2013program - 日本生化学会 近畿支部

第 60 回
日本生化学会近畿支部例会
要旨集
日時:
会場:
1304-0907 大阪大学 第 60 回 日本生化学会近畿支部例会 要旨集
表1-4
2013 年 5 月 18 日(土)
9 時 00 分~
大阪大学 吹田キャンパス
医学部・銀杏会館
大阪府吹田市山田丘 2-2
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98,000
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(税別)
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■ 抗原:合成ペプチド
■ 調製:コンジュゲート付
■ 免疫:ウサギ1羽
ELISA、アフィニティー精製は
オプションサービスとなります。
■ 国内免疫で納期大幅短縮
■ SPFウサギ使用
■ 抗原持込にも対応
■お申込期間/2013年5月7日〜7月31日 ■納品予定/8月以降随時
■お問合せ先/TEL 0133-71-2471・e-mail [email protected]
5月
6月
7月
お申し込み
8月
9月
ペプチド
合成
シグマ アルドリッチ ジャパン
TEL
http://www.genosys.jp
FAX
1304-0907 大阪大学 第 60 回 日本生化学会近畿支部例会 要旨集
免疫
10月
納品
11月
12月
国内免疫で
納期大幅短縮!!
Customer Support(ご注文・納期についてのお問合せ) Scientific Support(技術的なお問合せ)
0120-730-830 • 0133-75-7311
0120-730-860 • 0133-71-2471
0120-730-850 • 0133-75-7322 e-mail [email protected]
表2-3
御案内
1.
会場は大阪大学・吹田キャンパスです。詳しくは、下記の交通アクセスをご参照く
ださい。
2.
受付は医学部講義棟 1 階にて 8 時より開始します。会場では受付にてお渡しする
名札を御着用ください。名札はお帰りの際に受付にお返しください。
3.
ご参加の方々には優秀発表賞(ポスター)の投票を行っていただきます。受付で受
け取られた投票用紙にご記入の上、16 時 30 分までに投票箱(ポスター会場に設置)
にお入れください。座長による口頭発表の採点と合わせて集計します。優秀発表賞
は、懇親会で表彰します。
4.
発表者の方へ:全ての発表を口頭とポスターの両方で行います。
a. 口頭発表は医学部講義棟(B、C、D、E 講堂)で以下の通り行います。
―
講演 10 分、討論 3 分の計 13 分(演者交代の時間を含めて計 15 分)です。
―
発表者持ち込みのパソコンとミニ D-sub 15 ピン(オス-オス)ケーブル
によって接続した液晶プロジェクターからスクリーンに投影します。Mac
を使用する場合はミニ D-sub 15 ピン(オス)に接続するためのアダプタ
が必要ですので各自持参ください。
―
発表者は、前の発表者が討論に入るまでにパソコンを起動しておいてくだ
さい。プロジェクターのケーブルとの接続は、会場の担当者が指示します。
―
プレゼンテーションに使用するソフトは自由ですが、トラブルの際に会場
で対応可能なソフトは PowerPoint のみです。
―
持ち込みのパソコンにトラブルが生じた場合に備え、USB メモリにデータ
を保存したものをお持ちください。会場のパソコン(Windows)に移して投
影します。
b. ポスター発表は銀杏会館3階の大会議室で以下の通りに行います。
―
掲示用のパネルサイズは(900mm × 2100mm)です。各パネルには演題
番号が貼り付けてありますので、ご自分の演題番号のパネルにポスターを
貼り付けてください。貼付に必要なピンはこちらで準備します。
―
ポスター掲示は 13 時 00 分までにお済ませください。また、ポスターは
15 時 50 分までは掲示し、
撤去は必ず 16 時 30 分までに行ってください。
5.
12 時 10 分から 13 時 10 分まで,銀杏会館 3 階、会議室 B において近畿支部評議
員会を開催しますので評議員の方は銀杏会館3階の受付で御確認の上,お集まりく
ださい.
6.
懇親会を 18 時 30 分より銀杏会館 2 階、レストランミネルバで行います。奮って
御参加ください.会費は 4,000 円(学生無料)です。当日受付も行います。
7.
大学の建物内は全面禁煙です。
1
第 60 回 日本生化学会近畿支部例会 プログラム
日時:
平成 25 年 5 月 18 日(土)
会場:
大阪大学 吹田キャンパス
9:00 より
医学部・銀杏会館
大阪府吹田市山田丘2-2
例会ホームページ:http://www.jbs-kinki.jp/2013sibureikai/
【プログラム概要】
モーニングレクチャー(9:00-9:50) (医学部講義棟 A 講堂)
難波 啓一(大阪大学
生命機能研究科)
「生体超分子ナノマシンの構造と機能の解明に向けて」
一般講演(10:00-12:00 ) (医学部講義棟 B-E 講堂)
昼休憩、評議員会(銀杏会館3階 会議室 B:12:10-13:10)
一般講演(13:20-14:50) (医学部講義棟 B-E 講堂)
ポスター発表(15:00-15:50) (銀杏会館3階 大会議室)
シンポジウム(15:50-17:30) (銀杏会館3階 ホール)
『生体分子フローの生化学・細胞生物学』
理学系研究科 / 理化学研究所
中野 明彦(東京大学
ライブセル分子イメージング研
究チーム)
「細胞内膜交通の分子機構-超解像ライブイメージングで見えてきたもの」
菊池 章(大阪大学
医学系研究科)
「上皮細胞における Wnt タンパク質の極性分泌の分子機構」
井垣 達吏(神戸大学
医学研究科)
「細胞間コミュニケーションを介した腫瘍悪性化の遺伝的基盤」
月田 早智子(大阪大学
生命機能研究科 / 医学系研究科)
「細胞間接着を起点とする上皮細胞シートアピカル面の分子構築と機能分化」
特別講演(17:30-18:30) (銀杏会館3階 ホール)
長田 重一(京都大学
医学研究科)
「細胞の死と死細胞の貪食」
懇親会(18:30-20:00)(銀杏会館2階、レストランミネルバ)
2
交通アクセス
【JR 茨木駅・阪急茨木市駅より】
近鉄バスで「阪大病院・阪大本部前」行きに乗車。終点「阪大本部前」で下車、徒歩 5 分。
【阪急 北千里駅より】
東へ徒歩約 30 分。
【北大阪急行 千里中央駅より】
阪急バスで「阪大本部前」行きまたは「茨木美穂ヶ丘」行きに乗車。
終点「阪大本部前」で下車、徒歩 5 分。
【大阪モノレール】
「万博記念公園駅」で「彩都西」行きに乗り換え、「阪大病院前」駅で下車、西へ徒歩 10
分。
会場案内
銀杏会館
大阪モノレール
阪大病院前 駅
医学部講義棟
近鉄・阪急バス
阪大本部前 駅
3
一般講演 : 医学部 講義棟 フロアマップ
1 階ホール:受付
A 講堂:モーニングレクチャー
B 講堂:一般講演
C 講堂:一般講演
D 講堂:一般講演
E 講堂:一般講演
ポスター発表 : 銀杏会館 3 階 フロアマップ
シンポジウム・
特別講演 会場
評議員会 会場
ポスター発表
会場
4
Lats2はp21へのリン酸化を介してア
ポトーシスを制御する
○鈴木宏和1,藪田紀一1,鳥形浩
輔1,岡田宜宏1,野島博1
1阪大・微研
リポタンパク質関連ホスホリパーゼ
A2変異型(V279F)遺伝子によるア
ポトーシス誘導機序の検討
○前田利長,竹内圭介,Pang
XiaoLing,扇田久和
滋賀医大・分子病態生化
モデル生物メダカを用いた小胞体
ストレス応答発動因子ATF6α/β
の生理的役割の解析
○石川時郎1,2, 岡田徹也1,2, 藤原
-石川智子3, 藤堂剛3, 亀井保博4,
重信秀治4, 田中実4, 斉藤太郎5,
吉村淳5, 森下真一5,
豊田敦6, 榊佳之7, 谷口善仁8, 武
田俊一9,2, 森和俊1,2
1京大・院理, 2CREST, 3阪大・院医
4基生研5東大・院新領域
6遺伝研7豊橋技科大8慶大・医9京
大・院医
ダイズEro1とProtein disulfide
isomeraseファミリーによるin vitro
酸化的フォールディング
○松崎 元紀,小石原 克典,三田
竜太,増田 太郎,裏出 令子
京大・院農・農学
HIV-1逆転写酵素とMMLV逆転写
酵素のcDNA合成活性の比較
○小西篤,篠村まゆ,保川清
京大・院農・食生科
ストレス応答型転写因子Nrf1の
活性化メカニズムの解析
○深谷恒介1,谷口浩章1, 夏目
徹2, 小林聡1
1同志社大・生命医・医生命シス
テム,2産業技術総合研究所
転写因子Nrf1の免疫細胞におけ
る生理機能の解析
○森田智子,谷口浩章,小林聡
同志社大・院生命医・遺伝情報
高度好熱菌Ser/Thr protein
kinasesのトランスクリプトーム解
析と機能解析
Neutrophil extracellular traps
(NETs)形成におけるRab27aの機 ◯飯尾洋太1,高畑良雄2,井上
真男1,金光1,福井健二3,上利
能の検討
川上辰三,○森田寛之,加地弘明, 佳弘4,新海暁男4,
増井良治1,4,倉光成紀1,2,4
通山由美
1阪大・院理・生物科学,2阪大・
姫路獨協大・薬・生化
院生命機能,3阪大・院工,4理
研・播磨研
Effects of the conversion of the
高度好熱菌由来の相同組換え修 zinc-binding motif sequence of
微粒子に対する生体応答2
―非晶質ナノシリカによる経皮ア 復系に関わるヌクレアーゼ・ヘリ thermolysin, HEXXH, into that of
dipeptidyl peptidase III, HEXXXH,
カーゼ様タンパク質の解析
レルギー感作促進作用―
○平井敏郎1、吉岡靖雄1、髙橋 ○藤井裕己1,井上真男2,福井 on the activity and stability of
秀樹1、市橋宏一1、西嶌伸郎1、 健二3,4,増井良治2,3,倉光成紀 thermolysin
○Evans Menach, Yasuhiko
1,2,3
吉田徳幸1、
Hashida, Kiyoshi Yasukawa, and
角田慎一2,3、東阪和馬1、堤 康 1阪大・院生命機能,2阪大・院
理・生物,3理研・播磨研,4阪大・ Kuniyo Inouye
央1,2,3
Div. of Food Sci. and Biotechnol.,
1大阪大・院薬・毒性,2医薬基盤 院工
Grad. Sch. of Agric., Kyoto
研・バイオ創薬, 3大阪大・MEIセ
University
10:00~10:15
10:15~10:30
10:30~10:45
1
2
3
講義棟 E講堂
オルガネラ・アポトーシス・生物時計
講義棟 D講堂
酵素・シャペロン・立体構造
講義棟 C講堂
遺伝子発現・修復
講義棟 B講堂
一般講演
モーニングレクチャー (医学部 講義棟 A講堂)
生体応答
セッション
9:00~9:50
一般演題スケジュール
5
6
11:15~11:30
11:30~11:45
7
11:00~11:15
5
6
10:45~11:00
4
発生過程のマウス網膜における
定量PCR解析に最適なリファレン
ス遺伝子の検討
足立博子1、富永洋之1、丸山悠
子2、米田一仁2、丸山和一3、木
下茂2、中野正和1、田代啓1
1京都府立医科大・院医・ゲノム
医科学、2視覚再生外科学、3東
北大・医・眼科学
転写因子Nrf1欠損による神経変
性発症メカニズムの解析
○岡室翔太,谷口浩章,小林聡
同志社大・生命医科・医生命シス
テム
痛覚抑制ペプチドノシスタチンの
結合タンパク質の炎症性疼痛に
おける役割
○岡本和哉1,南敏明2,伊藤誠
二3,芦高恵美子1
1大阪工大・院工・生体医工,2大
阪医大・麻酔,3関西医大・医化
学
Hsp105βによるHsp70の発現誘導
に及ぼすSNRPEの影響
〇中村嘉亜, 齊藤洋平, 並河智
美, 中川喬統, 柿花采那, 岡本育
志郎, 山岸伸行, 中山祐治
京都薬大・生化学
シコンに含まれる抗炎症成分の
解析
○宮脇 詩織1,吉開 会美1,池谷
幸信2,西澤 幹雄1
1立命館大・生命科学・生命医科
医化学,2立命館大・薬学・生薬
学
四塩化炭素誘発性肝線維化に対
する経口性IVA型ホスホリパーゼ
A2阻害剤の抑制効果
○金井志帆1,竹内亜美1,石原
慶一1,秋葉 聡1
1京都薬大・病態生化学分野
転写因子Arid5bはSox9標的遺伝
子プロモーター領域のヒストン脱
微粒子に対する生体応答1
メチル化を介して軟骨細胞分化を
―ナノマテリアルの自然免疫活
促進する
性化機構の解明に向けて―
○波多賢二1,高島利加子,
○吉岡靖雄1、平井敏郎1、角田
Robert H. Whitson2,西村理行1,
慎一2,3、東阪和馬1、堤 康央
米田俊之1,3
1,2,3
1大阪大・院歯・生化学,2シティオ
1大阪大・院薬・毒性,2医薬基盤
ブホープ医学研究所3インディア
研・バイオ創薬, 3大阪大・MEIセ
ナ大・医・血液腫瘍学
リボソームにおけるペプチド結合
形成の反応機構に関する理論的
研究
○福島和明1,岩橋秀夫1,錦見
盛光2
1和歌山県立医大・医・化学,2名
古屋女子大・家政
概日リズム形成における時計タン
パク質KaiCの動態シミュレーション
○大山克明,寺内一姫
立命館大・生命科学
大腸菌におけるシアノバクテリア生
物時計の再構築
安部さゆり, ○松田宏矢, 寺内一姫
立命館大・生命科学
Estrogen receptorの核-細胞質間
移動機構とその生理的意義の解明
○盛山哲嗣1,岡正啓2,米田悦啓3
1阪大・生命機能・細胞内移動学,2
阪大・医学・生化,3基盤研
バイカリンは二価鉄イオンにキ
レートし,溶存酸素への電子の移
動を容易にする
ことにより,フェントン反応を阻害
する
○西崎大祐1,岩橋秀夫1
1和医大・院医・生体分子解析学
MHPCOの開環活性/NADH
oxidase活性はTyr270によって調
節されている
○小林 淳1, 林 秀行2, 八木 年
晴3, 三上 文三1
1京大院・農, 2大阪医大・化学, 3
高知大・農
飢餓誘導型マイトファジーの発見と
その解析
○英山明慶, 岡本(近藤)徳子, 岡本
浩二
阪大・生命機能
Effects of heparin and
cholesterol sulfate on the activity
and stability of human matrix
metalloproteinase 7 (MMP-7)
○Vimbai Samukange, Kiyoshi
Yasukawa, and Kuniyo Inouye
Div. of Food Sci. and Biotechnol.,
Grad. Sch. of Agric., Kyoto
University
一般演題スケジュール
7
13:35~13:50
細胞老化が駆動する非自律的腫
瘍悪性化の遺伝学的解析
○中村麻衣1,2,大澤志津江1,井
垣達吏1,3
1京大・院生命・システム機能学、
2神戸大・院医・遺伝学、3JSTさき
がけ
10
Low-density lipoprotein
receptor-related protein 6 の毛
細胆管における局在と
トランスサイトーシスに関する研
究
○梅田 大介1), 山本 英樹2),
松本 真司2), 菊池 章2)
1)大阪大学医学部医学科6回生
2)大阪大学大学院医学系研究科
分子病態生化学
神経細胞の形態形成におけるエズ
リンの機能解析
○松本洋亮1,位田雅俊2,田村淳
3,月田早智子3,浅野真司1
1立命館大・薬,2岐阜薬大・薬,3阪
大院・生命機能
細胞接着・細胞骨格
講義棟 E講堂
多発性骨髄腫における多剤耐性
獲得因子の検討
○駒居 真紀子1, 椿 正寛1, 嶌
岡 弘高1, 坂本 洸太郎1, 小川
直希1.2, 眞下 恵次1.3,藤原 大
一郎1.3, 山添 譲4, 向井 淳治2,
阪口 勝彦3, 西田 升三1
1近畿大学・薬・薬物治療 2和
泉市立病院薬剤部
3日本赤十字社和歌山医療セン
ター薬剤部 4近畿大学医学部
付属病院薬学部
細胞増殖・分裂・がん
講義棟 D講堂
13:20~13:35
シグナル伝達
講義棟 C講堂
9
創薬
講義棟 B講堂
昼休憩、評議員会 (銀杏会館3階、会議室B:12:10-13:10)
Streptococcus mutans F型H+ATPaseの反応調節部位の解析
○佐々木由香1,前田正知2,岩
本 (木原) 昌子1
1長浜バイオ大・バイオサイエン
ス,2岩手医科大・薬
Anosmin-1によるRGMaの成長円錐
崩壊作用の阻害機構の解明
○竹内祥人1,清水昭男2,岡本沙
矢香2,瀬尾美鈴 1, 2
1京産大・工・生物工,2京産大・総
合生命科学・生命システム
セッション
12:00~13:20
11:45~12:00
SOD1 KOマウスの肝臓における
糖および脂質代謝の検討
○米岡由佳,崎山晴彦,藤原範
子,江口裕伸,吉原大作,鈴木敬
一郎
兵庫医大・生化学
VEGF-A/NRP1シグナルは、ヒト
悪性皮膚癌細胞の増殖を促進す
る
Cyclin G-PP2A B'γの複合体形 基底膜マトリックス誘導性の単一 ○吉田亜佑美1,清水昭男2,3,
成を阻害するペプチド領域の同 細胞レベルでの頂底極性形成に Michael Klagsbrun2,瀬尾美鈴
1,3,
おける
定
1京産大・院工・生物工学,2
○大野将一1,内藤陽子1,薮田 Wnt5aシグナルの役割
○権 英寿, 麓 勝己, 菊池 章 Vascular Biology Program,
紀一1,野島博1
Children's Hospital Boston,
阪大・院医・分子病態生化学
1阪大・微研・分子遺伝
Harvard
Medical School,3京産大・総合生
命・生命システム
8
機械刺激感受性Ca2+流入の修
飾機構の解明
○松山純一1,芦高恵美子
1大阪工大・院工・生体医工
一般演題スケジュール
8
がん細胞の増殖制御における
Sav1の機能解析
○酒井伸也,柴田克志
姫路獨協大・薬
細胞分裂時における微小管依存
的な中心体方向へのエンドソー
ムの流れ
○加藤洋平、高津宏之、中山和
久
京大・院薬・生体情報
Dissecting the novel functions of
Prickle in cell front-rear polarity
and cell migration
○Lim Boon Cheng,松本真司,
菊池章
大阪大学・大学院医科学研究科・
分子病態生化学
C-Man-TSR由来ペプチドによる
TGF-βシグナル制御分子の探
索
○池﨑みどり1,井内陽子1,松井
仁淑1,室井栄治2,渋川幸直3,
和田芳直3,眞鍋史乃4,伊藤幸
成4,井原義人1
1和歌山県医大・医・生化,2宮崎
大・医・皮膚,3大阪府立母子保
健総合医療セ研・代謝,4理研
エンドサイトーシス制御破綻によ
る非自律的な細胞増殖制御機構
の遺伝学的解析
○瀧野恭子1,2、大澤志津江1、井
垣達吏1,3
1京大・院生命・システム機能学、
2神戸大・院医・遺伝学、3JSTさき
がけ
トラスツズマブ耐性乳がんマー
カーの探索を目指したケミカルプ
ロテオミクス研究
○向 洋平1,2,3,Danilo Ritz4,
Dario Neri3,Tim Fugmann4
1基盤研,2阪大・院薬,3ETH
Zurich,4Philochem AG
プロテオミクスによるシスプラチン
感受性マーカー蛋白質:Annexin
A4の同定
○長野一也1、山下琢矢1、井上
雅己1、阿部康弘1、向 洋平1、
東阪和馬1,2、吉岡靖雄1,2,3、
鎌田春彦1,3、堤 康央1,2,3、角
田慎一1,2,3
1医薬基盤研,2阪大院薬,3阪大
MEIセ
TNFR2の機能解明に向けたヒト
TNFR2指向性TNF変異体の創製
とその応用
○井上雅己1、鎌田春彦1, 2, 3、
阿部康弘1, 2、長野一也1, 2、向
洋平1, 2、
堤 康央1, 2, 3、角田慎一1, 2, 3
1医薬基盤研、2阪大院薬、3阪大
MEIセ
13:50~14:05
14:05~14:20
14:20~14:35
14:35~14:50
11
12
13
14
Srcキナーゼ活性亢進による細胞
質分裂阻害
添田修平2,門脇志穂子1,土橋
遼1,齊藤洋平1,山岸伸行1,福
本泰典2,山口直人2,
○中山祐治1
1京都薬大・生化学,2千葉大・院
薬・分子細胞生物
N末端を欠損したLats1キナーゼ
は細胞の異常増殖と染色体不安
定性を引き起こす
○岡本 歩, 向井智美, 藪田紀一,
野島 博
阪大・微研・分子遺伝
筋損傷・再生過程における受容
体型チロシンキナーゼRor1の発
現解析
○土井亮助1,2,遠藤光晴1, 南
康博1
1神戸大・院医・細胞生理学,2日
本学術振興会特別研究員(DC1)
ヒト漿液性卵巣癌由来細胞の抗
がん剤耐性における糖脂質の関
与
○米田志津也、中田有来未、山
口千夏、隅田千晶、岩森正男
(近畿大・理工・生命)
Abnormal acetylation status of αtubulin in fibroblasts derived from
SMA patients
○Dian Kesumapramudya
Nurputra1,Hiroyuki Morita2,
Hisahide Nishio1,Yumi Tohyama 2
1神大・院医・疫学,2姫路獨協・薬・
生化
Epigeneticsと力学的環境因子によ
るEMT制御機構への影響の解析
○大竹規仁、谷口浩章、小林聡
同志社大・生命医科学部・遺伝情
報
腸管上皮細胞のバリア機能を調節
する機能阻害抗体の作製
○森脇一将1,朝日通雄1,月田承
一郎2,古瀬幹夫3
1大阪医大・医・薬理学,2京大・院
医・分子細胞情報学,3神大・院医・
細胞生物学
胆管細胞におけるezrinの役割と肝
内胆汁鬱滞症との関連性の検討
○波多野亮1,秋山香織1,田村淳
2,細木誠之3,丸中良典3,月田早
智子2,浅野真司1,
1立命館大・薬・分子生理,2阪大・
院医生命・分子生体情報, 2京府医
大・院医・細胞生理
一般演題スケジュール
ポスター発表 (銀杏会館3階、大会議室)
シンポジウム (銀杏会館3階、ホール)
特別講演 (銀杏会館3階、ホール)
懇親会 (銀杏会館2階、レストランミネルバ)
15:00~15:50
15:50~17:30
17:30~18:30
18:30~20:00
一般演題スケジュール
9
座長リスト
特別講演
米田
悦啓(医薬基盤研究所)
モーニングレクチャー
菊池 章 (大阪大学大学院
医学系研究科)
シンポジウム
菊池 章
医学系研究科)
(大阪大学大学院
一般講演
(B 講堂)
午前
芦高
吉岡
午後
角田
野島
恵美子(大阪工業大学 工学部)
靖雄 (大阪大学大学院 薬学研究科)
慎一 (医薬基盤研究所)
博
(大阪大学 微生物病研究所)
(C 講堂)
午前
鈴木
倉光
午後
井原
米田
敬一郎(兵庫医科大学)
成紀 (大阪大学大学院 理学研究科)
義人 (和歌山県医科大学)
悦啓 (医薬基盤研究所)
(D 講堂)
午前
三上
保川
文三 (京都大学大学院
清
(京都大学大学院
午後
中山
瀬尾
(E 講堂)
午前
寺内
森
午後
通山
浅野
農学研究科)
農学研究科)
和久 (京都大学大学院 薬学研究科)
美鈴 (京都産業大学大学院 工学研究科)
一姫
和俊
由美
真司
(立命館大学 生命科学部)
(京都大学大学院 理学研究科)
(姫路獨協大学 薬学部)
(立命館大学 薬学部)
10
特別講演要旨
フォスファチジルセリンの暴露とアポトーシス細胞の貪食
長田重一
京都大学
医学研究科
医化学
アポトーシスを起こした細胞は、リン脂質 phosphatidylserine (PS)を細胞表面に暴露、
これをマクロファージなどの貪食細胞が認識・貪食する。アポトーシス細胞が貪食されな
いと細胞はネクローシスに陥り、遊離した細胞成分が免疫系を活性化すると考えられる。
私達はこれまでに、PSを認識して死細胞の貪食を促進する分泌性蛋白質MFG-E8、膜蛋白質
Tim-4を同定した。腹腔に在住しているマクロファージはTim-4,炎症時に腹腔に誘起され
るマクロファージはMFG-E8を発現する。このことから、死細胞の貪食において異なるマク
ロファージがMFG-E8、Tim-4を使い分けていると考えられる。実際、B6マウスでMFG-E8、
Tim-4遺伝子を欠損させるとそれぞれ単独の欠損マウスは自己免疫疾患を発症しないが、
両者を欠損させると発症した。一方、私達はTMEM16Fと呼ばれる8個の膜貫通領域を持つ
タンパク質がCa2+によって活性化されるリン脂質スクランブラーゼ活性を持つことを見い
だした。そして、この分子が血小板におけるPSの暴露、血液凝固に関与していることをこ
の分子を欠損したヒト患者(Scott Syndrome)を同定することにより示した。ついで、
TMEM16F遺伝子のエクソンにflox 配列を導入したマウスを作製し、このマウスの胎仔胸腺
細胞をc-myc, H-rasでtransformすることにより細胞株を樹立した。この細胞にAdeno-CRE
ウイルスを感染、TMEM16F遺伝子を欠質した細胞(TMEM16F-/-)を構築した。TMEM16F-/- 細
胞はCa2+ に応答したPS暴露は完全に喪失していたが、アポトーシス時のPSの暴露は
TMEM16Fflox/flox と同等であった。以上の結果はアポトーシス時のPS暴露と活性化血小板で
のPS暴露は異なる分子によって担われるいることを示している。TMEM16 familyの他のメ
ンバーの活性、組織特異的発現とともに討論する。
References
1. Suzuki, J., Umeda, M., Sims, P. J., and Nagata, S. (2010) Calcium-dependent phospholipid
scrambling by TMEM16F, Nature 468, 834-838
2. Nagata, S., Hanayama, R., and Kawane, K. (2010) Autoimmunity and the Clearance of Dead
Cells, Cell 140, 619-630
3. Segawa, K., Suzuki, J., and Nagata, S. (2011) Constitutive exposure of phosphatidylserine on
viable cells, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 108, 19246-19251
4. Toda, S., Hanayama, R., and Nagata, S. (2012) Two-step engulfment of apoptotic cells. Mol
Cell Biol 32, 118-125
5. Miyanishi, M., Segawa, K., and Nagata, S. (2012) Synergistic effect of Tim4 and MFG-E8
null mutations on the development of autoimmunity. Int Immunol 24, 551-559
6. Imao, T., and Nagata, S. (2013) Apaf-1- and Caspase-8-independent apoptosis. Cell Death
Differ 20, 343-352
7. Suzuki, J., Fujii, T., Imao, T., Ishihara, K., Kuba, H., and Nagata, S. (2013)
Calcium-dependent Phospholipid Scramblase Activity of TMEM16 Family Members. J. Biol.
