3-3 海外自動車メーカにおける開発状況

3-3 海外自動車メーカにおける開発状況
3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況
海外自動車メーカにおける FCV の開発状況等を整理したものを表 3-3-1∼表 3-3-5 に
示す。
表 3-3-1 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 1)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 燃料電池スタックは Ballard,燃料電池システムは Xcellsis が開発を担当。 Ford,
Millennium・ メタノール改質形 FCV や直接水素形 FC バスを開発,デモ運転実施。
・ 2000 年,メタノール改質形 FCV「Necar5」,「ジープコマンダー2」を Cell,
AFCC,
発表。
・ 2001 年,日本で「Necar5」の公道走行試験を実施。約 1,300km 走行。 NuCellSys,
・ 2001 年 7 月,ドイツの配送業者 Hermes Versand Service 社と協同で, Siemens
直接水素形 FCV「Sprinter」の 2 年間のフィールドテストを行うと発表。
・ 2001 年 12 月,Millennium Cell 社の技術である,NaBH4 の水素貯蔵シ
ステムを使った「Town & Country Natrium」を発表。
・ 2002 年 10 月,高圧水素形 FCV の量販モデルである「F-Cell」(Ballard
製スタック)を発表(表 3-3-7)。2003 年から,欧州,米国,日本,シン
ガポールにおいて,合計 60 台を限定的に市場導入し,日常利用の実証を
行う予定。販売方法はリース方式。
・ 同時に高圧水素形 FC バス「CITARO」(Ballard 製スタック)を発表(表
3-3-6)。2003 年から,欧州 10 都市の交通事業者に合計 30 台を販売し,
通常の路線運転に導入するテストを行う予定。
・ 2003 年 3 月,「F-Cell」が日本で大臣認定を取得。JHFC プロジェクト
に参加し,公道走行実証試験を開始。
・ 市販用「F-Cell」の二次電池に,三洋電機製ニッケル水素電池を搭載。
・ FC バス「CITARO」をスペイン・マドリッド市に納入し商業運転を開始。
・ 2003 年 6 月,米国の宅配業者に,HEV や FCV を提供すると発表。
・ 2003 年 10 月,東京ガス,ブリヂストンとの間で,「F-Cell」の使用に関
するパートナーシップ契約を締結したと発表。2 社は,月額基本料 120 万
円を支払い,事業活動に使用する。同年 12 月に東京ガスに納入。
Daimler
・ 2005 年 9 月から北京で開始される FC バス実証試験に「CITARO」3 台
(Daimler
の購入が 2004 年 4 月決定。
Chrysler)
・ 2004 年 7 月,「F-Cell」をベルリンでドイツテレコムなどに納入。
・ 2004 年 7 月,シンガポールでスタートした SINERGY プロジェクトへ
F-Cell を提供。
・ 2004 年 9 月,オーストラリアのパースでスタートした STEP プロジェク
トへ FC バス「CITARO」を供試。
・ 2005 年 3 月,ジュネーブモーターショーで「F-Cell」より出力を向上
(100kW へ)し,航続距離も大幅に延長(400km)した 70MPa 高圧水
素形で二次電池として Li イオン電池を搭載した「B クラス F-Cell」を発
表・展示(表 3-3-8)。
・ 2005 年 3 月,愛知万博協会へ 2 台の「F-Cell」を貸与。
・ 2005 年 10 月,東京モーターショーで F600 HYGENIUS 発表(表 3-3-9)。
・ 2005 年 11 月,北京へ FC バス「CITARO」を納車。
・ 2006 年 2 月,ロサンゼルス空港に F-Cell 5 台を納車。
・ 2006 年 4 月,パトロールカータイプの F-Cell を発表。
・ 2007 年 1 月,消防指揮車両タイプの F-Cell を発表。
・ 2007 年 11 月,Ford および Ballard との共同出資により,自動車向けの
燃料電池の新会社「Automotive Fuel Cell Cooperation(=AFCC:自動
車燃料電池協同組合)」を設立。
・ 2010 年には B クラス F-Cell の少量生産を開始。2012 年から 2015 年に
は事業化へ。
・ 2008 年 10 月,バーラト・バラスブラバニアン副社長は都内での記者会
見で,2010 年に FCV の量産とリース販売を始めることを明らかにした。
当初は年間数百台を生産,主にヨーロッパで企業向けに販売した後,海外
市場でも展開する。
注)Daimler には DaimlerChrysler 以前の情報も含む。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2008
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-2 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 2)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 2008 年 12 月, 1 種類の車体に,3 種類の駆動方式をそれぞれ搭載した
Daimler
「Concept BlueZERO」を発表した。BlueZERO E-CELL(BEV),
(つづき)
BlueZERO F-CELL(FCV)(表 3-3-10),BlueZERO E-CELL Plus(プ
ラグインシリーズハイブリッド)の 3 車種である。
・ 2007 年 8 月,DaimlerChrysler から Chrysler 部門が米投資会社に売却 Daimler
された。売却後も技術開発などの提携関係は継続している。燃料電池に関
しては,FC スタックおよび FCV は Daimler から供給される見込みであ
Chrysler
る。
・ 2008 年 1 月,デトロイトモーターショーにて Li イオン 2 次電池と燃料電
池を搭載したハイブリッド・コンセプト「ecoVoyager」を発表(表 3-3-11)。
・ DOE/PNGV 計画で,50kW 直接水素形燃料電池の開発に参加。燃料電池 Daimler,
マツダ,
は IFC 社が担当した。
・ 1999 年 12 月,燃料電池に関して,DaimlerChrysler,Ballard と提携, NuCellSys,
AFCC,
共同で開発を進める。
Siemens
・ 2000 年,高圧水素形 FCV「Focus FCV」を発表。
・ 2000 年,EVS-17 において高圧水素形 FCV 「P2000」を試乗車として提
供。
・ 2002 年 4 月,新型の高圧水素形 FCV「Focus FCV」(Ballard 製スタッ
ク)を発表(表 3-3-12)。試験的に 5 台を顧客に提供した。
・ 2003 年から 2004 年にかけて「Focus FCV」を販売していく予定。
・ カリフォルニア州サクラメント,フロリダ州オーランド,ミシガン州デト
Ford
ロイトの 3 都市で,30 台の水素燃料電池車を提供し,BP が水素再充填ス
テーションを建設し,テストを行う計画を 2004 年 4 月発表。
・ 2005 年 5 月からカナダのバンクーバーで開始される VFCVP プロジェク
トへ「Focus FCV」を 5 台供試。
・ 2006 年 12 月,ロサンゼルスモーターショーに水素燃料電池車 Explorer
を出展(表 3-3-13)。
・ 2007 年 1 月,ワシントンモーターショーでプラグインハイブリッド FCV,
「Ford Edge with HySeries Drive™」を公開(表 3-3-14)。
・ 2007 年 7 月,世界最速を目指した燃料電池車「Fusion Hydrogen 999」
(表 3-3-15)を開発したと発表。
・ DOE/PNGV 計画で,30 kW メタノール改質形燃料電池の開発に参加。燃 ExxonMobil,
BP,
料電池は Ballard 社が担当した。
ChevronTexco,
・ 1997 年,メタノール改質形「Zafira」を発表。
Quantum,
・ FCV 開発で,トヨタと共同研究実施。
・ 米国ではガソリン改質形 FCV,欧州では液体水素形 FCV を中心に開発。 スズキ,
Hydrogenics,
ガソリン改質技術で Exxon,BP と共同研究。
・ 2000 年デトロイトモーターショーで「Precept」(水素吸蔵形)を発表。 Giner,
・ 2000 年ジュネーブモーターショーで「Zafira(液体水素)」を発表。シ Shell
ドニーオリンピックマラソン競技のペースカーに採用。北京で試乗会を開催。
・ 2001 年 1 月,Clean Hydrocarbon Fuel を研究の主要な候補とすること
でトヨタと合意。
・ 2001 年 6 月,水素貯蔵技術で Quantum と提携。
・ 2001 年 6 月,水素インフラの構築に関わる分野で General Hydrogen と
提携。
GM(オペル)
・ 2001 年 8 月,ガソリン改質形 FCV「Chevrolet S-10」を発表。
・ 2001 年 10 月,スズキと燃料電池車を共同開発することで合意。
・ 2001 年フランクフルトモーターショーで,補助電源を必要としない液体
水素 FCV「HydroGen3」のプロトタイプ車を公開。
・ 2001 年 10 月,Hydrogenics(加)に資本参加,Giner(米)との提携関
係を拡大。
・ 2002 年 1 月,液体水素 FCV「HydroGen3」を発表(表 3-3-16)。
・ 2002 年デトロイトモーターショーでボディを選べるスケートボード形
FCV「AUTOnomy」を発表。
・ 2002 年 5 月,「Chevrolet S-10」がガソリン改質形としては世界で初め
てとなる試走に成功したと発表。
・ 2002 年 7 月,Quantum と共同で 70MPa の高圧水素タンクを開発。
・ 2002 年 8 月,運転操作を電子制御して車両に伝えるバイ・ワイヤー技術
を搭載した直接水素形 FCV「HY-wire」を発表。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2008
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-3 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 3)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 2003 年 2 月,「HydroGen3」シリーズのザフィーラ・ミニバンに 70MPa
の高圧水素タンクを搭載し,公道走行試験に成功したと発表。2003 年 3
月,「HydroGen3」が日本で大臣認定を取得し,JHFC プロジェクトに
参加し,公道走行実証試験を開始。
・ 同年,燃料供給インフラ技術で Shell Hydrogen と提携。米国ワシントン
D.C.周辺で,FCV と燃料供給インフラの共同実証実験を 2003 年 10 月か
ら開始する予定。
・ 2003 年 4 月,FCV を BMW,オペルと共同で開発することを発表。2010
年までに FCV の販売を目指す。2003 年 5 月,米国・ワシントン DC で
FCV の実証運転プログラムを開始。2 年間実施し,米国議会関係者や環境
保護団体関係者などを対象に,最高 1 万回の試乗機会を提供する方針。
・ 2003 年 7 月,東京都内で「HydroGen3」による集配業務を開始。
・ 2003 年 10 月, 2010 年に米国,日本,欧州,中国の 4 地域で FCV の本
格的な実用車の販売を始め,利益を確保した上で,その後 10 年間に 100
万台を販売する計画を明らかにした。
・ 2004 年 6 月,アメリカの GM と郵政公社は,郵便配達車両に GM 製 FCV
「Hydrogen3」を導入することで合意。9 月からワシントン DC 周辺の配
達作業を始める。
・ 2004 年 8 月,GM とスズキが開発している FCV の 70MPa 圧縮水素貯蔵
システムについて,日本の高圧ガス保安協会の認可を得たと発表した。04
年内にも公道実証運転を開始する。この 70MPa 水素ガス貯蔵システムは,
アメリカの Quantum 社が開発,住友商事がスズキに納入した。
・ 2005 年 1 月のデトロイトモーターショーにて最新のコンセプトカー
「Sequel」を発表展示。70MPa 高圧水素形で前後 3 モータを有し 73kW
の FC スタックと Li イオン電池とのハイブリッド FCV。航続距離は
480km。(表 3-3-17)
・ 2005 年 2 月,FCV のリース販売を 2007 年までに現在の 5 倍になる 40
台に引き上げる計画を発表した。
・ 2005 年 6 月,スウェーデンの家具販売会社 IKEA と共同で,ベルリンに
おいて HydrogGen3 の実用性テストを実施。
GM(オペル)
・ 2005 年 4 月,アメリカ国防総省と共同で FC ピックアップトラックを開
(つづき)
発,米軍に非戦闘用として1台を納車。
・ 2005 年 11 月,GM 大宇が韓国で HydroGen3 の実証プロジェクトを立ち
上げることを発表。
・ 2006 年 9 月,第 4 世代燃料電池推進システムを搭載した「Equinox」(表
3-3-18)の実用化に向けて,顧客からの情報を収集するため,2007 年秋
に 100 台以上を消費者にリースすると発表。
・ 「Equinox」を米国陸軍に納車。
・ 2006 年 12 月,50 台以上の Equinox を 2007 年はじめにロサンゼルス地
域で走行開始すると発表。
・ 2007 年 1 月,デトロイトモーターショーで E-Flex システムを搭載した
プラグインハイブリッド車「VOLT」を発表。同車の内燃機関の代わりに
FC 搭載の可能性を発表。
・ 2007 年 4 月,上海オートショーで 2 代目 E-Flex システム(水素燃料電
池システム)を搭載したプラグイン燃料電池車 Chevrolet Volt を公開。
・ 2008 年 1 月,「The Cadillac Provoq fuel cell concept」を発表(表
3-3-19)。
・ 2008 年 3 月,同月下旬からロサンゼルス空港およびニューヨーク空港を
利用する英ヴァージン航空のアッパークラス対象の無料送迎サービスと
して,「Equinox」を 3 台ずつ走行させると発表。
・ 2007 年 9 月から 2009 年にかけて,110 台の「Equinox」FCV(70MPa)
をカナダの工場にて生産した。70MPa 対応ステーションが少ないため,
独自に 10 基の水素ステーション(70MPa)を米国に設置する予定である。
・ 2008 年 4 月,バーンズ副社長は全米水素協会(NHA)の会合において,
カリフォルニア州の環境への取り組みに応じる形で,2012 年から 2014
年にかけて同州で 100 台の水素 FCV を走行させる計画を明らかにした。
・ 2008 年 11 月,USDA(米農務省)と提携してシボレーEquinox 実証テ
ストを半年間行うと発表。
・ 2009 年 1 月現在,世界で 100 台以上の Eqiuinox が,走行試験を行って
いる。米国で約 100 台,ベルリンで 10 台,残りがアジアで走行している。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2008
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-4 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 4)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
CEA,
・ 1996 年から欧州燃料電池開発プロジェクトに参加。
・ 2001 年 7 月,Millennium Cell 社の水素貯蔵システムの供給を受け,共 CNES,
同開発の可能性あり。
Intelligent
・ 2001 年 12 月,仏原子力庁(CEA),国立科学研究所(CNRS)と自動 Energy
車向け燃料電池の開発で提携。
プジョー/
・ 2004 年 9 月のパリモーターショーで FCV「Quark」を展示発表。
シトロエン
・ 2006 年 1 月,仏原子力庁(CEA)と共同で小型 FC を試作したと発表。
最大出力 80kW
(出力密度 1.5kW/L 以上),エネルギー変換効率 40∼50%。
商業化は 10 年後。
・ 2008 年 4 月,英 Intelligent Energy 社と共同で H2 Origin(表 3-3-20)
を開発したと発表。
・ フィーバープロジェクトへの参画。
日産
・ 液体水素を燃料とした燃料電池車の開発。ニッケル水素電池を補助電源と
して採用。
・ 日産とは,2002 年 2 月に UTC Fuel Cells とともに燃料電池スタックの
基礎技術部分を共同開発し,改質器などの部分についてはそれぞれが独自
に手がけることで合意。
・ 2004 年,Nuvera-FC と共同開発した 70kW 改質器などのコンポーネント
ルノー
を発表。
・ 2004 年秋から ADME 主導の「Respire Project」に参画。ルノーはガソ
リン改質器を担当。2009 年以降車両開発を計画。
・ 2008 年 5 月,ルノー・日産アライアンスは FCV 試作車「セニック ZEV H2」
を開発したと発表した(表 3-3-21)。ルノーのミニバン「グランセニック」
をベースに,日産の FC システムなどを採用したものである。
・ Capri プロジェクトを機会に燃料電池の研究開発を開始。
Johnson
・ メタノール改質形燃料電池車の開発。Johnson Matthey 社製メタノール Matthey,
改質器を採用。
Ballard
・ 2000 年 11 月,液体水素形 FCV「Bora HyMotion」で CaFCP に参加。
・ 2002 年 2 月,純水素方式の「HY.Power」を試作(PSI 製 FC スタック)。
・ 2004 年 9 月,CaFCP に新たに 35MPa の圧縮水素形 FCV「Touran
HyMotion」を投入。バラードの 63kWFC スタック,シーメンスのモータ,
パナソニック EV エナジーの Ni-MH 電池を組み合わせたもので,航続距
Volkswagen/
離は 160km。(表 3-3-22)
・ 2006 年 11 月現在,120℃の高温膜(HT-VW)を開発中。商品化は数年
Volvo
先であるとの見通し。
・ 2006 年 6 月,HyMotion を CEP に導入。今後 2 年間で 2~3 台追加提供
の予定。
・ 今後開発する次世代 HyMotion では,自社製スタックを搭載する予定。
・ ドイツ Isenbüttel にて,ソーラーエネルギーによる水素供給実験設備を
開発,デモンストレーションを行っている。
・ 2007 年 11 月,ロサンゼルスモーターショーでプラグインハイブリッド
燃料電池車「space up! blue」を発表(表 3-3-23)。
・ アルカリ形燃料電池を利用した燃料電池タクシー(出力 5 kW)を実走行 Shell
Zevco
(1998 年,ロンドン)。
・ 水素エンジン自動車の補機用電源(APU)として燃料電池の採用を検討。 UTC-FC,
・ Delphi と SOFC を共同開発。
Delphi
・ 1970 年代より水素内燃機関自動車の開発を進めてきており,2006 年 11
BMW
月現在,第 7 世代のバイフュエル(水素-ガソリン)内燃自動車「Hydrogen7」
を開発。今後数年間で欧州向けに 75 台を製造。
・ 米国のバスメーカ Thor Industries.Inc.は,2001 年の中頃に世界に先がけ UTC-FC,
て北米における中型サイズの FC ハイブリッドバス「サンダーパワー」を ISE Reserch
Thor
商品化すると発表。FC は UTC-FC が,ハイブリッド技術は ISE Reserch
社が担当。
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2008
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-5 海外自動車メーカにおける燃料電池車の開発状況(その 5)
自動車メーカ
概 要
協力メーカ
・ 2001 年 2 月,イタリア環境省との共同プロジェクトとして,2 人乗りの Nuvera FC,
高圧水素形 FCV「SEICENTO-FCEV」を発表。
UTC-FC
・ FIAT の孫会社である IRISBUS と共同で 2 種類の FC バス
「CITYCLASS
HS-FC BUS」(表 3-3-24),「CRISTALIS HS-FC BUS」を開発。2003
年 か ら 行 わ れ る UTC-FC 製 FC スタ ック搭 載 FC バス の実 証試験
Fiat
CITYCELL Demo プロジェクトに導入される。
・ 2004 年 10 月,NuveraFC 製の 80kWFC スタックを搭載した New Panda
Hydrogen を開発(表 3-3-25)。
・ ZeroRegio プロジェクトに「Panda Hydrogen」を 3 台提供。
・ 2000 年 4 月,UTC-FC 製の 75kWFC スタックを搭載した「Santa Fe UTC-FC,
FCEV」を発表。
Quantum,
・ 2001 年 6 月,Quantum 製 350 気圧の高圧水素タンクを搭載した燃料電 LG Chem
池車がサクラメント−サンフランシスコ間を走行。
・ 2001 年 10 月,パナソニック EV エナジーの Ni-MH 電池と組み合わせハ
イブリッド化した「Santa Fe FCHV」を発表。
・ 2004 年 3 月,ジュネーブオートショーで二次電池としてリチウムポリ
マー電池と組み合わせた「Tucson FCEV」を発表展示し,4 月には DOE
現代・起亜自動
による FCV 実証評価プロジェクトに参加することを表明(表 3-3-26)。
車
・ 2004 年 9 月,パリモーターショーで新型 SUV「Sportage」燃料電池車を
発表。
・ 2006 年 9 月現在,Tucson FCV を AC-Transit に 7 台提供している。5
カ年,12 台の実証を行う計画である。
・ 2007 年 9 月,フランクフルトモーターショーで燃料電池コンセプトカー
「i-Blue FCEV」(表 3-3-27)を出展。
・ 2008 年 8 月,「世界 4 大グリーンカー強国」を目指す韓国政府の方針に
合わせ,2012 年から FCV を生産開始し,早期に実用化を図ると発表。
・ 2003 年 1 月,中国で初めて開発した FCV「超越 1 号」の試運転が上海の 上海汽車,
同済大学構内で行われた。これは,上海汽車,同済大学など十数の企業, 武漢理工大学,
研究機関が共同開発したもの。2008 年北京オリンピック,2010 年上海万 同済大学,
博に向け,実用化を目指している。
・ 2003 年 10 月,中国最大の自動車メーカ,第 1 汽車集団公司は,FCV に 清華大学,
上海交通大学,
関してトヨタ自動車の技術を導入する考えを明らかにした。
・ 上海市工業博覧会に「超越 2 号」を出展。2005 年から量産に入る見通し。 大連化学物理研
・ 東風汽車と武漢理工大学が共同で開発中の「楚天一号」が完成。走行テス 究所,
トで 100km/h 以上を達成。
上海神力科学有
・ 2004 年 4 月,D/C の「CITARO」FC バス 3 台が,北京の FCB デモプロ
限公司 等
ジェクトとして落札。2005 年 9 月から導入され,EV863 プロジェクトの
一環として実証試験が開始される予定。
・ 2005 年秋同済大学より「超越(start)3」を発表。
・ 2005 年 12 月,清華大学にて自国製 FC City Bus を 5 台製造し,走行試
験開始。
・ 2006 年 12 月,上海郊外にある同済大学のキャンパスで中国製 FCV「超
中国
越−栄威」のお披露目が行われた。
・ 2007 年 9 月,上海神力科技有限公司が開発した新世代都市型 FC バス「神
力1号」が上海で公開。
・ 2007 年 9 月,Shell の技術支援のもと安亭地区に水素ステーションが完
成,10 月オープン。
・ 2007 年 9 月,上海神力科学有限公司は FC バス「神力一号」を公開。数ヵ
月後にイタリアに輸出予定。また,2008 年北京オリンピック 22 台の燃料
電池車と 5 台の燃料電池バスを提供見込み。
・ 2007 年 10 月,上海汽車集団の胡茂元董事長は,燃料電池車を 2008 年北
京五輪までに 20 台試作し,2010 年の上海万博までに 200 台製作する方針
であると報道された。
・ 北京オリンピックで要人や報道関係者等の移動に 20 台の FCV が使用さ
れた。上海大衆汽車有限公司(上海汽車工業と VW の合弁企業)が製造。
駆動部分は上海の同済大学,上海汽車工業および上海燃料電池車パワート
レインが共同で設計したもの。(出典:http://www.fuelcelltoday.com)
出典:2002 年度までの JEVA 海外調査報告書,2003 年度∼2004 年度の JARI 海外調査報告書,2005 年度∼2008
年度の JARI 欧米調査報告書,プレスリリース,新聞記事等を基に作成。
