世代別一人暮らし世帯の消費実態

世代別一人暮らし世帯の消費実態
三浦 展
カルチャースタディーズ研究所 主宰 世代別の消費傾向を見るために、総務省「家
も伸びている。リタイア後の自由な時間をさま
計調査」をもとにして、一人暮らし世帯の消費
ざまな学習活動に費やそうとしているというこ
が過去10年でどのように変化しているかを見て
とがわかる。
いく。二人以上の一般家庭の消費を見てもいい
団塊世代は、ヌーヴェル・ヴァーグ、アメリ
のだが、それだと消費傾向が子どもの成長によっ
カン・ニューシネマ、あるいは東映やくざ映画
て規定される面が大きくなり、世代の特徴が出
など、若い頃に映画をよく見た世代である。また、
ない。また、現在の30 ∼ 40代は、晩婚化した世
唐十三、寺山修司などの演劇に親しんだ人も多
代であるから、一人暮らし世帯がそもそも多い
い。そうした彼らがリタイア後に映画、演劇に
し、結婚後もある程度一人暮らし、あるいは未
お金を払うようになっている。
婚時代の消費傾向を継続するだろうという推測
また、食品では「冷凍調理食品」のほか、
「ハ
も成り立つ。そこで、仮説的な作業として一人
ンバーグ」「スパゲッティ」「マヨネーズ・ドレッ
暮らし世帯で比較することにした。
シング」
「ソーセージ」
「スナック菓子」
「サラダ」
分析の方法としては、「家計調査」における年
「アイスクリーム・シャーベット」「紅茶」が伸
間消費支出の2002年から2006年の五年間の平均
びており、シニア男性の食生活が洋風化、若者
と、2007年から2011年の五年間の平均を比較す
化していることがわかる。
ることにした。
なお、
「家計調査」の分類では「34歳以下」「35
歳以上59歳以下」「60歳以上」となる。
考えてみれば、団塊世代は若い頃からこうし
た洋食、スナックを食べてきた世代であるから、
60歳を過ぎても、多少の好みの変化はあるにし
ても、それ以前の世代のシニアよりも洋食志向、
若者化するシニア男性
スナック志向が強いのは当然であろう。
世代特性の比較のために、まずシニア(60歳
以上)の男性の一人暮らし世帯の家計の変化を
見てみる。
1947 ∼ 49年生まれの団塊世代は2007年に60代
に突入したから、2007 ∼ 2011年の60歳以上には
クルマ、美容、スポーツの消費も伸びている
また、「自動車購入」も伸びており、「若者の
クルマ離れ」が指摘される時代のなかで、シニ
アが自動車市場を引っ張っていることがわかる。
団塊世代が完全に含まれている。だから、2002
「自動車購入」の伸びにはエコカー補助金(2009
∼ 2006年の家計支出平均値よりも2007 ∼ 2011年
年6月∼ 2010年9月)の導入も影響していると
の平均値が伸びた分は、おそらく団塊世代が60
思うが、だからといって、後で見るように若年
代に入ってきたことの影響が大きいと思われる。
男性の「自動車購入」は増えていない。金額で
最も伸びているのは「語学月謝」で13.6倍であ
見ても、シニア男性の年間自動車購入費は2007
る。以下、「インターネット接続料」「冷凍調理
∼ 2011年の平均で27,342円、ミドル男性は18,475
食品」「スポーツ月謝」「発泡酒」が2倍以上で
円、若年男性は29,699円であり、シニアと若年男
ある。
性はあまり変わらない。子ども世代のために親
さらに見ると「音楽月謝」
「映画・演劇等入場料」
が自動車を買い与えるケースもあると思うが、
’
13.5
6
三浦 展(みうら あつし)
1958 年生まれ。82 年一橋大学社会学部卒、
れからの日本のために「シェア」の話をしよ
パルコ入社。86 年マーケティング誌『アク
う』『下流社会 第3章』
『第四の消費 つなが
ロス』編集長となる。99 年カルチャースタ
りを生み出す社会へ』ほか多数。
ティーズ研究所設立。家族、消費、都市等の
