CHEMOTHERAPY Ceftazidimeの 体内動態 と外科領域 におけ る臨床

VOL.31
CHEMOTHERAPY
S-3
Ceftazidimeの
673
体 内動 態 と外 科 領域 に おけ る臨 床 的 検 討
奥 沢 星二 郎 ・相 川 直 樹 ・露 木
建 ・鈴 木 啓 一郎 ・石 引久 彌
慶応義塾大学 医学 部外科学教室
注射用 セ フ ェム系 薬 剤 と して 英 国Glaxo社
で 新 し く 開 発 さ れ たCeftazidime
(CAZ,
SN401)
の外科 領域に おけ る 感 染症 に 対 す る効 果に つ い て 基 礎 的 ・臨 床的 検 討 を 行 な った 。
成人にCAZlgをone
shot静
logical half lifeは1.62時
注 した 場 合
間,ま
投 与 後30分
の 血 清 中 濃 度 は58.3μg/mlで
た 投 与 後6時 間 まで の 尿 中 回 収 率 は69 .5%で
後腹腔 内浸出 液 中濃 度 は術 後3日 間 とも約10μg/mlで
あ った 。
臨床的に は,術 後 肺炎,敗 血 症,腹 膜 炎 を 含 む 外科 的 感 染 症13例
た。菌種別 に はP.aeruginosaに
bio-
あ った 。 胃癌 術
対 して7例 中6例(85.7%)と
中9例(69.2%)に
有効であっ
高 い有 効 率 を示 した 。 術 後 感 染予
防を 目的 として本 剤 を使 用 した9例 に お い て は 術 後感 染 症 の 発 症 は なか っ た 。 本剤 投 与 に 関 連 した
副作用は認 め られ なか った 。
aminothiazol基
を 有 す る新 しい注 射 用 セ フ ェム系 薬
剤 で あ るCeftazidime
(CAZ,
菌 お よびP.aeruginosa,
SN401)は,グ
Serratia,
ラム陽 性
Proteusを
含む グ
ラム陰 性 菌 に 対 し て 広 範 な 抗 菌 ス ベ ク ト ラ ム を 有 す る 。
と くにP.aeruginosaに
aminoglycosidesお
対 し て は,GM,
よ びCTX,
の新 しいCEPsに
AMKを
CFS,
比 べ て,よ
LMOXな
り強 い 抗 菌 活 性 をin
2.
臨床検討
昭 和56年5月
か ら57年2月
ま での 間 に 慶 応 義塾 大 学
病 院 外科 に 入 院 した患 者の うち,外 科 的 感 染 症13例
含む
を対 象 と した 。対 象患 者 は 全 例成 人 で 男 子16例,女
ど他
6例 で あ った 。
vitro
で示 す こ とが 特 徴 と され て い る1,2,3)。
CAZ投
与量 は1回1g,1日2回
投 与 方 法 はCAZ1∼2gを
臨床 的 に は 静 脈 内 投 与 に よ り高 い 血 中 濃 度 が 得 ら れ,
と
外 科 手術 後 の 感 染 予 防に 本 剤 を 使用 した9例 の 計22例
投 与 を 原 則 とした0
生 理 食 塩 水20m1ま
たは
溶 解 し,静 注 また は約30分
で 点 滴 静 注 した 。
生 体 内で 不 活 化 さ れ る こ と な く大 部 分 が 尿 中 に 排 泄 さ れ
臨 床 効 果 の判 定 基 準 とし て は,CAZ投
与 開 始3日 以 内
る1,4)。 ま た 副 作 用 の 発 現 も 少 な い こ と が 知 ら れ て い
に 感 染 症 に関 す る 自 ・他 覚 的 所 見 の 改 善 を み た もの を 有
る1,4.5)。
効(Good),そ
われ わ れ は 今 回CAZの
体 内 動 態 を 検 討 し,ま
を外 科 的感 染 症 の 治 療,お
たCAZ
I.
