績を有する。危険物に指定される
硫黄およびナトリウムを利用し、過去には火災事故により生産・販売を中止した経
緯もあるが、短絡防止ヒューズの追加などの対策を万全にし、販売を再開している。
74
表 45 蓄電池の特性と国内メーカー製品例
リチウムイオン
ニッケル水素
レドックスフロー
蓄電池
蓄電池
蓄電池
東芝
三菱重工
川崎重工
住友電工
ギガセル
SCiB
MLiX
-
(定置/移動)
メーカー
型式
商標
NAS 電池
日本ガイシ
NAS 電池
外形
規模
電圧
単電池
容量
エネルギー
密度
DC/AC
効率
耐久性
サイクル
出典:HP
出典:HP
出典:HP
出典:HP
出典:HP
数 k-1MWh
2.3V
2M-20MWh
3.7V
10k-0.5MWh
1.2V
10k-10MWh
1.4V
500k-10MWh
2.0V
20Ah
50Ah
274Ah
-
632Ah
176Wh/L
295Wh/L
123Wh/L
-
370Wh/L
97/86
97/86
91/82
82/70
80/73
>3,500 回
7~10 年
>3,500 回
7~10 年
>3,500 回
7~10 年
>2,500 回
30 年
4,500 回
15 年
出典:各種資料より東京電力㈱技術開発センターおよび調査団作成
(Wh/kg)
400
空気亜鉛電池
重量エネ ルギー密度
300
リチウムイオン電池
200
NAS電池
100
ニッケル・水素電池
鉛蓄電池
0
100
200
ニッケル・カドミウム電池
300
400
500
600
700
体積エネルギー密度
800
900
(Wh/L)
出典:産業総合研究所資料
図 53 各種蓄電池のエネルギー密度比較
蓄電池のコスト、特に設置コストの低減には、エネルギー密度の高密度化の効果が高
い。現在実用化されている蓄電池では、リチウムイオン蓄電池が最も高密度化が期待で
きることから、多くのメーカーが研究開発に取り組んでいる。一方で、その性能向上に
75
は限界がある。NEDO「2 次電池技術開発ロードマップ」(以下、ロードマップと呼
ぶ。)の中では、金属-空気電池、リチウム硫黄電池、金属負極電池など、より高密度化
が可能な次世代蓄電池の研究開発に期待が持たれている。
本件では、停電時の BCP 対策を目的とした蓄電池の導入を想定しており、検討対象
となる建物の需要規模を前提とすると、数百~数千 kW 程度の蓄電池の設置が適当であ
る。複数の国内メーカーが開発・生産・販売に取り組むリチウム電池については、エネ
ルギー密度が高く低コスト化が進んでいるものの、未だ国内での導入実績に乏しいこと
から、現時点では、実績・経済性・性能の面で優れる NAS 電池の導入が適当と考えら
れる。
(2)
大容量蓄電池の利用
近年、太陽光発電・風力発電の導入が進む欧州諸国を中心に、蓄電池が導入されてい
る。これは、再生可能エネルギーによる短周期(数分~20 分程度の出力変動)や長周期
(左記以上。現状、揚水発電等で対応)の出力変動や周波数変動が系統に与える影響が
無視できなくなってきたことが背景にある。日本国内でも、島嶼を対象に、再生可能エ
ネルギーを活用し、内燃機関の焚き減らしを図ることを目的に、政府助成による複数の
実証事業が行われている。
1) 瞬時停電のバックアップ電源
停電時のバックアップ電源として一般的に採用されている非常用発電機は起動に時間
を要する為、瞬時停電により生産が止まる電子部品産業等では、系統側の電圧変動に影
響されない電源が求められている。NAS 電池は系統電圧低下後、瞬時(0.002 秒)にバ
ックアップが可能な電源システムであり、日本国内において瞬時を含む停電時バックア
ップ電源として導入されている。
出典:経済産業省 HP
図 54 バックアップ電源の概要
76
2) 再生可能エネルギーの接続容量拡大
風力、太陽光等の再生可能エネルギーは、気象条件により出力が大きく変動する。そ
の為、送電線容量に十分な余裕が無い場合、系統電圧の上昇や周波数変動などの問題が
発生する。日本及びドイツにおいて、再生可能エネルギーの接続容量拡大を実証するた
めに、再生可能エネルギーの出力変動を送電線に接続した蓄電池により緩和する事業が
試みられている。
出典:経済産業省 HP
図 55 系統への大容量蓄電池接続実証事業の例
3) 小規模マイクログリッドの発電コスト低減
離島のような小規模マイクログリッドでは、発電単価低減の為に、多様な供給力を最
大限活用する事が求められる。しかし、系統安定化の観点から、小規模系統への再生可
能エネルギーや分散電源の接続可能容量を拡大する為には、再生可能エネルギーや分散
型電源の出力変動を抑制する必要がある。日本、米国及びドイツにおいて、小規模マイ
クログリッドへの再生可能エネルギー及び分散型電源の接続可能容量を増やし、かつ出
力変動管理による、火力発電所運転効率向上に向けた実証事業が行われている。
出典:経済産業省 HP
図 56 小規模マイクログリッド効率運転のイメージ
77
2.2.2
(1)
停電時対応方法の検討
停電時対応の考え方
1.4.2 節で述べたように、大規模需要家では、建物内の全電力負荷への供給が可能な
容量のディーゼル発電機と長時間停電への対応が可能な軽油備蓄タンクを設置している。
また、非常用照明やセキュリティシステムなど一部負荷に対しては、瞬時停電対策とし
て UPS を設置している。
本件では、現状と同程度以上の電力供給信頼性の確保が可能なエネルギーシステムを
検討する。すなわち、全停電時間(ビンズン省に所在するタワーオフィスのオーナーへ
のインタビューでは最大発生時間 8 時間)について建物内の全電力負荷(最大電力
2,000kW 程度)への供給が可能なシステムとする。
(2)
ディーゼル発電機
1) ディーゼル発電機の価格
現地施工会社によると、「べ」国におけるディーゼル発電機の価格(サブコン向け販
売価格)は 12 千円/kVA 程度(日本メーカーの場合、60 千円/kVA 程度)。ビンズン省に
所在するタワーオフィスでは、現地大手メーカーHuutoan 社製のディーゼル発電機を採
用している。Huutoan 社は、パッケージャーとして、独製のエンジンや伊製発動機など
欧米メーカーの製品の組立、販売を行っている。以下に、Huutoan 社製のディーゼル発
電機の仕様を示した。
表 46
発電容量(kVA/kW)
電圧レベル
電圧安定性
周波数
重量
設置スペース
(L*W*H) mm
燃料消費量
(負荷率 75%の場合)
エンジンメーカー
発電機メーカー
制御装置メーカー
ATS(自動電源切替盤)
Huutoan 社ディーゼル発電機の仕様・価格
550/500
1,202/930
1,270/1,160
1,970/1,790
220V/380V (3 相 4 線)
±0.25%÷±1% (無負荷~全負荷)
50Hz
4,700kg
9,500kg
11,500kg
20,500kg
4,500*1,700* 6,350*1,850* 6,500*2,00
12,192*2,438*
2,250
2,350
0*2,350
2,896
88.4 l/h
162.8 l/h
180.3 l/h
MTU 社(独)
Mecc Alte 社(伊・英)
Deepsea 社(英)
三菱電機・富士電機(日)
271.3 l/h
Marathon 社(米)
出典:Huutoan 社資料より調査団作成
2) 運転・維持管理
1.4.2 節で述べたように、停電時において発電機は、ATS により自動で発動する。ま
た、EVN の電力供給が復活した場合も自動で切替えを行うことから、発電設備の発停
78
自体に人手を介すことはない。但し、燃料の備蓄量を一定量以上に維持するため、目視
で備蓄量を確認し、十分でない場合は、ディーゼルを調達している。
日本の場合、自家発電設備の法定耐用年数は 15 年、適切な予防保全を行うことを前
提とした基準 (国交省・官庁営繕基準や公益社団法人ロングライフビル推進協会
(BELCA)基準)による計画耐用年数は、30 年である。「べ」国では、「事後保全(故障発生
時に行う修理)」が維持管理の基本的な考え方となっており、修理は、現場担当者が対
応し、メーカー対応への依頼は、現場での対応が困難な場合な場合に限られる場合が多
い。日本のように、「予防保全(故障前に計画的に行う延命化措置)」の考え方が根付いて
いない。
3) ライフサイクルコスト
本件の対象建物の最大電力は 2,000kW 程度と想定される。2,500kVA/2,000kW の発
電設備について、年間停電時間を 100 時間、ライフサイクルを 15 年間とした場合、以
下の前提による発電単価は約 34.2 円/kWh、ライフサイクルコスト(LCC)は約 77 百万円
である。
設備容量
力率
平均負荷率
燃料消費量
年間発電時間
年間発電量
軽油単価
年間燃料消費量
運転コスト
初期コスト
LCC
表 47 ディーゼル発電機の LCC
2,500kVA/2,000kW
80%
75%
300L/h (負荷率 75%の場合、Huutoan 社データ参考)
100 時間(現地建物オーナーヒアリングより)
150 千 kWh/年(想定ロードカーブより)
103 円/L(商工省公表 2013 年データ)
30,000L
4,700 万円
3,000 万円(現地サブコンヒアより)
7,700 万円
参考までに、「べ」国では、売上高一位のベトナム石油ガス公社(PetroVietnam)、三
位のベトナム石油グループ(Petrolimex)など、約 10 社が石油製品の元売りを手掛ける。
石油製品の価格は、2009 年の政令(84/2009/ND-CP)より、市場メカニズムに則り事業者
が決定できるが、値上げには政府の許可が必要である。政府は、産業施策として、石油
製品の内外価格差の補填を目的に、「ガソリン・石油価格安定基金」を設置し、適宜、
石油製品価格の据置きと引き替えに、元売り事業者の補助を行っている。近年、石油製
品の価格は上昇する一方である。
「べ」国では、日量約 40 万バレルの原油を産出しており、「べ」国政府は未探鉱地域
の開発により、日産約 50 万バレルを目指している。原油は、そのほとんどをオースト
ラリア、シンガポール、米国等に輸出している一方で、国内で消費する石油製品のほと
んどは、輸入に頼っている。2010 年には、日産 13 万バレルの Dung Quat 精油所が建設
されたが、2010 年時点で約 34 万バレルあり、今後も増大する国内需要を満たすのは難
しい。将来的にも、「べ」国内の石油製品価格は、世界の市況の影響を受け、上昇傾向
となることが予想される。
79
25,000
ガソリン(A92)
軽油(0.05S)
20,000
15,000
10,000
2009.1
2009.12
2010.5
2010.8
2012.3
2013.4
2013.12
出典:各種資料より調査団作成
図 57 石油製品の価格推移
(3)
NAS 電池
1) 価格動向
蓄電池は、用途に合わせた充放電や交流-直流変換が求められることから、本体に加え
てパワーコンディショニングシステム(PCS)、充放電制御装置等の補機を含めたシステム
として設置する。蓄電池システムは、電力系統側への設置や商業施設やデータセンター
等需要家側への設置など用途により組合せが異なり、その組合せに応じて価格も異なる。
NEDO「二次電池技術開発ロードマップ 2013(Battery RM2013)」では、系統の長周期変動
用対応を用途とする蓄電池について、2013 年までに 2.3 万円/kWh が目標とされている。
また日本国内では、充電に要する電気料金の昼夜間単価差によるメリットに対する蓄
電池導入の損益分岐点は約 2.1 万円という試算もあり、日本国内での普及は、2 万円程度
がターゲット価格となっている。現段階でのリチウムイオン蓄電池の販売価格は 20 万円
/kWh であり、政府による補助事業などを通じて、一層のコスト低減が取り組まれている。
本件において導入が適当と考えられる NAS 電池は、比較的安価ではあるものの、現
時点でのシステム価格は 35 万円/kW(5.8 万円/kWh)と投資回収は易しくないが、メー
カーは、上記 NEDO 目標(2.3 万円/kWh)を価格低減のターゲットとしている。
80
80
(千円/kWh)
70
2013 NAS電池システム
(メーカーヒア)
60
50
2020蓄電池システム
(NEDO目標)
40
30
揚水発電所のkWh単価
20
料金単価による回収が可能なkWh単価
10
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
出典:各種資料より調査団作成
図 58 蓄電池の価格動向
2) 設置に関する制約
本件において導入が適当と考えられる NAS 電池を設置する場合の制約は、以下の通り
である。
