論文4 - 高志高等学校

平成27年度 福井県立高志高等学校SSH『理数科課題研究報告書』
納豆の科学
Science of natto
漆崎 絵理花
小林 莉子
田嶋 佑子
桝井 駿
Urushisaki Erika Kobayashi Riko Tajima Yuko Masui Shun
Abstract
We examine a Natto that immediate to us First. We made natto bacilli extracted from natto on the
market,but it was not successful. So we used natto bacilli on the market. In these processes, we found
we could make natto without natto bacilli, and we tried to make natto on various conditions.
要約
私たちにとって身近である納豆について調べた。最初に市販の納豆から取り出した納豆菌を用いて作
ったがうまくできなかったため、市販の納豆菌を使用して納豆を作成した。また、納豆菌を使わない
納豆作りに取り組んだ。その結果、納豆菌を使わなくても納豆を作ることができた。
はじめに
食品科学について調べることになり、身近
な食品ということで納豆を選び調べた。
納豆について
納豆とは、大豆を納豆菌で発酵させた食品
である。また、日本独特の食品であり、特有
の臭いと粘り気がある。最近は、様々な種類
の納豆が売られていて容易に手に入れること
ができる。美肌、健康に良いと注目されてい
る。
実験内容
1 市販の納豆から取り出した納豆菌を使用
した納豆作り
(材料) 大豆、市販の納豆中の納豆菌、水
(方法)
① 水に浸した大豆を圧力鍋で 15 分間煮る。
② 市販の納豆をお湯の中で混ぜて納豆菌
を取り出す。
③ 煮た大豆に納豆菌をかける。
④ 40 度で 1 日発酵させる。
⑤ 翌日から2日間 10℃で熟成させる。
(結果)
見た目も悪く、悪臭が立ちこめていた。
2 市販の納豆菌を使用した納豆作りⅠ
(材料) 大豆、市販の納豆菌、水
(方法) 市販の納豆菌を用いて実験1と同様
の方法で行った。
(結果)
見た目もよく、納豆特有の臭いがした。
(結果の考察)
市販の納豆から取り出した納豆菌では、雑
菌が繁殖し、うまく納豆を作ることができ
なかった。一方、納豆菌を利用した場合は、
うまく納豆を作ることができた。しかし、
できあがった納豆は、指でつぶしてみると
市販の納豆に比べると随分と柔らかかった。
3 市販の納豆菌を使った納豆作りⅡ
(材料) 大豆、市販の納豆菌、水
(方法) 実験内容1と同様の方法で行い、②の
「圧力鍋で 15 分間煮た」部分を「圧力鍋
で 15 分間蒸して」に変更した。
(結果)
煮た大豆で作った納豆を図1に、蒸した大豆
で作った納豆を図2に示す。
図1煮た豆で作った納豆 図2蒸した豆で作った納豆
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平成27年度 福井県立高志高等学校SSH『理数科課題研究報告書』
(結果の考察)
煮た大豆で作った納豆では、皮が破れている
豆も多かったが、蒸した大豆で作った大豆は皮
が破れておらず、食感や食味も市販の納豆に近
かった。
次に、
この2つの納豆の違いについて、
熟成期間中の水分量の変化について調べること
にした。
4 納豆から生分解性プラスチックの作成
実験によってできあがった納豆が、本当に納
豆なのかを確かめるために、生成した納豆から、
納豆のねばねばの主成分であるポリグルタミン
酸が得られるかどうかについて調べた。
(生成方法)
① 飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に市販
の納豆を加えて加熱し、ろ過した。
② ろ液にクエン酸を加え、pH3~4 にした。
③ 塩化ナトリウム水溶液を加え飽和させ
てエタノールに加えると、粘性の高い
ポリマーが得られる。
(結果と考察)
粘性の高いポリマーが回収出来た。しかし個
人によって取れる量がかなり違ったため、加熱
時間を 5 分、10 分、15 分、20 分に変えて、再
度実験を行った。
(結果)
加熱時間が長くなれば生成物の量は増えた。し
かし 20 分のものは色が茶色く変色していた。
5 大豆の条件(煮る、蒸す)による水分の違い
煮た大豆と蒸した大豆で作った納豆の水分量
の違いについて「熟成期間」の水分の減少量に
ついて調べた。その結果を表1、表2に示し、
それらのグラフを図3,4に示す。
(結果)
表1 煮た大豆で作った納豆の質量変化
表3
ゆでた豆で作った納豆の質量変化
表4 蒸した豆で作った納豆の質量変化
(結果の考察)
実験結果、煮た大豆より蒸した大豆の方が蒸
発によって失われる水分が少なく、蒸した大豆
で作った納豆の方が含まれている水分量が少な
いことが分かった。実際に指で押してみた触感
や、食べてみた食感を裏付ける結果が得られた。
6 納豆菌を使わない納豆作り
実験内容3と同様の方法で納豆作りを行い、
納豆菌のかわりに、煮沸したわら、雑草を大豆
にのせたものと、大豆のみで実験を行った。結
果をそれぞれ図 5.6.7 に示す。
(結果)
「わら」
、「雑草」
、
「大豆のみ」の3種とも、
生分解性プラスチックが生成できたため納豆を
作ることができたといえる
(結果の考察)
「わら」には「枯草菌」が付着しており、納
豆菌は「枯草菌」の一種なので、納豆菌を使用
しなくても納豆ができたと考えられる。
同様に、雑草、大豆の表面にも枯草菌が付着
していたと考えられる。しかし、この実験は同
時に行ったため、
「わら」
、
「雑草」に付着してい
た納豆菌が混入した可能性も考えられる。
表2蒸した豆で作った納豆の質量変化
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平成27年度 福井県立高志高等学校SSH『理数科課題研究報告書』
図3 わら納豆
図4 雑草納豆
図 7 ふたをするまでにおいた時間
30 分のとき
図5 豆のみ納豆
7 本当に納豆菌なしで納豆が作れるか検証
大豆をゆで、ゆでた大豆にふたをするまでの
時間を 0 分、30 分、1 時間それぞれおき 40℃で
保管した。
(結果)
特有の臭いと粘り気が確認できたため、納豆
ができたと考えられる。
0 分のときの状態は、糸をひき、水分多め。
30 分のときの状態は糸を引いたが、0 分のとき
より、やや多め。
60 分のときの状態は糸を引かず、しわがよって
いて乾燥した。
私たちは、学校の空気の中にいる納豆菌を用い
て納豆を作ったため『高志納豆』と命名し
た。
図 8 ふたをするまでにおいた時間
1 時間のとき
(結果の考察)
納豆菌なしで作成した納豆から実験4と同様
に生分解性プラスチックの作成を行ったところ、
粘性の高いポリマーが得られた。
このことから、ゆでた大豆のみからも納豆が
できることが証明できた。
8 全体の考察
・生分解性プラスチックを作る過程で、加熱す
る時間によって生成できるプラスチックの粘
性、量が異なる。
・茹でた大豆よりも蒸した大豆から作った納豆
のほうが食感がよい。
・納豆菌を使用しなくても納豆を作ることがで
きる。
参考文献
図6
小泉武夫著『微生物が未来を救う』
KTC 中央出版 H18
小泉武夫監修『発酵食品の大研究』PHP H18
ふたをするまでに置いた時間
0 分のとき
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