輝きのスター!

輝きのスター!
第7サーバー
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じます。
︻あらすじ︼
世界一の有名人を目指す青年〝プトレマイオス・E・T・スター〟。
彼はシロップ村で〝ウソップ〟と出会った事により、麦わらの一味
に加入して、海賊スターへの道を歩き始める。
偉大なる航路において航海を続ける麦わらの一味の次の目的地は
魚人島。
作者の都合で思った以上に長く囚われたスリラーバークでの冒険
も終わり、物語はついに多くの運命が交わり動き出す地、シャボン
ディ諸島へ。
※一時削除も終了して、久しぶりに投稿もしたのでチラシの裏から
脱出。
まぁ無言で厳しい評価ばかり付くと作者がネガティブホロウにや
られるのでまたすぐに引っ込むかもしれませんが。
それと感想にはちゃんと目を通しています。ありがとうございま
す。
ただ一つ返信を返すと全部返信しなければならない感じになって
しまって執筆時間が潰れたりする事が前にあったのでね。
今はとりあえずですが執筆を優先するスタンスにしてますのでご
了承ください。
目 次 第1話・墜ちてきた男 ││││││││││││││││││
第2話・世界一の剣豪 ││││││││││││││││││
第3話・賞金首 │││││││││││││││││││││
第4話・偉大なる航路 ││││││││││││││││││
第5話・青鼻のトナカイ │││││││││││││││││
第6話・兄弟 │││││││││││││││││││││
第7話・決戦はすぐにでも ││││││││││││││││
第8話・それぞれの戦い │││││││││││││││││
第9話・死闘 │││││││││││││││││││││
第10話・アラバスタにさよならを ││││││││││││
第11話・そして空島へ │││││││││││││││││
第12話・シャンドラの灯の下で │││││││││││││
第13話・こおるせかい │││││││││││││││││
第14話・いつか見た夢は⋮⋮ ││││││││││││││
第15話・歴史的大事件 │││││││││││││││││
第16話・合流 │││││││││││││││││││││
第17話・夢を繋ぐ声 ││││││││││││││││││
第18話・託されたライオン │││││││││││││││
第19話・ホラーステージ ││││││││││││││││
第20話・太陽をありがとう │││││││││││││││
第21話・伝説とシャボン玉 │││││││││││││││
第22話・過去からの刺客 ││││││││││││││││
1
11
16
22
28
33
39
47
56
65
71
80
251 222 197 184 168 136 123 114 104 94
第1話・墜ちてきた男
隕石か
その日、空から一つの星が墜ちてきた。
な、なな、なんだっ
﹁す、スター人間
﹂
ス
ター
﹂
!
!
﹂
﹂
﹂
?
﹁海賊
海賊ってお尋ね者だろ。そんなのスターじゃねェよ﹂
たのだった。
ウソップは大袈裟ではなく、自分の物語が動き始めているのを感じ
その中で現れた悪魔の実の能力者。
気持ちはウソップにもある。
それはごっこ遊びの範疇を出ないものであったが、いずれはという
子供を誘って海賊団を結成していた。
ウソップは父親が海賊だという事もあり、海賊に憧れており、村の
を誘う。
長鼻が特徴の〝シロップ村〟の少年、ウソップがそう言ってスター
か。なあ、お前〝ウソップ〟海賊団に入らねェか
﹁しかし、〝悪魔の実〟の能力者ってのは初めて見たぜ。スター人間
やかに自己紹介などを交わしていた。
けれどそんな事を今は彼の妄想の中でしか知る由もない彼らは、和
彼の出現が後の時代に与える影響は大きい。
その恰好はニシキノかプレスリーか。
デフォルメされた星形の船と共に墜ちてきた青年。
と呼んでくれていいぜ
﹁はーっはっはっはっはっはっ おれさまの事は気軽に〝スター〟
!
﹁││おわっ
!!?
おれさまは〝ホシホシの実〟を食べた〝スター人間〟
!!?
いずれ〝世界一の有名人〟になる男だ
﹁とうっ
!!?
ス
ター
いくら飾り立ててみても、結局のところ海賊はお尋ね者であり犯罪
者。
スターが目指すところの世界一の有名人からはだいぶかけ離れて
いると思っていた。
1
?
!
!
しかし当のスターは、海賊という言葉に眉を顰める。
?
﹂
﹁ふっふ、甘いな。甘すぎる。スター、お前は何もわかってない﹂
ター
今は〝大海賊時代〟なんだぜ なら、世界
﹁おれさまが何をわかってないって
ス
﹁だってそうだろう
?
?
﹁がーんっ
た、確かに⋮⋮
﹂
え、〝海賊王〟を知らない人間なんていない﹂
一 の 有名人 と 言 え ば 当 然 海 賊 だ っ て 事 だ。実 際、処 刑 さ れ た と は 言
?
!
でスターの興味を惹く事に成功する。
﹁なあ、おれにプロデュースを任せてみねェか
なんてスターな響きなんだ ウソップ│
王を超える〝海賊スター〟にしてやるよ﹂
﹁か、海賊スター⋮⋮
?
﹂
﹂
おれさまの栄光の〝スターロード〟の舵取り
!
なら、早速他の団員達に紹介だ
はキャプテンに任せるぜ
そうかっ
!
!
│いや、キャプテン
!
!
!
﹂
いる部下の一人だ
てください
だから、帰っ
!
﹂
﹁八千万、すっげーっ
﹁ウソでしょ﹂
﹁げえっ、バレた
﹂
!
﹁ほら、バレたって言った﹂
ソ
おのれ策士め
﹂
!
!!?
﹁しまった、バレたって言っちまった
!
まずはウソップは得意のハッタリで攻めてみる事にした。
ウ
は刀を三本も提げており、いかにも腕の立ちそうな剣士だったので、
しかし、オレンジ髪の少女はともかくとして、もう一人の緑髪の男
た。
デニム生地の半ズボンに草履と、イマイチ想像していたそれとは違っ
ウソップとスターの前に現れた海賊は⋮⋮麦わら帽子に赤ベスト、
今、帰るなら見逃してやるぞ
そして、こっちは、あの悪魔の実を食べたおれの八千万人
!
!
ソップ
﹁そ こ ま で だ 海 賊 共 お れ は こ の 村 を 守 護 す る キ ャ プ テ ∼ ン・ウ
キー・D・ルフィ〟とその二人の仲間が上陸した。
そして││スターがシロップ村に墜ちてきてから数日、海賊〝モン
﹁おおっ
おれがお前を海賊
だが、そんなスターの内心を見事に読みとったウソップは、口八丁
!!?
!
2
!
!
﹁まぁ、あんなのはほっといて村に行きましょう﹂
だが、ウソップの得意技は軽視していた少女によってあっさりと見
破られてしまう。
そこでウソップは作戦に若干修正を加え、悪魔の実の能力者がいる
八千万人の部下はウソだが、こいつが悪魔の実の能
という事を前面に押し出す事にした。
﹁││待てっ
ボコボコにされたくなければ、今度こそ
これは最後通告だぞ 大人しく聞いた方が身のため
力者だというのは本当だ
﹂
帰るんだ
だ
!
!
!
﹂
﹁へえ、悪魔の実ねえ⋮⋮﹂
﹂
﹁またウソじゃないの
﹁今度は本当だ
﹁あれを信じるの
﹂
﹁どうやら本当みたいだな﹂
?
﹂
﹂
こうなれば、スター
おれが援護してやる
﹁くっ⋮⋮どうしても、村へ行くというのか
お前の力を見せてやれ
!
!
﹁すっげーーーっ
﹂
おれさまの輝き││〝スタービー
!
転だ。
ならば見よ
﹁ふふふっ、はーっはっはっはっはっはっ
﹂
﹂﹂﹂﹂
番のようだな
ム〟
﹁﹁﹁﹁ビーム
!
キュボ││キラキラーンッ☆
!!?
ようやくおれさまの出
まぁ、そう言いながらもスターの背に隠れているが、そこは通常運
らと強気に出る。
年少女である事に加えて、こちらには悪魔の実の能力者がいるのだか
ウソップは内心ではビビる気持ちもあるものの、相手が同年代の少
!
!
!
しかしそうは言いながらも、彼らは村への道を進んで行く。
?
剣士と少女が立ち塞がる二人ではなく、麦わら帽子の少年を見た。
ウソップの言葉に、なぜか微妙な空気が流れる。
!
﹁さっきは素直に反応しただろう
?
!!!
!
!!!
!!!
3
!
﹁ほ、本当に能力者じゃない⋮⋮﹂
﹁少しは楽しめそうだ﹂
﹁す、す││あっ、いや⋮⋮さすがはおれの仲間だ
くる。
﹁向かって来るのか⋮⋮マズイぞキャプテン﹂
見たか海賊
!
﹁な、何っ
け、けど、あのビームなら⋮⋮
ス
﹂
ター
に能力を使って来たから、実は戦いは不得手なんだ﹂
﹂
﹁それなんだがキャプテン。おれさまは今まで有名人になるためだけ
かない顔をしていた。
ウソップはスターが放ったビームに勝機を見たが、逆にスターは浮
﹁くっ⋮⋮こうなれば撃退するしかない。頼んだぞスター
﹂
は刀に手をかけ、麦わら帽子の少年に至っては目を輝かせて近寄って
その言葉に散々疑っていた少女こそ、多少腰が引けているが、剣士
ウソップはその技を初めて見た内心の動揺を押し隠しつつ叫ぶ。
!
!
今の技の直撃を受けたくなければ、とっとと尻尾を巻いて帰れ
!
それは事実で、スターの技は見た目は派手でも、要はクラッカーと
﹂
アレ
か花火みたいなもので、しかも本人も人に向けた事がないために、そ
﹂
れらがどこまで使えるかほぼ不明だった。
﹁ま、マジか⋮⋮
﹁マジだ﹂
〝スターシップ〟を出してくれ
﹂
││〝スターシップ〟
!
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
﹁││そうだ スター
わかったぜ、キャプテン
で空を飛んで、おれの〝銀河パチンコ〟で攻撃する
﹁なるほど
!!!
!
?
﹁﹁﹁飛んだっ
﹂﹂﹂
ではないかと。
発百中の射撃と合わせれば、それはもうかなりの無敵さを発揮するの
とりあえず空にいさえすれば安全で、しかも自分の特技でもある百
た。
スターの言葉にウソップの頭は高速で回転し、その答えを弾き出し
!
!
!
!!?
4
!
﹁アレは演出用だ。見た目は派手だが、殺傷能力は全然ないはずだ﹂
!!?
!
〝タバスコ星〟
﹂
〝卵星〟
それに臭ェっ
﹂
!
キャプテン、やったぜ、効いてるぞ
目が
﹁くらえっ
﹁ぎゃあ
!
﹂
キャプテ∼ン・ウソ││﹂
﹁おれは怒ったぞ
﹁う、うう、腕が伸びたっ
﹂
﹂
それにやっぱ
﹂
何せおれは勇敢なる海の戦士、
!
﹁あいつも悪魔の実の能力者だったのか⋮⋮
!!?
﹂
カッコいい
!!!
がる。
﹁はーっはっはっはっはっはっ
わかってるじゃないかっ
何せ
!
﹂
ター人間になる事を定められていたかと思えるくらいのスター性を
このおれさま〝プトレマイオス・E・T・スター〟は名前からしてス
!
同年代の気安さ、さらに明るく友好的なルフィの態度に場は盛り上
よなーっ
あのビームとか空飛ぶ船とか、すっげぇえええっ
﹁ああ。そういうスターはホシホシの実を食べたスター人間なんだろ
オレンジ髪の少女は〝ナミ〟。
緑髪の剣士は〝ロロノア・ゾロ〟。
麦わら帽子の少年はモンキー・D・ルフィ。
﹁そうか。ルフィは〝ゴムゴムの実〟を食べた〝ゴム人間〟なのか﹂
れぞれ自己紹介を交わした。
その後、なんだかんだで和解したというか、仲良くなった一行はそ
まう。
スターの二人はギャーギャーと騒ぎ、戦いの感じは一気に霧散してし
〝スターシップ〟の縁を掴み飛び乗ってきたその姿に、ウソップと
だった。
悪魔の実の能力者であったから、それはもう規格外に加えて予想外
た存在もまた規格外。
ウソップの考え自体は確かに悪くなかったのが、彼らが対峙してい
!
﹁ふふん、そうだろうそうだろう
り、キャプテンの技のネーミングセンスは最高にイカスな
﹁││おおっ
!
!
持つ男だからな
!
5
!
!
!
!
!
!
!!!
?
﹁あ、スターって本名だったんだ
﹂
﹂
!
戦いを決意した。
﹂
﹂
﹂
は、ウソップの提案で、その一件をウソップの〝ウソ〟にするために
は海賊で、村に襲撃計画を立てている事を偶然知ってしまった一行
それから⋮⋮カヤの屋敷で働いてる執事の〝クラハドール〟が実
のお嬢様だ﹂
﹁ん、〝カヤ〟に会いに行ったんだ。カヤってのは丘の上にある屋敷
﹁││彼、どこに行ったの
線で追ったナミはとりあえずでその場に残るスターに尋ねる。
そう言ってルフィ達を案内した村のめし屋を出て行くその姿を、視
﹁ああ。わかった﹂
行ってくるから﹂
﹁お。そろそろいい時間だな。それじゃ、スター、おれはいつものに
時間を確認して、立ち上がった。
ナミが自慢げにそう語るスターに呆れたように呟くと、ウソップが
﹁そりゃ、本名だからみんなそう呼ぶわよねえ⋮⋮﹂
んとご近所でも評判のスターだったんだぜ
﹁その通りだ。だから、おれさまは幼少の頃からスターくんスターく
?
﹁そういや、お前ら何ができるんだ
﹁斬る﹂
﹁のびる﹂
﹁盗む﹂
﹁目立つ﹂
﹁││そんで、お前は
﹁隠れる﹂
﹂﹂﹂﹂
?
﹁⋮⋮来ないな﹂
しかし万全の状態で待ち構える五人の前に、けれど海賊は現れな
い。
不意にナミが何かに気づいた。
6
?
そんな風に時間は流れ⋮⋮夜が明け、海賊襲撃の朝が来る。
﹁﹁﹁﹁お前は戦えよッ
?
!!!
この海岸で襲撃
﹁ねえ、ちょっと待って。何か北の方から声が聞こえるんだけど⋮⋮
﹂
北にも最初お前らと出会った海岸がある
本当にここから海賊たちは来るの
﹁北
!
﹂
﹂
計画を話し合ってたからてっきりこっちから来ると思ってたけど、も
しかして⋮⋮
﹂
早く北の海岸に行かねえとっ
!
﹁海岸を間違えたって事っ
﹁ヤバイ
!!?
!
﹂
!
てめェ、何しやがるっ⋮⋮ッ
を取られ、咄嗟に傍にいたゾロを掴む。
﹁がっ
二人とも落ちるよりマシ
あたしの宝が危ないのっ
﹂
!
立ち紛れにとりあえず二人を殴った。
それに乗せてくれるのかーっ
!
星の船
﹂
まっていたルフィも拾うと北の海岸へ││。
﹁なんだ
﹂
宇宙人かっ
!!?
!!?
いきなり現れた空飛ぶ船の存在に、海賊達は大いに驚愕した。
!
﹁UFOだっ
!!!
﹁うわっ、攻撃して来るぞっ
﹂
理不尽な暴力にも負けず、〝スターシップ〟は一人走って行ってし
ビス用の乗り物なんだからな﹂
﹁特別だぜ。これは移動用でもあるが、本来はおれさまのファンサー
﹁うおぉーっ
﹂
ナミは誤魔化すように咳払いをして、〝スターシップ〟に乗ると、苛
〝スターシップ〟の上で白い目を向けるスターとウソップの姿に、
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
とと全員おれさまの〝スターシップ〟に乗れよ﹂
﹁⋮⋮何やってんだ。キャプテンが仕掛けた罠で遊んでないで、とっ
そんな醜い争いを続けるゾロとナミの上空には影。
﹁だったらてめェが落ちやがれっ
でしょ
﹁ごめんっ
!
﹂
!
!
﹂
続いて駆け出そうとしたナミだが、ウソップの仕掛けていた罠に足
﹁││あっ、しまっ、足が滑る⋮⋮
その言葉にルフィが真っ先に駆け出した。
!
!
!!?
7
!!?
?
!
!!?
﹂
﹂
﹁││よしっ お前ら、戦闘に自信があるようだから飛び降りろ。
それがいいわ
おれ達はこのまま安全な空から援護に徹する
﹁そうね
右だ
左だ
バカ、後ろだっ
!
キー・D・ルフィの戦いが始まった。
﹁何やってる
﹂
!
タービーム〟
﹂
﹂
?
!
でも、全然ダメージがないじゃねェかっ
!
﹁むっ、なんだこのビームは
﹁当たった
﹂
﹁だーっ、もう見てらんねえっ くらえ、おれさまの輝き││〝ス
攻撃は当たらず苦戦する。
〟を使って、無差別に駆け無差別に斬る〝杓子〟という技にルフィの
普通に走っても100m4秒台の足を存分に活かした技〝抜き足
C・クロは純粋に速かった。
あれくらい見えて当然だ﹂
んなただ走ってるだけの奴よりよっぽど速い。それに慣れていれば
﹁当然だぜ、キャプテン。この〝スターシップ〟の最高速度の方があ
?
!
﹁スター、お前、あ、あいつの動きが見えるのかっ
﹂
ル││〝百計のクロ〟こと〝C・クロ〟と海賊王を目指す海賊、モン
異変に気付いたカヤによる交渉も失敗に終わり、執事のクラハドー
襲撃計画を立てた張本人だけとなった。
海賊団の副船長であり催眠術師の〝ジャンゴ〟も撃退し、残るはその
得意とする射撃の相性が本当に抜群だった事もあって、そのクロネコ
ついでに言えば、空を自由に飛べる〝スターシップ〟とウソップが
一蹴された。
と〝海賊狩り〟の異名を持つ、元賞金稼ぎの剣士ゾロの活躍によって
海岸に上陸して来た〝クロネコ海賊団〟はゴム人間であるルフィ
﹁お前らな⋮⋮。まあ、不満はねェが﹂
!
!
!
!
!!!
﹂
えばキャプテンの射撃みたいにほぼ必中なんだぜ。ビームって速い
からな﹂
﹁当たったって倒せなきゃ意味ないじゃないの
!
8
!
﹁だから、アレは演出用だって言っただろキャプテン。けど、その分狙
!
﹂
あの〝スタービーム〟の残
あれだけ輝いていればルフィの目にも見えるはずだ
﹁そんな事わかってる。しかし、見ろ
滓を
﹂﹂
!
!
!
な技を使いやがる﹂
!
﹂
﹁おうっ
﹂
!
﹂﹂
?
その言葉を口にした。
キャ⋮⋮
﹂
キャプテン
﹂
キャプテンはおれだろうなっ
?
おれが船 長だ
﹂
!
﹁おれ達もう仲間だろ
﹁っ
﹁ばかいえ
!
!
﹁お、おれさまがスターだという事だけは譲らないぞっ
﹂
!
!
!
の許可なく、おれさまより目立つのは禁止だからなっ
おれさま
言われた二人が顔を見合わせていると、ルフィが当然の事のように
開いた。
そのルフィの態度の答えだとばかりにゾロがぶっきらぼうに口を
﹁﹁えっ
﹁││何言ってんだ。早く乗れよ﹂
顔をする。
ちを迎えようとしていたが、その別れの言葉にルフィは不思議そうな
ルフィ達に感化されたウソップの提案で、ウソップとスターも旅立
別れの日⋮⋮それぞれの旅立ちの時。
を存分に聞かせてやるぜ﹂
﹁それじゃ、お前ら元気でな。今度会った時は、おれとスターの冒険譚
の中に隠されたのだった。
激闘の記録も、全ては彼らの記憶の中にだけ残り、ウソップのウソ
││そして、シロップ村にはいつも通りの日常が流れる。
ルフィの攻撃がキャプテン・クロに突き刺さり、C・クロは倒れた。
任せろっ
﹁ああ。観客もいないから今回は譲ってやるぜ。とっとと決めちまえ
ファ ン
かりだ。でも、あとはおれがやる。もう手を出すなよ﹂
﹁ししししっ サンキュー、スター
あんだけキラキラなら丸分
﹁⋮⋮小癪な真似を。悪魔の実の能力者ってのはどいつもこいつも変
﹁﹁おおっ
!
!
9
!
!
!
こうして、〝麦わらの一味〟に、〝海賊スター〟ことプトレマイオ
ス・E・T・スターも加わったのであった。
冒険が始まる││。
10
第2話・世界一の剣豪
〝麦わら海賊団〟││〝麦わらの一味〟になったスターとウソッ
プ。
カヤからお礼として贈られた〝ゴーイングメリー号〟に乗り、道中
で拾ったゾロの弟分である〝ヨサク〟と〝ジョニー〟の情報を基に、
新たな仲間〝コック〟を求めて、一行は一路〝海上レストラン・バラ
ティエ〟へと向かう。
しかし、運悪く海軍の軍艦も食事に訪れており、その砲撃を弾き返
した結果、バラティエに直撃。
修理代を払えなかったルフィは、1年間の雑用となってしまうので
あった。
その後、ルフィが雑用を、ルフィ以外のメンバーがバラティエの料
理を堪能していると、軍艦からこの東の海最大と言われる〝クリーク
﹂
男││世界最強の剣士〝鷹の目のミホーク〟。
海軍との取引で有益な海賊として、海賊行為を認められた七人の海
11
海賊団〟の団員である男が脱走し、一時騒然となるが、戦う海上レス
トランを謳うバラティエのコックがそれを撃退した。
││だが、それを同じくコックの〝サンジ〟が裏で食事を与えた事
で、今度はクリーク海賊団の〝首領・クリーク〟その人を引き入れる
結果となってしまう。
グ ラ ン ド ラ イ ン
五千人の部下を持つ大艦隊の首領だったクリークだが、彼らは〝
偉大なる航路〟でたった一人の男に敗れた落ち武者だった。
だと言うのに、クリークの野心は未だに尽きず、バラティエの食料
で空腹を満たしたクリークと生き残っていた百人ほどの部下との決
﹂
﹂
〝鷹の目
戦の火蓋が切って落とされるかと思われたその瞬間││。
﹁ふ、船が割れた⋮⋮
﹁違う。あれは斬られたんだ⋮⋮っ
の男〟だぁ∼∼∼ッッッ
﹁で、で、出た⋮⋮っ、おれ達を追ってきやがった⋮⋮っ
!
五千人から構成されるクリーク海賊団をたった一人で斬り破った
!!!
!
!!?
賊〝王下七武海〟の一人であり、ゾロの目指す〝世界一の剣豪〟の座
に君臨する男。
﹂
そんな男を目の前にして、ゾロが黙って見逃すわけがなかった。
その結果││。
﹁〝三刀流奥義、三・千・世・界〟ッッッ
ゾロの刀は世界一に届かなかった。
﹁何を
﹂
それどころか三刀のうちの二刀までが斬り砕かれてしまう。
!!!
﹁見事││ッ
﹂
﹁う わ あ あ あ あ あ あ あ ッ ッ ッ
﹂
﹂
・
・
・
⋮⋮文句あるか、海賊王
あいつに勝って、世界一の大剣豪にな
!
るまで、もう、絶対に、おれは敗けねェ
﹂
!
﹁しししし
ない
﹂
悔し涙でくしゃくしゃになった声と顔でゾロが誓う。
!
﹁││二度と敗けねェから
血を吐きながらゾロは言葉を続ける。
ねぇと⋮⋮お前が困るんだよな⋮⋮ガフ
﹁不 安 に さ せ た か よ ⋮⋮⋮ こ の お れ が。世 界 一 の 剣 豪 くらい に な ら
を天に掲げる。
ウソップ達に救出されたゾロは、起き上がる事もできないままに刀
ゾロはその身に重傷を負いながらも生きていた。
の男はまだ生かしてある﹂
﹁若き剣士の仲間達か⋮⋮⋮お前達もよくぞ見届けた。安心しろ、あ
が激昂して殴りかかるが、それはあっさりと躱されてしまう。
一対一の決闘なのだからと││それまで必死に耐えていたルフィ
!!!
!
ゾロは敗れた。
こ の 野 郎 ぉ お お お お お お お ッ ッ ッ
﹁││背中の傷は、剣士の恥だ﹂
?
!
ない男もいた。
ルフィはその決闘に納得しているようだが││対して、納得してい
ルフィはそれに笑顔で応えた。
!
12
!!!
!!!
﹂
プトレマイオス・E・T・スターである。
﹁││む
﹂
﹂
イーストブルー
ルフィは納得してるようだが、おれさまはし
﹂
おれさまより目立った上に、おれさまの仲間を傷つけ
!!!
たてめェは絶対に凹る
ていないぞ
﹁誰が無名だごらぁ
だ無名でありながら、知らずその境地に立つ者がいるとはな﹂
能力と融合させたのか⋮⋮まさか、最弱の海である〝 東 の 海 〟に、ま
﹁〝スターオーラ〟
なるほど、悪魔の実の能力者⋮⋮悪魔の実の
﹁││おれさまの〝スターオーラ〟に勝手な名前をつけてんじゃねェ
は⋮⋮
﹁〝覇気〟の使い手か⋮⋮しかし、目に見えるほどのその黄金の輝き
る〝ナニカ〟だ。
流れ的に当然だが、その空気を震わせた正体はスターから発せられ
轟││ッと空気が震える。
?
?
﹁行くぜ││〝スピードスター〟
﹁甘い﹂
﹂
おれさまの本気のスピードだぞっ
!
!!!
﹂
!!!
だから。
であったはずのゾロを歯牙にも掛けないほどの強さを持っているの
何せ相手は世界一の剣豪││彼らの中でも相当の実力を持つ剣士
ターだが、それは確かに下策だった。
足による攻撃だけでは足りないと、両手に光り輝く剣を持ったス
﹁このおれに剣で挑むとは下策﹂
﹁〝スターソード〟
しかし、それでも最強の剣士には容易く見切られ迎撃される。
いた。
足に星を付けたスターの速さはキャプテン・クロのそれをも越えて
は速かった。
〝スターオーラ〟を纏い、〝スーパースター〟状態となったスター
﹁││ちぃっ
﹂
スターの叫びに呼応するように〝スターオーラ〟が激しく輝く。
!
!
!
13
?
!
﹂
﹁ぐ ぐ っ ⋮⋮ く っ そ ぉ お お お っ っ っ
ター〟
だ っ た ら │ │ 〝 ト リ ッ ク ス
星の海に沈みやがれっ
!!!
星を周囲に生み出した。
﹁││シュート
﹂
スターはバッと距離を取ると〝スターソード〟を掻き消し、無数の
!!!
ターパワー〟だ
でも、てめェは許さねえっ
﹂
セ ッ ト こ れ が お れ さ ま の 最 強 〝 ス
!!!
墜ちろ││〝シューティングスター〟
!!!
一撃であった。
﹁ば、バカ野郎っ
てめェ、うちの店まで潰す気かっ
﹂
!!!
次にスターが気がついた時⋮⋮スターは小舟の甲板││ゾロの隣
﹁ふっ。この一時は││なるほど。実に有意義な〝暇潰し〟だった﹂
体勢に陥ったスターだからの現象だった。
全力を使い〝スターオーラ〟も尽き、自分で放った技と同じく墜落
た。
不意にそれまで雑音として流してた周囲の声がスターの耳に入っ
!
いが、それはまさしく〝メテオインパクト〟級の圧力を持った必殺の
これまで大規模戦闘の経験なんて当然ないスターは気づいていな
ける。
スターは超巨大な星を生み出すと、それをミホークに向けて投げつ
!!!
﹁│ │ 〝 ビ ッ グ ス タ ー 〟
眼下にミホークを見据え、スターは現在最強の大技を発動した。
み出しているのだ。
スターの足の裏に付いた星が〝スターシップ〟のような浮力を生
!!!
りにできているようだが、戦闘経験が圧倒的に足りない﹂
﹁スターにそんな経験があるか
!!!
スターは跳び、中空に浮かび上がる。
﹂
﹁若い⋮⋮〝覇気〟による底上げ、その融合含め、能力の応用もそれな
弾き斬られ消滅した。
だが、ミホークが剣を一振りすると、それだけで無数の星の全てが
﹁児戯だな﹂
を仕掛ける。
その星がスターの掛け声と共に、ミホークの全周囲から一斉に突撃
!!!
!!!
14
!!!
で寝かされていた。
スターもまた、世界一の剣豪の前に敗北を喫したのである。
15
第3話・賞金首
麦わらの一味の〝航海士〟であるはずのナミがゴーイングメリー
号と宝を持って逃げた。
そ れ が ク リ ー ク と ミ ホ ー ク の 襲 来 と 同 時 進 行 で 起 き て い た 事 件
だった。
ルフィだけがクリークとの決着をつけるためにバラティエに残り、
残るメンバーはナミを追って〝ココヤシ村〟へとやって来ていた。
ココヤシ村はナミの故郷であると同時に、〝魚人海賊団・アーロン
﹂
一味〟によって支配され〝アーロンパーク〟とその名前を変えてい
た。
﹁││で。結局おれさま達は何をすればいいんだ
じゃねえか
﹂
魚人だぞ 魚人は人間の何倍も身
﹁〝 ア ー ロ ン 〟 と か 言 う 魚 人 を 倒 し て、あ の 女 を 連 れ 戻 せ ば い い ん
?
うなんて冗談じゃねェ
﹂
体が資本だからな
﹁もう治った﹂
﹁ウソつけえっ
﹂
﹂
ゾロだって大怪我してんだしよ﹂
魚人だろうが巨人だろうが負ける気はないぞ
﹁おれさま、戦いは不得手だが、身体能力には自信がある。スターは身
!
﹁そ、そういう問題じゃねェって
!
スターへと話を振る。
﹂
﹁⋮⋮それよりも、スター。聞きたい事がある﹂
﹁ん、なんだ
﹁あ、ああ⋮⋮その〝スターオーラ〟ってのは、お前の能力に依存する
﹁〝スターオーラ〟だ﹂
﹁あの鷹の目が言ってた〝覇気〟とか言う技の事だが││﹂
?
16
﹁そうか﹂
﹁そうかじゃねェよ、スター
!
体能力があるって話だ。それが海賊団を作るくらいにいるんだ。戦
!
?
その傷の酷さを知っているウソップは叫ぶが、ゾロは素知らぬ顔で
!
!
!
技じゃねえのか
た﹂
﹁ぎゃあ
﹂
鷹の目は他にも使い手がいるような口振りだっ
││まあ、なんだ⋮⋮。〝気合〟とかを実際に力に
﹂
あいつ水で攻撃して来るぞ
﹂
銃弾なんかよりぜんぜん
アーロン一味のアーロン、その人物が動くまでは││。
手を一方的に攻撃できていた。
し、〝スターシップ〟による空からの攻撃は反則と言えるくらいに相
ゾロは大怪我をしていると言うのに、多くの団員と幹部の一人を倒
意外にもと言うか││彼らは善戦していた。
ヨサクとジョニーはルフィ待ちだ。
んだ。
結局││スター、ウソップ、ゾロの三人はアーロン一味に戦いを挑
ればならねェらしい﹂
ていたが⋮⋮あいつを超えるためにはそういうものも身につけなけ
﹁〝闘気〟⋮⋮いや〝剣気〟か。そういうのは精神的なものかと思っ
変える技って事じゃねェか
﹁おれかよっ
﹁⋮⋮ウソップ。翻訳してくれ﹂
プを見た。
スターのスター的には懇切丁寧な説明に、ゾロは眉を顰めてウソッ
くてもスター性があれば多少は使えるかも知れない﹂
ター性で自分をより輝かせるための技だからな。スター人間じゃな
ター人間になってからだが、〝スターオーラ〟は内から滲み出るス
﹁ふ む。お れ さ ま が 〝 ス タ ー オ ー ラ 〟 を 使 え る よ う に な っ た の は ス
?
﹁大丈夫だ、キャプテン。あの程度の攻撃避けてみせるぜ
!
も思っていない男だった。
実際にその筋力は一般人の比ではなく、軽く一軒家を持ち上げてブ
ン投げる事ができるほどで、そのアーロンにしてみれば、わずか少量
の水すらも散弾銃の威力を持たせる事ができた。
だが、〝スターシップ〟は何せ空を飛んでいるのだ。
17
?
!
アーロンはノコギリザメの魚人で、下等種族と考える人間をなんと
!
ヤベェっ
!!? !
ク・
オ
ン・
ダー
ツ
﹂
前後左右、上空高くにも自由自在で簡単に逃げる事ができる。
シャー
﹁││〝鮫・ON・DARTS〟
今度は本人が飛んできやがった
﹂
﹂
!
アーロンの飛び出しはかなり鋭かったが、かつてルフィと出会った
﹁ルフィの時と同じパターン阻止っ
﹁ぎゃあ
速を利用してロケットのように飛び出して攻撃を仕掛けてきた。
ら、内部にまでせり出している海の中に飛び込むと、魚人故の水中加
その状況に苛立ったアーロンは、アーロンパークの正面入り口か
!
時に墜とされた経験から、スターは〝スタービーム〟を推進力にし
スター
﹂
〝スターオーラ〟を使って、あの鷹の目
て、アーロンの攻撃を避ける。
﹁や、ヤバイぞ
の時みたいな戦いをしてくれ
!
﹂
じゃあ、なん
ゾロもそうだが、回復し
!
だ﹂
﹁な、何ーっ
﹂
!
破滅の予感しかしねェ
﹁││その場のノリ
てからでよかったじゃねェかっ
でおれ達こんな突撃を仕掛けてんだよっ
そういう事はもっと早めに言えよっ
耗が激しすぎて、そうそう使えないんだ。少なくともしばらくは無理
﹁残念だが、キャプテン。〝スターオーラ〟はさすがのおれさまも消
!
!
﹂
お前は、おれの仲間だ
﹂
﹁ナミーーーッ
﹁⋮⋮うんっ
∼∼中略∼∼
﹂
!!!
それは今から8年前の出来事⋮⋮ナミと、その義理の姉〝ノジコ〟
ナミがゴーイングメリー号や宝を持って逃げた理由。
それは今更の事だろうか。
!!!
中││見事にアーロンを撃破して勝鬨を上げた。
新たに仲間にしたサンジが参戦し、ナミやココヤシ村の住人も見守る
しかし、危機一髪でクリークを倒して駆けつけたルフィとルフィが
﹁イーヤーッ
?
!
!!?
!!?
!
!
18
!
!
イーストブルー
の育ての親である〝ベルメール〟が東 の 海に現れたアーロンに殺さ
れた事から始まる。
憎い仇ではあったが、普通の人間にはとても倒せる相手ではない魚
人。
アーロン自身が魚人の中でもかなり強い存在だという事もある。
周囲の海軍の船もあっさりと落とされた。
倒す事はできない⋮⋮村の全員が人質と言える状況に、その時には
すでに〝航海士〟として開花し始めていたナミは、その手描きの海図
をアーロンに見初められた事から、幼いながらにアーロンと交渉し、
一つの約束をした。
〝1億ベリーで村を買う〟という約束。
金の約束は守るというアーロンの言葉を信じ、ナミはそれから一人
孤独な戦いを始める。
ノジコには事情を話していたし、実は村の者達も全てを知っていた
のだが、それを知ったのはつい先程の事だし、ナミが一人で海賊相手
に泥棒をしていたという事実は変わらない。
そして、歯を食いしばり血を流しながらも、1日1日と時間は流れ
││8年⋮⋮もう少しで1億ベリー貯まるという段階で、ナミはル
フィと出会った。
自ら海賊と名乗ってはいるものの、海賊らしくない海賊。
その戦闘力から使えると判断して手を組んだのが始まりだったが、
それからの日々はナミにとっても楽しいと言える時間だった。
しかし、アーロン一味がまた暴れ出しているという話をバラティエ
周りで知り、楽しんでいる場合ではないと再確認した。
それがあらすじ⋮⋮だが、アーロンは約束を守らなかった。
直接的に破ったわけではないが、ナミが8年の歳月をかけて集めた
もう少しで1億になるその金を、繋がりのある海軍大佐に泥棒で得た
金として奪わせた。
人間を下等種族と見るアーロンにとっては、8年の歳月がすぎよう
ともナミはあくまで利用価値のある道具で、仲間でもなんでもなかっ
たのだ。
19
ちなみに、麦わらの一味は誰もそれらの事実を知らなかったが、た
だ仲間であるからと、その仲間が苦しんでたからや、泣いて助けを求
められたからというだけで、その凶悪なアーロン一味に戦いを挑んで
〝スターステージ〟
﹂
﹂
﹄
﹂
いたりするが⋮⋮それはやはり今更の事なのだろう。
﹂﹂
﹁││〝スターマイク〟
﹁﹁おおっ
!!!
﹃おれさまの歌を聴けぇえええええええええッッッ
﹁ピィーピィーッ
﹁いいぞ、スターっ
!
﹄
!!!
∼∼中略∼∼
﹂﹂﹂﹂﹂﹂
それに写真写りもバッチリだ
だが、額
!
!
﹁ス タ ー が 本 気 で 戦 っ た の っ て 鷹 の 目 の 時 だ け だ か ら だ ろ。に し て
プしてもいいと思うんだが﹂
がちょっと安いな。おれさまのスター性を考えるに、もう一桁はアッ
キな事をしてくれるぜ
﹁お、おれさまのもあるじゃねえかっ。777万ベリー 海軍もイ
﹁おい、おれ3千万ベリーだってよ﹂
それを見て、麦わらの一味は揃って声を上げた。
書。
ココヤシ村を出てしばらく、ナミが買った新聞に挟まれていた手配
﹁﹁﹁﹁﹁﹁ああ∼∼∼ッッッ
!!!!!
この8年の間にはなかった賑やかで楽しい夜が更けていく⋮⋮。
歌声は、宴会を大いに盛り上げたのだった。
スタースター騒いでいるだけあると言うべきか、無駄に上手いその
E PIECE
﹃ありったけの夢をかき集め││諸般の事情により、以下略││ON
テージを能力で出すと歌い始めた。
その中でこれぞ本領発揮とばかりに、スターは星形のマイクとス
解放の宴。
実際そんな彼らはこうしてただただ騒ぎ笑っているのだから。
!
!!!
!!!
!
20
!!!
ファ ン
も、今回は能力者組だけかー。ホッとしたような残念なような⋮⋮﹂
﹂
﹁くっ⋮⋮次はもっと観客の事も考えなければ﹂
﹁え、鷹の目って何⋮⋮
﹁ああ、実は││﹂
こうして、ルフィとスターの二人は賞金首として手配される事に
なったのだった。
21
?
第4話・偉大なる航路
次に麦わらの一味が向かった先は〝ローグタウン〟。
ワ
ン
ピー
ス
始まりと終わりの町││海賊王の〝ゴールド・ロジャー〟が処刑さ
グ ラ ン ド ラ イ ン
れたという町であり、その海賊王が残した宝〝ひとつなぎの大秘宝〟
が存在すると言われる、偉大なる航路への玄関口でもある町だ。
その町において、なぜかルフィは処刑されかけていた。
サンジ
ウソップ
││ぴぎゃッッッ
ナミ スター
﹂
わりぃ、おれ
スター達と出会う前にルフィが倒した海賊〝道化のバギー〟と〝
﹁ぐあっ
﹂
!
金棒のアルビダ〟による奇襲を受けた結果である。
﹁ゾロ
死んだ﹂
﹂﹂
!
﹁勝手に││おれさまより目立つなぁーーーッッッ
﹁﹁縁起でもない事を言うんじゃねえ
!
!!?
!!!
!
﹂
!
おれさまの許可なくおれさまより目立つなって
!
なんだこいつ、殴れねェっ
﹂
!
﹂
サンキュー、スター
! !!!
ねェぞ﹂
煙がはがれた
!
﹁││〝スタービーム〟
﹁おっ
﹂
﹁こ こ ま で だ 麦 わ ら。一 度 お れ の 煙 に 捕 ま っ た 以 上、も う 逃 げ ら れ
﹁くそっ
嵐に変わった天候の中で麦わらの一味を追撃する。
で〝モクモクの実〟を食べた〝煙人間〟の〝スモーカー〟の部隊が、
ゾロと何やら面識があるらしい女剣士〝たしぎ〟と海軍本部大佐
に雪崩れ込んで来た事で、逃げに徹する事になった。
海賊同士が潰し合うのならと、様子見をしていた海軍の海兵達が広場
ルフィと合流したスター、ゾロ、サンジの三人だったが、それまで
﹁うん、わりぃ。助かった﹂
言っただろ
﹁ルフィ、てめェ
﹁││なははは、やっぱ、生きてた。もうけっ﹂
雷という自然現象だった。
その処刑を止めたのはスターの〝フライングスター〟と突然の落
!!?
!
22
!!!
!
!
﹁ちぃっ、そういや、もう一人能力者がいたんだったな⋮⋮ッ
〝スタービーム〟に殺傷能力はない。
だが、重さのない煙を霧散させる事には役立った。
出航させる。
﹂
﹁おれは〝オールブルー〟を見つけるために﹂
﹂
﹁おれぁ大剣豪﹂
﹁おれは海賊王
﹁わたしは世界地図を書くため
ター
﹁お、おれは勇敢なる海の戦士になるためにだ
ス
グ ラ ン ド ラ イ ン
偉大なる航路
﹂
﹁そして、おれさまは世界一の有名人になるためだ
﹁﹁﹁﹁﹁﹁行くぞ
∼∼中略∼∼
﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹂
﹂
他のメンバーもそれぞれ追跡を振り切り合流すると、そのまま船を
ゴーイングメリー号へと飛んだ。
事で、スターの〝スターシップ〟に乗り込む余裕が生まれ、一気に
その後││突然の突風に押し飛ばされ、スモーカーと距離が離れた
!
ラブーン〟と約束を交わし、そこで撃退した怪しげな二人組〝Mr.
9〟と〝ミス・ウェンズデー〟の頼みで〝ウイスキーピーク〟へと航
路を定めた。
ウイスキーピークで一行は住民の大歓迎を受けたが、それは住民全
員が賞金稼ぎである彼らの罠であった。
おれはお前
百人の賞金稼ぎを相手に││しかし、ゾロは一人でそれを返り討ち
にした。
お前がそんな恩知らずだとは思わなかった
だが││。
﹁ゾロ
!!!
フィがゾロへと攻撃を仕掛け││。
23
!
!!!!!!
〝リヴァース・マウンテン〟を越え、〝双子岬〟で巨大なクジラ〝
!!!
!
!!!
!!!
﹂
!!!
すっかり罠にハマって眠っていたために事情がわかっていないル
を許さねェ
!!!
﹁てめェら
﹂
これで何度目だ
目立ってんじゃねえッッッ
おれさまの許可なくおれさまより
!!!
ピストル
﹂
﹁〝ゴムゴムの銃 〟
﹁〝鬼斬り〟
﹂﹂
﹂
﹂
に乱入した事で三つ巴の戦いが繰り広げられる事になった。
酔っぱらいながら空を飛んでいたスターも、若干酔った勢いそのまま
〝スターシップ〟で空から酒の雨を降らせ、そのままふらふらと
!!!
!!!
﹂
ヒュゴッ││スガアアアアアンッッッ
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
﹂
すっげーーーッッッ
!
﹁てめェも殺す気かッ
﹁なんだ今の
!!?
〝海賊スター〟になるにあたって戦闘力が必
!
﹂
!
加えて││。
﹂
﹂
!
﹁││〝スターオーラ〟
﹁まけねェぞ、スター
﹁ここで使ってきやがったか⋮⋮っ
!!!
﹂
!!!
﹁くそっ
うわっ、いてェっ
﹂
スターの速力が上がり、その姿が掻き消えた。
﹁││〝スピードスター〟
三つ巴が一対二の戦いへと移行していく。
〝スターオーラ〟によってスターが大幅に強化される。
!
﹂
確かにそれはなかなかの閃きであった。
つ新技。
〝スターオーラ〟ほどの消耗を必要とせず、大砲並みの破壊力を持
を撃ち出すという新たな攻撃手段を思いついたのだ
須だという事に気づいたおれさまは〝スタービーム〟の力で〝星〟
していると思うな
﹁はーっはっはっはっはっはっ おれさまがいつまでも現状で満足
!
!!!
の二人が己の直感に従ってその場から跳び退く。
〝スタービーム〟なら問題ないと無視しようとしたルフィとゾロ
﹁﹁ダスト
﹁〝スターダストビーム〟
!!!
!!!
!
!
24
!!!
?
!
﹁いてェ⋮⋮ ゴム人間であるルフィに打撃が効いてやがるのか
?
もらうぜ、スター
なれねェ⋮⋮っ
﹂
﹂
ならなきゃいけねェ。スターにまけてるようなおれじゃ海賊王には
じゃ追いつけねェ⋮⋮っ。このままじゃダメだ。おれはもっと強く
﹁て て っ ⋮⋮ あ の 速 さ に は だ い ぶ 慣 れ て き た ぞ。だ け ど、今 の ま ま
そして、ルフィもまた││。
を最大限に利用する事にした。
スターの蹴りに痛みを感じるルフィの様子を見て、ゾロはこの状況
﹁││〝スターソード〟
﹂
な一つのようだな。なら、この状況はうってつけだ。存分に盗ませて
なるほどな⋮⋮やはりアレを覚える事が鷹の目を超えるのに必要
?
突っ込んでくる。
﹂
ちょっと速くなったのか
﹁スタァアアアアアッッッ
﹁││振り切れない
く動けるみてェだな
ラ イ フ ル
﹂
﹂
││〝ゴムゴムの回転弾〟
﹂
次はぶっ飛ばしてやる
﹁くおっ││腕まで速く⋮⋮っ
﹁くそ、おしいっ
﹂
!!!
﹂
﹁⋮⋮おれを忘れるなよ。 ││〝艶美魔夜不眠鬼斬り〟
﹁おわっ
﹂
﹂
わかってきたぞ、地面をたくさん踏めばその分だけ速
!
た〝闘気〟を受け止めた。
﹁やっぱ〝闘気〟じゃ足りねェのか⋮⋮﹂
!!!
﹁てめェら、おれさまを││﹂
﹁││あんた達、いい加減にやめなさーいッッッ
﹂
芒星が刻まれた地面から伸びる光の壁によって、ゾロの刀から放たれ
ルフィが横に跳び逃げるとほぼ同時に、スターは能力を発動し、五
!!!
!!!
!
!
﹁しししし
!!!
それによって一瞬余裕が生まれるかと思ったが、そこにルフィが
を取りながら〝トリックスター〟でその追撃を防ぐ。
ゾロの刀を、速力の差でなんとか弾く事に成功したスターは、距離
!
!
25
!!!
!
?
!
!
﹁││〝ペンタグラム・フィールド〟
!!?
ナミがその戦いを止めた時には町が半壊していた。
それに巻き込まれて、何やら倒れている二人組がいたが、それはナ
ミの話によると敵らしいので放置した。
それぞれが説明を受けたり、酔いや眠りから醒めた事によって事情
﹂
を把握していく。
バロックワークス
﹁〝 B・ W 〟
秘密犯罪会社B・W││最終目的である理想国家の建設の為に〝ア
ラバスタ王国〟の転覆を狙う謎をモットーにした組織。
その特性故にボスの正体を知る者は副社長であるそのパートナー
以外にはいないとされていたが⋮⋮ミス・ウェンズデーことB・Wに
潜入していたアラバスタ王国の王女〝ネフェルタリ・ビビ〟がその正
体に辿り着いた。
王下七武海の一人〝クロコダイル〟、その人に。
﹁王下七武海っていうと、あの鷹の目の﹂
﹁さっそく会えるとは運がいいぜ﹂
﹂
﹁どんな奴だろうなー﹂
﹁黙れ、そこ
のはナミだったが、まさかの大物の名前に腰が引けているようだっ
た。
ア
ン
ラッ
キー
ズ
その話を断る事を考えたナミだったが、B・Wのエージェントであ
る鳥とラッコ〝13日の金曜日〟に一部始終を見られており、ボスの
正体を知ってしまった事でB・Wの抹殺リストに乗る事になってし
まった。
だが、ビビの護衛隊長である〝イガラム〟が囮として先行した事
で、一時的にだがその目を晦ませる事に成功する。
しかし、それも束の間││B・Wの副社長である〝ミス・オールサ
ンデー〟が麦わらの一味の前に姿を現した。
﹂
﹁│ │ さ っ き、そ こ で 〝 M r.8 〟 に あ っ た わ よ。ミ ス・ウ ェ ン ズ
デー﹂
﹁まさか⋮⋮あんたがイガラムを⋮⋮
!
26
?
もともと、10億ベリーと引き換えに王女の護衛の話を持って来た
!!!
ミス・オールサンデーは謎の多い女だった。
わざとビビに尾行させて、ボスである〝Mr.0〟の正体に辿り着
かせたり、今回も助言のような事だけをして去って行ったので、何が
したかったのかがよくわからなかった。
││とにかく、こうして麦わらの一味はその船にアラバスタ王国の
王女ビビという新たな人物とB・Wとの因縁を加えて、ウイスキー
ピークを出ると、次の島である〝巨人島・リトルガーデン〟へと航路
を取ったのであった。
27
第5話・青鼻のトナカイ
グ ラ ン ド ラ イ ン
巨人島・リトルガーデンへと辿り着いた麦わらの一味。
そこは太古の神秘溢れる不思議島だった。
恐竜が存在し、巨人がいる。
食べ
東の海では考えられないデタラメな場所だったが、偉大なる航路に
グ ラ ン ド ラ イ ン
おいてはそこまででもない。
偉大なる航路ではそれまでの常識は通用しないのだ。
もっとも⋮⋮麦わらの一味の船長からすれば﹁ジョーシキ
られないなら捨てていいぞ﹂というレベルの話なのだけど。
﹂﹂
﹁﹁エルバフの戦士にとって決闘は誇り。理由など││とうに忘れた
?
リトルガーデンでは二人の巨人が100年も前から決闘をし続け
ていた。
〝ブロギー〟と〝ドリー〟。
二人の巨人にとって、この島は小さな庭。
││故にリトルガーデン。
その島を訪れた探検家が敬意を表して名付けたその島に、けれど彼
らとも麦わらの一味とも別の無粋な来客の姿。
〝 M r.3 〟 に 〝 ミ ス・ゴ ー ル デ ン ウ ィ ー ク 〟、そ れ か ら ウ イ ス
キーピークで三つ巴の戦いに巻き込まれた不運な二人組〝Mr.5
〟と〝ミス・バレンタイン〟。
エターナルポース
B・Wのエージェントである彼らは、存分に暗躍したが、それが麦
わらの一味の怒りを買い一蹴された。
巨人達の決闘は││終わらない。
∼∼中略∼∼
リトルガーデンでアラバスタへの〝永久指針〟を手に入れた麦わ
らの一味であったが、航海士のナミが熱で倒れたために、近くの島で
医者に診せる事にした。
28
!!!
・
・
・
・
そして見つけたのは一つの〝冬島〟。
・
・
気温│10℃、雪に覆われた名前のない国。
その島に医者は〝魔女〟と呼ばれる者が一人きり。
出 で よ │ │ 〝 ス タ ー
〝魔女〟は〝ドラムロッキー〟という標高五千mの〝えんとつ山
〟の頂上にある城に住んでいるという。
﹂
﹁そ こ で、お れ さ ま の 出 番 と い う わ け だ な
シップ〟
!
ての事だぜキャプテン﹂
﹁スター、おれも行くぞ
﹂
!
﹁おれもだ。ナミさんをお前らだけに任せておけるか
﹂
!
!
!
﹁﹁﹁﹁どうぞどうぞ﹂﹂﹂﹂
!
﹂
ビビはまだわかっていなかった。
﹂
る必要ねェだろ どうせ今頃、寒中水泳でもしてるに決まってる
﹁そこは誘ってくれよっ
冗談だよ べつにゾロの心配なんてす
﹁留守番は船を見てるゾロだけか⋮⋮心配だな。おれは残るぜ﹂
﹁私も
﹂
﹁はーっはっはっはっはっはっ 全てはおれさまのスター性があっ
﹁いや、お前こういう時はホントに便利な能力だな﹂
!!!
﹁この気候でさすがにそれはないんじゃないかしら⋮⋮
!
く││船の番をしているゾロを除いた彼らは、〝スターシップ〟に
星の船とは珍しい。病人なら治して
乗って、一気にドラムロッキーの頂上の城へと辿り着いた。
﹁ヒーッヒッヒッヒッヒッヒ
や、元のトナカイの姿にも変身できる〝バケモノ〟││〝トニート
ぐるみのような丸くて愛らしい姿だが、この島的に雪男のような人型
医者としての知識も、まだ修行中の身だが充分にあり、普段はぬい
食べた青鼻のトナカイ。
〝ドクトリーヌ〟で139歳のギリギリ人間と、〝ヒトヒトの実〟を
頂上の城で出会ったのは〝魔女〟こと〝Dr.くれは〟││愛称
やるよ。ただし、お代は少々高くつくがね﹂
!
29
!
そのとおりゾロは寒中水泳をしていたが、しかしそれはどうでもよ
?
!
ニー・チョッパー〟。
﹂
そんなチョッパーの存在がルフィの興味を惹かないわけがなかっ
た。
﹂
﹁お、おい、お前
﹁なんだ
﹂
前ら、いったいなんなんだ
ケモノだぞ
おれが怖くねえのか
?
おれは⋮⋮バ
﹁あいつらおれに仲間になれとか言って追いかけて来るんだ。お、お
!
?
﹂
かそうじゃないかだ
﹂
お前、海賊じゃないのか
﹂
!
チョッパーは困惑する。
﹂
?
れさまのファンか
﹁何ィ
﹂
ファンならファンサービスをしなければ
おれさまのファンじゃないだと
﹂
﹁ち、違うと思う⋮⋮おれ、お前の事よく知らねェ⋮⋮﹂
?
!
こでファンにすればファンが増えるぞと、すぐに笑顔になって準備を
けれど、スターはチョッパーが自分のファンじゃないのならば、こ
スターに睨まれてチョッパーは反射的に謝った。
!
﹂
﹁だから重要なのはおれさまのファンかそうじゃないかだ。お前はお
﹁⋮⋮よくわからない。海賊だとおれが怖くないのか
﹂
実 は 腹 式 呼 吸 の 練 習 も 兼 ね て い る 高 笑 い を 上 げ る ス タ ー の 姿 に
はっはっはっ
﹁海 賊 だ ぞ。だ か ら お れ さ ま は 〝 海 賊 ス タ ー 〟 だ。は ー っ は っ は っ
﹁スター
!
重要なのはおれさまのファン
バケモノかどうかは関係ない﹂
?
﹁なぜならおれさまはスターだから
﹁え
﹁バケモノ
事をチョッパーは知らなかった。
しかし、スターはある意味ではルフィ以上に話が通じない男である
チョッパーはその疑問をぶつけた。
自 ら 〝 お っ か け 〟 に な っ た り は し な い 男、ス タ ー の 姿 を 見 つ け た
追いかけてくるルフィ達とは違い、〝おっかけ〟はされたくても、
!
!
30
?
?
!
?
?
﹁ご、ゴメン
!!?
始めた。
﹂
﹁だったら、ステージの準備をしなければ
〝スターステージ〟
││〝スターマイク〟
!
事があるというので、戦闘前に一言だけ。
!
つま
せめて笑い方だけでも〝
﹁〝まーっはっはっはっはっは〟とか〝おれ様〟ってお前っ
﹂
におれさまといろいろ被ってるんだよ
まははははは〟で止めておけ
﹂
カバめ おれ様の方がお前よりは年上だァ
﹁知るかァ
!
﹂
言うに事欠いてこのおれさまをパクリ扱いだと
てめェ││銀河の果てまでブッ飛ばしてやるッッッ
!!!
どこまで飛んだのかもよくわからないワポルがこの国に戻ってく
だが、結果としてそれによりこの国は救われたのだと言える。
ドラム王国の国王ワポルは⋮⋮星になったのだ。
揮して。
ルフィの攻撃にスターが追い打ちをかけるという容赦のなさを発
⋮⋮そしてワポルは星になった。
⋮⋮
!
!
!
微妙
ていた麦わらの一味が勝利するのだが、スターがどうしても言いたい
はっきり言ってしまえばその戦い││数も多く、実力も上がって来
戦いに発展。
そういう男であるからして、麦わらの一味と気が合うわけもなく、
と最低な男だった。
強さを知って真っ先に逃げ出した王であり、それ以前にも、いろいろ
それは当時、たった五人の海賊〝黒ひげ〟に国が襲われた時、その
その男の名は〝ワポル〟。
この国に〝ドラム王国〟という名前があった頃の国王が帰ってきた。
そんな交流なのかどうなのか不思議な時間が流れる中││かつて
﹁⋮⋮海賊ってヘンなヤツばっかりだ﹂
う。
チョッパーは意味がわからないまま、そのステージを見つめて思
星形のマイクとステージを出して歌い始めるスター。
!
このパクリ野郎が
りパクリは貴様の方だ
!
?
!!!
﹁ぱ、パクリ⋮⋮
!
?
31
!
る事は、もうないと言ってもいいだろう。
国は変革の時を迎え、時間はただ変わらずに流れる。
夜になって││空には満月が浮かんだ。
バケモノだし
でも⋮⋮だっておれはトナ
﹂
青っ鼻だし、人間の仲間でもねェんだぞ
﹁おれは⋮⋮お前達に感謝してるんだ
カイだ
⋮⋮おれなんか、お前らの仲間にはなれねえよ
﹁⋮⋮﹂
﹁だから、お礼を言いに来たんだ⋮⋮誘ってくれて、ありがとう。おれ
!
!
﹂
いこう
﹂
はここに残るけど⋮⋮いつかまた、さ。気が向いたらここへ││﹂
﹁うるせえェ
﹁⋮⋮お゛お゛
!!!
!!!
船は進む。
桜の想いを次の国へ届けるために。
﹂
見事だ まさか、このおれさま
!
が魅せられるなんて最高にスターな光景だぜ
﹁はーっはっはっはっはっはっ
かったけれど、その美しさには心打たれた。
その中に籠められた想いを、青鼻のトナカイ以外の一味は知らな
奇跡の桜〟として夜空に咲いた。
ヒルルク
は、かつていた一人のバカな医者が開発した〝赤い塵〟によって、〝
麦わらの一味に〝青鼻のトナカイ〟が加わり、シンシンと降る雪
!!!
もちろん、麦わらの一味の目的地、アラバスタ王国もその一つ。
この大海賊時代、病んだ国は無数に存在しているのだから。
!!!
!
32
!
!
第6話・兄弟
チョッパーを〝船医〟として仲間に加え、まだ名前のない国を出て
しばらく││麦わらの一味はオカマを釣り上げた。
オカマは〝マネマネの実〟の能力者で、右手で触れた相手の顔と、
体格、声までをも写し取る。
加えてそれまで触れた者達のメモリー機能つき。
左手で触れれば元通りのそんな能力を持つオカマを││スターは
ニセモノのお前に、この輝きが再現できるか
そのホンモノの輝きに、オカマは素直に自らの敗北を認めた。
道を極めた者の前では、あちしの能力も、ホントにかくし
ウェイ
マネ道〟ではなく〝おかま道 〟だから⋮⋮
﹂
ジョーダンじゃなーいわよーう
﹁そうか⋮⋮お前、〝モノマネ芸人〟じゃなかったのか﹂
﹁そのとぉーりよーう
﹂﹂﹂
﹂
﹂
あんたその技は乱発できないん
﹁﹁﹁ジョーダンじゃなーいわーよーう
﹁やってろ⋮⋮というか、スター
﹂
﹂
なぜなら俺はスターだから
ムダに輝くそのクセやめなさい
﹁それはできない
カッコいいぞスター
﹁ピィー
去りゆくオカマの後姿。
時間とは関係ナッスィング
﹂
﹁││でも、これだけは忘れないで。友情ってヤツぁ⋮⋮つき合った
!
!
!
意気投合した時間の果て││。
!
!
!
!
!
でしょ
!
﹂
﹁けれどあちしは落ち込まない。なぜならあちしが極める道は〝モノ
﹁オカマ⋮⋮﹂
芸でしかなかったわけね﹂
た⋮⋮
﹁フッ⋮⋮まけたわ。ホンモノのスターの輝き、確かに見せてもらっ
!!?
凄腕の〝モノマネ芸人〟かとわずかに対抗心を燃やした。
﹁だが、まだ甘い
﹂
!!!
カッ││とスターの身体が金色の輝きに包まれる。
〝スターオーラ〟
!
!
それもまたスターだから
﹁だろう
!
!!!
33
!
!
?
お前、顔知らなかったのか
﹂
﹂
しかしその直後に、迎えに来た部下達のオカマを呼ぶ声に、彼らは
﹂﹂﹂
その事実に気づいた。
﹁﹁﹁〝Mr.2〟
﹁ビビ
﹁あいつが⋮⋮Mr.2、〝ボンクレー〟
!!?
噂 に は 聞 い て た の に ⋮⋮ M r.2 は
!
あいつ、いったい父の顔を使って何を⋮⋮﹂
!
﹂
?
プ〟は出せねェんだ﹂
﹂
アラバスタの港町〝ナノハナ〟。
∼∼中略∼∼
﹂
に備えて、一つの〝対策〟を用意したのだった。
〝スターマイク
ない事は残念だけどと、彼らはもしもの時に││仲間に化けられた時
ズガーンと衝撃を受けてよろめくスターを無視して、追いかけられ
!
﹁だから言ったのよ
﹁ホント、スマーンッ
!
〟と〝スターステージ〟も出せねェ⋮⋮
お詫びに一曲││ハッ
﹁⋮⋮スマン。〝スターオーラ〟で消耗して、しばらく〝スターシッ
に視線を逸らした。
普段なら注目されて喜ぶべきところで、けれどスターは気まずそう
ウソップの言葉にスターへと全員の視線が向く。
ターシップ〟で追いかけられるんじゃねェか
﹁そ り ゃ 厄 介 な 奴 を 取 り 逃 が し ち ま っ た な。⋮⋮ い や、今 な ら 〝 ス
るよな⋮⋮﹂
﹁てめェが例えば、王になりすませるとしたら、相当よからぬ事もでき
あったわ⋮⋮
﹁⋮⋮ さ っ き、あ い つ が 見 せ た 過 去 の メ モ リ ー の 中 に ⋮⋮ 父 の 顔 が
﹁﹁﹁気づけよ﹂﹂﹂
には〝おかま道 〟と﹂
ウェイ
⋮⋮大柄のオカマで、オカマ口調、白鳥のコートを愛用してて、背中
た の。能 力 も 知 ら な い し
﹁ええ⋮⋮私、Mr.2と〝Mr.1〟のペアには会った事がなかっ
!!?
!!!
!
!!!
34
!
麦わらの一味はついに目的地であるアラバスタへと上陸する事が
できた。
これまでの航海の間に起きた〝つまみ食い〟によって食糧が││
本当に最後の非常食で、一個食べれば軽く100万ベリーはボラれる
ナミのミカン畑のミカンを除いて││全滅していた事もあって、ル
フィは一人メシ屋へと走っていく。
船長自ら率先していなくなる姿に若干呆れながらも、いつもの事と
残りの者達は変装用の服を求めた。
しかしここでも問題児が一人。
おれさまは着替えたりしないぞ
﹂
﹁イヤだ。この服はおれさまのポリスィーだ。スター専用のスター服
なんだ
らむしろ望むところ
﹂
おれさまは絶対に着替えない
﹂
﹂
正体がバレて騒がれるのはスターの宿命だ だか
?
!
﹁イーヤーだ
回ってるルフィとお前が一番正体がバレやすいんだぜ
﹁しかしよ、スター。この国の王女であるビビを除けば、手配書が出
!
!
