肥料の葉面散布 - 清和肥料工業株式会社

2011/ 1//11
肥 料 の 葉 面 散 布 v2.20
ワックス(蝋)層
クチクラ層
表皮
さく状組織
海綿状組織
表皮
気 孔
葉の断面構造模式図
清和肥料工業株式会社
葉面散布された肥料は確かに効いている
・・施肥の基本は土、葉面散布は補助手段
表
尿素の葉面散布と葉中成分の変化(菅原)
無散布区
尿素散布区
蛋白質
7.45 %
8.56 %
硝酸態窒素
1.23
1.41
0.243
0.462
アンモニア態窒素
0.15
グルタミン
グルタミン酸
0.036
0.134
アスパラギン
0.167
0.345
アスパラギン酸
0.021
0.087
表
葉面から吸収した
尿素が細胞内で代
謝・利用されている
リン酸一アンモニアの葉面散布効果(佐藤ら1952)
無 散 布
モモ
ナシ
カキ
8.9 g
0.7 g
4.6 g
ブドウ
1.8 g
りん安 0.5%
10.6
1.9
9.3
5.1
1.0%
14.1
3.0
12.8
6.1
1.5%
13.8
4.0
実生苗6~8本の平均風乾重
12.6
5.1
肥料の葉面散布 v220
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葉面散布肥料の主なねらいと効果
① 農作物の商品としての品質向上
葉菜類の葉色向上、根菜類の肥大促進、果実の初期肥大・着色促進
茶のアミノ酸増加、花卉の開花促進・葉色向上・草勢回復、等
② 根の養分吸収力が低下した時や追肥をしづらい時
過湿による根腐れ、根圏温度の低下、根障害などによる養分吸収低下時の応急措置
③ 土壌中の微量要素・カルシウム・苦土などが不可給化した時
高pH : 鉄・マンガン・亜鉛・銅・ホウ素が不可給化
低pH : モリブデンが不可給化
リン酸過剰 : 鉄・銅・亜鉛の可給性が低下
土壌の乾燥 : ホウ素・カルシウム・カリの可給性が低下
カリ過剰でマグネシウム吸収が阻害される
④ 生理障害の予防、養分不足による生育不良の早期回復
⑤ 病害虫・寒害・風水害・干害・霜雪害などの早期回復
⑥ 日照不足・温度不足のカバー
⑦ 成り疲れ予防、結実肥大促進
⑧ 病害虫抵抗性の増強
⑨ 窒素過多による軟弱徒長の抑制(特にP・K散布)
《加藤(1997)の総説をもとに筆者がとりまとめ》
肥料の葉面散布・・考え方の基本
・ 葉面散布は恒久的な対策ではない
土壌改良や施肥、潅水、温度等、環境要因の適正化
を図ることが恒久的対策である
・ 微量要素欠乏や病害抑制は予防的散布を
肥料の葉面散布による欠乏症回復は困難な場合も
ある
肥料の葉面散布には病害発生後の治療効果はない
・ 障害の早期回復や樹勢回復などに使うと良い
特にアミノ酸などの有機成分は不良環境の時に効
果を出しやすい
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肥料の葉面散布における留意点
① 薬害に注意・・・散布濃度、気温、土壌水分
散布時の気温は15~25℃が最適、30℃以上は避ける
夏季は朝夕の散布が安全
土壌が乾燥している時は、前日十分に潅水する
幼植物、若い葉ほど薬害が出やすい
② 窒素・リン酸・カリ・マグネシウムなどの多量要素は葉面散布
だけで補うことは困難
③ 葉面散布肥料は一般に酸性のものが多い
アルカリ性の農薬や液肥との混用は避ける
④ 朝露が残っているとき、風の強い時は効果が劣る
⑤ 散布器具の洗浄を徹底する
表 一般的な葉面散布濃度(加藤1997に加筆)
畑作物
畑作物
野 菜
果 樹
花 卉
20℃まで
400 倍
400
300
500
20~25℃
500 倍
500
400
600
25~30℃
600 倍
600
500
700
30℃以上
700 倍
700
600
1,000
《加藤の総説をもとに筆者がとりまとめ》
葉面散布肥料と農薬との混合散布
表
使
い
葉面散布肥料と農薬との混合適否
方
混
一般的な三要素複合肥料と農薬
一般的に可
複合肥料とアルカリ性農薬
不可
用
可
否
有毒ガス発生・沈殿生成
微量要素肥料と金属を含む農薬
(筆者の経験)
液体ケイ酸肥料と農薬
不可(金属を含む農薬すべてが不可ではない?)
