プログラム・抄録集 - 東北大学病院産婦人科

第 139 回東北連合産科婦人科学会
総会・学術講演会
プログラム・抄録集
会 期:2015 年 6 月 6 日(土)
・7 日(日)
会 場:江陽グランドホテル
(仙台市青葉区本町 2 丁目 3‑1 TEL 022‑267‑5111)
会 長 和 田 裕 一
(宮城県産婦人科医会会長)
(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター名誉院長)
事務局 東北大学医学部産科学婦人科学教室
〒980‑8574 仙台市青葉区星陵町 1‑1
TEL 022‑717‑7251 FAX 022‑717‑7258
ご 挨 拶
第 139 回東北連合産科婦人科学会総会・学術講演会
会長 和 田 裕 一
第 139 回という歴史あるこの会を開催するにあたり責任の重さをひしひしと感じながら東北大学
産婦人科医局、宮城県産婦人科医会の先生方のご協力のもと準備を進めてまいりました。お陰様で、
最終的に 72 題という多数の一般演題の応募を頂きました。また、その中に若手奨励賞演題を募集し
ましたところ 37 題の応募がありました。数多くの発表がなされ、活発な討論が展開されて熱気のあ
る学術講演会となることを心から期待しております。
さて、本学術講演会の特別講演は聖路加国際病院小児科の細谷亮太先生にお願い致しました。細谷
先生は小児科医としては勿論のこと、俳人としても著名な先生ですが、今回は「いのちのあり方につ
いて~小児科医の立場から」という演題でご講演頂く予定です。会員の若い先生方にも是非聞いて頂
きたいと思っております。また、招請講演としては生殖医療分野について滋賀医科大学の村上節先生
に、周産期部門について自治医科大学の松原茂樹先生に、婦人科腫瘍部門については北海道大学の渡
利英道先生にご講演頂くことになっております。いずれも明日からの臨床に役立つ内容かと思われ
大変楽しみです。
平成 27 年度から日本産科婦人科学会専門医制度に指導医が導入されていますが、本学会でも指導
医講習会を開催し、医の倫理、医療安全をテーマとした講演を開催、受講証を発行しますのでどうぞ
ご参加ください。また、例年のごとく学術講演会に先立ち 6 月 6 日の午前には東北産婦人科専攻医会
が開催されます。担当の先生方、どうぞよろしくお願い致します。そのほか、学術集会の最後には東
北産婦人科乳腺医学会、コメディカル研修会を並行して行う予定になっております。こちらもあわせ
てご参加ください。
このように、東北連合学会は以前の地方部会の時代に比べて大部様変わり致しました。東北連合は
東北地方の産婦人科医の懇親の場であるほかに、専門医制度の発展に伴い学術面のさらなる充実も
求められるようになっています。勿論、総懇親会を始め楽しい企画も沢山用意しており、宮城のホス
ピタリティーを十分味わって頂くべく準備しております。多数の皆さまのご参加を心からお待ちし
ております。
最後になりますが、本会の開催にあたり、大変ご尽力を頂きましたプログラム委員長の八重樫伸生
教授はじめ東北大学産婦人科医局の先生方、宮城県産婦人科医会の先生方に感謝申し上げながら学
術集会の日を迎えたいと思います。
―1―
第 139 回東北連合産科婦人科学会
総会・学術講演会のご案内
会 期
2015 年 6 月 6 日(土)、7 日(日)
会 場
江陽グランドホテル
〒980‑0014 仙台市青葉区本町 2 丁目 3‑1
TEL 022‑267‑5111
FAX 022‑265‑2252
第 1 会場 4 階 銀河の間
第 2 会場 4 階 翡翠の間
第 3 会場 5 階 鳳凰の間(東)
機器・書籍展示 4 階 真珠の間
6 月 6 日(土)10:00 から 18:00 まで
6 月 7 日(日)09:00 から 15:00 まで
参加登録受付
1 階ロビー
第 1 日目 6 月 6 日(土) 9:00 から 18:00 まで
第 2 日目 6 月 7 日(日) 8:00 から 14:00 まで
参加費
学術講演会 12,000 円(参加者の総懇親会費を含む)
*初期研修医・学生の学術講演会及び総懇親会への参加は無料です。
*初期研修医・学生の方は参加受付でお申し出ください。参加証を発行します。
参加者へのお願い
・事前登録制ではありません。当日、参加受付で登録をお願いいたします。
・参加者には領収証兼用の学会参加証をお渡しします。ネームケースは参加登録受付にてお渡
しいたします。
・会場内では参加証をネームケースに入れ、必ず着用してください。
・専門医研修出席証明は e 医学会カードで行います。カードをご持参されていない場合は、出席
証明シールを専用デスクにてお受け取りください。
託児所について
学会期間中、託児所を開設しております。
ご希望の方は学会 HP(http://www.tohoku‑kyoritz.jp/139nuog/)より、5 月 29 日(金)までに
お申込ください。なお、定員になり次第、締切いたします。
―3―
総懇親会
2015 年 6 月 6 日(土)18:40 開宴
会場:江陽グランドホテル 5 階 鳳凰の間
役員会および総会
○東北連合産科婦人科学会役員会および東北地区産科婦人科学会・医会連絡会
日時:2015 年 6 月 7 日(日)7:45 ~ 8:45
会場:5 階 鳳凰の間(中)
○東北連合産科婦人科学会総会・若手奨励賞表彰式
日時:2015 年 6 月 7 日(日)13:00 ~ 13:15
会場:4 階 銀河の間
関連委員会および研究会
○第 12 回東北産婦人科専攻医会(日本産科婦人科学会 プロジェクト“Plus One”産婦人科セミナー)
日時:2015 年 6 月 6 日(土)10:00 ~ 11:50
会場:4 階 銀河の間
○東北生殖医療研究会
日時:2015 年 6 月 6 日(土)8:30 ~ 10:00
会場:5 階 鳳凰の間(東)
○ TGCU 世話人会・幹事会
日時:2015 年 6 月 6 日(土)10:00 ~ 11:00
会場:5 階 鳳凰の間(東)
講演発表
1.座長へのお願い
(1)1 階ロビーの座長受付にお越しください。
(2)座長は担当されるセッション開始 10 分前までに会場内次座長席へご着席ください。
(3)プログラムに定められた時間内に終了するよう、時間厳守に努めてください。
2.演者へのお願い
(1)一般演題は全て口頭発表で、口演時間 6 分、討論時間 3 分です。
(2)本学術講演会の発表は、PC データを用いての発表のみとなっております。スライドやビデ
オは原則として使用できませんので、ご注意ください。
(3)当日は会場内に PC 受付(4 階 千歳の間)を設けております。講演開始 30 分前までに発表
データ収録メディア(USB メモリまたは CD‑R)、または PC をご持参の上、受付と動作確
認を行ってください。なお、2 日目の発表データも 1 日目に受付可能です。
(4)演者は口演開始 10 分前までに会場内の次演者席へご着席ください。
―4―
【データ持参の場合】
(1)会場に準備する PC は Windows7 PowerPoint2010・2013 をインストールしております。
動画ファイルをご使用の場合は演者ご自身の PC にて発表をお願いします。
(2)Mac OS の PowerPoint で作成されたデータをご持参の場合、Windows 版の PowerPoint
で試写・確認したデータをお持ちください。
(3)発表データのファイル名は「演題番号(半角)+筆頭演者名」としてください。
(4)フォントは OS 標準のもののみご使用ください。
(5)音声の使用は禁止します。
(6)画面の解像度は XGA(1024×768)でお願い致します。
【PC 持参の場合】
(1)故障・不具合時のバックアップとして必ず収録メディアもご持参ください。
(2)音声の使用は禁止します。
(3)画面解像度は XGA(1024×768)でお願い致します。
(4)PC 受付にて、液晶モニターに接続し、映像の出力チェックを行います。
スクリーンセーバーの設定は OFF に、省電力設定を無しにしてください。
(5)プロジェクターとの接続ケーブルはミニ D‑sub15 ピン(VGA)です。持込みの PC によっ
ては専用の出力アダプターが必要になりますので、必ずご持参ください。
(6)電源アダプターは必ずご持参ください。
(7)発表用 PC は発表開始 15 分前までに会場内オペレーター席へ演者ご本人がお持ちくださ
い。
指導医講習会
受講確認は、第 1 会場前にて 13 時 55 分から開始し、14 時 20 分に終了いたします。講演開始後
15 分を過ぎますと受講確認できませんのでご留意下さい。
受講確認は e 医学会カードで行いますので、第 1 会場受付にご持参下さい。e 医学会カードをご
持参されていない場合は、受講証をお渡しいたします。受講証の半分が受講確認証になっており
ますので、所属医療機関名、氏名を記入のうえ、切り取って講習会終了後、出口にあります「受
講確認証回収箱」に入れて下さい。
回収箱に入れ忘れた場合や所属医療機関名や氏名が記入されていない場合には受講したことが
確認できませんのでご留意下さい。
招請講演
招請講演 Ⅰ、Ⅲはお弁当が配布されます。
事務局
東北大学医学部産科学婦人科学教室
第 139 回東北連合産科婦人科学会総会・学術講演会事務局
担当:西郡 秀和、齋藤 昌利
〒980‑8574 仙台市青葉区星陵町 1‑1
TEL 022‑717‑7251
FAX 022‑717‑7258
―5―
会場までの交通機関
北四番丁
48
広瀬川
宮城県庁
45
勾当台公園
り
晩翠通
4
江陽グランドホテル
広瀬通
あおば通
藤崎
青葉通り
仙台駅
さくら野
西公園
仙台国際
センター
45
榴岡公園
榴ヶ岡
五ッ
橋通
新寺通
↓
京
東
至
東北大学
会 場までの交 通 機 関
JR 東北新幹線(1 時間 37 分 ※はやぶさ)
新青森駅
JR 東北新幹線(2 時間 16 分 ※こまち)
秋田駅
JR 東北新幹線(39 分 ※はやぶさ)
盛岡駅
JR 仙山線(1 時間 16 分 ※快速)
山形駅
JR 東北新幹線(20 分 ※やまびこ)
福島駅
―6―
仙台駅
会場までのアクセス
通
上杉
愛宕
江陽グランドホテル
アジュール
〒
電力
ビル
通
番丁
東二
FORUS
AER
広瀬通
PARCO
ダイエー
ば通
あお
仙台駅
さくら野
LOFT
藤崎本館
ヤマダ電機
kurax
S-PAL
江 陽グランドホテル
〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町二丁目 3-1
JRでお越しの方
JR仙台駅から徒歩 13 分
地下鉄でお越しの方
地下鉄南北線「広瀬通駅」西 1 出口前
お車でお越しの方
東北自動車道「仙台宮城IC」から約 15 分
※周辺の有料駐車場をご利用ください。
―7―
ヨドバシ
カメラ
会場案内図
江陽グランドホテル
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学 会プログラム
第 1 日目 6 月 6 日(土)
第 1 会場
銀河の間 4 階
9:00
10:00
第 2 会場
翡翠の間 4 階
受付開始(9:00~)
第 12 回東北産婦人科専攻医会(10:00~11:50)
(日本産科婦人科学会 Plus One プロジェクト)
11:00
12:00
13:00
招請講演 Ⅰ(12:00~12:50)
演者:渡利 英道(北海道大学)
座長:杉山 徹(岩手医科大学)
共催:協和発酵キリン株式会社
開会式・会長挨拶(13:00~13:05)
招請講演 Ⅱ(13:05~13:55)
演者:村上 節(滋賀医科大学)
座長:寺田 幸弘(秋田大学)
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
14:00
15:00
16:00
指導医講習会
講演 Ⅰ 医療倫理(14:05~14:50)
演者:浅井 篤(東北大学)
座長:水沼 英樹(弘前大学)
教育セミナー Ⅰ 胎児心エコー(14:05~14:50)
(日本産科婦人科学会 Plus One プロジェクト)
演者:川瀧 元良(東北大学)
座長:菊池 昭彦(岩手医科大学)
指導医講習会
講演 Ⅱ 医療安全(14:50~15:35)
演者:藤盛 啓成(東北大学)
座長:杉山 隆(東北大学)
教育セミナー Ⅱ 遺伝カウンセリング(14:50~15:35)
(日本産科婦人科学会 Plus One プロジェクト)
演者:川目 裕(東北大学)
座長:菅原 準一(東北大学)
一般演題:第 1 群 周産期 Ⅰ(15:40~16:34)
座長:田中 幹二(弘前大学)
一般演題:第 3 群 腫瘍 Ⅰ(15:40~16:34)
座長:添田 周(福島県立医科大学)
一般演題:第 2 群 不妊・一般 Ⅰ(16:34~17:37)
座長:熊谷 仁(秋田大学)
一般演題:第 4 群 腫瘍 Ⅱ(16:34~17:37)
座長:二神 真行(弘前大学)
17:00
特別講演(17:40~18:30)
演者:細谷 亮太(聖路加国際病院)
18:00 座長:和田 裕一(宮城県産婦人科医会)
総懇親会
5 階 鳳凰の間(18:40~20:40)
機器・書籍展示 4 階 真珠の間(10:00~18:00)
―9―
学 会プログラム
第 2 日目 6 月 7 日(日)
第 2 会場
翡翠の間 4 階
第 1 会場
銀河の間 4 階
8:00
9:00
10:00
11:00
12:00
13:00
14:00
15:00
第 3 会場
鳳凰の間(東) 5 階
受付開始(8:00~)
一般演題:第 5 群 周産期 Ⅱ(9:00~9:54)
座長:金杉 知宣(岩手医科大学)
一般演題:第 8 群 周産期 Ⅳ(9:00~9:54)
座長:西郡 秀和(東北大学)
一般演題:第 11 群 一般 Ⅲ(筋腫)(9:00~9:54)
座長:小見 英夫(岩手医科大学)
一般演題:第 6 群 周産期 Ⅲ(10:00~10:45)
座長:齋藤 昌利(東北大学)
一般演題:第 9 群 腫瘍 Ⅲ(10:00~10:54)
座長:太田 剛(山形大学)
一般演題:第 12 群 周産期 Ⅵ・一般 Ⅳ
(10:00~10:45)
座長:菅沼 亮太(福島県立医科大学)
一般演題:第 7 群 一般 Ⅱ(10:50~11:44)
座長:牧野 健一(秋田大学)
一般演題:第 10 群 周産期 Ⅴ(11:00~11:54)
座長:五十嵐秀樹(山形大学)
招請講演 Ⅲ(12:00~12:50)
演者:松原 茂樹(自治医科大学)
座長:藤森 敬也(福島医科大学)
共催:大塚製薬工場株式会社
総会・表彰式(13:00~13:15)
コメディカル研修会
講演 Ⅰ(13:20~14:00)
演者:佐藤喜根子(東北大学)
座長:高林 俊文(宮城県産婦人科医会)
東北産婦人科乳腺医学会
特別講演 Ⅰ(13:20~14:10)
演者:植野 映(筑波メディカルセンター病院)
座長:小澤 信義(宮城県産婦人科医会)
共催:シーメンス・ジャパン株式会社
コメディカル研修会
講演 Ⅱ(14:00~15:00)
東北産婦人科乳腺医学会
演者:西村 秀一(国立病院機構仙台医療センター) 特別講演 Ⅱ(14:10~15:00)
座長:濵﨑 洋一(宮城県産婦人科医会)
演者:大貫 幸二(岩手県立中央病院)
座長:永瀬 智(山形大学)
閉会式(15:00~)
16:00
機器・書籍展示 4 階 真珠の間(9:00~15:00)
役員会
○東北連合産科婦人科学会役員会および東北地区産科婦人科学会・医会連絡会
日時:平成 27 年 6 月 7 日(日) 7:45~8:45
会場:5 階 鳳凰の間(中)
関連委員会および研究会
○東北生殖医療研究会(共催:日本新薬株式会社)
日時:平成 27 年 6 月 6 日(土) 8:30~10:00
会場:5 階 鳳凰の間(東)
○TGCU 世話人会・幹事会
日時:平成 27 年 6 月 6 日(土) 10:00~11:00
会場:5 階 鳳凰の間(東)
○東北 6 大学医局長会議
日時:平成 27 年 6 月 6 日(土) 16:00~17:00
会場:4 階 琥珀の間
― 10 ―
第 12 回東北産婦人科専攻医会
(日本産科婦人科学会 プロジェクト“Plus One”産婦人科セミナー)
6 月 6 日(土)第 1 会場 銀河の間 4 階
10:00‑10:05
挨 拶
第 139 回東北連合産科婦人科学会総会・学術講演会 会長 和田裕一
第 1 部 帝王切開術について考える
10:05‑11:20
各病院の帝王切開術 & evidence に基づいた帝王切開術
―なんとなくこんな感じでやっているけど、これって正しいのかな?―
質疑応答
11:20‑11:30
休 憩
第 2 部 産婦人科専攻医の実際
11:30‑11:50
専攻医の現状 vs 初期研修医・指導医の理想
―専攻医の現状から産婦人科の明るい未来を考える―
質疑応答
閉会の辞
第 12 回東北産婦人科専攻医会 幹事代表 田中恵子
特別企画 腹腔鏡下手術講習会
日時:平成 27 年 6 月 5 日(金)
会場:東北大学 先進医療技術トレーニングセンター
*定員制となっております。参加申し込み・受付はすでに終了しております
のでご注意ください。
― 11 ―
特 別 講 演
特別講演
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場(銀河の間) 17:40~18:30
「「いのち」のあり方について ― 小児科医の立場から ―」
演者:聖路加国際病院 顧問
細 谷 亮 太
座長:宮城県産婦人科医会 会長
和 田 裕 一
招 請 講 演
招請講演 Ⅰ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場(銀河の間) 12:00~12:50
「放射線治療を多用しない子宮頸癌治療について」
演者:北海道大学 講師・診療准教授
渡 利 英 道
座長:岩手医科大学 教授
杉 山 徹
共催:協和発酵キリン株式会社
招請講演 Ⅱ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場(銀河の間) 13:05~13:55
「帝王切開瘢痕症候群による続発性不妊症 ~その実態から内視鏡手術の効果まで~」
演者:滋賀医科大学 教授
村 上 節
座長:秋田大学 教授
寺 田 幸 弘
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
招請講演 Ⅲ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 1 会場(銀河の間) 12:00~12:50
「帝王切開時大出血への 3 つの新規対抗策(前置胎盤手術への工夫も含めて)
― MY suture, MY sandwich, Bakri balloon の Fishing 法 ―」
演者:自治医科大学 教授
松 原 茂 樹
座長:福島県立医科大学 教授
藤 森 敬 也
共催:大塚製薬工場株式会社
指 導 医 講 習 会
講演 Ⅰ 医療倫理
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場(銀河の間) 14:05~14:50
「医療倫理の基礎と課題」
演者:東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野 教授
浅 井 篤
座長:弘前大学 教授
水 沼 英 樹
― 12 ―
講演 Ⅱ 医療安全
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場(銀河の間) 14:50~15:35
「産婦人科医療と医療安全」
演者:東北大学病院医療安全推進室 室長・教授
藤 盛 啓 成
座長:東北大学
杉 山 隆
教授
教 育 セ ミ ナ ー
(日本産科婦人科学会 プロジェクト“Plus One”産婦人科セミナー)
セミナー Ⅰ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 2 会場(翡翠の間) 14:05~14:50
「先天性心疾患の胎児診断 ~現状、インパクト、課題、今後の取り組み~」
演者:東北大学 助教
川 瀧 元 良
座長:岩手医科大学 教授
菊 池 昭 彦
セミナー Ⅱ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 2 会場(翡翠の間) 14:50~15:35
「出生前における遺伝カウンセリング」
演者:東北大学東北メディカル・メガバンク機構人材育成部門
遺伝子診療支援・遺伝カウンセリング分野 教授
座長:東北大学 教授
川 目 裕
菅 原 準 一
コメディカル研修会
講演 Ⅰ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 1 会場(銀河の間) 13:20~14:00
「チーム医療で支える宮城のお母さんのメンタルヘルス」
演者:東北大学大学院医学系研究科保健学専攻
家族支援看護学周産期看護学分野 教授 座長:宮城県産婦人科医会 副会長
佐 藤 喜根子
高 林 俊 文
講演 Ⅱ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 1 会場(銀河の間) 14:00~15:00
「最近話題のウイルス感染症:デングウイルス・エボラウイルス感染症」
演者:独立行政法人国立病院機構仙台医療センター
臨床研究部ウイルスセンター
西 村 秀 一
座長:宮城県産婦人科医会 副会長
濵 﨑 洋 一
― 13 ―
東北産婦人科乳腺医学会
特別講演 Ⅰ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 2 会場(翡翠の間) 13:20~14:10
「あすから役立つ乳房超音波診断 ~B モードからエラストグラフィ~」
演者:筑波メディカルセンター病院 ブレストセンター長
植 野 映
座長:宮城県産婦人科医会 常任理事
小 澤 信 義
共催:シーメンス・ジャパン株式会社
特別講演 Ⅱ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 2 会場(翡翠の間) 14:10~15:00
「乳がん検診におけるマンモグラフィと超音波検査の総合判定」
演者:岩手県立中央病院 診療部乳腺外科長
大 貫 幸 二
座長:山形大学 教授
永 瀬 智
― 14 ―
一 般 演 題
第 1 日目 6 月 6 日(土)
第 1 会場 銀河の間
第 1 群 周産期 Ⅰ 15:40~16:34
座長:田中 幹二(弘前大学)
1.流産手術後に増大する絨毛組織を認めた帝王切開瘢痕部妊娠の1例
大崎市民病院
嶋田 未知、我妻 理重、亀田 里美、松本 大樹、
星合 哲郎
2.腹腔鏡下手術にて治療した副角妊娠の一例
1)岩手県立中部病院 2)東北公済病院
吉田 美帆1)、早坂 真一2)、鏡 友里恵2)、柿坂はるか2)
、
2)
2)
2)
2)
吉本 知子 、鈴木 弘二 、小林 正臣 、田野口孝二
3.診断に苦慮した異所性妊娠の一例
弘前大学
大石 舞香、船水 文乃、飯野 香理、福井 淳史、
水沼 英樹
4.腹腔鏡下に摘出した卵巣固有靭帯内妊娠の一例
山形大学
鈴木 聡子、高橋 俊文、長谷川歩美、山内 敬子、
小幡美由紀、網田 光善、小島原敬信、五十嵐秀樹、
永瀬 智
5.産褥期に卵巣静脈血栓性静脈炎を発症した一例
山形大学
渡邉 憲和、堤 誠司、榊
宏諭、山内 敬子、
小幡美由紀、網田 光善、吉田 隆之、永瀬 智
6.産後子宮出血をきたした Placental site subinvolution の一例
米沢市立病院
第 2 群 不妊・一般 Ⅰ
西村 杏子、池田 美智、木村 和彦
16:34~17:37
座長:熊谷 仁(秋田大学)
7.Wunderlich 症候群に対する Minimally Invasive Laparoscopic Surgery
寿泉堂綜合病院
菅野 潔、鈴木 和夫、大和田真人、鈴木 博志
8.術後腹壁子宮内膜症の一例
米沢市立病院
池田 美智、木村 和彦、西村 杏子
9.生殖補助医療に関連した卵管卵巣膿瘍の2例
山形大学
深瀬 実加、五十嵐秀樹、榊
宏諭、渡邉 憲和、
網田 光善、高橋 俊文、永瀬 智
10.子宮鏡下手術における支持鉗子の使用経験
NTT 東日本 東北病院
土岐 麻実、宇賀神智久、渡辺 正
― 15 ―
11.膀胱子宮内膜症の一例
気仙沼市立病院
横山 沙織、松田 尚美、須藤 円
12.鼠径部に発育した性腺外卵黄嚢腫瘍の1例
秋田大学
田村 大輔、清水 大、佐藤 直樹、木藤 正彦、
牧野 健一、佐藤 敏治、寺田 幸弘
13.Office gynecology における粘膜下筋腫に対するマイクロ波子宮内膜アブレーションによる過
多月経治療の検討
山王レディースクリニック
津田 晃
第 2 会場 翡翠の間
第 3 群 腫瘍 Ⅰ
15:40~16:34
座長:添田 周(福島県立医科大学)
14.外陰癌 IVb 期に対し化学同時放射線療法を行った1例
弘前大学
太田 圭一、二神 真行、重藤龍比古、横山 良仁、
水沼 英樹
15.進行・再発卵巣癌に対する Bevacizumab の使用経験
東北大学
城 伶史、徳永 英樹、櫻田 尚子、田中 創太、
海法 道子、新倉 仁、渡部 洋、八重樫伸生
16.ホルモン補充療法開始後1年で子宮体癌を発症した一例
山形大学
安藤 麗、山谷 日鶴、成味 恵、榊
宏諭、
渡邉 憲和、網田 光善、高橋 一広、永瀬 智
17.高度扁平上皮化生により SCC が異常高値を示した子宮体部類内膜腺癌の一例
山形大学
松川 淳、高橋 俊文、山内 敬子、山谷 日鶴、
太田 剛、小島原敬信、高橋 一広、永瀬 智
18.子宮体癌に対する術後 DC 療法の治療成績
山形大学
鈴木百合子、太田 剛、深瀬 実加、榊
宏諭、
清野 学、成味 恵、須藤 毅、永瀬 智
19.画像診断にて線維腫が疑われたが明細胞癌を認めた遺伝性乳癌卵巣癌症候群の1例
太田西ノ内病院
第 4 群 腫瘍 Ⅱ
目黒 啓予、山口 明子、田中 幹夫
16:34~17:37
座長:二神 真行(弘前大学)
20.悪性腫瘍との鑑別を要した卵巣 Polypoid endometriosis の一例
1)つがる総合病院 2)弘前大学病理生命科学講座 3)弘前大学 横山美奈子1)、福原 理恵1)、松下 容子1)、鍵谷 昭文1)、
平井 秀明2)、鬼島 宏2)、横山 良仁3)
― 16 ―
21.卵巣悪性腫瘍を疑った嚢胞性腺筋症の1例
1)山形県立新庄病院 2)山形大学
酒井 一嘉1)、竹原 功2)、深瀬 美加1)、高橋可菜子2)
、
1)
1)
中原 健次 、椎名 有二
22.当院での腟悪性黒色腫症例の臨床的検討
東北大学
櫻田 尚子、新倉 仁、田中 創太、海法 道子、
徳永 英樹、岡本 聡、渡部 洋、八重樫伸生
23.卵巣境界悪性ブレンナー腫瘍の1例
東北大学
湊 純子、徳永 英樹、大槻 愛、井原 基公、
岡本 聡、渡部 洋、八重樫伸生
24.β‑hCG 上昇により診断に至った dysgerminoma 再発の一例
1)つがる総合病院 2)青森県立中央病院
、
追切 裕江1)、伊東 麻美2)、横田 恵2)、松倉 大輔2)
2)
2)
尾崎 浩士 、森川 晶子
25.絨毛癌皮膚転移の一例
1)福島県立医科大学 2)総合南東北病院 3)総合南東北病院形成外科
平岩 幹1)、野村 真司1)、石橋真輝帆1)、安田 俊1)
、
1)
1)
1)
2)
添田 周 、渡辺 尚文 、藤森 敬也 、橋本 敏 、
中村 眞2)、北原 正樹3)
26.カテーテル関連血流感染症から化膿性血栓性静脈炎、敗血症、脊椎炎・硬膜外膿瘍を合併した卵
巣癌
八戸市立市民病院
熊谷 祐作、會田 剛史、奥原 惟、田中 恵子、
比嘉 健、末永香織里、小泉 俊光、今井 紀昭
第 2 日目 6 月 7 日(日)
第 1 会場 銀河の間
第 5 群 周産期 Ⅱ 9:00~9:54
座長:金杉 知宣(岩手医科大学)
27.当院における品胎妊娠 25 例の検討
仙台赤十字病院
富田 芙弥、鈴木 久也、横山 智之、齋藤 美帆、
太田 恭子、大槻 健郎、中里 浩樹、谷川原真吾
28.双胎間輸血症候群(TTTs)に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)を施行した一例
1)宮城県立こども病院 2)東北大学 3)東北大学先進成育医学講座胎児医学分野
4)札幌医科大学
井ケ田小緒里1)2)、原田 文1)、室本 仁1)3)、
水内 将人1)4)、室月 淳1)3)、八重樫伸生2)
― 17 ―
29.Discordant DD‑twins の原因が軟骨異栄養症と臍帯胎盤因子によると考えられた一例
1)石巻赤十字病院 2)東北大学
佐々木 恵1)、杉山 隆2)、黒澤 靖大2)、岩間 憲之2)、
大塩 清佳2)、倉片三千代2)、齋藤 昌利2)、八重樫伸生2)
30.単一胚盤胞移植後の vanishing triplet の2例
1)山形大学 2)ゆめクリニック
竹原 功1)、高橋 俊文1)、太田 信彦2)、松川 淳1)、
長谷川歩美1)、網田 光善1)、五十嵐秀樹1)、永瀬 智1)
31.胎児外回転術後に常位胎盤早期剥離を発症した2症例
岩手県立中部病院
湊 敬道、淀川 裕紀、高橋 聡太、西本 光男、
佐藤 多代
32.出生前に茎捻転を起こした胎児卵巣嚢腫の一例
山形大学
高橋可菜子、堤 誠司、杉山 晶子、渡邉 憲和、
小幡美由紀、須藤 毅、吉田 隆之、五十嵐秀樹、
永瀬 智
第 6 群 周産期 Ⅲ 10:00~10:45
座長:齋藤 昌利(東北大学)
33.妊娠中期より高度徐脈が持続した胎児洞性徐脈の一例
秋田大学
畠山 佑子、富樫嘉津恵、亀山沙恵子、下田 勇輝、
三浦 康子、佐藤 朗、寺田 幸弘
34.子宮頸管長の早産リスク
岩手医科大学
佐々木由梨、村井 正俊、金杉 知宣、岩動ちず子、
小山 理恵、菊池 昭彦
35.岩手県総合周産期母子医療センターに救急搬送された切迫早産に関する後方視的検討
岩手医科大学
村井 正俊、佐々木由梨、金杉 知宣、岩動ちず子、
小山 理恵、菊池 昭彦、杉山 徹
36.当院で経験した子宮内反症による産科危機的出血の一例
1)大館市立総合病院 2)弘前大学 3)八戸市立市民病院
石原 佳奈1)、山内 愛紗1)2)、田村 良介1)、
葛西亜希子1)3)、葛西剛一郎1)3)、高橋 秀身1)
37.大量輸血を要した妊婦の1例
1)福島県立医科大学 2)福島県立医科大学放射線医学講座
3)福島県立医科大学救急医療学講座
経塚 標1)、菅野 潔1)、安田 俊1)、河村 真1)、
野村 泰久1)、佐藤 友美2)、石井 士朗2)、根本 千秋3)、
藤森 敬也1)
― 18 ―
第 7 群 一般 Ⅱ
10:50~11:44
座長:牧野 健一(秋田大学)
38.診断に苦慮した家族性地中海熱の一症例
1)秋田大学 2)秋田大学保健学科 3)かづの厚生病院
、
佐藤 亘1)、三浦 康子1)、白澤 弘光3)、熊澤由紀代1)
1)
2)
1)
熊谷 仁 、児玉 英也 、寺田 幸弘
39.直腸子宮内膜症によるサブイレウスに対して術前 GnRHa 投与を行った1例
東北大学
黒澤 大樹、氷室 裕美、渋谷 祐介、田中 創太、
志賀 尚美、渡邉 善、井原 基公、宇都宮裕貴、
新倉 仁、八重樫伸生
40.ジェットスキーにより膣壁裂傷、直腸裂傷を形成した1例
岩手県立中央病院
菅原 真弓、名取 徳子、海道 善隆、村井 眞也、
葛西真由美、鈴木 博
41.当院での日帰り LEEP の成績について
