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人名 : その意味解釈と由来
中村, 春巳
1980-03-30T00:00:00Z
http://hdl.handle.net/10228/3421
Rights
Kyushu Institute of Technology Academic Repository
1
人名:その意味解釈と由来
(昭和54年11月5日 受理)
語学教室中村春巳
初めに
どの国でも地名・人名は深い関係にあり,その国,地方,社会,歴史をよく表わして
いると言われる。本論では主として英語の人名の意味解釈と由来を述べるが,日本の地
名・人名にっいても多少触れておきたい。その類似点・相違点も注目に価するからであ
る。
日本の地名
It is obviously universal that there is a close relationship between the place
names and the persons’names. Most of them, therefore, are identical phonetically,
morphologically or graphemicaUy.
The Western people comparatively name places after persons’names, but the
Japanese name persons after place names to the contrary. In the Western coun・
tries, they easily change place names accordi㎎to heroes or rulers. For example,
Cape Canaveral became Cape Kennedy, arld Petrbgrad became Leni㎎rad and then
was changed to its new name Stalingrad. However, one can never find such names
as“American Str㏄t”or“McCarthur Street”mJapan..To the Japanese nature is a
sacred phenomenon given by God. It must not be destroyed or changed at their
convenlence.
タペ
The relationship between man and nature to the Western people is that of str㎎・
gle;man constantly confronts and conquers nature. The Japanese, on the other
hand, try to be reconciled with nature, adopting nature in miniature to their yards
and gardens, They try to merge into nature;they feel as ifエhey were married to
nature.
Let me discuss briefly the Japa皿ese place names that are closely related to
nature, particularly to water and geographical features. Most of the current place
names in Japan were named in ancient times by the ancesters, whose views of na−
ture were clearly ren㏄ted in those names. Their reDigion of nature worship, one df
the characteristics of their old religion“Shintoism”influenced the place names.
つ [}コ ‡寸 記手 巳
The n。t。,al envi,。nm,。t。,。・th・physi・・l feat・・es,9・・d・・b・d・h・d a sig・ifi・ant
i。fl。,。ce up。, th,i, w・y・・f lif・. Th…f・・e it i・n・t h・・d t・fi・d th・place names
,。nt。1。i。g山・YAMA・。・・SAN”{m・u・t・i・). lll’‘KAWA”(・i・er)野4’NO”(fi・ld)・
谷・・TANI・〔.all・y),江・・E・…KOO”(b・y)姫‘‘SA融”(・1・P・)’a・d・・f・「th・
Out of 47 prefectures in Japan,280f them colltain irl their Ilames the Kanli
Chinese ch、,a。ters whi、h i・dicat・w・t・…t・p・9・aphi・al features・N・ti・・the
followillg underlined words・
背。K塁AI乱。叉KI塾 鑑A手E毘MA.瓢TA
North誼Road FaU Paddyイleld Rock Hand Mountaln Shape
埼玉 神奈川 新潟 富山
SAI TAMA KA NA GAWA NII GATA Tg YAMA.
扉G。m G。d?Rive・ N・wL・g・・n RlchM・untaln
ISHI KAWA FUKU l YAMA NASHI G1 聖
石川 福井山 梨 岐阜
静岡大阪 和歌山 島根
SHIZUOKA OO SAKA WA KA題MA. SHIMANE
Stone River Happy]型 Mountain Pear Branch旦旦
Quiet 旦旦 Great Slope Peace Song Mountaln Island Root
撫毘MA賓IR。昆IMA豊MAεUCHI璽gKU豊IMA
Hill Mountain Wide Island Mountain Mouth Vlrtue Island
KA GAWA FUKU OKA NAGA SAKI MIYA ZAKI
香川 福岡長崎 宮崎
Odor River Happy堕旦 Long Cape Shrine Cape
監乱爵IMA 6K,響酬A爵KU爵IMA書AGA麹
Dee, Child I、1and O丘・h・・e R・P・ HapPy l・1・nd L・・g Field
The s認。 i。t,,p,et、ti。。・・n be apPli・d t・ap・・ti・ul・・a・ea・T・k・the s・utheast
area of SAITAMA Prefecture, for instanc杜 We can find quite a few place names
re1。ted t。 th, w、t。, a。d t。卿・phi・・1 f・at・・es.1・this regi・n th・・e a・e 29 t°wns
。,vill、g臼.20。f th・m have t・p・虹・phical n・m田・Th・i・di・ed E・gli・h t・anslat
o°ns
。,e』V,ll。y, V。ll,y M。md, D・v・V・11・y, Fi・ld P・ddy一ユR㏄k−Rlve「
M。uth, L、g。。n PeaぽGive弛L・tut・P・ddy一地Whit・旦Fi・ld Ma「ket,
Tub弛D。・・P・ddy−⊇P・ddy一幽G・・at Peace P・ddy−」弛G「eat
River, Fuli View, Happy Hi11, River Pass, and River Island.