農薬の無効化・薬害が発生することがある
不可(ケイ酸カリは強アルカリ性)
薬害・農薬の無効化
液体ケイ酸肥料と複合肥料
不可(ケイ酸カリは強アルカリ性)
有毒ガスの発生、沈殿生成
※ 多様な液肥、農薬があるため、あくまで一般的論であり、決して絶対ではない
初めて使う時は小規模でのテストを行った方が安全
混合して沈殿や濁り、色の変化等が起こった場合は混用しないこと
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根と同等の養分吸収力を持つ新葉
表
新根
葉面散布と土壌施用の相対的肥料有効度
(小野1989)
太根
相対的有効度
元素
施用形態
供試作物
亜鉛(Zn)
硫酸亜鉛
一年生作物
1
鉄(Fe)
硫酸第一鉄
トウモロコシ
1
25
〃
〃
〃
1
100
セルリー
1
50~100
マメ、トマト
1
20
葉面散布 土壌施用
幹
太い枝
果実
古葉の葉柄・枝
マグネシウム 硫酸
(Mg)
マグネシウム
古葉
リン(P)
新葉の葉柄・枝
※相対有効度:同程度の肥効を得るために必要な施用量の比
※鉄は研究者によって結果が異なっている
新葉
0
20
40
60
80
100
微量要素は土壌に施用するより
葉面散布の方が少ない量で同等
の効果を得ることが出来る
養分吸収力
図
リン酸
12
柑橘の部位別養分吸収力
(Crider1955)
尿素の葉面散布効果
・葉に与えた尿素は新葉、根に転流
・北海道の佐藤ら、埼玉の佐藤らによっ
てコムギへの尿素散布技術を確立
・北海道ではコムギに開花期以降2~
3回葉面散布が推奨されている
根から
葉から
標識尿素の給与部位
図
葉または根から与えた尿素の3日後の分布
(渡辺)
表 尿素のコムギ(キタノカオリ)出穂始期葉面散布効果(佐藤1998)
処 理 区
精子実重 稈長 子実粗蛋白
成熟期
倒伏程度
元肥-追肥-葉面 kg/10a
cm
%
8-2-0区との日差
無窒素
240
70
7.69
-1
無
6-0-0
450
84
7.67
0
無
8-0-0
510
88
8.64
0
無
8-2-0
570
90
9.40
0
無
8-0-2
580
91
9.70
+3
中
8-0-2+エテホン
580
83
9.50
+1
無
8-2-2
688
92
9.90
+4
多
8-2-2+エテホン
638
83
10.56
+1
無
施肥時期:追肥6葉期、葉面散布は出穂期に尿素2%を100L/10a施用
エテホン:エチレンを発生する倒伏防止剤
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養分の葉面からの吸収速度
表
養分の葉面からの吸収速度(熊沢)
元 素
窒 素
(尿素態)
窒素(尿素)は吸収・移行が最も速
く、即効性
微量要素は比較的早く吸収される
リン酸は吸収は遅いが、移行が早
く果実の着色促進などに効果
リ ン 酸
リン酸一カリ300~700倍液の散布
は花芽形成促進に効果
ミカンでは12~2月に2~3回
カリウム
カルシウム
マグネシウム
イ オ ウ
鉄
マンガン
カルシウムは吸収、移行ともに悪
く葉面散布では効果を出しにくい
マグネシウムの吸収は速いが、移
行性が劣る・・欠乏時の応急処置
亜 鉛
モリブデン
植 物
リンゴ
タバコ
ソラマメ
トマト
キュウリ
ソラマメ
セルリー
ジャガイモ
リンゴ
ソラマメ
サトウキビ
ソラマメ
カボチャ
ブドウ
ソラマメ
リンゴ
ソラマメ
ソラマメ
ソラマメ
ダイズ
ソラマメ
ソラマメ
50%吸収時間
1~4時間
24~36時間
1~6時間
1~6時間
12~24時間
7~11日
30時間、6日
15日
1~4日
1~4日
4日
1時間に20%
8日
1~2日
24~48時間
24時間
24時間に4%