ⅰ
一般的な制約(日本国内)
・ 硫黄およびナトリウムの使用量が一定量以上の場合は、危険物施設として消防法上
の制約が課せられる。但し、密閉構造で延焼が起こらない構造であること等を前提
に、消防庁からの通知(「ナトリウム・硫黄電池を設置する危険物施設の技術上の
基準等について」)により、一部要件は緩和されている。具体的な制約は以下の通
りである。
- 耐火構造とした建築物以外の場合、建築物の周囲に 3m 以上の保有空地を有す
ること。
- 設置床面積が 100 ㎡以下毎に第 5 種の消火設備を 1 個設置。200 ㎡以上の場合
は、第 3 種の消火設備を設置すること。
・ 万が一、火災が発生した場合、有毒ガス SOx が発生することから、屋内設置を認
めるかどうかは、各地の消防署の判断となる(屋内設置の場合、メーカーはガス浄
化装置(スクラバー)の取付けを推奨)。
・ (2,000kW の場合、)システムの総重量が 200 トン相当の重量物なので、設置地盤に
強度が求められる。周囲の気温条件は、最高 45℃、最低-20℃。
・ NAS 電池は、降温を伴う完全停止を繰り返す運用には不適である。
81
PCS
電池盤
重量:
約 175 トン
設置スペース: W10.2m×D2.2m×H5.2m
約 31 トン
W9.2m×D3.3m×H4m
出典:産業総合研究所資料
図 59
ⅱ
NAS 電池の設置事例(2,000kW×7.2hr)
「ベ」国への輸出・設置・運用に伴う制約
・ 40 フィートコンテナでの海上・陸上輸送が可能なこと。
・ メーカーは監督者を派遣。現地施工会社において、据付や電気配電工事を実施。施
工には、25t 以上のクレーンおよび 7t 以上のフォークリフトが必要。
・ 電池の性能保証(電池の作動状況の遠隔監視等)には、インターネット回線が必要。
・ 「べ」国における系統連系要件および消防関連の法規制に準じる必要。(→ 系統連
系要件は SPC に、消防関連法規制はビンズン省商工局に確認したところ、適用さ
れる規制は、廃棄時に課せられる危険物廃棄規則のみ、とのこと。(現時点では、
NAS 電池に相当する製品が「べ」国に存在しないことから、実際には、導入・運
用が決まって後、適用規制が検討される可能性がある。)
)
3) ライフサイクルコスト
本件の対象建物の最大電力に相当する 2,000kW の設備導入を想定する。ディーゼル発
電機の資産と同条件(年間停電時間 100 時間、ライフサイクル 15 年間)とした場合、以
下の前提によるライフサイクルコスト(LCC)は約 68 千百万円である。
表 48
定格出力
定格容量
充放電効率
電力単価(円/kWh)
年間放電量
年間充電量
運転コスト
初期コスト
LCC
(4)
NAS 電池の LCC
2,000kW
12,000kWh
75%(直交変換ロス含む)
オンピーク 17.8 / オフピーク 6.4 / 通常 10.7
150 千 kWh
200 千 kWh
-1,900 万円 ※停電時の料金メリット
70,000 万円(メーカーヒアリングより)
68,100 万円
LCC 比較
2013 年現在における NAS 電池の LCC は約 7 億円である。ディーゼル発電機の LCC 約
8 千万円と比較すると 9 倍程度の開きがあり、対象建物における NAS 電池の採用はコス
82
ト面で難しい。但し、蓄電池システムの価格低減や電気料金単価の上昇などの環境変化
から考えると、導入のハードルは下がる方向にある。ここでは、いくつかの仮定を設定
して、蓄電池の将来的な導入見込みを整理する。
表 49 現時点でのコスト比較(2,000kW、ライフサイクル:15 年間)
ディーゼル発電機
NAS 電池
初期コスト
30 百万円
700 百万円
運転コスト
47 百万円
19 百万円
総コスト
77 百万円
681 百万円
1) LCC 試算の前提
【仮定 1】蓄電池のシステム価格が 2020 年までに 2.3 万円/kWh まで低下する
2013 年現在の NAS 電池のシステム価格約 5.8 万円/kWh に対して、2020 年時点の
システム価格が NEDO 目標の 2.3 万円/kWh を達成する場合を想定する。各年度の価
格は、適当な習熟曲線をあてはめた想定値を利用する(図 58参照)。
【仮定 2】ベトナムの電力価格が PDP7 の目標水準まで上昇する
2013 年現在の平均単価約 6.8 円/kWh に対して、2020 年の平均単価が PDP7 目標の
約 9 円/kWh を達成する場合を想定する。商業施設を対象とした時間帯別料金(6kV~
22kV)について、各年度の平均単価の価格上昇率をあてはめた想定値を利用する。
6,000
実績値
(EVNデータより)
予測値
オンピーク
5,000
4,000
通常
3,000
オフピーク
2,000
1,000
0
2009
政府発表の2015目標
PDP7の2020年目標達成が
達成が可能な上昇率より想定 可能な上昇率より想定
2011
2013
2015
2017
2019
2021
2023
2025
出典:各種資料より調査団作成
図 60 電力単価の上昇傾向
【仮定 3】EVN の電力供給力の向上により、蓄電池のピークシフト利用が可能となる
2013 年現在の停電時間・停電頻度を前提とした場合、停電時対応の機能を果たす
には、蓄電分をピークシフトに利用することはできない。一方で、EVN の電力供給
信頼性は向上する傾向にあるので、ここでは容量の 50%分についてピークシフトに利
用できることを想定する。放電量は、タワーオフィス A でのインタビュー内容から
対象建物の想定ロードカーブを設定して算出した。
83
2,500
(kW)
買電
放電
2,000
1,500
1,000
500
0
0
4
8
12
16
20
24
-500
-1,000
充電
-1,500
出典:各種資料より調査団作成
図 61 充放電パターン
【仮定 4】軽油の価格が EIA の原油価格予測と同じ傾向で上昇する
2013 年現在の軽油価格 103 円/L に対して、AEO2012 予測の原油価格と同一の上昇
率で値上がりする場合を想定する。(AEO2012 は、米国エネルギー情報局(EIA)が公表
する米国石油精製業者が調達する原油の平均価格を予測した報告書である。)
( 円/L)
180
実績値(商工省
公表データより)
160
予測値(AEO2012の
価格見通しより)
140
120
100
80
60
20
35
20
25
20
15
20
13
.1
2
20
13
.4
20
12
.3
20
10
.8
20
10
.5
20
09
.1
2
20
09
.1
40
出典:各種資料より調査団作成
図 62 軽油単価
2) LCC 試算結果
上記の仮定全てを反映した場合、蓄電池の LCC(=15 年間にかかる総費用)は 2017 年
頃にディーゼル発電機の LCC より低減し、2019 年頃に単体で投資回収が可能なレベル
になる。
84
表 50 NAS 電池 LCC 試算の前提条件
導入年度
設備費用(百万円)
【仮定1】
電気料金上昇率
【仮定2】
2013
2015
2020
2025
700
492
276
276
-
22%
33%
44%
0%
50%
50%
50%
19
295
321
348
681
197
-45
-72
ピークシフト利用率
【仮定3】
料金単価差メリット
(百万円)
LCC(百万円)
表 51 ディーゼル発電機 LCC 試算の前提条件
導入年度
設備費用
(百万円)
2013
2015
2020
2025
30
30
30
30
103
120
127
136
47
54
58
61
77
84
88
91
軽油単価(円/L)
【仮定 4】
燃料費
(百万円)
LCC(百万円)
※上記の試算では、導入年度の条件が 15 年間継続すると仮定している。実際には、電気料金等の条件
は経年で変化する。また、単価差によるメリットは 15 年間分の電気料金削減額の累計である。
700
600
ディーゼル発電機
NAS電池
500
400
300
200
100
0
-1002013
2015
2017
2019
2021
2023
2025
-200
図 63 ディーゼル発電機と NAS 電池の LCC 比較
また、上記の各仮定を単独で反映した場合の LCC 比較結果は以下になる。
700
700
600
600
500
500
ディーゼル発電機
400
ディーゼル発電機
NAS電池
400
図 64 仮定 1 のみ反映
図 65 仮定 2 のみ反映
85
20
25
20
23
20
24
20
22
20
20
20
21
20
19
20
17
20
18
20
16
20
14
20
13
20
24
20
25
20
23
20
22
20
21
20
20
20
19
0
20
17
100
0
20
18
100
20
16
200
20
14
200
20
15
300
20
13
300
20
15
NAS電池
500
500
400
ディーゼル発電機
NAS電池
NAS電池
図 66 仮定 3 のみ反映
2.2.3
20
21
20
20
20
19
20
18
20
17
20
16
20
13
20
25
20
24
20
22
20
23
20
21
20
20
20
19
0
20
18
0
20
16
100
20
17
100
20
15
200
20
14
200
20
13
ディーゼル発電機
300
20
14
300
20
15
400
20
25
600
20
24
600
20
23
700
20
22
700
図 67 仮定 4 のみ反映
エネルギー管理システム(BEMS 等)の活用
今回、系統電力の停電時の省エネは、需要家の不便を最小限に抑えるため、共用部の照
度の引き下げ(500Lx→150Lx)と熱源機の運転台数の抑制(1 台運転)のみとした。これは、
現地調査において、大規模商業施設では停電時であっても全建物負荷に電力供給が行われ
ていたことを踏まえている。
BEMS 導入により技術的には、電力負荷の優先順位を付けた上で、停電時に自動的に重
要負荷を優先して電力供給を行うことが可能となる。この機能の利用により、ディーゼル
発電機や NAS 電池など非常時の電力供給設備の容量を縮小でき、コスト効率が高まる。
ステータス
表 52
状態図
BEMS による重要負荷への電力供給(停電時)
受変電設備
ベースグレード
アドバンスグレード
商用電源
給電中
停電発生
①不足電圧継電器
(27)作動
②52S 開放
③52B 開放
④一般/非常系
VCB 一斉開放
⑤自家発電機起動
自家発電機
起動
(電圧確立)
①自家発電機電圧
確立
②52G の投入
③52GB の投入
④非常系 VCB
投入
86
UPS で 保 護 さ れ
ている系統を除
く全系統が停電
停電直前の管
理ポイント状
態を把握
UPS で 保 護 さ
れている系統
を除く全系統
が停電
停電系統を、優
先度順に順次投
入(手動)
※中央監視盤と
ローカル機器状
態を逐一確認が
必要
自家発電機
給電中
停電系統にお
いて、停電直
前に起動して
いた管理ポイ
ントを、優先
度順に順次投
入(自動)
※調光機能付き照明は、最少照度にて投入
※インバータ動力は、最少出力にて投入
※自家発電機の設定許容容量を超える系統は投入しない
商用復帰
①商用が復帰
②52GB 開放
③非常系 VCB
一斉開放
④非常系 VCB
投入、一般系
VCB 投入
商用復帰後
の動作
UPS で 保 護 さ れ
ている系統を除
く全系統が停電
UPS で 保 護 さ
れている系統
を除く全系統
が停電
停電系統を、優
先度順に順次投
入(手動)
停電系統にお
いて、停電直
前に起動して
いた管理ポイ
ントを、優先
度順に順次投
入(自動)
※中央監視盤とロー
カル機器状態を逐一
確認が必要
①自家発停止
②52G 開放
復電
出典:
87
アズビル社提供資料を元に調査団作成
2.3 エネルギー管理事業体の実現可能性検討
2.3.1
(1)
エネルギーサービスの概要
エネルギーサービスの将来イメージ
SPC 所管のエリアにおいて、直近の状況では、商業施設やタワーオフィスなど大口需要家
における停電対策にはディーゼル発電機の設置が望ましい。一方で、1.4.1 節に述べたよう
に、新都市エリアでは近い将来、停電時間・停電頻度が低下する可能性が高い。その場合、
既存建物のディーゼル発電機は稼働率が低下し、十分に活用されない状況が生じる。そこ
で将来的には、一建物に設置したディーゼル発電機からの発電電力を複数建物間で融通
することが可能になる。
また、2022 年より小売市場の自由化が予定されており、EVN 以外の事業者であっても、停
電時だけでなく平常時での電力供給が可能になる。電力供給事業の経済性が成立するレベ