。
無 効(Poor)と
した。 また 術後 感染 予 防 目的 で本 剤 を 投
与 した症 例 で は,手
術後14日
間 まで 術 後 感 染症 の 発 現
Fig. 1
Serum
stration
levels of CAZ
of 1 g
after
i. v. admini-
血清中濃 度お よび尿 中 排 泄
腎機 能 障 害 の な い 胃 癌8症
one shot静
注 し,1/2
同時 に投 与 後6時
(2)
・他 覚所 見が 不 変 か,ま た は 増 悪 した もの を
対 象 お よび 方 法
吸 収 ・排 泄 試 験
(1)
れ 以 上 の 期 間 を有 した もの をや や 有 効
(Fair),自
よ び 術 後 感 染 予 防 に 使 用 し,
そ の臨床 効 果 と副 作 用 に つ い て 検 討 した の で 報 告 す る
1.
100mlに
子
例 に,術
, 1, 2,
4,
6時
前,CAZ
1gを
間 後 に 採 血,ま た
間 まで の尿 を 採 取 した。
M+S.D.
n=-8
術後腹 腔 内浸 出液 中 濃 度
T1/2 (ƒÀ)=1.62
上記8症
例 で 手 術 時 ,左
横 隔 膜 下 にballoon
catheter
を留置 し,術 後CAZ
1gを1日2回
連 日静 注 ま た は 点
滴 静注 し,術 後24時
間 毎 に3日
間の 腹 腔 内 浸 出 液 を採
取 した 。
これ らの 検 体 に つ い て
倹定 菌 と して,薄
な った。
,P.mirabilis
層 カ ッ プ 法 に てCAZの
ATCC
21100を
濃 度 測 定 を行
hr.
674
CHEMOTHERAPY
OCT.
1983
VOL.31
CHEMOTHERAPY
S-3
Fig. 2
Concentration
Excretion
of CAZ
into
of CAZ
peritoneal
Volume
Table
2
675
Clinical
effect
の有無を観察 した 。
exudate
after
gastrectomy
41f exudate
of CAZ
Daily
to surgical
infection
成
績
感 染症 別 にCAZの
臨床 効 果 を み る と,術 後 肺 炎4例
1. 血 清中濃度,尿 中排 泄 お よび 腹 腔 内 浸 出液 中濃 度
で は3例 が 有 効,1例
CAZ 1g one shot静 注後 の 血 清 中濃 度 は,30分
い3例 では1例 が有 効,2例
値平
後比 較 的 急 速 に漸 減 し(Fig.1),
biologicalhalf lifeは 平 均1.62時
は投与後6時 間 まで に平 均695mgが
投与量の69.5%で
間 で あ った 。 尿 中 に
排泄 され,こ れ は
目か ら急 速 に
は有 効 であ った(Table2)。
や 有 効3例(23.1%),無
外 科 的 感 染 症13例
効4例(30。8%)
の うち,起 炎菌 と考 え られ る 細菌
が 分 離 された の は10例
μg/mlで あ った(Fig.2)。
独 感 染2例,GNR混
感 染1例,GNRと
対象症例の 基礎疾 患 は卵 管 炎 の1例 以 外 は す べ て消 化
以 上 を 総合 す る と,有 効6
であ った 。
減少したが,浸 出液 中濃 度 は術 後3日 間 と も 平均 約10
臨床成 績
が 無 効,限 局 性 腹 膜 炎2例
が や や 有 効,ま た 汎発 性 腹 膜 炎,
肺膿 瘍 各1例 は 無効,肝 膿 瘍1例 はや や有 効,膿 胸1例
例(46.2%),や
行 につ い て み る と,
浸出液量は術後第1日 目に最 も多 く,2日
が や や 有 効,敗 血 症 お よび そ の 疑
で は1例 が 有 効,1例
あ った 。
術後腹腔 内浸 出液 中へ のCAZ移
2.
of CAZ
あ った(Table1)。
II.
