2014(第5回)フォトポエムコンテスト入賞作品 講評

2014(第5回)フォトポエムコンテスト入賞作品 講評
部門 賞
最
優
秀
優
秀
部
門
①
低
学
年
の
部
作
品
1
講 評
「じゅうたい」も「ぎゅうぎゅうづめ」も大人にすれば
“こまったなあ”のマイナスイメージ言葉。大人が苦に思
うことを子どもは楽しいと感じる。その逆転意識でみごと
にプラスイメージへと表現した詩。
菜の花と根じめのノジギクの白と黄も色合い的に good。三
つの言葉を一行詩としてぎゅっとおさめ、句点で締めたの
も小気味いい。
一緒に笑っておもしろがって楽しめて、なんだか元気が出
てくる詩をありがとう。
水色の文字を白にしてプリントしてみてごらん。またイメ
ージが変わるかもしれないよ。
緑の木々の中にたくさんなっている赤い実が、とってもき
れいですね。写真には写っていませんが、この木の下にはた
くさんの赤い実が落ちているのでしょうね。そこには、たく
さんの子どもたちが、この赤い実で遊んでいるのでしょうね。
何をして遊んでいるのかな?
『またあそぼう』という言葉に、帰る時間になっても、ま
だまだ遊びたい、また明日も遊びたい、という愛海さんの思
いを想像させます。そして、みんなに「また遊ぼう」と呼び
かけている姿も想像させます。
さらに、文末を「て」で終わらせたり、7 音5音のリズムに
したりと、声に出して読むとリズム感があって心地よいです。
愛
媛
CATV
賞
遊具をトンネルに見立てた写真の構図が面白いです。被
写体の切り取り方が素晴らしいと感じます。
文字の色を遊具と同系色の赤にしたことで、背景の遊具
と文字に一体感が生まれ、文字を読み進めるにつれてトン
ネルの中に吸い込まれてしまう感覚になりました。
また、ヘビやイモムシのように見えたという作者自身の
感想を詩に折り込むことで、このトンネルを通りぬける感
覚も読み手に感じさせることが出来ています。
素直でまっすぐな視点がとても良いです。
D-pro
賞
身の回りをよく見てみると、人の顔に見えたり、動物に見
えたりすることがあります。そうやって、視点を変えながら、
想像をふくらませることはおもしろいですね。一文一文、文
字の色を変えていることからも、色々なイメージを広げてい
ることが分かります。
このへんな木は、じっと見てみると健瑠くんの恐いものに
見えたのかな?恐いものって、野菜なのかな?近所のおじさ
んなのかな?読んでいて思わずくすっと笑ってしまう、かわ
いい作品です。また、全部の文末を「き」でそろえて韻を踏
んでいるのもすてきです。
そして、へんな木を、
「たけるのき」と締めくくっていると
ころもとってもいいですね。きっと健瑠くんは、楽しい男の
子なんでしょうね。
部
門
② 優
低
学
年 秀
の
部
やっと歩き始めたくらいの赤ちゃんが、お父さんに教え
てもらった踊りを「そんなの簡単にできるよ」とでも言っ
ているようなおすまし顔で踊っているところが、とてもか
わいいです。
そんな赤ちゃんの様子を見守っている、家族のみんなの
温かい気持ちが、詩から読み手の胸に伝わってきます。さ
らに、
「大きなくりの木の下で」という最後の1行が、その
場の様子を臨場感たっぷりと伝えています。
「すくすくと大
きく育ってね。
」と、これからの成長を見守りたくなる、と
ても心温まる作品です。
2
部門 賞
最
優
秀
優
秀
部
門
① 愛
媛
中 CATV
学
年 賞
の
部
作
品
講 評
「当たり前だろう、君は手袋なんだから」と、思わずつ