1)おざわ女性総合クリニック
4)東北公済病院
2)岡村婦人科クリニック 3)NTT 東日本東北病院
小澤 信義1)、岡村けい子2)、渡辺 正3)、田野口孝二4)
42.新しい HPV タイピング検査法(HPV サーティーン)の有用性について
42.―HPV サーティーン法とクリニチップ法との比較―
1)おざわ女性総合クリニック
2)東北大学 3)日本遺伝子研究所
小澤 信義1)、成澤 邦明2)、浅野 克敏3)、中嶌 浩二3)
43.団塊世代の元産婦人科医が震災復興に向ける思い
43.~岩手県陸前高田市と宮城県南三陸町における女性支援
公立南三陸診療所
中村 幸夫
第 2 会場 翡翠の間
第 8 群 周産期 Ⅳ 9:00~9:54
座長:西郡 秀和(東北大学)
44.妊娠初期より下節部菲薄化・子宮筋層断裂を認めた既往帝王切開妊婦の5症例
1)弘前大学 2)大館市立総合病院
鴨井 舞衣1)、山内 愛紗1)、熊坂 諒大1)、湯澤 映2)
、
1)
1)
田中 幹二 、水沼 英樹
45.塩酸リトドリンによる横紋筋融解症を契機に診断された筋緊張性ジストロフィー合併妊娠の
一例
公立置賜総合病院
丸山 真弓、松尾 幸城、高木 潤一、手塚 尚広
46.妊娠後期に深部静脈血栓症を発症し、下大静脈フィルター留置し生児を得た1例
1)竹田綜合病院 2)福島県立医科大学
遠藤 雄大1)、加茂 矩士1)、平岩 幹2)、大関 健治1)
、
1)
1)
斎藤 善雄 、金 彰午
― 19 ―
47.妊娠中期に低位前方切除術と人工肛門増設術を施行した S 状結腸癌合併妊娠の一例
秋田大学
亀山沙恵子、富樫嘉津恵、下田 勇輝、三浦 康子、
畠山 佑子、三浦 広志、佐藤 朗、寺田 幸弘
48.腫瘍崩壊症候群により急性腎不全を来したと考えられる悪性腫瘍合併妊娠の1例
東北大学
湊 敬廣、佐々木 恵、黒澤 靖大、佐藤 孝洋、
大塩 清佳、徳永 英樹、西郡 秀和、杉山 隆、
八重樫伸生
49.異なる転帰を辿った CHMCF(complete hydatidiform mole coexistent with a fetus)2症例の
検討
1)石巻赤十字病院 2)東北大学
清水 孝規1)、永井 智之1)、久野 貴司1)、阿部 雄悟1)、
市川さおり1)、吉田 祐司1)、杉山 隆2)
第 9 群 腫瘍 Ⅲ
10:00~10:54
座長:太田 剛(山形大学)
50.超肥満子宮体癌症例の手術を経験して
弘前大学
二神 真行、横山 良仁、太田 圭一、重藤龍比古、
水沼 英樹
51.悪性骨盤内腫瘍を疑われた Douglas 窩深部子宮内膜症の1例
東北大学
井原 基公、徳永 英樹、大槻 愛、長谷川純子、
渡部 洋、八重樫伸生
52.無月経に対し長期間ホルモン療法が施行されていた FSH 産生下垂体腫瘍の一例
1)白河厚生総合病院 2)福島県立医科大学
吉田 史子1)、大原 美希2)、鈴木 聡2)、菅沼 亮太2)、
小宮ひろみ2)、藤森 敬也2)
53.診断に苦慮した子宮体部神経内分泌性小細胞癌の一例
1)盛岡赤十字病院 2)盛岡赤十字病院病理部
畑山 伸弥1)、畑山 寿緒1)、船越 真生1)、菅原 英治1)、
藤原 純1)、門間 信博2)、松田 壯正1)
54.卵巣平滑筋肉腫の1例
岩手医科大学
古武 陽子、庄子 忠宏、田中 詩乃、小見 英夫、
竹内 聡、杉山 徹
55.子宮腺筋症から発生した類内膜腺癌の一例
大崎市民病院
亀田 里美、我妻 理重、嶋田 未知、松本 大樹、
星合 哲郎
― 20 ―
第 10 群 周産期 Ⅴ
11:00~11:54
座長:五十嵐秀樹(山形大学)
56.リンパ脈管筋腫症合併妊娠の1症例
八戸市立市民病院
夏山 貴博、熊谷 祐作、吉田 瑤子、末永香緒里、
松田 雪香、小泉 俊光、會田 剛史、今井 紀昭
57.第1子、第2子分娩後に HELLP 症候群を繰り返した 1 症例
仙台赤十字病院
横山 智之、富田 芙弥、齋藤 美帆、太田 恭子、
大槻 健朗、中里 浩樹、鈴木 久也、谷川原真吾
58.不整脈合併妊娠に対して硬膜外無痛分娩を施行した2症例
岩手県立中部病院
高橋 聡太、佐藤 多代、湊 敬道、淀川 祐紀、
西本 光男
59.横紋筋融解症を呈した重症妊娠悪阻の1例
1)大崎市民病院 2)仙台市立病院 3)スズキ記念病院
齋藤 淳一1)、松本 大樹1)、嶋田 未知1)2)、
亀田 里美1)3)、星合 哲郎1)、我妻 理重1)
60.妊娠 37 週に脳梗塞を発症し血栓溶解療法を行った1例
国立病院機構仙台医療センター
桃野 友太、工藤多佳子、島 崇、松浦 類、
石垣 展子、武山 陽一、明城 光三
61.腹腔鏡下手術にて加療しえた卵巣腫瘍合併妊娠の2例
竹田綜合病院
大関 健治、金 彰午、遠藤 雄大、加茂 矩士、
斎藤 善雄
第 3 会場 鳳凰の間(東)
第 11 群 一般 Ⅲ(筋腫) 9:00~9:54
座長:小見 英夫(岩手医科大学)
62.術前診断が困難であった後腹膜腔に発育した巨大漿膜下変性筋腫の一例
仙台市立病院
石山美由紀、松本沙知子、大山 喜子、赤石 美穂、
大槻 愛、田邉康次郎、早坂 篤、渡辺 孝紀
63.巨大子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術を施行し高カリウム血症を来した1例
八戸市立市民病院
田中 恵子、小泉 俊光、熊谷 祐作、比嘉 健、
末永香緒里、松田 雪香、會田 剛史、今井 紀昭
64.parasitic myoma の2例
仙台市立病院
田邉康次郎、石山美由紀、松本沙知子、大山 喜子、
赤石 美穂、大槻 愛、早坂 篤、渡辺 孝紀
65.子宮筋腫に合併した子宮魚鱗癬の一例
1)福島県立医科大学 2)寿泉堂綜合病院
、
高田めぐみ1)、菅野 潔2)、鈴木 和夫2)、大和田真人2)
2)
鈴木 博志
― 21 ―
66.当科におけるマイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)による過多月経の治療成績
寿泉堂綜合病院
大和田真人、高田めぐみ、田中 昌代、菅野 潔、
鈴木 和夫、鈴木 博志
67.腹腔鏡下子宮筋腫核出術における電動式モルセレーターを用いない子宮筋腫回収法
67.~当院での工夫~
福島県立医科大学
小島 学、鈴木 聡、添田 周、渡辺 尚文、
藤森 敬也
第 12 群 周産期 Ⅵ・一般 Ⅳ
10:00~10:45
座長:菅沼 亮太(福島県立医科大学)
68.UAE 後に子宮壊死を来たした癒着胎盤の一例
石巻赤十字病院
永井 智之、清水 孝規、久野 貴司、阿部 雄吾、
市川さおり、吉田 祐司
69.連続する2周期の胚移植で成立したと考えられる双胎妊娠の1例
1)むつ総合病院 2)弘前大学
柞木田礼子1)、平川 八大1)、熊坂 諒大1)2)、
太田 圭一1)2)、山口 英二1)
70.子宮動脈 MTX 動注、子宮動脈塞栓術が奏功し、子宮温存可能であった頸管妊娠の一例
弘前大学
山内 愛紗、鴨井 舞衣、湯澤 映、田中 幹二、
水沼 英樹
71.当院における 13 歳の妊娠出産管理
山形県立中央病院
齋藤 彩、齋藤 彰治、小篠 隆広、阿部 祐也
72.当院における初期人工妊娠中絶術数、15 年間の推移
村口きよ女性クリニック
村口 喜代
― 22 ―
特 別 講 演
招 請 講 演
指導医講習会
特別講演
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場 (銀河の間) 17:40~18:30
座長:和田 裕一(宮城県産婦人科医会 会長)
「
「いのち」のあり方について ―小児科医の立場から―」
演者:細谷 亮太(聖路加国際病院 顧問)
私の 40 年間の小児科医としての暮らしは文字通り「子どもの命」のすぐ近くでのものであった。そ
のキーワードは「トータルケア」である。
「トータルケア」という概念の生みの親は、ボストン小児病院にいたハーバード大学教授のシドニ
ー・ファーバーである。彼は小児がん治療のパイオニアの一人であり、葉酸拮抗剤を使用して小児白
血病を治療し、1948 年の「New England Journal of Medicine」誌に発表した。このことがそれまで
不治とされていた小児がんが治せるかもしれない、と皆に希望を持たせることになった重要な人物
である。
たまたま、私の前任の聖路加国際病院小児科部長・西村昻三は、1960 年まで彼の下で臨床トレーニ
ングを受け当院へ就職している。その年に西村が「小児科臨床」誌に「米国に於ける小児急性白血病
治療の現況」という論文を寄せているので、その一部を引用してみる。
当治療部(ボストン)においては家族に対しては本症の不治なることを伝え、患児の症状経過を報
告すると共に、現在可能な治療法により、生命をできる限り延長し、その間よりよき治療法の発見さ
れんことを望むという希望を与えることにつとめている。また同時に患児の治療、福祉に対し可能な
限りの手段がつくされていると云う安心感を与えることが重要である。他方患児に対しては本症の
真相を知らさず、たとえ幼児といえども患児の前では病状につき語ることを禁じている。また家族の
患児に対する態度は発病前と同様に規律をもって取扱うことが必要で、溺愛、同情のあまり一旦両親
が家族でのしつけを失うと、緩解症例では精神面素行面での問題が生じてくることが少なくない。ま
た家族の経済的負担も大で、当治療部では骨髄穿刺、輸血等は勿論その他出来る限り外来で扱うよう
につとめ、また社会福祉司が種々家族の相談援助に応じている」
その当時から患児の身体面の治療だけではなく、家族も含めた精神的・経済的なサポートが行わ
れていたことが伺えて興味深い。
その後、1973 年に世界で初めて編まれた小児がんの教科書「小児悪性腫瘍学」の中で、私の米国で
の恩師ストーは「小児がんの治療は、化学療法、手術、放射線照射他、考えうる方法をすべて使用し
て、集学的に多職種の人々の協力の下に行われなければならない。これがファーバーの推しすすめた
トータルケアの概念である」と述べている。1972 年に東北大学医学部を卒業した当時、
「患者をみた
いなどという奴はこの研究第一主義の土壌にはあわない」と言う大学に見切りをつけて外に出たも
のにとっては「トータルケア」の概念は目からウロコ。まさに地獄に仏の如きものであった。
このコンセプトはその後さらに進化し、参集すべき専門家の種類はどんどん増えた。診断から病気
そのものの治療、加えて心理的・社会的・経済的なサポート、長期のフォローアップまでを、すべて
トータルケアは包含し、家族のこともより深くケアするようになった。
トータルケアにとって医療チームの充実は必須である。医師、看護師の他、ソーシャルワーカー、
病棟の保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、ホスピタル・プレイ・スペシャリスト、小児
心理士、教師、宗教家、それに加えて病棟薬剤師、種々の検査技師、種々の訓練士なども含まれる。
チームのメンバーそれぞれが、お互いの立場をよく理解した上で、その職種を尊重しながら、チーム
ワークよろしく働いてこそ、トータルケアの望ましい形を追求できる。
― 24 ―
細谷 亮太 (ほそや りょうた)
【履 歴】
1948 年
1972 年
1972 年~1977 年
1978 年~1980 年
1980 年~
1994 年~
2003 年~
2005 年~
2013 年~
2014 年~
他 現在
山形県生まれ
東北大学医学部卒業
聖路加国際病院小児科レジデント
テキサス大学 MD アンダーソン病院癌研究所にクリニカルフェローとして勤務
聖路加国際病院小児科に復職
聖路加国際病院小児科部長
聖路加国際病院副院長 小児科部長 兼務
聖路加国際病院副院長 小児総合医療センター長 兼務
聖路加国際病院小児総合医療センター長
聖路加国際病院顧問
聖路加国際大学臨床教授
宮城県立こども病院理事
【専 門】
小児血液・腫瘍学、小児保健など
【訳 書】
○「君と白血病」(医学書院、1982 年 4 月)
○「チャーリー・ブラウン なぜなんだい?」(岩崎書店、1991 年 10 月)
など
【著 書】
○「パパの子育て歳時記」
(毎日新聞社、1990 年 3 月)
○「川の見える病院から」
(岩崎書店、1995 年 3 月)
○「いのちを見つめて」(岩波書店、1998 年 3 月)
○ 文庫「小児病棟の四季」(岩波書店、2002 年 6 月)
○「赤ちゃんとの時刻」(朝日新聞社、1998 年 5 月)
○ 再販「0~5 歳 細谷先生のわくわく子育て」
(小学館、2008 年 6 月)
○「ぼくのいのち」(岩崎書店、1999 年 6 月)
○「旬の一句」(講談社、2002 年 2 月)
○「医師としてできることできなかったこと」(講談社、2003 年 6 月)
○「おにいちゃんがいてよかった」
(岩崎書店、2003 年 6 月)
○「いつもいいことさがし」(暮しの手帖社、2005 年 3 月)
○ 文庫「いつもいいことさがし」
(中公文庫、2009 年 12 月)
○「いのちの言葉」
(三輪書店、2005 年 11 月)
○「命のノート」(講談社、2006 年 7 月)
○「医者が泣くということ」(角川書店、2007 年 5 月)
○「生きるために、一句」(講談社、2007 年 10 月)
○「小児がん」(中公新書、2008 年 11 月)
○「今、伝えたい「いのちの言葉」」
(佼成出版社、2009 年 11 月)
○「優しさはどこから」(婦人之友社、2009 年 11 月)
○「なみだ」(ドン・ボスコ社、2011 年 3 月)
○「いつもいいことさがし2」(暮しの手帖社、2011 年 7 月)
○「いつもこどものかたわらに」
(白水社、2014 年 3 月)
○「かしの木の子もりうた」(岩崎書店、2014 年 3 月)
○ その他 句集2冊(「桜桃」・「二日」)
○(○印は絵本)
など
【その他】
公益財団法人「がんの子どもを守る会」副理事長
公益財団法人「そらぷちキッズキャンプ」代表理事
― 25 ―
など
招請講演 Ⅰ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場 (銀河の間) 12:00~12:50
座長:杉山 徹(岩手医科大学 教授)
「放射線治療を多用しない子宮頸癌治療について」
演者:渡利 英道(北海道大学 講師・診療准教授)
子宮頸癌 Ⅰb1~Ⅱb 期の治療法としては手術療法あるいは放射線療法が主治療として選択される
が、本邦では放射線療法よりも手術療法とそれに引き続く再発リスクを勘案した補助療法を行う場
合が欧米に比べて多いと推察される。
本邦における浸潤子宮頸癌の若年齢化に伴い、長期生存後の子宮頸癌患者の QOL を考慮した治療
戦略がさらに求められる時代になっているといえる。長期生存者の QOL 向上のためには、手術療法
における工夫として機能温存を意識した手術手技の実践、さらには術後治療の再検討が必要と考え
る。術後治療としては現行のガイドラインにおいては放射線治療を行うとされているが、術後放射線
治療によって合併症の発生頻度が高まることが懸念されること、婦人科悪性腫瘍研究機構(JGOG)で
行った調査研究の結果、本邦においては術後化学療法を行う施設が約 20‑30%存在することが明らか
となったことから、術後治療としての化学療法の有用性に関する前方視的な検討を本邦において行
うべき状況になっているといえる。また、術後放射線治療についても有害事象の軽減を目指して強度
変調放射線治療(IMRT)についての前方視的検討も今後、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で
行われる予定であることから、欧米に比べて子宮頸癌 Ⅰb1~Ⅱb 期に対して積極的に手術療法を行
っている日本独自の標準治療の確立に向けた取り組みが計画されている。
本講演では、長期生存者の QOL を考慮した子宮頸癌治療として、手術療法および術後化学療法に
ついての自施設の取り組みに関するデータを中心に解説するとともに、今後の本邦における子宮頸
癌に対する臨床研究の方向性についても私見を述べてみたい。
― 26 ―
渡利 英道 (わたり ひでみち)
【学 歴】
昭和 58 年 4 月~平成 元 年 3 月
北海道大学医学部医学科 卒業
平成 2 年 4 月~平成 7 年 3 月
北海道大学大学院医学研究科博士課程 修了
(医学博士学位取得(北海道大学)
)
【職 歴】
平成 元 年 6 月~平成 元 年 11 月
帯広厚生病院研修医
平成 元 年 12 月~平成 2 年 5 月
北海道大学病院研修医
平成 7 年 4 月~平成 8 年 3 月
市立芦別病院産婦人科(医長)
平成 8 年 4 月~平成 8 年 9 月
富良野協会病院産婦人科(医長)
平成 12 年 4 月~平成 13 年 10 月
札幌マタニテイウイメンズホスピタル(医師)
平成 13 年 11 月~平成 18 年 3 月
北海道大学病院婦人科(助手)
平成 18 年 4 月~平成 20 年 4 月
北海道大学病院婦人科(講師)
平成 20 年 5 月~
北海道大学病院婦人科(診療准教授)現在に至る
【資 格】
日本産科婦人科学会専門医
日本臨床細胞学会専門医
日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医
【学会活動】
日本産科婦人科学会代議員
日本婦人科腫瘍学会評議員
日本臨床細胞学会評議員
日本婦人科腫瘍学会教育委員会主幹事・専門医制度委員会幹事
JGOG 理事
GOG JAPAN 委員会委員長
北海道産科婦人科学会総務理事
北海道産婦人科医会理事
日本癌治療学会会員
日本臨床腫瘍学会会員
日本婦人科癌検診学会会員
日本産婦人科手術学会会員
日本産科婦人科内視鏡学会会員
日本思春期学会会員
日本産婦人科乳腺医学会会員 等
【外国留学歴】
平成 8 年 10 月~平成 12 年 3 月
米国ペンシルバニア大学にて研究に従事(Jerome F Strauss 教授)
― 27 ―
招請講演 Ⅱ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場 (銀河の間) 13:05~13:55
座長:寺田 幸弘(秋田大学 教授)
「帝王切開瘢痕症候群による続発性不妊症
~その実態から内視鏡手術の効果まで~」
演者:村上 節(滋賀医科大学 教授)
少子化や出産年齢の上昇という社会的変化を反映した近年のハイリスク妊婦の増加、貴重児とい
う適応の拡大に加え、胎児診断技術や新生児医療水準の向上など近代医学の進歩によって、本邦にお
ける全分娩に対する帝王切開分娩の比率は年々上昇している。一方、帝王切開の術後には、創部の筋
層欠損や菲薄化が約7%の症例にみられるとされる。これらの症例の次回妊娠成立時には、瘢痕部妊
娠や切迫子宮破裂など、臨床的に頭を悩ませる問題が生じることが少なくないが、実はそれ以外に
も、過長月経や不正出血、浸出液の貯留などを呈して、続発性の不妊症に陥る症例の存在が指摘され
ている。ただしその詳細については不明な点も多く、臨床の現場では見過ごされていることも稀では
ないと考えられる。
そこで、日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会では、平成 25 年度からの 2 年間に、
「帝王切開瘢痕
症候群による続発性不妊症に対する治療法の検討小委員会」を設け、帝王切開創部に生じた瘢痕部の
陥凹による続発性不妊症に焦点を当てて、その病態の認知度や実際の患者に対する対応など、本邦に
おける初の実態調査を施行した。
この小委員会では、第一次調査として、この病態の認知度を知るために、全国の専攻医指導施設な
らびに生殖医療登録施設、合わせて 1092 施設に対して郵送法によるアンケート調査を実施した。こ
の調査では 616 施設(56%)から回答があり、そのうち 496 施設(81%)はこの病態を認知しており、
176 施設(29%)は実際に不妊症例を経験したことがあるという結果が得られた。そこで、引き続き、
不妊症例経験施設の 176 施設に対して、診断・治療に関する個票を送付して、不妊症例の登録を求め
た(滋賀医科大学医学部倫理委員会承認)。この第二次調査に対しては、56 施設(32%)から回答が
あり、症例として 189 例が集積された。
本講演では、この 189 症例のデータを元にした帝王切開瘢痕症候群による続発性不妊症の臨床像。
症状、所見、治療法‑と、これらの解析により得られた治療方針案について報告する。
― 28 ―
村上 節 (むらかみ たかし)
【略 歴】
1986 年
東北大学医学部卒業
1986~1989 年
岩手県立花巻厚生病院産婦人科
1989~1993 年
東北大学医学部附属病院産婦人科(医員)
1993~1993 年
仙台市立病院産婦人科
1994~1996 年
岩手県立宮古病院産婦人科科長
1996~1999 年
東北大学医学部産婦人科(助手)
1999~2001 年
東北大学医学部産婦人科(講師)
2001~2008 年
東北大学大学院医学系研究科助教授(2007 年から准教授)
2008 年~現在
滋賀医科大学産科学婦人科学講座教授
【主な学会】
日本産科婦人科学会
日本産科婦人科内視鏡学会 理事
日本エンドメトリオーシス学会 理事
日本生殖内分泌学会 理事
日本卵子学会 理事
日本受精着床学会 理事
日本 IVF 学会 理事
【専門医等】
日本産科婦人科学会専門医
日本生殖医学会生殖医療指導医
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医(産婦人科)
【賞 罰】
2002 年 第 42 回日本産科婦人科内視鏡学会 学会賞・ビデオ部門
2006 年 米国婦人科内視鏡学会(AAGL)Golden hysteroscope award 2nd place
― 29 ―
招請講演 Ⅲ
第 1 日目 6 月 7 日(日)第 1 会場 (銀河の間) 12:00~12:50
座長:藤森 敬也(福島県立医科大学 教授)
「帝王切開時大出血への 3 つの新規対抗策(前置胎盤手術への工夫も
含めて)―MY suture, MY sandwich, Bakri balloon の Fishing 法―」
演者:松原 茂樹(自治医科大学 教授)
はじめに
帝王切開(帝切)時大出血に対して 3 つの対抗策を打ち出した。1)Matsubara‑Yano(MY)suture、
2)MY sandwich,3)Bakri balloon 挿入留置への Fishing 法(Matsubara)である。1)は新規 uterine
compression suture で、主に弛緩出血への対抗手段である。副効用として、
「開腹子宮内反整復術後
の再内反」抑止効果もある。2)は、主に前置胎盤(癒着はないと想定)に対する帝切後(中)出血へ
の対抗策である。胎盤付着部位(子宮下節)と子宮体部との両者からの出血に同時に対抗出来る。3)
は帝切時全般に適用できるが、前置胎盤で特に効果的である。講演では要点を簡明に述べる。
弛緩出血に対する Uterine compression suture; Matsubara‑Yano suture(MY suture)
子宮を縦 2 糸・横 2 糸の合計 4 糸で transfixation する。出来上がりは#の形になる[1,2]。子宮の形
状や必要とされる圧迫の度合いに応じて「縦 2 本、横 2 本」は自在に変化させてよい[2,3]。針は 65
ミリ 1/2 circle 針(Ethicon BP1)を使用している。縦糸の「lateral に」横糸をかける。B‑Lynch で
は(1)縦糸が外へずれる slide off,(2)縦糸が内側へずれる slide in,(3)子宮体部が前にお辞儀をし
てしまう anterior bow,(4)咄嗟の際には手技が複雑、の 4 つの欠点がある[2,5]。Hayman について
も(1)‑(3)は当てはまる。MY suture は B‑Lynch や Hayman のこれら欠点を克服した。MY は B‑
Lynch や Hayman に比して、子宮貫通(transfixation)の程度が強い。これは「子宮疎血」の可能性
を(理論上は)高める。が、これまでに、私たちは、MY に伴う adverse event を経験していない。MY
縫合には「子宮内反再発」予防効果もある。子宮内反はいったん整復できても、再発してくる例が多
い。開腹で子宮内反整復した場合には、私たちは MY 縫合をして後顧の憂いを絶つ[1,2,4,5]
。この効
果は B‑Lynch や Hayman でも多少は期待できるが、MY 縫合の方がこれら 2 法よりも完璧である。
前置胎盤帝切後の大出血に対する MY sandwich 法[6,7]
前置胎盤で癒着がない場合、胎盤をはがしにかかる。が、この時に胎盤剥離面(下節)から出血する。
胎盤が体部にまでかかっている場合には体部からも同時に、かかっていない場合には、下節からの大
出血後に弛緩出血を示し、そのために体部からも出血してくる。体部と下節、その両者から、
「同時
に」あるいは「時間差で」出血してくるわけだ。そこで、その両者からの出血に対して即応する必要
がある。それにはこうする。
まず MY suture で体部出血を絶つ。次に下節への出血を絶つ。切開創から intrauterine balloon を挿
入して、下節を圧迫止血する。uterine compression suture にせよ、intrauterine balloon にせよ、こ
れ迄の概念:「それ 1 本で子宮からの出血を止めてしまおう」自体に無理があった。産科出血には、
1)出血点が 1 カ所でない、2)当初出血制御に手間取ると、当初以外部位からも出血が始まる、の 2
つの特殊性がある。MY sandwich で、”役割分担=role sharing”=“体部は MY で、下節は balloon で止
血する”の概念を打ち出し、本法は、1)と 2)両者への対抗策になっている。MY sandwich 採用例で
は非採用例に比して、出血量が有意に少なかった[7]。
前置胎盤への簡単便利な Bakri balloon 挿入法[8]
intrauterine balloon の挿入には「膣側から」と「腹側から」の 2 法が報告されていて、まだ優劣決着
がついていない。前置胎盤では子宮口は閉鎖していることが多い。飲まされた煮え湯は 1)balloon 挿
入に手間取る、2)術後に balloon が滑脱してしまう、3)手術最中に balloon が滑脱することすらある、
― 30 ―
4)収縮が良いと思える 2)3)の場合であっても、その後に大出血する例があり、どれが大出血する
かがわからない。試行錯誤を重ねて Matsubara’s Nelaton+Fishing+Holding the cervix 法を工夫し
た。当日御説明する。
おわりに
私は、不器用で手術はうまくない。だから、誰にでもできる方策を考えた。お示した 3 法は誰にでも
容易にその場で実行できる。いざという時の一手(3 手)として御記憶いただければ、と思う。なお、
癒着胎盤時の子宮摘出術に対しては Matsubara’s 8‑step method を採用している。8 段構えで子宮を
摘出する。文献[9]に詳述してあるので、ご興味のある方は御参考いただきたい。
文献
1.Matsubara
2.Matsubara
3.Matsubara
4.Matsubara
5.Matsubara
6.Matsubara
7.Matsubara
8.Matsubara
9.Matsubara
S,
S,
S,
S,
S,
S.
S,
S,
S,
et al. J Obstet Gynaecol Res 2009;35:819.
et al. Acta Obstet Gynecol Scand 2013;92:378.
et al. Acta Obstet Gynecol Scand 2013;92:1234.
Yano H. J Obstet Gynaecol Res 2012;38:1272.
Baba Y. Acta Obstet Gynecol Scand 2013;92:734.
Acta Obstet Gynecol Scand 2012;91:638‑639
et al. Aus N Z J Obstet Gynaecol 2014;54:283‑286
et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2015 Jan 24. aogs.12585
et al. Acta Obstet Gynecol Scand 2013;92:372.
松原 茂樹 (まつばら しげき)
【略 歴】
自治医大産婦人科講座主任教授
自治医大臨床研究支援センター副センター長(研究・論文作成担当)
CRST(Clinical Research Support Team:僻地医師の論文作成支援)代表
1979 年
自治医大卒(東京都)
1979 年‑1984 年
都立病院(駒込、築地産院)勤務、伊豆七島の島嶼診療所長。
1988 年
自治医大産婦人科大学院卒。
1988 年
自治医大産婦人科 助手。講師、助教授を経て
2002 年から同教授。現在に至る。
【専 門】
電顕細胞生物学、周産期医学全般、産婦人科手術学、Medical writing
英文筆頭論文 159 編、うち産科手術関連 40 編
【著 作】
「論文作成 ABC:うまいケースレポート作成のコツ」東京医学社 単著
「臨床研究と論文作成のコツ」東京医学社 編著
「周産期救急シミュレーション」メディカ 単著 等
― 31 ―
指導医講習会 Ⅰ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場 (銀河の間) 14:05~14:50
座長:水沼 英樹(弘前大学 教授)
「医療倫理の基礎と課題」
演者:浅井 篤(東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野 教授)
医療倫理学の目的は、医療専門職・医学研究者が生命・医療倫理に関する基本的知識を身に付け、
各々の現場における倫理・法・社会・心理・文化・宗教的な諸問題を的確に認識し、倫理的不確実
性と価値観の衝突が存在する状況で生じる諸問題に、適切かつ迅速に対応することで、患者ケア、医
療および医学研究活動の包括的アウトカムを向上させることである。倫理的不確実性と価値観の衝
突が存在する状況で、
「より善い」または「他よりも悪くない」決定が目指されなければならない。関
係者は、事実と関連重要情報の確認および関係者間のコミュニケーション(多職種間での話し合い、
患者側との話し合い)を必須のプロセスとして行い、それらを踏まえた上で、倫理原則や重要概念を
手摺に価値判断を下すことが重要である。
「倫理とは個人的な反省の営みではない。他者に対して自分の生き方を正当化し擁護するという社会
的活動であり、人々が共有する様々な前提や信念や制度を背景として行われる他者との対話である」
とH・クーゼは非常に的確に、倫理という営みを定義した(『ケアリング』、2000 年)。JR・Williams
は、服従、模倣、感情、願望、直観、習慣それぞれのみに基づいたアプローチは不適切だと指摘した
(2009 年)。現場における「隠れたカリキュラム」の存在を考慮すると、指導的立場にある医療専門職
に対する教育が必須であろう(The 1998 Consensus Statement updated Journal of Medical Ethics
2010;36:55‑60.)
