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b - 近畿大学医学部

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公衆衛生学コース38
リスク
その表現と評価
近畿大学医学部公衆衛生学
藤田 裕規
本講義の目標
 GIO
一般教育目標
 リスク要因の作用の強さや大きさを評価するために、各
種リスク指標の意味、計算方法、評価の仕方を習得する
 SBO
特異的行動目標
 相対危険度と寄与危険度を計算し、それぞれの意味を説明
できる
 オッズ比を計算し、その意味を説明できる
 寄与危険割合と人口寄与危険割合を説明できる
 治療の有効性指標であるRR、RRR、ARR、NNTの意味
を説明できる
J. Snowの研究をどう読むか
コレラ発病
発病せず
合計
罹患率
井戸水飲用
80
57
137
58%
井戸水非飲用
20
279
299
7%
コホート研究
①問題の井戸水を飲用した人の罹患率は58%、飲用し
なかった人の罹患率は7%である。
②問題の井戸水を飲用した人の罹患率は、飲用しな
かった人の罹患率よりも高い。
③問題の井戸水を飲用した人の罹患率は、飲用しな
かった人の罹患率の8.3倍である。
④問題の井戸水を飲用した人の罹患者数は、飲用しな
かった人の罹患者数よりも100人当たり51人多い。
③を相対危険度、④を寄与危険度という。
コホート研究って?
1. 危険因子への曝露状況の把握
2. 疾病発生状況の把握
疾病発生群
要因(曝露)群
疾病非発生群
疾病発生群
対照(非曝露)群
疾病非発生群
時間の流れ
相対危険度relative risk (RR)
2つの集団間の疾病頻度の比
要因群
対照群
疾病
あり
なし
A
B
C
要因群
罹患率 Ie
(A/A+B)
D
罹患率
計
A+B
A/(A+B)
C+D
C/(C+D)
対照群
罹患率 Ic
(C/C+D)
何倍、罹り
やすいか
=RR
問題の疾患発生における要因の作用の強さ
寄与危険度attributable risk (AR)
2つの集団間の疾病頻度の差
疾病
あり
なし
要因群
対照群
曝露あり
罹患率 Ie
(A/A+B)
A
C
B
D
罹患率
計
A+B
C+D
A/(A+B)
C/(C+D)
曝露なし
罹患率 Ic
(C/C+D)
どれほど
増えるか
=AR
問題の疾患発生において要因がもたらす
影響の大きさ
寄与危険度の理解
要因の影響によ
らない罹患率
要因群の
疾病頻度
背景リス
ク(Y)
対照群の
疾病頻度
背景リス
ク(Y)
要因の影響に
よる罹患率
要因による罹患(X)
非曝露群でもこの程度
は疾病が発生する
寄与危険度=要因群の罹患率-対照群の罹患率
(Y+X)-Y=X
RRとARを用いた疫学研究の実例
 1951年に英国の男性臨床医34,440人の喫煙習慣
を調査し、その後20年間、肺癌と冠動脈疾患による
死亡の発生を追跡。喫煙群と非喫煙群に分けて集計
RRとARを用いた疫学研究の実例
喫煙の肺癌に対するRRは
14.0
冠動脈疾患に対するRRは
1.6
作用は肺癌で強い
喫煙の肺癌に対するARは
105人当たり130人 影響は冠動
冠動脈疾患に対するARは
同
256人 脈疾患で大
疾患によってRRとARの大きさが
逆転するのはなぜか。
RRとARの大きさが逆転する理由
AR = Ie-Ic
RR=Ie/Ic
∴ Ie=RR×Ic
これを代入すると、
AR = RR × Ic - Ic
= (RR-1) × Ic
ARはIcに比例する。
したがって、Icが大きい疾患では大きくなる。
非喫煙者での死亡率は、10万人当たり
肺癌
10
冠動脈疾患 413
相対危険度と寄与危険度の必要性
 RR 要因の作用の強さ
 AR 要因がもたらす影響の大きさ
RRが大きくてもARは大きいとは限らない。
両方計算することによってリスク要因の影響を包
括的に評価することができる。
ここまでは、コホート研究の話
11
相対危険度の解釈
 相対危険度=1 要因と疾病の間に関連なし
 相対危険度>1 要因は疾病のリスクを上げる
(その要因はリスク要因である)
 相対危険度<1 要因は疾病のリスクを下げる
(その要因は予防要因である)
症例対照研究でのリスク評価
症例群
対照群
要因あり
a
b
要因なし
c
d
曝露率
a
a+c
b
b+d
症例対照研究
では要因有無
別の罹患率がで
ないので、RRは
計算できない。
×
Pp / Pc = RR ?
