生体分子有機化学
2015年1月15日分
第13回:電子伝達と酸化的リン酸化
今日のポイント
-
電子伝達とプロトンの
み出し(濃度勾配)
ミトコンドリアでのATP合成メカニズム
担当:岸村 顕広
『アメリカ版 大学生物学の教科書』pp. 212-213参照。
2
『アメリカ版 大学生物学の教科書』pp. 220-221参照。
前回のQuiz
クエン酸サイクル後の酸化的リン酸化のプロセスで、NADH1つ
あたりから約2.5ATPを、FADH2から約1.5ATPを生産し、好気的
代謝が終了する。このことをふまえ、
(1) ピルビン酸以降の代謝プロセスから、最終的に(酸化的リン酸
化後に)ピルビン酸1分子からいくつのATPが得られるか?
(GTPもATPとしてカウントして良い。)A. 10 + 1.5 + 1 = 12.5 (個)
(2) グルコース1分子が解糖を経て、クエン酸回路に入り、酸化的
リン酸化まで進んだ際に得られるATPは、トータルでいくつに
なるか?
A. 12.5 ×2 + 2.5 ×2 + 2 = 32 (個)
(参考)解糖の全反応式
グルコース + 2NAD+ + 2ADP + 2Pi
→ 2ピルビン酸 + 2NADH + 2ATP + 2H2O + 4H+
酸化的代謝
1グルコースから
2.5 ×10 + 1.5 ×2 + 2 + 2
= 32 (ATP)
解糖にて
2NADH + 2ATP = 7 (ATP)
解糖以降
2 ×[4NADH + FADH2
+ GTP]
= 2 ×(10 + 1.5 + 1)
= 25 (ATP)
酸化的
リン酸化
電子伝達と酸化的リン酸化の意義
グルコースの燃焼
C6H12O6 + 6O2→ 6CO2 + 6H2O
ΔG = –2850 kJ/mol (–686 kcal/mol)
半
+
反 C6H12O6 + 6H2O→ 6CO2 + 24H + 24e
応
6O2 + 24H+ + 24e- → 12H2O
式
生体内では、この2つの半反応式をつなぐ電子伝達を多段階で行い、解放された
エネルギーをATPとして蓄える。 実際は32ATPなので、–30.5 ×32 = 976 kJ/mol
約34%
解糖の全反応式
グルコース + 2NAD+ + 2ADP + 2Pi → 2ピルビン酸 + 2NADH + 2ATP + 2H2O + 4H+
アセチルCoAの生成
ピルビン酸 + NAD+ + CoASH → アセチルCoA + NADH + CO2 + H+
クエン酸サイクルの全反応
3NAD+ + FAD + GDP + Pi + アセチルCoA → 3NADH + FADH2 + GTP + CoASH +
2CO2
→得られたNADH, FADH2から取り出された電子を用いて(電子伝達系に受け渡して)、
O2の還元を行う。
→この過程でプロトンがミトコンドリア内部から み出され、生じたプロトンの濃度勾配
によりADP + PiからATPを再生する。(電気化学的なエネルギー変換である。)これが
酸化的リン酸化である。
電子伝達と酸化的リン酸化の概要
低H+
マトリックス
ADP + Pi
ATP
ATP
シンターゼ
NADH + H+
2e–
H+
NAD+
内膜
I
コハク酸
1/2 O2
2e– FADH2
H+
II
2e–
膜間部
H+
H 2O
H+
IV
FAD
2e–
Q
H+
- 電子伝達系は大きく4つのタン
パク質複合体に分けられる。
III
e–
2e–
e–
電子の流れ、
Cyt c
プロトンの流れ
外膜
H+
- 還元力(NADH, FADH2)から取り
出した電子を伝達し(青い矢印)、
プロトン(H+)を膜間部に み出し
て、H+濃度勾配を作り出す。
- この電気化学ポテンシャルの差
を利用して、ATPを合成する。
高H+
