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増補改訂版
1
2
1:ハマボウ Hibiscus hamabo Siebold et Zucc. アオイ科(113頁)
2:ミヤマヘビノネゴザ Athyrium rupestre Kodama イワデンダ科(122頁)
増補改訂版
1:ハヤチネウスユキソウ
Leontopodium hayachinense(Takeda)
H. Hara et Kitam. キク科(118, 140頁)
2:ヒトツバタゴ
Chionanthus retusus Lindl. et Paxton
モクセイ科(115, 140頁)
3:ギンリョウソウ
Monotropastrum humile(D.Don)H. Hara
イチヤクソウ科(131頁)
4:ドクウツギの若い果実
Coriaria japonica A.Gray
ドクウツギ科(71頁)
1
3
4
2
シラネアオイ Glaucidium palmatum Siebold et Zucc. シラネアオイ科(60頁)
クマガイソウ Cypripedium japonicum Thunb. ラン科(55頁)
ブナの樹肌 Fagus crenata Blume ブナ科(10頁)
モミ Abies firma Siebold et zucc. マツ科(28頁)
1:ステゴビル
Caloscordum inutile(Makino)Okuyama et Kitag.
ユリ科(131, 142頁)
2:エゾゴゼンタチバナ
Cornus suecica L. ミズキ科(120, 139頁)
3:ヤマトグサ
Theligonum japonicum Okubo et Makino
ヤマトグサ科(19-20, 98頁)
4:クシロハナシノブ
1
2
3
4
5
6
Polemonium coeruleum L. subsp. yezoense(Miyabe et Kudo)
var. laxiflorum(Regel)Miyabe et Kudo
ハナシノブ科(30頁)
5:セツブンソウ
Eranthis pinnatifida Maximowicz キンポウゲ科(28頁)
6:トモシリソウ
Cochlearia oblongifolia DC. アブラナ科(132, 140頁)
はしがき
日本の自然(植物)環境は近年大きく変容してきていますが, 観察を続けると, これまで自分が知
らなかったり, 気づかず見落としていたものを新たに知ることがたびたびあり, 日本の野生植物の多様
さとその奥深さに圧倒されます.
春を経て初夏の時期には, セツブンソウ・カタクリ・サクラソウ・ホタルブクロ……等の草本が, カ
ツラ・キブシ・キリ(ゴマノハグサ科→キリ科)・ヤマボウシ…等の木本が目に眩しいほどに精彩に富む個
性豊かな姿を見せます.
盛夏から初秋を経て晩秋の時期には, オニユリ・アッケシソウ(アカザ科 →
ヒユ科)
・リンドウ・ ハマギク……等の草本が, ハマボウ(の黄色い花)
・カエデ類(カエデ科→ムクロジ科)
(の紅葉・黄葉)・カンボク(スイカズラ科 → レンプクソウ科)やナナカマド(の赤い実)・サザンカ・
ヤブツバキ……等の木本が艶やかに, また華やかに海浜・山野を彩ります.
秋にススキ等の株元に深紅色のキセル様の花をつけるナンバンギセル(ハマウツボ科), その根を
紫紺染めと薬用に重宝した白い小花のムラサキ(ムラサキ科), 初冬枯れ茎に‘ 氷の華 ’が生長する
ことがあるシモバシラ(シソ科)[花期は秋]など, こうした植物に付けられた和名には興味深いものが
あり, 植物をより身近で, 親しいものにしています.
一方,植物の学名についてはオニノヤガラ(ラン科)・オニバス(スイレン科)・アマモ(アマモ科)
などその学名の一部(種形容語)が植物の形態・生態・生育環境等を端的に示している例もありますが,
その意味も解りづらく近付き難いものとなっている場合が少なくないと思います. 巷間には植物の学
名に関する解説書が少なく, しかも,学名を規定している「命名規約」はその条項が煩雑であり, その「命
名規約」の解説書も少ないのが現状です.
オニノヤガラ Gastrodia elata
アマモ
Blume
オニバス
Euryale ferox Salisb.
Zostera marina Linnaeus
種形容語:elatus(丈が高い), ferox(強い刺をもつ,危険な), marinus(海中に生える)
2007 年は,「二名法」という学名の表記法を提唱・実践して, 自分の知る限りの動物・植物に世界
共通語の学名を定め, それに分類体系を与えた近代分類学の父:スウェーデン人カール・フォン・リン
ネ Carl von Linné (1707.5.23-1778.1.10) 生誕300年の節目になる年です. リンネは神の創造物
(自然)の「財産調べ」のつもりで, すべての鉱物・動物・植物を有用か無用かに一切とらわれず平等
に扱った 18 世紀を代表するナチュラリストの一人でありました.
日頃から関心を寄せてはいるが敬遠しがちなこの“ 植物の学名 ”をよく知って, 植物への理解を
深め, 植物と楽しく関わり,“植物と一層親しくなる”路(みち)を植物愛好家の方々にご案内致しま
しょう. 日本植物の調査研究に与った内外の多彩な顔ぶれと多様な植物群とが皆さんとの出会いを
待っています.
《
目
次
》
3
はじめに
第1章
学名とその表記について
6
1. 学名 (Scientific Name) とは
6
2. 植物学名命名規約
6
3. 植物分類学の祖:リンネ (Carolus Linnaeus) ― 二名法の提唱・実践 ―
7
4.
3.1 リンネが命名した日本植物
11
3.2 学名の言語
16
3.3 学名の読み方
16
学名の変遷
19
4.1 転属
19
4.2 正名と異名
20
4.3 保留名
20
4.4 自動名
5.
学名の表記
5.1 学名の発表
23
5.2 学名命名者
24
第2章
1.
2.
植物の学名
28
植物の学名
28
1.1 「科名」
28
1.2 「属名+種形容語」
28
変種・亜種・品種・天然交配種(雑種), 栽培品種・園芸植物
第3章
属名と種形容語
1. 属名
2.
21
23
30
33
35
1.1 属名の性 ( gender )
35
1.2 人名・地名に因む属名
38
種形容語
39
2.1 属名を修飾する形容詞
39
2.2 属名を修飾する名詞の属格
42
2.3 人名に因む種形容語
43
2.4 地名に因む種形容語
45
2.5 その他の種形容語
46
2.6 接頭辞
49
2.7 数詞
49
第4章
ドイツ人:ケンペル
2.
スウェーデン人:ツュンベルク
3.
ドイツ人:シーボルト
4.
ツッカリーニ
5.
ビュルガー
6.
ブルーメ
7.
ロシア人:マキシモヴィッチ
8.
フランス人:サヴァチェ
9.
フランシェ
E. Kaempfer
52
C. P. Thunberg
60
H. Buerger
63
C. L. von Blume
63
P. A. L. Savatier
67
67
12.
アメリカ人:グレー
13.
サージェント
14.
イギリス人:ブラウン
15.
16.
フッカー W. J. Hooker と J. D. Hooker
リンドレイ J. Lindley
17.
フォーチュン
7.
9.
11.
13.
15.
17.
19.
21.
23.
25.
27.
29.
31.
33.
35.
37.
39.
41.
43.
45.
47.
66
A. R. Franchet
オランダ人:ミクェル
5.
64
C. J. Maximowicz
11.
3.
57
J. G. Zuccarini
フォーリ
1.
53
P. F. von Siebold
10.
第5章
52
学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
1.
U. J. Faurie
F. A. W. Miquel
69
A. Gray
70
C. S. Sargent
72
R. Brown
72
74
76
77
R. Fortune
78
学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
78
P. Miller
G. W. Steller
79
Sir John Hill
80
W. Aiton
81
A. Michaux
81
G. H. von Langsdorff
82
C. F. von Ledebour
83
A. von Bunge
83
E. R. von Trautvetter
84
E. P. Boissier
85
S. W. Williams
85
F. J. Ruprecht
86
86
E. A. Carrière
J. E. Planchon
87
G. Radde
87
P. von Glehn
88
P. Jolkin ( Yolkin )
88
H. Hance
89
M. E. Wichura
90
C. P. Hodgeson
90
M. A. S. von Brandt
91
F. V. Dickins
91
J. J. Rein
92
E. H. Wilson
92
2.
4.
6.
8.
10.
12.
14.
16.
18.
20.
22.
24.
26.
28.
30.
32.
34.
36.
38.
40.
42.
44.
46.
J. Burmann
J. G .Gmelin
M. Adanson
P. S. Pallas
W. Roxburgh
A. von Chamisso
F. E. L. von Fischer
N. S. Turczaninov
J. Decaisne
C. Wright
J. Morrow
E. A. von Regel
M. Albrecht
R. Maack
M. Fr. Schmidt
H. Weyrich
C. Wilford
J. G. Veitch
Kramer
Vidal
G. E. Simon
C. Maries
V. L. Komarov
78
79
80
81
82
82
83
84
84
85
85
86
87
87
87
88
89
89
90
91
91
92
92
第6章
学名に名を残す日本人植物研究者達
94
―日本人名に由来する属名・種形容語―
1. 小野蘭山
94
2. 水谷豊文
94
3. 飯沼慾齋
95
4. 岩崎灌園
95
6. 伊藤圭介
8. 矢田部良吉
96
97
5. 宇田川榕菴
96
7. 田中芳男
97
9. 田代安定
98
10. 松村任三
11. 宮部金吾
99
12. 三好 學
99
100
13. 牧野富太郎
100
14. 白井光太郎
15. 池野成一郎
102
16. 南方熊楠
102
17. 岡村金太郎
103
18. 早田文蔵
103
19. 柴田桂太
103
21. 小泉源一・秀雄
23. 澤田武太郎
25. 三木
29. 初島住彦
24. 館脇 操
106
105
26. 本田正次
106
28. 北村四郎
107
32. 倉田
108
35. 須川長之助
105
30. 田川基二
108
寛
104
22. 武田久吉
107
33. 前川文夫
第7章
104
105
27. 大井次三郎
31. 原
20. 中井猛之進
106
茂
101
109
107
悟
108
34. 北川政夫
109
36. 山本 一
109
111
日本植物:学名あれこれ
1.
日本名起源の属名
111
2.
日本名起源の種形容語
113
3.
神話・伝説に由来する属名
114
4.
色彩を示す属名・種形容語
115
4.1 属名
115
4.2 種形容語
116
5.
産地を示す種形容語
117
6.
生育地環境を示す種形容語
121
第8章
日本植物:学名探訪 (263 種)
124
―植物の特徴を示す属名・種形容語―
********
● コラム
リンネが命名した属名
15
動物・植物に同じ属名
19
マバリーによる植物新分類体系
22
女性名詞扱いの属名
29
語尾変化しない種形容語
30
ラテン語・ギリシャ語対照語集
語源が違う合成語に注意
34
形容詞の比較級・最上級
41
不規則変化の形容詞
42
命名規約外の用例
51
中国原産植物と日本
62
属名と種形容語の両方に
植物学名の由来比率
115
植物用語集:顕花植物の外形
1
125
33
「日本」が入る学名
植物用語集:顕花植物の外形
2
112
128
植物学名に関する参考文献
135
あとがき
139
種 和 名 索 引
144
学 名 索 引
152
CD-ROM 版「日本産野生植物:植物学名一覧」のご案内
164
カール・フォン・リンネ(1707.5.23-1778.1.10)
左胸元をリンネソウ(スイカズラ科)Linnaea borealis L. で飾る
(千葉県立中央博物館所蔵)
増補改訂版
植物の学名を読み解く
― リンネ の 「二名法」―
田中
學
はじめに
はじめに
ユーラシア大陸の東端に位置する日本列島(およそ北緯 25 度から 46 度)は南北で 2,000km を超え,
その南の南西諸島を加えると約 5,000 ~ 5,500 種に近い種子植物が生活を繰り広げ, 四季を問わず変
化に富んだ様子を見せている. 亜熱帯性気候の琉球:八重山諸島から温帯域の九州・四国・本州を経て
一部に亜寒帯性気候を示す北海道に至る長大な列島に於いては, 常緑の照葉樹林・落葉広葉樹林・針広
混交樹林が南から北へと拡がっている.
日本の自然環境には, 海崖・岩礁・砂浜の海岸域から高原を経て標高 3,000m を超える高山までの
多様な高度環境, 山岳・火山・湖沼・湿地・渓流・河川(敷)
・海浜・干潟・岩礁・島嶼・森林・草原・
田畑・市街地という複雑な地勢・地形, また石灰岩質・花崗岩質・蛇紋岩質・火山灰土壌・泥炭土壌等
という地史に関わる変化, 更に列島を取り巻く暖・寒海流(黒潮・対馬暖流,親潮[千島海流], 東樺太海
流)や日本海側の大量の降雪による影響等が複雑に絡み合っている. こうした多様な自然環境の中で生
育する日本の植物はまことに多彩で, その植生も多様である.
1.
植物の多様性に恵まれた日本
地球は現在温暖な間氷期にあり, 日本の植物相は氷河期の厳しい影響を受けたアルプス以北のヨー
ロッパの植物相や北米東部地域の植物相よりも遥に「種の多様性」が高い. 日本と英国はともに島国で,
よく似た温帯性落葉広葉樹林が発達していて,“属のレベルでは殆どの樹木は共通しているが, 両国の共
通属に含まれる種の数では日本の方が格段に多く,(氷河期に厚い氷床に覆われた)英国の植物相は極め
て貧弱である.”
(注1) スペイン・ポルトガル・フランス・イタリアを含むヨーロッパ全域にその範囲
を広げて比較をしても, ヨーロッパは日本に比べて植生は貧弱である. 複雑な地形をもち, 全体に雨量
が豊富で多湿な日本列島には多様な種が分化し, 生育している.
日本は狭い国土にも拘らず, 約 30 属の固有あるいは準固有属植物があり, 5,000 種ほどの種子植物
が自生し, シダ植物を含めた維管束植物の数は約 7,000 種以上に及ぶという. 更に,“日本に産する種子
植物の約 40%弱にあたる 1,600 種ほどが固有種であり, 種の密度のみならず種の固有率も高いといえ
る.”
(注2) 今日世界で最も植物相の解析の進んでいるのは日本であるともいわれ, その全貌がほぼ判
明したのは 20 世紀中葉である(注3).
2.
日本植物研究の先駆者たち
この極東の島国:日本は早くから植物採集者 (Plant Hunter)・植物研究者の注目を集めた. リン
ネによる近代植物学が勃興した 18 世紀中葉以降, オランダ・ドイツ・北欧諸国・ロシア・フランス・イ
ギリス・アメリカ等からの多くの第一級の植物学者によって 19 世紀後半まで日本産植物の研究・発表
[分類体系の上に位置付け学名を与えるること] が精力的に行なわれてきた. 日本産植物の学名に, L.
(リンネ), Thunb.(ツュンベルク), Siebold. et Zucc.(シーボルトとツッカリーニ), Maxim.(マキ
シモヴィッチ), Miq.(ミクェル), Franch. et Sav.(フランシェとサヴァチェ)等外国人命名者が多い
のはこうした経緯によるものである.
1890 年代以降は矢田部良吉・松村任三・牧野富太郎等の日本人
研究者の学名発表も行なわれるようになった.
― 3 ―
はじめに
西欧の生物学者たちにとって当時の日本は新種の宝庫であったと言える. この調査・研究(記載)
活動の先頭に立ったのは江戸時代の鎖国下に長崎:出島にオランダ商館医として来日したケンペル
( Engelbert Kaempfer )・ツュンベルク( Carl Peter Thunberg )・シーボルト( Philipp Franz von
Siebold )であった. 日本産植物の科学的分析への道を拓いた彼らの貢献は大きい.
この 3 人は, 銘々の『フロラ・ヤポニカ』(日本植物誌)を刊行した. ツュンベルクは自分のコレ
クションに加え, 大英博物館に保管されるケンペルが収集した標本の再研究を重ねた. シーボルトは
標本・資料の収集を組織的に行い, 多数の植物標本を持ち帰り, 彼もまたケンペルとツュンベルクの研
究を発展させるかたちで, 自分の『フロラ・ヤポニカ』を著わした. このように日本産植物研究は,“単
に記述された情報だけでなく, 標本という実物に遡って検証できる幸運に恵まれている”(注4)といえ
る.
3.
本書のねらい
日本産野生植物について, 学名を記載している専門書・植物誌・図鑑類では, 個々の植物の「種の
学名」を知ることは出来ても, 学名の一覧表示を見ない限り他の科・属の「種の学名」との関連・類似・
相違点などを包括的に捉えることは困難である. 学名の表記法を知り, その学名の意味を可能な限り
探求していくならば, 植物そのものと植物にまつわる様々な事由への興味が深まります. 更に, 個々の
植物の学名命名者(著者)を知り, その植物の研究史を辿ることで植物への理解は一層深まっていくで
しょう. 学名命名者(著者)を知るために, 本書で引用した学名のすべてにその学名の命名者名(著者
名)を付記しました.
植物をよく知るには, 生育の環境・生活史(ライフ・サイクル)等も配慮して植物自体をじっくり
詳細に観察することが大切であるが, 植物の名前(和名・学名)を知ることも, 植物をよく知る一つの
手掛りとなります. ここでは学名に焦点を絞り, 日本産野生植物の和名(科・属・種)に加えて学名(属
名+種形容語)と著者(命名者)の項を一覧表示する CD-ROM 版「日本産野生植物:植物学名一覧」
を作成し, それを資料に本書『植物の学名を読み解く―リンネの「二名法」―』をまとめました.
本書では, 地球生物のすべての種――ヒト(注5)を含む各動物・植物・菌類・細菌類に至るまで,
これまでに発見された種は勿論のこと, 現在未発見の種にもすべて――に「属名」と「種形容語」とい
うラテン語の二語からなる統一的な学問上の名称を付けることを提唱・実践したリンネの「二名法」
(二
語命法)という学名記載の実例を最初に詳述し, 次に日本産野生植物の研究の歴史をツュンベルク・シ
ーボルト・マキシモヴィッチ・ミクェル・サヴァチェ・A. グレー・矢田部良吉・牧野富太郎等を軸に
辿り, 学名の実例を示しながら植物の学名を多角的に読み解いていきます.
ただし, 学名は固定されたものではなく, 研究の発展により改変が行われ, 新たな学名が付けられ
ることがあることを承知しておく必要があります. また, 18 世紀中葉以降世界中の研究者により記
載・命名されている植物(生物)学名の中には, その語源の意味・由来が不詳のものもあります.
本書では, 日本産の野生植物(シダを含む維管束植物)の他に, 菌類・蘚苔類・地衣類・海藻類を
取り上げ, 参照のため少数ではあるが栽培(園芸)植物・外国産植物と動物(環形動物・陸貝類・甲殻
類・昆虫類・クモ類・哺乳動物・鳥類・魚類・爬虫類・両生類)の学名にもふれています.
注 1・2 田村道夫編『日本の植物
研究ノート
分類・系統学へのアプローチ』(1981) 培風館.
pp. 3-7
環境庁自然保護局編『植物目録』(1987) によると, 日本に自生する高等植物(在来種)として 5,565 種
(うち日本固有種は 1,950 種)124 亜種 1,612 変種 815 品種 2 亜品種が確認されている.
注 3 日本植物相の集大成は, 大井次三郎著・北川政夫改訂『新日本植物誌
― 4 ―
顕花編・シダ編』
(至文堂),『日本の
はじめに
野生植物』(平凡社), 英文版 ”Flora of Japan ” 全 4 巻 8 分冊(講談社サイエンティフィク…刊行継続中)
等に収められている.
詳しくは,p. 78 の注 1. 参照.
注 4 「シーボルトと日本植物」展(2001.9-10, 東京大学教養学部美術博物館・総合研究博物館共催)
展示レビュー
: 大場秀章“シーボルト日本植物コレクションの寄贈”より引用
注 5 「ヒトを動物や植物と同じく生物の一種として扱って, 共通の方式による名称を与えたのは, 当時としては
革命的な行為だったといってよい.
このように簡便で安定性のある生物命名法を提案し,普及・定着させ
たリンネの功績はまことに偉大で, 人類の文明が存続する限り不滅であるといっても過言ではあるまい.
リ
ンネが<生物分類学の父>と称えられる所以である.」
(西村三郎『文明のなかの博物学―西欧と日本』(1999)
上巻, p.16 紀伊国屋書店)
Homo sapiens L. 種形容語:sapiens(賢い) ヒト (1 科 1 属 1 種)
動物学名の原点=始点とされるリンネの『自然の体系』(Systema Naturae, 第 10 版第1巻) が出版された
のは 1758 年であり, ダーウィン C. R. Darwin ( 1809-1882 ) の『種の起源』(The Origin of Species, 1859.
進化論) が刊行される 1 世紀も前のことである.
― 5 ―
第1章 学名とその表記について
第1章
学名とその表記について
1
学名(Scientific Name)とは
植物研究者は新しい植物を詳細・綿密に調査・比較研究をして, それが新種であれば学術誌に新し
い「学名」(Scientific Name) を付けて記載・発表をする. ある植物を指して呼ぶ名称は, その産地や
周辺の地域・国の人たちによって先祖代々受け継がれてきた現地呼称があり, 同一の植物でも言語(英
語名・フランス語名・中国語名・日本和名等)によってその名称が異なるのが普通であり,「普通名」
(common name)と呼ばれる. 日本和名(Japanese name) においても, 地域ごとの方言によりその名称
が異なり, 別に標準和名(common Japanese name)を決めており, 生物の和名は専らカタカナ表記によ
る. (但し, それを規定する規約はなく, 常識的に定められた和名程度のものである) 従って, 世界の
植物相を研究する学問に於いては個々の植物を示す世界共通語とも言うべき「学名」(scientific name)
が必要になるわけであり, 「学名」
(注1)こそが学問的に認められた生物の種の唯一の公称である. “名
も無き雑草”の類は存在しないのである.
我々日本人には極めて身近で親しい植物であるクロマツ・ナズナ・ドクダミ等の学名は勿論のこと,
アッケシソウ・オゼソウ・キレンゲショウマ・ツチトリモチのような産地が限られる植物についても植
物図鑑等を開けばその「学名」を知ることができ,「学名」に使われているラテン語の意味を知れば尚更
にその植物の特徴や「学名」の多様な由来まで分かる場合が多い.
植物に限らず生物には, 哺乳動物・鳥類・昆虫類・爬虫類・両生類・魚類・菌類・細菌類から古生
物に至る全ての既知の生き物, それに岩石・鉱石には「学名」が付けられていて, それら全てが体系的
に認知され, 現在では未知の生き物にも, 今後新種として認知-記載される際には科学的命名法にもとづ
いて必ず「学名」を付けて発表される.
自然の体系を明らかにする分類学によって世界共通語として
規定される学名は“人類共通の文化であり, 人類共通の財産であるといえる.……また, 生物の情報検索
のためのキーワードとしても機能する”(注 2).
注 1
厳密に云えば, 学名とは分類群の名称であり, 種名だけでなく属名・科名も学名である
注 2 平嶋義宏『生物学名概論』(2002)
2
東京大学出版会.
pp.8, 230
植物学名命名規約
1867 年第一回国際植物学会議(パリ)でフランス人アルフォンズ・ドゥ・カンドル( Alphonse de
Candolle, 1806-1893. 主著『栽培植物の起源』Origine des plantes cultivées, 1883 )によって「万国
植物命名規約」が提唱され(パリ規約), それ以後「国際植物命名規約」作成の協議が行なわれた.
あ
る生物が発見された場合, その生物にそれまで, 誰も名前(学名)を付けていないかどうか, また, 既に
学名が付けられていれば, 最も先に付けられた名を正式の学名としたいが, どこまで遡って古い学名の
有無をチェックするのかなどが問題となってくる.
そこで, 1905 年の国際植物学会議(ウィーン)で, 植物の種形容語(種小名)はリンネ Carl von Linné
(1707-1778) の『植物の種』第 1 版 (Species Plantarum, 1753) 以降に出版されたものから, 植物の属
― 6 ―
第1章 学名とその表記について
名はリンネの『植物の属』第 5 版(Genera Plantarum, 1754) から始めることにした . 従って, ヨーロ
ッパ産でそれ以前に知られていた植物の命名者は全部リンネになっているので, 多くの植物にリンネが
命名した学名が用いられることになった. しかし, その全部の名付け親がリンネであったわけではな
く, 規約上リンネの命名とする約束になっているわけである.
動物の学名では, 種形容語が整備されたリンネの『自然の体系』第 10 版 ( Systema Naturae,
1758 ) 以降に出版されたものから認可されて, これが動物の学名の始まりである.
「国際植物命名規約」とは, 国際植物学会議(International Botanical Congress)の命名部会によ
って, 6 年毎の会議で改正される植物の学名を決める際の唯一の国際的な規範である. 改正された規
約は, その基となった国際植物学会議の開催地の名を冠して「○○規約」と呼ばれるのが通例である.
現在の最新版は 1999 年第 16 回セントルイス会議を経たセントルイス規約 International Code of
Botanical Nomenclature (略称 ICBN) (Saint Louis Code, 2000)であるが, 2005 年の第 17 回
ウィーン会議の結果を受けたウィーン規約(2006)の書籍版が近々発行されるはずである.(注 1)(その
‘Electronic version’は既に公開されている.
次回の改訂は 2011 年の第 18 回メルボルン会議にて実施される予定.)
この学名と命名の「国際植物命名規約」は野生植物を対象にしている. 野菜や観賞目的として作
りだされた栽培植物については,「国際栽培植物命名規約」 International Code of Nomenclature for
Cultivated Plants がある.
学名は異名( synonym )や同名( homonym ) を無くし, それが上記規約に適合した有効名である
限り先取権( priority ) が認められており, 規定に合うよう公表された最も古い学名が正名
(correct name)となる(注 2).
日本独自の和名(標準和名)と異なり,学名は全世界で通用し,また 1 種類の生物にはひと通りの学
名しか存在しないようにし,厳密に取り扱われている. 和名には「命名規約」は無いのである.
注 1 『国際植物命名規約(ウィーン規約) 2006 日本語版』(2007.11, 日本植物分類学会)が刊行されている.
注2
3
ある植物群の階級や範囲に対する考え方が研究者間で異なる場合には,異名(synonym)がつくことになる.
植物分類学の祖:リンネ (Carolus Linnaeus)
Carolus Linnaeus(Carl Linné のラテン語名) (1707-1778) はスウェーデンで, ルター派牧師の
子に生まれ, ルンド大学・ウプサラ大学(1477 年創立されたスウェーデン最古の大学)で医学を学びな
がら植物学に熱中し, ウプサラ大学で医学部教授として医学・植物学・薬学の教授をして同大学植物園園
長を務めた. 彼は, 神の「財産調べ」のつもりですべての動・植・鉱物を平等に扱い, 知る限りの動植
物の学名を定め, それに簡潔で明瞭な分類体系を提唱した 18 世紀の代表的な博物学者(ナチュラリス
ト)であった.
1761 年に学問上の貢献により爵位を受けた後は Carl von Linné と称されようになっ
た. ツュンベルクがウプサラ大学に就学した翌年のことである.
(リンネはリネーとも記される)
リンネが生れる 13 年前(1694 年)にドイツのチュービンゲン大学医学教授カメラリウス(R. J.
Camerarius, 1665-1721)が, 実験によって種子の形成に花粉の必要なことを初めて示し,「植物の性に
ついての書簡」(Epistra de sexu plantarum, 1694) の中で雄しべが雄性の, 雌しべが雌性の生殖器官で
あり, 生殖の過程は動物でも植物でも基本的には同一であると主張した.
1730 年リンネは“花の結婚”に関する手稿の小論文「植物の婚礼序説」(Praeludia sponsaliorum
plantarum ) をスウェーデン語で書き, ウプサラ大学長で, ウプサラ聖堂長兼神学教授であった彼の師
オロフ・セルシウス( Olof Celcius, 1670-1756. 天文学者で寒暖計の発明者アンデルス・セルシウス
― 7 ―
第1章 学名とその表記について
Anders Celcius の伯父にあたる) に献呈した. セルシウスは『聖書植物考』やウプサラを中心とする「ウ
プランド地方の植物誌」(Flora Upplandica) を著わした植物学の愛好家でもあった.
この論文で, リンネは率直に, 少し詩的に植物の性についての学説を展開し, グルー( N. Grew
[1641-1712], 顕微鏡による植物解剖学を創始したイギリスの植物学者,『植物解剖学』(The Anatomy of
Plants, 1682), カメラリウス, ヴァイアン(S. Vaillant [1669-1722], フランスの植物学者,『花の構造』
(Sermo de structura florum, 1718) による植物の花糸と雌ずいが性器官として特異なものである, と
いう説に賛意を表明したのである.
1735 年リンネはラテン語で書いた『自然の体系』( Systema Naturae, 第 1 版) を出版し, 地球上
にみられる動物界・植物界・鉱物界のそれぞれを綱, 目, 属, 種と高いランクから低いランクへ順次細分
していく階層分類(hierarchic classification)の思想とシステムを発表した. 自然物をそれぞれのラン
クに命名・配列して, 秩序立ったヒエラルキーに体系付けることがリンネの目標となった.
植物界では雄しべの性質(数)で「綱」を分け,次にそれぞれの「綱」を雌しべの性質(数)で「目」
を分けた「雄雌蕊分類法」, 彼のいう「性体系」 (Systema sexualis : Sexual System……生殖器官に基
づく分類体系)によって注目された(当時,「科」という概念はまだなかった).
大学教授に就任(1741 年) 後も, リンネは思索と研究を重ね次々とその成果を公刊していった. ま
た, 国内の博物学コレクションを調査し, 採集旅行も行い報告書を著した. 主なものを以下に列記す
る:
『自然の体系』(Systema Naturae, 初版, 1735 ) (注1)……本文 11 頁の小冊子
『植物の属』(Genera Plantarum, 1737)……第 1 版は 935 属, 第 5 版(1754),最終の第 6 版(1764)
は 1,239 属
『ラップランド植物誌』(Flora Lapponica, 1737)
『クリフォード(庭園)植物園誌』(Hortus Cliffortianus, 1737)…G. Clifford(1685-1760) は東インド
会社の総 裁で,彼の壮大な屋敷内には温室植物園・動物園があり, 博物標本も充実し, 博物学図書
も完備していた.
『植物の綱』(Classes Plantarum, 1738),
『自然の体系』(Systema Naturae, 第 2 版, 1,740. 80 頁. 以後版を重ね, その都度大幅に増
訂され第 6 版, 1748. 224 頁. 第 10 版, 全 2 巻, 1758-1759. 1,384 頁.
第 12 版, 1766-1768. 2,355 頁. 第 12 版の動物部門は 1,327 頁)
『スウェーデン植物誌』(Flora Suecica, 1745)……第 1 版は 1,140 種, 第 2 版は 1,755 種
『スウェーデン動物誌』(Fauna Suecica, 1746)
『植物婚礼序説』(Sponsalis Plantarum, 1746)…… 1730 年発表した手稿論文を一部手直をして
印刷・出版したもので, 詩文形式の文章で発表した
『植物哲学』(Philosophia Botanica, 1751)……彼の植物学理論と用語の定義をした学術用語集
『植物の種』(Species Plantarum, 第 1 版, 1753. 第 2 版は 1762-1763 年)……約 1,000 属, 7,300
種のすべての種が記載され, リンネが心血を注いだ仕事の一つである. 日本産植物
は 19 種が登場する
植物の学名はこの書(第 1 版)と『植物の属』(Genera Plantarum, 第 5 版, 1754)
から出発することを後に国際植物学会議が決める
『自然の体系』(Systema Naturae, 第 10 版, 1758-1759.