人名:その意味解釈と由来 3
As the above examples show, the Japanese need many place names to distinguish
them from each other in order to make the best and most intensive use of the land.
Japall is a small coulltry most densely populated in the world, and is endowed with
natural conditions of complex topography. It has almost no plains to speak of, the
fact of which being so obvlous if compared with the Great Plains of the West in the
United State5. Actually Japan itself is a mountaneous country which has a few
vio】ent active volcanoes. notorious earthquakes and complex topographical fea−
tures. This natural condition has undoubtedly exercised great influence upon the
religion and aesthetic senses as well as田ltural life・ 1n gerleraL Japan is blessed
with high precipitation each year. Thus the rnountains have high peaks and the
rnountain sides are cut by a number of deep valleys. All these natural phenomena
have been the stages of the Japanese life for a long time and the various places have
been named in relation to the geographical features in order to distinguish one from
the other,
Graphemically speaking、 most of the place names. except a very few exceptions,
are written in the logographic Chinese characters. These Kanji characters have at
Ieast two pronunciations, one being the phonetic reading(ONYOMI), and the other
the translated Japanese reading(KUNYOMI).山is pronounced as‘SAN’(phonetic
reading}, and‘YAMA’(translated reading). Wben this is used in place Ilames in
compounds, most of them consisting of a日east two Chinese characters,‘YAMA’is
preferred、 but SAN’in the name of the mountain.
Oh a phonetic leve1, the voiceless stoP5 and continuants〔spirants)sometimes
b㏄ome voiced(presumably as a result of vo{cing assimilation}、 except when they
appear at the initial positions.1n the ordinary spe㏄h or grammar、 we can set up
th。 ph。n。1・gical・ules su・h・・v・i・i・g and・・tl・u1・t・・y…imi1・ti・n・’b・t the place
names are not subject to these rules;they are traditionaL 川is gAWA in
‘KANAGAWA’, but‘KAWA’in‘ISHI旦AWA’. It may be that the former includes
the identical 5top consonant at the initial position and avoids the voicillg duplication・
Another example of this type may be observed in‘」≦AGAWA∴ 崎is‘§AK1”in
“NAGASAKr, but・ZAKI・iパMIYAZAKI’.‘MIYA§AKI’does not sou皿d awkward
but this is not common. In the former,ノz/is avoided because the preceding syllable
contains the voiced stoP.
Notice the names of the cities, towns and villages that have the topographical
names in“A List of the Japanese Cities, Towns and Villages”published by Map
Ass㏄iati。n in 1964. lt lists 234 that c・ntain川(river)i・their names・170 that
contain山(mountain},141野(field),110島(island), etc・his also noticeable that
219names contain田(paddy−field).
