ITU-R SG5関係会合の結果について - ITU-AJ

会合報告
ITU-R SG5関係会合の結果について
たかはし
総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 システム開発係長
たけした
総務省 総合通信基盤局 電波部 衛星移動通信課 国際係長
はる こ
竹下 晴子
しら い
総務省 総合通信基盤局 電波部 基幹通信課 国際係長
かず や
高橋 和也
きよかね
白井 清兼
文書が出力されている。
1.はじめに
国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)のSG5(地上
(2)主要議題及び主な結果
業務研究委員会)及びSG5関係会合が、2013年11月18日か
①2015年世界無線通信会議(WRC-15)議題1.4(5250-
ら同年12月3日にかけて、スイス国ジュネーブ市のITU本部
5450kHz帯におけるアマチュア業務への二次分配)の検
で開催されたので、その概要を報告する。
討
SG5は、陸上・航空・海上の各移動業務、固定業務、無
WRC-15の議題1.4として、5MHz帯におけるアマチュ
線測位業務、アマチュア業務及びアマチュア衛星業務を所掌
ア業務への二次分配を検討する議題が設定され、本議
しており、我が国の橋本明氏(NTTドコモ)が議長を務めて
題に関してはWP5Aが責任グループとなり検討を進める
いる。SG5の傘下には、表1に示すとおり四つのWP(作業部
こととされている。
会)が設置されており、今回はWP5Dを除く三つのWP会合
今会合では、アマチュア局と固定・移動業務の局と
の両立性及び共用に関する報告草案M.[5MHz COM-
が開催された。
IMTを所掌するWP5D会合については、直近では2013年
PAT]に向けた作業文書の本文を改訂し、各国の検討結
10月9日から16日にかけて第17回会合が開催されており、そ
果を記載し、次回以降に検討を継続することとなった。
の結果については本誌の2014年1月号に掲載されているとこ
ろであるため、本報告においては割愛させていただく。
②WRC-15議題1.3(ブロードバンドPPDR(公共保安及び
以下では、WP5D以外のWP会合ごとの主要議題と主な結
災害救援)の導入)の検討
WRC-15の議題1.3として、ブロードバンドPPDRの導
果について報告する。
入を検討する議題が設定され、本議題に関してはWP5A
が責任グループとなり検討を進めることとされている。
2.WP5A第12回会合
今会合では、新報告草案M.[PPDR]に向けた作業文
(1)WP5Aの所掌及び会合の概要
書及びPPDRに関する無線インターフェースに関する勧
WP5Aでは、陸上移動業務(IMTを除く)
、アマチュア業
告M.2009の改訂に向けた作業文書が更新されたほか、
務、アマチュア衛星業務及びFWA等一部の固定業務に関す
CPMテキストについても次回会合での完成を目指して
る技術的検討を実施している。今回の会合には、43か国、
作業が進められた。報告の作成に向けては、コレスポン
約196名が出席し、我が国からは21名が参加した。また、本
デンスグループが設置され、次回会合に向けて議論を継
会合では、114件の入力文書について検討が行われ、47件の
続することとなった。
表1.SG5の構成
組織名
所 掌
議長
SG5
地上業務
Mr. A. Hashimoto(日本)
WP5A
陸上移動業務(IMTを除く)、アマチュア業務、アマチュア衛星業務
Mr. J. Costa(カナダ)
WP5B
無線測位業務、航空移動業務、海上移動業務
Mr. J. Mettrop(英国)
WP5C
固定業務
Mr. C. Glass(米国)
WP5D
IMT
Mr. S. Blust(AT&T)
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ITUジャーナル Vol. 44 No. 3(2014, 3)
③ブロードバンドモバイルシステムの運用ガイドラインに
関する検討
⑥「航空機を利用した公衆移動通信システム」に関する
新報告案の検討
今会合において、従来より高い周波数帯域(∼6GHz)
WP5Aでは、
「航空機を利用した公衆移動通信システ
におけるブロードバンドモバイルシステムについて、小
ム」をまとめたITU-R新報告案M.[LMS.ATG](air to
カバレッジにより効果的に展開するための運用ガイドラ
ground)の検討が行われている。本報告案は、機上で
インについて検討することを我が国より提案し、今後当