2 巻本で, 第 2 巻は植物界を扱う)……
この版によって動物の学名を始めることを国際動物学会議が決める(リンネは 6 綱,
34 目, 312 属の中に約 4,200 種の動物の学名を命名した)
『自然の体系』(Systema Naturae, 第 12 版, 1766-1768)……全 3 巻,
は 1,327 頁
― 8 ―
2,355 頁, うち動物部門
第1章 学名とその表記について
1753 年に出版した『植物の種』(Species Plantarum, 第 1 版)の中で, リンネは植物の分類に於い
て初めて「種」という概念を用いて世界で最初の生物の分類体系を提案し,「種」を分類の基本的単位と
して設定した. リンネは生殖器官を植物の本質とみて, それに基づいて「性体系」を構築した. 植物に
おいては, 種子や果実を結ぶという性質(=結実)こそ最も本質的な属性であり, この性質によって植
物は地上に繁栄していくものであると考えた. 受精の器官である雄しべと雌しべこそ, 植物を分類し
体系付けていく上で唯一の正統な基準というべきものであるというのがリンネの植物分類を貫く根本
思想であった(注2). 「性分類体系」あるいは「雌雄蕊分類体系」とも呼ばれるものである.
リンネは植物を雄しべと雌しべの数を指標とする“二十四綱分類体系”
(顕花植物 23 綱と隠花植物
1 綱)と“二名法”(「二語名法」,「二命名法」とも呼ばれるが本書ではすべて「二名法」に統一する)による学名
表記を提案し, それまでに知られていた植物を有用, 無用の区別無く 7,300 種全てに学名を付けて発表
した. リンネの研究主題である「自然界の体系化」に“二名法”の提唱・実践は密接に結びついたもの
であった. 全ての植物の学名は, 彼の著『植物の種』(1753)から始まり, その著が植物学のバイブルと
呼ばれる所以である.
リンネが植物に適用した「雄雌蕊分類法」は, 体系的でかつ簡便にできていたが真の類似性が見落
とされることも多く, 科学的根拠が薄く人為的であるという評価を後に受けることになった(注3). 現
代では, 植物の進化に沿った類縁関係に則って分類する系統分類法が広く採用されている. とはいえ,
リンネが編み出した学名の二語名法(二名法)は, その簡便性と安定性とが認められて, 広く学界に普
及・定着していき, 現代の分類学にも受け継がれている.
この分類・記載に用いた方法は,「属」と「種形容語」の2つをラテン語(当時のヨーロッパにおけ
る学術公用語)各一語で簡便に記し, 更にこれに命名者の名前(「著者名」という)を記載する「二名法」
(binomial nomenclature) である. それ以前は, 一つの「種」を表すのに一つの属名の下に様々な形
態・形質・習性等の説明を数行にわたる記載文で長々とラテン語で表す記述的なもの(定義)であった
が, リンネは「種形容語」を記述から単なる呼称に変えたのでたとえ意味上は不都合であることが分か
ったとしても, 種を指示する記号として機能を果たし, 使うことが出来てその名称は安定する. しかし,
学名は単なる記号ではなく, 基本的には生物の種類を識別するために付けられた意味のある名前である
ことは当然であり, 記号としての機能も併せもっているといえる.
◎
属名は形容詞の種形容語(種形容詞)を支配する
「日本(産)の」という意味の種形容語(種形容詞)には “ japonicus ” が最も普通である.
japonicus (男性),
japonica (女性), japonicum (中性)と語尾変化する.
(科和名) (種和名)
シソ
メハジキ
バラ
ヤマブキ
キク
ツワブキ
(属名+種形容語) (著者名)
Leonurus japonicus Houtt.
Kerria japonica (L. ) DC.
Farfugium japonicum (L.) Kitam.
(属名の性)
男性(m.)
女性(f.)
中性(n.)
属名は上から下に, 男性(masculine), 女性(feminine), 中性(neuter)なので, 種形容語
の種形容詞はそれに応じて性( gender)を一致させている.
◎
著者名には略記も用いられている
(科和名) (種和名)
ツバキ
ヤブツバキ
カエデ
イロハカエデ
キク
ノアザミ
(属名+種形容語)(著者名)
Camellia japonica L.
Acer palmatum Thunb.
Cirsium japonicum DC.
― 9 ―
( Linnaeus )
( Thunberg )
( De Candolle )
第1章 学名とその表記について
ブナ
ブナ
ブナ
カシワ
ツツジ
ミツバツツジ
マツ
クロマツ
Fagus crenata Bl.
Quercus dentata Thunb.
Rhododendron dilatatum Miq.
Pinus thunbergii Parl.
( Blume )
( Thunberg )
( Miquel )
( Parlatore )
種形容語:[この欄の種形容語は, 以下すべて主格・単数の語形で示す. (人名で生没年のみを記したものは本文中に人物
紹介の個所がある)]
palmatus (掌状の), crenatus(鈍鋸歯のある, 円鋸歯状の), dentatus(鋭鋸歯のある, 歯牙のある
[ 鋸歯の先は開出し, 葉の先を向かない ]), dilatatus(拡張・拡大した, 膨れた)
この「二名法」は,その後の植物命名法の出発点となり, 学名の形式が統一され, 前記の「国際植物命
名規約」の基準とされて現在に引き継がれている. 一つの分類単位[階級](taxon, 複数は taxa: 種名,科
名など) には, 有効なただ一つの学名を認めるという原則が必要である. 同じ種に違う学名が付けられ
たり(異名 synonym ), 逆に違う種に同じ学名が付けられたり(同名 homonym )する不都合をな
くすことが必須であり, 最も早く(古く)発表されたものが唯一有効であるという単純明快な“先取権
の原則”がある.
このように, 世界の植物についての知識を整理して体系化することで, 植物の「種」に関する知識
を多くの人々が共有することが可能になり, 未知な生物(植物)にも適用可能な生物の分類体系
( classification system ) をリンネが提唱した意義は極めて高く, 今日のレファレンス・システム
( reference system )の先駆けといえる(注4).
西欧の本草学はルネサンス後期の 16 世紀に黄金時代を迎え, 次第に実用を離れ生物自体を研究す
る博物学が発展してきた.
17 世紀はガリレオ(Galileo Galilei, 1564-1642)・ニュートン(Isaac Newton,
1642-1727)によって近代科学が成立した自然哲学( natural philosophy : 自然を分析する学問 )の時代
であった.
18 世紀は博物学が時代を代表する科学となった. 博物学=自然史( natural history ) は
自然を記述する学問である.
18 世紀の西欧諸国は大航海時代の後を受ける“啓蒙・探検の時代”であり, 各国が博物学者達を加
えた探検隊を未開・未知の地域に競って送り込んだ. 生物の調査は資源探索の一環で国の画策・支援の
下に行なわれた. その結果, 世界各地から集まる植物標本の量は極めて多かった. リンネ自身当時の
探検事業の強力なプランナー(計画者)であり, プロモーター(推進者)であり, パトロン(後援者)
であったといえる(注5).
世界の植物を自らが提唱した“二十四綱分類体系”に位置付け分類するという「世界の植物調査」
の遂行を望み, 未知の植物探検の為にリンネを慕った若い植物学者達を植物学的には未知の地域(アメ
リカ・近東・アフリカ・東南アジア・インド・中国・日本)へと派遣した(注6).
リンネが, 彼の弟
子(使徒)達が届けたり, 遺留した植物標本や記録(情報)によって多くの新植物を自分の分類法によ
って発表し, 目録形式の植物学百科全書ともいうべき『自然の体系』(Systema Naturae ) を次つぎと増
訂(注7)して世に送り出し, 植物学の発展に多大な貢献を成し得たのも世界各地に張り巡らせた情報収
集網があったからにほかならない. 世界各地に派遣された弟子達は, 現地の人々にリンネの新しい植
物学の思想と分類体系を教え, 伝えた.
リンネの標本・蔵書は, 彼の死後英国のバンクス卿(Sir Joseph Banks , 1743-1820 )の指示で未亡
人から英国に売られ, イギリスではそれを基礎に 1788 年ロンドン・リンネ協会(Linnean Society of
London)が創設され, 現在も同協会に保存されている. リンネの遺産がイギリスに移った背景には, リ
ンネ植物学がイギリスで広まっていたという事情があった. リンネの母国スウェーデンを別にすれば,
「性の体系」が, 最も広く普及したのがイギリスであった. ロンドンの薬剤師ハドソン( William
Hudson, 1730 -1793 )の著『イギリス植物誌』(Flora Anglica, 1762) はイギリスの植物をリンネ植物学
に従って分類・記載し, 植物名にはリンネの「二名法」を採用してアマチュア植物愛好家たちにその記
― 10 ―
第1章 学名とその表記について
述が簡単明瞭と好評であった. しかし, 植物学者ブラウン(Robert Brown, 1773-1858 ) はその著『ニュ
ーオランダ植物誌序説』(Prodromus Florae Novae Hollandiae, 1810)[ ニューオランダとはオーストラリア
のこと]で, 植物分類はあらゆる形質を総合的に判断しなければならないと主張し, リンネ植物学は次第
に支持を失っていった.
人民主権を唱え, 民主主義の祖となったフランスの思想家ジャン=ジャック・ルソー
( Jean-Jacques Rousseau, 1712-1778 ) とドイツの文豪ゲーテ( Johann Wolfgang von Goethe,
1749-1832 ) (注8)もリンネの植物学に魅せられて植物学に深入りするようになりリンネを師と仰いだ
が, 後年ゲーテはリンネの「性の体系」
(人為分類)に距離を置くようになった. しかし, ゲーテは,植物
の育成から標本の作成法までをルソーに学び, 自然を愛したルソーには終生尊敬の念を抱き続けた.
リンネはツュンベルク( Carl Peter Thunberg,
1743-1828 ) など多くの人材を育成し,その功績を
記念してリンネ自身の名がその属名に用いられている. リンネソウ属( Linnaea ) の Linnaea という
属の名は, オランダの植物学者で友人のグロノビウス( J. F. Gronovius, 1686-1762 ) によりつけられ,
リンネソウが好きであったリンネ自身これを喜び, 自著『植物の属』にこの属名を取り上げた.
従って, この属名の正式な著者はリンネ(リネー)である.
スイカズラ科
リンネソウ属
リンネソウ
Linnaea borealis L.
北半球寒冷地に広く分布し, 匍匐する常緑の矮性低木で, 本州中部以北の高山にも産する
7 月頃, 小枝の先に 2 個ずつ, 鐘形の淡紅色の花を下向きに付ける
英名:twin flower
北米には, Linnaea americana J.Forbes が分布する
シオグサ科
マリモ属
Aegagropila linnaei
マリモ
Kuetzing(注9)
種形容語:borealis(北方の,北方系の), americanus(アメリカの)
♂と♀の記号は記載を簡潔にするためにリンネが初めて雄と雌の記号として用い, それが世界中
に広まったものである.
3.1
リンネが命名した日本植物
日本産植物の中で, リンネが命名した植物の数は非常に多い. しかし, それらの植物は日本にのみ
産するという訳ではなく世界に広く分布する種であることが多い. 学名を記載・発表する際に世界各地
から集められた標本を, タイプ (Type) 標本(新種を記載し新学名をつける材料になった標本のこと)として用
いたのである. 日本産植物でリンネが命名した植物のごく一部を以下に列記する:
(科
和
名)
(種
和
名)
キンポウゲ
フタマタイチゲ
トウダイグサ
トウダイグサ
ウルシ
ハゼ
キク
ノボロギク
クワ
カジノキ
アブラナ
ナズナ
キク
ヒレアザミ
マメ
タヌキマメ
キク
アキノノゲシ
イネ
キビ
アカネ
シラタマカズラ
(学
名:属名 + 種形容語)( 著者名)
Anemone dichotoma L.
Euphorbia helioscopia L.
Rhus succedanea L.
Senecio vulgaris L.
Broussonetia papyrifera (L.) Vent.
Capsella bursa-pastoris (L.) Medic.
Carduus crispus L.
Crotalaria sessiliflora L.
Lactuca indica L.
Panicm miliaceum L.
Psychotria serpens L.
― 11 ―
第1章 学名とその表記について
イネ
コムギ
スイカズラ
カンボク
Triticum aestivum L.
Viburnum opulus L. var. calvescens (Rehd.) H. Hara
種形容語:dichotomus(二股状に分岐した), helioscopius(向日性の), succedaneus(代理・代用の,模倣の), vulgaris
(普通の,広く分布する), papyrifer(紙[質]をもつ), bursa-pastoris(牧人の財布), crispus(縮れた, 波打つ), sessiliflorus
(無柄花をもつ), indicus(インドの), miliaceus(イブキヌカボ属[ Milium ] のような,キビの), serpens(匍匐する),
aestivus(夏の), opulus(カンボクの古名), calvescens(裸出状になる, やや無毛の)
注
1 本文はラテン語で, 鉱物, 植物, 動物の自然三界についての所見を箇条書きに示した部分がある.
参考にしてその部分を訳出したものが次に収められている.
英語訳を
大場達之他編『リンネと博物学―自然誌科学の
源流』(1994) 千葉県立中央博物館. 遠藤泰彦・高橋直樹・駒井智幸訳「自然の体系(初版)」 pp. 155-160
注
2 西村三郎『未知の生物を求めて―探検博物学に輝く三つの星』(1987) 自然叢書 1 平凡社
pp.88-90
注
3 フランスの文人科学者で, リンネと肩を並べるほどの学者の一人で 31 歳でパリ王立植物園園長になった
ビュフォン G. L. L. Buffon (1707-1788) は万物の尺度である人間を中心に置き, リンネの分類体系への批
判・反論を強力に展開した一人であった.
彼はリンネと同年に生れ『一般と個別の自然誌』(Histoire
naturelle générale et particulière, 36 vols. 1749-1788) を著わし, 博物学の研究は, 性急な自然の秩序
付け=体系化よりもむしろ自然そのものの構造を正確に, 詳細に記述して, その解析に重点をおくべきで
あると主張した.
ほかにもゲッチンゲン大学の碩学フォン・ハラー A. von Haller (1708-1777) や自然分
類の創始者の一人であったフランスのアダンソン M. Adanson (1727-1806), ペテルブルク・アカデミーの
植物学者ジーゲスベック J. G. Siegesbeck(1686-1755)
等がリンネの主張に異論を唱えた.
「リンネの『自然の体系』には, 初版以来一貫してその巻頭に聖書『詩篇』104 篇からの, 神とその創造を
褒め称える, あの美しい頌歌が飾られているが, それはそのまま彼のいつわらざる心情であったと思われ
る.」(西村三郎『文明のなかの博物学―西欧と日本』上巻 (1999) 紀伊國屋書店 p.42
注
4 大場秀章編『日本植物研究の歴史 - 小石川植物園300年の歩み』(1996) 東京大学出版会, 大場秀章「黎
明期の日本植物研究」 p67.
リンネが確立した学名の表記法(二名法)は情報の検索性において優れて
いるといえる. リンネは植物(生物)分類学の祖 ( the Father of Taxonomy ) とわれる. 「‘Taxonomy’と
は, 未知な植物を解析して, 既知の分類体系上での位置付けを決めることである.
更に, 新たに加わった分
類群によって, 既知の分類群の論理性に矛盾が生じたときには, 新たな指標形質によって分類体系そのもの
を再構築するという, システマティックス( systematics ) の概念とが分類学を構築する, 車でいえば両輪に
あたるものである.」大場秀章『江戸の植物学』(1997)
東京大学出版会. p. 114
注
5 西村三郎『リンネとその使徒たち―探検博物学の夜明け』(1989) 人文書院
注
6
p.287
世界の植物調査・探索に出かけたリンネの使徒達 ( The Linnaeus Apostles ) の一部を略記する:
C. P. Thunberg (1743-1828) →
1775 年長崎:出島に商館医として来日.
ヤツデ・アオキ・サカキ・
クロモジ等沢山の日本植物にリンネの方式で学名を与え, 日本植物の魅力を世界に伝え日本の植物相の
解明に多大な貢献をした.
P. Kalm (1715-1779) →
リンネを父と慕った.
本書 p.53 のツュンベルクの項で詳述する.
スウェーデンに生まれ, オーボ大学で神学を, ウプサラ大学で博物学を学び
1748 年建国途上の新大陸のフィラデルフィアに上陸し, ニュー
及びカナダ東北部の原野を探査した.
イングランド
カルムが持ち帰った標本はリンネの最重要著作のひとつ『植物
の種』(1753) を取り纏める際に大いに活用され, 北アメリカの植物相解明の上でカルムが大きな役割を
果たした.
著『北アメリカへの旅』(1753.
D. C. Solander (1736-1782) →
Travels into North America, 1772. 英訳版第 2 版)
J. Cook 船長(1728-1779)率いるイギリスの世界一周探検隊第 1 回航海
(1768-1771)に博物学者 J. Banks(1743-1820)の助手として乗り込んだスウェーデン生れの植物学者で,
ニュージーランド・オーストラリア東岸・南アフリカ(喜望峰)を調査した.
その後は大英博物館に勤
務してイギリスに永住した.
A. Sparrman (1748-1820) →
J. Cook 船長率いるイギリスの世界一周探検隊第 2 回航海(1772-1775)に乗
り込み, 南アフリカ(喜望峰)・南極大陸・ニュージーランド等を探検した. ストックホルム大学の博
― 12 ―
第1章 学名とその表記について
物学教授になった.
『喜望峰,南極海及び世界周航の旅』(1783, 1802-28)
この航海に F. Masson(1741-1805)も便乗し, 喜望峰で下船した.
マッソンは 3 年強南アフリカに滞在
し 400 種を超す植物をイギリスへ送った.
P. Forsskål (Forskål とも) (1736-1763) →
1761 年デンマークの“アラビア探検隊”に博物学教授として
フォルスコールは参加し, 小アジア, エジプトとアラビア半島(イエメン)を探検し, 香樹などをテハ
ーマ砂漠で発見し, 彼の師リンネに報告をしたが, その直後に悪性マラリアに罹患し死去した.
遺著『エジプトーアラビア植物誌』(Flora Aegyptiaco-Arabica, 1775 )
F. Hasselquist (1722-1752) →
エジプト・パレスチナ・シリア・キプロスと周り, トルコのスミルナ(イ
ズミールの旧名)で 30 歳の若さで異郷の土と化した.
彼が残した標本や記録類は債権者に差し押さ
えられたが, スウェーデン王妃ルイザ・ウルリカが買い取り, リンネの手元に届けられたという.
リ
ンネは彼の残した標本によって多くの新植物を発表した.
他に, 目的地:中国を目前にしてインドネシア(あるいはコーチシナ[現在のヴェトナム南部]]で熱病に斃
れた C. Tärnström (1703-1746) やスペインの植物を詳しく調査し, 多くの標本をリンネに届けたが南ア
メリカのベネズエラで熱病に罹り死去した P. Löfling (1729-1756) や 1750 年航海説教師として東インド
会社に同行し中国を訪れ 3 年に及ぶ旅行で貴重な博物標本をもたらし, 詳しい旅行記を公にした P.
Osbeck (1723-1805) やデンマーク出身の J. C. Fabricius(1745-1808, 昆虫学者) 等がいた.
注
7 『自然の体系』(Systema Naturae) は改版毎に急速に増補されていった.
リンネが生前自ら校訂した『自
然の体系』は 12 版(1766-1768) が最後だったが, 彼の没後も協力者ゲッチンゲン大学教授:グメリン( J. F.
Gmelin, 1748-1804 )の編纂で最終 13 版が 1788-1793 年ライプツィヒで出版された.
第 1 巻動物(7 冊,
4,120 頁), 第 2 巻植物(2 冊,1,661 頁), 第 3 巻鉱物(1 冊,476 頁)総頁数 6,257 という膨大なものであ
る. 編者グメリンには植物毒に関する著『有毒植物論攷』(1775),『植物毒一般誌』(1777) があるが鉱物に
も詳しく動・植・鉱の自然三界にわたる情報を纏め上げるには, リンネについで最適の, そしておそらく最
後の博物学者であったといわれる.
注
8 ルソーはリンネより 5 歳若く, 同年にこの世を去った.
こよなく愛する人であった.
ありのままの自然のなかに喜びを見出し, 植物を
「スイス:ビエンヌ湖のサン・ピエール島の植物誌をつくる計画をたて, 島
のあらゆる植物を一本残らず記述することにした.……私は手にルーペをもち,『自然の体系』を小脇に抱え
て, 島の一隅へ探訪に出かけた」(『孤独な散歩者の夢想』(Les Rêveries du promeneur solitaire, 第 5 章,
1776 )と語り, ルドゥーテ( P. J. Redoute , 1759-1840. 『美花選』1827-1833 ) の素晴らしい植物画を付
し, ゲーテも愛蔵したという『植物学』(La Botanique de J. J. Rousseau, 1805 ) を書簡形式で発表した.
遺稿『植物学用語辞典』(1781, 未完) はフランスで初めての植物用語辞典であった.
一方ゲーテは「花は葉の変形したものである」*と主張する『植物変形論』(Metamorphose der Pflanzen, 1790)
を著わし, ケンペルが日本から持ち帰った種子(ギンナン:銀杏)から成長しヨーロッパに広まったイチョ
ウ(Ginkgo biloba L.) を愛でて, 詩(イチョウ:” Ginkgo biloba” , 1815. 『西東詩集』[West-östlicher Divan,
1819]) を書いた.
西東詩集とは,西方の詩人による東方的な詩という意味である.
形態学 Morphologie という言葉はゲーテの造語 (1817) であり, ゲーテに因んで学名が付けられた植物があ
る.
Goethea cauliflora Nees von Esenbeck , G. strictiflora Hook.
(アオイ科) ブラジル原産
*「この予想が正しいことは, 現在シロイヌナズナを用いた分子遺伝学によって証明されました.」(『ゲーテ
と近代生物学』【執筆・監修】京都大学名誉教授:岡田 節人(財)放送大学教育振興会, 1991 年 )
アブラナ科
シロイヌナズナ
Arabidopsis thaliana (L.) Heynh.
種形容語:cauliflorus(幹[茎]生花をもつ), strictiflorus(硬い[直立した]花をもつ), Thalius(16 世紀の
ドイツの医師・植物学者)
注
9 DNA の遺伝子配列をみて生物間の類縁関係を探るという DNA 鑑定によって, 日本の各近縁種マリモ(タテ
ヤママリモを除く)・阿寒湖のマリモ・スウェーデンのダンネモーラ湖のマリモ( linnaei )・オーストリアの
ツェラー湖のマリモ( sauteri )が同一種であることが分かった.
― 13 ―
リンネが当初命名した Conferva
第1章 学名とその表記について
aegagropila は Kuetzing によって Aegagropila 属に移された. 植物命名規約では属名と種形容語に同じ
単語を繰返すことができないため, Aegagropila linnaei という学名が Kuetzing によって与えられた.
Kuetzing は後にこの属を Cladophora に纏めてしまったので, Cladophora sauteri,
Cladophora
aegagropila などの学名が使われるようになったが, 上記分子系統の研究(Hanyuda et al. 2002) によって,
(阿寒湖の)マリモはスウェーデンや北欧の多くの湖に産するものと同じ Aegagropila linnaei ということ
になり, 2002 年藻類の国際誌にもマリモの学名として Aegagropila linnaei が発表された.
なお,近縁
のタテヤママリモについては, 正式な記載もなく, 学名も決まっていない.
注 10 Gaius Plinius Secundus ( 23-79 ) はイタリア生まれで, 文学・法律を学び, 軍人・財務官を務めた.
「彼は自然の生態に非常に興味をもち, 自らの観察や思想を織り込み, 古今東西の文献を参照して, 77 年『プ
リニウスの博物誌』(Plinii Naturalis Historia, 全 37 巻) を完成させた. リンネもプリニウスの博物誌を
多いに参照したと思われる.
プリニウスの最期は悲劇的であった.
ヴェスヴィオ火山の大爆発に際し,
科学的探究心と住民援助のために危険を冒してスタビアエに上陸し, そこで噴火のために非業の死を遂げ
た.」平嶋義宏『生物学名概論』(2002) p. 82
― 14 ―
第1章 学名とその表記について
リンネが命名した「属名」
「属名」…カエデ属 ( Acer
) ・トリカブト属(Aconitum )
・フクジュソウ属 ( Adonis )
・ナンバン
・トチノキ属(Aesculus )
・ネギ属 ( Allium )
・イチリンソウ属 ( Anemone )
・
ギセル属(Aeginetia )
シシウド属(Angelica )・ウマノスズクサ属( Aristolochia )
・ヨモギ属(Artemisia )・カバノキ属
( Betula )・アブラナ属(Brassica )・ヒナノシャクジョウ属(Burmannia )・ツゲ属 ( Buxus )・
ムラサキシキブ属( Callicarpa )・ツバキ属(Camellia )・クリ属(Castanea )・ハナズオウ属
(Cercis )
・ヒトツバタゴ属(Chionanthus )・ミカン属 ( Citrus )・スズラン属( Convallaria )・
ドクウツギ属(Coriaria )・サンシュユ属( Cornus )・ソテツ属 ( Cycas )・アツモリソウ属
(Cypripedium )・ナデシコ属 ( Dianthus )・カキノキ属( Diospyros )・モウセンゴケ属
( Drosera )
・トクサ属 ( Equisetum )
・カタクリ属( Erythronium )
・ブナ属( Fagus )
・イチジク属
( Ficus )・リンドウ属 ( Gentiana )・イチョウ属( Ginkgo )・ハハコグサ属(Gnaphalium )・
マンサク属(Hamamelis )・キヅタ属 ( Hedera )・ワスレグサ属(Hemerocallis )・ハナウド属
( Heracleum )・フヨウ属( Hibiscus )・ツリフネソウ属( Impatiens )・アヤメ属( Iris )・ゲッケイ
ジュ属(Laurus )・ユリ属( Lilium )
・リンネソウ属( Linnaea
Gronov. ex L.)・ムラサキ属
( Lithospermum )
・モクレン属( Magnolia )
・クワ属(Morus )
・ヤマモモ属(Myrica )
・タバコ属
( Nicotiana )・セリ属(Oenanthe )イネ属 ( Oryza )・ゼンマイ属(Osmunda )・カタバミ属
( Oxalis )・ヤイトバナ属(Paederia )・ケシ属 ( Papaver )・マツ属 ( Pinus )・ハナシノブ属
(Polemonium )・ヤマナラシ属(Populus )・サクラソウ属( Primula )・ サクラ属(Prunus )・
ナシ属(Pyrus )
・コナラ属( Quercus )
・キンポウゲ属(Ranunculus )
・ツツジ属(Rhododendron )
・
ウルシ属 ( Rhus )・バラ属( Rosa )
・ キイチゴ属(Rubus )・ヤナギ属( Salix )・ムクロジ属
(Sapindus )
・ ユキノシタ属 ( Saxifraga )
・ マツムシソウ属(Scabiosa )
・ナス属 ( Solanum )・
ナナカマド属(Sorbus )・イチイ属( Taxus )・シナノキ属(Tilia )・エンレイソウ属(Trillium )・
ガマ属(Typha )
・ニレ属( Ulmus )
・スミレ属( Viola )
・ヤドリギ属(Viscum )
・ブドウ属(Vitis )・
サンショウ属(Zanthoxylum )等の他に多数ある.
以下に, リンネが命名した日本植物の草本類に限って, 佐竹義輔等編集の『日本の野生植物―草本編』
(1981, 全 3 巻 平凡社)を調べた平嶋義宏のデータを紹介する. 総数 850 属のうち, リンネが命名して
いるのは 348 属もあり, 約 41% にも及んでいる.(平嶋義宏『生物学名概論』(2002)
pp. 80-81)
その属名の由来:
183 属
① 植物の古典名などを採用したもの
ギリシャ古名
112 属
ラテン古名
64 属
52.6%
別の植物の属名へ転用されたものあり
プリニウス(注 10)がつけた名をリンネが属名に
採用
アラビア語他の言語由来
7属
9属
② 神話・伝説に由来するもの
2.6%
③ 古代人・同時代人に奉献されたもの
35 属
10%
④ 形態的特徴を表現したもの
62 属
17.8%
⑤ 性状を表現したもの
41 属
11.8%
⑥ 薬効を表現したもの
14 属
4%
⑦ 地名に由来するもの
1属
0.3%
⑧ 意味不明のもの
3属
0.9%
― 15 ―
第1章 学名とその表記について
3.2
学名の言語
学名はラテン語で書かれる. ラテン語は,イタリア語・フランス語・スペイン語などラテン系諸言
語(ロマンス語)の祖先語で, リンネの時代の宗教上, 学術上の国際公用語であったが, その時代には
ラテン語を母国語として使う民族は既に存在していなかった. このことがかえってラテン語の中立性
を確立し, 時間の経過による語義の変化や揺らぎが起こる可能性が小さく, 学術の公用語としての機
能を促進したものといえる.
ラテン語の単語には古典ギリシャ語からの借用語が多く, そのために学名に用いられる語にも古
典ギリシャ語由来のものが多くある. ギリシャ文字を一定の規則に従ってラテン文字に置き換えると
ラテン語化され, 読み方はラテン語の読み方に従う. (本書ではギリシャ文字は使用していない)
ラテン語のアルファベット(litterae latinae)は英語のアルファベットから w を除いた 25 文字
(注1)であるが, 学名では外国語の表記のために w の使用も可能なので英語の 26 文字と同じになる.
漢字・ハングル・アラビア文字・ヘブライ文字などによって綴られたものは学名とは認められないが, そ
の発音をラテン語のアルファベットで表せばラテン語化されたものとみなされ, 学名とすることが出
来る.
つまり, 学名はどんな語源からつくられてもよいが命名規約の規定に則り発表されたものはラテ
ン語とみなされる. (例:“日本”は不可 →
“nippon”は可)
記号付きの特殊文字は原則として
その記号を取り除く. 即ち,ドイツ語の ä は a, フランス語の è, ê は e などで, 例外としてドイツ
語の ü は ue と綴る.([例] Bürger
→ Buerger)
注 1 厳密にいうと, 英語より J, U, W の 3 文字すくない 23 文字である.
更に,K, Y, Z の 3 文字もギリシャ語
系の言葉に使用されるだけであったので,実質的には 20 文字であった.
の母音を U で表すようになった.
と綴るようになった.
3.3
「例」
しかし, 後に I の子音を J で, V
例えば,「日本」は古いラテン語では “Iaponia ” と綴り, 後に“Japonia”
Thunberg の著『日本植物誌』:Flora Iaponica (1784)
学名の読み方
現在, ラテン語を母国語として使っている国はない. そのため, ラテン語の読み方は国によりそれ
ぞれ少しずつ違うことがある. 学名の綴りは重要であるが, 原則的な読み方があるにも拘らず,現実に
は読み方は各国(各国語)で違うのが現状である. 英語読み・フランス語読み・ドイツ語読みなど. 英
語圏では, 英語読みをするのが意思疎通を一番しやすい. また, 学名の由来となった言語に最も近い読
み方がなされることもある.
しかし,「国際命名規約」には学名の読み方までの規定はないが, 学名は基本的にはラテン語で書か
れているので当然ラテン語の読み方に従って発音するのが望ましい. ラテン語の発音体系は基本的に
ローマ字式の読み方による. 以下の日本語カタカナ表記は近似の読み方を表したものである.
母
音……ラテン語の母音は a, e, i, o, u, y の 6 種類あり, y はドイツ語の ü あるいはフランス語
の u と同じように発音する. 日本語のヤ行の半母音(英語の y )はラテン語では j または i で
表音する. 母音は単独の場合はそのまま発音し, 重母音は ae, au, oe, ei, eu, ui の 6 種類あり,
ae, au, oe は後ろの音を弱めに発音し, それぞれアェ(アィ),アゥ,オェ(オィ)に近く, ei, eu,
ui は別々の母音として発音する.
caelestis (カェレスティス, 空の・天の); deus の eu は二重母音ではなく, de-us と分ける (神)
auris(アウリス, 耳) ; auritus(アウリートゥス, 耳の[形容詞]) ; aurum(アウルム, 金) ;
Faunus(ファウヌス, 家畜作物豊饒の神) ; amoeba(アモェバ, アメーバ) ; poena(ポェナ,
罰) ; Tyrannosaurus (テュランノサウルス, 北米の後期白亜紀の地層から発掘されるティラノサ
― 16 ―
第1章 学名とその表記について
ウルス属 Tyrannosaurus の大型肉食恐竜)
ar, er, ir, or, ur は,「母音+ r 」の発音になる.