4 中 村 春 巳
人 名
嬬の姓の由来の特徴として,麟や身体的特徴というものがある・パ濯の出なら
B、k。,,大工ならC・脚t・・,車関f系の{輝縦事していたからWheele「・庭師なら
Gardenerとなった。一番多いのは鍛冶屋のSmithであろう。また体が小さかったので
Little 足が早かったのでSwiftと名付けた例もある。
と三うがほ本では,歎で述ぺたよう}こ,蜘名を人名に使肌踊史的轄があ
るアニミズム的に考えると,それはその物の生命漫を取蛙ったことになる・生命・
霊;まその物鮪のものであり,それを取り去ることは,やたらに他訟表すること・他
に使用されることを意味する.ナパホ・インディアンの場合・本名は生命彊と同じく・
自分個有のもので、他に軽々しく触れられては困るものであるから,隠し,人に明かさ
ないのである.公的自己の名を別につ}ナてある融もそこにある・同じ呪術的行為やア
ニミズム的思考でも,日本人とナバホ・インディアンとでは・逆の形で表われているよ
う【こ思われる.英語でも自然環境や生活環境(例えば・Hill・Riv眠Ch・・chi11等)が
あるが.人間と自然との和合感という点で、日本語とはニュアンスが違う。
日本人の命名に重要な役割を果しているのに姓名学や相学がある。漢字を使用する限
り字画数,また奇数・偶数のどの組み合わせにするか等は無視できない要素である。英
語では字数,即ち綴りの数,は問題にならない。英語の名で重要なのは音節の数である。
名の音節数と姓の音節数は短長の和を保っている方が自然で、主語が長くて述部が短い
という統語論上の不自然さに似ている。音節数と言えば,構成素は異なっていても,日
本語にもある。力士の四股名や歴史上の人物の名のように,3,5,7の奇数音節が人
口に謄灸され易い。詠嘆調で,俳句や短歌のように,詠み易いという伝統的文化に起因
すると思われる。輪島,北湖,貴ノ花,猿飛佐助、宮本武蔵等がその例である。朝汐の
ような破格もあるが,これは呼び出しにくい,読みにくい,民間伝承的リズムにのらな
い例と言える。王とか,山本とか,浩二というよりカケフといった方が,力強いリズム
で応援し易い。
漢字のもつ美的印象も命名の対象となる。漢字から受ける感じというのは,やはり大
事である。英語の場合は,綴りから受ける感じよりも,発音された時の音感,語感といっ
たものが美的印象の対象となる。日本語は視覚的,英語(或はヨーロッパ諸語)は聴覚
的という文化素の差異の一例となる。
年月日,吉凶の運命,縁起等を考慮して命名するのも日本的特徴であるが,ここでは
触れないことにする。英語でも,本論で述べてあるように,どのような名を付けるかに
依って,その人の一生,運命を左右するということがある。人間のもっている運命,人
生の浮き沈みを考えるのに,英国の相学者も日本の易学者も変りはない。
次に注目したいのは,動植物名を人名に使う習慣である。英語でも多少はあるが,日
本語程多くはない。たとえあっても,同じもの,同じ解釈というのは極めて稀である。
人名:その意味解釈と由来 5
動物名では中国の十二宮に基づいた十二支{Oriental Zod▲ac System)がよく使われる。
塵造,塵旦,墨場,堕飛,±神等は英語には殆んどみられない例である。Tige「はあっ
ても,DragonやHorseというのはない。 Snakeは魔物,厭な物・不気味なものであり・
人名に付ける筈がない。面白い例の一つに鼠があり,日本の「量小僧」は弱者・貧乏者・
下々の民衆を助けるという意味の好感のもてる義賊であるが,英語のML Ratは狡滑
で,すこぶる悪い奴,嫌悪感を起させるものとして描かれる。人名ではないが,「塾うど
ん」とか「狸うどん」等も西洋では考えられないものである。植物名,花の名も多く用
いられ,例を上げるにも及ばない。その他,方角,位置,季節,虫,魚具類,抽象的概
念を表わす語等色々あるが,本論と直接の関係がないので取り上げない。
英語の人名一その意味と由来
英語の人名には.First nanle, Given name, Christian nameまたはMiddle nameと
いわれている名と,Last name、 Family name, Sumameといわれている姓がある。本
論では主として名(Given name, Christian name)を取り上げたい。
1.名前の見方
英語の人名は複雑で,多義多様性に富み,徹底的には説明できないが,大体聞感じい
い,望ましい名,回いい名,の使うのを避けた方がいい名,と⇔好感はもてないが,面
白い名等としてみることができる。だから,色々苦心して付けられた名でも,子供は大