ルに小売料金を設定できるのであれば、電力供給そのものもエネルギーサービスの対象範
囲となる可能性が出てくる。
以下では、そうした電力供給事業の展開可能性も含めて、エネルギー管理事業体の実現
可能性を述べる。
出典:調査団作成
図 68 エネルギーシステムの将来イメージ
(2)
電力融通および電力小売に関する法的整理
複数の建物を対象に電力を融通する場合、電力料金の収受等の条件によっては、電力
の再販(小売)となり、電気事業法上の制約が生じる。日本では、一般電気事業者(全
国 10 事業者)以外で、電力小売が認められているのは、経済産業省への許可もしくは
届出を行った「特定電気事業者」、「新電力(特定規模電気事業者)」および「特定供給」
に限定される。
88
「ベ」国の場合、現在、託送が認められておらず、新電力のように、特定の需要家に
託送により電力小売を行うことはできない。一方で、工業団地など特定の供給地点にお
ける一括受電および電力小売(再販)は認められており、日本の特定供給に相当する電
気事業を行う事業者が存在する。
現時点において一括受電および再販が認められているのは、工業団地と高層住宅など
一部のみではあるが、ビンズン省計画投資局からは、停電時(EVN による電力供給が
困難な場合)であれば、それ以外の需要家であっても自営線の範囲内での電力供給は許
されることを可能性として示唆された。
表 53 電力小売事業の類型(日本)
供給の
類型
一般電気
事業者
事業
認可
契約電力が原則
50kW 未満の需要
(規制部門)
許可
料金規制
認可
・料金値下げの場合は届出
・総括原価方式
・変更命令あり
・約款の公表義務あり
供給
義務
供給
命令
休止
廃止
あり
対象
許可
特別高圧または高
圧受電し契約電圧
が原則 50kW 以上
の需要
なし
別途、最終保障約款の届
出・公表義務あり。
特定電気
事業者
特定の供給地点に
おける需要
許可
届出
料金に原価性は求められな
いが、需要家の利益を阻害
する恐れがある場合等は
変更命令
あり
対象
許可
特定規模
電気事業
者(PPS)
特別高圧または高
圧受電し契約電力
が原則 50kW 以上
の需要
届出
なし
なし
対象
届出
特定供給
密接関係性を有す
る特定の供給相手
の需要(需 要 規模
に制限なし)
許可
なし
ただし、特定供給の許可申
請時に契約書等写しを提出
なし
対象
外
届出
電気
事業
非
電気
事業
供給対象
出典:資源エネルギー庁資料
電力事業の運営には、商工省の許可を受け、営業ライセンスを取得する必要がある。
但し、以下の場合は、上記規定の適用外となり、商工局ではなく地方人民委員会が所管
する(28/2004/QH11 第 34 条)。
・ 他者への販売を行わない発電設備の建設(自家発の設置)
・ 商工省の定める容量(50kW)以下の発電設備による電力供給(適用除外となる発電容
量は、25/2013/TT-BCT 第 2 条より)
・ 50kVA より低圧の配電網による郊外、山間部、島嶼部への電力供給・販売
電力小売事業(EVN による供給電力の再販を含む)の運営には、上記に加え、電力法詳
細規定(137/2-13/ND-CP 33 条)にある以下の規定を満たす必要がある。
89
・ 小売事業の管理者は、電力、経済、財務、もしくはそれに相当する学位以上を修了
しており、電力取引事業における 5 年以上の実務経験があること
・ 適切な訓練施設での技術面・安全面での訓練を受けていること
・ 電力市場の取引要件に準じた情報通信基盤を有すること
加えて、自営線を含む配電網の運営には、電力法詳細規定(137/2-13/ND-CP 31 条)の規
定を満たす必要がある。
・ 規定で定められ、実証された設備、建物、配変電設備を有し、その運用・維持管理
に必要な体制、法律上に規定された消防・防火設備を有すること。
・ 配電事業の管理・運用者は、電力分野の学位もしくは配電運用業務を 5 年以上経験
していること。現場担当者は、法律に規定された運用方法や安全規則について適切
な訓練を受けていること。
・ 郊外で配電事業を行う事業者や個人は、次の条件を満たすこと:管理・運用者は、
電力分野の訓練を受け、配電分野において少なくとも 3 年以上の実務経験を有する
こと。運用や修理を行う現場担当者は、認定された訓練施設において電力分野の訓
練を受けていること。
(3)
エネルギーサービスの経済性
1) 電力料金
EVN の電力を再販する場合、原則的には、規制料金が適用される(工業団地への供給
については、15/2007/QD-BCT にて規定)。但し、一部の事業者は、自家発などバックア
ップ設備に対する負担を契約基本料として徴集するなど独自の料金体系を採用している。
表 54
需要家の種類
工業団地向け 110kV 変電所
変圧器容量が 100MVA 超過
通常時間帯
低負荷時間帯
ピーク負荷時間帯
変圧器容量が 50MVA 以上
100MVA 以下
通常時間帯
低負荷時間帯
ピーク負荷時間帯
変圧器容量が 50MVA 未満
通常時間帯
低負荷時間帯
ピーク負荷時間帯
規制卸売料金 (VND/kWh)
単価
需要家の種類
都市部と新築住宅地高層住宅
0~100kWh
1,228
100kWh~200kWh
770
200kWh~300kWh
2,234
300kWh~400kWh
単価
1,383
1,583
1,995
2,156
2,357
1,222
745
2,223
1,216
743
2,208
出典:商工省資料
EVN より電力を購入し需要家に再販する場合、受変電設備や需要家への配電線などに
対する設備費用が必要となるが、上記規制料金では卸売と小売の値差が小さいため、初期
90
投資の回収は難しい。
また、自らの発電電力を販売する場合、ディーゼル発電機の発電単価は、2.2.2 節の試算
のように約 30 円/kWh 程度となり、上記小売料金に対して逆鞘となることから収益性が成り立
たない。NAS 電池を活用する場合も同様で、現時点での価格水準では収益性が成り立たな
い。ただし、既に価格が限界水準まで低減しているディーゼル発電機に比較して、NAS 電池
については、今後、価格低減の見込みがある。2.2.2 節に述べたような環境変化が生じ、蓄
電池単体での投資回収が可能になれば、収益性が成立する可能性がある。
2) 電力融通
将来的なシナリオとして、ディーゼル発電設備の代替としての導入が見込まれる 2017 年
頃から蓄電池を導入し、ⅰ: 電力小売市場の自由化が始まる予定の 2020 年頃までは、停電
時のバックアップ電力として融通(「電力融通」)、ⅱ: 2020 年以降は、停電時以外も電力再販
を含めた電力供給を行う PPS 事業の展開が考えられる。
以下に、上記ⅰの実現に必要な追加設備について整理し、概算費用を算定した。
図 69 システム構成
・ 最大電力 2,000kW の商業施設 2 建物間での電力融通(ステップ 1)、ボトムアップ
PPS(ステップ 2)。
・ 中圧 6kV で連系。(連系線の電圧降下が低圧に比較して小さく電線単価が安価)
・ 「べ」国における設備費用・工費費用は日本における費用の 1/6。
・ ステップ 2 においてディーゼル発電機の場合には同期遮断器の追加が必要であるが、
2.2.2 節の NAS 電池システムは、PCS と遮断器を含めた価格である。PCS には、交
直変換装置と同期装置が備わっており、同期遮断器の追加設置は必要ない。
91
表 55 システム費用 (ステップ 1)
項目
単価
600,000
1) 連系変圧器 1000kVA 盤
400,000
2) 連系高圧盤
4,000
3) 連系管路・地中
400,000
4) 区分遮断器
400
連系ケーブル工事
900,000
機器設置 切替え
数量
2台
2面
200m
1面
200m
1式
合計
費用(千 VND)
1,200,000
800,000
800,000
400,000
80,000
900,000
4,180,000
表 56 システム費用 (ステップ 2) 上記に追加して必要な費用
項目
単価
数量
600,000
設備費
系統連系盤
2台
費用(千 VND)
1,200,000
設備費
工事費
出典:調査団作成
2.3.2
(1)
エネルギー管理事業体の運用体制
エネルギー管理事業体の提供するサービス
前章までに整理したエネルギーシステムの運用には、自家発の負荷配分や省エネルギ
ーの運用や設備の維持管理を行う組織が必要である。また、前節で述べたように、電力
単価の低い「ベ」国でエネルギーサービスを収益事業として成立させるには、付加価値
サービスの提供が望ましい。
例えば、新都市の大口需要家を対象に、エネルギー供給に併せて IT サービスの提供
やエネルギー設備の維持管理を行う特定目的会社(SPC)を設立する可能性を考える。
当該 SPC による提供が想定される付加価値サービスとしては、以下が挙げられる。
92
表 57 SPC が提供する付加価値サービスの具体例
対象
サービス
サービスの概要
・建物の想定ロードカーブや停電情報を元に、パックア
ップシステムの設計、建設、運用、維持管理を行う。
停電時対応
・停電時にバックアップサービスを提供する(当該建物
(バックアップ)
に設置した自家発もしくは、近隣建物に設置した自家
発の稼働状況を見ながら、発電電力の融通を行う)。
・蓄熱式空調の設計、建設、運用、維持管理と併せて時
熱供給サービス
間帯別料金等を勘案した放熱制御により省エネ、省コ
ストを図る(蓄熱受託サービス)。
・BEMS の設計、設置、運用、維持管理を行い、電力消
エネルギー
省エネ・省コスト
費データの収集・分析を行う。
コンサルティング ・電力の利用状況をリアルタイムで提供。蓄積したデー
タを分析し、電力の効率利用のアドバイスを行う。
・省エネ法で規定された「省エネ 5 ヵ年計画書」等の帳
省エネ法対応
票作成を支援する。
・省エネ目標の達成に向けたアドバイスを行う。
・BMES によるエネルギーデータの分析により、熱源、
設備診断・運転効
ポンプ、空調機などの運転効率を判定し、不具合や洗
率管理
浄の必要をアドバイスする。
・IT 基盤インフラにカメラやセンサ等を設置し、情報
セキュリティ
を収集・分析した上で、防犯・防災情報として需要家
(もしくはセキュリティ会社)に提供する。
情報・通信
(IT)
・交通インフラ関係の情報(公共交通の運行情報や渋滞
生活サービス
情報等)や、地域イベント等の情報提供(インターフ
ェース機能の提供を含む)を行う。
出典:調査団作成
(2)
エネルギー管理事業体の運営体制
上記サービスを提供する組織については、既存事業会社内に担当部門を設立する形態
や、特別目的会社(SPC)など事業体を新規に設立する形態などが想定される。
1) 既存事業会社の一部門として設立
現地デベロッパーの一部門としてエネルギーサービス部門を設立する。この場
合、現地デベロッパーが新都市で展開する事業全般とサービス開発・体制・営業
インフラ面での連携が可能である。例えば、自社ビル向けに構築する課金決済シ
ステムインフラの他社ビルへのサービス提供への活用や、経理・総務・人事等バ
ックオフィス機能の共有などの可能性が考えられる。一方で現時点では、現地デ
ベロッパー内の上記サービスに関する知見・ノウハウは限定的であることが想定
され、体制の強化が不可欠である。
93
日系企業
現地企業
出資
出資
現地デベロッパー
エネルギーサービス部
エネルギーサービス部
テナントフィー
・電力供給
・停電時対応
・賃貸料
・エネルギー供給 ・省エネサービス
・停電時対応 ・設備診断・
運転効率管理
・ITサービス
・ITサービス
・ESCOフィー
もしくは
サービスフィー
自社ビル
大口需要家
(テナント)
(ビルオーナー)
出典:調査団作成
図 70 事業体制 1
2) SPC 等の形態により新規事業体として設立
エネルギーサービスに関する知見・ノウハウを有する企業や現地企業、現地デ
ベロッパーと合弁で SPC を設立する。この場合、SPC にノウハウ・知見の集約が
可能である一方で、エネルギーサービス以外の事業との連携が上記と比較して難
しい。
日系企業
出資
出資
出資
EVN
商社/メーカー等
現地企業
出資
出資
出資
エネルギー管理事業体
エネルギー管理事業体
(SPC)
(SPC)
現地デベロッパー
サービス
フィー
(・電力供給)
・停電時対応
・省エネサービス
・設備診断・
運転効率管理
・ITサービス
テナントフィー
・賃貸料
・エネルギー供給
・停電時対応
・ITサービス
自社ビル
大口需要家
(テナント)
(ビルオーナー)
・ESCOフィー
もしくは
サービスフィー
(電力料金
含む)
出典:調査団作成
図 71 事業体制 2
2.3.3
エネルギー管理事業体の事業採算性試算
省エネルギーサービスの提供を行う ESCO 事業者として SPC を設立した場合(上記