子
音……原則として発音しない字(サイレント)は無い.
natio (ナーティオ, 国民, 種族) ; anguis (アングイス, 蛇)
☆
注意すべきものを以下に列記する:
c ……後に来る母音にかかわらず常に [ k ] の音になる
Cicero (キケロー, 政治家・雄弁家・文人); Caesar(カエサル, 将軍・皇帝・文人); Seneca
(セネカ, 哲学者・劇作家・政治家); species(スペキエース, [分類群の] 種); centralis
(ケントラーリス, 中心の); cinereus(キネレウス, 灰色の); Cirsium(キルシウム,
アザミ属)
‘ k ’ の綴り字はラテン語には無いが, 外来語の学名に見られる
Keiskea (シソ科シモバシラ属); Kerria (バラ科ヤマブキ属)
f ……英語と同じ familia(ファミリア, 家族); fatum(ファートゥム, 運命); femina(フェー
ミナ, 女性); ferrum(フェルルム, 鉄・剣)
g ……giganteus (ギガンテーウス, 巨大な) ; magnus (マーグヌス, 大きな)
j, v … 半母音で, それぞれ [ y ] と [ w ] の音を表す. なお, 古いラテン語では j と v の代わり
に i と u がそれぞれ用いられ, 例えば major(マイヨル, より大きい)を maior と綴っ
ても間違いではない.
Jupiter(ユピテル, ローマの最高神ジュピター); Juno(ユーノー, ジュピターの正妻);
japonicus (ヤポーニクス,イァポーニクス, 日本の:[例] Flora Iaponica 「日本植物誌」
by C. P. Thunberg); jus(ユース, 法律・掟); justitia(ユースティティア,正義); juvenis
(ユウェニス, 若者・若い)
Venus (ウェヌス, 美の女神); verbum(ウェルブム, 言葉・文句・弁舌); veritas
(ウェリタース, 真理・真実); vinum(ウィーヌム, ブドウ酒); vinaceus(ウィナーケウ
ス, ブドウ酒の); virtus(ウィルトゥース, 勇気・美徳・才能); virus(ウィールス, 毒);
varietas(ウァリエタース, 多様性); vox(ウォークス, 声); brevis(ブレウィス, 短い・
簡潔な); novus(ノウス, 新しい・若い)
j ……母音の間に挟まれると,[ i + j ] の発音になる. major (マイヨル, より大きい)
x, z … 複子音で, それぞれ [ ks ], [ dz ] の発音になる
Xanthium(クサンティウム,オナモミ属); index (インデクス, 告発者, 人差し指, 表題);
nox (ノクス, 夜); uxor (ウクソル, 妻); zona(ゾーナ, 帯); Zizania (ジザニア,
マコモ属)
同じ子音が重なる場合は, 二つの子音として発音する
bacca(バクッカ, 液果); Mallius (マルリウス); mille (ミッレ, 千); sagitta(サギッ
タ, 弓矢); terra (テッラ, 土地・陸・国)
bs, bt … それぞれ [ ps ], [ pt ] の発音に変わる
urbs(ウルプス, 都市)cf. 形容詞 urbanus(ウルバーヌス, 都市の),
subtilis (スプティーリス, 細い・柔らかい)
ch, ph, rh, th … 古典ギリシャ語の χ, φ, ρ, θ
をそれぞれ書き換えたもので本来ラテン語 に
はない音で, これ等の発音を仮名表記するのは難しいが実用的には h が無いのと同様に発
音してよい. 但し, ph については f と同様に発音されることも多い.
chloro- (クローロ, 黄緑色の); Chamaecyparis (カマエキパリス, ヒノキ属); chaos
(カオス, 混乱・混沌); chinensis(キネンシス, 中国の)
― 17 ―
第1章 学名とその表記について
ophthalmo- (オプタルモ, 眼の); Nymphaea (ニンファエア, スイレン属); pharynx
(ファリンクス, 咽頭); polyphagus (ポリファグス, 大食漢;大食の); philosophia
(ピロソピア;フィロソフィア, 哲学)
rhino- (リーノ, 鼻の); rheuma (レウマ, 流れ); Rhamnus (ラムヌス, クロウメモ
ドキ属)
theologia (テオロギア, 神学); thema (テマ, 題目)
q …… 常に「qu + 母音」 の形で用いられ, [ kw ] の発音になり, gu の場合も
[ gw ] の発音に
なる
aqua(アクワ, 水); quadratus(クアドラートゥス, 四角の); Quercus(クェルクス,
コナラ属); ambiguus(アムビグウス, 曖昧な, 不明瞭な, 多義の)
h …… 無音(サイレント)ではなく常に発音される
Humulus (フムルス, カラハナソウ属); humanus (フーマーヌス, 人間の・情誼ある)
s …… 常に清音の発音で, ドイツ語のように濁音にはならない
nemus (ネムス, 森) ;sacrum(サクルム, 神聖な); sapiens (サピエーンス, 賢い); nasus
(ナースス, 鼻); rosa (ロサ, ばら); Saururus(サウルルス, ハンゲショウ属)
t …… d の清音で, -tio の場合でも[∫] 音にはならない
operatio (オペラーティオー, 仕事, 手術); tuba(トゥバ, ラッパ)
w …… この文字はラテン語には無いが, 外国語の固有名詞に由来する学名に使用することは可能
で, 読み方はその固有の発音による
Wistaria (ウィスターリア, フジ属の正名. 米国の解剖学者 Caspar Wistar 教授
[1760-1818]への献名. その保留属名の Wisteria が広く用いられている)
例外の読み … 近代の固有名詞や土語からきた語の場合は, それぞれの元の発音に従う
Bougainvillia(オシロイバナ科イカダカズラ属)(ブーガンヴィレア:1766-1769 年にフランス
が最初に世界周航船を出し, Brazil の Rio de Janeiro でこの植物を発見したフランス人
航海士 L. A. de Bougainville に因む. 別人の説もある)
thunbergii (ツュンベリーイ:C. P. Thunberg の名から)
chosenensis (チョーセネンシス:日本語の“朝鮮”から)
edgeworthii (エッジェワーシー:東インド会社にいた M. P. Edgeworth という英国の
アマチュア植物学者・採集家[1812-1881]の名から); Edgeworthia(ミツマタ属)
母音の長短……
自然長音 ( long by nature )と位置長音( long by position )(母音の後に子音が連続あるいは複子音
が来る場合)とがあるが,自然長音の場合は一定の規則がないので, 不明な場合はラテン語辞書
で調べる必要がある. 辞書では長音は, ā, ē のように, 短音は ă, ĕ (あるいは単に a, e )の
ように記している. アクセントとも関係があるので確認することが大切である.
pater(パテル, 父); femina(フェーミナ, 女性); caritas(カーリタース, 愛・慈愛);
ludus(ルードゥス, 遊び); fatum(ファートゥム, 運命); panis(パーニス, パン);
imperator(インペラートル, 最高指揮官・将軍); amicus(アミークス, 友人・親し
い・に好意ある)
位置長音: ma-gis-ter (m.) (マギステル, 師, 先生) 第二綴は, その母音は短いが次に ’s’ を含む
ため長いと数えられる.
アクセント……日本語のアクセントと同じ音の高低による( cf. 英語・ドイツ語は強弱アクセント)
一音節の単語はその音節にアクセントがある. (各下線部にアクセントが付く)
― 18 ―
第1章 学名とその表記について
pes (ペース, 足) ; os(オース, 口); vir(ウィール, 男・夫)
二音節の単語は最初の音節にアクセントがある.
mater(マーテル, 母); vita(ウィータ, 生命・生活・人生); decem(十の)
三音節以上の単語では, 最後から二番目の音節が
長い場合にはその音節にアクセントが付く.
長音・重母音
edulis 食べられる, hospitale 病院, Linnaea リンネ([1707-1778])
短母音でも,その次に二つまたはそれ以上の子音が続くとき
honestus 正しい・名誉(節義)ある; puella 少女,
x と z は二重子音とみなされ, qu, ch, ph, th などは単子音である
短い場合にはその前の音節(最後から三番目の音節)にアクセントが付く.
gracilis 華奢な・痩せた, gratia(グラーティア, 感謝・恩義),
lacrima(ラクリマ, 涙), utilis(ウーティリス, 有益な)
Horatius 詩人ホラーティウス, Vergilius 詩人ウェルギリウス
動物・植物に同じ属名
動物命名規約と植物命名規約はそれぞれ独立したもので相互に全く干渉しないから, 学名も
別個に作られる. 従って, 動物と植物とが“同一の属名”のものや語尾だけが違って[性が違う]
別属を表しているものがある.
(平嶋義宏『生物学名命名法辞典』(1994) 平凡社. pp.323-324)
Arenaria
鳥:キョウジョウシギ
植物:ノミノツヅリの属名
Chelidonium
昆虫:アオカミキリ
植物:クサノオウの属名
Corydalis
昆虫:ヘビトンボ(アメリカ産)
植物:キケマンの属名
Dryas
昆虫:チャイロドクチョウ
植物:チョウノスケソウの属名
Limnophila
昆虫:ヒメガガンボ
植物:シソクサの属名
Limnophilus
昆虫:ウスバキトビケラ
Oenanthe
鳥:ハシグロヒタキ
植物:セリの属名
Oreocharis
鳥:パプアカラハナドリ
植物:イワギリソウの旧属名
Pieris
昆虫:モンシロチョウ
植物:アセビの属名
4
4.1
学名の変遷
転属
学名は不変のものではなく, 調査・研究の進展や研究者の見解の相違等により学名が変更される場
合がある. 例えば, 「種」の範囲設定の仕方に細分論者と合一論者とで多少の違いがある場合に, 別の
「属」や「新属」へ移される. 別属あるいは新属へ移す場合(組み換え)や階級の変更がある場合,
種形容語を変えることは不可で, 前の種形容語と組み合わせる. この場合, 種形容語の「最初の命名者
の名(原著者名)」を( )で包み, その後に新しい組み合わせをした人の名を書く(これも“先取権の
原則”による).
ヤマトグサ科ヤマトグサ属の新種として, 牧野富太郎が 1884 年高知県名野川村で発見した植物(標
準種和名は“ヤマトグサ”)を, 1889 年に『植物学雑誌』第三巻二十三号に, 大久保三郎と共同で
Theligonum japonicum という学名で発表した. 日本人が日本の植物に命名し, 日本国内で初めて
― 19 ―
第1章 学名とその表記について
発表された記念すべき学名でもある.
後になって, 牧野富太郎自身がヤマトグサはドイツの Joseph Gaertner が命名した属である
Cynocrambe に所属すべきだという見解で, Cynocrambe japonica (Okubo et Makino) Makino(注1)
と組み合わせを変更した. 近年はまた, Theligonum 属の方が良いと考える研究者が多くなり, 大井
次三郎の『日本植物誌』等にも Theligonum japonicum Okubo et Makino の元の学名が採用されて
いる. ヤマトグサは 1 属 1 種の日本固有種の植物である.(以下, 学名の右端に日本固有種と記したものがある
が, 煩雑化を避けるためごく一部に限って記入してある)
(科和名)
イネ
セリ
(種和名)
(学
名)
Bambusa fastuosa Mitford
種形容語:堂々とした, 立派な
→ Semiarundinaria fastuosa (Mitford) Makino
Edosmia neurophyllum Maxim. 種形容語:脈状葉の
シムラニンジン
→ Pterygopleurum neurophyllum (Maxim.) Kitagawa
ナリヒラタケ
湿地に生え, この属は日本にただ 1 種産する
転属などによる属名と種形容語との組み合わせの変更により元の意味とはかけ離れたり, 意 味不
明になる場合もあるので注意が必要である. また, 新種の記載に際しては, 多くの場合,既に命名され
た属名のもとに,種形容語だけが命名されるので,そこにピッタリした学名もあれば,時にはチグハ
グや反対の意味のある「言葉」になる学名があり得るわけである.
植物は分類学上では, 門(Division)・綱(Class)・目(Order)・科(Family)・属(Genus)・種(Species
…単複同形)・変種(Variety)・品種(Form) へと大分類から順次小分類へ分けられる. 植物の系統分類体
系としては, エングラー (A. Engler, 1844-1930 ) が提唱した「エングラーの体系」(1964)とクロンキス
ト ( A. J. Cronquist, 1912-1992 ) の体系(1988) の二つがよく知られている(本書はこれに準拠してい
る)が, 近年は外部形態だけの比較ではなく, DNA 等を用いた分子系統学の研究の進展により, 遺伝子
レベルでの近縁関係の解明が進み, 旧来の分類体系を再検討する必要に迫られている. 単子葉植物の
中で, 特にユリ科の「解体」は必至であり(注2), 植物全体の進化像や多様性の謎の解明が求められて
いる. 従って, 学名の変遷は,“種と属”や“種とその下位”のレベルだけではなく「属」より上位の「科」
のレベルからも続くことになる.
4.2
正名と異名
学名は一つであるとよく言われるが, 正確には, ある分類学上の見解を表す正しい学名は一つで
あるということである. この正しい学名を正名(correct name)といい, 同じものにつけられた他の学名
が幾つあってもそれらはみな異名(synonym シノニム)とされる. (“異名扱い”とされるものは学
名の場合だけで, 和名に“別名”があるのとは無関係である.)
チャノキは, ツバキと同属とするのが今日の大勢の見解であるが, そのときの正名は Camellia
sinensis ( L. ) Kuntze となる. 一方, チャノキはツバキ属の植物とは異なり, チャノキ属に分類され
ると主張する学者もいる. この見解を示す正しい学名は Thea sinensis L. である. そしてこの見解
では Camellia sinensis ( L. ) Kuntze は異名となる.
種形容語:sinensis(中国の)
学名を見ると, その著者がどのような見解を支持しているのかが判る(注3). このようにある
植物群の階級や範囲に対する考え方が異なることがあり, 種とするか変種とするか, また属の所属の変
更などによって学名の組み合わせが幾つもできることがあるが, 正名は一つであるから一つを除いて
他はすべて異名である.
4.3
保留名
命名規約の例外として, 変更を保留されている学名のことで, 属名では, 約 1,100 属が保留名に
― 20 ―
第1章 学名とその表記について
なっているが, 種形容語では「コムギ」と「トマト」(注4)の 2 種だけである. 古い標本の研究中に
新事実が見つかったり, 古い文献に「先取権」のある学名が発見されたりすると, 命名規約に従って,
学名を変更することになる. しかし, 現在使われている学名が, すでに長い間一般に通用し, 慣れ親
しんでいる場合には, 属名の変更による大変な不便と混乱を避けるために保留名として旧名を用いる
ことが有効と認められている. 例えば, フジの属名 Wisteria は保留名であり, 正名は Wistaria(米国
の C. Wistar [1760-1818]への献名)である. 保留名 nomen conservandum( nom.cons.), conserved
name にするかどうかは命名規約委員会で決められる.
4.4
自動名
(科和名)
(種和名)
ユキノシタ
アジサイ
キク
エゾゴマナ
(学
名)
Hydrangea macrophylla (Thunb.) Seringe var. macrophylla
Aster glehni Fr. Schm. var. glehni 種形容語: Glehn([1835-1873])
種内に二つ以上の亜種や変種などがある場合:後者の種には, 変種のゴマナ var. hondoensis があ
り, 単に Aster glehni と記すと, 変種ゴマナまでを含めた全体を指すことになり得る. 従って, ゴマ
ナを除いたエゾゴマナだけを指す場合には種形容語を繰り返して記す. この作業は機械的に出来るの
で変種名の後ろに著者名(author name) を付けない. これを自動名(autonym)という.
オオバコ科 オオバコの例:独立種(Plantago asiatica)からセイヨウオオバコ(P. major)の変種に
格下げにともない, 母種では P. major var. major が自動的につくられる.
オオバコ
Plantago asiatica L.
P. major L.
セイヨウオオバコ
注
→
→
P. major L. var. asiatica (L.) Decaisne
P. major L. var. major(自動名)
1 元の種形容語(japonicum) は旧属名(Theligonum) に合わせて中性形であるが, 新属(Cynocrambe) の性
( gender) に一致させるために新種形容語は女性形 (japonica) に変更になる.
合は変更しない.
名になる.
また,
原記載者:牧野富太郎が自分で分類を見直したので,(
但し, 種形容語が名詞の場
)内の人名と同一人
こうして元の著者(命名者)の名は, その種が存在する限り永久に消えることは無いが, 後で分類
を再設定した人の名は分類が見直しされるたびに変わる.
注
2 2005 年 2 月 12 日付「朝日新聞」(夕刊)2 版 5 頁 “ユリ科 大揺れ”の項:「(現行のユリ科は)最低でも
五つの科に分ける必要があると思います」(大阪市立大:田村
実).
2009 年 11 月, 日本でも D. J. Mabberley(2008) の分類体系に準拠した新分類表が発刊された.
この分類
体系は, R. Kubitzki(1990) を基礎に, 分子系統学の立場から提案された見解(APG* Ⅱ, 2003) を勘案して
構築されたもので, 日本で普及してきた H. G. A. Engler(1892, ほか)の分類体系とはかなりの相違点がある.
今後さらなる体系上の変更も十分ありうるとされている.
編著者:大場秀章『植物分類表』( Syllabus of the Vascular Plants of Japan ) 2009.11 アボック社
*
APG … Angiosperm Phylogeny Group の略で, 被子植物系統分類グループのこと.
APG Ⅲまで発表されている.(2012. 2 現在)
注
3 大場秀章『サラダ野菜の植物史』(2004) 新潮選書
新潮社
p.24
サクラの多様化が著しい中国・ロシアでは, サクラを広義のスモモ属 ( Prunus ) を細分化してサクラ属
(Cerasus ) とする説――『ソ連邦植物誌』(1941) のサクラ亜科を書いたポーヤルコーワ A. I. Pojarkova に
よる―― が採用されており, 日本でも近年植物誌などで, この立場が採用されるようになってきた.
「 英文版『日本植物誌』 ( Flora of Japan ) (2001) では, サクラ亜科についての解剖学と分子遺伝学の研究
を行い, 細分説を採るにいたった.」写真 木原浩 / 解説 大場秀章・川崎哲也・田中秀明『新日本の桜』(2007)
山と溪谷社,
大場秀章「サクラ属の分類をめぐる歴史」p.10
― 21 ―
第1章 学名とその表記について
分子遺伝学のデータはサクラ属が, スモモやモモ・アンズよりもウワミズザクラやバクチノキなどにより近縁
な関係をもつことをしめしている.
バラ科
チシマザクラ(千島桜)の新学名:
Cerasus nipponica (Matsum.) Masam. et S. Suzuki var. kurilensis (Miyabe) H. Ohba
既発行の文献類(植物誌・目録・図鑑など)の多くは, サクラの仲間を広義のスモモ属 ( Prunus ) として
扱っているので, 本書では広義説に従いサクラ属 (Cerasus ) とはしていない.
必要があればサクラ属
(Cerasus ) に読み替える.
注
4 イネ科
コムギ
Triticum hybernum L. 正名,
Triticum aestivum L. 保留名*
トマトは長らく独自の属(トマト属 Lycopersicon)に分類されてきたが, 1990 年代ごろからの様々な系統
解析の結果, 最近の分類ではナス属(Solanum)に戻すようになってきている.
元々リンネはトマトをナ
ス属に含めて lycopersicum (ギリシャ語 lycos '狼' + persicos '桃')という種形容語を与えたが, 1768
年に Philip Miller がトマト属を設立してつけた Lycopersicon esculentum Mill. が学名として広く用い
られてきた. この学名は国際植物命名規約上不適切な(種形容語を変えずに Lycopersicon lycopersicum と
すべき)ものであったが, 広く普及していたため保留名とされてきた.
しかし系統解析によりトマト属に
分類されてきた植物がナス属の内部に含まれることが明らかとなったため, ナス属を分割するか, トマト属
を解消してナス属に戻すかの処置が必要になった.
したがってリンネのやり方に戻して, 学名も Solanum
lycopersicum L. (1753) を正名とするようになっている. しかし,Lycopersicon lycopersicum (L.)
Karst. を正名とする立場をとる研究者もいる.
種形容語:esculentus(食用になる)
* 保留名 nom.cons. のほかに, 学名に添えて記すものがある.
新組み合わせ:combinatio nova ( comb. nov. )
転属したり, 階級が変わった場合など
新ランク:status novus ( stat. nov. )
種から変種にランク変更した場合など
裸名:nomen nudum ( nom. nud. )
記載を伴わないものの新種名で, 命名規約に沿った有
効で合法的なものではない.
種ほかの分類群に附されたもの:
sp.
species の略. ひとつの種を意味する.
spp.
同上の複数形.
subsp.
subspecies の略.
var.
varietas の略.
f.
forma の略.
cv.
cultivar の略.
例→
例→ Quercus sp. (ブナ属の種)
Rhododendron spp. (ツツジ属の複数種)
亜種を意味する.
変種を意味する.
品種を意味する
栽培品種(園芸品種)を意味する.
但し, 栽培品種名(園芸品種名)の表記には一重引用符を用いなければならない.
マバリーによる植物新分類体系 (D. J. Mabberley, 2008)
その一部を紹介する. (
◎
)内が新科名:
科が変更された主な属:
スギ属 Cryptomeria(ヒノキ科)←スギ科, アマモ属 Zostera(アマモ科)←ヒルムシロ科,
エンレイソウ属 Trillium(シュロソウ科)←ユリ科, アロエ属 Aloe(ツルボラン科)←ユリ
科, ネギ属 Allium(ネギ科)←ユリ科, ヤブラン属 Liriope(キジカクシ科)←ユリ科, アカ
ザ属 Chenopodium(アカザ科)←ヒユ科, スグリ属 Ribes(スグリ科)←ユキノシタ科, タ
コノアシ属 Penthorum(ユキノシタ科)←タコノアシ科, イイギリ属 Idesia(ヤナギ科)←
― 22 ―
第1章 学名とその表記について
イイギリ科, ムクノキ属 Anaphante・エノキ属 Celtis(アサ科)←ニレ科, カエデ属 Acer
(ムクロジ科)←カエデ科, トチノキ属 Aesculus(ムクロジ科)←トチノキ科, アジサイ属
Hydrangea(アジサイ科)←ユキノシタ科, モッコク属 Ternstroemia(サカキ科[新称])
←ツバキ科, ヤブコウジ属 Ardisia(サクラソウ科)←ヤブコウジ科, イチヤクソウ属 Pyrola
(ツツジ科)←イチヤクソウ科, アオキ属 Aucuba(ガリア科)←ミズキ科, ガガイモ属
Metaplexis(キョウチクトウ科)←ガガイモ科, ムラサキシキブ属 Callicarpa(シソ科)←
クマツヅラ科, クワガタソウ属 Veronica(オオバコ科)←ゴマノハグサ科, ニワトコ属
Sambucus(レンプクソウ科)←スイカズラ科, オミナエシ属 Patrinia(スイカズラ科)←
オミナエシ科, マツムシソウ属 Scabiosa(スイカズラ科)←マツムシソウ科, ガマズミ属
Viburnum(レンプクソウ科)←スイカズラ科 などかなり多数あり注意する
大場秀章 編著『植物分類表』(Syllabus of the Vascular Plants of Japan)(アボック社、2009)
5 学名の表記
個々の植物の学名は以下に述べるリンネの「二名法」(2語組み合わせ)により, 主にラテン語
(Latin) あるいはラテン語化されたギリシャ語(Latinized Greek)で,「属名(generic name)+種形容語
(specific name)」により表記され, 著者名(author name)が後記される. (著者名は学名の一部ではな
く, 一般的使用の際は, 省略しても構わないことになっているが, 学名の正確さと表記の完全を期する
ため, 著者名を付記することが望ましく, 更にその後に記載年(新種発表の論文・書物が刊行された年)
を明記することが論文記述では必須となる(注 1).)
著者名は略記してもよい. 本書では, 学名には
著者名を全て付記し, 略記と詳記を併用している.(但し、論文などの formal な印刷物などでは、いず
れか一方に統一して表記する)
L. ⇔ Linnaeus,
Thunb. ⇔ Thunberg,
Miq. ⇔ Miquel
学名の書体は, 本文と字体を変えればよいとされているので, 通常は斜字体(イタリック)か
下線(アンダーライン)を引くことにより区別している. 英文メールでは, 書式付き文書の使用を避け
るためアンダーバーを使うことが奨励されている.
(科
和
名)
(種
和
名)
(学
名)
Aucuba japonica Thunb.
スギ(→ヒノキ科)
スギ
_Cryptomeria japonica_ (L. f.) D. Don
植物学名を知る上で特に重要なのは,「属名と種形容語である」ことは, 上記のとおり植物学名が
「属名+種形容語」で表記されることによるものであり, この両者が揃ってはじめて正式な種名(species
name) となる.
ミズキ(→ガリア科)
5.1
アオキ
学名の発表
未知の生物が発見されると, 研究者はそれに学名を付けて論文などに新種発表をする. この行為
を記載(description)という. 学術的に記載されていない(と推定される)種は未記載種(undescribed
species) と呼ばれる. ツュンベルク・シーボルト等が来日した時代の日本はこの未記載種に溢れていた
と言える. ラテン語は植物分類学の分野での公用語であり, 新分類群命名の際にはラテン語の記載が
ないと, 合法的に発表されたとは認められない(注2).
― 23 ―
動物分類学に於いては, その記載文は現代語
第1章 学名とその表記について
(普通は国際語としての英語)でよいことになっているが, 植物分類学では化石を除き現生植物では全
て, 新分類群を命名・記載する際の不可欠な条件としてラテン語の記載文を付けることが義務づけられ
ている. 更に, 近縁な種との区別点を明らかにした文章―判別文(diagnosis)という―を添えることが
多いが, その判別文はラテン語以外の言語で書かれることもある. 植物分類学の分野では,ラテン語は
“生きた言語”として機能していると言える.(追注 1)
学名の発表には, 前述したように“先取権の原則”があるが, 一度記載された学名は原則として変
更が一切効かない. たとえ記載文法が間違っていても,そのまま使用が続けられる(注3).
Lespedeza ……ミショー Michaux が 18 世紀後半に調査の際に, アメリカ東部
Florida 州知事のスペイン人総督, Vincente Manuel de Céspedez に献じた名であるが誤植
のため Lespedeza となった.
マメ科ハギ属名
(科和名)
(種和名)
(学
名)
Lespedeza buergeri Miquel 種形容語:Buerger (1806-1858)
ナンキョクブナ科名 Nothofagaceae (偽のブナ科) ……英名では “ Southern Beech Family ”(南
のブナ科). ナンキョクブナ属の著者 Blume は,「南のブナ属」という意味の“ Notofagus ”
をその属名としたが, 何処で, 誰が, どう間違ったのか学名を決定した文献には “ Noto ” の
“ t ” と “ o ” の間に “ h ” が印刷されたため,「Noto = 南の」のはずが,「Notho= 偽の」に
なってしまった. この科の植物は日本に自生しない.
マメ
キハギ
2006 年 5 月 15 日, 国立科学博物館は「フタバスズキリュウ」は新属・新種の首長竜だったことを
明らかにし, 「フタバサウルス・スズキイ」と学名をつけ, 英国古生物学会誌(‘ Palaeontology’, Vol. 49,
Part 3, 2006, pp. 467-484 ) にその論文を載せるとした.(注4)
5.2
学名命名者
種の命名者は, しかるべき印刷物(学術雑誌 or 書籍)にその種を新種(new species)として記載・
発表した人で, 命名規約の用語では著者(author) と呼ばれる. 著者の名前は, 種名と区別するために
ローマン体(ブロック体)で綴り, 姓(family name) のみを記載し, すべてラテン文字で綴る. 記号付
き特殊文字の使用は認められている. 省略形で記載されることも多いが, 近年著者の数が増加して略
記では分かりにくいことが多くなってきたので, 略さずに著者の姓 (family name) の全てを綴るよう
に命名規約で勧告されている. 一文字の略記が許されているのは「二名法」の創始者, リンネだけであ
る.
著者とその略記については本書巻末の「植物学名に関する参考文献」を参照.
略
記:
Linné (Linnaeus のラテン語化した名) → L.
Thunberg → Thunb.
Maximowicz → Maxim.
Miquel → Miq.
Blume → Bl.
Savatier → Sav.
Siebold → Sieb. … [注意] 現在は、略記せずに Siebold と表記する
Zuccarini → Zucc.
― 24 ―
第1章 学名とその表記について
A. P. de Candolle(1778-1841 ) → DC.
J. B. M. de Lamarck (1744-1829 ) → Lam.
A. B. Lambert (1761-1842 ) → Lamb.
Koidzumi → Koidz. (小泉源一)
Kitamura → Kitam.(北村四郎)
Franchet and Savatier → Franch. et Sav. … ‘et’は “and” の意味である.
‘ et al.’ は ラテン語の “et alii” の略で「その他の人(= and others)」の意味である.
著者がその他に 2 名またはそれ以上いることを示す.
(科和名)
(種和名)
(学
名)
ヤバネモク(褐藻類)Hormophysa cuneiformis (Gmelin) Silva et al.
センニンソウ
Clematis terniflora DC.
ホンダワラ
キンポウゲ
サクラソウ
ハマボッス
ゴマノハグサ
イワブクロ
Lysimachia mauritiana Lam.
Pentstemon frutescens Lamb.
同姓の人が既に学名の著者になっている場合は, 混同を避けるために, 名前の頭文字を付記して
別人であることを示す. 田中芳男(1838-1916)) は Tanaka, 田中長三郎(注5)(1885-1976)
は C. Tanaka である.
(科和名)
キク
(種和名)
(学
Gnaphalium affine D. Don
(英, 1799-1841)
Catalpa ovata G. Don 中国原産
(英, 1798-1856)
Liparis fujisanensis F. Maekawa
(前川文夫)
Taraxacum yatsugatakense H. Koidz.
(小泉秀雄)
Citrus tachibana (Makino) C. Tanaka
(田中長三郎)
ハハコグサ
ノウゼンカズラ キササゲ
ラン
フガクスズムシソウ
キク
ヤツガタケタンポポ
ミカン
タチバナ
名)
(橘)日本では唯一の本属の野生種
◎
息子の表記: 既存の著者の息子の表記には, filius(息子)を略した f.
(科和名) (種和名)
クワ
ガジュマル
ラン
ツチアケビ
(学
名)
Ficus microcarpa L. f. (注6)
Galeola septentrionalis Reichb. fil.
種形容語:cuneiformis(楔形の),
terniflorus(三数花の), mauritianus(モーリシャス島[インド洋]の), frutescens
(低木状の), Gmelin([1709-1755]),
yatsugatakensis(八ヶ岳の),
or fil. を後記する.
affinis(近縁の,関係のある), ovatus(卵形の), fujisanensis(富士山の),
tachibana(タチバナ[日本名]), microcarpus(小さな果実をもつ), septentrionalis
(北方の,北半球の)
ex (…による)
命名をしても発表していないものを, 他者がそれを(代わりに)記載を付け
て発表したとき, ex と記してその次に発表者の名前を入れる.
(科和名)
(種和名)
フジウツギ
トウフジウツギ
クスノキ
ヤブニッケイ
(学
名)
Buddleya lindleyana Fortune ex Lindley
Cinnamomum japonicum Siebold ex Nakai
種形容語: Lindley([1799-1865])
後者は, 新種としてシーボルトが‘ japonicum ’の名を与えたが, 学名だけで記載・発表がなく,
― 25 ―
第1章 学名とその表記について
そのままでは無効であるので, 中井猛之進が記載を付けて発表しシーボルトの命名のまま有効としたこ
とを示す.
注意
英語の species (種)は単複同形であるが, 生物学上の略号で用いるときは, 単数は sp.,
複数は spp. とする.
sp.
同定不能であったり, 未分類だったりして学名がまだ付けられていない場合
「分類されると予想される属名」 + 「 sp. 」とする……単に属名のみだと“以下省略”と区
別ができないので, sp. を付けて明示する.
Hydrangea sp. H. Ohba ← ユキノシタ科アジサイ属 ナンカイアジサイ
(南硫黄島に発見され, いまだ花や果実が見つかっていない) 「学名上の種形容語が
不詳のアジサイの 1 種」という意味. 和名は付けられている.
Hydrangea spp. とあれば, アジサイ属のいくつかの種類(アジサイ類)という意味.