我々が常に勘案すべき大切な価値、守るべき倫理原則には、自律尊重、基本的自由、利益と害の適切
なバランス維持、無害、正義(公正)、プライバシー、人間の尊厳(尊敬の念、丁寧な対応、社会的
文化的価値尊重、British Medical Association(BMA)、2004 年)、人間の脆弱性に基づく保護の必要
性、連帯、人権擁護、文化の多様性と多元主義の尊重、そして医のプロフェッショナリズムがある。
BMA はまた「治療上のよい理由がないのなら、患者は医学的介入から自由であるべきである。」と述
べている。
医療倫理学は、次の諸事項を医療現場の問題アプローチに与えることができる。それらには、考える
ことを強調すること、思考停止や安易さを否定すること、思考プロセスに第三者性、一貫性、普遍性
を与えること、区別すべきことを区別すること(公平性)、今まで「発見された」倫理原則や人権リ
ストの提示、絶対に犠牲にしてはいけないこと・避けるべきことを確認すること、人間の弱さに配慮
したテイラーメイドな意思決定支援、バランス・中庸の大切さの確認、優先順位の明確化等がある。
今回は上記の医療倫理の基礎および現代日本の医療倫理的課題について述べる。
― 32 ―
浅井 篤 (あさい あつし)
【略 歴】
1962 年 9 月 13 日
愛知県生まれ
1988 年 3 月
藤田保健衛生大学医学部卒業
1988 年 5 月
国立東京第二病院研修医
1990 年 4 月
国立東京第二病院総合診療部レジデント
1993 年 7 月
カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部医療倫理プログラム研究員
1995 年 10 月
京都大学医学部附属病院総合診療部助手
1998 年 2 月
モナッシュ大学生命倫理学センター客員研究員、同人文科学大学院・生命倫理学修
士課程在籍
1999 年 5 月
医学博士号取得(京都大学)
2000 年 4 月
京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学分野助教授
2005 年 3 月
熊本大学大学院医学薬学研究部生命倫理学分野教授
2010 年 1 月
熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野教授
2014 年 4 月
東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野教授
― 33 ―
指導医講習会 Ⅱ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 1 会場 (銀河の間) 14:50~15:35
座長:杉山 隆(東北大学 教授)
「産婦人科医療と医療安全」
演者:藤盛 啓成(東北大学病院医療安全推進室 室長・教授)
我が国では、1999 年(平成 11 年)に発生した横浜市立大学患者取り違え手術事件・都立広尾病院
消毒薬誤注射事件以来、医療事故が社会問題として認識されるようになり、医療訴訟が急増した。産
婦人科関連の医療訴訟は他の診療科に比して多く、医療訴訟新受件数がピークとなった 2004 年(平
成 16 年)には医師 1000 人当たりの年間新受件数としては産婦人科が 12.4 件で内科の 3 倍以上とな
った。このような背景もあって産科無過失補償制度の設立が検討され、2009 年 1 月から運営が開始さ
れた。設立された当初から 5 年毎に制度の見直しをすることが定められており、議論の結果、2014 年
1 月には原因分析や調整のあり方等について見直しがなされ、2015 年 1 月からは補償対象となる脳
性麻痺の基準や掛け金等の改訂が行われた。
医療訴訟新受件数は 2004 年の 1110 件から減少傾向となり 2013 年には 809 件まで減少した。特に
産婦人科関連医療訴訟は、ピーク時の 3 分の1まで減少している。
医療安全活動は、事故の未然防止をすることが第一の目的であり、不幸にして事故となった場合は
被害拡大と紛争化を防ぐ手立てをなし、再発防止対策を実施するものである。医療法により、現在は
全ての医療機関において、①医療安全の指針の策定、②医療安全に関する委員会の開催、③従業員に
対する研修の実施、④医療機関内の事故報告体制整備、が求められている。国立大学では 2012 年に
国立大学附属病院医療安全管理協議会が設立され、全国規模で医療安全活動を展開してきた。東北大
学は 2012 年に医療安全推進室を設置し、複数(医師、看護師、薬剤師)の医療安全管理者(国立大
学ではジェネラルリスクマネジャー;GR、と呼称)を配置して、医療安全活動を進めてきた。その
結果、かつては国立大学の中でも最も医療訴訟の多い病院の一つであった東北大学病院で、平成 27
年 3 月末には係争事案はゼロとなった。医療訴訟件数の減少が、実際に医療事故が減少して安全とな
った結果であるかどうか直には言えないように、産婦人科関連の訴訟件数減少が、産婦人科医療の安
全性向上の結果であるかどうかは実のところ不明と言わざるを得ない。
演者が勤める東北大学病院の実際の医療安全活動や事例、また産科無過失補償制度の報告事例や
裁判事例を通して産婦人科領域の医療安全を再考し、事故未然防止および紛争化防止の対策につい
て述べたい。本年、平成 27 年 10 月に運用が予定されている新事故調査制度の概要についても触れた
い。
― 34 ―
藤盛 啓成 (ふじもり けいせい)
【役 職】
東北大学病院医療安全推進室・乳腺内分泌外科、
医療安全推進室長・GRM ジェネラルリスクマネージャー・特命教授
【学 歴】
昭和 55 年東北大学医学部卒
平成元年 3 月東北大学医学博士号取得
【職 歴】
昭和 55 年 6 月~58 年
八戸市立八戸市民病院外科研修
昭和 58 年
東北大学医学部第二外科入局(大学院研究生)
平成 8 年~平成 12 年
東北大学医学部第二外科医局長
平成 11 年
東北大学大学院医学研究科外科病態学講座先進外科学分野講師
平成 11 年 4 月~平成 13 年 3 月
集中治療部副部長(兼務)
平成 13 年 8 月 16 日~平成 20 年 11 月 30 日
手術部副部長(兼務)
平成 12 年~平成 20 年
東北大学大学院医学研究科外科病態学講座腫瘍外科学分野助教授(平成 18 年以
降准教授)
平成 17 年
東北大学病院医療安全推進室副室長・GRM・准教授
平成 20 年
東北大学病院乳腺内分泌外科兼務
平成 24 年 4 月~現在
東北大学病院医療安全推進室長・特命教授
(その他)
宮城県医師会常任理事(医療安全担当)
、宮城県社会保険支払い基金審査委員、
日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業専門分析班委員、
財団法人宮城県腎臓協会監事、
日本コーチ協会認定メディカルコーチ・MCTP トレーニングプログラム修了(平成 23 年 6 月 1 日)
【専門領域】
医療安全管理一般
診療関係:臓器移植(肝臓、腎臓、膵臓)、甲状腺内分泌外科
【所属学会・研究会】
日本医療の質・安全学会(代議員)、医療事故・紛争対応研究会(東北ブロック世話人)、
宮城医療安全研究会(代表幹事)、日本外科学会(認定医、元指導医)、
日本内分泌外科学会(評議員・甲状腺外科専門医)、日本移植学会、国際移植学会(TTS)
― 35 ―
教 育 セ ミ ナ ー
コメディカル研修会
東北産婦人科乳腺医学会
教育セミナー Ⅰ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 2 会場 (翡翠の間) 14:05~14:50
座長:菊池 昭彦(岩手医科大学 教授)
「先天性心疾患の胎児診断
~現状、インパクト、課題、今後の取り組み~」
演者:川瀧 元良(東北大学 助教)
先天性心疾患の胎児診断は近年急速に普及しつつある。神奈川県立こども医療センターのデータ
をもとに、生後 1 年以内に治療を要する重症心疾患の胎児診断率の経年的な変化を検討した。単心室
疾患の胎児診断率は、1993 年から 1999 年までは 10%前後で推移したが、2000 年に 45%まで急激に
増加し、以後は直線的に増加し、80%を突破した。二心室疾患の胎児診断率は、1993 年から 1999 年
までは 10%前後で推移したが、2000 年以後は直線的な増加を示し、60%に到達した。完全大血管転
位症(TGA)は 2005 年までは、ほとんど胎児診断されなかったが、2005 年以後直線的な増加を示し、
50%まで上昇した。総肺静脈還流異常(TAPVD)は、いまだほとんど胎児診断されていない。重症
心疾患の胎児心スクリーニング率の経年的な変化を見ると、2000 年頃に大きく向上した。この頃に開
始した産科医への胎児心スクリーニングの啓蒙活動が関与している可能性がある。
胎児診断の普及は、周産期医療に大きなインパクトを与えている。NICU に入院する重症心疾患の
90%以上は胎児診断されるようになり、胎児から始まる周産期医療に大きく変貌した。正確な診断と
重症度評価は、適切な分娩時期や様式の選択や病態に即した出生直後の循環呼吸管理に役立てられ
ている。また、出生から手術開始までの時間を可能な限り短縮し、出生後24時間以内に手術する超
緊急手術の導入により、これまで治療困難とされてきた卵円孔閉鎖をともなう左心低形成症候群
(HLHS)、circular shunt をともなう重症エプスタイン病、高度肺静脈狭窄を伴う総肺静脈環流異常
(TAPVD)は胎児診断と超緊急手術により救命できるようになった。また、胎児診断によって術後退
院までに日数が短縮した。動脈管性ショックも激減し、後遺症のない生存に大きく寄与した。以上の
観点から、重症心疾患の胎児診断は周産期医療を大きく変貌させ、医療経済に多大な利益をもたらし
ている。
重症心疾患全体の胎児診断は着実に普及しつつあるが、TGA と TAPVD の胎児診断率が現在なお
低率である。一方、新生児期に開心術を行う最も頻度の高い心疾患が TGA と TAPVD でもある。今
後、胎児診断率をさらに向上させるためには、産科医、小児科医、検査技師、助産師による協力体制
の確立が重要である。特に、内科領域に比べて非常に少ない産科領域の超音波技師の数を増やすこと
は胎児診断率向上に直結すると同時に、産科医の負担軽減にも役立つと考えられる。また、レベル2
の精査が可能な周産期施設は全国的には偏在しており、胎児スクリーニング率には地域ごとに大き
な格差が存在している。近年、IT 技術が急速に普及してきた。IT エンジニアと協力して、遠隔セミ
ナーや遠隔診断のシステムを確立することは、近い将来の重要な課題と考える。各地で始まっている
遠隔セミナーや遠隔診断の取り組みについても報告する。
― 38 ―
川瀧 元良 (かわたき もとよし)
【経 歴】
1956 年 9 月 28 日
愛媛県にて出生
1981 年 3 月
秋田大学医学部卒
1981 年 6 月
医師免許取得
1981 年 4 月~1986 年 3 月
秋田中通病院にて初期研修
1986 年 4 月~1990 年 3 月
神奈川県立こども医療センター循環器科研修
1990 年 4 月
同センター新生児未熟児科医員
1994 年 4 月
同センター新生児未熟児科医長
1998 年 10 月~12 月 神奈川県の海外研修生として研修
場所 カナダ(トロント小児病院)
イギリス(King's College Hospital)
内容 胎児心エコーの技術、スクリーニングのシステム
2013 年 4 月
神奈川県立こども医療センター 新生児科部長
新しい命のサポートセンター副センター長
2014 年 4 月
東北大学産婦人科、医学研究科融合医工学部分野助教
【専門分野】
新生児循環、心疾患の胎児診断
【所属学会】
小児科学会
小児循環器学
周産期新生児学会
未熟児新生児学会
母体胎児学会
胎児治療学会
胎児心臓病学会
周産期循環管理研究会
― 39 ―
教育セミナー Ⅱ
第 1 日目 6 月 6 日(土)第 2 会場 (翡翠の間) 14:50~15:35
座長:菅原 準一(東北大学 教授)
「出生前における遺伝カウンセリング」
演者:川目 裕(東北大学東北メディカル・メガバンク機構人材育成部門)
遺伝子診療支援・遺伝カウンセリング分野 教授)
遺伝カウンセリングという用語は、この数年、メディアでも、医療の中においても広く耳にするよ
うになった。遺伝カウンセリングとは、クライエント(患者)とその家族の目的に合わせて、相手の
気持ちを配慮しながら、相手が理解出来るようにわかりやすく、最新で正確な医学的情報の提供をお
こない、その情報を理解したクライエントの意思決定を支援する対話のプロセスであるといわれる。
しかしながら、実際には、どのようなものかなかなかイメージしづらい。
遺伝カウンセリングは、その対象とする領域によって、その実際は大きく異なる。出生前(あるい
は、妊娠生殖に関わる)の遺伝カウンセリング、小児領域の遺伝カウンセリング、成人発症疾患の遺
伝カウンセリングのように分類されること多い。出生前の遺伝カウンセリングでは、高齢妊娠、近親
婚の場合や家系に先天異常や遺伝性疾患のある場合の次子についての相談や出生前診断について、
妊娠中の薬剤の服用、習慣流産、あるいは、母体血清マーカー検査、超音波検査等で胎児に疾患が見
いだされた場合などが対象となる。
出生前に関する遺伝カウンセリングにおいて扱う内容は、妊娠の継続や中断の決定という人の命
に関する大きな内容を扱うことも多い。また、まだ生まれていない胎児のことを決めるのが親という
状況から、親と胎児との利害関係の衝突が生じることがある。また最近の出生前診断技術の進歩か
ら、クライエントと共有しないといけない情報も多彩かつ多くなり続けている。出生前診断について
は、日本産科婦人科学会による「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」において
適正な遺伝カウンセリングが提供できる体制下で実施すべきであると明記された。
今回、遺伝カウンセリングの基本を提示してから、出生前における遺伝カウンセリングのポイント
と課題点について概説する。
― 40 ―
川目 裕 (かわめ ひろし)
【役 職】
東北大学東北メディカル・メガバンク機構人材育成部門遺伝子診療支援・遺伝カウンセリング分野教授、
東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学専攻修士課程公衆衛生・遺伝カウンセリング・コース代表
【略 歴】
1986 年
東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学小児科に入局、研修
1992 年
同大学院卒業、医学博士
1992 年~1995 年
シアトルのワシントン大学 遺伝医学部門、シアトル小児病院でシニアフェローと
して Roberta A. Pagon らに師事し臨床遺伝学を研修
1997 年
東京都立北療育医療センター小児科医長
2000 年
信州大学附属病院遺伝子診療部に赴任
2001 年
社会予防医学教室遺伝医学分野准教授にて、遺伝医療の診療、教育に携わる
2002 年~
長野県立こども病院遺伝科の初代部長、信州大社会予防医学教室遺伝医学分野非常
勤講師、山梨大学医学部非常勤講師
2009 年~
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ライフサイエンス専攻遺伝カウン
セリングコース教授、東京女子医科大学遺伝子医療センター客員教授
2013 年 4 月~
現職、宮城県立こども病院総合診療科遺伝外来非常勤
【専 門】
小児臨床遺伝学、臨床形態異常診断学(Dysmorphology)
、遺伝カウンセリング
【活 動】
演劇にて「遺伝」の啓発活動、身近に考える機会をとの発想で、2002 年信州大学遺伝子診療部にて劇団ジ
ェネトピアを結成。その劇団の初代監督、劇団員で俳優など勤める。また、支援団体の CHARGE の会、マ
ルファンネットワークジャパン、たけのこの会の賛助会員あるいはアドバイザー。2006 年には、ムコ多糖
症親の会第 1 回 Doctor of the year MPS 賞を受賞
― 41 ―
コメディカル研修会 Ⅰ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 1 会場 (銀河の間) 13:20~14:00
座長:高林 俊文(宮城県産婦人科医会 副会長)
「チーム医療で支える宮城のお母さんのメンタルヘルス」
演者:佐藤 喜根子(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻)
家族支援看護学周産期看護学分野 教授)
昨年 12 月、仙台市内に住むお母さんが生後 4 ヶ月目の赤ちゃんを窒息死させたという周産期医療
従事者にはショッキングなニュースが入り、それが 4 月には約4カ月間の鑑定の結果、責任能力を問
えると判断し、起訴されたという報道がありました。2007 年も県北で同様のことが発生しています。
いったいお母さん方に何が起きているのでしょうか?一昨年、神戸市で母親による乳児絞殺死亡事
例の検証結果が報告されました。その中で「児童虐待の危険要因は産後うつ病であり、そのハイリス
ク者はエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)でスクリーニング可能であるから、それを用いて
スクリーニングし、予測しハイリスク者を見守るべきである」と報告されています。果たしてそうな
のでしょうか?
「健やか親子 21」では、2000 年(開始年)の EPDS で産後うつ病のハイリスク者は 13.4%、最終年
(2010 年)は 9.0%と減少していたが、東日本大震災直後の宮城県では 21%と高く、震災の影響が出て
いると報告書で述べられています。しかしこの時の岩手県はせいぜい 8−9%だったのです。何が大き
な差を生んでいるのでしょうか?確かに、カットオフ値(8/9)では陽性反応的中度は 0.5 で、高得点
でも半数が精神科的には産後うつ病が含まれていないということではありますが…。英国では、
「NHS(国民保健サービス)では、産後うつ病のスクリーニング調査では、EPDS も含めて、産褥期
や通常のうつ病に対する適応は、通常のケアと比較しても対費用効果はない」等の議論があるようで
す。しかしスコットランドでは家庭訪問時のスクリーニングとして使用していました。児童虐待が社
会問題になり、少子化が進み、子育ての世代間伝達がなくなっている日本では、子育てをする女性は
孤立しており話の糸口になる事。また様々な医療職者が共通の尺度を使用することで、周産期医療チ
ームで共通認識が高まるというメリットもあることから、積極的にスクリーニングとして使用すべ
きだと考えます。しかし、そのために新生児家庭訪問の時間が延長する等もあり、要領を得たアプロ
ーチ法の研修等が必要かと思います。
一方で、ボンディング障害が児童虐待の原因になっているという研究も多くあります。母親が児に
対して抱く愛着のボンディングは、妊娠中のボンディングから新生児ボンディングが予測できるこ
とが明らかになっています。そして、胎児の画像を見たり、妊娠中の医療者の良い関わりでボンディ
ングが良くなることが報告されています。産後うつとボンディングは併存するといわれますが、妊娠
期からサポートすることでボンディングが良くなり産後うつの予防が出来るのであれば、支援方法
を積極的に模索すべきでしょう。
私たちは、東日本大震災後当時妊婦だった女性の心身の状況を追ってきました。現在 3−4 歳児を
「父親の役
子育て中です。子育てに影響を及ぼしていたのは「不安と不眠」
「うつ傾向」
「夫婦関係」
割問題や家庭機能の問題」等でした。さらにサポート役の夫の心身の健康も母親のそれと相関し、決
して良いという状態ではありませんでした。第 2 子の出産も続いています。子育て環境をよくするた
めにも、周産期医療者のチームワークのとれた支援が期待される時代です。震災県の宮城でその方向
性が提案できることを期待します。
― 42 ―
佐藤 喜根子 (さとう きねこ)
【現 職】
東北大学大学院医学系研究科保健学専攻 家族支援看護学 周産期看護学分野 教授
宮城県母性衛生学会理事長
日本母性衛生学会理事
日本助産学会理事
日本周産期メンタルヘルス学会顧問
日本女性心身医学会評議員
【略 歴】
1974 年 3 月
東北大学医学部附属看護学校卒業
1975 年 3 月
東京大学医学部附属助産婦学校卒業
1975 年 4 月
東京大学医学部附属病院就職
1976 年 4 月
東北大学医学部附属病院転勤
1994 年 4 月
東北大学医療技術短期大学部専攻科助産学特別専攻 講師
1998 年 3 月
慶応義塾大学文学部卒業(文学士、人間関係学士)
1998 年 5 月
東北大学医療技術短期大学部専攻科助産学特別専攻 助教授
2002 年 3 月
東北大学大学院教育学研究科修士課程修了
2003 年 10 月
東北大学医学部保健学科 教授 2008 年 3 月
東北大学大学院教育学研究科博士課程修了(教育学博士)
【主要著作】
「助産診断・技術学 Ⅰ、Ⅱ」医学書院 共著
「臨床助産師必携」医学書院 共著
「母性看護学」日本放送出版協会 共著
「助産師・看護師のための超音波画像診断」南江堂 共著
「育児の中での臨床発達支援」ミネルヴァ書房 共著
「助産師の本領発揮が出来るお産とは」助産雑誌 第 61 巻 第 1 号
… ほか
― 43 ―
コメディカル研修会 Ⅱ
第 2 日目 6 月 7 日(日)第 1 会場 (銀河の間) 14:00~15:00
座長:濵﨑 洋一(宮城県産婦人科医会 副会長)
「最近話題のウイルス感染症:デングウイルス・エボラ
ウイルス感染症」
演者:西村 秀一(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター)
臨床研究部ウイルスセンター)
本講演では、昨年夏から秋にかけて東京での突然のアウトブレイクで話題となったデングウイル
ス感染症ならびに同じく昨年3月西アフリカで再出現し現在も猛威を振るっているエボラウイルス
感染症について概説する。前者は今後も日本で見られるようになる可能性があり、一方、後者は未だ
患者が日本に入ってきたあるいは日本で患者が発生したことはないものの、もし日本で患者が出た
ときどうするのか、その高い病原性ゆえ恐れられている。このようなエキゾチックな感染症には、単
なるイメージ過剰による「怖がり過ぎ」をやめ、一方で危険性を無視することなく「正当に怖がる」、
きちんとした知識と理屈にのっとった冷静な対応が求められる。本講演の目的はそれを伝えること
にある。
まずは知識の豊富な人には失礼かもしれないが「ウイルスとは?」といった総論からはじめさせて
いただき、つぎに各論としてのデングウイルス感染症についての話をする。これまでの東南アジアで
の症例と治療上の知識と疫学的知識とそれに基づき、今後日本におけるこの感染症に対する演者の
考え方を述べてみたい。その次にエボラウイルス感染症である。これまでにもアフリカで何度もアウ
トブレイクが経験されてきた。まずはそれらから得られた知識を紹介する。一方、今度の西アフリカ
の大流行である。これまではそのような大流行はなかった。違いはなにか?ウイルス側が変わったの
か?あるいは人間の側が変わったのか?日本に入ってきたとき西アフリカのような事態をどうやっ
て回避するか?何をどこまでやるべきか?