養分の吸収と植物体内での移動性
要
素
表 養分の葉面からの吸収速度と吸収後の移動性
葉面吸収速度 移動性
要
素
葉面吸収速度
移動性
窒素(N)
速
良
リン酸(P)
遅
良
カリ(K)
中
良
イオウ(S)
遅
良
マンガン(Mn)
速
中
鉄(Fe)
遅
中
銅(Cu)
速
中
カルシウム(Ca)
遅
悪
亜鉛(Zn)
中
中
マグネシウム(Mg)
速
悪
モリブデン(Mo)
遅
中
表 カルシウム剤の種類とメロンの発酵果(東1983)、リンゴのビターピット(壽松木)発生抑制効果
メロン・発酵果
処 理 区
無
処
理
20
13
塩化カルシウム 週1回
13
8
週2回
6
2
週1回
26
18
週2回
19
13
週1回
4
2
週2回
2
1
〃
リン酸一石灰
〃
キレート石灰
〃
処 理 区
発生率(%) 発生度
無機カルシウム剤
無機カルシウム剤
有機酸カルシウム剤
有機酸カルシウム剤
ビターピット
発生率(%)
10日おき5回
0.7
無 処 理
9.8
10日おき5回
7.7
無 処 理
30.4
10日おき4回
0.5
無 処 理
5.5
3回
2.8
無 処 理
10.9
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基本は上位の葉裏・見逃せない茎吸収
表
葉の部位による5日後の32Pの吸収移行(渡辺ら2003)
塗布部位
第3葉の葉辺
第3葉の裏面
第3葉の表面
移行率
0.71
1.31
0 .07
塗布部位
移行率
先端葉裏
1.68
第2葉裏
2 .30
第3葉裏
下位葉裏
1.31
茎
0 .20
1.71
※1枚の葉に放射性のリンを塗布し、その他の葉、茎、根への移行率を調べた結果
Ca吸収量(μg)
800
図
カルシウムの葉または茎からの吸収・移行(渡辺ら2003)
→のところにカルシウムを塗布
黒くなっている場所にカルシウムが貯まっている
100
Ca茎
Ca根
Ca葉裏
P茎
P根
P葉裏
80
600
60
400
40
200
20
0
5
10
15
20
0
24 時間
図 カルシウム(Ca)とリン(P)の部位別吸収転流量
(渡辺)
葉面散布には展着剤を混用する
ワックス(蝋)層
水滴
表
展着剤の効果(Cookら1952)
散布4時間後の尿素吸収率(%)
湿展剤なし
湿展剤あり
展着剤の入った水滴
6.4
24.4
10.5
23.5
35.6
68.5
37.7
72.9
6月20日
12.3
55.9
平
17.1
42.0
3月8日
4月1日
CO2 O2
図 葉の断面の模式図(原図)
葉表面の微細孔の大きさは1nm以下
(Schonherr1976)
尿素分子が0.44nm、大きな分子は入れない
※1nm=1/1000,000mm
均
2倍以上の開き!!
気孔
① 展着剤の混用
② 葉裏に十分散布
③ 夏場の晴天は避ける
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P吸収量(μg)
1000
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濡れにくい作物と濡れやすい作物
表
葉の濡れやすさの目安(濡れの悪い作物には湿展剤が効果的)
現代農業2010年6月号より
濡れの程度
悪い
目
イネ・ムギ・ネギ・ダイズ・キャベツ・サトイモ・キャベツなど
中程度
ブドウ・イチゴ・メロン・ナス・トマトなど
中~良い
良い
作
カキ・サツマイモなど
ミカン・リンゴ・ナシ・モモ・茶・キュウリ・インゲン・トウモロコシなど
湿展剤や固着剤を加えると葉に付着する薬液量は減少する
浸透性展着剤と尿素の利用
花王のアジュバンドなどの浸透性
展着剤を使うと葉面散布効果を高
められる可能性がある
薬害は出やすいかも!?
