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IL-2R
研究の背景
IL-25R
IL-5
IL-13
マウス 腸間膜
FALC
Welcome to Koyasu lab!
c-kit
CD3
DAPI
腸間膜
IL-7R
IL-33R
リンパ球ゲート
SSC
NH細胞
ネガティブコントロール
IL-2 IL-25
IL-2
+
IL-25
IL-2
+ IL-33
IL-25
小安 重夫
50 μm
FSC
Lin-
ナチュラルヘルパー(Natural helper: NH)細胞は我々の研究室で発見した新しい免疫細胞で、これまで報告されていたT細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞
とは異なるTh2型の自然リンパ球(Group 2 innate lymphoid cell; ILC2)である。NH細胞は脂肪組織中に見出されたリンパ球集積、fat-associated lymphoid
cluster “FALC”に局在し、Lin-c-Kit+Sca-1+で表される細胞である。
NH細胞はIL-2R、IL-7R、IL-25R、IL-33Rといった様々なサイトカインに対する受容体を発現する。IL-25 やIL-33は寄生虫感染やアレルギー炎症反応におい
てTh2型の免疫応答を引き起こすことが知られているが、我々の研究室では、NH細胞がIL-2とIL-25の共刺激、又はIL-33単独刺激下でIL-5、IL-13といった
Th2サイトカインを多量に産生し、好酸球の浸潤や杯細胞過形成を誘導することで、寄生虫排除やアレルギー憎悪に重要な役割を果たすことを明らかに
している。
近年、寄生虫感染やアレルギー喘息に対するNH細胞の機能に関してはいくつか報告されてきているが、IL-25、IL-33が関与するその他の疾患に対する
NH細胞の役割は明らかになっていない。また、NH細胞はFALCに局在するが、FALC自身の発生や機能、脂肪組織の恒常性の制御におけるNH細胞の役
割に関しても不明な点が多い。さらに、NH細胞の分化制御機構やNH細胞特異的マーカーも知られていない。
本ポスターでは、未だ解明されていないNH細胞の自然免疫における役割に関して、現在、我々が行っている最新の研究について紹介したい。
Lin+
NH細胞
c-Kit
200 μm
Fat-associated lymphoid cluster
(FALC)
Sca-1
*Lin: CD3, CD4, CD5, CD8, CD11c, CD19, TCR,
TCR, B220, DX5, NK1.1, Mac-1, Gr-1, FcR1.
Moro K. et al. Nature 2010 463: 540.
FALCの解析
脂肪組織の恒常性維持におけるNH細胞の役割
NH細胞の可塑性
茂呂 和世
望月 美穂
青: 核
緑: 白血球
赤: 血管
岳野 なつき
FALCに存在する細胞
NH細胞
T細胞
B細胞
NK細胞
NKT細胞
マクロファージ
好中球
好塩基球
好酸球
マスト細胞
FALC
寄生虫
アレルゲン
ウィルス
本村 泰隆
マクロファージの浸潤
細胞極性
上皮細胞
Th2 型免疫反応
Th1/17型免疫反応?
IL-33
杯細胞過形成
Kafi Nequan Ealey
他の免疫細胞
??
IL-13
IL-17?
NH細胞
サイトカイン、ケモカイン
IL-5
IL-13
IL-25, IL-33
アディポカイン
メディエーター
可塑性?
リンパ管
脂肪組織リモデリング
インスリン感受性
体謝、恒常性の維持
好中球
IL-5
血管
IFNγ?
マクロファージ
好酸球
FALCは我々が脂肪組織内に見出したこれまでに報告のないリンパ球集積である。これまで、FALCは全
てのリンパ節が欠損する、aly/alyマウスやRORγt-/-マウスにも存在することから、他のリンパ節とは異なる
リンパ球集積であることを明らかにしている。 NH細胞は肺、腸、骨髄、皮膚、肝臓、血液中にも存在する
が、FALCに最も多く局在する。 FALCには様々な種類の免疫細胞が存在し、FALC内を通る血管、リンパ管
を経由し活発に出入りしている。
今後は、FALCの役割を解明するとともに、FALCの形成、維持にどのような因子が重要であるかを明らか
にしたい。また、NH細胞の遊走、NH細胞と脂肪細胞との相互作用に関しても着目していきたい。
NH細胞は新たなTh2型の自然免疫に働くリンパ球(Group 2 innate lymphoid cell; ILC2)で、Th2サイ
トカイン産生を介して免疫応答を起こす。しかしながら、NH細胞は異なる環境下ではTh1サイトカイン
やTh17サイトカインを産生する能力を持つことから、Th1型やTh17型の免疫反応にも重要な役割を果
たすことが考えられる。
そこで、in vivoにおけるNH細胞の可塑性に着目し、サイトカイン産生機構を解明するとともに、Th1
型、又はTh17型の免疫応答におけるNH細胞の役割を明らかにしていきたい。
NH細胞の分化制御機構の解明
食餌誘導性肥満におけるNH細胞の機能解析
IL-25
佐々木 崇晴