きくなるにっれて,親(主として母親)の意志・願望に背いて変えていったものもある。
名はある特定の意味を表わしている。たとえ,快よい感じの発音を組み立てて作った
名で,始めの中は無意味であったものでも,使われているうちに,その人の人格人間
性,教養などから,だんだんある意味が出来上っていったものもある。
名はその語源をもとの言語に求めることができ,その言語の法則や習慣を記述すれば
その名の説明も可能である。しかし中には長年にわたって言い伝えられてきた解釈が,
修正されることもなく,間違ったままで,なされてきたものもある。
歴史上の人物の名で驚くべきものがある。Claudia(びっこ),℃ecilia(めくら)・
Bl、i。e(やせっぽち), C・leb(犬). C・lvi・(はげあたま), P・・ti・(豚}ご関係のあ
るものの名)等がそれで,人格を傷っけるような肉体上の欠陥,弱点を述べた名である。
しかしこれも使用している人がいい人,望ましく好ましい人で,その為に本来の軽蔑的・
差別的意味が失なわれ,新しい意味をもつ名として用いられるよう}こなった。
名によっては全く正反対の意味をもつものもある。例えばCasimirで・後半の7n輌アは
「平和」を意味し,前のもとの形』は「伝道する」とも「妨害する」ともとれる。従っ
てCasimirは「平和の伝道師」ともなり,逆に「反平和主義者」ともとれる。要するに・
この名の解釈には次の三通りが考えられる。
(1) 平和の意味
(2) 戦闘的・好戦的意味
6 中 村 春 巳
(3) 真の平和というものは,平和・平和と言い乍らやってくる敵と闘うことによっ
てのみ得られるという考え方で,両方に解釈する意味
しかしこれはごく稀な例であって,このように逆説的に解釈される名は多くはない。
2.名の合理性と七原則
ソクラテス曰く,「命名は決してなまやさしいものではない。適当に,偶発的につけら
れるべきでもなく,また能力の劣った,浅博な人につけられるべきでもない。」 名はその
人の人生に於いてとても重要な役割を果す為,他と区別できるように適切で,尊敬でき
る立派な態度でつけられる。しかし永久的価値をもたず,適切でない名もあり.一生不
利益をもたらす名もある。命名の最後の決断を下すのは普通母親で,名は献身的な母性
愛の賜物なのである。母親の決断はその子の一生を左右するということになる。
次にいい名・適切な名の一般的七原則をあげて,原則に合った名の例とそれに反した
名の例を解説したい。
(1)尊敬に価するふさわしい名
(2)いい意味をもっ名
(3)独創的な名
(4)発音し易い・言い易い名
(5)他と区別できる特有な名
(6)姓に似合う名
(7)男女の区別をはっきり表わした名
第一原則の「ふさわしい名」とは愛情と健全な判断から生れた名であることを意味す
る。「子供は神様からの授かりもの」だったらそれにふさわしい立派な名のことである。
それはその子の生涯を通じて,誇りと刺戟になる名である。それに相応しい名はやはり
聖書中の名である。聖書に出てくる人物の名は美しく,表現力に富んでいる。勿論不用
意に用いれば神聖さを汚すことになる。聖書の中にも不自然な発音をもつものや,乱れ
た名や,酒落の感を抱かせるような名もあるからである。Hezekiah(主の力)・Eliphalet
(救いの神),Bezaleei(神のぞぱに)等は本来神聖な意味をもつ名である。
いい名とは,好感のもてる発音と意味をもち,他の敬意の念を集め,本人もプライド
とその名に相応しくありたいという気持を抱かせる名である。それに反する例は,
Quintus(五番目), Sextus(6番目), Septimu5(7番目), Octavius(八番目)の
ような順序名はうんざりさせられる名で,好ましくない名の例である。しかし・日本人
の五郎,六郎は英語の序数名ほどの嫌悪感は抱かれていない。
第二原則の「いい名」とはいい意味をもつ名,気持ちのよい名・悪い意味を連想させ
ない名のことである。戦闘的勇敢を表わす名,歴史上政治的に興味ある事柄に関する名,
迷惑.不利の原因にならない名等がこの項に属するいい名である。Judasという名はい
い意味をもっているが,悲劇的で悲しい連想を起させ,Benoniは「我が悲哀の息子」と
いう意味があり,どちらも敬遠される名である。
人名:モの意味解釈と由来 7
歴史上の有名人の名,例えばWnliam Shakespeareとか・Abraham Lincolnとか・
Florence N ightingaleとかは,たとえいい名でも,別人が使うと「実のない,名前まけ
の人」と言われ,敬遠されている。いい名は必ずしも適切な名とは言えない。PercivaL