なお、本稿の内容は『日本人はこれから何
研究を踏まえ、新しい社会デザインを提案し
を買うのか?』に所収。
ている。著書に『「家族」と「幸福」の戦後史』
『こ
いずれにしろ自動車にお金を出すのはシニアの
ようである。
「理美容電気器具」
「カット代」も伸びている。
図1 60歳以上の男性の一人暮らし世帯で伸びた消費
(2002 ∼ 2006年の平均値と2007 ∼ 2011年の平均値の比較)
単位:倍
語学月謝
13.6
団塊世代男性は若い頃に当時のケネディ大統領
インターネット接続料
2.4
のようなアイビー風の服装と髪型にあこがれ、
冷凍調理食品
2.3
スポーツ月謝
2.2
発泡酒
2.0
れに気を配る人が増えた世代である。化粧品で
自動車購入
2.0
言えばMG5世代である。最初から団塊世代の若
理美容用電気器具
1.9
映画・演劇等入場料
1.7
ケーブルテレビ受信料
1.6
化粧品に比べて圧倒的におしゃれだったからで
ゼリー
1.6
ある。その世代的な傾向が「理美容電気器具」
移動電話通信料
1.6
の伸びになって現れていると言える。
運動靴
1.5
カレールウ
1.5
ドライヤー、電気カミソリなどを愛用し、おしゃ
者を狙って商品企画されたMG5は、それまでの
また、
「スポーツ月謝」と同様「スポーツ用品」
ハンバーグ
1.5
「運動靴」も増えている。いつまでも若々しく健
音楽月謝
1.4
康でいたいという団塊世代の意識の現れであろ
カーテン
1.4
カット代
1.4
マヨネーズ(風調味料含)・ドレッシング
1.4
ソーセージ
1.4
シニア女性は自動車、スポーツ、インター
照明器具
1.4
ネットなどアクティブ化
スパゲッティ
1.4
教養娯楽用耐久財
1.3
ぎょうざ
1.3
んでいる。「自動車購入」は2.6倍だし、
「インター
室内装飾品
1.3
ネット接続料」「移動電話通信料」も伸びている。
中華めん
1.3
紅茶
1.3
スポーツ用品
1.3
に伸びているが、これは電動アシスト自転車を
焼ちゅう
1.2
買った人が多いのではないかと思われる。
運動用具類
1.2
歯磨き
1.2
コロッケ
1.2
う。
シニア女性もシニア男性と同様に若者化が進
シニア男性とは違って「自転車購入」も1.5倍
「理美容電気器具」
「化粧石けん」
「運動靴」
「ス
ポーツ施設使用料」も伸びており、いつまでも
調理パン
1.2
若く美しくありたいという意識は強い。
「入浴料」
ケチャップ
1.2
が伸びているのは、美容と健康をかねてスーパー
スナック菓子
1.2
サラダ
1.2
生うどん・そば
1.2
トマト
1.2
アイスクリーム・シャーベット
1.2
銭湯に行く人が増えたためであろう。
また、
「ハンバーグ」「チーズ」「スナック菓子」
「ベーコン」「ケチャップ」「ソーセージ」「コー
ヒー」「炭酸飲料」
「マヨネーズ(風調味料含)・ド
資料:総務省「家計調査」よりカルチャースタディーズ研究
所作成
レッシング」も伸びており、シニア男性同様、
’
13.5
7
食生活が洋風化、スナック化している。
また、一人暮らしの寂しさ、退屈さをまぎら
「冷凍調理食品」は伸びているが、それ以外で
は、食の簡便化傾向は見られない。団塊世代女
わ す べ く ペ ッ ト を 飼 う 人 が 多 い の で あ ろ う、
「ペットフード」も伸びている。
性は専業主婦としてしっかり家事をしてきた人
が多いので、今のところ調理食品に頼るほどで
はないようである。
若年男性は主婦化
シニア男性の消費傾向が若者化しているのに
対して、34歳以下の若年男性の消費傾向は、い
図2 60歳以上の女性の一人暮らし世帯で伸びた消費
(2002 ∼ 2006年の平均値と2007 ∼ 2011年の平均値の比較)
単位:倍
わば「主婦化」している。支出が伸びている物
の多くが家庭的なものなのである。
たとえば「電気洗濯機」「電気掃除機」「なべ・
理美容用電気器具