どうせこれから向かうのは砂漠でしょ。
﹁⋮⋮ダメだこりゃ。どうするよ
!
!
?
行程だ。
﹁││待て
隠れろ
﹂
﹂
!
?
﹁え、何
﹁海軍だ。なんでこの町に⋮⋮
賊でも現れたか﹂
﹁おれさまより目立ってる奴がいるだと⋮⋮
それでいったい││﹂
!
!
﹁いいからお前は大人しくしてろ
﹂
しかもえらい騒ぎようだぜ 海
まんまとB・Wの謀略に乗せられてしまった彼らを説得するための
そこにはアラバスタ王国に対する〝反乱軍〟のリーダーがいる。
する町〝ユバ〟。
彼らが向かう先は砂の国であるアラバスタの││オアシスに存在
﹁そうね⋮⋮﹂
ないんだから﹂
そもそも〝スターシップ〟に乗ってれば、正体バレとか気にする事も
﹁べつにいいんじゃない
?
!!?
!
35
!
?
﹁よう
ゾロ
﹂
﹁﹁﹁お前かーーーっ
!
がある。
﹁逃がすかっ
﹂﹂﹂
〝ホワイトブロー〟
﹂
!!!
﹂
﹂
!!?
∼∼中略∼∼
さっきの奴はお前の兄貴なのか
グ ラ ン ド ラ イ ン
ン
?
ピー
ス
能力者となってルフィ達を海軍から逃がしてくれた。
その当時は悪魔の実を食べていなかったという話だが、今では炎の
そうに言う。
エースは3歳年上だから3年早く島を出たんだと、ルフィは懐かし
﹁海賊なんだ。〝ひとつなぎの大秘宝〟を狙ってる﹂
ワ
偉大なる航路にいるんだ
﹂
﹁ま ぁ ⋮⋮ べ つ に 兄 貴 が い る 事 に 驚 き ゃ し ね ェ が よ。な ん で こ の
!!?
﹁兄ちゃん
﹂
〝ポートガス・D・エース〟││ルフィの兄だ。
男。
オレンジのハットを直しつつ、そばかすのある顔で不敵に笑うその
上半身裸で、背中には特徴的なひげの生えたドクロの刺青。
﹁変わらねェな。ルフィ﹂
﹁エース⋮⋮
一味と合流したルフィはその乱入者の男の姿に驚く。
の能力じゃ勝負はつかねェよ﹂
﹁やめときな。お前は〝煙〟だろうが、おれは〝火〟だ。おれとお前
﹁てめェか⋮⋮﹂
﹁え
右腕が捉えようとしたその時、二人の間を炎の壁が遮った。
煙人間であるために殴れず逃げるルフィを、スモーカーの煙化した
!!!
追う海軍の中にはローグタウンで会った海軍大佐スモーカーの姿
海軍に追われていたのはルフィだった。
!!!
!
﹁ああ、おれの兄ちゃんだ﹂
!!?
36
!!?
エースは強くて、一度も勝った事がないと、敗北の記憶をどこか誇
﹂
らしげに言うルフィは、それでも﹁今やったらおれが勝つね﹂と笑っ
た。
﹁││お前が、誰に勝てるって
エースが追いついた。
をかける。
﹁ルフィお前⋮⋮ウチの〝白ひげ海賊団〟に来ねェか
仲間も一緒に﹂
﹁いやだ﹂
?
か
﹂
﹁〝白ひげ〟⋮⋮〝白ひげ〟ってやっぱ、その背中の刺青は本物なの
ルフィはその誘いを即答で断るが、エースはわかっていたと笑う。
﹁プハハハ⋮⋮だろうな。言ってみただけだ﹂
もちろん、
エースはぺこりと頭を下げ、軽い前振りから、ルフィに誘いの言葉
﹁や、まったく﹂
話に﹂
﹁よう。││あー、こいつァどうも、みなさん。ウチの弟がいつもお世
﹁エ∼∼∼ス∼∼∼っ
﹂
ちょうどそのタイミングで船上に逃げ込んでいた麦わらの一味に、
?
﹂
さ。おれは、あの男を〝海賊王〟にならせてやりてェ。ルフィ⋮⋮お
前じゃなくてな⋮⋮
束の間の時から現在に帰還したエースは、ルフィへと何も書かれて
そしてそれは海賊王の座を賭けた最終決戦へと発展するのだ。
れ〝白ひげ〟をも脅かす輝きを放つ。
弟を含めて、弟が見つけ出した原石達は、偉大なる航路の中で磨か
グ ラ ン ド ラ イ ン
今はまだまだ話にならないが、その粒は揃っているように見えた。
正面から、正々堂々とぶつかり合う事になるだろうと。
近い将来、何事もなければ、きっと麦わら海賊団と白ひげ海賊団は
エースはそんなルフィの言葉に未来を想った。
﹁いいさ。だったら、戦えばいいんだ﹂
!
37
!!!
﹁ああ。おれの誇りだ⋮⋮。〝白ひげ〟はおれの知る中で最高の海賊
?
﹂
ずっとだ。その〝紙きれ〟がおれとお前をま
いない〝紙きれ〟を放る。
﹁ん
﹁そいつを持ってろ
﹂
﹂
た引き合わせる﹂
﹁へー⋮⋮﹂
﹁いらねェか
﹁ああ﹂
﹁ええっ
もう行くのか
﹂
そう言ってエースは、自分の乗ってきたボートに飛び乗った。
は手ェ焼くだろうが、よろしく頼むよ⋮⋮﹂
﹁できの悪い弟を持つと⋮⋮兄貴は心配なんだ。おめェらもコイツに
エースはその答えに満足そうに笑う。
﹁いや⋮⋮いる
?
!!?
そのための道具もこうして兄の手から弟へと手渡された。
けれど運命は再び二人を引き合わせるだろう。
兄弟の再会は終わり、それぞれの物語が再開される。
﹁次に会う時は海賊の高みだ﹂
わけだ。
偉大なる航路を逆走する中で、海に出たルフィの手配書を見たという
グ ラ ン ド ラ イ ン
今は〝黒ひげ〟を名乗っているというその海賊、その海賊のために
エースは仲間殺しを犯した部下を追っているという。
エースにもエースの目的があった。
麦 わ ら の 一 味 に B・W を ど う に か す る と い う 目 的 が あ る よ う に、
!!?
その時二人は││⋮⋮。
38
!
!
?
第7話・決戦はすぐにでも
アラバスタはもともと砂の国であった。
けれど近年││特にここ3年はそれが顕著で、アラバスタには一滴
の雨すら降らなくなった。
ただ唯一、王の住む首都〝アルバーナ〟を除いて。
グ ラ ン ド ラ イ ン
人々はそれを〝王の奇跡〟と呼んでいたが、現象には必ず理由があ
る。
そ れ は 傍 目 に は デ タ ラ メ に 見 え る 偉大なる航路 に お い て も 変 わ ら
なかった。
〝ダンスパウダー〟。
それが〝王の奇跡〟を生み出した理由であり、この国を狂わせた原
因。
人工的に雨を生み出す事ができるというその粉は、他の場所から雨
﹂
39
を奪う事によって成り立っていた。
それ故に世界政府によって製造・所持を禁止されたその不思議粉
は、けれど港町であるナノハナや首都の宮殿に運び込まれ、運悪く存
在が露見した。
もちろん、それは誰かにとっては非常に都合の良い事であり、疑わ
れた国王││つまりビビの父親にとっては、まるで覚えのない事だっ
た。
しかしそれだけの証拠があって、町が枯れ、人が飢え、荒んだ心で、
国王とはいえ他人を、どこまで信じる事ができるのか。
結果││反乱は起きた。
アラバスタには反乱軍が組織され、王家と民衆の信頼関係には傷が
ついて血が流れた。
比喩ではなく実際に失われていく命を前に、当時13歳のビビは偶
ユバ
然掴んだ情報を基として、親衛隊長のイガラムと共にB・Wに潜入│
ついたぞ
!!!
│現在に至る。
﹁やー
!!!
港町ナノハナからメリー号で〝サンドラ河〟を越え、緑のない元・
!
緑の町〝エルマル〟へ。
あのエルマルって町とそう変わんねェぞ⋮⋮
そこから〝スターシップ〟に乗り込み、一気に砂漠を突破した我ら
が麦わらの一味。
﹁そんな⋮⋮﹂
﹁こりゃヒデェ⋮⋮
﹂
た。
!
﹁そんな⋮⋮
﹂
﹁﹁﹁な、なんだとォ∼∼∼
﹂﹂﹂
﹁⋮⋮あのバカ共なら⋮⋮もう、この町にはいないぞ⋮⋮
!!?
﹂
男は一通り物を投げて落ち着くと、ポツリとその言葉を漏らした。
は間違いない。
姿から、その男が反乱軍に対して好意的じゃない感情を持っているの
﹁貴様ら、まさか反乱軍に入りたいなんて輩じゃあるまいな
﹂と怒る
ビビの言葉に男は眼光を鋭くすると、あたりの物を投げつけてき
﹁⋮⋮反乱軍になんの用だね﹂
﹁あの⋮⋮この町には反乱軍がいると聞いてきたんですが⋮⋮﹂
来た目的を果たすために口を開く。
だが疲れてもいないのに、休んでいる暇はないと、ビビがこの町に
男はルフィの答えに少し不思議そうにしながらも町の宿を勧めた。
﹁いや、疲れてねェぞ。〝スターシップ〟に乗ってきたからな﹂
けている。
この町の住人であろうその男は、スコップを手に黙々と砂を掘り続
声をかけて来たのは一人の痩せこけた男。
枯れている⋮⋮﹂
﹁旅の人かね⋮⋮砂漠の旅は疲れただろう。すまんな、この町は少々
もれ、枯れた町の姿だった。
そんな彼らの前に待ち受けていた光景は、エルマルと同じく砂に埋
!
!
物資の
!
流通もなくなったこの町では反乱の持久戦もままならない⋮⋮。反
で砂は渇ききって、頻繁に砂嵐にも襲われるようになった
﹁この町の様子を見ればわかるだろう⋮⋮。3年前からの日照り続き
!
40
!
﹂
﹂
乱軍は〝カトレア〟に本拠地を移したんだ⋮⋮﹂
﹁カトレア
﹁どこだビビ、それ近いのか
﹂
﹁││ビビ⋮⋮
今ビビと⋮⋮
﹂
!!?
﹂
﹁ビビちゃんなのか⋮⋮
﹁⋮⋮えっ
男の名は〝トト〟。
﹁トトおじさん⋮⋮
そうなのかい
そんな⋮⋮
﹂
!
﹂
!!?
私は国王様を信じ
!
﹂
ま だ ま だ 国 民 の 大 半 は そ う さ ⋮⋮ 何 度 も ね ェ ⋮⋮
自分一人ならともかく。
だが、反乱は止まらなかった。
何度も⋮⋮何度も止めたんだ
て る ⋮⋮
﹁たかが3年⋮⋮雨が降らないからなんだ⋮⋮
反乱なんてバカげていると、水も満足に飲めず掠れた声で訴える。
それでもトトは国王を信じていた。
しかし││だがしかしだ。
ようでもあった。
それはそのまま、いかにこの国での生活が苦しいかを物語る象徴の
うな姿の男ではなかったからだ。
当時のトトはでっぷりと太っており、こんな骨に皮を張りつけたよ
かった。
ビビが初め気づかなかったのも、そしてこうして驚くのも無理はな
!!?
ビビの幼馴染であり反乱軍のリーダーでもある〝コーザ〟の父。
!!?
だが、その男にとってはそれだけではなかった。
なぜならビビはこの国の王女様なのだから。
それも当然と言えば当然かもしれない。
男はビビの名前に反応した。
?
﹁仕方ない。おれさまの〝スターシップ〟でとっとと││﹂
﹁おい⋮⋮おれ達ァ、なんのためにここまで﹂
﹁ナノハナ
﹁⋮⋮ナノハナの隣にあるオアシスよ﹂
!!?
!!!
!
41
!!?
!!?
?
!
知ってる誰かが苦しんでいて、その原因もわかっている。
人を想う気持ちが、その優しさが、そんな心とは対極にあるはずの
反乱へと繋がった。
まさかそれを仕組んだ者がいるなど思わず、思ってもそれを根拠の
ない妄想だと、弱気になる心を押さえつけ││本当は信じたい人間へ
と刃を向けた。
それがこの国の、今も続く物語。
けれど、どんな物語でもいつか終わりがくる。
死ぬ気なんだ⋮⋮
﹂
﹁反乱軍の体力も、もう限界だよ⋮⋮。次の攻撃で決着をつけるハラ
さ。もう追い詰められているんだ⋮⋮
﹁やめた﹂
∼∼中略∼∼
﹁頼むビビちゃん⋮⋮あのバカどもを止めてくれ
﹂
れない涙を流しながら、心からの叫びを声にして絞り出す。
国は人だから││だから、トトは己の無力さに、こんな状況でも枯
でも、国は人を止めてはくれない。
人は人のために、国のために、自分のできる事をしようとする。
としてもだ。
どれだけ最悪の結末が待ち受けているとしても、その予感があった
!!!
﹁〝やめた〟って⋮⋮
﹂
フィはそんな事を言い出した。
トトの話を聞いて、じゃあカトレアに行こうという段階になってル
!!!
ねェんだぞ
んのためだ
﹂
ビビちゃ
カトレアって町で反乱軍を止めなきゃ、この国の10
さァ行くぞ
﹁つまんねェ﹂
!!!
が違った。
ルフィの無茶苦茶な言動はいつもの事だが、今回のそれは少し様子
!!!
42
!
﹁お い ル フ ィ、こ ん な と こ で お 前 の 気 ま ぐ れ に つ き 合 っ て る ヒ マ は
!!?
0万の人間が激突して、えれェ事態になっちまうんだぞ
!!!
!!!
ルフィが戦うべき相手を見据えた時に発せられる雰囲気、それが静
かながらも発せられている。
﹂
﹁⋮⋮ビビ﹂
﹁何
﹂
﹁反乱してる奴らを止めたらよ⋮⋮クロコダイルは止まるのか そ
﹁
﹁おれはクロコダイルをぶっ飛ばしてェんだよ﹂
?
﹁⋮⋮
﹂
も、おれ達もみんな﹂
﹁お前はこの戦いで誰も死ななきゃいいって思ってるんだ。国の奴ら
それがルフィの本能から出た答えだった。
なら、最初にそのクロコダイルを倒してしまえばどうか。
ないとも限らない。
余計に状況がこじれて、その間にクロコダイルに全てを掻っ攫われ
B・Wも変わらず暗躍しているのだ。
来て、反乱軍は素直にその説得を受け入れるのか。
しかしビビがいくらこの国の王女様とはいえ、海賊を従えてやって
本当にビビの護衛だけだ。
ビビはともかく││その町で麦わらの一味ができる事は、それこそ
ルフィの言葉は核心を突いていた。
ねェ方がいいくらいだ﹂
の 町 へ 着 い て も お れ た ち は 何 も す る 事 は ね ェ。海 賊 だ か ら な。い
?
か﹂
﹁何がいけないの
﹁人は死ぬぞ﹂
人が死ななきゃいいと思って、何が悪いの
﹂
!!?
!!!
返す。
﹁││じゃあ、なんでお前は命賭けてんだ
お前なんかの命一個で
必死になってルフィの言葉に反論するビビを、けれどルフィは殴り
ルフィの言葉にビビは反射的にルフィを殴った。
!!?
のに、みんな無事ならいいと思ってるんだ。⋮⋮甘いんじゃねェの
﹁〝七武海〟の海賊が相手で、もう100万人も暴れ出してる戦いな
!
43
!
・
・
・
りつける。
﹂
﹂
﹁おれ達の命くらい一緒に賭けてみろ
﹁
他に賭けられるものなん
仲間だろうが
﹂
!!!
﹂
!
﹂
教えろよ、クロコダイルの居場所
∼∼中略∼∼
﹂
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹁⋮⋮準備はいいか。野郎共
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁おお
﹁スター、突撃だ
﹂
!!!
任せろ、船長
!!!
!
英雄だ。
ルは││その力もあって、この国では海軍よりもよほど頼られている
王下七武海の一人であり、海賊から略奪する海賊であるクロコダイ
そこはアラバスタの〝英雄〟サー・クロコダイルが住む町。
インベース〟へと飛んだ。
ルフィの言葉に覚悟を決めた一味は、カトレアではなく夢の町〝レ
!
!
﹁はーっはっはっはっはっはっ
﹂
﹁本当はお前が一番くやしくて、あいつをブッ飛ばしてェんだ。⋮⋮
﹁っ
﹁⋮⋮なんだ、あのおっさんと同じだ。出るんじゃねェか。涙﹂
言葉に、ビビの瞳から涙がこぼれる。
みんなの中からおれ達を抜いて、自分の側に加えろというルフィの
!!!
だからそれが気に食わないルフィは、拳とともに言葉でもビビを殴
欲しかった。
自分がどうなっても、結果死ぬ事になっても、みんなには生きていて
・
自分の全てを賭けてもアラバスタを元の姿に戻したかった。
!!!
賭けたりるか
﹂
!!!
それは心からの叫びだった。
ビビは叫んだ。
て、私、何も⋮⋮
﹁なら、いったい何を賭けたらいいのよ
!!!
!!!!!!!
44
!!?
けれど、それは表の顔。
裏の顔はご存知、秘密犯罪会社B・W社の社長であり、アラバスタ
の転覆を狙う大悪党なのだが⋮⋮やはり英雄でもあるために本拠地
としている場所ははっきりしていた。
というのも、レインベースは人々がギャンブルで一獲千金を夢見る
町だ。
その中でも最大のカジノ〝レインディナーズ〟。
レインベースオアシスの真ん中に聳えるピラミッド型の建物にワ
ニの屋根⋮⋮それこそがクロコダイルの経営するカジノでもあった。
ク ロ コ ダ イ ル は き っ と そ こ に い る は ず だ と い う ビ ビ の 言 葉 か ら、
やって来た麦わらの一味は││今、まさにその上空にいた。
そして一味が乗る〝スターシップ〟が、ルフィの号令に応えたス
ターの操作によって、そのレインディナーズへと文字通りの意味で突
撃を仕掛ける。
なんか〝スターパワー〟とやらで守られてるとかで、スゴイ硬度を
持っているらしい〝スターシップ〟はレインディナーズの外壁を突
き破って、ド派手にその内部へと侵入を果たす。
騒ぎ立てるカジノ客を無視して、一味はカジノ内を走り回り││辿
り着いた先は秘密地下VIPルーム。
その扉を、ルフィが拳で叩き破った。
﹁││それで、どいつがクロコダイルだ﹂
部屋の中には麦わらの一味と同じく、八人の男女の姿。
この場に殴り込みを掛けてくる者があるとは思わなかったのだろ
う、誰もが大なり小なり驚いた表情を浮かべている。
その中でミス・オールサンデーとMr.2、顔に包帯を巻いたMr.
3は一味も見た事があった。
残り五人は新顔⋮⋮一味は知らない事だが、実は一味の突入タイミ
ングはジャストであり、B・Wのオフィサーエージェントが集い、最
終作戦の前の顔合わせの場にこうして立ち会う事になったのであっ
た。
つまり、B・Wの主要人物達がこの場には揃っているのだ。
45
﹁なんだ、てめェは⋮⋮﹂
﹁お前がクロコダイルか。おれはルフィ。お前をブッ飛ばしに来た﹂
ルフィの言葉に応えたのはオールバックで、顔に一文字の縫い傷が
ある男。
左手に義手なのかフックを着け、黒のロングコートを肩に掛けてい
る。
その立ち振る舞いには大物感が漂い、彼こそがクロコダイルである
そうか、てめェが〝麦わらのルフィ〟とかいう小物海賊か。
と一味に認識させた。
﹁あァ
﹂
デー。探す手間が省けた﹂
!!!
﹁そうだろう
﹂
?
その小物達にバカらしくも全てを賭けて、一発逆転
﹁⋮⋮ツイてない
てもなんてツイてない女だお前は﹂
﹁クハハハハ⋮⋮そんな夢を見てわざわざ来てくれたのか。それにし
﹁あなたを倒しに来たわ⋮⋮Mr.0
﹂
﹁⋮⋮やァ、ようこそアラバスタの王女ビビ。いや、ミス・ウェンズ
﹁
そして││﹂
?
﹂
!
そして、アラバスタの未来を賭けた決戦が始まった。
とも抑え切れない迸りだとはこの場の誰も知らない。
それが一部の者が知らず発動している〝覇気〟の、未だ覚醒はせず
気〟が弾け合う。
麦わらの一味と、B・Wのエージェント達の間でピリピリとした〝
ビりながらも表情を引き締めた。
ビビの言葉に一味の強気組はにやりと不敵に笑い、弱気組は内心ビ
全員倒せば、それでアラバスタは救えるのだから⋮⋮
﹁ええ、そうね⋮⋮だから、私はとてもツイてるわ。ここであなた達を
んだろうがな﹂
がいる。まぁ、おれ一人でも、お前達を全滅させるのに3分もかから
とおれの暗殺を狙ったんだろうが、ここには今ちょうどおれの部下達
?
46
!
〝トリックスターボム〟
第8話・それぞれの戦い
﹁新技炸裂
﹁ミス・オールサンデー⋮⋮
﹂
﹂
であるミス・オールサンデーと対峙していた。
あっさりと倒せてしまったために、ビビと共にMr.0のパートナー
治っていなかったMr.3が、〝トリックスターボム〟からの追撃で
そ し て ス タ ー は │ │ リ ト ル ガ ー デ ン で ル フ ィ に や ら れ た 怪 我 が
フィンガー〟に。
ナミはMr.1のペアだとは知らずに女性だからと〝ミス・ダブル
あろう〝Mr.4〟と〝ミス・メリークリスマス〟のペアに。
ウソップとチョッパーはコンビでエージェントの中で一番弱いで
女性と戦う事を禁じているサンジはオカマであるMr.2に。
ゾロはその次にヤバイ相手と見たMr.1に。
ルフィは当然Mr.0、クロコダイルに。
手に向かう。
て、それぞれが本能や相手の実力を察して、自分に適切だと思える相
リックスター〟に、戦闘用の攻撃力を持たせたその技の爆発に紛れ
実 は そ れ も 演 出 用 に 過 ぎ な か っ た 飛 ば す 事 が で き る だ け の 〝 ト
れた。
放った、無数の爆発する星によって、その決戦の火蓋は切って落とさ
スターが秘密地下VIPルームにいるB・Wのエージェント達に
!!!
乗り込んで来るなんて思わなかった﹂
﹁イガラムの仇⋮⋮討たせてもらうわ
﹂
﹂
﹂
!
よ
﹁勝つわ
ルフィさんは絶対に敗けない
に麦わらの船長さんが戦っているのは、あの、王下七武海の一人なの
?
!
﹁あらあら、随分と強気ね。彼らが本当に勝てると思ってるの
特
﹁フフフ、驚いたわお姫様。まさか、わずかなお供を連れて、正面から
!
のおれさまが認めざるを得ないほどに輝いてるんだぜ⋮⋮
﹂
!
47
!!!
﹁そういうこった。ウチの船長をなめるなよ。ルフィのスター性はこ
!
?
王下七武海のサー・クロコダイル。
元懸賞金8100万ベリーの海賊であるその男の真価は、その額面
どおりの価値には収まらない。
ロ
ギ
ア
クロコダイルは〝スナスナの実〟を食べた〝砂人間〟であり、〝
自然系〟に属されるその力、その身体の前には、剣も銃弾も、もちろ
ん拳も、そのままではまるでダメージを与える事ができない。
そんなスナスナの力に冷徹な頭脳、知らずとも纏う事のある〝覇気
〟に、後の脅威を見た海軍本部は、大幅にその懸賞金額を上げる前に
交渉し、王下七武海として制御できる範囲内に止めた。
しかしクロコダイルはそういう海軍本部の思惑もほぼ理解した上
で交渉を受け入れ、海軍の情報を得ながら水面下でB・W社を起ち上
げる。
己の力だけで海軍本部の者達を出し抜いたのだ。
この事からも勢いだけのルーキーとは一線を駕す力と頭脳の持ち
身体に四本、地面に二本の腕が生えてスターを拘束した。
﹂
﹂
!!?
﹁ぐげ⋮⋮
なんなの、この腕は
!
デーは、そう言って自分の身体にも数本の腕を咲かせてみせる。
余裕からか自らの能力を親切に解説してくれるミス・オールサン
身体の各部を花のように咲かせる力。これが私の能力よ﹂
﹁フ フ、私 の 能 力 よ。そ う ⋮⋮ 私 が 口 に し た の は 〝 ハ ナ ハ ナ の 実 〟。
﹁スターさん
!!?
48
主だとわかるだろう。
そうじゃなくても、同じ王下七武海の〝鷹の目〟に、ルフィとそこ
まで戦闘力が変わらないはずのゾロとスターの二人は敗北している。
﹁そう。信頼してるのね。でも⋮⋮それならあなた達はどうかしら
私よりも強いのかしらね﹂
﹁当然だ。おれさまはスターだぞ﹂
﹁あら、そう﹂
﹂
セイスフルール
?
ミス・オールサンデーが腕を身体の前面で交差させると、スターの
﹁〝六輪咲き〟﹂
﹁お
?
﹁な、な ん て こ っ た ⋮⋮ フ ァ ン と 握 手 す る の に と て も 便 利 な 能 力 だ
﹂
﹂
待ってて、今、引き剥がして││﹂
⋮⋮あと、サインを書くのも⋮⋮﹂
﹂
!!!
﹁そんな事を言ってる場合
﹁
﹁〝スターオーラ〟
﹁残念だけど、そんな時間はないわよ。││〝クラッチ〟
!!?
違いない⋮⋮
﹂
﹁スターさん⋮⋮ちゃんとファンいたんだ
﹁し、失礼なっ
おれさまはスターだぞ
﹂
ター
行かないでーと泣き出す
いずれ世界一の有名人
ス
われたり揉みくちゃにされるという経験がなければやられていたに
﹁ふぅ⋮⋮危なかったぜ。かつておれさまがファンの間で引っ張り合
と、なんか無理矢理腕を引き剥がした。
スターは身体能力やら何やらが数倍に高まり、その関節技に耐える
〝スターオーラ〟の効果により〝スーパースター〟状態になった
六本の腕に関節を破壊されるその前にスターは力を解放した。
!!!
﹂
!
﹂
こ こ は 一 度 じ っ く り と お れ さ ま の ス
今はそんな事してる場合じゃないでしょ
テージを││﹂
﹁ま、待って
!
危ない
﹁なんだって
悪の一味かと思えば、おれさまのファンだったとは
テージとやらに興味があるわ﹂
﹁あら、私の事はべつに気にしないでいいわよ。なんなら私もそのス
うに観察していた。
しかし敵のはずのミス・オールサンデーは、そのやりとりを面白そ
今にもマイクとステージを出しそうなスターをビビは止める。
!
と は ⋮⋮。仕 方 が な い ⋮⋮
﹁ビビ⋮⋮まさかお前がそこまでおれさまの事をわかっていなかった
﹁そっ、そうなんだ⋮⋮﹂
さまだぞ
ファンを、その溢れるスター性でなだめる事でどうにか旅立てたおれ
になるおれさまは当然、地元でも大人気
!
!
!
スターのそんな言葉にビビはどこかズレた感想を漏らした。
?
!
!
もう少しでファンをブッ飛ばしてしまうところだっ
! !!?
49
!!?
!
た
それは大変なスキャンダルだ
﹂
!
﹂
﹁騙されないでよ、スターさん あいつはMr.0のパートナーな
のよ
!
じゃないかだ﹂
﹁ファンじゃないわ
﹁どうかしら﹂
そうでしょう、ミス・オールサンデー
含み笑いを漏らすミス・オールサンデーにビビは激昂する。
あっ⋮⋮と思った時にはもう遅い。
﹂
﹁だいたい、スターさんにそんなにファンがいるわけないじゃない
!!!
は通じない。
﹁この、砂怪物めっ
﹂
!
﹁クロコダイルさまっ
﹂
﹁クロコダイルさんが戦ってるぞっ
クロコダイル
﹂
ガトリング
ギ
ア
!!?
!
!
茶苦茶な事しやがって、相手はやっぱり海賊か
﹁頑張れー
!
﹂
デ ザ ー ト・ス パ ー ダ
﹂
レインディナーズにあんな無
前で、彼らは変わらず戦いを続けた。
〝スターシップ〟が突撃した事で、避難しながらも集まる野次馬の
ら地上へと移る。
クロコダイルの攻撃はいちいち規模が大きく、両者の戦闘は地下か
!!?
﹂
﹂
﹁お れ と お 前 で は ⋮⋮ 海 賊 の 格 が 違 う ん だ ⋮⋮ 〝 砂漠の宝刀 〟
!!!
打撃である以上、身体を砂へと変化できる〝自然系〟の能力者の前に
ロ
〝ゴムゴムの銃 〟も〝ゴムゴムの銃乱打〟も、どんな技も、ただの
ピストル
クロコダイルとの極限の一騎討ち。
一方で││我らが船長〝麦わら〟のモンキー・D・ルフィ。
た⋮⋮。
ビビのそんな言葉に││スターはわかり易く拗ねて戦いを放棄し
!!!
!!!
﹁い や、そ れ は ど う で も い い。重 要 な の は お れ さ ま の フ ァ ン か そ う
!
そんな彼らの戦いを見た民衆が応援するのは砂漠の〝英雄〟クロ
!
50
!
﹁うおっ
!!!
コダイル。
ルフィを応援する者の姿は一人もない。
﹁クハハハハ⋮⋮悲しいな、麦わら。お前がどれだけ無駄な頑張りを
見せたところで、お前を応援する者は誰もいない﹂
﹁関係ねェ。おれは海賊だからな﹂
ル
ハ
ン
﹂
ルフィは強がりではなくそう言うと、変わらずにクロコダイルに攻
撃を仕掛けた。
﹂
バ
!!!
﹁〝ゴムゴムの鞭〟
﹂
うわああああっ
腕がミイラになったァ
﹂
!!!
ギョッと目を見開いた。
﹁腕が⋮⋮っ
!!?
ク ロ コ ダ イ ル の 〝 砂 〟 に 捕 ま っ た 自 分 の 右 腕 を 見 て ル フ ィ は
﹁う⋮⋮っ
﹁いい加減に学習しろ麦わら。││〝三日月形砂丘〟
!!!
﹂
!
﹁⋮⋮
﹂
避けた。
﹂
クロコダイルはその攻撃を、今までのように無視するのではなく、
でクロコダイルに殴りかかる。
クロコダイルの〝砂〟の攻撃を躱し、ルフィは治ったばかりの右腕
﹁くだらん﹂
﹁戻った⋮⋮
建っているので、周囲には水が満ちていた。
レ イ ン デ ィ ナ ー ズ は レ イ ン ベ ー ス オ ア シ ス │ │ そ の 湖 の 中 央 に
クロコダイルがそんなルフィの姿を見て舌打ちする。
﹁⋮⋮ちっ﹂
の湖にその腕を浸けて、自分も頭を突っ込み水を飲む。
ルフィはそれを聞いて即座に駆け出すと、レインディナーズの周囲
﹁ハァ⋮⋮じょ、冗談じゃねェ⋮⋮
﹁〝砂〟だからな⋮⋮お前の腕の水分を吸収しちまったのさ﹂
!!?
!
それに、クロコダイル
てめェら、こんな町中で何
る前に││現れた、乱入者の声に動きを止める。
﹁麦わらァ
!!!
!!!
51
!
ルフィがそのクロコダイルの様子に違和感を覚えるが、考えが纏ま
!!?
やってやがるっ
念の男。
﹂
││視点は戻って、〝海賊スター〟。
変わらずに拗ねるスターを必死にビビが宥めている。
!
﹂
ミス・オールサンデーとの戦い
ついその場の勢いで言ってしまっただけなの
﹁ご、ごめんなさい あれは、だから⋮⋮その、違うの
﹂
が││じゃなくて
よっ
には、あなたの力が必要なの
﹁お願いだから戦ってスターさん
﹁つーん﹂
!
!
あ、そ、そうだわ
わかった
﹂
私がファンになるわ
!
ば、意外と繊細な部分があったのだ。
﹁っ⋮⋮
!
だからファンサービスで戦って
﹁えっ⋮⋮﹂
!
麦わらの一味の強気組における、無敵のメンタルの持ち主かと思え
だったのである。
スターは仲間に、自分のスター性を疑われた事が本当にショック
理由の方が大きいのは間違いない。
もっとも、拗ねているのはフリではなく本心からなので、そちらの
のではなんて考えていたりもする。
ないために、頭の片隅では、ルフィの決着さえつけば戦う必要はない
ともかく││問答無用で襲いかかってくるような好戦的な感じでも
戦うよりも輝いていたい男なので、ミス・オールサンデーも先程は
り好きではないスターだ。
そもそもが、勘違いしているかも知れないが、もともと戦いがあま
ビビの必死な願いに、しかしスターは動かない。
﹁⋮⋮﹂
つい本音
ローグタウンからこちら、執拗に麦わらの一味を追いかけている執
その男、海軍本部大佐〝白猟のスモーカー〟。
!!!
﹁ビビは仲間だからファンじゃない﹂
!
!
52
!
!
!
ビビはその言葉に一瞬、感動しかけ││ああ、違う違うと頭を振っ
て、考えを巡らせる。
﹁⋮⋮わかったわ。この戦いが終わったら、アラバスタが元に戻った
﹂
ファンクラブと
だから、その未来のファンのためにも戦って
ら、国を挙げてスターさんをバックアップするわ
かも作るわ
その時、スターに電流が奔る。
アラバスタ王国の総国民数は1千万人にも届くという。
だから無意味な戦いはやめましょう﹂
﹂
││やる気、鎮火。
﹁え、ええ∼∼∼っ
!
﹁あら⋮⋮だったら、私もそのスターさんのファンになる事にするわ。
場合によっては、上回っているのではと感じるほどに凄いからだ。
怒ったり感情が昂った時のスターの力は、ルフィにも劣らない││
それを見たビビは勝利を確信した。
バチと音を立てて噴き上がる。
発動はしたままだったが、萎みかけていた〝スターオーラ〟がバチ
が漲った。
1千万人が自分のファンに⋮⋮スターの身体をかつてないやる気
!
!
﹂
!!!
戦い。
海軍本部大佐、スモーカーの言葉にクロコダイルが軽く応じる。
﹁クハハハハ⋮⋮確かお前は海軍本部大佐のスモーカーだったかな
﹁なんだ、〝ケムリン〟
お前は引っ込んでろ
!
おれはクロコダ
クロコダイルの言葉にスモーカーはルフィを睨む。
﹁⋮⋮﹂
海賊を討伐しているのさ﹂
何をしているって見ればわかるだろう。この国を脅かそうとする
?
そして││こちらはシリアスな場面が続く〝麦わらのルフィ〟の
〝海賊スター〟の戦いは混迷の度を深めていく⋮⋮。
さまは、ファンに優劣はつけられない⋮⋮
﹁⋮⋮スマン。一人でも1千万人でもファンはファンだ⋮⋮ おれ
!!?
!
53
!
﹂
てめェは海賊で、おれは海兵だ。海兵が海賊
イルをブッ飛ばしてェんだ
﹂
﹁うるせェ
﹁仲間を泣かせた
﹂
それだけで戦う理由は充分だ
﹂
お前の怒りは見当違いだ。そうだろう、スモーカー君
﹂
おれはクロコダイルが許せねェ
!
﹁クロコダイルがてめェに何をしたって
そんな事は知るか
﹁その通りだな。スモーカー君。職務に忠実で大変よろしい﹂
を前にして引っ込む道理がどこにある﹂
﹁引っ込んでろだァ
!!!
﹁何っ
﹂
てから聞く事にする﹂
﹁⋮⋮あァ。そうだ。だが、もう面倒だ。話はてめェら二人を捕まえ
?
?
?
﹁クハハハハ⋮⋮ 海賊の仲間が泣いて、それで誰が困るんだ
! !!!
?
!
﹂
!!!
そんなおれを捕まえようたァ、どう
!
たな。その時は謝る。許せよ﹂
﹁噂以上の野犬っぷりだな、スモーカー⋮⋮っ
!!!
と思うなよ⋮⋮
﹂
﹂
﹁カイロウセキ⋮⋮
るのか
このおれを捕らえられるなど
﹁ふん、てめェに教える事なんて何もねェよ﹂
?
!
!
おい、ケムリン。それがありゃ、あいつを殴れ
﹁そんなチャチな〝海楼石〟一つで
クロコダイルの表情がはっきりと怒りに染まった。
が、捕らえるだけならこれで事足りる﹂
﹁お前は〝砂〟だろうが、おれは〝煙〟だ。普通なら勝負はつかねェ
それを仕込んだ〝十手〟をクロコダイルに向けるスモーカー。
その〝海〟と同じエネルギーを発しているという〝海楼石〟⋮⋮
悪魔の実の能力者の弱点である〝海〟。
﹂
てめェが何もしてない国を守りたいだけの、ただの被害者なら悪かっ
﹁おれァ、もともと〝七武海〟なんて〝海賊〟は信じてねェんだよ。
いう了見だ
﹁このおれは〝七武海〟だぞ
スモーカのその宣言にクロコダイルは眉を上げる。
!!?
?
54
!!!
!!!
﹁何ぃ∼
﹂
だったら、そいつを奪って試してみるだけだ
﹁やってみな⋮⋮
﹂
そ し て お れ さ ま は 気 づ い た そして三つ巴の戦いが始まる││かと思われたのだが。
﹁は ー っ は っ は っ は っ は っ は っ
!
ルフィ、交替だ
交替
⋮⋮って、おろ
﹂
ファンを殴れないならば、ファンじゃない奴を相手にすればいいと
!
戦いは三つ巴ではなく四つ巴だった
!
?
る
カー以外の海兵も傍にいる
⋮⋮⋮⋮そう、乱戦に移行したのであ
あ、ビビとミス・オールサンデーもいるので六つ巴⋮⋮えっ、スモー
!
!
!
!
!
!
?
ちなみに⋮⋮一応他の麦わらの一味も戦っている事はお忘れなく。
55
!
第9話・死闘
﹁は ー っ は っ は っ は っ は っ は っ
そ し て お れ さ ま は 気 づ い た !
交替
⋮⋮って、おろ
﹂
ファンを殴れないならば、ファンじゃない奴を相手にすればいいと
ルフィ、交替だ
?
!
!
﹂
ミス・オールサンデーがおれさまのファンだったから、交
替してくれ
﹂
スターであるお
いやだ。クロコダイルはおれがブッ飛ばすんだ
﹂
れさまがファンを殴るなんてあり得ないんだ
問題はそこだ
﹂
今、何よりも重要な
!
おれさまにとってファンは大事だが、仲間だって大事だ
﹁⋮⋮わかった だったら、スターはケムリンを相手してくれ
﹂
それと、そのミスなんたらがこっちの邪魔をするよ
﹂
スモーカーはB・Wではないので今回の目的には関係ないが、海軍
スターはルフィの言葉にスモーカーを見て考える。
うだったらそれも
決闘の邪魔だ
!
!
か
﹁それだとビビのためにおれさまだけ何もしていないみたいじゃない
魔をさせるな﹂
﹁じゃあ、戦わなくていい。おれがクロコダイルをブッ飛ばすまで邪
﹁戦う事自体が問題なんだよ
!
!
﹁わかってるよ。でもわかってて頼んでるんだろ
﹁交替
!
﹁ルフィ
対応した。
ど人に注目される事に慣れているスターは、動じる事なくその状況に
一般人じゃなくても萎縮してしまいそうなその三者の威嚇に、けれ
ややこしくしそうな乱入者であるスター達を睨みつける。
三つ巴の戦闘を前に相手の出方を窺っていた三者は、さらに事態を
と睨み合っていた。
下七武海のサー・クロコダイルと、海軍本部大佐のスモーカーの二人
ターの視線の先で、麦わらの一味の船長モンキー・D・ルフィは、王
ビビを小脇に抱え、足につけた星で地上へと浮かび上がってきたス
!
!
!
56
!
!
?
?
﹁知るか。なら殴らなきゃいいじゃねェか﹂
!
!
!
だから敵だ。
スモーカーと戦いながら、ミス・オールサンデーが何かするような
らばそれも抑える。
それは充分に一人分の働きだとスターは納得した。
実際には、スターは〝スターシップ〟という移動手段を提供した
り、すでにMr.3を倒したりしているので、とっくに一人分の働き
というものは果たしていると言えるのだが、こういうのは本人が納得
﹂
するかどうかが一番の問題であった。
﹂
﹁それでいこう
﹁よし
﹂
の痺れが切れた。
!!!
噴き出す。
﹁チッ⋮⋮﹂
﹁くそっ、ケムリンめ
﹂
そしてその場にいる者は全て捕まえてやろうと、両腕から〝煙〟を
﹁〝ホワイト・アウト〟
﹂
麦わらの一味の勝手な都合に、そのやりとりを見ていたスモーカー
ら〟だ
﹁⋮⋮てめェら何を勝手に決めてやがる。おれの目的は第一に〝麦わ
!
﹂
!!!
それはスターの操作によって、ルフィやビビとの間に、二人を守る
える。
宙に浮かぶ無数の星の一個一個がビームを放ち〝煙〟の進行を抑
制とか目晦ましの方向にレベルアップした技だ。
〝トリックスターボム〟が威力を求めたものなら、これは完全に牽
この技を放つ。
なので〝トリックスター〟と〝スタービーム〟が掛け合わされた
時的にだが霧散できる事を知っていた。
スターはスモーカーとの最初の邂逅で、ビームによって〝煙〟を一
﹁〝トリックスタービーム〟
なく、〝煙〟の射程範囲から慌てて跳び退いた。
クロコダイルはそれを〝砂〟で阻むが、ルフィにはそういう手段が
!
57
!
!
ように配置された。
﹁はーっはっはっはっはっはっ おれさまの仲間にはそう簡単に手
﹂
ス
しかし、それは不
ター
!
﹂
﹁もともとそんなもんになる気はねェよ
!!!
﹂
蔓 〟で、螺旋状の〝煙〟となり、ス
ホワイト・バイン
スモーカーは吼えると〝 白
││〝十手〟
!!?
ターへと突撃を仕掛ける。
﹁その程度の動きで
﹂
可能だ。なぜならおれさまはいずれ世界一の有名人になる男だから
ればおれさまを超えるスターになるしかないぜ
﹁ふっふ、お前の相手はおれさまだって事だ。ウチの船長と戦いたけ
﹁プトレマイオス・E・T・スター⋮⋮面倒な技を使いやがる﹂
を出させないぜ、スモーカー
!
!
﹂
﹂
ま さ か、お れ さ ま の ス タ ー 性 を 揺 ら が せ る ほ ど の 〝 ス
﹂
﹁わけわかんねェ事を言ってんじゃねェ
﹁〝スタービームソード〟
!
!!?
﹁バ カ な
の〝スターオーラ〟が弱まった。
モーカーの持つ〝七尺十手〟の先端がスターに掠ると、一瞬、スター
〝煙〟に捕らわれるのは避けたものの、そこから繋がる攻撃で、ス
!
ターパワー〟を秘めているとでも言うのか、その〝十手〟は
!!?
手〟の腹を弾く事で、その攻撃に対応する。
﹂
!
気になる。
イーストブルー
麦わらの一味と共にいる、この国の王女だと思われる人物の存在も
のか。
そもそもなぜ麦わらの一味は王下七武海の一人などと争っている
なればそちらも気になって仕方がない。
一番の目当てである〝麦わらのルフィ〟がすぐ傍で戦っていると
スモーカーがスターのしぶとさに苛立った声を上げる。
からっていい加減な仕事をしやがって⋮⋮
﹁ち ぃ ⋮⋮ コ イ ツ が た っ た 7 7 7 万 ベ リ ー だ と 東 の 海 の 出 身 だ
!!?
ビーム故にちょっとだけ伸縮自在になった〝スターソード〟で〝十
理 屈 は わ か ら な い が、あ の 〝 十 手 〟 は ヤ バ イ と 感 じ た ス タ ー は、
!!!
58
!!!
スモーカーが戦いながらもそんな思考を巡らせていると、先行した
﹂
なんでナノハナの時といい、七武海のいるこの国にいまさ
ために置いて来る事になった部下の海兵達が集まって来た。
﹁海兵
ら海軍の人達がこんなにいるの
ないのだから。
﹁スモーカーさん
﹂﹂﹂
﹁﹁﹁大佐
﹂
﹂
わらの一味が近くにいるはずだ
ターが〝トリックスタービーム〟の星を動かす。
そのまま、たしぎを先頭に駆け出そうとする海兵を抑えようと、ス
﹂
!
﹁わ、わかりました
麦
コダイルの側につき、麦わらの一味の方だけを捕えようとするに違い
この状況では性格が荒いスモーカーはともかく、他の海兵達はクロ
い。
しかしだからと、ちょうどこのタイミングで来られても嬉しくはな
うにも頼れないのだが。
ダイルが関わっていると知っていたのはビビ達だけなのだから頼ろ
そもそもがアラバスタで起きていたのは内乱であり、それにクロコ
それもあり、アラバスタは海軍にも頼れずな状況が続いていた。
海兵がいる事は稀なのである。
クロコダイルの機嫌を損ねるのもよくないので、アラバスタにおいて
つまりクロコダイル一人いれば、海軍の支部など必要なく、同時に
れるほどにその影響力は大きい。
三大勢力のバランスが失われると世界の平穏が崩れるなんて言わ
一つとされているのだ。
せない││四人の大海賊と合わせて偉大なる航路の〝三大勢力〟の
グ ラ ン ド ラ イ ン
界政府非公認の││要は単純に賞金首だが、強すぎて簡単には手が出
そしてその王下七武海とは〝海軍本部〟と〝四皇〟と呼ばれる世
クロコダイルは世界政府公認の七人の大海賊、王下七武海の一人。
ビビがその姿に驚くのも無理はない。
!!?
!
!
!
!
!
それとてめェら こっちの戦いには手を出すな
﹁たしぎ
!
てめェらはそっちを当たれ
!
59
!!?
﹁邪魔はさせねェ
﹂
﹁そりゃ、こっちのセリフだ
れた。
﹁くそっ
﹂
││ビビ、悪ぃ 仲間は任せた
﹂
﹁ルフィさん
﹂
﹂
突き刺したのは当然、そのフックを左手に持つクロコダイル。
突き刺さっている。
ビビの視線の先、麦わらの、モンキー・D・ルフィの腹にフックが
しかし、その足が不意に止まった。
﹁⋮⋮え
ビビもこの場にいても自分には何もできないと、すぐに駆け出す。
況ではなかったので決断した。
けではなかったが、スモーカーは手強く、なんでもかんでもやれる状
スターとしても、この状況でビビを一人で動かす事に不安がないわ
﹁わかったわ
﹂
おれさまもすぐに
!
追いつくから、傷ついてたら、協力して海軍から逃げろ
!
しかしそれは逆にスモーカーの〝煙〟に絡め取られ、動きを止めら
!
!
ていた。
﹁││何っ
﹂
﹂
で、海賊、モンキー・D・ルフィは⋮⋮静かにクロコダイルに敗北し
スターが派手にビームやらをバラ撒いて周りの目を引いている中
どれだけ信じられない光景でもそれは現実である。
!!!
!!!
〝 麦 わ ら の ル フ ィ 〟。こ の、
?
さすがクロコダイルさんだ
!
かれた状態でググッと持ち上げられた。
﹁やった
﹂
ルフィの身体がクロコダインとの身長差によって、フックに刺し貫
偉大なる航路にゃあよ⋮⋮﹂
グ ラ ン ド ラ イ ン
な ん ざ、い く ら で も い る ぜ ⋮⋮
﹁おれを、誰だと思ってる。⋮⋮てめェのような口先だけのルーキー
人も動きを止める。
ビビの叫びによって、その状況に気づいたスターとスモーカーの二
﹁麦わら⋮⋮
!!?
60
!
!
!
?
!
﹁見たか海賊
クロコダイル
﹂
クロコダイル
この国には英雄がいるんだ
﹁﹁﹁クロコダイル
﹂﹂﹂
!!!
!
﹁ルフィ
﹂
の無知さを憎んでしまったのは。
何も知らないからとはわかっているのに、アラバスタの国民の、そ
それは、ビビにとっては初めての事かも知れない。
ビビの唇⋮⋮そして掌から血がこぼれた。
真実を知らない者達が、ルフィの敗北を無邪気に喜ぶ。
!!!
も同じだがな⋮⋮
﹂
﹁邪魔を││するなッ
﹂
﹁⋮⋮悪いが行かせねェぜ。これを、不本意な結末だと思うのはおれ
!!!
カーを殴り飛ばす。
﹁がっ⋮⋮ なん⋮⋮だとぉ⋮⋮
さか││﹂
おれァ〝煙〟だぞ⋮⋮
ま
!!?
次はお前か
さて、お前の名前はなんだった
?
おれさまはそんな││
!
海賊王にもなれないような弱い奴の一味に入ったんじゃねェ
﹁ルフィ、てめェ 敗けてんじゃねェよ
上の怒りの対象がスターの目の前にはあった。
││いや、もちろんそういう感情もあるのは間違いないが、それ以
だが、それはクロコダイルに対する怒りからではない。
リと奥歯を噛み鳴らした。
ぷらぷらとルフィの身体を揺すってみせるその姿に、スターはギリ
前の能力には興味がある﹂
では覚えていられなくてな。許せよ。⋮⋮まァ、名前はともかく、お
﹁ああ、そうだ。スターだったな⋮⋮。何せこんな小物の部下の事ま
﹁プトレマイオス・E・T・スター﹂
か⋮⋮﹂
﹁クハハハハ⋮⋮
スモーカーの横を抜け、クロコダイルと対峙する。
スターはスモーカーがその後に呟いた言葉には興味がなかった。
!!?
で、スモーカーとの距離を詰めると、その拳で立ち塞がったスモー
〝スターオーラ〟の輝きが強まり、スターはこれまで以上の速度
!!!
!
!
!
61
!!!
!
!!?
ぞッッッ
﹁何
﹂
﹂
おれァ、
確かにこんな弱い船長の下についちまって残
﹁うるせェ。ちょっと黙ってろ﹂
お前のその能力は買ってるんだ﹂
念だなあスター。これを機におれの下につく気はないか
!
めェとはここまでだ
﹂
今
そ の 時 は て
おれさまに仲間でいて欲しかったら
ここでこいつを超えてみせろッッッ
!
!
﹂
!
!!!
で終わりだ﹂
﹁終 わ ら ね ゛ え ッ ッ ッ
﹂
お れ は │ │ 〝 海 賊 王 〟 に な る 男 だ ッ ッ ッ
ね え。何 も 掴 め ね え。お 前 は お れ に 敗 け た ん だ。お 前 の 野 望 は こ こ
﹁そんな状態で何を言ってやがる。諦めろ。麦わら、お前は何も守れ
ぞ⋮⋮何一つ⋮⋮ッ
﹁仲間⋮⋮おれの仲間⋮⋮おれの夢⋮⋮終わらせねェ⋮⋮奪わせねェ
た。
スターの宣言に、焦点の定まらずにいたルフィの目に活力が宿っ
!!!
!
が て め ェ の 代 わ り に こ い つ を 倒 し て や る。だ け ど
﹁││ルフィ。てめェがこいつには勝てませんって言うならおれさま
?
﹁クハハハハハハッ
血を大量に流しながらも、仲間の声にルフィがわずかに反応する。
﹁す、スター⋮⋮﹂
!!!
﹂
もいっきり握りしめた。
﹁ぐあっ
﹂
!!?
らに蒸気のようなものが噴き上がる。
血の巡りが速くなったからか、ルフィの身体の血色が良くなり、さ
動かし、残った血を汲み上げ、クロコダイルを殴り飛ばした。
着地すると同時、ふらつきながらも、ルフィは足をポンプのように
﹁何││ぷべっ
﹁〝ギア 2 〟﹂
セカンド
クロコダイルはその痛みに顔を顰めルフィを放り投げる。
!!?
62
?
血に塗れた手でルフィはクロコダイルのフックのついた左腕をお
!!!
﹁考えてたんだ。ずっと⋮⋮スターの速さに追いつくにはどうすれば
いいのか。地面をたくさん踏めばその分だけ速く動ける⋮⋮でも、そ
れだけじゃ足りねェ。スターみたいに身体そのものを強化する方法
が必要だったんだ﹂
﹁てめェ⋮⋮いったい何を⋮⋮﹂
血の巡りが速くなった分、外に流れ出る血も増えたルフィは、ふら
ふらしながらも何かに憑りつかれたかのように喋る。
﹁考えて考えて、今やっと繋がった。身体をカラカラにされて思いつ
いた。肉や骨だけじゃねえ⋮⋮流れる血を速く動かせばいいんだっ
﹂
このおれがやられてたまる
て⋮⋮これが、これからの戦いのためにおれが見つけ出した答えだ
⋮⋮ッ
﹂
﹂
﹁そんなガキみたいな思いつき一つで
かァッ
ピストル
﹁〝ゴムゴムのJET 銃 〟
極限の状況で一段階進化したルフィの技によって、クロコダイルが
またぶっ飛ばされた。
効いている、間違いなくだ。
ルフィの攻撃にクロコダイルもまた流血し、その顔にはもう余裕も
見られない。
ギ
ア
﹂
な、何⋮⋮今度は油断してねェ⋮⋮てめェ、さっきから
う状況が受け入れられないのだ。
﹁何言ってんだ。お前、水怖いんだろ
﹂
?
﹁なん⋮⋮だと⋮⋮
﹂
うと考え戦っていた中でようやく見つけ出した答え。
スターにスモーカーを任せた事で、〝十手〟が試せないぞどうしよ
血の巡りがよくなった頭はルフィにその答えをもたらした。
﹁だったら、血でも同じだ。血でも砂は固まるぞ﹂
﹁あぁ゛
﹂
その能力に絶対の自信を持っているからこそ、それが破られるとい
!!!
﹁ぐぼぉっ
ロ
このおれは自然系の能力者だぞ
!!?
クロコダイルが吼える。
なんでおれを殴れる
!!?
?
63
!!!
!
!
!
?
そしてそれは、その通り正解であった。
スナスナの弱点は〝水〟。
悪魔の実の共通の弱点である〝海〟ではなく、普通の水を被るだけ
で〝砂〟は固まり、攻撃を受け流す事ができなくなる。
﹂
てめェみたいな
﹁これで互角だ。だから、絶対に敗けねェ お前がどこの誰であろ
うと、今ここでお前を超えていくッッッ
﹁││調子に乗るな、この小僧がァーーーッッッ
﹂
ルーキーに潰されてやるほどに、おれの野望は安くねえんだよッッッ
!!!
!
!!!
それは壮絶な死闘だった。
互いの誇り、互いの夢、互いの野望、互いの信念、それら全てをぶ
つけ合い、喰らい合う、弱肉強食の海賊世界の決闘。
竜巻のような激しさを持ち、炎のように熱いその死闘は、互いをこ
のアラバスタの砂漠のようにカラカラにしてなお続いた。
しかし、それでも終わりは訪れる。
その決闘の勝者は││。
おれは腹が減ったぞスター。みんなの場所まで連れて
﹁││お疲れ。船長﹂
﹁しししし
﹁ああ。おれさまに任せておけ﹂
行ってくれ﹂
!
64
!!!
﹂
﹂
あれ見ろ
﹂
第10話・アラバスタにさよならを
﹂
﹁オイあれ⋮⋮
﹁
﹁クロコダイル
﹁勝った⋮⋮﹂
﹁ああ、勝った⋮⋮
﹂﹂﹂﹂﹂
顔には笑顔が浮かんでいる。
しかし、彼らはそうでも民衆は違う。
﹁そ、そんな⋮⋮クロコダイルさんが⋮⋮
﹂
おれはお前を絶対に許さないぞ
!
!
﹂
﹂
誰もがボロボロだが、誰一人欠けておらず、戦いの決着を見たその
味は、それぞれの戦いに決着をつけて地上へと上がって来た。
スターとビビがルフィを連れてみんなを探し出す前に、麦わらの一
﹁﹁﹁﹁﹁あいつが勝ったんだ
!!!
この町から出て行け海賊
﹁くそぉ、海賊
﹁出て行け
!
!
﹂
?
﹁わかったぜ。任せろ
﹂
ます。それにミス・オールサンデーから聞いた爆弾の話もあります﹂
﹁なら、首都に。アルバーナに飛んでください。そこで全てを明かし
からな﹂
﹁まだギリ使えるぜ。おれさまはルフィほど消耗してるわけじゃない
﹁スターさん、〝スターシップ〟は
﹁⋮⋮いいんだ。あとはこの国の問題だ。行こう﹂
﹁てめェら、ルフィが誰のために││﹂
る。
砂漠の〝英雄〟の敗北に、悲嘆にくれた声がそこかしこから上が
!
それにより、ビビの父親││アラバスタ現国王である〝ネフェルタ
記された密書が届けられていた。
供である超カルガモ部隊の隊長〝カルー〟に託していた〝真実〟の
首都の王宮に一味が着いた頃には、実はビビがナノハナの段階でお
それからの時間は飛ぶように流れていった。
!
65
!!!
!
!!!
!
!
リ・コブラ〟の指揮の下、王国軍はすでに動き出していた。
暗躍するB・Wの社員を洗い出し、反乱軍の説得にはコブラ自らが
赴いた。
それでもすぐに和解とはいかなかったが、同じく真実を知った海軍
によりクロコダイルが捕縛されたとの知らせを受け、反乱軍のリー
ダーであるコーザは、自らの過ちに涙を流した。
﹁おれは間違っていたのか⋮⋮全部、親父が正しかった⋮⋮ あん
!!!
﹂
﹂
たを信じられなかったおれの弱さが⋮⋮こんな取り返しのつかない
事を⋮⋮
﹂
!!!
得たものはない﹂
!!!
⋮⋮ こ の 戦 争 の 上 に 立 ち
﹂
生 き て み せ よ
!!!
﹁国王⋮⋮﹂
!!!
ア ラ バ ス タ
過去を無きものになど誰にもできはし
﹁││だが、これは前進である
戦った相手が誰であろうとも、戦い
﹁悔やむ事も当然⋮⋮やり切れぬ思いも当然。失ったものは大きく、
﹁
﹁顔を上げよコーザ
!!!
は起こり、今終わったのだ
ない
王国よ
!!!
!!!!!
同じくミス・オールサンデーからもたらされた情報により、アル
後の大仕事。
そうしてルフィが眠っている間に一味は││というか、スターは最
無事に中和されたようだ。
デーが〝解毒剤〟をくれ、〝船医〟チョッパーの適切な処置もあり、
しかし、その〝毒〟については決闘後になぜかミス・オールサン
に仕込まれていた〝毒〟までも受けたのだから。
何せそのクロコダイルとの戦いでは、腹に大穴を開けられ、フック
日間眠り続けた。
〝麦わら〟のモンキー・D・ルフィは、壮絶な死闘の消耗激しく、3
は降った。
それから2日後⋮⋮アラバスタ国民の想いに応えるかのように、雨
!!!
66
!
バーナの時計台に仕掛けられた大砲││その時限機能つきでもある
砲弾を〝スターシップ〟で海上へと運び、〝スターダストビーム〟で
処理した。
思った以上に規模が大きい爆発に、危うく死にかけるものの、なん
とか生還。
その結果をもって││麦わらの一味がアラバスタ王国にてやるべ
き事は、全て終了したのであった。
そんな一味は、ルフィが起きたので改めて今回の功労者として宮殿
で盛大なもてなしを受け、大いに騒ぎ、大いに楽しみ、大いに歌い、大
・
・
コブラ
いに輝き、大いに新規ファンを開拓し、大いにビビに驚愕され⋮⋮そ
してメンドくさくもまた拗ねた。
﹁⋮⋮ありがとう﹂
・
﹂
﹁﹁﹁﹁﹁エロオヤジ﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹁そっちじゃないわ
宮殿の大浴場で女湯を覗いたあとの国王の言葉に、麦わらの一味だ
けでなく、ご都合主義だとしても嬉しい、実は生きていたイガラムと
一緒になっての感想に、コブラはまるで説得力なく鼻血を流しながら
ツッコんだ。
﹁⋮⋮国をだよ﹂
﹂
コブラは鼻血を拭いマジメな雰囲気になると浴場に手を突いて頭
国王がそんなマネをして⋮⋮
王が人に頭を下げてはなりま
!
を下げる。
﹁オイオイいいのかよあんた
﹂
﹁これは大事件ですぞコブラ様⋮⋮
せん⋮⋮
!
!
呂場。裸の王などいるものか。私は一人の父として、この土地に住む
民として、心より礼を言いたい。││どうもありがとう﹂
コブラの微笑みと共に贈られた言葉に、麦わらの一味は笑顔になっ
た。
裸の王はいなくとも、裸
!
というわけで、風呂場でもおれさまの
﹁ふふふっ、はーっはっはっはっはっはっ
のスターならばここにいる
!!!
67
!!!
﹁イガラムよ。権威とは衣の上から着るものだ。⋮⋮だが、ここは風
!
歌を聴けーっ
﹂
﹂
もっとやれ
﹁ギャハハハハハハ
﹁いいぞ、スター
!
﹂
背中を押してこう言います。〝お前には、あの光が見えないのか
〟﹄
麦わらの一味の戦いは幻。
て流れ去っていく。
!
﹁聞こえたろ。今のスピーチ間違いなくビビの声だ﹂
﹂
﹁アルバーナ式典の放送だぞ。もう来ねェと決めたのさ⋮⋮
﹁ビビの声に似てただけだ⋮⋮
﹂
が、クロコダイルをぶっ飛ばしたなんて話は、ただのバカな冗談とし
からすれば、それは極少数に過ぎず、麦わら帽子を被った一人の海賊
その瞬間を見ていた者達はいるけれど、アラバスタ1千万人の国民
?
﹃⋮⋮暗い暗い嵐の中で一隻の小さな船に会いました。⋮⋮船は私の
は、隙間がないほどに人が集った。
もその音声が流されているにも拘らず、アルバーナの宮殿前の広場に
拡声器の音量は最大で、〝電伝虫〟を通じてアラバスタ中の各町に
アラバスタ王国、王女ビビの話が始まる。
アルバーナで行われている内乱終結の記念式典。
﹃少しだけ、冒険をしました﹄
消した。
騒がしく楽しい夜は過ぎ││そして、麦わらの一味は宮殿から姿を
!
ら仕方がない、というゾロやサンジの言葉に、しかしルフィは必ず来
だが、そうまでしてもビビは来ない⋮⋮ビビはこの国の王女様だか
らは逃れていた︶の決死の囮作戦によって、突破に成功した。
に行くという、麦わらの一味の姿に感銘を受けた、Mr.2︵海軍か
それは、一度は友情を結び││そして再び命を賭けてでも仲間を迎え
ここに辿り着くまでには海軍の軍艦による包囲網などもあったが、
リスク〟でビビが来るのを待っていた。
そんな麦わらの一味を乗せたゴーイングメリー号は、東の港〝タマ
!
68
!
!!!
ると首を振る。
﹂
カルー
﹂
!!!
﹁みんなァ
﹁ビビ
!!!
神妙な顔になる。
言いに来たの
!!!
﹂
?
﹁お別れを
⋮⋮今、なんて⋮⋮
!!!
していた受話器を手にした。
今まで本当にありがとう
冒険は
││だか
!!!
!!!
﹃私⋮⋮一緒には行けません
﹄
まだしたいけど、私はやっぱりこの国を、愛してるから
﹂
ら、行けません
﹁⋮⋮そうか
!!!
!!!
もう一度、仲間と呼んでくれますか
﹄
﹃私は││⋮⋮私は、ここに残るけど⋮⋮ いつかまた会えたら
!
