ラテンティーンエイジャー

< H.C.R. 2009 国際シンポジウム講演要旨②>
「欧州諸国の出生率低下に対する評価と課題
~ライフスタイルの変化と社会保障制度~ 」
その2
by:
Livia Sz. Oláh, PhD, LLM
ストックホルム大学 社会学部 博士、LLM
<①から続く>
4.家族政策のモデル分類
それでは、家族政策のモデルとは何を意味するのでしょうか。簡単に言うと、家族政策のモ
デルとは、具体的な政策や社会保障制度支出の領域を超えた広範な制度的アプローチのことで
す。それは、国家・市場・家族の間の制度的関係を取り巻く理論なのです。
子供を産み、育てる能力、および有給の職に従事する能力について、女性だけでなく男性の
間でも生じる違いに焦点を当てると、欧州諸国における家族政策のモデルを、「共働きモデ
ル」、「一般的な家族支援モデル」、「市場主導型モデル」、そして「ラテン系周辺国モデ
ル」の 4 種類に分類できます。5 種類目として、東欧諸国の社会主義後の移行モデルもありま
すが、今回はここでは取りあげません。
「共働きモデル」を推進する国々は、女性の労働参加および父親の積極的な子育てへの取り
組みを支援しています。このモデルは北欧諸国のみで実施されています。
対照的に、「一般的な家族支援モデル」では伝統的な家族に力を入れています。このモデル
は、子供が小さいうちは母親がまず育児に従事するよう支援し、一方で父親には稼ぎ手として
の役割の優先を促します。このモデルは西欧諸国で実施されています。どちらの政策モデルに
おいても、かなりの水準の国家支援が家庭に支給されますが、男女の役割や育児についての見
方は大きく異なります。男女平等が共働きモデルの基本原理である一方、一般的な家族支援モ
デルでは、伝統的な、性別による家族の役割分担を阻害するような試みはほとんどありません。
「ラテン系周辺国モデル」は、社会保障制度の類型においては一般的な家族支援モデルと必
ずしも区別されるものではありませんが、子育ては個人的な問題とみなし、国家による家庭へ
の対策が限定的であることが特徴です。女性と男性の領域が区分されているという理論に従い、
男女はそれぞれ子育てか仕事のいずれかの領域にのみ適していると考えています。家族の幸福
は女性と男性がお互い補完しあうことが基本です。したがって、このモデルでは、伝統的な強
い家族の絆と、伝統および家族における家父長制の維持を意味しています。南欧諸国でこのモ
デルが実施されています。
「市場主導型モデル」においても、家族に関しての国家の役割は限定的であると考えられて
います。これは主として英語圏諸国で実施されています。仕事と家族への責任および育児の両
立に向けた解決策を提供するのは市場であると考えられています。このモデルでは、伝統的で
もなければ平等主義に基づいているのでもない男女の役割が、国によって率直に推進されてい
ます。所得審査に強く依存しており、国民の福祉に対する社会責任はおもに定額の手当を支給
することにより果たされています。
この次には、これら 4 種類の家族政策のモデルの例となる国々で実施されている具体的対策
を見ていきます。
5.共働きモデル
男女平等は共働きモデルにおいて重要な原則です。ここでは、女性と男性がそれぞれの収入
で自分たちを養い、家事だけでなく子育ての責任も分担することが期待されています。
これに沿ってスウェーデンでは、1974 年に母親産休制度に代えて、性別に関係ない育児休
暇制度を世界で初めて導入しました。家で育児にあたるため、希望すれば母親と父親が 6 ヶ月
間の休暇を分け合うことも可能です。そして休暇後は職場復帰もしくはそれと同等の職が保証
されています。休暇と合わせ、出産前に最低 6 ヶ月間就業している親には休暇取得前賃金の
90%(当時)が、そうでない場合は少額の定額手当が支給されます。子供を持つ前に労働市場で
自己を確立しようとする親たちを奨励する制度です。
それに加えてそれぞれの親が、子供が 18 ヶ月になるまで無給の休暇を取ることも認められ
ています。したがって、無給の休暇と有給休暇、およびパートタイムのオプションを組み合わ
せることにより、実際に親が家で子供と過ごす時間はきわめて長くなります。
スウェーデンで重要なのは「スピードプレミアム」と呼ばれる制度により、子供を産む間隔
