カーリングが面白い カーリングが面白い

カーリングが面白い
カーリングが面白い
2014.2.13 かまだ ゆたか
冬期オ リンピックには興味 無いと 言ったけど、「カー リング」だけは例外だ。この競 技は面白 い!
し か し 、 “ カ ー リ ン グ な ん て 、 丸 い 的 の 真 ん 中 を 狙 っ て 石 を滑 ら せ る だ け の 競 技 ” だ と 思 っ て い る 人
がけっこういる。と んでもない、試 合中 に真ん 中を狙うなんてことはまずない。
と い う こ と で 、 カ ー リ ン グ の ル ー ル で は なく 、 “な ぜ カー リ ン グ が 面 白 い の か ? ”を 、 そ の 戦 略 を中 心
に解 説してみる。
■ さわり
カーリングは、“氷上のチェス”という異名があるように、数手先を読んで、布石を作りながら、石を
置 いていく。(そういう意 味では、“氷上 の囲碁 ”と 言う方 が、 似合っていると 思うw)
オリンピックと いう体育 系の競 技の中で 、文系 競技 に近いと ころがまずユ ニーク ではないか 。
でもって、囲碁や将棋なら石やコマを、置きたいところに確実に置けるのだが、カーリングは正確
に置 くにはテクニ ックが必要 になる 。
というか 、多少 なりと も狙ったと ころからズレると いう、ファ ジーな要素 がある。
(だから、囲 碁や 将棋 のゲ ーム は作 れても、カーリン グのゲー ムは難しい。)
そのた め、単にどの位置 に置くべ きか を考 えるので はなく、
・ベ スト の位置 だが 、置 きにく い
・ベ ター な位置 だが 、置 きやす い
と いったことを天秤 にかけて考えないと いけない。
さらには、そ の位置 に上 手く 置けなかったとき のリスク も考え ないと いけない。つま り、
・ベ スト の位置 だが 、ミ スをす ると 大失 点につ なが る
・ベ ター な位置 だが 、ミ スをし ても 、失 点にな りに くい
も天 秤にか けないと いけない訳だ。
ほら、カーリ ングが、か なり思 考を要す る競技 であること が分か ってきたか と。
■ 先攻か後攻か、それが問題だ
野 球でいうイニ ングを、カーリン グでは
「エ ンド」という。野 球は1試合 9イニン グだが、
カーリン グは1 0エン ドで1 試合 。
この1つのエンドで、両チーム8個の石を交互
に投げ てい く。
...と い う こ と は 、 た だ 単 純 に 、 相 手 チ ー ム が 置
いた石めがけて、バコーンとぶち当てていけば、
相手 は吹 っ飛 び、自 分は残る。 (左 図)
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これ を 単 純 に 繰 り 返 し て い け ば 、 最 後 に 石 を 投 げ る チ ー ム 、 つ ま り 後 攻 の チ ー ム は、 楽 勝 で 1 点 取
れてしまう訳だ。
そう、この競 技、後 攻が圧 倒的 に有 利な競技 のだ!
後攻が2点取るよりも、先攻が1点取るほうがずっと難しい。というか、基本的に先攻は点が取れな
い。(だから、先攻チームが点を取ることを「スチール(盗む)」と言い、これができればこの試合非常
に有 利になる。)
でもって、ここがポイントなのだが、“1点でも取ってしまうと、次のエンドは先攻にされてしまう”。
その結 果、
・後攻チ ームは、 1点 取る ぐらい なら 、点を取らない 方がマシ
(0点なら、次のエ ンドは、そ のまま後 攻)
・先攻チ ームは、 ワザと相 手に1点取 らせ る
これがカー リングの基 本戦 略なのだ。
相手にワ ザと点を取 らせ る競 技なんて、カーリン グ以外 にあるんだろ うか?
■ ワザと相手に 1 点取らせる
“ワ ザ と 相 手 に 1 点 取 ら せ る と 言 って も 、 相 手 は点 を 取 らな い よ う にす る だ ろ
うか ら、現実 的には無理 では? ”と思 うか もしれない。そ んなことはない 。
例え ば、わ かりや すい例 として、相手 チーム が最後 の 1 投を投げ るとき 、
左図のよ うになっていればい い。
赤 チ ー ム が最 後 の 1 投 で 、 こ の 左 右 両 端 に あ る 2 つ の 石 を 、 両 方 と も は じ き
飛ばす のは絶 対に無 理だ。
このままでは、先攻の黄チームに 2 点入ってしまうので、後攻の赤チーム
は、1 点取 らざる を得 ない。
補足だが、この例の場合、赤チームは的(「ハウス」と言う)の真ん中を狙う
のではなく、左側の石を狙って投げることが多い。真ん中を狙うと、力加減を
ミスした場合、ハウスを素通りする可能性があるのに対して、左の石を狙え
ば、そ こで赤い 石が確実 に止まるか らだ。
また、このパターンは、2つの石がハウスの両端にあるのがポイントで、真
ん中に2 つあると 、両 方いっぺん にはじき飛 ばされるので ダメだ。
“試合 中に真ん 中を狙うなんてこと はまず ない 。”と いう意味 が分か って
来たか と。
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■ 先攻チームの基本戦略
“で も、先攻 チー ムって、どこに石 を置 いても、相手 の次の 1 投で飛 ばされてしまうから、ミスでもな
い限 り、戦略 の建てようがないのでは?”
ふっ、そん な単純なモノ では無 いのだ。
す ご く 単 純 な 戦 略 と し て 、 先 攻 チ ー ム は 、 1投 目 に 左 図 の よ う に 、 邪 魔
をする石(ガード)置く。
さて、後攻の赤チームは、どこに投げる?
真正面から黄色の
石にぶつけたら、
黄色はふっ飛んでく
れ る け ど 、赤 が 残 り 、
自分自身が邪魔な
ガードになっちゃう。
先 攻 の 1投 目
正解は、黄色の縁
ギリギリのところに
ぶつける。
すると、両方の石
が、両側に吹き飛ん
でクリアになる。
(ビリヤードをやっ
ていると分かるけど、
60度 で 飛 ん で い く )
で も 、 真 正 面 に ぶ つ け る と き は 、 2 , 3 cmず
れても、同じような結果になるけど、縁のギリ
ギリに当てるって、すごく難しいよね。
2 cmず れ た だ け で も 、 左 図 の よ う に 、 黄 色 が
ハ ウ ス に 残 っ た り 、赤 が ガ ー ド に な っ て し ま う 。
この状態から、次の黄色の石が、ガードの赤
い石のすぐ裏側に来ちゃったりしたら、後攻の
赤 チ ー ム は 大 ピ ン チ に 陥 っ て い く ...。
というわけで、8回投げる中で、前半はガードの石を置いたり、それをクリアしていく。その間の微
妙 なミ スが後半 の展開 にじわじわ影響 していく 訳だ。
でもって、神業的な一投が出れば、一挙に形勢を逆転できる。でもそのプレッシャーが、逆に大き
なミスを生 む。
カー リングは、実 に手に汗握 る競 技なのだ。
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