ここで「ウイルスとは?」の知識、さらにエボラウイルスの感染の仕方についての知識が効いてく
る。エボラウイルスはどう転んでも「ウイルス」でしかなく、人間の側にきちんとした知識とそれに
基づいて行動する意思さえあれば、極めて特殊なことをする必要はない。我々がこれまで実践に努力
してきた通常の感染制御のやりかたを徹底させさえすれば、我が国で大流行するような事態には至
らずに済むはずである。非常時の対応の成否は日常にあり。本講演でそれを汲み取っていただき、日
ごろの医療現場における感染制御に努力していただければ幸いである。
― 44 ―
西村 秀一 (にしむら ひでかず)
【略 歴】
山形県新庄市出身
1984 年 3 月
山形大学医学部医学科卒業
同年 4 月
山形大学医学部細菌学講座助手
1989 年 3 月
医学博士(山形大学)
1994 年 4 月から 95 年 10 月まで
米国 National Research Council のフェローとして CDC インフルエンザブランチ留学、
その後 96 年 12 月まで同ブランチ客員研究員
1996 年 12 月
国立感染症研究所ウイルス一部呼吸器系ウイルス室主任研究官
2000 年 4 月
から現職
専門は、呼吸器系ウイルス感染症を中心としたウイルス学(とくにインフルエンザ)
医学博士
【賞 罰】
2003 年 12 月
厚生労働省 SARS 感染拡大に対する国際緊急援助隊専門家チームの一人として人事院総
裁賞
2011 年 1 月
山形大学医学部同窓会 蔵王会賞
【主な著書】
翻訳 『史上最悪のインフルエンザ −忘れられたパンデミック−』
(A.W. クロスビー著)みすず書房 2004 年 1 月
翻訳 『インフルエンザ感染爆発―見えざる敵=ウイルスに挑む』
(デイビッド・ゲッツ著)金の星社 2005 年 12 月
翻訳 『Dr.ヒッポシリーズ』全 5 巻(C.コーワン著) サイエンティスト社 2009‑2010 年
翻訳 『1976 起きなかった大流行 豚インフルエンザ事件と政策決断』
(R.E.ニュースタット&H.V.ファインバーグ著)
時事通信出版局 2009 年 10 月
翻訳 『ケイティの不思議美術館』シリーズ 全 10 巻
(J. メイフュー著)サイエンティスト社 2011‑2013 年
― 45 ―
東北産婦人科乳腺医学会 Ⅰ 第 2 日目 6 月 7 日(日)第 2 会場 (翡翠の間) 13:20~14:10
座長:小澤 信義(宮城県産婦人科医会 常任理事)
「あすから役立つ乳房超音波診断
~B モードからエラストグラフィ~」
演者:植野 映(筑波メディカルセンター病院 ブレストセンター長)
超音波の画質の向上により、標本の割面との対比が容易であるが、単なる画像として捉えるだけ
でなく、超音波の基礎を理解することによりその奥に隠された病理を紐解くことができる。本講演
では、はじめに超音波の基礎を分かりやすく簡単に解説し、多くの症例を交えながら実践的に解説
する。
内容
(1) 超音波画像はどのように形成されるか
(2) フルデジタル(オールデジタル)超音波とは
(3) 超音波組織特性
散乱吸収減衰について(後方エコーの強さはなにで決まるのか)
後方散乱について(粘液癌はなぜ高エコーか)
(4) カラードプラの原理(エイリアシングとは)
(5) エラストグラフィの原理
Strain Elastography と Shear Wave Elastography の違い
(6) Comprehensive Ultrasonic Diagnosis (症例を中心に)
B‑モード、カラードプラ、エラストグラフィを駆使した診断技術を解説
(7) 検診への応用
茨城県の超音波検診で発見されている小さな乳癌を供覧
(8) 検査時の注意事項
探触子の把持の仕方
モニターの高さ
スキャンニングの仕方
植野 映 (うえの えい)
1950 年、世界遺産となった和歌山県小口村にて出生。1976 年に東京医科大学医学部を卒業し、僻地医療
を志して、自治医科大学消化器一般外科に入局。昭和天皇執刀医を務められた森岡恭彦教授に師事。その後、
1983 年に筑波大学臨床医学系乳腺外科学講師、2004 年に助教授、2006 年 5 月に病院教授、2009 年筑波メデ
ィカルセンター・ブレストセンター長に就任。2010 年 4 月より筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科臨
床教授兼任。2012 年 4 月に筑波メディカルセンター病院専門副院長に就任した。2001 年から 2006 年まで国
際乳房超音波診断会議理事長を務め、海外での招待講演は 35 回。近年は、エラストグラフィの開発と臨床
的評価を行い、超音波医学会菊池賞、ME 学会新技術開発賞を受賞した。
【役 職】
国際乳房超音波診断会議前会長、JABTS 創設者・現在は顧問、日本乳癌学会元評議員、日本超音波医学
会元評議員、日本乳癌検診学会前監事、評議員、乳癌最新情報カンファランス前理事長、日本乳癌画像研
究会監事
― 46 ―
【オリジナルな業績】
乳癌超音波診断学の体系化、超音波誘導下動注化学療法、エラストグラフィの開発、
非触知乳癌の超音波誘導下生検の考案、保存的拡大乳房切除術の考案、
乳頭抜芯術、2×4 ランペクトミー
【著 書】
リアルタイム乳房超音波診断、乳癌の手術、実践乳房超音波、ULTRASOUND OF SUPERFICIAL
ORGAN、 Research and Development in Breast Ultrasound、
外科手術手技図譜、乳房超音波診断ガイドライン など。
【社会活動】
つくばピンクリボンの会理事長、熊野原人の会理事長(熊野の自然保護活動、和田川峡谷を県立自然公園
とすることに尽力)
【資 格】
1976 年 7 月
1990 年 12 月
1995 年 10 月
1995 年 12 月
1998 年 12 月
1998 年 2 月
1998 年 8 月
2003 年 4 月
2003 年 12 月
【学 位】
1995 年 7 月
2001 年 4 月
【職 歴】
1976 年 4 月 1 日
1976 年 5 月 24 日
1978 年 6 月 1 日
1979 年 4 月 1 日
1981 年 6 月 1 日
1982 年 4 月 1 日
1983 年 1 月 1 日
1986 年 5 月 1 日
1993 年 10 月
2001 年 4 月 1 日
2004 年 4 月 1 日
2004 年 6 月 16 日
2005 年 8 月 1 日
2006 年 5 月 1 日
2009 年 5 月
2010 年 4 月
2012 年 4 月
【学会活動】
医師免許取得、医籍登録(第 232871 号)
日本外科学会認定医(第 9012152 号)
日本超音波医学会専門医(第 FJSUM−124 号)
日本超音波医学会指導医(第 SJSUM‑117) 外国医師臨床修練指導医(第 2091 号)
日本乳癌学会認定医(第 920 号)
日本乳癌学会専門医(0251 号)
、
マンモグラフィ読影指導医(研 1‑174)
日本外科学会指導医(第 S006087)
博士(医学)(筑波大学:乙第 1117 号)
DIPLOMA AL MERITO(Ferrara 大学)
自治医科大学附属病院見学生
自治医科大学附属病院医員(研修医)
茅ヶ崎市立病院外科医員
自治医科大学附属病院医員
自治医科大学附属病院助手
藤間病院外科医員
筑波大学講師
同上の籍のまま英国 Royal Marsden Hospital にて共同研究
Advisory Board of International Breast Ultrasound School
東京医科大学客員助教授
筑波大学大学院人間総合科学研究科講師(名称変更)
筑波大学大学院人間総合科学研究科助教授
東京医科大学兼任助教授外科学担当
筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科病院教授の称号取得
筑波メディカルセンター・ブレストセンター長・部長
筑波大学附属病院臨床教授併任
筑波メディカルセンター専門副院長・筑波大学医学群臨床教授
現在に至る
1998 年~2004 年
2000 年 8 月
2001 年 4 月~2006 年
2000 年 5 月
2003 年 4 月 6~8 日
日本乳腺甲状腺超音波診断会議会長
日本乳癌学会国際委員会副委員長
国際乳房超音波診断会議会長
President of International Association for Breast Ultrasound
日本超音波医学会菊池賞受賞(組織弾性映像法の発明)
第 13 回国際乳房超音波診断会議主催
Chairman of 13th International Congress on the Ultrasonic Examination of the
Breast(国立京都国際会館)
― 47 ―
東北産婦人科乳腺医学会 Ⅱ 第 2 日目 6 月 7 日(日)第 2 会場 (翡翠の間) 14:10~15:00
座長:永瀬 智(山形大学 教授)
「乳がん検診におけるマンモグラフィと
超音波検査の総合判定」
演者:大貫 幸二(岩手県立中央病院 診療部乳腺外科長)
マンモグラフィ検診が世界的に普及していますが、特に米国ではマンモグラフィの精度が低い
dense breast 対策が問題になっています。超音波検査は dense breast においても十分な感度を示し、
日本では、マンモグラフィ検診において超音波検査の上乗せ効果を検討する無作為化比較試験(J‑
START)が行われ、超音波検査技師の育成と精度管理が日本乳がん検診精度管理中央機構(精中機
構)や関連学会によって進められています。
乳がん検診においてマンモグラフィと超音波検査を併用する際には、いくつかの方式が考えられ
ます。仙台市方式に視触診の代わりに超音波検査を導入する場合には、下記の方式が考えられます。
1)マンモグラフィ撮影施設で撮影されたフィルム、もしくはデジタルデータを持って受診者が検診
指定医療機関を受診(二施設方式)
2)医療機関では、医師がマンモグラフィを読影しながら超音波検査を行い、両者の所見とカテゴリ
ーを記載、記録する(同時併用方式)
3)マンモグラフィと医療機関の検診成績をセンターに集め、乳腺の専門家がマンモグラフィの二重
読影を行い、超音波検査結果を加味して最終判定を行う(総合判定方式)
同時併用方式の利点は、マンモグラフィが苦手とする高濃度部分を超音波検査で入念に観察する
ことによって、より感度の高い検診が出来るとともに、FAD でカテゴリー1か3かで迷う場合など
に、超音波検査で病変なのか正常乳腺なのかをその場で確認できる事などがあります。
総合判定方式の利点は、例えばマンモグラフィで境界明瞭平滑な腫瘤があってカテゴリー3の場
合でも、超音波検査で単純嚢胞ならば総合判定をカテゴリー2として、検診の段階で精検不要とでき
ることなどがあります。それぞれどちらかがカテゴリー3以上の場合を要精検とする方式(分離併用
法方式)に比べて、不要な精密検査を少なくする事が出来るので、現在問題となっている検診の不利
益を低減させることが出来ます。
超音波検査を導入する際には、体表の観察に適した超音波探触子を用意し、精中機構の開催する二
日間の超音波講習会を受講し試験で相応の成績を得るなどの精度管理が必要です。
仙台市の事情を聞くと、“サービス超音波”でマンモグラフィでは所見のない”視触診発見乳がん”が
少なからず存在すると聞きます。乳がん検診に参加している産婦人科医は、視触診の代わりに超音波
の探触子を握る事を検討して良いと考えています。
― 48 ―
大貫 幸二 (おおぬき こうじ)
【略 歴】
所 属:岩手県立中央病院
官 職:診療部乳腺外科長、医療情報管理部次長
昭和 56 年
群馬県立桐生高校卒
昭和 62 年
東北大学医学部卒、仙台市立病院外科研修
平成 元 年
東北大学医学部第二外科入局、乳腺グループ所属
平成 9 年
学位取得(乳癌検診の費用効果分析)
平成 16 年 4 月
東北大学病院乳腺内分泌外科講師
平成 16 年 10 月より岩手県立中央病院勤務
【所属学会等】
日本外科学会;指導医・専門医
日本乳癌学会;指導医・専門医・評議員・検診関連委員会委員
日本乳癌検診学会;理事・総合判定委員会委員長・研修委員会副委員長・全国集計委員会委員
日本乳腺甲状腺超音波医学会;理事・利益相反委員会委員長・第 35 回学術集会会長(平成 27 年9月)
日本乳がん検診精度管理中央機構;教育研修委員会委員・施設画像評価委員会委員
東北大学医学部臨床准教授(乳腺内分泌外科)
【主な著書】
1.大貫幸二:BI‑RADS 第5版と日本のマンモグラフィガイドラインの比較−両者の考え方と読影用語
の差異−。乳癌 BOOK2014(RadFun7月臨時増刊号)
、メディカルアイ、東京、2014、pp27‑30
2.大貫幸二:検診マンモグラフィ・超音波検査における総合画像診断。これからの乳癌診療 2013‑2014、
金原出版、東京、2013、pp17‑23
3.大貫幸二:3画像診断、D. CT。乳腺腫瘍学、日本乳癌学会編、金原出版、東京、2012、pp107‑109
4.大貫幸二:乳癌検診。非浸潤性乳管癌のすべて、秋山太(編)
、篠原出版社、東京、2010、pp10‑20
5.石山公一、大貫幸二、他:マンモグラフィのあすなろ教室。秀潤社、東京、2007
【主な論文】
1.大貫幸二:マンモグラフィ検診を補う他のモダリティの可能性。乳癌の臨床、30(1):15‑22、2015
2.大貫幸二、他:マンモグラフィと超音波検査の総合判定マニュアル。日乳癌検診学会誌、23(1):33‑36、
2014
3.大貫幸二、他:岩手県における乳癌検診の精度管理と精密検査態勢への取り組み。日乳癌検診学会
誌、22(1):24‑30、2013
4.大貫幸二、他:マンモグラフィと超音波検査の併用検診における総合判定基準。日乳癌検診学会誌、
21(3):273‑279、2012
― 49 ―
一 般 演 題
1.流産手術後に増大する絨毛組織を認めた帝王切開瘢痕部妊娠の1例
○嶋田 未知、我妻 理重、亀田 里美、松本 大樹、星合 哲郎
大崎市民病院
【緒言】近年、帝王切開率の上昇に伴い、帝王切開瘢痕部妊娠(cesarian scar pregnancy;CSP)の症例が増加している。
CSP は瘢痕部に着床した異所性妊娠を指し、大量出血や子宮破裂のリスクを伴う。今回我々は稽留流産に対する流産
手術施行後に増大する絨毛組織を認め、CSP の胎盤遺残であった症例を経験したので報告する。
【症例】30 代、5 経
妊 3 経産(自然経腟分娩 2 回、帝王切開 1 回)。稽留流産に対する子宮内容除去術を施行。病理結果は脱落膜細胞や血
液成分であり、悪性所見は認められなかった。その後約 1 か月間性器出血が持続し、1 か月後も β‑HCG42.7mIU/ml
と低下不良であった。エコーにて子宮頸部に 3㎝大の mass が認められ、絨毛性疾患が疑われたため 10 日後に当科
紹介受診。mass は 4㎝大に腫大し、HCG3840mIU/ml と高値であった。流産手術後に絨毛組織が子宮筋層内で増殖
するという臨床経過より侵入奇胎や PSTT なども疑われたが、妊娠初期のエコー画像より CSP が強く疑われた。本
人の希望で子宮全摘術が行われ、摘出子宮の病理結果は CSP として矛盾せず、悪性所見は認められなかった。
【結語】
今回の症例では臨床経過から胎盤遺残以外の絨毛性疾患も疑われた。これら疾患の確定診断には組織所見が必要と
なってくるため、子宮温存を希望された場合は絨毛癌診断スコアを参考にして治療方法を決定していくこととなる。
しかし妊娠初期のエコー画像を確認することで CSP として子宮全摘術の方針を決定するに至った。CSP を疑うこと
の重要性を再認識した一症例であったため、文献的考察を加え報告する。
2.腹腔鏡下手術にて治療した副角妊娠の一例
○吉田 美帆1)、早坂 真一2)、鏡 友里恵2)、柿坂はるか2)、吉本 知子2)、鈴木 弘二2)
、
2)
2)
小林 正臣 、田野口孝二
1)岩手県立中部病院 2)東北公済病院
【緒言】副角妊娠は妊娠 76,000~150,000 例に1例と稀な疾患である。放置すると約半数が破裂に至り、その場合
の母体死亡率は 5.1%と高い死亡率の報告がある。今回我々は、未破裂の副角妊娠を MRI にて診断し、腹腔鏡下に切
除した症例を経験したので報告する。
【症例】20 歳 0 経妊 0 経産。既往歴、家族歴に特記事項なし。人工妊娠中絶
目的に前医を受診したが、D&C 困難であり子宮奇形の診断で、当科紹介となった。来院時の経腟エコーでは、内膜
が肥厚した正常大の子宮の右側に筋層に囲まれた胎嚢を認め、内部に CRL9.5㎜と 7 週相当の胎児が確認された。ま
た、経腹エコーでは右腎臓が描出できず、右腎の欠損が疑われた。副角妊娠を含めた異所性妊娠を疑い、MRI 検査
を施行。副角妊娠と診断し、腹腔鏡下副角切除術を施行した。術後経過は良好で術後 5 日目に退院となった。
【考察】
未破裂の副角妊娠の診断は困難であるが、子宮奇形は同側の尿管、腎奇形を伴うことがあるため、本症例のように経
腹エコーで腎臓を確認することは診断の一助となると考えられた。また、副角妊娠はその死亡率の高さから妊娠の継
続は危険であり、手術による副角切除が原則だが、標準的な術式は確立されていない。腹腔鏡手術は低侵襲で診断と
治療を同時にできるため、未破裂副角妊娠の第一選択として推奨される治療法であると考える。
― 52 ―
3.診断に苦慮した異所性妊娠の一例
○大石 舞香、船水 文乃、飯野 香理、福井 淳史、水沼 英樹
弘前大学
【緒言】副角妊娠は総妊娠数の 0.007~0.008%、総異所性妊娠数の 0.24~0.6%にみられると報告される。今回非常
に稀な副角妊娠の 1 例を経験したので、報告する。
【症例】33 歳女性、2 経妊 1 経産。非交通性の副角を有する単角
子宮あり。無月経を主訴に当科を受診。最終月経から妊娠 5 週 5 日、血中 hCG は 7.685mIU/mlであったが、子宮
内に胎嚢を確認できず、異所性妊娠疑いとして同日入院管理とした。入院後、血中 hCG は上昇傾向であったが、無
症状で経過し、6 週 0 日、右副角と思われる部位に胎嚢を確認した。7 週 0 日、hCG49.538mIU/ml、腹腔内に液
体貯留を認めたため、緊急 MRI を施行。緊急 MRI の画像では、右卵管妊娠の可能性も否定できず、同日緊急手術を
施行した。最終診断は右副角妊娠であり、腹腔鏡下に右副角、右卵管切除術を施行した。
【結語】破裂時は母体にと
っても致死的となりうる異常妊娠であり、非常に稀で、画像診断が難しい疾患ではあるが、早期診断、治療が望まし
く、またその治療法については慎重に判断する必要があると考えられた。
4.腹腔鏡下に摘出した卵巣固有靭帯内妊娠の一例
○鈴木 聡子、高橋 俊文、長谷川歩美、山内 敬子、小幡美由紀、網田 光善、小島原敬信、
五十嵐秀樹、永瀬 智
山形大学
【はじめに】今回、右卵管妊娠の術前診断で腹腔鏡を行ったところ、卵巣固有靱帯内の異所性妊娠を経験したので報
告する。
【症例】27 歳未経妊。既往歴に特記事項なし。無月経を主訴に近医を受診、妊娠反応陽性、最終月経から妊
娠 5 週 5 日、子宮内に胎嚢を認めず、妊娠 7 週 2 日、自然流産の診断。妊娠 10 週 0 日、基礎体温が高温相のため
前医を受診。尿中 hCG 9,554 mIU/ml、子宮内に胎嚢を認めず、異所性妊娠の疑いにて当科紹介となった。経腟超音
波で子宮右側に 25 mm の嚢胞性の腫瘤、内部に 9 mm の胎嚢様エコー像を認めた。血中 hCG は 13,900 IU/ml であ
った。右卵管妊娠の診断で腹腔鏡下手術を施行すると、腹腔内には出血を認めず、右卵巣固有靭帯に母指頭大の腫瘤
を認めるほか、左右の卵管、卵巣、腹腔内には異常所見を認めなかった。右卵巣固有靱の腫瘤部位にバソプレシンを
局所注射後、切開し内容を摘出。摘出物内には肉眼的に絨毛を確認した。病理標本は絨毛組織を認めた。血中 hCG
値は順調に低下し術後 8 日に退院した。術後に子宮卵管造影検査を施行し、子宮内腔に異常所見を認めなかった。
【考察】我々の調べた限り、卵巣固有靱帯内へ着床したとする異所性妊娠の報告例はなかった。着床機序として、腹
膜を経由した経路や異所性卵巣妊娠などの可能性も考えられ、非常に興味深い症例であった。
― 53 ―
5.産褥期に卵巣静脈血栓性静脈炎を発症した一例
○渡邉 憲和、堤 誠司、榊
永瀬 智
山形大学
宏諭、山内 敬子、小幡美由紀、網田 光善、吉田 隆之、
【緒言】産褥期の卵巣静脈血栓性静脈炎は比較的稀な疾患で、600~2000 分娩に 1 例とされている。今回我々は、産
褥期に発熱と腹痛を訴え、卵巣静脈の血栓性静脈炎と診断した 1 例を経験したため報告する。
【症例】症例は 33 歳、
4 経妊 1 経産。前医で妊娠・分娩管理を行っており、妊娠中は妊娠糖尿病を指摘されたが、食事療法のみでコントロ
ールは良好であった。妊娠 40 週 3 日に陣痛発来で入院し、自然分娩した。分娩直後から右下腹部痛を訴え、産褥 2
日に 39℃台の発熱を認めた。造影 CT で右卵巣静脈の拡張とその内腔の血栓を指摘され、右卵巣静脈の血栓性静脈
炎が疑われた。抗菌薬およびヘパリンの投与を開始したが、血液検査所見の増悪と血圧低下があり、産褥 3 日に当
院へ搬送された。当院来院時には血圧 80/40 mmHg 程度であり、経過から敗血症性ショックが疑われた。補液と抗
菌薬、ヘパリンの投与による治療を行い、全身状態の改善を認めた。
【考察】卵巣静脈の血栓性静脈炎は稀であるが、
産褥期の発熱および腹痛の原因として重要な疾患である。80~90%が右卵巣静脈に発症するため右下腹部痛を訴え
ることが多く、虫垂炎や卵巣腫瘍茎捻転等、他疾患との鑑別が重要である。診断には超音波断層法、CT、MRI とい
った画像診断が有用である。治療は抗菌薬の投与と抗凝固療法を行い保存的に治療することが多いとされているが、
治療に抵抗する場合には外科的疾患も考慮される。
【結語】我々は、産褥期に発症した右卵巣静脈の血栓性静脈炎の
一例を経験した。産褥期に発熱と右下腹部痛を訴える場合、血栓性静脈炎も鑑別疾患として考慮するべきと考えられ
た。
6.産後子宮出血をきたした Placental site subinvolution の一例
○西村 杏子、池田 美智、木村 和彦
米沢市立病院
【緒言】産後 24 時間以降の出血は産褥晩期出血と定義される.通常、螺旋動脈は妊娠初期に絨毛外トロホブラスト
の浸潤によって拡張し、妊娠の終了に伴い退縮する.Placental site subinvolution は産後の螺旋動脈退縮不全であり、
産褥晩期出血の原因となる.今回、産後に子宮出血をきたし、子宮穿孔のため子宮全摘術を施行し病理組織学的検査
で Placental site subinvolution と診断された一例を報告する.
【症例】31 歳、3 経妊 3 経産.妊娠 41 週 0 日に自然
分娩、その後一度大量性器出血をきたしたが自然に止血した.一か月健診時に経腟超音波で子宮内に腫瘤性病変を認
め、胎盤遺残が疑われた.胎盤鉗子で除去を試みたが、処置後に下腹部痛と持続的性器出血、腹腔内の液体貯留を認
めた.子宮穿孔の疑いで当院に搬送された.造影 CT で子宮穿孔と腹腔内出血が疑われ緊急手術を施行した.左卵管
角付近に約 2 cm の子宮壁欠損を認め、子宮穿孔と診断した.縫合止血を試みたが子宮筋層が脆く止血困難と判断
し、子宮全摘術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査により Placental site subinvolution と診断された.
【考察】
Placental site subinvolution は臨床症状と病理組織学的所見から診断される病態である.本症例のように産後に血流
を伴う子宮内腫瘤を認める症例は散見されるが、病理組織学的所見がなければ確定診断はできない.
【結語】産褥晩
期出血や血流を伴う子宮内腫瘤を認めた際には Placental site subinvolution の可能性ある.大出血の危険があるた
め、安易な子宮内操作は控えるべきである.
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7.Wunderlich 症候群に対する Minimally Invasive Laparoscopic Surgery
○菅野 潔、鈴木 和夫、大和田真人、鈴木 博志
寿泉堂綜合病院
【緒言】Wunderlich 症候群は先天性子宮奇形を伴う稀な疾患であるが、未治療のまま経過すると慢性骨盤痛や不妊症
などの症状を呈することがあるため早期の診断と治療介入が重要である。これまでにも腹腔鏡下副角切除術の報告
は散見されるが、多くは若年者であるため低侵襲かつ整容的で将来の妊孕性をも充分に考慮した手術が合理的であ
る。今回我々は、これらを踏まえた新たなアプローチによる腹腔鏡下手術を行ったので報告する。
【症例】21 歳、1
経妊1経産。月経困難症を主訴に当科を受診され、経腟超音波検査・MRI で非交通性右副角を伴う左単角子宮・右
腎無形成・右卵管留血腫を認め、子宮内膜症を伴う Wunderlich 症候群と診断した。経腟的開窓術も考慮されたが、
再狭窄の可能性と子宮内膜症を考慮し腹腔鏡下手術を行う方針となり、単孔式腹腔鏡下右副角切除術、右卵管切除
術、癒着剥離術を行った。右付属器周囲にはフィルム状の癒着を認め卵管采は完全閉塞し r‑ASRM StageⅢの子宮内
膜症を伴っていた。後腹膜腔を展開し右子宮動脈の走行を確認すると、子宮動脈本幹は単角子宮側へ流入し、副角は
上行枝により栄養されていたため、これを選択的に切断し出来る限り単角子宮への血流を温存した。また副角と単角
子宮との間は fibrous band で結合しており、単角子宮筋層を損傷しないようにこれを切除した。最後に円靱帯と腹
膜を縫合・再建し手術終了とした。摘出物は臍創部より細片せずに回収できた。術後経過は良好である。
【結語】副
角を切除する際は、その支配血管や残存子宮筋層へのダメージ、子宮内膜症の重症度までをも充分に考慮して行う手
術がʻminimally invasive surgeryʻであると考える。
8.術後腹壁子宮内膜症の一例
○池田 美智、木村 和彦、西村 杏子
米沢市立病院
【緒言】皮膚子宮内膜症は、全子宮内膜の中でも 1.9‑2.6%と稀な疾患である。術前診断は困難であるため、基本的に
は診断と治療のために外科的切除が行われる。今回我々は、術後に生じた腹壁子宮内膜症の一例を経験したので報告
する。
【症例】37 歳、3 経妊 3 経産、30 歳時に帝王切開、31 歳時に子宮筋腫核出術の既往がある。最終開腹手術か
ら約 5 年経過した後に下腹部正中切開創右側の疼痛を主訴に当科受診した。MRI で右卵巣内膜症性嚢胞と腹壁デス
モイド腫瘍の疑いと診断された。鎮痛剤の使用にも関わらず疼痛が増悪したため手術を施行した。腹壁腫瘍切除術と
右付属器摘出術を施行した。腫瘍は腹直筋内に存在し正中の手術瘢痕と強固に癒着していた。肉眼的に周囲への浸潤
は認めなかった。病理組織学的検査では腹壁腫瘤は子宮内膜症組織であった。術後 7 か月経過するが再発徴候は認
めていない。
【考察】皮膚子宮内膜症は全子宮内膜症の中では稀であり、ほとんどは腹壁に発症する。手術瘢痕部発
生が多く、既往手術は産婦人科系手術が 9 割を占める。発生機序は機械的移植説がある。自覚症状は局所の疼痛が
ほとんどであり、月経随伴症状を生じる症例は 4 割程度である。診断は超音波検査や MRI 検査があるが補助診断で
あり、最終的には外科的切除による病理組織診断が行われる。鑑別疾患にはデスモイド腫瘍や Schloffer 腫瘤が挙げ
られる。再発例は子宮内膜症の残存が疑われる症例であり、十分なマージンをとり切除することが重要である。
【結
論】婦人科術後の腹壁腫瘤は腹壁子宮内膜症も鑑別におき、外科的切除を行うことが重要である。
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9.生殖補助医療に関連した卵管卵巣膿瘍の2例
○深瀬 実加、五十嵐秀樹、榊
山形大学
宏諭、渡邉 憲和、網田 光善、高橋 俊文、永瀬 智
【緒言】生殖補助医療は採卵など侵襲的な処置を必要とする。よって、チョコレート嚢胞合併、骨盤内炎症性疾患
(PID)既往症例では PID 発症リスクが増加し、治療中に卵巣卵管膿瘍(TOA)を含めた PID となる症例が少なから
ず存在する。我々は不妊治療中に難治性 TOA を発症した2例を経験したので報告する。
【症例1】41 歳、1 経妊 0
経産。両側チョコレート嚢胞の合併あり。近医で体外受精・胚移植を行ったが、採卵 39 日目に腹痛と発熱を認め、
前医受診。TOA と診断され、長期間の抗菌薬投与により症状と炎症所見は改善した。今後の管理目的で当科紹介と
なった。紹介時、炎症所見軽微であったため経過観察となったが、症状再燃し入院となった。妊孕性温存希望が強く
抗菌薬投与を行ったが無効であり、開腹手術を行った。開腹時、子宮、子宮付属器、腸管の高度な癒着を認めたため、
膿瘍除去とドレーンの留置のみを行った。術後は症状改善し、術後 15 病日目で退院となった。
【症例2】38 歳、未
経妊。左チョコレート嚢胞の合併あり。当院で体外受精を行ったが、採卵 11 日後より腹痛と発熱あり受診となる。
TOA を伴う PID と診断された。抗菌薬で症状軽快し、一旦退院となるが症状再燃あり再入院となった。抗菌薬で症
状は改善したが、再発、難治性を考慮し患側子宮付属器摘出術を施行した。術後経過は良好で術後 10 病日目で退院
となった。
【結語】高リスク患者では PID 発症を念頭においた不妊治療が必要である。不妊症症例では重症 PID であ
っても妊孕性温存のため、保存的治療を選択する場合があるが、無効例や症状が再燃する場合は時期を逸さない手術
の必要性がある。
10.子宮鏡下手術における支持鉗子の使用経験
○土岐 麻実、宇賀神智久、渡辺 正
NTT 東日本 東北病院
子宮内膜ポリープや子宮粘膜下筋腫は過多月経や不正性器出血、不妊症の原因となり、女性の QOL をしばしば低
下させる。当院では自他覚症状の改善や妊孕能改善を目的としてこれらの子宮内腔病変に対する子宮鏡下手術を積
極的に行っている。
子宮鏡による手術操作は、ループ電極による腫瘤の切開・剥離と腫瘤の体外への搬出に大別される。どちらの場合
でも目的とする操作を十分に行うことができない結果として不必要に正常子宮内膜を損傷する恐れもあり、挙児希
望を有する症例ではより慎重な操作が求められる。我々はストルツ社製 hysteroresectscope を使用しているが、昨
年から支持鉗子を導入しており、現時点で 10 症例に使用したため、その経験について報告する。
支持鉗子は先端が単鉤鉗子に似た形状をしており、hysteroresectscope の外管と組み合わせて使用する。最大のメ
リットは鏡視下に確認しながら適切な部位を選択して組織を把持できることである。粘膜下筋腫においては、体外へ
の搬出操作は、経腹超音波断層装置の監視下に胎盤鉗子などを用いて行うこともしばしばあるが、支持鉗子を使用し
た場合は鏡視下の把持牽引だけでなく捻転の動作を加えることで内膜の損傷を最小限に筋腫核出が可能である。ま
た、核出まで至らずとも筋腫を筋層内から内腔へ移動させることができ、ループ電極と胎盤鉗子のみでは完全切除が
困難な底部筋腫でも完全に切除できる可能性がある。支持鉗子は、先端が外套から出ている構造であるため、挿入の
際細心の注意を払う必要があるが、特に挙児希望を有する症例において有用なデバイスであると考えられる。
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11.膀胱子宮内膜症の一例
○横山 沙織、松田 尚美、須藤 円
気仙沼市立病院
【緒言】種々の臓器に子宮内膜症が発生することは知られているが、尿路への発生は稀であり、子宮内膜症全体の
1~2%であるといわれている。今回、月経困難症の外来管理中に健康診断にて血尿を指摘され、膀胱子宮内膜症と診
断された 1 例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。
【症例】39 歳、0 経妊 0 経産、未婚。38 歳より
不正性器出血、月経困難症を主訴に当科を初診し、低容量ピル内服にて 3 ヵ月毎の外来管理を行っていた。翌年、近
医での健康診断にて血尿がみられ、経腹超音波検査を施行、3cm 大の膀胱腫瘍および左水腎症が認められた。当院
泌尿器科を紹介され、精査したところ、MRI 検査にて上記所見の他に左卵巣チョコレート嚢胞が疑われ、当科紹介
となった。経腟超音波検査にて、初診時にはみられなかった左卵巣チョコレート嚢胞を認めた。左卵巣腫瘍と膀胱腫
瘍の間に連続性はないが、膀胱子宮内膜症は否定できないと考えられた。泌尿器科にて膀胱鏡下腫瘍生検を行い、病
理検査にて膀胱子宮内膜症の診断となった。Gn‑RH‑agonist の投与に引き続き、ジェノゲストの投与を行い、血尿お
よび膀胱炎症状の再発なく経過している。
【考察】本症例では、外来管理中より月経期間の膀胱炎症状を認めていた。
膀胱子宮内膜症の可能性を念頭に置いた診察を行うことで、早期発見および治療をし得た可能性がある。また、膀
胱・尿管発生の子宮内膜症は、薬物療法に対する反応性が低く、根治が難しいと言われている。挙児希望のある症例、
薬物療法に抵抗性の症例では、泌尿器科医と連携をとり、手術療法を含めた治療計画を立てる必要性がある。
12.鼠径部に発育した性腺外卵黄嚢腫瘍の1例
○田村 大輔、清水 大、佐藤 直樹、木藤 正彦、牧野 健一、佐藤 敏治、寺田 幸弘
秋田大学
【諸言】卵黄嚢腫瘍(Yolk sac tumor:YST)は若年に好発する稀な悪性胚細胞腫瘍である.YST の大半は性腺より発
生し、性腺外からの発生も 10%程度認められる.我々は、子宮円索原発と臨床診断した YST の 1 例を経験したので
報告する.
【症例】31 歳、3 妊 2 産.6 か月前より増大する左鼠径部腫瘤を主訴に前院外科を受診した.鼠径ヘルニ
アの術前診断にて手術が施行された.鼠径管を解放した際、子宮円索が充実性腫瘤として約 6cm に腫大しており、部
分切除術が施行された.AFP 値は術前 24790 ng/ml と著明高値であり、術後は 862 ng/ml と低下を認めたもの正常
化は得られなかった.術後の病理評価にて卵黄嚢腫瘍と診断され、当科に紹介された.CT、MRI にて 5cm 大の右卵
巣腫瘍(成熟嚢胞性奇形腫)
、左鼠径腹壁下に数珠状に残存する約 3cm 大の腫瘤を認めた.妊孕性温存の希望はなく
原発巣不明のため、腹式内性器摘出術、鼠径部腫瘤摘出術を適応した.病理評価にて子宮、両側付属器には悪性腫瘍
を認めず、鼠径部病変にのみ卵黄嚢腫瘍の残存を検出した.性腺外卵黄嚢腫瘍(鼠径管内の子宮円索原発)の臨床診
断に至り、化学療法(BEP 療法)施行中である.
【考察】YST は、腫瘍性の胚細胞が卵黄嚢に分化し AFP を産生する
腫瘍である.女性 YST の多くは卵巣より発生するが、卵巣外の発生部位としては、縦隔、仙尾骨領域、子宮、外陰、
後腹膜、大網などが報告されている.性腺由来の YST は化学療法が有効とされているが性腺外原発は稀であり、臨
床像は明らかでない.慎重な管理と厳重な観察が必要と考えており、貴重な経験としてここに報告する.