を短くした場合に有利になるという点です。1980 年より、一人目の出産と二人目の出産との
間隔が最大 24 ヶ月までの場合に、その 2 回の出産の間に復職しなければ、先の子供について
高額の手当が支給されるようになりました。
さらに、育児担当者としての父親の役割が時とともに強まりました。1980 年より、父親に
は、収入に応じた手当が支給される 10 日間の「ダディーデイズ」の権利が与えられました。
1995 年には「父親クオータ」が導入され、1 ヶ月間(当時)の父親休暇が用意されました。
この一貫した政策の結果、スウェーデンの父親たちはますます積極的に育児に携わるように
なっています。育児休暇を取得する父親の割合は 1980 年代半ばから増えて、約 25%から 45%
に上昇しました。スウェーデンおよびノルウェーの調査では、父親が育児休暇制度を利用しな
い家族に比べて、父親が休暇を取得する家庭の方が、二人目、三人目の子供を産もうとする傾
向が高いことを示しています。
育児休暇制度において男女平等の側面をさらに強化するために、スウェーデンでは 2008 年
7 月から男女平等ボーナスが導入されています。休暇を双方でできるだけ均等に分けあう親た
ちへのインセンティブです。その親たちが休暇をどのように分けあうかによって金額を計算し
ます。双方が同じ日数の育児休暇を取得し、片方の親が休暇中に片方が仕事をしているカップ
ルは最高額のボーナスを受けられます。この改革が父親の育児休暇浸透度に何らかの効果があ
るかどうかを確認するためにはもう少し時間が必要です。
質の高い公的保育施設を大規模に提供することによって、就業と親であることの両立、ひい
ては男女平等が促進されます。これもまた、スウェーデンで出生率が比較的高いことの鍵とな
る要素です。保育施設をおもに提供するのは地方自治体で、政府の補助金と一定限度の親から
の保育料に頼っています。保育料は家庭の収入および子供が託児所で過ごす時間の長さと連動
しています。2002 年以降、親が支払うべき額に上限が設けられ、子供が一人の場合は収入の
3%まで、二人目については 2%、そして三人目については 1%となっています。
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ノルウェーの家族政策はスウェーデンのモデルと多くの点で類似しています。ただし、育児
休暇はスウェーデンよりも若干短く融通性が低く、「スピードプレミアム」はありません。親
には次の 3 つのオプションがあります。それは、休暇取得前の 80%の収入補償を得て 52 週間
フルタイムの休暇を取得、100%賃金補償のもと 42 週間取得、短時間休暇に短時間勤務を組み
合わせて最大 2 年間取得の 3 つです。
出産後すぐにも取得可能な「ダディーデイズ」は無給で、「父親クオータ」はスウェーデン
より期間が短く現状 6 週間です。また、1998 年から 1 歳から 3 歳までの子供がいる親は、公的
保育施設を利用するのではなく、家で育児をして定額の育児手当の支給を受けることも選択で
きるようになりました。手当がかなり低いことから、この制度の利用者の多くは母親です。
全般的に、ノルウェーの家族政策は、男女平等の推進においてはスウェーデンの政策よりも
若干一貫性に欠けています。
それにもかかわらず出生率は両国ともにきわめて高く、危機的水準を下回ったことはありま
せん。同時に、特に 1980 年代半ば以降は女性の就業率も高くなっています。育児に携わる主
要年齢層である 25 歳から 49 歳までの雇用率は、ヨーロッパでもっとも高く 80%を超えていま
す。一方で子供の貧困率は、たいへん低くなっています。したがって、共働きモデルでは、仕
事と家庭の両立に関わる課題への取り組みがかなり功を奏しているようです。
6.一般的な家族支援モデル
次に、一般的な家族支援モデルに移ります。これは家族生活に関して数多くの施策を提供す
るモデルです。高い出生率のフランス、適度な出生率のオランダ、そして低い出生率のドイツ
の例を、具体的な政策の組み合わせを挙げながら、それぞれ見ていきます。
フランスでは包括的でかなり寛大な制度の政策を実施しています。現在およそ 28 の施策が