に注意せよ。
特に プロトン勾配
サイトソル
(ATPを作るのは
ATPシンターゼだけ。)
電子伝達系の概要
マトリックス
NADH +
H+
NAD+
内膜
O2
I
FADH2
膜間部
IV
FAD
II
2e– 2e–
e–
e–
Q
2e– III
✦還元通貨から取り出した電子を
内膜に埋まった4つのタンパク質複合体を
介して伝達。
✦I→III→IV、あるいは、II→III→IVの経路で伝
達。電子を輸送する補酵素Qを活用。
✦正味では、NADHなどをO2で酸化している
ことに相当。(以前のQuiz参照)
NAD+ + H+ + 2e– → NADH
1
– O2 + 2H+ + 2e– → H2O
2
半反応式を2つ合わせて、
ΔE = (0.815) – (–0.315) = +1.13 (V)
ΔG = –2·96485·1.13 = –218 kJ/mol
Cyt c
外膜
4 H+
I→III→IV
2 H+
4 H+
e–
膜間部
e–
サイトソル
ミトコンドリア
内膜
e–
FeS
e–
FMN
Q
FeS
2e–
マトリックス
NADH
e–
e– × 2
複合体I
複合体III
1
– O2 + 2H+
2
H 2O
複合体IV
電子伝達と還元電位
ミトコンドリアの電子伝達複合体
の還元準位とATP合成
E°’ [V]
反応は燃料電池的
赤字:阻害剤
–0.4
NADH
2e–
NAD+ (–0.315 V)
複合体I
ΔE°’ = 0.360 V
(ΔG°’ = –69.5 kJ/mol)
–0.2
(+0.031 V)
2e–
コハク酸
FADH2 複合体II
+0.2
ロテノン
ATP
CoQ (+0.045V)
0
フマル酸
ADP + Pi
複合体III
ΔE°’ = 0.190 V
(ΔG°’ = –36.7 kJ/mol)
ADP + Pi
アンチ
マイシン
ATP
シトクロムc (+0.235V)
+0.4
+0.6
ADP + Pi
複合体IV
ΔE°’ = 0.580 V
(ΔG°’ = –112 kJ/mol)
CN–
ATP
2e–
+0.8
1
2H+ + –2 O2
H2O (+0.815V)
それでは電気を流して何をしているのか?
休止ミトコンドリアの各複合体中
の還元電位
複合体I (NADH:CoQオキシドレダクターゼ)
複合体Iでは、NADHから電子を補酵素(FMN)に1電子ずつ受け渡し、
補因子(鉄-硫黄クラスター)を介して、脂溶性の補酵素Qに渡す。
4 H+
複合体I
膜間部
クライオ(低温)電子顕微鏡に
よる3次元トモグラフィ像
4 H+
e–
ウシ
FeS
ミトコンドリア
内膜
FMN
Q
FeS
2e–
マトリックス
NADH
大腸菌
還元型補酵素Q
(CoQH2)が生成
e– × 2
複合体I
マトリックス
NADH
+
H+
NAD+
内膜
複合体I
電子移動に伴って
プロトンが膜間部
に み出される。
H+
L型に突き出たアームに酸化還元中心が集中
プロトンの
み出しはどのようにしてなされるか?
複合体Iでは、実はよくわかっていない!
仮説:プロトンポンプ機構
膜間部
内膜
マトリックス
タンパクの酸化還元に伴ってコンホメーションが変化し、
プロトンが取り込まれたり放出されたりする。
FMN, CoQ, Fe-Sクラスター:1電子ずつ受け入れるツール
FMN
(フラビンモノヌ
クレオチド)
鉄-硫黄クラスター
Feの数と関係なく
1電子の酸化還元
H CO
を行う。
補酵素Q or
ユビキノン
(CoQ; UQ)
O
CH3
3
イソプレン
(天然ゴムのモノマー)
(繰り返し数10がQ10)
イソプレン単位
CH3
H 3CO
CH2 CH
C
O
CH2
n
H
脂溶性であり、
CoQ またはユビキノン
膜内を拡散できる.