尿素が他の成分を道連れにする!?
無散布
薬剤3000倍+尿素200倍
薬剤2000倍単用
0
図
1
2
3
4
5
柑橘そうか病に対する尿素を混用
したベンレートの散布効果(貞松)
・尿素を混用すると農薬の効きが良く
なるという生産者は多い
・尿素が葉のワックス層とクチクラ層
の障壁を弛めて葉への浸透性を高
める(田代)
・アメリカでは除草剤に尿素を加える
ことが一般的になっている(川島)
・多くの液肥に尿素が入っている
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根から吸収し易い物質と葉から吸収し易い物質
表
葉または根から与えた物質の移行分布程度(渡辺1990)
葉面吸収
経根吸収
供与部位
種 類
移行部位
新葉
茎
根
新葉
茎
尿 素
5
5
5
2
3
リ ン 酸
1
2
1
5
5
無機養分
塩化カルシウム
0
0
0
5
5
無機養分
ブドウ糖
3
3
4
1
1
糖
酢 酸
2
2
3
1
1
有機酸
グルタミン酸
3
4
3
2
2
アミノ酸
プロリン
2
2
2
1
1
アミノ酸
ウラシル
4
2
2
1
1
核 酸
ビタミンB1
2
2
1
5
5
ビタミン
ビタミンC
4
4
4
2
2
ビタミン
塩化コリン
4
5
5
5
5
ビタミン
2,4-D
1
2
0
1
1
ホルモン
※ 各物質を根または第3葉から与え、3日後の各部位への移行程度
※ 0はまったくの0ではなく、移行程度が極めて低い
・ 尿素、アミノ酸、核酸、糖、有機酸は根より葉からの方が、吸収移行率が高い
・ リン酸や塩化カルシウムは葉より根からの方が、吸収移行率が高い
・ ビタミンは種類によって異なっている
・ コリンは葉、根ともによく吸収することができる
→有機物や尿素、微量要素は葉面散布、無機養分は土壌施用
アミノ酸は適切な混合物を葉面散布で
酸
アンモニア
120
アスパラギン酸
各種の
アミノ酸
グルタミン酸
蛋白質
生育指数
硝
100
80
60
プ ロリ ン
ロイ シ ン
ア ラ ニン
ア ミ ノ酸 な し
シ スチ ン
図 植物の窒素同化(高橋)
ア ルギ ニ ン
ア ラ ニ ン
ア ス パ ラ ギ ン酸
素
混合物
尿
グ ル タ ミ ン酸
40
図 アミノ酸の施用効果(トマト・経根)
(清和肥料・未発表より抜粋)
植物体内でのアミノ酸合成は
グルタミン酸から出発
アミノ酸は葉から吸収し易い
高濃度施用はマイナス
混合アミノ酸を適切な濃度で葉面散布
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条件が悪いときにアミノ酸が効く
・実験1:高温(20℃)と低温(4~5℃)で、硝酸と2種類のアミノ酸
の混合液でハダカムギを栽培
何れの温度でも有機Nであるアミノ酸をより多く吸収
・実験2:1977~80年に野外で水稲を水耕栽培した
1977年:冷害年
1978~79年:平年
1980年:冷害年
窒 素 源:アンモニアN、硝酸N、アミノ酸N、
アンモニアN+アミノ酸N、硝酸N+アミノ酸N
培養液温度:常温と低温
光 条 件:自然光、47%遮光
4年間の結果:低温、寡光下にアミノ酸を与えると生育が改善
十分な温度・光のある条件では差が小さい
光合成が抑えられている時に吸収利用されやすい炭素と窒素を同時に備えた有機
窒素源が与えられると、光合成産物を根に送る量が減る。光合成産物が効率よく
生育に利用出来るようになる。
森ら(1979・1985)・データ省略
ビタミン類の葉面散布効果
飯島(1955~57)はサツマイモ・インゲン・ジャガイモ等を用いてビ
タミンB1の葉面撒布効果を詳細に検討した(データ省略)。