ルフィは応えようとしたけど、ナミによって止められる。
また、海軍の軍艦が姿を見せていたのだ。
その涙は別れの悲しみから流れ始めたものであったが、不意にビビ
ビビの瞳からは大粒の涙が流れている。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
の一味にとっての最大の思いやりであった。
何も言わずに出て行く事こそが、仲間であるビビに対する、麦わら
てもよくはない。
とわかると、ビビは〝罪人〟になるし、これからのアラバスタにとっ
アラバスタの王女であるビビと海賊の間にハッキリ繋がりがある
集まって来ていた。
王下七武海陥落という大事件に、近海の海軍の軍艦はアラバスタに
!!!
!!!
ビビは声を、想いを、きちんと届けるために、それまでスピーチを
船から離れており、潮風もある。
﹁
﹂
一気に盛り上がる麦わらの一味だったが、ビビは笑顔から一転して
ビビは確かにその場所に姿を現した。
ルフィの想いは通じた。
!!?
それに言葉で応える事はできなかった。
!!?
69
!
は泣きながらも笑顔を作り左腕を掲げた。
印〟が記されていた。
ビビの隣ではカルーも同じ事をしている。
ビビとカルーの左腕には〝
﹂
〝海賊狩り〟のロロノア・ゾロ:6千万ベリー。
〝麦わら〟のモンキー・D・ルフィ:1億ベリー。
[手配書更新]
で、実に見事な復興を遂げる。
││その後、アラバスタ王国は⋮⋮諸国も目を見張るばかりの速度
仲間を一人と一羽、アラバスタ王国に残して。
船は進む。
﹁出航∼∼∼
腕を掲げている。
麦わらの一味は全員一列に並んで、ビビには背中を向けながらも左
局そのためには使われず、だけどこうしてとても役には立った。
本来はその上に包帯を巻いての、二段構えの〝対策〟だったが、結
あり、仲間の証。
それは、Mr.2に仲間に化けられた時のために考えた〝対策〟で
×
〝輝き〟のプトレマイオス・E・T・スター:7777万ベリー。
70
!!!
第11話・そして空島へ
アラバスタ王国を出て、ビビ︵とカルー︶のいない船の淋しさを感
じていた麦わらの一味。
そんな彼らの船には一人の密航者の姿があった。
密航者の正体はミス・オールサンデー││本名は〝ニコ・ロビン〟。
B・W社の副社長であり、懸賞金7900万ベリーのその女は、自
分を仲間に入れて欲しいと麦わらの一味に言う。
麦わらの一味のせいで、アラバスタ転覆とは別の、彼女の目的を果
たせなかったロビンは、それでも前後に得た情報からアラバスタには
もともと目的の物がなかったであろう事を悟った。
ポー ネ グ リ フ
他の手掛かりのない彼女にとって、アラバスタは最後の希望だっ
た。
彼女の目的、彼女の探し物とは〝歴史の本文〟という世界の歴史が
リ オ・ ポ ー ネ グ リ フ
﹂
71
記された石。
その中でも特別な〝真の歴史の本文〟。
得意な事は〝暗殺〟と嘯く彼女は〝考古学者〟であり、ただ隠され
た歴史を求めている。
けれど、その生活に疲れていた彼女は、死ぬ事も考えていた。
そんな中でルフィやスターという王下七武海にも絶やす事のでき
ない〝輝き〟を見た彼女は、少しだけ生きる事を望んだ。
だから、賭けた。
彼らが自分の申し出を受け入れるのならば生き、断るのならば│
│。
﹁私には行く当ても帰る場所もないの。││だから、この船に置いて﹂
﹂﹂﹂
悪い奴じゃねェよ
こいつは〝解毒剤〟くれたりしたんだろ な
﹁なんだ、そうか。そらしょうがねェな。いいぞ﹂
﹁﹁﹁ルフィ
﹁心配すんなって
ら、おれの命の恩人だ
?
﹁ファンが一人減って仲間が一人増えるか⋮⋮おれさまは悲しむべき
!
!
﹁いや、そうだけどよぉ⋮⋮﹂
!
!!!
なのか喜ぶべきなのか⋮⋮﹂
﹂
﹁そこはどっちでもいいだろっ
れてんだよスター
いや、違う 何あっさり受け入
!
賭けには勝った。
悪い奴がいるもんかっ
﹂
﹁ルフィが決めたんだからいいだろ。そもそもおれさまの元ファンに
!
たのだ。
ロ グ ポー ス
!
一味に、スターは高笑いを上げる。
﹁ふ ふ ふ っ、は ー っ は っ は っ は っ は っ は っ
﹂
その手があったわね﹂
シップ〟なら余裕だな
﹁あ、なるほど
お れ さ ま の 〝 ス タ ー
だけど、そんな夢の国への行き方なんてわからないと頭を悩ませる
﹁空島か⋮⋮﹂
た。
船長がそうであるからして、麦わらの一味の次の目的地は決まっ
ワクワクは止まらない。
その降ってきた船の残骸から空島の地図を見つけ出したルフィの
麦わらの一味はロビンの言葉から〝空島〟の存在を知る。
偉大なる航路では必須の〝記録指針〟もなぜか空を示すようになり、
グ ラ ン ド ラ イ ン
かり珍しい。
いても、空から巨大なガレオン船が降ってくるという光景は、少しば
さて││事実は小説より奇なりなどとは言うが、偉大なる航路にお
グ ラ ン ド ラ イ ン
そうして〝考古学者〟のニコ・ロビンは麦わらの一味の一人になっ
彼らはそれはもうあっさりと彼女を受け入れた。
!
!
いるのならば、空島にも行く事が可能だろう。
だが、そんなスターの言葉に、一番空島に行きたがっているはずの
おれ達の航海は、メリー号
!
ルフィが待ったをかける。
﹂
﹁ズルイぞ、スター でも、ダメだぞ
でやるんだからな
!
!
72
!
確かに空を飛べる〝スターシップ〟であれば、本当に存在さえして
!
﹁まったくルフィの言う通りだぞ、スター。メリーだっておれ達の仲
間だろ﹂
彼らの船であるゴーイングメリー号で行かなければ意味がないと
いうルフィとウソップの言葉に、スターは自分の間違いを素直に認め
た。
﹁む⋮⋮。わかったぜ。││だったら、メリー号で空に行く方法を考
﹂
えないとだな﹂
﹁おう
一味はゴーイングメリー号で空島へ行くための情報を求めて、沈ん
でしまったガレオン船のサルベージに移る。
ボ
ス
そこで同じくサルベージをするために現れた〝サルベージ王マシ
ラ〟というサル顔の男を船長││もとい園長とした〝マシラ海賊団
〟に出会ったり、謎の大巨人を見たりもしたが、特に情報は得られず
じまい。
エターナルポース
しかし、このまま当てもなく海を彷徨うわけにもいかないしと、ロ
ビンがこっそりその船から盗った〝永久指針〟を用いて、〝ジャヤ〟
という島に向かう。
そこにあったのは夢を見ない町。
夢を笑う無法者達の集まる、嘲りの町〝モックタウン〟。
まぁ⋮⋮多少のいざこざはあったものの、特に問題はなく、ついに
ノックアップストリーム
麦わらの一味は空島へと行く方法を見つけた。
〝 突き上げる海流 〟 ⋮⋮ 海 底 で 起 こ る 大 爆 発 に よ っ て、空 へ と 飛
び、空島があると思われる〝積帝雲〟に突っ込む。
ジャヤにあって唯一夢を見る者達││先のマシラに加えて、スター
とシャウト対決をして敗北した〝海底探索王ショウジョウ〟と、その
二人に慕われる〝うそつきノーランド〟の子孫である〝モンブラン・
クリケット〟の協力の下、一味はその時を迎えた。
〝積帝雲〟の下に入った事で〝夜〟のような暗さの中、海王類でも
抵抗できない大渦の中心へと、強化改造されて翼のついたゴーイング
﹂
メリー号は突き進む。
﹁待ァてェ∼∼∼
!!!
73
!
﹁
﹂
﹁ゼハハハハハハハハハハ
追いついたぞ麦わらのルフィ
ロ グ ポー ス
﹂
が必要だと伝えてきたが、べつにそれを払わなくても通れるというの
天国の門には老婆が一人おり、入国料として10億〝エクストラ〟
そうして乗れる雲で遊んだりしつつ、見つけたのは〝天国の門〟。
て行ってしまったために、一味はとりあえずで船を進める事にした。
くれたのだが⋮⋮それ以外の空島の事などは特に説明せずに去っ
にきてくれるという〝ホイッスル〟をくれた。
その中で空の騎士だけは友好的で、困った時に吹けば一度だけ助け
容貌のペガサスに乗る空の騎士〝ガン・フォール〟。
風船のようなタコに、いきなり襲いかかってきた仮面の男、微妙な
杯。
まだ上があるのだと知る一味だが、そんな一味の前には不思議が一
指している。
〝空の海〟の存在を確認するものの、〝記録指針〟は変わらず上を
メリー号は雲の上に乗っていた。
分厚い雲の壁を突き抜けて、一味が気がついた時には、ゴーイング
いざ空島へ││。
く、ゴーイングメリー号は飛び、〝積帝雲〟へと突っ込んだ。
〝航海士〟のナミの的確な指示により、その勢いを止める事もな
走るゴーイングメリー号。
空へと一直線に、巨大な柱のように突き上げるその海流を、垂直に
〝突き上げる海流〟。
ノックアップストリーム
しかし、その事に対する反応もそこそこに、目的の現象が起こる。
を知った。
そこで一味はアラバスタの一件により、手配書が更新されていた事
彼らの目的は一味の首に懸けられた懸賞金。
船に乗る男達の姿。
そんな中で麦わらの一味を追いかけてくる巨大なイカダのような
!!!
で、一味はその〝エクストラ〟という通貨がよくわからない事もあっ
て、そのまま通行する事にした。
74
!!!
?
〝白海〟名物〝特急エビ〟の背中に乗せられ、川のような帯状の雲
冒険のにおいがプンプンするぞ
を越え││そして、麦わらの一味は、〝白々海〟神の国〝スカイピア
天使だ
あそこに⋮⋮天使がいるぞ
﹂
││待てっ
この音色は
天 使 を お れ さ ま の フ ァ ン に し な け れ ば
ここはなんなんだ
〟へと入国した。
﹁は∼∼∼
﹂
﹁天 使 天 使 は ど こ だ
﹂
!!!
﹁お、スター、天使を探すなら手伝うぜ
⋮⋮
!
!
!!!
!
笑んだ。
﹂
﹂
﹁⋮⋮へそ
﹁あ
﹁へそ
!!?
﹂
トーンダイアル
光をためる〝 灯 貝 〟。
ランプダイアル
風を蓄えておける〝 風 貝 〟。
ブレスダイアル
音を録音・再生できる〝 音 貝 〟。
〝ダイアル〟。
そんな中で一味が特に興味を持ったのは空島特有の不思議な貝殻
すっかり打ち解ける。
家に招待し、食事までご馳走してくれた友好的な二人に、一味は
島の事を教えてくれた。
〝コニス〟と名乗った少女は、その父の〝パガヤ〟と共に親切に空
﹁挨拶一つされただけで、どんだけポジティブなんだよ、お前﹂
わっていたとは
﹁あ あ、お れ さ ま も 驚 い た。ま さ か 空 島 に ま で お れ さ ま の 存 在 が 伝
﹁会ったばっかだろ⋮⋮﹂
﹁ファンの間では時に不思議な言葉が流行ったりするものだ﹂
﹁いや意味わかって言ってんのか、スター﹂
!
﹂
一味に気づいた少女は竪琴を弾いていた手を止めると、にこっと微
て、羽の装飾品を背中につけた少女。
サンジが指差した先にいたのは、触覚のような不思議な髪型をし
!
!
75
!!!
!
!
!
!!!
!
貝 〟。
フレイムダイアル
炎を蓄える〝 炎
貝 〟。
フレイバーダイアル
ビジョンダイアル
香りをためる〝 匂
映像を残せる〝 映 像 貝 〟。
ダイアル
などなど⋮⋮空島の文化はそんな不思議〝 貝 エネルギー〟と共
にあるらしい。
﹁これは悩みどころだな⋮⋮おれさまの声や姿を残す事は正しいのか
ど う か。お れ さ ま は あ く ま で 直 接 フ ァ ン と 会 っ て 触 れ 合 い た い が
﹂
⋮⋮スターだけに、星の数ほどいるファンに対しておれさまは一人。
ここで決断するべきなのかどうか⋮⋮
くても今は金欠だって話だ﹂
﹂
そのナミさんはどこに行ったんだ
﹁ナミと交渉してみる
﹁⋮⋮で
﹁いるだろ海に﹂
﹁いやいねェ⋮⋮﹂
﹂
﹁悩んだところでそんな金をナミは出してくれねェだろ。そうじゃな
!
どうした
・
・
・
・
﹂
彼らは不法入国者である麦わらの一味に最後通告をしに来たとい
・
そこに現れたのはスカイピアの警察。
運ぶ。
たり会わなかったりするために再び最初に辿り着いた海岸へと足を
ルフィを筆頭に一味は、ナミを探したり探さなかったり、神に会っ
がいるらしい。
コニスが言う事が確かなら、そこには全能の神〝エネル〟なる存在
それは聖域⋮⋮〝神〟の住む土地〝アッパーヤード〟。
場所があるんです﹂
﹁このスカイピアには何があっても絶対に足を踏み入れてはならない
﹁なんだ
ら不安そうな顔をする。
きっと今も楽しんでいるのだろうが、コニスとパガヤの二人は何や
うに乗り回せる一人乗り用の船をパガヤに借りて乗り回していた。
ナミは〝 風 貝 〟を利用した〝ウェイバー〟という、バイクのよ
ブレスダイアル
﹁じゃ、ちょっと遠出してんだよ。放っとけって﹂
?
!
?
76
?
?
う。
一人100億エクストル⋮⋮麦わらの一味、八人で800億エクス
トル︵ベリー換算では800万ベリー︶を支払うなら、その罪も許さ
れるらしいのだが。
ウェイバーでちょうど帰ってきたナミがその額の高さに、スカイピ
ア警察の隊長を反射的に轢き倒し、公務執行妨害でさらに罪が加算、
捕縛に動き出した彼らを撃退した事でさらにさらに加算。
あっという間に第11級犯罪が第2級犯罪にまでランクアップし
ていた。
アッパーヤード
﹁これでもはや第2級犯罪者。泣こうがわめこうが⋮⋮ハハハハハハ
﹂
ハ⋮⋮神 の 島の神官達の手によって、おまえ達は裁かれるのだ へそ
そういう理由から空でもお尋ね者になった麦わらの一味。
﹁というか││﹂
﹁﹁﹁﹁どこ行ったんだ
﹂﹂﹂﹂
と、どこかへと連れ去られてしまう。
それの背中に乗せられ、船に残った一味はゴーイングメリー号ご
のエビよりも一回り以上巨大な〝超特急エビ〟の姿が。
ゴーイングメリー号の船底には、天国の門からスカイピアに来る時
いた。
準備を進める中、バルコニーから船を見たウソップがその事に気づ
﹁││オイ、船の方の様子が変だ﹂
は船で出航準備を進める事になった。
れにウソップとスターの四人は一度コニス達の家に戻り、残りの者達
弁当やら船の修理材料やらの冒険準備のためにルフィとサンジ、そ
かるし、居場所がバレてるので、船を出す事に。
この場に留まれば、親切にしてくれたコニスとパガヤにも迷惑がか
!!!
ならば行先は〝 神 の 庭 〟の北東││〝生け贄の祭壇〟です﹂
アッパーヤード
﹁⋮⋮超特急エビは神の使い。運ぶものはいつでも〝神〟の供え物。
?
ナミさんとロビンちゃんとその他が生け贄にされるのか
﹂
!!?
﹁生け贄
!!?
77
!!!
神の奴の
!!?
許せねェ∼∼∼
と騒ぐサンジだが、パガヤの言うところによる
どうであれ話は簡単だ
﹂
!
り着く者があれば、共に逃げてもいいのだとかなんとか。
﹁はーっはっはっはっはっはっ
﹁あ、待てよスター。おれも一緒に││﹂
まがぱぱっと〝スターシップ〟で助けて来てやるぜ
!
び上がる。
﹁サンジはいいから弁当を完成させろよ
﹂
!
中へと足を向ける。
﹂﹂﹂
三人が背を向けたその背後で││カッ
﹁﹁﹁
と何かが光った。
!
ルフィとウソップもスターに任せておけばもう安心だろうと家の
うとした。
サンジは文句を言いながらも、まぁ仕方ないかと弁当の制作に戻ろ
そう言って一人で飛んで行ってしまうスター。
は出るんだしな
戻ってきたらどうせここ
サンジが言うよりも早くスターは〝スターシップ〟で空へと浮か
!
おれさ
残された者達が〝天の裁き〟の〝試練〟によって試され、そこに辿
と、生け贄は言葉の通りの生け贄ではなく〝人質〟らしい。
!!!
ものに呑み込まれた〝スターシップ〟の姿と、その後に残る〝海雲〟
に開いた大穴。
﹁おい、ちょっと待てよ⋮⋮﹂
それからどれだけ待っても、どれだけ目を凝らそうとも、〝スター
シップ〟の姿は見えない。
﹂﹂﹂
﹁〝神の裁き〟⋮⋮﹂
﹁﹁﹁
パガヤの怯えを存分に含んだ呟きに、三人は一斉にパガヤに視線を
ス
!!!
やった。
﹁な ん だ よ ⋮⋮ お い っ な ん な ん だ よ、〝 神 の 裁 き 〟 っ て
﹂
!!!
神は││〝空を飛ぶ船〟を持つスターの存在を許さなかった。
ターは││いったい、どこに行っちまったんだよォッ
!!!
78
!
反射的に振り向いた三人の目に映ったのは、巨大な光の柱のような
!!?
!
故にスターは神によって裁かれた。
この後、麦わらの一味は空島を巡る戦いに巻き込まれていく事にな
る。
それは最終的にバトルロイヤル的なサバイバルの様相を呈する事
になるのだが││麦わらの一味の一人、〝輝き〟のプトレマイオス・
E・T・スターは、その戦いが始まるよりも早く、なんの事情すらも
知らないままに、早々に脱落する事になったのだった。
79
第12話・シャンドラの灯の下で
少しだけ歴史を語ろう⋮⋮。
今から400年前、ジャヤには一つの部族が住んでいた。
ノースブルー
その部族の名を〝シャンディア〟⋮⋮〝シャンドラ〟という集落
に住む戦士の部族。
その地にはるばる〝北の海〟から一隻の探検船が訪れた。
その探検船の提督こそが〝モンブラン・ノーランド〟。
400年後の未来││つまり現在まで絵本になり語り継がれる〝
うそつきノーランド〟その人である。
シャンドラの戦士達はよそ者の存在を良しとせず、それまでは誰で
あっても排除して来た。
その中にあっていきなり〝神殺し〟を犯したノーランドは許され
るはずもない。
しかしそれは集落のためにと生け贄に捧げられた娘を、彼らが神と
崇める〝ヘビ〟から救うための行動であり、なおかつ彼らを襲ってい
た〝悪霊〟││〝疫病〟を治してみせた事で信頼を得て、友となっ
た。
特にシャンドラの〝大戦士・カルガラ〟とノーランドは親友という
関係になったと言ってもいい。
その関係の証として、カルガラはかつて彼らの先祖が暮らしていた
〝黄金都市・シャンドラ〟の存在を見せた。
さらにはその都市の中心にある、先祖の魂を導くという〝シャンド
ラの灯〟と呼ばれる〝黄金の鐘楼〟以外ならば、どれだけでも黄金を
船に積んで持っていって構わないとノーランド達を喜ばせた。
友としての楽しい時間が過ぎ││けれど、別れの時になって、カル
ガラはノーランドに激しく怒っていた。
ノーランドが知らず、彼らの先祖の墓とも言うべき〝身縒木〟を切
り倒したからだ。
だがノーランドも理由なくそんな事はしない。
その木は彼らが罹った〝疫病〟と同じものに罹っていた。
80
それを放置しておけばいずれ島を腐らせる。
だから、ノーランドは彼らのために木を切ったのだ。
互いに真実を知り、ノーランドは貰った黄金を全て置いて島を出て
行く事にし、カルガラはその出航に間に合えと大地を駆ける。
カルガラは島から離れていく船に、声の限りに叫んだ。
ここでずっと鐘を鳴ら
鐘
!!!
││この地でおれはお前を待っている
││
また来るお前の船が、嵐の中でも迷わないように
を鳴らして、君を待つ
し続ける
!!!
││シャンドラの灯をともせェ
││
そして、同じ大地でいつの日か必ず会おう。
再び鐘を鳴らして居場所を伝える。
約束は絶対に果たす。
ノックアップストリーム
た空の者達と、その後400年経っても続く戦いを始める。
〟によって、大地は空へと打ち上げられ、その土地を狙ってやって来
突 如 ジ ャ ヤ を 襲 っ た 天 変 地 異 と 呼 べ る 自 然 現 象 〝 突き上げる海流
⋮⋮一方でカルガラは空にいた。
〟をつき続け、ノーランドは友の無事を祈りながら死んだ。
れる最期の瞬間まで、シャンドラは、〝黄金郷〟は存在すると〝うそ
半年後⋮⋮再び帰ってきた故郷において、〝虚言〟の大罪で処刑さ
そしてノーランドは一転して〝うそつき〟と呼ばれるようになる。
なくなってしまっていた。
ジャヤは切り取られたように途切れ、シャンドラの集落は影も形も
誰もいなかった。
しかし、そこには何もなかった。
ンドは再びカルガラに会いに行く。
それから5年後││その地に行く事を望んだ国王を連れて、ノーラ
類稀なる〝正直者〟として有名なノーランドの話をみんなが信じた。
黄金を置いて来てしまったために証拠は何もなかったが、それでも
それらの話を、国王や国民達に語った。
声はノーランドに届き、故郷へと戻ったノーランドは、誇らしげに
!!!
カルガラもまた友の事を想い、それでも激しい戦いの中で、無念の
!!!
81
!!!
ままに壮絶な戦死を遂げた。
∼∼中略∼∼
⋮⋮歴史語りは終わり、物語は現在。
そんな時代を越えても続く戦いに、麦わらの一味は巻き込まれる。
アッパーヤード
そもそもがスター⋮⋮その無事を信じながらも、仲間をやられた事
に怒るルフィ、ウソップ、サンジの三人は、神 の 地へと自ら乗り込み、
神官の一人を倒した。
その時には連れ去られたゾロ達も好き勝手に動いており、さらには
アッパーヤード
神官が一人減った事を知って、それを好機と見た現在のシャンドラの
戦士達が神 の 地へと乗り込み、残る神官三人を含む神兵達に戦いを
仕掛ける。
もちろん麦わらの一味とシャンドラの戦士達も仲間ではなく、戦い
82
はバトルロイヤル的なサバイバルの様相を呈していった。
神の〝予言〟によれば、その戦いが始まってから3時間後││神自
身も含めて││その地に残るのはわずかに五人。
そして、2時間57分が過ぎ⋮⋮神の前に立つ者は五人。
その内の一人であるナミは隠れているものの、〝予言〟は、神を含
﹂
めての〝予言〟であるからして、まだ一人ばかり人数が多い。
故に神は問う。
﹁││さて、誰が消えてくれる
﹁﹁﹁﹁お前が消えろ﹂﹂﹂﹂
神の前に立つ四人。
誰もが一騎当千の猛者であるのは間違いない。
る。
彼らはそれぞれの武器を、〝玉雲〟に乗り宙に浮かぶ神へと向け
シャンドラの戦士〝戦鬼・ワイパー〟。
空の騎士にして〝前・神〟ガン・フォール。
〝オハラの悪魔〟ニコ・ロビン。
〝海賊狩り〟ロロノア・ゾロ。
?
しかし、神・エネルはそんな彼らを一蹴。
〝ゴロゴロの実〟を食べた〝雷人間〟であるエネルの前に、彼らは
敗れ去った。
神の〝予言〟は神自身が戯れで破り、残るは神とナミ一人だ。
﹁ヤハハハハ⋮⋮〝海楼石〟、それにただの剣士に、薄皮一枚とはいえ
斬られるとはおかしな事もあったものだが、これで決着だ﹂
ナミは生き残るために、内心はともかくエネルに従い、そして見る。
動力を〝雷〟とする〝空飛ぶ舟〟。
〝神の裁き〟によって、スターがいきなり脱落させられたその理由
││方舟〝マクシム〟。
フェ ア リー ヴァー ス
スターのせいぜい十人程度しか乗れない船よりもよほど巨大なそ
れは、エネルの目的である〝限りなき大地〟を目指すためのものであ
るという。
そんな神の一人勝ちのような状況で、戦いが始まって早々に巨大な
エ ル・ ト ー ル
そうでなければおかしい。
エネルが放った〝神の裁き〟は、まるでルフィの身体をすり抜けた
かのように、なんら影響を与えていないのだから。
ジャムブウル
ボルト
ヴァーリー
エネルは手に持った黄金の棍棒〝のの様棒〟をクルクルと回し、連
ボルト
続して他の技を繰り出す。
6000万 V 〝 雷 龍 〟⋮⋮1億 V 〝 放 電 〟。
83
ヘビに、〝うわばみ〟に呑み込まれていたルフィが、ようやく脱出を
果たし、エネルの前へと姿を現した。
どのゴミの事かな﹂
﹁何やってんだお前⋮⋮おれの仲間によ﹂
﹁
エ ル・ ト ー ル
神の裁き〟が襲う。
﹂
しかし││。
﹁
!
避けたのだろうか⋮⋮いや、避けたのだろう。
﹁うまく避けたようだな⋮⋮
﹂
舟 へ と 跳 び 乗 っ た ル フ ィ に、ス タ ー を あ っ さ り と 脱 落 さ せ た 〝
戦いが始まる。
?
?
けれどルフィは不思議な顔をするばかりで、エネルは自分の技が通
じないという状況に││神にあるまじき驚愕の変顔を晒した。
ロ
ギ
ア
だが、それだけでは終わらない。
本来なら〝雷〟故に、自然系の能力者故に、無効化できるはずの攻
﹂
〝雷〟が効かない人
撃が、ルフィの蹴りがその腹に突き刺さり崩れ落ちる。
﹁⋮⋮
﹁完全に⋮⋮〝雷〟の力が無効化してる⋮⋮
しかし〝ゴム人間〟とはあくまで概念であり、特性。
するだろう。
もちろん、これが普通の〝ゴム〟であれば〝雷〟の前に焼き切れも
ただ一人の〝天敵〟。
〝ゴム人間〟であるルフィは、〝雷人間〟であるエネルの、世界で
その二人の戦いを見ていたナミの呟きは正鵠を射ていた。
来事﹂
間が、この世に存在するなんて、きっとエネルでも予想しなかった出
!
﹂
試さなければわからない事ではあったが、その特性は〝雷人間〟の
それを確かに上回っていた。
﹁なんだと言うのだ⋮⋮貴様⋮⋮
﹁⋮⋮ゴム
﹂
﹁おれはルフィ。海賊でゴム人間だ﹂
!!!
﹂
!!!
りつける。
!!!
の力で精錬する。
〝雷〟もダメ、打撃もダメとなってエネルは、黄金の棍棒を〝雷〟
﹁ふん、打撃も効かねェよ
﹂
攻撃が効かないならばと、それは移動にのみ用い、棍棒でルフィを殴
エネルは一時変顔を晒しはしたもののすぐに冷静になり、〝雷〟の
きた技術で、エネルはルフィの攻撃を最小限の動きで避ける。
相手の考えや行動が読めるという、ルフィ達が倒した神官も使って
﹁〝心綱〟﹂
マントラ
﹁〝雷〟なら効かねェ
空島にはゴムがないためにエネルはその言葉の意味がわからない。
?
84
!!?
﹂
三又の矛となった〝のの様棒〟の刺突を、ルフィは跳んで避けた。
﹂
﹁ヤハハ。弱点はやはり斬撃か
﹁ああ﹂
﹁ゆうな
!
﹂
上に戦っていた。
ガトリング
﹁〝ゴムゴムのJET銃乱打〟
﹂
私の想う世界を創るのだ
﹂
空 島 観 光 ⋮⋮ 悪 い 時 期 に 来 た も の だ な 青 海 人。私 は 神 だ ぞ
何事も意のままにする
!!!
⋮⋮
﹁無 駄 だ ⋮⋮。貴 様 が い く ら 速 く な ろ う と、私 は そ れ よ り な お 速 い
!!!
特性故にハンデを負っているにも拘らず、エネルはルフィと互角以
ダイルと比べてみても、決して劣るものではない。
神を名乗るエネルの力は確かに強大で、それは王下七武海のクロコ
加えて〝心綱〟。
マントラ
を誇っているのだ。
しかしいくら身体能力を強化しても、エネルはそれ以上の〝雷速〟
﹁
化してエネルへと挑む。
ルフィはクロコダイルとの戦いで会得したその技で、身体能力を強
﹁〝ギア 2 〟﹂
セカンド
ナミのツッコミは空しく流れ、戦闘はその激しさを増していく。
!!!
ム〟
﹂
フェ ア リー ヴァー ス
!
﹂
マントラ
だ
!
ビリビリと放たれるルフィの〝覇気〟に一瞬エネルは気圧される
!!!
が、それももういない⋮⋮
!!!
﹁スターがあの程度で死ぬかァッッッ
﹂
成させたその手段を、すでに持っている人間がいたのだから
た時には、さすがの私も少々心を乱された。神である私がようやく完
﹁チッ⋮⋮あの青海人の能力者の事か。確かにそれを〝心綱〟で知っ
﹁それがどうした。空飛ぶ船なら、何度も乗ってる
﹂
﹁⋮⋮見ろ⋮⋮浮くぞ⋮⋮私を〝限りない大地〟へ導く方舟〝マクシ
〝雷〟を流す。
ルフィの攻撃を避け、舟の甲板へと叩きつけると、エネルは舟へと
!!!
!
!!!
85
!
!!!
ものの、すぐに平静を取り戻す。
エ ル・ ト ー ル
ク ルー
﹁〝神の裁き〟を受けて死んでいないと
﹂
﹁カイゾク王
﹂
﹂
そいつはどこの王様なんだ⋮⋮
﹁世界の偉大な海の王だ
﹂
?
﹁ご立派だな⋮⋮決着をつけようじゃあないか⋮⋮この空の上で
戦場は空飛ぶ舟の上。
﹂
﹁当 た り 前 だ。未 来 の 海 賊 王 の 仲間 が よ ⋮⋮ そ の 程 度 で 死 ぬ も ん か
?
!!!
﹂
!!!
さず掴んだ。
﹁〝ゴムゴムのJET回転弾〟
ラ イ フ ル
﹂
それはわずかに一度、瞬間の発動だったが、その一度をルフィは逃
態。
とっくにその存在に触れているルフィは、いわば目覚めかけの状
本能〟││あるいは〝勘〟。
だが、エネルが〝雷速〟と〝心綱〟ならば、ルフィは〝ギア〟と〝
マントラ
となった〝のの様棒〟の対応に苦慮するルフィ。
〝ゴムゴムのJET 鞭 〟もエネルには躱され、逆に高電熱スピア
ウィップ
﹁そうだ。〝命〟も〝大地〟もな﹂
﹁神ならなんでも奪っていいのか
にした上で〝限りない大地〟へ行こうと考えていたのだ。
フェ ア リー ヴァー ス
立つ〝神〟跡を濁さず⋮⋮エネルは用済みとなった全てをキレイ
破壊するという。
エネルはそれによってスカイピア全土を包み、その全てを〝雷〟で
する装置だった。
それはエネルのエネルギーによって極めて激しい〝雷雲〟を排出
〝絶望〟という名の、この世の救済者だ
﹂
﹁ヤハハハハ これぞこの方舟の究極の機能。名を〝デスピア〟。
﹁⋮⋮﹂
り始める。
不意にマクシムの船体の上部に取りつけられた煙突から黒雲が昇
!!!
?
!
ルフィの強烈な拳の一撃が突き刺さり、エネルはマクシムの甲板の
!!!
86
!!!
!!!
﹂
神││というよりは仏の顔を模したような黄金の船体に叩きつけら
れた。
﹂
﹁⋮⋮ハァ、⋮⋮ハァ、これしき⋮⋮
﹁
る神である
﹂
エネルの猛りに〝デスピア〟が共鳴する。
﹂
﹂
﹂
様などが私に敵うものか⋮⋮不可能などありはしない。我は全能な
﹁貴様さえ⋮⋮貴様さえいなくなれば私の天下なのだ⋮⋮そうだ。貴
阻まれるなどあってはならない事だった。
いきなり現れた、わけのわからない〝海賊〟などという輩にそれを
いる。
目の前には、それこそすぐ手の届くところに、野望の成就が待って
エネルにも当然だが譲れないものがある。
エネルは口から血を吐きながらも立ち上がった。
!
あ、熱゛ィ∼∼∼∼∼∼っ
!!!
﹁やめろ
⋮⋮⋮⋮
﹁││〝 雷 治 金 〟
﹁
!!!
要などないのだ⋮⋮﹂
この野郎
!!!
﹂
!!!
黄金の重さに引きずられ、ルフィは転がった。
⋮⋮くれてやる⋮⋮
﹁このまま別れようじゃあないか。この金塊は⋮⋮貴様の善戦を称え
そしてエネルはルフィの腕につけた黄金の玉を蹴り飛ばす。
猛りながらも、エネルはあくまで冷静だった。
野望を成就させれば、それは自分の勝利に他ならないからだ。
エネルは直接的な勝負には拘らなかった。
﹁外せェ
﹂
﹁ハァ⋮⋮青海のゴム人間⋮⋮何も無理に私がお前と⋮⋮勝負する必
れた。
巨大な黄金の玉に伸ばした腕を取られ、ルフィの自由は著しく奪わ
ターで、船体に使われている黄金で包む。
エネルを止めようと駆け込んできたルフィの腕を、エネルはカウン
!!!
!!!
グロームパドリング
!!!
!!!
87
!
!!?
お
下の
私に敵
必死に舟の縁にしがみつくが、黄金はすでに舟の外に出ており、ル
﹂
フィは堪える事しかできない。
﹁ルフィ
﹂
﹁貴様さえ封じてしまえば⋮⋮また元通り⋮⋮私の天下だ
う者などこの世にいなくなる
﹁この世にだと⋮⋮ そんなもん、いくらでもいるぞ⋮⋮
﹂
海には⋮⋮もっと、怪物みてェな奴らがうじゃうじゃいるんだ
前なんか││﹂
﹁口の減らん小僧だ。墜ちろ、空島と共に⋮⋮
エネル∼∼∼ッ
﹂
エネルの最後の一押しに、ルフィは空を飛ぶマクシムから墜ちてい
!!!
!!!
!!!
勝負しろ∼∼∼っ
﹂
!!!
!!!
く。
﹁畜生∼∼∼っ
今助ける
!!!
﹁
﹂
﹁〝神の裁き〟
エ ル・ ト ー ル
﹂
メの一撃を放った。
う少女がその背に乗って手を伸ばすが││エネルは忌々しいとトド
フォールのペガサス〝ピエール〟と、シャンディアの〝アイサ〟とい
ルフィを助けようと、ルフィがマクシムに来る前に共にいた、ガン・
﹁ルフィ
!!!
!!!
スターシップ
光 の 柱 の よ う な 〝 雷 〟 が ル フ ィ 達 を 捉 え る そ の 間 際 │ │ し か し、
﹂
狙ったようにそこに割り込んだのは一艇の星の船。
﹂﹂
﹂
﹁おれさま、颯爽と登場
﹁﹁スター
﹂
!!?
!!!
最後の一欠片。
﹁はーっはっはっはっはっはっ
エネル
空を飛べるおれさまを
!
と下に墜ちたくらいで死ぬとでも思ったか
﹂
羨んで、おれさまを狙うまではよかったが、そのおれさまが、ちょっ
!
現れたのは〝絶望〟に対抗する〝希望〟を形成する、最初に欠けた
﹁だ、誰
﹁なっ、貴様⋮⋮っ
!!!
?
!!?
88
!!?
!!!
!!!
!!!
!
〝デスピア〟のそれよりも一足早く絶望が落ちる。
!!!
﹁墜ちたくらいで、だと
﹂
なのに、
!!!
││実際、お
だから、その答えは簡単
まさか、貴様までゴム人間だなどと言
私は全力で〝雷〟を落とした
なぜ消し飛んでおらんのだ
うのではあるまいな
!!?
﹁言わねェよ おれさまはスター人間
!
!!?
﹁何ィ
﹂
た程度のダメージだったぜ
﹂
れさまは圧に押されただけで、それ以外はちょっと痺れて復帰が遅れ
⋮⋮おれさまが〝スーパースター〟であったからだ
!
!!!
﹂
!!!
スター
おれをあの舟に降ろしてくれ
ムのさらに上空を飛んでいた。
﹁よし
﹂
決着をつけるのはおれさまだ
!
先にケンカ
どっちでもいいか
!
﹂
﹁││ちょっと待て
を売られたのはおれさまだぞ
﹂﹂
何を仲間同士でいがみ合ってるのよ
﹁﹁⋮⋮⋮⋮アァ゛
﹁そこ
﹂﹂
らさっさと││い、いえ、ハハハ⋮⋮ええいっ
﹁﹁なら、早い者勝ちだ
ブッ飛ばしちゃえ
! !!!
!
!
?
ターボム〟をばら撒く。
フィは〝スターシップ〟から飛び降り││スターは〝トリックス
ダメならどうしようもないと覚悟を決めたナミの激励を合図に、ル
エネルに睨まれて若干ビビりながらも││もうバカらしい、これで
!!!
﹂
決着をつける
能力なので、スターの復活と共に同じく復活し、今はこうしてマクシ
〝神の裁き〟で半壊していた〝スターシップ〟も、そこはスターの
エ ル・ ト ー ル
﹁貴様ら⋮⋮
笑いながらエネルに言う。
〝スターシップ〟に拾われたルフィは、スターの復帰に嬉しそうに
﹁しししし、さっそくいたな。おれ以外にお前に敵う奴﹂
ターだが、そこはちょっと見栄を張った。
の中で行動不能になり、下の海││青海をプカプカと漂っていたス
本当は反射的に〝スターオーラ〟を纏ってなお、〝スターシップ〟
!!?
!
!!!
89
!!!
!!?
!
!
!!!
しかしエネルは〝雷人間〟なので、それは船体にダメージを与える
だけで、エネル自身にダメージはない。
もっとも、それはあくまでお試し││ついでにマクシムも墜として
しまえという攻撃なので、そこについてはスター的にもわかってい
る。
スターはここに来る前に、なんか先のスターのように空から墜ちて
きたパガヤと、神隊とやらに所属していたとかいう男を拾って、エネ
ルの能力を含めてだいたいの事情を聞いていたのだ。
だからとスターはエネルの攻略法を持っているわけではなかった
﹂
が、敗ける気もしていなかった。
﹁くっ⋮⋮貴様ァ
エネルは舟を傷つけられる事に怒りを覚えるも、自分にダメージを
与えられるルフィの方を警戒して、その破壊活動には対応できない。
そんなルフィは黄金に機動力をだいぶ削がれながらも果敢に攻め
る。
エネルもダメージの抜けきらない身体で反撃するが、そこで絶妙に
アマル
﹂
邪魔なのがスターの存在だ。
ボルト
﹁2億 V 〝雷神〟
﹂
なのでエネルは一旦完全にスターの存在を無視して、自身最強とも
言える技を発動した。
だが││。
﹂
﹁おれさまを無視してんじゃねェ
﹁がっ⋮⋮
!!!
﹂
なぜか受け流す事ができず吹き飛ばされた。
﹂
﹁な⋮⋮ぜ⋮⋮
﹁
!!?
事だなと答えを口にする。
﹁││〝スーパースター〟に不可能はない
﹂
〝ゴム〟以上に意味のわからない言葉に、エネルは理不尽さを感じ
!!!
90
!!!
!!!
金色の輝きを、〝スターオーラ〟を纏ったスターの拳を、エネルは
!!?
スターはエネルの言葉にちょっとだけ考え、ああ、きっとそういう
???
るが、そんなものを感じている暇などなかった。
ラ イ フ ル
││〝ゴムゴムのJET黄金回転弾〟
﹂
!!!
んだ。
飛んで││飛んで││飛んで⋮⋮
そしてエネルはそのまま墜ちてこなかった。
﹁⋮⋮墜ちてこないな。ありゃ、月まで行ったんじゃねェか
らす。
﹁ああ
﹂
!
﹁﹁⋮⋮⋮⋮アァ゛
﹂﹂
﹁だからやめなさいよあんた達
﹂
!!!
﹂
その一撃で、それまでの戦いによる疲労もあったのか、ルフィの腕
400年の時を越え││シャンドラの灯がともる。
いっきり殴りつけて鳴らす。
その鐘をルフィは腕についたままの黄金で、青海にも届けと、おも
見つけ出した。
し、さらにスターはルフィの頼みで空を飛び回り、〝黄金の鐘楼〟を
ターの二人は〝デスピア〟から排出された〝雷雲〟を協力して散ら
それから││実は最強なのかもしれないナミの指示で、ルフィとス
しょ
それに、まだ後始末が残ってるで
﹁何言ってんだ。完全におれの一撃で決着だった﹂
ただけだからな﹂
の一撃の段階で、エネルは倒せてた。お前はその後に月にブッ飛ばし
﹁ルフィ⋮⋮言っておくが、決着をつけたのはおれさまだ。おれさま
そう、エネルの行先がどうであれ、戦いは終わったのだ。
冗談なのか、本気なのか、ルフィはそんな言葉を口にして笑う。
月までブッ飛ばしてやった
しかも結構垂直めに飛んで行ったために、スターはそんな感想を漏
れ以上であった。
人が星になる姿は、たとえばワポルの時などにも見たが、今回はそ
?
?
レベルじゃない一撃の直撃を受け、エネルはどこまでも空高く吹き飛
スターが飛ばした先で待ち構えていたルフィの、強烈とかそういう
エネル、フルボッコ。
﹁ナイス、スター
!!!
?
91
!
!!!
についた黄金は砕け、同時に〝黄金の鐘楼〟が乗っていた雲から墜ち
ていく。
しかし、ヤバイと思ったのも一瞬。
﹂
美しく雄大な鐘の音を空一杯に響かせながら、それはその下にある
シャンドラの遺跡の外れへと墜ちた。
﹁鳴った﹂
﹁ああ﹂
﹁聞こえたかな。おっさん達に﹂
﹂
﹁そうだな⋮⋮なァ、ルフィ﹂
﹁ん
﹁おれさまはイイ事を思いついたぞ﹂
なァ、スターの奴はどこ行ったんだ
∼∼中略∼∼
﹁あれ
﹁やる事
﹂
どっか飛んで行ったぜ﹂
﹁え、ああ⋮⋮なんでもやる事があるとか言って〝スターシップ〟で
?
?
﹂
帰ってきており⋮⋮その足で怪我人ワイパーを無理矢理に引っ張り
そのスター、どこにいるのかと思えば、そのどこかからはすでに
と戻っていった。
事をルフィは不思議に思い尋ねたが、ウソップの話を聞いて再び宴へ
て、新規ファンを開拓する事に余念がないスターの姿が見えず、その
しかし││普段なら宴では率先して歌い出し、ステージを披露し
に騒ぐ。
一味はスカイピアの者達も、シャンドラの者達も巻き込んで、盛大
それは麦わらの一味にとってはお約束のようなものだ。
戦いの後には宴がある。
﹁ふーん⋮⋮﹂
のか
﹁どうせスターの事だから、ファンがどうだとかそういう話じゃねェ
?
92
?
?
出すと、シャンドラの遺跡の外れ││いや、その入口へ。
﹂
〝黄金の鐘楼〟が墜ちた場所でもあるその場所で、待っていたのは
栗頭でひし形顔の最終園長。
お前は⋮⋮
青海で先祖の〝うそ〟とずっと戦い続けてきたその男。
﹁おれは⋮⋮モンブラン・クリケット⋮⋮
!!?
く名乗り返す。
﹁ワイパー⋮⋮
士・ワイパーだ
﹂
これは夢か││いや、違う。
た出会う。
おれは
﹂
・
・
戦 わ せ て 悪
﹂
会いに来てくれて
〝うそつき〟にさせてしまって悪かった
お前に会えて嬉しい
﹁そ う か ⋮⋮ そ う か 今 ま で、待 た せ て 悪 か っ た
かった
﹁⋮⋮おれの方こそだ
!!!
おれは、おれ達は、お前を歓迎する
!!!
!!!
それが真実だって、伝えられなくて悪かった
!!!
星の導きにより、二人の男の遺志を継いだ者達は、この空の上でま
・
大戦士・カルガラの遺志を継ぐ、シャンドラの戦
男の名乗りに、ワイパーの身体が硬直し、一瞬後に震える声で力強
!!!
!!!
!!!
!!!
ついにその時が来たと喜んだ。
その様子を少し離れた場所で見守っていたスターは、満面の笑みを
浮かべて、そっと静かにその場を去っていく。
さ す が お れ さ ま
!
これはまたファンが増えてしまう
﹁ふ ふ ふ っ、は ー っ は っ は っ は っ は っ は っ
﹂
ファンサービスはバッチリだ
な
!
空島の、冒険が終わる⋮⋮。
浮かべて、若干騒がしくその場を去っていく。
その様子を少し離れた場所で見守っていたスターは、満面の笑みを
!
93
!!! !!!
!!!
ポロポロと涙を流し、その出会いに人生を懸けていた二人の男は、
││ありがとう
!!!
!!!
⋮⋮訂正。
!!!
第13話・こおるせかい
スカイピア400年の戦いが終わり⋮⋮国をあげた喜びの宴は連
日続いた。
その中で麦わらの一味は、ルフィが〝うわばみ〟の中で見つけた黄
金を、海賊らしく奪って逃げる事にした。
まぁ、そんな事をしなくても、空島の者達はもっと巨大な黄金の柱
を感謝の気持ちとして贈ろうとしていたのだが⋮⋮楽しげに逃げる
麦わらの一味に、そんな事は知る由もない。
空島は変わる。
クラウド・エンド
国の名前は〝スカイピア〟、都市の名前は〝シャンドラ〟。
そして神の座には再びの就任、ガン・フォール。
彼らは空の大地で共に生きる事を誓う。
そんな彼らから見事に逃げ切った麦わらの一味は、〝雲の果て〟か
﹂
ン
ピー
はファンに還元できる物の方がいいか⋮⋮﹂
﹁本買っていいか
﹁﹁﹁﹁﹁﹁いや、ちょっと⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹁まず││私のへそくりが8割﹂
﹁飲み放題だな、コリャ﹂
ス
﹁新しい鍋とフライパンと⋮⋮食器に巨大ねずみ取り⋮⋮﹂
!!?
んなおおっぴらなへそくりがあってたまるか
﹂
!!!
﹁冗談よ⋮⋮﹂
﹁当たりめェだ
!!!
94
ら、再び下の海││青海へ。
ワ
黄金を奪ったにも拘らず鳴り響く鐘の音に〝また会おう〟と約束
を交わし、背中を押され、船は〝ひとつなぎの大秘宝〟を目指して、今
!!!
日も行く。
海賊のお宝は山分けと決まっているわ
﹂
!!!
﹁さて、お待ちかねっ
﹂
これだけの黄金だもの、スゴイ額よ
﹁イよォっ
﹂
!!!
!!!
銅像買うんだ、おれは
!!!
﹁確かにおれさまの銅像だというなら悪くない⋮⋮だがしかし、ここ
﹁待ってたぞーっ
!!!
ナミの目が、それこそ8割マジだったのは置いておいて、ナミの提
グ ラ ン ド ラ イ ン
案により、空島で手に入れた黄金は、まずゴーイングメリー号の大修
繕に充てられる事になった。
何せシロップ村を出てからこっち、偉大なる航路の無茶苦茶な航海
に耐え、今回の冒険では空まで飛んだのだ。
あちらこちらにガタがきているのは間違いがない。
﹂
プロデューサーの
﹁そうだな。ウソップのツギハギ修理も、さすがに限界だし﹂
〝狙撃手〟だ
!
キャプテンは〝プロデューサー〟だろ
﹁言っとくがな、おれは
﹁ん
?
!
﹂
﹂
〝家〟で
そう
〝命〟だぞ
﹁そりゃそれが一番だ
﹂
!!!
この船を守ってくれる〝船大工〟を探
!
そうしよう
﹂
!
﹂
!
ないよな
﹁な
海賊はみんなで歌うんだ
いいよな
﹂
その中に動く二本の不思議な竹。
﹂
れも見上げなければならないほどに長い。
﹂
それは生き物だけでなく植物も同じで、のびのび育ったために、ど
見渡す限りの大草原に、のびのび育った生き物達が暮らす島。
そんな一味の前には新たな島。
一味はこうして次の目的を定めて、船を進ませる。
!
!
!
﹁なるほど。おれさまのバックという事なら許可しよう
!!?
﹁あと〝音楽家〟││は、スターがいるけど、たくさんいるに越した事
﹁じゃあ、その線で
!
ルフィの言葉に一味はすっかりその気になり賛成する。
!
﹁旅はまだまだ続くんだ。どうせ必要な能力だし、メリーはおれ達の
﹁
﹁だったらよ。〝船大工〟仲間に入れよう
それはともかく││と誤魔化し続けた言葉にルフィが提案する。
スターの言葉に若干視線を逸らすウソップ。
﹁おっ、おお⋮⋮そ、狙撃主兼プロデューサーな。狙撃手兼⋮⋮﹂
キャプテン・ウソップ﹂
?
!!!
!
95
!
てっぺんが見えないほど育ったその竹に、なぜかルフィが襲われ
て、割ってみたら中から精霊││もとい、空から落ちてきたこの島の
住人〝トンジット〟。
世界一長い竹馬に挑戦してみたら、怖くて降りられなくなったとい
﹂
うそのおっさんは、なんと10年間もその上で生活をしていたらし
い。
﹁大バカか
なんてツッコミの言葉もそこそこに、トンジットから島の話を聞く
ルフィ、ウソップ、スター、チョッパーの先行部隊。
それによればこの島の名前は〝ロングリングロングランド〟とい
い、もともと長いリング状の島であるが、普段は海によって10の島
に区切られているようだ。
そして年に一度だけ大きく潮が引く日があって、その数時間のチャ
ンスを待って、三年に一度の周期で移動する遊牧民が暮らす島だとい
う事であった。
竹馬に乗っていたためにその村の移動に取り残されたトンジット。
﹂
気長に20年ここで待つさと笑うトンジットに、おれさまの出番か
と、やはりこの男が動く。
﹁出でよ││〝スターシップ〟
それは海賊世界で生まれた伝統のゲーム。
海賊が海賊を奪う〝人取り合戦〟。
海 賊 旗 〟を奪ってしまう事もできるというエゲつないゲームだ。
ジョリーロジャー
欲 し い 船員 が い な い 場 合 は、船 の 命 で あ り 海 賊 と し て の 誇 り、〝
ク ルー
それぞれの競技の勝者が敗者の海賊団から好きな船員を奪える。
ク ルー
その祭りの名は││〝デービーバックファイト〟。
ぎが始まっていた。
増えたなと満足して一味の下に戻るスターの前では、何やらお祭り騒
ありがとうありがとうと大感謝され、ファンが一人と一頭は確実に
共に、その村へと送り届ける。
通りにあっという間にトンジットを、その愛馬である〝シェリー〟と
空飛ぶ船であっという間に運んでやるぜ││というスターは、言葉
!!!
96
!!!
麦わらの一味の船長であるルフィは、ウソップなどの反対も押し
切って、挑まれた決闘からは逃げられねェとゲームを受けてしまって
いた。
﹁きっとあいつらが欲しいのは、このキャプテン・ウソップだ⋮⋮﹂
﹁いいえ、きっと私よ。かわいいから⋮⋮﹂
﹂
﹁何 言 っ て る ん だ。ス タ ー で あ る お れ さ ま が 真 っ 先 に 狙 わ れ る に 決
まってるだろ
麦わらの一味に決闘を挑んで来たのは〝フォクシー海賊団〟。
〝デービーバックファイト〟を得意とする海賊団で、これまでも連
戦連勝、泣かした海賊団は数知れず⋮⋮〝デービーバックファイト〟
に慣れた強敵だ。
そして始まった〝デービーバックファイト〟の第一ゲーム〝ドー
ナツレース〟は、手作りボートでの周回レース対決。
麦わらの一味からの出場者は、ボートを作ったウソップに〝航海士
〟のナミ││それと祭りの熱気で、いつもよりも目立ちたがり屋度が
+されているスターの三人だ。
﹂
それに対して相手チームはメンバーに〝ホシザメ〟というサメを
ここにもやはりおれさまのファンが⋮⋮
入れて、ボートを引っ張らせる作戦を取った。
﹁ホシザメ
!
されたりしていたが││。
いざレースが始まればスターの独壇場。
スターは能力でボートに星を付け、空飛ぶボートにすると、ビーム
を推進力にしたその超加速で、フォクシー海賊団が驚いている間に
あっさりと勝利した。
﹁じゃあ、海賊旗で﹂
ルフィのその一言で〝誇り〟を奪われたフォクシー海賊団は即時
解散かと思われたが、いきなりそれはちょっと待てと文句を言うフォ
クシー海賊団に、その結果は保留にして、一応残りのゲームもする事
になったのだが││二戦二勝。
要は三戦全勝で麦わらの一味は〝デービーバックファイト〟に完
97
!!!
などとスターは感慨深げに頷き、大丈夫かコイツとウソップに心配
?
全勝利した。
フォクシー海賊団は海賊旗を奪われ、けれどそれで航海ができなく
なるのは可哀想だからと、ルフィが自作の帆をプレゼントする。
そんなルフィに絵心はなく、ある意味恐怖を象徴する新生フォク
シー海賊団は、捨て台詞を残して去って行った。
本当に寄り道のような時間だったが、まぁ何もないよりは楽しかっ
たなと││麦わらの一味も島を出る前に、もう一度見逃しなどがない
かと島を巡り⋮⋮その男を見つけた。
トンジットが││10年前は││住んでいた家の前で、アイマスク
をして立ったまま眠っているヘンな奴。
天然パーマで白スーツ。
その上着はポケットに突っ込んだ腕に掛け、青シャツに白ベストを
﹂
なんだお前ら﹂
着込み、身長3mは軽くあるかなり長身の男。
﹁んん
﹁おめェがなんだ
!!?
た。
﹂
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮え
﹁ロビン
﹂
その男は麦わらの一味の気配に気づき、アイマスクを額へと上げ
!!!
﹁ロビン
どうしたんだ
知ってんのか
こいつの事
!!?
﹂
!!!
てら⋮⋮﹂
﹁指令だと
なんの組織だ
﹂
!!!
﹁││海兵よ。海軍本部〝大将・青キジ〟﹂
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
!!!
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁〝大将〟
ど⋮⋮どんだけ偉い奴だよ
﹂
指令を受けてきたんじゃねェんだ。天気がいいんで、ちょっと散歩が
﹁⋮⋮あららら、まーまー。そう殺気立つなよ兄ちゃん達⋮⋮べつに
えるが、その男の正体がわからない。
いつも冷静なロビンの取り乱しように、反射的に麦わらの一味は構
!!!
﹁⋮⋮あらららら⋮⋮こりゃ、いい女になったな⋮⋮ニコ・ロビン﹂
その男の姿を見たロビンは腰を抜かして、恐怖からか息を荒げる。
!!?
!!!
!!?
﹁た⋮⋮〝大将〟っておめェ⋮⋮
!!!
!!?
98
!!?
﹁海軍の中でも〝大将〟の肩書きを持つのはわずか三人⋮⋮
〝赤
犬〟、〝青雉〟、〝黄猿〟。その上には海軍トップ〝センゴク元帥〟
﹂
が 存 在 す る だ け。世 界 政 府 の 〝 最 高 戦 力 〟 と 呼 ば れ る 三 人 の 内 の
⋮⋮一人がその男よ
﹂
⋮⋮もっと、何億とかいう
ど、どっかいけー⋮⋮
﹁なんでそんな奴がここにいるんだよ
大海賊を相手にすりゃいいだろ
!!!
るとはねェ⋮⋮﹂
﹂
﹁〝スターオーラ〟だ
﹁はあ⋮⋮
﹂
〝ゴムゴムのJET 銃 〟
ピストル
﹂
﹁おっとっと∼、ただのルーキーかと思いきや、すでに〝覇気〟が使え
∼∼中略∼∼
﹁││やっぱお前ら⋮⋮今、死んどくか﹂
ルフィの祖父の存在を口にすると、前言を撤回したように宣言した。
とおり海賊である麦わらの一味を前にしてもダラけていたが、不意に
〝だらけきった正義〟がモットーだなんてのたまう青キジは、その
う額の賞金首になった〝悪魔の子〟ニコ・ロビン。
その中で特に危険視されているのは、8歳で7900万ベリーとい
ないが、なかなかのものだ。
賞 金 総 額にしても3億1677万ベリーと、本当の大海賊には及ば
トータルバウンティ
まっている。
しかし麦わらの一味⋮⋮少数ながら、いろいろクセのある人間が集
だけに〝大将〟が出てくる事なんてあり得ないはずであった。
確かに、本来ならまだまだルーキーの麦わらの一味を討伐するため
!!!
ギ
ア
だがダラけても〝大将〟⋮⋮多くの海賊と戦ってきたであろうそ
最近の実力者にはありがちな自然系の能力者だ。
ロ
青キジは〝ヒエヒエの実〟の〝氷結人間〟。
本部〝大将〟との戦いが始まった。
青キジの威圧感にノせられたロビンが仕掛けた事で、まさかの海軍
!!!
99
!!!
!!!
!!!
!!!
﹁スターだけじゃねェぞ
!!!
?
ロ
ギ
ア
の経験値や〝格〟は、同じく自然系だったクロコダイルや、エネルよ
りも上なのは間違いないだろう。
その証拠に││。
﹁意外と手こずらせてくれるねェ⋮⋮お前ら﹂
麦わらの一味が全員で掛かってなお余裕を崩さない青キジ⋮⋮そ
れに対して麦わらの一味は満身創痍と言っていい状態だった。
すでに最初に仕掛けたロビンは全身を凍らされ││他の者達も、攻
撃がそのまま氷結のカウンターとして返ってくる状況に苦戦してい
る。
ルフィは〝ギア〟で蒸気を噴き出して対抗し、スターは〝スター
オーラ〟を発動するが、それでも青キジには届かない。
﹂
﹁チョッパー⋮⋮お前は下がってろ。お前が凍らされたら治す奴がい
なくなる﹂
﹁で、でも⋮⋮っ
﹁いいから従っとけ。││おい、あいつは氷だけあって、お前のその炎
の技が有効らしい。おれが斬り込むからどうにか一撃ぶち込め﹂
﹂
﹁ああ。とっておきをぶち込んでやる。せいぜい死ぬなよ﹂
﹁そいつは││どうだろうなっ
﹂
﹂
〝九刀流・阿修羅〟
﹁││〝 悪 魔 風 脚 〟
﹁
﹁鬼気⋮⋮
﹂
ないものの、氷結のカウンターを相殺できていた。
実際にその足で仕掛けると、ダメージを与えられている感じはまだ
それが相性的には青キジと悪くなかった。
させ戦う事ができるようになっていた。
そんなサンジは、左足を軸に高速回転させる事で右足に高熱を帯び
戦いの中で強くなっている。
ルフィやスターが強くなっているように、サンジもまたこれまでの
!
見せつけるかのように、足の熱も冷え消され、ロビンと同じく全身を
ゾロはそれでもギリギリ意識が残ったが、サンジは〝格〟の違いを
!!!
100
!
ディアブルジャンブ
!!!
それは⋮⋮分厚い紙一重だった。
!!!
!
凍らされてしまう。
﹂
そうまでしても得られたものはわずか氷の一欠けだけだ。
サンジ
﹂
海軍の軍艦だ
!!!
的には、これだけで半壊状態と言っていいだろう。
ヤベェぞ
!!!
しかし悪い事は繋がるもので││。
││お、おいっ
!!!
﹁くそ⋮⋮っ
のに││﹂
﹂
﹁この状況で、余所見はよくないねェ﹂
この野郎ォオオオオオッッッ
!!!
﹁えっ、﹂
﹁ウソップ
﹂
﹁どど、どうするも何も⋮⋮ゾロとサンジもやられちまったって言う
!!?
!
﹁ど、どうするのっ
﹂
とっては完全に死刑宣告││詰みだった。
〝大将〟だけでもこの様なのだから、それはもう麦わらの一味に
てしまった。
それらが合わさった結果、この島に海軍の軍艦までも現れるに至っ
いたというのもあるだろう。
海軍がもともと、散歩だとか言って一人抜け出した青キジを探して
しまっていた現状。
るとは言い難いものの、それなりの時間、それなりの規模で、戦えて
〝デービーバックファイト〟のバカ騒ぎに始まり、相手になってい
たみたいだなあ、麦わら﹂
﹁あらら、おれ一人で来たはずだったのに、いろいろと派手にやりすぎ
﹁ん
﹂
これで脱落者は三人⋮⋮わずか八人の海賊団である麦わらの一味
!!!
﹁ゾロ
!!!
﹁おれさまの仲間に何やってくれてんだ
!!!
青キジが相手ではナミにどうにかできるわけもないので、この場を
うな状態ではない。
ゾロも先の通り、完全な氷漬けではないとはいえ、戦闘ができるよ
ソップも凍らされてしまう。
海軍の軍艦に動揺した一瞬の隙を突かれ、ロビンとサンジに続きウ
!!!
101
!!?
切り抜けるにはルフィとスターの二人がなんとかしなくてはいけな
いのだが⋮⋮これまでも押されていたのに人数が減って有利になる
という事はない。
ルフィ
﹂
加えて、海軍の軍艦、敵の増援という時間制限までできてしまった。
﹂
﹁││どけっ
﹁スター
ああッッッ
﹂
!!?
で高く水柱を上げた。
!!!
限時間はもうそこまで迫っている。
﹂
スターを置いて行けるかッ
!
でも、誰かがそれを言わなくてはならない。
﹂
﹂
そんな状態で動いちゃダメだ
だから、その男が動いた。
﹂
﹁ル゛フィ⋮⋮ッ
﹁ゾロ
﹁何やってんだ、ゾロ
元に戻らねェんだぞ
!
!
だからおれは││﹂
砕けたら
当然の事だが、ナミだってスターを見捨てたいわけじゃなかった。
!!!
﹁││か、海軍の軍艦が、逃げないと⋮⋮
﹁バカ野郎ォッ
﹁それは⋮⋮﹂
!!!
ナミが言い澱む。
﹂
ルフィはすぐにスターを助けるための行動を起こそうとするが、制
ルフィが咄嗟に伸ばした腕はスターには届かなかった。
﹁す⋮⋮スタァ∼∼∼ッッッ
﹂
凍らせながらも、決して青キジを離さず、ルフィ達から遠く離れた海
スターは〝スターオーラ〟による中和もかなぐり捨て、その身体を
﹁こいつ、このままおれごと海に⋮⋮っ
﹂
﹁おれさまは││プトレマイオス・E・T・スターだぁあああああああ
叫び〝スピードスター〟を全開にした突撃を仕掛ける。
スターはその状況に決断をすると、今にも凍らされそうなルフィに
!!!
!!!!!
﹁スターは生きでるかもしれね゛え⋮⋮﹂
﹁そうだ
!
102
!!?
!!!
!
!
!!?
﹂
﹁││でもっ
﹁
出航する
﹂
お前は││この船の゛船長だろうがっ
﹂
!
﹂
おれ゛達はこごにいたら全滅する゛⋮⋮っ
﹁決断しろ゛っ
││船を出せェッ
﹂
﹂
!!!