インターネット等のサービスを提供するための航空機と
該内容についての検討を進めていくことが合意された。
地上間の直接通信を行うシステム事例をまとめたもので
具体的な検討内容について明確化が進められるとともに
ある。これまで欧州(第1地域)
、米国・カナダ(第2地
作業文書が作成され、次回以降、使用事例や運用ガイ
域)
、中国(第3地域)における開発例が提案されてい
ドラインについての検討が進められる予定である。
たが、今会合において、我が国で研究開発を行い、航
空機と地上間の直接通信システムとして実用化検討を
④WRC-15議題1.18(77.5-78.0GHzにおける無線標定業
務への一次分配)に向けた検討
79GHz帯高分解能自動車用レーダーでの使用が想定
行っているミリ波(40GHz帯)を用いた高速大容量通
信システムの開発例について、第3地域の項に追記する
提案を我が国から行った。また、フランスからも欧州で
される77-81GHzのうち、無線標定業務への分配がない
の検討状況に関する修正提案が入力された。審議では、
77.5-78.0GHzについて、当該業務への一次分配の検討
我が国からの提案について、他の地域のシステムと異な
がWRC-15の議題1.18として設定され、ITSを所掌する
る周波数帯のシステムであるため興味深いとのコメント
WP5Aとレーダー(無線標定業務)を所掌するWP5Bと
があった。
で技術的な検討を進めるとされているところである。
今回のWP5A会合では、ITSアプリケーションのため
の77-81GHz帯自動車用レーダーのシステム特性に関す
審議の結果、我が国からの提案は受け入れられ、微
細なエディトリアルな修正を加えられた上で新報告案が
SG5会合に上程され、承認された。
る新勧告案について、日本、ドイツ及びフランスからの
提案に基づき一部修正を行った上で、SG5へ上程され、
承認された。また、今回のWP5B会合では、我が国を含
む各国からの提案を基に、当該周波数帯における無線
3.WP5B第12回会合
(1)WP5Bの所掌及び会合の概要
標定業務と他業務との共用検討に関する新報告草案
WP5Bは、無線測位業務、航空移動業務及び海上移動業
M.[AUTOMOTIVERADARS]の作業文書及びCPMテ
務に関する技術的検討を実施している。今回の会合には、
キスト案の作成が進められた。
43か国から約245名が出席し、我が国からは13名が参加した。
また、本会合では、176件の入力文書について検討が行われ、
⑤ITSにおける車車間通信・路車間通信システムに関する
92件の文書が出力された。
新勧告の検討
ITSについては、これまで、日本、韓国、欧州の高度
ITSに係る取組状況をまとめた報告M.2228が発行され
(2)主要議題及び主な結果
①海洋レーダーに関する検討
ている。前回会合において、我が国から新たに車車間通
前回会合(2013年5月)以降、
「3-50MHz帯における
信・路車間通信に関する新勧告草案M.[V2X]の骨子を
海洋レーダーの周波数使用のためのガイドライン」をま
提案し、作業が開始されたところである。今会合では、
とめたITU-R新報告草案へ向けた作業文書が検討され
各国の車車間通信・路車間通信に関する規格の検討が
ている。今会合においては、我が国から、緊急時(津波
進められ、我が国の提案に基づき、ARIBスタンダード
観測時等)の運用方法や我が国が採用しているDBF
が暫定新勧告草案に記載されるとともに、韓国及び
(Digital Beam Forming)レーダーの技術特性の追加や
ETSIの規格についても記載された。
DF(Direction Finding)レーダーとDBFレーダーが時
分割運用で共存する例等の追加を提案した。また、米
国やスペイン、フランスからも本作業文書の修正提案が
ITUジャーナル Vol. 44 No. 3(2014, 3)
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会合報告
入力された。今会合では、我が国が中心となってドラフ
終盤において、WG議長から公開のラポーターグループ
ティング作業を進め、全入力文書を反映した作業文書
(RG)の設置が提案された。しかし、イランがRGは閉鎖
を作成した。本作業文書は、2014年11月のWP5B会合
的な審議になるおそれがあるとして強く反対し、RGは
での作業完了を目標として引き続き検討が進められる。
設定されず、次回会合1回で本議題のCPMテキスト案
なお、今回の外国寄与文書の中で特筆すべき事項と
をまとめることとなった。