Sedum sp. ‘ Little Gem ‘ ← Sedum 属で, 種形容語以下が未分類の園芸品種名「リトル・
ジェム」のこと.
「: 」 命名規約で指定している著書によって「認可」されている学名は, 命名者の後に「:」を伴っ
てその認可者の名前を書く場合がある.
(例:Fries による認可名は「:Fr.」, Persoon による認可名は「:Pers.」)
(科和名)
(種和名)
(学
名)
Dictyophora indusiata (Vent.:Pers.) Fisch.
ベニタケ
ドクベニタケ
Russula emetica (Schff.:Fr.) S. F. Gray
「認可」されている名前は, 先行同名や他の異名に対しての優先措置があるため, 特にこの
様な書き方をする.(ただし,動物命名規約には認可という措置もこの様な記号用法も無い)
スッポンタケ
キヌガサタケ
種形容語:indusiatus(苞膜のある), emeticus(催吐性をもつ)
注
1 植物学では, コンマを用いず, 発表年をカッコに括る
ヤブコウジ科
シシアクチ
Ardisia quinquegona Blume (1825)
キク科
ハマギク
Nipponantheum nipponicum (Franch. ex Maxim.) Kitam. (1978)
動物学,細菌学ではその表記法が異なるので注意する.
注
ミツバチ科
セイヨウミツバチ
Apis mellifera
ウシ科
ニホンカモシカ
Capricornis crispus (Temminck, 1837) Heude, 1894 日本固有種
腸内細菌科
プロテウスの 1 種
Proteus morganii
Linnaeus,
1758 コンマを使用する
Yale 1939
2 「国際命名規則では新植物群の発表はラテン文ですることになっているが, 牧野さんは英文で書いていた.
ラテン文はよく読んでいるから書けそうなものだが書いていない.
現行の国際命名規則では, 1934 年以
前に発表されたものはラテン語以外のものでも先取権を認められている.
無論認められる.」北村四郎『北村四郎選集Ⅳ
注
コンマを使用せず
花の研究史』(1990)
従って牧野さんの英文のものも
保育社. 「牧野富太郎」p. 287
3 植物以外でも有名な誤例がある.
野鳥のコマドリに Erithacus akahige,
アカヒゲに Erithacus komadori と和名を取り違えて
Temminck は命名したが訂正はできない.
注
4 福島県いわき市の地層:双葉層群で 1968 年に見つかった「フタバスズキリュウ」は, 約 8,500 万年前の白
亜紀の地層で見つかった海にすむ大形爬虫類で, 和名で呼ばれてきたが, 種を特定した正式な論文は書かれ
ていなかった.
研究の結果, エラスモサウルス類の新属・新種と判断した.
その学名は
Futabasaurus
suzukii Sato, Hasegawa, and Manabe, 2006 (論文誌上の引用としては, 著者は Sato et al.
部は ‘and others ’
の意味)である.
下線
しかし, その学名著者である三人の共同研究者の名前を日本の各
― 26 ―
第1章 学名とその表記について
新聞紙上では F. suzukii の後に付記していないことは残念なことである. 更に,「フタバサウルス・スズキ
イ」というのはその新学名の読みを日本語表記したもので正式な学名はあくまでも Futabasaurus suzukii
である.
注
種形容語:suzukii(フタバスズキリュウの化石発見者:鈴木 直の)
5 田中長三郎は果樹園芸学専攻の植物学者で, W. T. Swingle (1871-1952) と並ぶミカン科植物分類の専門家.
台北帝国大・東京農大・大阪府立大教授を歴任した.
著『南方植産資源論』(1943) 養賢堂,『果樹分類学』
(1951) 河出書房
注
6 リンネの一人息子(父と同名:Carl von Linné Jr., 1741-1783)も父の研究を手伝った植物学者で, 父の後
を継いでウプサラ大学の植物学教授になっている.
追注 1
父の死後 5 年目に独身で死亡した.
植物学では 1935 年に国際ルールができ、76 年間、新種の報告は「ラテン語のみ」で、紙媒体に掲載された
ものに限ってきたが、2011 年オーストラリア・メルボルンで開かれた国際植物学会議が規約を改訂した。
植物の新種発見報告がラテン語に限らず英語でもできるようになり、紙媒体に限らず電子媒体に掲載された
もの(電子出版の論文)も認めることにした。
― 27 ―
第2章 植物の学名
第2章
植物の学名
1
植物の学名
1.1 「科名」
科名(family name)・目名(order name)については, 典型と認めた属の学名(属名)を語幹にして
一定の接尾語を加えたものが用いられる.
Aristolochia
L.(ウマノスズクサ属)→Aristolochiaceae (ウマノスズクサ科)→Aristolochiales(ウマノスズクサ目)
Cyperus L.(カヤツリグサ属)→Cyperaceae (カヤツリグサ科)→Cyperales(カヤツリグサ目)
Magnolia
Ranunculus
L. (モクレン属)→ Magnoliaceae (モクレン科)→ Magnoliales (モクレン目)
L.(キンポウゲ属)→ Ranunculaceae(キンポウゲ科)
Rosa L.(バラ属)→ Rosaceae(バラ科), Salix L.(ヤナギ属)→ Salicaceae (ヤナギ科)
動物では, 属名の語幹に – aceae ではなく– idae をつける
テントウムシ上科 Coccinellidae
現在の国際植物命名規約では, 科名のうち下記の八つについて例外的に科名の語尾が – aceae
ではなく,
– ae という語尾の学名を,「保留名」としてその使用を認めている(注1).
ただし, 科名の語尾が – aceae となる科名(括弧内に表示……正名)も用意されていて, それを
用いてもよい.
Palmae ( Arecaceae)(ヤシ科), Gramineae ( Poaceae )(イネ科), Guttiferae (Clusiaceae )(オトギリソウ科),
Cruciferae ( Brassicaceae )(アブラナ科), Leguminosae ( Fabaceae )(マメ科), Umbelliferae ( Apiaceae )
(セリ科),
Labiatae ( Lamiaceae )(シソ科), Compositae ( Asteraceae )(キク科)
1.2 「属名+種形容語」
属名(generic name) には, ラテン語の単数主格の名詞を用い, 種名(specific name) は厳密には
属名を形容する種形容語(specific epithet)と呼ばれ, 形容詞あるいは名詞の属格(第二格)を用いる.
その文法上の性(gender)は修飾する属名の性と常に一致しなければならない.
我々に馴染みの植物の学名を属名の性(男性 m., 女性 f., 中性 n.)と併せて列記する.
(科和名)
(種和名)
イネ
ススキ
マツ
ブナ
キンポウゲ
ゴマノハグサ
サクラソウ
バラ
カツラ
ツツジ
ユリ
(学
名)
Miscanthus sinensis Andersson
モミ
Abies firma Siebold et Zucc.
クリ
Castanea crenata Siebold et Zucc.
セツブンソウ
Eranthis pinnatifida Maximowicz
Paulownia tomentosa (Thunb.) Steud.
キリ
サクラソウ
Primula sieboldii E. Morren
ノイバラ
Rosa multiflora Thunberg
カツラ
Cercidiphyllum japonicum Siebold et Zucc.
ミヤマキリシマ Rhododendron kiusianum Makino
カノコユリ
Lilium speciosum Thunb.
― 28 ―
(属名の性)
(m.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(n.)
(n.)
(n.)
第2章 植物の学名
種形容語:firmus(堅固な, 硬い), pinnatifidus(羽状中裂した), tomentosus(細綿毛[ ビロード毛 ]が密生した),
multiflorus(多くの花をもつ), kiusianus(九州の), speciosus(華やかな, 美しい)
◎
属名の性には, 例外があるので属名の性を個々に確認する必要がある.
Rubus hirsutus Thunb. (m.)
種形容語:hirsutus(毛が多い)
和名にクサイチゴとあるが落葉低木で, キイチゴ属 Rubus L. は男性である
注意:バラ科
注 1
クサイチゴ
これらの語尾は, ラテン語の第一変化名詞の主格複数形で,「~たち」あるいは「~の仲間」の意味である.
女性名詞扱いの属名
ブナ科
イヌブナ
Fagus japonica
Maxim.
女性 (f.)
この Fagus (ブナ属)は語尾が –us で終わるが男性 (m.) ではなく, 女性名詞 (f.) とし
て扱われる点に注意する. 同様のものに以下の樹木の場合が多い:
Aesculus(トチノキ属), Ailanthus(ニワウルシ属), Alnus(ハンノキ属), Buxus(ツゲ属),
Carpinus(クマシデ属), Cerasus(サクラ属), Citrus(ミカン属), Cornus(サンシュユ属), Corylus
(ハシバミ属), Crataegus(サンザシ属), Cupressus(イトスギ属…日本には自生せず), Elaeagnus
(グミ属), Ficus(イチジク属), Fraxinus(トネリコ属), Juniperus(ネズミサシ属), Laurus
(ゲッケイジュ属…日本には自生せず), Laurocerasus(バクチノキ属), Machilus(タブノキ属),
Malus(リンゴ属), Morus(クワ属), Padus(ウワミズザクラ属), Philadelphus(バイカウツ
ギ属), Pinus(マツ属), Populus(ヤマナラシ属), Prunus(スモモ属), Pyrus(ナシ属), Quercus
(コナラ属), Rhamnus(クロウメモドキ属), Rhus(ウルシ属), Sambucus (ニワトコ属), Sorbus
(ナナカマド属), Taxus(イチイ属), Ulmus(ニレ属)等( cf. p. 35 :女性名詞扱いの属)
これらの属には身近で, 重要な種を多数含んでいるのでその用例の一部を列記する:
(科和名)
トチノキ
カバノキ
ツゲ
ミズキ
バラ
バラ
ブナ
ウルシ
バラ
ニレ
(種和名)
(学
名)
(属名の性)
Aesculus turbinata Blume
オオバヤシャブシ Alnus sieboldiana Matsum.
ヒメツゲ
Buxus microphylla Siebold et Zucc.
クマノミズキ
Cornus macrophylla Wall.
クロミサンザシ Crataegus chlorosarca Maxim.
ミネザクラ
Prunus*(Cerasus) nipponica Matsum.
クヌギ
Quercus acutissima Carruth.
ヤマウルシ
Rhus trichocarpa Miquel
Sorbus commixta Hedl.
ナナカマド
ハルニレ
Ulmus japonica (Rehd.) Sargent
トチノキ
種形容語:turbinatus(倒円錐形の),
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
(f.)
microphyllus ( 小さな葉の), macrophyllus(大きい葉の),
chlorosarcus(緑色肉質の), acutissimus(非常に鋭先形の[最上級]), trichocarpus(有毛の果実をもつ),
commixtus(混合した)
* Prunus はサクラ属(Cerasus)の旧称
― 29 ―
第2章 植物の学名
語尾変化しない種形容語
種形容語の語尾が次の場合は, 属名の性が男性(m.) –us・女性 (f.) –a・中性 (n.)–um の
いずれであっても男性, 女性, 中性の語形が同形で語尾変化はしない.
- ans, - ax, - color, - ens, - ex, - ox, - oides, - odes(注 1)
(科和名)
(種和名)
シソ
スズコウジュ
ミクリ
ヤマトミクリ
イネ
ヒエガエリ
キク
エゾウスユキソウ
セリ
シシウド
ユキノシタ
ガクウツギ
ウマノスズクサ
フタバアオイ
ユリ
ミヤマラッキョウ
キンポウゲ
サラシナショウマ
キブシ
キブシ
マメ
モダマ
(学
名)
(属名の性)
Perillula reptans Maxim.
(f.)
Sparganium fallax Graebn.
(n.)
Polypogon fugax Steud.
(n.)
Leontopodium discolor Beauv.
(n.)
Angelica pubescens Maxim. 日本固有種 (f.)
Hydrangea scandens (Linn. fil.) Ser. (f.)
Asarum caulescens Maxim.
(n.)
Allium splendens Willd.
(n.)
Cimicifuga simplex Wormsk.
(f.)
Stachyurus praecox Siebold et Zucc. (m.)
Entada phaseoloides (Linn.) Merr.
(f.)
種形容語:reptans(匍匐する), fallax(偽りの, 欺くような), fugax(早落性の, 落ち易い), discolor(二色の,
異なる色の), scandens(よじ登り性の), pubescens(軟毛の生えた), caulescens(有茎の), splendens(光り
輝いた, 華麗な), simplex(単一の,無分枝の), praecox(早咲きの), phaseoloides(インゲンマメ属
[ Phaseolus ] に似た)
注 1
2
( cf. p. 37 :種形容語ではなく, 属名が ‐oides,
‐odes に終わる語の場合は女性扱いである.)
亜種・変種・品種・天然交配種(雑種)
「種」以下の学名は三命名法(trinomial nomenclature) (注 1) による.
種形容語の場合と同様に
“属名の性 (gender) ” に従って語尾変化させる.
Ⅰ
亜種:ssp. or subsp. ← subspecies
別種とする程ではないが, 変種の場合よりも違いが目立ち,
特に分布区域のズレがはっきりしていることを重視するときに用いる分類段階である.
キク科
アキタブキ(フキの一亜種)
北海道・本州(北部)
Petasites japonicus (Siebold et Zucc.) Maxim. subsp. giganteus (Fr. Schm.) Kitam.
モクレン科
オオヤマレンゲ(オオバオオヤマレンゲの一亜種) 関東地方以西
Magnolia sieboldii K. Koch subsp. japonica Ueda
ハナシノブ科
クシロハナシノブ(エゾハナシノブの一変種カラフトハナシノブの湿原型)釧路地方の湿原に
Polemonium caeruleum L. subsp. yezoense (Miyabe et Kudo) H. Hara
var. laxiflorum (Regel) Miyabe et Kudo
― 30 ―
第2章 植物の学名
種形容語他:giganteus(巨大な), Siebold(1796-1866), coeruleus = caeruleus(濃青色の), yezoensis(蝦夷地
[北海道]産の), laxiflorus(疎らに花がつく)
変種:var. ← varietas
Ⅱ
前に命名された方を基に, 新しく命名された方をその変種とする. 変
種に対し, その名の基になった植物の方を“基本種”または “母種”と呼ぶ.
ツバキ科
ユキバタツバキ(ヤブツバキの一変種)
日本海側の多雪地帯
Camellia japonica L. var. intermedia Tuyama
サクラソウ科 ユキワリコザクラ(ユキワリソウの一変種) 千島・北海道・本州(北部)
Primula modesta Bisset et Moore var. fauriei (Franch.) Takeda
種形容語他:intermedius(中間の, 中位の), modestus(適度の,中庸の), Faurie([1847-1915])
Ⅲ
品種:f.
← forma
個体群のうちの個体に現れる些細な変異に用いる. 例えば, 葉の斑入り
など. 例:ハマナスとヤマカシュウの各一品種を示す
(科和名)
(種和名)
バラ科
シロバナハマナス
ユリ科
トゲナシヤマカシュウ
(学
名)
Rosa rugosa Thunb. f. alba Ware
Smilax sieboldii Miq. f. inermis H. H. Hara
種形容語他:rugosus(しわの寄った,しわの多い), albus(白色の), inermis(刺針のない)
Ⅳ
天然交配種(雑種)
:同じ属内の異なる種と種の間で生じた交雑種. 新種として命名する場合,
種形容語の前に ×印を付け, × は cross(クロス)と読む.
(科和名)
(種和名)
スイカズラ
オニコバノガマズミ
ユキノシタ
アマギコアジサイ
バラ
ソメイヨシノ
(学
名)
Viburnum ×kiusianum Hatsusima
Hydrangea ×amagiana Makino
Prunus(Cerasus) ×yedoensis Matsumura
オオシマザクラとエドヒガンの間に生じた雑種起源の園芸種で,
江戸末期に登場し,
明治初期に東京の染井村(現,東京都豊島区)の植木屋が売り出したといわれている.
◎
Ⅴ
現行の学名表記:Cerasus ×yedoensis ‘Somei-yoshino’(次の項参照)
栽培品種:国際栽培植物命名規約第 7 版(2004 年)では,「cv. の語を用いず引用符で括る」と決めら
れている. つまり, 栽培品種の名前は一重の引用符で括って示されるが, 属名や種形容語をイタリック
体で表記する場合でも栽培品種の名(栽培品種形容語)はイタリック体にはしない.
(学
ツバキ科サザンカの園芸品種: 明石潟
バラ科サトザクラの園芸品種:関山
アブラナ科アブラナ属の栽培品種:小松菜
イネ科イネ属の栽培品種:笹錦
名)
Camellia sasanqua ‘Akashigata’
Prunus(Cerasus) serrulata ‘Kanzan’
Brassica rapa‘Komatsuna’
Oryza sativa‘Sasanishiki’
この場合, 園芸・栽培品種名はラテン語表記でなく,どこの言葉を使ってもよく大文字で始まり,
かつ著者(命名者)名が付かない
種形容語:Lannesianus(園芸家:ラネスの), rapa(カブラ), sativus(栽培・耕作された)
― 31 ―
第2章 植物の学名
Ⅵ
園芸植物・果樹の学名に hort. ex が付くことがある. 「仮の学名で, まだ正式な学名が与えら
れていない」という意味で, hort. は hortensis; hortorum (庭の;園芸上の; 栽培の) の省略形であ
る. 熱帯産のものに多く, 園芸種・栽培種であることを示し, 今後分類が決まれば正式な学名に変え
られる.
ミカン科
Citrus iyo hort. ex
イヨカン(伊予柑)
×印[イタリック体にしない乗法記号…‘cross‘と読む]を付けた次例は, Gams によって発表された
園芸種の雑種であることを意味する
スミレ科
パンジー(三色スミレ)
Viola ×wittrockiana hort. ex Gams
種形容語:Wittrockianus(ストックホルムの大学教授 B. B. Wittrock[1839-1914] の)
注 1
動物(特に鳥類・昆虫類)の学名にみられる反復名,トートニム(tautonym)― 属名・種形容語・亜種形容
語で同じ語が繰り返される場合― も三名法によっているが,「国際植物命名規約」ではその使用を禁止して
いる.
ガンカモ科
オオハクチョウ
Cygnus cygnus cygnus
カラス科
カササギ
Pica pica sericea Gould japonica (L.) Temminck et Schlegel
リンネによる最初の命名 Corvus pica L. →
(L.)
後に Corvus(カラス属)から新属(Pica) に編入された.
また, 動物の場合, ハイイロオオカミ Canis lupus lupus L.
やイヌ Canis lupus familiaris L. のよ
うに, ssp. 等の符号抜きで亜種小名を記すのが通例であり, 三名式学名になっている
(イヌ Canis
familiaris L. の略記もあり). ある時期 ヒト の学名を Homo sapiens sapiens L. としていたが, こ
れはネアンデルタール人を現代人と同じ種とみて Homo sapiens neanderthalensis としたのに対応したも
のである.
種内分類群では, 植物は亜種・変種・品種などが認められているが, 動物では亜種のランクしか認められて
いない. 動物の場合, 命名者表記・年号表記は略されることも多い.
亜種形容名:sericeus(絹毛がある,絹毛状の)
― 32 ―
第3章 属名と種形容語
第3章
属名と種形容語
ここでは植物の学名を解読するのに必要な最小限のラテン語の基礎(名詞・形容詞の各一部)を記
す. 必要に応じて「ラテン語入門」の語学書を開き, ラテン語辞書を座右に置いてラテン語の知識を
深めていくことが望ましい.
ラテン語・ギリシャ語対照語集
ラテン語と(ラテン語化された)ギリシャ語の同義語が, 学名の一部にそれぞれ使われていて,
学名表記の多様さになっている.
( cf.
pp. 49-50 ‘ギリシャ語とラテン語の数詞’)
その一部を以下に列記する(左側がラテン語, 右側のイタリック体がギリシャ語で, 括弧内は組み合
わせ語を作る際の語幹である):
albus(ラ)一 leucos(ギ) 白い;angustus 一 stenos 狭い;anima 一 psyche 呼吸, 心,
精神;arbor 一 dendron 樹木 ;asper 一 trachys 粗面の; aurum 一 chrysos 金;bacca 一
coccos 液果;barba 一 pogon 髭;brevis 一 brachys 短い; bulbus 一 bulbos 鱗茎;
caeruleus 一 cyanos 青い;color 一 chroma (chromat -) 色;crassus 一 pachys 太い, 厚い;
digitus 一 dactylos 指;filix (filic -)一 pteris (pterid-) シダ; firmus, rigidus,
solidus 一
stereos 堅い; flavus, luteus 一 xanthos 黄色の;flos (flor -) 一 anthos 花;folium 一
phyllon 葉;fructus 一 carpos 果実;fucus 一 phycos 海藻;fungus 一 myces (mycet -) 菌;
glaber (glabr -) 一 psilos 無毛の;glandula 一 aden 腺;globus 一 sphaera 球;gracilis,
subtilis, tenuis 一 leptos 細い, 薄い;gramen (gramin -) , herba 一 chloe, poa 草; grandis,
magnus 一 megas (megal-), macros 大きな;gravis 一 barys 重い; latus 一 platys
(幅の)広い;laurus 一 daphne ゲッケイジュ; lignum 一 xylon 材; ligula 一 glossa,
glotta 舌; linea 一 gramme 線; longus 一 macros 長い;malum, pomum 一 melon
リンゴ; multus 一 polys 多い;natura 一 physis 自然;nervus 一 neuron 脈, 神経;
niger (nigr -) 一 malas (melan -) 黒い; orbis, rotundus 一 cyclos 円(形の);os (or -) 一
stoma (stomat -) 口; palus (palud -) 一 helos, limne 沼地;parvus 一 micros 小さな;
paucus 一 oligos 僅かな;penis 一 phallos 陰茎;pilus 一 thrix (trich -), pilos 毛;
planta 一 phyton 植物;pulcher 一 callos 美しい;racemus 一 botrys 総状;radix (radic -)
一 rhiza 根;ramus 一 clados 枝;rosa 一 rhodon バラ;ruber (rubr -) 一 erythros 赤い;
semen 一 sperma (spermat -), spora 種子;spica 一 stachys 穂;spina 一 acantha 刺;
squama 一 lepis (lipid -) 鱗片;tortus 一 treptos 捩れた;unus 一 monos 単一の;
virens, viridis 一 chloros (黄)緑色の
― 33 ―
第3章 属名と種形容語
語源が違う合成語に注意
合成語をつくる際には, 同じ語源の語を合成させることが肝要である. 2行毎に, その用例を
示す.
[各上行] 語源:ギリシャ語+ギリシャ語、
(科和名)
(種和名)
(学
[各下行] 語源:ラテン語+ラテン語
名)
Artemisia monophylla Kitam.
数詞:1
イチヤクソウ科 イチゲイチヤクソウ
Moneses uniflora (L.) A. Gray
ツツジ科
アカヤシオ
Rhododendron pentaphyllum Maxim. 数詞:5
var. nikoense Komatsu
ツツジ科
シロヤシオ
Rhododendron quiquefolium Bisset et Moore
ミクリ科
ヒメミクリ
Sparganium stenophyllum Maxim.
狭い、細い
ミクリ科
ホソバウキミクリ
Sparganium angustifolium Michx.
ウマノスズクサ科 オナガサイシン
Asarum leptophyllum Hayata 細い(繊細な)、薄い
カエデ(→ムクロジ)科 ヒナウチワカエデ Acer tenuifolium (Koidz.) Koidz.
カバノキ科
シラカバ
Betula platyphylla Sutatchev
幅広い
ガマ科
ガマ
Typha latifolia L.
ユキノシタ(→アジサイ)科 エゾアジサイ Hydrangea macrophylla Ser.
大きな
var. megacarpa (Ohwi) H. Ohba
メギ科
イカリソウ
Epimedium grandifolium Morr.
var. thunbergianum (Miq.) Nakai
キク科
ノハラアザミ
Cirsium oligophyllum
(Franch. et Sav.) Matsum. 少数の
マンサク科
ヒュウガミズキ
Corylopsis pauciflora Siebold et Zucc.
Acer pycnanthum K. Koch
密な
カエデ(→ムクロジ)科 ハナノキ
マツ科
アカマツ
Pinus densiflora Siebold et Zucc.
チャセンシダ科 ヒメタニワタリ
Asplenium cardiophyllum (Hance) Baker
キク科
ヒトツバヨモギ
心(臓)形の
キク科
テイショウソウ
イチヤクソウ科
マルバイチヤクソウ
Ainsliaea cordifolia Franch. et Sav.
Pyrola nephrophylla (H. Andr.) H. Andr.
腎臓形の
イチヤクソウ科
ジンヨウイチヤクソウ
Pyrola renifolia Maxim.
種形容語:phyllus - folius 葉・花弁, anthus - florus 花, carpus - ( fructus ) 果実
― 34 ―
第3章 属名と種形容語
1. 属
名
(属名の語源・由来とその意味については, 別巻 CD-ROM 版「日本産野生植物:植物学名一覧」の「属名一覧」
ファイルの中で, 詳しく解説しているので参照することをお奨めします)
属名は, ラテン語の単数主格の名詞を基本とし, 植物自体の特徴・性質を表す語・ラテン語化した他
言語(Jasminum……アラビア語の植物名 yasmyn のラテン語化)
・関係ある人名・神名・地名・固有
名(現地呼称)・旧名由来のもの等があり, 頭文字は必ず大文字で表記する.
1.1
属名の性 ( gender )
ラテン語には文法上の性の区別があり, 名詞である属名にはすべて性の属性が決まっているので辞
書等で調べる必要がある. ラテン語以外の言語から新属名をつくる場合, 性を決めなければならない.
その際, 語尾や語の意味などの制約があるが著者(命名者)が属名の性を決めることになる. 著者によ
る性の指定がない場合には男性として扱われる.
一般的に性の区別は, 男性(m.) –us・女性 (f.) –a・中性 (n.) –um の語尾変化で示す. 但し, 次の
用法を承知しておかなければならない.
Ⅰ
植物学の伝統によってギリシャ語またはラテン語の古典的な性が決まっているものがある.
男性名詞扱い:Erigeron L.(ムカシヨモギ属), Sicyos L.(アレチウリ属)
(科和名)
(種和名)
キク
ハルジオン
ウリ
アレチウリ
(学
名)
Erigeron philadelphicus L.
Sicyos angulatus L.
女性名詞扱い:Adonis L.(フクジュソウ属), Atriplex
マラヤスギ属), Diospyros
属), Hemerocallis
L.(カキノキ属), Eucalyptus
L.(ワスレグサ属), Orchis
モドキ属), Stachys
L.(ハマアカザ属), Cedrus
Trew(ヒ
L’ Hér(ユーカリ属), Fagus
L.(ブナ
L.(ハクサンチドリ属), Rhamnus
L.(クロウメ
L.(イヌゴマ属)等のほか, 古典的な樹木の名前( cf. p. 29 の“ 女性名詞扱
いの属 ” )がある.
(科和名)
(種和名)
ユリ
ユウスゲ
ラン
ニョホウチドリ
クロウメモドキ
シーボルトノキ
(学
名)
Hemerocallis vespertina H. H. Hara
Orchis joo-iokiana Makino
Rhamnus utilis Decaisne 中国原産
(長崎市「シーボルト記念館」脇の鳴滝塾邸跡地に植栽されていた.
ある.
その樹皮から美しい緑色の染料 ( green indigo ) を採る.
それから増やしたものが長崎大学構内に
牧野富太郎は当初 Rhamnus sieboldiana と
命名した.)
カバノキ
ハンノキ
モクセイ
シオジ
ヒノキ
ネズ
Alnus japonica (Thunb.) Steud.
Fraxinus spaethiana Lingelsh.
Juniperus rigida Siebold et Zucc.
中性名詞扱い:Phyteuma L.(シデシャジン属)……同属名(syn.) の Asyneuma
中性扱い
― 35 ―
Griseb. et Schenk も
第3章 属名と種形容語
(科和名)
(種和名)
キキョウ
(学
名)
Phyteuma japonicum Miq.
シデシャジン
注意:ニシキギ科ニシキギ属 Euonymus L. とエゴノキ科エゴノキ属 Styrax L.は, 男性 or 女性……見解が
分かれている
(科和名)
(種和名)
ニシキギ
ツリバナ
(学
名)
(属名の性)
Euonymus oxyphyllus
Miq.
(男性)
佐竹・原・亘理・富成編『日本の野生植物―木本編』(1989) 平凡社
牧野富太郎『CD-ROM 版 原色牧野植物大圖鑑』(2000)
大井次三郎著・北川政夫改訂『新日本植物誌
ニシキギ
Euonymus oxyphylla
ツリバナ
牧野富太郎『牧野新日本植物図鑑』(1977)
エゴノキ
Styrax japonicus
エゴノキ
北嶐館
顕花篇』(1953 ) 至文堂
Miq.
(女性)
北隆館
Siebold et Zucc.
(男性)
週間朝日百科『植物の世界』(1997) 6 号, 朝日新聞社
エゴノキ
Styrax japonica
エゴノキ
Siebold et Zucc.
(女性)
佐竹・原・亘理・富成編『日本の野生植物―木本編』(1989) 平凡社
大井次三郎著・北川政夫改訂『日本植物誌
顕花篇』(1953 ) 至文堂
種形容語:philadelphicus(北米フィラデルフィアの), angulatus(稜のある,角張った), vespertinus(夕方の, 西
方の), Joo-Ioki(城 数馬・五百木文哉[1863-1906]), utilis(有用な), Spaeth(ドイツ人園芸家[1838-1913]), rigidus
oxyphyllus(鋭形の葉をもつ)
(硬い),
Ⅱ
合成された属名の性は, その合成語における最後語の主格の性をとる.
1.
–codon,
–myces,
–odon(歯),
–panax,
–pogon(ひげ),
–stemon(糸・雄しべ)
およびその他の男性語で終わる合成語は男性である.
Schizocodon Siebold et Zucc.(イワカガミ属), Lampteromyces Sing. (ツキヨタケ属),
Isodon Kudo (ヤマハッカ属), Oplopanax Miquel(ハリブキ属), Andropogon L.
(ウシクサ属), Pentstemon Mitchell(イワブクロ属)
(科和名)
(種和名)
イワウメ
ヒメイワカガミ
キシメジ
ツキヨタケ(菌類)
2. –achne,
–daphne,
(学
–mecon,
名)
Schizocodon ilicifolius (Maxim.) Takeda
Lampteromyces japonicus (Kawam.) Sing.
–osma およびその他の女性語で終わる合成語は女性である.
例外は, 語尾が –gaster で終わる合成語は男性で, また, Xylosma
属)は中性扱いである.
G. Forst.(クスドイゲ
Isachne R. Br. (チゴザサ属), Chamaedaphne Moench(ヤチツツジ属), Hylomecon
Maxim.(ヤマブキソウ属), Meliosma Blume(アワブキ属)
(科和名)
(種和名)
イネ
チゴザサ
ツツジ
ヤチツツジ
ヒメノガステル
マメツブタケ(菌類)
(学
名)
Isachne globosa (Thunb.) O. Kuntze
Chamaedaphne calyculata (L.) Moench
Hymenogaster arenarius Tul.
― 36 ―
第3章 属名と種形容語
3. –dendron, –ema,
例外は,
–stigma,
–stoma および他の中性語で終わる合成語は中性である.
–anthos (または –anthus )および –chilos (–chilus または –cheilos )の語尾
をもつ学名である. これらはギリシャ語 anthos および cheilos の性であるから中性である
べきだが, 植物学の伝統に従って男性として扱われる.
Phellodendron Rupr.(キハダ属), Rhododendron L.(シャクナゲ属), Arisaema Martius
(テンナンショウ属), Deinostema Yamazaki(サワトウガラシ属), Dendranthema
Des Moulins (キク属), Elatostema Forst.(ウワバミソウ属), Amitostigma Schltr. (ヒ
ナラン属), Melastoma L.(ノボタン属)
(科和名)
(種和名)
ツツジ
ジングウツツジ
サトイモ
ムサシアブミ
キク
リュウノウギク
ラン
ヒナラン
ノボタン
ノボタン
センリョウ
フタリシズカ
(学
名)
Rhododendron sanctum Nakai
Arisaema ringens (Thunb.) Schott
Dendranthema japonicum (Makino) Kitamura
Amitostigma gracile (Blume) Schltr.