2))の事業収益性について試算する。2020 年以前でのサービス提供を考える場合、NAS
電池は価格水準が高く (5.8 万円/kWh (35 万円/kW)程度)、投資回収が難しい。そこで、
ⅰ:2019 年以前は、水蓄熱空調システムと BEMS のみを導入し、NAS 電池の価格が十
分に投資回収可能なレベル (2.3 万円 /kWh(14 万円 /kW) 程度 ) に低減すると見込まれる
ⅱ:2020 年以降は、NAS 蓄電池も導入対象とすることを前提に、収益性を算定した。
94
事業時期
対象建物
導入設備
業務内容
業務運営体
制
表 58 想定される業務概要
ⅰ: 2019 年以前
ⅱ: 2020 年以降
新築 4 棟/年ずつ増加
新築 10 棟/年ずつ増加
自社ビルのみ
自社ビル(5 棟/年)・他社ビル(5 棟/年)
水蓄熱空調システム
NAS 電池
BEMS
水蓄熱空調システム
BEMS
エネルギーサービス(電力・空調)
エネルギーサービス(電力・空調)
停電時対応(電力供給)
停電時対応(電力供給)
設備診断・運転効率管理
設備診断・運転効率管理
省エネ・省コストコンサルティング
省エネ法対応
マネージャー
1名
マネージャー
1名
運転管理担当
1名
総務・営業担当
1名
技術者
2名
運転管理担当
3名
技術者
3名
出典:調査団作成
・
・
・
・
・
新都市・新都市周辺エリアの延床面積 1 万㎡以上の建物を対象建物とする。
(試算上、1 棟当りの延床面積は 1 万㎡とする。)
SPC は、省エネ設備への追加投資を負担し、コスト削減メリットからサービス
フィー(ESCO フィー)を徴収する、いわゆる「新築 ESCO」を想定。
併せて、現行の電気料金規制に基づき規制卸価格で電力を購入し、テナントに
対して電力料金を規制小売価格で提供する。テナントへは ESCO フィーと電力
料金を合わせてエネルギーサービスフィーとして徴収する。 (実際にはテナン
トフィーの内数。)
他社ビルには、ESCO 事業者としてのサービス提供のみを想定する。(当該 SPC
は、他社ビルオーナーより ESCO フィーを受取り、直接他社ビルテナントとの
取引は行わない。テナントから徴収するエネルギーサービスフィーは、テナン
トフィーの内数として、他社ビルオーナーが設定する。)
外資系企業は、事業開始 2 期目から会計主任者の 1 名以上の任命が義務づけら
れているが、ここでは制度上認められている「名義借り」を想定する。
新築 ESCO を実施した場合の省エネ・省コスト効果と追加の投資負担は、2.1.3 節
での試算結果を参考とする。事業時期ⅱ(2020 年以降)に導入する NAS 電池の省コス
ト効果と追加の投資負担は、2.2.2 節の試算結果を参考とする。
95
支出
収入
表 59 SPC の主な支出と収入
費目
ⅰ: 2019 年以前 ⅱ: 2020 年以降
備考
変動費/1 棟(1 万㎡)当り
・水蓄熱+BEMS 1,800 万円
設備費
1,800 万円
11,000 万円
・NAS 電池(2020 年見込み)
(追加投資負担)
9,200 万円
・NAS 電池以外は設備費の
自社ビル 146 万円 3%、NAS 電池は 1%。
維持管理費
54 万円/年
他社ビル 54 万円 ・水蓄熱+BEMS は 5 年間、
NAS 電池は 15 年間。
・単価は下記表 62表 63より
電力卸料金
700 万円/年
600 万円/年
・ⅱでは NAS 電池による充
電効果を織り込む。
固定費/SPC 全体
人件費
400 万円/年
1,000 万円/年 ・下記表 60より
事務所費
300 万円/年
650 万円/年
・下記表 61より
一般管理費
38 万円/年
98 万円/年
・運営費の 5%と設定
・設備導入による電気料金削
減メリットについて自社ビルは
自社ビル 800 万円 100% 、 他 社 ヒ ゙ ル は 50% を
ESCO フィー 自社ビル 800 万円
他社ビル 400 万円 SPC の収入と仮定。
・ESCO 契約の契約期間は 5
年間とする。
・単価は下記表 62表 63より
電力小売料金
1,200 万円/年
1,600 万円/年 ・ ⅱ(自社ビル)は価格上昇率
(33%)を掛合せて算定。
出典:調査団作成
・
ⅰの人件費は、JETRO 調査(「第 23 回アジア・オセアニア主要都市・地域の投
資関連コスト比較」)を参考とした。ⅱは、「べ」国の過去 6 年間の人件費の上
昇率を参考に年間上昇率を 3%として算定。(同じく JETRO 調査に基づく。)
職種
マネージャー
総務・営業担当
運転管理担当
技術者
表 60 人件費・年間負担総額
ⅰ: 直近 3~5 年
2012 年
以内での設立
174 万円/年
190 万円/年
116 万円/年
127 万円/年
116 万円/年
127 万円/年
53 万円/年
58 万円/年
ⅱ: 2020 年以降
での設立
214 万円/年
143 万円/年
143 万円/年
65 万円/年
出典:JETRO 調査を参考に調査団作成
・
ⅰの事務所ビルの賃料は上記 JETRO 調査を参考とした。場所は、ホーチミン
市 1 区中心部を想定。ⅱは、年間上昇率を 10%として算定。
表 61 事務所ビルの賃料 (税金・電気・空調代含む)
ⅰ: 直近 3~5 年
ⅱ: 2020 年以降
職種
2012 年
以内での設立
での設立
面積
-
50 ㎡
100 ㎡
賃料(単価)
4.5 千円/㎡・月
5.0 千円/㎡・月
5.4 千円/㎡・月
賃料(年間総額)
-
295 万円/年
650 万円/年
出典:JETRO 調査を参考に調査団作成
96
・
ⅰの電気料金単価は、2013 年 8 月施行の料金表(19/2013/TT-BCT)の単価を適用
する。ⅱは、2.2.2 節(3)NAS 電池 3)ライフサイクルコストの【仮定 2】と同様、
平均単価の価格上昇率(2013 年比 33%上昇)を設定し、2020 年に予想される単
価を適用する。
表 62 適用する電気料金単価(ⅰ)
1VND=0.0045 円
オンピーク
通常
オフピーク
小売単価(サービス業/6~22kV)
16.8 円/kWh 10.1 円/kWh
6.1 円/kWh
卸売単価(工業団地向け<50MVA)※
9.9 円/kWh
5.5 円/kWh
3.3 円/kWh
※今回の供給対象は工業団地ではないが、電力再販時の卸単価の参考として引用。
出典:19/2013/TT-BCT を元に作成
表 63 適用する電気料金単価(ⅱ)
1VND=0.0045 円
オンピーク
通常
オフピーク
小売単価(サービス業/6~22kV)
22.3 円/kWh 15.5 円/kWh
8.1 円/kWh
卸売単価(工業団地向け<50MVA)※
13.2 円/kWh
7.3 円/kWh
4.4 円/kWh
※今回の供給対象は工業団地ではないが、電力再販時の卸単価の参考として引用。
出典:19/2013/TT-BCT を元に作成
収益性の分析にあたっては、本事業への出資の妥当性を評価するため、 EIRR(Equity
Internal Rate of Return/自己資本内部収益率)を試算した。また、SPC の金融機関に対する
債務返済能力を分析するため、毎年の元利金返済の安全性を把握する DSCR(Debt
Serbive Coverage Ratio)と、事業期間中の元利返済の安全性を把握する LLCR(Loan Life
Coverage Ratio)について計算した。計算条件は以下。
表 64 事業収益性の計算条件
備考
導入設備の耐用年数を考慮
政府通達 45/2013/TT-BTC「耐用年数表(その他電気
設備)」8~15 年
政府通達 203/2009/TT-BTC「固定資産の管理、使
用、減価償却費の計算」。残存価額は 0。
借入金は、設備整備時に都度借入を行う。
ベトナム投資開発銀行の優先分野に対する金利水
準(2014 年 2 月の国家銀行金融政策局長談話より)
項目
事業期間
計算条件
15 年
償却年数
15 年
償却方法
定額法
自己資本比率
30%
金利
7%
返済期間
付加価値税
法人税
10 年
10%
22%
4 年間免税、その後
7 年間 50%減税
法人税減免※
VAT。消費税に相当。
改正法人税法 92/2013/ND-CP
政府通達 123/2012/TT-BCT
欠損金の繰越しは 5 年間まで可能である。
※免税期間は単年度で課税所得が発生した年(繰越欠損金は考慮しない)から起算される。但し、
設立して売上を計上した年度から 4 期連続で欠損金が出ている場合、4 年目から自動的に免税
期間が開始される。
出典:調査団作成
97
98
収入
税引後当期利益
減価償却費戻入れ
出資金
借入金
補助金
支出
設備投資
借入金元本返済額
フリーキャッシュフロー(FCF)
現金残高
元利返済前キャッシュフロー
元利返済額
各期DSCR
元利返済後配当前FCF
1.14
9.0%
LLCR
EIRR
-412,800
412,800
412,800
-412,800
0
412,800
78,480
72,000
6,480
24,244
437,044
42,460
11,016
3.85
31,444
64,800
102,724
33,124
4,800
84,960
72,000
12,960
63,522
500,566
92,300
21,578
4.28
70,722
64,800
148,482
74,082
9,600
72,000
21,578
64,800
72,000
11,016
64,800
設備投資額合計
元利返済合計
借入金
資本金(一括)
22%
412,800
74,082
33,124
412,800
74,082
0
74,082
33,124
0
33,124
税引前当期損益
法人税等
税引後当期損益
繰越損益
8,618
8,618
4,536
4,536
営業外費用計
支払利息
標準課税
82,700
37,660
18,000
18,000
92,000
18,000
7,000
6,000
0
540
540
920
540
4,000
0
8,000
16,000
8,000
12,000
160,000
160,000
64,000
96,000
0
0
0
0
0
0
77,300
4,320
4,320
0
0
0
56,000
56,000
0
0
4,000
3,000
380
9,600
9,600
80,000
80,000
32,000
48,000
0
0
0
0
0
0
42,340
2,160
2,160
0
0
0
28,000
28,000
0
0
4,000
3,000
380
4,800
4,800
営業収入計
① 自社ビル・NAS電池なし
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
1棟当り
②-1 自社ビル・NAS電池あり
1棟当り
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
②-2 他社ビル・NAS電池あり
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
1棟当り
営業費用計
維持管理費
1棟当り
①
1棟当り(NAS電池以外)
②-1
1棟当り(NAS電池)
②-2
1棟当り
電力卸購入費
①
1棟当り
1棟当り
②-1
1棟当り
②-2
人件費
事務所費
一般管理費
減価償却費
① 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
1棟当り(設備投資)
②-1 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
②-1 NAS電池
②-2 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
営業損益
4
5
5
借入金利
4
増加棟数
年度
10%
7%
増加棟数
5
償却期間
15年 償還期間
10年
91,440
72,000
19,440
103,253
603,818
142,140
31,687
4.49
110,453
64,800
194,693
115,493
14,400
72,000
31,687
64,800
189,574
115,493
0
115,493
12,247
12,247
127,740
240,000
240,000
96,000
144,000
0
0
0
0
0
0
112,260
6,480
6,480
0
0
0
84,000
84,000
0
0
4,000
3,000
380
14,400
14,400
4
97,920
72,000
25,920
143,438
747,256
191,980
41,342
4.64
150,638
64,800
241,358