して、前々会合において各国が反対した海洋レーダーの
運用調整機関(各国の周波数割当てを含む)の設置が
米国から再度提案されたことが挙げられる。しかしなが
ら、周波数割当ては各国主管庁に委ねられているため、
する検討
議題1.17は、航空機内無線通信(WAIC)システム
今会合においても、我が国やフランス、ドイツが強く反
を支援するための航空業務追加分配を含む規制措置を
対し、本機関は作業文書から削除された。
検討するものである。今回会合では、ドイツ等の提案に
この「運用調整機関」については、前回会合の報告
基づき、これまで検討されてきた候補帯域(2700-
(本誌2013年9月号)の中でも述べたように、ITUの無線
2900MHz帯、4200-4400MHz帯及び5350-5460MHz帯)
通信局(BR)が強い関心を示し、前回会合の終盤で
が4200-4400MHz帯に絞られた。加えて、米国提案に基
は、BRから海洋レーダーに関するデータベースの構築が
づき、4200-4400MHz帯の周波数量を補うため、22.5-
提案された。今回会合では、我が国やスペインの寄与文
22.55GHz帯及び23.55-23.6GHz帯を追加で検討するこ
書を基に本データベースについて審議した結果、海洋レ
ととなった。
ーダーの運用調整を行う際の参考情報として、データベ
なお、4200-4400MHz帯をWAIC及び電波高度計専
ースを活用できることは有益であるとの共通認識が形成
用とするため、CPMテキスト案の審議において、ドイツ
され、海洋レーダーの中心周波数や等価等方輻射電力、
が無線通信規則(RR)脚注5.438により追加分配(た
設置場所等の情報をまとめたデータベースを構築するこ
だし二次分配)されている地球探査衛星業務及び宇宙
とが合意され、その直後のSG5において、データベース
研究業務を削除するMethod(議題解決案)を提案し
の全項目が合意された。なお、本項目は、今後、各主
たが、我が国の反対により、両業務の二次分配削除に
管庁に照会される予定である。
関するMethodは記載しないこととなった。
②WRC-15議題1.5(無人航空機)に関する検討
議題1.5は、無人航空機システム(UAS)の制御及び
非ペイロード通信のために固定衛星業務(FSS)に分配
④WRC-15議題1.15(船上通信の周波数の追加)に関す
る検討
議題1.15は海上移動業務に既に分配されているUHF
された周波数帯を使用することを検討するものである。
帯において、船上通信局の追加周波数を検討する議題
今会合でも米国やドイツ等からの寄与文書に基づき、
である。今会合では、前回に引き続き、RR脚注5.287で
UASの定義やUAS地球局と既存FSSとの共用検討結果
追加分配されているチャネル間隔12.5kHzの周波数全4
等をまとめた新報告草案M.[UAS-FSS]へ向けた作業文
波(通常はチャネル間隔25kHzの6波のみ)をある条件
書が審議された。これまでイランの強い反対により本議
下における追加周波数ではなく常用周波数とすること
題の検討が停滞していたが、今会合でもそれは変わら
(ドイツ及びオランダ提案)が審議された。加えて、
ず、会合後半から参加してきたイランが同国の寄与文
25kHzのチャネル間隔の使用期限(ロシア提案)及び
書(ただし、WP5Bの寄与文書の締切日を過ぎてITUに
6.25kHzチャネル間隔のデジタル変調方式の導入(ベト
入力されていた)が適切に審議に反映されていないこと
ナム提案)が審議された。
を一方的に批判し、作業文書の内容全てが括弧書きと
我が国は12.5kHz間隔チャネルの使用は支持するが
なった。また、CPMテキスト案についても会合前半に審
25kHz間隔のチャネルの継続使用も主張し、豪州は既
議が行われたものの、同様の理由で内容全てが括弧書
に同国内で両チャネル間隔の周波数が共存していること
きとなった。
を報告した。審議の結果、25kHzのチャネル間隔の周波
なお、本議題の検討が遅々として進まないため、会合
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③WRC-15議題1.17(航空機内無線通信システム)に関
ITUジャーナル Vol. 44 No. 3(2014, 3)
数の使用期限は次回へ審議が継続されることとなった。
デジタル変調方式については、我が国やオランダ、ノ
ルウェーがデジタル変調方式の問題点を指摘した一方、
フランス及びドイツがデジタル方式の導入の検討を支持
上げすることが承認され、各国からの更なる寄与が期待
されていたところ。