れる事に成功した。
こうして││麦わらの一味は海軍本部〝大将〟青キジの手から逃
おれは⋮⋮信じるっ
スターを置いて行くのかっ
﹁∼∼∼
﹁えっ
!!!
!
﹁スターは死なねェ
!!?
!!!
!!!
!!!
仲間であるプトレマイオス・E・T・スターを代償として⋮⋮。
103
!!!
!
!!!
!
第14話・いつか見た夢は⋮⋮
海軍本部〝大将〟青キジとの邂逅⋮⋮それから逃れる代償として
失われた仲間、プトレマイオス・E・T・スター。
〝輝き〟が失われた事により、逃げ延びた麦わらの一味の間で流れ
る空気は一様に暗く重い。
氷結状態から回復して、その決断を聞かされた三人もまた無言で│
﹂
│しかしウソップが、堪えかねたように口を開く。
﹁││それで、スターを置いて来たのか
﹁ああ、そうだ⋮⋮﹂
﹂
それを、勝てないかもしれ
ルフィの胸ぐらを掴み上げ、怒鳴りつける。
ルフィのそれを肯定する言葉に、ウソップの感情が爆発した。
?
!!!
てめェはッ
!!!
﹁スターはッ 仲間じゃねェのかッ
ないからで置いて来たのかッ
﹂
﹁⋮⋮そうだ﹂
﹁てめェッ
!!!
﹂
おれ達にそれを言う資格はねェ⋮⋮
!
﹁スターだぞ
あのスターがいなくなったんだぞ なんだよこれ
る激情を抑える事などはとてもできなかった。
仲間に優劣をつける気など毛頭ないが、それでも身体の中を駆け巡
た男だ。
だが、ウソップにとってスターは麦わらの一味の中で最初に出会っ
に凍らされていたのだから。
ウソップは青キジとの戦いではほとんど何もできず、騒いでいる間
そんな事はウソップにもわかっていた。
﹁∼∼∼くそっ
﹂
﹁おい、やめろウソップ⋮⋮
るウソップをサンジが羽交い絞めにして止める。
ルフィを殴り飛ばし、勢いによろめいたルフィをさらに殴ろうとす
!!!
!!!
ちくしょう⋮⋮っ
!!!
ちくしょおォ∼∼∼ッッッ
!!!
﹂
⋮⋮なんなんだよ⋮⋮ついさっきまでは、いつも通りだったじゃねえ
かよ
!!!
!!!
104
!!!
!!!
!
ウソップの慟哭に応える声はない。
誰もが口にしないだけで、同じような感情でいるのだ。
それでも船は進み、その辺りの名物である〝海列車〟の駅を経由し
て、世界最高の船大工達の溜まり場でもある││水の都〝ウォーター
セブン〟へと辿り着いた。
∼∼中略∼∼
﹁とりあえず⋮⋮黄金を換金して、船を修理に出さないと﹂
﹁ああ⋮⋮。じゃあ、行くのはおれとナミと⋮⋮ウソップはどうする
﹂
﹁││悪ぃがそういう気分じゃない。そっちは任せた。おれは武器の
整備でもしてる﹂
﹁そうか。わかった。サンジとチョッパーはメシとかの調達を頼む﹂
﹁ああ﹂
﹁わかったよ﹂
﹁ゾロかロビンのどっちかは船に残ってくれ﹂
﹁ああ。おれが残る﹂
﹁頼んだ。そういうわけだから、ロビンはサンジ達について行ってく
れ。人手があった方がいいだろ﹂
﹁ええ⋮⋮﹂
﹁んじゃ、行ってくる﹂
ルフィとナミがゴーイングメリー号を降りて、ウォーターセブンに
向かうのを見送る一同。
その視線には複雑な色が含まれており、あれから数日が経過してい
ても、まるでふっ切れていない事が見て取れた。
﹁⋮⋮ルフィもやっぱりいつもの元気がないね﹂
﹁そうだな。まぁ⋮⋮仕方ねェと言っちゃ仕方ねェ。これまでいろん
な事があったが、戦闘で仲間を失うなんてのは初めてだからな。乗り
﹂
越えなきゃいけねェとわかっちゃいるが⋮⋮どうやったって、〝くい
〟が残る⋮⋮っ
!
105
?
﹁ゾロ⋮⋮﹂
拳を握り、奥歯を噛みしめるゾロの姿に、チョッパーもしょんぼり
とメリー号の床板を見つめた。
﹁││チョッパー、おれ達もそろそろ行くぞ﹂
﹁あ、うん﹂
﹂
﹁ついでにスターの情報を集めよう﹂
﹁スターの
﹁結局、どうなったかわかんねェままに、ここまで来ちまったからこん
な感じになってんだ。不幸中の幸い、スターが道連れにしたのは海軍
の〝大将〟だ。スター本人の情報は無理でも、そっちの情報を手に入
﹂
れられれば、自ずとスターの事も見えてくるはずだ﹂
﹁⋮⋮スター、生きてるよな
どな﹂
﹁うん⋮⋮だよな
﹂
﹁さぁな。まぁ、あいつが簡単にくたばる方がおれァ信じられねェけ
?
るぞー
﹂と声を上げて、街に出るためにリュックを背負った。
チョッパーはサンジの言葉に顔を上げると、空元気でも﹁おーし、や
!
空島の黄金は3億ベリーになった。
しかし、海列車の駅で会った〝ココロばーさん〟の紹介で、ウォー
ターセブンの市長であり、造船所〝ガレーラカンパニー〟の社長でも
ある〝アイスバーグ〟と交渉している間に2億ベリーが盗まれてし
まう。
盗んだのはウォーターセブンの解体屋兼賞金稼ぎの〝フランキー
一家〟。
それを知ったルフィはそのアジトに乗り込むが、2億ベリーはすで
に頭の〝フランキー〟が買い物に持って行ってしまっていた。
ルフィは﹁そうか⋮⋮﹂と脱力して頷くと、一つの決断をする。
﹁ルフィ、てめェ⋮⋮スターに続いてメリーまで見捨てようって言う
106
?
∼∼中略∼∼
!
のか⋮⋮っ
﹁⋮⋮﹂
﹂
ルフィがした決断とはゴーイングメリー号との別れ。
﹂
そもそもが、ゴーイングメリー号はここまで持ったのが奇跡││金
そんなのおれは絶対に認めねェぞッ
があっても直せないと言われていたのだ。
﹁なんとか言えよおいッ
!!!
決断に異議を唱える。
キャプテン
おれの決定に従えッ
﹂
!!!
仲間を蔑ろにする奴の命令なんて聞けるかッ
!!!
﹁∼∼∼おれが船 長だッ
﹁フザけんなっ
﹂
﹂
その修理にも苦心してきて人一倍愛着のあるウソップは、ルフィの
号。
だが││シロップ村でカヤにお礼として貰ったゴーイングメリー
!!!
!!!
・
値もないものであった。
﹂
﹁│ │ 決 闘 だ ッ て め ェ の 目 を 覚 ま し て や る ッ
ろ、ルフィ
ウソップの言葉に、一瞬場が静まる。
そして、ゆっくりとルフィが口を開いた。
﹁⋮⋮ウソップ。海賊の決闘の意味はわかってるんだろうな
お前がふが
?
!!!
﹁当然だ。ルフィ、おれは最初の頃に言ったはずだぞ
﹂
お れ と 決 闘 し
妥協して〝海賊王〟になっても、それはウソップにとってはなんの価
・
事だからだ。
勇敢な海の戦士〟になって、気の合う仲間達といろいろな冒険をする
ウソップの望みはルフィのように〝海賊王〟になる事ではなく、〝
たとえそれで、この一味にはいられなくなろうとも。
声を張り上げて想いを伝える。
だから言う。
以上失う事に耐えられなかった。
仲間がいなくなる苦しみ、それを知ってしまったウソップは、これ
まるような激情ではない。
熱くなる二人をナミやサンジが間に入って宥めるが、もうそれで止
﹁なんだとォ
!!!
!!!
!!!
107
!!?
!!!
!!!
そして、
!!!
おれは今のお前をキャ
いないようだったら、キャプテンは交代してもらうって
﹂
仲間を蔑ろにしたお前は││ふがいない
﹂
プテンとは認めない
﹁ウソップ⋮⋮
!!!
﹂
!!!
望んだ決闘だ
﹂
﹁当たり前だ。殺す気で来いよ。返り討ちにしてやる
倒す算段はつけてきた
ウソップは言う。
お前が
!!!
そして││。
八千万人の部下と、あの悪魔
﹂
命が惜しけりゃ、今すぐ降参しろォ
﹁聞いて驚くなよルフィ。おれには
の実を食べた仲間が一人いる
スペル
!!!
﹂
!!!
ルフィとは長い付き合いだから、その手の内は知っていると。
!!!
もうお前を
﹁怖気づかずに来たな⋮⋮どんな目に合っても後悔するな
ルフィは一味をメリー号に残し、一人岬でウソップと向かい合う。
た岬へと戻ってくる。
街で万全の準備を整えてきたウソップが再びメリー号を停泊させ
デューサー〟ウソップの決闘は夜を待ってから行われた。
麦わらの一味の〝船長〟モンキー・D・ルフィと、〝狙撃手兼プロ
!!!
!!!
と迫る。
﹂
﹁〝ゴムゴムの〟││﹂
﹂
﹁えっ⋮⋮スター⋮⋮
﹁
!!!
しかし、当然だがそこには誰もいない。
﹂
お前が見捨てたんだろうが
フラッシュダイアル
そんな都合の良い事が
ウソップの驚愕した表情にルフィは反射的に振り向いた。
!!?
〝 閃 光 貝 〟
!!!
﹁スターは
あるか
﹂
!!!
ウソップの言葉に再び視線を戻したルフィに強烈な閃光。
﹁
!!!
108
!!!
!!!
お前に⋮⋮そんな部下はいねェ事くらい知ってる
!
ルフィはそれからも続く〝ウソップ呪文〟を無視してウソップへ
﹁⋮⋮
!!!
!!?
!!!
ダイアル
ウソップは空島で〝輪ゴム〟などを交渉材料として、いくつもの〝
〝星〟
﹂
腐ってる。くそっ
この野郎、マジメに
貝 〟を手に入れており、それを今回の決闘に投入してきたのだっ
た。
﹁必殺〝卵星〟
﹂
﹁うわっ くせェっ
やれっ
!!!
大マジだぞルフィ⋮⋮
!!!
初 め に
これがおれの戦闘だ
││〝タバスコ星〟
!!!
﹂
!!!
〟だ
﹂
﹂
﹁のたうち回るのも気をつけろよ。足下はすでに││〝まきびし地獄
﹁辛ェ∼∼∼っ
狙い通りに決まる。
大口を開けたルフィの口にタバスコの詰まった弾丸がウソップの
会った時もこうだっただろうが
!!! !!!
﹁バカバカしいか
!!!
!!!
!!!
あ の ス タ ー も イ カ し た 技 だ と 言 っ て く れ た お れ の
!!?
!!?
!!!
事に驚いた二人と、なんか話している間に意気投合してしまったが、
その時はルフィの腕が伸びて〝スターシップ〟に乗り込んで来た
は苦労させられた。
二人のコンビネーションは抜群で、〝スターシップ〟からの射撃に
ウソップとスター。
二人の男。
ルフィがゾロとナミを連れて上陸した島で、その前に立ち塞がった
そして、初めて会った時の記憶も。
大の字に倒れたルフィの脳裏にはこれまでの冒険の記憶が蘇る。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
爆発を起こす。
ウソップは容赦なく〝火炎星〟を撃ち込み、ルフィを巻き込んだ大
だ。
風 貝 〟に溜め込まれていたガス溜まり││それも予定通りの誘導
ブレスダイアル
続 け て 放 た れ た 〝 手 裏 剣 流 星 群 〟 を ル フ ィ が 避 け た 先 に は 〝
決闘はウソップのペースで進む。
!!!
今はこうしてその内の一人が本気で自分に挑んできている。
109
!!!
﹂
これが二人だったらどうだろうか││と、一瞬考えたルフィは拳を
握りしめて、立ち上がった。
﹁お前はこれくらいじゃくたばらねェ⋮⋮知ってるぞ、ルフィ⋮⋮
!
ルフィの視線の先では、ウソップが〝銀河パチンコ〟を油断なく構
﹂
﹂
えているが、ルフィはそれでも直進した。
﹁〝必殺〟⋮⋮﹂
﹁〝ゴムゴムの〟
﹂
!!!
﹂
﹂
!!!
﹁〝三連火薬星〟
││〝ゴムゴムの銃 〟
!!!
﹁
﹂
インパクト
﹁〝 衝 撃 〟
﹂
本気で来いッ
﹂
セカンド
﹁⋮⋮〝ギア 2 〟
﹂
・
・
おれはこの一味の中で、一番最初にスター
に会った⋮⋮スターの強さを一番長く、一番間近で見てきた男だぞ
!!!
おかげか、目は追いついても身体が追いつかない。
本当に本気になったルフィの前には、〝スターシップ〟に乗ってた
だが││ウソップの攻勢もここまでだった。
!!!
!!!
﹁甘く見るなよルフィ
はまた別の苦戦をルフィは強いられていた。
ウソップは確かにルフィの手の内を知っており、これまでの強敵と
自分自身の攻撃の衝撃でルフィが吹き飛ぶ。
﹁
﹂
﹁〝 貝 〟だ⋮⋮もらったぞ⋮⋮お前の衝撃﹂
ダイアル
衝撃はウソップに奪われる。
そこを好機と攻め込むが、続いて放った〝ゴムゴムのバズーカ〟の
トモに捉えた。
ウソップの追撃を回避しながらのその一撃が初めてウソップをマ
﹁うあ
ピストル
からトゲが飛び出し、ルフィを傷つける。
ルフィの拳がウソップの放った弾丸とぶつかると、それが弾け、中
﹁〝銃乱打〟
ガトリング
﹁〝炸裂サボテン星〟
!!!
!!!
!!!
110
!!!
!!!
!
!!!
技ですらないただの打撃の前にウソップの身体が崩れ落ちる。
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮﹂
息を荒げて、倒れ伏すウソップを見下ろすルフィ。
﹁⋮⋮勝負あったな﹂
ルフィだけじゃない⋮⋮メリー号で決闘の行く末を見守っていた
﹂
一味の誰もがこれで終わりだと思った。
﹁
しかし、それを裏切ってウソップは気力だけで立ち上がる。
勇敢なる海の戦士、キャプテン・ウソップ
たとえ
﹁まだ⋮⋮だぞォ⋮⋮おれはまだ戦える⋮⋮まだ、生きてる゛⋮⋮
おれ゛は
!!!
﹂
!!!
﹂
!!!
るというのに。
ピストル
!!!
勝てるわ
﹁⋮⋮まだ⋮⋮まだ、だ⋮⋮おれはまだ⋮⋮たたか、える゛⋮⋮
それでもウソップは立ち上がってくる。
もはや完全に精神が肉体を凌駕していた。
﹂
﹁ハァ⋮⋮いい加減に、倒れろよ ││お前がおれに
けねェだろうがッ
!!!
と歩み寄る。
握りしめていた拳を解き、ルフィは倒れ伏すウソップへとゆっくり
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮痛ェ⋮⋮﹂
ボロ屑のような姿で一人転がる。
問答無用で意識が刈り取られ、身体もとっくに限界で、ウソップは
そして││ウソップは起き上がって来なかった。
と吹っ飛ぶ。
ついにルフィが〝ギア〟状態の技を使い、ウソップの身体が何十m
!!!
﹂
握る自分の拳にズキズキとした痛みを感じるほどに殴り続けてい
連続してウソップを殴る。
ルフィは殴った。
﹁ウソップ⋮⋮
からで、仲間を見捨てて逃げはしねェ
目の前に立つ〝敵〟がどれほど強大でも⋮⋮勝てないかもしれない
!!!
〝ゴムゴムのJET 銃 〟。
!!!
111
!!!
!
﹁ウソップ⋮⋮メリー号はお前にやる。後は好きにしろ﹂
意識がないのはわかっていた。
それでも、ルフィはその言葉だけ残すと、決闘の衝撃で落ちていた
麦わら帽子を拾いに行く。
⋮⋮じゃ
帽子を手にルフィは一度だけ倒れるウソップに視線をやった。
﹁新しい船を手に入れて⋮⋮この先の海へおれ達は進む
あな⋮⋮ウソップ⋮⋮今まで、楽しかった﹂
ルフィは視線を戻して麦わら帽子を被る。
それを被るともう完全にウソップを顧みる事なく歩き出す。
瞳から溢れる涙は、周囲の暗さと麦わら帽子が隠してくれていた。
﹁⋮⋮なんか、どんどんバラバラになっていくね。あんなに毎日楽し
﹂
かったのに、ねえ、今はなんだか遠い夢の中の出来事だったみたい﹂
﹂
∼∼中略∼∼
﹁ん⋮⋮
﹁││最悪だ。イヤな夢を見た﹂
そして〝輝き〟は目を覚ます。
目の前には〝大将〟。
腕には〝海楼石〟。
絶望しかないその場所で、けれど心には麦わらの一味が失いかけて
?
﹂
いるものを存分に宿し││最悪だと言ったばかりのその口で、にやり
と不敵に笑ってみせた。
﹁この状況で何を笑う事があるのかねえ
?
112
!!!
﹁あららら、ようやく目を覚ましたか⋮⋮目覚めの気分はどうだ
?
﹁生きてる事をだ。これでおれさまはまたみんなと冒険できる﹂
何も知らないからこそ、当たり前のように発せられたその言葉は今
は遠く。
しかしそれは確かな希望として、この世界に産声を上げた。
掴み取れるかどうかは、全てこれからの麦わらの一味次第である
⋮⋮。
113
第15話・歴史的大事件
スターが脱落し、ウソップとメリー号が抜けた麦わらの一味。
けれど彼らの苦難はそれだけでは終わらない。
ルフィとウソップの決闘前に、街に出たロビンも行方不明になって
いたのだ。
すぐに帰ってくると思っていたものの、夜が明けても帰らずじま
い。
これ以上仲間を失うのは絶対にごめんだと、麦わらの一味はロビン
の捜索を始めた。
そんな中で、ウォーターセブンにも大事件が発生する。
ウォーターセブンの市長であり、ガレーラカンパニーの社長でもあ
るアイスバーグが自宅で何者かに撃たれたのである。
幸いにも命を取り留めたアイスバーグだが、意識が戻ったその口か
﹂﹂
114
ら語られた犯人の名前は、ニコ・ロビン。
﹂
その証言により、麦わらの一味はウォーターセブンの全てを敵に回
す事になった。
﹁おれは信じねェ
向かった
﹂
﹂
!
﹁スターの事だよ
やっぱり、あの野郎生きてやがったんだ
﹁﹁海軍本部の〝大将〟が賞金首を捕まえて、〝エニエス・ロビー〟に
﹁うん、聞いた﹂
﹁⋮⋮おい、聞いたかチョッパー﹂
いた。
潮〟がちょうどくるタイミングで、街はいろんな意味でバタバタして
〝アクア・ラグナ〟というウォーターセブンに毎年やってくる〝高
だ。
天候は大荒れ││それは比喩的な意味でも、実際の天気でもそう
〟は、麦わらの一味をも追い詰めていく。
そうやってルフィがどれだけ叫ぼうとも、ロビンの周囲に蠢く〝闇
!!!
!
﹁ああ、間違いねェさ
!
!!!
手配書から顔バレしていないサンジとチョッパーが、政府の人間だ
と思える者達のそんな話を耳にしたのは、そうして本格的に嵐がやっ
て来る少し前の事だった。
﹂
﹂
スター生存の可能性に沸く二人の前に││ロビンもまた姿を現す。
﹁ロビンちゃん
﹁ロビン∼∼∼っ
探したんだぞ
ンちゃんが戻って来ればもう大丈夫さ
みんな心配してる
そう
エニエス・ロビーとかいう
でも、スターとロビ
ウソップの奴だってあん
!!!
ホントはあいつだってわかってる
!!!
とにかく今そっちに││﹂
な意地を張る必要がなくなる
はずなんだ
!!!
ジ達と向かい合った。
⋮⋮そう﹂
﹂
スターの情報が手に入ったんだ
﹁どこにいたんだよ
﹁
場所に連れて行かれたって
だ
!!!
﹁いやァ、こっちはこっちでいろいろあってよ
!!!
!!! !!!
ロビンはウォーターセブンを形成する水路を挟んだ反対側でサン
!!!
には戻らないわ﹂
ロビンはスターの情報に一瞬だけ反応を見せたが、すぐに顔から感
情を消すと、冷めた口調で別れの言葉を口にした。
﹂
あ ん な の 気 に す る 事 ね ェ よ お れ 達 ァ、誰 一 人 信 じ ち ゃ い
﹁││何、言い出すんだよロビンちゃん⋮⋮。あァ、そうか新聞の事だ
ろ
ねェし、事件の濡れ衣なんて海賊にゃよくある話だ
確かに一味は何も知らない。
それはロビンの言う通りだった。
を滅ぼすわ﹂
﹁私にはあなた達の知らない〝闇〟がある。〝闇〟はいつかあなた達
﹁え⋮⋮﹂
は確かに私﹂
⋮⋮私にとっては偽りのない記事よ。昨夜市長の屋敷に侵入したの
﹁そうね⋮⋮あなた達には謂れのない罪を被せて悪かったわ。だけど
!
!
115
!!!
﹁⋮⋮いいえ、いいのよ、そこにいて⋮⋮私はもう、あなた達のところ
!!!
!!!
!!!
!
!
なぜロビンが〝オハラの悪魔〟などと呼ばれ、わずか8歳で賞金首
になったのかも、そしてなぜ今こんな事を言い出すのかも。
だから、サンジとチョッパーの二人にもそれに応える言葉がなく、
ただ動揺するばっかりだ。
﹁短い付き合いだったけど⋮⋮今日限りでもう⋮⋮二度とあなた達に
会う事はないわ。みんなにもよろしく伝えてね。こんな私に今まで、
ロビンがそんな事
﹂
良くしてくれてありがとう。││さようなら﹂
∼∼中略∼∼
﹁本当に言ったのか
だ﹂
﹁﹁﹁スターが
﹂﹂﹂
の手でエニエス・ロビーとかいう場所に運ばれたって話を聞いたん
﹁あの、さ。それなんだけど⋮⋮実はスターだと思う人間が〝大将〟
その話を聞いてルフィが声を荒げる。
すチョッパー。
別行動を取ると言ったサンジの指示で、ルフィ達にロビンの事を話
!!?
の事とか、責任を感じてるみたいだったから、ひょっとしたら一人で
﹂
も う 少 し 調 べ て か ら
スターを助けに行こうとしてるんじゃ⋮⋮﹂
﹂
絶 対 の 情 報 じ ゃ な い の よ
スターもロビンも必ず連れ戻す
!
﹁おれ達も行くぞ
﹁待 っ て よ
⋮⋮﹂
﹁そんな事関係あるか
!
にどうやってその場所に行く気だ﹂
﹁あっ⋮⋮そ、そんなの、どうにでもなる
﹂
!
識の中にあった。
移動手段はともかくとして││エニエス・ロビーの存在はナミの知
れ戻すんだ
とにかくおれは二人を連
﹁⋮⋮落ち着けよ。仮にその情報が正しかったとしても、船もないの
!
!!!
116
!!?
﹁うん。この街の市長の事はよくわからねェけど⋮⋮ロビンは青キジ
!!?
!
!
世界政府所有の〝司法の島〟エニエス・ロビー。
そこにあるのは道連れを望む海賊の死刑囚達を陪審員とした名ば
かりの裁判所。
そんなエニエス・ロビーに聳え立つのは、とても巨大な〝正義の門
〟。
その扉から繋がる場所はたった二つ。
一つは世界中の〝正義の戦力〟の最高峰〝海軍本部〟。
一つは世界中の〝 悪 の戦力〟の最下層〝大監獄・インペルダウ
ン〟。
無辜の人々にとっては希望の集まる場所であり、海賊にとっては入
青キジとか、他にもスゴイの
れば二度と出られない絶望を形にした場所だ。
﹁││確認するけど、本当に行くのね
﹂
勝てないかもしれないからで、仲間を見
がたくさんいるかも知れない場所なのよ
﹂
﹁なんとかする。おれは
捨てたりはしねえ
?
?
た。
∼∼中略∼∼
﹁││では、これより海賊、プトレマイオス・E・T・スターの裁判を
始める﹂
場所はエニエス・ロビー。
ルフィ達がそんな決意を固めている事とは関係なく、裁判長〝3つ
首のバスビカル〟の宣誓により、海賊、プトレマイオス・E・T・ス
ターの裁判は始まってしまった。
スターは腕に〝海楼石〟の手錠を嵌められ、能力が封じられた状態
﹂
道連れ
﹂
で被告人として証言台に立たされている。
有罪
!
!
117
!!!
その場所に、その絶望に││麦わらの一味は、今、挑む決意を固め
!!!
﹁ギャハハハ、道連れだ
﹁有罪
!
陪審員席にはすでに死刑が決定している希望のない十一名の海賊
!
達。
故にこれは形ばかりの裁判であり、スターの有罪は確定している。
まぁ、そうでなくても、7777万ベリーの賞金首であるスターだ。
有罪になり、そのままインペルダウンにでも投獄されるのが当然で
はあった。
﹂
﹂
なんでおれはそんな事
しかし││判決の時が迫るにつれて、海賊達の心境に言いようのな
なんだこの感覚⋮⋮
い変化が表れ始める。
﹁うっ⋮⋮
﹂
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
歴史的使命感
﹁あ、あいつをここで死なせちゃならねェ
を考えてんだ
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁無罪
﹂
!!?
﹂
﹂
!
かい
﹁はーっはっはっはっはっはっ
当然だ
罪判決が出るなんて⋮⋮これが、〝海賊スター〟のカリスマってやつ
﹁まったく⋮⋮まいったねえ。エニエス・ロビーの歴史上初だよ。無
の結果に、頭をくしゃくしゃと掻く。
スターを連行し、裁判を傍聴していた海軍本部〝大将〟青キジはそ
海賊、プトレマイオス・E・T・スターにまさかの無罪判決。
る。
その日、その時、エニエス・ロビーに一足早く歴史的大事件が起こ
ス・E・T・スターを無罪とする││って、ええ∼∼∼っ
﹁では判決を下す⋮⋮陪審員の満場一致により、海賊、プトレマイオ
!
!!?
!
﹁身体を駆け巡るこの激情は││そう
!!?
らいだ﹂
青キジのそんな言葉に、スターはにやりと笑った。
﹂
﹁何言ってる。うちのキャプテンは〝どっちも〟スゴイ男だぜ﹂
﹁⋮⋮〝どっちも〟
﹁そうだ﹂
に対してこの島で手を出す気はない。そのカリスマだか強運やらで
﹁まぁ⋮⋮裁判で無罪になった以上、他の奴らはともかく、おれはお前
?
118
!!!
!!!
!!?
﹁おっそろしい男だよ。これでルーキー。船長でないのが不思議なく
!
?
せいぜい生き延びろ﹂
∼∼中略∼∼
まさかスターに無罪判決が出ているとは夢にも思わない麦わらの
一味は、ロビンの残した言葉から、今度こそアイスバーグを暗殺する
のではと、市長の屋敷を遠目から張りこむ事にした。
スターの事もそうだが、まずは近くにいるロビンを捕らえて、ロビ
ンの事情を聞いた上で、一緒にエニエス・ロビーに乗り込む方法を考
えようと、そういう理由からなる行動だった。
そしてそこで対面する事になったのが、世界政府直下暗躍諜報機関
〝サイファーポールNO.9〟。
サイファーポール││〝CP1〟∼〝CP8〟まである諜報機関
の隠された9番目。
ス
!!! !!!
関係ねェ事あるか
おれ達は
仲間だろうが
たはずよ⋮⋮彼の事は残念だけど⋮⋮もう私には関係ない事だわ﹂
﹁関係ない⋮⋮
﹂
!!!
!!!
あなた達と一緒にいても決して叶わな
!!!
⋮⋮それを成し遂げるためならば私は、どんな犠牲も厭
﹂
い願いを
わない
!!!
る時間はなかった。
そのロビンの言葉が本心でも本心じゃなくても、それ以上話してい
!!!
119
そこに所属するのは政府の指示で古代兵器〝プルトン〟の設計図
を求め、ガレーラカンパニーに潜入していた秘書や職長⋮⋮あと街の
酒場のマスター。
正義の名の下にならば、非協力的な市民に対して〝殺し〟が許可さ
なんでお前がこんな奴らと一緒にいるんだ こ
れた9番目の正義の形。
﹁おい、ロビン
﹂
!!!
﹁⋮⋮聞きわけが悪いのね。コックさんと船医さんに、お別れは言っ
ターを助けに行くぞ
んな奴らと一緒になって、こんな事してる場合じゃねェだろ
!!!
?
﹁私の願いを叶えるためよ
!!!
CP.9の工作により、屋敷が炎に包まれるまで2分。
ルフィ達はCP.9の四人を相手に善戦するも、時間切れ││相手
は政府に重要任務を任される手練れ⋮⋮2分で決着をつけられるよ
うな敵ではなかった。
再び撃たれたアイスバーグ共々、炎の中に取り残され、ロビンは一
味の手からすり抜けて行った。
ただ、炎からの脱出後、麦わらの一味よりも前にロビンと話してい
ポー ネ グ リ フ
たアイスバーグの話により、ロビンの事情が見えてきた。
ロビンはもはや世界で唯一と言ってもいい〝歴史の本文〟が読め
る者であり、政府はそこに記されている世界を滅ぼすほどの古代兵器
の数々を求めている。
その兵器によって〝大海賊時代〟に終焉を齎そうとしているのだ。
そしてロビンの〝願い〟とは、麦わらの一味に対して、CP.9が
今回の件につきただ一度だけ許可されている〝バスターコール〟を
?
120
発動しない事。
〝バスターコール〟⋮⋮それは、本来海軍本部の〝大将〟三人と、
その上の〝元帥〟にしか許されていない権限で、海軍本部の〝中将〟
五人と、軍艦十隻を緊急招集できるというものだ。
その軍事力は〝国家戦争クラス〟であり、一度標的が指定されたら
もう後には何も残らない。
もちろん、麦わらの一味のような少数の海賊団などひとたまりもな
いだろう。
﹂
﹂
ロビンはアイスバーグよりも自分よりも、ましてや世界よりも、麦
﹂
わらの一味の無事を願った。
﹁じゃあ、ロビンは⋮⋮
﹁おれ達を嫌いなんじゃないのかー
﹁││待て。ならスターの件はどうなる
﹂
ロ ビ ン が 政 府 の 人 間 に つ い て 行
﹁そんなのウソついたに決まってるじゃねェか
﹁ロ ビ ン が ウ ソ を つ く 理 由 ⋮⋮
﹂﹂﹂﹂
くって事は行き先は││﹂
﹁﹁﹁﹁エニエス・ロビー
!
?
!
!
!!!
ポー ネ グ リ フ
﹂
エニエス・ロビー
﹂
﹂
ロビンは〝歴史の本文〟を読めるという事を武器に、ス
ターをも解放させる気に違いないわ
﹁⋮⋮あの女、一人でなんでもかんでも背負いやがって
行くぞ
﹁でも、今度こそやるべき事は一つに繋がった﹂
﹁ああ
!!!
﹁ん
おれさまのファンクラブの入会方法か
﹂
?
今、王下七武海
﹂
!
しょ⋮⋮﹂
﹁そんな事は気にすんな
おれさまは全然気にしない
﹁い や い や ⋮⋮ 海 軍 本 部 の 〝 大 将 〟 が 海 賊 の フ ァ ン に は な れ な い で
になればいい﹂
﹁その問題ならすぐに解決できる。簡単だ。お前がおれさまのファン
ねェ。これで次会う時はまた敵同士だ﹂
﹁⋮⋮そうかい。やれやれ⋮⋮まぁ、一応聞いてみただけだが、難儀だ
る気なんてない﹂
﹁おれさまは麦わらの一味の〝海賊スター〟だ。他のところに所属す
首を振った。
青キジにあっさり流された事に若干不満を感じながらも、スターは
を推薦してもいい﹂
はクロコダイルが抜けた分の席が空いている。なんなら、おれがお前
?
﹁そうだ⋮⋮最後にお前に聞いておきたい事がある﹂
∼∼中略∼∼
あり、一味にはメッセージを残し、一人で海列車に潜入した。
⋮⋮サンジは逡巡するものの、海列車の発車時刻が来てしまった事も
つ い で に な ぜ か ウ ソ ッ プ と も う 一 人 簀 巻 き に さ れ た 人 物 が お り
が海列車の駅でロビンの姿を発見する。
そして、そんな彼らよりも一足早く││別行動を取っていたサンジ
彼らの考えは正しく正解だった。
!!!
!
!
﹁そうよ
!
﹁お前が気にしなくてもねェ⋮⋮はぁ、お前さん、〝麦わら〟とはまた
!
121
!!!
﹁いや、違う⋮⋮お前、王下七武海に興味はないか
?
違う感じに自由すぎるんじゃない
﹂
海軍本部〝大将〟をファンにする事を諦めないスターに、青キジは
溜息を吐く。
青キジの胸中は如何ばかりか││ともかく、前代未聞の事態だから
事後処理やら何やらでしばらくは拘束されたままだろうとスターに
言い残して、青キジはエニエス・ロビーから去って行った。
麦わらの一味という名の〝嵐〟が、本当の嵐を越えて、エニエス・
ロビーに向かって来ようとしているとは知らずに⋮⋮。
122
?
第16話・合流
一人で海列車に潜入したサンジは││けれどその潜入がすぐにバ
レてしまう。
とりあえず、最後尾の第7車両と第6車両の役人を全滅させ、そこ
に転がっていたウソップと、もう一人簀巻きにされた人物こと、解体
屋兼賞金稼ぎフランキー一家の頭であるフランキーと合流。
そのフランキー⋮⋮本名〝カティ・フラム〟は、ウォーターセブン
の市長であり、ガレーラカンパニーの社長でもあるアイスバーグの兄
弟弟子であり、そのアイスバーグから、古代兵器〝プルトン〟の設計
図を託されていたのであった。
そ し て ウ ソ ッ プ は 偶 然 か 必 然 か ⋮⋮ と も か く、C P.9 が フ ラ ン
キーを捕えにきた現場に居合わせた事で一緒に捕まってしまったの
だ。
・
・
123
その後サンジは海列車内にあった〝電伝虫〟を使い、メッセージと
共に残してきた〝子電伝虫〟でナミと連絡を取り、ロビンの事情やら
何やらを全部聞いた。
そうじゃなくても女好きで、それを守るという騎士道精神を信念と
しているサンジだ。
そんな話を聞けば、ルフィ達を待つ事などはできず、一人戦いを決
意する。
だが横で同じく話を聞いていた人情話に弱い男フランキー。
彼もまた協力を申し出た。
しかし││ウソップは意地を張る。
一味を抜けた自分は一味の戦いは関係ないと。
・
そしてウソップはどこかへと姿を消し││代わりにヒーローが現
れた。
私
﹁話 は 全 て 彼から 聞 い た よ。お 嬢 さ ん を 一 人 ⋮⋮ 助 け た い そ う だ ね。
﹂
そんな君達に手を貸すのに理由はいらない。私も共に戦おう
の名は〝そげキング〟
!!!
仮面を着けているために正体はまったくもって不明だが、その〝狙
!!!
撃の島〟からやって来た長鼻が特徴の〝狙撃の王様〟も加わり、彼ら
は三人でロビンの奪還を目指す。
車両を切り離して敵を減らし、CP.6やCP.7の諜報員を倒し
サ イ ボー グ
ていく。
〝 改造人間 〟 で あ る フ ラ ン キ ー の 活 躍 で C P.9 の 新 入 り も 一 人
倒し、一方でそげキングは車両の外を移動する事で、CP.9がいる
第2車両を素通りし、ロビンのいる第1車両へと辿り着いた。
だがウソ││そげキングの説得もロビンには届かない。
仕方ないので、煙幕を放ち、ロビンを無理矢理に引き連れ、車両を
切り離し逃げようとするも失敗。
フランキーは車両を切り離すためにCP.9がいる車両へと自ら
飛び込み、ロビンは〝ドアドアの実〟を食べたCP.9の能力者が、
大気に作った││空間を移動できる〝ドア〟を通り、自らの足で戻っ
ていく。
﹂
124
﹁ムダだ。ニコ・ロビンは協定を破らない﹂
﹁なんでそう言える
∼∼中略∼∼
!!!
﹁正門を開けーーーっ
﹂
決戦の地エニエス・ロビーへと向かう。
されていたその海列車に、サンジとそげキングの二人は拾われ、いざ
スピードの調整が効かないために失敗作として長い間倉庫に放置
ケットマン〟。
それからしばらくして現れるルフィ達を乗せた〝暴走海列車・ロ
分達が切り離した車両に取り残された。
先行部隊はロビンの奪還に失敗し、嵐によって荒れ狂う海の中、自
ロビンにとって〝バスターコール〟は拭い去れない悪夢。
人の生き残りがまだ幼い日のニコ・ロビンだ﹂
が焼き尽くされ、跡形もなく滅びる事件が起きた。その時のたった一
﹁││その昔、発動された海軍の〝バスターコール〟によって、ある島
!!!
エニエス・ロビーの海兵達が正門前の道の端に整列し、ロビンとフ
ランキーを捕らえたCP.9を迎える。
そして開いた正門の先には││後ろ手に〝海楼石〟の手錠をしな
がらも、スタンドマイクの前に立つ一人の男の姿。
たっぷりとお
それじゃあ早速一
﹃今日はおれさまのライブに来てくれてありがとう
れさまのステージを楽しんで行ってくれよな
に││。
﹁やめんか
いったいなんの騒ぎじゃこれは
﹂
そして水筒をプッと口から吹き捨てると再びスタンドマイクの前
用に足で蹴り上げて水分補給をした。
りと連続して5曲ほど歌うと、少し離れた地面に置いていた水筒を器
わかるだろうが、プトレマイオス・E・T・スターは、本当にたっぷ
とか、まぁそんな事は置いておいて、その男││誰かと言わずとも
は途中から若干縦揺れしている。
の女性で、元アイスバーグのメガネが似合う美人秘書の〝カリファ〟
9の四人とそれに囚われた二人は真顔⋮⋮と思えば、CP.9で唯一
皆一様に真顔││いや、整列していた海兵達はノリノリだが、CP.
﹁﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂﹂
ンドが流れ始める。
その男が背後の海兵服を着た楽隊に合図をすると、パワフルなサウ
曲目││﹄
!!!
男の声に止められた。
││鼻
キャプテンの血縁者か
﹄
ウソップに比べれば四角っぽい長鼻の男〝カク〟だ。
﹃ん
!!?
!!?
ず、マイク越しにCP.9と会話をする。
お前がおれさまを引き取りに
﹁何を言って⋮⋮というか何をやっておるんじゃ、おぬし﹂
﹄
﹃ああ、おれさまは││って、ロビン
来てくれたのか
!
少しノリすぎていたために、ロビンの姿を見てはいたものの認識し
?
125
!!!
!!!
││立って歌おうとしたが、それはウソップよろしく長鼻が特徴の
!!!
止められはしたものの、未練たらたらなスターはマイク前から離れ
?
ていなかったスターがその存在にはっきりと気づき声を上げる。
﹁スター⋮⋮あなた、無事だったのね。みんな心配してたわ﹂
ロビンはスターのいつも通りすぎるその姿に若干呆れながらも、内
心では安堵の息を吐く。
﹄
﹃││そうか。連絡が取れればよかったんだがな。おれさまも早く会
いたいぜ
﹁おぬし、見た顔だな⋮⋮麦わらの一味の〝輝き〟だか〝明星〟だか
そんな感じの異名を持つ男じゃな﹂
ロビンと話すスターの姿に、その関係者かと考えたカクがその素性
﹄
おれさまの愛称か やはりおれさまほどのスター
に辿り着いた。
﹃なんだそれ
﹁⋮⋮微妙に話が通じておらぬ気がする﹂
になるとファンがそういうのをつけるんだな
?
そっちのお前、腕に星のマークなんかつけて││しかも、
﹄
お前、何言ってんだ
ファンだな
﹁あァ
﹂
?
ここまでおれさまを追いかけてくるとは、熱狂的なまでのおれさまの
﹃むむっ
!
?
!
存在に目をつける。
アロハシャツに海パン、リーゼントにサングラス、捕らわれの身で
あるために鎖でぐるぐる巻きにされているが、格好的に〝変態〟なん
だなと考えたスターはそこにはツッコまず、けれどフランキーの腕に
ある★印から自分のファンであると認識した。
変態であってもファンはファンと、スターは友好的に接するが、た
とえ変態であっても、このエニエス・ロビーにあり、シリアスさが感
緊張しなくてもいい。そして安心
じられないスターのノリにはついて行けずにいた。
﹃はーっはっはっはっはっはっ
ていないが、すぐに釈放される予定だ﹄
﹂
しろ。おれさまはここの裁判で無罪判決が出た。まだ解放こそされ
!
無罪判決ですって⋮⋮っ
!!?
﹁そうかい⋮⋮﹂
﹁││ちょっと待って
!
126
!
!
カクもまた話の通じなさに嘆息する一方で、スターはフランキーの
?
ロビンはスターの言葉に声を上げる。
それはあり得ない事だ。
なのに、スターは普通にあり得た事として頷き肯定する。
ロビン﹄
?
スター、あなた一体何をし
﹃ああ。なんでお前がそんなに驚いてるんだ
﹂
﹁このエニエス・ロビーで無罪判決⋮⋮
たの
?
ステージだよ。なんでも一仕事終えて帰ってく
?
﹄
嵐を越えてその前にまで辿り着いた麦わらの一味は、今回の落とし
見る事があれば、浮いているようにも見える。
わけではなく、正門の方から繋がっているだけなので、もしも下から
がり││本島前門、裁判所とある中心の島は、柱のように立っている
正門を越えたその先は海にぽっかりと穴が開いており、正門から繋
襲っていた嵐もまたそこまでは及ばない。
は、〝不夜島〟と呼ばれる夜がない島で、ウォーターセブン周りを
巨大な││巨大すぎる〝正義の門〟を背景にしたエニエス・ロビー
∼∼中略∼∼
な空気感はしばらく続いた。
いをして誤魔化すが、スターが合流した事によって生まれたその微妙
CP.9の他のメンバーからの無言の視線に、カリファは軽く咳払
﹁こほん。私は客観的な事実を述べただけです﹂
﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂
﹁まぁ、確かにイイ歌でしたけど﹂
﹁海賊に何を頼んでおるんじゃ⋮⋮﹂
な
るCP.9とやらをおれさまの歌で労ってやって欲しいと頼まれて
﹃見てわかるだろ
﹁││で、結局おぬしは何をしておるんじゃ﹂
﹁﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹃べつに何も。しいて言うならおれさまはスターであっただけだ﹄
?
前をつけるためにというガレーラカンパニーの職長達や、フランキー
127
!
を慕うフランキー一家の者達と共同作戦でそのエニエス・ロビーへと
挑む。
﹂と力強く頷いたはずのル
主力である麦わらの一味は温存し、まずは他の者達が正門などを解
放する予定だったのだが││﹁わかった
ていたのはエニエス・ロビーの兵力〝1万〟。
﹂
﹁おい〝麦わらのルフィ〟⋮⋮仲間は何十人連れてきたんだ
﹂
ハ⋮⋮エニエス・ロビーの兵力は1万だぞ
﹁ああ、おれは一人だ。道をあけろ
?
気味だった。
不意の思いつきでステージを頼んでしまうくらいには││持て余し
意味不明な状況に、スターの存在はエニエス・ロビーにおいても││
海賊なのに海軍本部の〝大将〟も受け入れてしまった無罪という
だが、一人放り出され、司法の塔を自由にウロついている。
ちなみにスターは関係ないからと、〝海楼石〟の手錠こそしたまま
跳ね橋で繋がった先にある司法の塔の長官室にいた。
一方で││CP.9に連行されたロビンとフランキーは、本島から
近づいていく。
戦いは続き││いや、始まり、麦わらの一味は確実にその場所へと
び越えたために、それらはどうにも無意味な行動となった。
列車の名前に相応しく、倒した柵を発射台として二つの門を一気に飛
けれどルフィを除く暴走海列車に残る麦わらの一味は││暴走海
して立ち塞がった二人の巨人族もなんとか抑え、作戦は成功。
正門はその勢いのままに開ける事に成功し、本島前門の前に門番と
ける。
本来の作戦に則り、他の者達もまたエニエス・ロビーへと攻撃を仕掛
麦わらのルフィVSエニエスロビーの兵力1万の戦いが始まる頃、
!!!
ハハ
そして正門、さらには本島前門もその身軽さでスルーした先に待っ
り囲む柵を飛び越え、その内部へと侵入を果たす。
フィは、一人〝ゴムゴムのロケット〟でエニエス・ロビーの周囲を取
!!!
それはともかく⋮⋮ロビンとフランキーはCP.9の長官〝スパ
128
!!!
ンダム〟と対面する。
スパンダムはフランキーにとっては仇⋮⋮8年前、フランキーの師
匠である魚人の船大工〝トム〟がスパンダムの謀略の下に死んだ。
トムはかつてあの〝海賊王〟の船を造り、その罪で死刑に処される
サ イ ボー グ
ところを、ウォーターセブンの希望となる海列車を造った事で恩赦さ
れるはずであったが、それが覆されたのだ。
フランキー自身もその時に死にかけ、自分で自分を〝改造人間〟と
する事で命を繋いだ。
そんな因縁の相手を前に、フランキーは猛るも、悲しいかな捕らわ
れの身でできるのは、噛みついてやる事くらいだった。
スパンダムもその時に顔を傷つけられた事もあり、容赦なくフラン
キーを痛めつける。
悪魔の土地〝オハラ〟の忌まわしき血族め そしてその矛先は次にロビンに向いた。
﹁ワッハッハッハ
﹂
痛 め つ け て 利 用 し て
殴られて床に倒れる。
海 へ 捨 て て や る
そんなロビンを見下ろしながら、スパンダムは愉快そうに笑った。
﹂
〝麦わらの
﹁ワハハハハ⋮⋮ああ、そういえば⋮⋮さっき、そんなくだらねェ、お
まさか⋮⋮
前を取り返しに来たバカがいたなァ⋮⋮﹂
﹁
﹂
このエニエス・ロビーの1万の兵力の
前にはゴミ同然だったようだな
!
﹁まァどうせ監獄への船を出すとこだ、手土産にちょうどいい。この
る。
しろ実際に、こんな場所まで追ってきているという事実が大問題であ
それはいっそわかり易い伝達ミスからなる情報だったが、どちらに
!!!
ルフィ〟とその一味だ⋮⋮
!
!
129
散々逃げ回っていたようだが、おれの前に現れたのが運のツキだ
覚悟しておけ
﹂
!
!
!!! !
!
お前の存在はそれほどに罪深い
﹁⋮⋮
!
!!!
!
〝海楼石〟の手錠で能力を封じられているロビンは、スパンダムに
!
﹁なァに、もう今頃全員捕まっている頃だろうが⋮⋮
!!?
私 が あ な た 達 に 協 力 す る 条 件
ままインペルダウンへ連行するつもりだ﹂
﹁待 っ て ⋮⋮ 約 束 が 違 う じ ゃ な い
﹂
!!!
﹂
・
・
・
・
・
・
・
﹁ああ⋮⋮そうだな。あいつらはウォーターセブンを無事に出航して
航する事﹂
﹁ニコ・ロビンを除く、〝麦わらの一味〟が無事ウォーターセブンを出
の男に話を振った。
CP.9の中でも一番の実力者である肩に鳩を乗せたシルクハット
普段の冷静さもなく必死に叫ぶロビンにスパンダムは嘆息すると、
条件を正しく言ってみろ﹂
﹁⋮⋮何を必死にイキリ立ちやがって⋮⋮〝ルッチ〟、我々が出した
は、彼らを無事に逃がす事だったはずよ
!!!
まさか、そんなこじつけで協定を破る気じゃ
⋮⋮ここへ来たんじゃねェのか
﹂
﹁なんですって⋮⋮
⋮⋮
!!?
調子にのんじゃねェ
﹂
そもそもてめェら罪人との約束なんざ
おれ達が守る必要すらねェんだ
!!!
!!!
﹂
本部〟へ。護送船の準備が出来次第〝正義の門〟をくぐり出航する
﹁││カティ・フラムは〝インペルダウン〟へ。ニコ・ロビンは〝海軍
指示を出す。
一通り蹴りつけてとりあえずの満足を得たスパンダムは衛兵へと
!!!
わずにやったんだろォが
﹁おいおい、てめェがどうしてもと頼むから〝バスターコール〟も使
キーも蹴りつける。
非難された事に苛立ったスパンダムはロビンと、ついでにフラン
!!?
している海賊〝麦わらのルフィ〟は、裁判所の屋上で様子を見に来た
CP.9の一人〝ブルーノ〟と向かい合う。
いつまで暴れる気だ﹂
﹁〝世界政府〟始まって以来、前代未聞だぞ⋮⋮〝政府の玄関〟にこ
﹂
こまで踏み込んで来た男は⋮⋮
﹁死ぬまで
!!!
!!!
130
!!?
そしてエニエス・ロビーへ乗り込むという大事件を、今まさに起こ
!!!
大柄な身体に牛の角のような髪型をしたCP.9で四番目の使い
手。
ドアドアの実の能力者でもあるその男を前にして、ルフィはあくま
で強気の態度を崩さない。
﹁やめとけよ。お前じゃおれには勝てねェよ﹂
﹁ふん⋮⋮お前達は││まだ気がついていないようだな⋮⋮。これが
全世界規模の〝大犯罪〟だという事に﹂
﹁⋮⋮何が言いてェんだ﹂
﹁全世界の海より⋮⋮加盟国170以上の勢力を誇る〝世界政府〟と
﹂
いう巨大な組織が所有するこの島に、お前達が攻め入るという事は
⋮⋮その全ての国々に反旗を翻す事を意味する
﹂
﹁なんだ⋮⋮そんな事か﹂
﹁何⋮⋮
だから、スターとロビンは奪い返す
セカンド
勝負は一瞬だった。
﹂
ラ イ フ ル
おれは⋮⋮勝てないかもしれないからで仲間を見捨てはしねえ
﹁世界がどうだとか政府がなんだとか、そんなもん勝手にやってろ。
!!!
!!!
発。
〝ギア 2 〟を発動したルフィの〝ゴムゴムのJET回転弾〟一
!!!
﹂
それだけでブルーノは崩れ落ちた。
﹁よし⋮⋮終わり
ロビ∼∼∼ン
迎えに来たぞォ∼∼∼
同 じ く │ │ ロ ビ ン と フ ラ ン キ ー の 二 人 に も そ の 声 は 届 き、〝
の場所からひたすら上を目指して走り出す。
スターはその声に反応すると、何を考えたのか一瞬の間の後に、そ
﹂
!!!!!
きく吸い込んで叫んだ。
﹁スタ∼∼∼
!!!
ルフィは軽く周囲を見回して、裁判所の屋上の縁に立つと、息を大
!
﹁⋮⋮おれさまを呼ぶ声がした﹂
∼∼中略∼∼
!!!
131
?
サ イ ボー グ
ク ー・ ド・ ブ ー
改造人間 〟 で あ る フ ラ ン キ ー の 隠 し 技 で あ る 〝 風来噴射 〟 ⋮⋮ 要 は
﹂
ま だ そ こ に い た の
特大の屁の衝撃で司法の塔の壁を破り、ルフィからも見える位置のバ
ルコニーへと出る。
よ か っ た
﹂
!
﹁ルフィ⋮⋮﹂
ロ ビ ー ー ー ン
スターは一緒じゃねェのか
!!!
遠いけど飛んでみる
!!?
﹁お ー ー ー っ
かァ
そこで待ってろ
﹁⋮⋮﹂
﹁よし
!!!
!!!
えかねたようにロビンが声を荒げた。
何度も言ったわ私は⋮⋮
!!!
私はもう、あなた達の顔も見たくないのに
﹂
!!!
﹁待って
帰って
!!!
!!?
﹂
で、互いに敵の姿を確認した。
﹁死にてェ
﹂
死ぬなんて││何言ってんだァ
?
!!?
﹂
じりながら応える。
﹁⋮⋮
おれ達もうここまで来ちまったから
!!!
それでも⋮⋮まだ、お前死にたかったら
!!!
ロビンっ
﹂
!!!
﹁あのなァ
その時死ね
とにかく助けるからよ
!!!
わらの一味が、続々とそれぞれの方法で上がってくる。
応えるルフィのその後ろでは、ルフィのいる場所を目指していた麦
!!!
!!!
しかしルフィは、そのCP.9は無視して、ロビンに対して鼻をほ
!!!
﹁そうよ
!!!
﹁ロビーーーン
お前﹂
跳ね橋が架かっていないために、大きく分かたれた裁判所と司法塔
!!?
聞く。
﹂
﹁どうして助けに来たりするの
私はもう⋮⋮死にたいのよ
﹂
!!!
死にたいと叫ぶロビンの周囲にCP.9が集う。
﹁
私がいつそうしてと頼んだの ロビンの必死さを感じる叫びに、ルフィは腕を元に戻し、その声を
!!!
あなた達の下へは戻らない
そう言って、ルフィが〝ゴムゴムのロケット〟の体勢に入ると、堪
!!!
!
!
!!?
132
!!!
!!?
ナミ、チョッパー、ゾロ、サンジ⋮⋮そして最後にそげキングが、か
つてリトルガーデンで出会ったブロギーとドリーの海賊団に所属し
ていたという縁から、政府の交換条件というウソを見抜き、説得に成
功した門番の巨人の手で投げられて飛んでくる。
﹂
死ぬとかなんとか⋮⋮何言っても構
﹂
そういう事はお前⋮⋮おれ達のそばで言え
﹁││あとはおれ達に任せろ
﹂
は逆に空から舞い降りた。
﹁ルフィーーー
﹂
﹂
キャッチしてくれ
﹂﹂﹂﹂﹂
スタ∼∼∼ッ
﹁﹁﹁﹁﹁スター
﹂
﹂
﹁飛距離が足りねえ
﹁えっ
﹁⋮⋮は
!!!
!!!
﹁
!!!
﹁ぎゃあ∼∼∼∼∼∼っ
﹂
!!!
最後の一人であるその男は、飛んできたそげキング││ウソップと
だが、まだ一人足りない。
合う麦わらの一味。
裁判所の屋上の縁に並び立ち、司法の塔から見下ろす者達と向かい
!!!
﹁頼むからよ ロビン⋮⋮
わねェからよ
﹂
!!!
!!!
﹁
!!! !
!!!
﹁ちょっ
﹂
危うく死にかけたぜ
﹂
!
た。
﹁ふぅ⋮⋮危ないところだった
!
スターは裁判所の屋上に引き上げられると、やれやれと首を振っ
ルフィが必死に腕を伸ばし、その襟首を捕まえ、引き寄せる。
!!!
!
﹁スターーー
﹂
と空いたその穴に落ちて行った。
えないスターは、その狭間を飛び越える事ができずに、海にぽっかり
しかし腕には依然として〝海楼石〟の手錠が嵌っており、能力が使
達の裁判所の屋上へとジャンプしたスター。
なぜか司法の塔の屋上に姿を現し、そこからこれまたなぜかルフィ
!!!
?
?
133
!!?
!!!
﹂
﹁危 な い と こ ろ だ っ た じ ゃ な い で し ょ
思ったら何やってんのよ
あ ん た い き な り 現 れ た と
!
ようだったから、おれさまはさらにその上を行ってみせたまで
﹂
お前達がおれさまの許可なくおれさまより目立っている
!
無事でよかった
﹁そうだな。通常運転だ﹂
﹁スター
﹂
﹁ああ、こりゃ本物のスターだ﹂
﹁あんたねえ⋮⋮﹂
その言葉にナミは途方もない脱力感を感じて肩を落とした。
る。
ナミの神速のツッコミにも堪える事なく、スターは高笑いを上げ
!!!
ている
﹁はーっはっはっはっはっはっ 何をやっているかといえば決まっ
!
私の名前はそげキング││﹂
﹁何言ってるんだキャプテン
腺が決壊した。
﹂
お
おれは何
お前、無事でよがった
ごべんなぁ
スター
本当に、おれ゛は心配したんだ
!!!
﹁っ⋮⋮う、うぉおおおおおんッ
なぁ
!!!
目を覚ました時にはぜんぶ終わってて
!!!
﹂
ウソップはスターの言葉に、ピタリとその動きを止めた。
﹁おれのスゴさ⋮⋮
﹂
﹁大 丈 夫 だ キ ャ プ テ ン。お れ さ ま は キ ャ プ テ ン の ス ゴ さ を 知 っ て る
仮面の下で泣きじゃくるウソップに、スターは力強く頷いた。
!!!
!!!
ウソップの言葉にスターが不思議そうに首を捻ると、ウソップの涙
ないわけないだろ﹂
おれさまがキャプテンの事をわから
﹁いっ、いや⋮⋮私は君の言うところの偉大なるキャプテンではない。
﹁あ、キャプテン﹂
そんなウソップの姿にスターが気づく。
ターを見るだけで微動だにしない。
チョッパーが素直に再会の喜びを表す中、ウソップは仮面越しにス
!
?
134
!!!
!
もできないでよぉ
!!!
前の話を聞いてよォ
!!!
!!!
?
!
﹂
﹁ああ。キャプテンは⋮⋮弱いんだ
﹁おいっ
﹂
い、いきなりそういう事をマジっぽい
﹁⋮⋮ひぐっ、お、お前よォ
それは本当は誰より心が強い証だ﹂
戦 っ て る ん だ。だ か ら キ ャ プ テ ン の 相 手 は い つ も 格 上 ば っ か り だ。
とは違う。おれさま達は強いから戦えるけど、キャプテンは弱いのに
﹁聞いてくれキャプテン。それって本当にスゴイ事だぞ。おれさま達
ウソップはビシッとお手本のようなツッコミを入れた。
はたして何を言い出すのかと思えばこれである。
!
顔をする。
﹁おい、スター。そげキングと知り合いだったのか
?
スターちょっと耳貸せ
﹂
何言ってるんだルフィ。だからこれはキャプ││﹂
﹁しー
?
﹁スター、これはアレだ⋮⋮そう ドッキリだ。さすがにスターの
ウソップは咄嗟にスターを口止めると手招く。
!
﹁ん
﹂
その様子に微笑む一味の中で、ルフィとチョッパーは不思議そうな
天然で落として上げるスターにウソップはまた泣いた。
﹂
トーンで言うんじゃねェよ
!
演出なんだ﹂
﹁なるほど⋮⋮
﹂
フィにはまだ気づかれていない。今のおれはそげキング。そういう
ような〝スターアイ〟の持ち主には気づかれてしまったようだが、ル
!
する左腕の
印。
目を大事にする傾向にあるスターの服の袖の下には変わらずに存在
正確にはビビとカルーがいないが、スターだけに他の者よりも見た
今ここに、一時期はバラバラになりかけた麦わらの一味は揃った。
立った。
スターはウソップの言葉に必要以上に納得すると、屋上の縁に並び
!
の巨大な〝闇〟に、今、麦わらの一味が挑む。
ニコ・ロビンの周囲を蠢く、世界政府││そして〝正義〟という名
だから、麦わらの一味はここに揃ったのだ。
×
135
!!!
!
!
第17話・夢を繋ぐ声
蘇る。
ウエストブルー
ロビンの頭の中に忌まわしい過去の記憶が。
20年前││ 西 の 海の地図から消えた故郷、オハラの記憶だ。
当時はまだ8歳のロビンだったが、その時点ですでにハナハナの実
の能力者で、オハラの図書館兼考古学研究所である〝全知の樹〟で行
われた博士号の試験に満点で合格し〝考古学者〟と名乗れるように
なっていた。
そしてロビンはそこの学者達と同じく100年間の〝空白の歴史
ポー ネ グ リ フ
〟の謎を解き明かす事を求めた。
だが〝歴史の本文〟を解き明かす事は800年前に世界政府に禁
じられた〝犯罪〟行為。
能力者であるために町の子供達には気味悪がられ、その身を案じた
学者達には仲間外れにされ、一人海岸にいたロビンは漂着した巨人〝
グ ラ ン ド ラ イ ン
ハグワール・D・サウロ〟と出会う。
デレシシと笑う巨人は偉大なる海で能力者に慣れていたためにロ
ビンの事を気味悪がらず、ロビンは彼と打ち解けた。
しかしその中で現れる政府の船。
謎を解き明かすために世界中を旅していたロビンの母の〝ニコ・オ
ルビア〟達から、それがオハラの者であると掴んだ彼らは、世界に対
する〝見せしめ〟のためにその姿を現した。
当時のCP.9の手によって、学者達のその〝罪〟は暴かれ、知り
すぎた彼らには死刑が確定した。
〝バスターコール〟も発動され、島には〝中将〟を乗せた軍艦が集
まる。
元〝中将〟であったサウロは、今回の作戦を知っていた。
・ ・
・
・
学者達を〝悪〟と断じる事ができず、オルビアを逃がすと共に自分
も海軍から抜けて海を漂流した結果、偶然にも漂着した島がオハラ
で、ロビンに助けられた。
避難船をも吹き飛ばす〝バスターコール〟に、海軍にサウロは反抗
136
するが、後の海軍本部〝大将〟青キジの前に敗北⋮⋮しかしオハラの
全てを消し去ろうという、その〝徹底した正義〟を前にして、青キジ
はサウロが守ろうとしたロビンを逃がす事を決断する。
炎に包まれるオハラの姿を目に焼きつけながら、ロビンは一人オハ
ラから生き残った。
ポー ネ グ リ フ
だが││ロビンが生存している事はすぐに政府にバレた。
その結果、〝歴史の本文〟を解読でき、そこに記された古代兵器の
数々を復活させる可能性のある〝オハラの悪魔〟の生き残りとして、
ニコ・ロビンはわずか8歳にして、7900万ベリーの賞金首となる
のである⋮⋮。
∼∼中略∼∼
それからの生活にイイ事など一つもなかった。
137
子供の首に懸けられた賞金に目の色を変える大人達⋮⋮わずかで
も期待を懸ける度に裏切られ続け、辿り着いた先はB・W。
目的は違えど、国家転覆にまで加担して、堕ちるところまで堕ちて
いたと言っていい。
だが、その中で現れた自分の存在をあっさりと受け入れる者達。
ロビンはその〝輝き〟に希望を見て⋮⋮それでも、過去の悪夢を拭
い去る事はできずに、今回の選択をした。
⋮⋮だというのに、だ。
今ロビンの目に映るのは、裏切ったと思わせたにも拘らず、それを
信じず、真実へと辿り着き、自分の目の前に立つ││ずっと望み続け
ながらも、そんなものはこの世界のどこにも存在しないのだと諦め続
けてきた仲間の姿。
そ の 攻 撃 が ⋮⋮
﹁20年前⋮⋮私から全てを奪い、大勢の人達の人生を狂わせた⋮⋮
た っ た 一 度 の 攻 撃 が 〝 バ ス タ ー コ ー ル 〟 ⋮⋮
やっと出会えた気を許せる仲間達に向けられた﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁私があなた達と一緒にいたいと望めば望むほど、私の運命があなた
!!!
﹂
私には海をどこまで進んでも振り払えない巨大な
私の敵は⋮⋮〝世界〟と、その〝闇〟だから
!!!
達に牙をむく
敵がいる
!!!
今回の事も⋮⋮
わらの一味の誰もが理解した。
﹁青キジの時も
!
これが永遠に続けば、どんなに気のいいあなた達だって
!