・ビタミンB1の0.01ppm溶液に種子を24時間程度浸漬してから播種
すると発芽が良くなった。
・ビタミンB1溶液を葉面撒布すると24時間で植物体全体に移行し、
代謝利用された。
・ビタミンB1の1ppm溶液を葉面撒布すると地上部・根部の生育、
根肥大、収量等を改善する。
改善効果は、光・温度・過剰な窒素、何れの条件も生育が悪い
く障害程度が大きい条件でビタミンB1の効果が高かかった。
海外ではビタミン類の施用効果について多数の報告がある
・ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6などの種子浸漬
ダイズ、コムギ、オオムギ、ビート、トウモロコシ等で発芽促進
や分げつ増、増収などの効果が報告されている。
・ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB6などの葉面散布
ジャガイモ、ダイズ、イネ、野菜等で生育刺激、開花促進等
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各要素の葉面散布濃度
表
肥料を葉面散布する場合の一般的な濃度(野菜園芸大事典、養賢堂)
肥料要素
窒素
リン酸
カリ
カルシウム
マグネシウム
ホウ素
マンガン
鉄
亜鉛
モリブデン
表
使用化合物
尿素
リン酸一ナトリウム
リン酸一カリウム
塩化カルシウム
塩化マグネシウム
ホウ砂
硫酸マンガン
キレート鉄
硫酸亜鉛
モリブデン酸ソーダ
散布濃度(希釈倍率)
0.4~2.5%(250~40倍)
0.2~0.5%(500~200倍)
0.2~0.5%(500~200倍)
0.2~0.5%(500~200倍)
0.2~0.5%(500~200倍)
0.2%(500倍)
0.1~0.2%(1,000~500倍)
0.1%(1,000倍)
0.1~0.2%(1,000~500倍)
0.03%(3,000倍)
備 考
下記を参照
遅効性
消石灰混用
消石灰混用
消石灰混用
尿素の葉面散布時の実用的最高濃度(野菜園芸大事典、養賢堂)
散布濃度(希釈倍率)
0.3%(330倍)
0.4%(250倍)
0.75%(133倍)
1.0%(100倍)
2.0%(50倍)
2.5%(40倍)
種
類
温室、温床で軟弱に育っているもの
イチゴ、トマト、レタス
コマツナ、コカブ
ジャガイモ、ナス、スイカ、キュウリ、サツマイモ
ダイコン、キャベツ、ハクサイ
フダンソウ、ホウレンソウ
意外と多い微量要素欠乏
・・・ 総合微量要素剤で欠乏予防
・・・ 適度な微量要素補給で品質アップ
ボルドー液や硫酸亜鉛(ヤノネカイガラ)を使わなくなった
アブラナ科野菜やビートではホウ素欠乏が頻発
総合微量要素液肥を定期的に散布
・・・過度の微量要素連用は過剰害の恐れも
図 ダイコンのホウ素欠乏(高橋ら)
図 コムギの銅欠乏(高橋ら)
図 トウモロコシの亜鉛欠乏
(高橋ら)
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微量要素欠乏を葉面散布で直す
Mg 硫酸マグネシウム
2%(イネ0.5~1%)
効果発現に3~5週間
Fe 硫酸第一鉄・キレート鉄
0.1~0.3%数回散布
効果がないときは1%で
Mn 硫酸マンガン
0.3%(石灰加用)
B
ホウ砂・ホウ酸
0.3%(石灰加用)
事前にお湯に溶かして希釈
Zn 硫酸亜鉛
0.1~0.5%(石灰加用)
果樹は春先芽の出る前が最良
Cu 硫酸銅(ボルドー液が最良)
0.01~0.08%
(石灰加用)
果樹:0.1~0.5%
総合微量要素剤は予防に使う
緊急対策には効果が低い!!