157,358
19,200
72,000
41,342
64,800
346,932
157,358
0
157,358
15,422
15,422
172,780
320,000
320,000
128,000
192,000
0
0
0
0
0
0
147,220
8,640
8,640
0
0
0
112,000
112,000
0
0
4,000
3,000
380
19,200
19,200
4
723,520
640,000
83,520
62,163
809,419
263,611
137,448
1.92
126,163
576,000
785,683
147,816
61,867
640,000
137,448
576,000
494,748
166,085
18,269
147,816
53,928
53,928
460,000
320,000
128,000
192,000
120,000
40,000
80,000
20,000
20,000
0
239,987
18,640
8,640
2,700
4,600
2,700
142,000
112,000
30,000
0
10,000
6,500
980
61,867
19,200
6,000
30,667
6,000
220,013
5
5
781,120
640,000
141,120
41,017
850,435
334,538
229,522
1.46
105,017
576,000
822,137
141,604
104,533
640,000
229,522
576,000
636,351
159,105
17,502
141,604
88,402
88,402
568,000
288,000
96,000
192,000
240,000
80,000
160,000
40,000
40,000
0
320,493
26,480
6,480
5,400
9,200
5,400
172,000
112,000
60,000
0
10,000
6,500
980
104,533
19,200
12,000
61,333
12,000
247,507
5
5
838,720
640,000
198,720
23,460
873,895
405,023
317,563
1.28
87,460
576,000
862,180
138,980
147,200
640,000
317,563
576,000
775,331
156,157
17,177
138,980
118,843
118,843
676,000
256,000
64,000
192,000
360,000
120,000
240,000
60,000
60,000
0
401,000
34,320
4,320
8,100
13,800
8,100
202,000
112,000
90,000
0
10,000
6,500
980
147,200
19,200
18,000
92,000
18,000
275,000
5
5
896,320
640,000
256,320
9,491
883,386
475,064
401,573
1.18
73,491
576,000
905,811
139,944
189,867
640,000
401,573
576,000
915,275
157,241
17,296
139,944
145,253
145,253
784,000
224,000
32,000
192,000
480,000
160,000
320,000
80,000
80,000
0
481,507
42,160
2,160
10,800
18,400
10,800
232,000
112,000
120,000
0
10,000
6,500
980
189,867
19,200
24,000
122,667
24,000
302,493
5
5
49,444
5,439
44,005
185,976
185,976
18,150
1,997
16,154
159,970
159,970
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
178,120
640,000
160,000
480,000
60,000
60,000
0
521,880
49,200
0
13,500
27,600
8,100
180,000
700,000
0
0
-13,597
0
-13,597
134,417
134,417
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
120,820
600,000
120,000
480,000
40,000
40,000
0
519,180
46,500
0
13,500
27,600
5,400
180,000
640,000
0
0
576,000
895,205
44,005
275,200
640,000
557,496
576,000
953,920 1,011,520
640,000
640,000
313,920
371,520
-72,090 -116,315
811,296
694,981
473,461
505,181
481,550
557,496
0.98
0.91
-8,090
-52,315
576,000
881,830
73,297
232,533
640,000
481,550
576,000
365,040
0
365,040
-73,686
621,295
451,323
525,010
0.86
-73,686
0
291,354
16,154
275,200
0
525,010
0
358,560
0
358,560
-96,957
524,338
396,020
492,977
0.80
-96,957
0
261,603
-13,597
275,200
0
492,977
0
988,572 1,032,577 1,048,731 1,035,134
82,356
9,059
73,297
167,630
167,630
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
235,420
680,000
200,000
480,000
80,000
80,000
0
524,580
51,900
0
13,500
27,600
10,800
180,000
600,000
200,000
400,000
100,000
100,000
0
450,013
50,000
0
13,500
23,000
13,500
150,000
150,000
0
10,000
6,500
980
232,533
19,200
30,000
153,333
30,000
249,987
760,000
0
0
5
5
700,000
0
0
5
5
ⅰ:2019年以前、自社ビル・NAS電池なし(①)← → ⅱ:2020年以降、自社ビル・NAS電池あり(②-1)、他社ビル・NAS電池なし(②-2)
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
出資割合
4
対象建物の棟数(1棟=1万㎡相当とする。)
① 自社ビル・NAS電池なし
②-1 自社ビル・NAS電池あり
②-2 他社ビル・NAS電池なし
事業収益性試算
352,080
0
352,080
-122,678
401,661
338,720
461,398
0.73
-122,678
0
229,402
-45,798
275,200
0
461,398
0
989,337
-45,798
0
-45,798
109,318
109,318
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
63,520
560,000
80,000
480,000
20,000
20,000
0
516,480
43,800
0
13,500
27,600
2,700
180,000
580,000
0
0
2028
13
345,600
0
345,600
-148,852
252,809
281,420
430,272
0.65
-148,852
0
196,748
-78,452
275,200
0
430,272
0
910,885
-78,452
0
-78,452
84,672
84,672
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
6,220
520,000
40,000
480,000
0
0
0
513,780
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
520,000
0
0
2029
14
288,000
0
288,000
-107,060
145,749
241,420
348,480
0.69
-107,060
0
180,940
-94,260
275,200
0
348,480
0
816,625
-94,260
0
-94,260
60,480
60,480
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
-33,780
480,000
0
480,000
0
0
0
513,780
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2030
15
230,400
0
230,400
-29,300
116,449
241,420
270,720
0.89
-29,300
0
201,100
-69,300
270,400
0
270,720
0
747,325
-69,300
0
-69,300
40,320
40,320
180,000
0
10,000
6,500
980
270,400
14,400
36,000
184,000
36,000
-28,980
480,000
0
480,000
0
0
0
508,980
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2031
16
172,800
0
172,800
44,428
160,877
241,420
196,992
1.23
44,428
0
217,228
-48,372
265,600
0
196,992
0
698,953
-48,372
0
-48,372
24,192
24,192
180,000
0
10,000
6,500
980
265,600
9,600
36,000
184,000
36,000
-24,180
480,000
0
480,000
0
0
0
504,180
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2032
17
115,200
0
115,200
114,124
275,001
241,420
127,296
1.90
114,124
0
229,324
-31,476
260,800
0
127,296
0
667,477
-31,476
0
-31,476
12,096
12,096
180,000
0
10,000
6,500
980
260,800
4,800
36,000
184,000
36,000
-19,380
480,000
0
480,000
0
0
0
499,380
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2033
18
57,600
0
57,600
179,788
454,789
241,420
61,632
3.92
179,788
0
237,388
-18,612
256,000
0
61,632
0
648,865
-18,612
0
-18,612
4,032
4,032
180,000
0
10,000
6,500
980
256,000
0
36,000
184,000
36,000
-14,580
480,000
0
480,000
0
0
0
494,580
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
241,420
0
0
0
241,420
696,209
241,420
0
0
241,420
28,087
213,333
0
0
0
676,951
28,087
0
28,087
0
0
180,000
0
10,000
6,500
980
213,333
0
30,000
153,333
30,000
28,087
480,000
0
480,000
0
0
0
451,913
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
(単位:千円)
2035
20
480,000
