安川汎用インバータ 安川汎用インバータ 技術資料

安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
インバータ駆動時の電源電圧波形歪計算法
GN
機種
資料番号
J-P-01-GN-01
インバータを使った電力系統では,電源側に流入する高調波電流のため電圧波形歪が生じることがあります。
ここでは,インバータが 1 台の時の,系統の電圧歪の計算法について説明しています。
(1) 電力系統の容量インピーダンスの整理
電圧
VS(V)
VI(V)
PI(kVA)
容量
PS(kVA)
PT(kVA)
インピーダンス
ZS(%)
ZT(%)
PM(kW)
ZL(%)
*1:例として 3300V,440V を挙げている。
(2)電源インピーダンスのインバータ容量への換算(トータルインピ-ダンスZTL )
(a)A 点での波形歪計算(トランス 2 次側)
’
Z=Z’
S+ZT=
PI(kVA)
P (kVA)
× ZS + I
× ZT
PS(kVA)
PT(kVA)
’
ZTL = ZL+Z’
S+ZT
(b)B 点での波形歪(トランス 1 次側)
Z = Z’
S =
PI(kVA)
× ZS
PS(kVA)
’
ZTL = ZL+Z’
S+ZT
(注) AC リアクトルがない場合ZL =0 とする。また,トランスがない場合はZL =0 とする。
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資料分類
高調波
タイトル
インバータ駆動時の電源電圧波形歪計算法
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-01
(3)基本波電流(モータ定格負荷時)
II =
PM(kW)× 10 3
(A)
3 VI cosϕ ・η
cosϕ :基本波力率( cosϕ =1)
η :インバータとモータの総合効率(= η M ・η INV )
η =0.85~0.9
(4)インバータ定格電流IR
カタログ参照(定格出力電流)
インバータの機種によっては過負荷が許されない最大連続出力電流で表示
している場合があるので注意が必要です。
VS-616G3,-616H3 の場合は 次式で計算できます。
IR =
出力容量(kVA)× 10 3
3 × VI
・
1
1.125
(A)
(5)高調波電流(In )
,電圧( Vn )
:表 1 参照(n=5,7,11,13,17,19・・・)該当するトータルインピーダンスの
高調波電流 In (%)
欄のデータを参照する。
(例)トータルインピーダンスが 5%のとき 5 次及び 7 次の高調波電流は基本波電流に対してそれぞれ
29%,10%となります。
高調波電圧
Vn :高調波電流による電圧降下に相当します。
§
I
Vn = ¨¨ n ・ Z ・ I
I
R
©
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·
I
¸¸ ・In = Z ・ I ・ n ・ In (%)
I
R
¹
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高調波
タイトル
インバータ駆動時の電源電圧波形歪計算法
機種
GN
J-P-01-GN-01
資料番号
(6) 電圧波形歪
波形歪率(Distortion Factor)
DF =
2
¦ Vn =
2
2
2
2
V52+V72+V11
+V13
+V17
+V19
=Z・
II
・
IR
(5・I5 )2
+ (7 ・I7 )2 + + (19 ・I19 )2
高調波
次数n
高調波電流
In
n ・In
( n ・In )2
5
I5
5・I5
7
I7
7 ・I7
11
I11
11・I11
13
I13
13・I13
17
I17
17 ・I17
19
I19
19 ・I19
( 5 ・I5 )2
( 7 ・I7 )2
( 11 ・ I11 )2
( 13 ・ I13 )2
( 17 ・ I17 )2
( 19 ・ I19 )2
総計
(5・I5 )2
波形歪
+ (7 ・I7 )2 + + (19 ・I19 )2
DF = Z ・
発行日:2000.04.06 変更履歴:
II
・
IR
¦ (n ・In )
¦ ( n ・ In
)2
2
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高調波
タイトル
インバータ駆動時の電源電圧波形歪計算法
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-01
(7) 高調波電流含有率
表1に電源側トータルインピーダンスのインバータ容量換算%Z(パーセントインピーダンス)による,
各次高調波含有率を示す。
適用条件
(1) 60Hz
100%
表1
負荷時
高調波電流含有率(%)
(基本波を 100 とした時の比率を示す)
トータルインピーダンス
高調波次数
% ZTL
(インバータ容量換算値)
2%
2.5%
3%
3.5%
4%
4.5%
5%
1%
1.5%
基本波
I1
100
100
100
100
100
100
100
100
100
5次
I5
54
46
41
38.5
35.5
33.5
32
30
29
7次
I7
32
25
21
17.5
15.5
13.5
12
11
10
11 次
I11
12
9
8
8
8
7.8
7.5
7.5
7
13 次
I13
7
6
5.5
5.5
5.5
5.2
5
5
5
17 次
I17
4
3.5
3.5
3
3
3
3
3
3
19 次
I19
3
2.5
2.5
2.5
2.5
2.3
2.2
2,1
2.0
64.5
53.6
47.2
43.6
40.1
37.5
35.5
33.4
32.1
119.0
113.5
110.6
109.1
107.7
106.8
106.1
105.4
105.0
0.645
0.536
0.472
0.436
0.401
0.375
0.355
0.334
0.321
0.840
0.881
0.904
0.917
0.928
0.936
0.942
0.949
0.952
K=19
2
¦ IK
K=2
一次全電流
I0 = I12 + ¦I2K
ひずみ率
µ=
2
¦IK
I1
入力力率
1
cosϕ =
1+ µ2
cos ϕ =
総合力率
1
1 + µ2
cos ϕ
1
K=19
ここで,ひずみ率
高調波実効値
µ=
=
基本波実効値
2
¦ IK
K=2
I1
cos ϕ 1 = 基本波力率 = 1.0
発行日:2000.04.06 変更履歴:
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高調波
タイトル
汎用インバータの発電機電源への適用
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-02
<1> 汎用インバータの電源として交流発電機を適用する場合,以下の 2 点の検討が必要です。
[Ⅰ] 電源に流出する高調波による巻線の過熱や機械振動の増加
[Ⅱ] 回生コンバータを適用した時の回生エネルギーの処理
(エンジンに対しては駆動力となるためエンジンストップの可能性がある)
<1>
[Ⅰ]
電源側(発電機)に流出する高調波による巻線過熱,振動増加
汎用インバータの電源として交流発電機を適用する場合,発電機の電機子巻線に高調波電流が流れ
・損失が増加し巻線が過熱する
・機械振動が増加する
などの問題が発生することがあります。
一般に発電機は高調波成分などに起因した逆相成分(電流)に関する耐量があり,回転子の構造により
次の通りです。
発電機の逆相耐量
・円筒形回転子の場合発電機定格電流の 8%以下
・凸極形回転子の場合発電機定格電流の 12%以下
<2>
・高調波対策された発電機では発電機定格電流の約 30%以下(発電機メーカに確認要)
実際の適用に当たっては上記レベル以下となるように
・AC リアクトルを追加し高調波成分を下げる。
(電圧降下のため 3~5%が限度)
・発電機の容量を上げる。
(相対的に逆相電流の割合が下がる)
などの対策が必要になります。
発行日:2000.04.06
変更履歴:<1>2000.09.26
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高調波
タイトル
汎用インバータの発電機電源への適用
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-02
(1)電源側にACリアクトルを設置した場合の高調波電流と等価逆相電流:インバータ定格電流換算
定格負荷時
% ZTL
トータルインピーダンス
高調波次数
1%
1.5%
(インバータ容量換算値)
2%
2.5%
3%
3.5%
4%
4.5%
5%
基本波
I1
100
100
100
100
100
100
100
100
100
5次
I5
54
46
41
38.5
35.5
33.5
32
30
29
7次
I7
32
25
21
17.5
15.5
13.5
12
11
10
11 次
I11
12
9
8
8
8
7.8
7.5
7.5
7
13 次
I13
7
6
5.5
5.5
5.5
5.2
5
5
5
17 次
I17
4
3.5
3.5
3
3
3
3
3
3
19 次
I19
3
2.5
2.5
2.5
2.5
2.3
2.2
2,1
2.0
64.5
53.6
47.2
43.6
40.1
37.5
35.5
33.4
32.1
119.0
113.5
110.6
109.1
107.7
106.8
106.1
105.4
105.0
0.645
0.536
0.472
0.436
0.401
0.375
0.355
0.334
0.321
入力力率
1
cosϕ =
1+ µ2
0.840
0.881
0.904
0.917
0.928
0.936
0.942
0.949
0.952
等価逆相電流
I2eq(%)
117
97
85
76
71
66
62
58
55
K=19
2
¦ IK
K=2
一次全電流
I0 = I12 + ¦I2K
ひずみ率
µ=
2
¦IK
I1
等価逆相電流 I2eq =
%Z=
2π・f×L×IINV
Vn / 3
¦{
4
k
・(Ik -1+Ik +1 )}2
2
× 100(%)
k = 6 , 12 , 18
f:電源周波数(Hz)
L:インダクタンス(H)
IINV:インバータ定格電流(A)
Vn:電源電圧
(V)
(例)発電機とインパータを 1 対 1 で適用
発行日:2000.04.06
変更履歴:<1>2000.09.26
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高調波
タイトル
汎用インバータの発電機電源への適用
機種
GN
インバータ定格 400V 級 CIMR-G5A4045(*定格電流
資料番号
J-P-01-GN-02
96A)
ACリアクトルが 4%インピーダンスのものを適用した場合
等価逆相電流は 96A × O.62 ≒ 60A
12%以下に抑制できる発電機は 60A/0.12 = 500A:定格 500A 以上の発電機が必要。
(凸極形の場合)
<2>
<2>
*なお、厳密な計算を行う場合、前述の定格電流を以下の計算で求めたインバータ入力側電流に置きかえて計算する。