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表 3-3-6 DaimlerChrysler CITARO (2002 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
価格
全長約 12 m
70 人
80 km/h
200 km
200 kW 以上
固体高分子形(Ballard 製 Mark902)
250 kW
圧縮水素(35MPa)
120 万ドル(メンテナンス費用込み)
表 3-3-7 DaimlerChrysler F-Cell (2002 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
燃料
水素消費量
出力補助装置
価格
3.785×1.720×1.590
140 km/h
150 km
誘導式
65 kW
210 Nm
固体高分子形(Ballard 製 Mark902)
68.5 kW
圧縮水素(35MPa)
4.2L/100km
(ディーゼル換算:23.8km/L)
ニッケル水素電池
2003 年 12 月からリース販売
−103−
表 3-3-8 DaimlerChrysler B-Class F-Cell (2005 年 3 月発表)
外
観
乗車定員
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料
出力補助装置
5人
400 km
100 kW
固体高分子形(Ballard 製)
圧縮水素(70MPa)
Li イオン電池(20kW)
表 3-3-9 DaimlerChrysler F600 HYgenius (2005 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
航続距離
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
4.348×2.017×1.700
174 km/h
400km 以上
60kW/85kW
210 Nm
固体高分子形(D/C 製)
80kW
圧縮水素(70MPa,4kg)
Li イオン電池(30kW/55kW)
−104−
表 3-3-10 Daimler Concept BlueZERO F-CELL(2008 年 12 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員
航続距離
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
4.223×1.890×1.593
5人
400km 以上(NEDC Mode)
100kW
320Nm
固体高分子型
90kW
表 3-3-11 Chrysler ecoVoyager (2008 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
航続距離
電動機最大出力
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
4.856×1.915×1.600
1,247kg
300mile(FC)+40mile(電池)
200kW
45kW
圧縮水素(70MPa)
Li イオン電池(16kWh)
−105−
表 3-3-12 Ford Focus FCV (2002 年 4 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
(全長)4.338×(全高)1.758
1,600 kg
128 km/h
260-320 km
65 kW
固体高分子形(Ballard 製 Mark902)
−
圧縮水素(35MPa)
ニッケル水素電池(三洋電機製)
表 3-3-13 Ford Explorer(2006 年 12 月発表)
外
観
2,560kg
6人
560km
130kW(65kW×2)
60kW
圧縮水素
350mpg M-H
50kW
車両重量
定員
航続距離
電動機最大出力
燃料電池出力
燃料
燃費
出力補助装置
−106−
表 3-3-14 Ford Edge with HySeries Drive™(2007 年 1 月公開)
外
観
最高速度
航続距離
燃料電池出力
燃料
燃費
方式
出力補助装置
136km/h
360km(電池のみで 40km)
35kW(Ballard 製)
圧縮水素(35MPa),4.5kg
41mpg(ガソリン等価)
プラグインハイブリッド FCV(シリーズ)
リチウムイオン電池,130kW,336V
表 3-3-15 Ford FUSION HYDROGEN 999 (2007 年 8 月発表)
外
観
207mph
Ballard 製
350kW
圧縮水素
最高速度
燃料電池
燃料電池出力
燃料
−107−
表 3-3-16 GM HydroGen3 (2002 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
乗車定員
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
最大駆動トルク
燃料電池
燃料電池出力
燃料
4.315×1.750×1.685
1,750 kg
5名
160 km/h
400 km
三相非同期モータ
60 kW
215 Nm
固体高分子形
94kW(定格)/129kW(最高)
液体水素(68 リットル・4.6kg)
Hydrogen3 として,液体水素形以外に 30MPa および 70MPa の高圧水素形がある。
表 3-3-17 GM SEQUEL (2005 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
4.994×1.996×1.697
2,165kg
480km
三相非同期モータ
(前)60kW,(後)25kW×2
固体高分子形(GM 製)
73kW
圧縮水素(70MPa)8kg
Li イオン電池(SAFT 製)65kW
−108−
表 3-3-18 GM Equinox Fuel Cell(2006 年発表)
外
観
4.796×1.814×1.760
2,010kg
4人
160km/h
320km
三相非同期モータ
94kW
固体高分子形(GM 製)
93kW
圧縮水素(70MPa)
ニッケル水素電池 35kW
全長×全幅×全高(m)
車両重量
定員
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
表 3-3-19 GM CADILLAC PROVOQ FUEL CELL(2008 年 1 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
航続距離
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
ハイブリッド方式
4.580×1.850×1.703
160km/h
300mile
=280mile(FC)+20mile(電池)
第 5 世代
出力 88kW
圧縮水素(70MPa,6kg)
リチウムイオン電池,9kWh
プラグインハイブリッド FCV(シリーズ)
−109−
表 3-3-20 PSA H2Origin(2008 年 4 月発表)
外
観
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
ハイブリッド方式
表 3-3-21
外
100km/h
308km(NEDC Mode)
(EV 走行:78km)
35kW
固体高分子型
(Intelligent Energy 製)
10kW
圧縮水素(70MPa/35MPa)
(Faber 製)
ニッケル水素電池 15.4kWh(PEVE 製)
シリーズハイブリッド FCV
Renault Scenic ZEV H2(2008 年 6 月発表)
観
車両重量
定員
最高速度
航続距離
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
1,860kg
5人
160km/h
350km
固体高分子型(日産製)
90kW
高圧水素(35MPa)
コンパクトリチウムイオン電池(日産製)
−110−
表 3-3-22 VW Touran HyMotion (2006 年モデル)
外
観
最高速度
航続距離
電動機種類
電動機最大出力
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
表 3-3-23 VW
外
140km/h
160km
ASM
80kW
固体高分子形(Ballard 製)
85kW
圧縮水素(35MPa),2.6kg
高出力 Ni-MH
space up! Blue (2007 年 11 月発表)
観
全長×全幅×全高(m)
重量
最高速度
航続距離
電動機最大出力
燃料電池
燃料
方式
出力補助装置
3.680×1.630×1.570
1,090kg
121km/h
220mile
=155mile(FC)+65mile(電池)
45kW
高温型燃料電池
圧縮水素
プラグインハイブリッド FCV
Li-ion 電池(プラグイン可能)
−111−
表 3-3-24 FIAT・IRISBUS CITYCLASS HS-FC BUS
外
観
全長(m)
乗車定員
最高速度
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
12
73 名
60 km/h
固体高分子形(UTC-FC 製)
75kW
圧縮水素(20/35MPa)
鉛酸電池
表 3-3-25 FIAT Panda Hydrogen(2005 年モデル)
外
観
4名
1,390kg
135km/h
250km(Urban Cycle)
3 相 AC モータ 50 kW
Nuvera 製 PEFC 70kW
圧縮水素(35MPa),68L
なし
乗車定員
車両重量
最高速度
航続距離
電動機
燃料電池システム
燃料
出力補助装置
−112−
表 3-3-26 HYUNDAI TucsonFCEV (2004 年 3 月発表)
外
観
最高速度
航続距離
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
150km/h
350km
固体高分子形(UTC-FC 製)
80kW
圧縮水素(35MPa)152L
Li ポリマー電池(LG ケミカル製)
表 3-3-27 HYUNDAI i-Blue (2007 年 9 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
最高速度
電動機最大出力
航続距離
燃料電池出力
補助電源
燃料
4.850×1.850×1.600
165km/h
(前)100kW,(後)20kW×2
600km
100kW
スーパーキャパシタ,450V,100kW,13wh/L
圧縮水素(70MPa,115 リットル)
−113−
表 3-3-28 Van Hool A330 Fuel Cell (2005 年モデル)
外
観
全長×全幅×全高(m)
定員
航続距離
モータ
駆動システム
燃料電池
燃料電池出力
燃料
出力補助装置
12.192×2.591×3.480
座席数 30,定員 48 名
400∼480km
Siemens ELFA Drive;
AC induction motor(85kW)×2
ISE ThunderVolt® hybrid drive system
UTC Power PureMotionTM120
固体高分子形(UTC-FC 製)
120kW
圧縮水素(5000psi,50kg)
SCI 製 typeⅢタンク
ZEBRA®電池
−114−
3-3-2 Ballard Power Systems 社を中心とした提携関係
カナダの Ballard Power Systems 社は,1997 年 12 月に DaimlerChrysler 社(当時
は Daimler Benz),Ford 社と燃料電池開発連合を結成した。2008 年 1 月になって,
DaimlerAG,Ford 社,Ballard Power Systems 社は,合弁によってカナダのバンクー
バーに Automotive Fuel Cell Cooperation(AFCC)を設立した。AFCC では自動車用
FC スタックの開発・製造を行う。FC システムの開発・製造は従来通りドイツのシュツッ
トガルトにある NuCellSys が行う。出資比率は DaimlerAG が 50.1%,Ford が 30%,
Ballard Power Systems が 19.9%である。Ballard 社における自動車用 FC の研究開発
グループは AFCC に異動し,Ballard 社はこれによって定置用等の自動車以外の FC 用
途に特化することになる。
−115−
3-3-3 欧米 PEFC 関連メーカの事業の展開状況
表 3-3-28 に JARI 等が過年度に実施した海外調査から推定した欧米 PEFC メーカの各
コンポーネント別の製品化・開発状況を整理する。
表 3-3-29 燃料電池事業(PEFC セル関係)の展開(2009 年 1 月現在)
MEA+
MEA+ セパレータ
ガスケット セパレータ セパレータ
スタック
+
ガスケット
高分子膜
触媒
GDL
MEA
DuPont
製品化
研究中
研究中
製品化
研究中
製品化
研究中
研究中
3M
製品化
研究中
研究中
製品化
研究中
研究中
研究中
研究中
製品化
製品化
BASF Fuel Cell
(含. PEMEAS,Engelhard)
W.L.Gore
製品化
JohnsonMatthey
研究中
製品化
Solvicore
(Umicore)
製品化
製品化
SGL-Carbon
Ballard Power
Systems
製品化
製品化
製品化
研究中
製品化
研究中
製品化
研究中
AFCC
研究中
UTC Fuel Cells
研究中
Nuvera
Fuel Cells
研究中
研究中
製品化
研究中
製品化
製品化
研究中
研究中
製品化
製品化
研究中
研究中
製品化
製品化
研究中
Siemens
Intelligent
Energy
製品化
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
研究中
製品化
研究中
製品化
研究中
製品化
注:「製品化」とは,規模を問わず,専用ラインを用いて製造し,少量でも商品として販売している段階を
示す。「研究中」とは,基礎研究段階からサンプル出荷の段階までを示す。
−116−
3-4 わが国における燃料電池車開発促進に向けた取組み状況
3-4-1 わが国政府における取組み状況
(1) ニューサンシャイン計画注1)
石油代替エネルギーの導入の一環として,新エネルギーの実用化にむけた技術開発が
進められてきた。通商産業省工業技術院(現在の産業総合研究所)では,新エネルギー
に関する研究開発の推進を目的として,1974 年に太陽光発電等の新エネルギー技術の
研究開発を行う「サンシャイン計画」を,1978 年に省エネルギー技術の研究開発を進
める「ムーンライト計画」,1989 年に地球環境保全技術に係る研究開発制度をスター
トさせた。これらの計画により研究が,産官学の連携のもとで進められ,基本技術の確
立やその実用化,関連分野への技術的波及等の成果を着実に実らせている。しかし,新
エネルギー技術,省エネルギー技術,地球環境保全のそれぞれの技術には重なる部分も
多いため,一層連係して進めていくため,1993 年に,「ニューサンシャイン計画」を
スタートさせ,中,長期的に顕著な効果が期待できる革新的技術として太陽光発電や燃
料電池などが重点的に研究されてきた。
(2) 水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)計画注2)
WE-NET(World Energy Network)計画は,ニューサンシャイン計画の一環として,
1993 年より NEDO のプロジェクトとして実施された。WE-NET 計画は,再生可能エネ
ルギーを利用して水素を製造し,これをエネルギー消費地へ輸送し,この水素をエネル
ギーとして利用するという世界規模のクリーンエネルギーネットワークを構築すること
を最終目標とした。
WE-NET 計画は,1993 年度から 2002 年度まで続けられ,2003 年度からは新たなプ
ロジェクトである「水素安全利用等基盤技術開発」(後述)にとってかわることになり,
過去 10 年間にわたる成果は,この新しいプロジェクトに反映されていくこととなった。
(3) 水素安全利用等基盤技術開発
わが国のエネルギー供給の安定化・効率化,地球温暖化問題(CO2)・地域環境問題
(NOx,PM 等)の解決,新規産業・雇用の創出,水素エネルギー社会の実現等に資す
るため,固体高分子形燃料電池の早期の実用化・普及を目指す「固体高分子形燃料電池
/水素エネルギー利用プログラム」の一環として,2003 年度から 2007 年度の 5 年間
(2004 年度末までを前期,その後を後期と設定)実施される。2003 年度の事業規模は
43 億円で,2004 年度は 64 億円,2005 年度は 39 億円,2006 年度は 29 億円であった。
なお,2006 年度の研究開発分野は以下のとおりである。
注1)
新エネルギーガイドブック概論編新エネルギー・産業技術総合開発機構(著作権者:新エネルギー・
産業技術総合開発機構)
注2)
WE-NET ホームページより(http://www.enaa.or.jp/WE-NET/contents_j.html)
−117−
① 車両関連機器に関する研究開発(燃料電池自動車用機器の研究開発)
② 水素インフラに関する研究開発(70MPa 級の圧縮水素や液体水素に係わる要素
技術開発等)
③ 水素に関する共通基盤技術開発(水素利用に関する基盤横断的研究開発)
A.共通基盤技術に係わる実用化技術
B.共通基盤技術に係わる国際共同研究及び支援研究
(4) ミレニアム・プロジェクトにおける燃料電池関連事業
小渕首相(当時)の発案により,新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え,
人類の直面する課題に応え,新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組むことと
なった。これを新しい千年紀のプロジェクト,すなわち「ミレニアム・プロジェクト」
という。「ミレニアム・プロジェクト」は,今後の日本の経済社会にとって重要性や緊
要性の高い情報化,高齢化,環境対応の三つの分野について,技術革新を中心とした産
学官共同プロジェクトである。このプロジェクト全体の予算は 1,206 億円注)であった。
FC 関連プロジェクトの大きな目標は,「2005 年までに,燃料電池自動車,住宅等にお
ける燃料電池コージェネレーションシステムの導入を図る」というものであった。表
3-4-1 にスケジュールを整理する。燃料電池に関しては,2004 年度で終了となった。
表 3-4-1 ミレニアム・プロジェクトの「燃料電池」の年次計画
平成12年度
(2000年度)
水素製造・貯蔵の
技術開発・検証
燃料電池の
試験研究
燃料電池の
評価手法の確立
燃料電池関連
基準の整備
注)
技術開発
平成13年度
(2001年度)
平成14年度
(2002年度)
平成15年度
(2003年度)
平成16年度
(2004年度)
技術実証・データ収集
燃料優位性の比較
安全性・耐久性等の試験研究の実施と試験結果のフィードバック
評価手法確立のための調査・研究
安全性,耐久性等
評価手法の確立
基準整備のための調査,検討
基準整備
国際標準活動への参加・対応
国際標準の具体的提案
KYODO NEWS ONLINE(1999.12.19)より。
−118−
(5) 日米水素・燃料電池共同声明注1)
2004 年 1 月 8 日,水素・燃料電池に関する研究開発や規格・基準に係る日米間の協力
を強化するため,経済産業省および米国エネルギー省の間で,日米間の協力取り決めの
締結に向けた交渉に着手することに合意し,坂本経済産業省副大臣とエイブラハム DOE
長官は,日米水素・燃料電池共同声明に署名した。
この日米水素・燃料電池共同声明は,以下に示すような内容を意図している。
① 燃料電池並びに水素の生産,貯蔵および輸送の技術分野において相互に決定した
問題に関するワークショップおよびセミナーを開催し,参加するために,認識を
ともにした政府関係者および民間を含む専門家を結集すること。
② 専門家の交流を行い,水素燃料インフラを整備するための共通の規格,基準およ
び規制ならびに要求に対する提言を含む,燃料電池および水素分野における現在
の政策,技術プログラムおよび開発に関する情報を供給すること。
③ 相互の同意により決定される追加的活動に参加すること。
(6) 経済産業省の燃料電池実用化戦略研究会
1999 年 12 月,経済産業省は,燃料電池の導入の意義を明確化するとともに,その実
用化に向けた課題の抽出と課題解決の方向性を探るため,資源エネルギー庁長官の私的
研究会として産学官から構成される「燃料電池実用化戦略研究会」(座長:茅陽一 現東
京大学名誉教授)を設置した。国内外の企業,関係団体,外国政府等による報告と,こ
れを踏まえた議論,検討が行われ,2001 年 1 月 22 日に開催された第 9 回研究会におい
て報告が取りまとめられた注2)。
2004 年 3 月 11 日に開催された第 12 回研究会では,燃料電池に関する取組みの現状
の報告があり,とくに定置用燃料電池に関しては,燃料電池自動車と比べ認知度が低い
という現状が報告され,実証試験のあり方等について意見が出された。また,水素エネ
ルギー社会の将来像(表 3-4-2,表 3-4-3),水素社会に向けた普及のシナリオ(表 3-4-4)
が提案され,2005 年以降の第 2 フェーズに向けた考え方等が議論された。提案された水
素エネルギー社会の将来像,水素社会に向けた普及のシナリオを以下に示す。
注1)
注2)
第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料より抜粋。
報告書の概要については,2006 年度調査報告書,もしくは経済産業省「燃料電池実用化戦略研究会
の報告について」(平成 13 年 1 月 22 日)を参照。
−119−
表 3-4-2 燃料電池自動車に関する将来イメージ
フェーズ
①2005∼2010
(導入期)
将来イメージ
・ 水素インフラの整備には相当な資金と時間を要し,当面は現実的には制約がある
ことから燃料電池自動車は,大都市圏,および工業地域等で副生水素が比較的近
くで得られるエリアにおいて導入が進む。
・ この段階では都市内フリート走行車に導入が進展すると考えられ,路線バス,公
用車等を中心に,2010 年において 5 万台の燃料電池自動車の導入を期待する。
・ 想定される水素需要量は約 3.6 万 t(約 4 億 Nm3)であり,必要な水素ステーショ
ンは,500 箇所程度(ガソリンスタンドの約 1%)と見込まれる。
・ 水素ステーションで供給する水素の燃料源については,基本的に各種燃料のコス
トや燃料補給の難易度等を比較衡量して事業者が判断するものであるが,この段
階では,水素の需要が限定的であるため,オフサイト型では副生水素のローリー
輸送による供給,オンサイト型では化石燃料改質が中心になると想定される。
②2010∼2020 ・ 水素インフラのエリアが拡大し,全国の主要都市と,その周辺地域に普及する。
(普及期)
・ 全国の路線バスと公用車に加え,業務用乗用車等に導入が進み,2020 年において
は 500 万台の燃料電池自動車の導入が期待される。
・ 想定される水素需要量は約 58 万 t(約 65 億 Nm3)であり,必要な水素ステーショ
ンは,3,500 箇所程度(ガソリンスタンドの約 7%)と見込まれる。
・ 水素供給の中心は,引き続き副生水素および化石燃料改質と想定される。
・ 水素需要量が増加するため,副生水素の供給源に近くかつ大規模なステーション
では,パイプラインによる水素の供給が始まる。
・ 効率的な水素貯蔵技術が確立されれば,ローリー輸送によるオフサイト型水素ス
テーションが主流となる可能性もある。
・ 水素ステーションから近くのエリアへの直接水素供給や,ステーションに定置用
燃料電池を設置し,電気や熱を供給するようなモデルも想定される。
③2020∼2030 ・ 水素インフラが全国に拡大し,燃料電池自動車も全国に普及する。燃料電池自動
(本格普及期)
車の生産拡大とコスト低下が相まって,自立的な導入が進展する。
・ 自家用乗用車にも導入が進展し,2030 年において導入が期待される燃料電池自動
車は,1,500 万台と見込まれる。
・ 想定される水素需要量は約 151 万 t(約 170 億 Nm3)であり,必要な水素ステー
ションは,8,500 箇所程度(ガソリンスタンドの約 17%)。
・ 水素需要量が副生水素による供給可能量を上回ることとなるため,オンサイトの
化石燃料改質に加え,再生可能エネルギーによる電気を用いた水電解による水素
製造や,石炭ガス化ガスからの改質による水素製造も,現実的な製造方法の一つ
となる可能性がある。
・ 効率的な水素貯蔵材料(金属系,化学系,炭素系等)が実用化されれば,オフサ
イト水素が大規模集中システムで製造され,水素ステーションに効率的に水素が
輸送されるシステムが確立する。
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成
−120−
表 3-4-3 定置用燃料電池に関する将来イメージ
フェーズ
将来イメージ
①2005∼2010
(導入期)
・ 家庭用については,世帯人員や床面積の観点から,比較的熱需要が多いと想定
される世帯に 1kW の家庭用燃料電池の導入が進むと見込む。
・ また業務用については,既存技術である内燃機関のコージェネレーションでは
高い発電効率が得られなかった数 kW クラスの規模を中心に,燃料電池の導入
が進む。
・ 天然ガス,LPG,灯油等の既存のインフラを活用する形で,2010 年において 220