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13.Office gynecology における粘膜下筋腫に対するマイクロ波子宮内膜アブレーシ
ョンによる過多月経治療の検討
○津田 晃
山王レディースクリニック
【目的】4-7cm の粘膜下筋腫によって生じる過多月経に対して、マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)と経
頸管的マイクロ波筋腫融解術(transcervical microwave myolysis :TCMM)の併用治療が、office gynecology におけ
る日帰り治療として有用性か否かについて検討した。【対象・方法】当院でマイクロ波治療を受けた最大径が
4-7(平均 5.5)cm の単一の粘膜下筋腫をもつ 35 例(平均年齢 44.8 歳)を対象にした。全例に MEA に TCMM を併用
した。TCMM は先端を円錐形に加工した子宮用マイクロ波アプリケーターを使用し、経腹超音波ガイド下に 1 回
70W、50 秒の条件で焼灼した。TCMM 施行に際しては患者の同意を文書で得て行った。麻酔は硬膜外麻酔を行い、
全例日帰り手術で行った。
【成績】全例日帰りで治療を行った。平均手術時間は 27.8 分であった。貧血は術後 3 ヶ
月で有意に改善した(10.2 vs 12.7 g/dl; p<0.001)。筋腫の経時的収縮率は、3 ヶ月で平均 56.2%、≧6 ヶ月で 72.5%
(P<0.001) であった。術後 3 ヶ月で月経量が 1/5 以下 (VAS<3) に減少した著効例は 28 例(80%)であった。また、
また満足度(VAS 満点 10)は平均 9.8 であった。
【結論】4-7cm の単一の粘膜下筋腫に対して TCMM を併用した
MEA は有用であり、過多月経患者の閉経周辺期の子宮摘出術の代替療法となり得ると考えられた。また、office gy‑
necology における日帰り治療が可能であると考えられた。
14.外陰癌 IVb 期に対し化学同時放射線療法を行った1例
○太田 圭一、二神 真行、重藤龍比古、横山 良仁、水沼 英樹
弘前大学
【はじめに】外陰癌は婦人科がんの中で 4 番目に位置する。しかし日常臨床では少ない疾患で治療には難渋すること
が多い。我々は外陰癌 4b 期症例に対し化学同時放射線療法を行い良好な経過をたどった症例を経験したので報告
する。
【症例】62 歳女性。糖尿病、妄想性障害で治療中。2 年前から外陰部痛があり、近医で診察をうけたが初回以
降は診察を拒否していた。外陰部痛増強と尿漏れを主訴に近医を受診したところ外陰部腫瘍を認め、前医を紹介。前
医初診時に最大径 6cm の外陰部腫瘍を認め、膣、尿道への浸潤と膀胱膣瘻を認めた。組織診で扁平上皮癌、血清 SCC
値は 29.9ng/ml と上昇していた。CT 検査では腫瘍の浸潤以外に両肺の結節陰影、両鼠径及び左外腸骨リンパ節腫
大、左下肢深部静脈血栓症、肺塞栓症を認めた。CT 検査後当院での治療依頼があり、外陰癌 4b 期、血栓症例とし
て同日緊急入院。下大静脈フィルターを留置し、抗凝固療法を開始した。また高カルシウム血症も認めゾレドロン酸
水和物の点滴も施行した。当院では外陰癌治療として化学療法同時放射線療法を行っており、本人家族の同意のもと
治療を開始した。癌性疼痛に対しては緩和ケアチームに依頼しオピオイドの内服、主治療の経過とともに疼痛や腫瘤
縮小という治療効果が得られた。放射性皮膚炎以外の副作用はなく、放射線療法は全骨盤、外陰部、両側鼠径リンパ
節に計 50Gy の照射を行い、抗がん剤はネダプラチン 30mg/m2 を 6 クール施行した。外陰部腫瘍は消失した。糖尿
病のコントロールも良好で、治療後は療養目的に前医へ転院した。
【まとめ】外陰癌の標準的治療は手術であるが、合
併症が多い症例では化学療法同時放射線療法が有用な治療選択肢の一つと思われる。
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15.進行・再発卵巣癌に対する Bevacizumab の使用経験
○城 伶史、徳永 英樹、櫻田 尚子、田中 創太、海法 道子、新倉 仁、渡部 洋、
八重樫伸生
東北大学
【目的】2013 年 11 月より抗 VEGF ヒト化モノクローナル抗体である、bevacizumab(Bev)が卵巣癌・卵管癌・腹膜癌
に対しても適応拡大となった。ただし、海外の臨床試験では結果が得られているものの、本邦における Bev の有効
性と安全性については、まだ明らかとはなっておらず、今回当院における Bev の使用状況を報告する。
【方法】当院
で 2013 年 11 月以降に、文書によるインフォームドコンセントを行った上で、抗がん剤と併用して Bev を使用した
Ⅲ期以上の初発の進行卵巣癌、もしくは再発症例について、後方視的に検討した。
【結果】2013 年 11 月~2014 年
3 月までに Bev を使用した症例は 8 例で、初発症例が 3 例(1 例は腹膜癌)
、再発症例が 5 例であった。年齢の中央
値は 57 歳(41~75)、PS は 0~1 であった。組織型は漿液性腺癌が 5 例、明細胞腺癌が 2 例、類内膜腺癌が 1 例で
あった。併用レジメンは TC が 6 例、GC が 1 例、Gemcitabin 単剤が 1 例であった。Bev 開始後の観察期間中央値は
5 ヶ月(1~8 ヶ月)で、Bev 投与回数の中央値は 6 回(2~13)であった。RECIST で評価可能の症例は 5 例で、全例が SD
であった。また、初発症例では 3 例とも Bev 最終投与日の時点で,再発もしくは増悪は認めなかった。Bev との関
連性が疑われる有害事象は、高血圧症が 2 例、尿蛋白が 2 例、動脈血栓症が 1 例であった。
【結論】今後の Bev の有
効性と安全性の検討のため、更なる症例の蓄積が望まれる。
16.ホルモン補充療法開始後1年で子宮体癌を発症した一例
○安藤 麗、山谷 日鶴、成味 恵、榊
永瀬 智
山形大学
宏諭、渡邉 憲和、網田 光善、高橋 一広、
有子宮者に対するホルモン補充療法(HRT)では、子宮内膜癌を予防する目的でエストロゲンにプロゲスチンの併用
が必要である.また、ホルモン補充療法ガイドラインにおいて、HRT を施行するときは、施行前に子宮内膜細胞診
を行うこと、また施行中は 1 年ごとに子宮内膜細胞診を行うこと、とされている.今回、HRT を開始してから約 1
年で子宮体癌を発症した例を経験したので報告する.
【症例】52 歳、1 経妊 1 経産、閉経 48 歳、BMI 24.7.50 歳
時にホットフラッシュ、うつ症状を主訴に前医を受診した.経腟超音波検査で子宮内膜は 7.6 mm とやや肥厚してい
たが、不正出血はなく、子宮腟部細胞診は NILM、子宮内膜細胞診は陰性であった.エストロゲン貼付剤とジドロゲ
ステロン 5 mg/日の、持続的併用投与法による HRT を開始した。HRT 開始後も不正出血は認めなかった.HRT 開始
1 年後に再度診察したところ、子宮内膜は 7.5 mm であり、子宮内膜細胞診は陽性、子宮内膜全面組織診で類内膜腺
癌 G2 のため当院紹介となった.子宮体癌の診断で手術を施行し、子宮体癌 ⅠA 期、類内膜腺癌 G2 の最終診断とな
った.
【考察】産婦人科診療ガイドライン上、不正出血があり、子宮内膜が 5 mm 以上の場合、子宮内膜病変を疑い、
内膜組織検査が必要とされている.しかし、閉経後に不正出血がなく、子宮内膜細胞診が陰性であっても、子宮内膜
が肥厚している場合は、内膜組織診、および綿密な経過観察が必要と考えられた.
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17.高度扁平上皮化生により SCC が異常高値を示した子宮体部類内膜腺癌の一例
○松川 淳、高橋 俊文、山内 敬子、山谷 日鶴、太田 剛、小島原敬信、高橋 一広、
永瀬 智
山形大学
【緒言】子宮体部類内膜腺癌の約 25%に扁平上皮化生を伴うことが知られている。今回、高度な扁平上皮化生により
SCC が異常高値を示したと考えられる症例を経験したので報告する。
【症例】90 歳、未経妊。3 年前に子宮留膿症と
子宮内腫瘤性病変の精査で内膜掻把を行ったが、悪性所見を認めなかった。今回、不正性器出血を主訴に受診。腟鏡
診で腟内に母指大の腫瘍を認めた。経腟超音波断層検査、MRI 検査で腟内の腫瘍は子宮内腔から連続しており、拡
散強調画像で軽度高信号であったが、筋腫分娩が疑われた。子宮腟部細胞診は NILM。腫瘍の生検で squamous pa‑
pilloma の診断であった。CA125、CEA、CA199 は正常範囲内であったが、SCC が 31.7 ng/ml と異常高値を示した。
PET/CT を撮影したところ、腫瘍に FDG の高度集積を認め、子宮悪性腫瘍が疑われた。90 歳と高齢であったが、出
血が持続しており手術を行う方針とし、子宮全摘術および両側付属器摘出術を施行した。病理組織診断は、筋層浸潤
1/2 以下で、高度な扁平上皮化生を伴った類内膜腺癌(G1)であった。術後 7 日目に SCC はカットオフ値以下に低
下した。
【考察】子宮体部類内膜腺癌に扁平上皮化生を伴うことは稀ではないが、本症例のように SCC が異常高値を
示した報告はない。本症例は腟内に突出した部分はすべて扁平上皮化生部分であり、さらに MRI 検査でも積極的に
悪性所見が疑われなかったため、PET/CT 検査が術前診断に有効であった。高齢の子宮留膿症患者を診察する際に
は、悪性腫瘍が合併することを念頭に置いて診療にあたる必要がある。
18.子宮体癌に対する術後 DC 療法の治療成績
○鈴木百合子、太田 剛、深瀬 実加、榊
永瀬 智
山形大学
宏諭、清野 学、成味 恵、須藤 毅、
【目的】再発の危険因子を有する子宮体癌症例に対して、術後化学療法の治療効果は認められているものの、投与薬
剤については一定の見解を得ていない。子宮体癌術後のドセタキセル+カルボプラチン併用療法(DC 療法)の治療効
果について検討する。
【方法】2006~2012 年、当科での初回手術後に術後 DC 療法を施行された子宮体癌 55 症例
を対象とし、無増悪生存期間、全生存期間、有害事象の発生率を検討した。
【結果】対象症例の年齢の中央値は 60 歳
(38~82 歳)、Ⅰ期は 31 例(56%)、Ⅱ期は 12 例(22%)、Ⅲ期は 8 例(15%)、Ⅳ期は 4 例(7%)、術後 DC 療法は全 6
コース施行し、治療完遂症例は 47 例(85%)、観察期間の中央値は 1127 日(128 日~2288 日)であった。観察期間中
の再発を 4 例(7%)、原病死を 4 例(7%)に認めた。無増悪生存期間の中央値は 1012 日(128 日~2288 日)、全生存
期間の中央値は 1127 日(128 日~2288 日)であった。骨髄抑制に関連する有害事象の発生に関して、Grade 3 また
は 4 の好中球減少を全 55 例に認め、発熱性好中球減少症は 14 例(25%)に認めた。タキサン製剤の特徴である神経
障害性有害事象の発生に関しては、Grade 2 または 3 の末梢性感覚性ニューロパチーを 2 例(4%)に、四肢疼痛を 3
例(5%)に認めたのみで、その発生率は低かった。
【結論】子宮体癌に対する術後 DC 療法は、治療効果、および、有
害事象の発生率において他の薬剤と同等の成績を示しており、有用な治療法であることが示唆された。
― 60 ―
19.画像診断にて線維腫が疑われたが明細胞癌を認めた遺伝性乳癌卵巣癌症候群の1例
○目黒 啓予、山口 明子、田中 幹夫
太田西ノ内病院
【諸言】遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndrome;HBOC)は BRCA1/2 の生殖細
胞系列に病的変異を有する乳癌や卵巣癌の易罹患性腫瘍症候群である。BRCA2 変異保有者の 70 歳での卵巣癌の累
積罹患リスクは 11-18%とされ、その 70%が漿液性腺癌であり明細胞癌は少ないとされている。今回、画像診断
上悪性が疑われなかったが、明細胞癌を認めた HBOC の一例を経験したので報告する。
【症例】58 歳、既往歴とし
て 45 歳で乳癌に対し乳房切除施行。家族歴として娘が乳癌治療中である。娘が BRCA2 変異を認めたため、症例に
も BRCA 検査施行し同様の変異を認め遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診断となる。検診で前医受診した際に、超音波検査
にて子宮筋腫もしくは卵巣腫瘍を指摘され当科紹介。MRI 上は最大横径 8.3cm 大の変性漿膜下筋腫もしくは線維腫
または莢膜細胞腫疑われる卵巣腫瘍を認め手術の方針となる。遺伝子外来受診され、悪性腫瘍を考慮し単純子宮全摘
術+両側付属器摘出術施行。病理診断は明細胞癌であった。現在は術後化学療法として、TC 療法施行中である。
【考
察】HBOC における卵巣癌では漿液性腺癌が特徴的であるとされており、明細胞癌は約 2%と比較的稀と報告されて
いる。HBOC 患者では、良性腫瘍と考えられる場合にも適切な遺伝子カウンセリングを提供しつつ悪性を考慮した対
応をすることが望ましいと考えられる。
20.悪性腫瘍との鑑別を要した卵巣 Polypoid endometriosis の一例
○横山美奈子1)、福原 理恵1)、松下 容子1)、鍵谷 昭文1)、平井 秀明2)、鬼島 宏2)、
横山 良仁3)
1)つがる総合病院 2)弘前大学病理生命科学講座 3)弘前大学
【緒言】Polypoid endometriosis は子宮内膜症の特殊な病態の一つであり,その大半が周閉経期女性に生じるとされ
ている。病巣がポリープ状に隆起し,嚢胞部分と充実性部分が混在する腫瘤を形成するため,術前で悪性腫瘍との鑑
別が困難とされている。今回我々は術中迅速病理診断で境界悪性類内膜腫瘍が疑われ,最終的に Polypoid en‑
dometriosis の診断に至った一例を経験したので報告する。
【症例】50 歳、2 経妊 2 経産。1か月前から認められる
下腹部痛を主訴に近医受診し、直径 5㎝大の左卵巣腫瘍を指摘され当科紹介初診となった。経腟超音波で左卵巣に内
腔に隆起性充実性成分を有する嚢胞性病変を認め、MRI 検査で長径 5.4㎝大の内部に造影効果を有する同様の所見
が認められた。腫瘍マーカーは CA19‑9:380 U/ml、CA125:338 U/ml と高値であり、卵巣悪性腫瘍を否定できず,
開腹手術の方針となった。左卵巣の術中迅速病理検査で境界悪性類内膜腫瘍の診断となり,両側付属器切除術、単純
子宮全摘術および大網部分切除術を施行した。永久病理組織検査にて Polypoid endometriosis within an endometri‑
otic cyst の診断となった。術後数か月経過し、腫瘍マーカーは CA19‑9:9.9 U/ml、CA125:16.1 U/ml で正常値で
あり再発を疑う所見は認めていない。
【結語】術前に悪性腫瘍を否定できず,術中迅速病理診断でも境界悪性腫瘍が
疑われ,診断に苦慮した卵巣の Polypoid endometriosis の一例を経験した。充実性部分を有する卵巣腫瘍では、Poly‑
poid endometriosis も鑑別診断に挙げる必要があることが示唆された。
― 61 ―
21.卵巣悪性腫瘍を疑った嚢胞性腺筋症の1例
○酒井 一嘉1)、竹原 功2)、深瀬 美加1)、高橋可菜子2)、中原 健次1)、椎名 有二1)
1)山形県立新庄病院 2)山形大学
【背景】子宮内に発生する腫瘍の多くは充実性腫瘍であり、囊胞性病変を形成するものは全体の約 0.35%と非常に稀
である。子宮内の囊胞性病変は子宮筋腫の液状変性であることが多く、中には画像所見からは卵巣腫瘍との鑑別が困
難なものも含まれる。今回われわれは術前には卵巣悪性腫瘍を疑ったが、手術中に子宮内病変であることが判明し、
術後に囊胞性腺筋症と診断された稀な症例を経験したので報告する。
【症例】52 歳、2 経妊 2 経産。2 週間前からの
腹部膨満感、残尿感を主訴に当科受診した。内診では可動性良好だが子宮と一塊になった成人頭大の腫瘤を触知し、
経腟超音波検査にて子宮背側に 142 ×150 mm 大の cystic lesion を認めた。MRI では 130 ×110 ×170 mm 大の
多房性囊胞性病変を認め、壁の不整肥厚および造影効果を認め、左卵巣粘液性腺癌を疑った。迅速病理検査の準備を
して開腹したところ、腫瘍は明らかに子宮内に含まれており、両側の卵巣は正常所見であった。術前検査では病変と
子宮内膜に連続性はなく、子宮肉腫などが疑われた。手術中に家人に永久病理の結果によっては再手術が必要となる
可能性を了承していただき、単純子宮全摘術にとどめた。永久病理結果は嚢胞性腺筋症 (cystic adenomyosis)の診
断であった。
【結語】囊胞性腺筋症という非常に稀な疾患を経験した。本疾患は術前の鑑別は非常に困難であり、術
前診断と大きく異なる病態が判明した場合には、術前検査と術中所見とを照らし合わせ、適切な手術方法の変更を選
択できるよう努めたい。そして、本人、家族への術前からの適切な説明にも努めていきたい。
22.当院での腟悪性黒色腫症例の臨床的検討
○櫻田 尚子、新倉 仁、田中 創太、海法 道子、徳永 英樹、岡本 聡、渡部 洋、
八重樫伸生
東北大学
【緒言】腟原発悪性黒色腫は稀な疾患であり、全悪性黒色腫の 1%以下、全腟悪性腫瘍の 3%以下と報告されている。
今回当院で経験した腟悪性黒色腫症例に関して、臨床的検討を行ったので報告する。
【方法】2001 年 11 月~2015
年 2 月の期間に当院で治療を行った腟悪性黒色腫症例 6 症例に関して、病理学的特徴・治療方法・治療効果・予後
に関して調査・検討した。
【結果】年齢の中央値は 61 歳(45‑75 歳)。進行期は Ⅱb 期が 1 例、Ⅱc 期が 4 例、Ⅲc 期
が 1 例であった。全例に手術を行い、広汎子宮全摘+腟全摘術が 5 例、腟部分切除術が 1 例だった。リンパ節転移
を認めた症例は 2 例であった。術後補助療法として 3 例に DAV‑F 療法を行い、2 例に INF 局中療法、1 例は年齢を
考慮し補助療法を行わなかった。6 例全例に再発を認め、再発部位は鼠径、肛門部、肝臓、肺、膵臓、皮下と様々で
あった。内 1 例は再発後化学療法(DAV‑F→ニボルバム)を行い生存、経過観察を行っている。
【考察】報告によると、
腟悪性黒色腫の生存期間中央値が 19 ヵ月、5 年生存率は 25%で予後不良とされている。当院で経験した 6 症例も
全例に再発を認め、多くの症例が初回手術後短期間で再発し死亡している。早期発見が困難で発見時進行期症例であ
ること、再発後の治療に抵抗性であることが予後不良の一因と考えられる。予後が厳しく、PS・術後の QOL などを
総合的に判断し術式を検討していく必要があると考えられる。
― 62 ―
23.卵巣境界悪性ブレンナー腫瘍の1例
○湊 純子、徳永 英樹、大槻 愛、井原 基公、岡本 聡、渡部 洋、八重樫伸生
東北大学
【緒言】卵巣ブレンナー腫瘍は全卵巣腫瘍の 2‑3%に発生し、表層上皮性・間質性腫瘍に分類される。このうち境界
悪性ブレンナー腫瘍はブレンナー腫瘍全体の 3‑5%と稀な腫瘍である。今回、卵巣境界悪性ブレンナー腫瘍の 1 例を
経験したので報告する。
【症例】82 歳、2 経妊 2 経産、腹部膨満感と子宮下垂感を主訴に近医を受診した。内診で直
腸瘤、経腟超音波検査で巨大卵巣腫瘍を認め、当科へ紹介となった。MRI で 15cm の卵巣腫瘍、内部に充実成分を
認め造影効果がみられた。CT で明らかな遠隔転移や病的リンパ節腫大は認めず。腫瘍マーカーは、CA19‑9
88.7U/ml、CA125 655.9U/ml と上昇していた。卵巣癌を疑い、単純子宮全摘術+両側付属器摘出術+大網切除術+
後腟壁形成術を施行した。15cm 大の左卵巣腫瘍を認め、腫瘍は嚢胞部分と充実部分から成り、内容液は粘液性であ
った。病理組織検査で、核溝を伴う上皮性の腫瘍細胞が胞巣状に増殖し、一部で軽度の異型や核分裂像が散見され、
増殖性が高い部分も認めたが破壊性浸潤を伴わず、境界悪性ブレンナー腫瘍と診断された。子宮には腺筋症と単純型
子宮内膜増殖症の所見を認め、腫瘍のエストロゲン産生が示唆された。術後経過は良好であり、外来で経過観察中で
ある。
【考察】卵巣ブレンナー腫瘍は稀な腫瘍であり、特にその細胞診所見に関する報告は少ない。本症例に加えて
過去に当院で経験した卵巣ブレンナー腫瘍の細胞診・組織診所見を中心に、文献学的考察を加え報告する。
24.β‑hCG 上昇により診断に至った dysgerminoma 再発の一例
○追切 裕江1)、伊東 麻美2)、横田 恵2)、松倉 大輔2)、尾崎 浩士2)、森川 晶子2)
1)つがる総合病院 2)青森県立中央病院
症例は 38 歳,0 妊 0 産,既往歴特記事項なし.過多・過長月経を主訴に近医受診し,骨盤内充実性腫瘤を認めた
ため,精査・加療目的に当科紹介となった.MRI 検査では子宮左側から上方に最大径 144 mm の巨大充実性腫瘤を
認め,CT 検査では傍大動脈リンパ節の腫大を認めた.血液検査では,CA125 182 U/mL,β‑hCG 1792 IU/mL,LDH
1006 IU/L,可溶性 IL2 レセプター 1330 U/mL であり,胚細胞腫瘍もしくは悪性リンパ腫が疑われた.左子宮付属
器切除術を施行し術中迅速病理診断を施行したところ,悪性リンパ腫疑いとの結果であった.そのため,術式は左付
属器切除術および傍大動脈リンパ節生検術にとどめた.しかし術後病理組織診断では,dysgerminoma の診断であ
り,傍大動脈リンパ節転移も認めた.卵巣癌 Ⅲc 期(pT1cN1M0)として,術後 BEP 療法を行った.3クール終了
後に薬剤性間質性肺炎を認めたため,4クール以降は EP 療法とした.5クール終了時点で腫瘍マーカーの低下を認
めたため,その後は外来で経過観察とした.その1年後 β‑hCG の急激な上昇を認め再発が疑われた.CT では再発
部位が不明であり,PET‑CT を施行したところ子宮体部右側に hot lesion を認めた.再度開腹手術を施行したところ,
右卵巣が腫大しており,後腹膜に播種病変も認めた.腹式単純子宮全摘術および右付属器切除術,後腹膜腫瘤生検を
施行した.dysgerminoma 再発,腹膜播種の診断であり,術後 EP 療法4クール施行し,β‑hCG 正常範囲まで低下し
た.現在外来で経過観察中であるが,再発所見なく経過している.
― 63 ―
25.絨毛癌皮膚転移の一例
○平岩 幹1)、野村 真司1)、石橋真輝帆1)、安田 俊1)、添田 周1)、渡辺 尚文1)
、
1)
2)
2)
3)
藤森 敬也 、橋本 敏 、中村 眞 、北原 正樹
1)福島県立医科大学 2)総合南東北病院 3)総合南東北病院形成外科
【緒言】絨毛癌は、異型性を示す栄養膜細胞の異常増殖からなり、早期に遠隔転移をきたす悪性腫瘍である。転移巣
は肺・膣・脳・肝臓が大部分を占め、皮膚への転移は極めて稀である。今回我々は、絨毛癌皮膚転移の一例を経験し
たので文献的考察も含め報告する。
【症例】34 歳、女性。3 経妊 3 経産(3×帝王切開)。第 3 子出産から 3 カ月後に、
原因不明のくも膜下出血の既往あり。更に 1 カ月後に、右下腹部に 1cm 大の皮下腫瘤に気付いた。腫瘤は急速に増
大し(2 週間で 5cm 大)、前医形成外科で腫瘤摘出術が施行された。病理組織診にて絨毛癌と診断され、同院産婦人科
へ紹介された。血中 HCG は 24240mIU/ml と高値であり、CT 検査にて、左肺に 6cm と 3cm、肝臓に 10cm 大の転
移病巣が認められた。当科へ紹介後、絨毛癌転移(FIGO2000 StageⅣ)の診断にて化学療法の方針とされた。エトポシ
ド+メソトレキセート+アクチノマイシン D+サイクロフォスファミド+ビンクリスチンによる多剤併用化学療法
(EMACO)が施行された。現在③コースまで終了し、血中 HCG は 26.8mIU/ml まで減少した。また、肺・肝臓の転移
病巣も縮小傾向を示し、今後外科的切除も検討されている。
【考察】絨毛癌皮膚転移は極めて稀であり、本邦報告例
は 10 例にも満たない。皮膚転移例は発見された時点で肺など他臓器への転移が認められるものが多い。絨毛癌は多
剤併用化学療法が極めて有効であるが、皮膚転移例は化学療法に抵抗を示すものもあり予後不良と言われている。本
症例の治療への反応は現時点まで非常に良好であるが、今後は病変再燃にも注意しながら経過をみていく必要があ
る。
26.カテーテル関連血流感染症から化膿性血栓性静脈炎、敗血症、脊椎炎・硬膜外膿
瘍を合併した卵巣癌
○熊谷 祐作、會田 剛史、奥原 惟、田中 恵子、比嘉 健、末永香織里、小泉 俊光、
今井 紀昭
八戸市立市民病院
【緒言】中心静脈カテーテル(center venous catheter; CVC)の留置は敗血症のリスク因子であり、癌化学療法によりそ
のリスクはさらに上昇する。今回、CVC 留置が引き金となり、血栓性静脈炎、敗血症、脊椎炎・硬膜外膿瘍を合併
し 1 例を経験した。
【症例】62 歳の女性が骨盤内腫瘤と癌性腹膜炎のため受診した。全身管理目的で CVC を留置し
た。FIGO stageⅢc 期以上の卵巣癌と判断した。診察及び画像診断の結果、その時点での根治術は不可能と判断した
ため、パクリタキセルとカルボプラチンの 2 剤併用の癌化学療法(TC 療法)を先行することとした。TC1 コースの開
始2日目に全身管理良好なため CVC を抜去したが、4日目に発熱、頚部痛を訴え、CVC 抜去部の血栓性静脈炎と、敗
血症、脊椎炎・硬膜外膿瘍と、それによって汎血球減少を伴う敗血症、頚椎の脊椎炎・硬膜外膿瘍を発症した。van‑
comycin と meropenem を開始後、起因菌はメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)であり cefazolin へ変更した。
また day15 に緑膿菌による腎盂腎炎を併発し、抗生剤を ceftazidime へ変更した。腎盂腎炎治療後は再び cefazolin
を約1ヶ月継続した。抗生剤治療が奏功し、その後 TC 療法 6 コースを完遂した。腫瘍は画像上大幅に縮小したため、
interval debulking surgery を施行した。大動脈リンパ節と大網に腫瘍の貪食像を認めたため、追加で TC3 コースを
施行している。
【結語】今回、原因臓器と原因微生物が判明していたため、抗生剤を的確に使用することで感染症を
制御し得た。CVC 留置を有する癌患者の感染症診療は時に困難であるため注意深い診療が求められる。
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27.当院における品胎妊娠 25 例の検討
○富田 芙弥、鈴木 久也、横山 智之、齋藤 美帆、太田 恭子、大槻 健郎、中里 浩樹、
谷川原真吾
仙台赤十字病院
2004 年から 2014 年に総合周産母子医療センターである当院で経験した 25 例の品胎妊娠を後方視的に検討し
た. 全体の 84%が不妊治療による妊娠であり, うち 81%が排卵誘発剤使用での妊娠であった. 中でもクエン酸クロミ
フェンによる妊娠が不妊治療例の 43%を占め, これまでの報告と比べて高率であった. 入院時の平均週数は 23.7 週
と早く, ほぼ全例が子宮収縮抑制薬の使用を要した. 特に硫酸マグネシウムを併用した例は全例が妊娠 29 週までに
分娩となっていた. 妊娠高血圧症候群の合併率は 8%であり以前の報告と比較して低率であった. 平均分娩週数は
29.1 週, 児の平均出生体重は 1149g で, 以前の報告より早期での娩出が行われている傾向にあった. 周産期死亡率
は 6.7%で, 全て妊娠 25 週以前での分娩であった. 品胎の周産期管理では妊娠25週以前の早産をいかにして防ぐ
かが今後の課題であるといえる.
28.双胎間輸血症候群(TTTs)に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)
を施行した一例
○井ケ田小緒里1)2)、原田 文1)、室本 仁1)3)、水内 将人1)4)、室月 淳1)3)、
八重樫伸生2)
1)宮城県立こども病院 2)東北大学 3)東北大学先進成育医学講座胎児医学分野
4)札幌医科大学
【はじめに】双胎間輸血症候群(Twin‑to‑Twin Transfusion Syndrome; TTTS)は,胎盤吻合血管の存在により双胎間
に血流不均衡が生じ,供血児,受血児それぞれに循環不全や容量負荷からくる病的変化をきたす疾患である.この血
流不均衡の原因となる胎盤吻合血管を胎児鏡下でレーザーを用いて凝固遮断していく治療法が,胎児鏡下胎盤吻合
血管レーザー凝固術(Fetoscopic Laser Photocoagulation of Placental Communicating Vessels; FLP)である.
【症例】
29 歳,5 経妊 3 経産,特記すべき既往歴なし.自然妊娠成立後,近医産婦人科にて一絨毛膜二羊膜双胎と診断され
た.特に問題なく外来フォローされていたが,24 週 4 日の妊婦健診にて急速に進行した TTTs所見を認め、当院へ
紹介となった.当院搬送時の所見にて,受血児の羊水腔は stuck しており、受血児は MVP9.7㎝であった.TTTs
stageⅡの診断にて入院のうえ、翌日 FLP を施行した.施行直前の超音波所見では受血児の皮下浮腫・腹水も認め、
TTTs stageⅣへ進行している所見であった.FLP 施行後,血流の改善を認めた.児の状態が完全に回復したことを
確認し,26 週 4 日で近医へ転院した.
【考察】これまで予後不良であった妊娠 26 週未満発症の TTTsの予後は FLP
の導入によって劇的に改善した.一方で、FLP の合併症も少なくないことから慎重な適応判断が必要となる.当院で
FLP を考慮した症例のまとめと合わせて報告する.