今会合では、CGからの報告に加え、米国、カナダ、
した。本件についても継続審議となり、ベトナムはアナ
ポーランドテレコムから入力された寄書や会合中に提案
ログ方式とデジタル方式の共用に関する寄与文書を次
されたETSI文書内容等をマージした暫定新報告案を作
回会合へ入力することが議長から要請された。
成した。各国から積極的な入力があり今回会合での変
更部分が増えたこと、及び、現在未記載のSpectrum
⑤WRC-15議題1.16(海上通信の高度化)に関する検討
requirementsの章は重要であるので次回会合以降に追
議題1.16は船舶自動識別装置(AIS)技術の高度利
記すべきであるとの米国、英国等の意見を踏まえ、審議
用及び高度海上無線通信のための規則条項及び周波数
を継続して2014年後半会合までの完成・成立を目指す
分配を検討するものであり、VHFデータ通信システム
こととした。また、WP5Aへのリエゾン文書の送付及び
(VDES)用のチャネル配置等を中心に検討が進められ
本報告案への入力を促進するためCGの延長が承認され
ている。今会合では、我が国と中国、韓国、豪州等が
た。
(本取組の詳細等については、
「
(特集テーマ)ミリ
共同でASM(AISアプリケーション関連メッセージ。
波高周波領域における固定無線方式の研究開発及び利
VDESを構成)用のチャネルを提案した。審議の終盤ま
用展望」ITU-R新報告「固定無線方式の利用と将来動
では本提案をCPMテキスト案に記載することは時期尚
向」
(その1)
(その2)等を参考)
。
早との声が多かったが、我が国と中国の粘り強い主張
の結果、CPMテキスト案に本提案が記載された。
さらに今会合では、IALA(国際航路標識協会)提案
②1GHzから70GHzのセクタアンテナ、オムニアンテナ等
の参照放射パターンに関する勧告F.1336-3の改訂
に基づき、VDES用チャネルプランや各種デジタル変調
本勧告は、固定業務におけるP-MP(Point-to-multi-
方式の技術特性、VDESの衛星系と地上系システムの
point)方式の基地局等に用いられるアンテナの参照放
共用条件等をまとめた新勧告草案M.[VDES]へ向けた
射パターンを規定したものであり、今後WRC-15議題の
作業文書が作成された。本作業文書についても次回会
検討等の際に1GHz以下の帯域の干渉検討や垂直・水
合へ審議が継続されることとなった。
平両平面でより実測データに整合した規定式が必要に
なることに鑑み、日本を中心に、WP5Aと合同で勧告の
改訂を行ってきた。
4.WP5C第12回会合
(1)WP5Cの所掌及び会合の概要
WP5Cは、固定業務、及び30MHz以下の陸上移動業務に
関する技術的検討を実施している。今回の会合には、35か
今会合で、日本は、
(i)本勧告の適応可能周波数の
下限をオムニ、セクタアンテナ共に400MHzとする、
(ii)
6GHz以下では前回提案した垂直・水平両平面のパタ
ーンを各々別の近似式で規定する新手法を適用する、
国から約124名が出席し、我が国からは7名が参加した。ま
(iii)6GHz以上では日本が以前提案して既存勧告
た、本会合では、60件の入力文書について検討が行われ、36
Annex 8に記載された改良規定式を採用する、
(iv)移
件の文書が出力された。
動基地局アンテナにも適用を拡大する、等の修正を行
い、改訂勧告案としてSG5に提出する提案を行った。改
(2)主要議題及び主な結果
①ITU-R新報告「固定無線方式の利用と将来動向」に関
する検討
訂勧告案はほぼ日本提案どおりにまとめられ、去る7月
のWP5D会合合意に基づき、特にimproved type antennaの新規定式パラメータには「IMT基地局用セクタア
固定無線システム(FWS)の将来動向等を研究すべ
ンテナにも適用される」との文言が関連箇所に付加され
く、我が国及び英国から本研究課題について提案を行
た。さらにタイトルも、移動業務用基地局アンテナにも
い、2011年11月よりITU-R報告案が作成されている。前
適用できるように拡張された。これらの修正が加えられ
回会合では、コレスポンデンス・グループ(CG)からの
て、最終的に本勧告改訂案はSG5に送付することが合
提案に基づき報告案の作業文書を暫定新報告案へと格
意された。これにより、本勧告の改訂作業は日本の寄
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会合報告
DEPLOY]の作成が開始された。アウトプットについて
与を十分反映して今会合で終了した。