Chem., in press
11
モーニングレクチャー要旨
生体超分子ナノマシンの構造と機能の解明に向けて
難波 啓一
大阪大学大学院生命機能研究科
あらゆる生命機能はタンパク質や核酸からなる複合体の働きに支えられている。それらは
超分子ナノマシンと呼ばれ、構成原子の精密な立体配置により特定の機能を発現する、ま
さにナノスケールの分子機械である。リボソームのように比較的安定な複合体として働く
ものもあれば、信号伝達や輸送システムのように分子が解離会合を繰り返すものも多い。
それらは細胞という 3 次元空間の場で時々刻々と立体構造や局在場所を変化させ、また相
互作用する相手との結合解離を繰り返して、エネルギー変換、シグナル伝達処理、そして
物質輸送等の動的なネットワークを形成する。よって生命機能の仕組みを解明するには、
超分子や細胞の立体構造と変化を高分解能で直接見ることが必要である。分子の局在や動
きは光学顕微鏡で見ることができるが、分子間相互作用や構造変化を詳細に見るには、よ
り高い空間分解能を持つ電子顕微鏡法、X線回折法、NMR等を用いることが必須である。
X線結晶解析法は生命機能の仕組みに多くの手掛かりを与えるが、構造解析には良質の結
晶を必要とし、単離精製した分子を結晶格子に閉じ込めることで機能に関わる動的構造変
化を見ることができない場合も多い。NMRは分子間相互作用についての詳細な情報を与
えてくれるが、立体構造解析には 50 kDa あたりに分子量の上限がある。機能状態にある超
分子の立体構造やその変化を唯一直視することができるのはクライオ電子顕微鏡法であり、
特に解離会合を繰り返す動的なシステムではその役割は必須である。巨大な超分子である
細菌べん毛や、筋収縮に関わるアクチン・ミオシン複合体等を例として、クライオ電子顕
微鏡による立体像観察技術の最近の進歩とポテンシャルについてお話したい。
13
シンポジウム要旨
生体分子フローの生化学・細胞生物学
細胞内膜交通の分子機構-超解像ライブイメージングで見えてきたもの
中野 明彦
理化学研究所 光量子工学研究領域 ライブセル分子イメージング研究チーム
東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 発生生物学研究室
真核細胞内の単膜系オルガネラは,膜交通(membrane traffic)と呼ばれる輸送過程で結ば
れ,タンパク質や脂質などをダイナミックにやり取りしている。膜交通では,一つ一つの
輸送ステップで,留まるものと輸送されるものが正確に仕分けされ,いろいろな荷物が正
しい目的地に到達するための緻密な分子機構がはたらいている。また分泌経路,リソソー
ム/液胞経路,エンドサイトーシス経路がお互いに交差しながらはたらき,ゴルジ体やエ
ンドソームは,その交差点で正しい交通整理をすることが求められている。
膜交通は,真核生物全てに広く保存されたメカニズムであるが,その経路の複雑さや制
御する分子装置は進化の過程でさまざまに多様化してきている。酵母,動物,植物では,
異なる進化の結果として,それぞれユニークな輸送過程が見出される。
このような膜交通のメカニズムを理解するために,これまで分子細胞生物学のさまざま
な手法を用いて,輸送に関わる分子装置の研究が進められてきたが,真の実体に迫るため
に求められていたのは,これらの現象を生きたままの細胞で観察することであった。
GFP に代表される蛍光タンパク質が,生細胞内を微細に観察するためのきわめて有用な
ツールとなり,またその観察のための蛍光顕微鏡の性能が近年劇的に向上している。私た
ちは,膜交通,とくに直径 100 nm 以下の小さな膜小胞を介したダイナミックな過程を生細
胞で観察するには,従来の顕微鏡技術よりも桁違いに高い時間,空間分解能が必要である
ことをいち早く認識し,超高速度の撮像性能をもつスピニングディスク式共焦点顕微鏡と
超高感度のカメラシステムを組み合わせ,世界に冠たる性能をもつ共焦点顕微鏡を開発し
てきた。この顕微鏡システムでは,そのずば抜けたデータ精度と画像処理によって,回折
限界を大きく超えた 50-60 nm という空間分解能を生細胞 3D で可能にしている。このシス
テムを,SCLIM(Super-resolution Confocal Live Imaging Microscopy)と名付けた。SCLIM に
よって,これまで激しい論争が続いていたゴルジ体内輸送の問題が解決し,また小胞体–ゴ
ルジ体間輸送の新しいメカニズムが提案されるなど,細胞生物学の大きなブレークスルー
が続いている。本講演では,これらの研究の一端を,実際の 3D ムービーをお見せしながら
紹介したい。
15
上皮細胞における Wnt タンパク質の極性分泌の分子機構
〇菊池 章 山本英樹
阪大医学部・分子病態生化学
ショウジョウバエの遺伝学に端を発した Wnt(ウイント)の研究は、発生生物
学や腫瘍医学的アプロ−チによっても解析が進み、多様な研究領域を包括してき
た。Wnt は分泌タンパク質で、線虫やショウジョウバエからヒトに至るまで生物
種を越えて保存されており、動物の発生に必須である。個々の細胞からみれば、
Wnt は細胞の増殖や分化、極性、運動の制御に重要である。また、胚性幹細胞や
組織特異的幹細胞の自己複製や未分化能維持に Wnt が関与する可能性について
も議論されている。このように、Wnt が細胞機能制御に重要な役割を担うことか
ら、そのシグナル伝達機構の異常が癌や骨疾患等の種々のヒト疾患の病態と関
連することも明らかになってきた。
Wnt はヒトやマウスのゲノム上に 19 種類存在している。Wnt が細胞膜受容体
に結合することにより活性化される細胞内シグナル伝達機構には、(1)β-カテ
ニン経路、(2)平面内細胞極性経路 (PCP 経路)、(3)Ca2+経路の 3 種類が存在する。
(2)と(3)はあわせて、β-カテニン非依存性経路とも呼ばれる。19 種類の Wnt の
中で Wnt1 や Wnt3a, Wnt7a はβ-カテニン経路を活性化し、Wnt5a や Wnt11 はβカテニン非依存性経路を活性化する。このような多様な Wnt がどのようにして
選択的にシグナル経路を活性化するかは不明であった。私共は、Wnt3a はリピッ
ドラフト画分に存在する7回膜貫通型受容体 Frizzled と1回膜貫通型受容体
LRP6 に結合すると、カベオリン依存性に受容体がエンドサイトーシスされる結
果、β-カテニンの安定化が誘導され、β-カテニン経路が活性化されることを
見出した。また、Wnt5a は非リピッドラフト画分に存在する Frizzled と1回膜
貫通型受容体 Ror2 に結合すると、クラスリン依存性に受容体のエンドサイトー
シスを誘導し、低分子量 G タンパク質 Rac 等を活性化して、β-カテニン非依存
性経路を活性化した。すなわち、アウトサイドインの Wnt シグナルフローでは
受容体エンドサイトーシスが重要であると考えられた。
一方、極性化した上皮細胞において Wnt が頂上側から分泌されるのか、側底
側から分泌されるのかは不明であった。私共はこの点を明らかにするために、
Wnt11 と Wnt3a を精製してその翻訳後修飾を質量分析法にて同定すると共に、犬
腎上皮 MDCK 細胞(2次元フィルター上で極性化する上皮細胞株)に、Wnt11 と
Wnt3a を発現させその分泌方向を検討した。その結果、Wnt11 と Wnt3a はそれぞ
れ頂上側と側底側に主として分泌され、Wnt11 の頂上側への分泌には Asn40 に付
加された複合型糖鎖とガレクチン 3 が、Wnt3a の側底側への分泌には Wls とクラ
スリン、AP1 が必須であることを見出した。したがって、上皮細胞におけるイン
サイドアウトの Wnt シグナルフローでは、Wnt 毎に異なる分泌経路を規定する仕
組みがあると考えられた。本シンポジウムでは、これらの知見を基に、Wnt のア
ウトサイドインとインサイドアウトのシグナルフローについて議論したい。
16
細胞間コミュニケーションを介した腫瘍悪性化の遺伝的基盤
井垣
達吏
京都大学大学院生命科学研究科/JST さきがけ
【本文】
がんの発生・進展過程において、がん細胞とその周辺細胞の相互作用が重要な役割を
果たすことが近年分かってきた。我々は、細胞間コミュニケーションを介したがん制御
機構を生体レベルで理解するため、ショウジョウバエ上皮をモデルとした腫瘍成長・悪
性化機構の解析系を構築し、特にがん制御における細胞同士の「競合」と「協調」に着
目してその遺伝学的解析を行ってきた。本シンポジウムでは、がん遺伝子 Ras の活性
化とミトコンドリア機能障害によって起こる細胞間の協調を介した腫瘍悪性化につい
て、我々の最近の知見とともに議論したい。
17
タイトジャンクションを起点とする上皮細胞シートアピカル構築
月田 早智子
大阪大学生命機能研究科・医学系研究科
【本文】
多細胞生物における生体システムの構築には、多細胞が集団として得た多様
なパラメーターが重要である。上皮細胞群は生体内でその数が多いばかりでは
なく、多様な機能構築に関わることで注目される。上皮細胞の最大のミッショ
ンは 細胞シートを形成することである。シート形成そのものは、接着分子カド
ヘリンやクローディンの時空間的制御機構によるものと思われるが、その詳細
には課題も多いのが現状である。上皮細胞シート形成を基盤として、タイトジ
ャンクション(TJ)が形成されたとき、上皮細胞間バリアーが確立し、上皮細胞の
PCP (planar cell polarity) の形成を含め上皮細胞シートアピカル表層は高度に
組織化される。小腸吸収上皮細胞シートにおいては、タイトジャンクションク
ローディン 2,15 とアピカル膜栄養吸収トランスポーターの機能共役が示されて
いる。また、多繊毛上皮細胞シートにおいては、規則的な繊毛配置が形成され、
多繊毛の協調運動が獲得される。これらは上皮細胞シートの高次構築やその機
能に大きく寄与すると考えられ、同時に上皮細胞にそった水平方向、垂直方向
の生体フローの形成にも関わるものと思われる。このような例にみられるよう
な、タイトジャンクションを起点とした上皮細胞シートの高次構築原理につい
て、そのシステムの理解を主眼においたごく最近の考え方についての議論を進
めたい。
参考文献
・ Suzuki et al., Nat.Comm. in press.
・ Wada et al., Gastroenterology, 144: 369-380, 2012.
・ Kunimoto et al. Cell, 148: 189-200, 2012
18
一般講演要旨
B-01
転写因子 Nrf1 の免疫細胞における生理機能の解析
○森田智子,谷口浩章,小林聡
同志社大・院生命医・遺伝情報
【目的】転写因子 Nrf1 (nuclear factor (erythroid-derived 2)-like1) は、肝臓特異的な遺伝子欠
損マウスがヒト非アルコール性脂肪性肝炎に酷似した表現型を示すことや、神経特異的な
遺伝子欠損マウスがユビキチン陽性タンパク質を蓄積し神経変性を引き起こすことから、
生体の恒常性維持機構において重要な役割を担っていることが示唆されている 1,2,3)。しか
し遺伝子欠損マウスが重篤な病態を示すにも関わらず、Nrf1 の詳細な生理機能については
不明な点が多い。近年、ヒト単球系細胞株である THP-1 細胞の PMA 刺激によるマクロファー
ジへの分化過程で、Nrf1 mRNA の発現が亢進することが報告された 4)。このことから、免
疫細胞においても Nrf1 は重要な生理機能を有していると仮説を立てた。そこで、本研究で
は免疫細胞であるマクロファージにおける Nrf1 の生理機能を解析した。
【方法】THP-1 細胞を PMA で刺激し、マクロファージ様へ分化させた細胞を用いて、免疫
活性化剤である LPS 刺激に対する遺伝子発現の変化を解析した。一方、マクロファージ特
異的な Nrf1 遺伝子欠損マウスを作製し、採取した骨髄細胞を L929 細胞の培養上清を含む
培地で培養することで Bone Marrow Derived Macrophages (BMDMs) を得た。BMDMs を用い
て、アデノウイルス感染や Toll-like receptors (TLRs) リガンド刺激を加えた際の Nrf1 mRNA
の発現変動を qPCR で解析した。さらに、コントロールとマクロファージ特異的な Nrf1 遺
伝子欠損マウス由来の BMDMs を用いてマイクロアレイ解析を行った。
【結果】THP-1 細胞由来のマクロ
ファージ様細胞を LPS で刺激する
と、Nrf1 mRNA の発現が亢進する
ことを見出した。さらにマウス骨
髄由来の BMDMs において、アデ
ノウイルス感染や TLRs リガンド
刺激により Nrf1 mRNAの発現が増
加することも明らかになった(図
1)。マイクロアレイ解析から細胞
周期や DNA 複製・修復に関連す
る遺伝子発現の制御に Nrf1 が関与
することが示唆された。
図 1. BMDMs において、アデノウイルス感染や TLRs
リガンド刺激により Nrf1 mRNA の発現が増加する
【考察】以上の結果から、Nrf1 はマクロファージの免疫応答に関与することが示唆された。
さらに細胞周期などの遺伝子発現に関与することが示唆されたことから、Nrf1 の機能が損
なわれたマクロファージでは免疫応答が遅延し、感染・炎症の程度や消退に影響すること
が考えられる。
【文献】
1. Xu, Z. et al. (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 102, 4120-4125.
2. Ohtsuji, M. et al. (2008) J. Biol.Chem. 283, 33554-33562.
3. Kobayashi, A. et al. (2011) Genes Cells. 16, 692-703.
4. FANTOM Consortium et al. (2009) Nat. Genet. 41, 553-562.
19
B-02
Neutrophil extracellular traps (NETs)形成における Rab27a の機能の検討
川上辰三,○森田寛之,加地弘明,通山由美
姫路獨協大・薬・生化
【目的】我々は,これまでの研究成果として,低分子量 G タンパク質 Rab27a がマクロファー
ジの食作用の制御に重要な役割を果たす事を報告した 1) 。本研究では,好中球とりわけ
Neutrophil extracellular traps (NETs)形成時における Rab27a の機能を明らかにする。
【方法】好中球における Rab27a の機能を明らかにするため,ヒト白血病細胞株 HL60 に
Rab27a-shRNA を導入し,発現量を抑制した Rab27a ノックダウン型 HL60 を樹立した。これ
ら HL60 細胞を all-trans retinoic acid (ATRA)処理により好中球様に分化し,1)補体を
介した食作用と 2)NETs (Neutrophil extracellular traps) 形成について,過塩素酸を生
成するミエロペルオキシダーゼ (MPO) の動態に着目して比較検討した。
【結果】補体活性化成分 C3bi でオプソナイズされた zymosan は,好中球様に分化した HL60
に効率よく貪食された。フローサイトメーターを用いて,過塩素酸陽性細胞を定量解析した
ところ,control-shRNA を導入した HL60 では,貪食の進展とともに過塩素酸陽性細胞が増加
していたが,Rab27a ノックダウン細胞では増加が認められなかった。蛍光顕微鏡を用いた
解析結果より,Rab27a は MPO 含有顆粒と食胞の融合に必須の機能を果たしている事が示唆
された。さらに,好中球による病原微生物の殺菌に重要な NETs 形成に Rab27a が関与する
かどうかを検討した。インビトロに NETs 形成を誘導するため,ホルボールエステル,PMA で
処理し,核の変化を核膜透過性および非透過性の核酸染色蛍光試薬存在下で追跡した。
control 型 HL60 では,PMA 刺激後 4h で過半数の細胞において NETs が形成されたが,Rab27a
ノックダウン細胞ではほとんど認められなかった。PMA 刺激後の活性酸素を測定する
と,control 型 HL60 では,NETs 形成に先行して過塩素酸の上昇が認められたが Rab27a ノッ
クダウン細胞では上昇が抑制されていた。さらに,C. albicans の貪食により惹起される NETs
形成についても解析した。好中球様に分化した HL60 は, C. albicans を補体依存性に効率よく貪食し,
その後,活性酸素産生依存性に速やかに NETs を形成した。Rab27a ノックダウン細胞では,C.
albicans 貪食後の NETs 形成も抑制されていた。Rab27a が,MPO の制御を介して NETs 形成に
重要な役割を果たしていることが示唆された。
【考察】Rab27a は,好中球による生体防御機構において,食作用における食胞の成熟、およ
びだ NETs 形成おいても寄与していると考えられる。
【文献】
Yokoyama. K, Kaji. H, He. J, Tanaka. C, Hazama. R, Kamigaki. T, Ku. Y, Tohyama. K and
Tohyama. Y. 2011. Rab27a negatively regulates phagocytosis by prolongation of the
actin-coating stage around phagosomes. J Biol Chem. 286: 5375-5382.
20
B-03
微粒子に対する生体応答 2
―非晶質ナノシリカによる経皮アレルギー感作促進作用―
1
1
1
1
1
1
○平井敏郎 、吉岡靖雄 、髙橋秀樹 、市橋宏一 、西嶌伸郎 、吉田徳幸 、
角田慎一 2,3、東阪和馬 1、堤 康央 1,2,3
1
大阪大・院薬・毒性,2 医薬基盤研・バイオ創薬, 3 大阪大・MEI セ
【目的】黄砂や炭鉱粉塵など、環境中微粒子の免疫毒性により、塵肺やアレルギー疾患の
悪化など様々な健康被害が誘発されることは疫学的な事実である。一方でこれら健康被害
は、微粒子の吸入曝露に起因するものと理解されており、もう一つの主要な曝露経路であ
る皮膚を介した影響はほとんど注目されていない。事実、これまで数μm 以上と考えられ
ていた環境中微粒子が皮膚バリアを突破するとは考えにくく、また、塵肺などの例からも
吸入曝露による影響が大きいことは明白であった。このような中、我々は 100 nm 以下の人
工微粒子素材、ナノマテリアル(NM)の一つである非晶質ナノシリカ(nSP)が、①皮膚
バリアを突破し、体内に侵入すること 1)、②その粒子径の減少に依存して IgE の産生上昇
を誘発するなど、アレルギー病態を悪化させるハザードを有すること 2)、を明らかとして
きた。そこで本検討では、nSP の現実的な曝露経路である経皮曝露を想定し、皮膚からの
抗原感作に与える影響を解析した。
【方法】ヤケヒョウダニ抽出抗原(Dp)の連続塗布により、アトピー性皮膚炎様症状(AD)
を発症する NC/Nga マウス(雌性、6 週齢)に、Dp を単独(Dp 群)、あるいは Dp と 30 nm
の nSP(nSP30)の混合物(Dp/nSP30 群)を週 3 回、4 週間塗布した。なお、塗布は耳介の
内側、及び除毛した上背部に行った。アトピー性皮膚炎の重症度を経週的な耳介部の腫れ
により、Dp に対する免疫応答を抗体価を指標として評価した。さらに最終塗布の 7 日後、
Dp を静脈内投与し、体温低下を指標としてアレルギー発症に対する感受性を評価した。
【結果】nSP30/Dp 塗布群では、Dp 単独塗布群よりもわずかに耳介部の腫脹が軽減する傾
向が観察され、少なくとも nSP30 の塗布が Dp による AD 病態の悪化に働かないことが示さ
れた。また Dp 特異的 IgE 量についても、両群で変化は認められなかった。一方、Dp 特異
的 IgG 量は、nSP30/Dp 塗布群において、Dp 単独塗布群と比較して有意に抑制されること
が判明した。抗原特異的 IgGは、
IgEの抗原への結合を競合的に阻害するなどの作用により、
IgE 性のアレルギー応答発症を抑制することが知られている。従って、Dp/nSP30 群では、
Dp 群よりもアレルギー応答が発症しやすくなっている可能性が考えられた。そこで、Dp
に対するアナフィラキシー反応により Dp に対するアレルギー応答への感受性を評価した。
その結果、nSP30/Dp 塗布群において、Dp 単独塗布群ではアナフィラキシーを誘導しない
低用量の Dp 曝露においても、アナフィラキシーが発症することが明らかとなった。以上
の結果から、nSP30 の皮膚塗布は、AD 病態の悪化には働かない一方で、経皮曝露した抗原
に対する IgG 産生を阻害し、IgE 性アレルギー応答発症を促進する可能性が示された。
【考察】NM のみならず、PM2.5 や黄砂などのナノ粒子を含む環境中微粒子曝露によるア
レルギー疾患発症に、皮膚からの微粒子曝露も関わっていることが考えられる。また IgG
と IgE の産生が相関しない例は非常に珍しく、本モデルを用いることで IgG・IgE 産生経路
の解明に貢献するなど、生命科学の進展に寄与できることが想起される。
【文献】 1. Nabeshi H, Yoshikawa T, Matsuyama K, Nakazato Y, Matsuo K, Arimori A, Isobe M,
Tochigi S, Kondoh S, Hirai T, Akase T, Yamashita T, Yamashita K, Yoshida T, Nagano
K, Abe Y, Yoshioka Y, Kamada H, Imazawa T, Itoh N, Nakagawa S, Mayumi T,
Tsunoda S, Tsutsumi Y., (2011) Biomaterials. 32(11):2713-24.
2. Hirai T, Yoshikawa T, Nabeshi H, Yoshida T, Tochigi S, Ichihashi K, Uji M, Akase T,
Nagano K, Abe Y, Kamada H, Itoh N, Tsunoda S, Yoshioka Y, Tsutsumi Y., (2012) Part.
Fibre Toxicol. 2;9:3.
21
B-04
微粒子に対する生体応答 1
―ナノマテリアルの自然免疫活性化機構の解明に向けて―
1
1
○吉岡靖雄 、平井敏郎 、角田慎一 2,3、東阪和馬 1、堤 康央 1,2,3
1
大阪大・院薬・毒性,2 医薬基盤研・バイオ創薬, 3 大阪大・MEI セ
【目的】近年、サブミクロンサイズ(100 nm 以上)の従来素材と比較して、圧倒的に優れ
た有用機能を有するナノマテリアル(少なくとも一次元の大きさが 100 nm 以下であり、ウ
イルスよりも小さい)が続々と開発・実用化されているものの、その安全保障は未だ十分
ではない。特に、生体免疫系がナノマテリアルを異物として認識した際に、過剰な免疫応
答など、機能不全を起こす可能性が多数報告され、ナノマテリアルの革新的機能が人体に
対して未知の免疫撹乱作用を呈する可能性が指摘されつつある。しかし、NLRP3 インフラ
マソームなど、微粒子センサーとも言うべき新たな微粒子認識機構が明らかとされつつあ
る一方で、生体免疫系によるナノマテリアル認識機構については未だ不明な点が多い。本
観点から我々は、様々な素材・粒子径・表面物性を有するナノマテリアルを用いて、自然
免疫、獲得免疫に及ぼす影響を包括的に評価している。例えば、我々はこれまでに、食品
添加物・香粧品基材として既に汎用されている非晶質ナノシリカを用い、直径 70 nm の非
晶質ナノシリカ(nSP70)が、経皮・経粘膜的に吸収され血中へ移行すること、さらには脾
臓・リンパ節中の貪食細胞に多く取り込まれることを明らかとしてきた。そこで本研究で
は、ナノマテリアルの自然免疫活性化機構の解明を目的に、非晶質ナノシリカの粒子特性起炎性との連関を解析した。
【方法・結果・考察】まず、粒子径 30、70、300、1000 nm の非晶質シリカ(nSP30、nSP70、
nSP300、mSP1000)を用いて、マウスマクロファージ細胞である RAW264.7 細胞に対する
起炎性を評価した。その結果、nSP30、nSP70 作用群では、TNF などの炎症性サイトカイン
の産生を強く誘導することが判明した。さらに、nSP30、nSP70 は、p38、JNK、ERK など
MAP キナーゼの活性化を介して炎症性サイトカイン産生を誘導することを明らかとした。
次に、各非晶質シリカをマウス腹腔内へと投与し、腹腔洗浄液中の浸潤細胞数および腹腔
内サイトカイン産生量を解析することで起炎性を評価した。その結果、nSP30、nSP70 投与
群においては、nSP300、mSP1000 投与群と比較して非常に強い細胞浸潤数の増加が認めら
れ、また IL-6、IL-12、MCP-1 などの炎症性サイトカイン・ケモカインの産生も観察された。
次に、表面物性と起炎性との連関解明を目的に、表面修飾が起炎性に与える影響を評価し
た。その結果、nSP70 の粒子表面がアミノ基、カルボキシル基で修飾された nSP70-N、nSP70-C
では、in vivo、in vitro における起炎性が著しく低減されることを見出した。以上の結果か
ら、非晶質ナノシリカは、炎症性サイトカイン・ケモカインを誘導することで強い炎症応
答を惹起するものの、粒子径や表面電荷の最適化により起炎性を制御可能であること、即
ち、安全性を高度に担保できることが示唆された。今後は、ナノマテリアルの粒子特性と
起炎性の連関をより詳細に検討し、微粒子の生体応答のメカニズム解明を図ると共に、安
全なナノマテリアルの開発支援やナノマテリアルの安全性確保に資する基盤情報を収集す
る予定である。生体内にはアミロイドや尿酸結晶といった数多くの生体微粒子が存在し、
様々な疾患を誘発していることを鑑みると、本研究は、生体内外の微粒子の生体影響を考
究する微粒子免疫学など、生命科学に貴重な知見を提供するものであると考えられる。
【文献】Morishige T, Yoshioka Y, Inakura H, Tanabe A, Narimatsu S, Yao X, Monobe Y, Imazawa
T, Tsunoda S, Tsutsumi Y, Mukai Y, Okada N, Nakagawa S. Suppression of nanosilica
particle-induced inflammation by surface modification of the particles. (2012) Arch Toxicol.
86(8):1297-307.
22
B-05
四塩化炭素誘発性肝線維化に対する経口性 IVA 型ホスホリパーゼ A2 阻害剤の抑制効果
○金井志帆 1,竹内亜美1,石原慶一 1,秋葉
1
京都薬大・病態生化学分野
聡1
【目的】IVA 型ホスホリパーゼ A2 (IVA-PLA2) は,脂質性起炎物質の前駆体であるアラキ
ドン酸やリゾリン脂質の細胞膜リン脂質からの遊離・生成反応を担うことから,炎症にお
ける中心的な酵素の1つとして機能している.これまでに我々は,本酵素の欠損マウスに
おいて高脂肪食投与による脂肪肝形成と肝線維化の抑制,および,四塩化炭素 (CCl4) 誘発
性の酸化ストレスを介した肝線維化の抑制を見出しており,肝脂肪蓄積とこれに続く酸化
ストレスによる非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) の発症過程への本酵素の関与を示した 1,2).
本研究では,
IVA-PLA2 特異的阻害剤を投与する系においても酸化ストレスを介した肝障害・
肝線維化の進展が阻止される可能性について検討した.
【方法】野生型雄性マウスに IVA-PLA2 特異的阻害剤である ASB14780(アスビオファーマ
社より供与)または対照としての投与媒体を毎日 1 回経口投与し,阻害剤投与 1 時間後に
CCl4 を週 2 回 6 週間腹腔内へ投与した.その後,血清中の AST および ALT の活性を測定
し肝障害の程度の指標とした。また,肝線維化は組織切片をコラーゲン蓄積の指標となる
シリウスレッド染色を用いて検証した.さらに,肝組織から RNA を抽出し,リアルタイム
PCR 法にて線維化マーカーの mRNA 量を比較検討した.また,CCl4 の代謝酵素である肝ミ
クロソームの CYP2E1 活性は,p-nitrophenol のヒドロキシル化反応を指標に測定した.
【結果】血清 ALT・AST 値は,CCl4 投与により上昇したが,ASB14780 投与により有意に
減少した.また,CCl4 投与で見られた肝組織でのコラーゲン線維の蓄積も阻害剤投与で有
意に抑制された.さらに,mRNA の発現量を調べたところ,CCl4 投与下では肝線維化の要
因となる Col1a2 の発現が亢進しており,それを担う肝星細胞の活性化マーカーα-SMA の
発現とその活性化因子の TGF-β1 と RANTES の発現も増大しており,TGF-β1 を産生する
マクロファージのマーカーとしての CD11b や単球の遊走を担う MCP-1 の発現増大が誘起
されていた.これらのうち,RANTES 以外のマーカー分子の発現は ASB14780 の投与によ
り有意に抑制された.なお,CYP2E1 活性に対する ASB14780 の影響は見られなかったた
め,阻害剤が CCl4 の代謝に影響を及ぼす可能性はないと考える.
【考察】CCl4 誘発性の肝障害および肝線維化が IVA-PLA2 特異的阻害剤の投与により抑制
されたことは,本酵素の欠損マウスでの結果と一致しており,IVA-PLA2 の阻害は,酸化ス
トレスを介した肝線維化過程の抑制につながることが示唆された.したがって,本酵素の
阻害剤は NASH の発症阻止を目指した薬物として有望であると思われる.
【文献】 1. Ii H, Yokoyama N, Yoshida S, Tsutsumi K, Hatakeyama S, Sato T, Ishihara K,
Akiba S. (2009) PLoS One, 4, e8089
2. Ishihara K, Miyazaki A, Nabe T, Fushimi H, Iriyama N, Kanai S, Sato T, Uozumi N,
Shimizu T, Akiba S. (2012) FASEB J., 26, 4111-21
23
B-06
シコンに含まれる抗炎症成分の解析
○宮脇 詩織 1,吉開 会美 1,池谷 幸信 2,西澤 幹雄 1
1
立命館大・生命科学・生命医科 医化学,2 立命館大・薬学・生薬学
【目的】シコン(紫根,Lithospermi Radix)は日本三大色素の一つであり,東アジアの各地
に自生する多年草であるムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zuccarini)の根で
ある.シコンの主な薬効は創傷治癒促進作用であり,外用膏薬として用いられる紫雲膏に
配合されている.シコンの主要成分としてはナフトキノン誘導体である shikonin が知られ
ており,RAW264.7 細胞を用いて抗炎症作用が検討されている 1).しかし,初代培養肝細胞
における shikonin の作用は今まで報告されていない.本研究ではシコンを抽出分画し,各
画分が初代培養肝細胞において炎症メディエーターである一酸化窒素(NO)産生誘導へ与
える影響を検討した.