(酸化型)
FMN (酸化型)
[H·]
[H·]
(貯蔵・輸送に便利)
O
[2Fe-2S]
H 3CO
CH3
H 3CO
R
OH
CoQH·またはセミユビキノン (ラジカル型)
FMNH· (ラジカル型)
[H·]
[H·]
OH
FMNH2 (還元型)
[4Fe-4S]
H 3CO
CH3
H 3CO
R
OH
CoQH2またはユビキノール (還元型)
好熱菌複合体Iでは飛び出したアーム部位に並ぶ
複合体Iアーム部位周辺
FMN
(近傍にNADHが
結合するらしい)
酸化還元中心の並び
数字は各中心間の距離(Å)を示す。
14 Å以上だと直接の電子伝達が難しくなる。
電子
の
流れ
CoQ
複合体II (コハク酸デヒドロゲナーゼを含む)
複合体IIはコハク酸から補酵素Qへの電子伝達を仲介。
他のフラビンタンパク質も補酵素Qへ電子を渡すことが可能。
マトリックス
コハク酸
内膜
フマル酸
脂肪酸アシルCoA
の酸化
FAD
アシルCoA
デヒドロゲナーゼ
複合体
複合体II
FAD
Q
FAD
グリセロール3-リン酸
デヒドロゲナーゼ
グリセロール3-リン酸
DHAP
膜間部
NAD+
NADH
+
H+
(前回の復習)第6反応:コハク酸が酸化(脱水素)される
コハク酸デヒドロゲナーゼはミトコンドリア内膜に埋め込まれたタンパク
質複合体(複合体II)の一部である。FADの再生は、電子伝達系と連携して
行われる。
大腸菌の複合体II
(Protein data bank: 1nek)
複合体II
膜間部
ミトコンドリア内膜
マトリックス
コハク酸デヒドロ
ゲナーゼ
コハク酸
フマル酸
複合体II内での酸化還元中心の配置
ニワトリ複合体IIのX線構造
酸化還元中心の配列
基質
電子の流れ
マトリックス
CoQ
内膜
膜間部
マトリ
ヘムbは直接電子を受け取ることはないが、
活性酸素が出ないように制御しているらしい。
複合体III (CoQ:シトクロムcオキシドレダクターゼ)
- 複合体IIIは還元型CoQ (CoQH2)の電子1つをシトクロムc (Cyt c)に移す。
- 2個のb型シトクロム、1個のシトクロムc1 (Cyt c1)、1個の[2Fe-2S]を持つ。
- シトクロムcは、複合体IIIのCyt c1と複合体IVのシトクロムcオキシダーゼに
交互に結合して電子を運ぶ。
Qサイクル
酵母の複合体IIIのX線構造
サイクル1: CoQH2 + Cyt c1(Fe3+) → CoQ·– + Cyt c1(Fe2+) + 2H+(out)
サイクル2: CoQH2 + CoQ·– + Cyt c1(Fe3+) + 2H+(in)→ Cyt c
ヘム c1
CoQ + CoQH2 + Cyt c1(Fe2+) + 2H+(out)
膜間部
Fe-S
サイクル1
1個の電子
が移動
Cyt c
サイクル2
1個の電子
が移動
2H+
Cyt c1
ヘム bL
ヘム bH
Cyt bL
Cyt bH
2H+
Cyt c1
Fe–S
内膜
Cyt c
Fe–S
CoQH2
CoQ
CoQ
CoQ·–
Cyt bL
CoQH2
CoQ·– CoQH2
Cyt bH
もう1個は
CoQに戻る
マトリックス
複合体III
CoQ
2H+
複合体III
残ったCoQ·–は別
のCoQH2が来た時
の電子を利用して
CoQH2に再生。
CoQ/CoQH2のサイクルに連動して
電子の移動とプロトンの輸送が起こる。
複合体III (CoQ:シトクロムcオキシドレダクターゼ)
- 複合体IIIは還元型CoQ (CoQH2)の電子をシトクロムc (Cyt c)に移す。
- 2個のb型シトクロム、1個のシトクロムc1 (Cyt c1)、1個の[2Fe-2S]を持つ。