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29.Discordant DD‑twins の原因が軟骨異栄養症と臍帯胎盤因子によると考えられた一例
○佐々木 恵1)、杉山 隆2)、黒澤 靖大2)、岩間 憲之2)、大塩 清佳2)、倉片三千代2)、
齋藤 昌利2)、八重樫伸生2)
1)石巻赤十字病院 2)東北大学
【諸言】子宮内胎児発育不全(FGR)の症例で大腿骨長の短縮が見られることは、日常臨床でもよく目にする。今回、二
絨毛膜二羊膜双胎の一児で、妊娠初期からの大腿骨長 (FL)の短縮を伴う重症 FGR が見られ、妊娠第 3 三半期に FL の
短縮がさらに顕著となり、軟骨異栄養症の合併が認められた一例を経験したので報告する。
【症例】37 歳、2 妊 2 産
(正常分娩 2 回、児は正常)。自然妊娠後、前医で二絨毛膜二羊膜性双胎と診断。妊娠 11 週で既に両児の CRL に差
を認め、その後も1児の FGR が顕著であった。23 週で周産期管理目的に当院紹介となった。その時点で両児の推定
体重は 570g(‑0.1SD)と 234g(‑3.8SD)で、FGR 児の FL は 22mm(‑5.7SD)であった。超音波検査上、FGR 児の長管骨の
短縮以外明らかな形態異常を認めなかったが、FGR 児の胎盤が小さく、臍帯も辺縁付着であり、血流再配分を認めた。
本人と夫と相談し、正常発育児の予後を優先とする方針となり、そのまま経過観察となった。妊娠初期からの重症
FGR であったため、染色体異常も疑い、インフォームドコンセントの下、FGR 児のみ羊水検査施行したが、G‑Band
法で正常核型であった。その後は両児とも発育を認めていたが、FGR 児は、30 週の時点で、BPD や AC の発育は認
めるものの、FL の発育が 28.5mm(‑8.5SD)と 27 週以降ほとんど発育を認めない状態であった。骨系統疾患の合併の
可能性を考えて撮影した胎児 CT 所見上、FGR 児の軟骨無形成症が疑われた。以上の検査所見より、初は臍帯胎盤因
子による FGR と考えていたが、骨系統疾患が FGR で修飾されている病態が疑われた。その後、FGR 児の発育停止を
認めたため、35 週 1 日に、帝王切開施行し、2,147g の女児と 1,134g の男児を得た。男児は軟骨異栄養症と診断さ
れ、現在当院小児科で経過観察中である。
【結語】FGR の診療では、推定体重だけではなく、骨系統疾患も念頭に置
いた評価も重要であると考えられた。
30.単一胚盤胞移植後の vanishing triplet の2例
○竹原 功1)、高橋 俊文1)、太田 信彦2)、松川 淳1)、長谷川歩美1)、網田 光善1)、
五十嵐秀樹1)、永瀬 智1)
1)山形大学 2)ゆめクリニック
【背景】単一胚移植は、生殖補助医療(ART)による多胎妊娠の防止に有用であるが、単一胚移植を行った場合でも、
一卵性双胎の頻度は自然妊娠の約 2 倍に上昇する。一卵性品胎は、全妊娠の 0.004%であり、ART においても極めて
稀である。今回我々は単一胚盤胞移植後の vanishing triplet となった 2 例を経験したので報告する。
【症例】症例 1:
29 歳、1 経妊 1 経産。第 1 子は卵管性不妊のため体外受精(IVF)により妊娠し分娩した。第 2 子希望にて当科受
診。GnRHa long 法により 9 個採卵し IVF を行い 7 個受精、2 個が胚盤胞に発育した。胚盤胞(4AA)を 1 個胚移植
した。妊娠 5 週 0 日、胎嚢を 1 個確認。妊娠 6 週 0 日、胎嚢を 3 個認めた。妊娠 8 週 5 日、1 つの胎嚢内に卵黄嚢
と胎児心拍を認めたが、その他 2 つにはいずれも認めず、vanishing triplet の診断となった。妊娠経過は順調で、
3,010 g の女児を自然分娩した。症例 2:39 歳、2 経妊 1 経産。男性不妊症のため、2 回の既往妊娠はいずれも顕微
授精(ICSI)を行った。第 2 子希望にて前医を受診。GnRHa short 法にて採卵し ICSI を行い 7 個受精。受精卵はガ
ラス化法にて凍結保存した。融解後に assisted hatching を行った胚盤胞(5AA)を胚移植し妊娠が成立。妊娠 6 週
3 日、胎嚢を 3 個確認。8 週 6 日、2 個の胎嚢内に各々胎児(心拍陽性)を確認、その他の胎嚢には胎児を認めず、van‑
ishing triplet の診断となった。現在双胎妊娠として妊娠管理中である。
【結語】単一胚移植後の品胎という極めて稀
な 2 症例を経験した。ART においては、単一胚移植後でも多胎妊娠が生じる可能性を念頭におく必要がある。
― 66 ―
31.胎児外回転術後に常位胎盤早期剥離を発症した2症例
○湊 敬道、淀川 裕紀、高橋 聡太、西本 光男、佐藤 多代
岩手県立中部病院
【諸言】骨盤位症例においては胎児外回転術(external cephalic version : ECV)を行う事で帝王切開分娩回避が期待で
きる。しかし合併症発症の危険もあるため事前の十分な対策が必要がある。今回我々は ECV 後に胎盤後血腫形成し
緊急帝王切開となったが、良好な転機となった 2 症例を経験したため文献的考察を含め報告する。
【症例 1】25 歳
初産婦 37 週 3 日に骨盤位のため紹介。ECV 希望にて同日入院。胎盤は子宮底部、臍帯巻絡 1 回、羊水量 AFI 9.0 で
あった。超音波ガイド下に ECV 施行も一過性胎児徐脈が出現したため中断し超音波評価を行ったところ胎盤後血腫
を認めたため緊急帝王切開にて児を娩出した(Apgar score 2/9 臍帯動脈血 pH 7.29)。血性羊水を認めたが、胎盤後
血腫は認められなかった。児は入院加療となるも経過良好にて日齢 10 日目に退院。
【症例 2】28 歳 初産婦 骨盤
位のため 32 週時に紹介、ECV 希望あり。胎盤は子宮前壁から底部、臍帯巻絡なし、羊水量 AFI 11.0 であった。36
週 5 日超音波ガイド下に ECV 施行。胎児徐脈は認められなかったが胎盤後血腫を認め中断。CTG では Reassuring
pattern であったが、腹部触診上硬度が増していた。連続 CTG と断続的超音波評価を行ったところさざ波状の子宮収
縮、また血腫増大を認めたため緊急帝王切開にて児を娩出した(Apgar score 8/9 臍帯動脈血 pH 7.31)、羊水混濁を
認めなかったが胎盤後血腫ならびに子宮に Couvelaire sign を認めており、常位胎盤早期剥離と診断した。母児とも
に経過良好で日齢 7 退院。
【結語】ECV は骨盤位妊娠を減らす可能を有する唯一エビデンスのある手技ではある。事
前に緊急帝王切開に対する十分な準備をして行わなければならない。
32.出生前に茎捻転を起こした胎児卵巣嚢腫の一例
○高橋可菜子、堤 誠司、杉山 晶子、渡邉 憲和、小幡美由紀、須藤 毅、吉田 隆之、
五十嵐秀樹、永瀬 智
山形大学
【背景】胎児卵巣嚢腫は約 2,600 分娩に 1 例の稀な疾患である.ほとんどは片側性の単房性嚢胞であり、出生後に消
失する.しかし、妊娠経過中に茎捻転や破裂を起こすことがあり、その管理は重要であるものの、未だ一定の治療方
針は定まっていない.今回、嚢胞の性状の変化から卵巣嚢腫の茎捻転が疑われたため緊急帝王切開を行い、同日児に
対して腹腔鏡補助下に手術を施行し卵巣を温存し得た一例を経験したため報告する.
【症例】38 歳、0 経妊 0 経産.
自然妊娠し前医にて管理されていた.妊娠 33 週 2 日に里帰り分娩目的に当科紹介となった.初診時の超音波で、胎
児は女児で右卵巣腫瘍と思われる 30 mm 程度の simple cyst を認めた.嚢胞の性状はほぼ変化なく経過していた
が、妊娠 35 週 1 日の超音波で内部に高エコー領域を認めた.妊娠 35 週 2 日の MRI で内部に血液成分を伴う卵巣腫
瘍が疑われた.経過から simple cyst の捻転による腫瘍内出血と考えられた.児の成熟状態を加味し、児の早期の治
療が望ましいと考え、同日緊急帝王切開術を施行した.児は 2,124 gの女児で Apgat Score は 7 点/7 点、臍帯動脈
血 pH は 7.338 であった.児に対して同日腹腔鏡補助下手術を行った.右卵巣腫瘍は 180 度捻転していたが、温存
可能と判断し卵巣腫瘍を摘出した.
【考察】胎児卵巣嚢腫が疑われた場合、腫瘍径と腫瘍性状に注意し経過観察を行
う必要がある.Simple cyst から complex cyst に変化するなど、捻転や破裂が疑われた場合には、妊娠週数なども考
慮し、早期の娩出と児の治療を行うことも選択肢となりうると考えられる.
― 67 ―
33.妊娠中期より高度徐脈が持続した胎児洞性徐脈の一例
○畠山 佑子、富樫嘉津恵、亀山沙恵子、下田 勇輝、三浦 康子、佐藤 朗、寺田 幸弘
秋田大学
【緒言】胎児の徐脈性不整脈は、房室ブロックと洞性徐脈に分けられる。妊娠 24 週に診断され、高度徐脈が持続し
ながらも妊娠 34 週で生児を得た洞性徐脈の 1 例を経験したので報告する。
【症例】28 歳、1 経産(帝王切開)。近医
で妊婦健診を受けていたが、妊娠 24 週 3 日、切迫早産のため入院、塩酸リトドリン内服を開始した。妊娠 24 週 5
日、NST 上頻回の高度徐脈(60bpm 台)を認め、妊娠 25 週 3 日当科入院した。胎児心エコーにて心構造異常や房室ブ
ロックはなく、洞性徐脈と診断された。抗 SS‑A 抗体、抗 SS‑B 抗体は陰性であった。NST 上、約 50%に 60bpm 台の
徐脈を認めたが、胎児に心不全徴候はなく妊娠 29 週 6 日退院した。妊娠 34 週 3 日、切迫早産で再入院し、塩酸リ
トドリン点滴を開始した。NST 上ほぼ全てに 60bpm 台の徐脈を認めたが、胎児心不全徴候を認めなかった。妊娠 34
週 6 日破水し、頻回の子宮収縮が出現した。胎児心拍は 60bpm 台のままであったが、経腹エコーで胎盤が 7cm と
肥厚しており、常位胎盤早期剥離を疑い緊急帝王切開を施行した。児は 2083g の女児、Apgar score8 点(1 分値)、9
点(5 分値)、NICU 管理となった。児は心拍数 50bpm 台であったが、心構造異常や心機能低下はなく、体重増加も良
好であったため、早期のペースメーカー植え込みは不要と判断され、生後 24 日に退院した。
【考察】胎児の徐脈性
不整脈を発見した場合、心不全徴候の有無に注意する。一般に心拍数<55bpm で胎児水腫に進行しやすいとされる
が、大動脈血流速度や心拡大の有無、Biophysical profiling score 等の産科的評価を経時的に行い娩出時期を決定す
る。本症例では高度徐脈が持続し、Non‑reassuring fetal atatus の判断に苦慮した。頻回のエコーによる胎児機能、特
に心不全徴候の評価は胎児洞性徐脈の管理において重要と考えられた。
34.子宮頸管長の早産リスク
○佐々木由梨、村井 正俊、金杉 知宣、岩動ちず子、小山 理恵、菊池 昭彦
岩手医科大学
【目的】子宮頸管長は切迫早産の重要な評価項目であり、子宮頸管長短縮例は早産ハイリスクとなる。妊娠中期の子
宮頸管長が早産に与えるリスクについて当院分娩症例で評価を行う。
【方法】H23 年 1 月~26 年 6 月に当院で分娩
した症例のうち、妊娠中期(23 週 0 日~25 週 6 日)に経腟超音波による子宮頸管長測定記録のある症例を抽出し、
子宮頸管長の人数分布より 75th percentile 以上の群と比較した早産の相対危険度を求めた。また、子宮頸管長
25mm 未満を子宮頸管長短縮症例とし、37 週未満の分娩をエンドポイントとしてカプランマイヤー生存曲線を作
成し、ログランク検定を行った。 尚、正期産、過期産例については 37 週の時点で観察打ち切りとした。
【成績】妊
娠 24 週時の子宮頸管長が 40mm 以上の群と比較して、40.0mm(75percentile)未満で 1.6 倍、35.1mm(50per‑
centile)未満で 1.9 倍、29.8mm25percentile)未満では 2.7 倍、23.0mm(10percentile)未満で 3.4 倍、14.6mm
(5percentile)未満では 3.9 倍、0.45mm(1percentile)未満で 5.8 倍、早産の相対危険度が高かった。また子宮頸
管長が 25mm 未満の群は 25mm 以上の群に比べて有意に早産しやすい結果となった。
【結論】子宮頸管長短縮症例
は早産ハイリスクであり、かつ子宮頸管長が短いほどそのリスクが高くなる。妊娠 24 週の頸管長は早産の重要なリ
スク因子であるため、正確な測定と頸管長短縮症例の適切なフォローアップが必要と考える。
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35.岩手県総合周産期母子医療センターに救急搬送された切迫早産に関する後方視
的検討
○村井 正俊、佐々木由梨、金杉 知宣、岩動ちず子、小山 理恵、菊池 昭彦、杉山 徹
岩手医科大学
【はじめに】2010 年における我が国の早産率は 5.7%と言われている。しかしながら、我々の施設に搬送されてくる
前期破水を含む切迫早産率は 20%前後である。そこで我々は、これらの搬送症例について後方視野的検討を試みた。
【方法】平成 24 年 1 月から 2 年間に岩手県総合周産期母子医療センターに搬送された前期破水を含む切迫早産 139
症例の年齢、妊娠週数、妊娠歴、既往歴、結婚歴、生殖補助医療治療歴、検査所見と経過について統計解析を行う。
【結果】全 139 症例は平成 24 年と平成 25 年の搬送症例数を比べ、平成 24 年が 65 例であり平成 25 年の 74 例と
増加していた。平成 25 年については前期破水を含む切迫早産症例率 19.3%(74 症例/総分娩数 384 例)であった。そ
の内訳は 22 から 24 週は 20 例、25 から 27 週は 28 例、28 から 31 週は 18 例、32 週から 35 週は 8 例であった。
当施設の受け入れ基準としている 32 週未満が 90%を占めている。特に 28 週未満の症例は 58%であった。
【結論】岩
手県において早産防止の一環として、妊婦検診での子宮頚管長計測と膣分泌物細菌検査による Nugent score は2回
行われ、且つ、開業医を含め他施設で施行されている。早産防止活動にも関わらず症例数は増加していた。この事は、
早産児出生の結果に生じる NICU 入院日数の長期化に繋がる。更なる解析の結果によって、早産防止に関連する因子
を検索する必要性が有ると判った。
36.当院で経験した子宮内反症による産科危機的出血の一例
○石原 佳奈1)、山内 愛紗1)2)、田村 良介1)、葛西亜希子1)3)、葛西剛一郎1)3)、
高橋 秀身1)
1)大館市立総合病院 2)弘前大学 3)八戸市立市民病院
子宮内反症は分娩第3期に 8,000~10,000 分娩に1件の頻度で起こり、大量出血を来たす疾患である。子宮内反
症となり用手整復するもその後弛緩出血を来し、子宮全摘術で救命し得た一例を経験したので報告する。
症例は 40 歳 2 経妊 1 経産で他院での体外受精胚移植で妊娠成立後、当科で妊婦健診施行していた。妊娠 40 週 6
日自然分娩となり子宮収縮良好であったが、胎盤が頸部に嵌頓したため、用手的に胎盤実質を牽引して胎盤娩出とな
った。その後出血量増加、腹壁から子宮底部を触れず子宮内反症と診断した。すぐに用手整復し、オキシトシンの点
滴を開始した。超音波検査で子宮の整復及び、腹腔内に異常出血がないことを確認した。その時点での出血は 1,385g
であった。一旦は落ち着いた出血が2時間後再び増加、激しい腰痛を訴え、子宮体部の血液貯留と弛緩した子宮頸部、
多量の出血を認めた。子宮収縮剤を使用し Bakri バルーン®を子宮腔内に留置、輸血を開始したが、子宮頚部の収縮
が不良であり出血が持続、頚部であるため Bakri バルーン®は有効ではなく、圧迫をガーゼタンポンへ変更するも止
血は得られなかった。この時点で出血は合計約 4,000g、Shock Index 1.5~2 であり、保存的治療は困難と判断、放
射線科常勤医師がいない当院では動脈塞栓術は不可能であったため、子宮全摘術を施行した。開腹所見では子宮体部
の収縮は良好であったが、頸部が水腫状に腫大していた。明らかな胎盤遺残や子宮破裂所見は認めなかった。術中出
血も含め総出血量は約 5120g、濃厚赤血球 12 単位、新鮮凍結血漿 12 単位の輸血を行った。術後経過は良好で術後
7日目に独歩退院となった。
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37.大量輸血を要した妊婦の1例
○経塚 標1)、菅野 潔1)、安田 俊1)、河村 真1)、野村 泰久1)、佐藤 友美2)、
石井 士朗2)、根本 千秋3)、藤森 敬也1)
1)福島県立医科大学 2)福島県立医科大学放射線医学講座
3)福島県立医科大学救急医療学講座
前医で妊娠子宮摘出後に腹腔内で大量出血を来たし、集学的治療にて救命しえた症例を報告する。症例は 32 歳、
2 妊 2 産(1 回自然分娩、1 回帝王切開)
。前医で既往帝王切開後妊娠、分娩開始のため夜間に緊急帝王切開を施行
された。止血困難となったため子宮摘出、左附属器切除術が引き続き施行されたが、出血性ショック、呼吸停止とな
り当院へ救急搬送された(前医での出血約 6000g)。来院時血圧は測定不能であり、心拍数:180 台であった。即座に
中心静脈を確保し、大量輸液および血液製剤の投与、人工呼吸管理、大動脈閉塞バルーンカテーテル挿入を行った。
造影CTを施行したところ、骨盤内へ著明な造影剤の流出を認めたため、出血源同定のため緊急カテーテル検査を依
頼した。両側子宮動脈から著明な出血を認め、コイル塞栓術施行した。塞栓術により動脈性の出血は軽減したが、腹
腔内出血による腹圧上昇により次第に人工換気困難となったため、開腹止血術へ移行した。腹腔内は塞栓術後でもあ
り動脈性の出血は無く、両側卵巣堤索、膣断端部、子宮静脈周囲から血液の浸出を認め止血術を行った。開腹止血術
中に隣県より届いた活性型第 Ⅶ因子製剤を使用した。総出血量は前医から合わせて約 20000g であり、赤血球濃厚
液 96 単位、新鮮凍結血漿 76 単位、濃厚血小板 40 単位、Fibrinogen 製剤 17g を使用した。術後当日抜管し術後 2
日目には DIC は改善した。術後 29 日目退院となった。当院での日頃からの大量出血へのシミュレーションが効を奏
した例と思われた。
38.診断に苦慮した家族性地中海熱の一症例
○佐藤 亘1)、三浦 康子1)、白澤 弘光3)、熊澤由紀代1)、熊谷 仁1)、児玉 英也2)、
寺田 幸弘1)
1)秋田大学 2)秋田大学保健学科 3)かづの厚生病院
【緒言】家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever: FMF)は、周期性発熱と腹膜炎,胸膜炎,関節炎などの漿膜炎
症状を特徴とし、一部にアミロイドーシスを合併する常染色体劣性遺伝性疾患である。現在本邦では推計患者数約
300 人程度と考えられている。われわれは、月経周期に一致した繰り返す熱発・下腹部痛を認め、診断に苦慮した
家族性地中海熱の一症例を経験したので報告する。
【症例】26 歳,0 妊 0 産,熱発・下腹部痛を主訴に近医を受診し
た。経腟超音波にて 5cm の左子宮内膜症性嚢胞を指摘、子宮内膜症性嚢胞の破綻や感染を疑われ、対症療法にて加
療された。以後、月経周期に一致した繰り返す熱発・下腹部痛を認めたため、精査加療目的に当科を紹介され受診し
た。骨盤内腹膜炎、子宮内膜症、家族性地中海熱の鑑別診断を念頭に、月経休止にて経過観察の方針となった。GnRHa
2 サイクル施行後、6 ヶ月間ジエノゲスト療法を施行した。その間、無症状で経過した。上記経過より家族性地中海
熱を疑い、MEFV 遺伝子検査を施行したところ exon2 の L110P/E148Q のヘテロ接合体を認め、家族性地中海熱と
診断された。腹腔鏡下左卵巣嚢腫摘出術後、挙児希望もありジエノゲストを休薬し、今後コルヒチン投与を検討して
いた。その後、自然妊娠が成立したため、内科と加療連携を取りながら、現在妊娠継続中である。
【結語】FMF は発
熱や下腹部痛を主症状とし、子宮内膜症や骨盤内腹膜炎と類似した症状を示すため診断に苦慮することがある。頻度
は低いものの本疾患も鑑別診断として念頭に置き、診療に当たることが重要だと考えられた。
― 70 ―
39.直腸子宮内膜症によるサブイレウスに対して術前 GnRHa 投与を行った1例
○黒澤 大樹、氷室 裕美、渋谷 祐介、田中 創太、志賀 尚美、渡邉 善、井原 基公、
宇都宮裕貴、新倉 仁、八重樫伸生
東北大学
【緒言】腸管子宮内膜症によるイレウスを発症した場合、手術療法が一般的である。今回、GnRHa による前治療後に
手術を施行した 1 例を報告する。
【症例】44 歳、0 妊 0 産。5 年前にイレウスで他院入院。上部直腸と S 状結腸に粘
膜下の隆起性病変認め、生検で腸管子宮内膜症の診断。挙児希望あり、腸管内膜症管理も含め当科通院。約 3 年間
ART を含む不妊治療を行ったが不成功に終わり、42 歳で治療終了。内膜症フォローを継続すべきだったが、この時
点で一旦終診となった。フォロー終了から 1 年 8 ヵ月後、イレウス再燃のため前医入院、手術目的に当科紹介とな
った。MRI 上、子宮後面から直腸前面にかけての部分と S 状結腸に腫瘤性病変を認めた。膀胱子宮内膜症、卵巣子
宮内膜症性嚢胞も認めた。早期手術では腸管縫合不全、術後排尿障害のリスクが高いと考えられ、また食事の工夫に
よる症状改善も認めたため、GnRHa による前治療を行った。GnRHa3 コース後も腸管の高度狭窄は改善しなかった
が、予定通り手術(子宮、直腸、S 状結腸合併切除、両側付属器切除、一時的人工肛門造設)を行った。初回手術よ
り 3 ヵ月後に人工肛門閉鎖術を行った。術後排尿障害が出現し、間歇的自己導尿を行っている。
【考察】直腸子宮内
膜症における腸管切除術では、29%に術後排尿障害が生じたとの報告がある。腸管子宮内膜症病変に対する GnRHa
投与で病変改善が得られた報告があり、今回手術合併症リスク軽減目的に術前投与を行った。本症例では前治療によ
る効果はみられなかったが、病理学的に平滑筋の増生と線維化を認め、これらの器質的変化が内分泌療法に対する抵
抗性を惹起した可能性が考えられた。
40.ジェットスキーにより膣壁裂傷、直腸裂傷を形成した1例
○菅原 真弓、名取 徳子、海道 善隆、村井 眞也、葛西真由美、鈴木 博
岩手県立中央病院
【はじめに】外陰部外傷は稀な疾患であるが、近年は増加傾向にあり、その多くはスノーボードによる外傷である。し
かし、今回、我々はジェットスキーからの転落による膣壁裂傷、直腸裂傷を形成した1例を経験したので報告する。
【症例】28 歳、女性。ジェットスキー発進の際に後方へ転落、水圧で会陰部を受傷し、多量の性器出血のため当院へ
救急搬送された。来院時、膣内には多量の凝血塊と持続的な出血が見られた。腟壁裂傷の診断のもと、全身麻酔下に
手術を施行した。膣壁裂傷は左右ともに広範囲に及び、ことに、右側の裂傷は膣円蓋から後腹膜に達し、多量の出血
を認めた。そして、この膣壁の裂傷と平行するように直腸粘膜にも裂傷を認めた。後腹膜腔へドレーンを挿入し、膣
壁と直腸粘膜の裂傷を縫合し、膣内に圧迫ガーゼを挿入、手術を終了した。第 2 病日の血液検査では、赤血球 183
万×106/μl、Hb 5.9g/dl と貧血の進行を認めたため、MAP を 4 単位輸血した。その後、第4病日に発熱と腹部全体
の疼痛が出現、下痢便もみられた。CRP33mg/dl と上昇、膣壁裂傷、直腸裂傷による骨盤腹膜炎と診断した。SBT
1g/day と CLDM 600mg/day を開始。翌日より解熱傾向となり、徐々に症状軽快し第 17 病日に退院となった。
【ま
とめ】今後、レジャー人口の増加とともに、ジェットスキーによる外傷は増加することが予想される。外陰部外傷は
骨盤内感染症を併発し重症化することもあり、迅速な診断・治療が重要となることを経験した1例であった。
― 71 ―
41.当院での日帰り LEEP の成績について
○小澤 信義1)、岡村けい子2)、渡辺 正3)、田野口孝二4)
1)おざわ女性総合クリニック 2)岡村婦人科クリニック 3)NTT 東日本東北病院
4)東北公済病院
【はじめに】米国等では LEEP 法は局麻下の日帰り手術が一般的である。働く女性や子供をもつ女性にとって、日帰
り手術が可能か否かは重要な問題である。
【対象】今回は当院で LEEP を行い、治療後1年以上経過した54例につ
いて検討した。
【方法】1年以上経過した時点での細胞診と HPV 検査(コバス法)を検討した。また痛み等のアンケ
ート調査をおこなった。
【結果】細胞診陰性率(LEEP 後)は 1 年以上の経過観察では54例中 NILM 53/54(98%)
ASC‑US
1/54 (2%)であった。LEEP 後1年以上経過した54例での HPV 検査結果では陰性50例(陰性率約9
3%)陽性4例(7%)であった。陽性の4例のうち 2 例は術前16型(+)で、術後16型(-)
、他の型(+) で
あり、術後のあらたな感染と推定された。他の 2 例は術前52型(+)で、術後は16,18型以外の型(+)で
あり、再感染か持続感染かは判定できなかった。アンケート調査では、1)痛みは?①ほとんどなし 38/42、②耐
