WEB MAGAZINE Vol.

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ロンジン新製品『フランキー』の秘密を
ルアービルダー伊藤仁にインタビュー!
製品開発物語❷
Text by 太田隆太郎
フランキーはどうして作られた?
フランキーのファーストサンプルを作り出したのは、ちょうどジン
ペンのテストをしている時期でした。水面直下をイレギュラーにバタ
つくアクションが活性の低い魚に強くアピールすることをジンペンを
作る過程で確信し、活性の低い魚にもっとゆっくりアピール出来るル
アー、水面直下を強く泳ぐルアーを作ろうと思ったのをきっかけにフ
ランキーの開発は始まりました。
今までのルアー以上に数多くのテストを重ねる中で、水面直下を強
く泳ぐバタバタ系のルアーは使用する場所や状況、タイミングなど、
とても狭い状況下でしか活躍できないこともよりわかってきました
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が、逆を言えばシチュエーションさえ合えば圧倒的な威力を発揮する
ことも事実です。
しかし、狭い状況下でしか活躍できないということは、使い勝手の
悪いルアーでもあるということに変わりありません。そこで、このア
ピール力(泳ぎの質)を残し、アングラーの操作によってレンジをコ
ントロールし易いルアーへと軌道修正していきました。
現場と工房の往復を繰り返し、現場で釣りながらリップを削った
り、アイの調整など出来る範囲のことは色々なアイディアを試行錯誤
しながら現場で調整。それでもダメなら釣りの途中でもすぐ工房に
戻って何個も修正サンプルを作り直しては現場でまた調整。河川や干
潟、漁港、磯などでトライ&エラーを繰り返し、とても濃密な開発期
間を経てフランキーは完成しました。
なかなか辿り着けない理想の形
アピール力の強いアクションを出すためにはボディ形状、リップ形
状、ウェイト配置など全てにおいてどうしても飛距離が出にくい設計
になってしまいます。僕が作ろうと思い描いたフランキーはファット
でベンドカーブの強いボ
ディ形状。そして垂直に
立ったリップ形状で、強い
アクションを出すには最適
な形状になっていますが、
まさに飛距離が出にくい形
そのものでした。
理想のアクションを出そ
うと思えば思うほど飛距離
理想の動きを再現するため、現場で手を加えては投げて
の繰り返し。サンプルがいくらあっても足りなかった。 が出づらくなるデメリット
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が増えていきます。
ベンドカーブが強く
なると風の影響を受
けバランスを崩しや
すくなります。真っ
直ぐ飛びづらい形状
に加えて垂直のリッ
プがきっかけを掴み
やすいため、簡単に
失速してしまい飛距
扌金型を作るまでのサン
離が出ない……。
プルは、全て伊藤が手で
削りだしたものを使用す
現在のシーバス
る。今回作製したウッド
シーンでは飛距離は
サンプルの数は、かつて
ない膨大な量となった。
絶対条件。飛距離が
➡作られたリップパター
出るようにウェイト
ンのごく一部。まさに伊
藤の執念を感じる。
配置をずらしていく
と、カッ飛びといえるほどの飛距離を簡単に達成できますが、フラン
キーの求めているアクションが完全に無くなってしまう。でもアク
ションだけにこだわっていくと飛距離が全く出ない。そんな堂々巡り
な矛盾をクリアすることが楽しくもあり、長い道のりでした。
最終的には試行錯誤の上、飛距離、アクションともに理想通りの物
が出来ましたが、完成間近に積み上げられたとてつもない数のサンプ
ルの山には自分でもビックリしました。
独特なリップ形状の意味は?
フランキーは、あごの下から垂直に立った扇状に広がるリップ形
状、そしてリップの中心にはディンプル(くぼみ)が搭載された独特
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ルアービルダーの仕事は、カラーラインナップが決まった段階でやっと一息。仕上がりは
良好。あとは発売後に皆様からの評価を待つばかり!
な形状になっています。リップを垂直にした理由は、水を早く捉える
(水流を感知しやすくする)動き出しを早くするのと同時に、レンジ
キープ力を高めるため垂直にしてあります。
ディンプルはくぼみを付けることでグリップ力(水の捉え)をより
強くさせ、水の捉えが強くなることで泳ぎが強くなり、アクションの
幅が広がることでメリハリのある可変アクションを生み出します。
ボディに隠された特徴とは?
