ISO情報通信 第26号 - AGCコーテック株式会社

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ISO情報通信 第26号
2012年 6月
AGCコーテック株式会社
CSR本部
TEL:03-5217-5104
今回は、ISO 26000 の 箇条6 について。(その2)
前号に引続き、「持続可能な発展」をテーマにした ISO 26000 の
箇条6について説明したいと思います。
箇条6では、7つの中核主題について述べています。
今回はその中の、「組織統治」、「人権」、「労働慣行」について解説いたします。
◆ 組織統治 (箇条6.2)
「組織統治」では、個別の取組みテーマというよりは、組織運営の基本であり、社会的責任を遂行するうえで
前提となる、組織の意思決定と実施のシステムのことを言っています。
「組織統治」の基本は、透明性、説明責任など社会的責任の7つの原則にのっとった意思決定を行う
こととなります。
さらに具体的なアクションとして以下のものがあります。
・リーダーのコミットメント
・組織文化の醸成
・組織のニーズとステークホルダーのニーズとのバランスを図る
・ステークホルダーとの双方向コミュニケーションのプロセスを確立する
・社会的責任の実践に従業員を参加させる
・プロセスの定期的評価と改善
また規格では、トップダウン、ボトムアップの双方のコミットが重要であるとしています。
◆ 人権 (箇条6.3)
ISO 26000の「人権」を理解するうえでの重要な文書として、「ラギー報告」というものがあります。
ISO 26000は、この「ラギー報告」の考え方を大幅に採用して作成されました。
<ラギー報告>
ハーバード大学のジョン・ラギー教授が、2008年6月に国連人権理事会に提出した報告書「ビジネスと
人権に関する枠組み」を「ラギー報告」と呼んでいます。
ラギー教授は、この報告書の中で、「保護(Protect)」、「尊重(Respect)」、「救済(Remedy)」という
以下の3つの原則を明確に述べています。
・第一に、国家は人権侵害から国民を保護する責任を負う
・第二に、企業は人権を尊重する責任を負う
・第三に、人権侵害の救済措置の実効性を高める
「ラギー報告」は、人権尊重のために企業が取り組むべき課題を強調しながらも、国家と企業それぞれの
役割の違いを正しく理解するための枠組みを提供しています。
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ISO 26000の「人権」パートでは、具体的課題として以下の8つの課題を記述しています。
① デューディリジェンス
② 人権に関する危機的状況
③ 加担の回避
④ 苦情解決
⑤ 差別および社会的弱者
⑥ 市民的および政治的権利
⑦ 経済的、社会的および文化的権利
⑧ 労働における基本的権利
<人権デューディリジェンス>
これもラギー教授が提唱したもので、組織内で人権侵害を未然に防止するための仕組みを構築する
ことを意味しています。人権侵害のリスクがどこにあるのかを洗い出し、実際に人権侵害が起きていないか
をチェックし、そして、リスク減少の手立てを講じる、ということになります。
つまり、人権の尊重を組織の活動プロセスに組み込む必要があるということを言っています。
(環境マネジメントシステム(EMS)における、環境影響評価→目標設定・活動→見直し といった
仕組みと類似しています。)
◆ 労働慣行 (箇条6.4)
ISO 26000では、ILO(国際労働機関)の条約や勧告(国際労働基準)が数多く参照されています。
ISO 26000に記述されている「労働慣行」の課題は、ILOの基本文書の1つである「多国籍企業及び
社会政策に関する原則の三者宣言」にいう4つの分野、すなわち、雇用、訓練、労働条件・生活条件、労使関係
に、安全衛生を加えた以下の5つの課題になっています。
① 雇用および雇用関係
② 労働条件および社会的保護
③ 社会対話
④ 労働における安全衛生
⑤ 職場における人材育成および訓練
以上