あり、その中には男性がおもな稼ぎ手である家族形態を支援するものもあります。同時に、さ
まざまな形態の公的保育施設に加えて、登録保育士、ベビーシッター、ホームヘルパーの利用
など、公的・民間双方による柔軟な支援制度が育児を促進しています。したがって、このモデ
ルは、男女平等が明白な目標ではないものの、特に女性のために、仕事と家庭における役割の
両立を効果的に支援します。母親は子供を育てるために就業を続けることも、仕事を辞めるこ
とも可能です。どちらの場合も国から包括的な支援があります。
フランスの家族政策で際立っている特色は、明らかな出産奨励です。さまざまな手当、特別
税額控除、3 人以上の子供がいる家族への手当が全般に高いことなどからもそれがわかります。
子供の数に関係なく出産時には、16 週間の母親産休制度と 11 日間の父親産休制度があります。
親には休暇中に休暇取得前収入の 100%が給付されますが、これには上限があります。それに
加えて、働く親は、産休後に仕事の保証がある 2 年間の育児休暇の権利も得られます。これは
一人目の子供の場合は無給ですが、二人目以降の子供については定額の手当が支給されます。
フランスとは違い、オランダの家族政策には出産奨励はありません。むしろ、少なくとも過
去 20 年間は、労働市場での仕事と家庭における役割をカップルが両立できるようにすること
を目的としてきました。
16 週間の母親の産休中には、上限がありますが休暇取得前収入の 100%が支給されます。こ
れは 2 日間の父親産休においても同様に適用されます。育児休暇はパートタイムの形で与えら
れ、就業を中断するのではなく短時間勤務との組み合わせを奨励しています。いずれにしても
短時間勤務がきわめて一般的で、これもまた、母親の雇用率の急速な上昇に寄与してきたとい
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えるでしょう。親、子供各一人につき 6 ヶ月間の休暇が与えられ、子供の 8 歳の誕生日まで、
両親が同時に利用することも別々に利用することもできます。国からの支給はありませんが、
労働協約により休暇中は休暇取得前収入の 25%から 90%が給付されます。
オランダでは、1990 年代まで、育児は個人的責任であると認識されていました。しかし、
2000 年代前半までには、公的保育施設が次第に一般的になってきました。
伝統的な家族の理想形がもっとも大きく影響しているのがドイツの家族政策です。ドイツは
また、1970 年代半ばに欧州ではじめて出生率が危機的水準を下回った国でもあります。ごく
最近までドイツのモデルは、小さい子供を持つ親の間で、性別によって仕事と育児の役割を分
担することを推進していました。ドイツでは休暇取得前収入の 100%を支給する 14 週間の母親
産休制度がありますが、父親産休制度はありません。母親と父親はともに子供の 3 歳の誕生日
まで育児休暇取得の権利を与えられており、最初の 6 ヶ月間は育児手当でカバーされますが、
残りの期間は所得審査の上、定額の手当が支給されます。2000 年までは、3 年目は手当が支給
されませんでしたが、子供の 8 歳の誕生日まではいつでも取得可能でした。
30 年もの間、出生率が危機的水準を下回り急速に社会が高齢化する懸念が増してきたため、
ドイツでは男性がおもな稼ぎ手であるモデルを重要視することをやめ、スウェーデンのモデル
から要素を取り入れて、2007 年 1 月に、所得審査に基づく長期休暇プログラムに代わって、
収入に応じた、ただし期間を短縮した育児休暇のスキームを取り入れました。新しいルールは
採用されてからまだ比較的日が浅いため出生率に及ぼす影響を検討するには時期尚早です。い
ずれにしても、小さな子供のための公的保育施設の提供にはきわめて消極的な状況が続いてき
たため、これが新しい施策のプラスの影響を損なう可能性があります。
以上のとおり、一般的な家族支援モデルは 出産に関する制度においても仕事と家庭の両立
に向けた施策においても国によってかなり異なっています。「おもな稼ぎ手」モデルは、ドイ
ツがもっとも明確に支持してきたモデルですが、ドイツでは出生率が最低であるとともに、3