議論の結果、各主管庁から提供されるP-P方式アンテナ
配置に関する情報(特にアンテナ主軸方向仰角の分布)
③災害救援のための固定無線システムに関する勧告ITU-R
F.1105-2の改訂(日本のシステム情報の追加)
から共通項等をまとめ、干渉評価に使用できる勧告の
作成をまずは目指すこととなった。
本勧告は災害時における救援システムとして使用され
る固定無線システムの、周波数帯、チャンネル容量、伝
搬距離、伝搬路条件等について規定しており、これら
5.SG5第8回会合
の幾つかのシステムは可搬型装置として使用されること
が記載されている。しかし、移動通信基地局への固定
(1)SG5会合の概要
SG5傘下の各WPから提出された17件の勧告案及び14件の
エントランスリンクと移動通信基地局の両方が被災し、
使用不能となった場合の可搬型装置構成とその効用に
報告案等について審議が行われ、全ての勧告案について合意
ついては記載されていないため、可搬型バックホール用
に至り、今後郵便投票等への適切な承認プロセスへ進むこと
固定無線局と移動基地局装置の両方を車両に搭載した
となった。報告案については、13件の報告案が承認され、1
システムの構成と技術パラメータを本勧告に追加する提
件の報告案については、ITU-R報告ではなくユーザガイドと
案を前回会合にて行った。今会合では、日本から、改
してウェブに公開することで合意された。
訂内容のサマリーの作成、アナログシステムに関する記
述の削除の他、エディトリアル修正を含む微修正を加
(2)主要議題及び主な結果
2、3、4節では述べられていないWP5D提出の議題につい
えることで、改訂勧告案としてSG5会合に提出すること
を提案し、承認された。
て簡潔に紹介する。
WP5Dから本会合へは、3件の勧告改定案が上程され、
IMT-Advanced詳細無線インターフェース勧告、IMT-2000
④その他
米国及びカナダの提案により、モバイルバックホール
移動局及び基地局の不要発射特性勧告について技術情報を
のトラヒック需要増に対応するため、IMTネットワーク
最新のものに更新した改定が提出され、SG5において合意に
等の各階層において固定業務に求められる役割を研究
至った。
すべく、前回会合において暫定新報告案ITU-R
また、WP5Dから提出された2020年におけるIMTの所要周
F.[FS.IMT/BB](IMT及び地上[モバイル]ブロードバ
波数の推計に関する報告案について、欧州放送連合(EBU)
ンドシステム)の作成が開始された。今会合では米国、
から修正提案がされたことから、承認を見送るべきとする
カナダからの提案を基にバックホールに使用される固定
EBU等と今会合での承認を行うべきという各国の間で長時
業務システムの周波数帯ごとの特性についての記載が追
間の議論が行われた。最終的にはEBU、WP5D議長、SG5
加された。
議長による折衝が行われ、EBUの見解を報告案のintroductionセクションに記載し、その他の内容は変更せずに承認す
また、カナダの提案等により、今会合より、固定業務
におけるP-P(Point-to-point)方式の配置シナリオに関
ることで、会合内で合意に至った。
す る 勧 告 策 定 に つ い て の 作 業 文 書 ITU-R F.[FS
その他の審議結果については、表2に示すとおりである。
表2.SG5で審議された勧告案、報告案及び研究課題
種類
文書番号と概要
審議結果
勧告案
新規
M.[AUTO]
76-81GHz帯自動車レーダーのシステム特性
PSAA(*1)
新規
M.[RAD.ALTIM]
4200-4400 MHz帯を用いる電波高度計の運用、技術特性及び保護基準
採択(*2)
新規
M.[NAVDAT-HF]
航行データと称する、海上用HF帯における海岸から船舶への海上安全及び保安に関連した情
PSAA(*1)
報を放送するためのデジタルシステムの特性
改訂
M.1540-4
広帯域RLANの特性
合意(*3)
改訂
F.1763
66GHz以下のBWAシステム無線インターフェース規格
PSAA(*1)
改訂
M.2008-0
周波数帯13.25-13.40 GHzの航空無線航行業務で運用するレーダーのための特性と保護基準
PSAA(*1)
改訂
M.1371-4
VHF海上移動帯における時分割多元接続を用いた自動識別システムの技術特性
PSAA(*1)
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ITUジャーナル Vol. 44 No. 3(2014, 3)