2.7
自動車購入
2.6
やかん」「食器戸棚」「電気冷蔵庫」が2倍から
インターネット接続料
2.4
3倍に増えている。一人暮らしの男性というのは、
化粧石けん
1.9
昔のイメージでは最も「家庭的」なものから遠
移動電話通信料
1.9
いはずであったが、現代の若い一人暮らし男性
運動靴
1.8
ケーブルテレビ受信料
1.7
敷物
1.6
自転車購入
1.5
発泡酒
1.5
実際、「こんぶ」が2倍以上に増えている。金
カーテン
1.4
額が非常に小さいので図にはないが、「しじみ」
カレールウ
1.4
「かき(果物)」「かき(貝)」「れんこん」も2倍
ハンバーグ
1.4
から3倍以上増加。さらに1.3倍以上2倍未満だ
歯磨き
1.3
自動車等維持
1.3
冷凍調理食品
1.3
コーヒー飲料
1.3
らこ」
「いわし」
「みそ」
「ふりかけ」
「えび」
「風
スポーツ施設使用料(ゴルフスポーツクラブ含)
1.3
味調味料」
「豆腐」
「つゆ・たれ」
「さといも」も
ペットフード
1.3
挙がっているのである。
チーズ
1.3
一方、「外食」は1割以上減っている。不況で
乾燥スープ
1.3
所得が伸びないなか、外食を減らして自炊をす
調理パン
1.3
スナック菓子
1.3
ベーコン
1.3
ケチャップ
1.3
ソーセージ
1.2
コーヒー
1.2
入浴料
1.2
炭酸飲料
1.2
冷暖房用器具
1.2
マヨネーズ(風調味料含)・ドレッシング
1.2
資料:総務省「家計調査」よりカルチャースタディーズ研究
所作成
は、「家電男子」という言葉もあるくらい家電好
きなのである。おそらく料理や家事をする男性
も増えたのであろう。
と、
「魚介のつくだ煮」「塩さけ」「はくさい」「か
ぼちゃ」
「はくさい漬」
「合いびき肉」
「かつお」
「た
る「料理男子」
「弁当男子」が増えているとも言
われるが、それが「家計調査」からも裏付けら
れた形である。
しかし基本は外食とコンビニ
だからといって若年男性の食事が自炊中心に
なっているわけではない。あくまで、最近の傾
向として自炊が増えているらしいということで
ある。食費に占める外食費や調理食品(すでに
調理された食品を買って食べる場合。業界用語
’
13.5
8
では「中食」
(なかしょく)という)の割合を見
ると、若年男性では非常に高いのである。
だが、34歳以下の男性では27%に過ぎない。
そして内食の中でも飲料、菓子、カップ麺が
まず食料費に占める外食費の割合を見ると、
占める割合が多く、食料費全体を100%とすると
34歳以下の男性は59%もある。食費の6割が外
13%が飲料、菓子、カップ麺である。おそらく
食なのである。34歳以下の女性は45%、35 ∼ 59
これらはほとんどがコンビニで買われているだ
歳の男性は41%とやはり高いが、しかし34歳以
ろう。
下の男性の高さは突出している。
また、中食もほとんどはコンビニのおにぎり、
中食(調理食品)が食料費に占める割合は、
弁当、サンドイッチ類などであろうから、飲料、
年齢、男女に関わらず12%から16%程度である。
菓子、カップ麺と中食を合計すると食料費全体
食費から外食費と中食費を引いたもの、つまり
の27%がほぼコンビニで買われていると言える。
自分で素材を買って料理して食べるものを「内
外食が59%だからコンビニ消費の27%と合計す
食」(ないしょく)と呼ぶとすると、この内食が
ると86%である。つまり34歳以下の男性の食料
食料費に占める割合は60歳以上の女性では72%
費の86%は、外食かコンビニだと言っても間違
いない。
図3 34歳以下の男性の一人暮らし世帯で伸びた消費
同じように35 ∼ 59歳の男性一人暮らしを見る
(2002 ∼ 2006年の平均値と2007 ∼ 2011年の平均値の比較。
ただし年間100円未満の支出の項目は除く)
単位:倍
と、外食・コンビニ依存度は72%、60歳以上の