Algernon, Cecil, Reginald等もいい名であるが,これらはおしゃれなノルマン人征服者
たちの名で,粗野なアングロ・サクソン人たちに軽蔑され・女々しいと馬鹿にされたノ
ルマン人の名であるから,評判が悪くなった。
また頭文字を集めると不愉快な,気品のない意味になる名前も好ましい名ではない。
例えば,Martin Ulysses Taylorはmut,またはmuttと発音すれば「犬・馬鹿・間抜」
となり,Sydney Alfred Leeは男名だが,頭文字をとって発音すると女名のSallyにな
ってしまう。このような名もいい意味を連想させる名とは言えない。
ユーモアのある人名は少ない。人生は真実で,真剣で,陰うっな程までに真面目なも
のだからであろう。しかし時にはユーモアたっぷりで,奇想天外な名もある。最初の子
がPeterで,二番目の子はその繰返しという意味でRepeterという。苦心のいらない面
白い名である。また大家族で,生活費も大分かかると,毎月1日は請求書(bnls)に悩ま
される。そんな時1日に生れた男の子にBillと名付けるのもユーモアがある。このよう
な例は無数にあるが,中には信じられない程馬鹿げたものもあり,良識を疑わせるよう
な悪ふざけの名もある。
第三原則は想像力を生かし融創的な名ということである・太っていて金持で・餉
ではあるがのろ噸馬な人もJ・hn.また肥えて貧乏で・色黒で・蹴で・搬のあ三人
もJohnでは独創性がなさすぎると言う。家具の場合・同じ腰掛けるものでもcha1「と
stoolと区別されている。上の二人は正反対の人間だが同じ名である。物,無生物,木
や石で作っ棚像(旧糎書エレミヤ書第3章9節にある如く)の名砿が人名よ峻
化と想像力に富んでいると言える。独創性のなさを述べた一例である。
名は人格,社会的地位や役割等をよく表わしているもの.即ちその個人・個性をよく
表わしているものが理想的とされているが中々見あたらない。
古代には新しく名をつくり上げることがよくあった・旧約郵には「アダム膳をエ
バEve(命)と呼んだ.何故なら微}まあらゆる生き物の母であつ麺らである」(旧約
聖書創齪3.2。)とか、「アブラハムは息子}こイサク(1・aac}と名付}ナた」(旧約聾創世
紀21_3)と伝えられている.Isaacは不靴喜びという櫟で・太祖時代(Adamから
Noahまで)には男の子の誕生の前後に生れた女の子に関する名であった・
想齢と一般の熾を齢せて出来酪}こP・・vid・(神様の恵みもの)というのがあ
る.神様のおめぐみ}こよって出来好というので先祖の轍徒はTh・L・・dwill P「°’
。id,と名付けたかもしれない. P・・vid・は親の熟慮と願と想{肋の結果と計る・結
局名は伝統的に端あるものというより}ま.その人の㈱・個性をよく劾している独
創的なものがよいということになる。
第四原則の名は普通の鯖を郵た人にとっても読み易い名ということであ至・
Ph。,b,の。は発音されないのでPh・b・となっている・・のあるものはもとはF°1by
8 中 村 春 巳
と発音されていた。また外国名の綴りや,英語に見られない複雑な発音やスペルは英語
風に書きかえられ,簡素化された。例えば,ポーランド語のαは出に,5Zは頭に変
った。母音が変則的に発音されたからと言って間違いではない。Violaの正しい現代語
発音は〔vlyコb〕であるが, Shakespeareでは第一音節の‘‘i”に強勢を置き・vineの∫
如く発音された。
第五原則は家族のものや,社会の他のものから区別される名を述べる。John, Thom−
as, Mary, Ruth等が多いのは,東部ヨーロッパで,回心した王が国民にグループで洗
礼を受けさせ,グループに同じ洗礼名(Christian name)をつけたのに由来しているらし
いo
親・親戚の名を二代三代にわたってつける慣習があるが,現在種々の問題が起きてい
る。語尾にJr.(Junior)とつけてあるのもあるが,よく見落され,手紙など本人以外の人
に開封され,迷惑や騒動のもとになることもある。これは家族の中でもよくあることで
ある。名が二っある時,一人はそのいずれか一つを使わないとかすれば混乱が避けられ
る。王朝・権力者のように一世・二世・三世とっけても混乱は避けられる。しかしこの
高度に進んだ近代社会と個性尊重の時代にはJr.とか1{First), II{Second)のような語
尾は使用されなくなっている傾向にある。子供(現代)は親(過去)とは精神的にも道徳
的にも宗教的にも違う生き方をするので,過去に未練がましくしないでもいいというの
が現代的思考である。しかし過去にもやはり大事な捨てがたい名(先祖伝来の遺産)が