歳未満の子供の公的保育施設利用率も最低でした。また、母親の就業も低水準で子供の貧困率
も無視できない水準でした。
フランスは、伝統的な家族に向けた支援と充実した保育施設の提供を組み合わせてきました。
その結果、出生率と保育施設利用率が高まっただけでなく、育児に携わる主要年齢層の女性の
就業も高水準となり、子供の貧困率も低下しました。
比較的最近になって仕事と家庭の両立を重要視したオランダは、適度な水準の出生率を維持
し、3 歳未満の子供の保育施設利用率および女性の雇用率をかなりの水準まで高めてきました。
一方で子供の貧困率は比較的低く抑えています。
したがって、ごく最近まで伝統的な家族を重要視してきたドイツのモデルとは違い、フラン
スとオランダのモデルは仕事と家庭の両立という課題にうまく対応してきており、出生率も妥
当な水準を維持してきたのです。
7.市場主導型モデル
これまで見てきたモデルとは違い、市場主導型モデルでは国家の役割は限定的だとされてい
ます。仕事と家庭における役割の両立は、主として市場が解決する問題であると考えられてい
ます。したがって、家族政策は公共政策の中で優先度が低い政策なのです。
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これは、欧州でこのモデルの典型となっている英国にもあてはまります。育児は母親の「仕
事」であると考えられているのです。これは、母親の産休がたいへん長いこと、父親産休制度
や育児休暇制度を遅れて導入したことなどからもわかります。これらの制度は、育児休暇に関
する 1996 年からの EU 指令の最低限の要件をかろうじて満たす程度のものです。育児は個人
的な問題だと考えられてきたため、1990 年代後半に政府が全国保育戦略をスタートするまで、
3 歳未満の子供の保育施設利用率はきわめて低水準でした。
確かに、英国でもっとも重要な家族政策は母親産休制度です。1970 年代半ばに導入され、
何度も拡充され、2003 年以降は 52 週間取得できます。母親は最初の 6 週間は休暇取得前平均
収入の 90%の支給を受けられ、上限はありません。その後 33 週間は定額の手当を支給され、
最後の 13 週間は無給です。それに加えて、2000 年以降は働く親に育児休暇の権利が与えられ、
無給で親、子供各一人あたり 13 週間取得できます。子供の 5 歳の誕生日まで、暦年ごとに最
大 4 週間まで取得可能です。
8.ラテン系周辺国モデル
最後に、もうひとつの重要なモデル、ラテン系周辺国モデルを見てみます。これは家族の強
い絆という長い伝統に基づき、伝統的な男女の役割を推進するモデルです。ここではイタリア
とスペインに注目します。どちらの国も寛大な支給のある母親産休制度を設けています。
イタリアでは、働く母親は、上限なしで休暇取得前収入の 80%が支給される 5 ヶ月間の休暇
を取得できます。
一方スペインでは、上限はあるものの 100%の収入補償を受けて 16 週間の休暇を取得できま
す。父親産休制度については、イタリアでは設けられておらず、スペインでは 1980 年以降、2
日間(当時)のみですが 100%の収入補償がある休暇が設けられました。
どちらの国においても、小さい子供の親は育児休暇が認められており、スペインでは無給で
すが、イタリアでは最大 6 ヶ月間、休暇取得前収入の 30%の支給を受けられます。イタリアで
は、この休暇の長さは親、子供各一人につき 6 ヶ月間で両親合わせて 10 ヶ月を超えて取得す
ることはできません。3 歳から 8 歳までの子供について利用する場合、手当は支給されません。
両国とも、両親が同時に休暇を取ることも別々に休暇を取ることも可能です。しかし、育児手
当がない、もしくは非常に少ないことから、伝統的な男女の役割の考え方とあいまって、育児
に積極的に取り組む父親には不利に働く制度です。
後から考察したこれらのモデルは出生率と女性の経済活動に対しどのような意味を持ってい
るのでしょうか。ここでは、ごく最近まで最低限の家族政策のみだったにもかかわらず、英国
の出生率が比較的高く、危機的水準に落ち込んだことがないことがわかります。しかし、これ
は主として、ティーンエイジャーの出産が高水準であることと、教育が行き届いていない人々