ホウ酸30g
消石灰30g
2
8
寒冷紗で
ろ過
かき混ぜながら
ゆっくり加える
※必ず石灰乳の中に
ホウ酸液を加える
図
微量要素散布液の作り方
肥料の葉面散布と作物病害
リン酸塩・ケイ酸・カルシウム・銅など
↓
植物体の病害抵抗性を増強
特定の病気が減少する
※養分そのものや細胞内の養分濃度が
影響するのとは明らかに違う
図
オオムギのうどん粉病
図
イチゴうどん粉病とその病原菌
Sphaerotheca fuliginea
図 ブドウのべと病
農文協刊CD-ROM版病害虫・雑草の防除と診断2006より引用
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肥料養分と作物の病害発生
表 作物養分と病害軽減効果
リン酸
カリ
土壌のリン酸過剰
そうか病・根こぶ病・乾腐病等が増加
リン酸塩(亜リン酸)の葉面散布
炭疽病・うどん粉病・疫病等が軽減、抵抗性誘導
生育適量までの施用
生育適量までは被害軽減
カルシウム カルシウムが被害を軽減
ケイ酸
病原菌のペクチン分解酵素を阻害、Ca吸収で多くの病害が軽減
カルシウム吸収量の低下
灰色かび病などが増加
土壌pHの上昇
根こぶ病等の軽減、ジャガイモそうか病の被害増
病害抵抗性の獲得
イネいもち病・ごま葉枯病などの軽減
一般作物のうどんこ病、キュウリつる割病・根腐れ病等の軽減
Alの不活化
ジャガイモそうか病の増加
マンガン
葉面散布
抵抗性の誘導、リグニン合成促進、ビートのウイルス病、うどん粉
病等の軽減
ホウ素
葉面散布
うどん粉病に対する抵抗性の誘導
銅
葉面散布
病害抵抗性の誘導(ファイトアレキシン誘導)
亜鉛
生育適量まで
コムギ立枯病、ジャガイモそうか病等の軽減
カルシウムとの共存でエチレンを誘導、病害を軽減
コムギのRhizoctonia病、Mn欠乏で被害増、生育適量で軽減
赤字の要素:近年特に注目されている元素
肥料塩の葉面散布と病害軽減
表 無機塩のキュウリうどん粉病抵抗性誘導
(ロベニら1997)
処 理
濃度(%)
表 リン酸塩と農薬の交互散布によるマンゴー
うどん粉病防除効果(ロベニら1998)
コロニー数
無 処 理
処
70.5
発病程度
発病果房率(%)
無 処 理
理
3.42±0.07
100.0±0.0
0.43±0.03
36.3±1.9
リン酸二カリ
0.87
29.8
塩化マンガン
0.1
23.2
殺 菌 剤
1.61±0.10
82.5±2.6
0.54±0.06
53.6±3.8
ホ ウ 酸
硫 酸 銅
0.05
25.3
リン酸一カリ
0.062
19.2
交互散布
0.031
21.2
0.25
22.5
0.125
33.8
0.063
34.8
リン酸一カリの葉面散布で農薬使用量
が1/2に
表 ブドウべと病の防除試験結果(1991年~1993年、兵庫県)
散布薬剤
希釈倍数
散布月日
1993年6月25日調査
(倍)
6月5日
発病度
防除値
アリエッティ
800
○
○
31.3
11.4
73
ジマンダイセン
800
○
○
41.7
19.3
55
500
○
-
32.5
12.4
71
-
-
63.3
42.7
液
肥
無 処 理
ロベニら(1997)の実験
6月18日 発病葉率(%)
液肥の葉面散布で農薬に近い防除効果
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Caが多いペクチンは病原菌が壊せない
インゲン軟腐病(Plateroら1976)・ジャガイモ軟腐病(Kelmanら1989)
トマト青枯病(山崎・保科1993)・トマト萎凋病(Corden1965)
レタス灰色かび病(Krauss1971)・ダイズ菌核病(Muchovejら1982)
など多くの病害がカルシウムによって抑制される
・細胞内カルシウム濃度が高いほど被害が少ない
・トマト青枯病では導管内カルシウム濃度が重要
・・感染後のカルシウム処理で被害が抑制される
図
カルシウムは細胞壁の最外層にあるペクチン質を主成分とした中層と呼ばれる部分
にあり細胞と細胞のつなぎを強化している。病原菌は感染するためにペクチン分解
酵素を分泌するが、カルシウム含有率の高いペクチンは分解できない。また、ペク
チン層が弱くなると糖やアミノ酸などの病原菌の栄養となる低分子有機化合物が細