インバータ入力側電流=モータ出力/(インバータ効率*モータ効率*√3*電源電圧*入力力率)
(2)発電機容量の検討
(a)発電機とインバータが 1:1 の場合
等価逆相電流は前ページの表を適用する。
%Z=AC リアクトルの%Z とする。
実際の適用では発電機容量はインバータ容量の 5 倍以上となるため発電機内部インピーダンスは無視して
検討します。
(b)1:n の場合
この場合は発電機に流入する高調波電流が同一の電源系統に接続されている負荷や配線,インピーダンス
により異なるため厳密には電力系統のインピーダンスマップにより高調波電流を計算の後,発電機の検討
を行う必要があります。
しかし,この方法は相当複雑な計算を必要としますので簡便には 全インバータの高調波電流が全て発電
機に流れ込むとして推定は可能です。
(発電機容量≫インパータ容量と仮定)
I5=I51+I52+
I51 :(1INV+1ACL )での5次高調波
I7=I71+I72+
I52 :(2INV+2ACL )での5次高調波
I71 :(1INV+1ACL )での7次高調波
以上の高調波電流より等価逆相電流Ⅰ2eq を計算し逆相耐量以内か否かの検討を行ってください。
発行日:2000.04.06
変更履歴:<1>2000.09.26
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資料分類
高調波
タイトル
汎用インバータの発電機電源への適用
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-02
[Ⅱ] 回生コンバータ適用時の回生エネルギー処理
発電機に回生エネルギーを供給すると,発電機が“電動機モード”となり,駆動側(例えばエンジンなど)
を逆に駆動することになり,エンジンストップを起こす。このため,回生エネルギーはシステムの損失以下
に抑える必要がある。大略の目安は,発電機容量の 10%以下に抑制する。(コンバータ損失,発電機損失を
見込む)
PG (kVA) × cosϕ G × 0.1 > PREG ( kW )
PG (kVA) :発電機容量
cosϕ G
:発電機力率 (≅ 0.9)
PREG (kW ) :実質の回生パワー(モータ容量ではないので注意)
PREG
エンジン側
回生軸動力
発電機損失
コンバータ損失
インバータ
損失
E
G
CONV
モータ損失
INV
負荷
モータ
発電機電源での回生時のパワーフロー
以上,[Ⅰ],[Ⅱ](コンバータ付の場合)を検討した上で,より大きな容量選定とすること。
発行日:2000.04.06
変更履歴:<1>2000.09.26
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高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
1.はじめに
近年,トランジスタインバータは,エレクトロニクス技術・インバータ技術の目覚ましい発展により製品の
品質向上と産業機械の自動化,省力化,省エネ化に応え広く世の中に普及しています。インバータ市場の適
用分野別の動向は表 1 のとおりです。
〔表 1〕インバータ適用マーケット(1991~1994 年)
機
械
インバータ対象市場
規 模
伸び率
区 分
土木建設機械
鉱山機械など
パルプおよび製紙機械
プラスチック加工機械
印刷・製版などの機械
ポンプ・圧縮機
送風機
油圧機器
運搬機械
産業用ロボット
動力伝導装置
農業用機械器具
金属工作機械
金属加工機械
繊維機械
食品加工機械
木材加工機械
冷凍機
冷凍機応用製品
△
伸び率(3年間)
◎
△
→
△
△
→
◎
◎
→
△
○
→
-
○
(注) レベルの大きさ ◎:大
インバータドライブ化
現装着率
伸び率
△
◎
△
○
△
○
△
△
→
◎
→
○:中
:140%以上
-
→
→
→
→
△
△
◎
○
○
○
○
→
→
△
△:小
→:100~140%
:100%以下
参考資料:日本電機工業会「インバータに関するユーザー調査」報告書
しかしながら,インバータの入力電圧や電流には高調波が含まれており,この高調波によって電源を共通と
する装置,近接する周辺機器,および電源設備自体などに誤動作や障害を与えることがあります。インバー
タの普及に伴いインバータから発生する高調波に対する抑制対策が重要な課題となっています。
従来,インバータシステムが稼働を始めてから電源高調波の障害に気づき,あわてて対策を立てるという例
が少なくありませんでした。このため十分な対策が打てなかったり,余分な費用がかかるという事態が発生
していました。
エレクトロニクス技術の発展につれて,今やインバータの高調波抑制は解決されつつある技術課題であり,
装置の設計段階から高調波対策を考慮しておけば,インバータ適用による高調波障害を未然に抑制でさるよ
うになっています。
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
ヨーロッパにおいては,古くからこの問題について検討され,すでに電源系統に含まれる高調波の規制が実
施されており,わが国でも 1994 年通産省よりガイドラインが通達されています。
インバータシステムにおける高調波障害には主として次の 2 種類が考えられます。
①交流電源ラインに歪を与える数 kHz 以下の高調波による障害 ……… 高調波
②パワー素子のスイッチングに起因する数 MHz の高次高調波による電波障害 …… ラジオノイズ
ここでは,電源ラインに含まれる高調波およびその対策を紹介します。
2.高調波による障害
電源系統に含まれる電圧および電流の高調波に起因した電気機器の障害件数は年々増加しています。高調波
の発生源としては,回転機器,変圧器,アーク炉およびインバータや各種情報処理装置に使用されている半
導体電力変換器などがあります。特に,電力変換器に使用されている半導体整流回路の利用拡大による高調
波の増加が問題になりつつあります。
高調波障害としては,
①調相用機器としての進相コンデンサおよびリアクトルの過熱,異常音,振動の発生
②配線用継電器の誤動作あるいはコイルの焼損
③トランスや電動機の異常音,過熱および振動
④ラジオやテレビ受信機への雑音
など広い範囲にわたっています。
このように高調波が増加すると,電力系統の設備を始め,系統に接続された機器の誤動作などの信頼性の低
下を引さ起こすだけでなく装置寿命にも影響を与えます。
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タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
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3.インバータの電源高調波
現在最も広く使用されている電圧型 PWM インバータは,図 1(a)に示すように,ダイオードおよぴコンデン
サからなるコンバータ部とトランジスタや IGBT などのスイッチング素子からなるインバータ部により構成
されています。コンバータ部では,交流入力をダイオードにより直流に変換し,コンデンサを充電するため
図 1(b)に示すような入力電圧,電流波形となります。
電流波形はインバータが接続されている電源の容量が大きいほど急峻なパルス状となり,電源容量が小さく
なると電源インピーダンスのために波形は滑らかになります。逆に電圧波形は電源容量が小さいほど波形歪
が大きくなります。
〔図 1〕インバータの回路構成および入力電圧,電流波形
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インバータ機器の電源高調波対策
機種
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4.インバータにおける高調波対策
インバータシステムの電源高調波抑制として以下のような対策がとられています。
4-1 リアクトルの挿入
パルス状の入力電流波形を改善して高調波を低減する方法として,インバータの入力電源側に交流リアクト
ルを挿入する方法,あるいはダイオードとコンデンサの間に直流リアクトルを挿入する方法があります。
表 2 はリアクトルを挿入することにより,電流波形が改善された三相インバータの例を示しています。リア
クトルの挿入によりパルス状の電流のピーク値が減少し,120°の方形波に近づきます。
図 2(a)は交流リアクトルおよび直流リアクトルによる高調波低減効果の例を示しています。
また,リアクトルを挿入することにより,電源高調波低滅と同時に入力カ率を改善することができます。イ
ンバータの基本波力率は 1 ですが,高調波成分を含むため結果として総合力率が悪くなります。
図 2(b)にインバータの入力カ率の改善例を示します。挿入するリアクトルの容量は,一般的に定格負荷時
の電流にて 2~5%電圧降下する値に選定しています。
〔図 2〕リアクトルの挿入による高調波改善例
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タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
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〔表 2〕各種電源方式によるインバータ入力電流波形例
インバータ:3.8kVA 200V
電動機:2.2kW 200V 4p 開放形
インバータ出力:60Hz
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タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
4-2
機種
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変圧器の多相化
多重インバータや大容量インバータで多く用いられている方法であり,コンバータ部を分割して電圧位相
差をもった複数個の変圧器二次巻線に接続します。分割したそれぞれのコンバータ部には多くの高調波成
分を含みますが,合成した変圧器一次側においては低次高調波は除去されます。
〔図 3〕変圧器の多相化
図 3(a)は 30°位相差をもつ二つの変圧器二次巻線に,それぞれコンバータを接続する場合の構成図です。
このとき,変圧器二次巻線電流 i1 と一次巻線の電流 i は図(b)となり,電流に含まれる高調波成分は図
(c)となります。変圧器の一次側巻線電流 i に現われる高調波は 5 次,7 次の成分が非常に小さくなって
います。
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
4-3
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
フィルタ
フィルタには,LC フィルタとアクティブフィルタがあります。LC フィルタはリアクトル(L)とコンデン
サ(C)
,また回路によっては抵抗(R)を組み合わせることにより,高調波に対する共振回路を構成し,そ
の高調波を吸収する受動フィルタです。一方,アクティブフィルタは電流に含まれる高調波成分を測定し,
高調波の逆位相の電流を流し込むことにより高調波成分を低減する方式です。アクティブフィルタの主回