他の教育的月謝
41.2
男性では53%、34歳以下の女性は76%、34 ∼ 59
歳の女性は59%、60歳以上の女性は44%である。
他の通信機器
7.7
若いほど、男性ほど、外食・コンビニ依存度が
自動車教習料
5.4
高いことがわかる。若年男性が料理をするよう
冠婚葬祭費
3.8
自転車購入
3.6
電気洗濯機
3.3
教養娯楽用耐久財修理代
3.0
電気掃除機
2.9
なべ・やかん
2.8
その他で伸びが最も大きいのは「他の教育的
食器戸棚
2.6
月謝」で、伸び率最高の41倍だが、これは資格
入浴料
2.4
取得のための月謝が多いものと思われる。
電気冷蔵庫
2.4
こんぶ
2.3
化粧石けん
2.3
化粧クリーム
2.2
など親元暮らしをしている段階で自動車免許を
布団
2.1
取っていない人が多いためではないかと思われ
自動車保険料以外の輸送機器保険料
2.1
る。
火災保険料
2.1
子供用洋服
2.0
他の保健医療サービス(鍼灸・整体など含む)
2.0
ベッド
2.0
家事用耐久財
2.0
資料:総務省「家計調査」よりカルチャースタディーズ研究
所作成
になったとは言っても、それは残り14%の中で
のわずかな変化なのである。
自動車から自転車へ
また第三位に「自動車教習料」が挙がってい
るのが不思議だが、これはこの世代が学生時代
「冠婚葬祭費」が増えているのも不思議である。
常識的には結婚式へのお祝いが増えたのであろ
う。インターネットの普及によって友人の数が
増え、結果として結婚式に呼ばれることも増え
たのであろうか?
「自転車購入」が増えているのは納得がいく。
’
13.5
9
この10年ほど自転車に乗ることはエコロジカル
ることが減り、スカートではなくパンツルック
なファッションとしてすっかり定着したからで
が増えた。そのため、
「下着」
「ファンデーション」
ある。一方「自動車購入」は2割以上減っている。
自動車から自転車へと、若者の関心が変化して
いる。
「ストッキング」は無用になったのである。
このように女性が、いわば「脱女性化」
「男性化」
しているため、スカートは減り、下着などの見
えないところにお金をかけるより、人に見える
若年女性は仕送り、寄付、信仰費が伸びる
歯の矯正やホワイトニングにお金をかけるよう
34歳以下の女性の消費で最も伸びているのは
になったのである。それは実に合理的な判断で
意外なことに「仕送り金」である。すでにリタ
ある。歯がきれいなほうが就職にも仕事にも、
イアした親、リストラされた親、あるいはまだ
もちろん恋愛にも有利だからである。
在学中のきょうだいなどのためであろうか。金
また、マッサージなどの「他の医療サービス」
額も2002 ∼ 2006年は5千円弱だったが、2007 ∼
も伸びている。男性並みに働くようになった女
2011年は2万円弱にまで増えている。結構な金
性がマッサージを求めているのである。
額である。
「寄付金」も伸びており、若年世代の社会貢献
意識の高まりを表していると言えそうである。
このへんは私が言うところの「第四の消費」
(図
7参照)的な動きとも言える。
図4 34歳以下の女性の一人暮らし世帯で伸びた消費
(2002 ∼ 2006年の平均値と2007 ∼ 2011年の平均値の比較。
ただし年間100円未満の支出の項目は除く)
単位:倍
仕送り金
4.7
音楽月謝
3.5
信仰・祭祀費
2.5
では862円から2,185円に伸びている。毎週一回近
腕時計
2.5
い頻度で神社に行って50円くらいお賽銭をあげ
発泡酒・ビール風アルコール飲料
2.3
るくらいの金額である。
他の寝具類
2.3
インターネット接続料
2.2
浴用・洗顔石けん
2.1
寄付金
1.9
他の穀類
1.8
また、パワースポットブームなどを反映して
か、「信仰・祭祀費」も2.5倍に増えており、金額
もっと一般的な消費としては「音楽月謝」「ス
