ウィーニング困難患者における マニュアルハイパーインフレーションは肺

ウィーニング困難患者における
マニュアルハイパーインフレーションは肺胞リ
クルートメントを改善する
OES, 開放式吸引
CES, 閉鎖式吸引
(Lasocki S, et al. Intensive Care Med, 2006.)
痰が硬い時や咳嗽反射が弱い時にはOESが選択される
それでも痰がとれないとき・・・
臨床スタッフは、バックバルブマスクなどによるマニュアルハイ
パーインフレーション(バック加圧)を行うことがある
ハイパーインフレーション(HI)
教科書的には
・咳嗽の誘発
・喀痰吸引量の増加
・酸素化改善
・肺コンプライアンスの改善
を目的に行われる
(Gosselink R. Braz J Phys Ther, 2006.)
でも、本当に痰が取れるのか?、酸素化を改善するのか?
そこで今回の論文
ウィーニング困難患者における
マニュアルハイパーインフレーション(MH)は
肺胞リクルートメントを改善する
対象患者
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40歳以上
7日以上人工呼吸を受けている患者
PEEP 6‐8 cmH2O
無気肺がある
喀痰が多い(>30 ml/日)
自発呼吸でTV<250mlまたはPI max <
25cmH2O または強制換気下でTV<400ml
これらの患者をランダムに、MH群と通常ケアの2群にわけた
方法
• MH方法:2Lの蘇生用バックバルブマスクを
使用、FiO2 100%、最高気道内圧20
cmH2O以下、吸気時間3-5秒でおこない。そ
の後、気管吸引をおこなった。MHは1セット
20分(8-13回/分のリズム)で、3セット/日を
5日間行った。
• 喀痰量や呼吸パラメーターを測定
対象患者属性
研究参加時点で対照群(非MH)
で喀痰量が多かった
喀痰量と呼吸パラメーター比較
喀痰量に
差は無い
MHで自
発換気量
改善
MHで無気
肺は改善
酸素化に
差は無い
自発呼吸時一回換気量とf/VT
MHで自発呼吸下でのTV増加
P/F比に統計学的な差は見られない
結論・考察
• 無気肺のあるウィーニング困難患者において、
マニュアルハイパーインフレーションにより、
無気肺は改善し、一回換気量は増加する
• しかし、喀痰量は増加しなかった
• また、最終的に酸素化は改善しなかった
• 人工呼吸期間などのアウトカムは測定してい
ない
私見など
• 喀痰量に差は無く、酸素化にも大きく影響を与え
ていなかった。
• であるならば、回路の開放(開放式吸引なども含
む)には、不整脈、血圧の低下などの合併症も
見られるため、肺のリクルートメントのためだけ
であればMHせず、人工呼吸器によるリクルート
メントと閉鎖式吸引で十分ではないか?
• サンプルサイズも小さく、より大きな研究で、か
つ人工呼吸期間などの測定も必要か。
茨城県厚生連総合病院水戸協同病院 救急部・集中治療部
阿部智一 先生監修