- シトクロムcは、複合体IIIのCyt c1と複合体IVのシトクロムcオキシダーゼに
交互に結合して電子を運ぶ。
Qサイクル
酵母の複合体IIIのX線構造
サイクル1: CoQH2 + Cyt c1(Fe3+) → CoQ·– + Cyt c1(Fe2+) + 2H+(out)
サイクル2: CoQH2 + CoQ·– + Cyt c1(Fe3+) + 2H+(in)→ Cyt c
ヘム c1
膜間部
CoQ + CoQH2 + Cyt c1(Fe2+) + 2H+(out)
サイクル1
Fe-S
Cyt c
サイクル2
Cyt c
2H+
Cyt c1
ヘム bL
ヘム bH
Cyt c1
Fe–S
内膜
Cyt bL
Cyt bH
2H+
Fe–S
CoQH2
CoQ
CoQ
CoQ·–
Cyt bL
CoQH2
Cyt bH
CoQ
CoQ·– CoQH2
2H+
マトリックス
複合体III
複合体III
CoQ/CoQH2のサイクルに連動して
電子の移動とプロトンの輸送が起こる。
シトクロム
シトクロムcはヘムを含み、Fe(II)/Fe(III)の酸化還元を繰り返して電子を伝達する。
(1電子ずつの受け渡しである点に注意せよ。)
シトクロムcの構造
ヘムa
ヘムb
(鉄プロトポルフィリンIX;
ミオグロビン、ヘモグロビンと同一)
使われているヘムの型に応じてシトクロム
の呼び方が変わる。
CN–は、Fe(III)に強く配位して
機能停止させる。
ヘムc
複合体IV (シトクロムcオキシダーゼ; COX)
- 複合体IVは還元型Cyt cの一電子酸化を4連続に行い、同時にO2の4電子還元を
行う。
2+
+
3+
4Cyt c(Fe ) + 4H + O2 → 4Cyt c(Fe ) + 2H2O
- シトクロムa, シトクロムa3, CuB, CuA中心の4つの酸化還元中心を持つ。
プロトン
み出しの観点では、
4Cyt c(Fe2+) + 8H+(マトリックス)+ O2 → 4Cyt c(Fe3+) + 2H2O + 4H+(膜間部)
4H+
膜間部
4Cyt c
4e–
CuA
内膜
a
O2
a3
内膜
Fe-Cu
中心
CuB
マトリックス
4H+
(基質) (
4H+
2H2O
み出し)
ウシ心筋COX(ホモ二量体)
のX線構造
複合体IV (シトクロムcオキシダーゼ; COX)
- 複合体IVは還元型Cyt cの一電子酸化を4連続に行い、同時にO2の4電子還元を
行う。
2+
+
3+
4Cyt c(Fe ) + 4H + O2 → 4Cyt c(Fe ) + 2H2O
- シトクロムa, シトクロムa3, CuB, CuA中心の4つの酸化還元中心を持つ。
プロトン
み出しの観点では、
4Cyt c(Fe2+) + 8H+(マトリックス)+ O2 → 4Cyt c(Fe3+) + 2H2O + 4H+(膜間部)
4H+
膜間部
4Cyt c
4e–
CuA
内膜
a
O2
a3
内膜
Fe-Cu
中心
CuB
マトリックス
4H+
(基質) (
4H+
2H2O
み出し)
ウシ心筋COX(ホモ二量体)
のX線構造
複合体IV (シトクロムcオキシダーゼ)の推定反応経路
反応は室温で数ミリ秒という高速で終了する。
ウシ心筋COXの酸化還元中心
推定反応経路
Fe(III)/Fe(II), Cu(II)/Cu(I)とチロシン(Y)の-OHで
電子をやりとり
CuA中心
e‒
(Cuイオンが
2つ)
e‒, H+
酸化型
e‒, H+
化合物F
H2O
H2O
e‒, 2H+
還元型
CuB
ヘムa
O2
化合物P
ヘムa3
O2と直接反応
(Fe-Cu中心)
オキシ型
(O2結合型)
4H+が消費される。
ウシ複合体IV (COX)のプロトン輸送チャネル
出口側
X線
複合体IVでも、
み出し機構はまだ
!