表2.SG5で審議された勧告案、報告案及び研究課題(続き)
種類
文書番号と概要
審議結果
改訂
M.1796-1
周波数帯8500-10680MHzの無線測位業務として運用する地上レーダーの特性及び保護基準
PSAA(*1)
改訂
F.557-4
無線中継システムの標準擬似回路と標準擬似デジタルパスの稼働率目標
採択(*2)
改訂
F.1336-3
1GHz-70GHzにおける共用研究用オムニ、セクタアンテナ等基準放射パターン
PSAA(*1)
改訂
F.1497-1
55.78-59GHzの周波数帯で運用する固定無線システムのチャネル配置
PSAA(*1)
改訂
F.1105-2
災害救援運用のための固定無線システム
PSAA(*1)
改訂
M.2012-0
IMT-Advancedの地上コンポーネント無線インターフェースの詳細スペック
採択(*2)
改訂
M.1580-4
IMT-2000地上コンポーネントの基地局の不要発射
採択(*2)
改訂
M.1581-4
IMT-2000地上コンポーネントの移動局の不要発射
採択(*2)
削除
M.1740
アマチュア及びアマチュア衛星業務に関連したITU-Rテキストの応用ガイド
採択(*2)
削除
M.1222
共有専用地上移動無線チャンネルに関するデータメッセージ伝送
採択(*2)
削除
SF.357-4
固定業務の無線中継方式と固定衛星業務との間で、アナログ方式の固定無線中継方式が受け
採択(*2)
る最大干渉許容値
削除
SF.356-4
周波数変調を採用する固定衛星業務システムの電話チャンネルにおける見通し内無線中継シ
採択(*2)
ステムからの最大干渉許容値
新規
共用検討のための5250-5450kHz帯アマチュア無線局の特性
承認
新規
航空機を利用した公衆移動通信システム
承認
改訂
共用検討のためのMSで運用する広帯域BWAの特性
承認
新規
安全運航を支援する航空機内無線通信(WAIC)の技術特性とスペクトラム要件
承認
新規
周波数帯1215-1300MHzで運用するレーダーと無線航行衛星業務(宇宙から地球)システムとの両立
承認
新規
海上生存者位置特定システム及び装置(海中転落者システム)-システムの概要及び運用モード
承認
新規
航空移動テレメトリシステムの運用特性
承認
新規
船舶自動識別装置のVHFデータリンク負荷
承認
新規
海上移動業務における陸船/船陸間アプリケーションのためのMF/HF無線チャネルにおけるデジタル音声通信シ
承認
ステム
新規
アナログ固定業務システムに係るITU-R勧告のリスト
新規
勧告M.1768の手法による地上系IMT所要周波数帯域幅算出に必要な技術的パラメータ値
承認
新規
地上系IMTのための将来の周波数帯域幅推定
承認
新規
広帯域PPDRアプリケーションへのIMTの使用
承認
新規
IMT-Advanced共用検討パラメータ
報告案
(*4)
承認
研究課題
新規
補聴システムを支える短距離無線通信公共アクセスシステムの運用
合意(*3)
(*1)ITU-R決議1-6§10.3に従い、郵便により同時に採択と承認を求める手続
(*2)同決議の§10.4.5に従い、郵便により承認を求める手続
(*3)同決議§10.2.3に従い、郵便により採択を求める手続。採択後、同決議§10.4.5に従い、郵便により承認を求める手続に進む
(*4)ITU-R報告ではなくユーザガイドとしてウェブに公開することで合意された。
告等について合意に至ることとなったのも、本会合に御出席
6.おわりに
今回のSG5関係会合では、各WPにおいて、主にWRC-15
いただき長時間・長期間にわたる議論に参加いただいた日本
代表団各位、会合前の寄書作成や審議に貢献していただい
議題に関連する検討に対して、精力的に作業が進められた。
た関係各位の御尽力のたまものと、この場を借りて深く御礼
また、SG5会合においては、各WPより上程された勧告案や
申し上げる。
報告案についての審議が行われた。我が国としては、WRC-
今会期も3年目に入り、SG5関係会合においてはWRC-15
15の各議題への継続的な検討・貢献を行うとともに、我が
に向けて議論が本格化してきている中、我が国が一層貢献・
国の技術提案をITU-Rの勧告・報告に盛り込み、国際競争
活躍できるよう、今後の審議に向けて関係各位の更なる御協
力の強化に向けて取り組んでいるところである。今回のSG5
力をお願い申し上げる。
関連会合で、各WPより我が国の技術提案が盛り込まれた勧
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