路には GTO,トランジスタ,IGBT などのスイッチング素子を使用します。現在では,多くの製品が開発さ
れ,高調波対策として使用されています。図 4 に LC フィルタおよびアクティブフィルタの基本構成を示し
ます。
〔図 4〕フィルタ
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
4-4
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
PWM コンバータ
PWM コンバータは電圧形 PWM インバータの直流電源として用いられ,入力電流が電源電圧と同相の正弦波と
なるように制御されるため,力率が 1 で低次高調波成分を大幅に低減することができます。また,電源回
生が可能であり,エレベータやクレーンなどの可逆頻度の多い機器に省エネルギー装置として用いられま
す。PWM コンバータの主回路は PWM インバータと同一の構成となっています。写真 1 に PWM コンバータの外
観,図 5 に PWM コンバータの基本制御ブロック図を,また図 6 に従来のダイオードコンバータ方式および
サイリスタコンバータ方式と比較した電圧,電流波形を示します。PWM コンバータ方式では,電流に含まれ
る高調波の量を大幅に低減することができます。
〔写真 1〕PWM コンバータ
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
〔図 5〕PWM コンバータ制御ブロック図
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資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
(a)入力電圧の波形及び高調波成分
〔図 6)ダイオードコンバータ,サイリスクコンバータ,PWM コンバータの波形
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
<1>
J-P-01-GN-03
<1>
入力電流波形
入力電流波形高調波成分
(b)入力電流の波形及び高調波成分
∞
歪率 =
高調波実効値
=
基本波実効値
2
¦ Ik
k=2
I1
〔図 6〕
また,PWM コンバータ方式ではトランジスタや IGBT などのスイッチング素子が使用され,スイッチング周
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
波数での電圧,電流歪が発生しますが,この周波数は既知のため,その周波数に応じた LC フィルタを用い
ることにより高調波成分を取り除くことができます。図 7 にスイッチング周波数 12kHz にて 12kHz の LC フ
ィルタを用いた場合の電圧,電流波形および高調波成分を示します。3 次以降の高調波成分が大幅に低減さ
れています。
〔図 7〕PWM コンバータの入力電圧,電流波形
スイッチング周波数 12kHz,LC フィルタありの例
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
5.インバータにおける高調波規制
通産省資源エネルギー庁より高調波抑制対策のガイドラインが通達され,インバータを適用する場合,以下
の対応が考えられます。ただし,過渡的な条件や稼働率の条件も設けられており,それらを総合して考える
必要があります。
5-1
適用範囲
(a)高圧または特別高圧で受電する需要家
インバータの高調波発生量そのものを規制するのではなく,受電端での総高調波電流が規制されます。
受電電圧 6.6kV
等価容量
50kVA 以上
受電電圧 22,33kV
等価容量
300kVA 以上
受電電圧 66kV 以上 等価容量 2,000kVA 以上
の需要家で高調波発生機器を新設,増設,または更新する場合に適用されます。(ただし,
(b)の家電,
汎用品以外の機器)
表 3 に契約電力 1kW 当たりの高調波流出電流上限値を,表 4 に等価容量換算係数表を示します。
〔表 3〕契約電力 1kW 当たりの高調波流出電流の上限値(単位:mA/kW)
受 電
電 圧
(kV)
6.6
22
33
66
77
110
154
220
275
5次
7次
11 次
13 次
17 次
19 次
23 次
23 次
超過
3.5
1.8
1.2
0.59
0.50
0.35
0.25
0.17
0.14
2.5
1.3
0.86
0.42
0.36
0.25
0.18
0.12
0.10
1.6
0.82
0.55
0.27
0.23
0.16
0.11
0.08
0.06
1.3
0.69
0.46
0.23
0.19
0.13
0.09
0.06
0.05
1.0
0.53
0.35
0.17
0.15
0.10
0.07
0.05
0.04
0.9
0.47
0.32
0.16
0.13
0.09
0.06
0.04
0.03
0.76
0.39
0.26
0.13
0.11
0.07
0.05
0.03
0.03
0.70
0.36
0.24
0.12
0.10
0.07
0.05
0.03
0.02
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
〔表 4〕等価容量換算係数表
回路分類
1
2
回
路
三相ブリッジ
単相ブリッジ
種 別 (i)
6 パルス
12 パルス
24 パルス
直流電流平衡
混合ブリッジ
均一ブリッジ
リアクトルなし
3
4
5
6
三相ブリッジ
(コンデンサ平滑)
単相ブリッジ
(コンデンサ平滑)
ACL 付き
DCL 付き
ACL+DCL 付き
リアクトルなし
ACL 付き
自動三相ブリッジ
(電圧形 PWM 制御)
(電流形 PWM 制御)
自動単相ブリッジ
(電圧形 PWM 制御)
抵抗負荷
7
交流電力調整装置
8
サイクロコンバータ
9
10
アーク炉
その他
リアクタンス負荷
(アーク炉用を除く)
6 パルス相当
12 パルス相当
単独運転
換算係数 Ki
K11=1
K12=0.5
K13=0.25
K21=1.3
K22=0.65
K23=0.7
K31=3.4
K32=1.8
K33=1.8
K34=1.4
K41=1
K42=0.5
K5=0
主
な
適
用
例
直流電鉄変電所,電気化学用,ほか一般
(サイリスタコンバータ)
交流車両用
汎用インバータ,エレベータ,
冷凍空調機,ほか一般
(PWM インバータ)
汎用インバータ,冷凍空調機,
ほか一般
UPS,通信用電源装置,エレベータ,
系統連係用分散電源
(PWM コンバータ,アクティブフィルタ)
K6=0
通信用電源装置,大型照明装置,加熱器
K71=1.3
K72=0.3
無効電力調整装置,交流車両用,系統連
係用分散電源
K81=1
電動機駆動用
(圧延用,セメント用,交流車両用)
K82=0.5
製鋼用
K9=0.2
K10=製作者申告値
P0 = ∑ Ki Pi
P0:等価容量(kVA)
Ki:換算係数(表 3)
Pi:定格負荷時の入力容量(kVA)
表 4 からもわかるようにアクティブフィルタや PWM コンバータは等価容量が 0 となり,高調波対策として
有効です。
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
インバータ機器の電源高調波対策
機種
GN
資料番号
J-P-01-GN-03
(b)家電,汎用品
電力会社の所有する電力系統と電気的に接続されている需要家配線(コンセントを含む)での総高調波電
流が規制されます。図 8 に機器のクラス分けフローチャートを,表 5 にクラス A の限度値を示します。
(インバータの場合通常クラス A)
【表 5〕クラス A の限度値
(図 8〕機器のクラス分けフローチャ-ト
発行日:2000.04.06 変更履歴:<1>2001.07.25
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
高調波電流測定例
1.
機種
全般
資料番号
J-P-01-GN-04
概 要
インバータの一次側整流回路(コンバータ部)は,ダイオードブリッジと平滑用の大容量コンデンサで構成さ
れており,コンデンサの充電電流がパルス状に流れ込むため,電流波形歪みが有ります。
この歪み成分を高調波電流と言い,インバータの入力側力率を低下させています。
インバータ入力側にACリアクトルを,あるいはインバータユニットにDCリアクトルを設置したり,12相整流
や正弦波PWMコンバータ制御を行うことで,この電流歪みを抑制することが可能です。
本データは,対策の有無による高調波電流の違いを例として示したものです(200V級,7.5KW使用)
。
① リアクトル無しの時の高調波電流測定例
② ACリアクトル有りの時の高調波電流測定例
③ DCリアクトル有りの時の高調波電流測定例
④ 12相整流の時の高調波電流測定例
⑤ 正弦波PWMコンバータ制御の時の高調波電流測定例
なお,高調波流出量は,通産省「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」で定められており,定格電圧
300V以下かつ入力電流20A(3.7KW相当)以下のインバータはガイドライン対象商品です。
これらのインバータには,ACまたはDCリアクトルの設置などの高調波対策を実施してください。
同じく通産省の「高圧または特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」の高調波電流計算
で用いる換算係数は,対策の有無により,次のようになります。
○ 三相電源インバータ/回路種別:三相ブリッジ(コンデンサ平滑)
リアクトル無し:K31=3.4,ACL付き:K32=1.8,DCL付き:K33=1.8,ACL+DCL付き:K34=1.4
○ 単相電源インバータ/回路種別:単相ブリッジ(コンデンサ平滑)
リアクトル無し:K41=2.3,ACL付き:K42=0.35
○ 12相整流:三相ブリッジ(コンデンサ平滑)12相整流
該当係数は有りませんが,12相整流は高調波で問題になる5次,7次高調波を大幅に減らすため,
対策済みとみなされます。
○ 正弦波PWMコンバータ制御:自励三相ブリッジ(電圧/電流形PWM制御)
K5=0
(その他)
インバータの入力側に電源トランスを設置する場合、高調波による影響を考慮して、高調波対策品とするか、
または以下の容量選定としてください。一般の電源用として必要な容量を1とした場合の倍率で示しています。
・ リアクトルなし
→2.4倍
・ ACリアクトルあり
→1.4倍
・ DCリアクトルあり
→1.5倍
・ 正弦波PWMコンバータ →1.1倍
発行日:2000.12.11変更履歴:<1>2002.06.19 <2>2006.02.14
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安川電機
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資料分類
高調波
タイトル
高調波電流測定例
機種
全般
資料番号
J-P-01-GN-04
2. データ
① リアクトル無しの時の高調波電流測定例
<測定回路>
(負荷機)
(7.5kW 用)
<波形>
負荷
100%
基本波 28.9A
<スペクトラム>
<高調波分析>