Melastoma candidum D. Don
Chloranthus serratus (Thunb.) Roem. et Schult.
種形容語:ilicifolius(モチノキ属[ Ilex ] に似た葉をもつ), globosus(球形の), calyculatus(萼のある, 萼のような),
arenarius(砂地生の), sanctus(神聖な), ringens(口を開けた, 開口形の), gracilis(細長い, 繊細な, 優美な), candidus
(純雪白の, 白毛のある), serratus(鋸歯のある[鋸歯の先は葉先へ向く])
–anthes,
Ⅲ
( cf.
–oides または –odes に終わる属名は女性とし,
–ites で終わる属名は男性とする.
p. 30 : 種形容語が –oides または –odes に終わる語の場合は, 属名が男性・女性・中性の
いずれであっても種形容語の語尾は変化しない)
Spiranthes L. (ネジバナ属), Nymphoides Hill (アサザ属), Atractylodes DC.
(オケラ属), Petasites Hill (フキ属)
(科和名)
(種和名)
ラン
ネジバナ
キク
オケラ
ミツガシワ
アサザ
キク
フキ
(学
名)
Spiranthes sinensis (Pers.) Ames
var. amoena (M. Bieberson) H. Hara
Atractylodes japonica Koidz. ex Kitamura
Nymphoides peltata (Gmel.) O. Kuntze
Petasites japonicus (Siebold et Zucc.) Maxim.
注意:語尾が –on で終わる属名の性は, 男性・女性・中性のいずれにも及ぶ.
(科和名)
(種和名)
キキョウ
キキョウ
モクレン
ユリノキ
サトイモ
ミズバショウ
(学
名)
(属名の性)
Platycodon grandiflorus (Jacq.) A. DC.
男性 or 中性
(文献により属名の性の扱いが異なる)
Liriodendron tulipifera L.
女性 or 中性
北米原産
( cf. p41, “注意する形容詞”)
Lysichiton camtschatcense (L.) Schott
中性
種形容語:amoenus(魅力的な, 好ましい),
peltatus(楯状の, 楯形の), grandiflorus(花の大きい), tulipifer
(チューリップ状の花をもつ), camtschatcensis(カムチャツカ半島の)
― 37 ―
第3章 属名と種形容語
1.2
Ⅰ
人名・地名に因む属名
人名に因む属名の場合
人名に –a,
–ia をつけて, 女性形にするが, 次の点に留意する.
1. 人名の語尾が –a で終わるときは, –ea をつける
Shibata → Shibataea (イネ科 オカメザサ属)
(柴田桂太)
Tanaka → Tanakaea (ユキノシタ科 イワユキノシタ属)
(田中芳男)
2. その他の母音, または –er で終わるときは, –a をつける
Alpini
→ Alpinia
(P. Alpini)
(ショウガ科 ハナミョウガ属)
Keiske → Keiskea
(シソ科 シモバシラ属)
Linder → Lindera
(クスノキ科 クロモジ属)
Makino → Makinoa
(伊藤圭介)
(J. Linder)
(苔類 マキノゴケ科 マキノゴケ属)
(牧野富太郎)
3. 子音で終わるときは, –ia をつける
Short → Shortia
(C. W. Short)
(イワウメ科 イワウチワ属)
Turpin → Turpinia (ミツバウツギ科 ショウベンノキ属)
(科和名)
キク
(種和名)
(学
名)
(属名の性)
Leibnitzia anandria
センボンヤリ
(P. J. F. Turpin)
(L.) Turcz.
(f.)
ドイツの哲学者・数学者であった G. W. Leibniz (1646-1716) の名に因む
ショウガ
Alpinia japonica
ハナミョウガ
(Thunb.) Miquel
(f.)
イタリアの植物学者 P. Alpini (1553-1617) の名に因む
ユキノシタ
Tanakaea radicans
イワユキノシタ
Franch. et Sav.
(f.)
明治の殖産振興者 Y. Tanaka(田中芳男,1838~1916)への献名
ミツバウツギ
Turpinia ternata
ショウベンノキ
Nakai
(f.)
フランスの植物学者 P. J. F. Turpin (1775~1840)の名に因む
radicans(根を出す), ternatus(三出の,三数の)
種形容語:anandrius(雄しべのない),
Ⅱ
地名に因む属名の場合
人名からの場合と同様に, 地名に –a,
–ia をつけて, 女性形にするが, 地名の綴りそのままの
属名もある. 属名は元来名詞なので固有名詞をそのまま用いても支障が無いのである.
(科和名)
ムクロジ
(種和名)
(学
名)
(属名の性)
Sapindus mukorossi Gaertn.
ムクロジ
(m.)
ラテン語 sapo indicus, インドの石鹸の意. 果皮の石鹸性の性質による名.
インドでは古くから洗濯用に用いられていた.
ヤナギ
Chosenia arbutifolia (Pall.) A. Skvorts.
ケショウヤナギ
Chosen(朝鮮).
(f.)
はじめ, この属(ケショウヤナギ)は朝鮮の固有とされたため.
後に本州中部(上高地)でも発見された.
ハス
Nelumbo nucifera Gaertn.
ハス
土語
(f.)
ハスに対するセイロン(スリランカ)の土名(現地語)から付いた
ユキノシタ
ヒメウメバチソウ
Parnassia alpicola Makino
(f.)
ギリシャの Parnassus 山の名に因む
種形容語:mukorossi(ムクロジ[日本名]), arbutifolius(ツツジ科の Arbutus 属に似た葉をもつ), nucifer(堅果を
― 38 ―
第3章 属名と種形容語
もつ), alpicola(高山[アルプス]に生えるもの) 注意:alpicola は男性名詞として使うこともある
◎
属名の性と種形容語の性とが一致していることを以下の学名で確認しよう.
(科和名)
(種和名)
イネ
ハチジョウススキ
マキ
イヌマキ
キンポウゲ
オキナグサ
ヤナギ
ネコヤナギ
スミレ
タカネスミレ
カエデ
(学
カジカエデ(オニカエデ)
ユリ
オニユリ
ユリ
コバイケイソウ
名)
(属名の性)
Miscanthus condensatus Hack
Podocarpus macrophyllus (Thunb.) Lamb.
Pulsatilla cernua (Thunb.) Spreng.
Salix gracilistyla Miquel
Viola crassa Makino
Acer diabolicum Blume ex Koch
Lilium lancifolium Thunb.
Veratrum stamineum Maxim.
(m.)
(m.)
(f.)
(f.)
(f.)
(n.) 日本固有種
(n.)
(n.)
種形容語:condensatus(密集・密生した), macrophyllus(大きい葉の), cernuus(うなだれる,点頭する), gracilistylus
(細長い花柱をもつ),
crassus(厚い,多肉質の), diabolicus(悪魔のような, [ 鬼のように ] 大きく荒々しい),
lancifolius(披針形の葉をもつ),
2.
stamineus(顕著な雄しべをもつ)
種形容語
(種形容語の意味については, 別巻 CD-ROM 版「日本産野生植物:植物学名一覧」の「種形容語解説」シートの中で,
詳しく解説しているので参照することをお奨めします)
種形容語は属名を修飾する. 種形容語には形容詞又は名詞(ラテン語又はラテン語化した他言語)
の属格(第二格)を用い, 属名の性 (gender) に必ず一致させる. (ラテン語の名詞には, 主格・属格・
対格・与格・従格・呼格[主は・主の・主を・主に・主より・主よ, に当たる]の六つの格変化と男性・
女性・中性の三つの性変化と, 更に単・複数形があるので 6×3×2 で, 計 36 通りの変化語形があり,
種形容語もそれに応じて格・性・数の語尾変化がおこる. 語形変化のうち最重要なのは属格であり, 辞
書には主格の形と属格の変化とだけが載せてあり, これによってその語の属する語形変化の型を知るこ
とができる)
学名表記の場合は, 属名が名詞の単数主格形であり, 属名を修飾する種形容語は属名の性に応じた
性別の語形となる.
2.1
属名を修飾する種形容語
形容詞(種形容語)の性別語尾変化には名詞同様の (男 –us, 女 –a, 中性 –um ) の他に, ( –er,
–um ),
( –is,
–is,
–e ),
–a,
(男・女・中性とも無変化) のものなど色々あるので注意が必要で, 辞書で
確認することが欠かせない.
ラテン語の形容詞の変化
①
第一変化:単数主格で,
–us(男性),
–a(女性), –um(中性)の語尾をとるもの
albus(白色の), aquaticus(水生の), cinereus(灰色の), falcatus(鎌形の), minimus
(最小の), parvus(小さい), rotundatus(円形の), setosus(剛毛の多い)
②
第二変化:単数主格で,
–er(男性),
–a(女性),
–um(中性)の語尾をとるもの
asper(粗い), bulbifer(むかご・球根・鱗茎のある), pubiger(細毛を有する), macer(貧弱
な、痩せた), niger(黒い), pulcher(美しい), ruber(赤い), sacer(聖い), scaber(ざら
― 39 ―
第3章 属名と種形容語
ついた, 粗面の)
③
第三変化(A):単数主格で,
–is(男性), –is(女性), –e(中性)と変化するもの
alaris(腋生の), brevis(短い), communis(普通の), cuneiformis(楔形の), dulcis(甘い),
grandis(大きな), similis(同様の), tenuis(細い,薄い), tortilis(ねじれた), utilis(有
用な), variabilis (変わりやすい)
④
第三変化(B):単数主格で,
acer,
acris,
campestris,
–er(男性), –is(女性), –e(中性)と変化するもの
acre(鋭い)( 他に acris, acris,
acre と変化する語に注意), campester,
campestre (野原の)(他に campestris, campestris, campestre と変化する
語に注意), sylvester,
sylvestris,
sylvestre (森林生の)( 他に sylvestris, sylvestris,
sylvestre と変化する語に注意)他少数
⑤
第三変化(C):単数主格で, 語尾が変化しないもの
decumbens(傾臥する), dependens (下垂した), duplex(二倍の), ferox (強い刺をもつ),
ingens(異常な, 巨大な), natans(浮遊する), praecox(早咲きの, 早熟の), pubescens(細
軟毛ある), senex(老いた), simplex(単純な,単一の), stans(直立した), tenax(粘り強
い)他少数
◎
名詞(属名……単数・主格)を修飾する場合の形容詞の性別語尾変化表を例示する.
(語尾)
(男性)
(女性)
(中性)
(語意)
albus
alba
album
白色の
spinosus
spinosa
spinosum
針・刺のある
asper
aspera
asperum
ざらざらした
ruber
rubra
rubrum
赤い
pulcher
pulchra
pulchrum
美しい
–fer
foliifer
foliifera
foliiferum
葉を有する
–ger
floriger
florigera
florigerum
花を有する
–is
orientalis
orientalis
orientale
東方の
sylvestris
sylvestris
sylvestre
森林の
chinensis
chinensis
chinense
中国(産)の
yedoensis
yedoensis
yedoense
江戸(産)の
acer
acris
acre
鋭い, 辛い
sylvester
sylvestris
sylvestre
森に生ずる
–jor
major
major
majus
より大きい
–ior
minor
minor
minus
より小さい
elatior
elatior
elatius
より高い
gracilior
gracilior
gracilius
より細長な
–ans
radicans
radicans
radicans
根を生ずる
–ens
pendens
pendens
pendens
下垂する
viridescens
viridescens
viridescens
帯緑色の
simplex
simplex
simplex
単純な, 単一の
ambrosioides
ambrosioides
ブタクサ属に似た
–us
–er
–ensis
–er
–ex, ax, ox
–odes, oides ambrosioides
–color
prunoides
prunoides
prunoides
(旧)サクラ属に似た
tricolor
tricolor
tricolor
三色の
― 40 ―
第3章 属名と種形容語
☆
注意する形容詞(注1)
①
–fer や –ger で終わる語:形容詞のほかに名詞もあり, その判定が難しい
Liriodendron tulipifera L.
属名は中性であるが種形容詞 tulipifera は形容詞( tulipifer )の女性形である. この学名は属
名も種形容語もリンネの創作で, 彼の『自然の体系』第 10 版の第 2 巻(植物)の中で, この
種形容語は Tulipifera として頭文字が大文字で書かれているという. ということは, この
種形容語は名詞(女性)として命名されたことを意味している. なお, 最近は種形容語は殆
ど例外なく小文字で書き始める. 従って, それが形容詞か名詞かは, 著者が明らかにしてお
かなければならない.
モクレン科
②
ユリノキ
ラテン語の動詞 colo (耕す, 居住する)を後節とする複合語は, これを形容詞に造語する場
合もある.
例えば, arenicolus,
-cola,
-colum (砂地に住む, arena 砂 + colo ). ところが arenicola
を agricola(農夫), alpicola(アルプス・高山の住人), monticola(山地の住人), sylvicola
(森の住人)に準じて男性名詞とする場合もある.(次項①を参照)
形容詞の比較級・最上級
- ior(比較級語尾)
(科和名)
(種和名)
イネ科
ホソバスズタケ
キク科
ブタクサ
オシダ科
ハカタシダ
- issimus, - errimus
(学
名)
Sasamorpha borealis (Hack.) Nakai
var. angustior (Makino) S. Suzuki
Ambrosia artemisiifolia L.
var. elatior (L.) Descurtilz
Arachniodes simplicior (Makino) Ohwi
など(最上級語尾)
Quercus acutissima Carruth.
ブナ科 クヌギ
オミナエシ科 ツルカノコソウ Valeriana flaccidissima Maxim.
ホシクサ科 ネムロホシクサ Eriocaulon glaberrimum Satake
ウラジロ科 カネコシダ
Gleichenia laevissima H. Christ
ユリ科 タモトユリ
Lilium nobilissimum Makino (トカラ列島口之島)
モクレン科 コブシ
Magnolia praecocissima Koidz.
イネ科 ウツクシザサ
Sasa pulcherrima Koidz.
スイレン科 ヒメコウホネ
Nuphar subintegerrimum (Casp.) Makino
ギョリュウ科 ギョリュウ
Tamarix tenuissima Nakai
種形容語:bolealis(北方の), angustus(細い、狭い), artemisiifolius(Artemisia ヨモギ属に似た葉の),
elatus(丈の高い),
simplex(単一の、無分枝の), acutus(鋭形の、鋭く尖った), flaccidus(軟弱な、
柔かい), glaber, laevis(平滑な、無毛の), nobilis(気品のある、高貴な), praecox(早咲きの、大変早い),
pulcher(美しい), subinteger(やや全縁[完全]の), tenuis(細い、薄い)
― 41 ―
第3章 属名と種形容語
不規則変化の形容詞
原級
parvus
小さい
比較級
最上級
m. minor
minimus
f.
minor
n. minus
magnus
m. major
maximus
大きい
f.
major
n. majus
* 原級・最上級の三性(m., f., n.) は、規則変化形となる
(科和名)
(種和名)
ホシクサ科
ハマウツボ科
キンポウゲ科
クロホシクサ
ヤセウツボ
アキカラマツ
ゴマノハグサ科
ニシキギ科
スズメハコベ
エゾツリバナ
オオバコ科
ケシ科
オオバコ
クサノオウ
イネ科
コバンソウ
(学
名)
Eriocaulon parvum Koern.
Orobanche minor Sutton
Thalictrum minus L.
var. hypoleucum (Siebold et Zucc.) Miq.
Microcarpaea minima (Koenig) Merrill
Euonymus oxyphyllus Miq.
f. magnus (Honda) H. Hara
Plantago major L. var. asiatica (L.) Decne.
Chelidonium majus L.
var. asiaticum (H. Hara) Ohwi
Briza maxima L.
種形容語:hypoleucus(下面が白っぽい), oxyphyllus(鋭形の葉をもつ)
2.2
属名を修飾する名詞の属格
属格とは所有・所属等名詞の形容詞的関係を示すもので, 辞書に於いては, 各名詞の主格単数のほ
かに属格単数の語尾を並記して, 語形変化を明示している.
ラテン語の名詞の変化
①
第一変化:語幹尾 –a, 属格単数 –ae, 主格単数 –a の語尾をとるもの.
aqua(水), botanica(植物学), capsula(蒴果), crista(とさか状突起), cuticula(クチクラ),
fimbria(房), glandula(腺), insula(島), lingua(舌), mamma(乳房), membrana(膜),
mycologia(菌学), palma(掌), scientia(知識・科学), silva(森), spina(刺), squama(鱗
片), stella(星), terra(土地), vita(生命), zona(帯)等殆どすべて女性名詞である
但し, agricola(農夫), alpicola(高山の住人[高山に生ずるもの]), calcicola(石灰岩の住人[石灰
岩地に生ずるもの])等は男性名詞である. 後の二語は, 属名の性に左右されず,同一語形をとる.
②
第二変化:語幹尾 –o, 属格単数 –i で, 主格単数 –us の語尾をとるものは殆どすべて男性,
–er,
–ir で終わるものは全部男性, –um で終わるものは全部中性である.
― 42 ―
第3章 属名と種形容語
annus(年), bulbus(球根), filius(息子), fluvius(河), folliculus(袋果), gladius(剣), hortus
(庭苑), lobulus(小裂片), lobus(裂片), nervus(脈), nodus(節), nucleus(核), pedicellus
(小花柄), pedunculus(花柄), scapus(花茎), utriculus(胞果)……男性名詞
vir(男), cancer(カニ), ager(野原)……男性名詞
acidum(酸), aurum(金),
bacterium(バクテリア), capitulum(頭状花序), folium(葉),
labium(唇弁), ovarium(子房), perianthium(花被), saccharum(砂糖), stratum(層), petalum
(花被片), vexillum(旗弁)……中性名詞
例外: gametophyton(配偶体), organon(器官), phyton(植物), plancton(プランクトン),
spermatophyton(種子植物), virus(ウィルス)……中性名詞
第三変化:すべての子音幹と –i に終わるもの(属格単数形等は辞書等で確認する. 以下同様)
③
frons(葉状体), hiems(冬), lux(光), nux(堅果), palus(沼), radix(根)……女性名詞
flos(花), mons(山), pes(足), rex(王)……男性名詞
calcar(蹴爪, 距), caput(頭状花序), genus(属), lac(乳汁), nomen(名), pollen(花粉),
specimen(標本), tuber(塊茎, 隆起)……中性名詞
④
第四変化:–u に終わる語幹のもの
manus(手), domus(家, 邸宅), tribus(種族)……女性名詞
fructus(果実, 享受), aspectus(眺め, 様相), natus(誕生)……男性名詞
cornu(角ツノ)……中性名詞
⑤
第五変化:–e に終わる語幹のもの
species(姿, 美, 相, 種), facies(面, 顔), glacies(氷)……女性名詞
dies(月日の日), meridies (正午)……この 2 語のみ男性名詞
2.3
人名に因む種形容語
種形容語に人名を用いる場合は, 人名の全綴りを用い属格(第二格)に変えるか, 形容詞化する.
人名の頭文字は大文字・小文字のどちらでもよいが, 小文字が用いられることが多い.
Ⅰ
人名→属格(第二格)…この場合は属名の性が男性・女性・中性のいずれであっても語尾は同じ
でよい
[その植物の採集者あるいは研究者であったりしたとき]…但し, この規定は厳格には守られていない
Tanakae ; Hondae 田中;本田 ←語尾が a で終わる場合は, e を加える
Makinoi ; Nakaii
牧野;中井 ←語尾が a 以外の母音で終わる場合は, i を加える
Kaempferi ; Savatieri
←語尾が er で終わる場合は, i を加える
Sieboldi ; Sieboldii (注2)
←語尾が子音で終わる場合は, i または ii を加える
◎ 下記のような用例もあるので注意する. [注 1. 参照]
(科和名)
ニシキギ
(種和名)
ヒゼンマユミ
(学
名)
Euonymus chibai
Makino
牧野富太郎『牧野新日本植物図鑑』(1977, 北隆館) では上記のように ‘ chibai ’(千葉常三郎の) とある種形
容語が,
佐竹義輔・原
寛・亘理俊次・富成忠夫編『日本の野生植物―木本編 Ⅱ』(1989, 平凡社) のニシキギ科(執筆
担当者:清水建美)p36 の記載では, Euonymus chibae Makino としている.
― 43 ―
第3章 属名と種形容語
スイカズラ
Lonicera harai Makino 日本では対馬にのみ産する
ツシマヒョウタンボク
佐竹義輔ほか編『日本の野生植物―木本編 Ⅱ』では‘ harai ’(原
改訂『新日本植物誌
寛の)であるが, 大井次三郎著・北川政夫
顕花篇』(New Flora of Japan, 1953, 至文堂) と北村四郎他編『原色日本植物図鑑―木
本編Ⅰ.Ⅱ.』(1979, 保育社) では, Lonicera harae
Makino で, ‘harae ’ としている.
つまり, 人名の語尾が a で終わる男性の場合は, e を加えた場合と, i または ii を加えた場
△
合とが混在している.
人名を属格にして種形容語に用いた学名の一部を以下に列記する:
(科和名)
キンポウゲ
キク
マツ
(種和名)
(学
名)
(属名の性)
(m.)
カラクサキンポウゲ Ranunculus gmelinii DC.
エゾゴマナ
Aster glehni Fr. Schmidt
(m.)
アカエゾマツ
Picea glehnii (Fr. Schmidt) Masters (f.)
上記 2 種の(種形容語)…学名著者(命名者)は Fr. Schmidt であるが, 種形容語の綴り字が違う
注意
(文献によっては不統一のものあり)
種形容語: J. G. Gmelin (1709-1755),
ヤナギ
マツ
Glehn([1835-1873])
Populus maximowiczii A. Henry
Abies veitchii Lindl.
ドロノキ
シラベ
(f.)
(f.)
1860 年に来日し,シダ類・針葉樹の種子等の採集活動をした英国人園芸商人 J. G. Veitch (1839 1870 ) への献名
キキョウ
イワシャジン
ユリ
サクライソウ
Adenophora takedae Makino
Petrosavia sakuraii (Makino) Dandy
(f.)
(f.)
発見者:桜井半三郎への献名.この属名は Protolirion 属とされることがある.
バラ
カナウツギ
タデ
ウラジロタデ
Stephanandra tanakae Franch. et Sav. (f.)
Aconogonon weyrichii (Fr. Schm.) H. Hara (n.)
プチャーチン提督率いるロシア艦隊の外科医で,1854 年長崎に来航し採集活動を行った Weyrich
(1828 - 1863) への献名
ウマノスズクサ
フウロソウ
ベンケイソウ
Ⅱ
Asiasarum sieboldii (Miquel) F. Maek.
ゲンノショウコ
Geranium thunbergii Siebold et Zucc.
マルバマンネングサ Sedum makinoi Maxim.
ウスバサイシン
(n.)
(n.)
(n.)
人名→形容詞化…接尾辞 –anus を用いる. この場合は形容詞だから属名の性に従って語尾が,
–us・女性 (f.)
男性(m.)
–a・中性 (n.)
–um
と変化する
[単に人を記念したり, 敬意を表したりする目的のとき] …この規定は厳格には守られていない
thunbergianus ;
maximowiczianus ;
miquelianus ; grayanus ; matsumuranus
m.
makinoanus
f.
makinoana
n. makinoanum
m.
sieboldianus
f.
sieboldiana
n. sieboldianum
人名を形容詞化して種形容語に用いた学名の一部を列記する:
(科和名)
ゴマノハグサ
(種和名)
エゾヒナノウスツボ
(学
名)
Scrophularia grayana Maxim.
― 44 ―
(属名の性)
(f.)
第3章 属名と種形容語
キンポウゲ
ユキワリイチゲ
ラン
スズムシソウ
シナノキ
オオバボダイジュ
ホシクサ
イヌノヒゲ
ウコギ
イネ
ウコギ
スエコザサ
Anemone keiskeana T. Ito
Liparis makinoana Schltr.
Tilia maximowicziana Shirasawa
Eriocaulon miquelianum Koern.
Acanthopanax sieboldianus Makino
Sasaella ramosa (Makino) Makino
var. suwekoana (Makino) S. Suzuki
(f.)
(f.)
(f.)
(n.)
(m.)
(f.)
(牧野富太郎が仙台青葉城址で採集したササの新種) 属格採用であれば, Sasa suwekoi となった筈であるが,
牧野富太郎が寿衛子夫人(1928 年没, 享年 54 歳)を記念して名付けたもの故に ‘suwekoana’ となった.
種形容語:ramosus(分枝した)
2.4
地名に因む種形容語
種形容語に地名を形容詞化して用いるには次の方法によるが例外もある. 頭文字は小文字にする.
Ⅰ
国名(州名)や広域の地名には,帰属の性に従って語尾に –icus (m.), –ica (f.),
–icum (n.) を付
ける
Germania ドイツ:
Ⅱ
Ⅲ
Helvetia
スイス:
Japon
日本:
California
カリフォルニア
男性(m.)
germanicus,
helveticus,
japonicus,
californicus,
女性 (f.)
germanica,
helvetica,
japonica,
californica,
その他の地名(産地・関係地など)には –ensis (m. f.),
Tokyo
東京:
Hakone
箱根:
Hondo
本土:
Pekin
北京:
男性(m.)
tokyoensis,
hakonensis,
hondoensis,
pekinensis,
中性 (n.)
germanicum
helveticum
japonicum
californicum
–ense (n.) を付ける
女性 (f.)
tokyoensis,
hakonensis,
hondoensis,
pekinensis,
中性 (n.)
tokyoense
hakonense
hondoense
pekinense
上記Ⅱの代わりに –anus (m.), –ana (f.), –anum (n.) を付けることもある
Formosa
台湾:
Kiushu
九州:
Shikoku
四国:
Kitami
(科和名)
ラン
イワヒバ
スミレ
シソ
トウダイグサ
キンポウゲ
北見:
男性(m.)
女性 (f.)
中性 (n.)
formosanus,
formosana,
formosanum
kiushuanus,
kiushuana,
kiushuanum
( (m.) kiusianus, kiushianus の綴りもある)
shikokianus,
shikokiana,
shikokianum
( (m.) sikokianus の綴りもある)
kitamianus,
kitamiana,
kitamianum
(種和名)
キバナシュスラン
エゾヒメクラマゴケ
シレトコスミレ
ジュウニヒトエ
タカトウダイ
キタダケソウ
(学
名)
(属名の性)
Anoectochilus formosanus Hayata
(m.)
Selaginella helvetica (L.) Link
(f.)
Viola kitamiana Nakai
(f.)
Ajuga nipponensis Makino
(f.)
Euphorbia pekinensis Rupr.
(f.)
Callianthemum hondoense Nakai et H. Hara (n.)
― 45 ―
第3章 属名と種形容語
ハナシノブ
ハナシノブ
サトイモ
ユキモチソウ
Polemonium kiushianum Kitam.
(n.)
Arisaema sikokianum Franch. et Savat. (n.)
(Arisaema 属は中性)
アカネ
Galium tokyoense Makino
ハナムグラ
(n.)
注
1
平嶋義宏『生物学名概論』(2002)
p.185
注
2
人名の属格は, 現代人の男性であれば,その綴りを全記した名に i を, 女性であれば ae を加えてつくる
matsumurai(松村氏の), smithi(スミス氏の),
barbarae(バーバラ嬢の, -aae → -ae に)
人名の属格由来の種形容語には, その人のラテン名を用いる場合がある.
Thunberg →
(ラテン語化)Thunbergius →(属格)thunbergii
Siebold
(ラテン語化)Sieboldius
→
→(属格)sieboldii
これを現代人名として扱う場合の種形容語はそれぞれ thunbergi, sieboldi となる.
このように動植物の
種形容語には, 同じ男性に奉献されたものでも –i と –ii という語尾をもつものがあり, 種によって綴り
を混同しないように注意が必要である.
2.5
Ⅰ
平嶋義宏, 同上書, pp.188-189
その他の種形容語
以前は、人名・地名等の固有名詞、現地語由来の種形容語の頭文字は大文字で始めてもよかったが
現行では、小文字が用いられる
(科和名)
スミレ
オモダカ
Ⅱ
(種和名)
コミヤマスミレ
アギナシ
(学
名)
Viola Maximowicziana Makino
Sagittaria Aginashi Makino
人名
現地語(日本名)
他の属名, または植物名からとって類似を示す場合
属名または植物名の語幹に – odes,
-oides,
-oideus を付けて形容詞とする(属名の性が男性, 女性,
中性のいずれであっても語尾は変化せず, 同一形である)
Rubus(バラ科キイチゴ属)→ ruboides, Scilla(ユリ科ツルボ属)→ scilloides,
Streptopus(ユリ科タケシマラン属)→ streptopoides
(科和名)
ユリ
ユリ
(種和名)
ツルボ
タケシマラン
(学
名)
(属名の性)
Scilla scilloides (Lindl.) Druce
(f.)
Streptopus streptopoides (Ledeb.) Frye et Rigg
var. japonicus (Maxim.) Fassett
(m.)
ヒカゲノカズラ コウヨウザンカズラ Lycopodium cunninghamioides Hayata
(n.)
種形容語:スギ科のコウヨウザン Cunninghamia に葉が似ている
Ⅲ
属名, または植物名の語幹に –folius,
–florus,
–formis などを付けて, その葉, 花, 形状等の
類似を示す場合. 結合語として – i –を入れる
Prunus(バラ科旧サクラ属)→ prunifolius,
Ranunculus(キンポウゲ科キンポウゲ属)→ ranunculiflorus
(科和名)
カヤツリグサ
シソ
ハイノキ
(種和名)
(学
名)
ホンモンジスゲ
Carex pisiformis Boott
タテヤマウツボグサ Prunella prunelliformis (Maxim.) Makino
クロバイ
Symplocos prunifolia Siebold et Zucc.
― 46 ―
第3章 属名と種形容語
◎
属名の語尾が – a のときは,
– ae として –folius, –florus, –formis などを付ける
Briza(イネ科コバンソウ属)→ brizaeformis
Scabiosa(マツムシソウ科マツムシソウ属)→ scabiosaefolius
(科和名)
クロウメモドキ
ハスノハギリ
オミナエシ
Ⅳ
(種和名)
ヨコグラノキ
ハスノハギリ
オミナエシ
(学
名)
Berchemia berchemiifolia Koidz.
Hernandia nymphaefolia (Presl) Kubitzki
Patrinia scabiosaefolia Fisch.
旧属名または当該植物の本来のラテン名またはギリシャ名を種形容語に用いる場合は, そのまま用
いる. 即ち旧属名を新属名の種形容語に残す場合, 属の性( gender )にかかわらず, 種形容語は旧語尾
を保存するので属名の語尾(性)と一致しないものが多い.(大文字が用いられてきたが, 最近は小文字が用いられ
る)
(科和名)
(種和名)
ベンケイソウ ホソバノキリンソウ
キク
ゴボウ
クスノキ
クスノキ
(学
名)
(属名の性)
Sedum Aizoon L.
(ツルナ科の旧属名)
(n.)
Arctium Lappa L.
(ゴボウの旧属名)
(n.)
Cinnamomum camphora (L.) Siebold
(n.)
(種形容語は樟脳のアラビア名 kafur をラテン語化した語)
セリ
ニンジン
Daucus carota L. var. sativus Hoffm.
(m.)
(種形容語はニンジンのラテン古名)
カキノキ
マメガキ
Diospyros lotus L.
(f.)
(種形容語は, 様々な植物に付けられたギリシャ語であるが Linné はミヤコグサ属の属名にも用いた)
cf. マメ
ツツジ
ミヤコグサ
ツルコケモモ
Lotus corniculatus L. var. japonicus Regel
Vaccinium oxycoccus L.
(m.)
(n.)
種形容語:corniculatus (小角のある), oxycoccus([ ツルコケモモの旧属名] 酸っぱい種子の)
Ⅴ
例外として, 単数主格名詞が,(属名と同格として)種形容語に用いられることがある.
この場合は, 属名の性が変わっても種形容語は変化しない.