ただし、2種のプロトンチャネルがあることは
知られている。
ヘムa
ヘムa3
CuB
K
Dチャネル:入り口(マトリックス側)
のアスパラギン酸(D)が重要な役割を
担う出口まで通じたチャネル。
→Asp 91を変異させると み出しが
止まる。
Kチャネル:Lys 319を介して、反応中
心にプロトンを送り込む役割
→Lys 319を変異させると活性が著
しく低下)
D
Dチャネル
図中の⃝はX線で観察できる水分子、
◎は、存在が推定される水分子である。
(これらが、プロトンをリレーするらしい。)
Kチャネル
入り口側(マトリックス側)
電子伝達と還元電位
ミトコンドリアの電子伝達複合体
の還元準位とATP合成
E°’ [V]
赤字:阻害剤
–0.4
NADH
–0.2
2e–
NAD+ (–0.315 V)
ADP + Pi
複合体I
ΔE°’ = 0.360 V
(ΔG°’ = –69.5 kJ/mol)
(+0.031 V)
2e–
コハク酸
FADH2 複合体II
ロテノン
ATP
CoQ (+0.045V)
0
フマル酸
+0.2
ADP + Pi
複合体III
ΔE°’ = 0.190 V
(ΔG°’ = –36.7 kJ/mol)
アンチ
マイシン
ATP
シトクロムc (+0.235V)
+0.4
+0.6
ADP + Pi
複合体IV
ΔE°’ = 0.580 V
(ΔG°’ = –112 kJ/mol)
CN–
ATP
2e–
+0.8
1
2H+ + –2 O2
H2O (+0.815V)
1
–
2
休止ミトコンドリアの各複合体中
の還元電位
電子伝達と酸化的リン酸化の概要
低H+
マトリックス
ADP + Pi
ATP
ATP
シンターゼ
NADH + H+
- 還元力(NADH, FADH2)から取り
出した電子を伝達し(青い矢印)、
プロトン(H+)を膜間部に み出し
て、H+濃度勾配を作り出す。
- この電気化学ポテンシャルの差
を利用して、ATPを合成する。
H+
NAD+
内膜
I
コハク酸
1/2 O2
FADH2
H+
II
H+
H 2O
H+
IV
FAD
H+
III
膜間部
Q
Cyt c
プロトン み出してため込まれ
る自由エネルギーは、
ΔG =2.3RT[pH(in) – pH(out)]
+ zFΔΦ
z: プロトンの荷電数 (= +1)
F: ファラデー定数 (96485 J/V·mol)
外膜
H+
宿題
高H+
ΔΦ: 膜電位 (陽イオンが負電位側か
ら正電位側に輸送される場合を正)
ある実験で、ミトコンドリア内膜を隔てる膜電位が0.168 V(内部が負)と測定された。
この時、マトリックス側のpHが膜間部側より0.75高かった。この時、プロトン み出し
サイトソル
の自由エネルギーはいくらか。R
= 8.31 (J·K‒1·mol‒1)、T = 310 (K)とする。
ATPシンターゼ
ア外膜
ミトコンドリ
H+
H+
H+濃度が高い
H+
膜間部
ア
ミトコンドリ
内膜
マトリックス
H+ ATP
シンターゼ
e–
H+濃度が低い
1
– O2
2
H2O ADP
+ Pi
ATP
ATPシンターゼの構造 (電子顕微鏡解析)
大腸菌F1Fo-ATPアーゼのモデル
ミトコンドリア内膜(クリステ)
F1Fo-ATPアーゼとも呼ばれる。
膜間部
膜にへばりついた
微粒子がF1
ATPシンターゼのサブユニット構造
F1の構造
ウシ心筋ミトコンドリア(X線構造)
α3β3γδεからなり、α,βが交互
にリング上に並んだ擬3回対称
構造にγが突き刺さっている。
大腸菌F1Fo-ATPアーゼのモデル
2 nm
断面図
↓上から見た図。
b2
グラム陰性菌のc11集合体(X線構造)
a
c12
