ネイティブのような英語ではなく “道具として使える英語”の習得を

「人材開発プロフェッショナルが語る 2010 年 HRD キーワード」
ネイティブのような英語ではなく
“道具として使える英語”の習得を
株式会社パンネーションズ コンサルティング グループ
安田 正 氏
株式会社パンネーションズ
コンサルティング グループ
代表取締役
早稲田大学理工学術院非常勤講師
プロフィール
兼松パーソネルサービス・国際化事業
部長を経て、1990 年にパンネーショ
ンズ コンサルティング グループを設
立。プレゼンテーションや論理的思考、
交 渉 な ど の 領 域 で、 講 師 と し て 活 躍。
主な著書に『ロジカル・コミュニケー
ション ®』「王様が教える世界一通じる
英語の本」(日本実業出版社)、「P・C・
G 式速読多読スタートブック」(ジャパ
ンタイムズ)などがある。
英語の習得に苦労する人は少なくない。ビジネスパーソンを対象とし
た英語研修の第一人者で、約 1200 社の研修実績があるパンネーシ
ョンズ コンサルティング グループの安田正氏は、日本人が英語を習
得するには、ネイティブの英語を目指すのではなく、
「すぐに使える
スキル」として英語を捉えることが必要だと話す。
段に過ぎません。したがって、英語学
そして、その習得は短時間でできるこ
習ばかりに時間を費やすわけにはいき
とが求められます。パンネーションズ
ませんし、すぐにでも仕事で英語を使
では、3カ月・30 時間で、自分が言
えるようにする必要があります。
いたいことを英語で伝えられるように
なる独自のメソッドを提供していま
イ ンド人の英語を見習おう
す。ポイントは、単語ではなく、文章
で話すことです。発音にはこだわりま
世界で英語を話す人のうち、英語を
せん。例えば「coffee」という単語だ
母国語としている人は実は約3割に過
けを発しても、発音が上手でなければ
ぎず、日本人と同じように外国語とし
相手には通じませんが、
「I'd like to
て英語を話している人が大半です。
drink coffee before noon.」と文章で話
そのなかでも人口が多いのがインド
すことができれば、発音は下手でも相
語を母国語とする人々です。インド語
手は意味を理解することができます。
も日本語と同様に英語から遠い言語で
そのために、日本人が英文を組み立て
仕事で英語が必要になり、長い時間
すが、インドの人々は英語でのコミュ
る際の共通の課題を特定し、それをラ
をかけて一生懸命勉強したにもかかわ
ニケーションが上手です。彼らが話す
クに効率よく、乗り越えていく学習方
らず、ビジネスの現場でなかなか思う
英語を聞いてみると、発音には強い訛
法を編み出しました。具体的には日本
ように英語が話せないという人は多い
りがありますが、それでもコミュニケ
人にとって苦手な英語の文の形3つを
のではないでしょうか? ーションが成立しています。つまり、
マスターし、中学校で学んだ 41 の動
英語がなかなか身につかないのは、
実際のコミュニケーションで大切なの
詞を使って、英文を作る練習を繰り返
日本語を母国語とする日本人にとっ
は、発音よりも、英語を道具と割り切
し、話せる文章のバリエーションを増
て、英語は異質の言語だからです。そ
り自分の言いたいことをきちんと伝え
やす方法です。
れにもかかわらず、英語学習の方法は、
られるかどうか、なのです。
従来の英語学習は、われわれから英
英語は「目的」で は な く
仕事をするための 「 手 段 」
単語をたくさん覚えて、ネイティブの
ように話すことを目指すものが主流で
す。このような方法では、英語を身に
3 カ月・30 時間で
英語を「使える道具」にする
語に近づいていくアプローチでした
が、英語を道具として使いこなすため
には、英語をわれわれに近づける発想
つけるまでに非常に長い時間がかかっ
ビジネス英語においてはネイティブ
が必要です。ネイティブの英語を目指
てしまいます。ビジネスパーソンにと
のように話すことよりも、言いたいこ
すのではなく、ビジネスの現場で道具
って、英語は、仕事を進めるための手
とをきちんと伝えることが重要です。
として使える英語を習得しましょう。
人 材 教 育 January 2010