万 kW の定置用燃料電池の導入を期待する。
②2010∼2020
・ 生産量の増加,技術開発のさらなる進展により,定置用燃料電池の価格が低下
(普及期)
し,比較的熱需要の多いと想定される世帯の多くに 1kW クラスの燃料電池が導
入されると見込む。
・ また,高温形の燃料電池の性能も向上し,業務用を含む比較的大きな規模の需
要についても,燃料電池の導入進展が想定される。
・ 定置用燃料電池の普及率が高まることにより,集合住宅や,工業地域等の需要
家が密接している地域において,改質器を共有して水素を直接配管で供給する
システムや,改質器と燃料電池を共有し,各需要家に直接電気と温水を供給す
るようなシステムが実現することも想定される。
・ さらに,特定の地域においては,各家庭や事業所等に設置された燃料電池を相
互に連携制御し,熱電エネルギーの大半を域内で賄うシステム(マイクログリッ
ド)が実現する。
・ 2020 年において導入が期待される定置用燃料電池は 1,000 万 kW と見込まれる。
③2020∼2030
・ 2020 年までに導入された燃料電池は,引き続き運転を続けると想定する。
(本格普及期)
・ また,高温型燃料電池のコンバインドサイクルによる超高効率発電が実用化し
てくることが見込まれる。
・ 2030 年において導入が期待される定置用燃料電池は,1,250 万 kW と見込まれ
る。
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成
表 3-4-4 将来に向けた普及のシナリオ
燃料電池自動車
定置用燃料電池
2010 年
約 5 万台
約 210 万 kW
(地球温暖化大綱
では 220 万 kW)
2020 年
約 500 万台
2030 年
約 1,500 万台
約 1,000 万 kW
約 1,250 万 kW
出典:第 12 回燃料電池実用化戦略研究会資料を基に作成
2005 年 4 月 19 日に開催された第 13 回燃料電池実用化戦略研究会においては,固体
高分子形燃料電池先端基盤研究センターの設立(後述)についての報告とともに,「定
置用燃料電池市場化戦略検討会報告書(2005 年 4 月 11 日)」についての報告が行われ
た。この報告書の中で,家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの本格的普及に
向けてはシステムコスト低減が課題であり,その中でも周辺機器(補機類)のコストダ
ウンが重要であるとし,国が取り組むべき課題として「燃料電池用の補機に必要とされ
るスペックの公表を行い,コストダウンにとって重要な課題である補機供給に新規企業
の参入を促すべき」という提言が行われた。
−121−
(7) 日本のエネルギー戦略
日本の様々なエネルギー戦略の関係を図 3-4-1 に整理する。
図 3-4-1 日本のエネルギー戦略一覧
資料:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
1) 新・国家エネルギー戦略
2006 年 5 月,エネルギーを取り巻く内外の環境変化に関する現状認識に基づき,エ
ネルギー安全保障を軸にわが国の新たな国家エネルギー戦略を再構築することが不可
欠であるとの認識から,経済産業省において「新・国家エネルギー戦略」が策定され
た。
戦略によって実現を目指す目標は以下の 3 点であり,表 3-4-5 に示すような具体的
取組みを行う。
① 国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立
② エネルギー問題と環境問題の一体的解決による持続可能な成長基盤の確立
③ アジア・世界のエネルギー問題克服への積極的貢献
−122−
表 3-4-5 新・国家エネルギー戦略における具体的取組み目標
(1)世界最先端のエネルギー需給
構造の確立
①省エネルギーフロントラ
ンナー計画
②運輸エネルギーの次世代
化
③新エネルギーイノベー
ション計画
およそ 50%ある石油依存度を,2030 年までに 40%を
下回る水準とする。
2030 年までに更に 30%,エネルギー効率の改善を目
指す。
石油依存度を,2030 年までに 80%程度とすることを
目指す。
太陽光発電コストを 2030 年までに火力発電並みに。
バイオマスなどを活用した地産地消型取組みを支援し
地域エネルギー自給率を引き上げる。など。
④原子力立国計画
2030 年以降においても,発電電力量に占める比率を
30∼40%程度以上。
(2)資源外交,エネルギー環境協力の総合的強化
①総合資源確保戦略
石油自主開発比率を,2030 年までに,引取量ベースで
40%程度とする。
②アジアエネルギー・環境 省エネをはじめエネルギー協力を展開し,アジアとの
協力戦略
共生を目指す。
(3)緊急時対応の充実
(4)その他
資料:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」を基に作成
運輸エネルギーの次世代化計画の具体的取組みを以下にまとめる。また,運輸エネ
ルギーの次世代化に向けた動向と課題を図 3-4-2 に示す。
エネルギー市場の変化に対し柔軟かつ強靱で,エネルギー消費効率の高い需給構造を,
運輸部門に確立するため,以下の課題に対し,並行して,効果的に取り組むこととする。
① 自動車燃費の着実な改善
ⅰ) 自動車の燃費改善を促す燃費基準の策定
ⅱ) レギュラーガソリンのオクタン価向上
② 燃料多様化に向けた環境整備
ⅰ) バイオマス由来燃料供給インフラの整備
ⅱ) ディーゼルシフトの推進
ⅲ)バイオマス由来燃料及び GTL の一層の活用のためのインフラ整備
③ バイオマス由来燃料,GTL 等新燃料の供給確保
ⅰ) バイオマス由来燃料の供給促進・経済性向上
ⅱ) 次世代燃料に関する技術開発促進
④ 電気・燃料電池自動車等の開発・普及促進
ⅰ) 電気・燃料電池自動車等の普及促進策
ⅱ) 「新世代自動車」向け電池に関する集中的な技術開発の実施
ⅲ)燃料電池自動車に関する技術開発の推進
−123−
※1 京都議定書目標達成計画において,2010 年度に,原油換算 21 万 Kl の ETBE を含め,全体として,原油換算
50 万 Kl のバイオマス由来燃料を導入することが目標とされている。
※2 HCCI(予混合圧縮着火燃焼)エンジンとはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの長所を併せ持ったエンジン。
NOx や粒子状物質の生成が少なく,熱効率の高いエンジンが実現できると期待されている。
図 3-4-2 運輸エネルギーの次世代化に向けた動向と課題
出典:経済産業省「新・国家エネルギー戦略」
2) 次世代自動車・燃料イニシアティブ
2007 年 5 月,経済産業省は,自動車関連の 2030 年までの展望や目標を示した「次
世代自動車・燃料イニシアティブ」をまとめた。これらの内容および目標は,以下の
ようになっている。
−124−
① 運輸部門の石油依存度を現在の 100%から 2030 年には 80%程度に引き下げる。
② バイオ燃料は,建築廃材や稲ワラなどを原料にする技術開発を進め,2015 年
までに製造コストを現状の 150 円/L 前後から 40 円/L に引き下げる。
③ IT を駆使した交通制御を強化し,都市部の平均速度を 2 倍に引き上げる。
④ FCV の本格普及を図るため,向こう 5 年間は年間 320 億円程度の研究開発を
継続,1 台数億円の現行価格を 2030 年までにガソリン車並みの 300 万円に下
げる。
⑤ 次世代バッテリー技術開発プロジェクトの立ち上げと充電スタンドの整備,そ
れにより 2010 年にコンパクト EV を,2030 年に EV の本格普及を目指す。
⑥ クリーンディーゼル推進では,GTL,水素化バイオ軽油などの軽油系新燃料の
研究開発と,2009 年以降ポスト新規制に対応したディーゼル乗用車の導入。
3) Cool Earth −エネルギー革新技術計画―
2007 年 5 月に安倍首相(当時)のイニシアティブ「美しい星 50(クールアース 50)」
が発表され,「世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して 2050 年までに半減す
る」という長期目標を提案した。この目標の実現は,従来の技術の延長では困難であ
り,革新的技術の開発が不可欠である。
このため,2050 年を見通した上で,エネルギー分野における革新的な技術開発の具
体的な取り組みのあり方について検討を進め,検討内容を取りまとめたものが「Cool
Earth −エネルギー革新技術計画―」である。
重点的に取組むべきエネルギー革新技術を図 3-4-3 に示す。
図 3-4-3 重点的に取り組むべきエネルギー革新技術
−125−
燃料電池車に関しては,コスト面では車両価格を 2010 年に ICV 比で 3∼5 倍,2020
年に 1.2 倍まで低減することを目指す。耐久性については,2010 年に 3,000 時間,2020
年に 5,000 時間まで向上させることを目指し,航続距離は 2010 年で 400km,2020
年で 800km まで向上させることを目指すとしている。
4) 低炭素社会づくり行動計画
2008 年 6 月 9 日の福田総理(当時)のスピーチ(福田ビジョン)や 6 月 19 日の「地
球温暖化問題懇談会」の提言をうけ, 2008 年 7 月 29 日に「低炭素社会づくり行動
計画」が閣議決定された。これは,低炭素社会の実現に向けて,政策項目ごとに具体
的な施策を明らかにするものである。
福田ビジョンの中長期目標を図 3-4-4 に示す。
図 3-4-4 福田ビジョンにおける中長期目標
出典:福田総理(当時)によるスピーチ「『低炭素社会・日本』をめざして」平成 20 年 6 月 9 日,
の配布資料<http://www.kantei.go.jp/jp/hukudaspeech/2008/06/siryou_1.pdf>
この中で,現在,新車販売のうち約 50 台に 1 台の割合である次世代自動車(HEV,
BEV,PHEV,FCV,クリーンディーゼル車,CNGV)について,2020 年までに新
車販売のうち 2 台に 1 台の割合で導入するという野心的な目標の実現を目指すとして
いる。
具体的には,費用の一部支援などの導入支援の充実による初期需要の創出や BEV,
PHEV,FCV の基盤技術である次世代二次電池や燃料電池等の技術開発による高性能
化や低価格化(前節の「Cool Earth −エネルギー革新技術計画―」の目標と同じ値)
を進めるとともに,電池切れの不安感を解消するため,急速充電設備を含む充電設備
−126−
等のインフラ整備,高度道路交通システム(ITS)の推進などの交通流対策,クリー
ンディーゼル車のイメージ改善や普及促進等の統合的な取組,次世代低公害トラッ
ク・バス等の実用化促進等を進める,としている。
(8) 日本における燃料電池車・水素関連プロジェクト
2008 年度現在で実施されている日本政府主導の FCV・水素関連プロジェクトを表
3-4-6,表 3-4-7 に整理する。なお,2009 年度に実施予定のプロジェクトについても合
わせて整理している。
表 3-4-6 わが国における燃料電池車・水素関連の国家プロジェクト(1)
分類
基礎
研究
主体
プロジェクト名
概要
水素の輸送や貯蔵に必須な材料に関し,水素
脆化等の基本原理の解明及び対策の検討を中
水素先端科学基
心とした高度な科学的知見を要する先端的研
礎研究事業
究を,国内外の研究者を結集し行うことによ
(Hydrogenius)
り,水素をより安全・簡便に利用するための
技術基盤を確立する。
燃料電池の基本的反応メカニズムについての
根本的な理解を深めるために,独立行政法人
燃料電池先端科
産業技術総合研究所において,高度な科学的
学研究委託
知見を要する現象解析及びそのための研究体
(FC-Cubic)
制の整備を行い,現状の技術開発における壁
経済
を打破するための知見を蓄積する。
産業省
世界トップ水準の優れた研究者を中核に,国
内外の研究機関・企業バーチャルな連携の下,
水素貯蔵材料先
高圧水素貯蔵に比べコンパクトかつ効率的な
端基盤研究事業
水素貯蔵を可能とする水素貯蔵材料の性能向
(HYDRO☆STAR) 上に必要な条件等を明らかにすることによ
り,燃料電池車の航続距離の飛躍的向上を図
る。
革新型蓄電池の実現に向けた基礎技術の確立
革新型蓄電池先
を目指し,反応メカニズムの解明など電気化
端科学基礎研究
学的な基礎的アプローチに関する包括的な研
事業
究を実施する拠点整備等を行う。
燃料電池の普及を加速させるために,材料の
基礎に立ち返って材料中の微細構造,界面構
造および表面構造などがイオン伝導度や触媒
機能等に与える影響を精査し,潜在する機能
文部
ナノ構造化燃料
を十分に発揮できるような組織制御を行っ
科学省 電池用材料研究
て,優れたイオン伝導性,耐食性,触媒機能
や機械的強度を持ち,実際の燃料電池システ
ム,水素製造システムなどで長期にわたって
使われる材料の開発を目指す。
−127−
期間
H20 年度 H21 年度
予算
予算案
(億円) (億円)
H18 年度∼
H24 年度
17.50
11.25
H17 年度∼
H21 年度
9.00
8.50
H19 年度∼
H23 年度
9.08
10.00
H21 年度∼
H27 年度
−
30.00
平成 18 年
度∼H22
?
?
表 3-4-7 わが国における燃料電池車・水素関連の国家プロジェクト(2)
分類
主体
プロジェクト名
固体高分子形燃
料電池実用化戦
略的技術開発
技術
開発
経済
産業省
次世代蓄電シス
テム実用化戦略
的技術開発
水素製造・輸
送・貯蔵システ
ム等技術開発
将来型燃料電池
高度利用技術開
発
経済
産業省
燃料電池システ
ム等実証研究
環境省
燃料電池自動車
啓発推進事業
実証
研究
水素社会構築共
通基盤整備事業
経済
産業省
基準・
標準化
国土
交通省
燃料電池システ
ム普及用技術基
準調査
燃料電池自動車
実用化促進プロ
ジェクト
概要
自動車用,家庭・業務用等に利用される固体
高分子形燃料電池の実用化・普及に向け,要
素技術,システム化技術及び次世代技術等の
開発を行うとともに,共通的な課題解決に向
けた研究開発の体制の構築を図る。
燃料電池車の早期導入,プラグインハイブ
リッド自動車・電気自動車の実用化等に資す
る蓄電池技術の開発を行うことにより,蓄電
池の高寿命化,高出力化,高密度化,低コス
ト化,安全性の向上を図る。
水素の製造・輸送・貯蔵等にかかる機器やシ
ステムについて,性能・信頼性・耐久性の向
上や低コスト化を目指す水素利用技術の研究
開発を行い,水素社会の実現に必要な基盤技
術の確立を図る。
将来の燃料電池の普及に伴う水素需要の拡大
に対応するため,石油系燃料からの効率的な
水素製造技術及び供給システム等の開発を行
う。
実条件に近い中での燃料電池車の実証試験や
多角的な燃料供給システムの検証を進め,水
素エネルギー社会における水素利用の課題等
を抽出するとともに,燃料電池・水素に対す
る国民的理解の醸成を図る。
市民に最も身近な地方公共団体において,燃
料電池車のイベント展示,試乗会や学校など
での学習利用により,地域社会へ の啓発推進
を図るとともに,様々な利用形態での走行に
よる社会実験と,その活用方法について検
討・実証する。
固体高分子形燃料電池システム等の導入・普
及に資する基盤整備のため,製品性能の試
験・評価手法及び国内外の基準・標準の確立
を図る。
容器貯蔵圧力を 70MPa とした燃料電池車及
び供給スタンドの技術基準を整備するため,
会議あの規制内容を調査するとともに安全性
に係わる実証試験結果の評価を行なう。
深刻な大気汚染問題を抜本的に解決し,地球
温暖化対策に資する究極の低公害車である燃
料電池車の早期普及を図るため,燃料電池車
の世界統一基準の策定に向けて必要なデータ
を取得する。
−128−
期間
H20 年度 H21 年度
予算
予算案
(億円) (億円)
H17 年度∼
H21 年度
66.69
66.99
H19 年度∼
H23 年度
53.00
43.10
H20 年度∼
H24 年度
17.00
13.60
H20 年度∼
H22 年度
6.00
5.10
H18 年度∼
H22 年度
13.00
9.88
H15 年度∼
0.30
?
H17 年度∼
H21 年度
14.00
9.00
H18 年度∼
H20 年度
0.81
−
H15 年度∼
?
?
(9) 経済産業省の「Back to Basic による研究推進」プロジェクト
1) 固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター(FC-Cubic)
燃料電池の重要なアプリケーションである燃料電池車では,技術的課題に加え,非
常に厳しいコスト要求に直面しており,単にエンジニアリング手法に頼るのではなく,
サイエンスの基本に立ち返った根本的な「既知の物理限界」の打破が強く求められて
いる。こういった産業界からの要望に応え,2005 年 4 月,独立行政法人産業技術総合
研究所に固体高分子形燃料電池先端基盤研究センター(以下 FC-Cubic:Polymer
Electrolyte Fuel Cell Cutting-Edge Research Center)が設置された。
2005 年 4 月 1 日から 5 年間の予定である。主に「電極触媒」および「セル構成要素
と界面移動物質との相互作用」「電解質膜」に研究テーマを絞り,それぞれ燃料電池
内部の基礎的・根本的な現象解析を行う。
2) 水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)の設立
(独)産業技術総合研究所水素材料先端科学研究センター(HYDROGENIUS)は,
水素利用社会の実現を技術的に支援するため,水素と材料に関わる種々の現象を科学
的に解明して各種データを産業界に提供するとともに,安全で簡便に水素を利用する
ための技術指針を確立することをミッションとし平成 18 年 7 月 1 日に設立された。
具体的には,産業界から提供される開発・実証から出てくる課題から,水素物性等に
係る基本原理を解明し,水素社会実現に向けたデータベースの構築と技術基盤整備を
行うことを目的としている。研究期間は 2006 年度から 2012 年度までの 7 年間である。
3) 水素貯蔵材料先端基盤研究事業(HYDRO☆STAR)
水素貯蔵材料に関しては,日本は基礎研究が弱い状況にあり,研究者の数も少なく,
質的にも欧米に対して劣っている状況にある。水素貯蔵材料の実用化が直近でないと
すれば,技術よりも基礎研究に力を入れた方が得策であるし,将来応用研究を行なう
にしても,基礎をしっかり学んだ人材を育てていかなければならない。こうした危惧
から,2007 年度に水素貯蔵材料先端基盤研究事業が開始された。
参加団体は,(独)産業技術総合研究所と,文科省管轄の大学と団体である。具体
的な目標は設定されていない。材料開発を目標とはせず,材料開発を担当する水素安
全利用等基盤技術開発の研究などで生じた問題に対して支援を行うことを想定してい
る。また,このプロジェクトでは各団体のエース級の人材を集めて仮想的な組織を作
り,各エースは自らの組織に所属しつつ,持ち帰りで事業に参加してもらうというよ
うに進めていく方針だという注)。
注)
2007 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」参照
−129−
(10) 経済産業省の「家庭用燃料電池システム周辺機器(補機類)の仕様リスト」
第 13 回燃料電池実用化戦略研究会において報告された「定置用燃料電池市場化戦略検
討会報告書(2005 年 4 月 11 日)」の中で,家庭用燃料電池コージェネレーションシス
テムの本格的普及に向けて国が取り組むべき課題として「燃料電池用の補機に必要とさ
れるスペックの公表を行い,コストダウンにとって重要な課題である補機供給に新規企
業の参入を促すべき」と提言されている。
経済産業省はこの提言を受け,家庭用燃料電池システムの周辺機器(補機類)に求め
られる仕様(スペック)について,システムメーカへのアンケート調査等の結果からと
りまとめ,公表した。さらに,共通仕様リストは,その後の状況変化を踏まえつつ,さ
らに共通化を推進するために,あらためて要求スペックを精査し,ほぼ一本化された「家
庭用燃料電池システム関連補機類の共通仕様リスト」として 2005 年 12 月 27 日に公表
した。
2008 年 1 月には,新しい共通仕様リストが発表された。これは,2005 年以降の状況
変化等を踏まえつつ,更に共通化を推進するために改めて要求スペックを精査し,ほぼ
一本化された「共通仕様」として公表されたものである。各補機について,簡単な説明
と要求スペック(2008 年 1 月時点の最新情報に基づいたもの)および目標コスト(これ
は 1 万台生産時の 1 台あたりのコスト)が記されている。
ここで,周辺機器に要求されるポイントは,以下の 5 点であるとされている。
① 低消費電力
② 運転範囲(出力の範囲が 100~20%程度まで広くとれること,低負荷時においても
流量制御等の性能が変動しないこと)
③ 長時間耐久性(最終目標として 10 年程度あるいは 6∼7 万時間)
④ 環境性(低騒音,低振動等)
⑤ 低コスト(上記①∼④を維持しつつ低コスト化を追求)
(11) NEDO 技術開発機構および経済産業省による燃料電池車に関するロードマップの策定注)
NEDO 技術開発機構では,2005 年 6 月に,エネルギー分野のうち,燃料電池・水素,
バイオマスエネルギー,太陽光発電について,2020 年頃までを視野に入れ,技術ロード
マップを策定した。
燃料電池・水素技術分野を巡る状況は刻一刻変化しているとの認識から,毎年見直し
を行っており,2008 年 6 月には「燃料電池・水素技術開発ロードマップ 2008」を発表
している。図 3-4-5 に自動車用 PEFC に関するロードマップを示す。
また経済産業省では,2005 年 10 月に 2100 年までの長期的視野から地球的規模で将
来顕在化することが懸念される資源制約・環境制約をのり越えるために求められる技術
注)
その他のロードマップについては 4-1-2 節参照。
−130−
の姿を将来から逆算(バックキャスト)することによって,「技術戦略マップ∼超長期
的エネルギー技術ビジョン∼」を描き出している(図 3-4-6,図 3-4-7)。2008 年 4 月
には,第 4 版にあたる「技術戦略マップ 2008」が公表されている。
図 3-4-5 NEDO による PEFC(自動車用)の技術ロードマップ
出典:「燃料電池・水素技術開発ロードマップ 2008」NEDO
−131−
※点線は R&D 段階,実線は商用開始以降
図 3-4-6 燃料電池自動車関連の経済産業省の技術戦略マップ
出典:経済産業省 HP より
※点線は R&D 段階,実線は商用開始以降
図 3-4-7 水素貯蔵技術および水素供給技術における経済産業省の技術戦略マップ
出典:経済産業省 HP より
−132−
(12) 経済産業省の固体高分子形燃料電池システム実証等研究
経済産業省の「固体高分子形燃料電池システム実証等研究」注1)は,燃料供給インフ
ラを含めた燃料電池利用システムの実証等研究を支援する事業であり,平成 14 年度か
ら 3 年間の計画でスタートした。この事業では,燃料電池本体だけでなく,燃料供給イ
ンフラも含めて,実使用条件における技術的課題を抽出するとともに,環境特性,エネ
ルギー総合効率,燃料性状,安全性等に関するデータを取得し,得られた情報等を開発・
普及施策に反映させていくことを目的としている。
この事業は 3 つの実証研究で構成されている(図 3-4-8)。
燃料電池自動車実証研究
実施者:財団法人日本自動車研究所
経済産業省
JHFCプロジェクト
燃料電池自動車用水素供給設備実証研究
実施者:財団法人エンジニアリング振興協会
定置用燃料電池実証研究
実施者:財団法人新エネルギー財団
図 3-4-8 固体高分子形燃料電池システム実証等研究の実施体制
出典:平成 15 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC セミナー(2004 年 3 月)資料を基に作成
燃料電池自動車実証研究では,財団法人日本自動車研究所(JARI)注2)を中心として,
2002 年度から 2005 年度にかけて,国内外の燃料電池車および国内 12 箇所の水素供給
ステーションでの走行試験を行った。なお,2004 年度には,愛知県で開催された万国博
覧会「愛・地球博」会場に 2 箇所設置された水素ステーションを使い,会場間の移動手
段として燃料電池バス 8 台による運行を行った。
燃料電池自動車用水素供給設備実証研究では,財団法人エンジニアリング振興協会
(ENAA)を中心として,水素供給ステーションの設置・運営および液体水素製造実証
研究を行った。この 2 つの実証研究は,水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC プロ
ジェクト:Japan Hydrogen & Fuel Cell Demonstration Project)として,共同で進め
られた。
JHFC プロジェクトは当初 2002 年度から 2004 年度までの 3 箇年の予定であったが,
1 年延長し 2005 年度まで続けられた(詳細は 3-4-2 節(2):水素・燃料電池実証プロ
注1)
注2)
平成 15 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC セミナー(2004 年 3 月 12 日)資料
平成 14 年度は財団法人日本電動車両協会(JEVA)が実施主体となっていたが,平成 15 年 7 月 1
日の財団法人日本自動車研究所(JARI)との統合化により平成 15 年度以降の実施主体は JARI となっ
ている。
−133−