ポーツ月謝」が伸びており、自分への投資に積
極的な女性というイメージが浮かんでくる。
また「歯科医療費」も2倍近く増えている。『下
歯科診療代
1.8
流社会第3章』にも書いたが、その代わりに減っ
ワイン
1.6
ているのは「スカート」
「下着」
「ファンデーショ
理髪料
1.5
ン」「ストッキング」である。スカートは5割減、
しょうゆ
1.5
下着は4割減、ファンデーションは7割減、ス
スポーツ観覧料
1.4
トッキングは3割減である。金額で見ると「下着」
生鮮肉
1.4
スパゲティ
1.4
は年間10,358円に低下し、ミドル女性の9,206円
とあまり変わらなくなっている。「下着」から「歯
科医」へ、というわけである。
女性といっても、今は男性と同じように営業
他の酒
(日本酒、ワイン、ウイスキー、焼酎以外)
1.4
他の保健医療サービス(マッサージなど)
1.4
資料:総務省「家計調査」からカルチャースタディーズ研究
所作成
の外回りをしたりするようになったので、昔の
OLのように女性的なひらひらしたスタイルをす
’
13.5
10
お部屋志向と快眠志向
景には、
『カーサブルータス』『ペン』などの雑
それでは、60歳以上のシニアでもなければ、
誌が頻繁に家具、インテリア、住宅の特集を組
34歳以下の若者でもない、35歳以上59歳以下の
むことの影響もあるだろう。また、ニトリなど
ミドル男性の一人暮らし世帯は何を消費してい
の低価格の家具店が全国に広がったこと、さら
るのだろうか。
にインターネットでも手軽に買えるようになっ
結果を見ると、家具・インテリア志向が強まっ
ていると言えそうである。最近支出が伸びた上
たことなども、家具、インテリア、寝具などを
買いやすくしているかもしれない。
位には、
「応接セット」「照明器具」「ベッド」「他
もうひとつ重要な理由は、不眠症である。仕
の寝具類(ベッド、布団、毛布、敷布以外)」「他
事のストレス、24時間型の生活、運動不足、パ
の家事用耐久財(電子レンジ、炊事用電気器具、
ソコン作業から来る疲労などのために、眠りが
炊事用ガス器具、冷蔵庫、掃除機、洗濯機、ミ
浅いことで悩む人が増えているといわれる。そ
シン以外)」が挙がっているのである。
れがベッド、寝具への支出の背景となっている
考えてみれば、35歳を過ぎても一人暮らしだ
のであろう。
としたら、衣食はもう足りているから住にお金
をかけるようになるのは当然だ。所得も上がる
から、その分広い家に住み、家具も本格的なも
のを買うようになるだろう。
ミドル女性は物よりサービス
ミドル女性の一人暮らし世帯で伸びている消
費には際だった特徴はない。「スポーツ観覧料」
図にはないが、
「布団」は1.4倍、
「敷布」は1.3
が3.7倍になっているのはJリーグ観戦のため
倍に伸びている。若年男性でも「布団」は2.1倍
か? 石川遼のおっかけか? 詳しいことはわ
に増えており、ミドルでも若年でもその金額は
からない。
「映画・演劇入場料」が増えているこ
女性よりも多い。近年は男性が眠りにこだわっ
とと併せ考えると、ミドル女性は「観ること」
ているようなのである。
が好きだと言える。シニア女性同様、外に出て
こうしたおうち志向、快眠志向の高まりの背
アクティブに活動していると言える。
「寄付金」
「音楽月謝」
「スポーツ月謝」が増え
図5 35 ∼ 59歳の男性の一人暮らし世帯で伸びた消費
(2002 ∼ 2006年の平均値と2007 ∼ 2011年の平均値の比較。
ただし年間100円未満の支出の項目は除く)
単位:倍
応接セット
22.0
ているのは若年女性と同様だ。また、若年女性
と同様、「スカート」は6割減、
「ストッキング」
は5割減だが、「下着」「ファンデーション」は
1∼2割減にとどまっている。
ベッド
5.0
年齢を感じさせるのは「祭具・墓石」が伸び
語学月謝
4.3