基本波→
全歪率→
(28.9A)
(25.5A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
一次全電流 = 28.9A 2 + 25.5A 2
= 38.5A
発行日:2000.12.11変更履歴:<1>2002.06.19 <2>2006.02.14
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
高調波電流測定例
機種
全般
資料番号
J-P-01-GN-04
② AC リアクトル有りの時の高調波電流測定例
<測定回路>
(負荷機)
(7.5kW 用)
<波形>
負荷
100%
基本波 29A
<スペクトラム>
<高調波分析>
基本波→
全歪率→
(29A)
(11.2A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
一次全電流 = 29A 2 + 11.2A 2
= 31.1A
発行日:2000.12.11変更履歴:<1>2002.06.19 <2>2006.02.14
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
資料分類
高調波
タイトル
高調波電流測定例
機種
全般
資料番号
J-P-01-GN-04
③ DC リアクトル有りの時の高調波電流測定例
<測定回路>
(負荷機)
(7.5kW 用)
<波形>
負荷
100%
基本波 27A
<スペクトラム>
<高調波分析>
基本波→
全歪率→
(27A)
(8.7A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
一次全電流 = 27 A 2 + 8.7 A 2
17 次→
19 次→
23 次→
= 28.4A
発行日:2000.12.11変更履歴:<1>2002.06.19 <2>2006.02.14
25 次→
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資料分類
高調波
タイトル
高調波電流測定例
機種
全般
資料番号
J-P-01-GN-04
④ 12 相整流の時の高調波電流測定例
<測定回路>
(負荷機)
(7.5kW 用)
<波形>
負荷
100%
基本波 27.3A
<スペクトラム>
<高調波分析>
基本波→
全歪率→
(27.3A)
(3.2A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
17 次→
一次全電流 = 27.3A 2 + 3.2A 2
= 27.5A
発行日:2000.12.11変更履歴:<1>2002.06.19 <2>2006.02.14
19 次→
23 次→
25 次→
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資料分類
高調波
タイトル
高調波電流測定例
⑤
機種
全般
資料番号
J-P-01-GN-04
正弦波 PWM コンバータ制御の時の高調波電流測定例
<測定回路>
(負荷機)
(7.5kW 用)
<波形>
負荷
100%
基本波 27A
<スペクトラム>
<高調波分析>
基本波→
全歪率→
(27A)
(0.9A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
一次全電流 = 27 A 2 + 0.9A 2
= 27.0A
発行日:2000.12.11変更履歴:<1>2002.06.19 <2>2006.02.14
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
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株式会社
安川電機
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全般
資料分類
高調波
タイトル
120 度通電形電源回生コンバータの高調波電流測定例
機種
資料番号
J-P-01-GN-05
1. 概 要
インバータの一次側整流回路(コンバータ部)は,通常ダイオードブリッジと平滑用の大容量コンデンサで
構成されており,コンデンサの充電電流がパルス状に流れ込むため,電流波形歪みが有ります。
この歪み成分を高調波電流と言い,インバータの入力側力率を低下させています。
一般的には,インバータ入力側にACリアクトルを,あるいはインバータユニットにDCリアクトルを設置した
り,12相整流や正弦波PWMコンバータ制御を行うことで,この電流歪みを抑制することが可能です。
本データは,VS-656RC5,VS-626MR5やVS-616R3,VS-626VM3などの120度通電形電源回生コンバータやそれを
内蔵したインバータの一次側高調波電流の測定例です(200V級,11KW使用)
。
① 電動負荷率
50% 時の高調波電流測定例
② 電動負荷率 100% 時の高調波電流測定例
③ 回生負荷率
50% 時の高調波電流測定例
④ 回生負荷率 100% 時の高調波電流測定例
120度通電形電源回生コンバータ(ACリアクトル付き)は,電動時はダイオードブリッジ整流であり,通常の
インバータのACリアクトル(3%Z)付きと同じ高調波波形・電流となります。
回生時は,電流の流れる向きが,「三相交流電源→直流母線電圧」から,「直流母線電圧→三相交流電源(120
度通電)
」に変わるため,電流波形がちょうど逆転したようになります。回生時の電流歪み率は電動時よりも
多少多くなりますが,もともとの基本波が電動時よりも少ないので,高調波の絶対値としては電動時より少
なくなります。
したがって,高調波電流の計算としては,電動時の値で行っておけば問題有りません。
発行日:2000.12.14 変更履歴:
1/5
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
全般
資料分類
高調波
タイトル
120 度通電形電源回生コンバータの高調波電流測定例
機種
資料番号
J-P-01-GN-05
2. データ
① 電動負荷率
50% 時の高調波電流測定例
Œ 基本波電流=20.1A
全高調波成分=基本波の 49.89%(10.0A)
一次全電流 = 20.1A 2 + 10.0A 2 = 22.5A
全歪率→
(10.0A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
発行日:2000.12.14 変更履歴:
2/5
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
全般
資料分類
高調波
タイトル
120 度通電形電源回生コンバータの高調波電流測定例
② 電動負荷率
機種
資料番号
J-P-01-GN-05
100% 時の高調波電流測定例
Œ 基本波電流=38.4A
全高調波成分=基本波の 37.03%(14.2A)
一次全電流 = 38.4A 2 + 14.2A 2 = 40.9A
全歪率→
(14.2A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
発行日:2000.12.14 変更履歴:
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
全般
資料分類
高調波
タイトル
120 度通電形電源回生コンバータの高調波電流測定例
③ 回生負荷率
機種
資料番号
J-P-01-GN-05
50% 時の高調波電流測定例
Œ 基本波電流=9.3A
全高調波成分=基本波の 71.02%(6.6A)
一次全電流 = 9.3A 2 + 6.6A 2 = 11.4A
全歪率→
(6.6A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
発行日:2000.12.14 変更履歴:
4/5
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株式会社
安川電機
インバータ事業部
全般
資料分類
高調波
タイトル
120 度通電形電源回生コンバータの高調波電流測定例
④ 回生負荷率
機種
資料番号
J-P-01-GN-05
100% 時の高調波電流測定例
Œ 基本波電流=20.9A
全高調波成分=基本波の 42.38%(8.9A)
一次全電流 = 20.9A 2 + 8.9A 2 = 22.7A
全歪率→
(8.9A)
基本波→
5 次→
7 次→
11 次→
13 次→
17 次→
19 次→
23 次→
25 次→
発行日:2000.12.14 変更履歴:
5/5
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機種
高調波
AC リアクトルと DC リアクトルの比較
資料分類
タイトル
全般
資料番号
J-P-01-GN-06
株式会社
安川電機
高調波対策や力率改善用として,AC リアクトルや DC リアクトルを用いる場合の特性比較を以下に示します。
高調波抑制効果や力率,あるいは取り付け方法に応じて,AC リアクトルと DC リアクトルを使い分けたり,同時に使用してください。
Varispeed F7 の 22KW 以上,Varispeed G7 の 18.5KW 以上は,DC リアクトルを標準で内蔵している為,高調波対策が簡単になります。
リアクトルで高調波抑制効果が不足する場合は,12 相整流や正弦波コンバータなどを使用します。詳細はご照会ください。
1.
AC リアクトルと DC リアクトルの比較
リアクトルなし
インバータ一次側
高調波電流歪率
約 75~95%
インバータ一次側
力率
約 60~80%
AC リアクトル
約 35~45%
約 80~90%
DC リアクトル
約 30~40%
約 85~95%
AC リアクトル+
DC リアクトル
約 30~35%
約 90~95%
寸法・価格
(1 台当たり)
――
中
(巻線 3 相分の為)
小
(巻線 1 相分の為)
大
(2 個使用の為)
高調波ガイドライン
計算用換算係数
K31=3.4
K32=1.8
K33=1.8
リアクトルによる
電圧降下
――
約 3%
(交流側に設置の為)
1%以下
(直流側に設置の為)*2
――
可能
(複数のインバータへ一括設定可能)*3
不可
(インバータ 1 台づつに取り付け)*4
約 3~4%
AC リアクトルのみ可
K34=1.4
電源への一括設置
*1 データは,いずれも 3 相電源用で,且つモータ負荷率 100%時の値です。
*2 DC リアクトルの場合,インバータの直流母線に設置され,高調波分に対してのみ動作する為,電圧降下が少なくなります。
*3 モータ容量や負荷率,稼動状態がバランスしている場合は,高調波対策として AC リアクトルの電源側への一括設置が可能です。
*4 DC リアクトルは,取り付け専用端子に 1 台づつ取り付ける必要があります。専用端子が無いインバータへは取り付けることが出来ません。
*5 安川電機製 Varispeed F7 の 22KW 以上,Varispeed G7 の 18.5KW 以上および VS-616G5/P5 の 18.5~160kW は,DC リアクトルを内蔵しています。
これより小さい容量や VS mini J7/V7 はオプションで外部取り付けとなります。
2.