ジェクト参照)。2006 年度からは,「燃料電池システム等実証研究」(第 2 期 JHFC
プロジェクト)として引き継がれている。JHFC プロジェクトにおける FCV の実証走
行試験の状況については後述する。
また,定置用燃料電池実証研究では,財団法人新エネルギー財団(NEF)を中心に,
2002 年度から 2004 年度まで定置用燃料電池コージェネレーションシステムの実証研究
が行われた。そして,2005 年度からは,600 万円/台を上限として補助する「定置用燃
料電池大規模実証事業」へと移行し,日本全国で第 1 期,第 2 期あわせて 480 台が導入
された。2006 年度は 450 万円/台を上限として補助が行われ,777 台が,2007 年度には
350 万円/台を上限として 930 台が導入された。(詳細は 3-6-1 節参照)
(13) 燃料電池関連の予算
2008 年 12 月 24 日に公表された経済産業省「平成 21 年度経済産業省予算の概要」よ
り,燃料電池関連予算を抽出したものを 2008 年度予算と併せて表 3-4-8 に整理した。
また,2008 年 12 月 26 日に公表された内閣府「『平成 21 年度科学技術関係予算案に
ついて』の公表について」より,燃料電池関連予算を抽出したものを表 3-4-9 に整理し
た。定置用燃料電池大規模実証事業は 2008 年度で終了となっている。また,2008 年度
から「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業」「革新的水素製造技術開発」が新規事業と
して計上されている。
表 3-4-8 平成 21 年度:経済産業省の燃料電池関連予算(単位:億円)
平成 20 年度
当初予算
平成 21 年度要求額
(平成 20 年度補正額)
資源エネルギー関係
新エネルギーの推進・エネルギーの高度利用
1,137
1,244(135)
(内) 次世代自動車や燃料電池の技術開発・導入支援
221
297(30)
(内)クリーンエネルギー自動車等の導入促進補助
19
53(10)
(内)世界をリードする燃料電池の研究開発の推進
184
168(20)
(内)民生用燃料電池導入支援補助金
―
61
(内) 革新的な新エネルギー技術開発の促進
141
164(5)
(内) 革新型蓄電池の開発に向けた拠点整備
―
30
(内) 蓄電池の実用化に向けた技術開発の強化
29
26
出典:経済産業省「平成 21 年度資源エネルギー関係予算案の概要」(2008 年 12 月)をもとに作成
−134−
表 3-4-9 優先度判定等を実施した科学技術関係施策の平成 21 年度予算案の
燃料電池関連予算(単位:億円)
平成 20 年度
平成 21 年度案
経済産業省 所管
水素貯蔵材料先端基盤研究事業
9.08
10.00
燃料電池先端科学研究事業
9.00
8.50
水素先端科学基礎研究事業
17.50
11.25
水素製造・輸送・貯蔵システム等技術開発
17.00
13.60
固体高分子形燃料電池実用化戦略的技術開発
66.69
66.69
燃料電池システム等実証研究
13.00
9.88
定置用燃料電池大規模実証事業
27.11
―
水素社会構築共通基盤整備事業
14.00
9.00
固体酸化物系燃料電池システム要素技術開発
13.50
12.00
固体酸化物形燃料電池実証研究
8.00
7.20
革新型蓄電池先端科学基礎研究事業
―
30.00
次世代蓄電システム実用化戦略的技術開発
53.00
(系統連系円滑化蓄電システム技術開発・次世代自
43.10
動車用高性能蓄電システム技術開発)
文部科学省 所管
革新的水素製造技術開発
―
0.1
出典:内閣府「『平成 21 年度科学技術関係予算案について』の公表について」(2008 年
12 月)をもとに作成
−135−
(14) 地方公共団体における取組み
表 3-4-10∼表 3-4-13 に地方公共団体における燃料電池関連への取組みを整理する。
表 3-4-10 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 1)
青森県
秋田県注1)
東京都
東京都
練馬区注4)
東京都
荒川区注5)
つくば市
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
2005 年 12 月 14 日の電気新聞によると,青森県は 12 月 13 日, あおもり水素エネルギー
創造戦略 をまとめた。将来的な水素エネルギー社会への移行を念頭に,原子力発電や風力
発電,農林水産資源などから水素を生産,FC の活用を通して県内産業の底上げを図ろうと
する内容である。さらに戦略では水素製造にかかる固定資産税の減免や遊休公有地の貸与な
ど公的支援の必要性を謳っている。また,CO2 を排出しない水素製造を実現するために,原
子力発電から水素を取り出す技術の意義についても言及している。
燃料電池・水素関連産業の創出に向けて,ものづくりの技術を活かした取組みや,製品開
発や技術研究など,燃料電池関連産業分野への参入に取り組む県内企業を積極的にバック
アップし,より具体的な産業創出に繋げるための推進組織として,2005 年 12 月 6 日に「秋
田県燃料電池関連産業導入促進協議会」を設立した。
東京都では,2003 年 8 月 28 日より,わが国で初めて FC バスが営業運行を開始した注2)。
運行台数は 1 台で,東京駅八重洲口−東京テレポート駅,または門前仲町−東京テレポート
駅の路線を 1 日数往復した。しかし,2004 年 6 月,同バスと同じ構造の FCV 用高圧水素タ
ンクに水素洩れが発生したため,トヨタ自動車が FCB を回収したため運行を停止した。
その後,7 月から運行を再開した。また,10 月 1 日からは霞ヶ関や銀座三越前での運行を
行った。晴海ふ頭−勝どき駅前,銀座4丁目−東京駅の路線を 1 日 1 往復,晴海ふ頭−銀座
4 丁目−四ツ谷駅の路線を 1 日 2 往復した。10 月 16 日からはメーカからの引き取り要請に
よって運行を休止したが,高圧水素タンクの交換および安全確認が行われ,12 月 21 日より
門前仲町−東京テレポート駅での運行が再開され,営業運行試験の終了日である 2004 年 12
月 28 日まで運行された。
この事業は都の「水素供給ステーションパイロット事業」ならびに経済産業省の「水素・
燃料電池実証プロジェクト」および国土交通省の「燃料電池自動車実用化促進プロジェクト」
と連携し実施された。FC バスはトヨタ自動車,日野自動車の「FCHV−BUS2」であった。
また 2006 年 4 月 3 日,「東京都再生可能エネルギー戦略」注3)を策定した。この中で,
「都内の水素供給ステーション施設を活用し燃料電池自動車の普及を図っていくとともに,
再生可能エネルギーを活用した水素供給のあり方について検討を進める」としている。
2006 年 12 月より練馬区内の住宅に家庭用の燃料電池装置を設置する場合,上限 10 万円
として工事費の一部を補助する事業を開始した。
2006 年 5 月,エコ助成金制度として,区民や事業者による環境に配慮した設備の導入を
支援するための助成を始めた。1kW 級家庭用燃料電池装置については,助成限度額 10 万円
として設置経費の半額の助成補助が受けられる。2007 年 3 月 16 日までに設置完了すること
が条件。
つくば市では,2005 年開通予定のつくばエクスプレス沿線で新エネルギー機器の導入の
促進を図るとともに,市民生活・地域社会と密着した新エネルギー研究開発の促進を図る構
造改革特別区域計画(つくば市新エネルギー特区)が平成 15 年 8 月に認定された注6)。こ
の特区では,2019 年ごろまでに 400 戸以上の家庭用燃料電池の導入を目標に掲げている。
特区では,電気事業法上の家庭用 FC の設置に関する規制を一部緩和し,保安規定の届出と
電気主任技術者の選任を不要とする措置が取られる。また,不活性ガスボンベの常備義務も
撤廃される。
秋田県 HP より
東京都広報資料等より
東京都「東京都再生可能エネルギー戦略−エネルギーで選びとる持続可能な未来―」2006.4
練馬区 HP より
荒川区 HP より
構造改革特別区域推進本部 HP より
−136−
表 3-4-11 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 2)
山梨県注1)
静岡県
愛知県
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
平成 20 年 2 月,山梨県知事は,山梨大学が行う燃料電池研究開発へ支援・参画をおこな
うと発表した。大学が建設予定の「ナノマテリアルセンター(仮称)」の土地の無料貸与や整
備費の補助,県職員を研究員として派遣するなど。この事業に対する支援を通じて産学官が
連携して燃料電池技術に関する研究開発を推進し,環境負荷の少ないクリーンエネルギー産
業の集積拠点を形成していきたいと考えている。
静岡県は,燃料電池・水素エネルギーの先進県となることを目指し,2001 年に「燃料電
池・水素エネルギー研究会」を発足させた。県として何ができるか,何をなすべきかなどに
ついて検討を行い,平成 14 年 3 月に報告書をまとめている。報告書では,県の取組みの試
案として,大きく①燃料電池の普及の促進,②研究開発の支援,③新産業の創出などの支援,
④燃料供給インフラ整備の検討の 4 項目を掲げている。④のインフラ整備の検討について
は,国,民間企業等との連携により,水素供給ステーションやパイプライン等のモデル施設
についての検討,住宅団地等への燃料電池の導入支援を挙げている。平成 15 年度,それま
での 2 年間の研究会の活動を基盤として,この分野に強い関心を持つ企業,大学,行政等を
対象とした会員制の「しずおか燃料電池・水素エネルギーパートナーシップ」を創設した注
2)
。
また,平成 15 年 3 月に策定された「しずおか新エネルギー等導入戦略プラン」において,
2010 年度までに燃料電池 7.24 万キロワットの導入を目指すとしている。更に平成 17 年度
からは,燃料電池の理解促進・普及啓発を図るため,県内の燃料電池関連企業の協力により,
高校生を対象とした「ECO エネルギー・スクール」を開催している。注3)
燃料電池の開発,利活用などの研究を目指し産学官が連携する「静岡燃料電池技術研究会」
の設立総会が 2006 年 12 月 8 日,静岡ガス総合技術研究所(静岡市駿河区)で開催された。
県,静岡工業技術センター,静岡大をはじめ,燃料電池の研究を進める飲料メーカ,部材供
給を目指す部品メーカなど 20 社前後の企業が参加する見込み。注4)
平成 17 年 2 月に「愛知県水素エネルギー産業協議会」を設立した。地域分散型実証モデ
ルの提案・検討,水素供給および燃料電池技術課題の各種研究会活動,プロジェクトの立ち
上げ,ならびに情報発信などの事業を行う。その一環として,愛知県は知多市,東海市と共
同で「知多地域水素インフラ活用研究会」を 11 月 9 日に立ち上げた。製鉄所や製油所,LNG
基地,都市ガス等水素供給インフラを活用した新エネルギーシステムの形成,在り方につい
ての検討を行う。
FCV の普及に向け,官民一体となって関連プロジェクトを推進する「あいち FCV 普及促
進協議会」が平成 17 年 7 月 1 日に発足した。愛知県や豊田市,常滑市,新日本製鉄,東邦
ガス,トヨタ自動車,大陽日酸が参加し,今後の燃料電池自動車に係るプロジェクトの企画
提案や普及啓発などの取組みを行うという。
また,平成 17 年 11 月,燃料電池の開発に取り組む地域中小企業に対し,試作品の特性評
価,技術相談・指導,情報提供,材料研究など,総合的な支援を行う窓口を設置し,地域産
業の競争力強化と新産業の創出に資することを目的とする「燃料電池トライアルコア」を,
愛知県産業技術研究所内に開設した。都道府県の試験研究機関が燃料電池に特化した技術支
援拠点を開設するのは,全国で初めてのことである。注5)
愛知県は 2006 年 7 月 5 日,名古屋市中区の県公館に設置した家庭用燃料電池の実証試験
の開所式を行い,「愛知県小型燃料電池実証試験」をスタートした。この家庭用 FC は,日
本ガス協会が「愛・地球博」に出品したものを移設している。また,2006 年 8 月には「あ
いち臨空新エネルギー研究発電所」を開設した。愛知万博会場において長久手日本館などに
電力供給を行っていたプラントを,中部臨空都市(空港対岸部)に移設して実証研究の継続
をはかるもので,常滑市役所等へ電力を供給する。注6)
山梨県 HP より
しずおか新エネルギー情報 HP より。
静岡県 HP
静岡新聞オンライン記事(2006.12.7)より
愛知県 HP より
愛知県産業労働部新産業課 HP より
−137−
表 3-4-12 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 3)
大阪府注1)
三重県
広島県
注1)
注2)
注3)
大阪府は,平成 15 年 9 月,エネルギーや環境対策面から次世代の自動車として期待が高
まっている燃料電池自動車の普及促進を図るため,在阪の関係機関(近畿経済産業局,近畿
運輸局,大阪府,大阪市,岩谷産業,ダイハツ工業,大阪ガス,(財)都市交通問題調査会)
で組織される「おおさか FCV 推進会議」を設立した。都市再生と自動車公害対策の面から
官民が連携して独自のプロジェクトを展開し,水素ステーションの設置と府内での走行試験
に乗り出す。
平成 16 年 6 月に庁用車としてダイハツ MOVE FCV を導入,平成 17 年 10 月にはトヨタ
FCHV を導入し,普及啓発活動に活用している。
三重県は,平成 15 年 4 月 21 日,三重県四日市市および川越町,楠町全域が「技術集積
活用型産業再生特区」として「構造改革特区」の認定を受けた注2)。この特区は,出力 10kW
未満の固体高分子形燃料電池に関する規制の特例が認められた。三重県では,この制度を活
用し,特区地域内において燃料電池の実証試験を実施する企業等に研究開発等に要する経費
を補助する制度「三重県燃料電池実証試験補助金」を創設した。本特区における規制の特例
では,一定の条件を満たす燃料電池について,規制の特例に係る代替措置が適切であると認
められれば,①「保安規定の届け出」が不要,②「電気主任技術者の選任」が不要,③家庭
用燃料電池の設置に際しての窒素ガスボンベの設置(窒素パージ)の不要の特例が認められ
ている。2004 年度の補助事業として 6 件を採択,2006 年 8 月現在,県内 10 カ所において
実証試験を実施している。
また,三重県は,2005 年 11 月 8 日,水素エネルギーに関連する産学官が連携して,水素
エネルギーに関連する新たな産業,研究開発機能,教育機能を育成・集積し,地域の活性化
を図るとともに,環境負荷の少ない水素エネルギー社会を地域に構築することを目的として
「三重県水素エネルギー総合戦略会議」を発足させた注3)。会員には,四日市大学国保元愷
教授(会長),燃料電池開発情報センター顧問本間琢也氏,三菱化学,コスモ石油,昭和シェ
ル石油(以上副会長)などが加わっており,平成 18 年 9 月現在で 134 企業・機関が参加し
ている。
更に 2006 年 6 月,「三重県燃料電池関連技術研究会」を立ち上げた。これは,三重県内
の燃料電池の研究開発(補機開発・メンテナンス等)に関心を持つ企業のネットワークを確
立し,各種情報を共有化し,周辺機器のコスト削減,性能の向上に関する共同研究を行うこ
とを目的としている。三重県燃料電池実証試験(県内 10 ヶ所)に参加している燃料電池メー
カを講師とし,燃料電池に関する技術テーマ毎に 6 部会で構成され,部会毎に専門的な研究
を行う予定である。
2005 年 4 月 4 日の鉄鋼新聞によると,広島県は 2005 年度の新規事業の一つとして, 水
素燃料製造・供給システム調査事業 に取り組む。広島県内には水素関連技術を保有し,開
発に取り組む企業が多いことから,県域での水素製造可能性調査,供給システムの検討,水
素関連技術に関する情報収集・提供を通して,関連事業者との連携を図ることを目標に,調
査事業に取り組むことにした。
また,2005 年 10 月 19 日の日刊工業新聞によると,産学官による「燃料電池等普及促進
調査検討委員会」を設置し,水素燃料製造と供給可能性の調査,構造改革特区の活用,県内
技術であるバイオマス活用の水素利用システム実証モデルの検討などを行うという。
大阪府広報資料,新聞報道より
構造改革特別区域推進本部 HP より
三重県水素エネルギー総合戦略会議 HP より
−138−
表 3-4-13 地方公共団体における燃料電池関連への取組み(その 4)
山口県注1)
大分県
佐賀県
福岡県
注1)
注2)
注3)
注4)
注5)
注6)
山口県はソーダ工場等の生産工程で発生する副生成物としての水素が 8.9 億 Nm3/年で,
全国の 14%と全国一であることから,この水素の潜在的エネルギーを利用するために「水
素フロンティア山口推進構想」を平成 16 年に策定している。この構想では,工場からの副
生成水素を燃料とした水素タウンの実現に向けた取組みを行っている。しかしながら,関連
情報の不足や技術シーズ,連携先および開発リスク等の問題から県内の多くの企業は,燃料
電池への取組みに対して新規参入できない現状にあると分析しており,平成 17 年度におい
て,「燃料電池研究会」を発足した。県内企業の燃料電池に関する実用的な情報提供,燃料
電池関連技術開発プロジェクトの立ち上げ,県内企業の燃料電池分野への参入促進を目標に
掲げている。
山口県は,水素タウンモデル事業を行っている。計画期間は 2007 年 1 月 19 日∼2010 年
3 月 31 日。実施場所は山口県周南市江口地内。ソーダ工場の副生水素を,一般家庭に設置
した水素供給燃料電池にパイプラインで供給することにより,発電・給湯を行うモデル事業。
2007 年 3 月末より実際に稼働させている。
大分県は“新エネルギー産業化研究会”を平成 18 年 8 月 1 日に新設した。主な活動内容と
しては,燃料電池・水素エネルギー会議,バイオマスエネルギー会議等分野別会議の開催,
県内外における利活用の研究・事例紹介,事業化についての課題検討である。注2)
佐賀県は次世代エネルギーの代表である水素を原料とする燃料電池の関連産業を県内に
根付かせるため,この分野への県内企業の進出を促すことを目的とし,水素エナジー関連産
業戦略的育成事業を立ち上げ,その一つとして水素エナジー研究懇親会(座長:門出佐賀大
教授)を設立した注3)。
福岡県では,環境にやさしい水素エネルギー利用社会の実現に向け,全国に先駆けて,産
学官で「福岡水素エネルギー戦略会議」を平成 16 年 8 月 3 日に設立した。水素生成,貯蔵・
輸送から利用まで一貫した研究開発・実証活動に加え,人材育成を実施し,世界を先導する
研究開発拠点を形成することを目的としている。新聞報道注4)によると,10 月に糸島半島へ
移転する九大キャンパスを舞台に,高圧水素の製造・貯蔵を行う 水素ステーション の建
設,企業の研究開発支援,技術者育成など,実証実験,研究開発,人材育成の 3 本柱で戦略
を展開する。2005 年度予算に関連費約 1 億 3,500 万円を盛り込むという。九大新キャンパ
スでは,水素ステーションで圧縮機を使わない水電解技術により 40∼70MPa の高圧水素を
製造・貯蔵し,そこから各施設にパイプランで水素を供給,FC で電力を賄い,構内に FCV
を走らせるという。
また,福岡県と市が共同で申請していた「福岡水素利用技術研究開発特区」が 2005 年 3
月に認定された。福岡水素エネルギー戦略会議や九大を中核にして,水素エネルギー社会の
実現に向けた研究開発速度の向上と水素関連産業の集積促進が目的である。具体的には水素
利用技術の試験研究で使用する小型圧力容器(内容積 400mmL 以下,圧力 100MPa 以下)
について,容器を製造するたびに必要な耐圧・気密試験を省略することで研究開発のスピー
ドアップを図る。注5)
2008 年 2 月,福岡水素戦略(Hy-Life プロジェクト)注6)の中の実証プロジェクトとなる
「水素タウン」の整備を開始すると発表した。150 戸規模で家庭用燃料電池を導入し,約 4
年間の実証実験を行う。2008 年 10 月には 1 号機設置記念式典 が開催された。また,同プ
ロジェクトの中で,北九州市東田地区∼福岡市(九州大学)の 2 ヵ所に水素ステーションを
整備し,北九州∼福岡間に「水素ハイウェイ」を構築中である。これらのステーションは
2009 年中に稼働開始予定である。
山口県 HP より
大分県 HP より
佐賀県 HP より
西日本新聞(2005 年 2 月 10 日)より
福岡県 HP より
福岡水素エネルギー戦略会議 HP より
−139−
3-4-2 わが国における FCV の公道走行試験
(1) PEC による公道走行試験
(財)石油産業活性化センター(以下 PEC)では,経済産業省資源エネルギー庁の支
援を受け,わが国初の FCV の公道走行試験のための共同プロジェクトを実施した。こ
の FCV 共同プロジェクトには,ダイムラー・クライスラー日本ホールディング株式会
社(現:ダイムラー日本株式会社),マツダ株式会社,日石三菱株式会社(現:新日本
石油株式会社)が参加した。この FCV 公道走行試験は,2001 年 2 月 15 日から 7 月ま
で横浜市の近郊において行われた注)。
(2) 水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC プロジェクト)
「水素・燃料電池実証プロジェクト」(JHFC プロジェクト:Japan Hydrogen & Fuel
Cell Demonstration Project)は,経済産業省「固体高分子形燃料電池システム実証等
研究」のうち,財団法人日本自動車研究所(JARI)による「燃料電池自動車実証研究」
と財団法人エンジニアリング振興協会(ENAA)による「燃料電池自動車用水素供給設
備実証研究」から構成されるプロジェクトである。
JHFC プロジェクトは,国内初の大規模な FCV 実証走行研究であると同時に,複数
の燃料・方式による水素供給設備を運用する世界初の取組みである。2002 年度は,東京・
横浜地域に 6 箇所の水素供給設備を建設し,自動車メーカ 6 社の自動車が公道走行試験
に参加した。また,横浜大黒町にガレージとショールームを建設し,プロジェクトのベー
ス基地とした。2003 年度には,新たに 4 箇所の水素供給設備を増設し,また自動車メー
カも新たに 2 社が加わって実証試験を行っている。2004 年度には,愛知県で 3 月から
開催された万国博覧会「愛・地球博」会場に 2 箇所の水素ステーションを設置し,会場
間を移動手段として燃料電池バス 8 台による運行を行った。
実証試験を通して,走行性能,信頼性,環境特性,燃費等の車両走行データと水素充
填ステーション使用データ等を取得・評価する。また,液体水素製造技術の実証も実施
する。
現在はこのプロジェクトの第 1 期が終了し,第 2 期が実施中である。
表 3-4-14 に第 1 期 JHFC プロジェクトの概要を示す。
注)
2005 年度 JARI「FCV に関する調査報告書」
−140−
表 3-4-14 第 1 期 JHFC プロジェクトの概要
事業実施者
特徴
参加企業・団体
(平成 17 年度)
実施期間
燃料供給設備
試験車両
補助額
目的
財団法人日本自動車研究所
財団法人エンジニアリング振興協会
■ 国内初の大規模な FCV,FC バス実証試験研究
■ 各種燃料による水素供給設備を並行して運用する世界初の取組み
■ 経済産業省が国家プロジェクトとして推進する補助事業
○燃料電池自動車実証関係
トヨタ自動車,日産自動車,本田技研工業,
ダイムラー・クライスラー日本,三菱自動車工業,スズキ
ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン,日野自動車,
○水素供給設備実証関係
新日本石油,コスモ石油,昭和シェル石油,東京ガス,岩谷産業,
ジャパン・エア・ガシズ,大陽日酸(旧日本酸素),新日本製鐵,
栗田工業,シナネン,伊藤忠エネクス,出光興産,バブコック日立,
鶴見曹達,東邦ガス
平成 14 年度∼平成 17 年度(実施期間 4 年間)
水素ステーション 12 箇所,液体水素製造設備
直接水素形 FCV:8 車種
平成 14 年度 20 億円,平成 15 年度 25 億円
平成 16 年度 20 億円,平成 17 年度 18 億円
① FCV 及び水素供給設備の省エネルギー効果(CO2 削減効果,効率)の
明確化
② FCV 及び水素供給設備の環境負荷低減効果の明確化
③ FCV 及び水素供給設備の安全等に関わる規格,法規・基準の作成の
ためのデータの取得等
④ FCV 及び水素供給設備の社会的認知度向上のための啓発活動
出典:平成 15 年度,平成 16 年度,平成 17 年度,平成 18 年度水素・燃料電池実証プロジェクト JHFC
セミナー資料を基に作成
2006 年度から 2010 年度までの 5 年間,引き続き「JHFC プロジェクト・第 2 期」が
実施されている。第 2 期 JHFC プロジェクトのスケジュールを図 3-4-9 に,概要を表
3-4-15 に示す。
図 3-4-9 第 2 期 JHFC プロジェクトのスケジュール
資料:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
−141−
表 3-4-15 JHFC プロジェクト・第 2 期の概要
事業実施者
特徴
実施期間
補助額
目的
参加企業・
団体
参加車両
(財)日本自動車研究所(JARI)
(財)エンジニアリング振興協会(ENAA)
z
第三者による燃料電池車等フリート走行試験
z
水素内燃機関自動車の実証試験新規参画
z
実証試験地域の拡大(首都圏・中部地区・関西地区)
z
中部国際空港における FC バス(路線バス・空港内ランプバス)運行と,水素ステーショ
ンの開設
z