Foの構造
a1b2c10-14の複合体で、
cサブユニットが膜貫通
リングを形成。(c一つで
1プロトンを受容)
7 nm
5 nm
ATP合成メカニズム
αβサブユニットには3つのコンホメーションO(オープン), L(ルーズ), T(タイト)があり、この
コンホメーション変化にエネルギーが使われる。T状態のみATP合成の触媒活性をもつ。
エネルギー
*触媒活性部位はβサブユニットにある。
b2
c12
a
大腸菌F1Fo-ATPアーゼのモデル
(1) L部位にADPとPiが結合。
(2) 続いて、γとεからなる複合体が回転して
(cリングが回転して)、αβサブユニットの
コンホメーション変化を誘起。
L→T、T→O、O→Lの状態となる。
(3) T部位でATP合成が起こり、O部位からATP
がリリース。
cリング1回転で、3つのATPが合成される。
→c12であれば、12H+から3ATPが合成されたことになる。
4プロトンで1ATPの勘定となる。
→ 真核細胞では、c10なので、約3プロトンで1ATP合成さ
れることになる。
回転メカニズム
cの構造
大腸菌F1Fo-ATPアーゼのモデル
脱プロトン化型(pH 8)
プロトン化型(pH 5)
H+
b2
c12
H+
a
H+
cリングがプロトンのコンベアーになっている
プロトンの放出受け取りでコンホメーション
が変わり、決まった方向に回転すると考えら
れる。
参考動画(森先生紹介済み):ATP-synthase http://www.youtube.com/watch?v=PjdPTY1wHdQ 回転を見る
ATPのみを与えると、
ATP分解反応が起き(逆反応を触媒)、
反時計周りにアクチン繊維が回転。
東京大学・野地研HPより
ガラス基板
γサブユニットに磁性ビーズをつけて、強制的に
時計回りに回転させると、プロトン勾配がなく
てもATPを合成する。
光合成と明反応、暗反応
これまでは、炭水化物の燃焼を考えてきた。
C6H12O6 + 6O2→ 6CO2 + 6H2O
酸化的リン酸化
1
– O2
2
+ H+ + NADH → H2O + NAD+
燃料電池的
還元力を使ってATPを合成
光合成では、光エネルギーを使って炭酸を固定する。
hν
CO2 + H2O → (CH2O) + O2
*(CH2O)は炭水化物を代表させている。
おおまかには逆反応に見えるが、大きく分けて2つの過程から成り立っている。
明反応
hν
2H2O → O2 + 4[H·]
水を光エネルギーで酸化(分解)。
→ 還元力(NADPH)を貯めこみつつATPを合成
暗反応
太陽電池的
CO2 + 4[H·] → (CH2O) + H2O
光を使わない過程であり、4[H·]なる還元力を用いて、炭酸を還元して炭水化物を作る。
→ NADPHとATPから炭水化物を合成
ミトコンドリアの酸化的リン酸化と似ている部分がある!
→葉緑体の光リン酸化
葉緑体(クロロプラスト)
ミトコンドリアとの類似点: 透過性の外膜、不透過性の内膜を持ち、両者の間に膜間部が
存在する。内膜の内側にストロマという空間を持ち、高濃度
の酵素や、独自のDNAなどを持つ。
植物細胞
相違点:サイズが大きい。
(長さ約4-6 µm, 幅約2 µm)
ストロマ内にチラコイド膜を
ストロマ 持つ。折りたたまれて、円盤
ストロマ 状の積層部グラナを形成。
内膜と
外膜
葉緑体
グラナ
葉緑体
模式図
ストロマ
ラメラ
葉緑体
電顕図
*チラコイド膜に、光合成の
機能部位が埋めこまれている。
ミトコンドリア模式図
外膜
膜間部
内膜
チラコイド
外膜
マトリックス
内膜
クリステ
膜間部
グラナ
(層状のチラ
コイド)
ストロマラメラ
(グラナを結ぶ)