高調波電流発生量比較(高調波抑制対策ガイドラインより)
3 相ブリッジコンデンサ平滑形の回路で,基本波電流を 100%とした時の,各次数毎の高調波発生比率です。
単位(%)
次数
リアクトルなし
リアクトルあり(AC リアクトル)
リアクトルあり(DC リアクトル)
リアクトルあり
(AC リアクトル+DC リアクトル)
発行日:2002.7.24
変更履歴:
5
65
38
30
7
41
14.5
13
11
8.5
7.4
8.4
13
7.7
3.4
5.0
17
4.3
3.2
4.7
19
3.1
1.9
3.2
23
2.6
1.7
3.0
25
1.8
1.3
2.2
28
9.1
7.2
4.1
3.2
2.4
1.6
1.4
1/1
安川汎用インバータ 技術資料
資料分類
高調波
タイトル
12 相整流対応用周辺機器
株式会社
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-07
Varispeed F7/G7 などを用いて,高調波対策で入力側の 12 相整流を行う場合の必要機器を以下に示します。
・ トランスについては,以下の仕様で製作ください。
・ 配線用遮断器と AC リアクトルの詳細については,遮断器メーカのカタログ,およびインバータのカタログ
をご参照ください。
・ 12 相整流対応のインバータは,主回路電源端子 R-R1,S-S1,T-T1 間がジャンパー線で短絡されているので,
これをはずしてトランスを接続してください。
・ 図では,簡略化していますが,実際の適用に当ってはトランスやインバータ故障時の保護装置を設置してく
ださい。なお,漏電保護を行う場合は,12 相一括で検出器を設置ください。(6 相毎に設置すると循環電流
により誤動作する場合があります。)<3>
・ 発電機電源に対する高調波(逆相電流)対策として使用することもできます。詳細はご照会ください。
1.
回 路
3 巻線トランス
(端子 R,S,T)
AC リアクトル 1
Δ
電源
+
※2
AC リアクトル 2
Δ
トランス 2 次側の電流バランス調整のため 次の対応を
行ってください。
1. トランス出力側電圧アンバランス 1%以下(目安),
出力インピーダンスアンバランス 10%以下(目安)
2. トランス 2 次側に AC リアクトルを挿入
(端子 R1,S1,T1)
2. 12 相整流用トランスの仕様
インバータ形式
CIMR-G7A□,-F7A□
200V 級
400V 級
トランス
2 次側電流(A)※
2018
2022
2030
2037
2045
2055
2075
2090
2110
50
60
82
100
115
140
190
230
270
1次側電流
(A)
100
120
164
200
230
280
380
460
540
4018
4022
4030
4037
4045
4055
4075
4090
4110
4132
4160
4185
4220
4300
26
33
41
50
61
80
103
122
150
170
190
235
285
385
52
66
82
100
122
160
206
224
300
340
380
470
570
770
備考
☆ 入出力電圧 1:1 で記載しています。
200~230V±10%/200~230V±10%
50/60Hz
☆ 降圧トランスと兼用させる場合は,一次
側電流は電圧比分減少します。
☆ 入出力電圧 1:1 で記載しています。
380~480V±10%/380~480V±10%
50/60Hz
☆ 降圧トランスと兼用させる場合は,一次
側電流は電圧比分減少します。
※ F7A□は,22kW 以上で 12 相整流が可能です。
発行日:2002.9.5変更履歴:<3>2007.09.04
1/4
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高調波
タイトル
12 相整流対応用周辺機器
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機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-07
2-1 その他の仕様
・ 周囲温度 50℃
・ 湿度
90%RH
・ 絶縁耐圧 2500VAC 1 分 (一次,二次,アース間)
・ 絶縁抵抗 10MΩ以上 (500VDC メガー,一次,二次,アース間)
☆ 2 次側電流は,基本周波数に対し 5,7 次等の歪電流を約 75%含みます。項 2 で示した電流値はこの歪
電流を含む全実効値です。
1次側電流は,歪電流成分約 15%で項 2 の電流値はこれを含んでいます。
高調波対策され,かつ巻線間の漏れ電流や電源投入時の突入電流などがなるべく少ないトランスとして
ください。
☆ 1 次側を高圧とし,高圧→低圧への降圧トランスと兼用させることも可能です。その場合,通常の降圧ト
ランスと同様に,過電圧,過負荷,短絡などに注意してご使用ください。
☆ トランス 1 次側の結線(△/ )については,1 次側電圧やトランス容量により最適な結線を選択ください。
☆3.
配線用遮断器 MCCB と AC リアクトルの仕様
インバータ形式
CIMR-G7A□,-F7A□
2018
2022
2030
2037
200V 級
2045
2055
2075
2090
2110
4018
4022
4030
4037
4045
4055
4075
400V 級
4090
4110
4132
4160
4185
4220
4300
※1
AC リアクトルは,
推奨 1 次側 MCCB※2
NF225 形
NF225 形
NF225 形
NF225 形
NF400 形
NF400 形
NF400 形
NF600 形
NF600 形
NF100 形
NF100 形
NF100 形
NF225 形
NF225 形
NF225 形
NF225 形
NF400 形
NF400 形
NF400 形
NF400 形
NF600 形
NF600 形
NF800 形
125A
150A
175A
225A
250A
300A
400A
500A
600A
60A
75A
100A
125A
150A
175A
225A
250A
300A
350A
400A
500A
600A
800A
メーカー
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
MITSUBISHI
AC リアクトル※1
(台数×2)
60A 0.18mH
60A 0.18mH
80A 0.13mH
120A 0.09mH
120A 0.09mH
160A 0.07mH
200A 0.05mH
240A 0.044mH
280A 0.038mH
30A 0.7mH
40A 0.53mH
40A 0.53mH
50A 0.42mH
60A 0.36mH
80A 0.26mH
120A 0.18mH
120A 0.18mH
150A 0.15mH
200A 0.11mH
200A 0.11mH
250A 0.09mH
330A 0.06mH
490A 0.04mH
コード No.
X002495
X002495
X002497
X002555
X002555
X002556
X002557
X002558
X002559
X002503
X002504
X002504
X002505
X002506
X002508
X002566
X002566
X002567
X002568
X002568
X002569
X002570
X002690
側とΔ側 1 台づつ,計 2 台必要です。リアクトルのインピーダンス(電圧降下)は約 3%です。
※2 入出力電圧 1:1 の場合で記載しています。1 次側が高圧の場合、別途、再選定ください。
4.
確認事項
運転中のトランスの 1 次側,
2 次側電流を測定し,
トランスの仕様値以内に入っていることをご確認ください。
電流のアンバランスが大きい場合は,AC リアクトルの追加・削除で調整ください。
発行日:2002.9.5変更履歴:<3>2007.09.04
2/4
安川汎用インバータ 技術資料
資料分類
高調波
タイトル
12 相整流対応用周辺機器
5.
株式会社
機種
全般
安川電機
J-P-01-GN-07
資料番号
その他の対応方法
5-1 トランスを 2 個用いる方法
3 巻線トランスの製作が難しい場合は,以下の方法も可能です。なお,この場合,入出力電圧が 1:1 で
は、トランスの 1 次側電流と 2 次側電流は同じになります。
3 巻線トランスの場合と同様に,出力側電圧・インピーダンスの精度アップと AC リアクトルにより電流
のバランスを取ってください。
他の仕様も,3 巻線トランスの場合に準じてください。
トランス 1
AC リアクトル 1
Δ
電源
+
AC リアクトル 2
Δ Δ
トランス 2
5-2 インバータ複数台で大元に 3 巻線トランスを一括で置く方法
INV1
3 巻線トランス
MC1
電源
ACL1
+
Δ
ACL2
Δ
MC2
INV2
合計インバータ容量に見合った 3 巻線トランスを大元に設
置します。
※1 リアクトルはインバータ容量に見合ったものを使用
します。
※2 インバータをトランスに投入,切離しする場合,突
入電流の関係で入力側のコンタクタ,MC1 と MC2,MC3
と MC4,MC5 と MC6 は同時に ON または OFF させてく
ださい。
また,頻繁な ON/OFF は避け,基本的には大元(トラ
ンス 1 次側)の MCB か MC で電源の入切を行ってくだ
さい。
MC3
ACL3
+
ACL4
MC4
INV3
MC5
ACL5
+
ACL6
MC6
発行日:2002.9.5変更履歴:<3>2007.09.04
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安川汎用インバータ 技術資料
資料分類
高調波
タイトル
12 相整流対応用周辺機器
株式会社
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-07
5-3 インバータ複数台で負荷バランスを取る方法
インバータが複数台有り,かつ 2 個のトランス間で負荷バランスを取ることが可能な場合は,この方
法で 12 相整流と同じ効果を得ることができます。この場合,12 相整流に対応していないインバータも
使用可能です。
トランス 1
ACL1
電源
Δ
ACL2
ACL3
INV1
M1
INV2
M2
INV3
M3
INV4
M4
INV5
M5
INV6
M6
トランス 2
Δ Δ
ACL4
ACL5
ACL6
※1 リアクトルはインバータ容量に見合ったものを使用します。
※2 トランス 1 とトランス 2 の負荷パワーが,ほぼ同じになるようにインバータとモータを配置します。
発行日:2002.9.5変更履歴:<3>2007.09.04
4/4
高調波計算用ワークシート取扱説明書
以下①から⑦までの項目を入力いただくことで,インバータから発生する高調波電流およびお客
様契約電力量に対しての高調波流出電流上限値が計算できます。
① ②
③
④ ⑤
⑥
⑦
⑧
【高調波計算用Excelワークシートの使用方法】
黄色のセルを埋めていけば,受電点における高調波の計算結果および対策の要否が自動的に表示さ
れます。
(1) ①の受電電圧を選択してください。
(2) ②の契約電力を kW 単位で入力してください。
(3) ③の形式に安川インバータ基本形式の“CIMR-”以降の形式名を入力してください。
(4) ④のモータ容量に該当するモータ容量を選択してください。
