F ACT B OOK - 日本映画放送株式会社

経営方針(中長期経営計画)
FA C T BOOK
「成長の10年から成熟の10年へ」
その具体的な第一歩
常務取締役 酒井 彰
私たちは昨年 「成長の10年から成熟の10年」
へ という目標を掲げました。
2012年は、
その目標に具体的な第一歩を踏み出す年になります。
「日本映画専門チャンネル」のBS放送開始と
「時代劇専門チャンネル」のHD化
2012年3月、
日本映画専門チャンネルはBSでの放送を開始しました。
14年前、124度CS衛星(※1)を利用する小さなCSチャンネルとしてスタートした日本映画専門
チャンネルが、地上波とともに 基幹放送 として位置づけられるBS放送に進出したことは、
チャンネ
ルの将来にとって大きな意味を持っています。
地上波は、東京では民放・NHK合わせて7局です。
BSでは2011年10月と2012年3月に新たに
24局が開局して、
これまで放送されていた民放系無料チャンネルを合わせれば31チャンネルになり
ました。
公共放送、無料(広告)放送、有料放送とそれぞれのあり方は違いますが、基幹放送 と位置づけら
れるチャンネルが38チャンネルになったのです。
そして、
日本映画専門チャンネルは、
その38チャンネルの中で唯一の 邦画専門 チャンネルです。
私たちは、
これまでの14年間、
「有料多チャンネル」
という世界のなかでチャンネルを編成し、放送し
てきました。
アダルト、趣味、
カラオケ等も含んだ、様々なジャンルの小さなチャンネルが数十チャンネ
ルまとまってひとつの世界を作っている。同じテレビ放送といっても、地上波のチャンネルたちが作
る
「メインカルチャーの世界」
とは別の、
いわば「サブカルチャーの世界」
で放送していたといってもい
いでしょう。
「BS日本映画専門チャンネル」はその世界から飛び出して、地上波と肩を並べ、地上波を見なれた
視聴者にアピールしていかなければならないステージに出ていくことになりました。
専門チャンネルであるという強みを活かして中身の充実を図ることで、
日本映画ファンの期待に応え
ると共に、今までテレビを受動的にご覧になっている方々にも日本映画の魅力を伝え、見るきっか
け、見たいという気持ちを触発していきたいと思っています。
まさに、私たちが掲げる
「成熟したチャンネルになる」
という目標を具体的に実現して行く第一歩が
始まったと考えています。
※1
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衛星放送には、大きく分けてCS放送とBS放送の2つがあり、
CSはCommunication Satelliteの略で
「通信衛星」
を使用、
BSはBroadcating
Satelliteの略で
「放送衛星」
を使用して放送。
CS放送の
「スカパー ! /スカパー ! HD」
は、東経124度と128度に静止する2機の通信衛星を使用し
ている。地上波放送が、地上の送信所や中継局を使って電波を送るのに対して、衛星放送は、赤道上空3万6000kmに静止した人工衛星から直接
各家庭へ電波を送っている。
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一方「時代劇専門チャンネル」
は、本年7月より、念願の 110度CS衛星でのHD放送(スカパー ! e2で
のHD放送)を開始することになりました。
(※2)
2011年7月のアナログ停波によってデジタルテレビは日本の約95%の世帯に普及しました。
(※3)
その
デジタルテレビで視聴される放送は、地上波はもとよりBS放送もすべてがHD放送です。
その同じテレ
ビで視聴していただくためには、110度CS衛星放送においてもHD放送を実現することがどうしても
必要でした。
時代劇は、
スポーツ番組等からみれば比較的にHD放送としての優先度が低いとされ、
また、制作年度
の古いコンテンツが多いために、放送作品のHD化が困難と考えられてきました。私たちは、時代劇の
制作者とともに古い作品のフィルムを探し、
それを丁寧にHDテレシネ(※4)する作業を続けてきました。
その際に、
フィルムの変色やキズ、
ゴミなども取り除くため、
その作品は公開(放送)
当時の美しい映像
を取り戻します。
このような作業は実は当社の放送のためだけでなく、作品の保存のために重要な意味
を持っています。
いま、作品をHD化しておかないと、
その作品はフィルムの劣化とともに永遠に失われ
てしまいかねないからです。
時代劇専門チャンネルのHD化は、単にひとつのチャンネルのHD化にとどまらず、時代劇 という映像
文化にとっても大きな出来事であるのです。
このような取り組みは日本映画専門チャンネルでも行っており、