えられるが痛みがあった 4/42、③耐えられない痛みであった 0/42、2)熱く感じましたか?①ほとんど熱くなか
った 31/42、②耐えられるが温かかった 11/42 ③耐えられない熱さだった 0/42 3)手術時間について?①あま
り長くは感じなかった 35/42 ②長く感じた 7/42 ③とても長く感じた 0/42 4)手術中の体位について①ほ
とんどつらくはなかった 35/42 ②つらかったが耐えられた 7/42 ③つらくて耐えられなかった 0/42 5)術後
の水様性帯下ついて?①ほとんど帯下はなかった 8/42、②少量の帯下 28/42③多量帯下 5/42 【結語】局麻下の
日帰り LEEP は CIN2/3 の治療の選択になりうると考えられる。
42.新しい HPV タイピング検査法(HPV サーティーン)の有用性について
42.―HPV サーティーン法とクリニチップ法との比較―
○小澤 信義1)、成澤 邦明2)、浅野 克敏3)、中嶌 浩二3)
1)おざわ女性総合クリニック 2)東北大学 3)日本遺伝子研究所
【はじめに】2014 年婦人科外来診療ガイドラインによれば、CIN1/2 の患者のフォローアップにおいて、HPV16,
18,31,33,35,45,52,58型が陽性の病変では癌への進展リスクが高いので、それ以外の HPV 陽
性あるいは陰性例と分けて管理することが推奨されている。しかし、現在保険適用になっている検査法であるクリニ
チップ法は 20,000 円と高額であり、安価な型検査法が求められていた。そこで、日本遺伝子研究所が開発した HPV
サーティーンを既存のクリニチップ法の結果等と比較検討した。
【対象】症例は細胞診が ASC‑US~HSIL を示した症
例で、組織検査では異常なし~微小浸潤癌の 92 症例である。
【方法】検体から DNA を抽出し、マルチプレックス PCR
を行った。プライマーは 13 種類の HPV ジェノタイピング用プライマーセットに βグロビンのプライマーを加えて
混合プライマーとして用いた。増幅した PCR 産物を電気泳動し、分離同定した。
【結果】HPV サーティーンとクリ
ニチップ法との一致率は、92 例中 89 例で 96.8%であった。陽性一致率は 72 例中 70 例で 97.2%であった。また、
陰性一致率は 20 例中 19 例で 90.4%であった。不一致例を再検討した。HPV サーティーンのみ陽性の 3 例をシーク
エンス解析したところ、31型、59型、58型が確認された。一方、クリニチップ法のみ陽性とされた症例をシー
クエンス解析したところ、HPV 配列は確認されなかった。
【結語】HPV サーティーン法は低価格で検査が可能で、ク
リニチップなどの検査に劣らない精度をもっており、CIN1/2 の管理に有用な方法であり、今後の利用拡大が期待さ
れる。
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43.団塊世代の元産婦人科医が震災復興に向ける思い
43.~岩手県陸前高田市と宮城県南三陸町における女性支援
○中村 幸夫
公立南三陸診療所
東日本大震災後、友人が病院長を務める仮設の岩手県立高田病院の臨時内科医師として支援を始め、その後も宮城
県気仙沼市を経て現在は南三陸町で「医療で震災復興を!」と叫び続けている。被災地域で生活して改めて気づくの
は、医療サービスが十分でなかった地域が震災で更に不自由さを増している現状と、本来は迅速で柔軟な対応が必要
な場面でも平常時モードのままで運用されているため問題が多いという状況である。
一方、非常時モードで迅速な対応を受けたのが、宮城県公立南三陸診療所である。佐藤仁町長へフェィスブックで
メッセージを送ったところ、約1ヶ月で仮設の診療所に「レディース外来」が開設された。15 年前から産婦人科診
療が提供されていなかった地域で、内科を受診した女性の心身の悩みに応える、女性のプライマリケアを目指したの
である。
当初は婦人科診療だけであったが、石巻赤十字病院の産科セミオープンシステムに参加し、妊婦健診を地元でも受
けられるようにした。これに伴い、レディース外来担当による「助産師外来」も始められたので、産婦人科医不足の
対策にも期待される。助産師自身にとっても、病院という組織のなかで、安心して助産師としての知識や技術を発揮
できるというメリットがある。
さらに、建築中の町立南三陸病院には、新たに産婦人科診察室も追加された。2015 年 11 月には、震災前の状況
に戻す「復旧」に止まらず、
「医療で震災復興」が南三陸町に実現するであろう。私事になるが、南三陸町の復興を
見続けるため、豊かな自然のなかで人々と愉しみながら働くことにした。
「支援から協働へ」と、自分自身のパラダ
イムシフトである。
44.妊娠初期より下節部菲薄化・子宮筋層断裂を認めた既往帝王切開妊婦の5症例
○鴨井 舞衣1)、山内 愛紗1)、熊坂 諒大1)、湯澤 映2)、田中 幹二1)、水沼 英樹1)
1)弘前大学 2)大館市立総合病院
既往帝王切開妊婦は子宮破裂のリスクが高いが妊娠管理法に明確な基準はない。今回、超音波、MRI にて子宮下節
部の菲薄化、筋層断裂を認め、管理に苦慮した 5 例を経験したので報告する。
【症例1】36 歳。3 妊 2 産。前回 39
週で早剥、DIC で緊急帝切。術後子宮切開部に 8 cm 大の血腫形成。術後 1 年半、血腫残存状態で自然妊娠。12 週
の超音波検査で筋層断裂を認めた。
【症例 2】37 歳。3 妊 4 産。前回 36 週 DD 双胎、破水で緊急帝切。術後 2 年で
自然妊娠。12 週時下節部異常を認めず。16 週大量の性器出血。超音波にて筋層切開部に EFS を認め、MRI にて子
宮前壁内子宮口の高さに幅 1 cm 程度の筋層断裂を認めた。以上2症例はそれぞれ本人家族と相談の結果、人工妊娠
中絶が選択された。
【症例 3】30 歳。4 妊 3 産。3 回帝王切開。術後 3 年で自然妊娠。9 週で前回切開創と思われる
部位の筋層断裂を認めた。16 週より予防的に塩酸リトドリン内服開始。24 週時 MRI で子宮前壁筋層の広範囲な菲
薄化認め、25 週より塩酸リトドリン持続点滴開始。現在 30 週まで経過中である。
【症例 4】34 歳。3 妊 3 産。3 回
帝王切開。術後 2 年で自然妊娠。10 週で前回切開創と思われる部位に著明な切痕認め、12 週時に MRI 施行したが
菲薄化以外の異常所見はなし。15 週以降下節部は約 3mm で経過しており、20 週より予防的に塩酸リトドリン内服
を開始し外来通院中である。
【症例 5】34 歳。1 妊 1 産。39 週で帝王切開術施行。術後 2 年 9 ヵ月で自然妊娠成立。
10 週で前回切開創と思われる部位に著明な切痕を認め、16 週時切痕部位の筋層は 2.6mm、20 週 2mm で現在外来
通院中である。
― 73 ―
45.塩酸リトドリンによる横紋筋融解症を契機に診断された筋緊張性ジストロフィ
ー合併妊娠の一例
○丸山 真弓、松尾 幸城、高木 潤一、手塚 尚広
公立置賜総合病院
【緒言】筋緊張性ジストロフィー (MD) は筋強直、筋萎縮、筋力低下などの筋症状を主徴とし、白内障や内分泌異常
などを合併する常染色体優性遺伝性の疾患である。若年発症ほど症状が重篤で、最重症型は先天性筋ジストロフィー
(CMD) と呼ばれる。一方、軽症例では成人まで診断されず、妊娠や薬剤使用による症状増悪を契機に診断される例
も散見される。今回我々は塩酸リトドリンによる横紋筋融解症の発症を契機に MD と診断された症例を経験したの
で報告する。
【症例】21 歳、1 経妊 1 経産。18 歳で第 1 子を出産し、児は生後 3 ヵ月で乳児死亡した。今回の妊娠
では妊娠 23 週から胎動減少、妊娠 28 週頃から羊水過多傾向を認めた。妊娠 30 週で AFI は 24 cm となり、羊水過
多の原因検索を目的に 30 週 2 日に入院した。入院時の CTG で規則的な子宮収縮を認め、切迫早産の診断で塩酸リ
トドリンを投与した。開始後 15 分で両下肢の筋肉痛が出現し、直ちに投与を中止した。翌日の検査で血中 CK 8,212
U/L、尿中ミオグロビン 42.9 ng/mL と異常高値を認め、横紋筋融解症と診断し補液治療を行った。頬がやせた顔貌
から筋疾患を疑い、神経学的精査を行った。MD が強く疑われ、周産期管理を目的に 32 週 3 日、高次医療施設へ転
院した。児は CMD であった。分娩後に母体の遺伝子検査を施行し、同時に検査した母、叔父とともに MD と確定診
断された。
【結語】MD 合併妊娠では児が CMD である可能性がある。妊娠中に横紋筋融解症を認めた場合には、MD
の可能性を疑い精査も考慮される。
46.妊娠後期に深部静脈血栓症を発症し、下大静脈フィルター留置し生児を得た1例
○遠藤 雄大1)、加茂 矩士1)、平岩 幹2)、大関 健治1)、斎藤 善雄1)、金 彰午1)
1)竹田綜合病院 2)福島県立医科大学
妊娠・分娩・産褥は深部静脈血栓症(以下、DVT)のリスク因子であり、帝王切開術は特にハイリスクとされる。
本邦での DVT 発症率は 0.03%であり、非妊時の 5~10 倍と報告される。今回我々は、妊娠後期に DVT を発症し抗凝
固療法、下大静脈フィルター留置を施行し、帝王切開術にて生児を得た 1 例を経験したので文献的考察を含め報告
する。
症例は 21 歳、0 経妊 0 経産。自然妊娠にて妊娠成立された。前医で妊婦健診されていたが、血圧上昇を認めたた
め、高血圧合併妊娠にて当院紹介となった。当院での妊婦健診では血圧も落ち着いており特変なく経過していた。
妊娠 39 週 4 日、左鼡径・足関節の疼痛を主訴に受診された。下肢静脈超音波断層法で左大腿静脈に血栓を認めた
ため、下肢静脈血栓症と診断し入院となった。ヘパリンの持続投与を開始し、下大静脈フィルターを留置し分娩管理
の方針とした。妊娠 40 週 0 日、陣痛発来を認めた。子宮口 4㎝開大の時点でヘパリンを中止とした。6 時間後、回
旋異常を認め、分娩の進行を認めなかったため、分娩停止の診断で帝王切開術の方針とした。全身麻酔下に施行され、
男児、3952g、Apgar score 1 分値 8 点、5 分値 9 点にて児を娩出した。
術後にヘパリンを再開した。術後 5 日目に下大静脈フィルターを抜去しワーファリン内服を開始した。術後 9 日
目に造影 CT 検査を施行され、左大腿静脈に血栓の残存を認めたが縮小傾向であり、術後 10 日目に退院となった。
現在、ワーファリン内服しながら外来管理であるが、妊娠中の血液検査でプロテイン S 活性の低下を認めたため、
プロテイン S 欠乏症の可能性も考慮し精査中である。
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47.妊娠中期に低位前方切除術と人工肛門増設術を施行した S 状結腸癌合併妊娠の
一例
○亀山沙恵子、富樫嘉津恵、下田 勇輝、三浦 康子、畠山 佑子、三浦 広志、佐藤 朗、
寺田 幸弘
秋田大学
【緒言】大腸がん合併妊娠は極めて稀であり、その母体予後は不良であるが、標準的な管理指針はないのが現状であ
る。今回我々は妊娠中期に進行 S 状結腸癌が診断され、管理方針の決定に難渋したが、関連各科と連携し、妊娠中に
S 状結腸切除と人工肛門増設術を行い、生児を得た例を報告する。
【症例】40 歳、0 経妊 0 経産。既往歴、家族歴に
特記事項なし。妊娠初期に一般健康診断で便潜血陽性であり、妊娠 16 週に下部消化管内視鏡検査を施行、S 状結腸
に全周性の腫瘍を認め、病理組織検査で低分化型腺癌と診断された。患者側の強い妊娠継続の希望があったため、妊
娠 17 週にセカンドオピニオンを目的として当院相談支援センターを受診した。患者側と関連各科で面談を重ね、妊
娠継続の方針となった。妊娠 23 週低位前方切除+人工肛門増設術を施行し、S 状結腸癌 Stage Ⅱと診断された。術
後に切迫早産のため、当科に転科した。妊娠 36 週 1 日に自然陣痛が発来し、自然分娩に至った。児は 2286g、Apgar
Score 1 分値 7 点、5 分値 9 点、低出生体重児のため NICU 入院となった。母体は産後 32 日目に当院外科でリンパ
節郭清+人工肛門閉鎖術を施行され、母児ともに経過は良好である。
【考察】妊娠中に診断された進行 S 状結腸癌に
対して、原発病巣の切除術を行った後に、妊娠後期まで妊娠を延長し、自然分娩で生児を得た症例を報告した。進行
期の大腸がん合併妊娠は妊娠後期の増悪が報告されており、悪性腫瘍への介入の時期・方法、早産児の合併症などを
考慮すると関連各科による集学的な検討とそれに基づいたインフォームドコンセントが必要となる。本邦での症例
が蓄積され、標準的な管理指針の作成が望まれる。
48.腫瘍崩壊症候群により急性腎不全を来したと考えられる悪性腫瘍合併妊娠の1例
○湊 敬廣、佐々木 恵、黒澤 靖大、佐藤 孝洋、大塩 清佳、徳永 英樹、西郡 秀和、
杉山 隆、八重樫伸生
東北大学
【はじめに】腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)は大量の腫瘍細胞の急激な崩壊により高尿酸血症、高リン血
症、LHD 高値、代謝性アシドーシスおよび急性腎機能障害を呈する病態を指す。一般に抗癌剤に対して感受性の高
い造血器悪性疾患に起こりやすいとされている。今回われわれは消化器系由来と考えられる悪性腫瘍を合併した妊
婦において、治療前に腫瘍崩壊症候群を引き起こしたと考えられる症例を経験したので報告する。
【症例】34 歳、0
経妊 0 経産 既往歴:慢性甲状腺炎 自然妊娠後、近医で妊婦健診に通院していた。初期の超音波所見では卵巣を含め
骨盤内所見に異常を認めなかった。妊娠 27 週頃より食思不振、倦怠感を認めたため、29 週 3 日、前医受診した。血
圧上昇および腎不全を認めたため当科紹介となった。初診時の血液検査所見では尿酸値 17.6 mg/dl、LDH 1,360
U/l、BUN 44 mg/dl、クレアチニン 6.07 mg/dl と高値であり、妊娠高血圧症候群および急性腎不全を考え、同日帝
王切開施行した。術中所見では、多量の血性腹水を認め、腹腔内を検索したところ、両側卵巣の腫大、傍大動脈リン
パ節の腫脹を認めた。消化器由来の転移性卵巣腫瘍および多発転移を考え、両側卵巣腫瘍を生検して閉腹。術後腎不
全および軽度循環・呼吸不全を認めたため、持続的血液濾過透析(CHDF)およびカテコラミン、経鼻的酸素投与を
行い、管理を行った。抄録投稿の時点では、原発巣特定のため免疫染色を含めた病理検査、および消化管精査を施行
中である。
【考察】今回の発症の原因は転移巣を含めた腫瘍の著しい増大と細胞回転の亢進による大量の腫瘍細胞の
破壊によるものと考えられた。固形癌の治療前おける TLS について若干の文献学的な考察を加えて報告する。
― 75 ―
49.異なる転帰を辿った CHMCF(complete hydatidiform mole coexistent with a
fetus)2症例の検討
○清水 孝規1)、永井 智之1)、久野 貴司1)、阿部 雄悟1)、市川さおり1)、吉田 祐司1)、
杉山 隆2)
1)石巻赤十字病院 2)東北大学
【緒言】CHMCF は非常に稀な病態であり、発症頻度は約 1/2-10 万妊娠と言われている。今回我々は異なる転帰を
辿った 2 症例を経験したのでここに報告する。
【症例 1】27 歳、1 妊 0 産。不妊治療の後妊娠が成立し近医で経過観
察されていた。妊娠 12 週頃より 6cm 大の腫瘤様構造を認めたため精査加療目的に紹介。超音波上 CHMCF が疑わ
れたため高次医療機関に紹介となった。染色体検査では正常核型であった。十分な IC の上妊娠継続の方針となった
が、妊娠 30 週時に hCG 値の上昇を認め、胸部レントゲン上多発肺転移が疑われたため 32 週時に帝王切開にて娩
出。その後化学療法(MEA:MTX+ETP+ACT‑D 療法)を計 6 コース施行した。現在再発兆候なく経過観察中である。
【症
例 2】31 歳、2 妊 2 産。近医で妊婦健診施行中に胞状奇胎様の構造物を子宮内に認め精査加療目的に紹介。超音波
及び MRI にて CHMCF が疑われたため高次医療機関に紹介となった。十分な IC の上で termination を希望されたた
め妊娠 18 週の時点で児娩出となった。児の外表異常はなく、分娩後の画像検索でも転移性病変は指摘されなかっ
た。現在経過観察中である。
【考察】CHMCF は正常妊娠と全奇胎の二卵性双胎と考えられている。発症頻度は非常
に稀であるが排卵誘発例における報告は比較的多いとされる。鑑別としては胎児を伴う部分奇胎や mesenchymal
dysplasia が挙げられ、羊水穿刺による胎児染色体の検索や p57KIP2 免疫染色などが診断に用いられる。胎児の核型
が正常であった場合は胎児奇形の頻度はそれほど上昇しないという意見もあり、妊娠継続例では胎児生存例も多く
報告されている。一方で、妊娠高血圧症候群や肺塞栓症等の母体合併症や続発性絨毛疾患の発症のリスクがあるた
め、妊娠継続を希望する場合は厳重な経過観察が必要である。
50.超肥満子宮体癌症例の手術を経験して
○二神 真行、横山 良仁、太田 圭一、重藤龍比古、水沼 英樹
弘前大学
【はじめに】子宮体癌は年々増加し、当科では昨年 47 件の子宮体癌手術を施行し、BMI30 を超える症例が 3 割を占
めた。今回身長 155cm、体重 160kg、BMI66.6 の体癌手術を経験した。
【症例】39 歳、1 妊 0 産。25 歳結婚。1 日
20 本、23 年間喫煙。睡眠時 CPAP 導入中。うつ、糖尿病、気管支喘息の合併症があった。8 年前性器出血が多いた
め前医受診。子宮内膜組織診は子宮内膜異型増殖症であった。4 年前から本人と相談の上高用量黄体ホルモン療法を
行っていた。前医では不定期の受診状況であったが、本人、夫から妊孕性温存は希望しないとの申し出があり、手術
目的に当科紹介。紹介時体重は 160kg をこえ、手術目的に入院したが禁煙をしていないため手術が中止された。約
1 ヶ月間禁煙と体重コントロールを目的に他医に入院し体重は 5kg 減少した。組織診の再評価で類内膜腺癌 G1 で
あった。麻酔科と協議し手術台に補助台をつけ落下を防止、開脚位の状態で手術を施行。オムニトラクトで視野を確
保し、深い骨盤底でも縫合できる持針器や摂子、長いベッセルシーリング器機を使用し手術は完遂できた。単純子宮
全摘、両側付属器切除術で手術時間は 2 時間 44 分、出血量は 300g だった。皮下埋没縫合、ドレーン留置を行い、
一部創部離開をおこした以外は重篤な合併症はなく、類内膜腺癌 G1、IA 期と診断し術後治療は行っていない。術後
低分子ヘパリンを使用した。体重は 140kg 台に減少した。
【まとめ】子宮体癌で BMI50 をこえる症例は稀でなく、さ
らなる肥満患者症例への対策が必要になるであろう。この手術を経験し麻酔科、内科、精神科、看護スタッフ等の協
力が大切なことを実感した。
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51.悪性骨盤内腫瘍を疑われた Douglas 窩深部子宮内膜症の1例
○井原 基公、徳永 英樹、大槻 愛、長谷川純子、渡部 洋、八重樫伸生
東北大学
Douglas 窩深部内膜症は卵巣チョコレート嚢胞などと異なり、画像診断などで客観的に診断することは困難であ
る。今回我々は当初悪性骨盤内腫瘍を疑ったが、最終的に Douglas 窩深部子宮内膜症を診断された症例を経験した
ので報告する。
症例は 62 歳 3 経妊3経産、5 年前より腹部腫瘤、3 年前より体重減少(2‑3kg)していた。食欲不振のため近医
受診し、骨盤内腫瘍を指摘された。骨盤内巨大腫瘤による腎後性腎不全と診断され、右腎瘻造設(左腎は萎縮)施行。
子宮筋腫や卵巣癌を疑われ、全身管理・手術目的に当院婦人科転院した。腎機能改善後に子宮全摘+両側付属器切除
予定で開腹したところ、ダグラス窩から上腹部まで達する巨大腫瘍が子宮後壁、骨盤腹膜、S 状結腸~直腸と癒着し
ていた。腫瘍と子宮および S 状結腸の境界は不明で分離できず、子宮・S 状結腸と腫瘍を一塊にして摘出した(単純
子宮全摘術+両側付属器切除+低位前方切除術+大網部分切除)
。最終病理結果として、子宮や両側付属器、S 状結
腸に連続性を認めないダグラス窩に発生した子宮内膜症と診断された。骨盤内腫瘍の原因として深部子宮内膜症も
念頭に置く必要があることを再認識した。
52.無月経に対し長期間ホルモン療法が施行されていた FSH 産生下垂体腫瘍の一例
○吉田 史子1)、大原 美希2)、鈴木 聡2)、菅沼 亮太2)、小宮ひろみ2)、藤森 敬也2)
1)白河厚生総合病院 2)福島県立医科大学
【症例】25 歳、0 妊 0 産、既婚。初経 14 歳。初経発来後、月経不順なく経過していた。20 歳時大量性器出血を認
めAクリニック受診した。器質的疾患認めず、機能性子宮出血としてホルモン注射(詳細は不明)を施行され一旦止
血するも、出血を繰り返していた。2 年間同院にてカウフマン療法と、高プロラクチン血症も認めたためカベルゴリ
ンの内服治療が施行されていたが、症状改善せず、精査希望し、B 病院受診した。同院から当科での精査加療勧めら
れ紹介受診となった。当科初診時、LH:8.32mlIU/ml、FSH:71.68mIU/ml、E2:2.99pg/ml と FSH は上昇していたが、
LH は正常値、E2 は低下していた。また、PRL:32.67mIU/ml と軽度高値を認めた。甲状腺機能には異常を認めなか
った。超音波検査と骨盤部 MRI 画像では子宮は正常大であったが、卵巣は萎縮していた。頭部 MRI ではトルコ鞍部
に正常下垂体を圧迫する直径 10mm 大の腫瘍を認め、FSH 産生下垂体腫瘍を疑い、本人の強い挙児希望もあったた
め、当院脳外科医により内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術が施行された。免疫染色にて FSH 及び LH 陽性細胞を認
め、病理診断は FSH‑LH cell adenoma であった。術後より徐々に FSH が低下し、1 か月後には自然に月経発来を認
めた。今後は挙児に向けて加療を進めて行く予定である。
【結語】今回長期間の月経異常を契機に発見された FSH 産
生下垂体腫瘍の一例を経験した。月経異常を主訴とした生殖可能年齢女性の場合は、ゴナドトロピン産生性下垂体腫
瘍も鑑別疾患の一つとし、検索が必要であると考える。
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53.診断に苦慮した子宮体部神経内分泌性小細胞癌の一例
○畑山 伸弥1)、畑山 寿緒1)、船越 真生1)、菅原 英治1)、藤原 純1)、門間 信博2)
、
1)
松田 壯正
1)盛岡赤十字病院 2)盛岡赤十字病院病理部
【はじめに】子宮体部小細胞癌は全子宮癌の 1%以下とされ,稀な疾患である.類内膜腺癌と比べ予後は不良とされ
ている.今回我々は免疫組織学的検索などにより,神経内分泌性小細胞癌と診断した一例を経験したので報告する.
【症例】45 歳 2 経妊 2 経産.子宮頚管ポリープ,過長月経,不正出血を主訴に近医より紹介された.易出血性で基
部が不明瞭な母指頭大の子宮ポリープを認め,組織生検では非定型カルチノイドが疑われた.MRI 検査では子宮体
部前壁から内腔と連続する 37x27mm 大の腫瘍を認め,内腸骨リンパ節の腫大が疑われた.手術の方針となり,準
広汎子宮全摘術,骨盤リンパ節郭清術を施行.術中腹水細胞診は陰性.肉眼的には,子宮前壁に浸潤を伴った暗赤色
腫瘤が子宮内腔に膨隆していた.手術進行期分類は stageⅠb で放射線療法の方針となった.照射終了後の CT で膣
断端部に 24mm 大の結節様陰影を認め,追加化学療法の方針となった.
【病理像】内膜から漿膜直下の平滑筋層まで,
小型で核の腫大を伴った類円形の腫瘍細胞がびまん性に増殖していた.免疫染色では LCA 陰性,vimentin 陰性でリ
ンパ腫や子宮肉腫,子宮内膜間質肉腫は否定的であった.神経内分泌マーカーでは synaptophysin は中等度陽性.小
細胞癌で感受性が高いとされる CD56 は陰性であった.細胞異形、核分裂像は小細胞癌とするには比較的高度では無
いものの,WHO 分類に基づいて神経内分泌形質を伴う子宮体部小細胞癌と診断した.
54.卵巣平滑筋肉腫の1例
○古武 陽子、庄子 忠宏、田中 詩乃、小見 英夫、竹内 聡、杉山 徹
岩手医科大学
今回我々は非常に稀な卵巣平滑筋肉腫の 1 例を経験したので報告する.症例は 40 歳、5 経妊 1 経産。前医にて子
宮筋腫と診断され手術を施行したが、術中所見は左卵巣腫瘍であり,左卵巣腫瘍摘出術を施行した.また右卵巣腫瘍,
漿膜下筋腫も認め摘出した.病理診断はいずれも平滑筋腫(左卵巣は一部核分裂像あり)と診断され,経過観察の方
針となった.術後 9 ヵ月後頃より腰背部痛を自覚し,近医を受診したところ多発肝腫瘍を指摘された.精査にて原
発性肝がんは否定され、骨盤 MRI にて左卵巣腫大,右腸骨リンパ節腫大を認めたため当科に紹介となった.当科で
は病理標本を再検討し,卵巣平滑筋肉腫と診断した.また左肩に皮下腫瘤を認め,生検にて平滑筋肉腫の転移と診断
した.卵巣平滑筋肉腫の再発と診断し,gemcitabine/docetaxel 療法を開始した.現在 3 サイクル施行し,重篤な有
害事象は認めず,抗腫瘍効果は PR が得られている.