が大家族を形成していることによるものです。次にこれは、他の社会的問題を示唆します。も
っとも重大な問題は、女性の雇用率が比較的高いにもかかわらず子供の貧困率がきわめて高水
準であることです。
対照的に、イタリアおよびスペインでは、一人っ子家族がますます一般的になったことから、
1980 年代半ば以降、出生率はたいへん低く、危機的水準を下回ったままです。家庭に対する
公的支出がかなり限定的であるため、この展開が強まっている可能性があります。
また、ラテン系周辺国モデルの国々では、女性の雇用率も 2000 年代前半まできわめて低く
とどまっていました。また子供の貧困率も無視できない状況です。したがって、男女の役割を
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より平等に考えようとする変化に対する支援が限られているため、出生率を危機的水準以上に
保とうとする目標にマイナスに作用する可能性があります。
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9.欧州各国の子供がいる女性の割合
ここまで、期間でみた出生率の観点から、さまざまな家族政策の成功と失敗を評価してきま
した。しかし、子供を持たないでいる女性の割合がどの程度なのか、そして女性が出産年齢を
過ぎた時に、最終的な家族の人数が何人になっているかを理解することも重要です。
4 つの家族政策モデルを採用する 8 ヶ国について 1930 年代半ばから 1960 年代半ばの同時出
生集団を見てみましょう。もっとも若いふたつの集団は、これまで前半で見てきた「家族形態
の劇的な変化」にさらされてきました。また、これらの集団は、出産適齢期の間も引き続き就
業するという新しい女性の就労形態をとってきました。以前の集団と比較すると、政策はこの
ように変化する彼女たちの出産行動の影響を和らげることが可能なのでしょうか。
ここでわかることは、北欧諸国とフランスは、例示されているすべての集団において、子供
のいない女性の割合が相当低く、完全出生率が比較的高いということです。これは、これらの
国で実施されている家族政策がかなりうまくいっているということを示唆しています。
オランダでは、子供のいない女性の割合がますます増え、もっとも若い集団では 20%に近
づいています。そして平均的家族のサイズは女性一人に対して子供 2 人未満です。これは、ご
く最近になってから、女性の雇用率が急速に伸びている結果なのかもしれません。ですから、
政策による緩和効果は今後の同時期出生集団でしか現れないでしょう。
対照的に、ドイツは出生の増加を持続可能にすることに失敗してしまっているようです。も
っとも若い集団では、3 分の 1 近くの女性が子供を持たないでいます。そしてこの集団におけ
る子供の数の平均は、出生率の危機的水準に達してしまいました。2007 年に古い家族政策の
モデルをやめ、共働きモデルを採用したことは、ドイツの出産に関する制度を変えるための正
しい方向にようやく進む第一歩となっているようです。
英国もまた、もっとも若い集団で子供のいない女性の割合が比較的高水準になっていますが、
子供の数の平均は以前として二人に近い数字です。出生率が伸びている国と子供がいない女性
の割合が見逃せない水準の国に二極化しているということは、長期的に見て、その国で実施さ
れている家族政策によって妥当な水準の出生率の維持が可能かどうか注視するよう示している
のかもしれません。
最後に、南欧諸国では、特にイタリアで、子供のいない女性の割合が増えています。そして、
イタリア、スペイン両国において、もっとも若い出生集団の完全出生率は危機的水準に近づい
ています。これは、両国において、仕事と家庭の両立という課題に、家族政策が十分対応でき
ていないことを示唆しています。
10.まとめ
これまでの話のまとめです。女性も男性も仕事と家庭生活を両立できる家族制度が整ってい
る社会こそが出生の増加を持続可能にするのです。将来に向けた政策決定の際、このことを考
慮することが重要であるといえます。
〔2009 年9月 30 日 東京〕
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