(5) ⑤の相数に該当するモータの相数を選択してください。
(6) ⑥の台数にインバータの台数を入力してください。
(7) ⑦の回路分類細分 No. をクリックして該当する高調波ガイドラインの回路分類細分番号(青色
のセル)を入力してください。なお,回路分類細分 No. をクリックすると Sheet『回路分類細
分一覧』が表示されます。
発行日:2002.9.14 変更履歴:<9>2008.2.12
変更内容:インバータの形式入力からモータ容量による入力に変更
1/3
(8) ⑧の機器最大稼働率を入力してください。
機器最大稼働率:定格容量に対する最大実稼動容量の比
最大実稼動容量とは、30 分間の平均電力のうちの最大電力をいう。
【注】負荷率 100%以上の状態で 30 分以上稼動すると、機器最大稼働率は 100%となります。
<インバータ 2 台使用の例>
A 機の最大稼働時
B 機の最大稼働時
負荷
A 機の 30 分間平均電力の
最大値を適用
A
機
0
時間
B 機の 30 分間平均電力の
最大値を適用
B
機
0
時間
30 分間
30 分間
30 分間
※ 上図タイムチャートのように詳細な負荷がわからない場合は,各インバータの最大値を
入力してください(ただし,高調波成分量が多くなります)。
【計算結果】
以下のように入力条件による計算結果が自動計算されます。
発行日:2002.9.14 変更履歴:<9>2008.2.12
変更内容:インバータの形式入力からモータ容量による入力に変更
2/3
【判断基準】
上記の高調波合計値が電流上限値を超えている場合は,対策が必要となります。
高調波合計値が電流上限値を超えていない場合は,問題ありません。
【対策方法】
一般的に以下の対策方法があります。
1.リアクトルの追加
2.正弦波コンバータ(656DC5 等)を使用する
3.3巻線トランスを準備し,12 パルス入力をおこなう。
(ただし,12 パルス入力入力に対応したインバータのみ)
【その他】
本資料の流出高調波電流および入力定格容量は,日本電機工業会技術資料 JEM-TR201「特定需要家
のおける汎用インバータの高調波電流計算方法」を参考にしています。
発行日:2002.9.14 変更履歴:<9>2008.2.12
変更内容:インバータの形式入力からモータ容量による入力に変更
3/3
安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
平成 6 年 9 月,旧通産省資源エネルギー庁より,下記のガイドラインが通達されました。
1) 「高圧または,特別高圧で受電する需要家(以下,特定需要家)の高調波抑制対策ガイドライン」
2) 家電,汎用品高調波対策ガイドライン(以下,汎用品)
以上のガイドラインは,総合電圧歪率を「高調波環境目標レベル」(6.6kV 配電系統で 5%,特別高圧系統で
3%)を維持するために,高調波電流の流出を抑制するための条件を定めたものです。
しかしながら,平成16年1月から汎用インバータが「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」の対象外
になり,これにしたがって,以下のように変更になっています。
(a) 「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」
高圧または特別高圧で受電する需要家(特定需要家)が高調波発生機器を新設,増設または更新する際
にその需要家から流出する高調波電流の上限値を規定したものです。ガイドラインの定める等価容量計
算や高調波流出電流の計算に従った判定により上限値以下になるよう必要な対策を行わなければなりま
せん。なお従来汎用インバータは「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」
の適用対象でありましたが,「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」が適用可能な機種(入力電流
20A 以下)は,「高圧又は特別電圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」の適用対象から除
外されておりました。しかしながら今回の適用機種変更に伴い,全容量機種が常時適用対象となります。
社団法人 日本電機工業会においては,JEM-TR201「特定需要家における汎用インバータの高調波電流
計算方法」において,高調波電流を計算する技術要件を示しています。
(b) 「特定需要家以外を対象とした汎用インバータ(入力電流 20A 以下の)高調波抑制指針」
「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」に該当しない需要家に対しては,
社団法人 日本電機工業会として,総合的な高調波抑制を啓発して行くとの見地から,従来のガイドラ
インを参考に新たに技術資料として JEM-TR226「汎用インバータ(入力電流 20A 以下)の高調波抑制
指針」を制定しました。この指針は,従来通り,可能な限り汎用インバータ単体での高調波抑制対策を
実施していただくことを目的としています。
本資料は,インバータを適用する場合の題記ガイドラインへの対応の考え方と,(a)のガイドラインでの高調
波電流の計算方法を説明しています。
なお,高調波自動計算用ワークシート(P-01-GN-08)も準備していますので,ご利用ください。
――
目次 ――
1. 適 用
2. 高調波電流上限値
3. 高調波電流計算法
発行日:2003.05.15変更履歴:<3>2008.02.14
変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
1/8
安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
1. 適 用
(a) 「特定需要家向け: インバータの高調波発生量そのものを規制するのではなく,お客様の受電端での総
高調波電流が規制されます。
受電電圧
等価容量(注)
6.6kV
50kVA 以上
22kV 又は 33kV
300kVA 以上
66kV 以上
2000kVA 以上
のお客様で「高調波発生機器(インバータなど)を新設,増設または更新(契約電力の更新も含む)す
る場合に適用。
(注) 等価容量: 高調波発生量を 3 相(6 パルス形)サイリスタブリッジに等価換算したもので,インバータ
の定格容量ではありません。また,暫定的に出力容量で仮計算はできますが,接続電
動機の定格時の入力(基本波)容量で換算が必要です。(表 2)
(b)
特定需要家以外を対象とした汎用インバータ(入力電流 20A 以下)の高調波抑制指針への対応
<対象機種>
入力電源
適用モータ容量
対策
各メーカの発行するカタログ及び取扱説明書で推奨す
単相 100V
0.75kW 以下
る交流リアクトル又は直流リアクトルを接続してくだ
さい。
単相 200V
2.2 kW 以下
*参考資料
JEM-TR226「汎用インバータ(入力電流 20A 以下)の高
三相 200V
3.7 kW 以下
調波抑制指針」(平成 15 年 12 月制定)
※ 汎用インバータを複合機器の一部として使用し,電源プラグが共用されている場合は,
それらの機器トータルでの評価・対策を行うこともできます。
<交流リアクトルの場合>
<直流リアクトルの場合>
直流リアクトル
交流リアクトル
インバータ
インバータ
モータ
モータ
商用
電源
M
M
商用
電源
※ 単相入力機種は各メーカの指定する方法に従って下さい。
●以降に,(a)のガイドラインでの高調波電流の計算方法を説明します。
発行日:2003.05.15変更履歴:<3>2008.02.14
変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
2/8
安川汎用インバータ 技術資料
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資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
2. 高調波電流上限値
特定需要家の受電点での高調波電流上限値は契約電力 1kW 当り下表の通りです。
表 1 契約電力 1kW 当りの高調波流出電流上限値
5次
3.5
1.8
1.2
0.59
0.50
0.35
0.25
0.17
0.14
受電電圧
6.6kV
22kV
33kV
66kV
77kV
110kV
154kV
220kV
275kV
7次
2.5
1.3
0.86
0.42
0.36
0.25
0.18
0.12
0.10
11 次
1.6
0.82
0.55
0.27
0.23
0.16
0.11
0.08
0.06
13 次
1.3
0.69
0.46
0.23
0.19
0.13
0.09
0.06
0.05
17 次
1.0
0.53
0.35
0.17
0.15
0.10
0.07
0.05
0.04
19 次
0.9
0.47
0.32
0.16
0.13
0.09
0.06
0.04
0.03
23 次
0.76
0.39
0.26
0.13
0.11
0.07
0.05
0.03
0.03
(単位:mA/kW)
23 次超過
0.70
0.36
0.24
0.12
0.10
0.07
0.05
0.03
0.02
表 2 汎用インバータの交流側入力値
電動機容
量(kW)
0.1
0.2
0.4
0.75
1.5
2.2
3.7
5.5
7.5
11
15
18.5
22
30
37
45
55
75
90
110
132
160
200
220
250
280
315
355
400
450
500
530
560
630
入力定格容量(kVA)
200V
400V
0.22
0.35
0.57
0.97
1.95
2.81
4.61
6.77
9.07
13.1
17.6
21.8
25.9
34.7
42.8
52.1
63.7
87.2
104
127
-
基本波入力電流(A)
単相
100V
200V
2.11
3.40
5.61
9.51
1.05
1.70
2.81
4.76
9.51
13.7
-
153
183
229
252
286
319
359
405
456
512
570
604
638
718
基本波入力容量
三相
-
200V
0.61
0.98
1.61
2.74
5.50
7.93
13.0
19.1
25.6
36.9
49.8
61.4
73.1
98.0
121
147
180
245
293
357
-
400V
0.3
0.49
0.81
1.37
2.75
3.96
6.50
9.55
12.8
18.5
24.9
30.7
36.6
49.0
60.4
73.5
89.9
123
147
179
216
258
323
355
403
450
506
571
643
723
804
852
900
1013
電動機容量
2.2
1.75
1.425
1.293
1.300
1.277
1.246
1.231
1.210
1.191
1.173
1.178
1.177
1.157
1.157
1.158
1.158
1.163
1.156
1.155
1.159
1.144
1.145
1.145
1.144
1.139
1.140
1.141
1.140
1.138
1.140
1.140
1.139
1.140
「特定需要家における汎用インバータの高調波電流計算方法」JEM-TR201(平成 19 年 第 3 回改正)より抜粋
発行日:2003.05.15変更履歴:<3>2008.02.14