均58.3μg/mlで,以
pxervtion
例 にGNRが
で あ っ た。 そ の 内訳 はGNR単
合 感 染5例,GNRとGPCの
関 与 し て お り,混 合 感 染が 多か った(Table
器系の疾患で あった 。感 染 症 症 例 の 内訳 は,術 後 肺 炎4
3)。 分 離 菌 を合 計 す る とGNRで
はP.aeruginosa
例,敗 血症お よび そ の疑 い3例,限
株, E.coli
2株,Klebsiella,
局 性 腹 膜 炎2例,汎
発性腹膜炎,肺 膿 瘍,膿 胸,肝 膿 瘍 各1例 の計13例
で
Enterobacter,
混合
嫌 気 性 菌 の 混 合 感 染2例 で あ り,全
4株,
P.maltePhilia
Serratia,
P. morganii,
Citrobacter
7
各
CHEMOTHERAPY
676
1株 で あ り,GPCで
菌 はBacteroides
CAZはP,aeruginosaに
は,S.faecatis
2株
1株,ま
OCT. 1983
と高 い有 効 率 を 示 した。
た嫌 気 性
術 後 感 染予 防 的 投 与9例 の 基礎 疾 患 はすべ て胃癌で,
で あ っ た 。 こ れ ら 菌 種 別 に は,
対 し て7例
Table
Table
中6例
3
Clinical
4
全 例 に 術 後 感 染 症 の発 生 を 認 めな か った(Table4)。
(85.7%)
effect
Prophylactic
of CAZ
use
to surgical
of CAZ
after
infection
gastrectomy
CHEMOTHERAPY
VOL.31
677
S-3
CAZを 使用 した22例
に お い て,本
III.
剤 投 与 に よる 副
CAZは,近
作用としての 自 ・他覚 的 異常 は 出現 しな か った 。 本 剤 投
にP.aeruginosaに
与前,投 与中 な らびに 投与 後 の 臨 床 検査 値 の 変 動 に つ い
て,そ の主要項 目の結 果 をFig.3et示
にBUN,
GOT,
Al-Pの
tia,
した 。 本 剤 使 用 中
Proteus,
考
察
年 開 発 さ れ た 種 々 のCEPsの
Enterobacter,
Klebsiella
しば しば 術後 感 染 症 の 起炎 菌 とな るGNRに
上 昇 を 示 した 症 例 は各1例 あ
中 で も,と く
対 す る 抗 菌 力 が 強 く,ま
たSerra-
な どを含 め て
対 して殺 菌
ったがその変動は原疾 患 に よる もの と思 われ,本 剤 投 与
的 作 用 を有 す る こ とか ら1∼5),そ の 臨 床 的 応 用が 期 待 さ
に直接関係 した検査 値 の異 常 は認 め な か った。
れ て きた 。わ れ わ れ はCAZの
本剤が有効であ った術 後 肺 炎 の一 症 例(症 例11)に
いて臨床経過を示す(Fig.4)。
臨 床 検 討 の た め,ヒ
トに
お け る血 中 濃度 。 尿 中 排 泄 お よび術 後 腹 腔 内 浸 出 液 中濃
つ
度 の 測 定 を 行 な い,ま た13例
症 例 は食 道 癌 根 治 術 後 の
の 外科 的 感 染 症 と,9例
肺炎で発熱 と呼吸不 全 を伴 い,喀 疾 よ りP.aeruginosa
の 外 科 術 後 感 染 予 防に 本 剤 を 使 用 し,そ の 効 果 を 検 討 し
とE.coliを 分 離 した 。AMK200mg小
た 。 本 剤1g
したが効果な く,CAZ29小
日を17日
間投与
日を 使 用 した ところ,3日
one shot瀞
注 に よ り高 い血 中 濃 度 が 得 ら
れ るが,血 中 か らの消 失 は速 や か で,尿 中 回 収 率 は 投与
目
より解熱 し,喀 疾 も減 少 して 自 ・他 覚的 に も軽 快 した 。
後6時 間 で69.5%と
臨床効果は有効 とした。
中 濃 度 は術 後3日 間 とも約10μg/mlで,こ
高値 で あ った 。 また 腹 腔 内浸 出 液
のin vivoの 成 績 か らみ て 多 くのGNRに
Fig.3
Laboratory
findings
before,
during
WBC
CRTNN
GOT
GPT
B : Before,
D : During,
A : After,
(
and after
) : Case number
CAZ
administration
BUN
Al-P
れは本剤の
対 して 効 果 が
CHEMOTHERAPY
678
Fig. 4
OCT.