【方法】シコン(栃本天海堂)を粉砕後,メタノールを加えて1時間加熱後,冷却してろ
過した.この操作を2回繰り返した.これをシコンエキスとし,DIAION HP20 カラム(三
菱化学)にかけた.H2O で溶出後,メタノール 25%,70%,100%で段階的に溶出し,最後
に 100%アセトンで溶出し,それぞれを A~E の 5 画分とした.
逆相 HPLC(Cosmosil AR-II;ナカライテスク)を行なって各画分の紫外部吸収を解析し,
shikonin(生薬試験用標準品,光学異性体比 約1:1;和光純薬工業)の紫外部吸収と比較
した.Wistar ラットから調製した初代培養肝細胞の培地に,シコンの画分または shikonin
と IL-1β(1 nM)を同時に添加して 8 時間培養した.培地中の NO 量を測定し,各画分と
shikonin について NO 産生誘導の 50%阻害濃度(IC50)を求めた.
【結果】還流抽出によって,シコン 1807 g からメタノール抽出エキス 571 g を得た.DIAION
HP20 カラムによる分画の結果,H2O 溶出した A 画分がもっとも多く得られ(86%重量比),
アセトンで溶出した E 画分は 1.4%であった.
逆相 HPLC によってそれぞれの画分の紫外部吸収を比較した結果,E 画分にのみ shikonin
と同じ保持時間にピークが確認できた.さらに,shikonin のピーク付近に shikonin とは異な
るピークが確認できた.一方,A 画分には shikonin と同じ保持時間のピークは確認できな
かった.5つの画分のいずれも IL-1βで誘導された NO 産生を濃度依存的に抑制し,E 画
分が最も低い IC50 値を示した.また,shikonin も NO 産生誘導を濃度依存的に抑制した.
【考察】逆相 HPLC の結果より,もっとも疎水性の画分である E 画分にのみ shikonin が確
認された。そして E 画分は肝細胞における NO 産生誘導を抑制し,shikonin も NO 産生誘導
を抑制した.これらの結果をあわせると,E 画分でみられた活性は shikonin が寄与してい
ると考えられた.また E 画分の逆相 HPLC のパターンでは shikonin のピーク付近にも他の
ピークが存在することから,shikonin の誘導体も含まれていることが予想された.これらの
誘導体が NO 産生誘導を抑制するかどうかは不明である.
もっとも含有量が多い A 画分でも NO 産生誘導抑制活性が確認できたが,A 画分には
shikonin が含まれていなかった.そこで,shikonin 以外の活性分子が A 画分に存在する可能
性を今後検討する予定である.
1. Cheng YW, et al. (2008) J. Ethnopharmacol. 120: 264–271.
24
B-07
痛覚抑制ペプチドノシスタチンの結合タンパク質の炎症性疼痛における役割
○岡本和哉 1,南敏明 2,伊藤誠二 3,芦高恵美子 1
1
大阪工大・院工・生体医工,2 大阪医大・麻酔,3 関西医大・医化学
【目的】ノシスタチンは,オピオイドペプチドのノシセプチン/オーファニン FQ(N/OFQ)
と同一の前駆体タンパク質から産生され,N/OFQ により惹起される触覚刺激でさえも痛覚
となるアロディニアや熱刺激による痛覚過敏反応,炎症性疼痛に対して抑制作用を示す.
我々はノシスタチンに結合するタンパク質としてマウス脊髄膜画分より NIPSNAP1
(4-Nitrophenylphosphatase domain and non-neuronal SNAP25-like protein homolog 1)を同定し
た 1).今回,炎症性疼痛における NIPSNAP1 の発現解析,および NIPSNAP1 遺伝子欠損マ
ウスを用いた薬理学的解析や免疫組織学的解析により,炎症性疼痛反応への NIPSNAP1 の
役割を検討した.
【方法】野生型マウスの 5-6 週雄の後肢にホルマリンとカラゲニンを投与し,後根神経節
と脊髄から mRNA を抽出し,cDNA を合成後,Real-time PCR で NIPSNAP1 の発現量を解析
した.また,NIPSNAP1 のヘテロ交配により得られた NIPSNAP1 欠損マウスと野生型マウ
スの 8-14 週雄を疼痛反応の解析に用いた.炎症性疼痛モデルとして急性炎症の Formalin 試
験と慢性炎症のカラゲニン後肢投与を行った.カラゲニン投与後に熱刺激として Hot-plate
試験と Hargreaves 試験を,機械刺激として von Frey 試験を行った.中枢性感作の指標とし
て脊髄後角における細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化を解析した.
【結果】後根神経節における NIPSNAP1 の発現は Formalin 試験の 60 分間に上昇し,一方
カラゲニン投与後 24-48 時間に低下した.脊髄における NIPSNAP1 の発現は Formalin 試験
では変化が見られなかったが,カラゲニン投与後 6 時間に上昇し,その後 48 時間に低下し
た.未処理の NIPSNAP1 欠損マウスでは野生型と比較して,熱刺激と機械刺激に対する疼
痛反応には有意な差は認められなかった.欠損マウスでは Formalin 試験の第Ⅱ相の疼痛が
増強した.カラゲニン投与では 24 時間で熱刺激に対する疼痛が増強し,3-6 時間では機械
刺激に対する疼痛も増強した.欠損マウスでは炎症性疼痛に伴う脊髄後角の ERK のリン酸
化が亢進していた.
【考察】NIPSNAP1 欠損マウスでは,Formalin 試験の第Ⅱ相とカラゲニンによる炎症性疼
痛の増強が認められたことから,NIPSANP1 は急性および慢性の炎症性疼痛に抑制的に作
用していることが示唆された.急性炎症における NIPSANP1 の遺伝子発現の上昇は疼痛の
抑制に,慢性炎症における遺伝子の低下は疼痛の持続に関与していると考えられる.また,
脊髄後角の ERK のリン酸化が欠損マウスで亢進していたことより,NIPSNAP1 は炎症性疼
痛における中枢性感作に関与していることが明らかになった.
【文献】 1)Okuda-Ashitaka, E. et al. J. Biol. Chem. 287: 10403-10413, 2012
25
B-08
機械刺激感受性 Ca2+流入の修飾機構の解明
○松山純一 1,芦高恵美子
1
大阪工大・院工・生体医工
【目的】体性感覚や内臓感覚情報の受容と伝播を司る一次求心性線維の終末には様々な刺
激に対する受容体が存在している.熱,化学刺激に対するいくつかの受容体分子は同定さ
れているが,機械刺激を受容する分子実態についての詳細は不明である.本研究では,後
根神経節(DRG)細胞における機械刺激に応答する Ca2+流入機構を検討した.また,疼痛発
症や持続に関与している一酸化窒素(NO)や酸性 pH の機械刺激感受性 Ca2+流入への影響を
検討した.
【方法】4 週齢のマウスから DRG を採取し,コラーゲナーゼ処理により得られた細胞をシ
リコン製のストレッチチャンバーに播種した.培養 4-7 日後の DRG 細胞に fura2-AM を負
荷し,伸展刺激(伸展率 5.0%)による細胞内 Ca2+濃度([Ca2+]i)の変化を Ca2+顕微鏡を用いて
測定した.また,NO ドナーとして S-Nitroso-N-acetyl-DL-penicillamine(SNAP)の添加および
細胞外液を pH6.6 にした条件で伸展刺激を加えた.
【結果】伸展刺激(5.0%伸展率)では,刺激後 1-25 分間に約 56%の細胞が応答し,[Ca2+]i 上
昇率は約 1.60 倍であった.また,これらの応答細胞の約 45%は,刺激後 25-45 分間に 2
回目の[Ca2+]i 上昇が見られ,二相性の反応を示した.いずれの[Ca2+]i 上昇も,EGTA 存在
下では完全に抑制された.
TRP 阻害剤である Ruthenium Red(RR)存在下では二相目の[Ca2+]i
上昇のみを抑制した.
次に,20 分間隔を経た 2 回の伸展刺激では,1 回目の[Ca2+]i 上昇率に比べ,2 回目は約 0.94
倍の上昇を示した.2 回目の刺激の直前に SNAP(30μM)を添加すると,2 回目は,1.03 倍
の[Ca2+]i 上昇を示した.また,pH6.6 では約 1.04 倍の[Ca2+]i 上昇を示した.さらに,伸展
刺激による二相性の[Ca2+]i 上昇を示した細胞数は,SNAP(30μM)存在下では約 12%,pH6.6
では約 22%増加していた.
【考察】以上の結果より,DRG 細胞において伸展刺激により[Ca2+]i の上昇が確認されたこ
とから,機械刺激感受性分子の存在が明らかになった.また,その[Ca2+]i 上昇には一相性
に加えて二相性の上昇を示す細胞も存在していた.一相目の[Ca2+]i 上昇には TRP とは異な
る分子が関与していること,二相目には TRP が関与していることが示された.また,NO
や酸性 pH によって,機械刺激感受性[Ca2+]i 上昇率および応答細胞数が有意に増加したこ
とから疼痛発症や持続時での機械刺激の感受性が高くなっていることが示唆される.
26
B-09
Cyclin G-PP2A B'γ の複合体形成を阻害するペプチド領域の同定
○大野将一 1,内藤陽子1,薮田紀一1,野島博1
1
阪大・微研・分子遺伝
【目的】Cyclin G1(CCNG1)は細胞周期チェックポイント機構の中心的な役割を担ってい
る転写因子 p53 の標的遺伝子の一つであり、DNA 損傷に応答して p53 依存的に誘導される。
一方、CCNG1 と高い相同性をもつ Cyclin G2(CCNG2)は、Cyclin Box や C 末端に ELA
(EGF/ErbB-like autophosphorylation) モチーフ(23 アミノ酸)を共通してもっているが、PEST
配列を有している点で異なる。CCNG2 の発現を制御する転写因子は p63 であるという点で
も異なっている。CCNG1 と CCNG2 はタンパク質脱リン酸化酵素 2A の B’サブユニット
(PP2A B’)と結合しそのリクルーター(運搬役)として脱リン酸化サブユニット(PP2A C) を
標的に近接させる役割を担っている。CCNG1 はリクルート先として E3 ユビキチンリガー
ゼである Mdm2 があげられ、その脱リン酸化を促進することにより、p53 の機能を負に制
御している 1)。本研究では CCNG1 及び CCNG2 と PP2A B’複合体の生理的機能の違いや分
子制御メカニズムを解析するツールとしての阻害剤(分子標的薬)あるいは阻害ペプチド
を開発することを目的として、それらの結合部位を決定した。
【方法】CCNG1、CCNG2 及び PP2A B’のγ(実験では最長のγ3 選択スプライシング・ア
イソフォームを使った)の切断型変異体を作製し、細胞内で過剰発現させ、免疫沈降を行っ
た。同様にして人工的に作製した遺伝子組み換え体 CCNG1/ CCNG2 変異体についても in
vitro assay で pull down を行うことで結合部位を解析した。
【結果】CCNG1/ CCNG2 の変異体を用いて免疫沈降した結果、PP2A B’γは CCNG1 及び
CCNG2 共に ELA より C 末端側に6アミノ酸多い ELA +6aa (ELAS)モチーフのみで結合し
ていた。Pull down assay の結果からも同様の結果が得られたため、確かに ELAS モチーフ
のみで直接結合していると結論した。次いで CCNG1 の全長を安定的に発現する細胞株に
ELAS モチーフと PP2A B’γを過剰発現させた細胞で免疫沈降を行なったところ、ELAS モ
チーフによる CCNG1 と PP2A B’γの結合の阻害が見られた。人工合成した ELAS ペプチド
を用いると一層強力に結合が阻害された。一方、CCNG1 および CCNG2 は PP2A B’γの N
末端 1-151 アミノ酸の領域で結合していた。
【考察】CCNG1 および CCNG2 は PP2A B’γと ELAS モチーフで結合しており、CCNG1
と CCNG2 はともに、その ELAS モチーフのみを発現させると全長同士の結合が阻害され
た。CCNG1,CCNG2 は PP2A B’の運搬役として機能していることから、ELAS モチーフを介
して脱リン酸化標的へとリクルートしていると考えられる。CCNG1 は E3 ユビキチンリガ
ーゼである Mdm2 の脱リン酸化を促進し、p53 の分解を負に制御しているので、結合部位
の決定は、その結合を阻害する阻害剤の探索に役立つはずである。特に Mdm2 の過剰発現
によって引き起こされる癌の有効な治療薬の開発を目指した研究に進展させることができ
るかもしれない。
【文献】 1. Okamoto K, Li H, Jensen MR, Zhanf T, Taya Y, Thorgeirsson SS and Prives C.
Cyclin G recruit PP2A to dephosphorylate MDM2. Molecular Cell, vol.9 761-771
(2002)
27
B-10
多発性骨髄腫における多剤耐性獲得因子の検討
○駒居 真紀子 , 椿 正寛1, 嶌岡 弘高1, 坂本 洸太郎1, 小川 直希 1.2, 眞下 恵次 1.3,
藤原 大一郎 1.3, 山添 譲4, 向井 淳治 2, 阪口 勝彦3, 西田 升三 1
1
2
近畿大学・薬・薬物治療
和泉市立病院薬剤部
3
日本赤十字社和歌山医療センター薬剤部 4近畿大学医学部付属病院薬学部
1
【目的】多発性骨髄腫は罹患率は低いものの、生存率は低く極めて予後の悪い疾患である。
化学療法が治療の主体となっているが、長期投与により耐性を獲得する症例が多く、また、
作用機序・構造の異なる薬剤にも耐性を示す多剤耐性が報告されており、この多剤耐性が
多発性骨髄腫の治療において障害となっている。他の報告や他の癌種などでは、薬剤耐性
には multidrug resistance protein1(MDR1)などの薬剤排出トランスポーターが関与していると
示されているが、詳細については不明である。今回、多発性骨髄腫の耐性に注目し、耐性
に関与する因子についての検討を行った。
【方法】ヒト多発性骨髄腫細胞の RPMI8226 細胞への抗がん剤の連続投与により抗がん剤
耐性株を樹立し、それを用いて耐性獲得機序・関連因子の検討を行った。細胞生存率はト
リパンブルーダイ法にて、各種タンパク活性については western blotting にて検出を行った。
【結果】樹立した耐性株は抗がん剤に対し耐性を獲得していることを確認した後、耐性に
関与していると考えられる因子について検討を行った。樹立した耐性株において薬剤排出
トランスポーターである MDR1の過剰発現が認められ、加えて、アポトーシス抑制因子の
survivin の発現上昇が認められた。また、数種類の耐性株でアポトーシス促進因子の Bim の
発現低下も確認された。耐性株で増加している因子については耐性株に阻害剤などを用い
て阻害し抗がん剤を併用すると、細胞生存率の低下が認められた。そして、耐性株で減少
している因子については感受性株の因子の発現を抑え、抗がん剤を併用投与し検討を行っ
たところ、細胞生存率の低下が認められなかったため、これら因子が耐性に関与している
ことが確認された。
【考察】多発性骨髄腫における抗がん剤耐性獲得には MDR1 の発現増加と、新たな因子と
して survivin の発現増加、一部の抗がん剤耐性株を除き Bim の発現低下が関与しているこ
とが確認され、これらの因子を制御することで臨床における抗がん剤多剤耐性の治療に応
用できると考えられた。
28
B-11
ヒト漿液性卵巣癌由来細胞の抗がん剤耐性における糖脂質の関与
○
米田志津也、中田有来未、山口千夏、隅田千晶、岩森正男
(近畿大・理工・生命)
【目的】
ヒト卵巣癌の中で漿液性型は患者数が最も多い卵巣癌である。他の型の卵巣癌に比べ抗が
ん剤治療は効果的であるが、繰り返し投与することにより抗がん剤耐性になり易い。抗が
ん剤耐性となる生化学的仕組みを明らかにするために、漿液性卵巣癌由来 KF28 細胞と 2008
細胞の ABC トランスポーター遺伝子と糖脂質の発現動態をそれぞれの細胞の抗がん剤耐
性細胞と比較した。
【方法】
ヒト漿液性卵巣癌由来細胞:KF28 細胞、パクリタキセル耐性 KF28TX 細胞、シスプラチ
ン耐性 KFr13 細胞は DMEM 培地、2008 細胞、パクリタキセル耐性 Px2 細胞、シスプラチ
ン耐性 C13 細胞は RPMI1640 培地で培養した。脂質成分:それぞれの細胞の脂質成分は TLC
と TLC-免疫染色により定性・定量分析した。RT-PCR:ABC トランスポーターおよび糖脂
質の合成酵素遺伝子の発現は RT-PCR により調べた。抗がん剤感受性試験:パクリタキセ
ルおよびシスプラチン含有培地で培養後、MTT 法により生存細胞の割合を測定した。
【結果と考察】
脂質成分:抗がん剤感受性と耐性細胞の糖脂質組成に特徴的な違いが認められた。両細胞
株に特徴的な変化として、耐性細胞では Gb3Cer とガングリオシドが増加し、シスプラチン
耐性細胞では Gb3Cer は増加しているが、ガングリオシドは欠損していた。ABC-トランス
ポーター遺伝子: MDR1 遺伝子はパクリタキセル耐性細胞にのみ高発現していた。GM3
合成酵素:シスプラチン耐性細胞では遺伝子発現、酵素活性ともに低下していた。抗がん
剤感受性試験:パクリタキセル耐性 KF28TX 細胞およびシスプラチン耐性 KFr13 細胞を
D-PDMP(セラミドグルコース転移酵素阻害剤)と GM3 存在下で 48 時間培養後、パクリ
タキセルとシスプラチン感受性を比較した。KF28TX 細胞は D-PDMP により Gb3Cer と GM3
の含有量が低下し、よりパクリタキセル感受性になった。一方、KFr13 細胞は GM3 添加培
地で培養することにより、細胞内 GM3 含有量は増加し、シスプラチン感受性も増加した。
抗がん剤耐性細胞の耐性化の仕組みは抗がん剤の種類によって異なっている。疎水性抗
がん剤パクリタキセルに対する耐性化には MDR1遺伝子産物である P-糖タンパク質が関わっ
ている事はすでに明らかになっており、
卵巣癌においても耐性化に関わっている事が分かっ
た。同時に、糖脂質の含有量も増加しており、また、D-PDMP で糖脂質の合成を阻害する
とより感受性になることから、
パクリタキセル耐性化には糖脂質も関わっている事が分かっ
た。おそらくラフト構造において糖脂質は P 糖タンパク質を保持し、その活性を促進して
いると思われる。一方、シスプラチン耐性にはガングリオシドのシアル酸が関わっている
と思われる。膜の陰性荷電は膜ミクロドメインにおけるピノサイトーシスを促進すること
が知られているが、ガングリオシドは親水性抗がん剤の細胞内への取り組みに関わってい
ると予想した。【文献】Tanaka K, Iwamori M et al, (2012) J Biochem. 152, 587-594.
29
B-12
トラスツズマブ耐性乳がんマーカーの探索を目指したケミカルプロテオミクス研究
○向 洋平 1,2,3,Danilo Ritz4,Dario Neri3,Tim Fugmann4
1
基盤研,2 阪大・院薬,3ETH Zurich,4Philochem AG
【目的】
細胞膜表面蛋白質は各種分子標的療法の有効なターゲットである一方、全蛋白中の存在
比率は低く、単純なプロテオミクス技術による同定は困難である。この点我々は、細胞膜
表面蛋白質のみを化学的にビオチン修飾し、それらを精製することで、細胞膜表面蛋白質
を高効率に同定しようとする「ケミカルプロテオミクス」を樹立してきた。しかし、培養
細胞系に本技術を適用した場合、多くの細胞膜表面蛋白質の同定が可能であるものの、同
定される全蛋白質の約 70%は望まれない細胞内蛋白質(コンタミネーション)であり、こ
れが微量な細胞膜表面蛋白質の同定の阻害因子となっていた。そこで本研究では、ケミカ
ルプロテオミクスに対する付加的な精製技術、Detergent based fractionation 法(Dbf 法)の
有用性を評価することで、ケミカルプロテオミクスの最適化を行った。また、本方法論の
応用研究として、臨床上問題となっている Her2 陽性乳がんに対する抗体医薬;トラスツズ
マブに耐性を示す乳がん細胞のモデル細胞を構築し、乳がん治療に有用なトラスツズマブ
耐性細胞表面マーカーの探索を行った。
【方法】
〇 Dbf 法とケミカルプロテオミクスの融合アプローチ
Dbf 法は、ジギトニン、Nonidet P-40、デオキシコール
酸ナトリウムと、界面活性剤の強度を段階的に上昇させる
ことで、細胞を、①細胞質画分、②膜画分、③核画分、④
その他の画分、に分離する手法である(左図)。本実験で
は、ヒト乳がん細胞株 SK-BR-3 をビオチン化し、そのま
ま Lysis を行う従来法と、Dbf 法による細胞分画を併用し
たサンプルを調製した。各々のビオチン化蛋白をストレプ
トアビジンビーズで精製し、ビーズ上でのトリプシン消化
を行った後、ペプチド配列を LC-MS により同定した。
〇 トラスツズマブ耐性乳がん細胞の表面マーカーの探索
トラスツズマブと乳がん細胞 SK-BR-3 を 3 か月間共培
養することで、トラスツズマブによる増殖阻害を受けない
耐性細胞;SK-BR-3[TR]を得た。SK-BR-3 細胞(親細胞)
に比べ、SK-BR-3[TR]細胞で、発現変動している膜蛋白質
を前述の方法で同定した。
【結果・考察】
Dbf を併用することで同定される膜蛋白質は 138 種から
283 種へと増加し、ケミカルプロテオミクスにおける Dbf
法の有用性が示された。また、SK-BR-3 と SK-BR-3[TR]
の膜蛋白質を本手法で解析したところ、耐性細胞で 3 倍以
上発現上昇している細胞膜表面蛋白質を 10種類見出した。
これらの膜表面蛋白質は、トラスツズマブ耐性細胞上の新
規の分子標的となり得る可能性が考えられる。
30
B-13
プロテオミクスによるシスプラチン感受性マーカー蛋白質:Annexin A4 の同定
○長野一也 1、山下琢矢 1、井上雅己 1、阿部康弘 1、向 洋平 1、東阪和馬 1,2、吉岡靖雄 1,2,3、
鎌田春彦 1,3、堤 康央 1,2,3、角田慎一 1,2,3
1
医薬基盤研,2 阪大院薬,3 阪大 MEI セ
【目的】悪性中皮腫は、1970 年頃に頻用されたアスベストの曝露を主要因とし、これら曝
露から 40 年ほど遅れて発症することから、罹患者数は年々増加している。また、本疾患の
5 年生存率は 3.7%と、がんの中でも予後不良であり、有用な診断法や治療法の開発が、急
務となっている。現在、悪性中皮腫に対する治療薬としては、シスプラチン(CDDP)が
最も有効な抗がん剤の 1 つとして使用されているものの、抵抗性を示す症例も多く、奏功
率はわずか 20%ほどでしかない。したがって、CDDP に対する感受性を投与前に予測して、
無用な副作用を回避することや、CDDP 抵抗性のメカニズムを解明することが期待されて
いる。そこで本研究では、CDDP 感受性の異なる悪性中皮腫細胞株のプロテオームを比較
解析することで、CDDP 感受性マーカー蛋白質を探索したところ、悪性中皮腫細胞におけ
る CDDP 抵抗性に関わる蛋白質 Annexin A4(ANXA4)を見いだしたので報告する。
【方法】悪性中皮腫細胞株(H28、H2052、H2452、H226、MSTO-221H)の CDDP 感受性
は、各濃度の CDDP を添加した 24 時間後、WST8 法にて評価した。また、プロテオーム解
析は、2 次元ディファレンシャル電気泳動法により見いだされた発現変動スポットをゲル
からピックし、質量分析を用いて候補となる蛋白質を同定した。患者由来の正常・がん組
織での発現は、臨床検体が多数搭載されている組織マイクロアレイ(TMA)を用い、免疫染
色法にて評価した。CDDP 感受性との関連は、siRNA・cDNA のトランスフェクションし、
候補蛋白質をノックダウン・強制発現させた細胞の CDDP 感受性変化によって評価した。
【結果】本検討で使用した悪性中皮腫細胞株の中で、CDDP に対する感受性が最も高かっ
た H2052 細胞と、最も低かった H28 細胞、さらには正常初代中皮細胞間でのプロテオーム
の差異解析を行った。その結果、初代中皮細胞・CDDP 高感受性の H2052 細胞に比べて、
CDDP 低感受性の H28 細胞で、特に発現変動率の大きかった ANXA4 を同定した。また、
TMA を用いた免疫染色解析により、本蛋白質は、細胞株のみならず、患者由来のがん組織
にも発現することを確認した。そこで ANXA4 と CDDP に対する感受性の関連を検証する
ため、まず、各細胞株における ANXA4 の発現量と CDDP 感受性との相関を解析した。そ
の結果、
ANXA4 の発現が高くなるにつれ、CDDP への抵抗性が高くなる傾向が観察された。
さらに、CDDP 抵抗性の H28 細胞での ANXA4 の発現をノックダウン、並びに CDDP 高感
受性の H2052 細胞に ANXA4 を強制発現させたところ、ノックダウン群では CDDP に対す
る感受性が有意に亢進し、反対に、強制発現群ではその感受性が有意に低下した 1)。
【考察】以上の結果は、ANXA4 が、悪性中皮腫細胞の CDDP 抵抗性に関与することを初
めて示すと共に、ANXA4 のノックダウンにより、CDDP に対する感受性を亢進させうるこ
とを示唆している。ANXA4 はこれまでに、パクリタキセル耐性の肺がん細胞株で高発現す
ることなども報告されており 2)、ANXA4 が抗がん剤の感受性制御に関わっている可能性は
強く考えられるものの、抵抗性のメカニズムや、抵抗性を示すがん種・抗がん剤の種類な
どはほとんど明らかにされていない。したがって今後は、悪性中皮腫患者の CDDP 抵抗性
と ANXA4 の発現量との相関を解析すると共に、上記の課題を明らかにすることで、創薬
や Cancer Biology の解明に貢献していく予定である。
【文献】 1. Yamashita T., Nagano K., Kanasaki S., Maeda Y., Furuya T., Inoue M., Nabeshi H.,
Yoshikawa T., Yoshioka Y., Itoh N., Abe Y., Kamada H., Tsutsumi Y., Tsunoda S.
(2012) Biochem. Biophys. Res. Commun., 421(1):140-144.
2. Han EK., Tahir SK., Cherian SP., Collins N., Ng SC. (2000) Br. J. Cancer,
269:5297-5302.