(科和名)
イネ
イネ
イネ
ラン
ラン
(種和名)
ギョウギシバ
ダンチク
ジュズダマ
クシロチドリ
サカネラン
オモダカ
サジオモダカ
カヤツリグサ
クグスゲ
キク
アキノキリンソウ
マメ
ツルマメ
ヒガンバナ
スイセン
(学
名)
Cynodon dactylon (L.) Pers.
Arundo donax L.
Coix lacryma-jobi L.
Herminium monorchis (L.) R. Br.
Neottia nidus-avis (L.) C. Richard
var. mandshurica Komar
Alisma plantago-aquatica L.
var. orientale Samuels.
Carex pseudo-cyperus L.
Solidago virgaurea L. ssp. asiatica Kitam.
Glycine max (L.) Merr. subsp. soja
(Siebold et Zucc.) Ohashi
Narcissus tazetta L. var. chinensis Roemer
― 47 ―
第3章 属名と種形容語
種形容語:dactylon(指), donax(アシの笛), lacryma-jobi(ヨブの涙), monorchis(一つのラン)名詞として
造語されている, nidus-avis(鳥の巣), plantago-aquatica(水生のオオバコ), orientalis(東洋の,東方の),
pseudo-cyperus(偽のカヤツリグサ), virga-aurea(黄金の乙女)virgaurea の語形で使われることが多い,
soya(日本語:醤油), tazetta(小さな杯・小皿)
Ⅵ
その他, 属名の性が変わっても種形容語は男性・女性・中性の区別無く, 同一形を用いる場合
1.
名詞・主格を用いるもの
( - botrys, 房,総状) chrysobotrys ; ( - calyx, 萼) adenocalyx ; ( - ceras, 角) buceras ;
( - cola, 住者, ~[ある場所]に生ずるもの) monticola ; ( - dens, 歯) crassidens ; ( - lepis, 鱗片)
erythrolepis ; ( - odon, 歯) polyodon ; ( - stachys, 穂) acanthostachys
(科和名)
マメ
(種和名)
ヤマフジ
(学
名)
(属名の性)
Wisteria brachybotrys Siebold et Zucc.
(f.)
Wistaria が正名で,Wisteria は認可された保留名
イネ
カラフトイチゴツナギ
マツ
ウラジロモミ
キク
ケンサキタンポポ
オシダ
タチデンダ
ウコギ
ミヤマウコギ
サクラソウ
ノジトラノオ
カヤツリグサ
ウシクグ
キク
ミヤマタンポポ
イワデンダ
オオシケシダ
オシダ
ミヤマベニシダ
ヤナギ
ミヤマヤチヤナギ
イワデンダ
タカサゴイヌワラビ
ツチトリモチ
キイレツチトリモチ
キジノオ
コスギダニキジノオ
チャセンシダ
ムニンシダ
Poa macrocalyx Trautv. et Mey.
Abies homolepis Siebold et Zucc.
Taraxacum ceratolepis Kitamura
Polystichum deltodon (Bak.) Diels
Acanthopanax trichodon Franch. et Sav.
Lysimachia barystachys Bunge
Cyperus orthostachy(u)s Franch. et Sav.
Taraxacum alpicola Kitamura
Deparia bonincola (Nakai) M. Kato
Dryopteris monticola (Makino) C. Chr.
Salix paludicola Koidzumi
Athyrium silvicola Tagawa
Balanophora tobiracola Makino
Plagiogyria yakumonticola Nakaike
Asplenium polyodon Forst.
(f.)
(f.)
(n.)
(n.)
(m.)
(f.)
(m.)
(n.)
(f.)
(f.)
(f.)
(n.)
(f.)
(f.)
(n.)
種形容語:brachybotrys(短い総状の,房状の), macrocalyx(大きな萼の), homolepis(同じ種類[相同]の鱗片を
もつ), ceratolepis(角のある鱗片の), deltodon(三角形歯), trichodon(有毛牙歯の), barystachys(重い穂の
ある), orthostachyus (直立穂の), bonincola(小笠原諸島産のもの), monticola(山に生えるもの), paludicola
(沼地に生えるもの), silvicola(森林に生えるもの), tobiracola(トベラに生ずるもの), yakumonticola(屋久島
山地に生ずるもの), polyodon(多歯の)
2. 名詞・属格(第二格)・単数を用いるもの
( bombyx, bombycis, 絹) ; ( boninsima,
( pastor,
boninsimae, 小笠原島) ; ( draco, draconis, 竜) ;
pastoris, 牧人) ; ( 人名:Thunberg,
(科和名)
(種和名)
シソ
シマカコソウ
ウマノスズクサ テンリュウカンアオイ
サトイモ
ナンゴクウラシマソウ
Thunbergii)
(学
名)
Ajuga boninsimae Maxim.
Heterotropa draconis (Sugimoto) F. Maek.
Arisaema thunbergii Blume
― 48 ―
第3章 属名と種形容語
3. 名詞・属格(第二格)・複数を用いるもの……場所等を表す普通名詞ほか
(科和名)
(種和名)
カヤツリグサ
ヤマオオイトスゲ
タデ
ツルタデ
イネ
サトウキビ
イワデンダ
タカネサトメシダ
マメ
カラスノエンドウ
イネ
ウマノチャヒキ
ウメノキゴケ
ウメノキゴケ
2.6
(学
名)
Carex clivorum Ohwi
Fallopia dumetorum (L.) Holub
Saccharum officinarum L.
Athyrium pinetorum Tagawa
Vicia sepium L.
Bromus tectorum L.
Parmelia tinctorum Nyl. 地衣類
斜面・丘に生える
藪に生える
薬屋の
針葉樹林に生える
生垣に生える
屋根に生える
染物業・染師の
接頭辞
語幹の前後に, 接頭辞・接尾辞・縮小辞などが付くことが多いが, ここでは接頭辞の一部を取り上
げてその用例を例示する.
ギリシャ語の接頭辞: a- あるいは an-(無), ana-(上に), eu-(良), hemi-(半), hyper-(上
に, 越えて), hypo-(下に), para-(傍らに, 側, 副), peri-(周りに), pro-(前に, 近くに),
syn- (sym-)(共に), tele-(遠くへ)……
ラテン語の接頭辞: anti-(反),
extra-(外の),
inter-(の間の), intra-(内部に),
post-
(後に), prae-(前に), semi-(半), sub-(下に, 亜), super-(上に, 越えて), supra(上に),
trans-(越えて, 向うに)……
Acorus
a(否定)+ coros (装飾)美しくない・目立たない花
ニシキギ科
ニシキギ属
Euonymus ギリシャ古名 eu(良)+ onoma(名)良い評判の意
Hemistepta
hemi(半)+ steptos(冠のある)
キク科
キツネアザミ属
冠毛が二列にあるが外側のはひどく短いため
ミクリ科
チシマミクリ
Sparganium hyperboreum Laest.
はるか北方の
コバノイシカグマ科 イワヒメワラビ属 Hypolepis
hypo(下)+ lepis(鱗片)
鱗片の基部が残ってざらつくため
グミ科
ワセアキグミ
Elaeagnus ×praematura Araki
早熟の
シソ科
ミソガワソウ
Nepeta subsessilis Maxim.
殆ど無柄の
キク科
ヤマボクチ属
Synurus
syn(合同)+oura(尾)
集まった尾. 葯下部の尾状付属物が合一して筒になるため
サトイモ科
2.7
数
ショウブ属
詞
数詞が合成語の一部として用いられている.
ギリシャ語の数詞
1 mono2 di-
(科和名)
キク
タデ
(種和名)
ヒトツバヨモギ
ジンヨウスイバ
(学
名)
Artemisia monophylla Kitam.
Oxyria digyna (L.) Hill
― 49 ―
第3章 属名と種形容語
3 tri-
ウコギ
カクレミノ
4 tetra-
カヤツリグサ
5 penta-
アケビ
ゴヨウアケビ
6 hexa-
アケビ
ムベ
7 hepta-
モクレン
ハクモクレン
マシカクイ
Dendropanax trifidus (Thunb.) Makino
Eleocharis tetraquetra Nees
Akebia ×pentaphylla Makino
Stauntonia hexaphylla (Thunb.) Decaisne
Magnolia heptapeta (Buchoz) Dandy
中国東部原産.
8 octo-
バラ
チョウノスケソウ
9 ennea10 deca-
マメ
ジャケツイバラ
100 hecto-
実際の花被片は 9 枚で,萼片と花弁の区別はない
Dryas octopetala L. var. asiatica (Nakai) Nakai
Caesalpinia decapetala (Roth.) Alst.
var. japonica (Siebold et Zucc.) Ohashi
1000 chilio-
種形容語:monophyllus(一葉の,単葉の), digynus(二本の雌しべの), trifidus(三中裂の), tetraqueter(四切面の,
四角の), heptapetalus(七花弁ある)
ラテン語の数詞
1 uni2 bi3 tri-
(科和名)
イチヤクソウ
スミレ
ミツガシワ
(種和名)
(学
名)
イチゲイチヤクソウ Moneses uniflora (L.) A. Gray
キバナノコマノツメ Viola biflora L.
ミツガシワ
Menyanthes trifoliata L.
ミツガシワ属 (Menyanthes ) は北半球の温帯~寒帯にただ 1 種
Marsilea quadrifolia L.
5 quinqueヤマノイモ
カエデドコロ
Dioscorea quinqueloba Thunb.
6 sex
ホシクサ
オオシラタマホシクサ Eriocaulon sexangulare L.
7 septem-, septen- ヤマノイモ キクバドコロ
Dioscorea septemloba Thunb.
8 octo-, octi9 novem10 decemホシクサ
コイヌノヒゲ
Eriocaulon decemflorum Maxim.
100 centiバラ
ヒメヘビイチゴ
Potentilla centigrana Maxim.
Achillea millefolium L.
1000 milleキク
セイヨウノコギリソウ
4 quadri-
デンジソウ
デンジソウ
種形容語:quadrifolius(四枚の葉をもつ), quinquelobus(五浅裂の,五裂片のある), sexangularis(六[稜]角形の),
centigranus(百粒の), millefolius(多くの葉をもつ)
― 50 ―
第3章 属名と種形容語
命名規約外の用例
「国際命名規約」により一旦新種として記載された学名は,訂正はできないのが原則で, それは
命名者自身も例外ではなく, 自分の付けた学名に問題が発見されたとしても本人でさえそれを
変えることが出来ない. しかし, 以下のような用例があるので注意する
Ⅰ 通常地名に使われる –ensis が人名に付けて使われている例:
(科和名)
(種和名)
(学
名)
バラ
ゴヨウイチゴ
Rubus ikenoensis Léveillé et Vaniot(池野成一郎の)日本固有種
カヤツリグサ イワカンスゲ
Carex makinoensis Franch.(牧野富太郎の)
イグサ
ホソコウガイゼキショウ Juncus fauriensis Buchen. (U. Faurie の)
Ⅱ 人名の綴り字の一部に, 欠落あるいは誤記のある例:
(科和名)
ヤスデゴケ
ツボミゴケ
(種和名)
(学
名)
ヒロハヤスデゴケ(苔類)
Frullania fauriana Steph.
フォーリーツボミゴケ(苔類) Jungermannia fauriana Beauverd
fauriana の綴りには‘e’が落ちている. faurieana が正しい
オオモミジガサ
Miricacalia makineana (Yatabe) Kitam.
キク
(オオモミジガサ属は日本固有属で,1 属 1 種)
牧野富太郎への献名なので, makinoana が正しいと考えられるが多々問題がある. 多くの文献
では, 当初記載・発表されたままの makineana を現在も踏襲しているが, 2003 年に公開さ
れた電子版植物学名検索:Ylist(注1)では, 印刷上のミスのよる誤記載は“不慮の過誤”
(inadvertent error)に当たるので訂正されるべきものとの見解から, その種形容語を
makinoana に訂正している. 記載・命名から相当の年月を経ているので(注2),「国際植物
命名規約」との整合性の観点から今後議論が重ねられるものと考えられる.
注
1 日本産植物の和名と学名に関する詳細情報の整備を目的として, 米倉浩司・梶田忠の両氏を中心に作成
されたもの.
基本データ蓄積と入力が主に米倉浩司によって行われたため, 通称,Ylist("ワイリスト”)
と呼ばれている.
なお, 不正な換字, 不正なラテン語化, 不適切な結合母音の使用などは“不慮の過誤”
とは みなさないので, この“不慮の過誤”のケースの適用は非常に厳密である.
注
2 1892 年に, 牧野富太郎によって記載を伴わずに Senecio iinumae Makino と発表されたものを Senecio
makineanus Yatabe と改名し, 1910 年に, Cacalia makineana Makino と転属し, 更に 1936 年に,
Miricacalia makineana (Yatabe) Kitam. へと転属したが, 種形容語は “ makineana ” の綴りが維持
されてきた.
イギリスの Kew 植物園(Royal Botanic Gardens, Kew)の植物名検索(IPNI)及び
「日本植物誌 DB」(http://www.foj.info) でも当初の綴り “ makineana ”
cf.
p. 19 第 1 章 4.1 の転属の項.
― 51 ―
になっている.
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
第4章
学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
日本産植物の「学名」の記載・発表は, 前述したように 18 世紀後半のリンネ以降国外の研究者達に
よって始められた.
日本の植物研究に深く関わり, 日本の植物の「学名」にその名を多数残している
研究者がいる. 大井次三郎著『日本植物誌
顕花編』(1956) 巻末の日本植物命名者表には, 計 1,147
名の記載がある. その一部を以下に紹介し, 彼らの業績を辿ってみよう.
1. E. Kaempfer
2. C. P. Thunberg 3. P. F. von Siebold
6. C. L. von Blume
7. C. J. Maximowicz
4. J. G. Zuccarini
5. H. Buerger
8. P. A. L. Savatier 9. A. R. Franchet
10. U. J. Faurie 11. F. A. W. Miquel 12. A. Gray 13. C. S. Sargent 14. R. Brown
15. W. J. Hooker と J. D. Hooker 16. J. Lindley 17. R. Fortune
1.ドイツ人:ケンペル
E. Kaempfer
( 1651-1716 )
ロシアのケーニヒスブルク大学で医学・哲学・歴史学・博物学を, スウェーデンのウプサラ大学で
博物学を学び, 地理学にも優れた探検家・医師で, 1690 (元禄 3) 年出島のオランダ商館医として来日し
約 2 年滞在した. 江戸に二回参府し, 第 5 代将軍綱吉と謁見している. ケンペルは勤務の傍ら, 日本の
動植物・地理・歴史・風俗等あらゆる部門に関心を示し, 収集した日本の動植物を持ち帰った. 帰国後,
日本の動植物に関する論文を提出してライデン大学で学位を受けた.
アジア各地の滞在先の見聞録:『廻国奇観』(Amoenitatum exoticarum politico – physico –
medicarum, 1712) 第 5 部(「日本の植物」 Plantarum japonicarum)の中で, 日本の植物約 500 種(標
本点数約 400)について詳細に記述した. 本書の記載文とその植物図は大変正確である. リンネは, 後
にこのケンペルの知見を基にして『植物の種』(Species Plantarum,1753. 第 1 版) に日本産の植物(イ
チョウ・クスノキ・チャノキ・カヤ・ツバキ・サネカズラ・カジノキ・カキノキ等 19 種)を掲載して
世界に紹介している. リンネはこのときまでにはまだ実際に日本の植物の標本を入手していなかった.
リンネがツバキに学名(Camellia japonica Linnaeus) を付けたのも, またショウガ科バンウコン属バ
ンウコンに Kaempferia galanga L. という新属新種の学名を新設したのもこの本の図譜からである.
日本植物の最初の研究者であるケンペルは, 単に植物の記述を残しただけではなく標本(後の研究
者による検証を可能にするのに必須な証拠標本)を作っていた. ケンペルの研究はツュンベルクにより
継承され, 日本植物の研究を支える基礎になった. ケンペルの著作はリンネの『植物の種』(Species
Plantarum, 1753) 以前のものであるから, ケンペル自身は「二名法」による学名を記載することはな
かった.
『江戸参府旅行日記』(1712 ) は次の『日本誌』の抄訳である. 日本研究の金字塔『日本誌―日本
の歴史と紀行』(The History of Japan, 1727. これは没後出版された英訳本で, ドイツ語の原著は更に
50 年後(1777-1779)に出版された)を著す.
ダイズ Glycine soya(現在の学名は Glycine max (L.) Merr. である)をヨーロッパにはじめて
紹介したのはケンペルである.
― 52 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
(科和名)
(種和名)
(学
ウマノスズクサ
オオバウマノスズクサ
クワ
ツルコウゾ
マツ
カラマツ
ヤドリギ
マツグミ
植物以外にも,
名)
Aristolochia kaempferi Willd.
Broussonetia kaempferi Sieb.
Larix kaempferi (Lamb.) Carr.
Taxillus kaempferi (DC.) Danser
セミ上科
ニイニイゼミ
Platypleura kaempferi Fabricius
タテハチョウ科
オオミスジ
Neptis alwina kaempferi (De L’Orza, 1869)
甲殻類
タカアシガニ
Macrocheira kaempferi Temminck
世界最大の節足動物で, 日本沿岸(相模湾・紀伊半島・土佐湾等)の固有種で 1 属 1 種のカニ
2.スウェーデン人:ツュンベルク
C. P. Thunberg
(1743-1828)
ウプサラ大学に入り, 在学 9 年, リンネの下で医学・植物学等を学び, 1770 年「坐骨神経痛につい
て」(De Ischiade)で医学博士になった. 後にウプサラ大学医学・植物学教授となり, 同大学学長を務め
たリンネ第一の高弟で, リンネに続く時代の最も優れた自然観察者といわれる植物学者であった.
ツュンベルクは日本へ向かう途中, 1772 年から 1775 年まで 3 年間, オランダのケープ植民地(現在の
南アフリカ連邦の南部)で生活し, オランダ語を習得した. この間に喜望峰および南アフリカの植物を
調べ, 3,000 種以上の植物採集(そのうち 1,000 種以上は彼の発見に関わるもの)をして, 後に『喜望峰
植物誌』( Flora Capensis, 1804-1823 ) (注1)を著した.
植物相が豊かで多くの未知の植物の発見が期待できる日本は, ヨーロッパの大半の地域と同様に北
半球の温帯に位置する国であるが, ヨーロッパからは最も遠い国で, 当時往復路には危険の多い船旅を
強いられた.
1775 (安永 4) 年ツュンベルクはジャワのバタヴィア(ジャカルタの旧名)を経て, オランダ商館医
として来日し, 1 年 2 ヶ月滞日した. 来日当初は, 長崎出島に隔離されると植物採集はできず, 出島に運
び込まれる牛豚の飼料に目をつけ, 植物や昆虫を採取した. オランダ通詞達に医学(梅毒への「水銀療
法」を実践)・薬学・植物学を教え, 出島に植物コレクションをつくった.
1776 年江戸参府する商館長
の侍医として第 10 代将軍家治にも謁見し, 同年 12 月に長崎を去るとき, 収集した鉢類はバタヴィアに
運ばれ, そこから更にアムステルダムの薬草園に送られた.
ツュンベルクは長崎を中心とした九州と江戸参府の際の東海道(主に箱根付近)での植物採集しか
できなかったが日本の植物についての多くの本と論文を発表した. ツュンベルクは標本を保存し, 図
譜を作り, 更にケンペルが残した資料(注2)を基に日本の植物を研究したのである.
なかでも彼の最高の研究成果である『日本植物誌』( Flora Japonica, 1784. 原書では Flora
Iaponica) は, 師リンネの定め分類法と学名(「二名法」)によるわが国植物学上の画期的な著作で, そこ
には 812 種の日本の植物(長崎の植物 300 種, 箱根の植物 62 種, 江戸の植物 43 種等)が記載されて,
新属 26, 新種 418 が発表され, 日本の植物がヨーロッパに広く紹介された. 別刷銅版画 39 図を収め,
個々の植物には植物学的記述のほか, 日本名, その俗名, 採集地, 花期, 効用等が調べられている.
ツュンベルクの『日本植物誌』は, 日本の植物を集大成した最初の著作であり, 当時の植物誌とし
ては第一級のものでその後の日本植物研究の出発点となっている. 日本の植物研究がこのような優れ
た著作を出発点とすることができたことは幸いであった. しかも, その素材となった標本(注3)と図
の殆どすべてがスウェーデンのウプサラ大学に保管され, 現存している恩恵は計り知れないものがある.
(ツュンベルクは 1807 年ウプサラ大学博物館を開設し, 標本多数を寄贈した. 一部はライデン, アム
ステルダム, ストックホルム, ジュネーヴ等の関係機関に収められている.)
― 53 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
ツュンベルクが来日した 1775 年は, 杉田玄白(1733-1817)・前野良沢(1723-1803)等がドイツ人医
師クルムス(J. A. Kulmus, 1689-1745 )の「解剖学表」(Anatomische Tabellen, 1732 )のオランダ語訳書,
いわゆる「ターヘル・アナトミア」を漢文訳し『解体新書』(1774)として刊行して, 蘭学が興隆した時
期であった. 彼は滞日の期間, 長崎のオランダ通詞, 吉雄耕牛(1724-1800)や江戸の蘭学者, 杉田玄
白・中川淳庵(1739-1786)・桂川甫周(1754-1809)らと親交があり, 日本の蘭学者達がオランダ語で書い
たツュンベルクとの交流書簡は現在でもウプサラ大学に保管されている.
ツュンベルクの『日本植物誌』の著作に最も貢献した日本人は中川淳庵と桂川甫周であった. その
書に列記される植物の学名に和名が付記されているのはこの 2 人の手助けによるものであることがその
著の序文に記されている. ツュンベルクは中川淳庵にケンペルの『廻国奇観』を, 中川淳庵はツュンベ
ルクに植物図の多い『地錦抄』(著者は江戸染井の植木職伊藤伊兵衛で, 増補・広益・付録の合本で 20
冊になる)をそれぞれ贈った. しかし, ツュンベルクの『日本植物誌』は淳庵・甫周の両人の手には入
らなかった.
1779 年ツュンベルクは故国スウェーデンに帰国したが, 師リンネはその前年に 70 歳 8 ヶ月で亡く
なっていた. ツュンベルクの業績を顕彰する碑が日本学術会議と日本植物学会により長崎市諏訪公園
に建立された.
『日本植物誌』以外の主な著書: 『日本の自然に関する覚書』(1780),『日本植物専攻研究集』
(1780),『日本植物図集』(1794-1805, 全部で 60 種の腊葉(さくよう)から描いた図),『喜望峰植物誌』
(1804-1823) ,『ヨーロッパ・アフリカ・アジア紀行』(1793, 日本に関する部分は《ツュンベルク日本紀
行》として『異国叢書』に所収され,その抄訳が『江戸参府随行記』(1793)である)
§
ツュンベルクが命名した日本植物
ツュンベルクの命名による日本植物の学名で, 変更されることなく現在なお有効でそのまま使用さ
れているもの:
「属名」…アオキ属 ( Aucuba )・サカキ属 ( Cleyera )(注4)・ウツギ属 ( Deutzia )・ヒサカキ属
(Eurya )・ドクダミ属 ( Houttuynia )・ケンポナシ属 ( Hovenia )・クロモジ属 ( Lindera )・ナンテン
属 ( Nandina )・コクサギ属( Orixa )・ヤブミョウガ属 ( Pollia )・ミヤマシキミ属 ( Skimmia )・タニ
ウツギ属 ( Weigela ) 等
(科和名)
(種和名)
ツバキ
サカキ
ユキノシタ
ツバキ
マルバウツギ
ヒサカキ
ドクダミ
ドクダミ
クロウメモドキ
ケンポナシ
クスノキ
クロモジ
ツユクサ
ヤブミョウガ
スイカズラ
ハコネウツギ
(学
名)
Cleyera japonica Thunberg
Deutzia scabra Thunb.
Eurya japonica Thunb.
Houttuynia cordata Thunb.
Hovenia dulcis Thunb.
Lindera umbellata Thunb.
Pollia japonica Thunb.
Weigela coraeensis Thunb.
種形容語:scaber(ざらついた), cordatus(心臓形の), dulcis(甘い), umbellatus(散形花序の),
coraeensis(朝鮮の)
― 54 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
「種形容語」…ツュンベルク(Thunberg)に献名された種形容語の植物がある.
(科和名)
(種和名)
メギ
メギ
キク
マメ
アズマギク
ミヤギノハギ
クスノキ
タブノキ
バラ
ユキヤナギ
イラクサ
イラクサ
(学
名)
Berberis thunbergii DC.
Erigeron thunbergii A. Gray
Lespedeza thunbergii (DC.) Nakai
Machilus thunbergii Siebold et Zucc.
Spiraea thunbergii Siebold ex Blume
Urtica thunbergiana Siebold et Zucc.
「種名」…ツュンベルクが命名した日本植物の一部を以下に列記する:
(科和名)
(種和名)
キク
カワラヨモギ
シソ
キランソウ
ガマズミ
イワヒトデ
イヌビワ
マメザクラ
シャガ
ヤマトリカブト
ヤマブキソウ
スイカズラ
ウラボシ
クワ
バラ
アヤメ
キンポウゲ
ケシ
(学
名)
Artemisia capillaris Thunb.
Ajuga decumbens Thunb.
Viburnum dilatatum Thunb.
Colysis elliptica (Thunb.) Ching
Ficus erecta Thunb.
Prunus(Cerasus) incisa Thunb.
Iris japonica Thunb.
Aconitum japonicum Thunb.
Chelidonium japonicum Thunb.
Hylomecon japonica (Thunb.) Prantl が用いられることもある
ラン
クマガイソウ
ニシキギ
マサキ
バラ
ハマナス
ソテツ
モクセイ
モクレン
クマツヅラ
ソテツ
レンギョウ
シデコブシ
クサギ
種形容語:capillaris (細毛状の,糸のような),
Cypripedium japonicum Thunb.
Euonymus japonicus Thunb.
Rosa rugosa Thunb.
Cycas revoluta Thunb.
Forsythia suspensa (Thunb.) Vahl
Magnolia tomentosa Thunb.
Clerodendrum trichotomum Thunb.
中国原産
decumbens(横臥した), dilatatus(拡張・拡大した, 膨れた, 拡がっ
た), ellipticus(楕円形の), erectus(直立した), incisus(鋭く浅裂した, 欠刻のある), rugosus(しわの寄った,し
わの多い), revolutus(反巻きした, 外旋した), suspensus(下垂する), tomentosus(細綿毛[ビロード毛] が密生し
た), trichotomus(三分枝した,三叉状の)
◎
ツュンベルクは以下の両属の学名で, 同じ「属」内の植物を鋭く観察して,「種」を明確に識別していることが
分かる.
グミ
ツルグミ
グミ
オオバグミ
グミ
ナツグミ
グミ
ナワシログミ
グミ
アキグミ
Elaeagnus glabra Thunb.
Elaeagnus macrophylla Thunb.
Elaeagnus multiflora Thunb.
var. crispa (Maxim.) Servett.
Elaeagnus pungens Thunb.
Elaeagnus umbellata Thunb.
― 55 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
モチノキ
モチノキ
イヌツゲ
モチノキ
モチノキ
タラヨウ
モチノキ
クロガネモチ
モチノキ
ウメモドキ
植物以外にも,
アゲハチョウ科
Ilex crenata
Ilex integra
Ilex latifolia
Ilex rotunda
Ilex serrata
Thunb.
Thunb.
Thunb.
Thunb.
Thunb.
Papilio memnon thunbergii Sieb. , 1824 亜種名に
ナガサキアゲハ
Protohermes grandis Thunberg
ヘビトンボ科
ヘビトンボ
テントウムシ科
ヒメカメノコテントウ
Propylea japonica Thunberg
種形容語:glaber(無毛の, 平滑な), macrophyllus(大きい葉の), multiflorus(多くの花をもつ), pungens(鋭く尖
った, 鋭刺状の), umbellatus (散形花序をもつ), crenatus(鈍鋸歯のある,円鋸歯状の), integer(全縁の, 完全な),
latifolius(広葉の), rotundus(円形の), serratus(鋸歯のある[ 鋸歯の先は葉先へ向く]), memnon(エチオピアの
王の名), grandis(大形の)
注
1 現在の植物地理学では, 生育している植物の種類によって世界を次の六つの植物区系界に分けている.
北
区(ユーラシアと北アメリカ), 旧熱帯区(アフリカと熱帯アジア), 新熱帯区(南アメリカ), オーストラ
リア区, 南極区, 及びケープ区である.
ケープ地方には独特の植物がそれほど多いのだが, その全容を初
めて明らかにしたのがツュンベルクの『喜望峰(ケープ)植物誌』であった.
注
2 日本訪問の先輩ともいうべきケンペルの遺稿や標本・植物図譜などは, ケンペルの死後ロンドンの富裕な医
師スローン卿(Sir H. Sloane, 1660-1753) によって買い上げられ英国大英博物館(1753 年設立)に保管され
ていた.
ツュンベルクは 1778 年ロンドンで, バンクス卿 ( Sir J. Banks , 1743-1820) の世話で大英博物
館に行き, ケンペルの日本における採集標本類や遺稿などを検分した.
注
3 分類学的研究には標本や文献の蓄積が必須であるが日本で本草学者が押し葉標本を作製しはじめたのはシ
ーボルトが来日してからであった.
「押し葉標本は分類学の研究では重要な研究資料で, 標本からは DNA を抽出することができるし, 電子顕
微鏡で花粉や種子などの微細構造を調べることができるうえ, なによりも押し葉標本なしには植物の変異性
を研究することができない.
研究を保証するのもその研究に用いられた押し葉標本をおいて他にはない.
ヨーロッパでは少なくとも 1550 年代には押し葉標本がつくられて保存されており, 標本の重要性にたいす
る認識では日本はかなりの遅れをとっている.
押し葉標本を収蔵したハーバリウムができたのは東京大学
が創設された明治 10 (1877) 年になってからである.」大場秀章『江戸の植物学』(1997) 東京大学出版会.
p.203
「分類学を初めとする自然史科学では, 研究自体を検証するのは研究に用いられた標本である.
究は, その標本に新たに収集された標本を加えて行われる.
新たな研
その意味で, 後に日本の植物研究を飛躍的に
発展させた, 東京大学の中井猛之進と京都大学の小泉源一が, 大正 14 (1925) 年にウプサラ大学を訪れツュ
ンベルクの標本を研究していることは興味深い.
ツュンベルクの標本は, 単なる歴史的コレクションでは
なく, 日本の植物を研究するうえで基盤となる標本として, いまも重要な研究材料なのである.」大場秀章
『大場秀章著作選Ⅰ』(2006) 八坂書房.
第 3 部 日本の植物に魅せられた人々.
“ツュンベルクと江戸の植
物学” p. 384
注
4 ツュンベルクは自分の植物探検旅行に深く関わり, 援助を与えてくれた人達へ新属名を献名した.
Deutzia 属← (Johan van der Deutz , 1743-1784) 本文中に学名用例あり(以下同じ)
Hovenia 属← (David ten Hoven, 1724-1787)
Pollia 属← (Jan van der Poll, 1726?-1781?)…… 以上 3 人はオランダの植物愛好家で後援者達
Cleyera 属← 17 世紀のオランダの船医で, アジアの薬草の研究家でもあった André Cleyer ( ?- 1697) の
名に因む.
ドイツ人であるがオランダ東インド会社に入り, 長崎出島のオランダ商館長を二度
(1682-83, 1685-86)務め, 江戸参府も二度行った.
― 56 ―
ケンペルに先駆けて日本の植物に興味を持っ
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
て研究し, 論文には 53 種の日本植物を挙げた.
特に園芸植物を調べ, 日本の植物をヨーロッパに
紹介するのに貢献があった. バタヴィアで没した.
Houttuynia 属← 18 世紀のオランダの医師で博物学者の Martinus Houttuyn(1720-1798)* の名に因む.
Lindera 属← スウェーデンの植物学者 Johann Linder (1676-1723) に因む.
Weigela 属← ドイツの科学者 Christian Ehrenfried von Weigel(1748~1831)に因む.