「ハイビジョンで甦る 日の当らない名作」
という企画では、未ソフト化・未DVD化の埋もれた秀作の数々を発掘して古いフィルムからHDテレ
シネを行い、初ハイビジョン放送でお送りしています。
お蔭様で、視聴者のみなさま始め、映画評論家
の方からもご支持を得ています。
●地上波・BSと並び、
さらに上のサービスを
無料放送である民放系地上波・BSと、
私たち有料放送が同じステージで
〈同じ一台のデジタルテレビで〉
競い合うためには何が必要なのでしょうか。
ひとつは、総合編成に対する専門チャンネルという立ち位置をしっかりと固めること。
そして、有料放送ならではのサービスを充実させることです。
日本映画専門チャンネルは、
BS開局に際してそのチャンネルコンセプトを
「My TV,
My Theater」
としました。
自宅のテレビが映画館になる。
それはときには最新作をいち早く上映するロードショー館であり、見逃
してしまったあの映画を上映する二番館であり、監督や俳優の特集を組んで映画ファンを引き付ける
名画座でもあります。
いま現実の街から失われつつあるそのような映画館をテレビで実現したいと考え
たのです。
そして、私たちは放送する映画一本一本を大事にします。
すべての映画を最良のHD画質で放送するの
はもちろん、
クローズドキャプション
〈字幕〉
を付与してあらゆる方々に楽しんでいただけるようにしま
す。往年の名画には作品解説を付け、
これまで以上に監督や俳優の特集を増やし、制作当時の時代
背景や監督や俳優のプロフィールを紹介するなど、
日本映画を多角的に理解し、
さらに楽しめるような
チャンネルを目指して努力して参ります。
また、時代劇専門チャンネルは、7月に大きな編成変更を予定しています。
現在、連日10本の連続時代劇を放送していますが、
これを連日20本に増やします。むろんすべての
作品をHD化、
クローズドキャプション
〈字幕〉
を付与して、
シニアの方にも毎日、一日中楽しんでいただ
けるチャンネルとしてさらに進化します。
※2
※3
※4
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CS放送の
「スカパー ! e2」
は、東経110度に静止する通信衛星を使用している。
総務省「地上デジタルテレビ放送に関する浸透度調査」
(平成23年3月10日発表)
より
フィルムのままではテレビで放送することはできないため、
フィルムに焼かれた映像情報をハイビジョンのビデオ信号に変換する作業。
経営方針(中長期経営計画)
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●
「専門チャンネル」
としての価値の創出
私たちは、
「日本映画専門チャンネル」
らしさ、
「時代劇専門チャンネル」
らしさを追求し、
ブランド力を
一層強化するためのさまざまな試みを始めています。
日本映画専門チャンネルは、積極的に劇場公開作品とのコラボレーションを進めています。
すでに
10本以上の映画をフジテレビ・東宝・角川映画などと共同出資して制作、映画のサブキャラクターの
スピンオフ作品(単発ドラマ)
の共同制作も手掛けました。
また、時代劇専門チャンネルは、2010年から
「オリジナル時代劇」
の制作・放送を開始しており、本年も
2本の時代劇スペシャルを制作準備しています。
いずれも、
ともすれば古い作品を購入して放送するだ
けとされるCS放送の枠を大きく超え、活力ある、魅力的な
「専門チャンネル」
になるための試みです。
さらに時代劇専門チャンネルは、新作映画の試写会や、毎年恒例となった「時代劇専門チャンネル
ファン感謝祭」、作品のゆかりの地を巡るツアー企画や放送作品の背景を学ぶ
「寺子屋シリーズ」
など、
放送外でもさまざまなイベントを開催しています。放送の合間に体を動かしていただこうと企画した
「時代劇体操」、
チャンネルキャラクター若(わか)
を使ったオリジナルグッズの制作・販売等、専門チ
ャンネルならではの様々な視聴者サービスの拡充にも努めております。
日本映画専門チャンネルでは、往年のモノクロ映画の放送と同時進行で
「ニコニコ動画」
のニコニコ
生放送と連携してトーク番組を配信、若い世代のネットユーザーとともに新たな映画の楽しみ方を
体験していただきました。
このように、他の媒体と連携を図って 日本映画を語る場 を提供し、視聴者
のみなさまとダイレクトに交流できるような取り組みを実現して参ります。
これまで以上に、視聴者のみなさまとの結びつきを深め、
お客さま満足度の向上を図ることが、
「専門
チャンネル」
の今後の方向性であると確信しているからです。
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