コホート研究のように疾病発生頻度は観察できない。
症例対照研究でのリスク評価
症例対照研究ではオッズ比(Odds ratio)によりリス
ク評価をする
 オッズ
odds
 ある事象の出現率 p の出現しない率に対する比
p
1-p
 オッズ比
odds ratio (OR)
 2つの出現率 p1, p2 のオッズの比
p1
1-p1
p2
1-p2
症例対照研究でのオッズ比
症例群
対照群
要因あり
a
b
要因なし
c
d
曝露率
a
a+c
b
b+d
Pp
Pc
15
OR=
Pp
1-Pp
Pc
1-Pc
症例対照研究でのオッズ比
OR=
=
Pp
1-Pp
Pc
1-Pc
a/(a+c)
c/(a+c)
b/(b+d)
d(b+d)
=
ad
bc
症例群
対照群
要因あり
a
b
要因なし
c
d
曝露率
a
a+c
b
b+d
症例対照研究
におけるORの
意味は何か?
母集団に戻って考える
母集団に戻って考える
母集団
患者
全体
要因
あり
要因
なし
A
C
1/lp
D
標本
症例群
対照群
要因あり
a
b
要因なし
c
d
非患者全体
B
1/lc
母集団に戻って考える
発生率が
低い時
母集団
疾患あり 疾患なし
要因曝露あり
2000
発生率
98000
要因曝露なし 10000 990000
標本集団
1/100 1/1000
症例群は母集団の全
2%
患者からの無作為抽
1% 出標本であると考え
る。
症例群
対照群
1/100抽出 1/1000抽出
要因曝露あり
2000
98000
要因曝露なし
10000
990000
対照群も母集団の全
非患者からの無作為
抽出標本であると考
える。
母集団に戻って考える
1/lp
母集団
患者
全体
要因
あり
要因
なし
A
C
A<<B → A+B≒B
C<<D → C+D≒D
D
A
A+B
RR= C ≒
C+D
20
標本
症例群
対照群
要因あり
a
b
要因なし
c
d
非患者全体
B
1/lc
a=A×1/lp
A=lpa
B=lcb
C=lpc
D=lcd
A
B
AD
=
C
BC
D
母集団におけるRRは
A=lpa B=lcb
C=lpc D=lcd
AD = lpa lcd
RR≒
lcb lpc
BC
ad
= OR
=
bc
症例対照研究でのORはRRの近似値
条件
①疾患の発生率が十分に低い。
②aとc、bとdが同じ抽出率で抽出。
=標本が母集団と同じ要因曝露
状況を保っている。
疾患が希な時、希でない時
疾患の頻度が希な時
要因曝露ありで、2%
要因曝露なしで、1%
母集団
発生率が低い時
疾患有り
要因曝露あり
2000
要因曝露なし
10000
RR=
疾患の頻度が希でない時
要因曝露ありで、50%
要因曝露なしで、25%
2% vs 1%
疾患無し
98000
990000
母集団
発生率が高い時
疾患有り
要因曝露あり
50000
要因曝露なし
250000
2000/100000
= 2.00
10000/1000000
RR=
標本集団
50% vs 25%
疾患無し
50000
750000
20000/10000
= 2.00
100000/1000000
標本集団
症例群 1/100抽
対照群
出
1/1000抽出
要因曝露あり
20
98
990
要因曝露なし
100
○
OR=
20×990
100×98
要因曝露あり
要因曝露なし
×
= 2.02
OR=
22
症例群 1/100抽
対照群
出
1/1000抽出
500
50
750
2500
500×750
2500×50
= 3.00
母集団の曝露状況が保たれている
時、保たれていない時
保たれている時
要因曝露ありから
要因曝露なしから
保たれていない時
要因曝露ありから
要因曝露なしから
症例群で
1/100
1/100
症例群で
1/50
1/100