IL-2
古賀 諭
NH細胞
(小腸)
IL-33
IL-25R
造血幹細胞
(HSC)
リンパ球共通前駆細胞
(CLP)
T細胞
TSt4
(Notch シグナル-)
IL-13
IL-33R
IL-2R
IL-7
IL-33R
NK細胞
NH細胞
NH細胞
TSt4-DLL1
運命決定
脂肪細胞
IL-2Rα
B細胞
IL-7R
NH 細胞
(Notchシグナル+)
IL-2Rα
IL-25
Lin-細胞
肥満
Lin-細胞
正常
肥満は脂肪組織の炎症の慢性化を引き起こす。肥満状態では、免疫細胞や脂肪細胞から定常状
態とは異なる因子が産生され炎症を引き起こすことが知られているが、そのメカニズムに関しては明
らかになっていない。
NH細胞はFALCに局在し、脂肪組織のリモデリングや体謝恒常性の維持に重要であることが示唆さ
れている。そこで、NH細胞と脂肪組織内の体謝制御に関与するマクロファージ、脂肪細胞との相互作
用を明らかにし、脂肪組織炎症の分子メカニズムを解明する。
IL-33R
IL-13
全ての血球系細胞は自己増殖能と多分化能をもつ造血幹細胞(HSC)から分化する。T細胞、B細胞、
NK細胞といったリンパ球はHSC、さらに分化の進んだリンパ球共通前駆細胞 (CLP)から分化する。NH細
胞もCLPから分化することは知られているが、その分化制御機構は不明な点が多い。
我々はin vitroにおけるNH細胞分化培養系を樹立し、NH細胞の分化にIL-7とNotchシグナルが必須で
あることを明らかにしている。
今後は、NH細胞特異的前駆細胞の同定、及び分化条件、分化経路の解明、さらには分化に必須な
NH細胞特異的遺伝子の同定を目指し、NH細胞の運命決定制御機構の全容を明らかにしたい。
IL-5
我々は、これまでに野生型マウスやT細胞、B細胞、NK細胞が欠損しているRag2-/-マウスでは食餌誘導
性肥満が誘導される一方、T細胞、B細胞、NK細胞に加えNH細胞も欠損しているγc-/-Rag2-/-マウスでは肥
満に対し抵抗性を示すことを明らかにしており、NH細胞の肥満誘導への関与が考えられた。
そこで、小腸に存在するNH細胞をγc-/-Rag2-/-マウスへ移植したところ、肥満が誘導された。さらに、IL-13
をγc-/-Rag2-/-マウスへ投与することによっても、同様に肥満が誘導された。
以上から、小腸のNH細胞が産生するIL-13が肥満を誘導することが明らかとなった。
アレルギーにおけるNH細胞の役割
NH細胞特異的ノックアウトマウスの作製
NH細胞の新規受容体の同定
抗原
ダメージ!
小林 貴人
上皮細胞
宮島 優里奈
NH細胞特異的レセプター?
ネクローシス
T細胞
レセプター
NH細胞
IL-33
IL-5
VS.
RNA-seq
a
NH細胞
特異的遺伝子
他の
免疫細胞
(20細胞)
アレルギー
杯細胞過形成
NH細胞特異的ノックアウトマウス
IL-13
ムチン産生
山本 千夏
松枝 由美恵
高発現する受容体遺伝子の抽出
RNA-seq
マイクロアレイ
気道性過敏症
食物アレルギー
mRNAレベルでの発現の確認
NK細胞
レセプター
NH細胞 ?
レセプター??
リアルタイム PCR
リガンドによる刺激
機能の解析
上皮細胞は抗原にさらされるとネクローシスを起こし、IL-33を産生することが報告されている。我々は
これまで、NH細胞はIL-33単独刺激下で多量のIL-5とIL-13といったTh2サイトカインを産生し、肺や小腸
で好酸球浸潤と杯細胞過形成を誘導することを明らかにしており、アレルギーにおける炎症反応の憎
悪にNH細胞が重要な役割を果たすことが示唆されている。
そこで、NH細胞の肺における気道性過敏症、腸における食物アレルギーに対する役割に着目し、炎
症憎悪のメカニズムを明らかにする。
より良い実験が出来るよう環境を整え、
日々の研究をサポートしています。
和田 祥佳
B細胞
レセプター
実験ストラテジー
好酸球浸潤
NH細胞
Th2型免疫反応に対するNH細胞の役割を解析する際、通常我々は、野生型マウス、Rag-2-/-マウス
(T、B、NKT細胞欠損)、 γc-/-Rag-2-/-マウス (T、B、NKT、NK、LTi、NH細胞欠損)、さらにはNH細胞を移植
したγc-/-Rag-2-/-マウスを用いて比較している。しかしながら、この方法ではNH細胞と他の免疫細胞との
相互作用を調べることは出来ない。
細胞間の免疫応答におけるNH細胞の役割を評価するにはNH細胞を特異的に欠損させることが不
可欠である。そこで、RNAシークエンス法を用いてNH細胞のみに発現する特異的遺伝子を同定し、得
られた遺伝子を用いてNH細胞特異的ノックアウトマウスの作製を行う。
山菅 駿
NH細胞はIL-2R、IL-7R、IL-25R、IL-33Rといった様々なサイトカインに対する受容体を発現する。IL7Rは維持、IL-2Rは増殖、IL-25R、IL-33RはNH細胞のTh2サイトカイン産生を誘導する。しかしながら、
NH細胞が非自己を認識する受容体を発現するかは未だ明らかになっていない。
そこで、遺伝子の網羅的解析からNH細胞のみに特異的に発現する新規受容体を同定し、その受
容体を介したNH細胞の機能を解明する。