Traverse path of Tanigawa of Autumn

上越国境秋深し
秋色の
谷川縦走路
Traverse path of
Tanigawa of Autumn
宮川 哲=文 岡野朋之=写真
=モデル
なっちゃん&あやや
(おとな女子登山部)
2016 AUTUMN
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谷川の秋って、
こんなに深かったんだ。
りで、天高き空も広がっている。が、
だから、泊まった谷川岳肩の小屋も快
展望台から見渡せるトレイルにはたく
適そのもの。これは期待できるぞ、と
さんの人、人、人。さすが谷川。一般
思っていたら、期待できるどころでは
取材を実施したのは、昨年 10 月の
ルートならアプローチも歩きやすさも
ない……ぼくらはこの先、驚くような
初旬。月曜からの 3 日間なので山はそ
関東随一の山なだけに、平日といえど
谷川の秋の実力を目の当たりにするこ
んなに込んでないだろう、なんて思っ
もこの有様。そりゃそーだ。紅葉の時
とになる。
ていたのが甘かった。
「なんだか大込
期は短いだけに人が集中するのも無理
翌日以降の話だけれど、この先に続
みですね」となっちゃんが言う。土合
はない。かくゆうぼくらもここにいる。
くトレイルには、ほぼ人っ子ひとりい
口からロープウェイ、リフトを乗り継
でも驚いたことに、この人込みは斜
なかった。この奥深き秋の国境稜線を、
いで天神峠へとたどり着いたときだっ
光の時間帯になるとパタッとなくなっ
まさにふたり占め。赤に黄に朱色に、
た。「でも、スッゴい紅葉 !!」。
てしまった。なるほど、みな日帰り登
山全体が秋色のパッチワークのように
標高を一気に稼いだだけに、山はす
山なのだ。ロープウェイの時間に合わ
独特の彩りを見せるなか、ただひたす
でに秋の只中にあった。時期もぴった
せて、そそくさと山頂を後にしている。
ら空間に染まりながら歩き続けていく。
谷川岳主稜線縦走
*8,'(
【参考コースタイム】●1日目〈歩行計/ 2時間45分〉 天神峠(45
分)熊穴沢避難小屋(45分)天狗の溜まり場(40分)谷川岳肩の小
屋(10分)トマの耳(10分)オキの耳(15分)谷川岳肩の小屋[泊]
/●2日目〈歩行計/ 3時間50分〉谷川岳肩の小屋(20分)オキの
耳(50分)一ノ倉岳(20分)茂倉岳(1時間40分)武能岳(40分)
蓬ヒュッテ[泊]/●3日目〈歩行計/ 4時間10分〉蓬ヒュッテ(1
時間)白樺避難小屋(1時間30分)JR見張小屋(15分)旧道(30分)
【山小屋】●谷川岳肩の小屋 TEL090-3347-0802 /●蓬ヒュッテ
TEL025-787-3268
【アクセス情報】●公共交通機関:JR上越新幹線上毛高原駅から土
合口まで関越交通バスの「谷川岳ロープウェイ行き」で約50分。JR
上越線水上駅からは同じく「谷川岳ロープウェイ行き」バスで約25
分。JR上越線土合駅から土合口までは、徒歩で20分ほど。/●マイ
カー:関越自動車道水上ICから国道291号線経由で14km、約25分で
土合口。谷川岳ロープウェイ土合口駅に有料の駐車場がある。/●
ロープウェイ:谷川岳ロープウェイ 土合口∼天神平 片道1,230
円/天神平ペアリフト 天神平∼天神峠 片道410円
※谷川岳ロープウェイおよび天神峠ペアリストは、11月下旬から冬期営業となるた
め、営業時間および料金体系に変更あり。詳しくは、谷川岳ロープウェイのHPへ。
http://www.tanigawadake-rw.com/
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2016 AUTUMN
Traverse path of
Tanigawa of Autumn
谷川の夜空を覆う大宇宙
谷川の秋の深さは
星々の数にも表現される
秋の日は釣瓶落としで、日が暮れるとあたりはアッという間に真っ暗になっ
た。トマの耳にほど近い谷川岳肩の小屋での夕食を済ませると、あとはビール
の栓を抜くくらいでやることがない。手持ち無沙汰でいると「うわッ」という
心底驚いたようなあややの声が上がった。窓から外を覗いている。釣られて夜
空を見上げてみると、一瞬息が止まってしまうほどの満天の星。月は山陰に隠
れているのか、見えているのは星だけだ。天の川が夜空を大きく横断し、幾多
もの星々が輝いている。これは、谷川がくれた夜の贈り物。山頂にほど近いだ
けに、宇宙と直接つながっているような不思議な感覚に襲われてしまう。
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2016 AUTUMN
どちらが表でどちらが裏か。
上越国境の秋空をたどる
越後サイドは晴れマーク。
上野サイドはドン曇り。
谷川岳肩の小屋に泊まった翌朝、いよいよ縦走路
の核心部へと歩を進めていった。トマの耳とオキの
耳の双耳のピークを踏み、稜線は一ノ倉岳のピーク
へと向かう。あの一ノ倉沢の絶壁とは比べものにな
らないほどに、その山頂はなだらかだった。どちら
が表か裏かはわからないが、稜線を隔てたその山容
のあまりのちがいに、谷川が持つ無限の奥深さを感
じていた。越後は晴れ、上野は雲の中。天気さえも
キッパリと分かつ、ここは上越国境線。ルートは、
茂倉岳から武能岳を経て、蓬峠へと向かう。
世界に誇る山岳。
一ノ倉沢の大岩壁
上から見下ろすよりも、
下から見上げた方がいいのかも
この山塊を縁取っているスカイラインに谷川岳の縦走
路がある。稜線から見下ろせば、東側に切れ落ちた断崖
絶壁は、言わずと知れた一ノ倉沢。長いクライミングの
歴史と数々のドラマを繰り返しながらも、未だ世界最悪
の遭難者数を誇るクライマーたちの聖地である。オキの
耳から覗き込んだ断崖は、厚いベールに包まれたまま。
そして足元の傍には、置かれて間もない生花が無造作に
置かれたままになっていた。こことあそこは別世界。事
故なきようにと祈る気持ちばかりが募っていく。
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