あり,それを多少なりとも保存したくて,修正して残したものもある。例えば,Anna
はAnitaに, JohnはJeanに, GeorginaはGeorgetteまたはGeorgiaに変った等が
その例である。
頭文字が似ているので混乱を招く例もある。第・一次世界大戦中Ohio連隊にIden A・
BrownとAden I. Brownという二人の兵士がいて,どちらも似た名で,頭文字でも1・
A、BrownとA.1. Brownと混同されがちだった。事務的処理で始終混乱が続いたそう
である。
名の特殊性(他との区別)を強調しすぎた余り長い名になった例がある。19世紀初期
に生れたポルトガルの姫で,その洗礼名を, Maria Jose Beautrix Joanna Eulalie
Leopoldina Adelaide lsabel Carlotta Michaela Raphaela Gabriela Francisca Paula
Inez Sophia Joaquina Theresa Benedlcta Bernardaとつけた。全部で20個の名を連ね・
141個の文字がある。古代ギリシャやローマにこの女性がいたらさぞ男性の注目の的に
なっていたであろう。その頃の上流社交界の人気男たちは,恋人の健康を祝して,彼女
の名前にある文字の数だけ乾杯をしたそうである。この妃は141回の乾杯をされたことに
なる。しかし適切な名であれば二っで事足りる。事実いい名でその人を識別するのに充分
役立てば一つでも足りる。他との区別やリズムを調える為名を削除した有名人も多い。
ディケンズはCharles John Huffharn Dickensであったが中のJohn Huffhamを省略し
て単にCharles Dickensとした。ウィルソンも元来はThomas Woodrow Wilsonで
あったが,Thomasを落し, Woodrow Wilsonだけとした。
人名:その意味解釈と由来 g
第六原則は名(Given name)は姓{Family name)と似合ったもの,少なくとも姓と衝
突し調和を崩すものであってはならないと述べている。名が他とよく区別され・独特な
ものであれば,姓はありふれたものでも調和がとれる。John Johns前というのは二っ
とももっともありふれた,どこにでもある名前で,その人は生涯トラブルに巻き込まれ
続けるという。米国東部のある町にJohn Johns皿が300人以上もいて・郵便配達のさい
皆に迷惑をかけるような間違いや遅配が生じたらしい。一般にこの名は社会的にも強烈
な印象はもてず,個性がなく損である。
姓はその人の人生・行動に名誉・名声を与えるものであるから・派生語源・発音・綴
りに関係なく,敬意をはらわれるような満足なものがいいと言われる。ぎこちない,不
自然な姓より威厳のある,品位のある姓が好まれているのは当然である。
英語の人名は,その語源が何であろうと,すべて米国でも使用されている。しかし英
語を使用する米人はアングロ・サクソン系の語源をもっていない名は異質なものと感
じ,違和感をもつ傾向にある。他のヨーロッパ諸語も勿論日常家庭化(川しているが,
やはり何となくしっくりしない,妙な感じだというのが本音である。従ってこれらの言
語の語源をもつ名前,例えばDenis SchutzとかFritz Dela Rueとは・新大陸では正当
に許容され難い,不自然なものとされている。
次に,前にも述べたが,名と姓の音節数,長短も考慮に価する。即ち名が長ければ
姓は短く,姓が長ければ名は短くというのが調和がとれている・John Doeはどちらも
一音節で,短いので,これよりはRichard Roeの方がいい。 Tom Browも短く・いい
名ではあるが,やはり他との区別や独創性に欠ける名らしい・むしろHilary Brownと
か,Theodore Brownの方が姓を引き立たせるよい組合わせと言える。逆に姓が長けれ
ば名は短いのが自然である。Sophonsiba(4音節)C皿ningham(3音節)や・Cornelius
(暗節)Lang。nb・enne・(4音節)よりは, Rit・{2音節)Cunningh・mとか・Ott°
(2音節)LangenbrennerやDavid(2音節)Langenbrennerの方が釣合がとれている。
第七原則.男の子には男性名,女の引こは女性名をつけなければならないという法的
根拠はないかもしれないが,名は男女の区別練わすものである・古代で}ま男が女名
Mehetabelと,女がGomer(男名)と呼ばれた人もいたと言う。,ラテン系の国々では
よく性区別が無視され,男の子でも聖女名の日に生れたら聖女名がつけられた。アメリ