大阪地区における小型移動体(FC 電動車椅子,FC 電動カート,FC 電動アシスト自
転車)のモニター試験と,水素ステーションの開設
平成 18 年度∼平成 22 年度(実施期間 5 年間)
平成 18 年度 13 億円
平成 19 年度 18 億円
① 燃料電池車等及び水素インフラ等の,実使用条件における運用と,その際の課題明確化
② 水素貯蔵の高圧化に関する検証
③ 燃料電池車等及び水素インフラ等に関わる規格,法規・基準作成のためのデータ取得
④ 燃料電池車等及び水素インフラ等への理解促進のための広報・教育戦略の策定実施
⑤ 燃料電池車等及び水素インフラ等の省エネルギー効果(燃費)・環境負荷低減効果の確認
⑥ 燃料電池車等及び水素インフラ等に関わる技術・政策動向の把握
トヨタ自動車(株),日産自動車(株),本田技研工業(株),
メルセデス・ベンツ日本(株),ビー・エム・ダブリュー(株)
ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン(株),
日野自動車(株),スズキ(株),マツダ(株)
新日本石油(株),コスモ石油(株),昭和シェル石油(株),
東京ガス(株),岩谷産業(株),ジャパン・エア・ガシズ(株),
大陽日酸(株), 新日本製鐵(株),栗田工業(株),鶴見曹達(株),
シナネン(株),伊藤忠エネクス(株),バブコック日立(株),
東邦ガス(株),大阪ガス(株),(株)栗本鐵工所,関西電力(株)
出光興産(株)(協賛)
直接水素 FCV:
水素自動車:
・ トヨタ FCHV-adv
・ マツダ RX-8 Hydrogen RE
・ 日産 X-TRAIL FCV
・ BMW Hydrogen7
・ ホンダ FCX
・ Daimler Mercedes Benz A-Class F-Cell
小型移動体:
・ GM HydroGen3
・ クリモト燃料電池カート II
・ トヨタ/日野 FCHV-BUS
・ 燃料電池車いす IV
・ スズキ MRwagon-FCV, SX4-FCV
2006 年度および 2007 年度の実施内容を表 3-4-16 に示す。
表 3-4-16 平成 18 年度および平成 19 年度の JHFC の実施内容
平成 18 年度
① 燃料電池車等フリート走行試験開始
② 水素ステーションにおける,圧力上昇率一定
の水素充填に関する検討開始
③ 中部国際空港における水素ステーションの
開設と,FC バス運行
④ 大阪地区における,水素ステーションの建設
と,小型移動体のモニター試験
⑤ 各種広報・教育活動イベントの推進
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
−142−
平成 19 年度
シャシダイナモ燃費測定
公道実走行燃費測定
寒冷地での低温始動デモンストレーション
フリート車両のメーカ預かり情報の取得
フリート車両運転者アンケート実施
70MPa 水素ステーションの仕様決定
各種広報・教育活動イベントの推進
2008 年度に実施されたシャシダイナモ燃費測定試験の結果では,2004 年度に取得し
た燃費と比較して,平均値では 17.4%,トップランナでは 28.3%の燃費向上が確認され
た(図 3-4-10)。また,車両効率では,2004 年度の取得データでは,平均 38.2%であっ
たが,2008 年度の結果では 45.8%と 19.9%向上,トップランナにおいては 2004 年度
に 49.6%であったものが 61.3%と 23.6%向上していることが確認された(図 3-4-11)。
一方,北海道において行われた FCV の寒冷地始動性デモの結果では,放置時の最低気
温約−10℃の状況でも問題ない始動・走行が確認され,氷点下放置後の始動が可能であ
ることが確認されている(表 3-4-17)。
フリート走行試験では,FCV はフリート車両以外の FCV よりも走行距離は多く,1
台 1 ヶ月当たり 547km を走行し,FC バスは,1,000km/月・台以上を走行した(図 3-4-12)。
また,フリート運転者へのアンケート調査の結果からは,音・振動,アクセル応答性な
どにおいて,非常に高い評価結果となっている一方で,航続距離,充填時間・手間,水
素の印象に課題があることが明らかとなった。
燃費(km/kg-H2)
平均値
トップランナー
150
28.3% 16.4%
17.4%
100
6.5%
101.9
10.3% (27.9)
92.4
(25.3)
108.5
(29.7)
108.7
(29.8)
JHFC2
(2008)
JHFC1
(2004)
126.5
(34.7)
10.3% 139.5
(38.2)
50
0
JHFC1
(2004)
JHFC2
(2007)
JHFC2
(2007)
JHFC2
(2008)
※比較FCV : 2004年度:FCHV(2002)、X-TRAIL FCV(2003)、FCX(2002)、F-Cell、 HydroGen3、 ワゴンR-FCV
2007年度:FCHV(2005)、X-TRAIL FCV(2005)、FCX(2005)、F-Cell、 HydroGen3、 MRワゴンFCV
2008年度:FCHV-adv、X-TRAIL FCV(2005)、FCX(2005)、F-Cell、 HydroGen3、 SX4-FCV
比較FCVの()の数字はモデルイヤー
グラフ中のカッコはガソリン等価燃費(km/L):ガソリンエネルギーLHV量 45.1MJ/kg、 ガソリン密度 0.729kg/L、
水素エネルギーLHV量 120MJ/kg(25℃ 1気圧)を使用
図 3-4-10 シャシダイナモ燃費測定(燃費結果)
出典:平成 20 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
−143−
平均値
トップランナー
23.6%
車両効率(%)
60
12.7%
55.9
8.5%
19.9%
49.6
45.8
40
9.7% 61.3
42.2
38.2
10.5%
20
0
JHFC1
(2004)
JHFC2
(2007)
JHFC2
(2008)
車両による総駆動仕事
算出方法 : 車両効率[%] =
× 100
車両への投入エネルギー
JHFC1
(2004)
JHFC2
(2007)
JHFC2
(2008)
・ FCV平均は、全6車の効率の単純平均である
・ タイヤスリップロスは考慮されていない
・ 試験前後のバッテリーの充放電収支は全車1%未満である
図 3-4-11 シャシダイナモ燃費測定(車両効率)
出典:平成 20 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
表 3-4-17 FCV の寒冷地始動性デモ(結果)
始動
試験日
場所
放置時間
放置時
最低気温
始動時
外気温
約14時間
-10.8℃
-9.8℃
-9.6℃
-8.6℃
2008/2/5
北海道庁前
2008/2/6
雪祭り雪像前 約8時間
始動・走行可否
10秒前後で始動、
走行
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
1,600
1,397km
走行距離(km/月・台)
1,400
フリート
フリート以外
1,200
1,000
800
600
400
547km
377km
200
0
FCV
FCバス
(算出期間:2007/4 ∼2007/12)
図 3-4-12 フリート実証走行距離
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料を基に作成
−144−
また,2007 年 3 月 13 日に開催された JHFC セミナーでは,車載水素タンクの 70MPa
化および FC システム効率の向上による航続距離の伸長の状況が示され,現行ガソリン
車の航続距離に到達している車両があることが示された(図 3-4-13)。
また,スタックの耐久性についても図 3-4-14 に示すように,物理的劣化の低減,化学
的劣化の低減を図ることにより,15 年 20 万 km 相当の耐久性が得られつつある状況が
報 告 さ れ た 。 な お , ス タ ッ ク の 耐 久 性 に つ い て は , 2009 年 2 月 に 開 催 さ れ た
FC-EXPO2009 の専門技術セミナー(FC-7)において,トヨタ自動車から最新のデータ
が発表されている(図 4-1-8 左図参照)。
航続距離(10・15モード)
(km)
800
現行ガソリン車の
航続距離
600
400
200
0
2002
2004
年
2006
図 3-4-13 水素タンクの 70MPa 化による水素搭載量増および
FC システム効率の向上による航続距離の伸長
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
MEA3
MEA3
図 3-4-14 スタック耐久性向上の例
出典:平成 19 年度水素・燃料電池プロジェクト JHFC セミナー資料
−145−
3-5 わが国自動車メーカ等における開発状況
3-5-1 燃料電池実用化推進協議会(Fuel Cell Commercialization Conference of Japan)
2001 年 3 月,燃料電池実用化戦略研究会における,燃料電池の実用化と普及に向けた
民間レベルの検討,協議の場が必要であるとの提言を受け,民間企業,団体等により燃
料電池実用化推進協議会(Fuel Cell Commercialization Conference of Japan,以下
FCCJ)が設立された。
FCCJ は,わが国における燃料電池の実用化と普及に向けた課題解決のための具体的
な検討を行い,政策提言として取りまとめ,会員企業自ら課題解決への努力を行うとと
もに,国の施策へ反映させることにより,わが国における燃料電池の実用化と普及を目
指し,わが国の燃料電池産業の発展に寄与することを目的としている。
2008 年 4 月 1 日末現在,会員総数 128 社・団体・個人であり,事業活動を総括する
企画・運営委員会のもとに以下に示す 2 つのワーキンググループ(WG)を設け,さら
にそれぞれの WG に複数のサブワーキンググループ(SWG)を設け,課題の抽出,具
体的解決策等の検討を進めている(図 3-5-1)。各 WG の活動内容は表 3-5-1 のとおり
である。
図 3-5-1 燃料電池実用化推進協議会の組織
表 3-5-1 FCCJ における WG の活動内容
技術開発企画 WG
(1)要素技術検討
SWG
自動車用,定置用燃料電池に共通なセル・材料,燃料処理等キーテクノロジー
について,将来の高度化に向けた課題の抽出,技術開発施策の検討。
(2)システム技術検
討 SWG
自動車用,定置用システムの商品として要求される安全性,省資源性,低コ
スト化等を達成するために必要な課題の抽出,技術開発施策の検討。
(3)SOFC 技術検
討 SWG
固体酸化物形燃料電池に特有な要素技術およびシステム化に必要な課題の
抽出,技術開発施策の検討。
(4)燃料関連技術検
討 SWG
燃料水素の製造・貯蔵・輸送・供給に関する技術について,要求される性能,
利便性,経済性等を達成するために必要な課題の抽出,技術開発施策の検討。
市場化等環境整備企画 WG
(1)基準・制度 SWG
定置用燃料電池,水素供給インフラ,燃料電池自動車・高圧容器の各分野の
関連法規制の問題点の明確化,その見直しのためのアクションプランの検
討,基準・標準についての活動状況の把握と効率的な体制・対応方針の検討。
(2)実用化促進
SWG
定置用燃料電池分野,燃料電池自動車分野,水素供給インフラ分野における
実用化促進策の検討。
−146−
FCCJ では,自動車用および定置用 PEFC の開発目標を表 3-5-2,表 3-5-3 のとおり設
定し,公表している注)。
表 3-5-2 FCCJ の自動車用 FC の開発目標
2010 年時点
電解質膜目標コスト(暫定)
(生産量 1 千万 m2/年の場合)
セル作動温度
−30∼90℃
−30∼100℃
−40∼120℃
40%
30%
加湿器レス
∼0.15Ω・cm2
∼0.10Ω・cm2
∼0.05Ω・cm2
湿度
(作動ガス入口下限相対湿度)
電解質膜抵抗
(暫定案)
高温域
−20℃
95%RH
30%RH
∼0.0125Ω・cm2
∼0.08Ω・cm2
−
∼0.05Ω・cm2
∼0.0125Ω・cm2
3倍
10 倍
−
0.3g/kW
0.1g/kW
0g/kW
触媒活性(カソード)
※質量活性標準触媒に対する向上率
発電電力当たり総白金使用量
最終
∼1000 円/m2
−
(始動含む,冷媒出口温度)
低温域
2015-2020 年
資料:燃料電池実用化推進協議会「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案」
平成 19 年 1 月
表 3-5-3 FCCJ の定置用 PEFC の開発目標
セル作動温度
(始動含む,冷媒出口温度)
湿度
(作動ガス入口下限相対湿度)
連続運転時間
∼2008 年
2012 年
2015 年∼
約 70℃
80∼85℃
80∼90℃
約 100%
約 65%
30∼40%
4 万時間
5 万時間
9 万時間
4,000 回
起動停止回数
資料:燃料電池実用化推進協議会「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案」
平成 19 年 1 月
2008 年 7 月 4 日の,FCCJ プレスリリース「燃料電池自動車,水素供給ステーション
2015 年から普及スタートへ」において,2015 年事業化に向けて,主要な国内外自動車
メーカ・国内エネルギー企業が図 3-5-2 に示すシナリオに合意したと発表している。こ
のシナリオでは,2015 年を目途に一般ユーザへの普及開始を想定しており,各社とも取
り組みをさらに加速していくものとしている。
燃料電池実用化推進協議会「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案」平成 19
年1月
注)
−147−
図 3-5-2 FCV と水素ステーションの普及に向けたシナリオ
出典:FCCJ プレスリリース
−148−
3-5-2 COCN による「燃料電池自動車・水素供給インフラ整備普及プロジェクト」
COCN(Conucil on Competitiveness-Nippon;産業競争力懇談会)は,国の持続的発
展の基盤となる産業競争力を高めるため,科学技術政策,産業政策などの諸施策や官民
の役割分担を,産官学協力のもと合同検討により政策提言としてとりまとめ,関連機関
への働きかけを行い,実現を図る活動を行っている組織である。
2008 年度において,COCN によって「燃料電池自動車・水素供給インフラ整備普及
プロジェクト」が推進テーマとして選定された。これは,2015 年までに燃料電池車普及
開始に必要な水素供給インフラを整備し,2020 年までに燃料電池車本格商用化に必要な
水素供給インフラを拡充することを目指すものである。
2008 年 12 月の中間報告では,今後の FCV/水素インフラ構築を目指した社会実験を
実効あるものとし,事業化と速やかな普及を確実に実現するためとして,今後の推進体
制が提言された。
① 燃料電池自動車・水素インフラ普及推進協議会(仮)の設置
② ポスト JHFC プロジェクト運営のための組織の設立
③ 水素事業者による業界組織の設立
また,図 3-5-3 に示すような地方自治体との連携による水素タウン・水素ハイウェイ
の拡充イメージが提案されている。
図 3-5-3 水素タウン・水素ハイウェイの拡充イメージ
出典:COCN 資料
http://www.cocn.jp/common/pdf/FM09_ptp_saitou_3.pdf
−149−
3-5-3 FCV の開発状況
わが国自動車メーカにおける FCV の開発状況を整理したものを表 3-5-4∼表 3-5-9 に
示す。2002 年 12 月に,トヨタ自動車と本田技研工業が内閣府を始めとする 5 省庁に,
高 圧 水 素 形 FCV の 限 定 的 リ ー ス 販 売 を 行 っ た 。 そ の 後 , 2003 年 12 月 に は
DaimlerChrysler(当時)が,2004 年 3 月には日産自動車もリース販売を開始した。ま
た,2005 年 6 月にはトヨタ自動車「FCHV」および本田技研工業「FCX」が,燃料電
池車としては日本で初めて,一般車両と同様に販売を目的とした型式認証を取得した。
これにより,普及への段階を一歩進めたこととなる。
表 3-5-4 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 1)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 1992 年から FCV の開発を進め,1996 年の EVS-13 では実際に走行し,
1999 年の東京モーターショーではコンポーネントを展示。
・2001 年 1 月,Clean Hydrocarbon Fuel を研究の主要な候補とすることで
GM と合意し,この Clean Hydrocarbon Fuel の実現に向けて,他の自動
車メーカやエネルギー供給メーカ等と協調して推進していく。
・ 2001 年 3 月に直接水素形(MH タンク)FCV 試作車「FCHV-3」を発表。
・ 2001 年 6 月に高圧水素形 FCV 試作車「FCHV-4」を発表。国土交通省大
臣認定を取得し,公道走行試験を開始。7 月からは CaFCP でも公道走行
試験を開始。
・ 同時に高圧水素形ノンステップ大型路線バス「FCHV-BUS1」を日野と共
同で開発したと発表。日野製車両をベースにトヨタ製 FC スタックを搭載。
公道走行試験を目指し開発を進めていく。
・ 2001 年 10 月,東京モーターショーで CHF 改質形 FCV 試作車「FCHV-5」
を出展。
・ 2002 年 1 月に,トヨタ内の技術・生産技術の FC 開発力を結集した FC
開発センターを新設。FC 開発センターを中心にトヨタグループの力を合
わせ,世界トップレベルの FC 技術開発を進める。
・ 2002 年 7 月,2003 年末までを目標としていた販売計画を前倒しし,2002
2002 年
年末に日本と米国で限定販売を開始すると発表。向こう 1 年で日米あわせ
トヨタ リース販売
て 20 台程度の販売を計画している。
開始
・ 2002 年 9 月,日野と共同で開発した高圧水素形ノンステップ大型路線 FC
バス「FCHV-BUS2」(自社製スタック)が国土交通省大臣認定を取得し,
公道走行試験を開始。2003 年夏からは,東京都営バスの営業路線で運行
走行試験を行う予定。
・ 2002 年 11 月,高圧水素形 FCV「トヨタ FCHV」(自社製スタック)が
限定販売を可能とする国内初めての国土交通省大臣認定を取得。
・ 2002 年 12 月 2 日,世界で初めて,市販 FCV「トヨタ FCHV」を日米で
納入した。日本では,内閣官房,経済産業省,国土交通省,環境省の計 4
台をリース販売(120 万円/月)。米国では,カリフォルニア大学のアー
バイン校とデービス校の計 2 台をリース販売(1 万ドル/月)。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2003 年 3 月から「トヨタ FCHV」で公道
走行実証試験を開始。
・ 2003 年 7 月 , 2005 年 の 愛 知 万 博 で , 来 場 者 の 輸 送 手 段 と し て
「FCHV-BUS2」の改良型を導入すると発表。車両台数は 8 台程度で,瀬
戸会場と長久手会場の間を 6∼8 分程の間隔で運行させる計画。
・ 2003 年 8 月,「トヨタ FCHV」を愛知県庁,名古屋市,東邦ガス,東京
ガス,新日本石油,岩谷産業へ各 1 台ずつリース販売。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2007 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−150−
表 3-5-5 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 2)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2003 年 8 月,東京都営バスの営業路線で「FCHV-BUS2」の運行を開始。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「Fine-N」を
出展。
・ 2003 年 12 月,「トヨタ FCHV」を国土交通省関東地方整備局に納入した。
パトロールカーとして使用される。
・ 2004 年 4 月,自社製 35MPa の水素ボンベで高圧ガス保安協会(KHK)
の認証を取得。
・ 2005 年 1 月,自社製 70MPa の水素ボンベで高圧ガス保安協会(KHK)
の認証を取得。
・ 2005 年 2 月,日本国際博覧会(愛・地球博)における会場間移動用に
「FCHV-BUS」8 台,これに加えて,海外からの賓客が会場内を移動する
際の先導車として FCHV2 台を提供。FCHV-BUS は会場間の走行距離は,
4.4km,運行間隔は約 8 分間隔,1 時間当たり往復 800∼1,000 人の輸送
能力。
・ 2005 年 6 月,「トヨタ FCHV」の型式認証取得。自社製オールコンポジッ
2002 年
ト水素ボンベを搭載。
トヨタ
リース販売
・ 2005 年 10 月,「トヨタ FCHV」を大阪府にリース販売。
(続き)
開始
・ 2005 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー4 輪駆動の
「Fine-X」を出展。
・ 2006 年 3 月,「FCHV-BUS」1 台を知多乗合㈱に貸与し,同社の営業路
線で 1 日 1 往復営業運行する。期間は 3 月 9 日から 2 週間。
・ 2006 年 7 月,中部国際空港内に設置されるセントレア水素ステーション
の開設時期にあわせて営業運行エリアを拡大。知多乗合㈱に 1 台,ランプ
バスとして中部スカイサポート(株)に 2 台貸与して,営業運行を開始した。
・ 2007 年 4 月,中部国際空港周辺地域において,燃料電池ハイブリッド車
「トヨタ FCHV」による営業運行を実施。
・ 2007 年 9 月,「トヨタ FCHV」で大阪-東京間約 560km をエアコンをつ
けて,水素補充することなく完走したと発表。
・ 2008 年 6 月,新型燃料電池ハイブリッド車「トヨタ FCHV-adv」を発表,
型式認証を取得。
・ 2008 年 9 月,「トヨタ FCHV-adv」の限定リース販売を開始。第 1 号は
環境省に納車。リース価格は月額 84 万円(30 カ月間リース)。
・ 2000 年に高圧水素形 FCV 試作車「エクステラ FCV」を発表。2001 年 4
月に CaFCP で公道走行試験を開始。
・ 2001 年 7 月に Xcellsis から FC エンジンの提供を受けることで合意。
・ 2001 年 11 月に Renault(ルノー)と FCV の共同開発を発表。FC スタッ
クのみ共同開発を行い,その他の部分は独自に開発を行う。
・ 2002 年 1 月に中期環境計画をまとめ,FCV については 2005 年までに市
販可能な技術開発を完了するとしている。燃料については,当面は水素の
高圧貯蔵方式での実用化を目指す。
・ 2002 年 2 月,UTC Fuel Cells と自動車用 FC を共同開発することで合意。
2004 年
ルノーもこの共同開発に参加。合意事項は 2 つ。UTC が日産に独自開発
日産
リース販売
した FC パワープラントを評価のために提供することと,FCV 用部品を 3
開始
社で共同開発すること。
・ 2002 年 11 月,高圧水素形 FCV「X-TRAIL FCV」(UTC-FC 社製スタッ
ク)が国土交通省大臣認定を取得。
・ あわせて,当初 2005 年を目標としていた販売計画を前倒しし,2003 年中
に限定販売を行うことを発表。車両は「X-TRAIL FCV」をベースに改良
を加え,数台程度をリース方式で販売する予定。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2003 年 3 月から「X-TRAIL FCV」で公道
走行実証試験を開始。
・ 市販予定の FCV の駆動系部品を Ballard から調達する。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2007 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−151−
表 3-5-6 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 3)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「EFFIS」を
出展。
・ 2004 年 3 月,コスモ石油に「X-TRAIL FCV」1 台をリース販売(100 万
円/月)。
・ 2004 年 4 月,神奈川県と横浜市に「X-TRAIL FCV」を 1 台ずつリース販
売。
・ 2005 年 2 月,自社製の燃料電池スタックと 70MPa 高圧水素容器を開発
したことを発表。高圧水素容器は,高圧ガス保安協会の認可も取得。
・ 2005 年 12 月,「X-TRAIL FCV」05 モデルの大臣認定取得。
2004 年
・ 2006 年 2 月,カナダバンクーバーにて,70MPa 水素ボンベ搭載 FCV に
日産
リース販売
て走行試験を実施。
(続き)
開始
・ 2006 年 9 月,国際物流総合展 2006 に圧縮水素を燃料とした FC フォーク
リフトを出展。カナダのジェネラルハイドロジェン社の PEFC を搭載。
・ 2007 年 2 月,ハイヤー仕様の燃料電池車を神奈川都市交通へ納車。