それが怖いの
﹂
いつか重荷に思う いつか私を裏切って捨てるに決まっ
んだ⋮⋮
⋮⋮
てる
もう二度もあなた達を巻き込
細かい事情はともかくとして、それが敵であるという事だけは、麦
けれど、必死さは伝わる。
み込めていないプトレマイオス・E・T・スター。
特に││これまでエニエス・ロビーにいたために、事情がまるで呑
麦わらの一味は、その事情を全て理解しているとは言い難い。
!!!
!
!!!
のロビンの心の内も。
﹁⋮⋮だから、助けに来て欲しくもなかった
﹂
なるほどなァ⋮⋮まさに正論だ
私は今ここで死にたい
﹂
お前を抱えて邪魔だと思わねェバカはいねーよ
﹁ワハハハハハハハ
うだ
ワハハ
そりゃそ
!!!
!
!!!
﹂
!!!
﹂
れほどちっぽけな存在だかわかったか
組織に追われてきたかわかったか
楯突くにはお前らがど
この女がどれほど巨大な
!!!
それを命令する。
世界を後ろ楯に見下すスパンダムに、見上げるルフィは平静な顔で
!!!
!!!
結束〟を示すもの⋮⋮ これが世界だ
﹁あのマークは四つの海と〝偉大なる航路〟にある170国以上の〝
界政府の旗を指差した。
ロビンを笑っていたスパンダムは、司法の塔の屋上に設置された世
﹁あの象徴を見ろ海賊共ォーーー
バッ チ
〟で、それが取り乱し叫ぶ姿に〝正義〟を感じているのだ。
その者にとってみれば、ロビンはその過去がどうであっても〝罪人
けれど、その必死さを笑う者もいる。
ハハハ
!!!
いつか落とす命なら、
そして、いつも冷静に見えたロビンの中に渦巻いていた激情⋮⋮そ
!!!
!!!
!!!
138
!!! !
!
!!!
﹁ロビンの敵はよくわかった
﹁ん﹂
﹂
﹁あの旗、撃ち抜け﹂
は
﹁了解﹂
﹁
殺⋮⋮〝 火 の 鳥 星 〟
ファイアバードスター
﹂
そげキング﹂
﹁新兵器巨大パチンコ、名を〝カブト〟。その威力とくと見よ
!
﹂
﹂
味以外の者達を襲う。
﹁⋮⋮
﹁あ⋮⋮ああ⋮⋮
﹂
﹁あいつら⋮⋮やりやがった
⋮⋮
﹂﹂﹂﹂﹂
宣戦布告しやがったァ∼∼∼
必
﹂
全 世 界 を 敵 に 回 し て 生 き て ら れ る と 思 う な
﹁海賊達が⋮⋮〝世界政府〟に
﹁正 気 か 貴 様 ら ァ
﹂
!!!
!!!
﹁﹁﹁﹁﹁やりやがった∼∼∼
!!!!!
旗への攻撃の意味がわかってんのか
意味もなく中略を入れたくなるほどの驚愕による間が、麦わらの一
∼∼中略∼∼
告をした。
麦わらの一味は、たった一人の仲間のために、世界に対して宣戦布
エニエス・ロビーが、世界が激震する。
!!!
!!!
?
!!!
﹂
﹁ロビン
﹁
﹂
﹂
﹁まだお前の口から聞いてねェ
﹁⋮⋮
﹂
﹂
!!!
!!!
﹁〝生きたい〟と言えェッ
!!!
﹂
で次々と失神していくが、それは彼らの知るところではない。
燃え上がる旗、ルフィの昇り立つ〝覇気〟に、気の弱い者達が外れ
﹁望むところだァーーーーーっ
よォッ
!!!
!!?
!!!
!!!!!
!!?
!!!
!!?
139
!!?
!
望んではいけない事だと思っていた⋮⋮。
誰もそれを許さず、執拗にロビンを追い詰めた。
けれど、それを望む者達が、確実に八人と一羽はいる。
⋮⋮
私も一緒に、海に連れてって
﹂
だからロビンは瞳から溢れる涙を止める事はできず、口を大にし
て、ただ叫ぶ。
﹁生ぎたいっ
!!!
﹁跳ね橋が下りるぞ
﹂
一家の手によって、司法の塔へと続く跳ね橋が下ろされた。
それとほぼ同時に、変わらずに戦い続けていた職長達とフランキー
!!!
﹂
!
﹂
﹂
前の分も戦ってやる
﹂
﹂
あいつら
﹁来るぞ
﹁早く下ろせ
﹁悪そうな顔⋮⋮
﹂
﹁ぎゃあああァ、来んなー
﹁││行くぞ
∼∼中略∼∼
﹂
!
飛び降りた麦わらの一味と、設計図を燃やした事で司法の塔から蹴り
運転手であるココロばーさんに操縦された暴走海列車は、屋上から
そして飛び出すは、再びの暴走海列車・ロケットマン。
ちない事に賭けて、燃やし捨てた。
を、けれど古代兵器を復活させる事のできるロビンが政府の手には落
いである、もしもの時の〝抑止力〟の古代兵器〝プルトン〟の設計図
フランキーが身体の中に隠し持っていた、トムやアイスバーグの願
仲良し裁判長達に止められたが、その勢いまでは止まらない。
跳ね橋は下りきる前に、三つ首改め、くっついていただけの三人の
!!!
﹁まっ、任せろよ、スター⋮⋮ そ、その時までは、お、おれが、お
鍵を手に入れるべきだった
﹁⋮⋮しまった。戦いになるんだったら、そのまま司法の塔で手錠の
﹁あいつら、うまくいったみてェだな﹂
!
!
!
!
!!!
140
!!!!!
!
!
落とされたフランキーを乗せて、裁判所と、司法の塔の間の狭間を飛
び越える。
スパンダムはルッチを護衛に、ロビンを連れて〝正義の門〟へと急
ぎ逃げていく。
残るCP.9はロビンの〝海楼石〟の手錠の鍵を武器に麦わらの
一味にフザケタ時間稼ぎを迫った。
CP.9五人はそれぞれ一本ずつ鍵を持ち、どれが本物かわからな
おれさまは無罪だぞ とりあえずおれさまの鍵
い中で、それを賭けて戦わなければ、海にでも捨てると言う。
﹂
﹁ちょっと待て
を寄越せ
!
﹁いや、ちょっと待てスター。起こす必要なんてねェ。ここは鍵だけ
│﹂
﹁そうだな、キャプテン。ここはおれさまの歌で爽やかな目覚めを│
﹁おい、寝てるぞ⋮⋮﹂
ジャブラ〟。
の真ん中で、鍵を置いて寝ているべん髪で武道家風の服を着た男〝
そして見つけたのは、室内にも拘らず庭園風な改造がなされた部屋
アを開いては閉めていく。
ウソップとスターの二人は、CP.9の姿を求めて、司法の塔のド
﹁いねェ⋮⋮いねェ⋮⋮いねェ⋮⋮﹂
ら安心しろと若干震えながら宣言したウソップと共に行動する。
ような状態であるために、ほぼ無力なスターは、おれが守ってやるか
〝海楼石〟の効果で、悪魔の実の能力者の弱点である海に浸かった
麦わらの一味はバラけ、手分けしてCP.9を探す。
達から鍵を奪い取るという選択を採った。
をとりあえず先に進ませて、残りは司法の塔のどこかにいるCP.9
フクロウ〟から伝えられた言葉に、麦わらの一味は船長であるルフィ
おしゃべり故にか口にチャックを持つ、まん丸い体形のCP.9〝
にでも渡されたはずだ。チャパパパパパパ﹂
﹁それは知らないぞ。チャパパパパ⋮⋮お前の鍵は〝大将〟から長官
!
奪って逃げよう﹂
141
!
﹁それはちょっと卑怯じゃないか
それくらい我慢しろ
﹂
キャプテン。スターっぽい行動
ロビンのためだろうが
!
じゃないぞ﹂
﹁バカ野郎
!
?
﹂
!!?
﹂
﹂
プがそれを見る。
!
﹁お、狼⋮⋮
﹂
﹂
けさらにその前に立った。
﹁キャプテン⋮⋮﹂
﹂
﹂
﹂
あんまり強そうには見えねェが⋮⋮﹂
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮任せろよスター
やる
﹁なんだ⋮⋮戦る気か
!
来るなら来やがれ、狼野郎
!!!
?
そしてウソップとジャブラの戦闘が始まるかと思われたが││唐
﹁うるせェ
おれがお前もロビンも助けて
ターの後姿に、〝カブト〟を握る手に力を籠めると、スターを押し退
⋮⋮〝狼人間〟となったその姿に身体を震わしたが、一歩前に出たス
ウ ソ ッ プ は 身 体 が 倍 加 し て 二 本 足 で 立 つ ジ ャ ブ ラ の 〝 人 獣 型 〟
!
!!!
﹁あ⋮⋮悪魔の実
!!?
﹁〝イヌイヌの実・モデル 狼 〟
ウルフ
言うとジャブラの姿が獣のそれへと変化していく。
にいたぶる趣味はねェ﹂
﹁ちっ⋮⋮やっぱり、ハズレか。残念だが仕方ねェ。安心しろ。おれ
﹁あった。〝7番〟だ
﹂
後ろ手に手錠を嵌めてるために見れないスターに代わって、ウソッ
﹁手錠についてるだろ﹂
﹁番号
錠の番号は
らが来たか。〝狙撃手〟に能力が封じられた男か⋮⋮おい、お前の手
﹁そりゃ、そんな風に騒いでたら起きるだろうよ。それにしてもお前
﹁よし、じゃあそーっと行くぞ⋮⋮って、起きとるーーー
かだった⋮⋮﹂と反省したが、その説教でジャブラは起きた。
に、スターは﹁確かに⋮⋮見せかけのスター性に拘るおれさまが浅は
ウソップの敵と戦いたくない気持ちからなるちょっとマジな説教
!
!
!!!
142
?
!!!
﹂
お前のその能力サイコーだ
﹂
〝人獣型〟で止めるつもりが⋮⋮キリンに
突に天井にヒビが入り、そこからゾロとキリンが落ちてきた。
﹂
﹂
いかんっ
﹁キリーーーン
﹁うおっ
なってしもうた
カク
﹂
!!!
﹁キリンが喋りながら落ちてきたーーーっ
﹁ぎゃ∼∼∼はははは
!!!
なんだ⋮⋮ここは動物園かァーーー
!!?
!
!!!
おれさまより目立ちやがって⋮⋮
﹂
!!!
ジラフ
﹂
!
が
﹂
ええいっ、妬
動物園と言えば、ゾウ、キリン、パンダは鉄板だろうが
﹂
子供人気で言えばライオンにだって劣ってないぞ
ましいっ
﹂
お前なんかもうファンじゃねェ ライバ
!
!
﹁そうだ
!
﹁おお⋮⋮わかってくれるか、おぬし
﹂
﹁馴れ馴れしくすんな
ルだ
!
﹁なんだって
﹂
動物園状態に頭を整理していたゾロが口を開く。
﹂
﹁スター、お前もいたのか⋮⋮ウソ││そげキングはどうした
﹁キャプテン
?
カクが〝人獣型〟へと変化した。
瓦礫に押し潰されたかと心配するが、その前で口論に一段落ついた
スターが周囲を見回してみると確かにウソップの姿がない。
?
﹂
なぜかカクとジャブラの口論に参加するスターの姿を見て、突然の
!!?
!
!!!
!
﹁キリンの何がおかしいんじゃ わしは気に入っとると言うとろう
だ。一生〝キリン人間〟とは⋮⋮
﹁〝ウシウシの実・モデル麒麟〟。ぎゃ∼∼∼ははは、お前も不憫な奴
れていなかった。
の褒美としてスパンダムに貰った物なので、まだその能力の制御に慣
そのキリンの正体は悪魔の実を食べたばかりのカク││任務達成
と⋮⋮
﹁くっ⋮⋮みんな大好き動物園の人気者キリンに化けて落ちてくるだ
﹁狼
!!?
!!?
!!!
!
?
!
﹁いや、もともとファンになった覚えはないんじゃが⋮⋮﹂
!!!
143
!!?
!
﹁かっこ悪っ
わっ
﹂
⋮⋮
!!?
で口論が始まる。
﹁
なんだこの手錠は﹂
仲間であるはずのジャブラもさらに笑いを深くし、またカクとの間
か、それがより太く突き出した不格好なものだった。
カクの〝人獣型〟はキリンらしく長い首に、元の長鼻が影響したの
ク。
ゾロのつい口から出てしまった率直すぎる感想に衝撃を受けるカ
!!!
しまった、すまないゾロ君
!
からともなく飛んできた手錠が嵌る。
﹁ぎゃー
﹂
平静になれと念じながらそのやりとりを見ていたゾロの腕に、どこ
!
の姿。
﹁オイ、なんのマネだ、てめェ
﹂
たぶん例の〝海楼石〟の手錠なんだ
﹂
能力者だから、そいつを嵌めてやれば弱ると思って
﹁そいつは
!!!
﹁それをなんでおれに嵌めてんだバカ野郎
﹂
!
!
!
!
れた。
!!!
キャプテン
﹂
!!!
﹁
ウソップ
!!!
カクのその、巨体を存分に活かした蹴りの斬撃によって、司法の塔
伏せさせた。
唯一棒立ちだったウソップは、ゾロが跳び込んでその頭を押さえて
﹁伏せろ
﹂
ラが咄嗟にその場で伏せる。
カクがその場で回り始め││その危険さを感じたスターとジャブ
﹁嵐脚⋮⋮〝周断〟
﹂
ぷふーっと吹き出すウソップの姿に、ついにカクの堪忍袋の緒が切
狂って﹂
﹁だ ⋮⋮ だ っ て よ キ リ ン の 顔 が お か し く っ て ⋮⋮ つ い、手 元 が
!!!
敵は二人とも
飛んできた方向に視線をやれば、そこには頭を抱えて謝るウソップ
!
!!!
みっともねェ。戦闘で感情さらけ出しやがって﹂
が斬れてズレ⋮⋮わずかにだが空が見える。
﹁フン
!
144
!!?
!
﹁やかましい
じゃ﹂
わしはキリン気に入っとるんじゃ キリン大好き
﹁あー、わかったわかった﹂
技の破壊力、そしてそのリーチも驚異的だが、その程度なら問題な
!
﹂
いと不敵に笑ってみせたゾロの顔が次の瞬間、驚愕に崩れた。
﹁何やってんだ、てめェはァア
﹂
!!!
﹁ん
﹂
の、ジャブラの隣になぜか普通にスターの姿。
息を吐き、じゃあ先に殺したもん勝ちだな││と同時に思う二人
﹁わしもじゃ。残念﹂
﹁ハズレだ﹂
鍵も結果はハズレ。
尋ねたように、親切にもその手錠を外そうとしてくれるが、どちらの
協力して戦うのが嫌なカクとジャブラは、スターの時にジャブラが
ていたのであった。
二人の〝海楼石〟の手錠の鍵も、CP.9の誰かが持つそれに紛れ
加えて鍵がないという事実に口論する二人。
二人は手錠によって繋がれた。
の左腕も囚われる。
がった時に、ウッカリ、ゾロの右腕に嵌められていた手錠にウソップ
ゾロが頭を押さえて伏せさせたウソップ⋮⋮そんな二人が立ち上
﹁おれのせいじゃないでしょーがァ
!!!
微妙にシリアスさの欠けた戦場を一人移動していたスターは、ジャ
﹂
ブラのその腕に口で銜えていた〝海楼石〟の手錠を嵌めた。
﹂
﹂﹂
﹁なっ⋮⋮くっ、力が⋮⋮油断した⋮⋮
﹁ジャブラ
﹁﹁ナイス、スター
!
﹂
?
手錠を見て呻いていたジャブラは、その手錠についた番号を見る
﹁ぐぬぬ⋮⋮まさか、おれがこんな手に⋮⋮ん
スターの好プレイにゾロとウソップがガッツポーズをするが││。
!!!
!
145
!
﹁⋮⋮とりあえずスマン﹂
?
運がなかったようだな こんな手はもう
と、自分の持っていた鍵でその手錠を外した。
﹂
﹂
!
﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂
﹂
!
!
﹁無意味かっ
﹁うげっ
二度と食わんぞ
﹁ぎゃ∼∼∼はははは
!!!
えっ、スター
﹂
!!!
﹂﹂
そ げ キ ン グ
な ん だ 楽 し そ う
﹂
﹂
お ⋮⋮ お ー い っ
!
﹁﹁チョッパー
﹁ゾ ロ
﹂
手錠に注目しやがれ
﹁〝2番〟の手錠の鍵を探してくれーーーっ
﹁アホォ
!!!
﹂
この状況じゃ気にしてる余裕が
!!!
﹂
!!!
髪の毛を自在に操って、ナミを追い詰めていた。
クマドリは〝錫杖〟を武器とし、さらには〝生命帰還〟という技で
クマドリ〟。
歌舞伎役者のように顔に隈取を入れた男││その名もそのまま〝
﹁〝刻蹄・ 桜 〟
ロゼオ
見つけ、そちらへと急行した。
ろうと、サンジの匂いを探していたのだが、その途中でナミの匂いを
この状況ならば、最初に鍵を手に入れる可能性が高いのはサンジだ
を背中に乗せて司法の塔の中を駆け回る。
││〝獣型〟、本来のトナカイの姿に戻ったチョッパーは、スター
ねェ
﹁ついでだからスターも連れてけ
る事になったゾロとウソップが手錠を示し叫ぶ。
吹き飛ばされたスターに続いて、カクとジャブラに追いかけ回され
!!!
!!?
!!!
!
場を通りかかり、吹き飛んできたスターをキャッチした。
CP.9を〝人型〟で探し回っていたチョッパーが、ちょうどその
﹁
屋のドアから外へ││。
笑うジャブラに殴り飛ばされたスターが吹っ飛び、開いたままの部
!!?
!!!
!
!!!
146
!!?
!!!
そこにチョッパーは割り込み、自ら開発した〝ランブルボール〟で
﹂
ありがとう、助かった⋮⋮﹂
大丈夫か
腕力を強化すると、クマドリを自慢の蹄で殴り飛ばした。
よ
﹂
あいつ倒さなきゃ鍵が
早くここを離れましょう
﹁なんで
!
!
!
とチョッパーは目を見開いて驚いた。
﹂
﹁鍵だけは気づかれずにスッたのに、逃げられなくて
﹂
﹁なァなァ、それ何番って書いてある
﹁番号
?
﹂﹂﹂
﹂
が、相手は困難な任務を担う政府の諜報員であるために容易ではな
ジは蹴り技の冴えでカリファを圧倒し、その精神を折る事に苦心した
女性を蹴れないサンジとの相性はすこぶる悪く││それでもサン
を食べ〝石鹸人間〟になったカリファだった。
サンジの相手はカクと同じく任務達成の褒美に〝アワアワの実〟
﹁﹁﹁
の人形のような姿になったサンジが墜ちてきた。
ナミに事情を話しながら逃げる三人の前に、今度は上からツルツル
﹁ウソップとゾロって⋮⋮いったい何をやってたのよ⋮⋮﹂
2番〟﹂
だ。おれさまは〝7番〟。キャプテンとゾロの腕に嵌ってるのは〝
﹁こ の 司 法 の 塔 に 保 管 さ れ て い る 〝 海 楼 石 〟 の 手 錠 に 対 応 し た 番 号
﹁なんなのこの番号
るものからすればハズレだった。
ロビンについてはどうかわからないが、スター達がとりあえず求め
ナミが確かめた番号は〝3番〟。
?
﹂
クマドリを倒していないのに、スッとナミが取り出した鍵にスター
﹁これでしょ﹂
﹂
﹁スターもいるのね。状況はよくわからないけど││とにかく今の内
き込む。
ナミは髪の毛で締めつけられていた首に手をやって、ゴホゴホと咳
!
﹁ナミ
!!!
﹁チョッパー⋮⋮
!!?
?
147
!!?
!
!!?
く、さらにその能力を喰らった事で形勢は逆転してしまった。
その結果にナミがカリファと対峙し、後を追いかけてきたクマドリ
の前にはチョッパーが立った。
そして残るスターは、ツルツルになったサンジを背負って、どうし
たものかと考えながらとりあえず走り出した。
∼∼中略∼∼
仲間達に鍵の回収は任せて、一人ロビンを追いかけるルフィ。
司法の塔の裏に出るも││〝正義の門〟まで橋でも架かっている
のかと思えばそんな事もなく、目の前には大渦。
試しにとボートで進んでみるが失敗。
溺れ死にかけていたところを、ココロばーさんについて来たココロ
の孫である〝チムニー〟という少女に助けられ、さらにはその先導で
ポカが発生。
〝バスターコール〟は発動され、さらにCP.9に向けたはずの通
148
海の地下通路へと進入した。
サード
分厚い鉄の扉がその行方を阻んだものの││エネルと戦った時に
腕に巨大な黄金をつけた時の破壊力からヒントを得た新技〝ギア 3
〟で、骨を膨らませて、その腕を巨人のようなそれにしたルフィは、そ
の扉をブチ破って、先へと進む。
そして││地下通路の先、〝正義の門〟の門前にある〝ためらいの
橋〟。
その地上へと上がる支柱内部で、追いかけてくるルフィの声に気づ
き待ち構えていた、CP.9歴代最強〝殺戮兵器〟ロブ・ルッチと〝
なんて事を
!!!
麦わら〟のモンキー・D・ルフィは向かい合った。
﹃ちくしょう、しまった。こっちだ〝子電伝虫〟は
!!!
よ り に よ っ て 〝 ゴ ー ル デ ン 電 伝 虫 〟 を 押 し ち
!!!
よりによって、〝バスターコール〟をかけちまった∼∼
ウ ッ カ リ し た
﹄
まった
∼っ
!!!
そんな状況にあって追いかけてくる存在に焦ったスパンダムの大
!!!
信もエニエス・ロビー全域に流された。
しかし発動してしまったものは仕方ないと開き直ったスパンダム
は、島の兵士達を含めて、誰をどれだけ犠牲にしても栄えある未来の
ためならば構わないと言い放つ。
うげェッ
しまった
今の会話つつぬけか ⋮⋮⋮⋮
﹃⋮⋮その〝子電伝虫〟通話中に﹄
﹃え
!!!
!!!
!!?
そ⋮⋮そんなわけで、おれの名は麦わらのルフィだ﹄
!!?
スパンダムはどこまでもウッカリしていたが、事態は切迫してい
た。
〝バスターコール〟で現れるのは海軍本部の〝中将〟五人を乗せ
た軍艦十隻だ。
﹄
エニエス・ロビーに〝バスターコール〟が、か
島にいたら誰も助からないわ
!!!
﹃全員、島を離れて
かった
!!!
れた。
﹂
﹁だーっ、くそっ
んだっ
﹁水
﹂
つまりおれさまはいったい何をどうすればいい
﹁み⋮⋮水、水を⋮⋮﹂
変わりがないために困っていた。
流れてきた通信に事態の悪さを感じていたが、能力が使えない状況に
司法の塔をサンジを背負ってデタラメに走り回っていたスターは、
!!!
ロビンのそんな声と殴られたのであろう音を残してその通信は切
!!!
!!!
!!!
かもしれねェ⋮⋮﹂
水だな
!!!
﹂
飛び降りるスターとは逆に、司法の塔の壁を登っていく巨大なモン
そしてスターは見た。
﹁
り、外へと飛び出す。
背中で呻くようなサンジの呟きに、スターは司法の塔の窓を蹴破
﹁なるほど
﹂
﹁おれが喰らったのは〝泡〟だ⋮⋮洗い流せば⋮⋮な、なんとかなる
!!?
149
!!!
!!?
﹂
スターの姿を。
﹁チョッパー
見た事のない形態ではあったが、ウソップ命名の〝スターアイ〟を
持つスターが仲間を見間違える事はない。
それに帽子と角は巨大化していてもチョッパーだと判断できる要
素として残っている。
変動していく事態に、それでもスターはとりあえずサンジを後ろ手
﹂
に││だとやり辛かったので、足に挟みながら司法の塔の横の海につ
けてジャブジャブと洗う。
﹁戻れ、戻れ││あっ、ヤバ⋮⋮
いってしまう。
!!!
﹂
﹂
?
上がってきた。
﹁おい、そこのおれさまのファン
⋮⋮ってお前は﹂
﹂
何がどうなってる
!
﹁あァん
﹁状況を説明してくれ
﹂
キーが気絶して小柄な〝人獣型〟の姿に戻ったチョッパーを抱えて
二人の目の前で海へと一直線に墜ちた彼らだったが、すぐにフラン
り、モンスター化したチョッパーとフランキーが墜ちてくる。
上空⋮⋮同じくスターが司法の塔を見上げると、その壁をブチ破
﹁ああ││って、今度はなんだァ
﹁││とにかくおれァ、ウソップ達のとこに行きゃいいんだな
水を蹴り、陸地へと戻ってきたサンジは、司法の塔を見上げる。
ター、恩に着る﹂
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮ゲホッ⋮⋮手荒な治し方だったが、助かった。ス
追いかけるスターの前で、高く上がる水飛沫。
﹁おいーーーっ、ヤバいって
﹂
│その滝壺に一直線の海は流れが急なため、ツルンとサンジが流れて
そうしてサンジを洗っていたスターだが、海にぽっかり空いた穴│
!!?
!!?
!
いた原因はわからないが、チョッパーはクマドリを倒したらしい。
そしてフランキーもフクロウを倒し、ナミもカリファを倒したとい
150
!!?
それからのフランキーの説明によると、モンスター化して暴走して
!
?
う話だった。
フランキーはナミと打ち合わせ、〝3番〟の鍵を託されており、自
身が手に入れた〝4番〟の鍵と共に、これから一足先に〝正義の門〟
へと向かう役目を負っていた。
そのナミはカリファから手に入れた〝2番〟の鍵でゾロとウソッ
プの解放へと向かっているそうだ。
﹁んじゃあ、おれは予定通りナミさんの方に行く﹂
フランキーの説明を聞いてサンジはそう言うと、続けてスターに指
示を出す。
﹁スター、お前はフランキーと一緒にロビンちゃんを追え。どうせお
前の鍵はあのクソ長官が持ってるって話だし、ハト男はルフィに任せ
ておけばいい。他の奴はフランキーに任せろ。残りの鍵はウソップ
に届けさせる﹂
要所要所で頭脳派になるサンジの指示にスターは素直に頷く。
術を使う者だった。
CP.9が修めるその体術〝六式〟を、さらに極限まで高めた者。
151
その場を足早に去って行くサンジを見送って、スターはフランキー
と共に、〝正義の門〟へ行く方法を考えていると、ルフィにその道を
教えたチムニーが他の者達の案内役として残っており、二人もその先
セカンド
導で海底地下通路の中へと進入していった。
∼∼中略∼∼
レオパルド
初っ端から〝ギア 2 〟の全開状態で戦うルフィに対し、ルッチは
〝ネコネコの実・モデル 豹 〟による〝人獣型〟⋮⋮〝豹人間〟と
﹂
なったその力で真っ向から渡り合っていた。
﹁〝剃刀〟﹂
﹁くっ⋮⋮この
ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮手強い⋮⋮﹂
﹁〝指銃〟﹂
﹁危ねェ
!!!
ルッチはこれまでルフィが戦ってきた相手の中で最高と言える体
!
それが目の前の敵。
ルフィが持てる力を振り絞っても、なお互角のその戦場に、二人の
﹂
乱入者⋮⋮スターとフランキーが姿を現した。
﹂
それとフランキー
﹂
手ェ貸すか
﹂
そこから〝正義の門〟に行ける
とりあえず鍵を二つ持ってきた
スター
﹁ルフィ
﹁
﹁ロビンは
﹂
あいつに手こずってんのか
﹁ロビンはハトの奴の後ろの扉だ
んだ
!!!
あいつはおれが抑えるから、二人はロビンを追ってく
﹁ルッチか⋮⋮
﹁いや、いい
﹂
!!?
!!!
!
!!!
﹁⋮⋮行かせると思うか﹂
おれが
!!!
﹂
!
・
それでもロビンは信じた。
⋮⋮ハァ⋮⋮言ってくれたから⋮⋮
﹂
﹁ハ ァ ⋮⋮ で も ⋮⋮ 門 は く ぐ ら な い ⋮⋮
!!!
ハ ァ ⋮⋮ 〝 助 け る 〟 と
もし追いかけてくる者がいたとしてもそこで吹き飛ぶ。
・
Nにしていた。
来て万全を期して、〝ためらいの橋〟に続く支柱内の階段の地雷をO
そう笑うスパンダムはこれまでマヌケさが目立っていたが、ここに
もない
﹁ワハハハハ 見ろ、出航準備は万端だ。もう邪魔するものなど何
進んで行く。
スパンダムはそんなロビンを何度も蹴りつけ、引きずりながら橋を
いてでも先に進む事を拒絶していた。
その〝ためらいの橋〟⋮⋮ロビンは文字通りその石橋に喰らいつ
いの橋〟へと走る。
スターとフランキーの二人は、その横をすり抜け││地上、〝ためら
当然ルッチは、それを止めるために動くが、ルフィの猛攻に阻まれ、
﹁行かせるさっ
﹂
ルフィはフランキーの協力を断り、ロビンの奪還を二人に託す。
れ
!
!!!
!!!
!!!
!!!
152
!!!
!!!
!
!!?
!
!!!
そんなロビンの往生際の悪さに、スパンダムはそれで20年前どう
なったと言う。
実は20年前のCP.9の長官はスパンダムの父親で、スパンダム
は全てを聞かされていた。
ワハハハハ、世界平和のためにな
﹂
泣くほど不幸だったか。20年前⋮⋮お前の首に賞金
親子二代で〝正義〟のために〝オハラの悪魔〟を追い詰めていた
のだ。
﹁ハハ⋮⋮
﹂
を懸けたのはおれの親父だ
﹁
!!!
オハラは敗けた
息子のおれがそのたった一人の生き
オハラの戦いは幕を閉じる
﹁そして20年経った今⋮⋮
﹂
残りを狩り⋮⋮
んだ
!!!
悔しさに涙が溢れ出す。
﹁まだ私が生きてる
﹂
!!!!!
﹂
あのバカ
!!?
が壊れ、フランキーがそこから海へと墜ちていく姿が見える。
バカめ
なぜあいつがここに
!!!
だが、かかった
!!!
﹁カ⋮⋮カティ・フラム 地雷か⋮⋮
﹂
ハァ⋮⋮あァ⋮⋮ワハハ
かかった
!!! !!!
﹂
力まで落とされているとは思えないその脚力で一直線に駆け抜ける。
爆煙を突っ切って││〝海楼石〟によって能力だけでなく、身体能
同じく後ろ手に手錠をされた姿で走る。
に庇われ、投げ飛ばされたもう一人は〝ためらいの橋〟を、ロビンと
フランキーは地雷に吹き飛ばされ墜ちていったが、そのフランキー
〝ためらいの橋〟へと繋がる支柱を昇っていたのは二人。
﹁え⋮⋮
た笑っていた。
だが、近くで見ればわかっただろうが、墜ちていくフランキーもま
スパンダムは吹き飛ばされ墜ちていくフランキーを笑う。
!!!
その時、〝ためらいの橋〟へと繋がる支柱から爆発音││支柱の壁
﹁そのお前が死ぬんだろうがよ
!!!!!
ロビンの脳裏には20年前の光景が絶えず再生され続けていた。
!
!
!
!!!
!!?
153
!!!
!!!
!!?
﹁⋮⋮
﹂
は⋮⋮い、いや、ちょっと待て⋮⋮
﹁またねェ
﹂
!!!
﹁スター
﹂
うようにその前に立った。
勢いのままにスパンダムの顔を蹴り飛ばしたその男は、ロビンを庇
飛び蹴り一閃。
!!!
マイオス・E・T・スター
ロビン
お前を助けにきた
!!!
﹂
!!!
ドン と登場シーンを決めるスターの前でスパンダムは頬を押
!!!
﹁その通り。おれさまは麦わらの一味の〝海賊スター〟こと、プトレ
!!!
さえながらよろよろと立ちあがる。
﹁て、てめェ⋮⋮プトレマイオス・E・T・スター⋮⋮ 裁判で無罪
!!!
だが、これで、てめェは
!!!
能力が使えない無念さを噛みしめて、たった一人
になったからとつけ上がりやがって⋮⋮
今度こそ有罪だ
﹂ !!!
﹁能力が使えないからなんだ
おれさまは怒ってるぞ
﹂
!!!
﹂
﹁な ⋮⋮ な ん だ ァ
能 力 は 封 じ ら れ て る は ず だ ぞ
│ │ ポ ガ バ
続々と現れた海兵達が、次々に爆発によって吹き飛ばされていく。
能力なしでも戦おうとするスターの視界では不可思議な光景。
!!!
スパンダムの背後から手に銃を持った海兵達が続々と現れる。
船着き場にいる海兵達を呼ぶ。
スパンダムが〝ためらいの橋〟の先、〝正義の門〟を越えるための
の女のために、ここで死ね
!!!
!!?
!!!
塔。
﹂
その屋上に仮面をつけてマントをなびかせるヒーローの姿。
﹂
﹁││キャプテン
﹁長鼻君⋮⋮
!!!
寸
!!!
け戻る。
この距離で、風の吹く中⋮⋮
﹂
!!?
﹁なんだ、あいつはァ∼∼∼っ
分狂わずおれ達を狙ってるのか
!!?
ウソップの援護にスターはロビンを促して、〝ためらいの橋〟を駆
!!!
154
!!?
!!!
同じく吹き飛ぶスパンダムの姿に、振り返れば遠く離れた司法の
!!!
殺さねェ
!!!
﹂
逃がすなバカ共 撃っていい
﹂
!!!
﹁あっ、ニコ・ロビンが逃げます
﹂﹂﹂
!!?
﹁んのおォのれェ∼
!!!
程度に撃ち殺せ││ぐばァ
﹂
﹁﹁﹁う、撃てェ
﹁チッ⋮⋮
!!!
る。
銃弾をも弾く鉄の身体を持つ男。
﹂
!!!
﹁フランキー
丈夫なのよ鉄だから。地雷程度どうって事ねェ
!!!
〝5番〟⋮⋮外れた
!!!
よって生まれていた大渦もまた消えている。
﹁〝3番〟⋮⋮〝4番〟⋮⋮違う
﹂ 〝正義の門〟はそのために開けられており、閉められていた事に
それはもうすぐそこまで迫っていた。
∼∼中略∼∼
﹃││確かに届けたぞ﹄
CP.9が持っていたはずの鍵の全て。
本使ったから、計五本。
ゾロとウソップの解放、それとジャブラが自分の解放にそれぞれ一
これでこの場にある鍵は三本。
キーがそれを拾い、中を確認する。
手錠を後ろ手に嵌められている二人に代わり、自由の効くフラン
入っている。君達のと合わせてこれで全て││﹄
付近に小さな赤い包みが落ちているはずだ。その中には一本の鍵が
取った〝電伝虫〟でそちらに声を飛ばしている。それはそうと、その
﹃ス タ ー、そ れ と フ ラ ン キ ー 君。こ ち ら そ げ キ ン グ。ナ ミ か ら 受 け
そこに通信が入る。
ランキー。
スターとロビンの前で大の字に立って、その身体で銃弾から守るフ
﹁おうよ
﹂
海兵達が構えた銃に顔を顰めるスターだが、それに気づき笑顔を作
!
!!!
!
155
!
う ま く 奪 っ て 逃 げ た な、さ て は
って事
だが同時に、麦わらの一味+フランキーもまたニコ・ロビンの解放
ほ⋮⋮本物の鍵っ そんな⋮⋮
という目的を達成していた。
﹂
いや、
!
チ キ
!!! !!?
﹁バカなァ∼∼∼っ
!!?
はおめェら 司法の塔のCP.9を全員倒したってのか
!!!
そんなはずはねェっ
ショー
!!!
﹂
!!!
おい長っ鼻 ニコ・ロビンの手錠は外した
!!!
!!!
のがわかった。
!!!
は紛れもなくルフィ君達の仲間だ
もう思うままに動けばいい
﹄
!!!
﹂
脱出の準備は整えておく
おれさまの鍵だ そいつが持ってる
おめェら急いでこっちへ来い
ロビン
﹂
!
﹂
﹁││違う
﹁
それさえあればおれさまの〝スターシップ〟が使える
!
!
それより││﹄
!!!
﹁〝 バ ス タ ー コ ー ル 〟 だ ⋮⋮ 〝 バ ス タ ー コ ー ル 〟 が 始 ま る ぞ ォ ∼ ∼
﹃おい、こっちは無事だ
中将〟、十隻の軍艦⋮⋮国家戦争クラスとされる軍事力。
〝バスターコール〟によって緊急招集された海軍本部の五人の〝
司法の塔が吹き飛ばされ、それが姿を現した。
ロビンがスターの言葉に応えるより早く││砲撃が始まり、柵が、
!
!
﹁オシ
にスパンダムに腕を咲かせてフルボッコにした。
〝海楼石〟の手錠が外れた事で能力が解禁されたロビンは、手始め
!!!
﹃礼なら全てが済んでから、必死に鍵を集めた者達に言いたまえ。君
﹁長鼻君⋮⋮ありがとう
﹂
フランキーがウソップに通信を返すと、向こう側でも歓声が上がる
ぞ
﹁こちらフランキー
激闘を続けるCP.9最強のロブ・ルッチ、ただ一人。
残るのは〝ためらいの橋〟へと続く支柱内部で、変わらずルフィと
麦わらの一味は確かにその全員を倒した。
乱そうとその事実は変わらない。
CP.9の戦闘力に絶大の信頼を寄せるスパンダムがいくら取り
!!!
!
156
!!!
!
!
!
∼っ
﹂
力も限界か
﹂
﹁いや、まだまだだ⋮⋮﹂
そう言って笑うルフィに、ルッチもまた口角をつり上げた。
﹂
﹂
﹂
眼前にはすでにその威容がはっきりと見て取れる十隻の軍艦。
る。
らその鍵を見つけたロビンの手によって、ついにその男も解放され
そして再び〝ためらいの橋〟⋮⋮スパンダムの上着のポケットか
んだ﹂
﹁地下水路を走ってる奴なんていねェ。おれの仲間は││空を飛べる
﹁何
﹁⋮⋮わかってねェよ、お前﹂
いて、やはり笑った。
ルッチの行動の意味がわかっていなかったルフィは、その説明を聞
何も、うまく運んでやしないんだ⋮⋮麦わら﹂
﹁この海水が勢いよく通路へと流れ込み、そこにいる者達は溺れ死ぬ。
水が入りこんできた。
ルッチが蹴りの斬撃で支柱の壁を斬り裂くと、そこから勢いよく海
〟
﹁││もし運よく⋮⋮ここへ辿り着く者達がいたとしても⋮⋮〝嵐脚
﹁
法の塔にいるお前の仲間達は死ぬ﹂
はもう始まっている。││もう、数分も待たず一斉砲撃が始まり、司
海軍本部の軍艦が試し撃ちでもしたのだろう。〝バスターコール〟
?
?
﹁フッ⋮⋮なかなかに骨がある。だが、さっきの爆音を感じたか
﹁だいぶ息が⋮⋮ハァ⋮⋮上がってきたようだな。そろそろ貴様の体
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮﹂
〝麦わら〟のルフィVS〝殺戮兵器〟ロブ・ルッチ。
││〝ためらいの橋〟、支柱内部。
!!!
?
157
!
!!!
なんじゃそりゃ
﹂
﹁フン⋮⋮出でよ││〝スターシップ〟
﹁うおぉっ
!!?
﹂
!!!
プテン達と合流してくれ
﹂
﹂
﹂
?
﹁待って、スター、あなたは
キャプテン
は、その決着がつくまでの足止めだ
﹁ま だ も う 一 人 の 船 長 が、ル フ ィ が 戦 っ て る だ ろ
!!?
!
﹁いいから行けって
ここからはおれさまのステージだ
﹂
!!!
どいつ
〝バスターコール〟がどれほどスゴイのか知らないが、そんな
﹂
標的、〝麦わらのルフィ〟とその一味、
ものよりもっとおれさまに注目しろ
∼∼中略∼∼
﹃〝バスターコール〟発動
﹄
││なお〝大将〟青キジとの内約により、〝ためらいの
!!!
く。
﹃現状把握不要
﹄
!!!
そこに容赦は欠片もなく、麦わらの一味という〝悪〟を滅ぼすため
よ
〝司法の島〟エニエス・ロビー、その全てを破壊せ
十隻の軍艦からなる砲撃により、エニエス・ロビーが破壊されてい
橋〟に存在が確認されたニコ・ロビンのみ標的外とする
約六十名
!!!
〟
﹁とりあえずの目標は││おれさまより目立ってる〝バスターコール
てないほどの規模で〝輝き〟を放つ。
これまで能力を封じられていた事で溜まりに溜まった鬱憤が、かつ
その周囲には巨大な複数の星。
がる。
スターの身体から金色が噴き出し、足につけた星で空へと浮かび上
まは、それ以上に目立たなきゃウソってもんだろうが
もこいつも散々目立ったんだ⋮⋮なら〝海賊スター〟であるおれさ
!!!
ロビンだが、スターはロビンを〝スターシップ〟に押し込んだ。
〝バスターコール〟という悪夢に震えながらも、自分も残ると言う
!!!
│ │ お れ さ ま
﹁世にも珍しい空飛ぶ船だ。こいつを貸してやる。二人はそれでキャ
!!?
!!!
158
!!!
!!!
!!!
!!!
に、本当にその島の全てを破壊しようとする攻撃が続く。
不意に││その空に到底無視する事ができないほどの金色の〝輝
連続セット これが進化し続けるおれ
墜ちろ││〝メテオストリーム
!!!
き〟が現れる。
﹁││〝ビッグスター〟
﹂
!!!
﹂
!!!
いる。
﹁う、ウワァ∼∼∼っ
星が、巨大な星が墜ちてきます
一つ一つが〝メテオインパクト〟級の威力を、その圧殺力を持って
そして〝輝き〟は巨星を墜とす。
〟
さまの最強〝スターパワー〟だ
!!!
﹂
えでスターに突撃するが、その横合いからの射撃に気づき、背中に大
モモンガはそのままスターにトドメを刺そうと、上空から刺突の構
なくなってしまい、そのどちらもが孤立したような状況になる。
橋はすでに先の砲撃で崩れており、ルフィがいる第一支柱側の道が
落された。
合いが続くが、徐々にその力に押し負け、〝ためらいの橋〟へと叩き
スターは〝スタービームソード〟で対抗し、しばらく空中での斬り
﹁ぐぬっ⋮⋮強ェ⋮⋮
歩〟で空気を蹴り、スターへと迫る。
の内の一人モモンガが、CP.9も使う体術〝六式〟の内の一つ〝月
さらに空を自由に飛べるスターを厄介な存在と見たのか、〝中将〟
残らず斬り裂き砕く。
ぞれ〝覇気〟を纏うと、その手に持った刀で、墜ちてくる巨星を一つ
〟、〝ヤマカジ〟⋮⋮今回の作戦に参加する五人の〝中将〟達はそれ
〝ドーベルマン〟、〝オニグモ〟、〝モモンガ〟、〝ストロベリー
﹁狼狽えるなバカ共が﹂
いる。
うその巨星に、慌てる海兵達の中で、まるで慌てた様子のない五人が
直撃すればさすがに軍艦も落ちるレベルのダメージを与えるだろ
!!?
!!?
﹂
きく〝正義〟と書かれた海軍コートで払った。
﹁キャプテン⋮⋮
!
159
!!!
﹁す、スターはやらせねェぞ
る。
﹂
﹁そのまま逃げてもよかったんだぜ﹂
﹁何言ってんだ。やられそうになってたくせによ﹂
おれさまの本気はまだまだこれからだ
!
﹂
!!!
﹂
﹂
﹁い、今のは
﹁ルフィだ
サード
ルフィはルッチの後を追って飛ぶ。
﹂
〟や支柱を取り囲みだした軍艦の甲板の上に落ちた。
ルッチは吹き飛び││けれど運よく海には落ちず、〝ためらいの橋
き飛ばされたルッチの姿。
その腕の先には〝六式〟の一つ〝鉄塊〟で防御を固めながらも吹
動も大きいために温存していた〝ギア 3 〟を発動したのだ。
サード
〝ギア 2 〟に比べて慣れておらず、無理に骨を膨らませたその反
セカンド
族のような巨大な腕によって内部から破壊された。
ゾロがルフィの戦っている第一支柱に視線をやると、その壁が巨人
﹁││〝ゴムゴムの巨 人 の 銃 〟
ギガント・ピストル
﹁ルフィの奴は⋮⋮まだ戦ってやがんのか﹂
﹁それはどうでもいいけど⋮⋮なんとかルフィを回収しないと﹂
﹁なってねェっての
﹂
ニーは〝スターシップ〟で上空から〝ためらいの橋〟へと降りてく
ウソップを含めた麦わらの一味⋮⋮それにココロばーさんやチム
ソップが叫ぶ。
モモンガにギロリと睨まれ、若干ゾロの後ろに隠れながらも、ウ
!!!
ギガント・アックス
﹁〝ゴムゴムの巨 人 の 斧 〟
﹂
﹁お い お い お い ⋮⋮ あ の 軍 艦 に は 味 方 が 乗 っ て ん じ ゃ ね ェ の か よ っ
めだけに、味方が千人は乗るその軍艦を砲撃し撃沈した。
たとも言えるもので││〝麦わら〟のルフィという〝悪〟を摘むた
そんな二人の戦いに対して、海軍本部〝中将〟の命令は常軌を逸し
軍艦を踏み潰し、マストをへし折り、それでも戦いは続く。
!!!
160
!
その身体は〝ギア 3 〟の影響でボコッと膨れている。
!!!
!!?
﹁〝ゴムゴムのロケット〟ォーーーッ
!!!
﹂
﹂
﹁これが⋮⋮〝バスターコール〟よ⋮⋮
﹁イカれてやがるぜ⋮⋮
﹂
!!!
なそうだな⋮⋮
﹂
﹁この状況じゃあ、簡単に〝スターシップ〟で脱出ってわけにも行か
!!!
き落されるだろう。
﹁これがおれが発動した〝バスターコール〟の力だァ
!!!
﹂
サンジは
﹂
あのレベルがあんなに
あいつは
!!?
クラスじゃねえか
あれっ
!!?
!
!
﹂
﹁ほ、本部〝大佐〟っつったら、あの〝ケムリ野郎〟スモーカーと同じ
小さいと言うのだからフザケタ話である。
〝中将〟五人より、〝中佐〟、〝大佐〟200名の方が戦闘規模が
だった。
ロ ビ ン が ウ ッ カ リ 死 ん で し ま う よ う な 事 態 を 避 け る た め の 作 戦
〝中将〟が本気で動けば、その戦闘規模は格段に上がる。
きたまま捕らえるという制約があるからだ。
それと言うのも今回の〝バスターコール〟には、ニコ・ロビンを生
味だったが、敵は質よりも量で押し潰す作戦を選んだ。
海軍本部〝中将〟と戦う覚悟を決めるルフィを除いた麦わらの一
に始末せよ﹄
﹃少佐以下出陣不用。大佐及び中佐のみ精鋭200名により、速やか
﹁違えねェ﹂
﹁〝大将〟よりはマシだろ⋮⋮たぶん﹂
﹁敵は〝中将〟か⋮⋮﹂
だが、気にしている暇はない。
吐く。
フランキーが起き上がったスパンダムの姿に呆れたように溜息を
﹁⋮⋮まだいたのかよアイツ﹂
﹂
加えてスターの動きはかなり警戒されており、空に上がればまた叩
ルフィの戦いの決着もついていない。
!!!
!!?
﹁おれ達にびびってる証拠だ⋮⋮
﹁え
!!?
!!?
161
!!?
﹁
﹂
さっきまでそこに⋮⋮なんだァ どこ行きやがった
﹂
動けねェよーーー
バカコック
﹁おで
﹄
﹂
﹂
当たってくれねェ
ニコ・ロビンを奪還しろ
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
﹃││かかれ
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁
!!?
能力者もまざってるぞっ
﹁なんだコイツら⋮⋮
﹁気ィつけろ
!
!!!
あの
!!?
し、ゾロの刀を錆びらせ、ウソップの射撃を避ける。
﹂
﹁⋮⋮能力を封じられたおれさまをみんなが助けてくれた
││ここはやっぱりおれさまの出番だろうが
!!!
いく。
スターの奴、マジだと本気で強ェな
﹂
﹁〝大佐〟如きが││今更、おれさまの邪魔をするなァッッッ
﹁強ェッ
!!!
﹂
!!!
スターの〝スターオーラ〟の〝輝き〟が感情に合わせて強まって
!!!
だから
それは決して雑魚ではなく、フランキーの鉄の拳による一撃を往な
〝中将〟の号令により、軍艦から飛び出してくる海兵達。
の一味も正念場を迎えていた。
第一支柱に戻ったルフィの戦いが最終局面へと入る中、残る麦わら
!
!
!!!
・
・
技の限りを尽くして、なお決着はつかない。
・
・
その戦いが始まってからもうどれだけ経ったのか⋮⋮互いに力の、
るぞ﹂
﹁││どうした。心なしか、ハァ、そのドーピングの技のキレも落ちて
・
第一支柱の壊れた外壁からルフィとルッチの戦いが見える。
ている刀に手をかけた。
その状況に、戦況を見守っていた五人の〝中将〟が、再び腰に提げ
いく。
倍以上もの威力を生み出し││〝中佐〟、〝大佐〟と関係なく倒して
それらは〝スターオーラ〟の〝輝き〟が伝播したのか、いつもの何
ド〟が数人の海兵を纏めて薙ぎ払う。
〝トリックスターボム&ビーム〟が空を舞い、〝スタービームソー
!!!
162
!!!
!!!
!!!
!!!
!
!!?
・
・
〝世界政府〟の志向を邪魔
﹁所詮貴様らにこのエニエス・ロビーは越えられん。そういう事だ
・
たとえこの島の形が滅んでも⋮⋮
!!!
﹂
﹁ウソップ⋮⋮
お前、来てたのか⋮⋮
﹂
!!?
お前の顔なんか見に来たわけじゃねェ
!!!
﹂
!!!
る。
やめろウソップ、殺されるぞ
﹂
﹂
じゃあ死にぞこないのお前に、何かできるってのか
!!!
死にそうな顔してんじゃ
!!?
﹁バカか
﹁黙れ
﹁コイツはおれがブッ飛ばすんだ
だったら
お前らしくねえじゃねェか
﹁だったら、すぐに立てよ
!!!
爆炎で黒くたって空も見
こ こ が 地 獄 じ ゃ あ る め ェ し お 前 が
!!!
ねェよ
﹂
﹂
海 も 見 え る ⋮⋮
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮
死にそうな顔すんなよ
える
!!!
!!!
﹁⋮⋮っ
心配させんじゃねェよ、チキショーーー
﹂
!!!
ロビンがいるために攻撃の規模が抑えられている事も、その理由で
けもあり、ギリギリの状況で踏ん張っていた。
T・スターが五人の海軍〝中将〟に翻弄されながらも、ゾロなどの助
ウソップが泣きながら絶叫するその背後では、プトレマイオス・E・
!!!
ルフィは床を叩き、〝ギア〟を発動し、無理矢理に身体を起こす。
!!!
﹂
お前にできないなら代わりにおれがやってやるとルッチを挑発す
そんなふがいない船 長の顔になんか興味はない。
キャプテン
仲間を助けるという重大な目的も達成せずに誰かに敗けるなんて、
ウソップは死にかけているルフィに対しても意地を張る。
めにここへ来たんだ
﹁か⋮⋮勘違いすんじゃねェぞ おれはスターとロビンを助けるた
!!?
が気づき、そげキングの仮面を投げ捨てて、ルフィの名を叫ぶ。
そんな状況に〝ためらいの橋〟の上で必死に戦っていたウソップ
〟をカウンターでその身に受けて崩れ落ちる。
しかしルフィの攻撃は躱され、逆に〝六式〟の奥義である〝六王銃
!!!
名の下に
﹂
するあの女は、地の果てまで追っておれが消し去る。〝闇の正義〟の
!!!
﹁⋮⋮ハァ、そこからロビンを逃がすために、おれ達は来たんだ
!!!
!!!
!!!
163
!!!
!!!
!!! !!!
!!!
!!!
あるだろう。
けど理由がなんであれ生きている。
﹂
﹂
!!!
ルフィの勝利を待っている。
﹁⋮⋮わかってる⋮⋮ここは地獄でもなんでもねェ⋮⋮
﹂
みんなで一緒に帰るぞ、ルフィ
たとえここが地獄の穴の、その縁だとしても││。
﹁勝って
﹁当たり前だ
!!!
﹁
〝鉄塊〟
﹂
﹁〝ゴムゴムの〟││﹂
﹂
多くの思いが交錯し混じり合っても、もはや残るは意地一つ。
のか。
必殺の一撃を受けてもなお、ルフィを立ち上がらせるものはなんな
﹁最大輪││〝六・王・銃〟
!!!!!
その時間の全てを〝闇の正義〟に捧げて生きてきた。
それからさらに15年⋮⋮ルフィの年齢ともそこまで変わらない
つもの過酷な任務を経験し〝殺戮兵器〟と呼ばれるようになった。
幼少の頃からそのためだけに鍛え上げ、13歳の頃にはすでにいく
の上を行く。
⋮⋮それでも、それでも││体術に関して言えば、ルッチはルフィ
!!!
﹂
ハ ァ、す ぅ ∼ ⋮⋮ 一 緒 に 帰 る ぞ ォ
﹂
ス タ ∼ ∼ ∼
ロ ビ ∼ ∼ ∼ ン
!!!!!
﹁ハ ァ ⋮⋮ ハ ァ ⋮⋮ ハ ァ ⋮⋮ 終 わ っ た ⋮⋮ こ れ で ⋮⋮ い い ん だ ⋮⋮
ス・ロビーの戦いの中で一番長く続いたその決闘に終止符を打った。
いには第一支柱の先程壊した壁とはまた別の壁をブチ破り、エニエ
ルフィはルッチが血を吐き意識を失うまで殴るのを止めず││つ
ガトリング
!!!
⋮⋮
全艦へ報告
敗れました∼∼∼
〝CP.9〟ロブ・ルッチ氏が、たった今
海賊〝麦わらのルフィ〟に
!!!
﹁や⋮⋮やったか⋮⋮ルフィ⋮⋮ガフッ⋮⋮
﹂
!!!
﹄
!!!!!
﹃ぜ⋮⋮
戦いの決着に一瞬の間、続くルフィの勝鬨に、再び動き出す戦場。
!!!
!!!
!
ルフィの勝利に沸く麦わらの一味と、動揺する海兵達。
!
164
!!!
﹁││〝JET銃乱打〟
!!!!!
!
!!!!!
﹂
〝中将〟五人を相手に耐えてたんだ そ
その中で墜ちる〝輝き〟の姿。
﹁スター
﹁スターはもう限界だ
﹂
!!!
そ れ を 奪 え ば
スターが動けないんじゃ、〝スターシッ
の内の一人に深手を与えただけでも上等だ
﹁ちょっ、ちょっと待って
プ〟は││﹂
﹂﹂﹂﹂﹂
!!!
!!!
!!!
﹁〝 護 送 船 〟 だ そ っ ち の 海 兵 共 は や っ た ん だ
﹂
﹁﹁﹁﹁﹁
!!!
!!!
!!!
惜しむわけもない。
絶望的だ
﹁ん、なんとか無事だァ∼∼∼っ
﹂
他に脱出する手段なんて⋮⋮い
﹂
る第二支柱の上に追い詰められてしまう。
﹂
﹁くそっ、とうとう橋なんかなくなっちまった
﹁ここでコレ全部と戦うしか⋮⋮
!!!
せめてこっちに⋮⋮
!!!
!!!
にいるルフィだった。
﹁ルフィが危ねェ
﹂
先に狙われたのはルッチとの戦いで持てる力を絞りつくし、動けず
!!!
﹂
﹃第 一 支 柱 に 一 斉 放 火
﹄
〝 麦 わ ら の ル フ ィ 〟 を た だ ち に 抹 殺 せ よ
﹁バカいえ ルフィもスターもなしで〝中将〟四人なんて相手にで
!!!
﹂
破壊されていき、ルフィを除く麦わらの一味は、その橋の中間点であ
だがその無事な姿を喜ぶ間もなく││〝ためらいの橋〟は次々に
を現した。
くてウサギの〝ゴンベ〟を連れて、どこかへと消えていたサンジが姿
チョッパーにココロばーさんにチムニーに、その飼い猫⋮⋮じゃな
!!!
!!!
﹁なんてこった⋮⋮
!!!
や、それ以前にそっちには戦えねェ、ココロのババー達が
!!!
エニエス・ロビーすらも破壊する〝バスターコール〟が、船一隻を
船〟の姿。
フランキーの言葉に視線をやった先で砲撃によって落ちる〝護送
!!?
きるかよっ
!!! !!!
165
!!!
!!!
﹁スター
﹂
﹁くっ⋮⋮﹂
﹁ダメだわ⋮⋮この距離では引っ張ろうにも海に落としてしまう﹂
同じく動けないスターに、ロビンの能力にしても距離が遠く確保す
るには厳しい。
[││]
決闘には勝利しても、ピンチが終わらない麦わらの一味⋮⋮その耳
に⋮⋮頭に、どこかから直接響くような声が聞こえてくる。
﹃第一支柱〝麦わらのルフィ〟砲撃5秒前⋮⋮﹄
﹁海へ飛べーーー
﹃4秒前⋮⋮﹄
﹂
﹂
!!!!!
隻。
!!!
まだ⋮⋮おれ達には
!!!
﹃3⋮⋮﹄
﹂
﹁助かるんだ⋮⋮ 助けに来てくれたんだ
仲間がいるじゃねェか
!!!
けれど、忘れてはいけない大切な存在がまだ一人⋮⋮ではなく一
麦わらの一味⋮⋮九人と一羽で仲間は全て揃ったと思っていた。
うに指示を出す。
ウソップは涙を流しながらに叫び、ロビンにルフィを海に落とすよ
声は変わらずに聞こえる。
﹁海へーーー
!!!!!
た正確な道程を知る者は、いない。
]
だけど、そんな理由はどうでもよくて、麦わらの一味はただ喜ぶ。
﹄
[││帰ろう、みんな。また⋮⋮冒険の海へ
﹃砲撃
﹁メリー号に
]
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
乗り込め∼∼∼
[迎えに来たよ
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁メリ∼∼∼
!!!
﹂
!!!!!
!!!
ゴーイングメリー号を信じて飛び降りた麦わらの一味は、姿を消し
!!!
!!!
そして砲撃が開始されても、もうそこには誰もいない。
!!!
166
!!!
それはどんな奇跡の果てなのか││その存在が現れるまでに辿っ
!!!
ていたサンジが〝正義の門〟を閉める事で復活させた大渦を越えて
逃げる。
同じく一味と共にエニエス・ロビーへと攻め込んだ職長やフラン
キー一家の者達も、海兵達が一味に気を取られている間に、エニエス・
﹂
167
ロビーに停車したままだった海列車に乗って脱出を成功させた。
おれ達の勝ちだァ
!!!!!
つまりは││。
﹁このケンカ
!!!
みんな﹂
第18話・託されたライオン
﹁じゃ、いいか
小舟に乗り松明を手にしたルフィの言葉に、誰もが静かに頷いた。
目の前には船体が砕け、船首が傾いたゴーイングメリー号の姿があ
る。
ルフィとの決闘の後にウソップの所有となり、ウソップがフラン
キーのついででCP.9に捕らわれた時、船大工として最後の仕事だ
とカクの手によって廃棄された。
それを不思議な声に導かれたアイスバーグが船の墓場的な〝廃船
島〟で発見し、その声に突き動かされるように修理した。
そしてメリー号は、誰に操船されるでもなくエニエス・ロビーへと
現れる。
﹂
一味を乗せて海兵達の手を逃れ、全ての力を使い果たして、今、こ
こに別れの時。
﹁メリー、海底は暗くて寂しいからな。おれ達が見届ける
松明の火が移されメリー号の船体が燃えていく。
空からは雪。
度に彼らにその思い出を蘇らせる。
﹃これで海賊船ゴーイングメリー号のでき上がりだ
││始まりは五人。
ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、スター。
﹄
その雪はまるでメリー号の記憶が詰まっているかのように、触れる
!
る海上レストラン・バラティエへと向かった。
いた岩場を破壊し、少し揉めてから、彼らの情報でサンジの職場であ
その試し撃ちにより、ゾロの弟分であるヨサクとジョニーが休んで
﹃バカめ。おれに貸してみろ﹄
﹃大砲の練習だよ。せっかくついてるし﹄
く事で完成した。
貰ったその船は、絵心のないルフィに代わり、ウソップが海賊旗を描
ウ ソ ッ プ の 故 郷 で あ る シ ロ ッ プ 村 の お 嬢 様 カ ヤ か ら お 礼 と し て
!!!
168
?
﹃ルフィ達とは短いつきあいだったけど、けっこう楽しかった﹄
けれどまだ仲間ではないと、自分に関する困難を相談する事もな
行ってくる
﹄
く、ナミが船と宝を持ち逃げするが││それに纏わるアレコレも解
決。
﹃じゃあね、みんな
!!!
んだ時だ。
グ ラ ン ド ラ イ ン
レッ
偉大なる航路
ド
ラ
イ
﹄﹄﹄﹄﹄﹄
﹃ズルイぞ、スター でも、ダメだぞ
﹄
ン
!
﹃む⋮⋮。わかったぜ。││だったら、メリー号で空に行く方法を考
間だろ﹄
﹃まったくルフィの言う通りだぞ、スター。メリーだっておれ達の仲
でやるんだからな
おれ達の航海は、メリー号
決 定 的 に そ れ を 感 じ た の は 〝 突き上げる海流 〟 で 上 空 1 万 m を 飛
ノックアップストリーム
その時にはもう自分に限界が近づいている事を。
⋮⋮でも、わかっていた。
それでもいつまでも続いて欲しいと思ってしまう時間。
友情も、つき合った時間が全てではないと知った。
そこでの仲間との別れは悲しかったけれど、仲間との絆も、友との
つだ。
仲間の危機を、アラバスタ王国を救った事は船にとっても自慢の一
冬島で見た桜は美しかった。
その先の島で出会った二人の巨人は誇り高く勇ましかった。
彼らの〝夢〟に感化されて、船もまた〝夢〟を持った。
││仲間は少しずつ増えていき、船も喜ぶ。
の仲間であるビビ⋮⋮ミス・ウェンズデーやカルーを乗せた。
ンテンを越え、双子岬で巨大なクジラ、ラブーンと約束を交わし、後
偉大なる航路へと続く││〝赤い土の大陸〟にあるリヴァース・マウ
グ ラ ン ド ラ イ ン
﹃﹃﹃﹃﹃﹃行くぞ
!!!!!!
なった麦わらの一味は、吹き荒れる嵐の中、船を出す。
ル フ ィ と ス タ ー が 賞 金 首 に な っ た 事 で 海 軍 に も 追 わ れ る よ う に
賊王が処刑された町ローグタウンへ。
船はナミとサンジと、ナミの故郷のみかんの木を新たに乗せて、海
!!!
!
!
169
!!!
