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MONTHLY 2016 年 12 月号
天然無垢木材の建具で成長
革新的組立工法を導入
新潟県見附市 えびすや
会社概要●株式会社えびすや:1952 年創業、72 年会社設立。無垢木材を使っ
た建材に事業の中心をシフトし、健康住宅ブームに乗って成長した。部材を簡単に
組み立てられ、強固に、高精度で接合する新工法を、家具や建具分野で新たに導入
を進めている。売上高約 4 億円、従業員27 名。本社:新潟県見附市新幸町 8-3 TEL0258-61-4688
http://www.etos-wood.jp/
ER 工法のイメージ。 端面の部品で、部
材同士を強固に、高い寸法精度で結合す
ることができる
が市場を席捲すると判断した佐藤社長
ことができる。逆に、引越しの際に分
ており、そうした需要も見込む。
は、差別化のために無垢材の枠付建具
解して運ぶことも可能だ。
ただ、結合部品はドイツ製の一般的
に事業を転換することを決めた。業績
配送コストや組み立ての手間がリダ
なもので、導入自体はどんな企業にも
は安定していたが、約 2000 万円分の
クション=削減できるという意味で、
可能という。今のところ、熟練技術者
在庫を処分して、無垢材に経営資源を
ER 工法と名付けた。当初は大型家具
を抱えた企業は、その仕事を失うこと
集中した。「業績が良い時こそ、将来
用に導入したが、最近では小学校の間
を恐れてか、なかなか手を出してこな
を見据えて事業を大胆に転換すること
仕切り壁など、造作材としての需要も
いが「いずれ人材不足になるのは目に
が大切」
(佐藤社長)と考えたからだ。
増加しているという。今後はマンショ
見えている。我々が先駆けとなり、業
ちょうどダイオキシン問題やシック
ンのリフォー
界全体に広めていきたい」と佐藤社長
ハウス症候群が世間の話題となり、住
ムなどで、間
は話す。
宅業界では自然素材が見直される気運
仕切りを兼ね
既存の事業にこだわらず、良いもの
となり、無垢材のソピアシリーズは
た大型家具が
を積極的に取り入れていく戦略で、小
建築業から建具メーカーへ、さらに天然木内装材全般へと、
ヒットした。大手との競合を避け、生
普及すると見
さくても長く続く企業を目指す。
た。最近では木製部材を簡単に高精度で組み立てられ、配
戦略が成功した。
本社に併設されたショールーム。 無
垢材の建具がずらりと並ぶ
き残れる道へと大胆に事業を転換した
時代の変化を読んで事業の中心をシフトして成功してき
送・施工コストを削減できる ER 工法を新たに導入し、家
具や建具業界の改革を先導することを目指す。 (編集部)
えびすや 代表取締役社長
新工法でリフォーム需要もにらむ
本社工場。ISO 9001の認証を取得している
佐藤 誠治 氏
同社が今後、大きく伸びると期待し
ている新事業が「ER(イージー・リ
長岡市の少し北、新潟県のほぼ中央
材の接着剤や塗料が原因と言われる
職人仕事、どんぶり勘定のはびこる状
高強度プラスチックや金属製の結合
部に位置する見附市。その工業団地に
シックハウス症候群の広まりとともに
態を改善するため、売り上げ 3000 万
部品を木製部材の端面に埋め込んだも
ある建具メーカー、えびすやの本社に
無垢木材の需要は増加し、安定してい
円程度の時代に 800 万円をかけてコ
のを、施工現場でかみ合わせるように
入ると、たちまち杉や松の良い香りに
る。同社も、従来は樹脂などとの複合
ンピューターソフトを導入、原価計算
して簡単に組み立てることができる。
包まれる。
素材を使った建材を販売していたが、
を徹底して採算性を向上させた。
釘やネジを使わないで強固に結合する
ショールームに並んだドアや仕切り
早めに無垢材へと事業を転換し、健康
その後、80 年代半ばからの建築ブー
ことが可能で、大工のような熟練技術
壁などの建具は、ほとんどが無垢の木
住宅ブームに乗って成長した。
ムでは、ドアを中心に、いち早くプレ
者は必要ない。
カット工法による枠付建具の生産を開
例えば部屋の天地いっぱいの本棚な
始。枠を職人が現場でつくるのが一
どを、現場で六角レンチ一本で組み立
材を使用している。もともと、中国・
黒竜江省周辺の木材から取り扱いを始
下り始めたら早めに見切る
め、国産木材の価格が下がってきた
えびすやは、佐藤誠治社長の父親で
般的だった時代に短納期・計画生産に
てることができるという。部材の状態
10 年ほど前から秋田杉や吉野杉など
大工の棟梁だった先代社長が建築業に
よって大きく業績を拡大した。
で配送・搬入するので、組み立て済み
も品揃えに加えた。
「ソピア」ブラン
見切りを付け、戦後間もなく建具メー
しかし 97 年ごろから不況の影響で
の家具を運ぶのと比べると配送費が安
ドシリーズとして展開している。
カーとして創業した。高校を卒業後、
大手建材メーカーが枠付建具ユニット
く、
間口が狭い住宅や、
小さなエレベー
価格は新建材に比べると高いが、建
すぐに家業を手伝い始めた佐藤社長は、
の生産にも進出し始めた。いずれ大手
ターのマンションにも、容易に入れる
トップの思い
新しいものを売るには
自分が変わること
ダクション)工法」だ。
さとう・せいじ 1948 年、 新潟県生まれ。 高校を卒業後、
家業の手伝いに入り、原価計算の徹底など経営の効率化に
取り組む。72 年、えびすやを設立し、 社長就任。ER 工法
の業界への普及に力を入れる
何事も、悪くなってから手を打つのでは、遅きに失すると思い
ます。ピークから下り始めたくらいのまだ良い時期に、先がどう
なるかを考え、生きる道を決める。建材メーカーが建具に進出し
てきたとき、無垢材に事業を転換したのはそのためです。市場が
それほど大きくなく、大手が手を出しにくい分野でしたから。
家具の生産が増え始めてきたときには「どうしたら、当社らし
い家具がつくれるか」を考えました。単に家具分野に進出するだ
けなら、価格競争になってしまいます。そこで、着目したのが
ER 工法です。木材の加工から手掛けている、当社のノウハウを
生かすことができて、組み立て精度も非常に高い。何より、配送
費や組み立ての手間が減らせて、お客様のメリットが大きい。
もちろん、それで職を失うかもしれない熟練技術者が当社にも
います。しかし、新しいものを売るには、売り手である我々がま
ず考え方を変えることだと思っています。 (談)