母集団
要因曝露あり
要因曝露なし
RR=
疾患有り
2000
10000
疾患無し
98000
990000
標本抽出時に偏りがおこり、
曝露のありなしで抽出率が
異なってしまった場合
2000/100000
= 2.00
10000/1000000
症例群の曝露ありで1/50
標本集団
症例群の曝露なしで1/100
症例群1/50と
対照群
1/100抽出
1/1000抽出
要因曝露あり
40
98
990
要因曝露なし
100
標本集団
症例群 1/100抽
対照群
出
1/1000抽出
要因曝露あり
20
98
990
要因曝露なし
100
○
OR=
20×990
100×98
= 2.02
×
OR=
23
40×990
100×98
= 4.04
症例対照研究で寄与危険度は計算
できるか
1/lc
1/lp
標本
母集団
患者
全体
要因
あり
要因
なし
A
C
AR=
非患者全体
症例群
対照群
a
b
要因あり
B
lp=lc、あるいは、lpとlcが分からない
c
d
要因なし
とARは計算できない。
A<<B → A+B≒B
通常、lp≠lc ( lpa=A×1/lp
<< lc )
C<<D → C+D≒D
A=lpa
B=lcb
lpとlcはほとんどの疫学研究で不明。
C=lpc
D
D=lcd
C
C lpa lpc
A
A
-
-
≒ - =
D lcb lcd
A+B C+D B
24
寄与危険度の拡張
寄与危険割合 Attributable risk proportion
(ARP)
要因群の疾病頻度
対照群の疾病頻度
背景リスク
要因による罹患
背景リスク
要因(曝露)群の疾病発生頻度のうちで、真に曝露
によって増加した部分の占める割合
疾病
罹患率
要因群
あり
A
なし
B
計
A+B
A/(A+B)=Ie
対照群
C
D
C+D
C/(C+D)=Ic
Ie
Ie-Ic
ARP=
=
Ie
Ic
−
Ic
Ic
Ie
Ic
=
−1



= RR
寄与危険割合の計算
要因群の疾病頻度
背景リスク
要因による罹患
対照群の疾病頻度 背景リスク
問1
40歳代男性を対象とした研究で虚血性心疾患死亡率を観察し
た。喫煙群では20.3、非喫煙群では11.6(いずれも10万人
年対)であった。
喫煙群の虚血性心
(20.3-11.6)/20.3=0.43
疾患の43%は喫煙
または、
−1
1.75−1
20.3
によるものである。
RR=
= 1.75
=
= 0.43
11.6

1.75
問2
喫煙の胃癌死亡に対するRRが2である時、喫煙者の胃
癌死亡100人の内、何人が喫煙による死亡か。
−1

=
2−1
2
= 0.5
100人の内、50%、50人
が喫煙による超過死亡。
寄与危険度の拡張
人口寄与危険割合 Population ARP
(PARP)
一般集団(全人口)の疾病発生頻度のうちで、
真に曝露によって増加した部分の占める割合
曝露集団での
背景リスクに
よる罹患者数
曝露集団での
罹患者数
−
PARP=
+(1−)
曝露集団での
罹患者数
非曝露集団で
の罹患者数
−
=
+(1−)
分子分母をNで割る
曝露群の疾病頻度
背景リスク
要因による罹患
非曝露群の疾病頻度
背景リスク
実際の人間集団は曝露群と
非曝露群が混じっている
/−
=
/+(1−)
分子分母をIcで割る
対象集団の人数 N
要因曝露率 f
要因群罹患率 Ie
対照群罹患率 Ic
−
(−1)
=
=
+(1−) (−1)+1
Ie/Ic=RR
人口寄与危険割合 の計算
 喫煙率が50%で、喫煙の胃癌死亡に対するRR
が2である時、対象集団全体の胃癌死亡100人
の内、何人が喫煙による死亡か。
( − 1)
0.5(2-1)
=
= 0.33
0.5(2-1)+1
( − 1) + 1
• 全胃癌死亡の1/3が喫煙による超過死亡。