﹄
えないとだな﹄
﹃おう
彼らの言葉が嬉しくて、見事にそれを成功させたけれど、その船体
はもうどうしようもなくボロボロだった。
それでもまだ止まるわけにはいかなかった。
その〝夢〟を託す相手が見つかるまでは││絶対に船の形を維持
しなければならないのだ。
意志は形となり、船は、メリー号は止まらない。
そんな中で海軍本部〝大将〟と突然の邂逅⋮⋮〝輝き〟が失われ、
決闘が行われ、〝闇〟が彼らを追い詰めていく。
自分だけ動けずにいる場合ではないと、船は最後の力を振り絞っ
た。
幸いにもそこは世界一の船大工達が集まる島だった。
〝夢〟を託せる存在は必ず現れる。
たとえ、自分がここで力尽きたとしても、彼らの〝夢〟を叶える手
伝いをするという〝夢〟は、その存在が担ってくれるはずだ。
そこに疑いなんてない。
こんなにも自分が大好きな彼らなのだから、きっとその存在も彼ら
を好きになる。
大好きになる。
⋮⋮でも、それでも、できる事ならば自分がそうしたかった。
[ご め ん ね。│ │ も っ と み ん な を 遠 く ま で、運 ん で あ げ た か っ た
⋮⋮]
﹁え﹂
﹂
﹁声が⋮⋮﹂
﹁メリー
﹁ごめんっつーなら
おれ゛舵ヘタだか
そ
帆 も 破 っ た 事 あ る し
おれ達の方だぞメリー
お 前 を 氷 山 に ぶ つ け た り よ ー
﹂
ゾロもサンジもアホだから゛いろんなモン壊すしよ
らよー
よー
!!!
のたんびウソップが直すんだけど、ヘタクソでよォ
!!!
!
!
!
[⋮⋮ごめんね。ずっと一緒に冒険したかった。だけどぼくは]
!!?
!
170
!
!
涙を流し、鼻水を流し、涎を流し、ルフィが叫ぶ。
ルフィだけじゃない。
麦わらの一味はおいおいと泣いた。
顔には出さないようにしている者だって、本当は泣き叫びたかっ
た。
全員がそう思っていなければ、こんな奇跡が起こるわけがない。
﹁だから││ごめんっつーなら⋮⋮﹂
﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂﹂
[だけど、ぼくは幸せだった]
﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁﹁
[今まで、大切にしてくれて、どうもありがとう。ぼくは⋮⋮本当に
⋮⋮幸せだった⋮⋮]
全身を炎に包まれて、ゴーイングメリー号はその命を終えた。
その最期の一瞬に││自分の名前を叫ぶ仲間達の声を聞きながら、
メリー号はちょっとだけ未来を視た。
まるで太陽をデフォルメしたようなライオン頭の船首。
いなくなってしまった悲しみは胸に、素直にその完成を喜ぶ麦わら
の一味の姿。
[ねえ、きみ⋮⋮頼んだよ。ぼくの大切な仲間達を⋮⋮ぼくの〝夢
〟をきみに託す⋮⋮。だから、きっと見届けて欲しいんだ⋮⋮彼らが
〝夢〟を叶えるその瞬間を⋮⋮]
∼∼中略∼∼
時間は流れていく。
エニエス・ロビーから脱出した者達は誰もがウォーターセブンへと
戻って来ていた。
〝アクア・ラグナ〟の影響で壊れた街を、ガレーラカンパニーの職
人達が中心になってトンテンカンと修復する音を背景に、フランキー
171
!!!
その〝宝樹〟でもう一度だけ どんな海でも乗り
は麦わらの一味に頭を下げていた。
﹁おれの夢は
だから││完成し
﹂
るよりも早く、出会い、助けた少年で、その時は気弱で泣き虫でダメ
コビーは││ルフィにとって一人目の仲間であるゾロを仲間にす
来事だったようだ。
た〝コビー〟と〝ヘルメッポ〟⋮⋮コビーとの再会の方が嬉しい出
まぁ当のルフィにとっては、それらの情報よりも、海兵として現れ
〟⋮⋮〝モンキー・D・ドラゴン〟であるとかだ。
るとか、ルフィの実の父親が〝世界最悪の犯罪者〟とされる〝革命家
ら帽子〟を預けた海賊〝赤髪のシャンクス〟が〝四皇〟の一人であ
たとえばルフィの命の恩人であり、ルフィが大切にしている〝麦わ
く。
ず、世間話││と見せかけて重要な情報を天然でいくつもこぼしてい
だが、孫に厳しくも甘いガープは、ルフィを捕まえるような事はせ
かつてあの〝海賊王〟を何度も追い詰めたという伝説の海兵。
⋮⋮ルフィの祖父であった。
のかと思えば、なんとその〝中将〟の名は〝モンキー・D・ガープ〟
当然のように、あんな事をしでかした麦わらの一味を捕まえに来た
れる。
かしウォーターセブンに不穏な影⋮⋮海軍本部〝中将〟の軍艦が現
一味がフランキーのそんな頼みに、航海が続けられると喜ぶ中、し
と言う。
に入っていたフランキーは、その樹で造った船に乗っていって欲しい
アダム〟の材木を買う事に使われており、すっかり麦わらの一味を気
その2億ベリーは世界にたった数本だけ存在する最強の樹〝宝樹・
買い物をした。
一連の事件の前、フランキーは麦わらの一味から2億ベリーを盗み
たらお前ら、おれの造ったその船に乗ってってくれねェか
越えていく〝夢の船〟を造り上げる事なんだ
!!! !!!
ダメだったが、ルフィとの出会いで本来の夢である海軍に入り、その
後ガープに見出されて鍛え上げられた。
172
!!?
!!!
今では身長と共に背筋も伸び、はっきりと喋り、面影と呼べるもの
は額のメガネくらいだ。
ちなみにヘルメッポは当時イヤな奴で、ゾロが放し飼いの飼い狼を
斬った事を理由に、ゾロを磔にしたりした男だが、その時の戦いで海
軍支部大佐という親の七光りも失い、コビーにも存分に感化され、共
にガープの下で鍛えられていた。
だが、そんな奴だったために、麦わらの一味の中で知ってるはずの
ン
この偉大なる航路の⋮⋮
グ ラ ン ド ラ イ ン
後半の呼び名を知って
ルフィとゾロの印象も薄く、おまけ扱いだったりする。
﹂
ラ
イ
﹁ルフィさん
ド
ますか
﹂
レッ
!
に呟いた。
﹂
﹁次の時代を切り開く者達の集う海
││〝海賊王〟です
その海を制した者こそが
!
僕らきっとまたそこで会いましょう 今度は僕は
もっともっと強くなって
!
﹂
僕はいつか、海軍
〝大将〟の座についてみせます
あなたを捕まえる
の⋮⋮た⋮⋮
!
麦わらの一味は誰もがそれと同等か、それ以上に困難な夢をその内
だがその夢をバカにしたり、笑うような者はこの場にはいない。
せて謝った。
が、その夢の大きさや困難さに、叫んでから、かつての気の弱さを見
コビーはその雰囲気にも感化されたのか、勢いのままにそう叫ぶ
!!!
!
﹁ルフィさん
一緒になって聞いていた一味の者達も知らず口角が上がった。
所に近づいているという実感もあって、ルフィはもちろん、その話を
海賊の頂点を示すその言葉の引力は〝新世界〟以上に強く、その場
!!!
!
が、同じくその場所に夢を懸けるルフィには感じられ、確かめるよう
しかしその言葉に籠められた力や、夢を懸ける者達の多さ、その姿
﹁新世界⋮⋮﹂
口にしてしまえばただの言葉。
つの名前でこう呼ぶんです。││〝新世界〟﹂
﹁赤い土の大陸の向こう側に広がる、その最後の海を、人は⋮⋮もう一
﹁
?
!
!
!!!
173
?
おれと戦うんだろ
だったらそんくらいなれよ 当
﹂
﹂
!
に秘めているからだ。
﹂
﹁コビー
然だ
た⋮⋮〝大将〟ですよ⋮⋮
泣き虫なコビーはまた泣いた。
﹁今度会ったら、おれ達はもっと強ェぞ。もっとスゲェ
﹁⋮⋮
?
キャプテンが一味を抜けた
﹂
?
なんで
﹂
!!?
起きており、それがウソップを決断させた。
⋮⋮はぁ
!!?
その一部始終を振り返ってみる││。
﹁
?
しかしそのウソップの処遇について、麦わらの一味内でも一悶着が
などと悶々と悩み続けて⋮⋮現在に至る。
ここはあいつらがおれを迎えに来るべきじゃねェのか
わりじゃねェか。⋮⋮いや、だけどおれは間違ってなかったはずだ。
だ。メリーの事だって決着がついた。おれが頭を下げればそれで終
﹁くそ⋮⋮っ、何やってんだおれは。スターもロビンも戻ってきたん
男ウソップ。
フランキーが頭を下げた一方で││素直に頭を下げられずにいる
∼∼中略∼∼
前に立ち塞がる、そんな予感が。
いずれ〝海軍最高戦力〟の一人となった、コビーが麦わらの一味の
けれど、泣きながら強くなるというコビーの姿に予感もあった。
!!!
?
!
もそも一味を抜けている事を知らなかったスターが驚いた事からそ
れは始まった。
﹁⋮⋮ははーん。これはアレだな。ドッキリだな あっ⋮⋮しまっ
あまりにわかり易いドッキリだったからツッコんでしまった
?
﹂
ここは素直にダマされた振りをするべきだったか⋮⋮
ドッキリじゃないならなんだよ
?
﹁いや、ドッキリじゃねェ﹂
﹁あぁ
﹂
サプライズか
!
た
!
?
!
174
!!! !
ウソップが謝る練習をしているのを見たというサンジの言葉に、そ
!!?
!
﹁言 葉 の 問 題 じ ゃ ね ェ よ。ウ ソ ッ プ は 確 か に 一 度 一 味 を 抜 け た。ル
﹂
フィに決闘を挑んで敗けたんだ﹂
﹁決闘
﹁お前とメリー号のためだスター。お前を見捨てる行動は正しかった
のかどうか。もう走れないと診断されたメリー号と別れるのが正し
キャプテンはおれさまや
いのかどうか。ウソップはどちらの決断にも異議を唱えた﹂
﹁それはキャプテンのせいじゃねえだろ
﹁じゃあ、どうしろってんだよ
﹂
てのはそんなに簡単な事じゃねェんだ
﹂
﹂
にしようってんなら、それはおれが絶対に許さん
一味を抜けるっ
えて、決闘まで挑んで敗けたんだ。ケジメの一つもつけず、うやむや
﹁⋮⋮どっちが正しかったかじゃねェ。一味の重大な決断に異議を唱
サンジの説明に反論するスターにゾロが続けるように口を開く。
メリーの事を考えてくれたってだけだ
!
!
!!!
!!!
ゾロの言葉は何も間違いではなかった。
うな男を、この先おれ達が信頼できるハズもねェ⋮⋮
・
・
﹂
・
れ以外ならもう奴の帰る場所はない。こんな事を気まぐれでやるよ
・
﹁簡単な話だ⋮⋮ウソップの第一声が深い謝罪であれば、よし⋮⋮そ
?
と簡単にキレた。
キャプテンが気まぐれで決闘を挑んだって
?
﹂
⋮⋮あぁ、確かに言葉が悪かったかもしれねェがそういう事
﹁気まぐれ
﹂
しかし⋮⋮それはそれ、ゾロのその言葉選びにスターはカチーン
なぁ〟で済ますわけにはいかない。
だというのに、今回ウソップはそれに異議を唱えたのだから〝なぁ
たんだという暗黙の了解でもあった。
海賊団に入るという事は、その決断を船長に委ねてもいいと判断し
る。
普段はどうあれ、重大な決断は絶対的に船長に委ねられるべきであ
ものだ。
日常的な航海も戦闘も、海賊生活はなんであれ命を懸けて行われる
!
175
?
じゃねえ。おれ達がやってんのはガキの海賊ごっこじゃねェんだ
﹁あ
?
!
!
?
誰よりも命を懸けてる
﹁何言ってんだお前。キャプテンは一味の中でナミかキャプテンかっ
てくらいに最弱争いをしてるんだぞ
!
﹂
ごっこだって
﹂
奴が取った行動が問題だって
!!?
入るが、やはりその程度では止まらない。
弱いからって、低く見てんじゃねェだろうな
︶﹂﹂﹂
いって意味なら、お前の方向音痴の方が問題だ
﹁﹁﹁︵言っちゃったー
﹂
!!!
!
内心で納得する者達も出る中、ゾロもその言葉にカチン
!!!
とス
おれは方向音痴じゃねえ。いつもお前らの方がはぐれて
イッチが入る。
﹁あぁ゛
!
ぶっちゃけ足手まと
ゾロ、お前。キャプテンが
﹁おれさまにとって今大事なのは言葉の方だ
ウッカリでも勢いで
その時のルフィとウソップのように熱くなる二人に、サンジが間に
まるで焼き直し。
どね⋮⋮うぅ﹂
﹁というか、さり気に私も巻き込まれたんだけど。いや、本当の事だけ
﹁お、おいおい、落ち着けよ⋮⋮なんでお前らが言い争ってんだよ﹂
言ってんだ
﹁だから言葉の問題じゃねェんだよ
決闘を挑んで、それを気まぐれ
だから普段は小賢しい手だって使う そのキャプテンが正面から
!
!
!
?
もそんな言葉が出てくる事が許せねェ
!
?
﹁バ カ か。ど う み て も お 前 が は ぐ れ て ん だ よ。お 前 が ど れ だ け 強 く
﹂
なっても、一人じゃ集合場所に辿り着けないとか、それが運任せな時
点で、よっぽど問題だろうが
﹂
?
カなら問題ねェはずだ﹂
﹁なるほどな⋮⋮。そのケンカ││買った
﹂
﹂
﹁ああ、売ってる この状況で決闘はさすがに問題だろ。でもケン
﹁⋮⋮おい、スター。そりゃお前、おれにケンカを売ってるのか
!!!
そして、二人のケンカは始まった。
!!!
!
なんだか街の方が騒がしいな
?
﹁なんだ⋮⋮
?
176
!
んだろうが﹂
?
そのケンカの原因であるウソップは、そんな事が起こっているとは
知らず、街の││普段の喧騒とはまた別の騒がしさに首を傾げた。
その状況の理由を探してキョロキョロと周囲を見回すウソップに、
あんたも止めてくれよ
あん
固まって何やら立ち話をしていた数人の男が、その鼻に気づき声をか
ちょうどいい
﹂
!
!
けてくる。
﹁おお、あんた
﹂
たの仲間がケンカしてんだよ
﹁は
!
!
﹂
﹂
?
た。
﹂﹂
﹁スター
﹁﹁
ゾロ
﹂
!!!
!!!
る。
﹁おれが悪かったーーー
お前だって
ごめーーーん だから、おれのために
かと頭を悩ませていた一味も、全員が現れたウソップの事を注視す
りはなく、その二人だけじゃなく、その二人のケンカにどうしたもの
とはいえ、技や能力を駆使したかなりマジなケンカである事に変わ
だった。
む し ろ 後 で 感 謝 さ れ る か も し れ な い 清 々 し い ま で の 破 壊 っ ぷ り
ていたために実際の被害は出ていない。
人の最大限の配慮によって、解体指定がされている家屋の周囲で戦っ
二人のケンカにより、その周囲の家屋が破壊されているが、実は二
を止めた。
見えるかもしれない、かなりマジなケンカをしていた二人はその動き
息を切らせながら現れたウソップの叫びに、傍目には殺し合いにも
!!!
場所は騒がしさが増す方向に走ればいいだけだからすぐにわかっ
その言葉に衝撃を受けたウソップは、反射的に走り出した。
﹁
扱いで対立したとかいう話だぜ
ところだけど、殺し合いだよ殺し合い。なんでも帰って来ない仲間の
﹁いや、ありゃケンカなんて生易しいもんじゃねえ。おれも見て来た
?
ケンカすんのはやめろォ ルフィもごべーーーん
!!!
!!!
!!!
177
!!!
!
辛かったはずなのにおれ゛の意見ばっかり押しつけた
﹂
ウソップは現れると同時に物凄い勢いで土下座をした。
自分のせいで、スターとゾロが本気で戦ってるのだとその光景を前
﹂
で も さ
ロビンもごめーーーん おれ
イ ヤ な 気 分 に さ せ た
チョッパー
に思ったウソップは、見栄や誤魔化しを入れる余裕もかなぐり捨て、
謝った。
﹁ウソップ⋮⋮
サンジ
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
﹁ナミ
の事で迷惑かけた
﹂
こ ん な お
!!!
お前が仲間じゃないなんて事があ
おれをお前らの仲間に入れてくれ゛ェ
ウソップ
でだけど、もう一度
﹂
﹁││バカ野郎ォ
るか
!!!
そりゃわかるだろ。おれは方向音痴じゃねえ﹂
うなったんだ
前はルフィの方がそういう感じだった気がしたん
﹁⋮⋮いや、そこはべつになんの脚色もない本音だぞ。お前なんでそ
﹁あ
﹁それにしても、よくおれさまのドッキリ作戦がわかったな﹂
フッ⋮⋮なんて笑ったりもした。
そ う し て お 互 い に 謝 れ ば、二 人 の 間 に わ だ か ま り は な く な っ て、
﹁そうか﹂
﹁だと思った﹂
も悪かった。あの言葉は本当につい言っちまっただけだ﹂
﹁ああ、知ってる。お前がこの状況を作りたかった事は。それとおれ
た﹂
るのは知ってる。ただ、ちょっとムカついて⋮⋮ちょっと利用もし
﹁⋮⋮おい、おれさまも悪かったな。ゾロがキャプテンの事を認めて
まずスターが口を開く。
ケンカする理由がなくなったと武器を収め、視線を逸らしながらも
た。
とゾロの二人は、互いに呟き、その呟きに互いに気づき視線を逸らし
ウソップの謝罪とそれを受け入れるルフィの姿を見届けたスター
﹁﹁⋮⋮⋮⋮なら、よし﹂﹂
!!!
!!!
!!!
!
?
178
!!!
!!!
!!!
!!!
!!!
!!!
!!!
!!!
?
だが﹂
それともアレか
星の事ばっか考えすぎて、お前が地面の歩
﹁おい、だから冗談はよせよ。おれは方向音痴じゃねえっつってんだ
ろ
﹂
き方を忘れたのか
﹁って、おいーーーっ
﹂
おれが戻ってきて大団円の流れじゃねえの
なんでお前らまたケンカしてんだ
扱いだったり、いろいろとツッコミどころはあったが、注目するべき
まるで呪われたような落書き顔になっていたり、チョッパーがペット
一味の全員が賞金首になったのも然る事ながら、サンジの手配書が
││麦わらの一味の手配書が更新された。
〝 鉄 人 〟フランキー:4400万ベリー。
サイボーグ
〝悪魔の子〟ニコ・ロビン:8000万ベリー。
〝わたあめ大好き〟チョッパー︻ペット︼:50ベリー。
〝黒足〟のサンジ︻写真入手失敗︼:7700万ベリー。
77ベリー。
〝輝き〟のプトレマイオス・E・T・スター:1億7777万77
〝狙撃の王様〟そげキング:3000万ベリー。
〝泥棒猫〟ナミ:1600万ベリー。
〝海賊狩り〟のロロノア・ゾロ:1億2000万ベリー。
〝麦わら〟のモンキー・D・ルフィ:3億ベリー。
[手配書更新]
∼∼中略∼∼
がつけば、誰もが笑い合う場になっていたのだった。
ぎは宴へと変化しており、街の者達も巻き込んで││そう、本当に気
ソップは普通に巻き込まれ、しばらく続いた後に、気がつけばその騒
そのケンカは今度は素手で行われたが、なぜかルフィも乱入し、ウ
かよ
?
!!?
﹂﹂
﹁﹁⋮⋮⋮⋮アァ゛
?
!!?
は同じく手配される事になったフランキー。
179
!!?
?
?
どういう経緯を辿ったのか、主犯とされるその九人以外の手配書が
更新される事はなかったが、フランキーは麦わらの一味以外で唯一手
配を免れなかった。
その事実に、フランキー一家の者達は一味に対して、フランキーも
一緒に連れて行ってくれないかと頼んできた。
初頭手配からなかなかの賞金額⋮⋮このままウォーターセブンに
いても自分達は足手まといになるし、何よりもフランキー自身が心の
中ではそう望んでいると感じたが故の頼みだった。
ゴーイングメリー号の遺志を継ぐ船、〝サウザンドサニー号〟は完
成した。
メリー号の2倍はある船体に、太陽をデフォルメしたようなライオ
ン頭の船首、芝生の甲板、みかんの木。
他にも鍵つきの冷蔵庫や、巨大オーブン、水族館仕様の生け簀⋮⋮
それ以外にも数々の秘密機能を備えたまさしく〝夢の船〟。
しかし、それを受け渡す場にフランキーの姿はなかった。
アイスバーグによると、面と向かって〝船大工〟として誘われれば
断れる自信がないからだろうとの話だった。
〝船大工〟⋮⋮もともとウォーターセブンに来る前、海軍本部〝大
将〟青キジとの邂逅前に、麦わらの一味が求めていた仲間だ。
そして、船長であるルフィ自身も、すでに〝船大工〟としてフラン
キーを引き入れると決めていた。
故にその後はフランキーを仲間に引き入れるために、ウォーターセ
ブンの街中を巻き込んだ本人達的には真剣なのであろうバカ騒ぎが
巻き起こされた。
最初にフランキー一家の者が、フランキーの愛用の海水パンツを奪
い、それをフランキーは下半身丸出しのままで追いかける。
海水パンツは次々に別の人間の手に渡り、それは麦わらの一味の手
に託された。
最後にサウザンドサニー号の上で、フランキーの海水パンツを手に
したルフィは言う。
180
﹁フランキー
船
ありがとう
返して欲しけりゃ、おれ達の仲間になれ
﹂
!!!
よって握り潰されたせいとして叫ぶ。
﹁⋮⋮てめェら、おれがいなくて⋮⋮生きていけんのかよ⋮⋮
!!!
おれ達⋮⋮力合わせて立派に受
!
も
!!!
おれ達ァ、一生あんたの子分ですからね
﹂
け継いでみせますとも たとえアニキがどんなに遠くへ行こうと
﹁ウォーターセブンの裏の顔⋮⋮
﹂
その涙を、強硬手段と曝しっぱなしの二つの玉をロビンの能力に
生きて欲しいなどと言われれば、嬉しくて寂しくて涙が出る。
だが、その兄弟子やファミリーから、これからは自分の夢のために
リー。
り た い と 思 っ て い る 兄 弟 子、そ し て フ ラ ン キ ー 一 家 と い う フ ァ ミ
師匠であるトムとの記憶、それに対する償い⋮⋮本当は手伝ってや
ウォーターセブンにはフランキーの全てがあった。
だが、フランキーは頷かない。
ら突き刺さった。
それは無茶苦茶な誘い文句だったが、フランキーの心には真正面か
﹁このパンツ
﹂
最高の船だ、大切にする
!!!
﹁⋮⋮ああ、お前らの旅の無事を祈ってる﹂
!
!!!
・
・
・
﹂
ルフィはその光景に手に握りしめていた海水パンツに気づき、フラ
ンキーに投げる。
・
おれの船に
!!!
世話してやるよ
サイボーグ
!!!
こうして⋮⋮麦わらの一味に、また一人新たな仲間が加わったの
〟となるその瞬間を見届ける事。
偉大なる海の││〝海の果て〟へと到着するその時を、真に〝夢の船
グ ラ ン ド ラ イ ン
夢は、自らが考える最高の船が完成したら、その船に乗り込んで、
!!!
せに生意気だと笑った。
﹁仕方ねェ
﹂
おめェらの船の〝船大工〟 こ
その言葉にフランキーは涙を拭うと、ハリボテ修理しかできないく
﹁さァ乗れよ、フランキー
!!!
!!!
本名カティ・フラム⋮⋮〝 鉄 人 〟フランキー。
のフランキーが請け負った
!!!
181
!!!
!!!
!!!
もう本当に涙が止まらないフランキー。
!!!
だった。
∼∼中略∼∼
〝砂の国〟アラバスタ王国││。
﹂
麦わらの一味の手配書が更新され、その報せは今は船にいない仲間
なぜ、ミス・オールサンデーが
!
の下にも届いた。
﹁ニコ・ロビン⋮⋮
﹂
!!?
は違った。
﹁あ、その話、知ってるけど⋮⋮なんとも﹂
あ⋮⋮あなたが一番ショックなのではと
!
カルー﹂
﹁クエーッ
﹂
⋮⋮ただし、彼らのやる事は⋮⋮全て⋮⋮信じら
れる。きっと私もその場にいたら同じ事をしていたと思うわ。ね
考えるだけムダ
﹁⋮⋮ふふふ、ルフィさんの頭の中は近くにいたってわからないのよ。
﹁なんとも
﹂
達は、どよどよとその情報に踊らされてザワついているが││彼女達
それはアラバスタを出てからの事だったので、事情がわからない者
﹁ビビ様のお耳に入れたら⋮⋮さぞ悲しまれる事だろう﹂
﹁なぜルフィ君達の一味にいるのだ⋮⋮
!!?
﹁それはまた⋮⋮﹂
ス
ター
彼らの船には〝海賊王〟と〝大剣豪〟と〝世界
!
が乗っ
ビビのそんな言葉にビビの父親で国王のコブラや、護衛隊長である
に来た時に笑われる事になるわ﹂
らいにしてみせないとね。それくらいじゃないと彼らがまたこの国
﹁うん、だから⋮⋮私もアラバスタを〝世界最高の国〟と呼ばれるく
﹁ウ∼ム⋮⋮なんと寛大
?
大人になられましたな∼、ビビ様⋮⋮﹂
てるのよ。私達とはスケールが違うの﹂
オールブルーを見つける〟人と〝万能薬〟になる⋮⋮人
地図を描く〟人と〝勇敢なる海の戦士〟と〝世界一の有名人〟と〝
﹁ふふ、知ってる
同じく羽を上げて、力強く頷く超カルガモの姿に、ビビは笑った。
?
!
?
182
!!?
!
イガラムがうんうんと喜ぶが││不意にイガラムが思い出したとビ
ビに尋ねる。
﹂
﹁あ、そういえばビビ様⋮⋮﹂
﹁何
﹂
﹁アラバスタの復興資金の中に若干の用途不明金があるのですが⋮⋮
何に使われているか知っていますか
書にデコピン一つ。
﹁はーっはっはっはっはっはっ ﹂と高笑いをする海賊の新たな手配
ビビにとっては悩みの種であった。
しかし、どうにも最近隠せないレベルにまで広がりつつある事が、
た。
ブがあるなどという事実は、基本的に隠さなければならない事だっ
アラバスタ王国にB・Wとは全く別の裏の顔⋮⋮海賊のファンクラ
﹁うむ⋮⋮なんの問題もないな﹂
﹁そ、そう⋮⋮利益を上げてるならよかったじゃない。ねえ、お父様﹂
額の利益も上げているようなので、把握しておきたいのですが﹂
﹁そうですか。国王様もそう仰られておりまして。なぜかそれなりの
﹁⋮⋮し、知らないわ﹂
をコブラへと向けながらに誤魔化した。
ビビはぎくりとイガラムから視線を逸らすと││つつーっと視線
?
く。
その海賊達は││新たな仲間、サウザンドサニー号に乗って海を行
のにと、ビビはもう一度深く溜息を吐いた。
これで利益とか何も出てなければ、普通になんの問題もなく切れる
!
風は追い風、一行は一路、海底にあるという〝楽園〟⋮⋮〝魚人島
〟を目指す
!!!
183
?
ロ グ ポー ス
グ ラ ン ド ラ イ ン
第19話・ホラーステージ
マーメイド
〝記録指針〟に従って、偉大なる海でも名スポットとされる、世に
も美しい人 魚 達が住む島、魚人島へと向かっていた麦わらの一味。
フロリアン・トライアングル
だがその前に立ち塞がるのは、毎年百隻以上の船が消息不明になる
という〝 魔 の 三 角 地 帯 〟。
それがただの海の迷信の一つだと笑い飛ばせればどれだけよかっ
ただろうか。
し か し、あ あ し か し ⋮⋮ 今 思 い 返 せ ば、実 は 人 魚 だ と か 言 い 出 す
シップ
ジュゴン体型のココロばーさんの言葉からして、一味はもうホラーな
世界に憑りつかれていたのかもしれない。
﹁ヨホホホ∼∼∼⋮⋮♪ ヨホホホ∼∼∼⋮⋮♪﹂
霧は深く、周囲は不気味なほどに薄暗い。
その中で一味の前に現れたのは、舟歌を歌う一隻のゴースト 船。
﹁だから歌の大会じゃねェんだよ
﹂
シップ
みんな、耳を塞
﹂
!!?
ぶるウソップ││その視界に、他の者達の視界にもだが、サウザンド
サニー号より高さのあるその甲板の縁から見下ろす存在の白い姿。
﹁ビンクスの酒を⋮⋮♪ 届けに⋮⋮ゆくよ⋮⋮♪﹂
目は落ち窪むどころかなくて、頬も痩せこけるどころか剥き出し
で、アフロ毛でシルクハットを被った動くガイコツ。
﹁⋮⋮死後の世界からの挑戦者か。はーっはっはっはっはっはっ
!
184
帆も船体も戦闘痕に加えて、見るからに年月が重ねられてボロボロ
なのに、変わらずに海を漂っているその姿は、まさしくゴースト 船と
呼ぶに相応しい。
﹁ほぉ⋮⋮おれさまの前で歌うとは。どうやら、おれさまに対する挑
戦者のようだ﹂
﹂
││ハッ
﹁ど、どど、どこをどう見たらそんなポジティブな思考になれるんだよ
シップ
悪霊は道連れを求めてる
!!!
か、完全にゴースト 船だろうが
げ、呪われるぞ
!!!
﹁安心しろキャプテン。おれさまの歌に敗北はない
!!!
そんな状況でも変わらずのスターの襟首を掴んでガクガクと揺さ
!!!
!!!
!!!
いい ついにおれさまの名前は死後の世界にも届くようになった
﹂
﹁しししし
悪霊
﹂
!
だって、面白そうな奴じゃねェか
﹂
スターといい、ルフィといい、なんでお前
悪霊だぞ
!
﹁悪霊にも希望を与えてこそのスターだ﹂
らはそうなんだ
!!?
ウソップというか、一味の者達は悟った。
!
﹂
!!!
フロリアン・トライアングル
ただ、ブルックはすぐに蘇れば、おそらく皮も肉もある人間として
得ない。
人もいる上に、こうしてその存在を目にしてしまえば受け入れざるを
無茶苦茶な話だが、麦わらの一味にもすでに個性豊かな能力者が四
蘇った〝復活人間〟というわけだ。
その能力は〝ヨミがえり〟であり、ブルックは数十年前に死んで
ブルックが食べた実の名前は〝ヨミヨミの実〟。
しな話だが、悪霊だとかではなく、悪魔の実の能力者だった。
ルフィが仲間に引き入れたブルックは、普通に││と言うのもおか
∼∼中略∼∼
だった⋮⋮。
フィは見た目紳士なガイコツ〝ブルック〟を仲間に引き入れたの
しかしその二人のお守り、ナミとサンジの存在の意味はなく、ル
﹁ええ、いいですよ﹂
﹁││そんな事より、お前、おれの仲間になれ
なので、二人のお守り役をくじ引きで決める。
可能だと。
とっくに知っていた事だが、こうなった二人の考えを変える事は不
!
!
﹁な・ん・で・だ∼∼∼
﹁よし、じゃあ、さっそくあいつに会いに行こう﹂
そして船長であるルフィの決定はもちろん││。
その存在に白目を剥いて泣き叫ぶウソップに、笑うスター。
か
!
蘇れたはずなのだが、死んだ場所が運悪くこの〝 魔 の 三 角 地 帯 〟で
185
!!!
あったために、〝魂〟の状態で自分の身体を見つけた時には白骨化し
ていた。
そうして誕生したのが骨だけブルック。
毛根が強かったおかげでアフロだけは残っていたが、それ以外は〝
影〟すらも存在していない。
﹁あ、私がガイコツである事と⋮⋮〝影〟がない事は全く別のお話な
のです﹂
││らしい。
ブルックは鏡に映らず、〝影〟もない。
その事実に気づいた一味はより一層驚くが、ブルックは逆に冷静に
なって語り出す。
〝影〟は数年前ある男に奪われ、そのせいで〝光〟ある世界で存在
できなくなったのだと。
〝光〟で地面に映るはずの〝影〟がないように、鏡や写真に写る事
身体。
波任せに揺られ彷徨う事⋮⋮数十年。
﹂
ようやく出会えた男には〝影〟を奪われ、状況は悪化。
だが、再びこうして出会った者達は、〝仲間になれ〟と自分を誘っ
ルックは言った。
〝影〟がなければ、太陽の下では生きられないし、一緒に冒険をす
る事は無理なのが目に見えているからだ。
だったらおれが取り返してやるよ ﹂
!!?
﹁何言ってんだよ水くせェ
そういや誰かに取られたっつったな、誰だ
!!!
!!!
186
もなくなり、〝直射日光〟を浴びでもすれば消滅してしまう。
人に逢えた
そんな散々な状況にあって、しかしブルックは陽気に笑った。
﹁今日はなんて素敵な日でしょう
!!!
舵の効かない大きな船に、悪魔の実の能力者であるが故に泳げない
!!!
人は〝喜び〟 私にとってあなた達
!!!
た。
﹂
﹁長生きはするものですね
は〝喜び〟です
!!!
けれど、一度は反射で応じたものの、やはり仲間にはなれないとブ
!!!
ルフィはそう言うものの、ブルックはその相手の名前を口にしな
い。
なぜならその〝影〟を奪った相手は、王下七武海の一人。
普通の人間、普通の海賊ならば、絶対に避けて通るべき巨大な力を
持つ存在なのだから。
∼∼中略∼∼
しかし、サウザンドサニー号はその島に囚われた。
シップ
アイランド
ブルックから〝影〟を奪った王下七武海の一人が住む屋敷がある、
ゴースト 船ならぬゴースト 島 ⋮⋮〝スリラーバーク〟。
一味に礼を言い、すぐに逃げろと一人スリラーバークへと降り立つ
ブルック。
だが、逃げろと言われて素直に逃げる事がたぶんない麦わらの一味
だ。
﹁ゴーストを捕まえて飼うんだ﹂と目を輝かせながら虫取り網を構え
るルフィを筆頭に、スリラーバークへと上陸するためにサウザンドサ
パドルシップ
ニー号の〝ソルジャードックシステム〟を起動して、買い物船〝ミニ
メリー2号〟を出動させた。
羊頭の船首を持った四人乗り蒸気機関〝外輪船〟。
まずは試し乗りと、島に行く事を拒んだナミ、ウソップ、チョッパー
の麦わらの一味弱気組と、まだもう一人乗れるのだからと乗りたがっ
たスターが乗った。
スターは〝スターシップ〟が出せるために、こういう機会でもなけ
ればあまり乗る事がないだろうからでもある。
﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂
しかしその四人⋮⋮というか操船を担当していたナミが、メリーの
似姿に浮かれすぎて、スリラーバークの岸へとウッカリ乗り上げ、そ
の勢いで周囲を取り囲む堀に落ちてしまう。
﹁ええ、言いたい事はわかってるわ。││そう、100%、私の過失だ
けど、かわいいから許してね﹂
187
﹁ハリ倒すぞ、てめェ
が発動。
﹂
とっとと戻ろうと言うウソップに、けれど今度はスターのワガママ
不幸中の幸い、スターがいるために彼らは空を飛べる。
ナミのまるで反省の色がない態度はともかく。
!!!
おれさまのバックを担当する予定のブルックの
﹁どうせすぐにルフィ達も来るんだし、せっかくだからこのままこの
﹂
島を冒険しよう
事も気になる
!
﹂
﹁却ーーー下
すぐにサニー号に戻るべきだと思う人、手を上げて
ソップは拒絶する。
しかし、ガイコツを仲間にするなんて冗談じゃないと怖がりなウ
次いで気になる様子を見せていたスター。
ブルックが自分を〝音楽家〟だと名乗っていた事もあり、ルフィに
!
を上げる。
﹁はい。多数決
﹁﹁結局それか
﹂﹂
としたらきっとあの屋敷よ
﹂
な不気味な島を彷徨うなんて冗談じゃないし⋮⋮何よりお宝がある
﹁⋮⋮はぁ。ならせめてあの屋敷を目指しましょう。アテもなくこん
意味もないのであった。
〝スターシップ〟がスターの能力である時点で、多数決などなんの
この状況でスターがいるといないでは、安心感がまるで違う。
引き止めた。
ターが一人いなくなるという最悪の事態に繋がりかけ、三人は必死に
我が意を得たりと丸め込もうとしたウソップだったが、その結果ス
﹁﹁﹁いや、それはちょっと⋮⋮﹂﹂﹂
てばいい﹂
﹁││じゃあ、おれさまが一人で行くから、三人はここでルフィ達を待
う結論が出ました∼﹂
おれを含めて3対1でサニー号に戻るべきだとい
ババッとウソップの言葉に、同じく怖がりなナミとチョッパーが手
!!!
!
!
!
188
!
﹁何よ、仕方ないじゃない。この状況で一番頼りになるスターがこれ
ってか、目もおかしいんだけどっ
﹂﹂
なんだから。私だって怖いけど、それならせめてお宝くらい手に入れ
ないと﹂
﹁﹁結論がおかしいっ
がある。
﹁うわっ
﹂
スター逃げろ
なんか追いかけてくるわよ
﹁コ、ココ、コウモリ人間だ
﹂
だが、そんな〝スターシップ〟をバサバサと必死に追いかけてくる者
そして、島の中央にある屋敷を目指して飛ぶ〝スターシップ〟││
〝スターシップ〟で空へと上がる四人。
すっかり目がベリーに変化していた。
ス タ ー の 考 え を 変 え ら れ な い と わ か っ た ナ ミ の 身 代 わ り は 早 く、
!!!
﹂
お れ さ ま の フ ァ ン か も し れ な い じ ゃ な い
!
!
﹁こんな場所にお前のファンはいねェ∼∼∼
か。いや、きっとファンだ﹂
﹁な ん で だ キ ャ プ テ ン
!
コウモリ人間は着地した。
﹁ひぃー、ひぃー、ま、まさか空飛ぶ船を持っているとは思いませんで
し た ⋮⋮。私 は ⋮⋮ 〝 ヒ ル ド ン 〟 と 申 し ま し。眼 下 に 見 え ま し お 屋
﹂
敷にて〝ドクトル・ホグバック〟様の執事をしておりまし﹂
﹁え⋮⋮ホグバック
そんなに有名な奴なのか
﹂
?
ソップが尋ねた。
﹁医者でその名を知らない奴はいないよ
!
奇跡のような手術で星の数ほどの人達の命を救ってきたんだ
!
〝天才外科医〟なんだぞ
それまでの怯えた表情から一転、目を輝かせる姿に、何事かとウ
﹁有名⋮⋮﹂
﹁なんだ
ヒルドンの口にしたホグバックという名前に反応するチョッパー。
!!?
医師達からの尊敬を集めてた⋮⋮
﹁星の数⋮⋮世界中⋮⋮尊敬⋮⋮﹂
﹂
!
189
!
?
絶叫するウソップの意見空しく、速度を緩めた〝スターシップ〟に
!!!
!!?
?
地位も名誉も医者として得られる全てを手に入れて⋮⋮世界中の
!
チョッパーのホグバックを称える言葉の数々に、スターが一々反応
し、その目にメラメラと炎を灯しているが、興奮しているチョッパー
は気づかずに話を続ける。
﹁だけど、ある日突然姿を消したんだ。失踪事件とも⋮⋮誘拐事件と
も言われて、医学界は一時大変な騒ぎになったけど、結局、なんの手
﹂
掛かりもつかめないまま、今はもう〝ホグバック〟という名前は伝説
になりかけてるよ﹂
﹂
ドクトル・ホグバックだろ
﹁伝説⋮⋮
﹁その
ておいででし﹂
﹂
﹁サイン頼んでもいいのかなー
﹁サイン
!!!
キュキュッとサインをした。
!
許さんぞホグバック
﹂
!
ホグバックは偉大な医者なんだ
﹂
!
﹂
こ の 島 に 住 む 不 思 議 生 物 達 の 人 気 は 全 部 お れ さ ま が
﹂﹂﹂
掻っ攫っていってやるぜ
﹁﹁﹁不思議生物
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂
ちらと目に入ってくる。
三人が目を凝らすと、ゴーストやら動く木やら、ゾンビやらがちら
た。
ヒルドンの事だろうかとそちらを見るが、スターは眼下を指し示し
スターの言葉にナミ、ウソップ、チョッパーの三人は首を捻る。
?
!
るべきだ
﹁ああ、そうかもしれないな⋮⋮。だが、人気はおれさまの方が上であ
﹁そうだぞ
﹁いや、ホグバックはべつに悪い事とかしてねェだろ﹂
ルになった
﹁ドクトル・ホグバックとやらは、今、この瞬間からおれさまのライバ
﹁わっ、な、何するんだよ、スター
﹂
スターは懐からマジックを取り出すと、チョッパーの顔面一杯に
!!!
﹂
﹁さいでし。ドクトルは今でもこの島で、人知を超えた研究をなさっ
!
!
!
!
!
190
!
﹂
無言のままに三人がぎぎぎ⋮⋮とヒルドンに視線をやると、ヒルド
ンは同じく無言で飛び去って行った。
﹂
!!!
ものっすごいなんかいた∼∼∼
!!!
﹁ちょっ⋮⋮せめて、なんか言っていってくれェ∼∼∼
﹂
﹁なんかいたァ∼∼∼っ
﹁ギャアアアアア
﹂﹂﹂
!!!
しまう。
﹁うおいっ
買収されるな同志達よ
﹂
﹂
こんな時こそ我々の特殊能
力〝何かがヤベーセンサー〟に問いかけろ
そんなウソップの言葉も││。
﹁おれさまがいるから大丈夫だ﹂
﹁そうね⋮⋮スターがいるなら⋮⋮﹂
スターのスター性の前に敗北。
﹁そうだな⋮⋮スターがいるなら大丈夫だよな⋮⋮
!!!
!
しかしその結束は、ウソップ一人を残してあっという間に崩されて
﹁ホグバック⋮⋮﹂
﹁お宝⋮⋮﹂
にそんな奴の屋敷ならきっとお宝もあるぞ﹂
﹁ホグバックとどちらがよりスターかハッキリさせないとだろ。それ
行動を三人は結束して止めにかかった。
〝スターシップ〟をぴるるるーっと下降させようとするスターの
﹁﹁﹁なんでそうなるっ
﹁⋮⋮よし。じゃあ、行くか﹂
泣き騒ぐ三人の様子を一人平静な顔で見るスター。
!!!
﹂
センサー〟が、スターのスター性を前に敗北するとは⋮⋮
がら恐るべしスター⋮⋮
仲間な
!
⋮⋮。
る場所であり、その背後には王下七武海の〝影〟があるという事を
その屋敷こそがこの島のゾンビやらの不思議生物を生み出してい
だが彼らはまだ知らない。
そうして四人は、その屋敷の中へと足を踏み入れる事になる。
!!!
191
!!!
﹁な、なんて事だ⋮⋮我々の危機を何度も救ってきた〝何かがヤベー
!
!!!
∼∼中略∼∼
よく来たな
我が屋敷へ
それ
!
﹂
﹁フォスフォスフォスフォス
でここへ何をしに来た
!
住んでる﹂
〟じゃねェか
﹂
・
・
・
そりゃあ全人類にとって永遠の〝夢
確かにゾンビと聞けば人は恐怖する。しかし〝死者の
﹁じゃあ、ドクトルは今ここでゾンビの研究をしているのか
﹁いかにも
!!?
﹁誰しも身近に生き返って欲しい人間の一人や二人いるはずだ⋮⋮
﹁⋮⋮﹂
﹂
﹁質問の答えならこうだ。おれはあれらが何かわからねェからここに
いて尋ねると、こう答えた。
せ、ナミやウソップがこの島に存在するゾンビなどの不思議生物につ
ホグバックも一応は四人を歓迎してくれているような素振りを見
い。
じみた体型の男だったが、そんな事でチョッパーの憧れは止まらな
ホグバックは玉のような胴体に細長い足、尖がった鼻や耳と、奇形
の下、ドクトル・ホグバックに会った。
屋敷の中へと入った四人は皿嫌いの使用人〝シンドリー〟の案内
!
でもその研究は成功すれば、喜ぶ
だからおれはこっそりと世間から姿を消し、この不思議な島で研
そういう事だったのか
究を続けている﹂
﹁そ
おれは応援してるぞ、ドクトル・ホグ
!
対面しても特に騒ぐ事もなく大人しくしている。
グバックと会うまではライバルだなんだと騒いでいたスターは、いざ
憧れの人物にドクトルなどと言われて喜ぶチョッパーをよそに、ホ
﹁柔軟だな。ありがとう。ドクトル・チョッパー﹂
バック﹂
人がいっぱいいると思うぞ
!
192
!
蘇生〟と言い換えるならば
!!!
││しかし、人の生死を操ろうなど、神をも恐れぬ邪道の医学⋮⋮
!
!!!
!!!
!
!
﹁⋮⋮
﹂
ああ⋮⋮なんかあいつからはいまいちスター性が感じられな
いていたらしいナミの声が響いてくる。
﹂
﹁スターの〝勘〟は正しいかもね﹂
﹁なんの話だ
﹁あんた達、屋敷の中をちゃんと見渡した
﹂﹂
屋敷はすでにゾンビだらけよ﹂
﹁﹁ヒィ∼∼∼∼∼∼
﹂
ていけるわけがない。││とにかく、今は気づかないフリをして、夜
る。あの男とゾンビ達に繋がりがなかったら、この屋敷や島で暮らし
﹁そうなると一番怪しいのはホグバック本人⋮⋮彼はウソをついてい
纏めるようにしながら言葉を紡ぐ。
わかり易く怯え出すウソップとチョッパーに、ナミは自分の考えを
!!!
廊下も部屋も⋮⋮この
ウソップがスターの言葉に軽く頷くと、風呂場の中でその会話を聞
な﹂
﹁ふーん、そんなもんか⋮⋮まァ、そもそもお前とはジャンルが違うし
要がなさそうだったんだ﹂
くてな。隠居してるせいかもしれないが、わざわざおれさまが競う必
﹁ん
たのに、会ってもべつに絡んだりしなかったな﹂
﹁そういや、スター。お前、ホグバックと会う前はいろいろ騒がしかっ
は覗いてみてェな∼﹂
﹁人間の女の裸には興味ないけど⋮⋮ドクトル・ホグバックの研究所
人はその護衛と、風呂場の前で待機していた。
││シンドリーが準備したという風呂にナミが入っている間、男三
案を受けた。
つといい⋮⋮どうせなら泊まっていけ﹂と提案し、四人もまたその提
そして話は進み、ホグバックは﹁その仲間が来るまでこの屋敷で待
ならいいかと放置した。
その様子にウソップは若干訝しむ様子を見せたが、静かにしている
?
﹁ど⋮⋮ど、どこにいたんだよっ
!!!
?
?
193
?
になったらここから逃げましょう﹂
そう締めくくったナミは、それからすぐに、何か困惑したような声
を上げ、沈黙。
しかし、わずかに争うような音も聞こえ││異常を感じた三人は風
﹂
呂場のドアを開けて中に踏み込む。
﹁ありがとうございます
﹂
!
きり殴る。
﹁〝スターパンチ〟
﹂
﹂
﹂
!!?
﹁ほぐあっ
なんだ今の声
何かいるのか
オーラ〟を部分展開した金色に輝く拳でナミの前の空間をおもいっ
を下げ、チョッパーがツッコむ中、スターはそれに気づき、〝スター
全裸で壁に張りついたようなナミの姿に、ウソップがきっちりと頭
﹁お礼言っちゃったよ
!!!
!!!
!!!
ターパンチ〟、〝スターキック〟⋮⋮﹂
﹂
〝スターダストビーム〟
﹁ちょっ⋮⋮まっ⋮⋮﹂
﹁トドメだ
﹁ほげェ∼∼∼っ
ばした。
﹁勝った﹂
﹁いや、何に
﹂
﹂
スター、お前いったい何と戦ってたんだよ
﹁それは知らん﹂
﹁知らないのに倒しちゃったよ
﹂
!!?
か
﹂
﹁と、透明人間
・
・
・
じゃあ、おれらの行動はずっと監視されてたって事
﹁〝透明人間〟よ⋮⋮もしかしたら何かの能力者だったのかも⋮⋮﹂
く││と事情を説明する。
ウソップがツッコんでいる間にナミが身体にタオルを巻き、おそら
!!?
!!?
最後にスターが撃ち出した星が、その誰かを風呂場の壁ごと吹き飛
!!?
!!!
﹁〝スターパンチ〟、〝スターパンチ〟、〝スターチョップ〟、〝ス
﹁えっ
!!?
!
!!?
194
!!?
﹁かもしれないわね⋮⋮スター、あんたどうして、透明人間が見えてた
!!?
の
﹂
﹁はーっはっはっはっはっはっ
﹂
たとえ透明になっても、おれさま
の〝スターアイ〟は誤魔化せない 空気の流れすらもおれさまは
見極められるのだ
!
リーね﹂
﹁﹁﹁うおいっ
﹂﹂﹂
﹁⋮⋮ ハ ァ ⋮⋮ ま ァ、い い わ。と に か く あ ん た 達。一 人 1 0 0 万 ベ
﹁スターは目立ちたがり屋だからなー﹂
﹁確かにお前とは対極に位置する存在かもな﹂
姿を隠すなんてバカな真似をする﹂
﹁しかし、透明になるなんておれさまには考えられないな。自分から
〟でその透明人間を凹り倒したのであった。
け具合や、湯気の流れなどを背景から読み取って、後はだいたい〝勘
空気の流れは若干誇張しているが、スターは床の水滴の不自然な弾
!
格的に動き始めた。
存在を認識した頃、その敵もまた、約4日ぶりの眠りから目覚め、本
ブルックの〝影〟を奪い返してやろうと思っているルフィが敵の
現在のルフィのそれすらも上回る実力者。
元懸賞金3億2000万ベリー。
リア〟。
を統べるのは〝影〟を奪った男⋮⋮王下七武海の一人〝ゲッコー・モ
スリラーバークは村一つを乗せた世界一巨大な海賊船であり、それ
リラーバークの情報を得る。
そして彼らはゾンビ似で〝影〟のない大ケガしたお年寄りからス
た。
現れたケルベロスもどきを従えて、襲いくるゾンビもブッ飛ばし
スター頼りの部分が大きい先行組に比べ、戦闘力極大の五人。
一方で、サニー号の五人も行動を開始していた。
隠し、絵の中や敷物から〝びっくりゾンビ〟が湧き出してくる。
││状況に気づき始めた四人⋮⋮ホグバックやシンドリーは姿を
!!!
時刻は午前0時⋮⋮モリアが従えるゾンビ達の〝夜討ち〟が始ま
195
!
?
る。
196
〝オーズ〟
第20話・太陽をありがとう
﹁はーっはっはっはっはっはっ
お前がどれだけ強
!!!
なぜならおれさまは飛べるからだ
﹂
!!!
﹂
中の様子が見たければ、中に入
しかし、そんな彼らの背後から掛けられる声││。
き見ていた四人。
ここからゾンビが生まれるのかと、その誕生の秘密をこっそりと覗
体を弄り、強靱に作り直していた。
さらにホグバックの研究所⋮⋮その中ではホグバックが死者の身
リーもまた、10年前に事故で死んで蘇ったゾンビである事を知る。
その中で見つけた隠し部屋にあった新聞記事で、使用人のシンド
しつつ、お宝を探す先行組。
ナミの指揮の下にびっくりゾンビを││主にスターが返り討ちに
時間は少し遡り││オーズ復活前。
イオス・E・T・スターの存在であった。
まさにこの男、空を飛べるという優位性を存分に活かし戦うプトレマ
〟を奪う事に成功したモリアと、ホグバックに誤算があるとすれば、
ルフィ、ゾロ、サンジと麦わらの一味の主力三人からいきなり〝影
られている。
よって蘇ったオーズだったが││しかし今、そのオーズが一方的にや
王下七武海の一人ゲッコー・モリアとドクトル・ホグバックの手に
巨人族の中でも特別巨体と言える伝説の〝魔人〟オーズ。
に勝てん
かろうが、ルフィの〝影〟を取り込んでいようが、おれさまには絶対
!
﹁ヨホホホホホ ごきげんよう
﹂
ヨホホって⋮⋮﹂
ればよろしいのに
﹁⋮⋮
!
!
!
その存在によって研究所の中に斬撃の風圧で押し込まれた四人は
四人だが、そこにいたのは肉も皮もついている誰か。
その特徴的な笑い声に少し前に出会ったガイコツの姿を思い出す
!!?
197
!!!
﹁ブ、ブルック
!!?
ホグバックと対峙する。
ホグバックは研究所を覗き見ていた四人に激怒││というか、そも
ジェネラル
新世界〝ワノ
お前らがこれまでに見たゾンビ共とは〝格〟
そもの計画通りに麦わらの一味への夜討ちは始まっていると、先程の
斬撃の主を嗾ける。
﹁フォスフォス⋮⋮
﹂
が違うぞ。そいつは特別な肉体を持つ将 軍 ゾンビ
国〟から来た男
﹂
﹂
!!!
﹂
スターVSリューマゾンビ⋮⋮その渦中の人物であるスターは、ス
のか。
強者同士の戦いは時に一瞬で終わるというが、今回の状況はそれな
リューマゾンビは動かない。
焦 れ た よ う に ホ グ バ ッ ク が リ ュ ー マ ゾ ン ビ を さ ら に 嗾 け る が、
沈黙が場を満たす。
﹁﹁﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂﹂﹂﹂
いるようだ。
一方のリューマゾンビは自分の技を防いだスターにのみ注目して
まじりに敵を斬るような達人的な技の冴えに脅威を感じている。
地面から伸びる六芒星の光の壁の中、四人はリューマゾンビの鼻唄
てたところだ⋮⋮
﹁な、なんだ、こいつ⋮⋮ヤベェ⋮⋮スターがいなきゃいきなり全滅し
﹁⋮⋮まさか防がれるとは。さすがに億越えの賞金首ですね﹂
く三人は、ようやく自分達が斬られるところだった事を知った。
その〝壁〟に阻まれて、甲高い音が室内に響いた事で、スターを除
﹁
﹁〝ヘキサグラム・フィールド〟
れまた自然に四人との間合いを詰めてくる。
そしてあまりに自然、流れる動作で刀を抜くと、カランコロンとこ
には立派な拵えの刀を佩いていた。
リューマゾンビは着流しに下駄とワノ国の民族衣装を纏い、その腰
を持つ侍のゾンビである。
その男〝リューマ〟は││空飛ぶ竜をも斬り落としたという伝説
!!!
!!!
!
!
198
!
﹂
ター故に普段は見える場所に掻かない汗を、しかし頬に一筋流した。
﹁⋮⋮キャプテン﹂
﹁ど、どうしたスター
れ﹂
!
ツ、ブルック。
﹁お前││﹂
﹂
﹁いや、そりゃ頼みてェけどよ
コイツ、お前となんか関係あんのか
﹁お話ならば後で。コイツの相手は私に任せて貰えませんか﹂
﹁ブルック⋮⋮
﹂
不意に横合いから掛けられた声の持ち主は、見た目紳士なガイコ
﹁⋮⋮どうやらお困りのようですね﹂
やるべき事はスターに対するツッコミであった。
﹁アホかーーー
﹂
﹁この技を発動してるとおれさまも動けねェ⋮⋮ どうにかしてく
に動揺しつつ、何かできる事があるならと意気込むが││。
ウソップは場の静けさとその緊張感の中で突然自分が呼ばれた事
!
!
﹂
ゾンビなのです﹂
﹁えっ⋮⋮
﹂
侍・リューマ そいつをど
!!!
!!!
とある王国の奇襲部隊仕込みの技の冴え。
ブルックの剣はゾロのような〝豪剣〟ではなく〝柔剣〟。
ゾンビだからという事なのか。
見ると二人の技は同じ⋮⋮これがブルックの〝影〟から生まれた
そして奏でられる剣戟の響き。
かった。
ホグバックがリューマゾンビへと指示を出して、それを止めにか
うにかしろ
﹁好き勝手に秘密を喋るんじゃねェ
たが││やはり悠長に喋っている時間はない。
そうしてブルックの口からゾンビ誕生秘話が語られるかと思われ
!!?
!!!
199
!!!
!
﹁⋮⋮ハッキリと言ってしまえば、コイツは私の〝影〟から生まれた
!!?
パ
ワー
﹂
しかしリューマゾンビはその枠を超えた強靭さによってオリジナ
このままじゃヤベェんじゃねェのか
ルであるはずのブルックを追い詰めていく。
﹁おい、押されてるぞ
リ
オ
してたのか﹂
リ
オ
﹁⋮⋮ええ、その通りです。さすがは伝説の侍
う﹂
﹁殺される事がない
﹂
しもべ
が、現時点では殺される事はない。それこそが私の唯一の勝機でしょ
使い手であるはずなのに、私の技の冴えをも凌駕している
です
本来は〝豪剣〟の
﹁つまりお前より、あのゾンビの方が肉体レベルが上だったから苦戦
える戦闘能力を発揮する。
〝没人形〟に融合させれば〝影〟の持ち主であるオリジナルをも超
マ
〝性格〟と〝戦闘能力〟を持っており、それ以上の肉体レベルを持つ
奪われた〝影〟はモリアに従順になるが、その本来の持ち主と同じ
ている。
した死体〝没人形〟に融合させる事でゾンビとして自分の部下にし
マ
その能力で〝影〟を奪い、ホグバックが改造して保存している強化
七武海の一人であるゲッコー・モリア。
ここスリラーバークの主は〝カゲカゲの実〟の能力者であり王下
く。
そしてスター達は後でルフィ達も知る事になるブルックの話を聞
∼∼中略∼∼
クから話を聞く事をまずは考えたのであった。
状況を理解しないままに戦うよりも、状況を理解してそうなブルッ
〟の援護も受けて全員でとりあえずその場から逃げる。
トリックスター〟をバラ撒いてブルックを回収、ウソップの〝超煙星
その状況にスターは〝ヘキサグラム・フィールド〟を解除すると〝
!!?
!
!
影〟も消える。だから〝影〟を利用したければ持ち主を生かしてお
200
!
﹁〝影〟の持ち主は生きている必要があるのです。持ち主が死ねば〝
?
く必要がある﹂
﹁なるほど⋮⋮なら仮に私たちの誰かが〝影〟を奪われる事態になっ
ても逆転のチャンスはあるわけね﹂
ゾンビ
﹁ゾンビの弱点は〝塩〟 海の性質を持つ〝塩〟はお祓いなどで言
﹂
うところの清めの効果を今回の状況でも正しく発揮する
に〝塩〟を食わせれば〝影〟を取り戻す事ができる
﹁〝塩〟⋮⋮﹂
﹁〝影〟を奪われた者は太陽の光を浴びれば消滅する身体です。普通
の生活に戻る事はできず、隠れ生きる事になるでしょう。だからそれ
﹂
ではダメなのです⋮⋮どれだけ強い相手であっても私には必ず自分
の〝影〟を取り戻さなければならない理由がある
﹂
お前はその約束のためにそんな身体に
なっても生き続け、今もまたこうして戦ってるんだろ
﹁その約束ってのはなんだ
いをして再び海を彷徨う事になった。
ある〝約束〟のために死ぬ事だけはできなかったブルックは命乞
リューマゾンビの前に敗北。
試みて戦うも、伝説の侍の肉体を得て自分より格上の存在となった
スリラーバーグと距離が離れる前に意識を取り戻し、〝影〟の奪還を
そして反抗するであろう本体は邪魔と再び海に流されたが、運よく
に誘われ〝影〟を奪われた。
ブルックは5年前に今回の麦わらの一味のようにスリラーバーク
!
たのです。致し方ない苦渋の別れでしたが⋮⋮その場所へ〝必ず帰
る〟と約束をして、我々は船を出しました⋮⋮﹂
しかしブルックが所属していた〝ルンバー海賊団〟はこの海で全
滅した。
ブルック一人、悪魔の実の能力で蘇ったが、約束は果たせずじまい
である事には変わりがない。
約束をしたのって⋮⋮﹂
だからせめてその〝結果〟を伝えに行かなければならない。
﹁でもちょっと待って
201
!
!
!
﹁簡単な事です⋮⋮昔、我が海賊団の仲間をある場所に置き去りにし
?
?
﹁ええ、我々が死んだあの日から⋮⋮もう50年は経つでしょうか。
!
しかし、私になぜ⋮⋮彼がもう待ってやしないと見切りをつける権利
我々に裏切られたと
がありますか。万が一約束を信じてずっと待ってくれているとした
﹂
ら⋮⋮﹂
﹁⋮⋮
﹁今、彼はどんなに淋しい気持ちでしょうか
﹂
!!!
﹂
な い で し ょ う に ⋮⋮
ら
男 が 一 度 ⋮⋮
必 ず 帰 る と 言 っ た の だ か
!!!
﹂﹂﹂
グ ラ ン ド ラ イ ン
ロビンとフランキーにもブルックの事情を話して、男泣きするフラ
成功した。
しくルフィ達とはぐれたロビンとフランキーの二人と合流する事に
ブルックの話を聞いてやる気が漲るスター達は、いろいろあったら
∼∼中略∼∼
ち続けている〝クジラ〟の名前を。
今も、変わらず〝約束〟が果たされる時を、仲間の帰りを信じて待
東 の 海から偉大なる航路に入った者なら覚えているその名前。
イーストブルー
﹁﹁﹁
﹁約束の岬で再会を誓った仲間の名は││〝ラブーン〟﹂
るとみんなが笑ったその面影の先に見える仲間の姿。
伝説の侍を前にして、命と共に必死に守り抜いたアフロ、彼に似て
そしてブルックはそれに応えてその名前を口にした。
﹁⋮⋮その相手の名前は﹂
るものがあったのか尋ねる。
その〝約束〟の重さを知って黙る者達の中で、スターは何か直感す
!!!
けど、身勝手な約束をして声も届かぬ遠い空から、死んでごめんじゃ
﹁無責任に死んでしまった我々を、彼が許してくれるとは思いません
﹁お前⋮⋮﹂
気持ちでしょうか
思いながら、今でもずっと待ち続けているとしたら、どんなに惨めな
!!?
!
ンキーをよそに、現れたのは〝ゴーストプリンセス・ペローナ〟。
202
!!!
!!!
ツインテールに王冠、ゴスロリチックな服装とそれらしく纏めた彼
女は、モリアの部下であり、霊体を自在に生み出す〝ホロホロの実〟
を食べた〝霊体人間〟。
そして得意とする技はゴーストがすり抜けた相手の心を虚ろにす
る〝ネガティブ・ホロウ〟。
その力は超ポジティブ人間のルフィですらもネガティブにして一
切の戦闘行為を放棄させるという強力なものである。
だが││。
﹁││情けない奴らだ。こんな技に心を折られるとは﹂
﹂
﹂
なんでお前らネガティブになっていないんだ
ネガティブだぁ
!!?
﹁その通りだな、キャプテン﹂
﹁えっ
﹁なんでも何も⋮⋮おれは元から
!!!
来なら情けないはずのその言葉を堂々と言ってのけた。
!
続いてスターもいつも通りの高笑いを上げる。
おれさまはスターだぞ
﹁はーっはっはっはっはっはっ
!
﹂
!
効化する。
!
﹂
人は⋮⋮生きてる、それだけで前を向いてるハズな
﹁そんなバカな事は⋮⋮
ともかく⋮⋮
﹂﹂﹂﹂﹂
のに⋮⋮この男⋮⋮
﹁﹁﹁﹁﹁頑張れ
ポジティブがネガティブを打ち破るのは
故に彼はホロホロの実の一番の能力とも言えるネガティブ化を無
そしてそれはルフィとは違って能力であっても同じ事なのだ。
思考に陥る事がない。
彼は拗ねる事などはあっても、そもそもルフィ以上にネガティブな
人間たるプトレマイオス・E・T・スター。
世界の誰もが見上げた先にある星││その星の力を扱えるスター
空島でゴム人間のルフィが雷人間のエネルの天敵になったように。
それは悪魔の実の相性による結果。
の精神攻撃は効きはしないのだっ
そんなおれさまの前に、その程度
人々に夢や希望を与える存在だ
世界の
まさかの事態に驚きの声を上げたペローナに対してウソップは本
!!!