なお, ツュンベルクに献名された属名がある.ヤハズカズラ属( Thunbergia Retzius )
キツネノマゴ科
*
ヤハズカズラ
Thunbergia alata
Bojer
種形容語:alatus (翼のある)
リンネの学術書はほとんどラテン語で著され, ヨーロッパ各国語に翻訳された.
ハウトイン(ホーティ
ン,ホッタイン,フートインとも表記される)はリンネ信奉者で, オランダ語で『自然誌―リンネの体系に
よる動物,植物,鉱物の詳細な記述』(Natuurlyke historie, 1761-1785. アムステルダム刊) を著した.
この
書物はリンネの『自然の体系』第 10 版及び第 12 版の翻訳といわれているが, 訳者自身の研究成果も多く盛
り込んだ独立の書物といってもよい書物であった.
分類体系と学名を原著によったというだけで, 原著に
はない図版約 300 枚も付けて好評を得てリンネの分類体系を大衆レベルで浸透させるのに非常な力があった.
この著書では植物をヤシ類, 木類, 灌木類, 草類に分けた後に, 雌雄蕊分類表をあてはめている.
ラテン語原本は日本の蘭学者達には殆ど読まれなかった.
リンネの
飯沼慾齋『草木圖説』もハウトインのオランダ語
訳『自然誌』によったので草部と木部に分かれている.
本書は東インド会社の手で, ツュンベルクの『日本植物誌』(1784. 全文ラテン語の著作でライプツッヒ刊)
より早く舶来し, 日本の蘭学者・博物家達に一層強くアピールし宇田川榕菴等の蘭学者に注目され, やがて,
この書物を手掛かりにして日本産植物の学名を考定する作業が行われるようになった.
ハウトインの著書
の中で既にヒメハギ・アキノノゲシ・アケビ・ササユリ等計 33 種の植物がリンネの二名法で命名・記載さ
れて, ヨーロッパに紹介されていた.
ツュンベルクが在日中に採集した動植物標本の一部をバタヴィアの総
督府へ送り, これがアムステルダムへ回送されて, ハウトインの研究・発表するところとなっていたからで
ある.(西村三郎『文明のなかの博物学―西欧と日本』上・下巻 (1999) pp. 32-34, 492-493 参照)
ユリ科
ササユリ
Lilium japonicum Thunb.
ヒメハギ科
ヒメハギ
Polygala japonica Houtt.
タデ科
ギシギシ
Rumex japonicus Houtt.
3.ドイツ人:シーボルト
P. F. von Siebold
(1796-1866 )
ヴェルツブルク大学で医学と自然科学を学び, 1823(文政 6)年と 1859(安政 6)年の二回オラン
ダの出島商館医として来日し, 日本のあらゆる事物に関心を寄せた. 長崎の鳴滝塾では診療と教育
(西洋医学・自然科学)を行い, 近代医学を伝授し, 吉雄権之助らオランダ通詞や美馬順三・高野長英・
伊東玄朴・高良齋・二宮敬作ら多数の人材を蘭学者として育成した. シーボルトは門人達(医学上の弟
子達)に種々のリサーチの課題を与えてオランダ語による論文を提出させた. シーボルトのもとには全
国各地から子弟が集まっていたから, 彼は彼等を通じ長崎にいながらにして日本全国の動植物の標本や
地理学的資料・情報等を入手できた. また, 彼は美術工芸品から民具類に至る民族学的資料の収集にも
努めた.
6 年 4 ヶ月滞日の間に, これら提出論文とおびただしい収集資料に基づいて日本研究を進め, 滞在 4
年目に巡ってきた江戸参府(第 11 代将軍家齋)の際には, 水谷豊文等多くの学者と出会い, 貴重な資料
を多数入手した. シーボルトは本草学者の水谷豊文, その弟子の伊藤圭介や大河内存真, 更に宇田川榕
菴, 桂川甫賢(桂川甫周の孫)等を「日本の植物学者」と記している. 出島を出て江戸までの旅行はシ
ーボルトにとって又と無い植物採集・観察の機会であり, 多くの植物を入手することが出来た. 江戸で
は宇田川榕菴や栗本丹州, 岩崎灌園達と知り合った. 更に, 緯度がオランダやドイツにより近い本州
東北部や蝦夷地:北海道の植物にも強い関心を寄せていた. この北方植物の情報の大半(ウラジロモ
ミ・カラマツ等)は桂川甫賢を介して北方探検家:最上徳内や間宮林蔵から得たものであった.
― 57 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
1825 年シーボルトは, チャノキをジャワに移植することに成功した. 彼は出島薬草園に生きた
日本の植物や種子を多数集めて育てヨーロッパへ持ち帰る準備をした. その薬草園の中央に, 先人ケ
ンペル及びツュンベルクの大きな功績を顕彰する詩文を刻んだ記念碑(注1)を建立した. それは現在
も出島に残っており, 彼の主著『日本植物誌』(Flora Japonica, 1835-1870) の中扉にもその石碑が描か
れている.
彼のバタヴィアの東インド政庁宛報告書によれば, 生きた植物 2,000 種と押し葉標本 12,000 点,
その他多数の標本(哺乳類 200, 鳥類 900, 魚類 750, 爬虫類 170, 無脊椎動物 5,000 以上等)を収集し
持ち帰ったとある. 同時に,出島への出入りを許された川原慶賀(1786-1862, 『慶賀写真草』上・下,
1836 )という日本人絵師に命じて生時の標本を詳細に描写させて美しい図版も作成させた. 彼がオラ
ンダへ送ろうとしたものの中に伊能忠敬による日本地図等の禁輸出品が含まれていたことが発覚した
こと(いわゆる“シーボルト事件”
)から約 1 ヶ年の軟禁の後, 国外退去処分となり, 1829(文政 12)
年末ジャワに向かって出国し, 1830 年に一度オランダに帰国した. 幸いなことに収集した標本や植物
の持ち出しは許されたのである.
シーボルトは日本の植物を愛好し, 植物学的な興味に加え園芸にも関心を抱き, 日本の植物を植物
の多様性に欠けるヨーロッパの庭園に導入するため園芸種苗をオランダに送った. ヨーロッパでは,熱
帯多雨地帯の植物栽培には温室が必須となるが, 温帯にある日本の植物は露地栽培が出来るからである.
生きた植物はその多くを航海中に枯れて失うが, それでも 2000 株近い日本植物の移出に成功した. そ
れらはオランダが 1817 年につくったインドネシア:ジャワ島のボイテンゾルグ(Buitenzorg, 現ボゴ
ール Bogor)の植物園で馴化され, その後オランダに送られた.
シーボルトは日本の植物を園芸に導入するために, これをヨーロッパの環境に馴らす馴化植物園を
ライデン(Leiden) 近くのライダードルプ(Leiderdorp) に設け, オランダ王立園芸振興協会を設立し,こ
の協会を通じて日本の植物を載せた通信販売のためのカタログを出版し, ヨーロッパ中に配布した.
更に, 種苗輸入のために「シーボルト商会」を設立した. また, 協会の機関誌やその他の園芸雑誌に,
魅力ある日本の植物を紹介する絵入りの記事を載せた.
シーボルトの持ち帰った日本の植物:カノコユリ・テッポウユリ・ツバキ(シーボルトは「冬のバ
ラ」とも呼んだ)等の素晴らしさはヨーロッパにセンセーションを巻き起こし, 短期間に日本植物(一
部は中国原産)をヨーロッパ中に広め, 庭園の改革を成し遂げた. 現在,ヨーロッパの庭園に普通に見ら
れる日本・中国の植物(アオキ・アジサイ・アセビ・ギボウシ類・ヤマブキ・レンギョウ等)にはシー
ボルトが移入に関与したものが多い.
シーボルトが移入した日本の植物は, ヨーロッパの人々に日本の自然や文化, 芸術への関心を呼び
起こした. ヤポニスム( Japonism: Japonaiserie )と呼ぶ日本趣味は, 植物の園芸から始まったともい
える(注2).
シーボルトの日本植物研究はそれまでの先人たちとはかなり異なるものであった. 標本・資料の収
集も組織的に行われ, オランダが国家としてこれを援助した. つまり, オランダは東インド会社総督を
通じ, シーボルトに日本に対するあらゆる種類の学術的な調査の権限を与え, これに要する費用を商館
医の年俸とは別に総督府の負担とすること, 収集した資料の所有権はオランダ政府にあること等の契約
を結んでいた. シーボルトが収集したこれらの標本の殆どがオランダの国立ライデン植物博物館に保
管されている.
シーボルトは経済的支援を受けたオランダ皇后 Anna Paulowna Romanov (ロシア皇帝の
娘,1795-1865) の名前をキリの「属名」(Paulownia ) とし, また, 来日まもなく知り合った長崎丸山の
名義芸妓(其扇そのぎ)で, 娘いね(注3)を出産した楠本 瀧の愛称「おたきさん」に因み, 新種として
発表したアジサイに Hydrangea otaksa という学名をあてた(注4).
― 58 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
シーボルトは, 幕末に再来日(注5)し, このときも数多くの植物標本を収集し帰国したが, これは
殆ど未整理のまま手元に残され, 没後に未亡人によりロシアのペテルブルクにあるコマロフ植物研究所
に売却され(注6), マキシモヴィッチの研究するところとなった.
彼の主著の三部作とは,『日本』(Nippon, 1832-52 , その抄訳が『江戸参府紀行』(1826)である),
『日本動物誌』(Fauna Japonica, 1833-50. 脊椎動物はテミンク C. J. Temminck [1778-1858] とシュ
レーゲル H. Schlegel [1804-1884], 無脊椎動物はデ・ハーン W. de Haan [1801-1855]を執筆者に迎え
た)と『日本植物誌』(Flora Japonica, 1835-1870)である. それらは以後の西欧人による日本研究の基
礎とされた.
『日本植物誌』はツッカリーニの研究・協力を得た共著で, その第 1 巻(1835-1844)に続いてシー
ボルト・ツッカリーニ両者の没後にミクェルがその遺稿を整理し, 第 2 巻(1870)を完成させた. 全 2 巻
で 150 の図版(アカマツ・アジサイ・アスナロ・イチイ・カヤ・コウヤマキ・モミ・ヤマモモ等)が掲
載されていて, その多くは川原慶賀が実物をみて描いた植物画に基づいて描かれている.
シーボルトとツッカリーニによって, 新属を含む多数の日本植物が新たに記載され,(江戸)東京以
西の植物相の概要がほぼ明らかにされた.
注
1 その石碑にはラテン語で次のように刻まれている.
さい.
「E. ケンペルよ.
あなた方の植物が緑豊かに, 毎年, 花を咲かせています.
た花輪をかかげるのです.
フォン・シーボルト博士」
C. P. ツュンベルクよ.
ご覧な
植えた人を忘れることなく, 心をこめ
長崎大学医学部前庭にあるシーボルトのレリーフ
の支柱にも同じラテン語碑文が刻まれている.
注
2 大場秀章『花に魅せられた人々』(2005) 自然の中の人間シリーズ
花と人間編(第 7 巻)農文協. p17
参照.
注
3 楠本いね( 1827-1903 )……日本最初の西洋女医.
シーボルトの姓を日本流にして‘志本いね’と名乗った.
父シーボルトの門人, 宇和島藩医師の二宮敬作から外科学を, 備前の石井宗謙から産科医術を学び, 1856
(安政 3) 年長崎銅座町で, 次に 1870 (明治 3)年から 7 年間 東京築地一番地で西洋産科医院を開業し,「オ
ランダおいね」と名声を馳せた.
明治 6 年宮内省御用掛.
石井宗謙との間に一女‘たか’を生んだ.
た
かは敬作の甥, 蘭学者の三瀬周三に嫁いだ.
注
4 アジサイは, シーボルト以前にツュンベルクが記載しているので大井次三郎著『改定増補新版 日本植物誌
顕花篇』(1978) [至文堂]によれば, 現在の学名は Hydrangea macrophylla (Thunb.) Seringe var.
macrophylla なっていて, Hydrangea otaksa Siebold et Zucc. は前者のシノニム( Synonym: 異名)
として扱われる.
シーボルトはアジサイ類に興味をもち, 彼の『日本植物誌』にはアジサイの品種が 14
種も取り上げられている.
注
5 1858(安政 5)年日蘭修交通商条約が締結されると, シーボルトは翌年再来日し, 1862 年まで滞在して江戸
に上ったが,
幕末の動乱などのため自分では植物を採集しなかった..
同行来日した長男アレクサンダー
Alexander はイギリス駐日公使館員となり, 次いで明治政府の外務省に雇用され, 1879(明治 12)年, 邦
文の『考古説略』という考古学の概説書を著し, 考古学という語を初めて使った.
注
6 コマロフ植物研究所は重複標本を各国の研究機関に交換標本として送付した.
東京大学総合研究博物館や
首都大学東京(旧東京都立大学)牧野植物標本館にはこのときの標本の一部が保管されている.
また, 東
京大学総合研究博物館は, 2000 年の日蘭修好 400 年を記念してライデン大学からシーボルトが日本で収集
した植物標本約 450 点が寄贈された.
は全く無かったのである.
シーボルトが最初に来日したときに採集し持ち帰った標本は日本に
これらは日本で保管される最古の植物標本となるものである.
ペテルブルクの呼称は, ペトログラード, レニングラード, サンクト・ペテルブルクと時代により変遷が
あったが, 本書では便宜上すべて "ペテルブルク" に統一してある.
る.
― 59 ―
必要に応じて各時代の呼称に読み替え
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
4.ツッカリーニ
J. G. Zuccarini
(1797-1848 )
ミュンヘン大学植物学教授で, 世界の針葉樹について研究して, ソテツをはじめとする裸子植物の
研究に大きな業績を残した. シーボルトと共に日本植物を研究し, シーボルトとの共著『日本植物誌』
( Flora Japonica ) に彼が書いた植物学的解説(記載文)は克明・正確であり, それまでの文献について
(現在の「国際植物
も言及し, 大変優れたものである. 但し, タイプ標本(注1)が明記されていない.
命名規約」によれば, 記載に際してタイプを指定することが学名の有効出版条件の一つとさえなってい
るが, 当時はタイプについてのこうした考え方はまだ確立していなかった.)
記載文以外の部分には,
シーボルト自身による文化史的視点に立った詳しい追記の記述(フランス語)がある(注2).
注
1 タイプ(Type)標本とは, 新種を記載し新学名を付ける材料になった標本のこと.
その種としての植物群
の最も普通な形質をもったものという訳ではないし, またその種(植物群)の代表的な個体という意味でもな
い.
「この正基準標本はただ一つの標本であり, 新種を発表した人が決め, 学名の根拠となるものでその
種に関する分類学的な問題が生じた時には, 常に参照しなくてはならない重要な標本である.
正基準標本
の所蔵機関を明示することや公的研究機関に納入することは言うまでもないことである.」大場達之他編『リ
ンネと博物学―自然誌科学の源流』(1994)
千葉県立中央博物館.
天野
誠「植物と動物の学名について」
p.140 参照.
注
2 シーボルト
(大場秀章監修・解説
瀬倉正克訳)『日本の植物』(1996)
八坂書房.
植物の自生地, 分布,
生育地の状況, 栽培状況, 学名の由来, 日本名とその由来, 利用法, 薬理, 処方等多岐に亘っている.
§ シーボルトとツッカリーニの両者が命名した日本植物
40 を超える「属名」に新規命名が及んでいる.
「属名」…レンゲショウマ属( Anemonopsis )・クサアジサイ属( Cardiandra )・イヌガヤ属
(Cephalotaxus )・ カツラ属( Cercidiphyllum )・イワタバコ属( Conandron )・カラスノゴマ属
(Corchoropsis )・ トサミズキ属(Corylopsis )
・ イスノキ属( Distylium )・フサザクラ属
(Euptelea )・ ゴンズイ属( Euscaphis
)・シラネアオイ属( Glaucidium )・キリ属( Paulownia ) ・
キヨスミウツボ属(Phacellanthus )
・ノグルミ属( Platycarya )
・バイカアマチャ属(Platycrater )・
オサバグサ属( Pteridophyllum )・シロヤマブキ属(Rhodotypos )・ イワカガミ属(Schizocodon )・
イワガラミ属( Schizophragma )
・コウヤマキ属(Sciadopitys )・キブシ属( Stachyurus )・コゴメウ
ツギ属(Stephanandra )・ アスナロ属(Thujopsis )・ホツツジ属(Tripetaleia
)・ ヤマグルマ属
( Trochodendron ) 等
(科和名)
キンポウゲ
(種和名)
レンゲショウマ
(学
名)
Anemonopsis macrophylla Siebold et Zucc.
(1 属 1 種で日本固有種)
イワタバコ
イワタバコ
マンサク
トサミズキ
マンサク
シラネアオイ
イスノキ
シラネアオイ
Conandron ramondioides Siebold et Zucc.
Corylopsis spicata Siebold et Zucc.
Distylium racemosum Siebold et Zucc.
Glaucidium palmatum Siebold et Zucc.
(旧分類体系:シラネアオイ科はコウヤマキ科と同様に日本固有の科で, 1 属1種のみである. )
クルミ
ユキノシタ
ケシ
ノグルミ
バイカアマチャ
オサバグサ
Platycarya strobilacea Siebold et Zucc.
Platycrater arguta Siebold et Zucc.
Pteridophyllum racemosum Siebold et Zucc.
(オサバグサ属は日本固有の属で,1 属1種)
― 60 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
バラ
シロヤマブキ
Rhodotypos scandens
(Thunb.) Makino
(シロヤマブキ属にはこの 1 種のみが東アジアに分布する)
ユキノシタ
イワガラミ
ヒノキ
ツツジ
アスナロ
ホツツジ
Schizophragma hydrangeoides Siebold et Zucc.
Thujopsis dolabrata (L. f.) Siebold et Zucc.
Tripetaleia paniculata Siebold et Zucc.
種形容語:ramondioides(イワタバコ科の Ramonda 属のような), spicatus(穂状花序の), racemosus(総状花序の),
palmatus(掌状の), strobilaceus(球果[ マツカサ ]に似る), argutus(鋭鋸歯をもつ), scandens(登攀性の, よじ登
り性の), hydrangeoides(アジサイ属[ Hydrangea ] に似た), dolabratus(斧形の), paniculatus(円錐状の, 円錐花
序の)
「種形容語」…シーボルト(Siebold)に献名された種形容語の植物がある.
(科和名)
(種和名)
キク
キセルアザミ
ヤナギ
ヤマナラシ
カバノキ
ツノハシバミ
ニシキギ
マユミ
植物以外にも, オニヤンマ科
オニヤンマ
(学
名)
Cirsium sieboldii Miquel
(別名:マアザミ)
Populus sieboldii Miquel
Corylus sieboldiana Blume
Euonymus sieboldianus Blume
Anotogaster sieboldii Selys
Treron sieboldii Temminck
ハト科
アオバト
キセルガイ科
シーボルトコギセル
Phaedusa sieboldii Pfeiffer (陸産貝類)
樹上性でタブノキ・クスノキ・エノキなどの幹に付着する.
フトミミズ科
シーボルトミミズ(注1) Pheretima sieboldi
R. Horst
「種名」…シーボルトとツッカリーニの両者が命名した日本植物の一部を以下に列記する:
(科和名)
(種和名)
カエデ
チドリノキ
ウマノスズクサ
ウマノスズクサ
マツ
アカマツ
カバノキ
ヤシャブシ
モクレン
ホオノキ
マンサク
マンサク
カエデ
コミネカエデ
ツバキ
ヒメシャラ
アワブキ
アワブキ
エゴノキ
ハクウンボク
マツ
ヒメコマツ
ユキノシタ
ツルアジサイ
キンポウゲ
クサボタン
スイカズラ
ヤマシグレ
ニシキギ
ニシキギ
ユキノシタ
ノリウツギ
(学
名)
Acer carpinifolium Siebold et Zucc.
日本固有種
Aristolochia debilis Siebold et Zucc.
Pinus densiflora Siebold et Zucc.
属名は女性
Alnus firma Siebold et Zucc.
Magnolia hypoleuca Siebold et Zucc.
Hamamelis japonica Siebold et Zucc.
Acer micranthum Siebold et Zucc.
日本固有種
Stewartia monadelpha Siebold et Zucc.
Meliosma myriantha Siebold et Zucc.
Styrax obassia Siebold et Zucc.
Pinus parviflora Siebold et Zucc.
Hydrangea petiolaris Siebold et Zucc.
Clematis stans Siebold et Zucc.
Viburnum urceolatum Siebold et Zucc.
Euonymus alatus (Thunb.) Siebold
Hydrangea paniculata Siebold
種形容語: carpinifolius(クマシデ属[ Carpinus ] に似た葉をもつ), debilis(軟弱な, 細少な), densiflorus(密に花
をつける), firmus(堅固な,強い), hypoleucus(下面が白色の), micranthus(小さな花をもつ), monadelphus
― 61 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
(一束状に集まって, 単体雄しべの), myrianthus(多数花の), obassia(オオバヂシャ[ 別名ハクウンボク]日本名),
parviflorus(小さな花をもつ), petiolaris(葉柄をもつ, 葉柄上の), stans(直立した), urceolatus(壷形の), alatus
(翼のある), paniculatus(円錐状の, 円錐花序の)
1 「高知県で一般的に『カンタロウ』と呼ばれ四国や九州を中心として, 中国地方や紀伊半島, 中部地方にも
注
分布し, 屋久島以南の南西諸島には分布していない.
全身が青藍色で, 成熟個体の体長は 25~28cm, 太さ
14~15mm 程度で, 大きな個体では体重 30g 以上, 体長 30cm にも達する. ヤイロチョウの主な餌はミミ
ズであり, その中でも最も大型で地表性であり, ヤイロチョウが餌として手に入れやすいものが, シーボル
トミミズである. また, シーボルトミミズはヤイロチョウと国内での分布域が一致しており, ヤイロチョウ
の主要な餌資源となっている可能性が高い.」 南谷
幸雄(高知大学大学院農学部研究科)
「しずく」66 号
(2005 年 5 月 1 日発行)より引用
ヤイロチョウ科
ヤイロチョウ
Pitta brachyura nympha Temminck et Schlegel
種形容語:brachyurus(短尾類の),亜種形容名:nympha(妖精)
中国原産植物と日本
中国原産植物が日本原産植物として学界に報告され,‘ japonica’ とか日本の俗名(現地の
呼称)とかが学名化されている場合がある.( cf. pp. 111-113 :
(科和名)
(種和名)
(学
日本名起源の属名・ 種形容語)
名)
Eriobotrya japonica (Thunb.) Lindl.
(中国中南部原産)
Sophora japonica L..
(中国北部原産)
これらは不適切な命名として,‘ japonica’より‘chinensis’とすべきものであるが,「国際植物
命名規約」によりそれは不可能である.
バラ
ウメ
Prunus*(Armeniaca) mume (Sieb.) Siebold et Zucc.(中国中部原産)
カキノキ カキノキ
Diospyros kaki Thunb.
(中国中部原産)
バラ
マメ
ビワ
エンジュ
また, 中国原産植物がシルク・ロード経由で西アジア~ヨーロッパに伝播して原産地を誤認された
ものもある. 中国原産植物の多くが最初に外国で記録されたためにその地名が付けられた.
(科和名)
(種和名)
(学
名)
(種形容語の意)
Prunus(Amygdalus) persica (L.) Batsch
(ペルシャの産の)
バラ
アンズ
Prunus armeniaca L. 現行:Armeniaca vulgaris Lam.(アルメニア産の)
ヤナギ
シダレヤナギ
Salix babylonica L.
(バビロニア産の)
* Prunus (旧称)属…現行:Amygdalus(モモ属), Armeniaca(アンズ属), Cerasus(サクラ
属),Laurocerasus(バクチノキ属),Padus(ウワミズザクラ属), Prunus(スモモ属)に細分される
バラ
◎
モモ
日本植物といってもアジア北部・中国・インドに共通した種が少なくない. 日本植物の
学名が, 日本で採集された植物に命名されたとは限らない. 日本と中国とに共通の植物が,
中国で採集され, 中国植物の専門家によって命名されたものがあるし, 本来中国から日本に
渡ってきた植物であるが日本で発見され, それに命名されたものもある. このような事情は,
日本と中国との関係だけでなく全ての地域(国)に及ぶものである.
― 62 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
5.ビュルガー
H. Buerger
( 1806-1858 )
シーボルトを支えたユダヤ系ドイツ人で, 後にオランダに帰化した博物学者.
1825(文政 8)年,
当時長崎の出島にいたシーボルトの要請によって, ジャワから派遣されて「薬剤師」として来日し,
シーボルトの助手となり, 江戸参府にも随行し, その往復路で観察や採集に活躍した. 長崎周辺の温泉
(嬉野・武雄等)水を化学分析し, 鳴滝塾では, 物理・化学・鉱物等を教授し, 地質学・鉱物学への関心
も高かった.
ビュルガーはシーボルトの日本退去後は, 出島に居残って仕事を引き継ぎ, 1835(天保 6)年離日す
るまでシーボルトの日本研究に協力し, 主として動植物の標本蒐集に大きな功績を残している. 彼は
シーボルト以上に熱心に標本蒐集に励み, 1,300 種, 総数 2,000 点以上の標本をオランダに送った.
テミンクもシーボルトも, ビュルガーの採集標本が無かったならば,『日本動物誌』
(テミンク)も
『日本植物誌』(シーボルト)も完成できなかったのである.
(科和名)
(種和名)
(学
バラ
フユイチゴ
バラ
イヌザクラ
未刊の草稿「日本地質鉱物誌」あり.
名)
Rubus buergeri Miq.
Prunus(Padus) buergeriana Miq.
属名は女性
植物以外にも,
キリギリス科
キリギリス
アオガエル科
カジカガエル
6.ブルーメ
Gampsocleis buergeri de Haan
Buergeria buergeri Schlegel
C. L. von Blume
(1796-1862 )
ドイツ生まれの医学博士でオランダのライデン大学の教授.
1817 年ジャワに赴任し, 1822 年バタ
ヴィアのボイテンゾルグ Buitenzorg の植物園(注1)園長に就任し, マライからフィリッピン諸島,
ニューギニアに及ぶマレーシアの植物研究の基礎をつくり, 東南アジアの植物を研究した.
19 世紀
前半に最も多くの日本植物に学名を与えた 1 人だった. 『バタヴィア植物誌』(1825-1826) , 東南ア
ジア植物図譜『ジャワ植物誌』(1828-1851),『蘭領インド植物誌』(1849-1856) ,『インド諸島と日本
の特異なラン科植物のコレクション』(仏文, 1858)を著す.
マラリアの特効薬であるキニーネの原材料キナノキ(アカネ科)を南米からジャワ島へ移植するこ
とを, ブルーメの提唱で 1829 年オランダ政府は試みたが有効な移植にはならなかった. 後に, 彼はラ
イデンの王立植物標本館の館長を務め, シーボルトの採集品も研究した.
ブルーメが命名した「属名」…タネガシマムヨウラン属(Aphyllorchis )・ヤクシマラン属
(Apostasia )・アカギ属(Bischofia )・ツルギキョウ属(Campanumoea )・カイロラン属
(Cheirostylis )・ニッケイ属(Cinnamomum )・ユズリハ属(Daphniphyllum )・アマチャヅル属
(Gynostemma )・ヒメノヤガラ属(Hetaeria )・ムヨウラン属(Lecanorchis )・マテバシイ属
(Lithocarpus )・アワブキ属(Meliosma )・アリドウシラン属(Myrmechis )・カテンソウ属
(Nanocnide )
・イナバラン属(Odontochilus )
・ニガキ属(Picrasma )
・マツラン属(Saccolabium )
・
ウエマツソウ属(Sciaphila )・イセハナビ属(Strobilanthes )・クモラン属(Taeniophyllum )・
ヒメトケンラン属(Tainia )・ツルリンドウ属(Tripterospermum )等がある。
キク科ツルハグマ属 ( Blumea DC. ) に彼の名を残す.
(科和名)
(種和名)
ラン
ヤクシマラン
トウダイグサ
アカギ
(学
名)
Apostasia nipponica Masamune
Bischofia javanica Blume
(1 属 1 種)
― 63 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
キク
ナガバコウゾリナ
ウリ
アマチャヅル
ラン
ムヨウラン
イラクサ
カテンソウ
キツネノマゴ
スズムシバナ
リンドウ
ツルリンドウ
ウマノスズクサ
ランヨウアオイ
クスノキ
イヌガシ
イラクサ
イワガネ
ヤブコウジ
ヤブコウジ
モクセイ
トネリコ
ラン
ササバギンラン
ブナ
イチイガシ
ブナ
ブナ
ウラジロガシ
アベマキ
Blumea conspicua Hayata
属名はブルーメへの献名
Gynostemma pentaphyllum (Thunb.) Makino 属名は中性
Lecanorchis japonica Blume
Nanocnide japonica Blume
Strobilanthes oligantha Miq.
Tripterospermum japonicum (Siebold et Zucc.) Maxim.
Heterotropa blumei (Duchart.) F. Maek.
Neolitsea aciculata (Blume) Koidz.
Villebrunea frutescens (Thunb.) Blume
Ardisia japonica (Thunb.) Blume
Fraxinus japonica Blume
属名は女性
Cephalanthera longibracteata Blume
Quercus gilva Blume
Quercus salicina Blume
Quercus variabilis Blume
種形容語:javanicus(ジャワ[ Java] 島の), conspicuus(顕著な, 目立った), pentaphyllus(五葉の), oliganthus(少
数の花をもつ), aciculatus([痩]針形の, 針のような), frutescens(低木状の), longibracteatus(長い苞葉をもつ),
gilvus(黄褐色の), salicinus(ヤナギのような), variabilis([色・形など]変化に富む)
注
1 オランダがつくったボイテンゾルグ植物園は, 1817 年にインドネシアが独立してからはボゴール植物園と
改名した.
この種の植物園は馴化植物園と呼ばれ, 植民地の経済植物の移入に重要な役割を果たした.
7.ロシア人:マキシモヴィッチ
C. J. Maximowicz
(1827-1891 )
医学を修めるためドルパット(現在のエストニアのタルツ)の大学に入学したが A. Bunge の強い
影響を受けて転身し, 東アジアの植物を研究した分類学者で, ペテルブルクの帝国植物標本館の研究員
となりアムール川地方や沿海州等の植物を 3 年間にわたり調査した.
1858(安政 5)年函館(当時は「箱
館」と記した)に領事館が開設されたとの報に接し, 1860 (万延元) 年 9 月函館に来日した. このようにマ
キシモヴィッチは来日前にアムール地方・満州を自分で踏査して東アジア温帯の植物について豊富な知
見と体験をもっていた. 彼のこの素養が日本の温帯植物の研究に十分に生かされたといえる.
マキシモヴィッチは雇い人の須川長之助に採集整理の技法を教え採集家に育て, 函館山及び近辺の
植物採取をした. マキシモヴィッチの日本滞在は 3 年 5 ヶ月に及び(函館:1 年 4 ヶ月, 横浜:11 ヶ月,
長崎:1 年 2 ヶ月滞在), 長之助を伴い各地を調査旅行した. 船にて横浜を経由し長崎へ二度出かけ,
英彦山・阿蘇・霧島・熊本・久住山・富士山・箱根等で広く植物採集した. 長之助はさらに単独でマキ
シモヴィッチが入れない南部(岩手県)や信濃, 近畿, 山陰, 白山・立山・八ヶ岳・浅間山・金峰山, 四
国, 九州等で植物採集をして, その標本をマキシモヴィッチに提供した.
また, マキシモヴィッチは長崎鳴滝でシーボルトに直接会っていた. これがシーボルトの膨大な
収集遺品(標本)
(注1) をロシアのコマロフ植物研究所に収蔵する一つの動機になったといわれている.
1871 年から 1890 年まで, マキシモヴィッチはロシア科学アカデミーの植物博物館館長を務めた. 彼は
多くの日本人とも接触し, 終生日本植物の, 主に日本の温帯, 北方地域の植物相の研究に専念し, 飯沼
慾齋の『草木圖説』をしばしば引用し 340 種もの植物を記載・発表をしているが, 日本の植物誌をまと
めるのをまたずに他界したのは惜しまれる. マキシモヴィッチの標本はロシア科学アカデミー
コマロフ植物研究所に所蔵されている.