胞質から流出しやすくなる(Marschner,1995より渡辺ら,2003が作図したものを改編)
ケイ酸施用で軽減された病害
対象作物
イネ
病
名
概
要
出
展
葉鞘褐変病
止葉中ケイ酸6%以上で減少
白石ら(1999)
いもち病
ケイカル、けい酸加里など
川島(1927)以来多数
紋枯病
Rodoriguesら(1999)他
ごま葉枯病
ケイ酸質肥料施用で大型病斑減少
赤井(1953)、赤井ら(1958)
小粒菌核病
ケイ酸施肥で可溶性窒素含量減少
吉井ら(1958)
オオムギ
うどん粉病
菌侵入細胞にケイ酸集積
Jiangら(1989)他
コムギ
うどん粉病
菌糸侵入部位にケイ酸集積
赤井ら(1958)他
キュウリ
うどん粉病
ケイカル、液体ケイ酸カリ
三宅・高橋(1982)他多数
つる割病
ケイ酸加里450kg/10aで抑制
三宅・高橋(1982)
褐斑病
ケイカル200kg/10aで抑制
狭間(1993)
根腐病
水耕液SiO2で100ppm添加
Cherif(1992a,1992b, 1994)
マスクメロン
うどん粉病
ケイ酸カリウム葉面散布
Menziesら(1992)
カボチャ
うどん粉病
ケイ酸カリウム葉面散布
Menziesら(1992)
イチゴ
うどん粉病
ケイ酸カリウム潅注で高い防除効果
神頭ら(1997)他
バラ
うどん粉病
ブドウ
ジャガイモ
Belangerら(1995)
うどん粉病
17mMの可溶性ケイ酸葉面散布
Bowenら(1992)
そうか病
Al3+を不活化し、発生を助長
水野・吉田(1994)
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ケイ酸が病害抵抗性を誘導する
60
80
発
40
防 除 値
40
病
度
ケイ素処理
20
20
ケ イ酸 カ リ潅 注
ケ イ酸 カ リ散 布
ケ イ酸 カ リ潅 注
ケ イ酸 カ リ散 布
無施用
0
葉
60
0
中
病原菌感染
・フェノール酸化酵素増強
(Cherifら1994)
・抗菌性フェノール物質の生成
(Cherifら1992)
・ファイトアレキシン(ラムネチン)
生成量増加(Faweら1998)
・キチナーゼ(抗菌酵素)増強
(Schneiderら1994)
図 ケイ酸によるキュウリうどん粉病防除(前川ら2005)
潅注:SiO2で4000ppm500L/10a 葉面散布:SiO2で500ppm
全身に広がる
銅が作物の病害を軽減する
・銅には直接殺菌作用がある(ボルドー液)
・銅やマンガンが欠乏するとリグニン合成が低下したり、フェノ
ール酸化酵素の活性が低下し病害抵抗性が低下する
・銅は土壌施用すると有機物に吸着されて効かなくなるが、葉面
撒布で効率的に効果を上げることができる
・銅の葉面散布は障害を伴いやすいが、カルシウムと一緒に散布
すると障害を受けにくい(pHによる銅の不溶化だけではない)
・銅とカルシウムを同時に施用するとエチレン生成が促進される
が、エチレンはファイトアレキシン(作物が作る病原菌に抵抗す
る物質)生成の引き金になると考えられている
表 銅欠乏土壌に生育するコムギの茎腐病防除効果(Mahliら1989)
Cu施用量 kg/10a
無処理
茎腐病発生程度(%)
コムギ収量(kg/10a)
92
29.4
硫酸銅条施
1.0
76
51.1
硫酸銅潅注
1.0
34
201.6
硫酸銅葉面散布
1.0
6
211.6
キレート銅葉面散布
0.2
7
250.5
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葉面散布と病害軽減・まとめ
・カルシウム、ケイ酸、銅、マンガンなどの吸収が増える
と、作物の持つ病害抵抗力がアップする
・無機肥料塩には病原菌に対する直接の殺菌作用はない
・カルシウムやケイ酸は作物の病害抵抗性を増強するが、
無機元素の吸収だけでは病害抵抗性は誘導されない
カルシウムやケイ酸を多く吸収した作物に病原菌が感染
すると、元々作物が持っている病原菌に抵抗する機能が
強化され発現する
・発病した作物の病害治療効果は葉面散布では得られない
肥料の葉面散布は病原菌が感染する前から実施して初めて
効果を出すことが出来る
感染・発病しにくい環境を整えるなど、葉面散布は総合防除
の一貫としてとらえることが肝要
水稲以外の作物でもケイ酸が効く !!