ている点。親のために買ったというより、自分
照明器具
3.9
のために準備をしたのであろうか。
教養娯楽用品修理代
3.8
他の寝具類
(ベッド、ふとん、毛布、敷布以外)
また、いくつかの食品などが伸びている以外
3.5
は、物の消費がほとんど伸びていないというの
自動車教習料
2.6
は非常に大きな特徴である。シニアが自動車、
他の家事用耐久財
2.6
自転車、美容器具などの物を購入しており、ミ
自動車保険料以外の輸送機器保険料
2.4
ドル男性が家具・インテリア、寝具類を購入、
コンタクトレンズ
2.3
資料:総務省「家計調査」よりカルチャースタディーズ研究
所作成
若年男性が家電などを、若年女性が腕時計を購
入しているのと比べると、ミドル女性はずいぶ
’
13.5
11
ん物欲が少ない。バブル世代を含んでいるとは
思えない傾向である。
まとめ
以上、年齢別、男女別に一人暮らし世帯の消
おそらくバブル世代も、バブル崩壊後の20年
費傾向を見てきた。分析の結果をまとめると、
間ですっかり消費を縮小させたのであろう。こ
消費者の年齢差、男女差が小さくなっていく傾
の意味でも、私が言うところの「第四の消費」
向があることが明らかである。
的なトレンド、物からコトへ、物から人へ、物
すなわち、シニア男性は若者化、シニア女性
からサービスへという変化が現れているとも言
やミドル女性はアクティブ化、ミドル男性はお
えるだろう。
うち志向化、若年男性は主婦化、若年女性は男
実際、消費の対象はサービスに向かっている。
スポーツ、映画、演劇を見る、スーパー銭湯に
性化というように、全体としては老若男女の差
が小さくなっているのである。
行く、音楽教室に行く、旅行に行って宿泊する
もちろん個別の消費分野については差がまだ
など、物よりもサービスに対してお金を使って
大きいものもあるが、しかし全体的傾向として
いるのである。特に「家事サービス」が1.6倍に
は老若男女の差が縮まる方向に動いている。
増えているのは、いかにも現代的なおひとりさ
ま女性の消費傾向と言えよう。
そういう意味では、老若男女に共通の最大公
約数的なニーズに応える商品は巨大なヒット商
品になる可能性がある。ユニクロはその一例で
図6 35 ∼ 59歳の女性の一人暮らし世帯で伸びた消費
あろう。衣料品でいえば、無印良品、GAPのよ
(2002 ∼ 2006年の平均値と2007 ∼ 2011年の平均値の比較。
ただし年間100円未満の支出の項目は除く)
単位:倍
うなカジュアルブランド、ナイキ、アディダス
のようなスポーツブランド、パタゴニア、ノー
スポーツ観覧料
3.7
スフェイスといったアウトドアブランドなど、
寄付金
2.9
この十数年に人気が上昇してきたブランドはす
浴用・洗顔石けん
2.1
インターネット接続料
2.1
ケーブルテレビ受信料
1.7
家事サービス
1.6
入浴料
1.6
発泡酒・ビール風アルコール飲料
1.5
歯磨き
1.5
食品などでも、老若男女のおひとりさまにとっ
チーズ
1.4
てはセブンイレブンが展開するプライベートブ
祭具・墓石
1.4
ランド(PB)商品であるセブン・プレミアムが
スポーツ月謝
1.3
まさに最大公約数的な商品であろう。セブンイ
スパゲティ
1.3
レブンは、トヨタや花王がそうであるように、
移動電話通信料
1.3
宿泊料
1.3
映画・演劇など入場料
1.3
音楽月謝
1.3
乾燥スープ
1.3
資料:総務省「家計調査」よりカルチャースタディーズ研究
所作成
べてノーセックス、ノーエイジ、つまり老若男
女が共通して着られるブランドである。男性向
けにダーバン、女性向けにレリアンといったブ
ランドをつくることが、昔ほど男女それぞれに
とって魅力的ではない時代なのである。
すでに日本人にとって信頼のブランドである。
そのセブンイレブンのプライベートブランドの
品質、味などに対して、われわれは強い信頼感