!
!
!
!!!
203
!!?
﹂
﹂
﹂
何はともあれ、あの三人がいないと戦闘力が激減
しもべ
普通ちょっとくらい反発し合ったりす
ンビを組んでるんだ⋮⋮
もんだ
﹂
﹂
!
私の能力が〝ネガティブ・ホロウ
﹁そういう事だ。おれさまとキャプテンのコンビはかなり強いぞ
降参するなら今のうちだ
﹂
﹁降参なんてするもんかよ⋮⋮
〟だけだと思うなよ
!
!
を奪われ、一時的ながらも敗北を喫していた。
の時にはすでにルフィ、ゾロ、サンジの三人がモリアによって〝影〟
トプリンセス〟に勝利したウソップとスターの二人だったが、実はそ
とにかく方法はどうであれ敵の幹部・三怪人の一人である〝ゴース
もしれない。
まあゴキブリの玩具やらは、確かにその耐性がない者にはキツイか
リ系の技であっさりと気絶した。
⋮⋮なんて言っていたペローナだが、最終的にはウソップのハッタ
!
ねェかもしれねえが、本物の海賊の絆は血の繋がった家族以上に強ェ
﹁お前らみたいに人の〝影〟を操って部下にするような奴にはわから
﹂
るものじゃないのか⋮⋮
!
﹁くそっ、なんでネガティブとポジティブ、真逆な人間が平気な顔でコ
らとりあえずは無視してもいいだろう。
ローナが喋ると可愛くないからという理由で喋る事を禁じているか
クマのぬいぐるみ型ゾンビなどもいるにはいるが、その主人であるペ
ペローナの部下のゾンビ達や〝クマシー〟という等身大サイズの
しもべ
残ったのはウソップとスター、それにペローナの三人だ。
ネガティブ状態から戻ったナミ達は頷くとその場から駆け出す。
﹁なんかウソップが頼もしいとウソみたいだけど、わかった⋮⋮
だ
探して合流しろ
﹁とにかく、だ。この場はおれとスターに任せてナミ達はルフィ達を
ミを入れる。
ペローナの部下であるゾンビ達にも励まされてウソップはツッコ
しもべ
﹁励ますなおれを
!!!
!
!
!
204
!
!
さらにはナミも前に風呂場で襲ってきた透明人間こと三怪人の一
人〝墓場のアブサロム〟によって花嫁にすると攫われ、全体の戦況で
見れば、麦わらの一味はむしろ押されていた。
だが〝影〟を奪われた際の衝撃で意識を失い縛られラクガキもさ
れたルフィ達をサニー号で発見した事で反撃の狼煙は上げられた。
ルフィはモリアを倒せば全て解決するとモリアに挑み。
ゾロは伝説の侍の強さに興味があるとブルックに感情移入したフ
ランキーと共にリューマゾンビに挑み。
サンジは当然ナミを攫ったアブサロムに挑み。
チョッパーとロビンは他のみんなをサポートするつもりだったが、
三怪人の一人、ドクトル・ホグバックに挑む事になる。
∼∼中略∼∼
205
そして再び現在⋮⋮。
一足先に対峙したペローナとの戦いに決着をつけたスターはやた
らと目立っていたオーズに﹁おれさまの許可なくおれさまより目立つ
な﹂とケンカをふっかける。
そんなスターは空を自由に飛び回る事でオーズを押していた。
﹂
しかし、時間の経過によって状況が変化する。
﹁腕が⋮⋮伸びた⋮⋮
在だ。
ゴム人間と化した巨人オーズなんて、それこそ〝悪夢〟のような存
揮するものだ。
ルフィの技の数々はそもそもその〝特性〟があってこそ真価を発
い。
紙一重でその一撃を回避するも、さすがのスターも驚きを隠せな
常時では無理な挙動を再現したのだ。
くオーズの足下にできる〝影〟を自分の〝影〟で操る事によって、通
いと見たモリアが〝影革命〟遠隔操作でルフィの〝影〟││ではな
スター達はわかっていないが、オーズ単体ではスターとの相性が悪
!!?
﹁くそっ、冗談じゃねェぞ
﹁ぐっ⋮⋮
﹂
﹂
しかもそんな攻撃だから一撃喰らうだけでも大ダメージだ。
そこに本来のルフィの技が加わると形勢は逆転する。
スターは空を飛ぶ事でその範囲外に抜け出す事が可能であったが、
常の巨人の2倍はある巨体のくせにかなり高い。
ついでに言えばルフィの〝影〟で動いてるために、その俊敏性も通
持つオーズだ。
もともと素手でありながらも巨体を活かした圧倒的な攻撃範囲を
!!!
﹂
しもべ
よくもスターを
!!!
陥った。
﹁て⋮⋮てめェ⋮⋮
ルフィ⋮⋮
ターは何とか意識が残っているだけで動くのもままならない状況に
それはスリラーバークの端から端に吹き飛ばすような一撃で、ス
きく吹き飛ばされる。
スターはその喰らってはいけない一撃をついに喰らってしまい大
!!?
﹂
ス タ ー で あ る お れ さ ま を 知 ら ね ェ だ
﹂
ハァ、ハァ、絶対に許さねェ⋮⋮ くそっ、
?
﹁おい、飛ばせ
﹂
﹂
軍 パワーシュート〟
アルメ・ド・レール
﹂
ビッグツリー
﹁フランキ∼∼∼〝空中歩行〟
スカイウォーク
﹁〝百花繚乱・ 大 樹 〟﹂
シエンフルール
﹁をっ
﹁││〝大撃剣〟
﹁〝 空
!!!
﹂
﹂
!!!
﹂
﹁くらえ必殺〝特用油星〟三連発
わらの一味との戦闘を開始していた。
フィを除く対峙したそれぞれの相手との戦闘に決着をつけた残る麦
屈辱に震えながらも起き上がれないスターを置いて、オーズはル
とっとと動けよおれさまの身体⋮⋮
と、あの野郎⋮⋮
﹁お れ さ ま を 知 ら ね ェ ⋮⋮
その言葉に倒れたままのスターはブチッとキレる。
だ
﹁⋮⋮おめェらなんか知らねェぞ。おれはモリア様の部下││オーズ
!
!!!
!!!
!!!
!!!
!!!
206
!
!!!
!!!
!!!
﹂
﹁﹁ス∼∼∼パ∼∼∼〝フラッパーゴング〟
アンチマナー
﹁〝反行儀キックコース〟
﹂﹂
!!!
倒すには至らない。
おれさまを見ろーーーーーッッッ
だが、その時間稼ぎによって復活する者もいる。
﹂
﹃オーーーズッッッ
﹁ん
﹄
!!!!!
しかしそれですら時間稼ぎはできても、体力がありすぎるオーズを
一味は普段はなかなかない連携攻撃によってオーズと渡り合う。
!!!
﹂
!!?
た。
﹄
﹁す、スターーー てめェ何やってんだーーー
﹃⋮⋮あっ、しまった﹄
﹂
〝
確かに本体が消えたら
!!!
影も消えるけど、それじゃあ意味がないだろーーーが
!!!
﹁しまったじゃねェよ
﹂
サンジもホッとしたのも束の間、怒りの声を上げた。
危うく〝夜明け〟より前に消滅の危機を迎える事になったゾロや
光だけはそれっぽい疑似太陽を消す。
ウソップのツッコミに屈辱で我を忘れていたスターが正気に戻り、
!!!
は影じゃなくて影を奪われた本体の方だ
太陽で消えるの
ではなく、影を奪われた本体達の方に疑似太陽によるダメージを与え
その無駄に上手い歌声はスリラーバーク中に響き渡り、オーズ││
そんなオーズに対してスターは畳み掛けるように歌い出した。
逆光越しに見えるスターの姿に怯む。
偽物の太陽でも効果はあるのか、ルフィの〝影〟であるオーズは、
﹁うっ⋮⋮
スターマイク〟を手にしていた。
小型の太陽のようなものを作り出したスターがそれを背にして〝
そして、この霧の深い海にはあり得てはならなかった〝輝き〟。
パースター〟。
オーズが振り返った先には〝スターシップ〟の上に立った〝スー
サンライトステージ〟
!!!!!!
﹃これが〝スーパースター〟であるおれさまの極限ステージだ
!!!!!
!!!
!!!
207
!!!!!
?
﹂
⋮⋮おれさまとした事がウッカリしてた
﹄
スゲェカッコよかったのに⋮⋮あ、そうだ。
!!!
﹁おれ達を殺す気か
﹃スマーン
サインください﹂
﹁﹁﹁えぇーーーっ
﹂﹂﹂
﹁なんだもう終わりか
しかし。
!!!
ティーチは懸賞金も懸かっていない海賊ではあったものの、ある〝
が⋮⋮霧の海には届いていまい⋮⋮﹂
黒ひげ〟という男。世間では、すでにちょっとした騒ぎになっている
決まった。││後継者の名は〝マーシャル・D・ティーチ〟。通称〝
﹁報告事項がある。王下七武海クロコダイル降任の後⋮⋮その後釜が
くとっとと本題に入る。
だからと戦いを〝影〟任せにしているモリアはくまと争う気もな
同じ王下七武海とは言ってもべつに友好的な関係ではない。
﹁用件を言え。⋮⋮ここへわざわざ何しに来た﹂
向かい合う。
キトーに相手していたモリアはそのくまの存在に気づいて屋敷内で
自分を追いかけてくるルフィやオーズと戦うスターを〝影〟でテ
指示で動く男でもあった。
あるモリアと同じ王下七武海の一人であり、七武海の中で唯一政府の
見た目も名前通りの大男であるくまは、このスリラーバークの主で
その男は〝暴君・バーソロミュー・くま〟。
スリラーバークに上陸した者がある。
麦わらの一味がオーズとの戦闘に悪戦苦闘してる中、人知れずこの
∼∼中略∼∼
果があった⋮⋮のかもしれない。
ルフィの〝影〟が性格のベースとなっているオーズには一定の効
!!?
手土産〟を持ってきた事でその実力を示し、王下七武海入りが認めら
れた。
208
?
!!!
その事が麦わらの一味││特にルフィに対して因縁を生むが、それ
はまだ少し先の話である。
そして報告事項を終えたくまはモリアがクロコダイルのようにや
られはしないかと形ばかりの心配をしたが、それがモリアの逆鱗に触
貴様ら⋮⋮﹂
オーズを放置していた結果、船は流れ、図らずも
れ、モリアは麦わらの一味との戦いに本腰を入れて動き出す事になっ
た。
∼∼中略∼∼
﹁キシシシシ⋮⋮
清々しい夜空。ぐずぐずしてていいのか
本腰を入れたモリアはいつの間にやらオーズの││ゾンビである
が故に空洞に改造された腹の中に、まるで巨大ロボットをコクピット
で操縦するかのように居座って麦わらの一味と対峙する。
ようやくその姿を一味の前に見せたモリアは、ゴシック調の服に身
を包んだ異様な体型の、7m近くはあろうかという、スリラーバーク
の主に相応しい悪魔のような容姿の大男だった。
ただオーズに乗っているためにそのサイズ感はもう滅茶苦茶であ
る。
そんなモリアを追いかけていたはずのルフィはスカされたのかい
﹂
﹂
││た
さァ、お前ら。おれと戦うチャンスをやろう。おれを
まだにその姿を決戦の場には見せない。
﹁キシシシ
あのヤロー、汚ェぞ
むしろ悪化している。
にはいかなくなった。
何とかオーズを抑えている間にルフィがモリアを倒すというわけ
オーズの中に入ってしまったからだ。
モリアを倒さなければオーズを浄化できないのに、そのモリアが
!!!
倒せば全ての〝影〟を解放できる。全員でかかって来い
﹁⋮⋮
!!!
209
?
!
だし、オーズを倒さねばこのおれは引きずり出せねェがな⋮⋮
!!!
!
モリアの姿が見えても、状況は何も改善されていない。
!
しかもモリアが本腰を入れてきたという事は、最初スターがオーズ
と戦っていた時のように、オーズがゴム人間の〝特性〟を持てるとい
う事だ。
﹂
モリアの出現により、スターが歌った事で一時的に止まっていた戦
闘が再開される。
﹁〝三刀流 大・仏・斬り〟
﹁くらいやがれ
〝ジェンガ砲〟
﹂
手にモリアの屋敷の尖塔の一つをスパスパと斬り裂く。
斬り合いを制して手に入れた大業物21工のうちの1本〝秋水〟を
ゾロはエニエス・ロビーで失った刀の代わりにリューマゾンビとの
!!!
!!!
を与える事はできない。
こんにゃろォ
!!!
﹂
塔が飛んでくる∼∼∼
利用されちまった
﹁どわァ∼∼∼
﹁しまった
﹂
〝必殺・鉄人彗星〟
!!!
!!!
がついていた。
〝被害者の会〟はモリアの〝影〟の秘密に││その活用方法に気
ラーバークの日陰に生きる〝被害者の会〟。
そ ん な ル フ ィ の 前 に 現 れ た の が モ リ ア に 〝 影 〟 を 奪 わ れ て ス リ
で、いまだに決戦の場に現れていない我らが船長。
モリアに騙されて〝影〟のモリアと追いかけっこをしていたせい
その〝悪夢〟の素となるのは〝麦わら〟のルフィ。
〟が誕生しようとしていた。
いる中、その場所からは少しだけ離れた森の中で、もう一つの〝悪夢
そうして麦わらの一味がルフィの化け物という〝悪夢〟と戦って
!!!
!
﹁⋮⋮新兵器〝クワガタ〟⋮⋮いけ
﹂
の特大の瓦礫を殴り返しカウンターで麦わらの一味を攻撃する。
だがオーズに当たったのはその内の1、2発だけでオーズは逆にそ
﹁ん∼∼∼
﹂
オーズが相手ではその規模の攻撃でなければわずかでもダメージ
り飛ばす。
特大の瓦礫の塊となった尖塔をサンジがオーズに向けて次々と蹴
!!!
!!!
210
!!!
!
それが死体にではなく生きている人間に〝影〟を憑りつかせると
いうもの。
そうする事により〝影〟の戦闘力をその人間に上乗せする。
ただし並の人間ではせいぜい2、3人も上乗せすればその重圧に押
し潰されて意識を失ってしまう。
しかしそこはルフィだ。
〝被害者の会〟がゾンビに〝塩〟を食わせて確保した100人分
の〝影〟の重圧に耐え、超絶パワーアップに成功する。
そして今ここに〝悪夢〟に対抗する〝悪夢〟が誕生した
その〝悪夢〟⋮⋮いや、戦士の名は││〝ナイトメア・ルフィ〟
だぜ
∼∼中略∼∼
ター〟
﹂
﹂
﹂
﹂
墜 ち ろ │ │ 〝 シ ュ ー テ ィ ン グ ス
﹂
ピストル
これが〝悪夢〟でなければなんなのか。
﹁〝ゴムゴムの︵もともと巨人︶JET 銃 〟
ギガント
﹁お、おいおいおい、まさか⋮⋮
﹁
﹁⋮⋮〝ギア 2 〟
セカンド
﹁〝 ビ ッ グ ス タ ー 〟 セ ッ ト
また一人と戦闘不能に追い込まれていく。
ズを操る王下七武海のゲッコー・モリアの前に、麦わらの一味は一人
だが、ルフィを除けば勢揃いと言える状況でありながら、巨人オー
が先に決戦の場に合流していた。
がわからなくなっていたナミや、厨房で〝塩〟を集めてきたブルック
ナイトメア・ルフィが到着する前に、アブサロムの悪足掻きで行方
!!!
!
ギア 3 〟の特性もデフォルトで持っているという反則っぷりだっ
サード
しかもオーズは巨人族であるために〝ギア 2 〟でありながら〝
セカンド
るほどに、ルフィの〝影〟で動くオーズの戦闘力も高いのだ。
本体のルフィがこれまでの戦いで強くなっていれば強くなってい
!!!
!!!
!
211
!!!
!!!
!!!
!!?
!
た。
﹂
﹁くそっ
かよ
化する。
腹が空洞になってるゾンビのくせに血は流れてやがんの
﹂
﹁〝ゴムゴムの〟ォ﹂
﹁ヤバイ⋮⋮
﹁がっ⋮⋮
﹂
ギガント
﹂
〝スターオーラ〟越しだぞ⋮⋮ ルフィ、てめ゛ェ
!
﹂
!!!
ミの二人だけ。
この〝悪夢〟の前に希望は全て失われたのか
││いや、そんな事はない。
﹂
﹁おい
﹁
デケェの
﹂
!!!
D
ルフィだぜ
﹂
!!!
﹁誰だ、お前﹂
﹁モンキー
﹂﹂
!!?
立ち、目は縁取られ、背中に巨大な刀を背負うという普段の姿からは
なぜなら今のルフィは身体が通常の3倍くらい大きくなり、髪は逆
ウソップもナミも一瞬それがルフィだとは信じられなかった。
﹁﹁る、ルフィ∼∼∼
!!!
﹂
なぜならついに決戦の場にその戦士が姿を現したからだ。
?
残っているのは麦わらの一味で最弱争いをしているウソップとナ
られた。
ゾロもサンジもチョッパーもロビンもフランキーもブルックもや
﹁こ、こんな化け物⋮⋮いったいどうすればいいのよ⋮⋮﹂
﹁スターーーッッッ
スターは今度こそ完全に意識を失って倒れた。
スターの〝覇気〟、〝スターオーラ〟すらも突破するその攻撃に、
⋮⋮
!!!
!
﹁〝︵もともと巨人︶JET銃弾〟
ブレッド
ギアを上げたオーズの技も俊敏性も、それまでのものから一段階進
スターが悪態を吐くがそんな暇はない。
!
﹁お前はいったいおれの仲間に何をやってくれているんだ
!!!
212
!!!
!
!
!!!
?
!
だいぶかけ離れた容姿になっていたからだ。
それとも⋮⋮ふん
構わ
ついでにいろいろ混ざったせいなのか喋り方もちょっとおかしい。
﹁⋮⋮あいつ、変身能力もあったのか
﹂
〝ゴムゴムの〟﹂
ねェ、潰せ
﹁勿論だ
!!!
ギガント
﹂
ルフィは片手でピタリと止めた。
﹁ルフィはおれ一人だぜ
﹁蹴り
﹂
〝猪鍋シュート〟
﹂
﹁っていうかあの蹴り⋮⋮
﹂
﹂
﹂
〝飛竜火焔〟
!!!
!!!
﹂
⋮⋮〝一刀流〟
﹁今度は刀ァ
﹁まだだぜ
!
﹁猛進っ
しかもそれだけではなく││。
!!!
〝麦わら〟のどこにこんな力が⋮⋮
﹂
﹂
!!?
今のルフィは確実にオーズよりも格上の存在になっていた。
ロやサンジが加わっていれば話は別だ。
ても、ギア化したオーズには敵わなかったかもしれないが、そこにゾ
モリアがそれまでに集めた強者の〝影〟だけでは100人分あっ
ゾロとサンジの〝影〟もその身に取り込んでいたのであった。
それは当然ナイトメア化した事にあるが、その際にルフィは知らず
モリアも驚くルフィの変貌の理由。
﹁くそ
斬り口が発火したオーズはじたばたとその場を転がって火を消す。
と飛び上がり背中に背負っていた刀を抜いて、オーズを斬った。
ルフィはオーズを強烈な跳び蹴りで吹き飛ばすと、そのまま空中へ
!!?
!!!
﹁ルフィに何が起こってるの
!!?
!!!
それこそ通常のルフィのそれよりも強力だろうその攻撃を、しかし
強烈な一撃。
﹁〝︵もともと巨人︶JET回転弾〟
ラ イ フ ル
さらに身体もゴムみてェに伸びてお前の技を使って
わかってんだろうが、アレがお前の〝影〟が入ったゾン
ビだ、ルフィ
﹂
!!?
!!!
くる
!!!
!!!
﹁き、来た
!!!
!
!!!
213
!!!
!!?
!
その証拠に││。
﹁ハァ⋮⋮このヤロー⋮⋮ち、チビのくせにィ
ハァ⋮⋮﹂
散々に麦わらの一味を痛めつけたあのオーズが次から次へと繰り
!!!
ス トー ム
〝暴風雨〟
出されるナイトメア・ルフィの一人連携技によって満身創痍の体に
〝ゴムゴムの〟
﹂
!!!!!
なっている。
﹁これで終わりだぜ
!!!
﹂
間が来て、その身体から〝影〟が抜けていく。
﹁た、倒した⋮⋮
!!!
・
・
﹁痛くもカユくもねェ⋮⋮
・
﹂
故にオーズは、これまでのようにゆらりと立ち上がった。
・
それが〝麦わら〟のルフィという男であったはずだ。
後には起き上がって、そして勝利を掴み取る。
どんな状況にあっても、どれほど強大な敵を相手にしていても、最
うか。
ルフィが一度倒れて、それで終わった戦闘がこれまでにあっただろ
オーズを動かしているのは、あのルフィの〝影〟なのだ。
⋮⋮だが、忘れてはならない事が一つある。
フィの勝利を称えた。
て、軽く事情説明もしていた〝被害者の会〟が一斉に歓声を上げてル
ナイトメア・ルフィとオーズの戦闘の間にウソップとナミに合流し
﹁﹁﹁﹁﹁オーズとモリアを倒したァ∼∼∼ッッッ
﹂﹂﹂﹂﹂
それとほぼ同時にナイトメア・ルフィにも約10分間という制限時
た。
その腹の中にいるモリアごと、その技名通りに滅多打ちにしてKOし
が、最後はやはり自分の技とばかりにナイトメア・ルフィはオーズを、
トドメの一撃││いや、実際に何撃入れているのかはわからない
!!!
の一味だ。
とはいえ、そのオーズの敵こそがオリジナル││本体のルフィとそ
攻撃が効いていなかったかのようにも錯覚してしまう。
しかしオーズが痛覚のないゾンビであるという事もあって、まるで
見るからにボロボロの姿、だからそれはやせ我慢であるはずだ。
!
214
!!!
戦いの終わり、勝負どころの気配を無意識で感じとったのか、それ
こそゾンビのように順番に起き上がり麦わらの一味はそれぞれの配
置につく。
ギガントスター
〝巨人の星バズーカ〟
﹁特別だ。おれさまより目立つ事を許してやる﹂
﹁〝ゴムゴムの〟ォ⋮⋮
﹂
!!!!!
痛くねェのに⋮⋮動かねェ⋮⋮
﹂
!
問答無用の戦闘不能状態だ。
今度こそやってくれた∼∼∼っ
それにより、今度こそオーズとの戦闘が終わった。
﹁﹁﹁﹁﹁勝ったーーーっ
!!!
もうそこまで来てる
﹂
﹂
朝日は、
もう夜が明ける 早くお前らの〝影〟を取り
全員消滅しちまうぞ
!
起こすにゃあ及ばねえ⋮⋮
﹂
﹂
さァ⋮⋮む、麦わら達にま
!!!
私達の〝影〟を全部解放しなさ
!
﹁モリア⋮⋮
﹂
!!!
リアはキシシと嗤う。
〝被害者の会〟の代表である〝求婚のローラ〟の脅しに、しかしモ
い
たブチのめされたくなかったら
﹁め、目を覚ましたならちょうどいいわ
!!!
﹁⋮⋮
あるかわからない者がほとんどなのだ。
何せスリラーバークにゾンビは無数にいて、どこに自分の〝影〟が
事であった。
〝影〟の支配者であるモリアに﹁本来の主人の元へ帰れ﹂と言わせる
〝被害者の会〟が知っている〝影〟を本来の持ち主に戻す方法は
!!!
!!!
﹁喜んでる場合か
﹂﹂﹂﹂﹂
いくらゾンビであろうと身体が動かなければ何もできない。
﹁
オーズの巨体が大きな音を立てて仰向けに倒れる。
を粉々に砕き壊した。
の顔面を潰し、さらには一味の連携によってオーズの伸びきった背骨
ルフィはスターの星の推進力も得た〝バズーカ〟によってオーズ
!!!
﹁さァ、モリアを叩き起こして〝影〟を返してもらうのよ
!
戻せ
!!!
急がにゃあ﹂
!!!
!
﹁〝影〟⋮⋮そうだ
!!!
!!!
215
!!?
!!!
﹁ガキのケンカじゃあるめェし⋮⋮
本物の海賊には〝死〟すら脅
﹂
!!!
〟を返せ
﹂
﹁お前がおれ達の航海を邪魔するからだろ
﹂
!!!
日が差す前に早く〝影
ハァ⋮⋮ここまで滅茶苦茶にしてくれたな⋮⋮
﹁ハァ⋮⋮〝麦わら〟ァ、てめェ、よくもおれのスリラーバークを⋮⋮
自分の能力を利用された忌々しさにモリアはルフィを睨みつける。
⋮⋮〝麦わら〟の過剰なパワーアップの謎が解けた⋮⋮
し に な ら ね ェ ⋮⋮ お め ェ ら 〝 森 の 負 け 犬 〟 共 が 関 わ っ て い た と は
!!!
!!!
が、全て失う
﹂
﹂
なかなか筋のいい部下も揃っているようだ
ハァ、なぜだかわかるか
!!!
!!?
は遠く及ばねェ⋮⋮
﹁航海を続けても、てめェらの力量じゃ死ぬだけだ⋮⋮〝新世界〟に
!!!
・
・
・
・
・
・
﹂
仲間なんざ生きてるから失うんだ
全員が初めから死んでいるゾンビなら、何も失う物はねェ
!!!
浄化しても代えのきく無限の兵士 おれ
﹂
は、この死者の軍団で再び〝海賊王〟の座を狙う
シャドーズ・アスガルド
〟でおれの部下になる事を幸せに思え
てめェらは〝影
!!!
その数││200⋮⋮300⋮⋮600⋮⋮700⋮⋮1000
していく。
先のナイトメア・ルフィと同じ要領でモリアは自分の戦闘力を強化
中の〝影〟を自分へと集める。
そう叫んだモリアは〝 影 の 集 合 地 〟という大技でスリラーバーク
!!!
!!!
﹁ゾンビなら不死身で
その場所を知るモリアは麦わらの一味の未来を予言する。
北を経験する海だというのか。
〝新世界〟とは、王下七武海の地位にいる者ですら、そこまでの敗
!!!
ぜ、おれは失ったのか⋮⋮
!!!
﹁おれは体験から答えを出した。大きく名を馳せた有能な部下達をな
ろな表情で捲し立てる。
モリアはその日の〝悪夢〟にいまだに苛まれているかのように虚
﹁⋮⋮
!!!
!!!
に取り込んだモリアは、オーズ並の巨体へと膨れ上がり異形の化け物
216
?
オーズを圧倒したナイトメア・ルフィの10倍の〝影〟をその身体
!!!
モリア
として麦わらの一味の前に立ち塞がった。
﹂
﹁〝悪夢〟を見たきゃ勝手に見てろ
合う気はねェ
∼∼中略∼∼
おれはお前に付き
!!!
に潰れない。
オェ⋮⋮てめェ⋮⋮ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮
!!!
行 っ て み る が い い ⋮⋮ 本 物 の 〝 悪 夢 〟 は 〝 新 世 界 〟
﹁〝麦わら〟ァ∼∼∼っ
⋮⋮
!!!
必死に叩き潰そうとするモリアだが、その杭はゴムでできているため
消滅が先か自滅が先か⋮⋮出る杭の勢いを、新世代の突き上げを、
というか勝敗はすでに決しているのだ。
するのを待つだけの勝負とも言えないものであった。
夜明けがくるまで耐えて、〝影〟を奪われたルフィ達が勝手に消滅
だからこれは時間稼ぎであり悪足掻き。
状態になっていた。
とプライドからなる無茶なものであったらしく、制御ができずに暴走
モリアは確かに島を割るほどの力を手に入れていたが、それは怒り
!!!
﹂
!!!
!!!!!
完全に制御を手放したために、〝影〟の支配権は本来の持ち主に戻
る。
しかしまさにその瞬間に夜明けは訪れる。
麦わらの一味の、その場に残っていた〝影〟を奪われた者達の上半
身が昇る太陽の眩しい日差しによって消し飛んだ。
そして⋮⋮。
217
!!!
あァあああああああ
!!!
モリアの口から取り込んだ〝影〟が抜けていく。
にある⋮⋮
!!!
﹁おーい⋮⋮生きてるかーーー
だった。
・
・
・
みんなァ
﹂
く ま は 一 味 に 懸 け ら れ た 賞 金 額 の 順 番 で 標 的 を 決 め て い る よ う
次に狙われたのはゾロ。
そのためにスターの記憶はそこで止まる。
いた意識を真っ先に刈り取られた。
例えばスターは〝暴君〟の手にかかってそのギリギリ繋ぎ止めて
それからの記憶は段階的だ。
くまに。
知らずスリラーバークに存在していたもう一人の七武海〝暴君〟
ただ他の者達は満身創痍の身でありながら、その男と邂逅した。
なっていたので、その先の出来事は完全に知らない。
その時にはモリアとの戦闘に全力を尽くしたルフィの意識はなく
に復活した。
太陽の光によって消滅しかけた身体は〝影〟が戻った事で元通り
あの戦いの決着に思いを馳せる。
﹁そればっかりはおれもわかんねェ。なははは﹂
﹁ルフィが異常に元気なのもおかしいよなー﹂
﹁確かにあの男が何もせずに帰ったとは思えないものね﹂
﹁⋮⋮﹂
の姿に嘆息しながら自分の考えを口にした。
ゾロの治療を担当したチョッパーはいまだに意識の戻らないゾロ
に﹂
﹁││やっぱり、何か、あったんじゃないかな。おれ達が倒れている間
∼∼中略∼∼
ないゾロという結果を残して終わりを告げた。
スリラーバークでの戦いは、一人元気なルフィと、一人意識の戻ら
!!!
その戦いの中でくまが〝ニキュニキュの実〟を食べた〝肉球人間
〟だという事がわかった。
218
!!!
その癒し系な響きとは裏腹に、あらゆるものをその肉球で弾く事が
できるというくまは、大気を光速で弾き大気の爆弾を作るという戦闘
方法をとり、ゾロだけでなくその場にいる全員が標的となった。
ルフィの首を差し出せば他の者達は生かしてやるというくまの言
葉を全員が拒絶し、そこで大半の者の記憶が止まる。
残ったのはゾロとサンジくらいのものだ。
だが、サンジはゾロに気絶させられたのでその結末を知らない。
気絶する前にはルフィの首の身代わりとして自分の首を差し出す
事で見逃してもらえるように競うようにして頼んでいたがはたして。
結果として、一人元気なルフィと、一人意識の戻らないゾロという
状況が生まれた。
そうなった理由はわからない。
意識を取り戻したサンジは血塗れのゾロに事情を聴いたがゾロは
さっき何か知ってるような事言ってなかっ
﹁なにもなかった﹂とだけ言うとその意識を失い、それ以降まだ目覚め
お前ら二人
何見たんだ
﹂
219
ていないからだ。
﹁おい
たか
﹁はい、本当に驚きました。まさか本当にまだ私達の事を待ってくれ
﹁⋮⋮なァ、ラブーンの事だけどさ﹂
∼∼中略∼∼
全員ちゃんと生きているのだから。
ならその結果に対して、宴をしてもいいはずだ。
ただゾロはきっとその身体を張って一味を守り抜いたのだろう。
だからやはり理由はわからない。
け言って背中を向けた。
ていた二人に尋ねたが、その二人もどういう心境の変化なのかそれだ
ルフィは何やらそんな事を言っていた〝被害者の会〟に身を寄せ
﹁みんな無事で⋮⋮何よりだ﹂
﹁ヤボな事聞くな﹂
!
?
!
?
ているなんて﹂
﹂
ブルックはその話を聞いた時に散々泣いたというのにまた瞳を│
│いや、瞳はないのだが、潤ませたのか涙をこぼした。
﹁ああ、だから、おれさまがすぐに連れて行ってやろうか
﹁え⋮⋮﹂
﹂
﹁⋮⋮いえ。いいです﹂
﹁なぜ
に行くのでしょう
﹂
なら、私も⋮⋮私にも海賊の意地があります
壁に向かって待つ彼とは、約束通り〝正面〟から再会したい
!
﹁だって、あなた達はこの偉大なる海を一周して、またラブーンに会い
グ ラ ン ド ラ イ ン
がてゆっくりと首を振った。
ブルックはその突然の提案に、しばしその動きを止めていたが、や
ンの待つ双子岬へと戻る事ができる。
スターなら〝スターシップ〟で単純に逆走するよりも早くラブー
るよりはずっと早ェ﹂
﹁まぁ、すぐにって言ってもそれなりに時間はかかるが、普通に航海す
?
?
のだった。
﹂
﹁あ、私仲間になってもいいですか
﹁おう、いいぞ
﹂
今、自分が生きている事に喜びを感じているブルックはそう思った
くものを持ち帰り、高らかに歌い聴かせてやりたい。
れを持ち帰るだけでなく、あの偉大なる航路を制覇したのだという輝
グ ラ ン ド ラ イ ン
しかしできる事なら思い出話を、仲間達が全滅したという悲しいそ
これ以上待たせてしまう事を申し訳なく思う気持ちは当然あった。
!!!
?
入った∼∼∼
﹂﹂﹂﹂﹂
!!!
て、船は魚人島の玄関口であり、多くの運命が交わり動き出す地、シャ
夢を持った見た目紳士なガイコツ〝音楽家〟ブルックを仲間に加え
偉大なる航路を制覇してラブーンにその思い出話を持ち帰るという
グ ラ ン ド ラ イ ン
これにてスリラーバークでの冒険はおしまい。
﹁﹁﹁﹁﹁さらっと
葉に最初に誘った時と同じ軽さで答えた。
スターの隣でその決意を聞いていたルフィはそんなブルックの言
!
!!!
220
?
ボンディ諸島へ。
[手配書更新]
〝鼻唄〟のブルック:3300万ベリー。
221
第21話・伝説とシャボン玉
グ ラ ン ド ラ イ ン
レッ
ド
ラ
イ
ン
ス リ ラ ー バ ー ク を 出 航 し て か ら 数 日 ⋮⋮ 麦 わ ら の 一 味 は
ド
ラ
イ
ン
偉大なる航路 へ と 入 る 際 に 越 え て き た 〝 赤い土の大陸 〟 を 再 び 見 る
レッ
事になった。
グ ラ ン ド ラ イ ン
〝 赤い土の大陸 〟 は 世 界 を 縦 断 し て い る 大 陸 な の で、こ れ で
偉大なる航路も半分進んだ事になる。
事情もスタートラインも違う一味だが、その雄大な壁にそれぞれ感
慨にふける。
だが、それでもまだ半分だ。
ター
﹂
﹂
﹁世 界 を、も う 半 周 し た 場 所 で こ の 場 所 を も う 一 度 見 る 事 に な る。
⋮⋮その時は、おれは海賊王だ
﹁おれぁ大剣豪﹂
﹂
﹁私の世界地図もだいぶ完成してるわね﹂
﹁おれは勇敢なる海の戦士だ
ス
﹂
﹁当然おれさまは世界一の有名人になっているだろうな
﹁〝オールブルー〟も見つかってるはずさ﹂
﹁お、おれも今よりずっと立派な医者になるぞ
グ ラ ン ド ラ イ ン
ら﹂
﹂
行 く ぞ 野 郎 共
レッ
ド
ラ
イ
ン
目 指 す は 〝
私もそうしたらようやくラブーンとの〝約束〟を果
﹁偉大なる航路を制覇したならおれの夢も叶ってる事になるな﹂
﹁ヨホホホホ
ス
!!!
を越える路、魚人島への行き方がわからず、周辺を調査する事になっ
た。
222
!!!
﹁〝 空 白 の 1 0 0 年 〟 ⋮⋮ 隠 さ れ た 歴 史 の 謎 も 解 明 し て い る の か し
!
!
!
!!!
﹂
たせますね
ピー
│ │ さ ァ
﹁し し し し
ン
!!!
決意を新たにした麦わらの一味だったが、肝心の〝赤い土の大陸〟
∼∼中略∼∼
ひとつなぎの大秘宝〟だ
ワ
!
!
!
ロ グ ポー ス
頼りの〝記録指針〟は空島の時とは真逆でここに来てからずっと
真下を指している。
そんな中、海の海獣〝海兎〟に食べられ消化されかかっていた人魚
の〝ケイミー〟とケイミーのペットで師匠だという喋るヒトデ〝
パッパグ〟を偶然助ける形になった。
ちょっとおかしな肩書だが、実はパッパグは〝クリミナル〟という
ブランドのデザイナーであり、ケイミーはデザイナー志望であるから
そうなったらしい。
あとはハマグリをくれるからだそうだ。
﹁クリミナル 聞いた事あるわ。っていうか私も持ってるわね。そ
のブランドのTシャツ。星形のロゴが入ってて、着るとスターが歌の
﹂
リクエストだなとかうるさいからあまり着てないけど﹂
﹁つーか、おめーなんで喋るんだ
?
﹂
﹂
﹁おいおいルフィ、そんなのその姿を見ればわかるだろ。おれさまの
﹂
スタースゲェな
ファンだからだよ
﹁え∼っ
﹁そうなのか
﹁⋮⋮﹂
!
る。
﹁お、おい、お前
うちのブランドの〝専属スター〟にならないか
﹂
心惹かれる響きだが、おれさまは麦わらの一味
報酬ならいくらでも出すぜ
﹁〝専属スター〟
!
に所属してるしなぁ⋮⋮﹂
だ け ど、そ こ か ら の 話 は こ の 〝 マ
特に報酬に関してじっく
!
﹁ス ト ー ー ー ッ プ や る わ
!!!
ネージャー〟を通してもらおうかしら
り⋮⋮﹂
!!?
他の者達よりも敏感に感じ取っており、頭の中で素早く計算を始め
形の身体をしているせいかパッパグはスターの圧倒的なスター性を
新進気鋭のデザイナーとしての嗅覚に加え、ヒトデであるために星
パグだったが、パッパグはスターを前に衝撃を受けていた。
本当は自分を人間だと思っていた勢いで喋れるようになったパッ
!
!!!
!
?
223
?
?
!
﹁おい、ナミ⋮⋮﹂
﹁あ ん た は 黙 っ て な さ い ス タ ー 大 丈 夫 悪 い よ う に は し な い か ら
﹂
れは放っておいていいのか
﹂
﹁キャプテン。おれさまの〝プロデューサー〟はキャプテンだろ。あ
肝心のスターをよそに、何やら黒い話し合いが行われている。
航海士兼マネージャー〟に就任する運びとなった。
パッパグのスカウトに対して、なぜか伊達メガネを掛けたナミが〝
﹁目がベリーな時点で全然信用できないんだが⋮⋮﹂
!!!
ソップ。
﹂
!!?
だが││。
﹁いや、だからスターの意思をだな⋮⋮えっ そ、そんなにか
﹁キャプテン
⋮⋮⋮⋮いや、でも⋮⋮⋮それは⋮⋮︵ごにょごにょ︶﹂
!!?
スターの肩を叩くと、頼もしい足取りでその話し合いに加わるウ
﹁うーむ。よし任せろスター。おれが話をつけてきてやる﹂
?
﹁え﹂
﹁いいか
これはチャンスなんだ。お前の名前を世界中に知らしめ
ター〟をやるべきだという結論が出た﹂
﹁⋮⋮スター、よく聞け。厳正なる話し合いの結果、お前は〝専属ス
?
どれだけ才能があってもチャンスに恵まれない人間も
﹂
いる中で、お前は目の前に現れたそれを迷わず掴み取るべきなんだ
金だとかそういう話じゃねェんだよ
﹂
のナミに任せておけ
〟にしてやる
ス
ター
おれ達の力で必ずお前を〝世界一の有名人
えるだけだ。最後にものを言うのは結局お前の実力だ
おれを信
﹁大丈夫だ。ちゃんとわかってるからよ。売り出し方を少しばかり変
﹁いや、おれさまは自分の実力でそうなるつもりなんだが⋮⋮﹂
!!!
!!!
﹁ピュヒー、ピュピュー。と、とにかく、後の事はおれやマネージャー
﹁﹁⋮⋮⋮⋮﹂﹂
﹁キャプテン⋮⋮目がベリーになってるぞ﹂
!!!
!!!
るための
?
!!!
!
224
!
じろスター
﹂
﹁⋮⋮なるほど。了解だキャプテン。それならここはキャプテンに任
せる﹂
﹂
頷くスターにウソップとナミはガッツポーズを取る。
﹁でも、海賊を〝専属スター〟になんてしてもいいの
イ金が動くぞケイミー
﹂
れんばかりのスター性を持つ男を、見逃す手はねェぜ。これはドデカ
﹁そこはおれの腕の見せ所ってやつよ。なんにしてもあの身体から溢
?
に。
!!!
たとえ刺し違えようとも、⋮⋮必ずお
﹁ある日突然おれを地獄のどん底へと突き落としやがったその男
のまま救出するために人攫い屋の〝トビウオライダーズ〟と戦う事
いただけで無害と言える性格をしていたので、ナミの許しが出て、そ
そんなはっちゃんはアーロン一味の中にあって、仲間達に流されて
乗り越えて脱走してきたらしい。
はっちゃんはアーロン達が海軍に捕まった中で一人様々な困難を
た。
ロン一味〟の元幹部であるタコの魚人の〝はっちゃん〟の事であっ
しかしそのはっちんとはかつてナミの故郷を支配していた〝アー
一味は流れでそのはっちんを助けに行く事にした。
〝電伝虫〟に連絡が入り、友達の〝はっちん〟が攫われた事を知った
ケイミーに魚人島への行き方を聞こうとしたところで、ケイミーの
∼∼中略∼∼
だが⋮⋮それはまた別の話。
はその業界の中では歴史的な出会いとして長く語られる事になるの
さらにはスターにしてもあまり状況を理解していないものの、これ
雇っていいのかという問題はともかく。
いくらクリミナルと冠しているブランドとはいえ、本物の海賊を
そうしてスターはクリミナルブランドの〝専属スター〟になった。
!
⋮⋮おれは今日ここで⋮⋮
!!!
225
!!!
前を殺す
⋮⋮﹂
海賊〝黒足〟のサンジ
会いたがったぬらべっちゃ
かりやすく○番GRなどと数字が地区番号として割り振られている。
〝ヤルキマン・マングローブ〟は縞々の樹で、それぞれの樹にはわ
とめてシャボンディ諸島と呼ぶ。
79本の樹の島からなるそれぞれに町や施設があって、それらをま
の集まりなのだ。
世界一巨大なマングローブ〝ヤルキマン・マングローブ〟という樹
ではない。
さて、諸島などと言ってはいるが、シャボンディ諸島は厳密には島
ンディ諸島へと向かうのだった。
らの一味は魚人島へ行くために必要な準備をするために、一路シャボ
やっているというはっちゃんの、お礼のタコ焼きを食べながら、麦わ
はっちゃんも無事に救出する事ができたので、今はタコ焼き屋を
着。
なったデュバルに、逆に恩人としてありがたがられるようになって決
の顔面を骨格から変える事で〝人生バラ色ライダーズ〟のヘッドに
そんなサンジとの因縁も、サンジが〝 整 形 ショット〟でデュバル
パラージュ
聞くも涙、語るも涙の悲劇の物語である。
を被り、人攫い屋として生きるようになった。
れるようになったせいで、その仕事もできなくなり、仕方なく鉄仮面
もともと田舎のマフィアではあったものの、レベル違いの敵に狙わ
ぎに命を狙われる日々。
そのために海賊ですらないのにサンジに間違われて海軍や賞金稼
顔をしていたのだ。
デュバルのその鉄仮面の下の顔は、その手配書の似顔絵とウリ二つの
ま る で 呪 わ れ た よ う な 落 書 き 顔 で 手 配 さ れ た 〝 黒 足 〟 の サ ン ジ、
鉄仮面のデュバル〟は奇跡の顔面を持つ男だった。
なぜかサンジに怨嗟の念を向けるトビウオライダーズのヘッド〝
!!!
特徴的なのは、その根っこから特殊な天然樹脂が分泌されており、
226
!!!
樹が呼吸をする時にその樹脂が空気を取り込みまるでシャボン玉の
ように空に上がっていく事だ。
そのためにシャボンディ諸島には多くのシャボン玉が常に浮かん
でいて幻想的な光景を作り出していた。
そして麦わらの一味の次の目的地であった魚人島に行くためにも
ロ グ ポー ス
ロ
グ
また、そのシャボン玉を利用して船をコーティングする事が必要と
なってくるらしい。
ちなみに島ではないために〝記録指針〟の記録が書き換えられる
事はないので停泊する事に問題はなかった。
41番GRにサニー号を停泊させた麦わらの一味はシャボンディ
諸島へと上陸する。
その上陸の際に一味は、はっちゃんからこの島に関する注意事項と
して〝世界貴族〟には何があっても手を出さないようにと教えられ
る。
世界貴族││別名を〝天竜人〟。
天竜人はこの世界の支配者であり、決して逆らう事は許されない存
在だ。
というのも800年前に〝世界政府〟を作りあげた二十人の王達
の末裔こそが天竜人であるからだ。
故に〝創造主〟である天竜人を傷つけると、海軍本部の〝大将〟が
軍を率いてやってくる。
それはつまり、あの〝バスターコール〟以上とも言える戦力が差し
向けられる事に他ならない。
だから逆らえる者などそうそう居るはずもないのだが、そこは権力
に屈しない麦わらの一味なので〝くれぐれも〟とはっちゃんは念を
押した。
まぁそれはともかく⋮⋮今回の留守番はウソップ、サンジ、フラン
キーの三人に決まったので、それ以外の者達は、各々の考えでシャボ
ンディ諸島を回る。
その中でスター。
227
スターは初めこそルフィ達と一緒に行動していたのだが、スターと
しての〝勘〟に導かれ、一人33番GRへ。
そんな30番台GRは〝シャボンディパーク〟という遊園地や、そ
れに関連する施設で構成されており、知ればすぐにルフィ達も来たが
るだろうが、一足先にその場へとやってきたスターは、楽しげな乗り
物類は全て無視してとある建物の前に立った。
その建物〝ライブ会場・シャボンドーム〟。
〟の文字。
パーク内のイベントステージであり、パークの人気とも相まって連
日大盛況の場所だ。
そのドームの前の立て看板に〝飛び入り参加歓迎
まぁ、だからとドームのステージに誰でも立てると問題なので、そ
の下に但し書きとして〝くだらないステージをした者は屈強な警備
員に叩き出された上で参加料100万ベリー頂きます〟と書かれて
いた。
〟
﹁なるほど⋮⋮これは間違いなくおれさまに対する挑戦。いわゆる〝
スターチャレンジ〟だな﹂
実際そういう趣旨のイベントではある。
スターが見てる立て看板には〝キミもスターになるチャンス
さて⋮⋮
おれさまを誰だと思っ
﹂
おれさまはプトレマイオス・E・T・スターだぞ
それじゃあ、一つ〝伝説〟になってくるとしようか
てる
﹁ふふふっ、はーっはっはっはっはっはっ
きだしによる煽り文句が一緒に描かれていた。
とかデフォルメされた遊園地のマスコットであろう存在の口からふ
!
スターが〝伝説〟になっていた頃、ショッピングモールに買い物に
∼∼中略∼∼
それもまた別の話。
における〝伝説のライブ〟として長く語られる事になるのだが⋮⋮
先のクリミナルブランドの経緯よろしく、この事もシャボンドーム
そして││スターはその宣言通りに〝伝説〟となった。
!
!
228
!
!!!
!
行ったナミとロビンの二人とも別れたルフィ達は、当初の予定通り船
をコーティングするための〝コーティング職人〟がいるというBA
Rに来ていた。
そこに着くまでに件の天竜人の姿を見たり、ルフィの首に懸かった
S ぼったくりBA
億越えの賞金を狙った賞金稼ぎ達を返り討ちにしたりしていたが、そ
こら辺は割愛。
そうして辿り着いた店の名は〝シャッキー
R〟。
ボッたくる気を前面に押し出したそのBARではっちゃんに紹介
されたのは、40年前に海賊をやっていたという元海賊で女店主の〝
シャクヤク〟こと〝シャッキー〟。
ルフィ達はそんな年齢には見えないスレンダーな体型を維持した
シャッキーにコーティング職人について聞くが、ここ半年ほど帰って
来てはいないとの事だった。
その代わりに情報通だというシャッキーに、現在のシャボンディ諸
島の状況を教えてもらう。
﹁私の情報網によると、キミ達が上陸した事で、現在このシャボンディ
諸島には⋮⋮12人 〝億〟を超える賞金首がいるわ。モンキー
﹁スターはスターって呼ばないと怒るぞ﹂
﹂
﹁⋮⋮スターちゃんを除いても9人いるって事ね﹂
﹁そんなにィ∼∼∼
チョッパーがシャッキーの言葉に驚くが、それはある意味で必然の
グ ラ ン ド ラ イ ン
出来事であった。
レッ
ド
ラ
イ
ン
偉大なる航路には全部で7本の航路があるが、この先の〝新世界〟に
向かうためには、どうあっても〝赤い土の大陸〟を越える必要がある
ので、その準備をするために他の航路を越えた海賊達も全部この諸島
に集まるのだ。
この島に⋮⋮
﹂
﹁懸賞金で言えば⋮⋮その中でキミはNO.2よ﹂
﹁ルフィより上がいんのか
!!?
﹁ウフフフ⋮⋮情報は武器よ。ライバルの名前くらい知っておいたら
!!?
229
'
ちゃんとロロノアちゃん、プトレマイオスちゃんを除いて││﹂
!
!!?
ただ⋮⋮少数でありながらも〝億〟超えを三人抱えている麦わ
らの一味への注目度は高いわね。そうじゃなくてもあっちこっちで
やらかして来たみたいじゃない﹂
[手配書更新]
カポネ・〝ギャング〟ベッジ:1億3800万ベリー。
〝大喰らい〟ジュエリー・ボニー:1億4000万ベリー。
〝魔術師〟バジル・ホーキンス:2億4900万ベリー。
ユースタス〝キャプテン〟キッド:3億1500万ベリー。
ディエス
〝海鳴り〟スクラッチメン・アプー:1億9800万ベリー。
〝赤旗〟 X ・ドレーク:2億2200万ベリー。
〝怪僧〟ウルージ:1億800万ベリー。
〝殺戮武人〟キラー:1億6200万ベリー。
〝死の外科医〟トラファルガー・ロー:2億ベリー。
シャッキーはあまり興味のなさそうなルフィにそこまでの説明は
しなかったが、これにルフィ、ゾロ、スター、そして王下七武海入り
した〝黒ひげ〟を合わせた十三人が〝超新星〟と言われる新世代の
海賊達であった。
﹁この中の誰かが、次世代の海賊達を引っ張っていく存在になるかも
ね。いずれにしろこれだけのルーキーがなだれ込めば、〝新世界〟も
タダでは済まないでしょうね﹂
﹁まーおれは、とりあえず楽しけりゃいいや。││でも、そんな荒れた
町にいるって心配だな。職人のおっさん﹂
﹁ウチの人なら大丈夫よ﹂
ルフィの言葉にシャッキーはタバコをふかしながら、軽く笑った。
﹁ボーヤ達の100倍強いから﹂
∼∼中略∼∼
シャッキーがそう言うのも当然の事だ。
230
?
何せルフィ達が探すコーティング職人とは〝海賊王の右腕・冥王・
シルバーズ・レイリー〟その人だったのだから。
しかしそのレイリー、ウェーブの掛かった白髪に丸メガネ、視力は
グ ラ ン ド ラ イ ン
ク ルー
あるようだが右目の傷と口髭が特徴の、矍鑠とした人の良さそうな老
人なのだが、偉大なる航路を制した船の船員なだけあって豪放な性格
をしているようだった。
ヒューマンショップ
というのも、どこに行ったのかと思ってみれば、なんとギャンブル
で負けて〝 人 間 屋 〟が開催する奴隷オークションに身売りをして
いたのだ。
ちなみにその身売りも店から金を盗むためのものだったらしい。
そんな海賊王をよく知る男との出会い、それはルフィ達がレイリー
を探すと言いながら、やはり向かったシャボンディパークで人魚のケ
イミーが攫われた事から端を発した。
だが、そもそもなぜケイミーは攫われたのだろうか。
実は先のはっちゃんを救出した出来事にしても〝人攫い屋〟達の
本来の標的はケイミーであった。
もともと魚人や人魚は200年前に世界政府が魚人島への交友を
発表するまで〝魚類〟と分類されていて、魚であるから人権はなく迫
害や差別の対象となっており、このシャボンディ諸島ではまだその〝
悪い歴史〟が残っていた。
それだけではなく、実はシャボンディ諸島は人身売買もいまだに文
化として黙認されている場所なのである。
故に海賊とはまた別の無法者も多い。
基本的には海賊のような〝悪人〟が奴隷として取引されるのだが、
〝悪い歴史〟が残っているために魚人や人魚は〝悪人〟でなくても
売られ、そしてその中で容姿の整った者が多い人魚は総じて高額で取
引される。
そんなだから人魚であるというだけでケイミーはこの島では狙わ
れる立場で、しかしルフィ達の誘惑を断れず、子供の頃からの夢だっ
た遊園地で遊んでいたために、絶好の獲物とばかりに〝人攫い屋〟達
に狙われ、まんまと攫われてしまったというわけだ。
231
けれどルフィ達がそんな事を許すわけがない。
同じく遊園地にいたスターと他の場所にいる一味にも〝電伝虫〟
で連絡を取り、ケイミー大捜索網を張る。
その捜索には元同職種である〝人生バラ色ライダーズ〟も恩人と
ヒューマン
なったサンジの協力要請で動き、見事にその場所の当たりをつけた。
その場所こそがレイリーもいるショボンディ諸島1番GR〝 人 間
﹂
オークション〟の会場であり、その出会いへと繋がっていったのだ。
﹁ヴォゲァア
・
・
・
・
・
ルフィの拳がその男に突き刺さると、それまで騒がしかった会場が
そのあり得ない事態に沈黙した。
⋮⋮関係ないな。おれさまのファ
﹁悪い。お前ら⋮⋮コイツ殴ったら海軍の〝大将〟が軍艦引っ張って
くんだって⋮⋮﹂
﹁はーっはっはっはっはっはっ
ん殴った。
﹂
!!!
そして巻き起こる大混乱。
﹁海軍〝大将〟と軍艦を呼べ
目にものを見せてやれ
炎なのか常に鼻水を垂らしている〝チャルロス聖〟を問答無用でぶ
シャボン玉を使い、宇宙服のような恰好をしている天竜人の一人、鼻
下々の者と同じ空気を吸いたくないという理由で、この島特有の
であるというだけではっちゃんを撃った男を││。
その場所に辿り着いたルフィは、ケイミーを買おうとした上に魚人
﹁お前がぶっ飛ばしたせいで⋮⋮斬り損ねた⋮⋮﹂
ンを金で取引しようなんて奴らはぶん殴られて当然だ﹂
!
﹂
!!!
行ってやろうか
││ぶべっ
﹂
﹁ち っ ⋮⋮ 文 句 が あ る な ら お 前 で 来 い よ。そ れ と も、お れ さ ま か ら
!!!
﹁ふふん、スターなおれさまはロックな行動もお手のものだ﹂
聖〟との距離を詰めるとこちらも躊躇なくぶん殴る。
聖の父親であり、チャルロス聖が殴られた事に激怒する〝ロズワード
先程こそルフィに後れをとったが、スターはそう言ってチャルロス
﹁な、ま、待てェ
!!? !
232
!!?
はっちゃんが〝くれぐれも〟手を出してはいけないと言った天竜
人。
麦わらの一味はそのはっちゃんが手を出された事で、相手がどんな
人物であるかなど関係なく、いつものようにケンカを売った。
﹁ふふ⋮⋮面白れェもん見せてもらったよ。麦わら屋一味﹂
﹁何だお前⋮⋮何だ、そのクマ﹂
混乱する会場の中でルフィに話しかけてきたのはぶち模様の入っ
た白い毛皮の帽子を被ったシャツとジーンズのラフな格好をした細
身の男。
ドクロのようなニコマークのようなプリントが入ったシャツから
覗く腕や手には刺青が彫られており、この状況でも動じずにいるクー
ルな姿からはただ者ではないという雰囲気が現れている。
だがそれも当然だ。
その男こそ、十三人の〝超新星〟の一人、〝死の外科医〟トラファ
ヒューマン
この〝 人 間 オークション〟の会場にはルフィ、ゾロ、スター、そし
てローの四人の他に後二人の〝超新星〟が存在していた。
海軍の目的はその誰か、あるいは全員なのか
それとも⋮⋮。
しかしこの場所にはそんな今はまだルーキーである彼らよりもよ
?
233
ルガー・ローであるのだから。
しかし、ルフィが気になるのは、そのローと一緒にいるつなぎを着
た白熊の方らしい。
その白熊はローが船長を務める〝ハートの海賊団〟の航海士で〝
ベポ〟。
人語を喋り、武術も嗜むが、チョッパーと同じ経緯を辿りでもした
のか懸賞金はたった500ベリーだったりする。
﹁まさか天竜人をなんの躊躇もなくぶっ飛ばすとはな。オークション
﹂
が始まる前からこの会場を取り囲んでいる海軍の奴らも、この事態に
海軍はもう来てんのか
は泡を食っている事だろう﹂
﹁えェ
!!?
﹁ああ⋮⋮誰を捕まえたかったのかは知らねェがな﹂
!!?
ほど大物││ここでようやくその名前と姿を現す〝海賊王の右腕・冥
・
・
・
・
・
王〟シルバーズ・レイリーもいるのである。
﹁その麦わら帽子は⋮⋮精悍な男によく似合う⋮⋮ 会いたかった
ぞ。モンキー・D・ルフィ﹂
伝説を知り、自身もまた伝説として語られる男、シルバーズ・レイ
リーは懐かしいものを見るような目でルフィにそう告げた。
∼∼中略∼∼
かつて海で遭難しているところをはっちゃんに助けられて以来の
仲だと言うレイリーは、現れただけでその場を一気に支配した。
ルフィ達や〝超新星〟の海賊一味などを残して、会場中の衛兵達を
指一本触れる事もなく全て一瞬にして気絶させる。
・
・
・
ビリビリとした空気が肌に痛い。
﹁悪かったなキミら⋮⋮見物の海賊だったか⋮⋮今のを難なく持ち堪
えるとは、半端者ではなさそうだな﹂
間違いねェ、なぜ、こんなと
﹁││まさか、こんな大物にここで出会うとは⋮⋮﹂
﹁〝冥王〟シルバーズ・レイリー⋮⋮
ころに伝説の男が⋮⋮﹂
つ赤い髪にゴーグル、黒いロングコートに身を包んだルフィよりも高
い懸賞金が懸けられた男ユースタス〝キャプテン〟キッドとその海
賊団の戦闘員であるキラー達に注目する。
﹁││この島じゃ、コーティング屋の〝レイさん〟で通っている⋮⋮。
下手にその名を呼んでくれるな。もはや老兵⋮⋮平穏に暮らしたい
のだよ﹂
直〝大将〟が到
そう嘯くレイリーの言葉を遮るように会場の外からは大音声が聴
こえてきた。
﹄
!!!
﹃犯人は速やかにロズワード一家を解放しなさい
!!!
234
!
レイリーは会場に残るローの一味と、残る二人の〝超新星〟、逆立
!!!
着する。早々に降伏する事を勧める。││どうなっても知らんぞ
ルーキー共
!!!
﹁おれ達は巻き込まれるどころか⋮⋮完全に共犯者扱いだな﹂
﹂
﹁〝 麦 わ ら 〟 の ル フ ィ と そ の 一 味 の 噂 通 り の イ カ レ 具 合 を 見 れ た ん
だ。文句はねェが⋮⋮〝大将〟と今ぶつかるのはゴメンだ⋮⋮
る。
表の掃除はしといてやるから安心しな﹂
﹁お前ら二人に下がってろと言ったんだ﹂
﹁もう一度おれに命令したらお前から消すぞ。ユースタス屋﹂
も譲れねェ
﹂
﹁││だが、一番目立つのはおれさまだ
スター、ずるいぞ
お前、空を飛べるからって
〟の上にステージよろしく立っていた。
そこにはいつの間にか、目立ちたがりのその男が、〝スターシップ
﹁⋮⋮スター屋。麦わら屋の一味の懸賞金NO.2だったな﹂
﹂
こればっかりはルフィに
構えていた海軍の大砲も簡単に無効化した。
ルフィ以外の二人も何がしかの能力者のようで、陣形を組んで待ち
並び立つ三人の〝 船 長 〟。
キャプテン
先
右から〝3億〟、〝3億1500万〟、
構えろ ││あれは三人共〝船長〟だ⋮⋮
海賊団を率いる立場の三人の〝船長〟は譲る事のできない意地を張
いずれ自分達の夢に立ち塞がりそうなライバルの存在に、それぞれ
ている。
今は同格とされている〝超新星〟同士、その格付けはすでに始まっ
葉にルフィとローがカチンとキレる。
そう言って会場を後にしようとするキッドの、上から目線のその言
だ。お前ら助けてやるよ
﹁長引くだけ兵が増える。先に行かせてもらうぞ。││もののついで
海軍に正体がバレては住みづらい﹂
﹁あー、私はさっきのような〝力〟はもう使わんのでキミら頼むぞ。
!
!!!
!!!
!!!
並び立つ三人の〝船長〟達││のその上空。
﹁あーっ
!!!
235
!
!!!
!!!
﹁出てきたぞ
﹂
!!!
﹁お前ら⋮⋮下がってていいぞ﹂
〝2億〟⋮⋮
陣切って出てきやがった
!!!
!!!
﹁空飛ぶ船⋮⋮コイツの仲間か﹂
!!!
﹂
﹂
その周囲には無数の星〝トリックスターボム〟が浮かび、会場を取
り囲む海軍の陣形を壊していく。
﹁ど、どう対処すればいんだこんな奴ら
何とか〝大将・黄猿〟到着まで持ち堪えろ
!!!
﹂
サード
!!!
﹁この腕は巨人族の腕だ﹂
﹁ひ、怯むな、武器を構えろ
必ずスキはある
首の状態になってすらも変わらず喋るし動いている。
おらず、戦闘不能である事には違いないが、胴が斬り離されたり、生
しかし不思議な事に、その海兵達の身体からは血の一滴すらも出て
スパと斬れた。
手にした大太刀をその場で振るうだけで離れた海兵達の身体がスパ
そしてそのフィールドの中は全てローの間合いだとでも言うのか、
たフィールドが生まれる。
ローが〝ROOM〟と呟くと、円系の薄い膜のようなものが張られ
﹁││そんなに待ってられるかよ﹂
﹁怯むな
!!?
││しかし武器が
﹂
!!!
巨大化させる。
﹁大佐
飛んでいきます
ローから少し離れた場所ではルフィが〝ギア 3 〟を発動し、腕を
!!!
!!!
寄せられるようにキッドの腕に。
いや、それだけではなくあちらこちらから武器がキッドの腕に集
まっていく。
﹂﹂﹂﹂﹂
そしてキッドはルフィの腕にも劣らず巨大な鋼鉄の腕を作り出し
た。
﹁﹁﹁﹁﹁う、うわぁ∼∼∼∼∼∼∼ッッッ
〝超新星〟達は止まらない。
!!!
た。
﹁来たな。もう向こうに作戦なんかねェ。後は⋮⋮大乱闘だ⋮⋮
残るそれぞれの一味も会場から現れ、この場での形勢は完全に喫し
!!?
お 前 に 一 目 会 え て よ か っ た
│ │ そ れ じ ゃ あ な 〝 麦 わ ら 〟 ⋮⋮
!
﹂
⋮⋮次に会った時は容赦しねェ⋮⋮
!