・イチゴ・キュウリ・ブドウなどのうどん粉病、キュウリの根
腐病などの病害軽減 (土壌施用または葉面散布)
・イチゴ果実の軟化防止、イチゴ茎葉の硬化 (前川ら2001)
・弊社製品でシリカゲル系ケイ酸質肥料「スーパーケイサン」
を20~30kg/10a表層施肥
ユリ、キク、カーネーションなどで茎葉硬化 (生産者談)
・スーパーケイサン水溶液の
葉面散布がイチゴうどん粉
病に卓効 (荒木・現代農業
2010年6月号)
・水稲、キュウリなどのマン
ガン過剰害の軽減
現代農業2010年6月号記事
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コマーシャルタイム
葉面散布用肥料の紹介
カルシウムとリン酸を同時補給
・・・ 葉面散布剤
グ ッ ド カ ル ・・・
キレートカルシウムと有機酸カルシウム
カルシウムの吸収・移行性を改善
ポリリン酸使用
リン酸とカルシウムの同時散布を実現
・500~1,000倍に希釈して葉・茎・果実に散布
・土壌が特に乾燥しているときは前日に潅水
・高温時は1,000倍に希釈
・高濃度の他液肥との混合不可
・希釈タンクに先に水を入れ、その中に投入し
た方が溶けやすい
・果実や葉に“汚れ”を生じない
・一度開封した袋は輪ゴムなどで密封すること
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総合微量要素葉面散布材
・・・ エムセン
M-1000
・・・
表 エムセンの保証成分・含有成分(%)
マグネシウム(苦土)
(MgO)
マンガン
(MnO)
ホウ素
(B2O3)
2.0
1.50
1.50
鉄
(Fe)
銅
(Cu)
亜鉛
(Zn)
モリブデン
(Mo)
1.00
0.01
0.11
0.05
微量要素欠乏の予防に
収穫物の品質アップに
欠乏症を発症してからでは間に合いません
生育期間中に3~5回程度定期散布
600~1,000倍に希釈して葉の表裏が十分に
濡れるように散布する
1L(1.2kg)入り
液体ケイ酸カリ肥料
・・・ エーワン・シリカ3号 ・・・
畑作物のケイ酸補給
病害虫予防
水溶性加里:8% 水溶性ケイ酸:16%
粘性のあるアルカリ性の液体
使用方法
土壌潅注:200~600倍
葉面散布:200~300倍
農薬および他の液肥との混用不可
ジャガイモには使用禁止
※イチゴ
:600倍液を1株当たり100mLを
株元に2~3回潅注(900L/10a)
※キュウリ:土壌潅注 90kg/10aを適量の水
で希釈して施用する
葉面散布 300倍液500L/10a
エーワン・シリカ3号
6kg
発病後に散布しても効果はありません
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シリカゲル系ケイ酸入り化成肥料
・・・ スーパーケイサン ・・・
表 スーパーケイサンの含有成分
保
証
成
分
く溶性りん酸 水溶性加里 可溶性けい酸
8%
2%
40%
参 考 成 分
く溶性苦土
アルカリ分
pH
3%
13%
6.5~7.0
シリカゲル由来けい酸34%以上
・水稲、ムギ類などのケイ酸補給
・ユリ・キク・カーネーションなどの茎葉硬化
20~30kg/10a表層施肥
・イチゴの果実軟化防止・茎葉硬化
・イチゴうどん粉病防除
数日間水に入れて、その上澄み液を散布
お
わ
り
本日は誠にありがとうございました。
演者の知見不足、深くお詫び申し上げます。
もし、一つでも参考になることがありましたら
幸甚に存じます。
今後とも弊社をよろしくお願い申し上げます。
文責:清和肥料工業株式会社
営業本部・真野良平
TEL 073-445-2875
[email protected]
http://www.shk-net.co.jp
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