31
B-14
TNFR2 の機能解明に向けたヒト TNFR2 指向性 TNF 変異体の創製とその応用
○井上雅己 1、鎌田春彦 1, 2, 3、阿部康弘 1, 2、長野一也 1, 2、向 洋平 1, 2、
堤 康央 1, 2, 3、角田慎一 1, 2, 3
1
医薬基盤研、2 阪大院薬、3 阪大 MEI セ
【目的】腫瘍壊死因子(TNF)は、2 種類のレセプター(TNFR1/TNFR2)を介して細胞内
へシグナルを伝えることが知られている。両レセプターのシグナルは、互いに連関してい
るが、各レセプターが相反する生理作用を示す場合があるなど、複雑な仕組みを有してい
る。とりわけ TNFR2 は、リンパ球などの免疫細胞に豊富に発現し、免疫の制御分子の一つ
としての役割が示唆されているが、シグナル伝達機構については未知な部分が数多く残さ
れており、より詳細な機能を解明する必要がある。そこで我々は、TNFR2 のシグナル伝達
機構の解析を目的に、ファージ表面提示法を用いてヒト TNFR2(hTNFR2)指向性 TNF 変
異体を創出し、TNFR2 に結合するシグナル関連分子の探索を試みた。
【方法】我々が独自に構築してきたファージ表面提示法を利用したアミノ酸改変 TNFファー
ジライブラリの中から、結合力に基づいたセレクション(パンニング)により hTNFR2 指
向性を有する 8 種類の TNF 構造変異体を選出した。これらの両レセプターに対する結合力
および生物活性を SPR 法等を用いて評価し、hTNFR2 指向性に最も優れた TNF 変異体を創
出した。さらに、hTNFR2 を強制発現させた HEK293T 細胞に FLAG タグ融合 TNF 変異体
を作用させた後、抗 FLAG 抗体による免疫沈降により TNF/TNFR2 シグナル複合体を回収
した。この複合体に含まれるたん白質群を質量分析法で解析し、TNFR2 に特異的に結合す
る分子を同定した。
【結果】hTNFR2 指向性に優れた TNF 変異体として、R2-7 の創製に成功した 1)。R2-7 は
TNFR1 へほとんど結合性を示さない一方、TNFR2 に対しては TNF と同等以上の結合力を
保持していた。さらに、FLAG タグ融合 R2-7 を用いた免疫沈降を行い、TNFR2 の細胞内ド
メインに特異的に結合する分子を複数種類同定した。これら分子の中で、エキソペプチダー
ゼの一種である X-prolyl aminopeptidase 3(XPNPEP3)に着目し、TNFR2 シグナルとの関連
性について解析を試みた。XPNPEP3 には、細胞内局在の異なる 2 つのアイソフォーム
(Cytosolic 及び Mitochondrial XPNPEP3)が存在することが知られており、免疫沈降等の実
験結果から、TNF 刺激に伴う TNFR2 のアダプター分子として Mitochondrial XPNPEP3 が有
力であることが明らかとなった。
【考察】本研究で得られた hTNFR2 指向性 TNF 変異体は、レセプター機能やシグナル伝達
機構の解析に有効なツールとなることが明らかとなった。現在 XPNPEP3 を含む同定たん
白質が、
新規アダプター分子として TNFR2 シグナル伝達に及ぼす影響を精査している。
TNFR2
の機能解析の進展は、シグナル伝達制御による免疫の制御機構の解明に繋がる可能性を秘
めており、将来的に、疾患や治療目的に応じた新規自己免疫疾患治療薬の開発に貢献でき
ることを期待している。
【文献】 1. Abe, Y., Yoshikawa, T., Inoue, M., Nomura, T., Furuya, T., Yamashita, T., Nagano, K.,
Nabeshi, H., Yoshioka, Y., Mukai, Y., Nakagawa, S., Kamada, H., Tsutsumi, Y.,
Tsunoda, S. (2011) Biomaterials. 32, 5498-5504
32
C-01
ストレス応答型転写因子 Nrf1 の活性化メカニズムの解析
○深谷恒介 1,谷口浩章 1, 夏目徹 2, 小林聡 1
1
同志社大・生命医・医生命システム,2 産業技術総合研究所
【目的】ストレス応答型の転写因子 Nrf1 (Nuclear factor (erythroid-derived 2)-related factor1)
は、全身性ノックアウトマウスが貧血による胎生致死、肝臓特異的なノックアウトマウス
が脂肪肝、中枢神経特異的なノックアウトマウスが神経変性の病態を呈することから、生
体内において重要な役割を担っていると考えられる 1,2)。したがって Nrf1 の制御機構を解明
することは、上記の病態の発症機構の解明につながる可能性もあることから非常に重要で
ある。通常 Nrf1 は、ERAD のユビキチン結合酵素 Hrd1 あるいはβ-TrCP によりユビキチン
化されて、プロテアソームによる分解抑制を受けている 3)。しかし、この分解抑制からの
Nrf1 活性化メカニズムについては全く不明である。そこで本研究では Nrf1 の活性化メカニ
ズム解明のために、まず Nrf1 結合因子の網羅的単離と機能解析を行った。
【方法】Nrf1 結合因子の網羅的な解析のために、HEK293 細胞(ヒト胎児腎由来) に Nrf1-Flag
タンパク質を過剰発現し抗 Flag 抗体による免疫沈降を行った後、LC-MS/MS によるプロテ
オーム解析を行った。また USP15 による Nrf1 の安定性に対する影響を、USP15 と Nrf1 発
現プラスミドを HEK293T 細胞に導入して、cycloheximide chase 実験により解析した。USP15
と Nrf1 の細胞内共局在を免疫蛍光染色で観察した。さらに Hela 細胞を用いて USP15 と Nrf1
による転写活性化能をルシフェラーゼレポーター解析で測定した。
【結果】LC-MS/MS 解析によって約 60 個の Nrf1 結合因子を同定した。これら結合因子の
中で、Nrf1 を安定化することが予想される脱ユビキチン化酵素 Ubiquitin specific peptidase 15
(USP15)に着目し解析を行った。まず USP15 による Nrf1 タンパク質安定化を chase 実験に
よって検討した。その結果、USP15 存在下で Nrf1 の安定化が認められた。免疫染色法によ
り Nrf1、USP15 は単独でそれぞれ核ないし細胞質に局在していたが、共発現させると USP15
が細胞質から核内に移行した。さらに USP15 が Nrf1 による転写活性化能を亢進することを
レポーター解析で明らかにした。
【考察】本研究では、Nrf1 活性化機構として USP15 による脱ユビキチン化機構が関与する
可能性を見出した。現在、その詳細な分子メカニズムを解析中であり、ユビキチン化・脱
ユビキチン化の拮抗作用による新たなストレス応答機構の全容を解明するつもりである。
【文献】 1. Chan JY. et al. (1998) EMBO J. 17:1779-1787.
2. Xu Z. et al. (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 102:4120-4125.
3. Tsuchiya Y. et al. (2011) Mol. Cell. Biol. 31, 4500-4512.
ub
ub
ub
USP15
脱ユビキチン化
Nrf1
Nrf1
分解
安定化
ARE
ARE
図.USP15 による脱ユビキチン化を介した Nrf1 活性化モデル
33
C-02
◯
高度好熱菌 Ser/Thr protein kinases のトランスクリプトーム解析と機能解析
飯尾洋太 1,高畑良雄 2,井上真男 1,金光 1,福井健二 3,上利佳弘 4,新海暁男 4,
増井良治 1,4,倉光成紀 1,2,4
1
阪大・院理・生物科学,2 阪大・院生命機能,3 阪大・院工,4 理研・播磨研
【目的】様々な細胞機能において重要な役割を果たしている Ser, Thr, Tyr のリン酸化は,真
核生物に限られた現象だと長い間考えられてきた.しかし,近年真核生物と同様に原核生
物にもこれらのリン酸化修飾が存在することが明らかになっている。我々は細胞内全体で
の Ser, Thr, Tyr のリン酸化を調べるために、遺伝子数が少なく,よりシンプルなシステムを
持つ高度好熱菌 Thermus thermophilus HB8 をモデル生物として、原核生物における蛋白質リ
ン酸化の解析を進めている(図1).すでに nanoLC-MS/MS 分析によって,T. thermophilus に
おいて 48 種類のリン酸化蛋白質を同定した 1) .しかし,protein kinase とその基質となる蛋
白質の組み合わせや,リン酸化によってどのような構造的あるいは機能的な変化を受ける
か等もまだ不明である.そこで,本研究では T. thermophilusのもつ protein kinase および protein
phosphatase がそれぞれどのような細胞機能に関与しているか推定するために、それらの遺
伝子欠損株でのトランスクリプトーム解析を行った.また,同定したリン酸化蛋白質のな
かには,真核生物型の Ser/Thr protein kinase の一つである TTHA0138 と機能未知蛋白質
TTHA0139 が含まれていた.両蛋白質の遺伝子は隣
接していることから,既知の例と同様,TTHA0139
が TTHA0138 の基質となる可能性が考えられた.ま
た,アミノ酸配列解析からは TTHA0139 が DNA 結
合蛋白質である可能性が示唆された.そこで,両蛋
白質について生化学的・遺伝学的解析を行った.
【方法】T. thermophilusが持つ protein kinaseと protein 図 1. 高度好熱菌の蛋白質リン酸化システムの概要
phosphatase の遺伝子欠損株を作製し,対数増殖期および定常期の細胞から抽出した mRNA
について,DNA マイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析を行い,野生株の結果
と比較した.次に,大腸菌で発現させた TTHA0138 と TTHA0139 の精製標品を用いて in vitro
での種々の活性を測定した.さらに,ゲルシフト法を用いて TTHA0139 の DNA 結合能,
リン酸化による TTHA0139 の DNA 結合能への影響を検証した.
【結果】各 protein kinase や protein phosphatase の欠損株では多くの遺伝子の mRNA 量の変
動しており、変動した遺伝子は異なっていた。なかでも protein kinase TTHA0138 の欠損株
は、対数増殖期において野生株と比較すると、478 個もの遺伝子で転写レベルの変化が見
られた。それらの変動した遺伝子群は、野生株の対数増殖期から定常期での変化で変動し
た遺伝子群と類似していた。一方,TTHA0139 は二本鎖 DNA に結合し,TTHA0138 による
リン酸化に伴って DNA 結合能が低下した。さらに,ttha0139 欠損株を作製して同様の解析
を行ったところ,ttha0138 欠損株と部分的に増減方向が逆の転写レベルの変動がみられた.
【考察】各遺伝子欠損株のトランスクリプトーム解析の結果から,バクテリアにおいても
protein kinase や protein phosphatase が細胞内で重要な役割を持ち,さらには細胞内での機能
が異なっている可能性が示唆された.また,欠損株での転写パターンの変化や表現型から
protein kinase TTHA0138 は細胞増殖の制御に関わっている可能性が考えられた.さらに,in
vitro での実験結果から,TTHA0138 は TTHA0139 をリン酸化することで,その DNA 結合
能を制御すると考えられる.TTHA0139 が持つ DNA 結合能の生物学的な意義はまだ不明だ
が,リン酸化を介したシグナル伝達系の一端を担っている可能性が考えられる.
【文献】1. Takahata, Y., Inoue, M., Kim, K., Iio, Y., Miyamoto M., Masui, R., Ishihama, Y., and
Kuramitsu, S. (2012) Proteomics 12,1414–1430
34
C-03
高度好熱菌由来の相同組換え修復系に関わるヌクレアーゼ・ヘリカーゼ様タンパク質の解析
藤井裕己 1,井上真男 2,福井健二 3,4,増井良治 2,3,倉光成紀 1,2,3
○
1
阪大・院生命機能,2 阪大・院理・生物,3 理研・播磨研,4 阪大・院工
【目的】DNA 二重鎖切断 (DSB) は生物にとって重篤な傷害である。あらゆる生物が DSB を修復
する手段を備えており、相同組換え修復系もその一つである。相同組換えは,ヌクレアーゼが DSB
部位に 3' 突出末端を形成することで開始される。バクテリアでは 3' 突出末端形成 (end resection
(ER)) に関わる酵素として,RecJ ヌクレアーゼや RecQ ヘリカーゼ,またヌクレアーゼ・ヘリカー
ゼ複合体である RecBCD や AddAB が知られている。高度好熱菌 Thermus thermophilus HB8 (TtHB8)
には RecBCD はなく、RecJ のみが 3' 突出末端形成を担うと考えられてきた。しかし,そのゲノム
には、AddAB のホモログやアーキアで高度に保存されているヌクレアーゼ NurA およびヘリカーゼ
HerA のホモログも存在することが分かった。AddAB の解析は主にグラム陽性菌 Bacillus subtilis で,
NurA と HerA の解析は主にアーキアで進められている。しかし、バクテリアにおける NurA, HerA
の細胞内機能および分子機能は未だ明確になっておらず、また NurA/HerA と AddAB が共存する相
同組換え系におけるこれらの酵素群の機能的関係は全く不明である。そこで、本研究では TtHB8
を用いて遺伝学的解析を行うと共に、分子機能の解析を試みた。
【方法】遺伝学的な解析を行うため、NurA, HerA, AddA をコードする遺伝子 ttha0521, ttha0522,
ttha0998 の破壊株 (ΔnurA, ΔherA, ΔaddA) および nurA, herA の二重破壊株 (ΔnurAΔherA) を作製した。
各破壊株について,OD660 での増殖曲線を作製し、コロニーカウントにより,UV (254 nm, 312 nm) に
対する感受性、自然突然変異率、形質転換効率を測定した。これらの測定にはコントロールとして
RecJ 破壊株 (ΔrecJ) を使用した。次に,NurA, HerA の大量発現と精製を行い、ゲルろ過を用いた
NurA, HerA のオリゴマー形成能、および NurA のヌクレアーゼ活性を解析した。
【結果】各遺伝子の単独破壊株および nurA, herA の二重破壊株の作製に成功した。ΔnurA, ΔherA は
野生株と同様に増殖し、自然突然変異率に変化は無かったが,形質転換効率の低下が見られた。ま
た,両波長の UV に対しては感受性の低下 (UV 耐性の上昇) が見られた。UV 耐性の上昇は特に
ΔherA で顕著であり,ΔnurAΔherA もΔherA と同程度の感受性を示した。ΔaddA は対数増殖期から定
常期にかけて OD660 が大きく低下し,自然突然変異率は著しく上昇したが、UV 感受性や形質転換
効率にはそれほど大きな変化は見られなかった。大腸菌 Rosetta2(DE3) で大量発現させた NurA,
HerA の精製に成功した。NurA は 2 量体、HerA は 5~6 量体をとり、また NurA, HerA 間で相互作用
を示す可能性が示唆された。NurA は二本鎖 DNA に対してエンドヌクレアーゼ活性を示した。
【考察】ΔnurA, ΔherA, ΔnurAΔherA において、形質転換効率を指標とした相同組換え効率が低下し、
自然突然変異率が変化しなかった点から、NurA, HerA は TtHB8 の相同組換え修復に関与する可能
性が考えられる。しかし、相同組換え効率の別の指標である UV 感受性では,同破壊株が UV 耐性
を獲得するという矛盾した結果が得られた。現在、ΔnurA, ΔherA および ΔnurAΔherA に herA を相補
した株を用いて、UV 耐性の上昇が HerA に直接依存するか否かの検証を試みている。一方,ΔaddA
の自然突然変異率はΔrecJ の約 5 倍にもなり、また UV 耐性も上昇した。TtHB8 が損傷乗りこえ型
DNA ポリメラーゼを持たない点を考慮すると,AddA は相同組換え修復系ではなくミスマッチ修復
系や anti-recombination に関わる可能性が挙げられる。以上から、TtHB8 の相同組換え修復系におい
て, NurA, HerA の寄与は AddA(B) のそれに比べて大きいと考えられる。
35
C-04
転写因子 Arid5b は Sox9 標的遺伝子プロモーター領域のヒストン脱メチル化を介して
軟骨細胞分化を促進する
○波多賢二 1,高島利加子,Robert H. Whitson2,西村理行 1,米田俊之 1,3
1
大阪大・院歯・生化学,2 シティオブホープ医学研究所 3 インディアナ大・医・血液腫瘍学
【目的】
骨格の大部分は内軟骨性骨化と呼ばれる軟骨細胞が主体の骨化様式により形成される。
転写因子 Sox9(SRY-box containing gene 9)は、様々な転写共役因子と転写複合体を構
築することにより軟骨細胞特異的遺伝子の発現を促進し、軟骨細胞分化において必須的役
割を担う。近年、これら転写複合体はクロマチン構造の変化やヒストン修飾などエピジェ
ネティックな遺伝子発現調節に関与していることが明らかになりつつある。本研究では軟
骨細胞分化過程におけるエピゲノムの解明を目的に、Sox9 転写共役因子の同定とその機能
的役割の解明を行った。
【方法】
超高速シークエンサーSolexa を用いて、軟骨細胞分化能の高い C3H10T1/2 細胞と分化
能の低い NIH-3T3 細胞の遺伝子発現解析を行った。Ari5b 遺伝子欠損マウスは Whitson 博
士より供与を受け、生後 0 日齢マウス肋軟骨より初代培養軟骨細胞を回収し解析を行った。
【結果】
遺伝子プロファイリングの結果、C3H10T1/2 細胞に高発現する転写因子として Arid ファ
ミリーに属する Arid5b (AT rich interactive domain 5b) を見出した。免疫組織染色により
Arid5b はマウス成長板の増殖軟骨層に強く発現していることが示された。C3H10T1/2 細胞
に Arid5b を過剰発現すると、Sox9 の転写活性と Col2a1 mRNA の発現が顕著に促進され、
Arid5b と Sox9 の物理的結合が Pull-down アッセイにより認められた。興味深いことに Arid5b
はヒストン脱メチル化酵素 Phf2 と結合し、Phf2 を Col2a1 遺伝子プロモーター上に誘導す
ることにより H3K9me2 の脱メチル化を促進することが、ChIP アッセイにより明らかとな
った。Phf2 遺伝子のノックダウンは Sox9 誘導性の軟骨細胞分化を抑制した。
Arid5b 遺伝子欠損マウス(Arid5bKO) は内軟骨性骨化の遅延による成長障害が認められ、
Sox9 誘導性の軟骨細胞分化能も顕著に低下していた。さらに、Arid5bKO マウス由来の初
代培養軟骨細胞では、野生型に比較して Col2a1 遺伝子プロモーター領域への Phf2 の誘導
が阻害されていること、また H3K9 ジメチル化が亢進していることが明らかとなった。
【考察】
転写因子 Arid5b は Phf2 を Col2a1 遺伝子プロモーター上に誘導しヒストン脱メチル化を
促進することにより、Sox9 標的遺伝子の転写を活性化し、軟骨細胞分化を制御することが
明らかとなった。Arid5b は骨格形成をエピジェネティックに制御する重要な因子の一つで
あると推察される。
36
C-05
Hsp105βによる Hsp70 の発現誘導に及ぼす SNRPE の影響
〇中村嘉亜, 齊藤洋平, 並河智美, 中川喬統, 柿花采那, 岡本育志郎, 山岸伸行, 中山祐治
京都薬大・生化学
【目的】Hsp105βは 42°C 加温時において特異的に発現するストレスタンパク質であり、核
に局在し 1)、Hsp70 を発現誘導する 2)。これまでに我々は、Hsp105βによる Hsp70 の誘導に
は hsp70 遺伝子のプロモーター領域 (-218 ~ -195) が必須であることを明らかにしている 3, 4)。
そこで今回、酵母 one-hybrid 法により hsp70 プロモーター結合タンパク質をスクリーニン
グし、得られたタンパク質について Hsp105βによる Hsp70 の発現誘導に及ぼす影響を検討
した。
【方法・結果】hsp70 プロモーター結合タンパク質のスクリーニングは hsp70 プロモーター
領域 (-218 ~ -185) を連結した bait プラスミド (pHIS70) を導入した酵母株と HeLa 細胞 cDNA
ライブラリーを用いて行った。5 × 105 個の形質転換体についてヒスチジン欠損培地での選
択を行った結果、31 個の陽性コロニーを得た。続いて、これらのコロニーからライブラリ
ープラスミドを回収し、酵母 one-hybrid 法により hsp70 プロモーターとの結合性を確認し
た。その際、hsp70 プロモーターに特異的に結合することを確認するために hsp70 プロモー
ター領域 (-218 ~ -185) 内の 5 つの塩基を変異させた bait プラスミド (pHIS70m) を用いた。
その結果、2 つのライブラリープラスミドは pHIS70 と導入した場合はヒスチジン欠損培地
で生育し、pHIS70m と導入した場合には生育が認められず、これらは酵母内で hsp70 のプ
ロモーター領域 (-218 ~ -185) に特異的に結合すると考えられた。
次に、これらライブラリープラスミドの塩基配列を調べた結果、それぞれスプライシン
グ調節因子 Small nuclear ribonucleo protein E (SNRPE) の全配列と機能未知タンパク質である
C20orf111 の N 末端 8 アミノ酸を欠いた配列をコードしていることが予想された。そこで、
Flag タグ融合 SNRPE 発現プラスミドを作製し、hsp70 プロモーター領域 (-2616 ~ +1) の下
流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したプラスミド (pGL70(-2616)) を用いてレポータージー
ンアッセイにより SNRPE が hsp70 プロモーター活性に及ぼす影響を検討した。その結果、
SNRPE は単独で hsp70 プロモーターを活性化しないものの、Hsp105βによる hsp70 プロモー
ターの活性化を有意に増強した。また、hsp70 プロモーター領域 (-218 ~ +1) を連結したレ
ポータープラスミド (pGL70(-218)) では Hsp105βにより hsp70 プロモーター活性が増加し、
SNRPE の共導入によりさらに増加した。一方、hsp70 プロモーター領域 (-218 ~ -185) 内の 5
つの塩基を変異させたレポータープラスミド (pGL70(-218)m) ではこれらの顕著な活性化は
認められなかった。
【考察】SNRPE は、hsp70 プロモーター領域 (-218 ~ -185) を介した Hsp105βによる hsp70
プロモーターの活性化を増強することが明らかになった。SNRPE は単独で hsp70 プロモー
ターを活性化しないことから、熱ショック時において Hsp105βと相互作用し Hsp70 の発現
誘導を促進することが示唆された。
【文献】 1.
2.
3.
4.
Saito, Y., Yamagishi, N., Hatayama, T. (2007) Exp. Cell Res., 313, 3707-3717
Saito, Y., Yamagishi, N., Hatayama, T. (2009) J. Biochem., 145, 185-191
Yamagishi, N., Fujii, H., Saito, Y., Hatayama, T. (2009) FEBS J., 276, 5870-5880
Hatayama, T., Yamagishi, N., Saito, Y. (2012) Seikagaku., 84, 249-260
37
C-06
発生過程のマウス網膜における定量 PCR 解析に最適なリファレンス遺伝子の検討
足立博子 1、富永洋之 1、丸山悠子 2、米田一仁 2、丸山和一 3、木下茂 2、中野正和 1、田代啓 1
1
京都府立医科大・院医・ゲノム医科学、2 視覚再生外科学、3 東北大・医・眼科学
【目的】 出生直後から血管の構築が始まるマウスの網膜では、出生前後に生理的血管新生に関
連する遺伝子が顕著に発現変動していると推測され、生理的血管新生を研究する上で最適な実験
材料である。
一般的に定量 PCR 解析においては、目的とする実験系で発現量が変動しないことが想定される
ハウスキーピング遺伝子をリファレンス遺伝子として補正に用いるが、発生過程の組織によって
はこれらの遺伝子の発現が変動することも報告されている。
そこで本研究では、出生前後のマウス網膜を用いた血管新生関連遺伝子の定量 PCR 解析におい
て最適なリファレンス遺伝子を選択するために、リファレンス遺伝子として繁用されている Actb
や Gapdh に加えて、Tbp、Hprt、Rn18s、Sdha、Rpl13a、Rplp0 の計 8 種類の遺伝子の有用性を検討
した。
【方法】 全ての動物実験は本学動物実験委員会の承認の下、動物実験倫理規定に従って行った。
妊娠 18 日のマウス(C57BL/6)の胎仔および出生 0 日齢(P0)から 4 日齢(P4)までの新生仔か
ら網膜を経時的に採取した。摘出した網膜は直ちに RNA STAT-60(TEL-TEST)を用いて total RNA
を抽出し DNase I(invitrogen)処理した。次に、500 ng の total RNA から SuperScriptIII(Invitrogen)
を用いて cDNA を合成した。定量 PCR は THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(東洋紡)のプロトコ
ールに従って、Mx3005P QPCR System(STRATAGENE)を用いて行った。Ct 値は MxPro
(STRATAGENE)を用いて求め、相対定量による解析を行った。
【結果】 経時的に採取した出生前後のマウス 1 匹(2 眼)分の網膜からは平均して 3.7 � 1.6 �g
の total RNA が抽出された。逆転写には A260/A280 ≥ 1.8 を満たす total RNA を用いた。定量 PCR
解析結果から、各採取ポイントにおけるリファレンス遺伝子の発現量のばらつきを検討するため
に標準偏差を算出したところ、最小値は Hprt で 0.29、最大値は Rplp0 で 1.46、Actb は 0.35 であっ
た。
【考察】 定量 PCR は高感度な実験手法であり、使用するリファレンス遺伝子によっては、補正
後の目的遺伝子の発現量を大きく変えてしまう危険性がある。本研究で検討した 8 種類の遺伝子
の中では、発生過程のマウス網膜において最も発現量が一定であったのは Hprt であることが示さ
れた。今後は、Hprt をリファレンス遺伝子として用い、血管新生に関連する遺伝子発現解析を行
っていきたいと考えている。
【文献】
1.
Stephen A. Bustin et al., Clin. Chem., 55(4): 611-22, 2009
2.
Tania Nalan et al., Nat. Protoc., 1(3): 1559-1582, 2006
3.
Jo Vandesompele et al., Genome Biol., 3(7): 0034.1-0034.11
38
C-07
転写因子 Nrf1 欠損による神経変性発症メカニズムの解析
○岡室翔太,谷口浩章,小林聡
同志社大・生命医科・医生命システム
【目的】Nrf1 遺伝子欠損(BKO)マウスが神経変性による運動失調や生後 3 週間以内に死に
至る表現型を示すことから、Nrf1 が神経細胞の恒常性維持に関わっていると考えられてい
る 1)2)。本研究では、BKO マウスが示す神経変性の原因遺伝子や発症メカニズムを解明す
ることを目的とした。
【方法】脳内における Nrf1 mRNA 発現部位を同定するため、in situ hybridization を行った。
実験には、生後 7 日(P7)と 14 日(P14)の野生型マウスの脳切片を用いた。また、BKO マウ
スによる運動失調は小脳性運動失調に似ていることから、小脳とプルキンエ細胞に注目し、
対照マウス(f/f)と BKO マウスの小脳における遺伝子発現の変動を realtime-PCR により検討
した。さらに、運動失調の原因を調査するため Calbindin を免疫染色しプルキンエ細胞の形
態的異常を解析した。
【結果】マウスの脳内における Nrf1 mRNA の発現部位は主にプルキンエ細胞、小脳核、視
床、海馬、大脳皮質、嗅球であることが明らかになった。また、P7 と P14 のマウスの小脳
における遺伝子発現変化を検討したところ、Nrf1 標的遺伝子であるプロテアソームサブユ
ニットの有意な変化は認められなかった。しかし、P7 の時点で prosurvival 転写因子である
MEF2A と MEF2C の増加が確認された(図 1)。
一方、Nrf1 欠損によりプルキンエ細胞の形成や配列の変化に異常は見られなかった。
図 1.小脳における遺伝子発現変動 (P7-f/f:N=9, P7-BKO: N=6, P14-f/f: N=5, P14-BKO: N=3,
*P<0.05, **P<0.01)
【考察】Nrf1 mRNA 発現部位は BKO マウスにおけるユビキチン陽性タンパク質の蓄積が
確認された神経細胞と一致したことから 2)、Nrf1 の上記部位における働きが抑えられたこ
とにより、神経変性が誘導された可能性を示唆した。MEF2A と MEF2C の遺伝子発現上昇
は、Nrf1 遺伝子欠損により何らかのストレスの応答が困難になり生じた可能性が考えられ
る。また、プルキンエ細胞の発生異常はみられないため、この点については今後更なる検
討が必要である。
【文献】 1) Lee CS. et al. (2011) Proc Natl Acad Sci U S A. 108:8408-8413
2) Kobayashi A. et al. (2011) Genes Cells. 16:692-703
39
C-08
SOD1 KO マウスの肝臓における糖および脂質代謝の検討
○米岡由佳,崎山晴彦,藤原範子,江口裕伸,吉原大作,鈴木敬一郎
兵庫医大・生化学
【目的】抗酸化酵素の一つである Cu,Zn-SOD(SOD1)はスーパーオキシドを過酸化水素に代
謝する酵素であり,特に肝臓における活性が強いことが知られている. SOD1KO マウスは
酸化ストレス状態であると同時に,肝臓では脂肪滴が溜まり脂肪肝になりやがて肝硬変,
肝ガンへと移行することが報告されている 1). 本研究ではこの KO マウスを脂肪肝モデル
マウスとし,酸化ストレス下における脂肪肝の発症メカニズムを解明することを目的とし
た.特に解糖系,脂肪酸合成系に関する酵素およびそれらの転写因子の発現に着目して検
討を行った.
【方法】野生型マウス(WT)と SOD1KO マウスの肝臓での脂肪の蓄積を確認するために、肝
臓組織切片のオイルレッド O 染色を行なった.両マウスの脂肪酸合成経路を検討するため,
肝臓における律速酵素であるアセチル CoA カルボキシラーゼ(ACC),脂肪酸合成酵素(FAS),
および脂肪酸合成に関する転写因子などの mRNA の発現量を RT-PCR 法にて測定した.さ
らに両マウスの糖代謝を検討するため,律速酵素であるグルコキナーゼ(GK),ホスホフル
クトキナーゼ(PFK1)およびピルビン酸キナーゼ(L-PK) の mRNA の発現量も測定した.マウ
スの肝臓におけるグリコーゲン濃度は EnzyChrom 社の Glycogen Assay Kit により測定し,
さらに糖質の量を視覚化するために肝臓組織切片の PAS 染色を行った.
