荷重振動による成形荷重低減とボンデフリー化

荷重振動鍛造による
成形荷重低減とボンデフリー化
板鍛造における問題点
板鍛造
切削
板の圧縮
豊橋技術科学大学 前野 智美
バルク材
板材
切削
プレス加工
荷重大
板鍛造
摩擦大
機能部品→精度
だれ
つぶし
焼入れ
焼入れ
生産性:高
コスト:低
平面度
サーボプレスを用いた荷重振動鍛造
荷重振動鍛造による
成形荷重低減とボンデフリー化
プレス機+工具の
弾性変形以内→荷重の一部を除荷
弾性変形以上→完全除荷
• ステンレス鋼部品の段差付け加工
• 荷重振動によるボンデフリー化
スライド位置
• 荷重振動鍛造による成形荷重低減
振動
ACサーボプレス
クランク
時間
振動ありとなしにおいてアルミニウム合金板を70%圧
縮したときの荷重‐ストローク曲線
アルミニウム合金板の荷重振動すえ込み
素材
A5052-H34
⌀10mm
300
250
振動なし
圧縮荷重 F [kN]
2.0mm
200
150
100
圧縮工具
振動モーション
平均除荷率70∼80%,除荷回数6回
振動あり
50
0
完全に
除荷していない
0.5
1
1.5
ストローク s [mm]
2
サーボプレスによる最大荷重と 最終圧縮率の関係
荷重振動すえ込み加工実験に用いた工具および荷
重ストローク曲線
350
荷重 F
300
最大荷重 Ff [kN]
Ff
変位計
荷重振動なし
Fn
荷重 F
40%低減
250
35
200
150
荷重振動あり
素材
35
100
s
0
0
62
64
66
68
70
72
最終圧縮率 r [%]
74
76
78
F2
×Fi
F1
圧縮工具
50
Fi
ストローク s
圧縮試験機
有限要素シミュレーションによる変形挙動
各種の条件における最終荷重と圧縮率の関係
250
200
最終荷重 Ff /kN
振動なし
150
振動=50%, n=4
100
振動=75%, n=4
50
0
50
55
60
65
最終圧縮率 rf /%
70
腐食実験による隙間発生の検証
腐食液注入
3%NaOH
荷重振動による自動再潤滑のメカニズム
金型:弾性変形
(a)
素材
(a) 負荷,腐食液注入
凹形状
面圧
素材:塑性変形
凸形状
金型
潤滑剤
(b) 除荷,10分放置
(b)
腐食部
負荷時
除荷時
5mm
 =0%
75%
90%
金型:弾性回復
すきま
潤滑剤
=75%除荷 浸入
SUS 430素板の荷重振動ありなしにおける平均接触
面圧と圧縮率の関係
平均接触面圧 [GPa]
5.0
振動あり
SKD11 振動なし
振動あり
超硬
振動なし
4.0
3.0
2.0
78% 85%
超硬限界
• 荷重振動鍛造による成形荷重低減
超硬
57% 72%
SKD11限界
工具鋼
ハイス
20
40
60
圧縮率 r [%]
80
• 荷重振動によるボンデフリー化
100
潤滑剤浸漬を用いたステンレス部品の段差付け加工
⌀10
粘土
3
• ステンレス鋼部品の段差付け加工
1.0
0
素材
⌀14
潤滑剤
ダイス
超硬
2 mm
パンチ
粘土
浸漬,振動あり
圧縮板
SKD11
塗布,振動あり
塗布,振動なし
段差付け加工における底部ひけ深さとフランジ圧縮
率の関係
板鍛造における荷重振動のまとめ
荷重振動鍛造
0.5
h1
0.4
0.3
r = 62%における段差付け加工後の断面
圧縮率 r = 素材厚さ−フランジ厚さ
素材厚さ
試験片:ステンレス合金 SUS430
潤滑剤:水溶性プレス油
荷重振動回数:n = 9回
除荷率 :α = 90%
底部ひけ深さ h1 [mm]
荷重振動鍛造による
成形荷重低減とボンデフリー化
振動なし
浸漬
塗布
• 自動的に素材を再潤滑
• 金型の弾性回復時に素材との間に生じた隙
間に潤滑剤が浸入
0.2
0.1
0
振動あり
浸漬
塗布
25
50
75
フランジ圧縮率 r [%] 55% 62%
成形荷重大低減
板の圧縮 荷重1/2
• 金型破損防止
• 型材質低グレード化
• プレス機小容量化
寸法精度向上 表面性状向上
• 焼付き防止
• 平面度
• 粗さ
• だれ
• へこみ
スプライン成形における低サイクル振動によるボンデ
フリー化
荷重振動鍛造による
成形荷重低減とボンデフリー化
リン酸塩被膜処理+石鹸処理
• ステンレス鋼部品の段差付け加工
パンチ
’
ダイ ビレット
後方押出し
パンチ
• 荷重振動によるボンデフリー化
水洗
酸洗
水洗
水洗
化成
中和
石鹸皮膜
成形方法で向上
液体潤滑剤
焼付き
耐焼付き性:高
環境負荷:大
多工程:20分以上
乾燥
高コスト
耐焼付き性:低
表面密着性低い
環境負荷:小
塗るだけ
低コスト
スライド位置
• 荷重振動鍛造による成形荷重低減
脱脂
振動
時間
振動による自動再潤滑
振動後方押出しによる自動再潤滑方法
パンチ
弾性変形
スライド位置
(3)
(1)
パンチ
弾性
回復
A’
Die
(1) パンチ下降
(2) 除荷
A
時間
負圧
隙間
ビレット
再潤滑
(3) パンチ上昇
12.7
5
1.35
Billet
弾性回
復
Sec A-A’
(2)
荷重振動
潤滑剤
0.5
隙間
ダイス
ビレット:
20.5 ×15mm
21
材質
3.4
パンチ