• 喫煙がなくなれば、胃癌死亡の1/3を減らせる。
28
臨床医学でのリスク評価指標
 ある疾患に対する薬剤の効果を証明するため
のRCTで、試験薬群の再発率が患者1000人
対12人、対照群同20人だった。
 この試験結果から試験薬の効果をどのように
表現するか。




Relative risk
Relative risk reduction
Absolute risk reduction
Number needed to treat
29
相対リスク
相対リスク減少
絶対リスク減少
治療必要数
ランダム化比較試験の結果
再発
あり なし
試験薬群
a
b
再発率
a
= Ia
a+b
Ia< Ipで効果あり
対照群
(偽薬群)
30
c
d
c
c+d
= Ip
効果の定量的評価のための指標
Relative risk (RR)
相対リスク
治療によって再発
が対照群の何% に
なるか
RR=Ia/Ip×100
再発の可能性が治療群
では対照群の60%になる
31
Ip=0.02, Ia=0.012
0.02
再
発
確
率
RR
効果の定量的評価のための指標
RR Reduction (RRR)
相対リスク減少
治療によって再発の
リスクが対照群から
何%低下 するか
RRR=100-RR
再発の可能性が治療
群では対照群から40%
低下する
32
Ip=0.02, Ia=0.012
0.02
再
発
確
率
RRR
効果の定量的評価のための指標
治療によって再発確率
がどれほど低下 するか
Absolute RR (ARR)
絶対リスク減少
Ip=0.02, Ia=0.012
0.02
ARR=Ip-Ia
再
発
確
率
再発の確率が治療群では
0.008低下する
33
ARR
効果の定量的評価のための指標
Number Needed to Treat (NNT)
治療必要数
何人にその治療をすると
1人の再発を防げるか
Ip=0.02, Ia=0.012
NNT=1/ARR
=1/0.008
=125
125人を治療することで
1人の再発を防げる
34
0.02
再
発
確
率
ARR
骨吸収抑制剤で乳癌転移が減る?
Clodronateは
bisphosphonate
の1種で、骨吸
収抑制剤。
(Diel IJ et al. NEJM 1998)
35
骨吸収抑制剤で乳癌転移が減る?
ARR
15.6%
9.6%
10.3%
11.4%
(Diel IJ et al. NEJM 1998)
36
まとめ
 相対危険度は要因の作用の強さを表す。
 寄与危険度は要因の影響の大きさを表す。
 オッズ比は症例対照研究で相対危険度の近似値
となる。
 症例対照研究では寄与危険度は計算できない。
 臨床医学でのリスク評価指標としては、RR、
RRR、ARR、NNTがある。
形成評価試験
1. 寄与危険度は対照群の発生率から要因暴露群の発生率を差し引いて得
られる。
2. ある要因がある疾患のリスクを上げる時、その要因の相対危険度は1
より小さくなる。
3. 減塩で高血圧発症率が5%減少するとき、減塩の高血圧発症についての
相対危険度は0.95となる。
4. 症例対照研究では相対危険度を直接計算できる。
5. オッズは、ある出来事が発生する確率を、発生しない確率で除したも
のである。
6. オッズ比は常に相対危険度の近似値となる。
7. 人口寄与危険割合は、母集団における罹患者中、その要因が原因に
なって発症した者の割合である。
8. ある疾患の再発防止における新薬のRRRが20%の時、再発は新薬に
よって対照群の80%となる。
9. NNTは、絶対リスク減少の逆数である。
10. NNTの値が大きいほど、治療の効果が小さい。
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