0
0
2034
19
99
収入
税引後当期利益
減価償却費戻入れ
出資金
借入金
補助金
支出
設備投資
借入金元本返済額
フリーキャッシュフロー(FCF)
現金残高
元利返済前キャッシュフロー
元利返済額
各期DSCR
元利返済後配当前FCF
設備投資額合計
元利返済合計
借入金
資本金(一括)
1.27
4.9%
LLCR
EIRR
22%
-825,600
825,600
825,600
-825,600
0
825,600
825,600
77,760
72,000
5,760
18,268
843,868
42,460
9,792
4.34
32,668
57,600
96,028
33,628
4,800
83,520
72,000
11,520
58,719
902,587
92,300
19,181
4.81
73,119
57,600
142,239
75,039
9,600
75,039
72,000
19,181
57,600
33,628
72,000
9,792
57,600
825,600
75,039
0
75,039
33,628
0
33,628
税引前当期損益
法人税等
税引後当期損益
繰越損益
7,661
7,661
4,032
4,032
標準課税
82,700
37,660
営業外費用計
支払利息
18,000
18,000
92,000
18,000
7,000
6,000
0
540
540
920
540
4,000
0
8,000
16,000
8,000
12,000
160,000
160,000
64,000
96,000
0
0
0
0
0
0
77,300
4,320
4,320
0
0
0
56,000
56,000
0
0
4,000
3,000
380
9,600
9,600
80,000
80,000
32,000
48,000
0
0
0
0
0
0
42,340
2,160
2,160
0
0
0
28,000
28,000
0
0
4,000
3,000
380
4,800
4,800
営業収入計
① 自社ビル・NAS電池なし
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
1棟当り
②-1 自社ビル・NAS電池あり
1棟当り
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
②-2 他社ビル・NAS電池あり
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
1棟当り
営業費用計
維持管理費
1棟当り
①
1棟当り(NAS電池以外)
②-1
1棟当り(NAS電池)
②-2
1棟当り
電力卸購入費
①
1棟当り
1棟当り
②-1
1棟当り
②-2
人件費
事務所費
一般管理費
減価償却費
① 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
1棟当り(設備投資)
②-1 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
②-1 NAS電池
②-2 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
営業損益
4
5
5
借入金利
4
増加棟数
年度
20%
7%
増加棟数
5
償却期間
15年 償還期間
10年
57,600
235,871
159,071
19,200
72,000
36,749
57,600
350,964
159,071
0
159,071
13,709
13,709
172,780
320,000
320,000
128,000
192,000
0
0
0
0
0
0
147,220
8,640
8,640
0
0
0
112,000
112,000
0
0
4,000
3,000
380
19,200
19,200
4
512,000
727,015
153,149
61,867
640,000
122,176
512,000
504,113
172,077
18,929
153,149
47,936
47,936
460,000
320,000
128,000
192,000
120,000
40,000
80,000
20,000
20,000
0
239,987
18,640
8,640
2,700
4,600
2,700
142,000
112,000
30,000
0
10,000
6,500
980
61,867
19,200
6,000
30,667
6,000
220,013
5
5
512,000
766,879
150,345
104,533
640,000
204,019
512,000
654,458
168,927
18,582
150,345
78,579
78,579
568,000
288,000
96,000
192,000
240,000
80,000
160,000
40,000
40,000
0
320,493
26,480
6,480
5,400
9,200
5,400
172,000
112,000
60,000
0
10,000
6,500
980
104,533
19,200
12,000
61,333
12,000
247,507
5
5
512,000
809,932
150,732
147,200
640,000
282,278
512,000
805,190
169,362
18,630
150,732
105,638
105,638
676,000
256,000
64,000
192,000
360,000
120,000
240,000
60,000
60,000
0
401,000
34,320
4,320
8,100
13,800
8,100
202,000
112,000
90,000
0
10,000
6,500
980
147,200
19,200
18,000
92,000
18,000
275,000
5
5
100,982
11,108
89,874
149,005
149,005
70,108
7,712
62,396
165,312
165,312
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
235,420
680,000
200,000
480,000
80,000
80,000
0
524,580
51,900
0
13,500
27,600
10,800
180,000
600,000
200,000
400,000
100,000
100,000
0
450,013
50,000
0
13,500
23,000
13,500
150,000
150,000
0
10,000
6,500
980
232,533
19,200
30,000
153,333
30,000
249,987
760,000
0
0
5
5
700,000
0
0
5
5
35,925
3,952
31,973
142,195
142,195
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
178,120
640,000
160,000
480,000
60,000
60,000
0
521,880
49,200
0
13,500
27,600
8,100
180,000
700,000
0
0
1,338
294
1,044
119,482
119,482
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
120,820
600,000
120,000
480,000
40,000
40,000
0
519,180
46,500
0
13,500
27,600
5,400
180,000
640,000
0
0
-33,651
0
-33,651
97,171
97,171
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
63,520
560,000
80,000
480,000
20,000
20,000
0
516,480
43,800
0
13,500
27,600
2,700
180,000
580,000
0
0
2028
13
-69,044
0
-69,044
75,264
75,264
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
6,220
520,000
40,000
480,000
0
0
0
513,780
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
520,000
0
0
2029
14
512,000
856,175
154,308
189,867
640,000
356,954
512,000
512,000
834,407
89,874
232,533
640,000
428,045
512,000
970,240
640,000
330,240
-120,644
933,556
502,908
495,552
1.01
7,356
512,000
849,596
62,396
275,200
640,000
495,552
512,000
324,480
0
324,480
-17,307
916,249
449,368
466,675
0.96
-17,307
0
307,173
31,973
275,200
0
466,675
0
318,720
0
318,720
-42,476
873,773
395,726
438,202
0.90
-42,476
0
276,244
1,044
275,200
0
438,202
0
312,960
0
312,960
-71,411
802,362
338,720
410,131
0.83
-71,411
0
241,549
-33,651
275,200
0
410,131
0
307,200
0
307,200
-101,044
701,318
281,420
382,464
0.74
-101,044
0
206,156
-69,044
275,200
0
382,464
0
959,498 1,049,372 1,111,768 1,143,741 1,144,785 1,111,134 1,042,090
173,380
19,072
154,308
129,114
129,114
784,000
224,000
32,000
192,000
480,000
160,000
320,000
80,000
80,000
0
481,507
42,160
2,160
10,800
18,400
10,800
232,000
112,000
120,000
0
10,000
6,500
980
189,867
19,200
24,000
122,667
24,000
302,493
5
5
89,280
95,040
714,240
765,440
816,640
867,840
919,040
72,000
72,000
640,000
640,000
640,000
640,000
640,000
17,280
23,040
74,240
125,440
176,640
227,840
279,040
99,574
140,831
12,775
1,439
-6,708
-11,665
-84,633
1,002,161 1,142,992 1,155,767 1,157,206 1,150,498 1,138,833 1,054,200
142,140
191,980
262,951
333,458
403,570
473,288
471,412
28,166
36,749
122,176
204,019
282,278
356,954
428,045
5.05
5.22
2.15
1.63
1.43
1.33
1.10
113,974
155,231
140,775
129,439
121,292
116,335
43,367
57,600
188,854
116,854
14,400
72,000
28,166
57,600
191,893
116,854
0
116,854
10,886
10,886
127,740
240,000
240,000
96,000
144,000
0
0
0
0
0
0
112,260
6,480
6,480
0
0
0
84,000
84,000
0
0
4,000
3,000
380
14,400
14,400
4
ⅰ:2019年以前、自社ビル・NAS電池なし(①)← → ⅱ:2020年以降、自社ビル・NAS電池あり(②-1)、他社ビル・NAS電池なし(②-2)
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