潤滑剤
浸入
ビレット
3
振動後方押出しによるスプライン成形に用いた工具
13
硬さ [Hv]
レーザー
変位計
スライド
ロードセル
表面粗さ [μmRa]
ビレット S10C,焼鈍し
103
パンチ SKH51,焼入れ・焼戻し
856
パンチランド : 0.04
ダイス SK3,焼入れ・焼戻し
675
内壁: 0.51
パンチ
ダイス
硫黄添加油性潤滑剤
潤滑剤
低粘度: ν = 132 mm2/s, 高粘度: ν = 556 mm2/s
下死点からのスライド高さ [mm]
振動後方押出しに用いたスライドモーション形式
n =19, t = 0.0s
n=19, t =0.5s
ビレット接触
12
0.3 mm
8
6
2
0
スライド
1.2mm
t
10
4
有限要素シミュレーションによるパンチ上昇時にビ
レットとパンチの間に生じる隙間
振動なし
2
4
モーション
振動なし
振動あり
振動あり,保持あり
6
8 10
時間 [s]
12
14
振動回数 n 上昇量[mm]
0
–
4 ,19
1.2
4, 9, 19
1.2
16
18
保持時間 t [s]
–
–
0.2, 0.5, 1.0
速度[mm/s]
23
12.5
12.5
振動後方押出しによるスプライン成形
振動後方押出しにおける押出し荷重―ストローク曲
線 (低粘度)
250
n =19, t = 0.0 s
振動なし
押出し荷重 [kN]
200
150
100
50
0
振動後方押出しによって成形されたスプライン容器
(低粘度)
n = 19, t = 0.5 s
2
4
6
8
ストローク s [mm]
10
12
保持なし,振動ありとなしにおけるパンチドおよびスプ
ライン容器表面
振動なし
低粘度
n = 19, t = 0 s
高粘度
振動なし
n = 19, t = 0 s
パンチ
スプライン容器
割れ
われ
(a) 振動なし
(b) n = 19, t = 0.0s (c) n = 19, t =0.5s
1mm
保持時間がパンチおよびスプライン容器表面に及ぼ
す影響 (n=19,低粘度)
t = 0.5 s
t = 1.0 s
スプライン容器
0.6
0.6
表面粗さ [µmRa]
パンチ
t = 0.2 s
保持時間がパンチおよびスプライン容器表面粗さに
及ぼす影響 (n = 19)
0.5
0.5
高粘度
0.4
スプライン容器
パンチ
0.3
0.3
0.2
0.2
低粘度
0.1
0
オイルピット
0.4
パンチ初期表面粗さ
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
保持時間 [s]
0.1
0
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
保持時間 [s]
振動回数および保持時間が焼付きに及ぼす影響(低
粘度)
1.2
成形時間:6.5 s
上昇量1.2 , 2.4mmで成形されたスプライン容器表面
(n = 4)
23.9 s
14.2 s
1.0
1.0
焼付きなし
0.8
上昇量 [mm]
1.2
保持時間 t [s]
保持時間 t [s]
0.5
0
15.9 s
0.6
0.4
焼付きあり
2.4
0.2
パンチ
5
0
10
振動回数 n [-]
15
20
1mm
上昇量2.4mmにおいて生じた潤滑剤の噴出
上昇量1.2 , 2.4mmにおいて振動回数と保持時間が
パンチとスプライン容器の焼付きに及ぼす影響
1.2
成形時間:4.7 s 14.2 s
23.9 s
保持時間 t [s]
1.0
0.8
4.1 s
15.9 s
0.6
0.4
2.5 s
0.2
2.0 s
0
5
10
振動回数 n [-]
15
(a) u = 1.2 mm
20 0
5
振動回数 n [-]
(b) u = 2.4 mm
振動押出しにおける振動周期および上昇量
上昇量1.2 , 2.4mmで成形されたスプライン容器オイ
ルピット深さ(n = 4)
オイルピット; 10μm
20[μm]
上昇量
負圧; 小
保持必要
負圧;大
保持不用
潤滑供給:小
オイルピット:浅
潤滑供給:大
オイルピット:深
10
0
-10
-20
(a) u = 1.2mm, t = 0.5s
オイルピット; ≈15~20μm
≈15~20μm
(a) 上昇量; 小
(b)上昇量; 大
-30
上昇量; 供給量を制御
保持;小さい負圧で十分な供給
(b) u = 2.4mm, t = 0s
(c) u = 2.4mm t = 0.5s
ボンデ処理と振動後方押出し成形されたスプライン
容器
スプライン成形における低サイクル振動によるボンデ
フリー化まとめ
• 油性潤滑剤においても振動後方押出しによって焼付きなし
にスプラインが成形できた.
• パンチ上昇時のスライドを停止保持によって十分な再潤滑
が得られ,振動回数を低減できる.
• 振動後方押出しでは高すぎない粘度の潤滑剤がのぞましい
• 過度な潤滑剤はオイルピットを深くするだけでなく,潤滑
剤の噴出を引起こし成形品の損傷を招く
振動あり,液状潤滑剤
振動なし,ボンデ
潤滑剤アプローチ
成形工程アプローチ
初期に付与する潤
滑剤の性能維持
成形途中で性能を
回復