ぶやいた後、何ともいえない可愛さ、ちょっと舌を出して
茶目っ気たっぷりにウインクしている琴さんの顔が浮かび
ました。
文字の色、大きさ、フォント、字配り等、うまくレイア
ウトされ、文字数の少なさもあって、落ち着いてゆっくり
味わうことができます。
詩だけでは何のことだかわからず、写真だけでも意図が
伝わらず、二つが組み合わさって「これぞフォトポエム!」
の作品となりました。
1本1本くっきりと写ったサボテンのとげ。そして、その
鋭いとげをたくわえたサボテンの存在感。見つめれば見つめ
るほどサボテンの力強さを感じる写真になっていますね。
詩に目を向けてみると、作者にはきっとサボテンの言葉が
聞こえてきたんだ、と思えるくらい写真と言葉がぴったりで
す。それは、力強さや鋭さをサボテンの言葉で十分に表現で
きているからです。また、
「さわるといたいぞ○○○○○」と
繰り返したり、4行でひとつのかたまり(連)にしたりした
ことで、詩全体にリズムが生まれ、とても気持ちのよい響き
が味わえる作品です。
撮影を行う上で重要な「構図」が良い作品です。影が延
びた先に校舎の入口があり、仲良くなったか仲直りした二
人がそのまま教室に戻ってこれからも親友としての関係を
続けていく、というストーリーを想像でき、ストーリー性
あふれる写真だと感じました。
人物に直接カメラを向けるのではなく、影にフォーカス
したことで見る人が感情移入しやすくなっています。そし
て、撮影者の影も構図に収めたことで「主観」と「客観」、
どちらの視点でも作品を味わえるようになり、鑑賞の多様
性が広がり、多くの人の心を掴むことが出来るものになっ
たと思います。
タ
イ
ト
ル
賞
(
森
下
賞
)
構図がすばらしい写真です。握手をしている影を中心に据えるの
ではなく、あえて撮影者を端に残しています。もしかすると撮影者
がこの二人と「仲良しでいてね」という気持ちを込めたのかもしれ
ません。影の延長線上に学校の昇降口が見えます。これも意図的で
はないかもしれませんが、影も文字もそこに向かって吸い込まれて
いくように見えます。
詩についてですが、とても素直な言葉だけで表現していて、読む
人に真っ直ぐに伝わります。繰り返しの表現がリズムを生み、
「あく
しゅ」をひらがなで表現して動作の質感を伝えています。また、
「ぎ
ゅっ」というタイトルで作品に込めた思いを伝えています。文字の
大きさ、配列や色にも気を配っていることからフォトポエムとして
完成度が高い作品です。
三人の友情が未来永劫に続きますように。
D-pro
賞
この作品を一目見ると、思わず声に出して読みたくなって
きます。そして、声に出して読んでみると、リズムの心地よ
さに何度も何度も繰り返して読みたくなります。繰り返し声
に出して読んでいると、チューリップと一緒に揺れながら「ワ
ッセン、ワッセン、アラワッセン」と歌っているような楽し
い気持ちになってきます。
写真とぴったりの言葉を探して詩にするフォトポエム。
「ア
ラワッセン」というぴったりの言葉が生まれましたね。考え
て考えて作り出した言葉が、読む人みんなを楽しい気分にさ
せてくれる、すばらしいフォトポエムです。
3
部門 賞
部
門
①
中 D-pro
学 賞
年
の
部
優
秀
部
門
②
中
学
年
の
部
優
秀
部
門
②
優
高
学 秀
年
の
部
部
門
①
最
高 優
校 秀
生
の
部
作
品
講 評
この作品をみて、最初に目が行くのはどこでしょう。人の
足?「バッタたろう」という字?思わず、バッタはどこだ?