Case No. 11 : I. K., 80 yrs., male, Postoperative
期 待 で き る と思 わ れた 。
pneumonia
あ
2)
LIVERMORE,
LIAMS
り,対 象が 重 症 例 が 多 い ことか ら,優 れ た臨 床 成 績 と考
:
bility
zone,
染 症 の 発 生 をみ な か った 。菌 種 別 で は 諸 家 の報 告1∼5)と
moxalactam
同 様,P.aeruginosaに
monas
対 して 高 い 有 効 率(85.7%)を
本 剤 に 関連 した 副 作 用 な らびに 検 査 値 異 常 は 認 め られ
3)
よる 外科 的 重 症 感 染 症 に対 し
4)
もの と考 え られ た。
M.
RYAN,
20263,
porin
microb.
C.
with
a
献
H.
;
S. M.
KIRBY
new
broad-spectrum
antipseudomonal
Agents
5)
P. ACRED,
Chemother.
&
P. B.
S.
M.
HARPER,
HARDING
cephalos-
activity.
17
Anti: 876•`883,
:
P. ; S.
in
properties
vivo
A
highly
with
nds
J. VERHAEGEN
:
GR
and
Agents
active
Chemotherapy
a
high
EnteroChemo-
1980
(Ceftazidime),
M.
20263,
with
Pseudomonas
antipseudomonal
in
Chemo-
cephalosporin
: 807•`812,
ACRED,
Pseudo-
1981
&
SN401
stacefopera-
ceftazidime,
日本 化 学 療 法 学 会 総 会,
ムIo
文
GR
第30回
of
Antimicrob.
Antimicrob.
17
J. D. WIL-
against
J.
against
then
activity
cefsulodin,
aminothiazolyl
activity
以 上 の 結 果 よ りGNRに
D.
L.
&
P-lactamase
ceftriaxone
323•`331,
VERBIST,
the
in-vitro
and
8:
J. WILLIAMS
of
the
bacteriaceae.
て本 剤 は 有 用 な 薬剤 で あ り,そ の 臨 床応 用 は期 待 され る
R.
aeruginosa.
new
な か った 。
M.;
cefotaxime,
ther.
示 した 。
D.
Comparison
and
え られ た。 また,術 後 感 染予 防 的 投 与 で は全 例 に 術 後 感
O'CALLAGHAN,
cancer)
1980
本 剤 の有 効 率 は,外 科 的 感 染 症 に 対 して69.2%で
1)
(Esophageal
1983
HARDING
of
broad
&
GR
新 薬 シ ソ ポ ジウ
東 京, 1982
D.
20263
spectrum
activity.
4:
51•`61,
M.
RYAN
: The
(ceftazidime)cephalosporin
Future
1981
Tre-
VOL.31
CHEMOTHERAPY
S-3
PHARMACOKINETICS
679
AND
OF CEFTAZIDIME
CLINICAL
EVALUATION
IN SURGICAL
FIELD
SEIJIROOKUSAWA,NAOKI AIKAWA,KEN TSUYUKI
HIROICHIRO
SUZUKIand KYUYAISHIBIKI
Department of Surgery, School of Medicine, Keio University
1)
Serum
58.3 ƒÊg/ml
of
level
and
ceftazidime
gastrectomy
2)
in
Out
urinary
7
postoperative
cases
(CAZ,
SN401)
recovery
rate
at
was
CAZ
was
of
infection
P.
to
at
13
seen
doses
cases
aeruginosa
was
of
9
patients
after
1.0
in
about
g
surgical
daily
infections
which
8
intravenous
cases.
10 ƒÊg/ml
twice
was
ceftazidime
injection
Mean
on
by
and
ceftazidime
in
1. 0 g
average
was
of
infections,
in
min.
on
exudate
given
administered
30
69.5%
intraperiotoneal
which
was
of
ceftazidime
postoperative
during
Ceftazidime
(9/13).
No
of
6-hour
drip
each
of
3
days
after
infusion.
the
efficacy
effective
in
was
was
concentration
given
rate
6
was
cases
for
69.
(85.
2%
7%).
postoperative
prophylaxis.
3)
A
dose
and
daily
duration
dose
was
were
2. 0 g
104.
0 g
in
and
16
cases
26
days,
and
ranged
respectively.
3.0 •`
6.0
No
g
side
in
6
effect
cases.
was
The
observed.
maximum
total