・ 2008 年 7 月,ドイツのニュルブルクリンクサーキット北コースにおいて
「X-TRAIL FCV」のタイムアタックを行い,燃料電池車(FCV)としての
最速ラップタイムを記録したと発表。
・ 2008 年 8 月,従来の約 2 倍の出力密度を有する新燃料電池スタックを開
発したと発表。
・ 2008 年 12 月,「X-TRAIL FCV」を日光市に納車。
・ 2000 年 11 月から CaFCP において高圧水素形 FCV 試作車「FCX-V3」
(Ballard 製スタック搭載)の公道走行テストを開始。2001 年 2 月からは
ホンダ製スタックを搭載した「FCX-V3」の公道走行テストを開始。2001
年 7 月には「FCX-V3」(Ballard 製スタック搭載)の国土交通省大臣認
定を取得し,栃木県を中心に公道走行テストを開始。
・ 2001 年 7 月,米国加州の研究所敷地内に太陽光エネルギーから水素を発
生させる FCV 用水素製造・供給ステーションを設置し,実験稼動を開始。
実験には「FCX」シリーズが用いられた。
・ 2001 年 9 月に高圧水素形 FCV 試作車「FCX-V4」を発表。2002 年 3 月
には,国土交通省大臣認定を取得し,公道走行試験を開始。35MPa 高圧
水素タンクでの公道試験は日本初。
・ 2002 年 7 月,高圧水素形 FCV「Honda FCX」(Ballard 製スタック)が
米国環境保護庁(EPA)と加州大気資源局(CARB)から,FCV では世
界で初めてとなる販売認定を取得。また,DOE と EPA から発行された
「2003 年モデル自動車燃費ガイド」に,FCV として初めて記載された。
2002 年
ホンダ リース販売 ・ 併せて,2003 年までに商品化を目標としていた計画を前倒しし,2002 年
末に日米で販売を開始すると発表。当初 2∼3 年で日米あわせて 30 台程度
開始
の販売を計画している。
・ 2002 年 11 月,「Honda FCX」の販売が可能になる国土交通省大臣認定
を取得。
・ 2002 年 12 月 2 日,世界で初めて,市販 FCV「Honda FCX」を日米で納
入した。日本では,内閣府に 1 台リース販売(80 万円/月)。米国では,
ロサンゼルス市に 1 台リース販売(500 ドル/月)。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2003 年 3 月から「Honda FCX」で公道走
行実証試験を開始。
・ 2003 年 7 月,経済産業省,環境省,岩谷産業に「Honda FCX」をリース
販売(80 万円/月)。
・ 2003 年 9 月,「Honda FCX」をサンフランシスコ市に 2 台リース販売す
ると発表。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「KIWAMI」
を出展。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2007 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−152−
表 3-5-7 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 4)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2003 年 10 月,氷点下 20℃での始動が可能な Honda 製燃料電池スタック
を開発,FCX に搭載し公道試験を開始と発表。2005 年から日米でリース
販売を開始すると発表。従来型のバラード製 PEFC を 2004 年末までに中
止し,ホンダ製に切り替える予定。
・ 2004 年 1 月,箱根駅伝に大会本部車として FCX を提供。
・ 2004 年 4 月,氷点下での始動を可能にした「Honda FC STACK」搭載
「FCX」の屋久島でのテスト走行を開始と発表。鹿児島大学を中心とする
大学間共同研究チーム,屋久島電工株式会社の 3 者が展開する「屋久島ゼ
ロエミッションプロジェクト」の一環。
・ 2004 年 11 月,「Honda FC STACK」搭載「FCX」を 2 台販売すること
をニューヨーク州政府と合意と発表。契約は 2 年間。
・ 2004 年 12 月,「Honda FC STACK」搭載「FCX」の国土交通省大臣認
定を取得。
・ 2005 年 1 月,箱根駅伝に大会本部車として「Honda FC STACK」搭載
「FCX」を提供。
・ 2005 年 1 月,「Honda FC STACK」搭載「FCX」を 1 台北海道庁に納車。
・ 2005 年 6 月,「FCX」の型式認証取得。
2002 年
ホンダ
リース販売 ・ 2005 年 6 月,「FCX」をアメリカの個人ユーザにリース販売。
(続き)
・ 2005年10月,東京モーターショーでコンセプトカー「FCX CONCEPT」
開始
を発表。
・ 2006年9月,FCXコンセプトの走行を開始。また,2008年に日米でこのコ
ンセプトをベースとした新型燃料電池車の限定販売を開始すると発表。
・ 2007年3月,燃料電池車「FCX」を米国の17歳女優にリース販売。
・ 2007年11月,燃料電池自動車への家庭用水素供給システム「ホーム・エ
ネルギー・ステーションIV」の実験稼動を開始。
・ 2007年11月,ロサンゼルスモーターショーにて,「FCXクラリティ」を
発表。2008年夏からの米国でのリース販売を発表。
・ 2008年6月,「FCXクラリティ」の生産を開始。ラインオフ式典において,
米国での最初の5組の個人顧客を発表。販売計画台数は,年間数十台,日
米合わせて3年間で200台程度を予定している。
・ 2008年7月,「FCXクラリティ」の日本仕様車を公開。
・ 2008年7月,「FCXクラリティ」の米国リース販売を開始。リース価格は
月額600ドル(3年リース)。
・ 2008年11月,「FCVクラリティ」の国内リース販売を開始。第1号は環境
省に納車。
・ 2001年 10月,東京モーターショーで高圧水素形FCV試作車「MOVE
FCV-K-Ⅱ」を出展。軽乗用車で高圧水素タイプのFCVを試作したのは初
めて。FCスタックはトヨタ製を使用。
・ 2003年1月,「MOVE FCV-K-Ⅱ」が軽自動車クラスのFCVで初めて大臣
認定を取得。2月から公道走行試験を開始。
2004 年
・ 2003年9月から,おおさかFCV推進会議に参加。FCVを推進するための各
種イベントを実施。「MOVE FCV-K-Ⅱ」が2台参加している。
ダイハツ リース販売
・ 2004年6月,大阪府庁へ公用車として「MOVE FCV-K-Ⅱ」をリース販売
開始
(20万円/月)。
・ 2005年10月,東京モーターショーでコンセプトカー「Tanto FCHV」出展。
・ 2007年9月,独立行政法人 産業技術総合研究所と協力し,白金を全く使用
せず,燃料には水加ヒドラジンを安全な状態にして使用することにより,
CO2を全く排出しない燃料電池の新たな基礎技術を開発したと発表。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2006 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−153−
表 3-5-8 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 5)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2001年10月にGMと燃料電池技術開発分野において,長期的に相互協力を
することで合意。車両への燃料電池搭載技術の開発および将来の燃料電池
車の開発を目的とする。
・ 2003年10月,GM製スタックを搭載した軽乗用車タイプの高圧水素形FCV
「WagonR」,「MR Wagon」を発表し,大臣認定を取得。
・ 2003 年 10 月,東京モーターショーで FCV コンセプトカー「Mobile
Terrace」を出展。
・ JHFCプロジェクトに参加し,2004年1月から「WagonR」で公道走行実
証試験を開始。
・ 2004年8月,700気圧圧縮水素貯蔵システムについて,日本国内で初めて
高圧ガス保安協会の認可を取得。
スズキ
未定
・ 2004年12月,700気圧圧縮水素貯蔵システムを搭載した軽自動車の燃料電
池車「MRワゴン-FCV」をGMと共同開発し,国土交通大臣認定を取得。
・ 2005 年 10 月,東京モーターショーでコンセプトカー「IONIS(イオニス)」
を出展。
・ 2006 年 9 月,メタノール形燃料電池を搭載した電動車いす「MIO」を開
発し,国際福祉機器展に参考出品。
・ 2007 年 10 月,東京モーターショーに,英国インテリジェントエナジー社
製の FC スタックを搭載した燃料電池二輪車「crosscage(クロスケージ)」
を出展。
・ 2008 年 6 月,燃料電池車「SX4-FCV」の大臣認定を取得。
・ 2008 年 11 月,燃料電池セニアカー「MIO」を静岡県へリース。
・ 当初 2005 年頃の実用化(少量導入)を目指して,燃料入手性,フリート
走行実績から,導入が比較的容易なメタノール改質形の FCV を開発。(FC
スタック,改質技術の開発は三菱重工が担当。車載システムに関しては 2
社で調整し,共同で開発)
・ 2001 年夏に三菱重工がメタノール改質形 FC スタックを開発,三菱自動
車製ワンボックス車の床下に搭載し走行に成功。固体高分子膜(DuPont
製)以外は全て自社製。
・ DaimlerChrysler 社との提携を機に,同社の支援を受けて実用化を進める
こととし,2001 年 10 月の東京モーターショーに,DaimlerChrysler 社の
燃料電池システムの搭載を予定した未来コンセプトカー「Space Liner」
三菱
未定
を出展。
・ スタックは DaimlerChrysler 社,Ballard 社などによるアライアンスから
供給を受け,三菱自動車は二次電池やモータなどの周辺技術の開発を進め
ている。
・ 2003 年 9 月,DaimlerChrysler 社の FC システムを搭載した高圧水素形
FCV「MITSUBISHI FCV」を発表し,大臣認定を取得した。
・ JHFC プロジェクトに参加し,2004 年 1 月から「MITSUBISHI FCV」
で公道走行実証試験を開始。
・ 2004年1月,「MITSUBISHI FCV」が大阪国際女子マラソンの広報車と
して走行。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2006 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−154−
表 3-5-9 わが国自動車メーカの FCV の開発状況(その 6)
現在研究・開発中の FCV の状況
・ 2000 年度から「サンバーEV」をベースにメタノール改質形 FCV を開発。
NEDO の PEFC プロジェクトのフェーズⅡの一環として実施。FC システ
富士重工
未定
ムを車載する場合の具体的な課題摘出を目的としたもの。2001 年度以降は
これらの課題解決を目指した研究開発を行う。
・ FCV の 開 発 に 1991 年 か ら 着 手 。 1998 年 か ら Ford を 通 じ て Ballard ,
DaimlerChrysler等とのアライアンスへ参加。技術者がFordのチームに参
画。
・ アライアンスで開発したFCシステムの供給を受ける。
・ 2001年2月にアライアンス製のFCシステムを搭載したメタノール改質形
FCV「プレマシーFC-EV」を発表。国土交通省大臣認定を取得し,2月か
ら7月まで日本での公道走行実験を行った。
マツダ
未定
・ FCVの開発はアライアンスの枠組みの中で進めている。FCシステムは
Ballard,FCVに必要なユニットの統合化・車両制御システムはFordが開
発を行っている。
・ 水素吸蔵合金については現在も開発を継続。2000年11月には広島大学と
共同で,100℃以下の温度で6%の水素を吸放出させることに成功。
・ 2003年以降,水素を燃料とした自動車としては,水素ロータリーエンジン
車の開発をメインとして進めている。
・ DMFC搭載二輪車「FC06」を開発し,2003年10月の東京モーターショー
に出品。
・ 2004年9月には「FC06 PROT」でナンバーを取得し,公道走行を実施。
・ 2005年9月より,DMFC搭載FC二輪車FC-me1台を静岡県にリース販売開
始。
2005 年
ヤマハ
リース販売 ・ 2005年10月,東京モーターショーにてFC-meを出展。DMFCスタックは
発動機
ジーエス・ユアサコーポレーション製。
開始
・ 2006年10月,EVS22にて水素を燃料とした125ccクラスのFCハイブリッ
ド型二輪車「FC-AQEL」を出展した。
・ 2007年10月,東京モーターショーに「FC-Dii」を出展。DMFCとリチウ
ムイオン電池を搭載。
出典:2002 年度までの JEVA 国内訪問インタビュー調査,2003 年度∼2006 年度の JARI 国内訪問イン
タビュー調査,プレスリリース,新聞記事等を基に作成
メーカ
商品化等
−155−
国内メーカによる FCV の一覧を表 3-5-10,表 3-5-11 に示す。
表 3-5-10 国内メーカの燃料電池車一覧(その1)
トヨタ
日産
発表年月
車両
燃料タイプ
補助電源
諸元(参照)
1996.10
1997.9
2001.3
2001.6
2001.6
2001.10
2002.9
2002.12
2003.10
2005.1
2005.6
2005.10
2007.9
2008.6
1999.5
2000.10
2002.12
FCEV
FCEV
FCHV-3
FCHV-4
FCHV-BUS1
FCHV-5
FCHV-BUS2
トヨタ FCHV
Fine-N
FCHV-BUS
FCHV
Fine-X
FCHV
FCHV-adv
ルネッサ FCV
エクステラ FCV
X-TRAIL FCV
水素吸蔵合金タンク
メタノール水蒸気改質
水素吸蔵合金タンク
圧縮水素(25MPa)
圧縮水素(25MPa)
クリーン炭化水素系
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(70MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
−
圧縮水素(70MPa)
圧縮水素(70MPa)
メタノール改質
圧縮水素
圧縮水素
−
−
−
−
−
−
−
−
−
表 3-5-12
表 3-5-13
−
表 3-5-14
表 3-5-15
−
−
−
2003.10
EFFIS
圧縮水素
鉛酸電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
リチウムイオン電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
−
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池
コンパクト
リチウムイオン電池
コンパクト
リチウムイオン電池
コンパクト
リチウムイオン電池
2003.11
2005.12
1999.10
1999
2000.2
2001.1
2001.9
2002.11
2003.10
ホンダ
2003.10
2004.12
2005.6
2005.10
2006.9
2007.11
2008.7
注)
X-TRAIL FCV
03 モデル
X-TRAIL FCV
05 モデル
FCX-V1
FCX-V2
FCX
FCX-V3
FCX-V3
FCX-V4
Honda FCX
Honda FC STACK 搭
載 FCX
KIWAMI
Honda FC STACK 搭
載 FCX
Honda FC STACK 搭
載 FCX
FCX コンセプト
FCX コンセプト
(走行可能モデル)
FCX クラリティ
FCX クラリティ
(日本仕様)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素
(35MPa/70MPa)
水素吸蔵合金タンク
メタノール
オートサーマル改質
メタノール改質
圧縮水素(25MPa)
圧縮水素(25MPa)
圧縮水素(35MPa)
圧縮水素(35MPa)
−
−
表 3-5-16
−
ニッケル水素電池
−
ニッケル水素電池
ウルトラキャパシタ
ウルトラキャパシタ
ウルトラキャパシタ
ウルトラキャパシタ
−
−
−
−
−
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
−
−
−
−
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
−
圧縮水素(35MPa)
ウルトラキャパシタ
表 3-5-17
次世代水素タンク
ウルトラキャパシタ
−
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
表 3-5-18
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
表 3-5-19
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
表 3-5-20
:大臣認定を取得した車両(X-TRAIL FCV 05 モデルは 35MPa で取得)
:型式認証を取得した車両
−156−
表 3-5-11 国内メーカの燃料電池車一覧(その2)
マツダ
三菱
ダイハツ
発表年月
1997.12
1999.10
2001.2
PREMACY
1999.10
2001.10
2003.9
1999.10
2001.10
2005.10
MFCV
スペース・ライナー
MITSUBISHI FCV
MOVE EV-FC
MOVE FCV-K-Ⅱ
Tanto FCHV
MR ワゴン−FCV
ワゴン R−FCV
Mobile Terrace
MR ワゴン−FCV
IONIS
SX4-FCV
サンバーFCEV
2003.10
スズキ
富士重工
注)
車両
デミオ FCEV
デミオ FCEV
2003.10
2004.12
2005.10
2008.6
2000
FC-EV
燃料タイプ
水素吸蔵合金タンク
水素吸蔵合金タンク
補助電源
ウルトラキャパシタ
−
諸元(参照)
−
−
メタノール改質
鉛酸電池(始動用)
表 3-5-21
メタノール改質
−
圧縮水素(35MPa)
メタノール改質
圧縮水素
圧縮水素(35MPa)
リチウムイオン電池
−
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池
−
−
表 3-5-22
−
表 3-5-23
−
圧縮水素(34.5MPa)
なし
−
−
圧縮水素(70MPa)
−
圧縮水素(70MPa)
メタノール改質
−
なし
−
キャパシタ
−
−
表 3-5-24
−
表 3-5-25
−
:大臣認定を取得した車両
−157−
表 3-5-12
外
TOYOTA・HINO
FCHV-BUS (2005 年 1 月発表)
観
10.515×2.490×3.360
65
80
交流同期電動機
160(80×2)
520(260×2)
固体高分子形(トヨタ製)
180(90×2)
圧縮水素(35MPa)
ニッケル水素電池
−
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
表 3-5-13 TOYOTA FCHV 05 モデル(2005 年 6 月型式認証取得)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
4.735×1.815×1.685
1,880
5
155
330(10・15 モード)
交流同期電動機
90
260
固体高分子形(トヨタ製)
90(最大)
圧縮水素(35MPa)(トヨタ製水素タンク)
ニッケル水素電池
105 万円/月(リース価格)
−158−
表 3-5-14 改良型 TOYOTA FCHV (2007 年 9 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
4.735×1.815×1.685
1,880
5
155
約 780(10・15 モード)
交流同期電動機
90
260
固体高分子形(トヨタ製)
90(最大)
圧縮水素(70MPa)(トヨタ製水素タンク)
ニッケル水素電池
表 3-5-15 トヨタ FCHV-adv (2008 年 6 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
4.735×1.815×1.685
1,880
5
155
約 830(10・15 モード)
約 760(JC08 モード)
交流同期電動機
90
260
固体高分子形(トヨタ製)
90(最大)
圧縮水素(70MPa),156L
ニッケル水素電池
84 万円/月(30 ヶ月リース)
−159−
表 3-5-16 Nissan X-TRAIL FCV 05 年モデル (2005 年 12 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
4.485×1.770×1.745
1,790
5
150
370 以上(70MPa 高圧水素搭載時は 500km 以上)
減速機一体型同軸モータ
90
固体高分子形(日産製)
90
圧縮水素(35MPa/70MPa)
コンパクトリチウムイオン電池
表 3-5-17 HONDA Honda FC STACK 搭載 FCX
(2004 年 12 月発表,2005 年 6 月型式認証取得)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
4.165×1.760×1.645
4
150
430(LA モード)
交流同期電動機(Honda 製)
80(109PS)
272(27.7kg・m)
固体高分子形(Honda 製)
86
ウルトラキャパシタ(Honda 製)
高圧水素(35MPa)
156.6
−160−
表 3-5-18 HONDA FCX コンセプト(走行可能モデル)(2006 年 9 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
4.760×1.865×1.445
4
160
570(LA-4 モード)
交流同期電動機(Honda 製)
95(129PS)
256(26.1kg・m)
固体高分子形(Honda 製)
100
リチウムイオンバッテリー
高圧水素タンク(35MPa)
171
表 3-5-19 HONDA FCX クラリティ(2007 年 11 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
価格
4.835×1.845×1.470
1,625
4
160
450(280mile)
交流同期電動機(Honda 製)
100
256
固体高分子形(Honda 製)
100
リチウムイオンバッテリー,288V
高圧水素タンク(35MPa)
171
600 ドル/月(3 年リース)
−161−
表 3-5-20 HONDA FCX クラリティ日本仕様(2008 年 7 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
出力補助装置
燃料/貯蔵方式
容量(L)
4.845×1.845×1.470
1,630
4
160
620(10・15 モード)
交流同期電動機
100
256
固体高分子膜型(Honda 製)
100
リチウムイオンバッテリー,288V
高圧水素タンク(35MPa)
171
表 3-5-21 MAZDA PREMACY FC-EV (2001 年 2 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料
出力補助装置
価格
4.350×1.695×1.605
1,850
5
交流誘導電動機
65(88PS)
固体高分子形(Ballard 製)
メタノール
鉛酸電池(始動時のみ)
試作車
−162−
表 3-5-22 MITSUBISHI FCV (2003 年 9 月発表)
外
観
ベース車両
全長×全幅×全高(m)
車両重量(kg)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
水素タンク容量(L)
出力補助装置
グランディス
4.755×1.795×1.690
2,000
5
140
150
交流誘導モータ
65
210
固体高分子(Ballard 製)
68
圧縮水素(35MPa)
117
ニッケル水素電池
表 3-5-23 DAIHATSU MOVE FCV-K-Ⅱ (2001 年 10 月発表)
外
観
3.395×1.475×1.705
4
105
120
交流同期電動機
32
65
固体高分子形(トヨタ製)
30
圧縮水素(25MPa)
ニッケル水素電池
試作車
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
最大駆動トルク(Nm)
燃料電池
燃料電池出力(kW)
燃料
出力補助装置
価格
−163−
表 3-5-24 SUZUKI MR ワゴン−FCV(2004 年 12 月発表)
外
観
MR ワゴン
3.395×1.475×1.590
4
110
200
交流同期電動機(PB13A)
38
GM との共同開発
圧縮水素(70MPa)
ベース車両
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機種類
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料
表 3-5-25 SUZUKI
外
SX4-FCV(2008 年 6 月発表)