と探してしまいそうになります。人の足しか写っていないこ
とや目の前に草がおおいかぶさりそうになっていることが、
バッタからの目線を表すのにとても効果的です。また、「か
さかさかさ~にげまくる」までを草にまぎれて目立たない色
にしたことも、まさにバッタ目線でにげまくっている気持ち
になって詩を作ったことの表れですね。
写ったものでなくカメラ自体を何かに見立て、そのものの
目線で詩を作る。今までにない、とてもおもしろい視点の作
品です。
お参り帰り、長い階段を下りる小さな子どもたちの後ろ
姿。その先にはまっすぐと続く細い道。そしてその道は海
へとつながっていく。とても奥行きのある写真です。
「長く長くつづく」「どんどんつづく」の繰り返しが、
長い階段だけではなく、島の長い歴史、その歴史の中で純
朴に歩んでいく子どもたちの未来まで想像させています。
島で生まれ育った子どもたちが、故郷の愛に触れ、やが
て海を渡り大きく羽ばたいていく。そんな歴史と未来を感
じさせる作品です。
幼稚園から中学生、さらには地域の人たちが一緒になっ
て行う、小さな学校の運動会。砂がいっぱいついた体操服
で、真っ青な空に向かって思いっきりはちまきを投げる。
競い合った敵も関係なく、みんなの心が一つになった瞬間
ですね。
絵にかいたような真っ青な空が、ひたむきに頑張ったみ
んなの純粋な気持ちを写しているようです。青い空の視点
から書かれた前半の3行が、全力を出し切った子どもたち
の様子や、感動のもと終わった運動会を物語っています。
感動の一瞬を切り取った写真と、それを見事に表した詩が
融合したすばらしい作品です。
「親友日和」この言葉は、明るい笑顔の並んだこの写真に相まっ
て、インパクトは最高でした。作者の作った言葉でしょうか、読み
手にそのとおりだと感じさせる、言葉の力があります。
写真全体のパステルカラーの色合いも、淡く明るい文字の色も、「親
友日和」の雰囲気にぴったりです。楽しかった思い出が、このフォ
トポエムにぎゅっと込められていますね。
笑顔を隠さないように文字を配置するのに苦労したことと思いま
す。親友日和の言葉を生かすために思い切って、言葉を削ると伝え
たいことがよりはっきりしますよ。
最後の「親友日和」の文字とハートの重なりもかわいい雰囲気で
まとまりました。この笑顔の、親友のつながりをこれからも大切に
してほしいと思います。
他にももっと並べたい言葉やフレーズはあっただろう
に、そぎ落として、反復を使いながら8行にとどめているの
がいい。
作者の個人詩なのだが、だれの個人史でもあるだろうと
思える「とりたてて普通」の視点が素晴らしい。とらえた
のは「とある一瞬」だけど、そこに5年という時の流れと、
積み重ねた時の量を感じさせる。
詩でありながら物語として語りかけてくる。題名は何と
つけますか。「大人へ」ですか。
写真を観ながら、しみじみ、「雲は空の演出家だなあ」
と思いました。
4
部門 賞
優
秀
作
品
講 評
高校生として普段何気なく過ごしている、かけがえのな
い貴重な時間。その大切さにハッと気付かされる、そんな
ポエムになっています。長い人生の中で、振り返ると確か
に存在した輝かしい時。高校生で客観的にこの時を見つめ
られることが素晴らしい感性です。この詩を読む多くの世
代に共感の思いを抱かせることでしょう。
写真全体の少し暗めな色合いや、机の上の楽譜にだけ合
ったフォーカスの具合。文字の配置や、後半のバランスを
崩す渦巻き。どれもが落ち着いた大人のセンスを感じさせ
るものになっています。由緒あるお洒落な喫茶店に、額に
入れて飾りたくなるような作品です。
部
門
① 愛
媛
高
CATV
校
生 賞
の
部
スツールだけに赤色を残し、他をモノクロタッチに仕上
げた編集の技術により、椅子というタイトルが引き立って
います。ソフトウェアの機能を使いこなして芸術性の高い
写真に仕上げていることにとても感心しました。
写真の構図は人の目線の高さに合わせており、これから
椅子に座って話を聞いてもらう立場となる人の気持ちに入
り込むことが出来ます。この効果により詩の内容が見る人
の心にグッと届き、メッセージ性がより高まっています。
このまま啓発ポスターとしても掲示できるクオリティに仕
上がった作品です。
D-pro
賞
とても美しい写真です。夕日(朝焼け)を背景に三味線
を黒いシルエットで映し出しているところに、作者のセン
スを感じます。遠くにぼやけている景色の中に力強く映し
出している三味線の「黒」が、作者の強い心を表していま
す。
果てしなく広がる世界、悠長な時の中で、
「今」しっかり
と地に足をつけて、思いを高々と掲げている力強さが、言
葉からもしっかりと伝わってきます。さりげなく写ってい
る手のシルエットもそれを想像させます。
あなたの思いも、弾き継ぐ音色も、この作品から美しい
調べとなって、私たちの心に流れてきています。