236
!!!
その言葉通りルフィに向けられるはずだった海兵達の武器は引き
!!!
ワ
ン
ピー
ス
キッドがそう言うとルフィは〝にぃっ〟と笑った。
﹂﹂
﹁⋮⋮ふーん、でも〝ひとつなぎの大秘宝〟はおれが見つけるぞ﹂
﹁﹁
﹁おれ達の通ってきた航路じゃあ、そんな事口にした奴は大口開けて
││〝新世界〟で会おうぜ﹂
││だが、この先は⋮⋮それを口にする度胸のねェ奴
笑われたモンだ。その度におれは⋮⋮笑った奴らを皆殺しにしてき
たがな⋮⋮
が死ぬ海だ⋮⋮
るのだろう。
海賊王の船にィ∼∼∼∼∼∼∼
その時はきっとそう遠い未来ではない⋮⋮。
∼∼中略∼∼
﹁え∼∼∼∼∼∼∼
!!?
﹂
グ ラ ン ド ラ イ ン
﹂﹂﹂
﹂
一味は海軍に捕まっ
?
そもそも偉大なる航路を制した、最強の海賊とも言える海賊王がな
たんだろう
のあんたは打ち首にならなかったのか⋮⋮
﹁しかしよ、ゴールド・ロジャーは22年前に処刑されたのに、副船長
疑問を投げかける。
それから少しして場が落ち着きを取り戻した頃⋮⋮サンジがある
自己紹介に驚愕の声を上げた。
AR〟へと無事に戻ってくる事ができた麦わらの一味は、レイリーの
'
﹁﹁﹁副船長∼∼∼∼∼∼∼
ヒューマン
!!?
〝 人 間 オークション〟会場から〝シャッキー
S ぼったくりB
﹁ああ。副船長をやっていたシルバーズ・レイリーだ。よろしくな﹂
!!?
しかし彼らが目指すものが同じであるのならば、再び交わる時は来
れの道へと歩き出す。
どんな運命の悪戯か一つの場所に集った三人の〝船長〟は、それぞ
ローもまたキッドとは別の方向へと。
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
認めたのか、目指すべき場所の名前を口にして去って行く。
ルフィの宣言に対して、同じ夢を持つキッドは競うに足る存在だと
!
!
?
237
!
ぜ22年前に海軍に捕らえられ処刑されたのか。
そんな歴史の謎が今、当事者であったレイリーの口から語られてい
く⋮⋮。
﹁捕まったのではない⋮⋮ロジャーは自首したのだ⋮⋮﹂
それは海軍の勝利、海軍の大手柄からなるものではなかった。
ロジャーは処刑から遡ること4年前⋮⋮つまり26年前に不治の
病に罹ったのだという。
自分に終わりが来る事を知ったロジャーは、誰にも治せないその病
に苦しみながらも、唯一その症状を和らげる腕を持っていた、今は双
子岬でラブーンを見守りながら灯台守をやっている医者〝クロッカ
ス〟を〝船医〟として仲間に加え││。
グ ラ ン ド ラ イ ン
そ の 〝 最 後 の 航 海 〟 に お い て、達 成 は 不 可 能 だ と 思 わ れ て い た
﹂
偉大なる航路の制覇を成し遂げたのだ⋮⋮。
﹁ク⋮⋮ク⋮⋮クロッカスさん
﹂
﹁そういえば⋮⋮数年〝船医〟をやったって言ってた。じゃあ、その
3年間海賊をやってたのね
!
可愛がっていて⋮⋮クロッカスは何やら⋮⋮探したい海賊団がいる
と乗船を承諾してくれたのだが﹂
そんな事までして⋮⋮
﹂
﹁ブルック それ完璧におめェらを探しに海に出たんじゃねェかよ
﹂
﹁ク⋮⋮クロッカスさん⋮⋮
そして││。
欲しけりゃくれてやるぜ⋮⋮探してみろ。この世
?
が、世 の 中 は 〝 大 海 賊 時 代 〟 と な り │ │ 海 賊 王 の 遺 し た 宝 〝
海賊王の仲間達は〝船長命令〟で解散し、バラバラとなっていた
を変えた。
その処刑の場において海賊王がにやりと笑って遺した言葉は世界
計を案じて自首。
海賊王と呼ばれるようになったロジャーは、己の先のない未来に一
の全てをそこに置いてきた﹄
﹃おれの財宝か
!
!
238
!!?
﹁キミらが会ったという事は⋮⋮まだ元気でやっとるか クジラを
!
!
!
ワ
ン
ピー
ス
ひとつなぎの大秘宝〟を求めて、野望ある者達は海に生きる事を決め
た。
﹁残り数秒、僅かに灯った〝命の火〟を、奴は世界に燃え広がる〝業火
〟に変えた。あの日ほど笑った夜はない⋮⋮ あの日ほど泣いた
﹂
夜も⋮⋮酒を飲んだ夜もない⋮⋮
生だった⋮⋮
﹂﹂﹂
!
我が船長ながら⋮⋮見事な人
!
みてェだな﹂
﹁⋮⋮ふふふっ、はーっはっはっはっはっはっ
!
ただ死んだ男の人気を超えるだけじゃつまら
!
これは間違いなく次は〝大スター時代〟が来るな⋮⋮
とおれさまが困る
ねェ⋮⋮
﹂
それくらいでない
﹁じゃあ⋮⋮まるで、この〝海賊時代〟は意図してロジャーが作った
別の話みたい﹂
﹁なんかスゴイ話、聞いちゃったみたい⋮⋮。当事者から聞くとまた
﹁﹁﹁⋮⋮⋮⋮
!!! !!!
﹂
!
の本職を果たすとしよう⋮⋮﹂
イーストブルー
〝Dの意思〟っていったい何⋮⋮
?
そうして酒を置き立ち上がったレイリーをロビンが呼びとめる。
ポー ネ グ リ フ
﹁レイリーさん、質問が⋮⋮
﹂
!
﹁さァ﹂
﹁何の話だ
﹂
刻まれていた。彼はなぜあの文字を操れたの⋮⋮
﹂
﹁空島で見た〝歴史の本文〟に古代文字を使って、ロジャーの文字が
﹁⋮⋮
﹂
﹁││さて、状況も状況。船のコーティングの依頼だったな。私も今
た。
ギー〟も海賊王の船で見習いをやっていた事を麦わらの一味は知っ
その後ルフィの恩人である〝シャンクス〟や東 の 海で争った〝バ
人間だけだ⋮⋮
﹁ははは、それでいいのだよ。今の時代を作れるのは、今を生きている
﹁スターらしいけどね﹂
﹁コイツはコイツでぶれねェな⋮⋮﹂
ははっ
!
?
!!?
239
!
!
﹂
﹁⋮⋮あなた達は900年前に始まる〝空白の100年〟に、世界に
何が起きたかを知ってるの
﹂
││それでも、聞きた
ゆっくりと世界を見渡して、その後に導き出す
答えが我々と同じであるとも限らない⋮⋮
できやしない⋮⋮
﹁キミ達に今ここで⋮⋮歴史の全てを話しても、今のキミらには何も
﹁
ぎたのかもしれん⋮⋮﹂
ずつ進みなさい。我々もまた⋮⋮〝オハラ〟もまた⋮⋮少々急ぎす
﹁││だが、お嬢さん、慌ててはいけない⋮⋮。キミ達の船で⋮⋮一歩
しかし、レイリーはそんなロビンに対して諭すように喋る。
は高鳴った。
こんなにも突然に自分の望む答えを持つ者の出現にロビンの心臓
﹁ああ。知っている⋮⋮我々は⋮⋮歴史の全てを知った⋮⋮﹂
して、レイリーは少しの沈黙の後に頷いた。
事情のわからぬ麦わらの一味の中で必死な表情で問うロビンに対
!!?
事だった。
﹂
﹁何 だ い い の か ロ ビ ン
じゃねェか
﹁⋮⋮﹂
!
﹁あの、おっさん おれも1コだけ聞きてェんだけど
〝ひとつ
今 な ん か す げ ェ チ ャ ン ス を 逃 し た ん
レイリーの言葉に、仲間を信じられるその心が、今は真実よりも大
〝いつか必ずその瞬間は訪れる〟。
その機会を前にして、首を振った。
その真実を手にするためだけに生きてきたはずのロビンは、しかし
﹁⋮⋮いいえ、やめておくわ。旅を続ける﹂
いと言うのなら、この世界の全てを、今、話そう﹂
!
!
⋮⋮﹂
﹂
して怒声を上げて、その言葉を遮る。
それまでぼけーっと話を聞いていたルフィがウソップの質問に対
﹁ウソップ∼∼∼∼∼∼∼っ
!!!!!
な ぎ の 大 秘 宝 〟 │ │ 〝 ワ ン ピ ー ス 〟 っ て の は 本 当 に、最 後 の 島 に
!
!!?
!
!!?
240
!
宝があるかないかだって
ここでおっさんから何か教えてもらうなら、おれ
何もわかんねェけど、みんなそうやって命懸けで海
﹁宝がどこにあるかなんて聞きたくねェ
聞きたくねェ
に出てんだよっ
!!!
は海賊やめる﹂
﹂﹂﹂
!!!
謝った。
﹂
お⋮⋮おれだって聞きたくねェよ
﹁わ わ わ ⋮⋮ 悪 か っ た
滑ってよ
ん、何も喋んじゃねェぞ
﹂
そうだ、おれ
おい、おっさ
!
﹂
敵も強い。キミにこの強固な海を支配できるか
支配なんかしねェよ。この海で一番自由な奴が海賊王だ
遥かに凌ぐぞ
﹁
﹁やっぱり私モンキーちゃんのファンだわ﹂
﹂
!!?
﹂
たとえ、過去だろうと未
来だろうと、これからのおれさまの人気に││〝海賊王〟は敵わない
なるならおれさまのファンになるべきだ
﹁ちょっと待て⋮⋮。他は概ねルフィに同意してもいいが、ファンに
そしてその言葉に引っかかるスターが一人。
キーも笑顔でそんな事を口にする。
今度こそはっきりと微笑みを浮かべるレイリーに、女店主のシャッ
!!!
!
﹁やれるかキミに⋮⋮〝偉大なる航路〟は、まだまだキミらの想像を
グ ラ ン ド ラ イ ン
そのやり取りに僅かに口角を上げたレイリーが尋ねる。
!!!
!!!
!
!
〝ワンピースについて知ったら死ぬ病〟だったァ
!!!
わ か っ て た ん だ け ど、口 が 勝 手 に 今 ⋮⋮
本気で怒っているルフィの姿にウソップはバタバタと手を振って
﹁つまらねェ冒険なら、おれはしねェ
!!!!!
﹁﹁﹁
!!!
!
﹁あら﹂
ス
ター
﹁ふふふ、キミの仲間もまたおもしろいな﹂
﹁おう。スターは世界一の有名人になる男だからな。おれも負けてら
れねェ﹂
﹁なんだお前ら⋮⋮それは間違いなくおれさまに対してステージのリ
クエストだな。今日はすでに一つ大きな仕事をこなしたが、まぁいい
241
!!?
﹁⋮⋮そうか﹂
!
!!!
アホめ
﹂
!
天竜人を
だろう。本当のスターは求められたらいつでも全力を尽くすもの
身を隠すんだよ
おれ達は追われてんだよ
﹁じゃあ、私はショッピングにでも⋮⋮﹂
ライフ
﹁ほのぼの人生か、お前ら
ぶん殴ったのを忘れたか
﹂
!!! !!!
﹂
!!!
ると思う。シャッキー、あれがあったろ﹂
﹁ええ。一枚あるわよ﹂
話が全然進まねェ
!
﹁いやいや、ステージはするぞ。すぐに準備を││﹂
﹁だからお前はいったん黙れスター
﹂
よう。とはいえ、私もフダツキだ。実際の作業はどこかへ移動してす
﹁ステージはしないのか。では私は41番GRでキミ達の船を見て来
﹁││人のツッコミを無視してそこで言い争うな
﹁いいじゃないの。スターのステージはいつでも見れるんだから﹂
う事だ﹂
﹁おい、ナミ、おれさまのステージを見ないでショッピングとはどうい
!!!
く先で、コーティングを済ませ、キミ達を待っている。魚人島への海
私はその時何番GRにいるかわからんが、その〝ビブルカード〟の導
﹁コーティング作業には3日貰おう。命を預かる作業だ、それが最速。
した紙もこの〝ビブルカード〟である。
ちなみに、少し前の話になるが、アラバスタでエースがルフィに渡
議紙〟だ。
持ち主が弱ると〝ビブルカード〟も小さくなっていくという〝不思
別名〝命の紙〟とも呼ばれ、その持ち主の生命力と連動していて、
それによってその持ち主がいる方角がわかるというアイテムだ。
〟の方に向かって動く。
混ぜて作る特殊な紙の事で、一部をちぎって床などに置くと、〝親紙
〝ビブルカード〟とは〝新世界〟にある店で、自分の爪の切れ端を
をよそに、レイリーはルフィ達に〝ビブルカード〟をちぎって渡す。
ステージをしたくて騒ぐスターとそれを止めようとするウソップ
!
中航海に備え、必要な物を買っておくといいだろう﹂
∼∼中略∼∼
242
!!!
!!!
ヒューマン
レイリーとした約束から、3日間という時間を潰さなくてはならな
く な っ た 麦 わ ら の 一 味 だ っ た が、〝 人 間 オ ー ク シ ョ ン 〟 の 一 件 に
よって、海軍の手はすぐそこまで迫っていた。
すでにシャボンディ諸島のあちらこちらで〝億超えルーキーズ〟
そいつは七武海の一人だ
﹂
と海軍〝大将〟を始めとした海軍との戦いが始まっている。
ルフィ
そしてそれは麦わらの一味のところでも⋮⋮。
﹁さがれ
!!!
﹂
んだ強敵だ。
﹁ビーム
!
﹁な、何ィ∼∼∼
﹂
﹁気をつけろ、スターのより貫通力がある⋮⋮
﹂
のだが、くまは掌からビームを撃ち出して攻撃してきた。
一味は〝ニキュニキュの実〟による大気の衝撃波を警戒していた
﹁おれさまのパクリか
﹂
あの時は満身創痍の身ではあったものの、一味を戦闘不能に追い込
君〟くまであった。
麦わらの一味の下に現れた追手は、スリラーバークで遭遇した〝暴
!!!
!
キーズ〟の下にもくまは現れていた。
﹂
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮そんなに違うのか⋮⋮
双子なんじゃねェか⋮⋮
﹂
!!?
﹂
!
なる⋮⋮
﹁たとえ別人でも、無関係ではないんだろ
だったら、前回のお返し
だが、それならそれで問題だ。こんなに強ェのが二人もいるって事に
﹁肉球がないし、あのビーム⋮⋮フランキーと同じ〝改造人間〟⋮⋮
﹁それも考えられる⋮⋮
! !!?
ハァ⋮⋮じゃ、あいつ
何より、一味にはわかるはずもない事だったが、他の〝億超えルー
だいぶ違う。
敵対しているのだから、喋らないのはともかくとしても、雰囲気も
の時と攻撃手段が違うのか。
スターがその事実に憤っているが、それよりもなぜスリラーバーク
!!?
243
!!!
!!?
!
だ
﹂
﹁三刀流⋮⋮﹂
ディアブル
﹁〝ゴムゴムの〟﹂
﹁〝悪魔風〟﹂
ムートン
スターキャノン
﹁﹁﹁﹁〝羊肉JET六百煩悩攻城星砲〟
﹂﹂﹂﹂
七武海
﹂
﹂
てめェら〝パシ
一味はかなりの消耗をしながらも、くまのような存在を倒す事に成
功した。
しかし、その事に対して安堵するのも束の間。
﹁オイオイ⋮⋮何て無様な姿だ〝PX│4〟⋮⋮
フィスタ〟を一人造るために軍艦一隻分の費用を投入してんだぜ
またいるぞ∼∼∼
!!!
!
!
新たな敵が新たなくまのような存在を引き連れて現れる。
﹁うわぁ∼∼∼
!!!
﹂
!!?
れるか⋮⋮
ハァ⋮⋮
﹂
パ シ フィ ス タ
﹁本物だろうが偽物だろうが、七武海もどきとの連戦なんてやってら
﹁も⋮⋮もしかして、あれが本物か
!!?
!
﹂
﹁⋮⋮おい
いきなり現れやがって、名前くらい名乗ったらどうだ
腹当て、巨大な鉞を担いだかなり特徴的な格好をしていた。
くまのような存在の事を〝平和主義者〟と呼ぶ男は、おかっぱ頭で
!
!
丸〟だ。したがって口も堅いんだ﹂
﹁戦桃丸だな⋮⋮﹂
﹂
﹁あ、今のはわいが自発的に教えたんだぜ。てめェらの質問には答え
ねェ。││始めるぞ、〝PX│1〟
戦ってられないぜ
﹂
﹁ああ⋮⋮ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮ここは逃げよう
﹂
﹁おいおい、こんな何人いるかもわからないような奴、イチイチ全部
ビームが射出され、一味を襲う。
戦桃丸の号令で、PX│1と呼ばれたくまのような存在の掌から
!!!
しかし││。
ルフィの言葉にスターが〝スターシップ〟を出す。
!!!
!
244
!!!!!
!
﹁何も答える筋合いはねェな。わいは世界一ガードの堅い男。〝戦桃
!
﹁﹁﹁
﹂﹂﹂
﹂
!!?
﹂
!!!
した。
﹁誰だ
おれさまの〝スターシップ〟を
〝スターシップ〟はどこかから飛んできたビームに貫かれて爆散
﹁⋮⋮〝スターシップ〟が
!!?
﹂
!
﹁ゾロ
﹂
﹂
その男海軍〝大将〟よ
やっと来たか、黄猿のオジキ⋮⋮﹂
││気をつけて
﹁あいつもビームを⋮⋮
いいよォ∼∼∼﹂
﹂
﹂
﹂
!!!
ゾロが危ねェ
なんでだ当たらねェ
!!!
﹁危ねェ
﹁ちくしょう
!!!
!!!
ちょっと、どうしたら⋮⋮
!!!
!!!
﹁刺さりもしません
﹂
﹁一発KOとはずいぶん疲れが溜まってたんだねェ。ゆっくり休むと
!
!
﹁くそっ、やっぱりあの野郎、まだ身体が⋮⋮
﹂
運悪くいたゾロがどさりとその場に倒れこんだ。
られた指先から放たれたビームに貫かれ、黄猿が現れた場所のそばに
それが事実である事を証明するかのように、そんな軽口の中で向け
﹁ぐっ⋮⋮
でもない事のように軽く言う。
ルフィ達と同格とされる海賊をすでに数人倒してきたと黄猿は何
思うけどねェ∼∼∼﹂
から、その後の事は知らないねェ∼∼∼。何もなければ捕まえてると
﹁何人かは戦闘不能にしたんだけどねェ∼∼∼、君から連絡があった
!!!
!
〟の黄猿であった。
黄猿⋮⋮
﹂
!!!
﹁ったく、遅ェんだよ
﹁
﹁││〝大将〟
!!! !!?
﹁オジキ、他のルーキーは始末してきたのか
﹂
を羽織ったその男こそ、あの青キジとタメを張る実力者、海軍〝大将
縦縞のスーツにサングラス、〝正義〟の二文字を背負う海軍コート
そして麦わらの一味の前に現れた男。
﹁⋮⋮ん∼∼∼、空に逃げられると厄介だからねェ∼∼∼﹂
!!?
!!!
245
?
!!!
指先だけではないのか光る足をゾロに向ける黄猿に対して、ウソッ
プとブルックがその行動を阻害しようと攻撃するも、その全てがすり
抜けていく。
ロ
ギ
ア
﹁ムダだねェ⋮⋮わっしは〝ピカピカの実〟の⋮⋮〝光人間〟だから
ね﹂
ロ
ギ
ア
海軍〝大将〟の黄猿もまた自然系の能力者であった。
﹂
そうであるなら、これまでの自然系の能力者達と同じく通常の方法
ではダメージを与える事はできない。
﹁〝スーパースター〟に不可能はねェ
﹁やってみろ
﹂
﹂
ヨっ子に不可能を教えてあげるよォ∼∼∼﹂
﹁で も ム ダ だ よ ォ ∼ ∼ ∼。そ う だ と わ か っ て れ ば ね ェ ∼ ∼ ∼ ⋮⋮ ヒ
﹁〝スターオーラ〟だ
﹁おっとォ∼∼∼、麦わらの一味にも〝覇気〟使いがいたのかい﹂
るとその勢いのままに黄猿を吹き飛ばした。
スターは〝スピードスター〟によって、一気に黄猿との距離を詰め
だから、この状況で唯一対抗できるのはこのスターだけであった。
!!!
る。
当然のようにそこからはビームが射出されるが、スターは指先を向
けられた瞬間にはその射線から外れておりビームを避ける。
攻守逆転、スターは黄猿のビームを避けた勢いそのままに〝スター
ビームソード〟で斬りかかり││黄猿はその攻撃をマトモに身体で
﹂
受けた。
﹁
ロ
ギ
ア
らは血の一滴も流れない。
それは自然系特有の攻撃の無効化現象に他ならなかった。
﹁な、なんでだよ⋮⋮さっきはスターの攻撃が当たってじゃねェか
だ
﹂
なんでスターの攻撃もおれ達みてェに当たらなくなっちまったん
!!!
246
!!!
黄猿はスターの一撃を受けた腕を軽く振ると、指先をスターに向け
!!!
ズブリとスターの剣が黄猿の身体を貫いているにも拘らず、そこか
!!?
!!?
﹁そんなの決まってるよォ∼∼∼、これが〝格〟の違いだよ。〝覇気
〟は万能技なんかじゃないのさァ∼∼∼。同じく〝覇気〟を纏った
﹂
〝格上〟の相手の〝特性〟は無効化できない。〝新世界〟の常識な
んだねェ∼∼∼﹂
﹁おれさまの〝スターオーラ〟がお前より劣ってるだと⋮⋮
﹂
﹁そういう事だねェ∼∼∼﹂
﹁冗談じゃねェ
それでもスターは善戦したのだろうか。
E・T・スター﹂
懸 賞 金 1 億 7 7 7 7 万 7 7 7 7 ベ リ ー 〝 輝 き 〟 の プ ト レ マ イ オ ス・
﹁そうだよォ∼∼∼。冗談なんかじゃなく、ここで死ぬのさァ∼∼∼。
!!?
光の速さの攻撃手段を持つ黄猿を相手に数十秒⋮⋮その援軍が到
着するまでの時間を稼いだのだから。
﹂
!!!
彼らの時代は
﹁││⋮⋮あんたの出る幕かい。〝冥王〟レイリー⋮⋮
﹂
﹁若い芽を摘むんじゃない。これから始まるのだよ
⋮⋮
!
今のおれ達じゃあこいつらには勝
れる寸前だったスターの命は守られた。
﹂
逃げる事だけ考えろ
だが││。
﹁全員
てねェ
⋮⋮
ハァ⋮⋮
﹂
﹁ハ ァ ⋮⋮ く そ っ ⋮⋮ こ の 状 態 じ ゃ、〝 ス タ ー シ ッ プ 〟 は 出 せ ね ェ
いる。
レイリーが黄猿を抑えてくれても、戦桃丸にPX│1と敵は残って
!!!
﹁くそォ
みんな、やられる⋮⋮
﹂
黄猿との戦闘で消耗した今のスターでは、出す事ができなかった。
は相応の体力がいる。
黄猿に壊された〝スターシップ〟を再び完全な状態で出すために
!
!!!
先の黄猿による一撃も重い。
スリラーバークの一件でまだ傷が治りきっていないゾロ。
!!!
247
!!!
異常を感じて、引き返してきたレイリーによって、危うく摘み取ら
!!!
!!! !!!
!
そのフォローをしようとして、サンジとブルックも無理をして倒れ
込んだ。
ルフィは〝ゴム人間〟という特性を〝覇気〟で無効化してダメー
﹂
ジを与えてくる戦桃丸との戦いだけで手一杯だ。
﹁やめろよ、お前ら∼∼∼
ンスター化に望みを託した。
!
﹂
サンジ、ブルック、立て
ルボール〟を過剰服用する事によって、エニエス・ロビーで行ったモ
チョッパーはそんな状況に自分の形態変化の制御をする〝ランブ
!!!
﹁ブォオオオオオオオッッッ
!!!
またアレを⋮⋮
!
こ こ を 離 れ る ん だ 早 く ⋮⋮ ま た ビ ー ム が 来 る
﹁チョッパーの奴⋮⋮
﹂
ハ ァ ⋮⋮
ぞ
!!!
!
﹂
もうイヤだ∼∼∼
一人くまのような存在⋮⋮いや、くま。
﹂
!!!
﹁待て⋮⋮PX│1﹂
﹁喋った
ら
﹁どうなってんだよ
!
﹂
?
ゾロ⋮⋮
⋮⋮
ゾロ
???
何人いるんだよコイツ
﹂
!!?
なくなっていた。
﹁え⋮⋮はっ
!!?
くまがゾロに触れたのか、その次の瞬間にはゾロの姿がその場から
それは本当に瞬きするような一瞬の出来事だった。
ぱっ。
﹁旅行するなら、どこへ行きたい⋮⋮
くまはグローブを外し、くま似の者達にはない肉球を出した。
﹁お前の⋮⋮慈悲のおかげでな⋮⋮﹂
﹁生きていたのか、ロロノア﹂
でその前に出る。
ゾロはそれを〝本物〟だと断定して、立つ事すらままならない身体
違う。
喋るくまはそれまでのパシフィスタと呼ばれる者達とは威圧感が
!!!
ウソップが必死な表情で二人を起こそうとするが、その前にはもう
!
!!?
248
!!!
!!!
﹁ゾロが⋮⋮消えた⋮⋮
﹂
﹂
﹂
てめェ、ゾロにいったい何しやがったァ
よかった⋮⋮
七武海は〝例の件〟で本部に召集
﹂
﹂
﹂
﹂
ゾ ロ は 死 ん で
これだから〝海賊〟は信用ならねェよォ
向こうもカバーしたいが⋮⋮﹂
どこ行ったんだァ∼∼∼
﹁ほ、本当かスター
﹁そ、そうか
間違いねェ
高速でこの場所から弾き飛ばされただけだっ
﹁弾 か れ た だ け だ │ │ し っ か り し ろ、ル フ ィ
﹁ゾロ∼∼∼
!!!
!
﹂
後は助かってから考えろォ
﹂
飛ばされた先が海軍基地や海の上だったら、どっちに
しても全滅よっ
﹁とにかく全員ここから逃げろ
!!!
!
⋮⋮
﹂
ぱっ。
﹂
何やってんだおれは⋮⋮ ハァ⋮⋮目の前で仲間を
﹁⋮⋮⋮⋮何だよ。どうしたら⋮⋮
!!!
!!!
﹂
今おれが援護して││﹂
!!!
泣 い て 頼 ん で
!!!
る。
待ってろ
﹂
﹁お 前 ∼ ∼ ∼ お れ さ ま の 前 で 勝 手 な 事 ば か り
﹁スター
!
﹁││危ねェ、キャプテン
﹁えっ、﹂
ぱっ。
!
!
も、もうファンにしてやらねェぞ
!!!
次々と進行していく事態に、さすがにルフィの口からも弱気が漏れ
!
﹁くそ⋮⋮
た一人と消されていく⋮⋮。
うに現れては消えるを繰り返すくまの前に麦わらの一味は、一人、ま
だが、ゾロのように対象を消すだけでなく、自分まで瞬間移動のよ
!!!
!
じゃないっ
﹁│ │ っ て、全 然 よ く な い わ よ っ 結 局 状 況 は 全 然 改 善 し て な い
!
﹁⋮⋮
∼∼∼⋮⋮
を受けているはず⋮⋮
﹁バーソロミュー・くまァ⋮⋮
今⋮⋮たった今、目の前にいたのに⋮⋮
!!!
!
﹁おれさまの〝スターアイ〟がばっちりと捉えた
!!?
ねェ
!!!
!!!
!!!
!!!
249
!
!
!
!!!
!
!!!
!
!!!
!!!
!!!
﹂
││ルフィ
!
約束だ
!!!
∼∼∼くそォ、しくった⋮⋮
﹂
!!!
﹁キャプテン
信じでるっ゛
んなはおれさまの能力で必ず集めてみせる
ぱっ。
﹁⋮⋮⋮⋮ああ゛っ
ぱっ。
!!!
み
!!!
この日、船長モンキー・D・ルフィ率いる海賊団〝麦わらの一味〟
偉大なる航路 シャボンディ諸島・12番GR││。
グ ラ ン ド ラ イ ン
そうして、全てはまるでシャボン玉のように儚く弾け。
!!!
は││完全崩壊を喫した⋮⋮。
250
!!!
第22話・過去からの刺客
船長モンキー・D・ルフィ率いる海賊団〝麦わらの一味〟の敗北
⋮⋮。
それは彼らを知る者からすれば衝撃的な出来事であろうが、世間も
〝海軍本部〟もその意識は、それ所ではない〝別件〟に向けられてい
た。
それが〝白ひげ〟海賊団2番隊隊長、ポートガス・D・エースの〝
公開処刑〟である。
〝新世界〟で覇権を争う〝四皇〟の一人であり、かつて海賊王とも
渡り合っていた〝白ひげ〟は、仲間の死を決して許さぬ男として知ら
れている。
仲間に手を出した相手には必ず落とし前をつけさせる。
そんな〝白ひげ〟の、それも隊長格を処刑するという発表は、海軍
本部の〝白ひげ〟海賊団に対する宣戦布告に等しかった。
故にそこから予想される未来はたった一つしかない。
海軍〝大将〟に七武海、そして〝四皇〟が入り乱れる総力戦││〝
頂上戦争〟、だ。
まだ誰も見た事のない大きな波が、新時代へと続く時代のうねり
が、誰の目の前にもはっきりとその姿を現そうとしている⋮⋮。
││その中で我々が注目するべきは、やはりルフィとエースの繋が
りだろう。
〝兄弟〟という名の強い絆。
普段はその絆がある故に無条件に相手の無事を信じているが、いざ
それが失われるかもしれない状況を突きつけられたらルフィがどう
動くか。
それはこれまでのルフィの行動を見ていれば簡単にわかるはずだ。
事実、〝麦わら〟のモンキー・D・ルフィは、兄であるポートガス・
D・エースを助けるために、前代未聞の〝大監獄・インペルダウン〟
への潜入を決めた。
海賊にとっては入れば二度と出ては来られない終わりの地、絶望を
251
形にしたその場所へ自分から入るという、およそ常人には思いつかな
い暴挙。
そもそもが、歴史上、インペルダウンから脱獄に成功した者なんて
││。
⋮⋮いや、一人いる
そう⋮⋮エースを脱獄させようとルフィが潜入するより20年も
早く、〝鉄壁〟の監獄から脱獄に成功した一人の海賊がいた。
〝白ひげ〟と同じく海賊王世代の生き残り。
その男の20年越しの野望が、この〝頂上戦争〟を間近に控えた最
悪のタイミングで動き出す⋮⋮。
・
・
・
そして、その戦いに巻き込まれるのは、例によって〝麦わら〟のモ
☆ STRONG W
ンキー・D・ルフィ││を除いた、まさかの〝船長〟不在の海賊団〝
麦わらの一味〟であった⋮⋮。
︻ONE PIECE ☆ 輝きのスター
ORLD︼
││空は快晴。
そして彼が最初に発見したもう一人のキャプテンこと、長鼻が特徴
マイオス・E・T・スター。
約束〟を果たすために仲間探しに奔走する、その星の持ち主、プトレ
昼間なのに流れる星の上で再会を喜び合うのは、〝船長〟とした〝
!
にしてもよくおれのいる場所がわ
の〝狙撃主兼プロデューサー〟ウソップの二人だった。
﹂
﹁いやー、スター、助かったぜ
かったな
!
海に咲く一輪の花のような島、〝ボーイン列島〟という場所にある
森の中を一人彷徨っていたウソップは、空から現れた〝スターシップ
252
?
ウソップは嬉しそうにバシバシとスターの背中を叩いている。
!
〟に一も二もなく飛び乗った。
﹁〝ラッキースター〟反応を〝スターシップ〟のレーダーで確認した
んだ﹂
﹁なんだよそれ﹂
尋ねるウソップにスターは普段は使ってない操縦桿の側にある丸
い画面を指差した。
見るとその画面には星形の光点がいくつか点滅している。
﹂
﹂
ちなみにその確率ってのはどれくらいなんだ
﹂
﹁その反応がある場所にはおれさまの求めるものがある確率が高いん
だ﹂
﹁へえ
﹁なんと50%だ
﹁ただの運じゃねェか
してる場所に他の連中がいるって事か
﹂
﹁ああなるほど⋮⋮って納得していいのかおれ。それでこの星が点滅
パワー〟の賜物だ﹂
%だが、だいたいの場所がわかるんだから運だけじゃない。〝スター
﹁いや、確かに求めるものが〝ある〟か〝ない〟かだけでみれば50
自信に満ちたスターの返答にウソップのツッコミが冴える。
?
だ﹂
﹁そんなの興味があるならみんなと合流してからまた行けばいいだけ
﹁しかしあの島もなんつーか不思議な場所だったな⋮⋮﹂
て、先程までいた島について思いを巡らせる。
微妙に釈然としないウソップは、その事について考えるのはやめ
にスゲェんだが⋮⋮﹂
﹁二つ目ってやっぱり運⋮⋮いや、場所の当たりがついてるのは確か
した。
それからはレーダーに従って、見事二つ目の光点でウソップを発見
を出すと、一直線に海を目指した。
その周囲を探索する事もなく、戻った体力によって〝スターシップ〟
あの後⋮⋮くまに飛ばされ、月のような場所で目覚めたスターは、
﹁その可能性が高い。実際キャプテンは見つかった﹂
?
253
!!!
!
!
﹁そうだな⋮⋮。あいつらちゃんと全員無事だろうな⋮⋮。ゾロやサ
ンジ、フランキーなんかは普段なら放っておいてもいいくらいだけ
ど、ボロボロだったからな⋮⋮﹂
ネガティブホロウを打ち破れるくらいに、ネガティブな事を考える
のに定評があるウソップは頭に浮かぶ悪い想像を打ち消すために首
を振った。
﹁それにしてもなんか大変な事になってるみてェだな⋮⋮﹂
飛行中の〝スターシップ〟。
手持ち無沙汰だったウソップは、ボーイン列島に飛ばされたせいで
﹂
読めていなかった新聞を軽く叩きながらスターに話しかける。
﹁ああ、ルフィの兄ちゃんの事か﹂
﹁もちろんそれもだが、この裏面もだよ⋮⋮
イーストブルー
見出しのような記事が載っていた。
東 の 海で脅威 突如消えゆく町の謎
イーストブルー
〟という三流ゴシップ誌の
そ う 言 っ て ウ ソ ッ プ が ス タ ー に 突 き つ け た 新 聞 の 裏 面 に は、〝
!
﹁今は仲間を探すのが先だ﹂
﹁わかっちゃいるけどよ⋮⋮
グ ラ ン ド ラ イ ン
てるとは思えねェし、おれは心配事だらけだ⋮⋮
﹁⋮⋮﹂
﹂
この兄貴の事を知ればルフィが黙っ
とあっちゃ、いつ巻き込まれたっておかしくないぜ﹂
係してるような場所はその現象に巻き込まれちゃいないが、原因不明
﹁東 の 海で一夜にして次々と町が滅びてるらしい。幸い、おれ達が関
!
わっちまう⋮⋮
﹂
ものまである⋮⋮
そんなに時間を掛けてちゃ、何もかも全部終
﹁そうじゃなくても、そのレーダー、偉大なる航路以外の海を示してる
!
!
﹁え、﹂
ーーっーーっーーっーーっーーっ
そう言って、これも普段は使わない星形のボタンをスターが押すと
!!!??
考えて速度を抑えていたが、そこまで言うなら、速度を上げよう﹂
﹁⋮⋮キャプテンの心意気はわかった。キャプテンの身体への負担を
!
254
!
!
デフォルメされた星形の〝スターシップ〟は通常運航ではあり得な
い加速をした。
そしてそれはまるで本当の流星のように││泣き叫ぶウソップの
声も置き去りにして、煌めく一条の光となった。
∼∼中略∼∼
﹂
そんなに引き攣っ
それにウソップとナミ││って医者∼∼∼っ
﹁これで四人⋮⋮﹂
﹁スター
ど、どうしたんだ二人共
!!!
あの戦闘でのダメージがそんなに酷かった
!!?
﹁お前だろ﹂
﹁あ、おれだーーー
﹂
!
グ ラ ン ド ラ イ ン
⋮⋮あの島は、地獄だ
﹂
!!!
﹁スター
い
今日ほど、お前が仲間にいてくれた事を感謝した日はな
よかったのかもしれない。
しかし、運の良い事にその場所にチョッパーがいたので結果的には
南の海〟へとやってきていた。
サウスブルー
く 暇 も な い ま ま 飛 ば し た 結 果、偉大なる航路 か ら も ウ ッ カ リ 外 れ 〝
グ ラ ン ド ラ イ ン
進行上にあった空島に飛ばされていたナミを勢いで掻っ攫い、一息吐
振り返れば、超高速飛行モードとなった〝スターシップ〟は、その
パーは、真剣に二人の心配をして具合を診る。
たあられもない二人の姿に、これからの自分の運命を知らないチョッ
空から現れた〝スターシップ〟に乗り込んで、すぐに見る事になっ
のか
て、泡まで吹いて⋮⋮
!!!
!!!
!!!
ある特定の種類の人間にとっては楽園だが、常人にとっては悪夢の
島〝カマバッカ王国〟。
サ ン ジ を 追 い か け る オ カ マ を 着 陸 に 失 敗 し て 轢 き 飛 ば し た 〝 ス
ターシップ〟は、しかし幅広の涙をそれこそ滝のように流すサンジに
大感謝されて迎えられた。
255
!!?
そして再びの偉大なる航路。
!!!
﹂
﹁サンジがそこまで言うなんてどんな島だったんだ⋮⋮
﹁口にするのもおぞましい⋮⋮
﹁そこまでなのか⋮⋮﹂
﹂
!!!
すと、例の新聞を視界の端におさめながら呟く。
﹂
おれ
ナミは白目を向いているチョッパーの横でどうにかその身を起こ
ない。
ここまで上手く仲間と合流できてはいるが、残された時間は多くは
をしたりできないものかしら﹂
﹁それよりも、サンジ君と合流できて、これで五人⋮⋮どうにか手分け
いないスターはごくりとその喉を鳴らした。
そもそも着陸失敗の衝撃故に、オカマを轢き飛ばした事に気づいて
?
﹁ああ、目と心が洗われる思いだ⋮⋮ んナミさ∼∼∼ん
はキミの魅力を再確認した∼∼∼
﹁はいはいどうもね﹂
!
同じく復帰を果たしたウソップはそこまで言うと、目を見開き、口
がそこらに転がってるわけも││﹂
﹁しかし手分けっつってもな⋮⋮〝スターシップ〟みてェな空飛ぶ船
!!!
船首に帆⋮⋮そ
なんだありゃ∼∼∼ なんで島が飛んでんだ∼
!!?
〝スターシップ〟と同じ空飛ぶ船││しかも、海
!
の黄金の獅子の船首に、島が飛んでると見間違えるのもおかしくない
岸壁の船底。
そんな空飛ぶ島船││いや、空島船は〝スターシップ〟の頭上を
悠々と飛んでいく。
﹁ス リ ラ ー バ ー ク と い い、最 近 は 島 を 船 に す る の が 流 行 っ て る の か
⋮⋮﹂
256
!
を大きく開けた姿で斜め上空を震える指先で示す。
﹂
﹁あったーーー
∼∼
﹁空島だろ﹂
!!!
﹁あ、なるほど⋮⋮って、んなわけあるかァ∼∼∼
﹂
れにあのドクロ
賊船だ
!!!
!!?
サニー号のようなデフォルメされたライオンとは違い、リアル風味
!!!
﹁どんな流行だよ
﹂
﹂
?
﹁ばっ、サンジお前
相手は海賊だぞ
﹁そりゃそうだろ。わかってるよ﹂
!
﹂
!
怖ェだろうが
﹂
・
・
﹁い い や、わ か っ て ね ェ 海 賊 っ て の は 普通は 悪 い 奴 な ん だ
・
空島船を見送ってしばらく、不意にサンジがそんな事を提案した。
伝って貰うってのはどうだ
﹁⋮⋮⋮⋮なァ。あの船の持ち主に頼んで、残りの連中を探すのを手
!
だけだ﹂
﹁簡単に言うな
あんな船に乗ってる海賊だぞ 普通じゃねェ
﹂
!!?
そんな言葉で騙されるかァ
﹂
﹂
!
﹂
﹂
!
あるようだ。
!
﹁あの船が目指してるのはあの空島か。ちょうどいい。いきなり〝ス
前方を示す。
〝スターシップ〟が通常運航に戻った事で復活したチョッパーが
﹁あ、何か見えてきたぞ
﹂
場に居ないロビンが無事であるかどうかの方が完全に優先度が上で
サンジにとっては自分の前に七武海が現れるかどうかより、今この
﹁結局それかーいっ
るのが最優先事項だ⋮⋮
﹁それに今は何より他の連中の⋮⋮特にロビンちゃんの無事を確認す
﹁え、ああ⋮⋮そうだな。そこはおれさまに任せてくれていいぞ﹂
﹁もしもの時はおれとスターが相手にするさ。なァ
﹁え⋮⋮いやいや
﹁普通じゃないなら、気の良い相手かもしれないだろ﹂
ウソップの言う事も間違いではなかった。
確かに空島を丸ごと船にするという常識外の海賊船の持ち主だ。
また七武海みてェのが出て来たらどうすんだ
!!?
?
!
!
﹁おれらは何だよ⋮⋮。最悪、無理矢理言う事を聞いてもらえばいい
向ける。
唾を飛ばして情けない事を喚くウソップにサンジは呆れた表情を
!
!
!!!
257
!
!!!
ターシップ〟で乗りつけるのも悪くないが、協力してくれるかもしれ
ない相手だ。まずは穏便に接触しよう﹂
﹁わかった﹂
サンジの言葉にスターは〝スターシップ〟を前方に見えてきた大
﹂
小合わせて十数の島からなる空島群に向かわせる。
どうなってんだ
﹁あの一番デケェ島に向かってるみたいだな﹂
﹁う、海ごと、浮いてんぞ
﹁⋮⋮そうだな
﹂
﹁あの婆さんが元気じゃないほうがビックリだろ﹂
﹁ホントだ⋮⋮。懐かしいなー。ドクトリーヌ、元気かな⋮⋮﹂
﹁ちょっとチョッパーがいた島に似てんな﹂
くような岩山が中心に聳える島があった。
上空の空島から視線を下に向ければ、ナミの言うように雲にまで届
いね﹂
﹁下の海の⋮⋮あの塔みたいになってる島を中心にして浮いてるみた
いたものをくりぬいて空に浮かべたかのような景観をしていた。
その一番大きな空島含め、いくつかの島は、もともと海に浮かんで
!!?
﹂
その島の周りにも海賊船がチラホラと見え
たが、すぐに明るく元気な声を出した。
﹂
!!?
﹁ってちょっとまてェ
﹁え⋮⋮
るぞ。なんかあの島に集まって来てんじゃねェか
!!?
る。
いや、それどころかよくよく見れば、さらに遠方からもその島を目
指している海賊船らしき影がいくつか。
あそこにおれ達の仲間はいねェ
﹁⋮⋮ドクロのマークは違うみたいだけど、あの数、同盟でも組んでる
あの島はスルーしよう
のかしら﹂
﹁よし
﹂
!
258
!
その島に故郷を重ね合せ、少しの間物思いに耽ったチョッパーだっ
!
見れば数隻の海賊船がその塔のような岩山がある島に向かってい
!
!
﹁確かにレーダーに反応はないが⋮⋮﹂
!
﹁いえ、これは逆にチャンスかもしれないわ。あれだけ海賊がいれば
全員の顔を覚えてる人間なんていないでしょうし、何が起こってるか
探りを入れやすい。それで協力してもらえるかどうかも判断すれば
いいわよ﹂
ウソップは一人、断固として反対の姿勢を見せていたが、そこは勢
いと多数決。
さ す が に ス
ナミの意見が採用され、一味はその海賊達の集まりに潜入する事に
した。
こ っ ち に は 有 名 人 の ス タ ー が い る
ただし││。
﹁そ、そ う だ
ターほどの有名人となれば顔バレしてしまう事だろう
なので、おれ
とスターは今回は留守番していよう。いやァ、残念だが、こればっか
りは仕方ないな﹂
という往生際の悪いウソップの言葉により、とりあえずの情報集め
はナミとサンジとチョッパーの三人で行われる事になった。
﹁│ │ じ ゃ あ、そ の 〝 金 獅 子 の シ キ 〟 と や ら が 海 賊 の 同 志 を 集 め て
るって事か﹂
情報集めから戻ってきた三人の説明に、ウソップはそれらしく頷い
た。
﹂
﹁ええ、シキは〝フワフワの実〟の能力者で、ここの空島は全部、シキ
とんだバケモンじゃねェか
がその能力で浮かせたものらしいわ﹂
﹁これ全部
!
す。
﹁まぁ確かにスゴイ能力ではあるわね⋮⋮。でも今重要なのは、同志
﹂
を集めてるって方。これは狙い目よ﹂
﹁どういう事だ
して貰える可能性が高いわ﹂
〟で戦力になるルフィや、ゾロと合流するために、あの空飛ぶ船を出
﹁私達が同志になるフリをして、ある程度事情を説明すれば、〝億超え
?
259
!
!
!
泡を食ってそう言うウソップだが、ナミは人差し指を立て冷静に諭
!!?
﹁なるほど
さすがはナミさん
﹂
!
﹂
グ ラ ン ド ラ イ ン
どうした、ナミ お前の中の〝何かが
!!!
⋮⋮﹂
﹁気になる事
﹂
﹂
﹁そ う い う わ け じ ゃ な い ん だ け ど ⋮⋮ ち ょ っ と 気 に な る 事 が あ っ て
ヤベーセンサー〟は本格的に故障したのか
!!?
!!?
﹁行き当たりばったりか
に任せればいいじゃない﹂
﹁んー、そこはほら、あれよ。ルフィとも合流してから、ルフィの判断
ぜ
れで怒らせるはめにでもなったら、その全部がおれ達の敵になるんだ
とはならねェだろ。そもそも何のための同志集めか知らねェけど、そ
﹁いやでもよ⋮⋮協力してもらうだけしてもらって、じゃあさよなら
もまたウソップが待ったをかけた。
ナミは集めてきた情報からそういう判断を下したようだが、ここで
ばいいんだし、それで人手が増えるなら儲けものでしょ﹂
りはずっとマシ⋮⋮。まぁそもそも基本は〝スターシップ〟で探せ
﹁空の路も天候の影響は受けるけど、偉大なる航路を普通に彷徨うよ
!
何 か あ っ た 時 の た め に ス タ ー に は
?
﹂
!!?
要な任務だぜ
﹁お、おいおい、おれ一人かよ
そもそも〝スターシップ〟ってのは
テンは〝スターシップ〟に乗ってこのままみんなを探してくれ。重
﹁なら、おれさまの〝スターシップ〟はキャプテンに託そう。キャプ
く、当のスターが口を開く。
顎に指を当てて、考える素振りを見せるナミが答えを出すよりも早
﹁そうね⋮⋮﹂
残って欲しいが⋮⋮﹂
﹁と な る と ス タ ー が 別 行 動 か
でこのままみんなを探す人間と、シキと接触して交渉する組にね﹂
﹁じゃあここからは本格的に二手に別れましょう。〝スターシップ〟
納得する様子を見せる。
何か思うところがある様子のナミの態度に、ウソップも渋々ながら
﹁⋮⋮とにかくもう少しここで情報を集めてみたいのよ﹂
?
!
260
!!?
そんなにお前から離れても大丈夫な乗り物なのか
﹁安心してくれキャプテン
﹂
本当のスターとは仮に別の仕事やらで
﹁お前が眠ってる時とかはどうすんだ﹂
﹁おれさまの意識が失われでもしない限りは大丈夫だ﹂
?
慣れてる
﹂
徹夜をしていても、ファンの前では笑顔でいる事のできる人間なんだ
!
﹁臭い
﹂
﹁う⋮⋮何だこの臭い⋮⋮﹂
だとは思えない。
こんな王宮に住んでいるのだから〝金獅子〟のシキ、やはりタダ者
しい。
この大きな建物が空島船を持つ海賊のアジト、シキの王宮であるら
全体的に和風な造り。
ら、目の前に聳え立つ大きな建物を見上げる。
〝冬島〟用の服装ではない一味は寒さに若干身を縮こまらせなが
と変わり、雪もちらほらと降っている。
それ故に先程まで快晴だった空はこのエリアに入ってから曇天へ
特性を持っていた。
そのシキの王宮がある、空島群で一番大きな島は〝冬島〟としての
∼∼中略∼∼
ソップの操縦で空島群から離れていく運びとなった。
あるシキの王宮の前にウソップ以外の四人を降ろすと、そのままウ
〝スターシップ〟は例の空島船が向かっていた、一番大きな空島に
そんなスターの言葉に後押しされて││。
!
の植物からか⋮⋮
みんなは感じねェのか
﹂
?
それはともかくとして、その外の寒さに、ナミが一味を代表して、訪
三人にはよくわからず首を捻る。
寒さとは別の理由で、鼻をぐずつかせるチョッパーだったが、他の
?
﹁鼻の奥がビリビリするようなイヤーな臭いだ⋮⋮。この建物の周り
?
261
!
誰かいませんかーーー
問を知らせるために大声を上げた。
﹁すいませーん
﹁
足が剣だ⋮⋮
﹂
しかも頭に舵輪が生えてる
﹂
!!?
﹂
これはどうした事だ。まさかおれの招待
何度かそんなナミの声が響く。
﹁││ジハハハハハハッ
!!?
なくして、この〝メルヴィユ〟へとやってくる者があるとは
!
﹂
?
﹁ねェよ
そんなウッカリは
﹂
カリしてた。だがまぁよくある事だ﹂
﹁これは戦闘中の事故だな。まさか頭に舵輪がハマるとはおれもウッ
﹁⋮⋮じゃあ、その頭の舵輪は﹂
てた﹂
﹁これはおれの義足よ。足は邪魔になる事があったから自分で切り捨
﹁え、そりゃまァよ﹂
﹁おれのこの足が珍しいのか
モヒカンのように舵輪が突き刺さっている。
くその足が、二本とも抜身の刀剣であるという事、そしてなぜか頭に
長い鬣のような金髪に、何より特徴的なのが、和装││袴姿から覗
その王宮の中から現れた男はかなり独特な風貌をしていた。
﹁いや、ありゃ生えてるんじゃなくて刺さってるんだろ⋮⋮﹂
!
!
!!!
!!!
﹁ほう
同志に﹂
おうと思ってきたんです﹂
﹁⋮⋮あの、私達、〝金獅子〟のシキの噂を聞いて⋮⋮同志にしてもら
﹁それはそうと、いったいお前らは何者だ。何の目的でここに来た﹂
出したが、そんな感傷に浸る暇もなくツッコミを入れた。
サンジはシキの義足に、自分のために片足を失った恩人の姿を思い
!!!
に入った。
?
﹁ええ、そうなんです﹂
﹁ふぅむ。ところでお前達は名のある海賊なのかね
﹂
この男こそがシキであるのは間違いないと、ナミは早速交渉モード
だ。
多少おかしな部分もあるが、〝金獅子〟の異名に相応しい恰好の男
!
262
!
﹁⋮⋮私達の船長は〝麦わら〟のルフィです。懸賞金3億ベリーの。
そしてこのスターも1億7777万7777ベリー﹂
﹂
詳しい話は中で聞くとしよう
﹂
﹁なるほどなるほど⋮⋮。〝億超え〟とはなかなかだ。││いいだろ
う
﹁ありがとうございます⋮⋮
でその王宮へと足を踏み入れる。
﹁なァ、この建物の外にあるスゴイ臭いの植物は何なんだ
?
ああ、〝ダフトグリーン〟の事か。あれは猛獣避けだ。
?
﹁ドクター
医者なのか
﹂
?
﹁⋮⋮
﹂
!!!
﹁いや、私は科学者﹂
﹁伝わるかァ ってか、なんだよ
﹂
今の無意味なパントマイムは
手振りで、よくわからないパントマイムのような事を始める。
興味を引かれたチョッパーが尋ねると、Dr.インディゴは身振り
?
﹁おお、〝Dr.インディゴ〟。ちょうどいいところに﹂
り、きちんと服を着たゴリラと共にドタバタと現れた。
が、こちらは屁のような足音を響かせながら、サングラスと帽子を被
く中、その前方から白衣と水玉模様のマフラーが特徴のピエロ顔の男
障壁画の並ぶ朱塗りの廊下にキンキンとシキの特徴的な足音が響
﹁そうなのかァ⋮⋮おれも辛いけど、我慢するぞ﹂
れないないような猛獣が多くいるんでな﹂
獣達はみんなあの臭いが嫌いなのさ。この島には他ではお目に掛か
﹁⋮⋮臭い
﹂
どうにかシキのお眼鏡に適う事ができたらしい一味は、シキの先導
!
!
?
ディゴに、サンジはキレそうになるが、シキのフォローが入る。
﹁許してやってくれ。Dr.インディゴの個性だ。それにその頭脳は
本物⋮⋮それからそっちのゴリラは〝スカーレット隊長〟だ。⋮⋮
ああっと、そうだ。おれはちょっと寄るところがある。お前達はその
Dr.インディゴ達について、先に行っていてくれ﹂
﹁あ、はい。わかりました⋮⋮﹂
263
!
!
そ ん な サ ン ジ の ツ ッ コ ミ を 素 知 ら ぬ 顔 で ス ル ー す る D r.イ ン
!
﹁ピロピロピロ。了解﹂
そうしてシキと別れ、Dr.インディゴの微妙に嫌な気持ちになる
足音について歩くこと数分。
一つの部屋の前でDr.インディゴは足を止めて再びのパントマ
イム。
︶﹂
だがさすがにこれは入れという事だろうと、一味は巨大な障壁画の
︵な、なんじゃこりゃ∼∼∼
!!?
襖をさっと開けて、その部屋に入る。
﹁ゴボ⋮⋮
﹂
!!?
囚われたのだ。
どういうつもりだ、てめェ
!!!
﹁シキ
﹂
寄ると、その背後からどこかに寄り道をしていたシキが姿を現した。
水の中でもがく二人に変わってサンジがDr.インディゴに詰め
﹁罠
﹂
球状の││人間が丸ごとすっぽりと入るフワフワと浮く水の塊に
その部屋に入るや、スターとチョッパーの二人が溺れた。
﹁ゴ、ゴボガボボベ⋮⋮
!!?
﹂
こう言うのよ。お前らは〝危険〟だと﹂
﹁〝参謀〟だと⋮⋮
﹂
そうだろう、〝百計のクロ〟
﹂﹂
﹁なァ
﹁﹁
﹁⋮⋮⋮⋮誰だ
!!!
?
﹁久しぶりだな⋮⋮おれの事を知っているのは二人だけ。〝麦わら〟
た海賊だ。
娘カヤを相手に、その財産をそっくり奪い取ろうと陰謀を働かせてい
ウソップの故郷である〝シロップ村〟で、両親を亡くした資産家の
ミの二人は見覚えがあった。
その男の姿と名前に、疑問を覚えるサンジとは違って、スターとナ
バックの髪型で、執事然とした男だった。
そ し て シ キ の 陰 か ら 姿 を 見 せ た の は 黒 ス ー ツ に メ ガ ネ と オ ー ル
?
﹂
題もないと思うんだがな。最近、 東 の 海で仲間に加えた〝参謀〟が
イーストブルー
﹁⋮⋮フフフ、いやァ、おれとしてはお前らを同志に加える事に何の問
!
!!?
264
!!?
!
﹂
に剣士、あのウソツキ小僧もいねェのは残念だが、これで少しは溜飲
が下がった﹂
﹁なんであんたがここに⋮⋮
スターは水の中なので、必然的にナミが尋ねる形となった。
﹂
﹁同志としてスカウトされた。それだけの事だ﹂
﹁平穏を求めてたんじゃなかったの⋮⋮
その少しだけ特徴的なメガネを直す癖も変わらず健在のようだ。
クロは掌でくいっとメガネを上げる。
思っていた矢先の出来事だったんでな。OKしたよ﹂
やかで、だが、もう一度同じ事をやるのも面倒だ。さてどうするかと
ながら余生を過ごすつもりが、気づけば再び海の上だ。 東 の 海は穏
イーストブルー
﹁その平穏に飽きちまったのさ。なにせ本来ならバカな村人達を眺め
!
﹂
│ │ 〝 首 領・ク リ ー ク │ 9 0 0 0 〟
﹁そしてもう一人、お前らに因縁があるらしい奴がいるぜ。ぜひ挨拶
し た い そ う だ。そ う だ ろ う
クリーク⋮⋮
!!?
の男が姿を現した。
﹁よぉ。元気だったか、クソ〝コック〟。てめェらの活躍はおれの耳
にも入っていたぜ﹂
グ ラ ン ド ラ イ ン
﹁⋮⋮てめェは、なんで身体がロボみたいになってんだ﹂
まァ、Dr.
﹁そんなの決まっている。偉大なる航路で戦える武力を手にするため
に、Dr.インディゴの改造手術を受けたのさ⋮⋮
まったがな⋮⋮
﹂
インディゴの専門じゃねェから、少しばかり強力な身体になりすぎち
!
強調しているが、腕回りや腰回りは異様に細く、代わりに拳や足回り
胸部は金色の鎧に〝NO.1〟と描かれていて、当時の名残をより
は、同じく改造人間であるフランキーよりもメカメカしい。
の鎧姿と大概な恰好をしていたクリークだが、改造人間となった今
サンジの元職場、海上レストラン〝バラティエ〟に現れた時も金色
!
265
!
?
今度はシキの陰からではなく、その部屋の奥にある襖が開いて、そ
!
﹂
﹂﹂﹂
!
﹁てめェ⋮⋮
﹁﹁﹁
!!!
はやたらとデカイ。
﹂
この場にもしもルフィがいたら目を輝かせて喜びそうなデザイン
だ。
﹁〝ギン〟はどうした⋮⋮
﹁⋮⋮ 知 ら ね ェ な。あ の 後、偶 然 お れ 達 を 拾 っ た と い う D r.イ ン
ディゴは、できる限りの手を尽くしたと言っていたが、おれが目を覚
イーストブルー
ました時にはその姿は消えていた。奴とはもうそれっきりだ﹂
﹁ピロピロピロピロ。その通り﹂
﹁そうか⋮⋮﹂
サンジが口にしたギンというのは、 東 の 海でクリークが海賊団を
率いていた時の戦闘総隊長であり、サンジも少しだが交流を持った相
手である。
しかし彼はルフィとクリークとの戦闘が決着する際に、ルフィとサ
ンジを助ける代わりに毒ガスを吸い込み、余命僅かの身となった。
それでもその原因を作り、自分の事も切り捨てたクリークを見捨て
なかった忠義の男だが、その最期は││いや、それが最期かどうかも、
グ ラ ン ド ラ イ ン
変わらずわからないままのようだ。
ギンが去り際に残した﹁偉大なる航路でまた会おう﹂という言葉だ
けが彼の生存を信じる理由となっていた。
﹁感動の再会はもういいか ││まァとにかく、そういうわけよ。
新 た に 加 え た 幹 部 が 二 人。揃 っ て お 前 ら の 事 を 〝 危 険 〟 だ と 言 う。
そうまで言われちゃこのおれもその言葉を無視はできねェ﹂
﹂
﹂
しい。〝新世界〟価格なら
おかしくはない
今の10倍の懸賞金がついていても
!
撃破されただけで、偉大なる航路における海賊相手でも、ある程度ま
グ ラ ン ド ラ イ ン
東 の 海には確かに、ルフィ率いる麦わらの一味と遭遇したからこそ
イーストブルー
賞金だが、あながちそれは間違いでもなかった。
も ち ろ ん 偉大なる航路 に 出 て か ら の 行 動 に よ っ て つ り 上 が っ た 懸
グ ラ ン ド ラ イ ン
現在は3億の賞金首であるルフィが3000万と評された海だ。
!
266
?
?
﹁東 の 海は最弱の海だが、たまにはこんな掘り出し物な連中もいるら
イーストブルー
﹁⋮⋮
!
でなら通用すると思える強敵が何人かいた。
﹁だからまずはその能力者二人。〝フワフワの実〟の力で固めた〝海
水〟によって動きを封じさせてもらった﹂
スターとチョッパーの二人を捕らえた水は、ただの水ではなく海水
のようだ。
まぁ海水でなくても水が溜まっていればアウトなのだが、どちらに
しろその強力な能力と引き換えに、〝海〟に嫌われ〝カナヅチ〟に
なってしまったために、自力では抜け出せず、そろそろ息が危ないの
かもしれない。
﹁だ が 慈 悲 は や ろ う。い ま だ 〝 新 世 界 〟 の 手 前 で 必 死 に 足 掻 く ル ー
﹂
このまま〝青海〟に送り返してやる。││まァ、うちも
キー共。大昔のおれを少し思い出す。ただし、おれの野望の邪魔はす
るな⋮⋮
人手不足だ。〝航海士〟は貰っておくがな
﹂
﹂
﹁きゃっ⋮⋮
﹁ナミさん
﹂
グ ラ ン ド ラ イ ン
シキの言葉に首領・クリーク│9000の腕が伸びて、ナミを掴み
引き寄せる。
﹁⋮⋮あら、私だけ特別扱いってわけ
コック程度の野郎はもはや眼中にねェのさ﹂
﹁⋮⋮どうでもいいが││んナミさんを放せ
このクソ野郎
﹂
!!!
に刀身を生やした〝猫の手〟という武器も装着していた。
いつの間にかその両手には、クロが愛用する、五本の指に爪のよう
〟のクロが立ち塞がった。
たサンジが蹴りかかるが、その前にはこちらも足に自信がある〝百計
自分に対する挑発的な言葉よりも、ナミの腕を掴むクリークにキレ
!!!
武力を手にした今、あの時にすら大して何もできなかった、そこの
﹁そもそもおれが恨みがあるのは〝麦わら〟と〝鷹の目〟だ。最強の
﹁そりゃどうも⋮⋮﹂
ない﹂
らえさせているんだ。お前の〝航海士〟としての能力を疑う余地は
﹁まがりなりにもあの頭の悪い〝麦わら〟を偉大なる航路で生きなが
?
267
!!?
!!!
!
!
サンジは〝猫の手〟で斬られるところを、危うく急ブレーキで踏み
とどまると、バックステップで距離を取る。
お前以外に誰があの二人の能力
?
命が懸かった状況だ。どちらを選ぶかは決
﹁こちらを気にしていていいのか
﹂
者を追いかけ助ける
﹂
まっているだろう
﹁∼∼∼
?
?
﹁サ ン ジ 君 ⋮⋮
くそォ⋮⋮
﹂
私 の 事 は い い か ら 二 人 を 追 っ て
ナミさん、すまねェ
﹂
今 も し も ス
!
必ず助けに来る
!!!
ターが意識を失ったら、〝スターシップ〟も⋮⋮
﹁
!!!
!
〟を追いかける。
その背後からはシキの勝ち誇ったような、ジハハハハ
という笑
サンジはナミの言葉に奥歯を噛みしめるとその背を向けて〝海水
!!!
!
!
おそらく先程の宣言通り〝青海〟へと落とすつもりなのだろう。
水〟は、その部屋から外へと飛んでいく。
シキがその手を軽く動かすと、スターとチョッパーを捕らえた〝海
!
い声が長く空へと響いていた。
268
!