を持つ。そもそもが安い商品だが、安いのに品
質はよい、期待はずれがない、確実に一定の満
足を与えてくれるという信頼である。
また、シニアには物志向がまだ根強く残って
’
13.5
12
アを所有している人が多い。
いるが、ミドル女性には物志向よりもサービス
志向が強まっていると思われる傾向が見えた。
これは、シニアのほうがお金がある、部屋が
若年も消費支出に占めるサービスの割合が6割
広い、毎日マッサージを受けたいからマッサー
ほどあり、こうした消費のサービス化の傾向が
ジチェアのほうが安いという理由もあるが、若
今後次第に35 ∼ 54歳、さらには高齢者にも広
年世代のほうがお金を払って人からサービスを
がっていくものと思われる。
受けることに躊躇がないという理由もあると思
食事ならば、食品を買って自分で作るのでは
われる。こうした傾向は私のこれまでの調査か
なく、外食やコンビニに依存する人が絶対数と
らも言えることである。また、マッサージを受
しては増えそうである。
けながら、マッサージをする人との会話を楽し
自分で料理する男性も増えているが、そうい
みたいという欲求も若年世代ほど強いのではな
う男性も生協などの食材の宅配というサービス
いかとも思われる。それは人とのコミュニケー
を使うようになるのではないか。
ションを重視する「第四の消費」的な現象であ
るとも言えるであろう。
掃除も、洗剤、掃除用品という物を買って自
分でするのではなく、家事というサービスをお
こうしたことから、本誌「調査」が対象とし
金を出して買う方向に進んでいく可能性が高い。
ている現在の35 ∼ 54歳、そしてさらに今後の35
また若年の女性でマッサージなどのサービス
∼ 54歳の消費は、おそらく物離れを加速し、人
が伸びていたが、面白いことに、私が関与した
からの直接的なサービスにお金を払ったり、人
ある調査によると、シニア層ではマッサージを
とのコミュニケーションにお金と時間をかけた
受ける人は増えておらず、むしろマッサージチェ
りする傾向が強まるものと思われる。
図7 消費社会の四段階と消費の特徴
時代区分
第一の消費社会
1912 ∼ 1941
第二の消費社会
1945 ∼ 1974
第三の消費社会
社会背景
日露戦争勝利後から日中戦争
まで
東京、大阪などの大都市中心
中流の誕生
敗戦、復興、高度経済成長期
からオイルショックまで
大量生産、大量消費
全国的な一億総中流化
オイルショックから低成長、
バブル、金融破綻、小泉改革
まで
格差の拡大
人口
増加
出生率
高齢者率
2005 ∼ 2034
リーマンショック、2つの大
震災、不況の長期化、雇用の
不安定化などによる所得減少
人口減少などによる消費市場
の縮小
消費の志向
消費のテーマ
消費の担い手
文化的モダン
山の手中流家族
モボ・モガ
5
5%
5→2
5%
→6%
一家に一台
大量消費
family
大きいことはいいこ マイカー
消費は私有主
マイホーム
とだ
義 だ が、 家、
三種の神器
大都市志向
会社重視
3C
アメリカ志向
核家族
専業主婦
微増
2→
1.3 ∼ 1.4
6%
→20%
個性化
多様化
individual
差別化
私有主義かつ
ブランド志向
個人主義
大都市志向
ヨーロッパ志向
量から質へ
一家に数台
一人一台
一人数台
単身者
パラサイト・
シングル
減少
13.∼
1.4
20%
→30%
social
シェア志向
社会重視
つながり
数人一台
カーシェア
シェアハウス
全世代のシング
ル化した個人
増加
1975 ∼ 2004
第四の消費社会
国民の価値観
national
消費は私有主
洋風化
義だが、全体
大都市志向
としては国家
重視
ノンブランド志向
シンプル志向
カジュアル志向
日本志向
地方志向
’
13.5
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