変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
3/8
安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
3. 高調波電流計算法
Step 1) 規制容量の範囲内か?:等価容量の計算
Po = Σ K i Pi
・・・・・・(1)
Po = 等価容量(kVA)
K i = 換算係数(表3)
Pi = 電動機定格負荷時の入力容量(kVA)
(表2)
表 3 等価容量換算係数表
回路
分類
換算係数(Ki)
回路種別(i)
1
三相ブリッジ
2
単相ブリッジ
三相ブリッジ
(コンデンサ平滑)
6 パルス
12 パルス
24 パルス
直流電流平衡
混合ブリッジ
均一ブリッジ
リアクトルなし
ACL 付き
DCL 付き
ACL+DCL 付き
K11=1
K12=0.5
K13=0.25
K21=1.3
K22=0.65
K23=0.7
K31=3.4
K32=1.8
K33=1.8
K34=1.4
リアクトルなし
ACL 付き
DCL 付き
ACL+DCL 付き
リアクトルなし
ACL 付き
K35=0.8
K36=0.6
K37=0.8
K38=0.7
K41=2.3
K42=0.35
3
12 パルス入力
(コンデンサ平滑)
4
5
6
7
8
9
10
単相ブリッジ
(コンデンサ平滑)
自励三相ブリッジ
(電圧形 PWM 制御)
(電流形 PWM 制御)
自励単相ブリッジ
(電圧形 PWM 制御)
交流電力調整装置
サイクロ
コンバータ
アーク炉
その他
主な適用例(当社製品名)
直流電鉄変電所,電気化学用,ほか一般
直流ドライブ
VS-505Z3B/W3B,VS-590
交流車両用
エレベータ,冷凍空調機,ほか一般
汎用インバータ・コンバータ(6 パルス入力)
VS mini V7/J7,V1000,J1000(3 相電源用)
Varispeed G7/F7/F7S/V7pico,
VARISPEED-686SS5/656RC5
汎用インバータ(12 パルス入力)
Varispeed G7/F7/F7S の 12 パルス入力方式(注)
冷凍空調機,ほか一般
汎用インバータ
V1000, J1000, VS mini V7/J7(単相電源用)
UPS,通信用電源装置,エレベータ,系統連係用分散電源
正弦波 PWM コンバータ
Varispeed AC, Varispeed-656DC3, VARISPEED-656DC5
-
K5=0
-
K6=0
通信用電源装置,交流車両用,系統連係用分散電源
K71=1.6
K72=0.3
無効電力調整装置,大型照明装置,加熱器
抵抗負荷
リアクタンス負荷
(アーク炉用を除く)
6 パルス相当
12 パルス相当
単独運転
K81=1
K82=0.5
K9=0.2
K10:製作者申告値
電動機駆動用(圧延用,セメント用,交流車両用)
製鋼用
-
例 1) Varispeed G7 200V 55kW (CIMR-G7A2055) に 55kW のモータを適用した場合
ACL なし K31=3.4 表より Pi=63.7kVA
∴Po=3.4×63.7=216.6kVA
例 2) ACL 付 K32=1.8 Pi=63.7kVA
Po=1.8×63.7=114.7kVA
例 3) 同上,但しモータが 1 枠下の 45kW を適用
Po=1.8×52.1=93.8kVA
Pi=52.1kVA
例 4) 共通電源として,Varispeed-656DC3/VARISPEED-656DC5 を適用した場合
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変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
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資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
K5=0
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
∴Po=0kVA
(注) ・高調波ガイドラインでは既設の需要家において,12 パルス入力機器を増設する場合,高調波流出電流を計算
し,結果としてトータル値を超えたとしても,12 パルス入力の増設機器は高調波対策済みとみなされ,既設
分を含めて高調波対策を求めていません(ただし,極めて大きい容量:22/33kV の需要家で 10000kVA を超え
るもの,66kV 以上の需要家で 30000kVA を超えるものを除く)。しかしこの場合でも,電力会社に 12 パルス
入力機器を使用し,結果としてトータル値を超えている旨を申請する必要があります。
・ここで示している回路分類および換算係数の記号(K35~K38)は便宜的に設定したもので,公的に定められた
ものではありません。
Step 2) 規制値以内か?
・ 各機器毎,高調波次数毎の高調波電流を計算
I nh =
%I nh
100
× Ih ×
Vh
VH
× Ah × 1000 (mA)
・・・・・
(2)
ここに, I nh :受電点における機器 h の n 次高調波電流
%I nh :機器 h の n 次高調波電流含有率(%)
(表 4~7 の値利用)
Ih
:機器 h の基本波入力電流(A)(表 2 の値利用)
Vh
:機器 h の電源電圧(V)
(200,220V,400,440V など)
VH
:受電電圧(V)
(6600,22000,33000 など)
Ah
:機器 h の稼働率
定格容量に対する実稼動容量の比で,30 分間の平均値の最大の値を用いる。
・ 各高調波次数毎の流出電流の合計を計算
I n = I n1+I n2+I n3+ ・・・
I nh
(n=5, 7, 11・・・・ 25)
契約電力を PokW として,契約電力 1kW 当りの流出電流 In' を次式で求めます。
I n' =
In
Po
・ 高調波流出電流上限値との比較
In' と契約電力 1kW 当りの高調波流出電流上限値(表 1)を比較し,合否の判定を行います。
例えば,6.6kV 受電で 5 次の高調波流出電流 I 5' が 8mA だった場合,表 1 の 6.6kV における
5 次の流出電流上限値は 3.5mA で,8mA はこの値を超過しているため,対策が必要となります。
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資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
回路方式における高調波含有率
■ 単相入力インバータ
・単相入力の VS mini V7/J7 など
表4
単相ブリッジ (コンデンサ平滑)
(単位:%)
5
7
11
13
17
19
23
25
次数
50
24
5.1
4.0
1.5
1.4
リアクトルなし
-
-
6.0
3.9
1.6
1.2
0.6
0.1
ACL 付き
-
-
・ACL:20%
・平滑コンデンサ:蓄積エネルギーが 15~30ms 相当(100%負荷換算)
・負荷:100%
■ 3 相入力インバータ
・VS mini V7/J7/C
・Varispeed G7/F7
・VS-616G5/P5
・VS-616R3 など
■ 12 パルス入力インバータ
・Varispeed G7/F7 の 12 パルス入力
■ 3 相入力サイリスタインバータ
・VS-505ZⅡ/WⅡ
・VS-520B
・VS-530B
・VS-680TV/VF など
表5
三相ブリッジ (コンデンサ平滑)
(単位:%)
5
7
11
13
17
19
23
25
次数
65
41
8.5
7.7
4.3
3.1
2.6
1.8
リアクトルなし
38
14.5
7.4
3.4
3.2
1.9
1.7
1.3
ACL 付き
30
13
8.4
5.0
4.7
3.2
3.0
2.2
DCL 付き
28
9.1
7.1
4.1
3.2
2.4
1.6
1.4
ACL+DCL 付き
・ACL:3%
・DCL:蓄積エネルギーが 0.08~0.15ms 相当(100%負荷換算)
・平滑コンデンサ:蓄積エネルギーが 15~30ms 相当(100%負荷換算)
・負荷:100%
表6
12 パルス入力(コンデンサ平滑)
(単位:%)
5
3.1
1.6
1.4
1.5
次数
リアクトルなし
ACL 付き
DCL 付き
ACL+DCL 付き
7
2.7
1.7
1.5
1.2
表7
11
7.4
6.2
7.2
6
13
3.4
3.3
4.1
3.8
17
0.8
0.7
0.8
0.6
19
0.8
0.6
0.7
0.5
23
1.7
1
1.6
1
19
1.25
0.15
0.15
23
0.75
0.75
0.75
25
1.3
1
1.4
1
三相ブリッジ
(単位:%)
次数
6 パルス
12 パルス
24 パルス
5
17.5
2.0
2.0
7
11.0
1.5
1.5
11
4.5
4.5
1.0
13
3.0
3.0
0.75
17
1.5
0.2
0.2
25
0.75
0.75
0.75
<参考文献>
・ 「特定需要家における汎用インバータの高調波電流計算方法」
日本電機工業会技術資料 JEM-TR201
・ 「汎用インバータ(入力電流 20A 以下)の高調波抑制指針」
日本電機工業会技術資料 JEM-TR-226
発行日:2003.05.15変更履歴:<3>2008.02.14
変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
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安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
4.計算例
a)
インバータの設置条件
1) 電動機の電源電圧,定格容量:AC400V,55kW
2) 使用条件
:3 台,交流リアクトルなし,最大稼働率 0.55
3) 用途
:ビル空調用設備
4) 受電点電圧
:6.6kV
5) 契約電力
:1000kW
b) 交流リアクトルで対策しない場合の計算例
1) 等価容量の計算
-インバータ 1 台当たりの入力定格容量:表 2 から, Pi = 63.7 kVA
-換算係数 K i :表 3 の回路分類 3 のリアクトルなしから, K 31 = 3.4
式(1)から,等価容量(3 台分)は,
Po = 63.7 kVA×3 台×3.4=649.7kVA
よって,6.6kV で 50kVA を超える需要家となり,ガイドラインの適用対象となる。
2) 高調波電流の計算
-インバータ 1 台当たりの基本波入力電流:表 2 から 89.9A
-受電点での n 次高調波電流:式(2)から,次の式となる。
I n = 89.9A × 3台 ×
ここに
400V
6600V
×
%I n
100
× 0.55=0.0899A × %I n
I n :受電点での n 次高調波電流(A)
% I n :n 次高調波電流含有率(%)
n 次高調波電流含有率(%)は,表 5 のリアクトルなしを用いると,表 8 のようになる。表 8 を表 1
の 6.6kV と比較すると,5 次及び 7 次が高調波電流上限値(3.5mA/kW,2.5mA/kW)を超えるので,対
策が必要である。
表 8 高調波電流発生量(リアクトルなし)
次数
高調波含有率
%
受電点の高調波電流
A
契約電力当たりの高調波電流 mA/kW
発行日:2003.05.15変更履歴:<3>2008.02.14
