6.Multi-band MRI

Step up
MRI
2014
Ⅱ 臨床の視点から評価する新しい撮像技術の有用性と課題
6.Multi-band MRI
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臨床応用の可能性
岡田 知久 京都大学大学院医学研究科画像診断学・核医学
なっている。これを活用することで,PI
率の良さは驚異的である(図 1)。現時点
研究開発されて,臨床の場に導入されて
撮像法と同様にスライス方向の高速化
では,MB 撮像により最大のメリットが
きた。multi-band(以下,MB)撮像法は,
を実現するのが MB 撮像法である 2),3)。
あるのは fMRI と DTI,DSI などである。
時間制限などの要因により,これまで臨
われわれが使用している MB 撮像法はワ
中でも,課題を必要としない resting-
床での活用が困難であった fMRI や DTI
シントン大学(セントルイス)
,ミネソタ
state f MRI(rsf MRI)の普及により,
などを,診療検査の時間内に実現しうる
大学とオックスフォード大学が連携して
診療の場でも fMRI がより身近になって
有望な撮像法である。3 D 撮像も診療に
いる Human Connectome Project(以
きた。
導入されつつあるが,依然として 2 D 撮像
下,HCP)が開発し,研究用として契
rsfMRI は,脳領域間の連携した活動
MRI は,これまでにも多くの新技術が
を使用する場面も多い。パラレルイメージ
約の下にミネソタ大学のサイトを介して
を反映した 0 . 1 〜 0 . 01 Hz のゆっくりと
ング法(以下,PI 撮像法)と同様に,今
配布されているものである。
した活動を解析するものである。ところ
後広く普及する可能性が大きいと考えら
れる。
MB 撮像法の背景
MB 撮像法の利点
MB 撮像法の特徴は,スライス方向の
が T R が 2 秒程度の従来撮像法では,
0 . 3 Hz 前後の呼吸や 1 Hz 前後の心拍に
よるアーチファクトがより低い周波数に
折り返して,ノイズとして解析対象周波
高速化であり,その割合を MB factor
数帯域に重なってくる。MB シーケンス
現在,3 D 収集は広く行われているが,
と呼んでいる。32 ch コイルであれば最大
では,指尖脈波の記録が可能となって
依然として 2 D 収集が中心であり,複数
で 12 倍速程度まで可能であり,その効
いる。その値をシフトさせて,TR 0 . 4 秒
スライス同時収集が注目されてきた。中
でも,RF 波を合成して同時励起するス
ライス間の位相をずらすことで,1 つの
画像内に位置がずれた複数スライスを収
集する p h a s e - o f f s e t m u l t i p l a n a r
(POMP)撮像は有用であった 1)。しか
し,同時励起が 2,3 スライスまでであり,
さらに広い受 信 帯 域が必 要なために
SNR が低下することもあり,普及は限
定的であった。
近年になり PI 撮像法と 32 チャンネル
(以下,ch)以上のコイルが普及したが,
依然として撮像の主体は 2 D 収集であり,
PI 撮像法で通常使用される 2,3 倍速で
は 32 ch コイルのメリットを生かしきれて
はいなかった。多断面同時励起では,
そのまま収集すると画像が重なるが,ス
ライスにより多数あるコイルの感度が異
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図 1 ‌‌1 秒で撮像可能な gradient‌echo‌EPI 画像例(MB‌factor‌6)
INNERVISION (29・9) 2014 29