観
4.190×1.730×1.585
5
150
250
68
80
圧縮水素(70MPa)
キャパシタ型
全長×全幅×全高(m)
乗車定員(人)
最高速度(km/h)
航続距離(km)
電動機最大出力(kW)
燃料電池出力(kW)
燃料
高電圧電池タイプ
−164−
表 3-5-26 スズキ「crosscage(クロスケージ)」(2007 年 10 月発表)
外
観
全長×全幅×全高(m)
航続距離(km)
電動機
燃料電池
燃料
出力補助装置
1.985×0.645×1.020
200
交流同期電動機
固体高分子形
(英国 Intelligent Energy 社製)
高圧水素タンク(35MPa)
リチウムイオン電池
(NEC トーキン株式会社製)
表 3-5-27 ヤマハ発動機 FC-me (2005 年 10 月発表)
外
観
乾燥重量(kg)
最高速度(km/h)
航続距離(km)@ speed (km/h)
電動機最大出力(kW)
燃料電池
燃料電池出力(kW,Net)
燃料
出力補助装置
65
40
100 @ 30
0.95
DMFC
0.5kW
MeOH54
リチウムイオン電池(6.2Ah×25V)
−165−
3-5-4 今後の販売展開・商品化について
各自動車メーカによる FCV の今後の販売展開・商品化の計画について,国内訪問イン
タビュー調査結果,プレスリリース等から,表 3-5-28,表 3-5-29 に整理する。
表 3-5-28 自動車メーカによる今後の FCV の販売展開・商品化の計画(1)
○次世代自動車に対する取組み
・ 基本的スタンス:将来可能性のある全ての次世代エネルギー源に対応できるように技術開
発を進め,適時・適地・適車でお客様に提供する
○燃料電池車に対する取組み
・ 2007 年度までに,試験車を含め,日米で 62 台の FCHV が実路を走行
・ 技術開発へのフィードバックには現状程度の台数で十分。導入台数の更なる増加は,ある
トヨタ
程度コストが下がり一般のお客様に使って頂けると判断した時である
・ 中部国際空港で FC バス実証走行を継続中。FC バスは普及初期のインフラ整備を促進する
上で役割が大きいと認識している
○事業化へのシナリオ
FCCJ シナリオ実現に向け,2015 年を目標に FCHV の開発を進める。その為に必要な規制
緩和と,水素インフラの初期整備に向けた取組みも必要である。
○次世代自動車に対する取組み
・ 2006 年 12 月発表の『日産グリーンプログラム』に従い,新車の CO2 排出量を 2050 年に
2000 年比 70%削減の実現に向け取り組む
・ 70%削減のためには,内燃機関の改善や HEV 化だけでは困難で,EV や FCV が必須。更
に電力や水素製造において再生可能エネルギーの利用が重要
○燃料電池車の導入台数
日産
・ 2007 年度では,日米で 22 台が走行中。開発は次のバージョンに移っている
・ 事業化へのステップの中で,段階的に 100 台規模で実証走行をすることは意味があると認
識
○事業化へのシナリオ
・ 2015 年までに事業化の判断を行う。
・ 2010 年までに性能,耐久性,2015 年までにコストの課題の見通しをつける
○次世代自動車に対する取組み
・ 短期:内燃機関の改良・進化
・ 中期:ハイブリッド技術の改良・進化
・ 長期:温暖化対策・エネルギー問題に有効な FCV の普及
○燃料電池車の導入台数
・ 2007 年度では,日米で約 30 台が走行中,個人にもリース中
ホンダ
・ FCV Clarity を 2008 年 7 月から US で,11 月から国内でリース販売開始
・ 販売計画台数は,年間数十台,日米合わせて 3 年間で 200 台程度を予定
○事業化へのシナリオ
2015 年くらいには事業化判断を行う。技術課題も含め,解決するべき課題はまだまだ残さ
れているが,見通しは決して暗くない。
・ FCV の商品化については未定。
・ 水素を燃料とする車としては,2003 年に「RX-8 水素ロータリーエンジン」開発車を発表
して以降,水素内燃機関自動車の開発を行っている。JHFC 第 2 期にも水素内燃機関自動
マツダ
車で参加している。
・ 2004 年には「RX-8 ハイドロジェン RE」が,2008 年には「プレマシー ハイドロジェン
RE ハイブリッド」が大臣認定を取得している。
・ FCV の商品化については未定。
・ 2005 年頃からは BEV の開発・実用化促進へ向けて大きく舵を切っており,JHFC 第 2 期
三菱
には参加していない。DC との資本提携解消後は,FCV 開発に関する発表はみられない。
出典:平成 19 年度 JHFC セミナー資料,プレスリリース等を基に作成
−166−
表 3-5-29 自動車メーカによる今後の FCV の販売展開・商品化の計画(2)
・ 2001 年より燃料電池を GM と共同開発している。
・ 2008 年 6 月に発表した「SX4-FCV」では,GM 製の燃料電池とスズキ製の高圧水素タンク
スズキ
(70MPa)およびキャパシタを採用。スズキはこの車両の公道試験で得られるデータを収
集し実用化に向けた開発を進めていく。(2008 年 6 月 24 日プレスリリース)
・ 商品として販売できる時期は,現状ではわからない。技術の進展や他社の動向を見ながら
検討していく。
ダイハツ
・ 2006 年以降 FCV 開発は停滞している模様。
出典:平成 19 年度 JHFC セミナー資料,プレスリリース等を基に作成
3-6 定置用等の燃料電池の開発をめぐる状況
固体高分子形燃料電池はエネルギー効率,低騒音,環境適合性などの優れた特性から
車載以外の用途への開発も進展している(表 3-6-1)。定置用 FC については,常温に近
い作動温度で発電と給湯が可能(熱利用を含めた総合効率で 70%以上)なため,家庭用・
業務用コージェネレーションとしての用途が有望視されており,内外のメーカが開発を
進めている。また,既存のエネルギーインフラの整備が遅れている開発途上国支援の新
たなツールとしても期待されている。
表 3-6-1 車載用以外の主な利用形態
需要分野
家庭用コージェネレーション
非常用電源
可搬型電源
モバイル用・携帯用電源
概
要
1∼3kW 程度。住宅などの自家用電源。
バックアップ用家電(屋内での使用)
工事用・レジャー用電源(エンジン発電機の代替)
ノートパソコン,携帯電話用電源
3-6-1 家庭用・業務用
定置用 FC の実用導入時期は,低コスト化の目標値が内燃機関と競合する自動車ほど
厳しくないため,自動車用よりも早いとされ,家庭用 PEFC システムに関しては既に商
業化競争が始まっている。家庭用としては,都市ガスが 2,500 万戸(カバー面積 5%),
LPG が 2,800 万戸に普及しているため,これらの改質形 FC システムの開発が行われ,
商品化が進められている。また,液体燃料としては灯油を燃料とするシステムの商品化
も進められている。
2005 年度からは,初期市場創出段階における民間技術レベルおよび問題点を把握し,
今後の開発課題を抽出するため,定置用燃料電池大規模実証事業がスタートした。本事
業は 2008 年度で終了する。その概要を表 3-6-2 に示す。各社とも 2009 年度から一般家
庭への本格導入を計画している状況にある。また,2008 年 6 月には,FCCJ
注)
が家庭
用燃料電池の認知度を高めて普及を促進するために,家庭用燃料電池コージェネレー
ションシステムの業界統一名称を「ENE・FARM(エネファーム)」とすると発表した
(図 3-6-1)。
注)
3-5-1 節参照。
−167−
表 3-6-2 定置用燃料電池大規模実証事業の概要
事業実施者
目的
助成
対象事業
助成事業
実施期間
助成対象
システム
申請者
助成額
導入台数
(財)新エネルギー財団(NEF)が NEDO からの助成金をうけて実施
定置用燃料電池システムを大規模に設置し,一般家庭等での実際の使用状況に
おける実測データを取得することにより,我が国の定置用燃料電池の初期市場
創出段階における技術レベル及び問題点を把握し,今後の燃料電池技術開発の
課題を抽出する。
1kW 級定置用燃料電池システムを大規模に設置し,一般家庭等での運転データ
等の実測データを 2 年間(平成 20 年度事業では 1 年間)取得する事業。
【平成 17 年度】第 1 期:平成 17 年 4 月 25 日∼平成 17 年 9 月 30 日
第 2 期:平成 17 年 10 月 12 日∼平成 18 年 2 月 28 日
【平成 18 年度】平成 18 年 4 月 26 日∼平成 19 年 2 月 28 日
【平成 19 年度】平成 19 年 4 月中旬∼平成 20 年 2 月 29 日
【平成 20 年度】平成 20 年 4 月下旬∼平成 21 年 2 月 28 日
助成の対象となるシステムは,次の要件を満たすものとする。
① 住宅等への設置に適したシステムで定格出力が1kW 級であるもの。
② 未使用品であるもの。(中古品は対象外)
③ 助成事業実施期間中に次の④,⑤の要件に適合するシステムを 30 台以上申
請者に提供できるメーカのシステムであるもの。
④ 自己認証において,次の要件に適合するもの。ただし,燃料種が LPG の場
合は 2%の効率低下を容認する。
(a)定格運転時の発電効率が 30%以上(HHV)であること
(b)定格運転時の総合効率が 65%以上(HHV)であること
(c)50%負荷運転時発電効率が 27%以上(HHV)であること
(d)50%負荷運転時総合効率が 54%以上(HHV)であること
⑤ システムの耐久性が 2 年以上であること
申請者は,募集期間にシステムを設置しようとする者であって,次の要件を満
たしている者。
① 助成対象システムに燃料を供給するエネルギー供給事業者であること。
② 助成事業実施期間に同一メーカからシステムを 5 台以上,合計 10 台以上設
置でき,一般家庭等での運転データ等の実測データを 2 年間(平成 20 年度
事業では 1 年間)取得できること。
燃料電池システム設置 1 台当たり下記の額を上限とする。
平成 17 年度 : 600 万円
平成 18 年度 : 450 万円
平成 19 年度 : 350 万円
平成 20 年度 : 220 万円
平成 17 年度 第 1 期: 175 基
第 2 期: 305 基
平成 18 年度
: 777 基
平成 19 年度
: 930 基
平成 20 年度(予定):1,120 基
図 3-6-1 エネファームのロゴ
−168−
3-6-2 ポータブル電源向け,モバイル向け
屋外などで使うポータブル電源向け燃料電池,数 W∼数十 W レベルの出力が必要な
モバイル(携帯電子機器)向け燃料電池の開発も行われている。携帯電話やノート PC
などのモバイル機器向けの DMFC の開発が主流である。(表 3-6-3)
表 3-6-3 2008 年度に発表があったモバイル向け DMFC への取り組み状況
東芝
パナソニック
シャープ
・ 先端テクノロジーエキスポ「nano tech2008」および CEATEC2008 に小
型ダイレクトメタノール形燃料電池の試作品を展示。(東芝 HP)
・ 携帯型の燃料電池はメタノールを燃料にした試作品を完成させており,搭
載した携帯電話を来年度に発売する。ノートパソコンにも搭載する計画
(産経新聞,2008.12.26)
・ パナソニックは世界最小のノートパソコン向け燃料電池を開発した。体積
は従来の約半分で,現在ノートパソコンに使われているリチウムイオン電
池パックとほぼ同じ大きさ。2012 年度に商品化する。開発した燃料電池
パックの体積は 270cc。燃料や空気を送るポンプやモーターを改良し 2 年
前に業界最小と発表した試作品からさらに半分に小型化した。(NIKKEI
NET,2008.10.20)
・ モバイル機器向けのダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)において,
出力密度 20.3W/cc を達成。今後,携帯情報端末や電子辞書,ノートパソ
コンなどモバイル機器向け燃料電池の実用化に向けて,より一層の研究開
発を推進する。(2008.5.15 プレスリリース)
−169−
3-7 燃料電池をめぐる国際連携の動き
3-7-1 燃料電池車に関する協力関係
燃料電池車の開発は基本的には各自動車メーカが独自に行っているが,近年,企業間
で国際連携を行う動きも活発である。以下に各社の資本提携関係等を整理する。
(1) 主要な自動車メーカの資本関係
ト
ヨ
タ
提携解消
日本
日
産
×
ィー
日
産
デ
三
菱
ふ
そ
う
ゼ
ル
三
菱
自
動
車
工
業
富
士
重
工
業
い
す
ゞ
ダイハツ
日野
マ
ツ
ダ
ス
ズ
キ
本
田
ヤマハ発動機
提携解消
× 提携解消
ダ
イ
ム
ラ
提携解消
ー
ー ︵
×
ク
ラ
イ
ス
ラ
N
U
M
M
I
ー
ド
チ
ン
ル
ク
ス
ワ
アウディ
シェコダ
ゲ
ン
セアト
ロ
ル
ス
ロ
イ
ス
B
M
W
ベントレー
トラック部門を売却
韓国
サムスン・
ルノー
×提携解消
現
代
起
亜
大
宇
凡例 → : 資本
図 3-7-1 自動車メーカの資本提携関係
出典:「NIKKEI MECHANICAL 別冊 21 世紀のクルマはこうなる part2」(2000 年 7 月 17 日),
「燃料電池実用化戦略研究会報告書」(平成 13 年 1 月 22 日)を基に作成
−170−
プ
ジ
ョー
ズ
ク
ス
フ
ー
ー
バ
ポ
ル
シ
ー
ガ
ラ
ン
ド
・
ロ
ォ
ジ
ー
ア
ス
ト
ン
・
マ
ー
ボ
ル
ボ
・
カ
ェ
ブ
オ
ペ
ル
ー
ト
サ
ー
ア
ア
イ
リ
ス
バ
ス
ャ
フ
ー
・
ク
ラ
イ
ス
ラ
印タタモーターズ
へ売却
×提携解消
ッ
エ
ボ
バ
ス
ー ︶
ッ
ボ
ル
ボ
・
ト
ラ
×
ィ
ー
ル
ノ
フ
G
M
旧
ダ
イ
ム
ラ 合併解消
欧州
××
×資本解消
ォー
米国
提携解消
・
シ
ト
ロ
エ
ン
(2) FC スタックメーカと自動車メーカとの関係
FC スタックメーカと自動車メーカとの関係を図 3-7-2 に示す。
a) Ballard グループ
Ballard
Daimler
出資
出資
AFCC
(Automotive Fuel Cell Cooperation)
Ford
出資
スタック供給
出資
VW
マツダ
b) UTC Fuel Cells グループ
UTC Fuel Cells
出資
United Technologies Corporation
スタック供給
(バス)
スタック供給
現代
Fiat
c) Nuvera FC グループ
Nuvera FC
スタック供給
(乗用車)
スタック供給
(バス)
Fiat
MAN
d) 自動車メーカ内製グループ
Opel
出資,
スタック供給
共同開発
ダイハツ
出資,スタック供給
ホンダ
トヨタ
GM
日野
出資,スタック供給
日産
スタック供給
PSA
スズキ
図 3-7-2 FC スタックメーカと自動車メーカとの関係
出典:燃料電池実用化戦略研究会報告書(平成 13 年 1 月 22 日)を基に作成
−171−
3-7-2 主要企業の合併,事業分割等の経緯
図 3-7-3,図 3-7-4 に燃料電池関係企業の合併,事業分割の相関図を示す。
2009 年 1 月現在
燃料電池関連ビジネスを手がける企業
合併や吸収で消滅した企業
資本・出資関係、合併
資本・出資関係の終了、独立
買収による吸収、グループ入り
燃
料
電
池
事
業
区
分
資本関係によらない開発協力・提携
GE グル-プ
Mechanical
Technology
電極
DRT
SYSTEM
GE MG が Plug Power
に出資(1999)
Plug
Power
MBN
MEA
STK
FCEV
ANA
分析
機器
GE が
Honeywell
を買収
(2000)
STY
Allied
Signal
STG
STY
合弁設立
(1999)
電子材料
Johnson
Matthey
Honeywell
STY
STK
CST
JM が FC 部門を分社化、
JM FC を設立 (2002.4)
Johnson Matthey
Fuel Cells
CST CBK ELD MEA
MKT
United Technologies Corp
合弁設立(2001.5)
合弁解散(2004.6)
RFM FUL
Hydrogen
Source
東芝
グループ企業
UTC Fuel Cells
(UTC Power)
東芝が出資を解消、
(2004.12)
STK SYSTEM
合弁設立(2001.3)
合弁解消(2004.12)
RFM FUL
東芝が
子会社化
東芝燃料電池システム
(旧 東芝インターナショナルフュエルセルズ)
Chevron
Texaco
FUL
FUL
技術開発
提携
OM Group が dmc2 を
買収 (2001)
OM Group
GM
FUL RFM
Quantum
STG
Hydrogenics
ANA
技術開発
提携
技術開発
提携
技術開発提携
出資(2001.10)
Giner
STG
Degussa-Hüls
Degussa が FC 部門を分割
dmc2 設立 (1999)
技術開発
FUL RFM 提携
Shell
STY
技術開発
提携
BP
Exxon
Mobil
触媒
CST
GE Fuel Cell Systems
Shell /
Shell Hydrogen
MKT
マーケティング
管理運営
JM が触媒に特化、電子材料を
Allied Signal に売却 (1999)
(1999)
Anglo Platium
が JM FC に
出資(2002)
改質
技術
Johnson Matthey
STY
STK STY
Anglo Platium
STK
RFM
FUL
スタック 燃料
高分子膜 MEA
ドライブ 燃料電池 定置型 車載
FCEV
トレイン システム
ストレージ
合併
GE Micro Generation
合弁で PlugPower 設立 (1997)
SCG が
PlugPower
に出資(1999)
ELD
GDL
子会社
DTE Energy
Southern
California Gas
GDL
Honeywell
GE /
(GE Power Systems)
Honeywell
ELD MEA
CST
触媒
合弁設立
CST GDL ELD MEA
FCEV
CST
Degussa が
スぺシャリテ
ィケミカルに
集中(1999)
dmc2
CST GDL ELD MEA
Unicore が
OM Group を
買収 (2002)
Degussa-Hüls
CST
Umicore
出資
燃料電池車
開発協力
Opel
CST GDL ELD MEA
燃料電池車
開発協力
Solvay
MBN
スズキ
FCEV
FCEV
Giner
Electrochemical
Systems
STG
名称変更
(2007)
Umicore と Solvay
が合弁設立(2008)
Degussa
CST
RAG Grpup
が Degussa を
買収、グループ
の名称を変更
(2008)
Evonik Industries
Solvicore
MEA
図 3-7-3 主要企業の資本関係(合併,合弁,事業分割の相関図)(その 1)
−172−
CST
2009 年 1 月現在
旧 燃料電池アライアンス
Daimler
(旧 DaimlerChrysler)
Ford
FCEV
DaimlerBenz と
Ford が Ballard
に出資 (1997)
FCEV
DaimlerBenz と
Ford が Ballard
に出資 (1997)
合弁設立(1997)
XCELLSiS
(旧 DBB fuel
cell engines)
Ecostar Electric
Drive Systems
SYSTEM
TEXTRON の
カーボン部門
Ballard が TEXRON の
カーボン部門を買収
DRT
Ballard が XCELLSiS と
Ecostar を子会社化(2001)
荏原製作所
Ballard Power Systems
STK
Ballard Power
Systems AG
(旧 XCELLSiS)
合弁設立
Ecostar Electric
Drive Systems
SYSTEM
荏原
バラード
DRT
Ballard が旧 XCELLSiS を分離
DaimlerChrysler と Ford が
出資 (2005)
SYSTEM
Daimler と
Ford がAFCCに
出資 (2007.11)
AFCC (Automotive Fuel Cell
Corporation)
MKT STY
EcoStar Electric を
Siemens VDO
Automotive に
売却(2006.12)
Daimler と Ford が
AFCCに出資
(2007.11)
Ballard は定置用FCに特化
自動車用FC部門をAFCC
として分割、Daimler、Ford、
Ballard が出資(2007.11)
NuCellSys
(1998)
Ballard Power Systems
(定置用FCシステムに特化) SYSTEM
STK
(自動車用 FC スタックに特化)
Arthur D Little
E-TEK
CST GDL ELD
DeNora が E-TEK を買収 (1993)
De Nora
RFM
E-TEK
ELD
CST GDL ELD
改質部門を分割し EPYX
設立 (1998)
DeNora が FC 部門を分割
DeNora Fuel Cells 設立 (1999)
De Nora
Fuel Cells
STK
Epyx
合併設立
RFM
(2000)
Nuvera Fuel Cells
STK RFM
Rhône-Poulenc
PEMEAS が
DeNora の
E-TEK 部門
を買収
(2005.11)
Hoechst
バイオ
SGL Carbon
化学工業部門を分社化
Celanese 設立(1999)
合併、事業分割 ( 1999)
Aventis
Hoechst から SGL Carbon が独立 (1993)
化学工業
Celanese
GDL
Axiva
Siemens が Axiva の化学プラント
部門を買収(2000)
MBN MEA
DeNora が
PEMEAS に出資
(2005.11)
Celanese が燃料電池部門を含む
化学部門をベンチャー化 (2000)
STK
Celanese
Venture
PEMEAS
E-TEK
Siemens
MBN MEA
MBN MEA
Celanese が FC 部門を分離、
PEMEAS 設立(2004.4)
CST GDL ELD
Axiva
(化学プラント部門)
Ecostar Electric
Drive Systems
DRT
Engelhard
BASF が PEMEAS(E-TEK)を買収
(2006.12)
BASF
CST
BASF が Engelhard を
買収(2006.6)
CST GDL ELD MBN MEA
図 3-7-4 主要企業の資本関係(合併,合弁,事業分割の相関図)(その 2)
−173−
3-7-3 燃料電池に関する標準化に向けた取組み状況
燃料電池に関する国際標準については,ISO(国際標準化機構)および IEC(国際電
気標準会議)の場において議論がなされている(図 3-7-5)。
ISO と IEC の場では,燃料電池,燃料電池車(電気自動車の一部という扱い),水素
技術の観点から標準化活動が行われている。それぞれの審議体制を図 3-7-6 に示す。
ISO(国際標準化機構)
IEC(国際電気標準会議)
↑
↑
↑
↑
TC(専門委員会)
TC(専門委員会)
TC(専門委員会)
TC(専門委員会)
↑
↑
↑
↑
SC(分科委員会)
WG(ワーキンググループ)
SC(分科委員会)
WG(ワーキンググループ)
↑
↑
WG(ワーキンググループ)
WG(ワーキンググループ)
・ ISO,IEC ともに非政府間機構で,WTO/TBT 協定で国際標準化機関として認められている。
・ IEC は主に電気及び電子技術分野の標準化を,ISO はその他の分野を担当(協議して分担)。
・ ISO と IEC とは,TC 等でジョイントを組んで調整を行うことがある。
・ ISO/IEC ともに専門委員会(TC)の場で規格案が審議される。必要に応じて分科委員会(SC)やワー
キンググループ(WG)が設置される。
・ 規格案の審議はボトムアップ方式で実施され,WG での承認後,分科委員会,専門委員会の承認を経
て,最終的に ISO/IEC の規格となる。
・ WG 等では新規作業項目として提案した国が幹事国となることが多い。
図 3-7-5 組織と企画策定手順
出典:燃料電池実用化戦略研究会報告書(平成 13 年 1 月 22 日)
【国際審議体制】
ISO(国際標準化機構)
ISO/TC22(自動車)
のうち/SC21
電気自動車
SC21幹事国:ドイツ
IEC(国際電気標準会議)
ISO/TC197
(水素技術)
幹事国:カナダ
IEC/TC69
(電気自動車)
幹事国:スウェーデン
IEC/TC105
(燃料電池技術)
幹事国:ドイツ
【国内審議体制】
日本工業標準調査会(JISC) いずれも積極参加(P)メンバー
(国内審議体制)
ISO/TC22のうち
/SC21
(財)日本自動車研究所
(JARI)※
ISO/TC197
(財)エンジニアリング
振興協会
(ENAA)
IEC/TC69
(財)日本自動車研究所
(JARI)※
IEC/TC105
(社)日本電機工業会
(JEMA)
ENAA
水素エネルギー
技術標準化委員会
JARI※
標準化委員会
JEMA
電気用品等規格・
基準国際化
第105小委員会
(国内委員会)
JARI※
標準化委員会
JARI※
標準化委員会
(燃料電池車関連)
JARI※
標準化委員会
(燃料電池車関連)
※平成14年度まではJEVAが実施主体であったが,平成15年7月1日のJARIとの統合化により,平成15年度以降の実施主体はJARIとなっている。
図 3-7-6 燃料電池の標準化に係る審議体制
−174−
3-8 燃料電池に関する法令・規制の状況