出資割合
4
対象建物の棟数(1棟=1万㎡相当とする。)
① 自社ビル・NAS電池なし
②-1 自社ビル・NAS電池あり
②-2 他社ビル・NAS電池なし
事業収益性試算
256,000
0
256,000
-68,340
632,978
241,420
309,760
0.78
-68,340
0
187,660
-87,540
275,200
0
309,760
0
954,550
-87,540
0
-87,540
53,760
53,760
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
-33,780
480,000
0
480,000
0
0
0
513,780
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2030
15
204,800
0
204,800
780
633,758
241,420
240,640
1.00
780
0
205,580
-64,820
270,400
0
240,640
0
889,730
-64,820
0
-64,820
35,840
35,840
180,000
0
10,000
6,500
980
270,400
14,400
36,000
184,000
36,000
-28,980
480,000
0
480,000
0
0
0
508,980
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2031
16
153,600
0
153,600
66,316
700,074
241,420
175,104
1.38
66,316
0
219,916
-45,684
265,600
0
175,104
0
844,046
-45,684
0
-45,684
21,504
21,504
180,000
0
10,000
6,500
980
265,600
9,600
36,000
184,000
36,000
-24,180
480,000
0
480,000
0
0
0
504,180
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2032
17
102,400
0
102,400
128,268
828,342
241,420
113,152
2.13
128,268
0
230,668
-30,132
260,800
0
113,152
0
813,914
-30,132
0
-30,132
10,752
10,752
180,000
0
10,000
6,500
980
260,800
4,800
36,000
184,000
36,000
-19,380
480,000
0
480,000
0
0
0
499,380
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2033
18
0
241,420
28,087
213,333
0
0
0
823,837
28,087
0
28,087
0
0
180,000
0
10,000
6,500
980
213,333
0
30,000
153,333
30,000
28,087
480,000
0
480,000
0
0
0
451,913
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
51,200
0
0
0
51,200
0
186,636
241,420
1,014,978 1,256,398
241,420
241,420
54,784
0
4.41
186,636
241,420
0
237,836
-18,164
256,000
0
54,784
0
795,750
-18,164
0
-18,164
3,584
3,584
180,000
0
10,000
6,500
980
256,000
0
36,000
184,000
36,000
-14,580
480,000
0
480,000
0
0
0
494,580
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
(単位:千円)
2035
20
480,000
0
0
2034
19
100
収入
税引後当期利益
減価償却費戻入れ
出資金
借入金
補助金
支出
設備投資
借入金元本返済額
フリーキャッシュフロー(FCF)
現金残高
元利返済前キャッシュフロー
元利返済額
各期DSCR
元利返済後配当前FCF
1.45
4.1%
LLCR
EIRR
-1,238,400
1,238,400
1,238,400
-1,238,400
0
1,238,400
50,400
77,040
72,000
5,040
12,292
1,250,692
42,460
8,568
4.96
33,892
82,080
72,000
10,080
53,917
1,304,609
92,300
16,783
5.50
75,517
50,400
135,997
75,997
9,600
72,000
16,783
50,400
72,000
8,568
50,400
89,332
34,132
4,800
75,997
34,132
設備投資額合計
元利返済合計
借入金
資本金(一括)
22%
18,000
18,000
92,000
18,000
7,000
6,000
0
540
540
920
540
4,000
0
8,000
16,000
1,238,400
75,997
0
75,997
34,132
0
34,132
税引前当期損益
法人税等
税引後当期損益
1,238,400
6,703
6,703
3,528
3,528
繰越損益
82,700
37,660
営業外費用計
支払利息
標準課税
160,000
160,000
64,000
96,000
0
0
0
0
0
0
77,300
4,320
4,320
0
0
0
56,000
56,000
0
0
4,000
3,000
380
9,600
9,600
80,000
80,000
32,000
48,000
0
0
0
0
0
0
42,340
2,160
2,160
0
0
0
28,000
28,000
0
0
4,000
3,000
380
4,800
4,800
8,000
12,000
営業収入計
① 自社ビル・NAS電池なし
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
1棟当り
②-1 自社ビル・NAS電池あり
1棟当り
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
②-2 他社ビル・NAS電池あり
ESCOフィー(5年契約)
1棟当り
電力小売料金
1棟当り
営業費用計
維持管理費
1棟当り
①
1棟当り(NAS電池以外)
②-1
1棟当り(NAS電池)
②-2
1棟当り
電力卸購入費
①
1棟当り
1棟当り
②-1
1棟当り
②-2
人件費
事務所費
一般管理費
減価償却費
① 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
1棟当り(設備投資)
②-1 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
②-1 NAS電池
②-2 水蓄熱+BEMS
1棟当り(設備投資)
営業損益
4
5
5
借入金利
4
増加棟数
年度
30%
7%
増加棟数
5
償却期間
15年 償還期間
10年
50,400
230,385
160,785
19,200
72,000
32,155
50,400
354,996
160,785
0
160,785
11,995
11,995
172,780
320,000
320,000
128,000
192,000
0
0
0
0
0
0
147,220
8,640
8,640
0
0
0
112,000
112,000
0
0
4,000
3,000
380
19,200
19,200
4
448,000
668,348
158,482
61,867
640,000
106,904
448,000
513,478
178,069
19,588
158,482
41,944
41,944
460,000
320,000
128,000
192,000
120,000
40,000
80,000
20,000
20,000
0
239,987
18,640
8,640
2,700
4,600
2,700
142,000
112,000
30,000
0
10,000
6,500
980
61,867
19,200
6,000
30,667
6,000
220,013
5
5
448,000
711,621
159,087
104,533
640,000
178,517
448,000
672,565
178,750
19,662
159,087
68,757
68,757
568,000
288,000
96,000
192,000
240,000
80,000
160,000
40,000
40,000
0
320,493
26,480
6,480
5,400
9,200
5,400
172,000
112,000
60,000
0
10,000
6,500
980
104,533
19,200
12,000
61,333
12,000
247,507
5
5
189,519
20,847
168,672
112,974
112,974
784,000
224,000
32,000
192,000
480,000
160,000
320,000
80,000
80,000
0
481,507
42,160
2,160
10,800
18,400
10,800
232,000
112,000
120,000
0
10,000
6,500
980
189,867
19,200
24,000
122,667
24,000
302,493
5
5
119,607
13,157
106,451
130,379
130,379
90,772
9,985
80,787
144,648
144,648
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
235,420
680,000
200,000
480,000
80,000
80,000
0
524,580
51,900
0
13,500
27,600
10,800
180,000
600,000
200,000
400,000
100,000
100,000
0
450,013
50,000
0
13,500
23,000
13,500
150,000
150,000
0
10,000
6,500
980
232,533
19,200
30,000
153,333
30,000
249,987
760,000
0
0
5
5
700,000
0
0
5
5
53,699
5,907
47,792
124,421
124,421
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
178,120
640,000
160,000
480,000
60,000
60,000
0
521,880
49,200
0
13,500
27,600
8,100
180,000
700,000
0
0
16,274
3,580
12,693
104,546
104,546
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
120,820
600,000
120,000
480,000
40,000
40,000
0
519,180
46,500
0
13,500
27,600
5,400
180,000
640,000
0
0
-21,505
0
-21,505
85,025
85,025
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
63,520
560,000
80,000
480,000
20,000
20,000
0
516,480
43,800
0
13,500
27,600
2,700
180,000
580,000
0
0
-59,636
0
-59,636
65,856
65,856
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
6,220
520,000
40,000
480,000
0
0
0
513,780
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
520,000
0
0
2029
14
-80,820
0
-80,820