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55.子宮腺筋症から発生した類内膜腺癌の一例
○亀田 里美、我妻 理重、嶋田 未知、松本 大樹、星合 哲郎
大崎市民病院
子宮腺筋症は性成熟期の女性に比較的高い頻度で認められる代表的な良性疾患である。極まれに癌化することが
知られているが、不正出血など臨床症状が乏しく、スクリーニングによる早期発見が困難な例が多い。
今回我々は、子宮筋腫の診断で手術を施行し、術後に病理標本により腺筋症の一部から類内膜腺癌が認められた症
例を経験したため、文献的考察を含め報告する。
症例は 44 歳、0 経妊 0 経産、高度貧血と腹部腫瘤を主訴に内科より紹介受診となった。既往歴として XX 年に筋
腫核出術を施行している。超音波および MRI にて多発子宮筋腫、右卵巣内膜症性嚢胞を認めたため、単純子宮全摘
出術、右付属器切除術を施行した。術前の頸部・体部細胞診では異常は認めなかった。
術中所見では内膜症によるダグラス窩の癒着が強く、膣上部切断術後に頸部を追加切除した。病理診断にて、追加
切除した子宮頸部の一部から子宮腺筋症由来の Endometrioid adenocarcinoma G1 を認め、断端陽性の可能性を指
摘された。追加治療として現在、化学療法併用放射線治療施行中である。
子宮腺筋症が発生母地となった子宮体癌では、病変と子宮内膜面とに連続性がない場合、通常の内膜細胞診や組織
診では悪性所見は認められず、術前診断が困難である。近年、MRI 拡散強調画像や PET 検査が術前診断に有用であ
るとする報告もあり、悪性化を念頭においた継時的な観察が必要であると考える。
56.リンパ脈管筋腫症合併妊娠の1症例
○夏山 貴博、熊谷 祐作、吉田 瑤子、末永香緒里、松田 雪香、小泉 俊光、會田 剛史、
今井 紀昭
八戸市立市民病院
【諸言】リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)は、肺胞壁、胸膜、縦隔、後腹膜、骨盤腔のリンパ
節、腎臓などで平滑筋様細胞が増殖する疾患である。肺病変による労作時呼吸困難や自然気胸、血痰などが主症状だ
が、時に良性腫瘍の腎血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)を伴う全身性疾患である。発症は稀であり確立された
治療法がない特定疾患に指定されている。20~30 歳台の女性に好発し、妊娠に伴い、母体において、乳び胸、気胸
の発症や AML の増大、破裂のリスクがある一方、児においても早産や発育不全のリスクがあり、慎重な妊娠管理を
要する疾患である。今回、我々は LAM 合併妊娠の 1 例を経験したので報告する。
【症例】39 歳、初産婦。33 歳時
に前医で LAM と診断され、以後同院でフォローされていた。35 歳時に AML を指摘され、左腎動脈塞栓術を施行さ
れている。自然妊娠され、里帰り出産のために妊娠 34 週 2 日に当科に紹介受診となった。当院呼吸器内科とともに、
健診時、問診、胸部 X 線写真、酸素飽和度モニターで呼吸機能の増悪がないことを確認していた。児の発育も問題
は無かった。気胸のリスクを考慮し、妊娠 37 週 5 日に腰椎麻酔下で選択的帝王切開術を施行した。児は 2814g で
Apgar score8/9 だった。術後経過良好で術後 5 日目に退院となった。
【まとめ】本症例は病態が落ち着いている状態
で妊娠し、比較的順調に経過した。しかし、本疾患は症例によりその経過が多種多様であるという報告も多く、各科
で連携をとり個々の症例に応じた対応を行うべきである。
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57.第1子、第2子分娩後に HELLP 症候群を繰り返した1症例
○横山 智之、富田 芙弥、齋藤 美帆、太田 恭子、大槻 健朗、中里 浩樹、鈴木 久也、
谷川原真吾
仙台赤十字病院
HELLP 症候群は全分娩の 0.26~0.6%に発症し、HELLP 症候群の 30%は産褥期に発症する。
今回、我々は、第 1 子分娩時、第 2 子分娩時とも、産褥期に HELLP 症候群を繰り返し発症した症例を経験したの
で報告する。
症例は 31 歳女性、第 1 子自然分娩後、約 14 時間後に血圧上昇と上腹部痛、血液生化学検査にて肝酵素の上昇、血
小板減少、凝固系異常を認めた。HELLP 症候群と診断し、Ca 拮抗薬、硫酸マグネシウム点滴、ガベキサートメシル
酸塩点滴を開始した。産褥 3 日目より、肝酵素、血小板、凝固系の改善傾向を認め、経過良好にて産褥 11 日目に退
院となった。今回、第 2 子自然分娩後、約 1 時間後に、血圧 170/100mmHg と高値となり、Ca 拮抗薬を内服し経
過観察していた。約 14 時間後に上腹部痛が出現し、血液生化学検査で肝酵素上昇や血小板の減少を認めた。HELLP
症候群と診断し、初回分娩時と同様、Ca 拮抗薬、硫酸マグネシウム点滴、ガベキサートメシル酸塩点滴を開始した。
以降の経過も、初回分娩時同様に、血圧、血液生化学検査所見の改善を認め、産褥 6 日目に退院となった。
HELLP 症候群は、妊娠経過や分娩の経過に異常を認めず、急激に発症することがあり注意を要する。母体死亡の
原因となり得る疾患であり、早期診断、予後改善のため、産後の血圧、血液検査、尿量、臨床症状などを注意深く観
察することが重要である。
58.不整脈合併妊娠に対して硬膜外無痛分娩を施行した2症例
○高橋 聡太、佐藤 多代、湊 敬道、淀川 祐紀、西本 光男
岩手県立中部病院
硬膜外無痛分娩は日本、特に東北地方においてはまだ一般的に普及しているとは言い難いがその潜在的需要は高い
と考えられる。今回、我々の施設で初めて、不整脈合併妊娠の妊婦 2 症例に対して硬膜外無痛分娩を行った。その
方法および経過を報告する。
【方法】
「妊婦が無痛分娩の開始を希望したとき」を目安に硬膜外カテーテルを留置し、
無痛分娩を導入した。硬膜外カテーテルは L2/3 または L3/4 から穿刺し、頭側 4cm の位置にカテーテルを留置し
た。A 液:0.2%ロピバカイン 9ml+フェンタニル 2ml(100μg+生理食塩水 9ml(Total 20ml;)および B 液;0.2%
ロピバカイン 25ml+フェンタニル 2ml(100μg)+生食 23ml(Total 50ml)を用意。A 液を主に初期鎮痛に、B
液を主に鎮痛の維持のために使用した。
【症例 1】35 歳 0G0P。不整脈合併妊娠により、近医より紹介。当院循環器
科で施行したホルター心電図で 5700 回/日、時折連発する心室性期外収縮を認め、硬膜外無痛分娩の方針とした。
39 週 0 日前期破水にて入院。その後陣痛発来し、頚管 3cm 開大した時点で硬膜外無痛分娩を導入。39 週 1 日より
微弱陣痛のため oxytosin にて陣痛を促進。最終的には全開大後に分娩停止となり、吸引分娩を施行した。経過中循
環動態に影響を与えるような期外収縮の出現なし。無痛分娩後導入後の痛みは自制内であった。児は 2960g、Apgar
score8/9 であった。
【症例 2】35 歳 1G1P。WPW 症候群、僧帽弁閉鎖不全症を指摘されていた。本人と相談の上、
硬膜外無痛分娩を行う方針とした。39 週 3 日、陣痛発来。来院時、頚管 4cm 開大しており、硬膜外無痛分娩を導入。
穿刺手技終了後には頚管 8cm まで開大しており、導入後約 1 時間 30 分で経腟分娩に至った。経過中循環動態に影
響を与えるような不整脈の発生なし。
「前回の分娩よりは痛くない」とのコメントであった。児は 2955g、女児。Apgar
score 8/9、UmApH 7.29 であった。
― 80 ―
59.横紋筋融解症を呈した重症妊娠悪阻の1例
○齋藤 淳一1)、松本 大樹1)、嶋田 未知1)2)、亀田 里美1)3)、星合 哲郎1)、
我妻 理重1)
1)大崎市民病院 2)仙台市立病院 3)スズキ記念病院
【はじめに】妊娠 5 ~6 週より一過性に悪心・嘔吐、食欲不振、食嗜変化などの消化器症状が出現し、体重減少、脱
水症状を呈し、糖質摂取不足から代謝異常を生じた結果、ケトン体産生促進により血中・尿中アセトン体が増加し、
全身状態が衰弱する場合を重症妊娠悪阻という。稀に生命の危険を及ぼす状態となり、不可逆性になることがあり、
医学的介入を必要とする。今回、重症妊娠悪阻により飢餓状態・低 K 血症をきたし、横紋筋融解症を呈した症例を
経験したので報告する。
【症例】症例は、36 歳・2 経妊 2 経産(経腟分娩 2 回)
・前 2 回とも妊娠悪阻既往あり。前
医で妊娠悪阻にて入退院を繰り返しており、妊娠 13 週で四肢脱力感を主訴に、当院救急外来搬送。当科受診時、採
血検査で低 K 血症(2.1mEq/L)・高 CK 血症(23678IU/L)が認められ、嘔気・嘔吐・四肢脱力も強く、重症妊娠悪阻・
横紋筋融解症として入院管理となった。入院後は refeeding 症候群にも留意しながら、高カロリー輸液、電解質およ
びビタミンの補正を行った。その後、血中 CK は徐々に減少し、血中 K 値も正常範囲内まで回復した。全身状態も食
事摂取可能までになり、体重も回復傾向の為、退院となった。
【まとめ】重症妊娠悪阻で飢餓状態から低 K 血症に至
り、その結果、横紋筋融解症に至った症例を経験した。重症妊娠悪阻を適切に管理しない場合、母児の生命にも関わ
るため、妊娠悪阻の初期段階からの栄養管理は重要であると思われた。
60.妊娠 37 週に脳梗塞を発症し血栓溶解療法を行った1例
○桃野 友太、工藤多佳子、島 崇、松浦 類、石垣 展子、武山 陽一、明城 光三
国立病院機構仙台医療センター
妊娠中は分娩に備え凝固能が亢進することが知られているが,妊娠中の脳梗塞の発症頻度は非妊娠群と変わらない
事が報告されている。今回妊娠後期において脳梗塞を発症し血栓溶解療法を施行した症例を経験したので報告する。
【症例】38 歳女性。妊娠 37 週 6 日。1 妊 1 産(自然分娩)。既往歴に特記すべきことなし。10 月中旬、突然の左上下
肢麻痺が出現し前医へ救急搬送。顔面を含む左半身麻痺及び感覚障害あり、National Institute of Health Stroke Scale
(NIHSS)は 14 点であった。頭部 MRI で右レンズ核線状体動脈領域に拡散強調画像で高吸収域、MRA で右 M1 閉塞
を認め、脳梗塞と診断し血栓溶解療法の適応と判断した。発症から約 3 時間で t‑PA 投与、当院脳神経外科へ紹介さ
れ発症から約 4 時間 30 分で血栓回収術が施行され、TICI grade 2b(閉塞血管支配領域の 50%以上の領域の灌流)の
再開通を得た。術後わずかに extravasation 認めるも自然止血された。術後 1 日目には NIHSS は 5 点と改善が認めら
れた。経膣分娩は血圧上昇のリスクがあり、帝王切開術での分娩の方針となった。抗凝固療法開始前の分娩が適切と
判断し、第 3 病日(妊娠 38 週 1 日)に帝王切開術を施行、3020g、女児、Apgar score8 /9。胎児の凝固能に異常は認
めなかった。母体は抗凝固療法開始となり、リハビリテーションにて左上下肢麻痺は改善、ADL もほぼ自立した。経
過中に精査を行い抗リン脂質抗体症候群や凝固機能異常などの存在は否定された。心臓超音波検査にて卵円孔開存
症を認めたため、下肢静脈血栓からの奇異性脳塞栓症と考えられた。第 23 病日さらなるリハビリテーション目的に
他病院へ転院となっている。
― 81 ―
61.腹腔鏡下手術にて加療しえた卵巣腫瘍合併妊娠の2例
○大関 健治、金 彰午、遠藤 雄大、加茂 矩士、斎藤 善雄
竹田綜合病院
【緒言】妊娠中の卵巣腫瘍合併の頻度は 1~4%とされる。合併症としては破裂、捻転、梗塞、出血などがあり急性腹
症をきたす場合がある。手術療法として従来開腹手術が多く行われてきたが、近年では多くの施設により腹腔鏡下手
術の安全性に関する報告がみられる様になり、その数は増加傾向にある。今回我々は妊娠初期に診断された卵巣腫瘍
を腹腔鏡下に加療しえた2例を経験したのでここに報告する。
【症例1】26 才 1 妊 1 産。妊娠初期に近医で卵巣腫
瘍指摘され妊娠 8 週で今後の周産期管理目的に当科紹介となった。12㎝の左卵巣腫瘍認められた。腫瘍マーカーは
CA125:150U/ml、CA19‑9 58U/ml であった。MRI では 12×8㎝のチョコレート嚢腫が確認されたが充実性部分
は認められなかった。15 週 1 日に全身麻酔下での単孔式腹腔鏡下左卵巣腫瘍核出術施行された。病理診断は En‑
dometriosis であった。手術後予防的にイソクスプリンの点滴を投与されたが、その後内服に切り替わり術後 7 日目
に退院となった。現在妊婦健診通院中であるが特変は認められていない。
【症例2】37 才 2 妊 2 産。妊娠を主訴に
当科外来初診し子宮内に胎嚢と 7.7×6.7cmの右側卵巣腫瘍認められた。16 週 3 日に全身麻酔下での腹腔鏡手術
を施行された。当初は単孔式で開始されたが、腫瘍がダグラス窩に落ち込んでおりまた妊娠子宮が視界の妨げとなっ
たためトロッカーを追加して手術を完遂した。病理診断は Endometriosis であった。術後予防的にイソクスプリン投
与されたが、内服に切り替わり術後3日目に退院となった。その後の妊娠経過は順調であり 39 週で経腟分娩となっ
た。
【結語】妊娠中の良性卵巣腫瘍に対する腹腔鏡下手術は開腹術に比べ侵襲が少なく、子宮損傷や気腹圧などに注
意すれば安全に手術を完遂できると考えられた。
62.術前診断が困難であった後腹膜腔に発育した巨大漿膜下変性筋腫の一例
○石山美由紀、松本沙知子、大山 喜子、赤石 美穂、大槻 愛、田邉康次郎、早坂 篤、
渡辺 孝紀
仙台市立病院
【緒言】子宮筋腫は日常よく遭遇する疾患のひとつである。一般的にエコー検査、MRI 検査で容易に診断に至るが変
性筋腫では非典型的な構造を示すことが報告されている。特に漿膜下筋腫では子宮との連続性が不明瞭なことがあ
り、卵巣腫瘍や GIST、後腹膜腫瘍との鑑別が困難な場合がある。今回、術前診断が困難であった巨大漿膜下変性筋
腫を経験したので報告する。
【症例】71 歳、女性。4 経妊 3 経産(経腟分娩 3 回、人工妊娠中絶 1 回)、閉経 54 歳、既
往歴に特記事項はない。9 年前から腹部腫瘤を自覚、次第に腹部膨満感が増強した。近医内科で撮影した CT で巨大
卵巣腫瘍を指摘され当科初診。MRI で T2WI、T1WI ともに等信号の巨大嚢胞性腫瘍を認めた。両側腎臓は L1 レベ
ルまで圧排され、左腎は腎盂が拡張し水腎症を呈していた。卵巣腫瘍を第一に考え開腹手術を行った。両側付属器は
正常であった。腫瘍は後腹膜下で発育していた。腫瘍内容を穿刺した後、腫瘍壁と後腹膜下との剥離を進めたところ、
腫瘍は子宮峡部左側と連続していることが判明し、漿膜下筋腫と診断された。子宮全摘出術、両側付属器切除術を行
った。手術時間 4 時間 24 分、腫瘍内容物:褐色, 漿液性 19100ml、出血量 440g。後腹膜腫瘍を手術する場合、尿
管や血管、腸管などとの剥離操作が必要となり、術前には十分な準備が必要である。当症例では巨大な嚢胞性腫瘍で
あることから卵巣腫瘍を第一に考え後腹膜腫瘍は予想していなかった。画像を振り返ると、水腎症や腎の上方偏位よ
り、後腹膜下腫瘍の可能性は十分に考えられた。腫瘍性病変を認めた場合、周辺臓器の解剖学的位置を考慮して評価
する必要がある。
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63.巨大子宮筋腫に対して子宮動脈塞栓術を施行し高カリウム血症を来した1例
○田中 恵子、小泉 俊光、熊谷 祐作、比嘉 健、末永香緒里、松田 雪香、會田 剛史、
今井 紀昭
八戸市立市民病院
【緒言】子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(Uterine artery embolization:UAE)は 1994 年 Ravina らが報告し、現在そ
の有益性が広く認知されている。Ravina らも元々は手術の出血量軽減目的に UAE を用いており、現在も出血多量が
予想される際の術前処置として行われることもある。今回我々は、巨大子宮筋腫に対して子宮全摘術の出血量軽減目
的に UAE を施行し、急性腎不全・高カリウム血症を来したため術前に人工透析導入を要したが、出血少量で子宮全
摘術を施行し得た 1 例を経験したため、報告する。
【症例】症例は 48 歳女性であり、腹部腫瘤感で前医を受診し剣
状突起まで至る超巨大子宮筋腫を指摘された。手術 2 日前に出血量軽減目的に UAE を施行し、同日 K 8.1mEq/L の
高カリウム血症、急性腎不全を来し、持続的血液濾過透析を導入した。透析導入後も高カリウム血症、腎不全改善な
く、緊急手術の方針となった。腹式単純子宮全摘術+両側付属器切除術試行し、術中出血量は 105g、標本は 10.8kg
であった。子宮筋腫には肉眼および病理所見ともに急性壊死像を多数認めた。術後腎障害、高カリウム血症は改善し、
現在経過良好である。
【考察】本症例は UAE によって腫瘍崩壊症候群と同様の病態が起こったと考えられる。UAE に
よる合併症は多数報告されているが、本症例のような急性腎不全・高カリウム血症を来すことはまれである。更なる
文献的考察を加え、報告する。
64.parasitic myoma の2例
○田邉康次郎、石山美由紀、松本沙知子、大山 喜子、赤石 美穂、大槻 愛、早坂 篤、
渡辺 孝紀
仙台市立病院
parasitic myoma は子宮との連絡がなく、筋腫が大網や腹膜と連絡し血流の供給を得ているものを言う。医原性と
非医原性に分類されており、医原性 parasitic myoma とは過去の手術時に生じた子宮筋腫の断片が、腹腔内に生着
し、発育したものを言う。とくに最近では、腹腔鏡下子宮筋腫核出術(LM)時に電動モルセレーター使用により子
宮筋腫の断片が飛散し、回収しきれず発症したと推測される症例が多く報告されている。非医原性 parasitc myoma
は腹部手術歴がなく、有茎性漿膜下子宮筋腫の茎が自然に離断され、腹腔内に遊離した子宮筋腫が周辺臓器に生着し
たものと考えられている。LM による医原性の発生頻度は 0.1%と報告され、非医原性はさらに稀であると考えられ
ている。今回我々は parasitc myoma であった 2 例-LM 既往があり医原性と考えられた 1 例と腹部手術歴がなく非
医原性と考えられた 1 例-を経験した。文献的考察を加え報告する。
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65.子宮筋腫に合併した子宮魚鱗癬の一例
○高田めぐみ1)、菅野 潔2)、鈴木 和夫2)、大和田真人2)、鈴木 博志2)
1)福島県立医科大学 2)寿泉堂綜合病院
【背景】1885 年 Zeller によって初めて“ichthyosis uteri”(子宮魚鱗癬)という単語が報告され、これは子宮内膜が広範
囲に扁平上皮化生する極めて稀な疾患である。その発生の機序は不明であるが、子宮留膿症・慢性炎症・ビタミンA
欠乏などが誘因となる可能性が指摘されている。子宮魚鱗癬自体は良性疾患と考えられているが、本疾患を背景とし
た異型上皮・扁平上皮癌や類内膜腺癌の報告もあることからその取扱いには注意を要する。今回我々は、子宮筋腫に
合併した子宮魚鱗癬の 1 例を経験したため報告する。
【症例】58 歳、6 経妊 3 経産、50 歳で閉経。不正性器出血を
主訴に近医を受診され、精査目的に当科紹介となった。子宮内膜細胞診を 2 回施行したが、2 回とも扁平上皮と炎症
細胞のみが認められた。子宮腔内に φ4×5cm 大の腫瘤性病変を認め、MRI で変性子宮筋腫もしくは子宮肉腫の疑
いと診断し、腹式単純子宮全摘術+両側付属器切除術を行ったが、術中迅速組織診断で悪性所見は認められなかっ
た。病理所見では、内膜側は著明に肥厚した重層扁平上皮で覆われ異型はなく、内部には上皮細胞巣・角化嚢胞を認
め、内膜腺との間に移行帯を認め、高度な扁平上皮化生と考えられた。また筋層側には硝子化を伴う平滑筋腫を認め、
子宮筋腫に合併した子宮魚鱗癬と最終診断された。一部にコイロサイトーシスを認めたが、免疫染色で p16 は陰性
であった。
【結論】子宮魚鱗癬は報告数の少ない極めて稀な疾患ではあるが、本疾患と診断された場合は悪性疾患の
合併を念頭に慎重に取扱うべきであると考える。我々の知る限り、子宮筋腫に合併した子宮魚鱗癬としては初の報告
である。
66.当科におけるマイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)による過多月経の治療
成績
○大和田真人、高田めぐみ、田中 昌代、菅野 潔、鈴木 和夫、鈴木 博志
寿泉堂綜合病院
従来過多月経の対応で薬物療法など保存的治療が困難な場合は手術治療が行われてきた。近年子宮全摘術に代り、
より低侵襲の microwave endometrial ablation(以下 MEA)が注目されてきている。当科でも H25.10 月より MEA を
導入し、H27.2 月末まで 34 例に治療を施行した。そのうち術後の治療成績評価判定が可能であった 26 例について、
MEA の有効性について検討した。
【対象/方法】対象は過多月経が主訴の挙児希望のない 34 名(36~55 歳)。過多
月経の原因として子宮筋腫(M 群)18 名、子宮腺筋症(A 群)13 名、機能性出血(F 群)3 名。MEA を施行され、
術後 4 か月以上を経て治療効果判定が可能であった 26 名(M 群 13 名、A 群 10 名、F 群 3 名)について、月経量・月
経痛・治療満足度を visual analog scale(VAS)にて評価した。
【結果】月経量に関する VAS は術前の 10 から術後
1.93±2.47(mean±SD)に改善した。また術後無月経となったものは 12 名(M 群 3 名、A 群 6 名、F 群 3 名)であ
った。月経痛の VAS は術前後で 4.65±3.22 から 1.50±2.18 に改善した。治療満足度は 8.10±2.60 であった。ま
た M 群、A 群の 2 群間において月経量、月経痛、満足度に有意差は認めなかった。F 群においてはすべて無月経と
なり疼痛も軽減した。
【結論/考察】過多月経に関して MEA はかなり有効な手段であることが確認された。月経量減
少・月経痛の改善および満足度において M 群/A 群間に有意差は認めなかったが、すべてにおいて A 群の方が効果
的な傾向が得られた。また術後無月経も A 群で多く見られた。特に F 群に対して MEA はかなり効果的と考えられ
た。
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67.腹腔鏡下子宮筋腫核出術における電動式モルセレーターを用いない子宮筋腫回
収法~当院での工夫~
○小島 学、鈴木 聡、添田 周、渡辺 尚文、藤森 敬也
福島県立医科大学
【背景】腹腔鏡下子宮筋腫核出術において、核出した子宮筋腫の回収方法として腹腔鏡下手術用電動式モルセレータ
ーが広く用いられてきた。しかし 2014 年 4 月に FDA(米国食品医療薬品局)より「子宮筋腫がある女性の腹腔鏡
下の子宮摘出術または子宮筋腫核出術において、腹腔鏡下用電動式モルセレーターを使用した細切除去術を実施し
た場合、想定されていなかった癌組織(特に子宮肉腫)を子宮以外の場所に播種させるリスクがあり、患者の長期予
後を悪化させる可能性がある。
」との注意喚起がなされた。そのため、腹腔鏡下子宮筋腫核出術においては、各施設
で腫瘍を腹腔内に飛散させないような回収方法が工夫されている。
【目的】当院でも 2014 年 4 月より腹腔鏡下子宮
筋腫核出術においてモルセレーターを用いない回収方法を実践しており、その方法を紹介する。
【術式】①臍部に縦
2.5cm の切開を加え、ラッププロテクター®(八光)および EZ アクセス®(八光)
、トロッカーを装着し気腹する。
②手術の難易度に応じてトロッカーを腹部に追加する。③子宮筋腫を核出する。④摘出した筋腫を臍創から体外へ引
き出す。⑤気腹を止めて直視下で筋腫をコッヘル鉗子で牽引しながらメスやクーパー剪刃などで細切し、体外へ摘出
する。
【結語】本法を用いることで、多少時間を要するものの腫瘍を腹腔内へ飛散させることなく安全に摘出するこ
とができている。医療コストも低く抑えられ、腹腔鏡下子宮筋腫核出術における筋腫の体外への搬出方法として、本
法は有用な手段の一つと考える。
68.UAE 後に子宮壊死を来たした癒着胎盤の一例
○永井 智之、清水 孝規、久野 貴司、阿部 雄吾、市川さおり、吉田 祐司
石巻赤十字病院
【緒言】UAE(uterine artery embolization)は前置・癒着胎盤に対する出血や弛緩出血など産科危機的出血に対して今
日では幅広く行われている治療法である。今回我々は、自然分娩後の癒着胎盤による大量出血に対して UAE を施行
した結果、子宮壊死を来たした一症例を経験したのでここに報告する。
【症例】22 歳、4 妊 3 産。34 週時に切迫早
産の診断にて前医管理入院されていたが、子宮収縮の増加を認めたため 35 週時に当院搬送、そのまま自然分娩とな
った。胎盤の娩出がなかったため超音波ガイド下に用手剥離を試みるも大部分が残存した。自然剥離を待ちつつ経過
観察していたところ、一旦退院後第 10 病日に多量の性器出血にて入院した。UAE を施行し一旦止血を得たが、その
後も自然剥離兆候を認めなかったため、十分な IC の後第 20 病日に子宮摘出を行った。肉眼上子宮底部が壊死して
おり、摘出標本の病理組織診でも嵌入胎盤を示唆する所見であった。
【考察】産科危機的出血に対する IVR 施行医の
ためのガイドライン 2012 年版によると、塞栓術の合併症頻度は 6‑7%とされ、うち子宮壊死等重篤なものは 2%未
満とされている。子宮壊死の診断には MRI や Contrast‑Enhanced Sonography が有用であるという報告があるが、本
症例では自然剥離兆候がない事や今後の挙児希望がなかった事から子宮摘出の方針を選択したため上記のようなス
クリーニングは施行しなかった。UAE 後の合併症としての子宮壊死は稀ではあるが、子宮温存の可否を決定するう
えで重要な判断材料になりうるため、臨床症状や血液検査所見より同病態の可能性が考慮される場合は適切なスク
リーニングをすべきと考えられた。
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69.連続する 2 周期の胚移植で成立したと考えられる双胎妊娠の1例
○柞木田礼子1)、平川 八大1)、熊坂 諒大1)2)、太田 圭一1)2)
、山口 英二1)
1)むつ総合病院 2)弘前大学
症例は 32 歳女性,妊娠分娩歴は 4 妊 1 産(人工流産 2 回,自然流産 1 回,帝切分娩 1 回)
。人工流産 2 回の後結
婚するも自然妊娠成立せず,顕微授精・凍結胚移植を行い 2 回の妊娠が成立している。今回第 2 子を希望し,前回
不妊治療を行ったクリニックを受診。内膜調整後,凍結胚移植(孵化胚盤胞 1 個)を行うも移植後 15 日目の hCG は
2.0 であり,妊娠不成立と判断。その後月経様の出血がみられ,再び内膜を調整し,前回の移植日より 28 日後に 2
回目の凍結胚移植(拡張胚盤胞 1 個)を行い,妊娠成立となった。2 回目の移植日から週数を算出し,妊娠 4 週 5 日
に CRL が妊娠 7 週 3 日相当の胎児が確認され,妊娠 5 週 5 日に CRL が妊娠 8 週 3 日相当と CRL2.0mm の 2 児が
確認され,DD 双胎と診断された。妊娠 7 週 4 日には妊娠 11 週相当と妊娠 9 週相当に発育しており,その後当院で
の分娩を希望し紹介となった。1 児は 1 回目の移植日より算出した週数相当で発育しており,2 周期それぞれで妊娠
が成立し,双胎となった可能性が考えられる。分娩予定日は 1 回目の移植日より決定し,現在妊娠継続中である。胎
児超音波検査を行う際には,2 回の移植日より算出した,それぞれの妊娠週数にて計測を行っている。1 回目の胚移
植で着床したと考えられる児は,単一臍帯動脈を認めるが,‑0.5~+0.6SD で発育しており,その他明らかな奇形は
認められていない。2 回目の胚移植で着床したと考えられる児は+0.7~+1.8SD で発育しており,こちらも明らかな
奇形は認められていない。現在,切迫早産にて入院中であり,分娩は帝王切開の予定としている。
70.子宮動脈 MTX 動注、子宮動脈塞栓術が奏功し、子宮温存可能であった頸管妊娠の
一例
○山内 愛紗、鴨井 舞衣、湯澤 映、田中 幹二、水沼 英樹
弘前大学
頸管妊娠は大量出血をきたすことが多く、治療においては大量出血を避け妊孕性を温存することが重要となる。し
かし、稀な症例であるためその取扱いに統一された見解はなく、症例に合わせて適切な治療法を選択することが必要
である。我々は妊娠 11 週で診断された径 10cm を超える頸管妊娠の一例を経験し、保存的に治療しえた。本症例に
ついて、治療方針についての文献的考察も加えて報告する。症例は 30 歳、2 妊 1 産の女性。自然妊娠にて妊娠 6 週
時に前医を初診した際、子宮体下部に胎嚢を認めた。7 週より不正出血出現し進行流産が疑われたが、10 週になっ
ても胎嚢が内子宮口付近に留まったまま胎児成長が認められ、頸管妊娠の可能性が否定できないと当科紹介となっ
た。MRI では子宮体下部~頸管にかけて径 10 cm を超える妊娠組織を認め、頸管妊娠の診断となった。治療開始時
の hCG 値は 108,083 mIU/ml であった。まず MTX 全身投与を行ったが胎児心拍消失なくまた病変部位縮小もほと
んどなかったため、12 週に子宮動脈 MTX 動注+子宮動脈塞栓術を行った。術後2日目には胎児心拍が消失し、10
日目には胎児のみ娩出されたが、絨毛は遺残した。その後も絨毛組織への血流は持続し当分自然脱落は期待できない
と判断し、術後 16 日目に 2 回目の MTX 動注+子宮動脈塞栓術を行った。絨毛脱落はなかったが病変部位縮小と血
流減少が得られたため、2 回目の塞栓術後 12 日目に外科的除去に踏み切り、大量出血を起こすことなく終了でき
た。現在絨毛組織の少量残存はあり、慎重に経過観察している。今後は子宮動脈塞栓術による晩期合併症に注意して
経過を観察する必要がある。
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71.当院における 13 歳の妊娠出産管理
○齋藤 彩、齋藤 彰治、小篠 隆広、阿部 祐也
山形県立中央病院
【緒言】性の早熟化や活発化に伴う若年妊娠の問題が指摘されている.今回 12 歳で妊娠し 13 歳で出産した症例を経
験したので、当院での管理方法と問題点を報告する.
【症例】13 歳の中学 1 年生.身長 147cm、非妊時体重 40kg.
月経不順であり最終月経は 9 か月前であった.1 か月前から腸が動く感じがあり、便秘と胸やけも出現したため近医
内科を受診した.経腹超音波で腹部に腫瘤と腹水を認め MRI で妊娠が判明し、当科紹介となった.BPD から妊娠 26
週とした.頸管長 22mm と短縮しており切迫早産で入院管理とした.子宮収縮も認め塩酸リトドリンと硫酸マグネ
シウムの点滴とウリナスタチンの頸管内投与を行った.分娩方法は本人の希望により経腟分娩の方針となったが、身
体的・精神的負担や児頭骨盤不均衡のリスクも考え、新生児科とも相談の上、妊娠 36 週で子宮収縮抑制剤の投与を
中止することとした.中止後陣発したが痛みに耐えられず全身麻酔下に帝王切開を行った.児は 2447g の男児で
Apgar score1 分値 2 点、5 分値 4 点であった.産褥 8 日目に小児科に転科し搾乳や沐浴の指導を受けながら、社会
的問題や本人の精神状態が落ち着くのを確認し、産褥 38 日目に退院となった.入院中から新生児科、精神科、児童
相談所、保健師と連携をとりながら管理した.13 歳の妊娠出産管理では若年妊娠に多い切迫早産や分娩方法の問題
の他に、本人の精神的動揺に対するケアや義務教育期間での長期学業離脱や学校復帰へのサポート等、普段我々が扱
いなれていない問題が多く、対応に苦慮したため若干の文献的考察を加え報告する.
72.当院における初期人工妊娠中絶術数、15 年間の推移
○村口 喜代
村口きよ女性クリニック
近年日本における人工妊娠中絶実施率は減少の一途を辿ってきた。しかし若者においては 1990 年代増加に転じ、
2000 年以降減少に転じた。2011 年の「第 7 回青少年の性行動調査」
(日本性教育協会)では大学生、高校生の性交
経験率は大幅に低下した。当院は若者の性行動の活発化が問題視されていた 1999 年に開院したが、以来 15 年が経
過した。この間に当院で実施した初期人工妊娠手術の推移を検討することで、性をめぐる日本社会の変遷の一端を探
ってみたい。
【方法】1999 年 6 月から 2014 年 12 月までに当院で実施した初期人工妊娠中絶術 3237 件について、
病歴より得られた情報を集計、検討した。
【結果】対象者の未・既婚別内訳は未婚 85.2%、既婚 14.8%だった。未
婚者の年代別内訳は 10 代 21.7%、20 代前半 39.7%、20 代後半 18.1%、30 代以上 20.5%だった。妊娠中絶件数
は、開院以来 2004 年までは上昇し続け、ピーク時には年間 364 件に達したが、以降減少の一途を辿り 2014 年に
は 76 件となり、ピーク時に対する減少率は 79.1%と顕著だった。うち未婚者では 10 代 94.2%、20 代前半 82.4%、
20 代後半 81.4%、30 代以上 74.4%だった。一方既婚者では、2007 年まではほぼ横ばい、以降は半減しほぼ同数
で推移し、ピーク時に対する減少率は 47.6%だった。
【結論】初期人工妊娠中絶数は、急激な増加そして減少に転じ、
約 8 割の減少率となった。うち未婚者、特に 10 代の減少率が著しかった。
「性交を考えたことがない高校生の増加」
「性交経験(高 3)の大幅な減少」
(2013 年 12 月東京都幼・小・中・高・心性教育研究会)の調査もある。OC、EC
の登場はあるものの、日本人の性行動に新たな変化が起こってきたことが大きいと思われる。
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共催企業
招請講演 Ⅰ:協和発酵キリン株式会社
招請講演 Ⅱ:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
招請講演 Ⅲ:株式会社大塚製薬工場
東北産婦人科乳腺医学会
特別講演 Ⅰ:シーメンス・ジャパン株式会社
展示出展企業
アトムメディカル株式会社
大塚製薬株式会社
タカラベルモント株式会社
トーイツ株式会社
GE ヘルスケア・ジャパン株式会社
株式会社 CDS JAPAN
日本臓器製薬株式会社
日本ルフト株式会社
丸善株式会社
ドリンク協賛企業
アイクレオ株式会社
広告掲載企業
あすか製薬株式会社
CSL ベーリング株式会社
株式会社シバタインテック
ジャパンワクチン株式会社
中外製薬株式会社
株式会社ティーアールファーマ
トーイツ株式会社
バイエル薬品株式会社
久光製薬株式会社
富士製薬工業株式会社
丸木医科器械株式会社
持田製薬株式会社
ヤンセンファーマ株式会社
体動センサ
製造販売届出番号 13B3X10136000002
微細な身体の動き
(体動)
の変化を
音と点滅でお知らせ
お知らせの
タイミング
●体動が 20秒間以上停止したとき。
●体動が毎分8動作未満に低下したとき。
(正常は毎分約30 動作)
破水モニタリングキット
国際特許取得( 特許第 4 5 715 0 2 号 ) 認証番号 224AIAMX00001000
体外診断用医薬品 pH キット
pH反応を利用したナプキン型の
破水診断補助検査薬です。
製造販売元 お問い合わせ先
劇薬・処方箋医薬品注2) 注2)注意̶医師等の処方箋により使用すること
2014年8月
薬価基準未収載
ウイルスワクチン類
生物由来製品
劇薬
処方せん医薬品
(注意-医師等の処方せんにより使用すること)
経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン
●
「効能・効果」
、
「効能・効果に関連する接種上の注意」
、
「用法・用量」
、
「用法・用量に関連する接種上の注意」
、
「接種不適当者を含む接種上の注意」
等につきましては、製品添付文書をご参照ください。
販売提携(資料請求先)
東京都千代田区四番町6
販売元
製造販売元(輸入)
東 京 都 渋 谷 区 千 駄ヶ谷 4 - 6 - 1 5
【製品に関するお問い合わせ・資料請求先】 ジャパンワクチン株式会社 お客様相談室
Tel:0120-289-373(平日9:00∼17:30 土、日、祝祭、当社休日除く)
改訂年月2013年1月
先端医療を支える、
確かな情報力とヒューマニケーション
丸木医科器械株式会社
Maruki Medical Systems Inc.
■仙 台 支 店/ 〒981-1105
宮城県仙台市太白区西中田3-20-7
TEL 022-242-6001(代)
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山形県山形市蔵王松ヶ丘2-2-22
TEL 023-695-3000(代)
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TEL 0234-23-7566(代)
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岩手県紫波郡矢巾町大字広宮沢第五地割39番 TEL 019-698-1567(代)
■水 沢 営 業 所/ 〒023-0003
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■秋田南営業所/ 〒013-0060
秋田県横手市条里1-6-20
TEL 0182-33-4751(代)