【結果】SOD1 KO マウスの肝臓では WT に比べて脂肪滴が多数確認できた.また脂肪酸合
成に関係する一連の転写因子の発現量は WT に比べて増加傾向にあった.しかし ACC など
の脂肪酸合成系酵素群の発現量は低下していた.一方,糖代謝に関わる GK および PFK1
の mRNA 発現量は WT と SOD1 KO マウスで顕著な差が認められなかったが, L-PK の
mRNA の発現量は SOD1KO で低下していた.さらにこのマウスの肝臓でのグリコーゲン濃
度は WT に比べて高く,PAS 染色においてもグリコーゲンの蓄積が確認できた.
【考察】SOD1 KO マウスでは肝臓において多数の脂肪滴が確認されたことから,当初,脂肪
酸合成が亢進していると考えた.事実,脂肪酸合成に関わる転写因子である SREBP1c の発
現量は増加していた.しかし,その制御を受ける FAS 等の発現量が減少していたことから
SOD1 KO マウスでは脂肪酸合成経路は促進されていない可能性が考えられる.また肝臓に
おいてグリコーゲン濃度が高かったことから,脂肪酸合成経路の解析を進めるとともに糖
代謝を詳しく検討する必要があると考えられる.
【文献】 1. Uchiyama S, Shimizu T, Shirasawa T., CuZn-SOD deficiency causes ApoB degradation
and induce hepatic lipid lipoprotein secretion in mice. J Biol Chem. 281, 31713-3171910,
2006
40
C-09
基底膜マトリックス誘導性の単一細胞レベルでの頂底極性形成における
Wnt5a シグナルの役割
○権 英寿, 麓 勝己, 菊池 章
阪大・院医・分子病態生化学
【目的】上皮細胞は頂端部と基底部からなる極性(頂底極性)を形成しており、その極性の
形成・維持には基底膜からのシグナルが重要である 1。一方、Wnt シグナルにおいて β カテ
ニン非依存性経路が平面内細胞極性や神経細胞極性などの極性を制御することが知られて
いるが、上皮細胞極性に対する役割は明らかではない。基底膜による頂底極性形成に対す
る Wnt シグナルの影響について検討するために、下記に示すようなユニークな実験系を用
いたアプローチを行った。
【方法・結果】腸管上皮細胞を細胞間接着非存在下の単一細胞レベルにてマトリゲル上で
3 次元培養すると、接着後速やかにマトリゲル接着面と対側に F-actin が集積した特徴的な
極性化形態を認め(F-actin cap)、この F-actin cap に上皮細胞の頂端部マーカーであるリン酸
化 Ezrin が共局在した。さらに F-actin cap の周囲を囲むように tight junction のマーカーであ
る ZO-1 が局在し、基底部のマーカーである Par1b は F-actin cap 以外の細胞膜に分布した。
これらの結果から、この腸管上皮細胞は 3 次元培養条件下において単一細胞レベルで上皮
の頂底極性を形成していると考えられた。次に Wnt 分泌阻害剤である IWP2 で処理すると、
極性化に対する抑制効果が見られたことから、内在性の Wnt リガンドが関与していること
が示唆された。今回用いた腸管上皮細胞において、内在性レベルで発現を確認できた Wnt5a
のノックダウン(KD)を行ったところ、極性化の抑制効果が認められた。さらに Wnt5a 受容
体 Ror やその下流の分子である Dvl の KD でも同様に極性化は抑制された。次に、β カテニ
ン非依存経路において Dvl が Rac1 を活性化することが知られているため 2、Rac1 の活性化
と極性化との関係性について検討した。
浮遊培養と比較し、マトリゲルとの接着により Rac1
の活性化が見られたが、この活性化は Wnt5a 及び Dvl の KD により抑制された。
さらに Rac1
の阻害剤である NSC23766 や Rac1T17N 変異体の発現により極性化が抑制された。さらに、
空間的な Rac1 の活性分布について検討するために fluorescence resonance energy transfer
(FRET)を用いた観察を行った結果、Rac1 の活性は頂端部よりもむしろ基底部に相当す
る部分により強く見られた。
【考察】今回私共は、用いた腸管上皮細胞にて基底膜マトリックス誘導性に単一細胞レベ
ルで頂底極性を誘導できることを見出し、基底膜シグナルによる頂底極性形成への作用を
評価できる系を確立した。さらに Wnt5a シグナルが Dvl を介して Rac1 の空間的な活性を制
御することにより、基底膜シグナルによる頂底極性形成に関与することが示唆された。
【文献】 1. Bryant DM, Mostov KE. (2008) From cells to organs: building polarized tissue. Nat
Rev Mol Cell Biol. 9 : 887-901.
2. Akira Sato, Hideki Yamamoto, Hiroshi Sakane, Hirofumi Koyama and Akira Kikuchi.
(2010) Wnt5a regulates distinct signalling pathways by binding to Frizzled2. EMBO J.
29 : 41-54.
41
C-10
Low-density lipoprotein receptor-related protein 6 の毛細胆管における局在と
トランスサイトーシスに関する研究
1)
○梅田 大介
山本 英樹 2)
松本 真司 2)
菊池 章 2)
1)大阪大学医学部医学科 6 回生
2)大阪大学大学院医学系研究科分子病態生化学
【目的】初期発生に重要な Wnt シグナル経路の受容体である Low-density lipoprotein
receptor-related protein 6 (LRP6)はヒト成体においても広範な組織に発現しており、近年 LRP6
遺伝子の変異が脂質代謝異常に関与することが報告されている 1)。本研究では脂質代謝の
中心臓器である肝臓における LRP6 の機能解明を目的とし、その局在および細胞内輸送に
ついて検討した.
【方法・結果】肝細胞の細胞膜は apical 領域である毛細胆管膜とそれ以外の basolateral 領域
に区別され、その細胞極性の破綻は様々な肝疾患と関連している。我々はマウス肝臓およ
びヒト肝がん細胞株 HepG2 において LRP6 が毛細胆管膜に局在することを見出した。Apical
タンパク質の輸送経路にはゴルジ体から直接 apical 領域に輸送される経路(直接経路)と
basolateral 領域に輸送後エンドサイトーシスされ、apical 領域に再輸送される経路(トランス
サイトーシス経路)が存在する。我々は LRP6の輸送経路を検討するため、細胞外領域に FLAG
タグを付加した FLAG-LRP6 を HepG2 細胞に発現させ、抗 FLAG 抗体と 4℃、30 分間反応
後、細胞を 37℃に戻して各時間培養した。細胞固定後、抗 FLAG 抗体を検出することで
basolateral 膜上の FLAG-LRP6 の挙動を検討した。その結果、FLAG-LRP6 は毛細胆管膜に
輸送され、LRP6 がトランスサイトーシスにより輸送されることが明らかとなった。また、
CD59 などの apical タンパク質の一部は脂質ラフトに存在し、そのエンドサイトーシスには
脂質ラフト構成分子である flotillin2が重要であり 2)、その後の apical 領域への輸送には myelin
and lymphocyte protein 2 (MAL2) が重要であることが報告されている 3)。LRP6 は脂質ラフト
と非脂質ラフトの両方に局在し、脂質ラフト破壊や flotillin2 または MAL2 のノックダウン
によって LRP6 のトランスサイトーシスが抑制された。さらに、LRP6 の細胞外領域がその
毛細胆管膜への局在およびトランスサイトーシスに必要であった。これまでに、the polymeric
immunoglobulin receptor のトランスサイトーシスにはその N 型糖鎖修飾が重要であることが
報告されている 4)。N 型糖鎖はその構造から、高マンノース型、混合型および複合型に分
類されるが、LRP6 に付加している N 型糖鎖は全て複合型または混合型であることが示唆
されている。そこで、マンノシダーゼ阻害薬を用いて N 型糖鎖の複合型または混合型への
成熟を阻害した結果、LRP6 の basolateral 膜への輸送およびエンドサイトーシスに影響はな
かったが、その後の毛細胆管膜への輸送は抑制された。
【考察】以上の結果より、肝細胞の basolateral 膜において脂質ラフトに存在する LRP6 は
flotillin2 依存的にエンドサイトーシスされた後、MAL2 依存的に apical 領域である毛細胆管
膜へ輸送されることが示唆された。さらに、エンドサイトーシス後の毛細胆管膜への輸送
には LRP6 の複合型または混合型 N 型糖鎖修飾が重要であることが示唆された。
Basolateralタンパク質に比べ apical タンパク質の輸送機構は多種多様であり未解明な部分
が多いが、特にトランスサイトーシス経路についてはほとんどわかっていない。今後は、
LRP6 のトランスサイトーシスにおける N 型糖鎖修飾の詳細な機能および LRP6 がトランス
サイトーシスされる生理的意義について解析していきたい。
【文献】 1. Mani, A. et al. (2007) Science, 315, 1278–1282
2. Aït-Slimane, T. et al. (2009) Mol. Biol. Cell, 20, 3792–800
3. Madrid, R. et al. (2010) Dev. Cell, 18, 814–827
4. Luton, F. et al. (2009) Traffic, 10, 1128–1142
42
C-11
筋損傷・再生過程における受容体型チロシンキナーゼ Ror1 の発現解析
○土井亮助 1,2,遠藤光晴 1, 南康博 1
1 神戸大・院医・細胞生理学,2 日本学術振興会特別研究員(DC1)
【目的】
骨格筋細胞系譜の最終分化細胞は巨大な多核細胞(筋繊維)である。筋繊維の細胞膜上に
は、単核の細胞が接着しており、これが筋肉の幹細胞(筋サテライト細胞)である。成体筋
組織中の筋サテライト細胞は、骨格筋の損傷時に放出される炎症性サイトカインなどによ
り活性化され増殖を開始し、基底膜を通り抜けた後、筋芽細胞に分化する。分化した筋芽
細胞は、活発に分裂・増殖を繰り返しながら損傷部位へと遊走し 、互いにあるいは残存す
る筋繊維と細胞融合して筋管細胞を形成することで最終的に筋繊維が再生される。これま
での研究から、Wnt タンパク質が筋損傷後に誘導され、筋サテライト細胞の増殖・分化を
制御し筋再生に関与することが示唆されている 1)。しかしながら、Wnt タンパク質による
筋再生制御の分子レベルでの機構については、不明な部分が多い。
我々の研究室ではこれまでに、Wnt タンパク質のなかでも Wnt5a の受容体として機能する
Ror ファミリー受容体型チロシンキナーゼ (Ror1, Ror2)によるシグナル経路が、細胞移動や
幹細胞の維持に関与し発生過程の組織形成において重要な役割を担うことを明らかにして
きた 2)。しかし、Ror1 および Ror2 欠損マウスが出生後早期に死亡するため、成体骨格筋に
おける Wnt5a/Ror シグナル経路の機能については未解明であった。そこで、本研究におい
ては成体骨格筋損傷・再生過程での Ror の発現動態プロファイリングを 目的とした。
【方法】
筋損傷モデルマウスの作出:8-12 週齢の雄マウスの後肢に Cardiotoxin (Ctx)を投与すること
で筋損傷を誘導した後、経時的に筋組織を回収し定量的 RT-PCR および Western blotting 法
により Ror の発現解析を行った。
細胞培養:マウス筋芽細胞由来の C2C12 細胞は増殖培地(GM; DMEM+20% ウシ胎児血清)
で維持した。分化解析においては、C2C12 細胞をコラーゲンコートディッシュ上でコンフ
ルエント状態にした後、分化培地(DMEM/F12+2%馬血清)に置換して分化誘導を行った。
【結果】
筋損傷・再生過程における遺伝子発現解析を行った結果、Ctx 投与により Ror1 および Ror2
共に mRNA およびタンパク質レベルで発現誘導が検出され、それらは筋再生の進行に伴っ
て次第に減少した。また、単離筋サテライト細胞とそれ以外の細胞の解析から、Ror1 は筋
サテライト細胞で高発現している一方、Ror2 は筋サテライト細胞以外の細胞で主に発現し
ていることが見出された 。単離筋サテライト細胞および C2C12 細胞を用いて in vitro にて
分化誘導を行ったところ、Ror1 は分化の進行に伴って発現が低下し、最終分化細胞である
筋管細胞においては、ほとんど発現が認められなかった。また、Ror1 を過剰発現させ筋分
化解析を行った結果、対照群と比較して筋分化マーカーの発現誘導の遅延が認められた。
【考察】
Ror1 は、筋損傷・再生過程において、筋サテライト細胞や筋芽細胞などの未分化な細胞に
おいて発現誘導され、これらの細胞を未分化な状態に維持する働きをもつ可能性が考えら
れる。
【文献】
1.
2.
Snider L, Tapscott SJ. (2003) Cell. 113, 811-2
Nishita M, Enomoto M, Yamagata K, Minami Y. (2010) Trends Cell Biol. 20,346-54
43
C-12
Dissecting the novel functions of Prickle in cell front-rear polarity and cell migration
○Lim Boon Cheng,松本真司,菊池章
大阪大学・大学院医科学研究科・分子病態生化学
【目的】
Wnt signaling pathways are involved in many essential cellular and physiological processes in both
embryonic and adult organisms. There are many branches of Wnt signaling pathways and they are
mainly divided into β-catenin-dependent and planar cell polarity (PCP) pathways. Prickle is one of
the core proteins of the PCP pathways and is known to regulate cellular morphogenesis and cell
migration during developmental process. Molecular mechanism of these events is largely unknown.
【方法・結果】
Immunofluorescence analysis revealed that Prickle localized to the plasma membrane at the rear
end of polarized cells during cell migration. Expression of Prickle induces cell front-rear polarity
and cell migration. Jun N-terminus kinase (JNK) signaling is one of the downstream effectors of
PCP pathways, and is known to regulate cell migration. Expression of Prickle activated JNK
activation, which was necessary for cell front-rear polarity and cell migration. Prickle was required
for EGF-dependent MKK4/JNK activation and knockdown of Prickle suppressed EGF-dependent
front-rear polarity. Point mutation of Prickle at its C-terminal farnesylation site completely
disrupted its capability to localize to the plasma membrane at the cell rear end. Prickle farnesylation
deficient mutant did not induce cell front-rear polarity and cell migration, but this mutant is still
capable of inducing JNK activation, suggesting that Prickle-dependent JNK activation alone is not
sufficient for cell front-rear polarity and cell migration.
【考察】
Both JNK activation and Prickle localization to the plasma membrane would be required to induce
cell front-rear polarity and cell migration. Future research will focus on elucidating the molecular
events of Prickle functions in cell front-rear polarity and cell migration.
【文献】 1. Carreira-Barbosa, F. et al. (2003) Development 130, 4037–4046.
2. Cui, S., Capecci, L. M. & Matthews, R. P. (2011) Dev Biol 351, 229–241.
3. Mapp, O. M., Wanner, S. J., Rohrschneider, M. R. & Prince, V. E. (2010) Dev Dyn
239, 1596–1608.
4. Oteiza, P. et al. (2010) Development 137, 3459–3468.
5. Tao, H. et al. (2009) Proc Natl Acad Sci USA 106, 14426–14431.
6. Veeman, M. T., Slusarski, D. C., Kaykas, A., Louie, S. H. & Moon, R. T. (2003) Curr
Biol 13, 680–685.
44
C-13
C-Man-TSR 由来ペプチドによる TGF-βシグナル制御分子の探索
○池﨑みどり 1,井内陽子 1,松井仁淑 1,室井栄治 2,渋川幸直 3,和田芳直 3,眞鍋史乃 4,
伊藤幸成 4,井原義人 1
1
和歌山県医大・医・生化,2 宮崎大・医・皮膚,3 大阪府立母子保健総合医療セ研・代謝,
4
理研
【目的】分泌・膜タンパク質の機能モジュールである Thrombospondin type 1 repeat (TSR)に
含まれる Trp-X-X-Trp モチーフの第 1 番目の Trp は、C-マンノシル(C-Man)化糖付加修飾を
受ける。近年、TGF-βの活性化過程において、細胞表面の Thrombospondin が TSR を介して
関与することが明らかとなったが、TGF-βシグナル伝達において、C-Man 化 TSR のもつ生
理的意義については明らかでない。これまでの研究で、我々は化学合成した C-Man-TSR 由
来ペプチドが、TGF-βシグナルに対する抑制効果を示すことを見出した。
本研究では、この分子機構の解析を進め、C-Man-TSR 由来ペプチドが結合する標的分子
を単離・精製し、同定した結果、Hsc70、Myosin 1c、Vimentin などが含まれることがわかっ
た。本会では、これらの結合標的分子と TGF-βシグナルとの関連や機能的役割についての
解析結果を報告する。
【方法】ラット線維芽細胞 NRK 49F を用いて、C-Man-TSR 由来ペプチドの TGF-β依存性細
胞増殖に対する影響を解析した。また、TGF-βシグナルへの影響については、Smad2 のリ
ン酸化レベル及び Collagen Ⅰの発現量により評価した。
次に、C-Man-TSR 由来ペプチドの結合標的分子を探索するため、NRK 49F にビオチン化
C-Man-TSR 由来ペプチドを添加しケミカルクロスリンクを行い、アビジン付加アガロース
ビーズを用いて単離、精製し、コントロールペプチドを比較対象とした実験により、複数
の C-Man-TSR 由来ペプチド結合分子を検出した。マスフィンガープリンティング解析と特
異抗体を用いた解析により、結合標的分子を同定した。
これらの結合標的分子と Smad2 の相互作用について解析するために、各種特異抗体(抗
Smad2 抗体、抗 Hsc70 抗体)を用いて免疫沈降を行い、イムノブロット法で評価した。Hsc70
が TGF-βシグナルへ関与するかについては、NRK 49F 細胞に Myc タグ融合型の Hsc70 を過
剰発現させ、抗 Smad2 リン酸化抗体で蛍光免疫染色を行ない評価した。
【結果】NRK 49F 細胞において、C-Man-TSR 由来ペプチドは TGF-βシグナルに対して細胞
増殖、Smad2 リン酸化レベル、Collagen Ⅰ発現量について抑制効果を示した。C-Man-TSR
由来ペプチド結合分子として、Hsc70、Myosin 1c、Vimentin が同定された。このうち Hsc70、
Myosin 1c は、Smad2 との相互作用が確認され、C-Man-TSR 由来ペプチドにより Smad2 と
Hsc70 の相互作用が抑制された。また、Hsc70 過剰発現により、Smad2 リン酸化の核への集
積が増強された。
【考察】C-Man-TSR 由来ペプチドは、TGF-βシグナルに対する抑制効果を示し、結合標的
分子 Hsc70、Myosin 1c、Vimentin のうち、Hsc70、Myosin 1c が Smad2 と相互作用している
ことが明らかとなった。また、Hsc70 と Smad2 の相互作用が C-Man-TSR 由来ペプチドによ
り抑制され、Hsc70 の過剰発現が Smad2 リン酸化の核移行を増強することを見出した。
以上の結果から、NRK 49F 細胞における C-Man-TSR 由来ペプチドによる TGF-βシグナル
の阻害について、Hsc70 がその分子機構に関与していることが示唆された。
45
C-14
エンドサイトーシス制御破綻による非自律的な細胞増殖制御機構の遺伝学的解析
○瀧野恭子 1,2、大澤志津江 1、井垣達吏 1,3
1
京大・院生命・システム機能学、2 神戸大・院医・遺伝学、3JST さきがけ
【目的】近年、がんの発生機構の理解が大きく進展してきた一方で、がんの悪性化や浸潤
転移メカニズムについてはいまだ不明な点が多い。その理由として、実際のがん悪性化は
細胞間の相互作用を介したがん原性変化の協調によって引き起こされると考えられるため
1)、細胞自律的な変化のみを追跡する従来の解析法ではその全体像に迫ることが困難であ
ったことが挙げられる。このような細胞間コミュニケーションの分子基盤を解明するため、
ショウジョウバエ上皮をモデル系として、周りの正常組織に対して非自律的な細胞増殖を
引き起こす変異体をショウジョウバエ遺伝学的スクリーニングにより単離・同定した。
【方法】ショウジョウバエ複眼原基の上皮組織において、活性化型 Ras (RasV12) を発現す
る細胞群を誘導すると、これらの細胞群は増殖能を亢進して良性の腫瘍を形成する。ここ
で、この Ras 誘導性の良性腫瘍に対してさらに突然変異を導入し、変異細胞自身ではなく
周りの正常細胞群が過剰に増殖する変異体(non-cell autonomous growth (nag) 変異体)をス
クリーニングした。
【結果】遺伝学的スクリーニングの結果、初期エンドソームの形成・機能に関わる低分子
量 G タンパク質 rab5 遺伝子の変異体が単離された。このことは、rab5 変異によりエンド
サイトーシス経路が障害されると、本来の Ras の細胞自律的な増殖シグナルが細胞非自律
的な増殖シグナルへと変換されることを意味している。この細胞非自律増殖機構を遺伝学
的に解析した結果、rab5 変異細胞群では c-Jun N-terminal Kinase(JNK)経路が活性化して
F-actin の集積が起こり、これががん抑制経路 Hippo 経路を不活化することが分かった。さ
らに、Hippo 経路の不活化によりその標的遺伝子である Unpaired (Upd)(IL-6 ホモログ)の
発現が誘導され、これが周辺細胞に作用することで細胞非自律的な増殖が誘発されること
が明らかとなった。
【考察】近年、がんの発生・進行において、細胞内エンドサイトーシス経路の異常が重要
な役割を果たすことが推察されているが、その分子機構はいまだほとんど不明であった。
本研究結果は、生体内で引き起こされる細胞内エンドサイトーシス制御破綻が Hippo 経路
を介してがん微小環境を制御することを示唆している。
【文献】 1. Ohsawa, S., Sugimura, K., Takino, K., Xu, T., Miyawaki, A., Igaki, T.
Developmental Cell. 20, 315–328 (2011)
46
D-01
ダイズ Ero1 と Protein disulfide isomerase ファミリーによる in vitro 酸化的フォールディング
○松崎 元紀,小石原 克典,三田 竜太,増田 太郎,裏出 令子
京大・院農・農学
【目的】真核細胞の粗面小胞体で生合成されるタンパク質の多くは,小胞体内腔で分子内
ジスルフィド結合形成を伴ってフォールディングされる.新生タンパク質への正しいジス
ルフィド結合の導入には,複数の Protein disulfide isomerase (PDI)ファミリーが作用してい
る. PDI ファミリーが基質タンパク質のチオール基の酸化反応を触媒すると活性中心ジス
ルフィドは還元されジスルフィド結合導入活性を失う.Endoplasmic reticulum oxidoreductin-1
(Ero1)は PDI ファミリーの活性中心を酸化し再活性化する酵素であり,酵母及び哺乳動物
の Ero1 の活性制御機構や PDI ファミリーに対する基質特異性などについては,詳細な研究
が行われてきた 1).一方,植物細胞にも Ero1 オーソログ及び多種類の PDI ファミリーが存
在するが,それらの相互作用は不明である.タンパク質フォールディングにおける植物 PDI
ファミリー及び Ero1 の作用機構を分子レベルで明らかにすることを目的に研究を行った.
【方法】ダイズ Ero1 (GmEro1) 及び 5 種類の主要ダイズ PDI ファミリーである GmPDIL-1,
GmPDIL-2,GmPDIM,GmPDIS-1,GmPDIS-2 のリコンビナントタンパク質を,大腸菌発
現系を用いて大量発現させ純化した.グルタチオン存在下で GmEro1 が PDI ファミリーを
酸化する反応における酸素消費は酸素電極を用いて解析した.
また、
PDI ファミリーと GmEro1
による還元変性させた RNaseA の酸化的フォールディング活性を,RNaseA の活性回復量を
指標として測定した.
【結果】哺乳動物では PDI ファミリーに属するタンパク質のうち PDIA1 及びそのホモログ
である PDIA2 が Ero1 により特異的に酸化(活性化)され,他の PDI ファミリータンパク
質はほとんど酸化されない.構造の類似性から PDIA1 のダイズオーソログであると考えら
れる GmPDIL-1 はグルタチオン存在下で GmEro1 により速やかに酸化された.しかし,
GmPDIL-1 と同じドメイン構造をもつ GmPDIL-2 は GmEro1 によりほとんど酸化されなかっ
た.一方,ドメイン構造が異なる GmPDIM,GmPDIS-1,GmPDIS-2 は GmPDIL-1 の約 50~100%
の速度で酸化されることを見いだした. GmEro1 によって酸化される PDI ファミリーは,
GmEro1 の存在下で還元変性 RNaseAを天然構造へ酸化的フォールディングすることを確認
した.GmEro1 存在下でのこれらの PDI ファミリーの RNaseA の酸化的フォールディング速
度は反応開始直後にラグがあり,その長さは GmEro1 による酸化速度が速い PDI ファミリー
ほど短くなった.各 PDI ファミリーのラグタイム後の酸化的フォールディング速度は GmEro1
による酸化速度と相関しなかった.なお,GmEro1 によりほとんど酸化されない GmPDIL-2
は酸化的フォールディング活性を示さなかった.
【考察】植物の Ero1 による PDI ファミリーの in vitro での再活性化を初めて証明し,哺乳
動物の Ero1 の基質特異性が狭いのに対し GmEro1 の基質特異性は広いことを明らかにした.
GmEro1 の各 PDI ファミリーに対する基質特異性の 差は,PDI ファミリーのドメイン構造
以外に活性中心システイン残基の酸化還元電位など他の要因にも起因すると考えられる.
Gm PDIL-1 は最も発現量の多い PDI ファミリーであり,GmEro1 と共同して新生タンパク
質の酸化的フォールディングに中心的な役割を果たしていると考えられる.GmPDIM,
GmPDIS-1,GmPDIS-2 は GmEro1 のよい基質であるが酸化的フォールディング活性は PDIL-1
に比して低く,これらは小胞体内では新生タンパク質にジスルフィド結合の導入を行うオ
キシダーゼとして作用していると推定される.
【文献】 1. Ramming, T., Appenzeller-Herzog, C. (2012) Antioxid. Redox. Signal. 16, 1109–1118
47
D-02
HIV-1逆転写酵素とMMLV逆転写酵素のcDNA合成活性の比較
○小西篤,篠村まゆ,保川清
京大・院農・食生科
【目的】ヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)逆転写酵素(RT)は分子量 51,000 の p51 と
66,000 の p66 から成るヘテロダイマー(p66/p51)である.HIV-1 RT はエイズ治療薬である
HIV-1 RT 阻害剤の開発のツールとして実用化されているが,cDNA 合成には使用されてい
ない.一方,モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)RT は cDNA 合成に実用化されてい
る.本研究では,HIV-1 RT と MMLVRT の cDNA 合成活性を比較した.
【方法】①組換え HIV-1 RT の調製:HIV-1 タイプ M RT(HIV-1 M RT)と HIV-1 タイプ O RT
(HIV-1 O RT)に対して,p51(Pro1-Trp426)を発現させた大腸菌 BL21(DE3)の菌体と p66
(Pro1-Leu561)を発現させた菌体を混合し,超音波破砕の後,可溶性画分から p66/p51 を
精製した.②poly(rA)-p(dT)15(T/P)への dTTP の取込み:25 μM T/P(濃度は p(dT)15 のモ
ル換算),0.2 mM [3H]dTTP 存在下,37℃で反応を行い,経時的に反応液を採取し,酸不溶
性画分への放射能の取込みから速度を求めた.③cDNA 合成:0.8 pg/μL のモデル RNA(1,014
塩基)存在下,46℃で cDNA 合成反応を行った後,PCR を行った.PCR の反応物をアガロー
ス電気泳動にかけ増幅産物を解析した.④熱安定性の評価:RT を 42,44,46,48,50℃
で 10 分間熱処理した後に,37℃で T/P への dTTP 取込み活性を測定した.
【結果】①T/Pへの dTTP 取込み活性:HIV-1 M RT と HIV-1 O RT の Km,dTTP はそれぞれ 20 μM,
30 μM で MMLV RT(250 μM)の 8%,12%であった.Km,T/P はそれぞれ 1.4 μM,1.3 μM で
MMLV RT(5.6 μM)の 25%,23%であった.kcat はそれぞれ 0.35 s-1,1.1 s-1 で MMLV RT(29
s-1)の 1.2%,3.8%であった(図 1).ホルムアミドが活性を 50%に低下させる濃度(IC50)
は HIV-1 M RT と HIV-1 O RT では 22%(w/v),MMLV RT では 8%であった(図 2).②cDNA
合成:いずれの RT も cDNA 合成反応時の酵素濃度が 0.1-10 nM では PCR で増幅産物が得
られたが,50 nM 以上では得られなかった.③熱安定性:HIV-1 M RT,HIV-1 O RT,MMLV
RT の T50(10 分間の熱処理で活性が 50%に低下する温度)は 42℃,46℃,44℃であった.