47,040
47,040
180,000
0
10,000
6,500
980
275,200
19,200
36,000
184,000
36,000
-33,780
480,000
0
480,000
0
0
0
513,780
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2030
15
-60,340
0
-60,340
31,360
31,360
180,000
0
10,000
6,500
980
270,400
14,400
36,000
184,000
36,000
-28,980
480,000
0
480,000
0
0
0
508,980
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2031
16
448,000
757,684
162,484
147,200
640,000
246,994
448,000
448,000
806,539
168,672
189,867
640,000
312,334
448,000
448,000
786,984
106,451
232,533
640,000
374,539
448,000
448,000
803,987
80,787
275,200
640,000
433,608
448,000
0
322,992
47,792
275,200
0
408,341
0
0
287,893
12,693
275,200
0
383,426
0
0
253,695
-21,505
275,200
0
358,865
0
0
215,564
-59,636
275,200
0
334,656
0
0
194,380
-80,820
275,200
0
271,040
0
0
210,060
-60,340
270,400
0
210,560
0
835,049 1,003,721 1,110,172 1,190,959 1,238,751 1,251,444 1,229,940 1,170,304 1,089,484 1,029,144
182,566
20,082
162,484
92,434
92,434
676,000
256,000
64,000
192,000
360,000
120,000
240,000
60,000
60,000
0
401,000
34,320
4,320
8,100
13,800
8,100
202,000
112,000
90,000
0
10,000
6,500
980
147,200
19,200
18,000
92,000
18,000
275,000
5
5
2028
13
87,120
92,160
704,960
749,760
794,560
839,360
884,160
928,960
283,920
278,880
273,840
268,800
224,000
179,200
72,000
72,000
640,000
640,000
640,000
640,000
640,000
640,000
0
0
0
0
0
0
15,120
20,160
64,960
109,760
154,560
199,360
244,160
288,960
283,920
278,880
273,840
268,800
224,000
179,200
95,894
138,225
-36,612
-38,139
-36,876
-32,821
-97,176 -124,973
39,072
9,013
-20,145
-53,236
-29,620
30,860
1,400,503 1,538,728 1,502,116 1,463,977 1,427,101 1,394,280 1,297,104 1,172,131 1,211,203 1,220,216 1,200,072 1,146,836 1,117,216 1,148,076
142,140
191,980
262,292
332,378
402,118
471,513
469,363
500,635
447,413
392,440
338,720
281,420
241,420
241,420
24,646
32,155
106,904
178,517
246,994
312,334
374,539
433,608
408,341
383,426
358,865
334,656
271,040
210,560
5.77
5.97
2.45
1.86
1.63
1.51
1.25
1.15
1.10
1.02
0.94
0.84
0.89
1.15
117,494
159,825
155,388
153,861
155,124
159,179
94,824
67,027
39,072
9,013
-20,145
-53,236
-29,620
30,860
50,400
183,014
118,214
14,400
72,000
24,646
50,400
194,211
118,214
0
118,214
9,526
9,526
127,740
240,000
240,000
96,000
144,000
0
0
0
0
0
0
112,260
6,480
6,480
0
0
0
84,000
84,000
0
0
4,000
3,000
380
14,400
14,400
4
ⅰ:2019年以前、自社ビル・NAS電池なし(①)← → ⅱ:2020年以降、自社ビル・NAS電池あり(②-1)、他社ビル・NAS電池なし(②-2)
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
2026
2027
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
出資割合
4
対象建物の棟数(1棟=1万㎡相当とする。)
① 自社ビル・NAS電池なし
②-1 自社ビル・NAS電池あり
②-2 他社ビル・NAS電池なし
事業収益性試算
134,400
0
134,400
88,204
1,236,280
241,420
153,216
1.58
88,204
0
222,604
-42,996
265,600
0
153,216
0
986,148
-42,996
0
-42,996
18,816
18,816
180,000
0
10,000
6,500
980
265,600
9,600
36,000
184,000
36,000
-24,180
480,000
0
480,000
0
0
0
504,180
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2032
17
89,600
0
89,600
142,412
1,378,692
241,420
99,008
2.44
142,412
0
232,012
-28,788
260,800
0
99,008
0
957,360
-28,788
0
-28,788
9,408
9,408
180,000
0
10,000
6,500
980
260,800
4,800
36,000
184,000
36,000
-19,380
480,000
0
480,000
0
0
0
499,380
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
2033
18
0
241,420
28,087
213,333
0
0
0
967,730
28,087
0
28,087
0
0
180,000
0
10,000
6,500
980
213,333
0
30,000
153,333
30,000
28,087
480,000
0
480,000
0
0
0
451,913
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
44,800
0
0
0
44,800
0
193,484
241,420
1,572,176 1,813,596
241,420
241,420
47,936
0
5.04
193,484
241,420
0
238,284
-17,716
256,000
0
47,936
0
939,644
-17,716
0
-17,716
3,136
3,136
180,000
0
10,000
6,500
980
256,000
0
36,000
184,000
36,000
-14,580
480,000
0
480,000
0
0
0
494,580
41,100
0
13,500
27,600
0
180,000
480,000
0
0
(単位:千円)
2035
20
480,000
0
0
2034
19
上記試算において、出資割合を 10%・20%・30%、借入金利を 5%・6%・7%・8%と
変更した場合の EIRR は以下となる。
表 65
出資
割合
5%
16.5%
8.0%
5.8%
10%
20%
30%
EIRR の試算結果
借入金利
6%
13.3%
6.5%
5.0%
7%
9.0%
4.9%
4.1%
8%
2.9%
3.1%
3.1%
出典:調査団作成
EIRR は、出資割合が 10%、借入金利が 6%以下において 10%以上となる。また DSCR、
LLCR は以下となる。事業期間を通して LLCR は 1.2 程度となるが、設備投資に対する
借入金の返済額が最大となる事業期間中盤で DSCR はマイナスとなっており、準備金の
設定など資金繰りに関する検討の余地がある。IRR の評価は事業内容や事業リスク、規
模等により異なる。加えて、「べ」国での事業については、為替やインフレ、外資規制
等の政策変更などのリスクプレミアムを考慮する必要がある。
表 66
最大
最小
DSCR
LLCR
DSCR・LLCR の試算結果
5%
4.27
0.69
1.22
6%
4.04
0.67
1.18
出典:調査団作成
2.3.4
事業体設立に関する課題の整理
前節では、事業採算性を簡便に試算した。実際の事業化にあたっては、例えば、以下
について考慮した上での一層詳細な検討が必要である。
ⅰ: 新都市および新都市周辺における需要見込み、顧客ニーズ
・新都市を基盤に事業を展開するにあたり、今後、1 万㎡以上の大口需要家が新都
市および新都市周辺でどの程度増加するか。
・上記の大口需要家のうち、どの程度の件数の企業が省エネ設備導入を含むエネル
ギーサービスを外注する素地があるか。
ⅱ: 事業環境の変化
・「べ」国政府は、電力料金の平均単価を上昇させる方向にある。事業期間中の電
力単価がどのように推移するか。
・「べ」国政府による省エネ、ピークシフト設備への助成制度は拡充の方向にある。
事業期間中に活用できる助成制度にはどのようなものがあるか。
ⅲ: 運営体制の確立
・本事業が前提とするエネルギーシステムの運転・維持管理が可能もしくは教育に
よる能力向上が見込める人材の確保が可能か。
・サービス提供にあたり契約体系の整備や運営ルールのマニュアル化などによる運
101
営の効率化が可能か。
ⅳ: 資金調達スキーム
・日本の政府系金融から低利子の融資を引き出すことは可能か。(民間企業間で行
う一事業と位置づけた場合、政府保証を付けるのは難しい。EVN との連携によ
る地域インフラ整備(公共事業)として位置づけるか。)
・「べ」国現地金融機関との有利な融資条件での融資契約は可能か。(コーポレート
ファイナンスでの融資のみ。(プロジェクトファイナンスは提供していない。) 原
則、変動金利で 10 年が返済期間の上限。担保条件やリコース条件の交渉が必要
となる。
16.0
ベトナム
インドネシア
タイ
中国
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
2007
2008
2009
2010
2011
2012
出典:JETRO 資料等より調査団作成
図 72 アジア各国の主要政策金利
ⅴ: 物価変動、為替変動
・「べ」国においては、物価や為替の変動が大きく事業期間が長いほど事業収支に
対して影響を与えるリスクが高まる。短期でも確実に収益の確保が可能な事業モ
デルや為替変動リスクを回避できる条件での事業化は可能か。
25.0
ベトナム
インドネシア
タイ
中国
20.0
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
2007
2008
2009
2010
2011
2012
出典:JETRO 資料より調査団作成
図 73 アジア各国の消費者物価上昇率(前年比)
102
25%
ベトナム
インドネシア
タイ
中国
20%
15%
10%
5%
0%
-5%
-10%
-15%
2008
2009
2010
2011
2012
出典:JETRO 資料より調査団作成
図 74 アジア各国の為替変動率(前年比/対円)
以
103
上