フランキーの最大の特徴はリップや外見ではなく、実はウェイト配
置に隠されています。重さの違うタングステンウェイトを4個採用
し、重心移動ウェイトの自由を制限し泳ぎのバランスをとるためにマ
グネットも搭載。4個ものタングステンを使用している中でも、もっ
とも大きいウェイトを後方に固定配置。このウェイト配置に設定した
理由は3つあります。
1 つ目はシャローレンジを長くキープできるようにするためです。
後方に固定の重心を持っていくことで、浮き姿勢が 90 度くらいのお
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尻下がりになります。お尻下がりになることで潜水力を無くし、シャ
ローレンジを長くキープさせているのです。
2つ目はイレギュラーを誘発させるためです。流れの変化の中でイ
レギュラーアクションを出やすくするため、フランキーはベンドカー
ブの強いボディ形状と垂直に立ったリップを持つことで、左右に大き
く振りの強いアクションになっています。フランキーの形状に後方固
定ウェイトを配置すると、大きく動こうとする力を後方ウェイトの遠
心力が邪魔をして、流れやリトリーブ速度によって変化(イレギュ
ラー)が出やすくなるのです。
3つ目は飛距離を伸ばすためです。飛距離とアクションを同居させ
るための矛盾を解消するためにいちばん苦労した要素は、大きなウェ
イトを後方に固定することでキャスト時に水平を保つように微調整を
繰り返し、重心移動のタングステンと相まって広範囲を探れるサーチ
ベイトとして申し分ない飛距離を実現しました。
全てを感知し、流れを伝える!
フランキーがサーチベイトたる所以は、リトリーブスピードや流れ
の変化に機敏に反応すると共に、アクションを可変させることです。
左/金型作製後のテストは順調だったが、細かいところまでこだわり抜くために金型修正
回数は通常のルアーの倍近く行われた。右/ウッドサンプルからインジェクションサンプ
ルまで、フランキーにはこれだけのバリエーションが作られた。
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テスト中はシーバスはもちろんだがマゴチもよく釣れた。フランキーは魚種問わずフィッ
シュイーターには効果抜群だ!
アクションの変化がアングラーに水流の変化を知らせるとともに、そ
の変化するタイミングがシーバスのバイトを誘発します。
フランキーの潜行深度は、水面直下から 60㎝。使い方は投げて巻
くだけです。低速巻ではロールアクション、中速巻ではタイトウォブ
ンロール、高速巻になると超ハイアピールワイド系ウォブンロールへ
と変化します。強い流れでも飛び出さないよう設定しているので、河
口などの強い流れの中でダウンに流しても全く問題ありません。
ネーミングの由来は意外にも?
完成間近の実釣テスト終盤になっても名前が全く決まっておらず、
釣りをしながら仲間内で名前を考えていた時のことです。
そのとき使っていたサンプ
ルは、修正作業が追いつかず
何個ものルアーを継ぎ接ぎに
して作った、とてつもない手
間のかかったものでした。そ
れを見た誰かが「フランケン
みたいだ!」
と言ったのがキッ フランキーというネーミングの元になったサン
プル。頭部、胴部、尾部が異なる3つのサンプ
カケとなり、フランケンだと ルが合体している。
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ちょっと硬すぎるな……ということでフランクな感じは? じゃあ
「フランキー !!」と、とてもラフな感じで名称が決定しました。
ビルダー伊藤渾身の作品!
広大なシャローエリアを広くカバーし、効率
よく探るためのサーチベイトとして最初に投げ
てもらいたいルアーとして開発したフランキー
は、流れの変化を感知しやすい設計になってい
ますので、その日のパターンや状況把握、流れ
を探す際に活躍するルアーです。エリアとして
は大型河川の河口や干潟など広大なエリアに対
応します。
最後になりますが、20 年以上ルアーを作り
続けてきた中でも、今回開発したフランキーは
サンプルの数、金型修正回数など全てにおいて
苦労の多いルアーになりました。しかし、隆太
郎をはじめスタッフ協力のもとアクション、飛距離ともに思い描いた
100%のものを完成させることができました。
ベテランアングラーはもちろん、シーバスをはじめたばかりの人に
もガンガン使って遊んでいただけたら幸いです。これからもアング
ラーの皆様に信頼していただけるルアー作りを心がけ、立ちはだかる
矛盾を打破するために苦悩しながらも、製品作りを楽しみながらル
アー開発をしていきます!
伊藤 仁(いとう・ひとし)
株式会社LONGIN.代表。19年間勤めたルアーメーカーから2011年に
独立し、株式会社LONGIN.を立ち上げる。今年は第5弾製品となる
FRANKYが新発売。現在は次回リリース予定の製品のテスト真っ最中!
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LONGIN. が贈るフリーペーパー
ロンジンマガジン Vol.2
弊社製品取扱店にて絶賛配布中です!
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年刊行された弊社刊
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号がいよいよ配布開始!
前号より大幅にボリュー
ムアップした今号は、新製
品フランキーのインプレや
制作者・伊藤による開発秘
話、ジンペンやプレックス
を使った攻略法、そしてあ
の有名アングラー・井上ゆ
うきさんによるキックビー
トの解説も収録!
さらにロンジン全製品の
カタログも掲載。カタログ
ページではキックビートの
2013 新色ラインナップを
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ロンジンマガジン Vol.2
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(数に限りがありますので、品切れに
メーカー在庫切れしており
よる配布終了の際はご容赦下さい)
ます。ご了承下さい)
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WEB MAGAZINE Vol.8
発行日:2013 年 3 月 26 日
株式会社 LONGIN.
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