変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
5
65
5.84
5.84
7
41
3.68
3.68
11
8.5
0.76
0.76
13
7.7
0.69
0.69
17
4.3
0.39
0.39
19
3.1
0.28
0.28
23
2.6
0.23
0.23
25
1.8
0.16
0.16
7/8
安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波抑制対策ガイドラインの対応について
c)
機種
全般
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-10
交流リアクトルで対策した場合の計算
1) 等価容量の計算
換算係数 K i :表 2 の回路分類 3 のリアクトルあり(交流側)から, K 32 = 1.8
Po = 63.7 kVA×3 台×1.8=344.0 kVA
よって,6.6kV で 50kVA を超える需要家となり,ガイドラインの適用対象となる。
2) 高調波電流の計算
n 次高調波電流含有率(%)は,表 5 のリアクトルあり(交流側)を用いると,表 9 のようになる。
表 9 を表 1 と比較すると,高調波電流上限値以内であるので,
交流リアクトルによって対策を行うと,
高調波ガイドラインをクリアできることになる。
表 9 高調波電流発生量[リアクトルあり(交流側)]
次数
高調波含有率
%
受電点の高調波電流
A
契約電力当たりの高調波電流 mA/kW
発行日:2003.05.15変更履歴:<3>2008.02.14
変更内容:P4 主な適用例の欄に新機種追加
5
38
3.41
3.41
7
14.5
1.30
1.30
11
7.4
0.67
0.67
13
3.4
0.31
0.31
17
3.2
0.29
0.29
19
1.9
0.17
0.17
23
1.7
0.15
0.15
25
1.3
0.12
0.12
8/8
安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
GN
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波対策としてのPWMコンバータ(VS-656DC5)の優位性
機種
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-11
1.高調波とその影響について
(a)高調波とは
電力会社から提供される商用電源の周波数を基本波周波数(以下基本波)と言い,この基本波の整数
倍(n)の周波数成分を n 次高調波と言います。基本波に高調波が加わるとひずみ波形となります(下図
参照)。
下図は①の基本波電流(50Hz 又は 60Hz)に②の 5 次高調波電流が加わり,ひずみ波電流③を生成し
た場合を示します。実際は 5 次以外の多くの高調波が加わって,④のような電流がインバータの入力側
に流れます。
機器の回路に整流回路を含み,リアクトルやコンデンサを利用した平滑回路がある場合,多くの高調
波が発生するので,このように入力電流波形がひずみます。
①
③
②
基本波電流
高調波電流
ひずみ波電流
↑
(整数倍の周波数)
④
さらに多くの高調波が加わると
このような電流になります。
インバータの入力側に流れる電流
発行日:2005.10.20 変更履歴:
1/5
安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
GN
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波対策としてのPWMコンバータ(VS-656DC5)の優位性
機種
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-11
(b)高調波の影響
機器から発生した高調波は,電線を伝わり他の設備や機器に次のような影響を及ぼす場合が
あります。
・機器への高調波電流の流入による異音,振動,焼損など
・機器へ高調波電圧が加わることによる誤動作など
(c)汎用インバータの高調波発生の原理(下図参照)
汎用インバータの電源側から供給された交流電流は,ブリッジ整流器で整流された後,コンデンサで
平滑され直流となってインバータ部に供給されます。この平滑コンデンサを充電するために,例えば R
相には ir1,ir2 のような高調波を含んだひずみ波電流が流れます。
ブリッジ整流器
er-s
V
電源
平滑コンデンサ
er
es
et
ir
is
it
コンバータ部
インバータ部
電源相電圧
er-s
es-r
es-t
er-t
et-s
et-r
電源線間電圧
ir1
R相
ir
iS1
電源電流波形
S相
ir2
iS2
is
it1
it2
it
発行日:2005.10.20 変更履歴:
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GN
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波対策としてのPWMコンバータ(VS-656DC5)の優位性
機種
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-11
2.高調波電流の低減対策
高調波電流を低減する方法として
・AC リアクトルの挿入
・DC リアクトルの挿入
・12 相整流
・正弦波 PWM コンバータ(当社製品名称:VS-656DC5)の設置
があります。これ等の対策を行った場合の入力電流波形と,入力電流スペクトラム(含有高調
流波
タ入力電流波形例
波の周波数分析),高調波含有率を示すと次表のようになります。
イン
回路方式
入力電流波形
入力電流スペクトラム
高調波含有率
未対策
+
P
88%
高調波次数
N
交流リアクトル挿入
+
P
38%
N
直流リアクトル挿入
P
+
33%
N
12相整流
P
+
N
12%
高調波次数
PWM制御コンバータ
正弦波 PWM コンバータ
+
P
3%
N
汎用インバータのコンバータ部は,電流制御機能のないダイオードで構成された三相ブリッジのため,
前記のように歪んだ電流波形になります。AC リアクトル,DC リアクトル,12 相整流等の対策を行って
も 12%以上の高調波は残ります。
これに対し,正弦波 PWM コンバータは下図に示すように,インバータの出力回路と同じ 6 個のトラ
ンジスタで構成されています。トランジスタはスイッチングにより簡単に電流の制御が出来るため,正
弦波 PWM(パルス幅変調)信号をトランジスタに送ることにより,電流波形をほぼ正弦波に制御するこ
とが出来ますので,高調波電流の発生が極めて少なくなります。
発行日:2005.10.20 変更履歴:
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資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波対策としてのPWMコンバータ(VS-656DC5)の優位性
機種
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-11
3.高調波抑制対策ガイドラインと等価容量換算係数
高調波抑制対策ガイドラインは,高圧または特別高圧で受電する需要家が高調波発生機器を新設,ま
たは更新する際に,その需要家から流出する高調波電流の上限値を規定したものです。
これは,受電電圧毎に定められた高調波発生機器の容量以上の設備に対して適用されます。
例えば,6.6kV 受電の場合は 50kVA 以上の場合が適用対象となります。高調波発生機器はいろいろな
機種があり,同じ容量の kVA であっても高調波電流の大きさが異なっています。そこで,高調波発生機
器の種類毎の高調波発生率を考慮した容量(等価容量という)を適用対象の判断に使用します。この発
生率を等価容量換算係数といい,直流ドライブに使用される三相ブリッジの換算係数(K11 という)を規
準値 1 として,それ以外の機器はこれをベースに設定されます。
以下に等価容量換算係数表を示します。
汎用インバータはコンデンサ平滑の三相ブリッジで,リアクトルなしの場合の換算係数を K31 と称し,
その値は 3.4,AC リアクトル付は K32 で 1.8,DC リアクトル付は K33 で 1.8,AC+DC リアクトル付は K34
で 1.4 となっています。
例えば,リアクトルなしの 20kVA のインバータの場合,K31=3.4 なので等価容量は 20×3.4=68kVA と
なり,50kVA を超えるためガイドラインの適用対象となります。一方,正弦波 PWM コンバータは自励
三相ブリッジの部類に入ります。自励三相ブリッジの換算係数は K5 で 0,すなわち,どのように大きな
容量であっても等価容量は 0kVA となるため,自励三相ブリッジを使用した設備はガイドラインの適用
対象外となります。
発行日:2005.10.20 変更履歴:
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安川汎用インバータ 技術資料
株式会社
GN
資料分類
高調波/高調波
タイトル
高調波対策としてのPWMコンバータ(VS-656DC5)の優位性
機種
資料番号
安川電機
J-P-01-GN-11
等価容量換算係数表
回路
分類
換算係数 Ki
主な適用例(当社製品名)
(─ は当社該当製品なしを示す)
12 パルス
K11=1
K12=0.5
24 パルス
K13=0.25
直流電鉄変電所,電気化学用,他一般
(VS-505ZⅡ/WⅡ,-520B,-530B,
-680TV/VF,12 パ ル ス :Varispeed
G7/F7 の 12 相整流)(注)
直流電流平衡
混合ブリッジ
均一ブリッジ
K21=1.3
K22=0.65
K23=0.7
リアクトルなし
K31=3.4
ACL 付き
K32=1.8
DCL 付き
K33=1.8
ACL+DCL 付き
K34=1.4
汎用インバータ,エレベータ,
冷凍空調機,他一般
(VS mini V7/J7, Varispeed V7
pico,
Varispeed G7/F7,
Varispeed 686SS5,Varispeed F7S)
K41=2.3
K42=0.35
汎用インバータ,冷凍空調機,他一般
(VS miniV7/J7 単相入力用)
回路種別(i)
6 パルス
1
2
3
三相ブリッジ
単相ブリッジ
三相ブリッジ
(コンデンサ平滑)
交流車両用 (-)
4
単相ブリッジ
(コンデンサ平滑)
リアクトルなし
ACL 付き
5
自励三相ブリッジ
(電圧形 PWM 制御)
(電流形 PWM 制御)
─
K5=0
UPS,通信用電源装置,エレベータ,
系統連系用分散電源(VS-656DC5)
6
自励単相ブリッジ
(電圧形 PWM 制御)
─
K 6=0
通信用電源装置,交流車両用,
系統連系用分散電源 (-)
7
交流電力調整装置
8
サイクロコンバータ
9
アーク炉
10
その他
抵抗負荷
リアクタンス負荷
(アーク炉用を除く)
6 パルス相当
12 パルス相当
単独運転
発行日:2005.10.20 変更履歴:
K71=1.3
K72=0.3
無効電力調整装置,大型照明装置,
加熱器 (-)
K81=1
K82=0.5
K9=0.2
モータ駆動用(圧延用,セメント用,
交流車両用) (-)
製鋼用 (-)
K10:製作者
申告値
─
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