図 1. 反応速度の T/P 濃度依存性,
図 2. 反応速度のホルムアミド濃度依存性,
[MMLV RT (○)] = 2 nM,[HIV-1 M RT (△)] = 50 nM, [MMLV RT (○)] = 2 nM,[HIV-1 M RT (△)] = 50 nM,
[HIV-1 O RT (□)] = 20 nM.
[HIV-1 O RT (□)] = 20 nM.
【考察】HIV-1 RT は MMLV RT よりも,T/P に対する高い親和性とホルムアミドに対する
高い耐性を有した.ホルムアミドは核酸増幅において核酸の二次構造を減少させるために
使用されている.これらのことから,HIV-1 RT が標的 RNA の高感度検出に有用である可
能性が示唆された.
【文献】Konishi, A., Shinomura, M., and Yasukawa, K. (2013) Appl. Biochem. Biotechnol.169,
77–87
48
D-03
60th Annual Meeting of Kinki Branch of the Japanese Biochemical Society (May 18, 2013)
Effects of the conversion of the zinc-binding motif sequence of thermolysin,
HEXXH, into that of dipeptidyl peptidase III, HEXXXH, on the activity and
stability of thermolysin
○ Evans Menach, Yasuhiko Hashida, Kiyoshi Yasukawa, and Kuniyo Inouye
Div. of Food Sci. and Biotechnol., Grad. Sch. of Agric., Kyoto University
[Purpose] The majority of zinc metalloproteinases have the consensus zinc-binding
motif sequence, HEXXH, in which two histidine residues chelate a catalytic zinc ion.
The zinc-binding motif sequence of thermolysin, H 14 2 ELTH 1 46 , belongs to this motif
sequence, while that of dipeptidyl peptidase III (DPP III), H 4 50 ELLGH 4 55 , belongs to
the motif sequence HEXXXH. In this study, we examined the effects of the conversion
of HEXXH into HEXXXH in thermolysin on its activity and stability.
[Methods] (i) Production of enzyme: Thermolysin variants bearing H 1 4 2 ELLGH 14 6 or
H 14 2 ELTGH 14 6 are designated as T145LG and T145TG, respectively. Wild-type
thermolysin (WT) and eight variants (T145LG, T145TG, Y84S, V140A, Y84S/T145LG,
V140A/T145LG, Y84S/T145TG, and V140A/T145TG) were produced in Escherichia
coli by co-expressing the mature and pro domains separately. They were purified from
the soluble fractions of the E. coli cells by Gly- D -Phe affinity chromatography. (ii)
Measurement of enzyme activity: In the hydrolysis of casein, the reaction was carried
out in 1.33% w/v casein and 40 mM Tris-HCl at pH 7.5 at 25°C. In the hydrolysis of
N-[3-(2-furyl)acryloyl]-glycyl- L -leucine amide (FAGLA), the reaction was carried out
in 4 mM FAGLA, 40 mM HEPES-NaOH, 10 mM CaCl 2 at pH 7.5 at 25°C. (iii)
Measurement of enzyme stability: Ellipticity at 222 nm (θ 2 22 ) was monitored in 40 mM
Tris-HCl, 10 mM CaCl 2 at pH 7.5 in the range 75–95°C.
[Results] On SDS-PAGE under reducing conditions, the 34-kDa protein band
corresponding to that of thermolysin was detected in the soluble fractions of the E. coli
cells for WT and all eight variants. All variants did not exhibit the hydrolyzing activity
for casein or FAGLA, but exhibited the binding ability to a substrate analogue
Gly- D -Phe. The apparent denaturing temperatures based on θ 2 22 of T145LG and
T145TG were 85 ± 1°C and 86 ± 1°C, respectively, which were similar to that of WT
(85 ± 1°C).
[Discussion] These results indicate that the conversion of HEXXH into HEXXXH
abolishes thermolysin activity, but not its binding ability to Gly- D -Phe and stability. 1 )
The results presented in this study are in contrast to those reported previously that DPP
III variants bearing H 45 0 ELGH 45 5 exhibit activity. 2 )
[References]
1. Menach, E., Hashida, Y., Yasukawa, K., and Inouye, K. submitted
2. Fukasawa, K., Fukasawa, K.M., Iwamoto, H., Hirose, J., and Harada,
M. (1999) Biochemistry 38, 8299–8303
49
D-04
60th Annual Meeting of Kinki Branch of the Japanese Biochemical Society (May 18, 2013)
Effects of heparin and cholesterol sulfate on the activity and stability of human
matrix metalloproteinase 7 (MMP-7)
○ Vimbai Samukange, Kiyoshi Yasukawa, and Kuniyo Inouye
Div. of Food Sci. and Biotechnol., Grad. Sch. of Agric., Kyoto University
[Purpose] Sulfated glycosaminoglycans and sulfated lipids are known to be involved
in the biological functions of MMP-7. 8-Anilinonaphthalene 1-sulphonate (ANS)
inhibits MMP-7 in a non-competitive manner with the inhibition constant K i of 110 ±
20 μM. 1 ) In this study, the effects of heparin and cholesterol sulfate (CS) on the
activity and stability of MMP-7 in the hydrolysis of a synthetic substrate,
MOCAc-PLGL(Dpa)AR, were examined.
[Methods] (i) Preparation of MMP-7: Mature MMP-7 (Tyr78-Lys250) was expressed
in Escherichia coli in the forms of inclusion bodies, solubilized with 6 M guanidine
HCl, refolded with 1 M L -arginine, and purified by ammonium sulfate precipitation
and heparin affinity column-chromatography. (ii) Heparin: Commercial porcine
intestinal heparin was used. Its concentration was determined by the denoted weight
and the average molecular mass of 5,000 Da. (iii) Enzyme reaction: After
pre-incubation of MMP-7 and heparin or CS for 10 min at 25°C, the reaction was
initiated at pH 7.5 at 25°C by adding MOCAc-PLGL(Dpa)AR. Fluorometric analysis
was done by measuring the fluorescence intensity of the reaction solution at 393 nm
with excitation at 328 nm for 1 min. HPLC analysis was done by applying the reaction
solution to reversed-phase HPLC on a TSKgel ODS-80Ts column.
[Results] Heparin increased the activity by decreasing K m , and the K m values with 0
and 50 μM heparin were 57 ± 8 and 19 ± 5 μM, respectively. CS decreased the activity
in a non-competitive inhibition manner with the K i value of 11 ± 3 μM. In the thermal
incubation at 50−70ºC, heparin increased the relative activity (ratio of k cat /K m of
MMP-7 with the incubation to that without it) while CS decreased the relative activity.
[Discussion] Heparin increases the activity and stability while CS decreases them. The
results with CS added to the reaction solution are in contrast to that reported
previously that MMP-7 binds to CS present in cellular membrane and exerts
proteolysis. 2 )
[References] 1. Samukange, V. et al. (2012) J. Biochem. 151, 533–540 (2012)
2. Yamamoto, K. et al. (2006) J. Biol. Chem. 281, 9170–9180 (2006)
50
D-05
バイカリンは二価鉄イオンにキレートし,溶存酸素への電子の移動を容易にする
ことにより,フェントン反応を阻害する
○西崎大祐 1,岩橋秀夫1
1
和医大・院医・生体分子解析学
【目的】二価鉄イオンとキレートする物質にはフェントン反応を抑制するものと促進する
ものがある 1).この抑制と促進は何によって引き起こされるのかを検討する為に,キレー
ト剤(バイカリン,クロロゲン酸,プロトカテク酸,キノリン酸)と二価鉄イオンを含む
反応溶液のヒドロキシルラジカルの生成量と酸素消費速度を測定した.バイカリンは漢方
薬・小柴胡湯などに含まれるオウゴンの主成分である.
【方法】コントロール反応溶液(フェントン反応)は 0.2 mM 過酸化水素,0.2 mM の硫酸
アンモニウム鉄(Ⅱ),0.1 M DMPO,40 mM リン酸緩衝液を含む.反応は硫酸アンモニウ
ム鉄(Ⅱ)を加えることで開始し,生成したヒドロキシルラジカルを DMPO/OH ラジカル
アダクトとして,JEOL JES-FR30 フリーラジカルモニタを用いて測定した.このコントロー
ル溶液(フェントン反応)に 0.6 mM バイカリン,0.6 mM クロロゲン酸,0.6 mM プロトカ
テク酸,0.6 mM キノリン酸を加え,ヒドロキシルラジカルの生成にどのような影響を与え
るか検討した.コントロール反応溶液(酸素消費)は 0.2 mM 硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ),
40 mM リン酸緩衝溶液を含む.20 ℃で硫酸アンモニウム鉄(Ⅱ)を加え反応を開始し,YSI
model 5300 2 チャンネル生物用酸素モニターを用いて酸素消費速度を測定した.コントロー
ル溶液(酸素消費)に 0.6 mM バイカリン,0.6 mM クロロゲン酸,0.6 mM プロトカテク酸,
0.6 mM キノリン酸を加え酸素消費速度を測定した.
【結果】コントロール反応溶液(フェントン反応)にバイカリン,クロロゲン酸,プロト
カテク酸を加えると,ヒドロキシルラジカルの生成はコントロール反応溶液(フェントン
反応)のそれぞれ 32% ± 1%,34% ± 2%,44% ± 7% まで減少し,キノリン酸を加えると
166% ± 27% まで増加した.一方,コントロール反応溶液(酸素消費)にバイカリンを加
えると酸素消費速度はコントロール反応溶液(酸素消費)のそれぞれ 449% ± 40%,280%
± 9%,170% ± 23% まで増加し,キノリン酸を加えると 18% ± 9% まで減少した.
【考察】バイカリン,クロロゲン酸,プロトカテク酸などの鉄キレート剤はヒドロキシル
ラジカルの生成を抑制したが,キノリン酸はヒドロキシルラジカルの生成を促進した.ま
た,バイカリン,クロロゲン酸,プロトカテク酸を加えた反応溶液の酸素消費速度は増加
し,キノリン酸を加えた反応溶液の酸素消費速度は減少した.このことから,バイカリン
などの酸素消費速度を速くする物質は,ヒドロキシルラジカルの生成を抑制し,酸素消費
速度を遅くするキノリン酸は,ヒドロキシルラジカルの生成を促進する働きがあることが
わかった.
バイカリンなどは二価鉄イオンにキレートし,溶存酸素への電子の移動を増加させ,過
酸化水素への電子の移動を減少させる.その結果,ヒドロキシルラジカルの生成が減少し
たと推測できる.一方,キノリン酸は二価鉄イオンにキレートし,溶存酸素への電子の移
動を減少させ,過酸化水素への電子の移動を増加させる.その結果,ヒドロキシルラジカ
ルの生成が増加したと推測できる.
【文献】 1. Iwahashi, H., Kawamori, H., Fukushima, K. (1999) Chemico-Biological Interactions.
118, 201–215
51
D-06
MHPCO の開環活性/NADH oxidase 活性は Tyr270 によって調節されている
○小林 淳 1, 林 秀行 2, 八木 年晴 3, 三上 文三 1
1
京大院・農, 2 大阪医大・化学, 3 高知大・農
【目的】
2-Methyl-3-hydroxypyridine-5-carboxylic acid oxygenase (MHPCO) は, FAD を補酵素とし,
NADHと分子状酸素を用いて, 3-hydroxypyridine-5-carboxylic acid 骨格をもつ化合物に二つの
酸素原子を添加してピリジン環を開環する反応を触媒する 1). また, 他の NAD(P)H 依存性の
フラビン酵素と同様に基質非存在下に NAD(P)H oxidase 活性を持つ. 本酵素は一次・三次構
造上 FAD 依存性一酸素添加酵素スーパーファミリーに属するが, 二酸素添加による開環反
応を触媒する唯一の酵素である. 我々はこれまでに本酵素の結晶構造を決定し, さらに阻害
剤である 5-Pyridoxic acid (5PA) との複合体構造を決定した. 5PA は活性部位に 2 つの様式で
結合しており, それによって 5PA に隣接した Tyr270 側鎖の位置が異なることを既に報告し
た. 本研究では, この Tyr270 の活性発現における役割を明らかにすることを目的とした.
【方法】
Site-directed mutagenesis により Y270F 変異酵素 (Y270F) を作製し, Steady-state kinetics によ
り Kinetic parameter を算出して野生酵素 (WT) と比較した. 基質として NADH と 5-Hydroxynicotinic acid (5HN, 3-hydroxypyridine-5-carboxylic acid) を用いた.
【結果】
5HN 非存在下の NADH oxidase 活性における NADH の Km は, WT と Y270F でそれぞれ 1200
と 310 µM となった. kcat は WT と Y270F でそれぞれ 0.19 と 7.4 s-1 となった. Y270F の NADH
oxidase 活性は WT に比べて kcat/Km にして 150 倍上昇した. 5HN の開環活性における 5HN の
Km は, WT と Y270F でそれぞれ 60 と 240 µM となった. NADH の Km は WT と Y270F でそれ
ぞれ 100 と 120 µM となった. kcat は WT と Y270F でそれぞれ 1.3 × 103 と 20 s-1 となった. Y270F
の開環活性は WT に比べて kcat/Km にして 265 倍減少した. また, WT の開環活性 (2.2 × 107
M-1s-1) は WT の NADH oxidase 活性 (1.6 × 102 M-1s-1) に比べて 138000 倍高かったのに対し,
Y270F の開環活性 (8.3 × 104 M-1s-1) と NADH oxidase 活性 (2.4 × 104 M-1s-1) は, ほとんど変わ
らないことが分かった.
【考察】
以上の結果から, Tyr270 は MHPCO 活性において, NADH oxidase 活性を抑制し, 開環活性を
促進するために必須のアミノ酸残基であることが明らかとなった. 本酵素が属する FAD 依
存性一酸素添加酵素スーパーファミリーの酵素, p-Hydroxybenzoate hydroxylase では基質Tyr201-Tyr385-水-水-His72 の proton transfer network により基質を認識することで, NADH オ
キシダーゼ活性を抑制し, 効果的に本来の反応を触媒していると考えられている 2). それに
対して MHPCO では基質-水-Tyr270 の水素結合によって基質を認識し, 酵素活性を調節して
いることが示唆された.
【文献】 1. Yuan, B., Yokochi, N., Yoshikane, Y., Ohnishi, K. and Yagi, T. (2006). J. Biosci.
Bioeng. 102, 504-510.
2. Palfey, A. B. and McDonald, A. C. (2010). Arch. Biochem. Biophys. 493, 26-36.
52
D-07
リボソームにおけるペプチド結合形成の反応機構に関する理論的研究
○福島和明 1,岩橋秀夫 1,錦見盛光 2
1
和歌山県立医大・医・化学,2 名古屋女子大・家政
【目的】我々はリボソームにおけるペプチド結合形成の反応機構について、四面体中間体
を経由するプロトンシャトル機構を仮定し、量子化学計算と分子力学計算を組み合わせた
ONIOM 法を用いた計算を行って、一段階目よりも二段階目の方が活性化エネルギーが高い
ことを見出した 1).本研究では、プロトンシャトル機構以外にプロトンリレー機構と協奏
的機構についても ONIOM 法を用いた計算を行い、それらの活性化エネルギーをプロトン
シャトル機構と比較した.
【方法】計算の入力構造は、リボソーム 50S サブユニットの X 線構造(PDBID:1VQP)2)の活
性中心から半径 20Å以内の領域を取り出
して作成した.計算には量子化学計算ソ
フト Gaussian09 の ONIOM 法を用い、入
力構造を活性中心から順にモデル系、中
間系、リアル系の三層に分割し、それぞ
れを密度汎関数法(B3LYP/6-31G(d,p))、
Hartree-Fock 法(HF/6-31G)、分子力学法
(Amber)で計算した.プロトンシャトル
機構、プロトンリレー機構、協奏的機構
について、それぞれ反応物、遷移状態、
中間体、生成物の構造最適化を行い、活
性化エネルギーを比較した(スキーム 1).
スキーム 1. ペプチド結合形成の反応機構
【結果】計算で得られた遷移状態の構造と反応のエネルギー図を以下に示す(図 1, 2).
TS1
TS2
TS3
TS4
図 1.
図 2.
遷移状態の最適化構造
反応のエネルギー図
【考察】各反応機構における活性化エネルギーは、プロトンシャトル機構では一段階目と
比べて二段階目の方が高かったが、プロトンリレー機構の二段階目はプロトンシャトル機
構の二段階目よりも低かった.協奏的機構の活性化エネルギーは、プロトンリレー機構や
プロトンシャトル機構よりも高かったので、検討した三種類の反応機構では、プロトンリ
レー機構が最も起こりやすいと考えられる.
【文献】1. Fukushima, K., Iwahashi, H., Nishikimi, M. (2012) Bull. Chem. Soc. Jpn. 85, 1093–1101
2. Schmeing, T. S., Huang, K. S., Kitchen, D. E, Strobel, S. A., Steitz, T. A. (2005) Mol.
Cell 20, 437–448
53
D-08
Streptococcus mutans F 型 H+-ATPase の反応調節部位の解析
○佐々木由香 1,前田正知 2,岩本 (木原) 昌子 1
1
長浜バイオ大・バイオサイエンス,2 岩手医科大・薬
【目的】口腔内の酸性環境で生存する Streptococcus mutans の F 型 H+-ATPase (FOF1) は,細
胞内部の酸性化を防ぐため,細胞外へ H+を能動輸送することが示唆されている.一方,ミ
トコンドリア,葉緑体,大腸菌細胞膜などに存在する F 型 H+-ATPase は,電子伝達鎖によっ
て形成されたΔμH+を利用して細胞内へ H+を輸送するのと共役して ATP を合成するため,
ATP 合成酵素と呼ばれている.我々は,さまざまな生物に存在する FOF1 の種類によって反
応が調節されていると考え,S. mutans 酵素に pH による反応調節機構が存在するかどうか,
また,どの領域に調節部位が存在するかを検討した.
【方法】 S. mutans H+-ATPase および大腸菌 ATP 合成酵素の 8 種類のサブユニット遺伝子は
オペロンを形成しており,プラスミドに導入したそれぞれの遺伝子を大腸菌の FOF1 欠損株
DK8 で発現させた.触媒部位を含む酵素の膜表在性部分(F1;α3β3γδεサブユニットより成る )
と H+輸送路を含む膜内在性部分(FO;ab2c10?サブユニットより成る) のどちらに調節領域が
存在しているかを知るため, S. mutans FO のサブユニット遺伝子に大腸菌 F1 のサブユニット
遺伝子 および b サブユニットの一部 (b55-165)をコードする遺伝子領域を結合した.また,
H+輸送路を構成する c サブユニットは二回膜貫通するヘリックスを持っていることから,
イオン輸送に必須な cGlu-53 残基の近傍に存在すると立体構造上で予想される cSer-16~
cGlu-20 および cVal-49~cVal-58 のアミノ酸残基に置換変異を導入した.これらの遺伝子を
導入した大腸菌株より細胞膜画分(反転膜小胞)を調製し, pH6.0 および pH7.0 で ATP 加
水分解に共役した H+輸送を調べた.
【結果】S. mutans の FOF1 が存在する細胞膜画分の ATPase 活性は,pH6.0 の時に 3.8
μmol/mg.min であり H+能動輸送も観察された.pH7.0 にすると活性は 1.2 倍上昇していたに
も関わらず H+輸送は見られなくなった.触媒部位を含む F1 部分を大腸菌のサブユニット
で置き換えたキメラ FOF1 を持つ膜でも同様の結果であった.対照実験とした大腸菌 FOF1
が存在する膜画分では,pH が 6.0 でも 7.0 でも ATP 分解活性とそれに共役した H+輸送が見
られた.これらの結果から S. mutans 酵素の H+輸送路には pH による H+輸送の調節領域が
存在すると示唆されたため,その領域を明らかにする目的で S. mutans FOF1 の c サブユニッ
トに変異導入を行った. H+輸送の必須残基を含む二番目のヘリックスの残基を大腸菌 c サ
ブユニットの相同領域のアミノ酸に置き換えた場合には,ATPase 活性にはほとんど変化が
無かったが H+輸送は pH6.0 でも起こらない場合があった.向かい合う一番目のヘリックス
領域を大腸菌型に置換すると,pH6.0 だけでなく pH7.0 でも ATP 加水分解による H+輸送が
見られるようになった.S. mutans の FOF1 またはキメラ FOF1 が発現した大腸菌細胞は,ど
ちらも in vivo で ATP 合成活性を示さなかった.
【考察】 S. mutans FOF1 を発現した膜画分では pH が酸性の時に H+能動輸送が見られたこと
から,酸性環境で H+を排出するための調節機構が存在しており,その一部は c サブユニッ
トの一番目のヘリックスにあることが示唆された.また S. mutans FOF1 の発現株が in vivo
での ATP 合成を示さなかったことは,本酵素の反応が ATP 分解による H+排出の方に偏っ
て起きるような調節が存在する可能性を示している.
54
D-09
VEGF-A/NRP1 シグナルは、ヒト悪性皮膚癌細胞の増殖を促進する
○吉田亜佑美 1,清水昭男 2,3,Michael Klagsbrun2,瀬尾美鈴 1,3,
1
京産大・院工・生物工学,2 Vascular Biology Program, Children's Hospital Boston, Harvard
Medical School,3 京産大・総合生命・生命システム
【目的】血管内皮増殖因子 (VEGF-A) は、腫瘍において腫瘍血管新生を誘導し、癌細胞の
増殖と生存、転移を促進する。我々は、VEGF-A の癌細胞への増殖と生存促進効果は VEGFR
依存性ではなく、癌細胞に発現するニューロピリン-1(NRP1)に依存することを示した。
【方法】転移性のヒト皮膚扁平上皮癌細胞株の DJM-1、ヒト前立腺癌細胞株 PC3M を用い
た。DJM-1 細胞、PC3M 細胞における VEGF-A、NRP1 のタンパク質発現の抑制は、siRNA
を使用した。また、shRNA を用いて、安定的に NRP1 発現が抑制された DJM-1 細胞のクロ
ーニングを行った。足場非依存状態における DJM-1 細胞、PC3M 細胞の増殖、生存能(コ
ロニー形成能)の評価には、soft agar assay を用いた。
RhoA の活性化は、Rhotekin-RBD- Protein
GST Beads(Cytoskelton 社)を用いてプルダウンし、調べた。in vivo における実験では、
ヌードマウスの右肩背部に shRNA で NRP1 発現を抑制した DJM-1 細胞を移植し、腫瘍体
積を継続的に計測した。
【結果】DJM-1 細胞、PC3M 細胞において、VEGF-A は NRP1 を介して腫瘍細胞を増殖さ
せ、足場非依存状態でのコロニー形成を促進した。VEGF-A と NRP1 の結合を阻害する可
溶化型 NRP1(sNRP)は、DJM-1 細胞のコロニー形成を抑制したが、VEGF-A と VEGFR
との結合を阻害するアバスチンでは抑制しなかった。さらに、NRP1 を介した VEGF-A の
シグナルは、細胞骨格の再編成に関わる低分子量 G タンパク質 RhoA を活性化した。ヌー
ドマウスを用いた異種移植実験においては、NRP1 の shRNA を処理した DJM-1 細胞は
shRNA Control と比較して腫瘍の体積が 1/2 に減少した。
【考察】以上の結果から、VEGF-A/NRP1 シグナルは NRP1 を発現する腫瘍細胞において
RhoA を活性化し、自身の増殖、生存を促進していることが示唆された。NRP1 あるいはそ
のシグナルの下流に存在する分子を治療標的とすることは、新規抗がん剤の開発に重要で
あると考えられる。
55
D-10
細胞老化が駆動する非自律的腫瘍悪性化の遺伝学的解析
○中村麻衣 1,2,大澤志津江 1,井垣達吏 1,3
1
京大・院生命・システム機能学、2 神戸大・院医・遺伝学、3JST さきがけ
【目的】がんの発生•進行には、がん細胞を取り巻くがん微小環境が重要な役割を果たすこ
とが近年分かってきた。しがしながら、生体内においてがん微小環境を制御するメカニズ
ムはほとんど不明である。これまでに我々は、がん遺伝子 Ras の活性化とミトコンドリア
の機能障害を同時に起こした細胞(RasV12/mito-/- 細胞)が、分泌性の炎症性サイトカイン
Upd(ショウジョウバエ IL-6 ホモログ分子)を産生・放出することで、その周辺の良性腫
瘍が高い増殖能と浸潤•転移能を獲得し、悪性化することを明らかにしてきた 1)。興味深い
ことに、RasV12/mito-/- 細胞は、自身もこれら分泌性因子を受容しているにもかかわらず増
殖しない。本研究は、このような特徴的な RasV12/mito-/- 細胞の性質に着目し、その細胞変
化を分子レベルで明らかにすることで、腫瘍悪性化を引き起こすがん微小環境の構築メカ
ニズムを解明することを目的とする。
【方法】本研究は、我々が構築したショウジョウバエ上皮腫瘍悪性化モデル(Xu, Pagliarini,
and Igaki; 国際特許(2005)、米国特許(2006))を利用して行った。ショウジョウバエ遺伝
的モザイク法により、3齢幼虫の複眼原基の上皮組織において、がん原性 Ras (RasV12) を
発現する体細胞クローンを誘導すると、この RasV12 発現細胞クローンは過剰に増殖して良
性腫瘍を形成する。この Ras 活性化細胞に対してミトコンドリアの機能障害を起こすよう
な突然変異を導入すると(RasV12/mito-/- 細胞)、その周辺の Ras 誘導性の良性腫瘍が悪性化
する 1)。本研究では、この RasV12/mito-/- 細胞内で引き起こされる細胞変化を、遺伝学的手
法と免疫組織染色により解析した。
【結果と考察】RasV12/mito-/- 細胞は、炎症性サイトカインを産生・放出しているにもかか
わらず自身は増殖せず、細胞周期の G1 期で停止していることが分かった。この現象は、
細胞老化に特徴的な表現型の一つ senescence-associated secretory phenotype(SASP;細
胞老化を起こした細胞が非可逆的に細胞周期を停止し、同時にさまざまな分泌性タンパク
質を産生•放出する現象)と類似している。そこで、ほ乳類で用いられている各種細胞老化
マーカーを用いて解析を行ったところ、RasV12/mito-/- 細胞が細胞老化に特徴的な表現型を
示すことが明らかとなった。さらに、その分子機構を遺伝学的に明らかにした。本研究は、
無脊椎動物において初めて細胞老化現象を捉えたものでもある。ヒトの腫瘍組織において
は、様々な刺激によって細胞老化を起こした細胞が存在すると想定されるため、本研究に
より明らかになった細胞老化を介したがん微小環境制御が、ヒトの腫瘍悪性化を駆動して
いる可能性が考えられる。
【文献】 1. Ohsawa, S., Satoh, Y., Enomoto, M., Nakamura, M., Betsumiya, A., Igaki, T. (2012)
Nature. 490, 547–551
56
D-11
N 末端を欠損した Lats1 キナーゼは細胞の異常増殖と染色体不安定性を引き起
こす
○岡本 歩, 向井智美, 藪田紀一, 野島 博
阪大・微研・分子遺伝
【目的】分化や胚発生において重要とされる Hippo pathway は, 接触阻害により
細胞増殖の停止やアポトーシスの誘導を起こすため, 癌細胞の悪性化(染色体不
安定性の亢進)の制御においても重要な経路である. アミノ酸発現が類似した
Lats1 (large tumor suppressor 1)と Lats2 は、この経路の中心的な役割を果たす.
Lats1 と Lats2 は, 細胞周期依存的にリン酸化制御を受けており, 特に Lats2 では
中心体の成熟に関与している. Lats1 と Lats2 の C 末側にあるセリン・スレオニン
キナーゼドメインは互いに 85%相同であるが, N 末側は 2 つの Lats Conserved
Domain (LCD1, 2) を 除 く と Lats1/Lats2 間 の 相 同 性 は 低 い た め , N 末 側 に
Lats1/Lats2 特異的な制御領域が存在すると予測される. 特に LCD1 は癌の悪性化
に重要であるといわれているものの, その詳細は分かっていない. そこで Lats1
の N 末側の機能を明らかにする目的で本研究を行った.