カでもFlorenceという名の男がおり,恐らく町の名か,姓からとって名付けたものであ
ろう。MariOI1とかMarianとかは男女の区別なく,どちらにでも使われる。しかし
名はやはり男女の区別のできるものが無難である。
3.よく使われている名とその意味解釈
男の名でよく使われているもの(12)を順番にあ}ずると・1」・h・2・William 3・
Ch。,les 4 J。m田5.G…g・6.R・已・t 7.Th・mas 8・H・n汀9・Pete「
1。.J。記ph l1潤w・・d 12. S・muelで・蜘名は・1・M・・y 2:『li子abeth 3・
B。,b、,a 4.D。,。thy 5.H・1・n 6.M・・g・・et 7.R・出8・V1・gln1・9・Jean
1。.F,ance,11. N…y12. P・t・i・i・である.以下アルファペット順に解説しておく
10 中 村 春 巳
ことにする。
Ab性ham (男)
歴史上注目すべき,重要な名である。旧約聖書によると,最初ヘブライ民族の創始者
がAbramと呼ばれた。’‘Ab”は「父」“ram”は「高い」,従って「気品の高い父」また
は「高貴な父」の意味である。しかし創世紀十七章五節に「あなたの名は,もはやアブ
ラムとは言われず,あなたの名はアブラハムと呼ばれるであろう。」とあり.「多くの国
民の父」と神に定められた時,名をAbrahamと改めたのである。つけ加えられたhは,
最も聖なる名エホバOehovah)から取られたもので,このhは母音でもなく子音でもな
く,生命の息吹と考えられていた。ヘブライ語は聖書に出てくるユダヤ人の言語で,旧
約聖書の多くはヘブライ語で書かれた。 Jehovahは古代ヘブライの口に出せない程の
神聖な神の名を現代語訳したもの。聖書ではthe Lord(旧約の神)と訳され,語源はヘ
ブライ語のYahweh (イスラエルの神)。ヘブライ語で神を表わす4文字, JHVH,
YHVH, IHVH, JHWHから来たもので, JehoΨahはその現代語音訳といえる。
Alice (女)
チュートン語(ゲルマン語族)に由来し,「高貴な」の意のAdal一またはAde1一から来
たもの。「高潔な気分」と訳されることもあるが,ドイツ語のAdelheidからして「貴族」
という意味と思われる。それに関連した名にAdelaide, Adeline, Adela、 Adeliza等が
ある。
Anna (女)
ヘブライ語のHannahハンナから来たもので,神の恩恵・慈悲に関することばであ
る。もとは建国までのイスラエルの指導者だったヘブライ人の土師・予言者サムエル
Samuel(旧約聖書一サムエル記上)の母の名であった。それから転じた名にセルピア語
のNanとAnka,ハンガリー語のPanniがある。
Anthony(男)
ラテン語のAntoniusに由来したもの。「崇拝の価値あるもの」または「測り知れない
程の価値」という意味。ドイツ語及びロシヤ語のAnton,チェッコ語のAntonin・イタ
リヤ語及びスペイン語のAntonio,フランス語のAntonine,オランダ語のAnthonius・
そしてハンガリー語のAnte1はすべてこれに属する。 Tonyはこれの現代指小語である。
Barbara (女)
通常「異邦人」という意味で解釈される。語源はギリシャ語。古代ギリシャ人による
と,外国人(見知らぬ人1よそもの)の話し(ことば)はbar−bar−barのように聞えた・
というのがこの名のでどころである。古代ギリシャ人またはローマ人にとって異邦人の
ことばは「野蛮的」で,それを話している人は「野蛮人」であった。ある見知らぬ女が,
何やら解りにくいことばでぺちゃくちゃしゃべっていると,たとえ品のいい美人であっ
人名1モの意味解釈と由来 11
ても,「野蛮人」とされたのである。しかしそのことばもいっの間にか,親しみ深い,友
好的な意味をもつようになった。男がそれを話題にして話しているうちに,Barbaraの
ような愛称にかわっていった。そんな単純な過程だったのである。イギリスやアメリカ
でも昔はBarbaryと呼んでいたが,その呼び方は今はなく,伝説的民話で聞ける程度で
ある。現在よくあるBabsとBabbieはそれから転じたもの。擬声語から来たもの。
Bern三ce(女)
「勝利をもたらす」意のギリシャ名である。‘‘nice”は「勝利」を意味するギリシャ語
nikeから来たもの。米空軍のNike jetは「勝利ジェット機」ということになる。 Mke
はギリシャ神話のニケで,ローマ神話のVictoryに相当する勝利の女神である。
Caro1(女〕