3-8-1 燃料電池に関する主な法令・規制
現在の燃料電池に関連した法令・規制には,燃料供給施設に関連した法令・規制,自
動車走行に関連した法令・規制,定置用燃料電池に関連した法令・規制がある。表 3-8-1
に主な法令・規制を整理する。
表 3-8-1 燃料電池に関連した主な法令・規制
法令等の名称
燃料電池車
車両
道路運送車両法
燃料タンク 高圧ガス保安法
燃料供給施設
高圧ガス保安法
水素
建築基準法
高圧ガス保安法
天然ガス ガス事業法
建築基準法
高圧ガス保安法
LPガス
建築基準法
毒物及び劇物取締法
メタノール 労働安全衛生法
消防法
定置用
電気事業法
電気
消防法
消防
東京都火災予防条例
高圧ガス保安法
天然ガス
ガス事業法
液化石油ガス法
LPガス
建築基準法
建築
備考
燃料自動車全般
高圧水素タンク,液体水素タンク
貯蔵水素ガス
水素貯蔵量
貯蔵天然ガス
ガス工作物としての天然ガス
天然ガス貯蔵量
貯蔵LPガス
LPガス貯蔵量
劇物としてのメタノール
有害物質としてのメタノール
危険物としてのメタノール
定置用燃料電池全般
灯油の貯蔵量,離隔距離
燃料電池発電設備
高圧の定置用燃料電池
天然ガスの供給設備及び消費設備
LPガスの供給及び消費設備
灯油,LPガスの貯蔵量
3-8-2 燃料供給施設関連(水素設備に係る法規制)注1)
圧縮水素および液化水素は,高圧ガス保安法第 2 条に定められている「高圧ガス」(常
用の温度又は温度 35℃においてゲージ圧力が 1MPa 以上が対象)の扱いを受ける。圧
縮水素は可燃性ガスの,液体水素は液化ガスのそれぞれの基準が適用される。
燃料電池車と水素スタンドの普及のため,2002 年 10 月に決定した「燃料電池の実用
化に向けた包括的な規制の再点検の実施」注2)を受け,NEDO では水素技術分野の規制
見直し作業を進めるため,「水素利用等基盤技術開発事業注3)」や「水素社会構築共通
基盤整備事業」に取り組んでいる。
注1)
財団法人 石油産業活性化センター(PEC)への訪問インタビュー調査。参考資料Ⅵ.参照
燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議決定「燃料電池の実用化に向けた包括的な規制の再点検の
実施について」(2002 年 10 月 25 日)
注3)「
水素利用等基盤技術開発事業」は平成 15∼19 年度の 5 年間であったが,このうち平成 15,16 年度
事業で規制見直しに関する検討を行った。H17 年度からは,規制見直しの検討は「水素社会構築共通
基盤整備事業」(H17 ∼H21 年度)へと引き継がれた。
注2)
−175−
平成 15∼16 年度に「水素安全利用等基盤技術開発事業」によって行われた規制緩和
の内容イメージを図 3-8-1 に,35MPa 充填対応水素スタンドの規制見直し実施済み項目
を表 3-8-2 に示す。この規制緩和によって,既存のガソリンスタンドに併設して水素ス
テーションが建設できることになった。
図 3-8-1
主な規制内容と緩和後のイメージ(平成 15∼16 年度)
出典:PEC 資料
表 3-8-2
35MPa 充填対応水素スタンド規制見直し実施済み項目(平成 15∼16 年度)
関係法令
高圧ガス保安法
一般則第 7 条の 3
(経済産業省)
建築基準法
(国土交通省)
消防法
(総務省消防庁)
規制見直し内容
保安距離の見直し
第 1 種設備距離 17m→6m,火気施設との距離 8m→6m
保安統括者等の選任,常駐義務の見直し
保安統括者 1 名,同代理者 1 名,保安係員 1 名(常駐),同代理者 1 名
→保安を監督する者の選任(常駐不要)
漏れ検知手段の見直し
付臭剤以外の漏れ検知装置等による代替手段の採用
液体水素の輸送容器の充填率見直し
充填率の増加 90%→98%
保安検査に関する見直し
保安検査内容の見直し
建築可能地域の見直し
準住居地域,商業地域,準工業地域等に建設可とする
水素貯蔵量制限の見直し(許可規準)
貯蔵数量上限の増量
水素スタンドとガソリンスタンドの併設見直し
併設を可とする
出典:PEC 資料
−176−
現状の 40MPa の水素ステーションの規制を図 3-8-2 に整理する。太枠が現状の CNG
スタンドよりも厳しい項目で,二重枠がほぼ準用というイメージである。とくに太枠の
項目については,水素の特性に関する知識の不足のため,過剰な安全対策になっている
ことが考えられ,今後更なる見直しが必要であると考えられる。
図 3-8-2 現状の水素スタンドにかかる規制一覧
出典:PEC 資料
表 3-8-3 に水素スタンドの課題を,図 3-8-3 に水素スタンドに関する規制見直し検討
スケジュールを示す。
−177−
表 3-8-3 水素スタンドの課題
項 目
全般
圧縮機
蓄圧器
ディスペンサー
その他
課
題
・ 70MPa 充填対応水素スタンドの法整備
・ 使用金属材料
−35MPa
:例示基準案 SUS316L と SCM435(蓄圧器)に限る
(ただし,他の金属材料を否定しているわけではない)
−70MPa 対応:蓄圧器用材料の評価検討中(SNCM439 強度低減材)
−使用したい金属材料の提案と安全データの収集が必要
・Leak Before Break の証明→ピンホールしか起こりえない
・漏えい時はセンサーで検知し,元弁を遮断
・使用頻度,交換頻度を考慮した設計
−SUS316L JIS 品と海外品の Ni 配合量の違いと対水素脆性
・ 加工技術(70MPa)
−加工技術(特に蓄圧器)が確立されていない
−溶接,接続継手部の安全性検証
・ 検査方法
−絞り部や口金部の非破壊検査技術が未導入
・ 70MPa レベルの水素環境下での現象明確化と対応策
−トライボロジー,露点,配管内衝撃波など
・ 安全を確保した上でのコストダウン,小型化,省スペース化
・ 使用金属材料の拡大(シール部,O リングなど)
・ 耐久性,信頼性の検証
・ 潤滑に関する懸念(水素ガスへの混入)
・ 蓄圧器小型化(水素貯蔵量制限,リスク低減)に伴う圧縮機の大型化
・ 振動,騒音の問題
・ 使用金属材料の拡大
・ クラッドの使用可能性検討
・ 製造加工技術(内部しわ,溶接による製造)
・ 検査方法(絞り部や口金部)
・ 設計基準(法)
−容器則と ASME 基準の整合性
−容器則容器を蓄圧器として利用の可能性検討
・ 大型複合容器の製造方法
・ 複合容器を利用した蓄圧器(法)
・ 保安検査周期見直し,解放検査の廃止(法)
・ 地下設置,屋上設置(法)
・ 小さい蓄圧器(準住居地域:350Nm3)を用いた水素充填システム
・ 流量計
−フローチューブ材質
−精度保証(計量法)
・ 流量調整弁,バルブ等の信頼性,耐久性
・ ホースの耐圧,耐久性
・ ノズルの形状(SAE で議論中),O リングのメンテナンス
・ 緊急離脱カプラーの開発,信頼性向上
・ 通信
・ プレクーラー
−仕様確定
−-30℃領域での問題(着氷,ホース,O リング,流量補正)
−流量計との相対位置(配管内ガスの費用負担)
・ 車両アース不要化
・ 改質器
−短時間起動
−高効率化
−遠隔監視,通報,遠隔診断機能
−無人暖機運転
・ 部品の耐久性,信頼性(過流防止弁の製造と検証)
・ 液体水素
−貯槽
−ディスペンサー(緊急離脱カプラー,シェア弁)
−ポンプ
−蒸発器(高圧,極低温∼常温で使用する場合の材料)
出典:PEC 資料
−178−
図 3-8-3 水素スタンドに関する規制見直し検討スケジュール
出典:PEC 資料
3-8-3 自動車走行関連
(1) 道路運送車両法
道路運送車両法は公道を走行する車両に対する法律であり,道路運送車両に関する登
録制度,保安基準,検査制度,整備事業等について規定している。省令として「道路運
送車両の保安基準」「自動車型式指定規則」がある。
道路運送車両法によると,公道を走行する自動車は 1 台ごとに車両検査を受けること
が原則であるが,量産車の場合は型式指定を受ければ,新規登録時の車検が免除される。
改造車,試作車,組立車などについては,1 台ごとの車検が必要となる。
(2) FCV の位置づけ
FCV が公道走行する場合,道路運送車両の保安基準の改正が行われるまでは,国土交
通大臣の認定が必要であったが,平成 17 年 3 月 31 日に基準の整備が行われたことによ
り,最高充填圧力 35MPa 以下の自動車用圧縮水素容器を搭載する FCV は,大臣認定に
加えて一般車両と同様に型式認証も取得できるようになった。
これを受けて,2005 年 6 月 17 日付けで,トヨタ「トヨタ FCHV」およびホンダ「FCX」
が FCV として初めての型式認証を取得した。2008 年 6 月 6 日には,トヨタ「FCHV-adv」
も型式認証を取得している。
−179−
(3) 大臣認定制度注)
改造車,試作車,組立車としての検査については,同じ構造の車両であっても 1 台ご
とに検査を受ける必要がある。例えば,水素に関する技術基準がない状況下では,安全
性・公害防止性を検査のたびに議論し判断する必要があった。FCV の普及のためには,
検査の効率化が必要であり,そのためには FCV についての技術基準を定める必要があ
る。しかしながら,定めようとする技術基準の妥当性を判断するには一定量の実走行デー
タが必要になる。
このように,新技術を搭載した車が現在のガソリン車のような一般的な車に移行する
過程(その車に関する技術基準を定める過程)の措置として,いわゆる「大臣認定制度」
がある。これは,以下に示す道路運送車両の保安基準第 56 条の第 4 項に基づくもので
ある。
表 3-8-4 道路運送車両法における大臣認定の規定
道路運送車両の保安基準第 56 条第 4 項
国土交通大臣が構造又は装置について本章に定める基準の改善に資するた
め必要があると認定した試作自動車又は試験自動車でその運行のため必要な保
安上又は公害防止上の制限を付したものについては,当該構造又は装置に係わ
る本章の規定は,適用しない。
2001 年 2 月 8 日,マツダのプレマシーFC-EV,DaimlerChrysler(当時)の Necar5
が燃料電池車(2 台ともメタノール改質形 FCV)として日本で初めて大臣認定を国土交
通省から受けた。その後,公道走行試験を行い,FCV の基準整備に向けて,技術的検証,
安全性の実証を行うと共に,一般的な使用条件における低公害車としての排ガス性能等
の追跡調査を行った。2001 年 6 月には,トヨタが FCHV-4 で,圧縮水素を燃料とする
FCV としては日本で初めてとなる大臣認定を受け,公道走行試験を行った。さらにホン
ダも,2001 年 7 月に FCX-V3 で,2002 年 3 月には FCX-V4 で大臣認定を受け,公道走
行試験を行った。2002 年度になって,限定的にリース販売されるトヨタ FCHV,Honda
FCX が 11 月に大臣認定を取得し,その後,JHFC プロジェクトに参加する日産,スズ
キ,三菱自動車,DaimlerChrysler,GM の各車両も取得した。また,ダイハツの MOVE
FCV-K-Ⅱも軽自動車の FCV としては初めて大臣認定を取得した。
2004 年 12 月には,スズキが日本で初めて 70MPa 圧縮水素貯蔵システムを搭載した
軽自動車燃料電池車「MR ワゴン−FCV」を GM と共同開発し,大臣認定を取得した。
また,同じく 2004 年 12 月に,ホンダが氷点下での始動を可能とした次世代型燃料電池
スタック「Honda FC STACK」を搭載した「FCX」の国土交通大臣の認定を取得した。
2005 年に入り,自動車用圧縮水素容器を搭載したトヨタ/日野の FCHV-BUS 及び日産
の X-TRAIL FCV が,各々大臣認定を取得した。また 2008 年 6 月,70MPa の自動車
水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)サブタスク 7
査・検討(平成 11 年 3 月)
注)
−180−
水素利用技術に関する調
用圧縮水素を搭載したスズキの SX4-FCV が,大臣認定を取得して, JHFC プロジェク
トへ参画した。
表 3-8-5 大臣認定を取得した FCV
車名
プレマシーFC-EV
NECAR5
FCHV-4
FCX-V3
FCX-V4
FCHV-BUS2
トヨタ FCHV
Honda FCX
X-TRAIL FCV
MOVE FCV-K-Ⅱ
F-Cell
HydroGen 3
ワゴン R-FCV
MR ワゴン-FCV
MITSUBISHI
FCV
X-TRAIL FCV
FCX(Honda FC
STACK 搭載)
MR ワゴン-FCV
FCHV-BUS
X-TRAIL FCV
SX4-FCV
燃料
メタノール
メタノール
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
高圧水素
液体水素
高圧水素
高圧水素
メーカ
マツダ
DaimlerChrysler
トヨタ
ホンダ
ホンダ
トヨタ/日野
トヨタ
ホンダ
日産
ダイハツ
DaimlerChrysler
GM
スズキ
スズキ
大臣認定取得日
2001 年 2 月 8 日
同上
2001 年 6 月
2001 年 7 月
2002 年 3 月
2002 年 9 月
2002 年 11 月
同上
2002 年 11 月
2003 年 1 月
2003 年 3 月
同上
2003 年 10 月
同上
高圧水素
三菱自動車
同上
高圧水素
日産
2003 年 11 月
高圧水素
ホンダ
2004 年 12 月
スズキ
同上
トヨタ/日野
日産
2005 年 2 月
2005 年 12 月
スズキ
2008 年 6 月
高圧水素
(70MPa)
高圧水素
高圧水素
高圧水素
(70MPa)
大臣認定制度の下で取得された種々のデータに基づいて,国土交通省が「安全上およ
び公害防止上,特段の問題がないことが確認できた」と判断し,必要な法規制(当該自
動車の保安基準等)の追加・改正等が行われた段階で,当該自動車の大臣認定制度によ
る扱いは終了し,一般の自動車と同様の扱いを受けることが可能となる。つまり,自動
車メーカが既存車と同様に技術基準等に基づいてその自動車を製造し,不特定多数の一
般利用者へその自動車を販売できるようになる。2005 年 3 月 31 日,道路運送車両法が
改正・公布され,保安基準に適合した燃料電池車であるトヨタ FCHV とホンダの FCX
は 2005 年 6 月に型式認証を取得している。
なお,CNG 自動車の場合は,表 3-8-6 に示すように平成 4 年までは都市ガス事業者の
みによる利用であったため,改造車として受検・登録していたが,将来の普及拡大を目
指して平成 5 年 2 月から大臣認定制度による登録に移行した。大臣認定における「運行
のために必要な保安上又は公害防止上の制限」の具体的内容は,(社)日本ガス協会が
−181−
作成した自主技術基準が使用された。CNG 自動車の大臣認定扱いが解除されたのは,
扱い開始から 2 年 11 ヶ月後の平成 7 年 12 月であった。この間に,大臣認定により登録
された CNG 自動車は 488 台であった。
表 3-8-6 CNG 車の大臣認定の経緯
∼平成 4 年
平成 5 年 2 月
車両認定
改造車として受検・登録を行う
大臣認定制度による登録
平成 7 年 12 月
大臣認定扱いの解除
備考
「運行のために必要な保安上又は公害
防止上の制限」は日本ガス協会が作成
した自主技術基準を使用。
大臣認定取扱時の登録車は 488 台。
(4) 車載水素容器
車載水素容器としては,現在,高圧タンク,液体水素タンクの 2 種類があり得るが,
高圧タンクと液体水素タンクについては高圧ガス保安法の対象(35℃においてゲージ圧
力が 1MPa 以上)となり,同法およびその関連法規(主として容器保安規則と容器保安
規則関係基準)による規制を受ける。容器保安規則には,容器の種類(継目なし容器,
溶接容器),試験・検査方法,刻印,表示,ガスの充填の方法,再検査などについて定
められている。
こうした高圧ガス容器に対する技術基準は,主として工業用ガスの小口配送に使用す
る容器を想定したものであり,自動車用燃料容器としては不都合や不便が生じることも
ある。CNG 用車載容器の場合,そうした不都合の解消のため,①容器を取り外した上
での定期的検査の免除,②軽量材料を使ったコンポジット容器の使用許可,などの規制
緩和が行われて,CNG 自動車の普及促進に寄与している。また,2005 年月 3 末に高圧
ガス保安法についても規制再点検が完了し,FCV に関しては,35MPa 自動車用圧縮水
素容器および付属部品の技術基準が例示され,車検の周期に合わせて車載状態で容器再
検査ができるようになるなど,最高充填圧力 35MPa 以下の車載水素容器については,
CNG 自動車と同等レベルの基準が整備された。
さらに現在は,航続距離の伸長といった FCV の利便性の一層の向上を目指して更なる
高密度水素貯蔵を可能とするための 70MPa 車載水素容器が採用できるように,その際
に FCV の普及に適した安全性が備えられた基準となるように,さらなる基準の合理化
検討が進められている。
−182−
3-8-4 定置用燃料電池関連
定置用 FC の導入に関連する規制としては,電気事業法および消防法がある。これら
に関しては,相当の規制緩和が行われてきている。(表 3-8-7)。
表 3-8-7 定置用 FC に関連する法令・規制の緩和
法令・規制
電気事業法
消防法
項目
見直し前
①固体高分子形燃料電池設備は現状事業
用電気工作物扱いとなるため,下記の
保安規程と電気主任技術者に係る義務
等が発生。
・事業用電気工作物であるため,保安規
程の制定,届出,遵守。
・事業用電気工作物であるため,電気主
任技術者の選任,届出。
②固体高分子形燃料電池設備は,火力発
電所なみに,窒素ガスで置換(窒素パー
ジ)できる構造であり,設備を停止す
るための窒素ボンベを常備することが
義務づけられている。
①定置用燃料電池設備は,小型の家庭用
であっても設置届出が必要。
見直し後
ある一定の要件を満たすものを一般用電
気工作物に位置づけ,左記義務を不要と
した。(2005 年 3 月公布・施行)
2004 年 3 月より一定の要件を満たす事業
用電気工作物について,2005 年 3 月より
一定の要件を満たす一般用電気工作物に
ついて,不活性ガスパージを不要とした。
家庭で用いられると想定される出力で
あって,その使用に際し異常が発生した
場合に安全を確保するための措置を講じ
たものについては,設置届出を要しない
こととした。(2005 年 3 月通知)
家庭で用いられると想定される出力で
あって,その使用に際し異常が発生した
場合に安全を確保するための措置を講じ
たものについては,保有距離を要しない
こととした。(2005 年 10 月施行)
②定置用燃料電池設備は,小型の家庭用
であっても建築物からの相当の遠隔距
離(基本的には建物から 3m 以上。た
だし,消防長または消防署長が火災予
防上支障がないと認める場合はこの限
りではない。)をとることが必要。
③定置用燃料電池設備は,小型の家庭用 PEFC,PAFC または MCFC であって火
であっても逆火防止装置の設置が必 を使用するものについては,逆火防止装
置を要しないこととした。(2005 年 10
要。
月施行)
−183−
3-9 世界のエネルギー情勢
(1) 石油
2007 年末の世界の原油確認埋蔵量は約 1 兆 3,317 億バレル,可採年数は 50 年となっ
ている(図 3-9-1)。可採年数はここ 20 年以上にわたって 30 年を上回っている。今後,
石油消費量が増えても,石油探査や採掘技術が進歩し,新規油田の発見や従来油田から
の回収率の向上が予想されるため,可採年数は,当分の間,現状並で推移するとする見
方が強い。
また,図 3-9-2 に示すように,原油として採掘できなくなったとしても石油資源はま
だ地球上には存在するとの検討結果も出されている。しかし,こういった資源を活用す
る場合には,その純度や採掘・精製技術の難しさなどから,コストが大幅に増加すると
予想される。
図 3-9-1 原油の確認埋蔵量と可採年数(2007 年末現在)
出典:石油連盟「今日の石油産業 2008」2008.4
Oil and Gas Journal 誌(2007 年末号)
−184−
図 3-9-2 石油資源の究極可採埋蔵量
出典:石油連盟「今日の石油産業 2008」2008.4
アメリカ DOE では,石油需要の増加と供給可能な石油生産量を 3 つのパターンで示
している(図 3-9-3)。それによると,石油需要の増加率が 3%で推移した場合が最も早
く,2030 年に供給可能な石油生産量がピークに達するとしている。最も遅いケースであ
る石油需要増加率が 1%の場合でも 2050 年にはピークに達するとしている。
図 3-9-3 供給可能な石油生産量の年次推移予測
出典:DOE/EIA HP における公表資料「Long Term World Oil Supply」注)より
注)
DOE/EIA HP 内の公表資料
URL:http://tonto.eia.doe.gov/FTPROOT/features/longterm.pdf#search='EIA%20PEAK%20Range
−185−
アメリカ DOE の EIA(Energy Information Administration)では,世界の原油価格
の将来見通しとして,図 3-9-4 のように 3 つのケースを推計している注)。これらのケー
スは,主に OPEC 諸国からの原油生産量の異なる見通しに基づいている。
図 3-9-4 長期原油価格見通し
出典:「Annual Energy Outlook 2009 Early Release」2008.12.4
(http://www.eia.doe.gov/oiaf/aeo/pdf/aeo2009_presentation.pdf)
原油の月平均価格の推移を図 3-9-5 に示す。
[$/バレル]
160
北海ブレンド(欧州市場の基準銘柄)
140
WTI(米国市場の基準銘柄)
ドバイ(アジア市場の基準銘柄)
120
100
80
60
40
20
0
1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11 1 3 5 7 9 11
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
図 3-9-5 原油価格の推移
出典:Energy Information Administration(HP:http://www.eia.doe.gov/)の
原油の Spot Prices データを基に作成
注)
%20USGS'
DOE/EIA「Annual Energy Outlook 2009 Early Release」2008.12
−186−
WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格は,2003 年のイラ
ク戦争までは,1 バレル当たり 20∼40 ドルの間を推移していたが,イラク戦争後は,徐々
に上昇を続け,2004 年 9 月 28 日には初めて 50 ドルを突破,2005 年 6 月 26 日には一
時 60 ドルを超えている。さらに同年 8 月末のハリケーンの影響もあり一時期 70 ドルを
超えたが,その後,1 バレル当たり 60 ドル前後の水準で推移した。しかし,再び値上が
りし,2006 年 7 月 14 日には当時の WTI 原油市場最高値(終値)である 77.03 ドルを
記録した。その後は,再び下落基調に転じたが,2007 年 1 月を境に反転し,価格は急激
に上昇し,2008 年 7 月には史上最高値(瞬間値)である 147.27 ドルを更新した。その
後,米国の景気悪化や石油需要の減退の見通し等から急激に下落した。
EIA は,2009 年 1 月 13 日に発表した月例短期エネルギー見通し注)で,2009 年の
WTI の平均価格を 43.25 ドルと予測,2008 年から約 57%下落すると見込んでいる。
図 3-9-6 短期原油価格見通し
出典:Short-Term Energy Outlook—January 2009
(http://www.eia.doe.gov/emeu/steo/pub/jan09.pdf)
(2) 天然ガス
天然ガスは石油が出る場所には必ず存在するが,石油がない場所でも産出されるため,
中東以外にも広く分布している(図 3-9-7)。2007 年 12 月現在で約 177 兆立方メート
ルが確認埋蔵量とされている。これは現在の消費量の約 60 年分に相当する寿命である。
さらに新しいガス田が次々に発見され,将来の埋蔵量は現在の 3 倍程度が予測されて
いる。また,採掘と輸送コストに見合う価格になれば,これまで試掘されていなかった
注)
DOE/EIA 「Short-Term Energy Outlook—January 2009」2009.1
−187−
シベリアや極地での開発が進み,埋蔵量の加算が考えられる。また,数百メートルから
1,000 メートルほどの海底にメタンが水の分子と結合したメタンハイドレートというも
のがある。これは現在の天然ガスの確認埋蔵量の 1.6∼12 倍もの埋蔵量があるともいわ
れている。
図 3-9-7 天然ガスの確認埋蔵量(2007 年 12 月現在 単位:兆 m3)
出典:日本ガス協会 HP(http://www.gas.or.jp/default.html)
「BP Statistical Review of World Energy」2008.6 より作成
(3) まとめ
以上のように石油,天然ガスについては,当分の間は安定的に供給されるとする見方
があるが,時期については不確定要素が大きいものの,資源の枯渇は時間の問題である
といえる。また,資源の枯渇問題よりも CO2 排出による地球環境問題の方がより身近な
問題として化石燃料の利用の制約となりうる可能性が高いと指摘する意見もある。
したがって,いずれにせよ,資源の制約や環境保全のために,省エネルギーを進めつ
つ,新たなエネルギー供給源を探し,石油などの化石燃料依存からの脱却を進めていく
必要がある。
−188−