【方法】我々は, Lats1 の LCD1 欠損マウス(Lats1ΔN/ΔN)を作製し, Lats1ΔN/ΔN マ
ウス胚由来の線維芽細胞(MEF)を樹立した.
【結果】我々が作製した Lats1ΔN/ΔN マウスは, 無事に生まれたが, 生後 4 週目まで
は野生型(WT: Lats1+/+)に比べて体長は小さいことが分かった. 非常に興味深
いことに Lats1ΔN/ΔN MEF は WT と異なり, 癌細胞の特徴の 1 つである足場非依存
的な過剰増殖を示した. 更に悪性癌細胞の特徴である中心体の過剰増幅や染色
体の分配異常を引き起こすことも分かった. 実際に, Lats1ΔN/ΔN MEF をヌードマ
ウスに皮下注射すると顕著に腫瘍を形成した. これらの原因の 1 つとして Hippo
pathway の異常が考えられたことから, Lats1/2 の下流で基質となる転写制御因子
Yap の挙動を調べたところ, Lats1ΔN/ΔN MEF では Yap タンパク質が分解されず蓄
積していくことを見出した. 更に Lats1ΔN/ΔN MEF では Lats2 の mRNA およびタン
パク質の発現レベルが共に減少していることが分かった. また, Lats1 の全長や
キナーゼ活性を失わせた点変異体(kinase dead)を Lats1ΔN/ΔN MEF に戻したレス
キュー実験により, Lats2 の発現レベルは Lats1 の N 末領域と Lats1 のキナーゼ活
性に依存していることを明らかにした.
【考察】Hippo pathway において Lats1 と Lats2 は協調して Yap のリン酸化を行い,
Yap の細胞質隔離およびタンパク質分解を誘導することによって細胞増殖を負
に制御している. この結果から, Lats1 の N 末欠損は Lats2 の発現を減少させ, こ
れにより Yap の異常蓄積と細胞の足場非依存性増殖を引き起こす一方で, 中心
体制御の異常などによる染色体不安定性を引き起こすと考えられる.
57
D-12
がん細胞の増殖制御における Sav1 の機能解析
○
酒井伸也,柴田克志
姫路獨協大・薬
【目的】変異体ショウジョウバエを用いた研究より見出されたがん抑制遺伝子 Sav1
(Salvador homolog 1)は,Hippo シグナル伝達経路の構成因子としてタンパク質キナーゼ
である Mst1 および Lats1 等と複合体を形成し,転写因子のコファクターである YAP の活
性を調節する事により,細胞増殖・アポトーシス制御において重要な役割を担っていると
考えられている.本研究では,がん細胞の増殖制御における Sav1 の細胞生理機能を解明す
る事を目的としている.
【方法と結果】Sav1 を shRNA によりノックダウンしたがん細胞および非がん細胞を用い
て細胞周期分布および細胞増殖能の比較解析を行った.細胞周期解析の結果,非がん細胞
では細胞密度依存的に増殖の阻害が見られたが,Sav1 をノックダウンすると増殖が阻害さ
れなくなった.一方,がん細胞では,Sav1 の発現量にかかわらず細胞密度依存的な細胞増
殖抑制が認められた.細胞増殖能の測定結果は,細胞周期解析の結果と一致しており,Sav1
をノックダウンした非がん細胞は増殖の亢進が見られたが,がん細胞では Sav1 の発現量は
増殖に影響しなかった.また,Sav1 ノックダウンによる Mst1 および YAP のリン酸化への
影響をウェスタンブロットにより確認したところ,コントロール細胞と比較してリン酸化
の状態に差は認められなかった.さらに,Sav1 を過剰発現させた細胞を用いてアポトーシ
スの誘導実験を行ったところ,Sav1 の過剰発現はがん細胞のアポトーシスを亢進した.
【考察】細胞周期および細胞増殖制御における Sav1 の機能はがん細胞と非がん細胞で異な
っている可能性が示唆された.また,Sav1 は Hippo シグナル伝達経路の構成因子として細
胞増殖抑制やアポトーシスに関与すると考えられているが,がん細胞では Sav1 を介さない
Hippo シグナル伝達経路の活性化機構が存在すると考えられる.
58
D-13
細胞分裂時における微小管依存的な中心体方向へのエンドソームの流れ
○加藤洋平、高津宏之、中山和久
京大・院薬・生体情報
【目的】分裂間期のリサイクリングエンドソームは細胞全体に分散しているが、分裂時に
なると中心体に向かって移動しクラスターを形成する。このようなエンドソームの離合集
散がどのような分子メカニズムによるものなのかを解明することを目的とした。
【方法】 リサイクリングエンドソームに局在するトランスフェリン受容体(TfnR-EGFP)の
ライブイメージングを行い、細胞分裂時のエンドソームの局在変化を観察した。
HeLa 細胞を微小管重合阻害剤のノコダゾールで処理し、分裂期のリサイクリングエンド
ソームの形態変化を観察した。また、ノコダゾールを洗い流した後の回復過程におけるリ
サイクリングエンドソームのタイムラプス撮影も行った。
HeLa 細胞に Dynamitin を過剰発現させることにより、ダイニンモータータンパク質の機
能を阻害し、リサイクリングエンドソームの動態への影響を観察した。
分裂中期の中心体周辺に集積しているリサイクリングエンドソームの動態について
FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)によって解析した。
【結果】 分裂期のリサイクリングエンドソームの集積が中心体依存的なのか微小管依存的
なのかを調べた。高濃度のノコダゾール処理によって微小管の重合を完全に阻害すると、
分裂期のリサイクリングエンドソームは中心体の周辺に集積しなくなった。低濃度のノコ
ダゾール処理によって短い微小管の束が形成されている状態の細胞では、リサイクリング
エンドソームは中心体の有無によらず微小管の束の根元に集積した。この結果から、リサ
イクリングエンドソームの中心体周辺への集積は微小管依存的であると考えられる。
リサイクリングエンドソームが微小管上を動くためにはモータータンパク質が必要だと
考えられる。Dynamitin の過剰発現によりダイニンを阻害した細胞では、分裂期に入っても
リサイクリングエンドソームが中心体周辺に集積しなくなった。この結果から、エンドソ
ームの中心体周辺への集積にはダイニンが必要であると考えられる。
次に、分裂期のリサイクリングエンドソームが他のオルガネラと膜やタンパク質のやり
とりをおこなっているかを FRAP 解析によって調べた。分裂中期では TfnR-EGFP の蛍光の
回復は起こらず、外部からの AlexaFluor555-Tfn の取り込みも起こらなかった。分裂後期か
ら終期になると TfnR-EGFP と AlexaFluor555-Tfn の蛍光が共に回復した。これらの結果か
ら、リサイクリングエンドソームへの輸送は分裂中期には停止しており、後期から終期に
なると回復すると考えられる。
【考察】 分裂期のリサイクリングエンドソームが中心体周辺にクラスターを形成するのに
はどのような意味があるのだろうか。この時期の細胞はほぼ球状になるので、細胞の体積
に対する表面積の割合は最小にならなければならない。そのためには、エンドサイトーシ
スによって細胞表面から細胞内へと膜を取り込む必要がある一方で、エンドサイトーシス
された膜がリサイクリングによって再び表面に戻ることは抑制しなければならない。エン
ドサイトーシスされた膜やタンパク質をリサイクリングエンドソームの形で細胞内の局所
(中心体周辺)に隔離しておくことは、有糸分裂の調節において重要な役割を果している
可能性がある。
【文献】 1. Takatsu, H., Katoh, Y., Ueda, T., Waguri, S., Murayama, T., Takahashi, S., Shin,
H.-W., and Nakayama, K. (2013) Cell Struct Funct 38, 31–41
59
D-14
Src キナーゼ活性亢進による細胞質分裂阻害
添田修平 ,門脇志穂子 1,土橋遼 1,齊藤洋平 1,山岸伸行 1,福本泰典 2,山口直人 2,
○中山祐治 1
1
京都薬大・生化学,2 千葉大・院薬・分子細胞生物
2
【目的】これまで我々は,細胞分裂期において Src 型チロシンキナーゼが活性化し紡錘体
形成に関与すること,ERK を介して細胞質分裂を制御することなどを報告してきた(1~5)。
このように Src 型チロシンキナーゼは細胞分裂制御に関与するが,大腸癌など Src 活性が
異常亢進した細胞での細胞分裂への影響は不明である。そこで本研究では,Src 型チロシン
キナーゼ活性亢進のモデルとして v-Src を用い,細胞分裂に対する影響を調べた。
【方法】HCT116,HeLaS3 細胞においてドキシサイクリン(Dox)により v-Src を誘導発現
する細胞株を樹立し,v-Src 発現による細胞分裂への影響を調べた。
【結果】樹立した細胞に Dox を添加すると v-Src が誘導発現し,チロシンリン酸化レベル
の上昇,ERK の活性化,E-カドヘリンの減少をともなう細胞間接着の減少など,v-Src 発現
に典型的な表現型が観察された。v-Src 発現量は Dox の濃度依存的であり,1 ng/ml におい
ては細胞死を誘導したのに対し,0.1 ng/ml ではチロシンリン酸化の亢進は観察されたが細
胞死は誘導されなかった。そこで,0.1 ng/ml の Dox 濃度において v-Src 発現を誘導し,細
胞分裂への影響を調べた。v-Src 発現により中心体数が増加した二核細胞が観察され,v-Src
発現は細胞質分裂を阻害することが示唆された。細胞質分裂制御において重要なモーター
タンパク質である Mklp1 は細胞分裂後期においてミッドゾーン局在するが,v-Src 発現によ
りその局在が消失した。Mklp1 の局在を制御する Aurora B,および Aurora B とともに
chromosome passenger complex(CPC)を形成する INCENP のミッドゾーン局在も消失した。
さらに,分裂中期染色体から後期ミッドゾーンへの CPC の局在変化を制御する Mklp2 モー
タータンパク質も v-Src 発現によりミッドゾーン局在が消失した。一方,Aurora B,および
Aurora B によるヒストン H3 のリン酸化は後期染色体上に観察されなかった。また,v-Src
が細胞接着への影響を介して細胞質分裂に影響する可能性も考えられたが,浮遊細胞培養
系においても v-Src 発現時のみ細胞質分裂阻害が観察された。Time-lapse 解析とそれに続く
DNA 染色の結果,v-Src は細胞質分裂阻害により二核細胞を形成させることが明らかにな
った。
【考察】以上の結果より,v-Src 発現は細胞質分裂を制御するタンパク質である Mklp1,
Auorora B,INCENP の局在異常を誘導することで細胞質分裂を阻害し二核細胞を形成させ
ることが明らかになった。後期においては染色体とミッドゾーンの両方で CPC の局在が観
察されなかったため,CPC のミッドゾーン局在維持の異常が示唆された。本研究結果は,
がん細胞における Src 活性の亢進が細胞質分裂阻害により二核細胞を形成する可能性を示
唆している。
【文献】 1. Nakayama Y, Matsui Y, Takeda Y, Okamoto M, Abe K, Fukumoto Y, Yamaguchi N.
(2012) J. Biol. Chem. 287, 24905-24915
2. Matsui Y, Nakayama Y, Okamoto M, Fukumoto Y, Yamaguchi N. (2012) Eur. J. Cell
Biol. 91, 413-419
3. Kasahara K, Nakayama Y, Nakazato Y, Ikeda K, Kuga T, Yamaguchi N. (2007) J.
Biol. Chem. 282, 5327-5339
4. Kuga T, Nakayama Y, Hoshino M, Higashiyama Y, Obata Y, Matsuda D, Kasahara K,
Fukumoto Y, Yamaguchi N. (2007) Arch. Biochem. Biophys. 466, 116-124
5. Yamaguchi N, Nakayama Y, Urakami T, Suzuki S, Nakamura T, Suda T, Oku N.
(2001) J. Cell Sci. 114, 1631-1641
60
E-01
Lats2 は p21 へのリン酸化を介してアポトーシスを制御する
○鈴木宏和 1,藪田紀一 1,鳥形浩輔 1,岡田宜宏 1,野島博 1
1
阪大・微研
【目的】
癌細胞の特徴の一つにアポトーシスに対する抵抗性があげられる。DNA に対して修復不能
な損傷を受けると、p53 を介して PUMA,BAX などのアポトーシス誘導因子が転写される。
また、p21 は p53 により転写される代表的な細胞周期制御因子だが、一方で Caspase に結合
してアポトーシスを抑制するという一面ももつ。
Lats2 は我々が単離した Ser/Thr kinase で、細胞周期の制御、細胞増殖の抑制、p53 の安定化
などの重要な機能をもっている。最近我々は Lats2 が紫外線照射下でも機能を有している
という報告を行った 1。その報告の中で、Lats2 と p21 の間に相関があることを示唆するデー
タが得られたため、本研究を行った。
【方法】
1. 細胞内での内在・外来タンパク質の挙動を Western blotting で調べた。2. Lats2 や Chk1 を
siRNA法により阻害した。3. キナーゼと基質のリン酸化の有無を、放射能ラベルされた ATP、
或いはリン酸化基質特異的抗体を用いた kinase assay で調べた。4. タンパク質間の相互作用
を immunoprecipitation で調べた。5. Doxcyclin により Lats2 の発現誘導を制御できる細胞を
作成し、更にその細胞の生存率を Trypan blue staining で、アポトーシス検定を TUNEL assay,
Annexin-V staining により調べた。
【結果】
Lats2 を阻害することで、紫外線照射後に引き起こされる p21 の分解が抑制された。これは
Lats2 が p21 の negative regulator であることを示唆している。実際、Lats2 が p21 の Ser146
をリン酸化し、不安定化している事も明らかにした。更に、紫外線照射によって活性化し
た Chk1 が Lats2 の kinase domain の Ser835 をリン酸化し、Lats2 を活性化している事も分かっ
た。つまり、紫外線照射により活性化した Lats2 が p21 を分解へと導いている。次に、この
リン酸化され活性化した Lats2 のミミック(S835D)の発現誘導が可能な安定発現株を作成
しその挙動を調べると、著しい Caspaase 依存的なアポトーシスが生じた。更に、Lats2 によ
り分解されてしまう p21を過剰発現させると、このアポトーシスが抑制されることもわかっ
た。
【考察】
紫外線照射を受け p21 が分解されるという現象のメカニズムは、Chk1-Lats2 経路を経て行
われるものであることが本研究からわかった。更にその経路は、p53 の活性化に端を発す
るアポトーシスを促進するという、重要なものであると考えられる。すなわち、DNA 損傷
により p53 は安定化され、アポトーシス誘導因子と同時にアポトーシス阻害因子でもある
p21 の転写を誘導する。一方で Lats2 は Chk1 により活性化され、p21 を阻害する。これに
より p53 の機能はアポトーシス促進へと一本化されると考えている。今後は紫外線以外で
の DNA 損傷での下流における Lats2 の機能を明らかにしていく。
【文献】
1. Nobuhiro Okada , Norikazu Yabuta , Hirokazu Suzuki, Yael Aylon , Moshe Oren , and Hiroshi
Nojima, (2011) Journal of Cell Science. 124, 57–67
61
E-02
リポタンパク質関連ホスホリパーゼ A2 変異型(V279F)遺伝子によるアポトーシス誘導機序
の検討
○前田利長,竹内圭介,Pang XiaoLing,扇田久和
滋賀医大・分子病態生化
【目的】動脈硬化部位に集まるマクロファージからリポタンパク質関連ホスホリパーゼ A2
(Lp-PLA2)は分泌される.分泌された Lp-PLA2 は酸化リン脂質を分解し,その分解産物
は炎症を促進するとの報告がある.Lp-PLA2 の 279 番目のアミノ酸のバリン(V)残基が
フェニルアラニン(F)残基に変化した変異型(V279F)では酵素活性が抑制されている.こ
の変異型遺伝子を持つマクロファージが,野生型遺伝子を持つマクロファージよりアポトー
シスを起こしやすいことを前回報告した.今回,変異型遺伝子を持つマクロファージで見
られた高いアポトーシス誘導能の分子機構を明らかにするため,アポトーシスの主要な調
節因子であるカスパーゼと抗アポトーシス作用を持つ Akt に着目して検討した.
【方法】野生型 Lp-PLA2 -FLAG と変異型 Lp-PLA2(V279F) -FLAG を発現するベクターをア
フリカミドリザル腎臓由来 Cos-7 細胞に一過的に発現させた.60 時間培養し,16 時間の栄
養飢餓状態後の細胞をアネキシン V とヨウ化プロピジウム(PI)で染色した.フローサイ
トメーターで解析し,アネキシン V 陽性/PI 陰性の細胞をアポトーシスが誘導されているも
のとした.カスパーゼ,活性化カスパーゼ,ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP),
活性化 PARP, Akt,リン酸化 Akt(Ser473)は,それらに特異的な抗体を用いた Western blot
法で検出した.
【結果】栄養飢餓によりアポトーシスを起こした細胞は,変異型 Lp-PLA2 発現細胞の方が
野生型 Lp-PLA2 発現細胞より多い傾向にあった.しかし,カスパーゼ,活性化カスパーゼ,
PARP,活性化 PARP の発現は,野生型,または,変異型 Lp-PLA2 を発現させた細胞間で大
きな差は見られなかった.一方, Ser473 リン酸化 Akt は野生型 Lp-PLA2 発現細胞で増加し
ていた.
【考察】野生型,または,変異型 Lp-PLA2 を発現させた細胞でのカスパーゼの発現とその
活性化には大きな差が見られなかったことから,変異型 Lp-PLA2 によるアポトーシスの誘
導経路はカスパーゼに依存したものではないと考えられた.一方,野生型 Lp-PLA2 発現細
胞で Akt のリン酸化が増加していたことから,野生型 Lp-PLA2 発現細胞において Akt リン
酸化による抗アポトーシス作用が強く生じていたと考えられた.今後は,さらに,アポトー
シス刺激下で Lp-PLA2 が Akt のリン酸化を増加させる機序や,増加したリン酸化 Akt がア
ポトーシスを抑制する機序の詳細について明らかにしていきたい.
62
E-03
モデル生物メダカを用いた小胞体ストレス応答発動因子 ATF6α/βの生理的役割の解析
○石川時郎 1,2, 岡田徹也 1,2, 藤原-石川智子 3, 藤堂剛 3, 亀井保博 4,
重信秀治 4, 田中実 4, 斉藤太郎 5, 吉村淳 5, 森下真一 5,
豊田敦 6, 榊佳之 7, 谷口善仁 8, 武田俊一 9,2, 森和俊 1,2
1
京大・院理, 2CREST, 3 阪大・院医 4 基生研 5 東大・院新領域
6
遺伝研 7 豊橋技科大 8 慶大・医 9 京大・院医
【目的】小胞体は分泌タンパク質・膜タンパク質の folding の場として機能している。しか
し、特に『小胞体ストレス』と総称される生理的・病理的条件下では、小胞体内の環境が
悪化し、folding に失敗した構造異常タンパク質が小胞体内に蓄積してしまうことがある。
この状況に応答して、小胞体の恒常性を維持するために発動される機構が『小胞体ストレ
ス応答』である。高等動物の小胞体ストレス応答において、小胞体膜結合性転写因子であ
る ATF6αおよびβは小胞体ストレスに応答して活性化し、小胞体局在性分子シャペロンを
転写誘導することによって小胞体内の folding 能力を向上させ、小胞体ストレスを軽減して
いる。ATF6α/βダブルノックアウトマウスは胚性致死となるため、これらは個体レベルの
恒常性維持にも重要であると考えられているが、マウスでは初期発生の解析が困難である
ため表現型の詳細は明らかでない[1]。近年発表者はモデル生物であるメダカにおいて、
ATF6 が小胞体ストレス応答に寄与していることを示し (非脊椎動物である線虫・ショウジ
ョウバエ・ホヤ等では寄与していない)、 当該分野におけるメダカの有用性を示した[2]。
メダカには初期発生過程の観察が可能であるほか遺伝子改変が容易という利点がある。本
研究ではメダカを用いて ATF6 の生理的な役割を明らかにすることを目指した。
【方法】TILLING(Targeting Induced Local Lesions In Genomes)法によって ATF6αおよびβの
ノックアウトを同定し、これを用いた表現型解析を行った。また、ATF6α、βプロモータ
ーを用いた EGFP トランスジェニック系統により『ATF6 がどの組織で発現しているのか』
を解析した。同時に ATF6 の主要な標的遺伝子である分子シャペロンのプロモーターを用
いたトランスジェニック系統により『ATF6 がどの組織で活性化しているか』を解析した。
【結果】トランスジェニック系統の結果より、『ATF6αおよびβが全身において活性化可
能であるものの、特に脊索の伸長過程において機能していること』を見出した。ATF6α/
βダブルノックアウトメダカでは脊索において脊索鞘細胞の形態に異常が見られ、マウス
と同じく致死となった。これらの個体では小胞体局在性分子シャペロンの発現量が顕著に
低下しており、これを入れ戻すことによって、表現型の回復が確認された[3]。
【考察】脊索鞘細胞では細胞外マトリクスやシグナル因子等、多くのタンパク質を合成・
分泌する必要があるため、生理的な小胞体ストレスが生じていると考えられる。本研究に
より、このストレスが ATF6 により誘導された小胞体シャペロンにより軽減されることが
正常発生に不可欠であることが示された。
【文献】 1.Yamamoto K, Sato T, Matsui T, Sato M, Okada T, Yoshida H, Harada A, Mori K
Dev. Cell. 2007 Sep;13(3):365-76.
2. Ishikawa T, Taniguchi Y, Okada T, Takeda S, Mori K.
Cell Struct. Funct. 2011;36(2):247-59. Epub 2011 Nov 8.
3. Ishikawa T, Okada T, Ishikawa-Fujiwara T, Todo T, Kamei Y, Shigenobu S,
Tanaka M, Saito TL, Yoshimura J, Morishita S, Toyoda A, Sakaki Y, Taniguchi Y,
Takeda S, Mori K. Mol. Biol. Cell. 2013 Feb 27. [in press]
63
E-04
飢餓誘導型マイトファジーの発見とその解析
○英山明慶, 岡本(近藤)徳子, 岡本浩二
阪大・生命機能
【目的】マイトファジーはオートファジー経路の一つであり、ミトコンドリアを選択的に
分解するメカニズムである。出芽酵母では、呼吸増殖から飢餓状態に変化した場合と、呼
吸増殖を長時間行った場合にマイトファジーが誘導される。この際、マイトファジーに必
須なタンパク質 Atg32が発現し、ミトコンドリアの表層に局在することで分解が進行する。
Atg32 の発現上昇は呼吸増殖条件下で起こるため、マイトファジーの誘導には呼吸増殖の
過程が必要であると考えられてきた。しかし、我々は呼吸増殖を介さない飢餓状態の培養
のみでマイトファジーが誘導されることを見出した。加えて本研究では、マイトファジー
の特異的因子(Atg32, Atg11)や、非選択的オートファジーの特異的因子(Atg17, Atg29, Atg31)
が飢餓誘導のマイトファジーに必要であるかの解析も行った。
【方法】まず、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)に赤色蛍光タンパク質 mCherry を付加し、