語源がギリシャ語なら「喜びの歌」の意味。古代ギリシャでは歌と踊りは相互作用し
ていた。だから「合唱」と「踊り」に関連する名ということができる。しかしチュート
ン語ではC、,。1やC…lineはCh・・1・・で,「男」の意である・この解釈でいくと・女性
のCarolを「男」とは呼べないから,「強い」とか「精力的・元気旺盛」という意に解さ
れる。
Char1題(男)
元来「男」の意。「強い・男性的・たくましい」と解されている。本来「何とすばらし
い男だ」と賛美的に使われていた。恐らくその名をもっ一番有名な歴史上の人物は,フ
ランク王国の王(768−814),後のCharles一世として神聖ローマ帝国皇帝(800−814)
になったシャルルマ_ニュ・カール大帝(742−814}であろう。ドイツ人にはKarl de「
Gross〔英:Charles the Great)として,またフランス人にはCharlemagne(シャルル
マーニュ)として知られている。彼は当時両国民を支配しており,ドイツ人もフランス
人も同様に彼を「国の英雄」と考えていた。 Char】esはそれ程歴史的に有名な名で,
Char】esの名をもつ歴史上の人物が無数におり,辞書でもCharles一世から十四世まで
みることができる。 ,
信姓.いな蝿・無作瀦」という意味の嬬のCh・・1は「鞭想な人」と・臆
味で,もともとCh・・lesと同語形だった.しかしCh・rl・・はその韻な難的意味を
保ったが,Churlは世俗に落ちてしまった。
同類の名にはC・・1,C・・1・, k・・e1があり,アイ・レラン曙で}よSea・lasもある・
Cl8rence (男)
Clarのついた名はすべて「清く澄んだ」とか「明るい」の意のラテン語clarusに由来
している.14世紀ノルマン人の姓CI・・eをCl・・ence}こ拡大したものである・Cla「ence
はその後16世紀までには英国では洗礼名になっていた。
12 中 村 春 巳
1)olore8 {女〕
「悲しみ・不幸・苦労」の意。普通「わが嘆きの婦人」として連想される。源氏物語
の「あわれと思う人」を連想させる名。ラテン系の国々でよく使われる名で,綴りも幾
通りもある。短音階的で,「わび」に相当する感じの名である。
Donald (男)
古代ケルト語の名で「世界制覇のできる力」の意。指小語は通例DonやDonnie。
1)or拍 (女)
Dor一で始まるよく知られた名(Dora, Dorea, Dorothy等)はすべて「贈物」の意のギ
リシャ語から来たもの。Dorisもその一っ。 Dorisはこのように「神のたまもの」の名
として考えられているが,事実は古代ギリシャの一一地方名であった。従って,紀元前12
世紀頃ギリシャに侵入し,Peloponnesusを征服してミケーネ文化を破壊したドーリア
人という意味にすぎないのかも知れない。Dorisはギリシャ神話ではオケアノス(Oce・
anus)一一ティタン(Titan)で大陸を取り巻く大海流で,地上のすぺての川,湖などの
源となり,水を象徴する神一の娘である。またリトアニア語から派生したDorisは「高
貴で勇敢」を意味する。
Dorothy (女)
これも語源はギリシャ語である。Theodoraと同じく「神のたまもの」という意味。
theoは神を, doraは贈物を表わす。
3∼4世紀も前のこと,一人の可愛い女の子が自分の大事な玩具の赤ちゃんにDoro−
thyという名をつけた。しかしDorothyというのは言いにくかったので結局Dollyと
言ってしまったという逸話がある。それから人形ということばがでてきたわけで,それ
以来複数の人形がdolliesとなり, Dorothyがたくさんいるとdollsと言われるように
なったということである。
Edith (女)
チュートン語の名。Edward, Edgar, Edmund等のedは「金持」の意。−ithは「贈
物」の意の古いことば。従ってEdithは「恵まれた貴重な購物」という意味になる。
Edward (男)
「金持の・富める保護者」の意。前述の通り,Edは古い英語で 「富・財産」の意。
warranty(保証)がguarantee(保証)である如く, ward(保護)はguard(保護)
にもなる。即ちWとguは音韻交替できる。 Ed一で始まる名は多いが, EdricのEd一は
「神の恵みを受けた唱即ち恵まれた」の意味であると考えられている。「恵み」は(聖)
霊的・心の・魂の富であるという理屈に基づいている。 (その一おわり)
(昭和54年10月)
人名:モの意味解釈と由来 13
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