融合タンパク質をミトコンドリアのマトリックスに局在させた酵母株を作成した。マイト
ファジーによってミトコンドリアが液胞(酵母のリソソーム)に運ばれると、DHFR は消化さ
れるが、mCherry は分解に耐性なので蓄積する。すなわち、ウエスタン解析によって検出
される free の mCherry は、ミトコンドリアが分解されたことを示す。対数増殖期の細胞を
飢餓培地で培養し、上記のアッセイを行った。更に、マイトファジー因子である Atg32 や
Atg11、非選択的オートファジー因子である Atg17、Atg29、Atg31 を欠損させた株を用いて
同様のアッセイを行った。また、蛍光顕微鏡と電子顕微鏡を使い、ミトコンドリアが液胞
に運ばれているかどうかを観察した。
【結果】細胞を飢餓培養してから 12~15 時間経過したところでミトコンドリアの分解が検
出された。これは、栄養リサイクルのために起きる非選択的オートファジーの誘導から 9~12
時間ほど遅れている。また、電子顕微鏡での観察からミトコンドリアが選択的に液胞に取
り込まれていることが確認できた。つまり、ここでのミトコンドリアの分解はオートファ
ジーによる非選択的な分解ではなく、マイトファジーによる選択的な分解である。また、
マイトファジー因子である Atg32 と Atg11 をそれぞれ欠損させた株ではミトコンドリアの
分解は起こらなかった。しかしながら、Atg32 の発現量は呼吸増殖時と比べて非常に低かっ
た。更に、非選択的オートファジー因子である Atg17、Atg29、Atg31 をそれぞれ欠損させ
た株でもミトコンドリアの分解が起こらなかった。
【考察】飢餓時のマイトファジーが非選択的オートファジーの後に遅れて誘導されること
から、細胞が飢餓状態に適応するためには、初期段階でミトコンドリアの代謝活性が必要
である可能性が考えられる。しかし、分解の時間的な差が生じるメカニズムの詳細は分か
らず、更なる解析が必要である。次に、呼吸増殖によるマイトファジーの誘導には重要で
ない Atg17、Atg29、Atg31 が、飢餓マイトファジーに必須であることは、この現象が非選
択的オートファジーの機能に依存していることを示唆している。Atg17、Atg29、Atg31 は
オートファジーのコア因子である Atg1-Atg13 複合体をリクルートするための足場を形成す
る。また、Atg1 の活性因子である Atg13 も飢餓マイトファジーに必須であることから、高
度に活性化した Atg1 が発現量の低い Atg32 の働きを補って、マイトファジーを誘導してい
ることが考えられる。今後、これまでは主に独立して働くと考えられていたマイトファジー
のシグナルと非選択的オートファジーのシグナルの両方が、飢餓マイトファジーではどの
ように関係して制御されているかを詳細に解析していく必要がある。
64
E-05
Estrogen receptor の核-細胞質間移動機構とその生理的意義の解明
○盛山哲嗣 1,岡正啓 2,米田悦啓 3
1
阪大・生命機能・細胞内移動学,2 阪大・医学・生化,3 基盤研
【目的】 エストロゲンレセプターの核-細胞質間のダイナミックな移動メカニズムとそ
の生理的重要性について解明することが、本研究の目的である。
エストロゲンレセプターは、生殖機能の発達、骨・脂肪代謝や神経機能など、体内の様々
な生理学的過程で重要な役割をしている。ステロイドホルモンの一種であるエストロゲン
は、細胞の脂質膜や核膜を通過し、核内にいるエストロゲンレセプターと結合する。その
後、レセプターは二量体を形成し、特定の遺伝子転写の調節をおこなう。一方で、エスト
ロゲンレセプターが、細胞膜上でリン酸化酵素複合体を形成し、細胞増殖などを促進する
ことが報告されている。ここで、主に核に局在するエストロゲンレセプターが、どのよう
にして細胞膜上に移動しているのか、という疑問が残る。
この疑問を解き明かすため、本研究では、以下の方法により、核膜を隔てたエストロゲ
ンレセプターの異なる細胞内コンパートメントの新規輸送制御機構の解明とその重要性に
ついて明らかにした。
【方法】エストロゲンレセプターは、培地中にエストロゲン有無に関わらず、核に局在し
ている。核へ輸送される蛋白質は一般に塩基性アミノ酸に富んだ核移行シグナル(classical
Nuclear localization Signal =NLS)を持っている。そこで、NLS を欠損した変異体を、HeLa
細胞に強制発現させることにより、レセプターの核から細胞質への移動を観察しやすくし
た。
次に、輸送制御機構を解明するため、NLS 欠損変異型レセプターを発現させた細胞に、
核外輸送因子として知られる CRM1 の阻害剤(Leptomycin B)や細胞内分子シャペロンの
一つである Hsp90 の阻害剤(Geldanamycin)を添加、核輸送因子として知られている 20 種類
の importin β family を、RNAi 法を用いて遺伝子抑制を行い、レセプターの移動を観察した。
最後に、エストロゲンレセプターの輸送制御の生理的重要性を明らかにするために、レ
セプターの移動を抑制させた細胞を用いて、エストロゲンレセプターの遺伝子転写活性を
ルシフェラーゼアッセイ法により調べた。
【結果】エストロゲン非存在下での NLS 欠損変異型レ
セプターは、野生型に比べると細胞質側にシグナルが観
察された。エストロゲンを加えると、NLS 変異型レセ
プターを観察すると、急速に細胞質側へと移動していた。
次に、Leptomycin B 存在下でも細胞質側へと変わらず移動したが、Geldanamycin を加え
ると、その移動が抑制された。また、20 種類の importin β family の中で、Transportin 2 の遺
伝子を抑制すると、細胞質側への移動が抑制された。
Transportin 2 の遺伝子を抑制した細胞に、野生型のエストロゲンレセプターを発現させ
て、遺伝子転写活性をルシフェラーゼアッセイ法により調べたところ、コントロールの細
胞と比較すると、遺伝子転写活性は低下していた。
【考察】以上の結果により、一見すると核に局在しているエストロゲンレセプターは、エ
ストロゲン依存的に、Hsp90 と Transportin 2 の働きにより、細胞質側へ移動していることが
明らかになった。さらに、この移動が、レセプターの細胞質側での機能だけでなく、核内
の転写活性にも重要であることを示した。このことは、エストロゲンレセプターが、核膜
を隔てた異なる細胞内コンパートメントをシャトリングすることで、何らかの変化(構造
変化、複合体形成)を起こし、その生理活性を獲得していることを強く示唆する。
65
E-06
大腸菌におけるシアノバクテリア生物時計の再構築
安部さゆり, ○松田宏矢, 寺内一姫
立命館大・生命科学
【目的】地球上のほとんどの生物が保持する生物時計は、細胞内に約 24 時間周期のリズム
を生み出し、体内の様々な生理現象や機能を制御する重要な機構である。シアノバクテリ
アは光合成を行う原核生物であり、生物時計を保持している最も単純な生物として知られ
ている。シアノバクテリアの生物時計は、生物時計に必須の KaiC と、そのリン酸化促進と
抑制を担う KaiA と KaiB の 3 つのタンパク質で構成される。3 つの時計タンパク質が相互
作用し複合体を形成することで KaiC のリン酸化サイクルを生みだす。試験管内で 3 つの
Kai タンパク質と ATP を一定温度に保持すると、KaiC のリン酸化状態が 24 時間周期で振
動し、シアノバクテリアの生物時計を in vitro で再構成することができる 1)。しかし、この
Kai タンパク質による生物時計がシアノバクテリア以外の他生物内でも機能するのかどう
かについては、これまでほとんど研究された例がない。そこで、本研究では本来生物時計
をもたない大腸菌における生物時計移植を試みた。
【方法】本研究ではシアノバクテリア Synechococcus elongates PCC7942 の時計遺伝子であ
る kai 遺伝子を持つプラスミドを大腸菌に形質転換することで、Kai タンパク質を大腸菌の
細胞内で発現させた。この形質転換体を連続培養し、発現誘導剤添加後に経時的に集菌し
破砕した。大腸菌粗抽出液における時計タンパク質をウエスタンブロット法により検出し
た。KaiC のタンパク質の移動度の違いからリン酸化型と非リン酸化型を判別し、シグナル
の強度から KaiC のリン酸化の比率を評価することで時計機能が発現しているかどうかを
評価した。
【結果】kaiC 遺伝子単独の発現ベクターをもつ大腸菌において KaiC の発現量とそのリン
酸化状態はほぼ一定であった。一方、kaiABC を導入した大腸菌では、3 つのタンパク質の
発現量と KaiC のリン酸化状態に 24 時間の周期性が認められた。また、発現誘導剤の添加
量を減少させた場合は、KaiC の発現量に周期性が認められたが、KaiC のリン酸化リズム
は失われた。
【考察】本研究の結果は、大腸菌で kaiABC を共発現させることで KaiC のリン酸化状態を
周期的に変動させることができる可能性を示唆している。また、大腸菌で生物時計が機能
したことで、遺伝子発現が周期的に制御されている可能性が見出された。今後は、kaiABC
を共発現させた大腸菌にレポーター遺伝子を導入しその発現を調べ、また大腸菌固有の遺
伝子発現量や酵素活性等の大腸菌の活動に 24 時間の周期的振動が生じているかどうかを
調べたい。一方、ペルオキシレドキシンの酸化還元リズムが全てのドメインの生物に共通
した生物時計の普遍的なマーカーであるという報告が最近なされたことから 2)、ペルオキ
シレドキシンを指標として大腸菌における生物時計の有無、Kai 発現大腸菌での時計構築
について検討する。
【文献】
1. Nakajima, M., et al. (2005) Science 308, 414-415.
2. Edgar, R.S., et al. (2012) Nature 485, 459-464.
66
E-07
概日リズム形成における時計タンパク質 KaiC の動態シミュレーション
○大山克明,寺内一姫
立命館大・生命科学
【目的】シアノバクテリアは概日リズムが内在するもっとも単純な生物であり,3 つの時
計タンパク質 KaiA,KaiB,KaiC が生物時計の中心的な働きを担っている.3 つの Kai タン
パク質と ATP を混合することで,KaiC のリン酸化型と脱リン酸化型が 24 時間周期で往来
するという生物時計再構成系が構築される 1).時計の中核である KaiC は ATP 依存的に六
量体を形成し,自己リン酸化能と自己脱リン酸化能をもっている.KaiA は KaiC のリン酸化
を促進し,KaiB は KaiA の反応を阻害する.KaiC の二つのリン酸化サイト Ser431 と Thr432
はそれぞれが順番をもってリン酸化と脱リン酸化される 2).まず Thr432 がリン酸化され,
次に Ser431 がリン酸化され, その後 Thr432,Ser431 の順で脱リン酸化される.3 つの Kai
タンパク質の反応によって KaiC のリン酸化状態は規則正しく 24 時間周期で変動するが,
そのメカニズムについてはまだ未解決のことが多く残されている.本研究は, 3 つの時計タ
ンパク質の相互作用解析により KaiC が 24 時間周期で振動する分子機構を解明することを
目的としている.
【方法】シアノバクテリア Synechococcus elongatus PCC7942 由来の KaiA,KaiB,KaiC を
大腸菌において大量発現させ, 精製した.KaiC の 2 つのリン酸化部位 (S431,T432) をア
スパラギン酸 (D),グルタミン酸 (E),アラニン (A) に置換した 8 種類の変異型 KaiC
(KaiC-AA,KaiC-AT,KaiC-AE,KaiC-SE,KaiC-DE,KaiC-DT,KaiC-DA,KaiC-SA) を作
製 し , 精 製 し た . 生 物 時 計 再 構 成 条 件 下 に お い て 各 タ ン パ ク 質 を 反 応 さ せ ,Blue
Native-PAGE を用いて Kai タンパク質の動態を解析した.また, Ma & Ranganathan (2012) 3)
のモデルを改良し Visual Basic で KaiC の単量体・六量体形成のシミュレーション解析を行
った.
【結果】野生型 KaiC に KaiA を添加し 30 ℃におくと, ほとんどの六量体 KaiC が 24 時間
後には単量体 KaiC になり,KaiC-DE,KaiC-DT では KaiA を添加しなくても 約 1 時間後に
六量体が単量体になることを見出した.これに対し,KaiC-AA,KaiC-AT,KaiC-AE,KaiC-SE,
KaiC-DA,KaiC-SA は同条件下で六量体を保ったままだった.次に,単量体化した KaiC に
KaiB を添加したところ,複合体が形成され,KaiC の単量体は減少した.シミュレーショ
ン解析の結果,リン酸化状態に依存して KaiC の六量体・単量体が振動していることが確認
できた.
【考察】以上の結果から,KaiC はリン酸化状態が高くなると六量体から単量体へと変化し,
そこに KaiB が相互作用することで KaiC が六量体に再構築されると考えられる.シミュレ
ーションの結果と実験結果を合わせる事で KaiC の六量体再形成には中間体の存在が推察
される. 今後は単量体化の機構とその意義について検討していく.
【文献】 1. Nakajima, et al. (2005) Science 308, 414-415.
2. Nishiwaki, et al. (2007) EMBO J. 26, 4029-4037.
3. Ma & Ranganathan (2012) PLoS ONE 7, e42581.
67
E-09
Anosmin-1 による RGMa の成長円錐崩壊作用の阻害機構の解明
○竹内祥人 1,清水昭男 2,岡本沙矢香 2,瀬尾美鈴 1, 2
1
京産大・工・生物工,2 京産大・総合生命科学・生命システム
【目的】本研究の目的は、中枢神経損傷を再生する治療法を開発することである。本研究
では、Anosmin-1 が成長円錐の形成を促進するメカニズムを明らかにすること、そして
Anosmin-1 が外傷による損傷を受けた中枢及び末梢の神経を再生させることを動物実験で
証明し、臨床応用を目指す。Anosmin-1 は分泌型糖タンパク質であり、鳥類およびほ乳類
発生期の神経軸索ガイダンスを行う分子であることが示唆されている。本研究室では、以
前に Anosmin-1 が神経軸索成長円錐の形成を促進することを明らかにしている。中枢神経
の損傷個所において、神経再生への障害を担っている抑制物質は、細胞内骨格の再構成と
軸索成長円錐の崩壊を誘導する反発性軸索ガイダンス分子 RGMa である。ゆえに損傷後の
神経を再生するためには、軸索成長円錐の崩壊を促進する分子 RGMa および下流抑制シグ
ナルを阻害することが必要であると考えられる。RGMa は RGMa 受容体である Neogenin と
相互作用することで成長円錐崩壊を誘導されることが報告されている。また RGMa の発現
が脊髄の損傷後に上昇することが報告されている。実際にラット脊髄損傷モデルにおいて
抗 RGMa 中和抗体を投与することで、損傷された軸索再生および機能の回復が促進される
ことが確かめられている。我々の調査で Anosmin-1 がもつフィブロネクチン(Fn)構造は、
RGMa 結合部位である Neogenin の Fn 構造と相同性があることがわかった。本研究では、
Anosmin-1 が RGMa の可溶型レセプターとして作用することで、Neogenin との結合を阻害
し成長円錐の形成を促進しているのではないかという仮説を立て検証するために実験を行
った。
【方法】培養神経細胞 PC12 を 12-well Plate に播種し FGF2 を加え、神経突起を伸長させた。
そこに Anosmin-1 あるいは、RGMa、Anosmin-1 と RGMa を同時に添加し、成長円錐を位相
差顕微鏡(IPlab)で撮影し成長円錐の面積を Image J で解析した。アクチンフィラメント
を共焦点顕微鏡で撮影する場合は、poly-D-lysine でコーティングしたカバーグラスを用い、
上記と同様の操作あるいは、RGMa と可溶型 Neogenin を同時に添加後、免疫蛍光染色し
た。Rac1,Cdc42,RhoA の活性化、または不活性化を pulldown 法を用いて調べた。100mm
dish に培養神経細胞 PC12 を播種し FGF2 を加え、神経突起を伸長させ、そこに RGMa ある
いは、RGMa と Anosmin-1 を同時に添加しタンパク質を回収をした。Anosmin-1 が
RGMa-Neogenin の結合を阻害するかを確かめるために、膜貫通型 Neogenin を過剰発現させ
た COS7 細胞を 6-well plate に播種し、
AP-RGMa
(CM)あるいは、AP-RGMa(CM)と Anosmin-1
を同時に添加し、NBT/BCIP によって染色した。
【結果】RGMa は、培養神経細胞 PC12 に添加後 15 分で成長円錐の面積を 70%に減少させ、
細胞骨格を制御する低分子量 G タンパク質 Rac1 を不活性化させた。一方、RGMa と可溶型
Neogenin を同時に加えると、
成長円錐の面積は変化しなかった。同様に、RGMa と Anosmin-1
を同時に加えると成長円錐の面積は変化せず、Rac1 の不活性化を阻害した。膜貫通型
Neogenin を発現させた COS7 細胞による結合実験において RGMa-Neogenin の結合が
Anosmin-1 によって阻害された。
【考察】これらの結果から、Anosmin-1 は Neognin と競合して RGMa と結合することによ
って、RGMa の成長円錐崩壊シグナルを阻害することが示唆された。従って、Anosmin-1
は脊髄損傷の神経回路不形成に対する治療の新たなアプローチであると期待できる。
68
E-10
神経細胞の形態形成におけるエズリンの機能解析
○松本洋亮 1,位田雅俊 2,田村淳 3,月田早智子 3,浅野真司 1
1
立命館大・薬,2 岐阜薬大・薬,3 阪大院・生命機能
【背景】Ezrin/Radixin/Moesin(ERM)タンパク質ファミリーに属するエズリンは,N 末端
側で原形質膜と,C 末端側でアクチン細胞骨格と結合して,両者を架橋するタンパク質で
あり,細胞の形態変化に伴う細胞骨格系の再構成に関与することが知られている。中枢神
経系において ERM タンパク質ファミリーは,神経細胞の成長円錐の形成や軸索伸長に関
与する。神経細胞においては Moesin(モエシン)が特に多く発現しているとされており,
また成長円錐においては Radixin(ラディキシン)も重要であることが RNA 干渉により発
現を抑制した実験から報告されている 1)。一方で Ezrin(エズリン)は,グリア細胞である
アストロサイトで優位に発現するとされており,神経細胞におけるエズリン固有の機能に
関しては十分に解析されていなかった。そこで本実験は,遺伝子改変によりエズリンの発
現が 10%以下にまで抑制されたエズリンノックダウン(EKD)マウス 2)を用いて,神経細
胞に対するエズリンノックダウンの影響を観察した。さらに,野生型(WT)初代培養神経
細胞におけるエズリン,ラディキシン,モエシンの発現を確認した後,初代培養神経細胞
の形態形成に対するエズリンノックダウンの影響を解析した。
【方法】8 週齢の WT および EKD マウスから脳切片を調製した。初代培養神経細胞は胎生
15.5 日 齢 の マ ウ ス 胎 仔 の 大 脳 皮 質 か ら 調 製 ・ 培 養 し た 。 形 態 の 解 析 は , 抗
microtubule-associated protein 2(MAP2)抗体,抗 neuronal class III beta-tubulin 抗体,rhodamine
phaloidin を用いて行った。組織における解析においてはさらに,ゴルジ染色法を用いた解
析を行った。
【結果】8 週齢の WT マウスにおけるエズリンの発現分布を調べ,大脳皮質や海馬など高
次機能を司る部位においてエズリンが高発現することを確認した。EKD マウスの大脳皮質
について形態解析を行った結果,錐体細胞において先端樹状突起の長さが野生型と比較し
て約 20%短いこと,基底樹状突起の数が少ないという神経突起の形成異常が観察された。
WT マウスの大脳皮質神経細胞培養(培養 1 日目)におけるエズリンの発現を解析した結
果,神経突起が形成されていない段階(ステージ 1),未成熟な神経突起が伸長している段
階(ステージ 2)の神経細胞でエズリンが発現しており,フィロポディアや成長円錐にお
いてアクチンフィラメントと共局在することを確認した。軸索が形成される段階(ステー
ジ 3)においては発現が減少しており,エズリンの発現が時間経過に伴って減少すること
を確認した。ラディキシンとモエシンは逆に時間経過に従って増加する傾向にあることを
観察した。さらに,EKD マウスの大脳皮質神経細胞について形態解析を行った結果,神経
細胞(培養 2 日目)において神経突起の数が少なく,軸索の長さが約 10%減少しているこ
とが確認された。
【考察】本研究では発達初期の段階で神経細胞にエズリンが発現することを明らかにした。
また,エズリンが神経細胞の形態形成,とりわけ神経突起の生成に重要であることが示さ
れた。
【文献】 1. Paglini, G., Kunda, P., Quiroga, S., Kosik, K., Caceres, A. (1998) J Cell Biol 143,
443-455.
2. Tamura, A., Kikuchi, S., Hata, M., Katsuno, T., Matsui, T., Hayashi, H., Suzuki, Y.,
Noda, T., Tsukita, S., Tsukita, S. (2005) J. Cell. Biol. 169, 21-28.
69
E-11
胆管細胞における ezrin の役割と肝内胆汁鬱滞症との関連性の検討
○波多野亮 ,秋山香織 1,田村淳 2,細木誠之 3,丸中良典 3,月田早智子 2,浅野真司 1,
1
立命館大・薬・分子生理,2 阪大・院医生命・分子生体情報, 2 京府医大・院医・細胞生理
1
【目的】胆管は肝細胞において毛細胆管中に分泌された胆汁の最終調整を担っている。特
に管腔側に発現する膜輸送体による電解質、水の分泌は胆汁の流動性の調節に重要であり、
Cl イオン輸送を担う CFTR や Cl-/HCO3-交換輸送体である AE2 の機能異常は原発性硬化性
胆管炎(PSC)や原発性胆汁性肝硬変(PBC)などの肝臓内胆汁鬱滞症の原因の一つであると考
えられている。一方 ezrin は ERM(ezrin-radixin-moesin)ファミリーに属する足場タンパク質
の一種であり、細胞膜タンパク質とアクチン細胞骨格を架橋する機能を有するタンパク質
である。従来肝臓においては radixin の発現が非常に豊富である事が知られており、radixin
欠損マウスでは高ビリルビン血症を呈し Dubin-Johnson 症候群の発症との関連性が示唆さ
れている 1。moesin は肝星細胞や血管内皮細胞に発現しており、moesin 欠損マウスを用い
た研究から星細胞の活性化に関わっている事が示唆されている 2。一方、ezrin は肝臓全体
に占める発現量は radixin, moesin に比べて極めて低いが、胆管細胞に特異的に発現してい
る。胆管細胞は肝臓全体に占める割合が数パーセント程度であることから radixin や moesin
に比して発現量が低く見積もられているものと考えられた。今回、我々は ezrin ノックダウ
ンマウス(Vil2kd/kd)の解析を行う過程で、新たに高度な肝障害を伴う事を見出した。Vil2kd/kd
マウスにおける肝障害は胆管細胞における ezrin の機能と大きな関わりがあると考えられ
ることから、本研究において胆管細胞における膜輸送体局在制御や機能制御に関わる ezrin
の役割について検討を実施した。
【方法】本研究において、in vivo における ezrin の機能解析を行う為に Vil2kd/kd マウスを用
いた。野生型及び Vil2kd/kd マウスより血漿を採取し、肝機能の指標である AST, ALT, ALP な
どを計測するとともに肝臓組織を採取して、肝臓内胆汁酸蓄積量の測定や組織化学染色、
免疫組織染色による病理学的な解析を実施した。更にマウス由来の不死化胆管細胞(NMC)
を用いて dominant negative 型 ezrin の発現による膜タンパク質の細胞内局在やイオンの経細
胞膜輸送に与える影響を検討した。
【結果】Vil2kd/kd マウスは、若年期から AST, ALT, ALP の有意な上昇を示した。またこれら
の血漿中の肝機能マーカーの異常値と共に、肝臓組織には胆管細胞増殖や胆管周囲の線維
化が生じている事が明らかとなった。更に Vil2kd/kd マウス肝臓内には著名な胆汁酸の蓄積が
認められ、胆汁鬱滞性の肝障害が生じている事が示唆された。免疫組織染色において、Cl
イオンチャネルである CFTR の管腔側での発現の低下が見られた。そこで NMC 細胞を用
いて ezrin の機能抑制時における CFTR の管腔側膜における局在への影響を biotinylation 法
により検討したところ、dominant negative 型 ezrin 発現細胞において、CFTR の管腔膜側発
現量の有意な低下を認めた.
【考察】以上の結果より、ezrin ノックダウンマウスは PSC や PBC と類似した胆汁鬱滞性
肝障害を呈し、ezrin 欠損に伴う胆管細胞の管腔膜側における CFTR の膜発現制御機能の異
常がこのような病態の発症原因になっている可能性が示唆された。
【文献】 1. Kikuchi S, Hata M, Fukumoto K et al. Nat Genet. 31(3):320-5, 2002
2. Okayama T, Kikuchi S, Ochiai T et al. Biochim Biophys Acta. 1782(9):542-8, 2008
70
E-12
腸管上皮細胞のバリア機能を調節する機能阻害抗体の作製
○森脇一将 1,朝日通雄 1,月田承一郎 2,古瀬幹夫 3
1
大阪医大・医・薬理学,2 京大・院医・分子細胞情報学,3 神大・院医・細胞生物学
【目的】
腸管の内腔を覆う一層の上皮細胞シートは、物理的なバリアを形成して外界(腸管内腔)
からの異物の侵入を防ぐと同時に、トランスポーターやチャネルを介して体に必要な栄養
分やイオンを選択的に体内に取り込んでいる。我々は、腸管上皮細胞シートのバリア機能
を調節することを目的に、そのバリア機能を担っている、タイトジャンクッション構成分
子である細胞間接着分子クローディンに対する機能阻害抗体を作製したので、今回報告す
る。
【方法】
腸管上皮細胞クローディンを安定的に発現する細胞株を樹立し、これをそのクローディ
ンノックアウトマウス(C57BL/6)に免疫して、所属リンパ節より得た細胞をマウス骨髄
腫細胞 P3 と融合させて抗クローディン抗体を産生するハイブリドーマを作製した。培養
細胞株およびマウス個体を用いて、得られた抗クローディン抗体の効果を免疫染色法によっ
て評価した。
【結果】
EGFP 標識した腸管上皮細胞クローディンを安定的に発現させた L マウス繊維芽細胞株
を、通常の培養シャーレ上で 48 時間培養して十分に細胞間接着を行わせた後に抗クローディ
ン抗体を処置した結果、抗体濃度依存的に細胞間においてクローディンの消失を認めた。
同様の条件で、他の種類のクローディンや細胞間接着の関連分子への影響を検討したが、
影響しなかった。
次に、Eph4 マウス乳腺上皮細胞株を用いて同様の実験を行ったところ、全く抗体の効果
を認めなかった。一方、トランスウェルを用いて、フィルター上で 48 時間培養した Eph4 細
胞に basal 側から抗体を 24-36 時間処置すると、細胞間において標的のクローディンの消
失を認めた。この時、他のクローディンをはじめ細胞間接着の関連分子には影響しなかっ
た。
最後に、C57BL/6 マウスに抗クローディン抗体を腹腔内投与して、その効果を組織免疫
染色法によって検討した。その結果、培養細胞株を用いた結果と同様に、標的クローディ
ンの細胞間染色の消失を認める一方、他の細胞間接着の関連分子には影響しなかった。
【考察】
以上の結果から、調べた限りでは、今回作製した抗クローディン抗体が、他の関連分子
の動態に影響せずに、標的とする腸管上皮細胞クローディンのみに対して特異的に結合し
て、その細胞間接着を阻害することが明らかとなった。この効果は、細胞培養系だけでな
く、マウス個体でも認めることから、今後、個体への応用によって、腸管上皮細胞のバリ
ア機能を調節するツールとなると考えられる。
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E-13
Epigenetics と力学的環境因子による EMT 制御機構への影響の解析
○大竹規仁、谷口浩章、小林聡
同志社大・生命医科学部・遺伝情報
【目的】EMT(Epithelial-mesencymal transition)とは、上皮細胞が線維芽細胞などの間葉系細
胞の形質を獲得する現象であり、初期胚発生や創傷治癒において重要な役割を果たすこと
が知られている。上皮細胞に EMT が誘導されると、上皮系マーカーである E-cadherin の発
現低下することで細胞間接着が弱まり、上皮系マーカーである E-cadherin の発現低下が認
められ、細胞の移動能が亢進する。このことから、EMT は癌の浸潤や転移に関与している
と考えられている。一方、EMT が Epigenetic な調節によって制御されているということが
示唆されているが 1)、その詳細な分子機構は明らかにされていない。本研究では、EMT 誘
導機構において Epigenetic な制御が関与するかどうかを検討した。また、最近になって一
般的な培養 dish での細胞の挙動と生体内での細胞の挙動が著しく異なるという報告がされ
ている 2)。そこで、足場の硬さという力学的環境因子が EMT を誘導した細胞に与える影響
について解析を行なった。
【方法】ヒストン脱アセチル化酵素 HDAC の阻害剤である TSA を TGF-β1 と同時添加する
ことで EMT の誘導が抑制されるかを、細胞の形態変化および EMT 関連遺伝子の mRNA 発
現量変動を指標に検討した。生体内の硬さに近いゲルがコーティングされた培養 dish を用
いて、力学的環境因子が EMT 誘導機構に及ぼす影響を上記と同様の方法により解析した。
【結果】TSA で前処理したマウス乳腺上皮 NMuMG 細胞に TGF-β1 を添加すると、線維芽
細胞様になるといった EMT 誘導によって引き起こされる形態変化は観察されなかった。
4~12kPa の硬さの培養 dish に撒いた細胞は、TGF-β1 を添加することで dish から剥がれ、細
胞塊を形成するという現象がみられた。EMT を誘導した全ての細胞で E-cadherin の発現低
下がみられ、さらに 8~12kPa の dish に撒き EMT を誘導した細胞で Snail、Twist、Slug といっ
た EMT 関連遺伝子の発現量が、一般的な硬さの dish に撒き EMT を誘導した細胞に比べ約
3 倍に増加していた。また、ヒストンリジン脱メチル化酵素 LSD1 の mRNA 発現量も同様
に 8~12kPa の硬さの dish で約 2 倍に増加していた。
【考察】TSA 処理によって TGF-β1 による E-cadherin の発現低下作用が抑制されたことから
TGF-β1 による EMT 誘導機構は HDAC による Epigenetic な調節を受けている可能性が示唆
された。力学的環境因子に関する実験により、生体内の硬さに近い基質で EMT を誘導した
細胞は、場の硬さ柔らかさによる密接な影響を受けていることが示され、細胞は最も適切
な硬さにおいて EMT を誘導し浸潤能を獲得する可能性が考えられる。また、LSD1 の mRNA
発現量も 8~12kPa の dish で増加していたことから、
dish から細胞が剥がれ Snail などの EMT
関連遺伝子の発現量が増加するという現象は、力学的環境因子によるものだけではなく、
Epigenetic な調節も関与して引き起こされる可能性を示唆した。
【文献】 1. Wu CY. et al. (2012) Trends Genet. 28,454–463.
2. Bissell MJ. et al. (2003) Curr Opin Cell Biol. 15,753–762.
72
E-14
Abnormal acetylation status of α-tubulin in fibroblasts derived from SMA patients
○Dian Kesumapramudya Nurputra1,Hiroyuki Morita2,Hisahide Nishio1,Yumi Tohyama 2
1
神大・院医・疫学,2 姫路獨協・薬・生化
【目的】There are some reports that histone deacetylase 6(HDAC6), the cytoplasmic
class IIb HDAC, affects the development of neurodegenerative diseases. However, its clinical
significance in spinal muscular atrophy (SMA) has not been determined yet. We aimed to identify
whether or not HDAC6 contributes to the pathology of SMA using fibroblasts derived from SMA
patients
【方法】Primary human fibroblasts derived from a healthy volunteer, SMA type 1 and SMA type 3
patients were cultured and treated with several types of HDACs inhibitors for 2 hours. After
treatment, inhibitors were washed out and cells were incubated for further 2 hours. Cell lysates were
subjected to immunoblotting analysis using anti-acetylated α-tubulin(K40), anti-α-tubulin and
anti-SMN antibodies. Furthermore, immunofluorescence staining was performed using
anti-acetylatedα-tubulin antibody.
【結果】In fibroblasts derived from a healthy volunteer, 2h-treatment of TSA(class I and II HDAC
inhibitor) or CAY 10603(HDAC6-specific inhibitor) greatly increased the acetylation at lysine 40 of
α-tubulin and depletion of inhibitors reduced the acetylation to its original level. In fibroblasts
derived from SMA patients, treatment of inhibitors enhanced acetylation similarly but the
deacetylation after removal of inhibitors was inhibited as compared to healthy volunteer-derived
cells. Immunofluorescence staining was consistent with the results of immuonoblotting analysis.
【 考 察 】 These results indicate that deacetylation rate of α -tubulin (K40)is delayed in
SMA-derived fibroblasts. It is suggested that SMN, an SMA causative gene product, contributes to
the activation process or function of HDAC6. HDAC6 may be a potential therapeutic target of
SMA.
【文献】
73
74
第 60 回日本生化学会近畿支部例会
例 会 長: 米田 悦啓 (大阪大学 生命機能研究科 / 医学系研究科)
実行委員: 菊池 章
(大阪大学 医学系研究科)
片平じゅん (大阪大学 生命機能研究科 / 医学系研究科)
岡
正啓 (大阪大学 生命機能研究科 / 医学系研究科)
第 60 回日本生化学会近畿支部例会要旨集
2013 年 5 月 18 日発行
発
行
者: 第 60 回日本生化学会近畿支部例会長 米田 悦啓
〒 565-0871 大阪府吹田市山田丘 1-3
大阪大学 大学院生命機能研究科 米田研究室内
生化学会 近畿支部 例会事務局
電話:06-6879-4606 fax:06-6879-4609
e-mail:[email protected]
印刷・製本: 株式会社ケーエスアイ
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表2-3