― 64 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
牧野富太郎はマキシモヴィッチに何度も標本を送り植物の同定を依頼し(注2), ロシア留学を企画
したが, マキシモヴィッチがインフルエンザで急逝したため実現しなかった.
著『アムール地方植物誌予報』(Primitiae Florae Amurensis, 1859. デミドフ賞を受賞) は, 日本を含
む東アジア温帯地域の植物の研究に欠かせぬ力作であり, 他に「日本・満州産新植物の記載」( Diagnoses
breves plantarum novarum Japoniae et Mandshuriae, 1866 - 1871) ,「アジア産の新植物記載」
( Diagnoses plantarum novarum asiaticarum, 1877-1893)という論文を発表した.
マキシモヴィッチが命名した「属名」…サワルリソウ属(Ancystrocarya )・シライトソウ属
・ マルバノキ属(Disanthus )
・キクガラクサ属
(Chionographis )・ギンバイソウ属(Deinanthe )
(Ellisiophyllum )・イイギリ属(Idesia )・ ノギラン属(Metanarthecium )・クチナシグサ属
(Monochasma )
・スズコウジュ属(Perillula )
・ホソバツルリンドウ属(Pterygocalyx )
・ミヤマニ
・ハ
ガウリ属(Schizopepon )・コオロギラン属(Stigmatodactylus )・ヤブレガサ属(Syneilesis )
コネコメツツジ属(Tsusiophyllum )・ ショウキラン属(Yoania )等
(科和名)
ムラサキ
マンサク
イイギリ
ユリ
リンドウ
ウリ
ラン
カバノキ
カバノキ
バラ
キク
スミレ
ユリ
クワ
カエデ
バラ
ユリ
アブラナ
ナス
ユリ
キク
イワタバコ
リンドウ
モクレン
(種和名)
サワルリソウ
マルバノキ
イイギリ
ノギラン
ホソバツルリンドウ
ミヤマニガウリ
コオロギラン
ミヤマハンノキ
ウダイカンバ
ミヤマザクラ
アサギリソウ
フモトスミレ
エンレイソウ
ヒメイタビ
ミネカエデ
カンヒザクラ
ワニグチソウ
ナンブイヌナズナ
ハシリドコロ
ジョウロウホトトギス
ヤブレガサ
シシンラン
リンドウ
タムシバ
(学
名)
Ancystrocarya japonica Maxim. (日本固有属で 1 属 1 種)
Disanthus cercidifolius Maxim. (日本固有属で 1 属 1 種)
Idesia polycarpa Maxim.
Metanarthecium luteoviride Maxim.
Pterygocalyx volubilis Maxim.
Schizopepon bryoniaefolius Maxim.
Stigmatodactylus sikokianus Maxim.
Alnus maximowiczii Callier
Betula maximowicziana Regel
日本固有種
Prunus(Cerasus) maximowiczii Ruprecht
Artemisia schmidtiana Maxim.
Viola sieboldii Maxim.
Trillium smallii Maxim.
Ficus thunbergii Maxim.
Acer tschonoskii Maxim.
日本固有種
Prunus(Cerasus) campanulata Maxim.
Polygonatum involucratum (Franch. et Sav.) Maxim.
Draba japonica Maxim.
Scopolia japonica Maxim.
Tricyrtis macrantha Maxim.
Syneilesis palmata (Thunb.) Maxim.
Lysionotus pauciflorus Maxim.
Gentiana scabra Bunge var. buergeri Maxim.
Magnolia salicifolia Maxim.
種形容語:cercidifolius(ハナズオウ属[ Cercis ]に似た葉の), polycarpus(果実の多い,数回結実する), luteoviridis(黄
緑色の), volubilis(捩れた, 絡みついた, 巻きつく), bryoniaefolius(ウリ科の Bryonia 属のような葉の), campanulatus
(鐘形の), involucratus(総苞のある), macranthus(大きな花をもつ), palmatus(掌状の), pauciflorus(少数花
の), scaber(ざらついた), salicifolius(ヤナギ属[ Salix ]の葉のような)
注
1 シーボルトが所蔵していた川原慶賀の日本植物の写生画や再来日の際に収集した標本などをシーボルト
― 65 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
夫人ヘレーネから買い取った.
注
2 マキシモヴィッチに標本を送り, 教えを請うたのは牧野富太郎だけでなく, 明治時代の植物学者:矢田部
良吉, 松村任三, 田代安定, 田中芳男, 伊藤篤太郎, 宮部金吾等も同様であった.
東京大学や国立科学博物館に保存されている.
その控え標本は今日でも
マキシモヴィッチは, 日本の植物に最も精通していた外国
人で幼年期の日本植物学の‘育ての親’といってよいほどの貢献をした.
8.フランス人:サヴァチェ
P. A. L. Savatier
( 1830-1891 )
1866(慶応 2)年(シーボルトの没年)官営工場の横須賀製鉄所に海軍医官として来日した. タ
ヒチ, ペルー, マジェラン海峡, 中国寧波(ニンポー)等でも植物採集を行い, 私設の標本庫(注1)を
もっていた.
1871(明治 4)年末から 1873 年初めまで病気療養のため帰国, その後再び来日し 1875
年まで足かけ 10 年間横須賀に住んだ. その間横須賀・三浦半島・横浜・鎌倉・江ノ島・富士・箱根・
熱海・日光等で盛んに植物採集を行い(注2), その標本をパリの自然史博物館に送った.
彼の標本は, 中国の植物について多くの優れた業績をあげた本国のフランシェ(A. R. Franchet)
によって研究され, 共同で『日本産植物目録』2 巻 (Enumeratio Plantarum in Japonia Sponte
Crescentium, 1. 2., Paris, 1875-1879) ) を発表した. これは Thunberg の『日本植物誌』と並ぶ重要
な文献で, 日本の種子植物 2,743 種とシダ植物 198 種が分類・記載され, 多数の新種とその自生地が載
っており, その後の日本産植物の研究者に便宜を与え(注3), 外国人によって出版されてきた日本の植
物誌の最後を飾るのにふさわしい著作である. サヴァチェには, マキシモヴィッチ, ミクェル, グレー
等日本植物研究の先人たちの優れた論文・標本も利用することができる状況にあった.
サヴァチェは日本植物の研究に日本の本草学者の著した著作を活用した. 飯沼慾齋の『草木圖説』,
岩崎灌園の『本草圖譜』, 島田充房・小野蘭山共著の『花彙』(かい)を高く評価していた. 『日本植物
学
花彙の巻』の仏訳本 ( ‘ Botanique Japonaise.
Livres Kwa-Wi ’ , 1873 ) を佐波一郎の協力を得
て出版している(注4).
また, 伊藤
譲(1851-1883, 伊藤圭介の三男)・田中芳男・田代安定・小野職愨(もとよし, 1843-1890,
小野蘭山の曾孫)等と親交を深め, 学名などの校訂依頼に力を貸し, 1872 年にアメリカ人ワトソン(R. G.
Watson) の 主 唱 で 組 織 さ れ た 日 本 ア ジ ア 協 会 を 通 じ て , デ ィ キ ン ズ (W. Dickins), ク ラ マ ー (C.
Kramer), ライン(J. Rein), ド・ブラント(de Brandt), ベェルニイ(F. L.Verny[1837-1908] 横須賀製鉄
所の主任造船技師), ヒルゲンドルフ(F. M. Hilgendorff[1839-1904] 東京大学の前身, 東京医学校で博
物学を教授した), Hogg(アメリカ人), Vidal (横須賀製鉄所の医師)等の協力も得た.
(科和名)
(種和名)
(学
名)
Heterotropa savatieri Franch.
アオギヌゴケ(蘚類) ヨコスカテングゴケ Rhynchostegium savatieri Par.
ヤナギ
ミヤマヤナギ
Salix reinii Franch. et Sav.
キク
セイタカトウヒレン
Saussurea tanakae Franch. et Sav.
カヤツリグサ
ミヤマクロスゲ
Carex flavocuspis Franch. et Sav.
ラン
エゾスズラン
Epipactis papillosa Franch. et Sav.
Epilobium pyrricholophum Franch. et Sav.
アカバナ
アカバナ
ウマノスズクサ
オトメアオイ
種形容語:Rein([1857-1918]), flavocuspis(黄色い凸端の), papillosus(乳頭状突起をもつ), pyrricholophus
(赤色の種髪[種毛]のある)
注 1 この標本は後にイギリスのキュー植物園に収められた.
た.
― 66 ―
その中には 730 点の日本で採集された標本があっ
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
注 2 サヴァチェが医官としての任務多忙のため横須賀の地を離れるのが難しかったときに協力したのは, フラン
ス人技師エミール・デュポン Emil Dupont (生没年不詳) であった.
彼は 1874 (明治 7) 年同じ横須賀製鉄
所(横須賀海軍工廠の前身, 後の横須賀造船所) に「お雇い外国人」として来日.
木材技師であったデュポン
は日本各地の国有林へ艦材鑑定に出かけ, その折植物採集もして採集活動が制約されていたサヴァチェを
助け, 協力した. デュポンは帰国後の 1880 年に『日本森林概要』( Les Essences Forestières du Japon) を
刊行.
注 3 本書は巻末に, それまで日本植物を研究した欧米の書物・モノグラフや各植物がどの文献に最初に出たかの
索引, 並びに各植物の和名と学名との対照表等優れた reference の要素を備えたものである.
飯沼慾齋の『草
木圖説』の図はすべて種ごとに引用されている.
注 4 佐波一郎はフランス語に秀でた横須賀製鉄所の技手で, 後に造船所船台工場長になった.
オシダ科
ミヤマイタチシダ Dryopteris sabaei (Franch. et Sav.) C. Chr.
9.フランシェ
A. R. Franchet
日本固有種
( 1834-1900 )
中国奥地産の植物を含む東アジア産植物の分類学的研究を進め, モウズイカ属・トウヒレン属・ス
ゲ属等の研究の他に, パンダを発見したダヴィッド( A. David, 1826-1900 ) 神父採集の植物やデラヴェ
( A. J. M. Delavay, 1834-1895 ) 神父が中国西南部(雲南奥地)で収集した標本による分類等の研究論
文・著書を数多く残している. パリ自然史博物館に勤務し, マキシモヴィッチと深く交流した.
著『ダヴィッド氏採集中国産植物』(Plantae Davidianae ex Sinarum Imperio),『デラヴェ氏採集
植物』(Plantae Delavayanae)
フランシェが命名した「属名」…イワイチョウ属(Fauria )・イワセントウソウ属
(Pternopetalum )・ウサギギク属(Mallotopus , 今日では Arnica が多く用いられている)・
イワユキノシタ属(Tanakaea )…後の二属は Savatier との共同命名である.
(科和名)
(種和名)
キンポウゲ
エゾキンポウゲ
キク
ミヤマキタアザミ
カヤツリグサ
ショウジョウスゲ
ケシ
ミチノクエンゴサク
ミズキ
ハンカチノキ
(学
名)
Ranunculus franchetii H. Boiss.
Saussurea franchetii Koidz.
Carex blepharicarpa Franch.
Corydalis capillipes Franch.
Davidia involucrata Baill.
分布する 1 属 1 種の高木で, 観賞樹として公園・道路脇等に植栽.
中国南西部の山地にのみ
属名は A. David への献名
種形容語:blepharicarpus(縁毛のある果実の), capillipes(細い柄をもつ), involucratus(総苞をのある)
10.フォーリ
U. J. Faurie
( 1847-1915 )
パリ大学神学部を卒業後, カトリックの宣教師として 1873(明治 6)年に来日(26 歳).
パリの自
然史博物館に関係し, サヴァチェの採集した標本により日本植物を研究していたフランシェは, 新潟に
いたフォーリに植物を採集しその標本を送るよう依頼した. フォーリはこの要請に応え, パリの自然
史博物館(注1)やアメリカのミズーリ植物園に多数の標本を送った.
その後, 一時期植物採集からは遠ざかっていたが, 1883 年青森・北海道の巡回神父となった時
函館を中心に植物採集を再開した. 病気療養のため一時本国に戻ったが, 1897 年の再来日後は青森に
定住し, 精力的に日本植物の採集を行った.
東北各地(青森・八甲田山・岩手山・鬼首・羽前・羽後・陸前)
・北海道 (札幌・小樽・江差・根室・
網走・阿寒湖・釧路・苫小牧・礼文島・利尻島)・南千島(国後島・択捉島)に限らず富士山・妙高山・
― 67 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
日光山地・妙義山・浅間山・高尾山・伊豆・伊吹山・山陰(大山)・四国・九州(阿蘇山・国上山・祖母
山・奄美大島)・琉球諸島・南樺太・台湾(阿里山に三回)
・香港・朝鮮・ハワイにも採集調査地を延ば
した.
1915(大正 4)年に台湾で調査中に亡くなった.
外国人の中でフォーリほど日本各地を精力的に採集・調査に廻った人はいない. 彼が採集した標本
(顕花植物・シダ植物に限らず, 蘚苔類・地衣類にも及ぶ)の研究には中井猛之進など日本人学者も一
部協力したが, 主に研究したのはリヨン大学に籍を置くボアジェ (H. de Boissieu, 1875-1912)であった.
しかしフランシェの没後は採集品をレヴェイュ (A. A. H. Léveillé,1863-1918)に送り, 多くの新植物を
命名記載したのはレヴェイュであった(注2).
フォーリの採集標本はほぼ 60,000 点といわれ, 採集にあたっては多くの固体を採ったのでパリ自
然史博物館だけでなく大英博物館, キュー植物園, アーノルド樹木園, ジュネーヴ植物園, ライデン標
本館, ミズーリ植物園, ハーヴァード・レニングラード・ウィーン等多数の大学, 研究所等に配布されて
いる. 「このフォーリの採集品によって“世界の主要標本室”では日本の植物がどこででも見られるよ
うになり, また, 世界の専門家にその専門とする部類の標本を送ったので, 日本の植物は世界によく知
られるようになった. 彼が標本を送った専門学者には宮部金吾(北海道), 早田文蔵(台湾), 中井猛
之進(朝鮮), 小泉源一(バラ科・ヤナギ科), 児玉親輔(シダ), 澤田兼吉(下等植物), H. Christ(シ
ダ), E. Rosenstock(シダ), C. Christensen(シダ), E. Hackel(イネ科), C. B. Clarke(カヤツリ
グサ科), G. Kükenthal(カヤツリグサ科), M. T. Masters(針葉樹)等多数に上っている.」(注3)
ミヤマウスユキソウはフォーリが 1888 年鳥海山で採集したものにウィーン博物館の
Handel-Mazzetti (1882-1940) が研究して, Faurie を記念する種形容語をつけた.
(科和名)
(種和名)
ミツガシワ
イワイチョウ
(学
名)
Fauria crista-galli
(Menz.) Makino
イワイチョウ属( Fauria ) は Franchet の命名で, 日本及び北アメリカ北西部にただ 1 種
Pyrola faurieana H. Andr.
ユキノシタ
ホクリクネコノメソウ Chrysosplenium fauriei Franch.
キク
ミヤマウスユキソウ
Leontopodium fauriei (Beauv.) Hand.- Mazz.
Papaver fauriei Fedde
ケシ
リシリヒナゲシ
イネ
アイヌソモソモ
Poa fauriei Hackel
ウラボシ
オシャクジデンダ
Polypodium fauriei H. Christ
イノモトソウ
ハチジョウシダ
Pteris fauriei Hieron.
キク
フォーリーアザミ
Saussurea fauriei Franch.
オミナエシ
カノコソウ
Valeriana fauriei Briquet
マメ
ツガルフジ
Vicia fauriei Franch.
カヤツリグサ
トダスゲ
Carex aequialta Kükenthal
オシダ
ムニンベニシダ
Dryopteris insularis Kodama
ウラジロ
カネコシダ
Gleichenia laevissima H. Christ
カヤツリグサ
タカネクロスゲ
Scirpus maximowiczii C. B. Clarke
リュウビンタイ ホソバリュウビンタイ Angiopteris palmiformis C. Christensen
イチヤクソウ
カラフトイチヤクソウ
種形容語:crista-galli(鷄のとさか), aequialtus(同じ高さの), insularis(島の,島に生える), laevissimus(laevis
[ 平滑な, 無毛の ] 最上級), palmiformis(掌状の)
注 1 U. Faurie が収集・作成した植物標本の多くはパリ自然史博物館に送られたが, 手元にあった控え標本はフォ
ーリ没後に岡崎忠雄が遺族から買収し京都大学に寄贈され, 現在でも京都大学に保存されている.
― 68 ―
東京大学
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
にも早田教授や中井教授に同定のため送られた“フォーリ標本”が若干ある.
注 2 「フォーリ標本によるレヴェイュの論文も粗雑であり, 内容がよく理解できぬものもあり, 日本の研究者を
困らせた.」(『シーボルトの二十一世紀』(2003) 東京大学コレクションⅹⅵ, 東京大学総合研究博物館,
大場秀章「日本植物の研究を競った欧米諸国」p.127)とレヴェイュの論文は不評である.
注 3 大井次三郎著・北川政夫改訂『新日本植物誌
顕花篇』(New Flora of Japan, 1953 ) 至文堂,
「日本植物調
p.19
査研究史」
11.オランダ人:ミクェル
F. A. W. Miquel
(1811-1871 )
現在はオランダに属するフローニンゲンの大学で医学を学び, ロッテルダム大学で医学を教え,
ユトレヒト大学で植物学教授(1859-1871)となり, 1862 年ブルーメ(C. L. von Blume) の後継者として,
オランダ,ライデンの王立植物標本館の館長となった. ミクェルは, ツッカリーニが シーボルトとの
共著:Flora Japonica の執筆中に逝去したので, その第 2 巻を分担した. オランダ領インドを中心と
したマレーシアの植物研究をして『蘭領インド植物誌』(1855-1860) を刊行し, アジアの熱帯植物につ
いて深い造詣を有していたので, 彼の日本植物研究では西南日本産の暖帯・亜熱帯植物の研究に彼の資
質が発揮されたといえる.
彼はツュンベルク(注1) やシーボルトとその継承者達による当時の世界
では最大の日本植物の標本コレクションに大きな関心を寄せ, その重要性に鑑み一般の標本から分けて
別室に保管した. これが Herbarium Japonicum Generale と呼ばれる植物標本のコレクションであ
る(注2).
ミクェルは来日していないが, ツュンベルク・シーボルトやビュルガー,ピエロ(J. Pierot, 18121841)・テクストール(C. I. Textor, 1816-?) 等の東インド会社の採集品及び伊藤圭介・水谷豊文(助六)・
二宮敬作ら日本人植物学者による標本・資料により日本の植物, 主に関東以西の植物相と熱帯の植物
との比較検討を行い, 分類学的研究を推進して,『日本植物誌試論』(Prolusio Florae Japonicae,
1865-67) の中で日本植物 562 点を記載している.
Herbarium Japonicum Generale には, ペリー艦隊の Morrow, Williams,
Wright, Small に
よって採集された標本とイギリス, キュー植物園の植物学者オルダム(注3)によって採集された 1200
点からなる日本植物の標本と更にマキシモヴィッチが日本に滞在した 3 年間に収集した標本も加えられ
た. ミクェルはこれら日本植物のすべての標本 2000 種以上を調べて同定し『ライデン植物標本館標本
目録1, 日本植物』(Catalogus Musei Botanici Lugduno-Batavi 1, Flora Japonica, 1870 ) として著し,
多数の日本植物を紹介した.
ミクェルが命名した「属名」…ウコギ属(Acanthopanax )・ セントウソウ属(Chamaele )・ジャ
コウソウ属(Chelonopsis )
・ クサヤツデ属(Diaspananthus )
・ ハリギリ属(Kalopanax )
・ シモ
バシラ属(Keiskea )・ ハリブキ属(Oplopanax )・ イナモリソウ属(Pseudopyxis )・ネコノチチ
属(Rhamnella )
(科和名)
(種和名)
ウコギ
ヤマウコギ
シソ
タニジャコウソウ
キク
クサヤツデ
(学
名)
Acanthopanax spinosus (L. f.) Miquel
Chelonopsis longipes Makino
Diaspananthus palmatus Miq.
クサヤツデ属 ( Diaspananthus ) は日本固有属で 1 属 1 種
ウコギ
ハリギリ
ウコギ
ハリブキ
アカネ
イナモリソウ
Kalopanax pictus (Thunb.) Nakai
Oplopanax japonicus (Nakai) Nakai
Pseudopyxis depressa Miq.
― 69 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
ナデシコ
フシグロセンノウ
ゴマノハグサ
ムラサキサギゴケ
ツツジ
ナツハゼ
メギ
ヘビノボラズ
ツリフネソウ
ツリフネソウ
バラ
バクチノキ
サクラソウ
オオサクラソウ
サクラソウ
モロコシソウ
ツツジ
ウンゼンツツジ
Lychnis miqueliana Rohrb.
Mazus miquelii Makino
Vaccinium oldhamii Miq.
Berberis sieboldii Miq.
Impatiens textori Miq.
Prunus(Laurocerasus) zippeliana Miq.
Primula jesoana Miq.
Lysimachia sikokiana Miq.
Rhododendron serpyllifolium (A. Gray) Miq.
種形容語:spinosus(針・刺のある[多い]), longipes(長い柄[脚]をもつ), palmatus(掌状の), pictus(彩色したよ
うな), depressus(扁平な,押しつぶされた), Oldham(イギリス人園芸家[1838-1864], 1861 年 Kew 植物園から派遣さ
れて来日し日本産植物を多数英国へ送り出した),
Textor(ドイツ人化学者・植物研究家[1816-?], 出島の商館員として
1843 年来日しシーボルトの日本研究に協力した),
Zippel(オランダ人植物採集家), jesoanus(蝦夷地[北海道]の),
serpyllifolius(イブキジャコウソウのような葉の)
注 1 ツュンベルクの標本は「重複標本」で, 完全なセットはスウェーデンのウプサラ大学に保管されている.
注 2 「シーボルトと後継者達の植物コレクションを 20 世紀そしておそらく 21 世紀においても研究上重要な意
義をもつ植物資源たらしめたのは, コレクションを形成したシーボルトらの力だけではなく, 彼らのコレク
ションを第三者が利用可能な状態に分類整理した, 現在のオランダ国立植物標本館の前身である王立植物標
本館 (Rijksherbarium) の二代目館長になったミクェルである.
ミクェルの努力なしには,今日のシーボル
ト・コレクションのもつ学術的価値は半減していたであろう.」 大場秀章・秋山
忍「シーボルト植物コレク
ションを集大成したミクェル」大場秀章編『東京大学コレクションⅩⅥ シーボルトの 21 世紀』(2003)
大学総合研究博物館.
東京
pp.91-92
注 3 Richard Oldham ( 1838-1864 ) オルダム.
イギリスの王立キュー植物園から派遣されて 1861 年来日し,
長崎周辺と朝鮮半島・台湾で採集活動をして, 多数の日本産植物を英国に送り出したプラントハンター.
12.アメリカ人:グレー
A. Gray
( 1810 -1888 )
フェアフィールド医科大学に学び, 1831 年医学博士となった.
1842 年ハーヴァード大学博物学
教授に就任し, 31 年間同職を務めた. グレーは, ダーウィン C. R. Darwin ( 1809-1882 )の『種の起源』
(The Origin of Species, 1859. 進化論)(注1)を米国でいち早く認め, 賛意を表したことでも有名で,
ダーウィニズムとキリスト教の教義とを和解させるエッセイを多数著した( Darwinia, 1876 ).
米国政府によって出版された『ペリー日本遠征記』(Narrative of the Expedition of an American
Squadron to the China Seas and Japan, 1856) の中の報告書で, グレーはペリー艦隊乗船者( James
Morrow, Samuel Wells Williams, Charles Wright, J. K. Small (注2) ) が下田・函館等で採集
した植物標本の分類研究の結果として多数の新植物を記載・報告し, 後に米国最大級の植物標本館
( Gray Herbarium of Harvard University ) をつくった.
北太平洋遠征隊(第 1 次)の採集した植物標本は種子植物 301 種, シダ植物 21 種, 蘚苔類9種, 海
藻類 22 種の合計 353 種にのぼり, その中で新種は種子植物 24 種, シダ植物 2 種, 蘚類 1 種, 海藻 7 種
の 34 種である.
第 2 次遠征隊の採集標本は第 1 次のそれよりも遥かに大量で, 採集地もより多くの地域に及んでい
た(注3). これら日本植物の標本の同定と詳細な研究を通じて, グレーは日本の植物がアメリカ東部
のニュー・イングランド地方の植物とあまりによく似ていること, つまり北米の温帯と日本を中心とす
るアジア極東地方温帯地域の植物相の共通性・隔離分布( disjunct distribution) について世界で初めて
― 70 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
の植物分類地理学的な注目すべき論文を発表した(注4).
これら 12,000km 以上も遠く隔たった二地域の植物相の類似をグレーは次のように考えた. 温暖
であった第三紀中新世(1,200 - 2,800 万年前)には現在のベーリング海峡は繋がっていて, 北米大陸と
ユーラシア大陸の北方地域は温暖であって北極地方を植物が広く覆っていたが, 第四紀になり, 寒冷化
した気候によって氷河などのため多くの植物が死滅した. しかし, あるものは太平洋を挟んで両地域
を南下して生き延びたのである(注5).
この論文の中に, 13 頁にわたる植物の対照表が発表され, 40 属, 580 種余りの日本の植物につい
て北米東岸, 同西岸, アジア中部の対応種との比較・検討を試みている.
『植物学入門』(1836), 彼の上司 J. Torrey (1796-1873) との共著『北アメリカ植物誌』全 2 巻
( A Flora of North-America, 1838-1843) や『アメリカ北部の植物提要』( A Manual of the Botany of the
Northern United States , 1848, M. L. Fernald. 改訂・増補の第 8 版は 1950 年. ニュー・イングラン
ド地方からウィスコンシン, オハイオ, ペンシルヴェニア州の植物誌),『学校並びに野外の植物学』
(1901) 等を著した.
グレーが命名した「属名」…ショウジョウバカマ属(Heloniopsis )
・ ヤグルマソウ属(Rodgersia )
(科和名)
(種和名)
ユリ
ショウジョウバカマ
ユキノシタ
バラ
ヤグルマソウ
ウワミズザクラ
ツツジ
ハナヒリノキ
メギ
サンカヨウ
ツツジ
オオバスノキ
ラン
カキラン
ツツジ
ギーマ
スミレ
タチツボスミレ
ドクウツギ
ドクウツギ
サクラソウ
クリンソウ
ナス
アツバクコ
ユリ
ツクバネソウ
スミレ
ツボスミレ
(学
名)
Heloniopsis orientalis (Thunb.) C. Tanaka
Rodgersia podophylla A. Gray
Prunus(Padus) grayana Maxim.
属名は女性
Leucothoe grayana Maxim.
Diphylleia grayi Fr. Schm.
Vaccinium smallii A. Gray
Epipactis thunbergii A. Gray
Vaccinium wrightii A. Gray
Viola grypoceras A. Gray
Coriaria japonica A. Gray
日本固有種
Primula japonica A. Gray
Lycium sandwicense A. Gray
Paris tetraphylla A. Gray
Viola verecunda A. Gray
種形容語:podophyllus(有柄の葉の), grypoceras(曲がった角), sandwicensis(ハワイ[ Sandwich ]諸島の), tetraphyllus
(四枚の葉をもつ), verecundus(適度な,控えめな,内気な)
注
1 「種子植物だけでも 30 万種とか 50 万種が現存するというほど, 地球上には多様な生物が見られる.
生物の多様性が, 生命の歴史的過程の反映であることを最初に論証したのがダーウィンである.
この
真の自然
史学者だったダーウィンは, 正しい自然観察を通じて, 多様な生物種はそれぞれの母型から種分化を繰り返
すことによって多様化したものであることを認識し, それをどうしたら立証することができるかを考察し
た.」週間朝日百科『植物の世界』(1997)
28 号
朝日新聞社.
岩槻邦男「『キュー植物園目録』の 100 年」
p. 126
注
2 J. K. Small は C. Wright の助手を務めた海軍軍人とはいえ, 優れた植物採集家であって日本北辺
(北海
道) の植物の良い標本を残し, 後に植物研究家になった.
注
3 第 1 次隊の上陸・植物採集地は浦賀・横浜・下田・函館の 4 地点であったが, 第 2 次隊の採集行はより大掛かり
に行われ, 香港・上海・台湾・沖縄・小笠原・奄美大島・種子島・下田・函館・沿海州・アムール河河口・カムチ
― 71 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
ャツカ半島等々に及ぶものであった.
注
4 「ペリー(第 1 次隊)の報告書では簡単な報告しか書けなかったグレー教授は, 1859 年発行のアメリカ科学芸
術アカデミーの紀要 6 巻に 75 頁にわたる長文の論文を発表した.
これは『チャールズ・ライト(Charles
Wright )によって日本で採集された顕花植物の新種記載 [附] 北アメリカ及びその他の北半球温帯地域と
日本の植物相の関連についての考察』という北米東部と日本の植物相の類似を初めて具体的に論じた画期的
な論文であった.
グレー教授は, 奇しくも同年に出版されたダーウィンの『種の起源』をいち早く認め,
賛意を表した.」大場秀章編『日本植物研究の歴史―小石川植物園 300 年の歩み』(1996)
p.76
大場秀章「黎明期の日本植物研究」
注
東京大学出版会,
5 「東亜と北米との間に隔離分布をする一群の植物は, 現在「古第三紀要素の植物」と呼ばれ, 隔離分布の地理
的な型により大体次の 4 つの型が認められている.
(1) 東亜―北米東部型, (2) 東亜―北米西部型, (3) 東
亜―北米東部及び西部型, (4) 東亜―北米広分布型」 小山鐵夫『黒船が持ち帰った植物たち』(1996)
アポック社出版局,
13.サージェント
p.21
C. S. Sargent
(1841-1927)
樹木学の世界的大家であった. ハーヴァード大学卒業後, 同大学付属植物園園長兼教授に, 更に同
大学のアーノルド樹木園 (Arnold Arboretum) の園長も兼任した.
1892(明治 25)年来日し, 北海道・
鳥海山を経て八甲田山(オオシラビソの原生林)
・日光・軽井沢・箱根・木曾地方で樹木調査をして, 標
本や種子を採集した. 彼の研究はその対象を中国の植物相にまで拡大され, 1980 年代に始まった“ハー
ヴァード大学を中心とする中国の植物相の研究”へと繋がるものである.
著『北米樹木誌』(Sylva of North America, 14 vols., 1882-1891)の他, 日本の温帯林を広く世界に
紹介した『日本森林植物誌』(Forest Flora of Japan, 1894) がある.
(科和名)
(種和名)
バラ
エゾヤマザクラ
モクレン
オガタマノキ
ニレ
ハルニレ
(学
名)
Prunus(Cerasus) sargentii Rehder
Michelia compressa (Maxim.) Sargent
Ulmus japonica (Rehd.) Sarg.
種形容語:compressus(扁平の, 平たくつぶされた)
14.イギリス人:ブラウン
R. Brown
( 1773-1858 )
エジンバラ大学で医学と自然科学を学んだスコットランド生まれの植物学者. 軍医だったブラウ
ンは 1800 年にイギリスの博物学者バンクス(注1)(Sir J. Banks, 1743-1820) に勧められ, オーストラ
リア探検隊(1801-1805)に加わり,オーストラリアの植物約 4,000 種の標本を持ち帰り研究した. ブラ
ウンは, 顕微鏡のテクニックに優れ, 花粉機能のメカニズム(花粉が花粉管を通って未発達の種子の外
皮に達し, 種子又は胚芽を形成する変化を与えること)を確かめ, 1827 年裸子植物と被子植物の相違点
を発見して裸子植物の系統上の位置を確立し, 1831 年には植物細胞の顕微鏡観察で細胞核(胚珠の核)
を発見した. 彼はラフレシア(注2)をはじめ多くの種・属を記載し,更にブラウン運動(注3)(Brownian
movement)とよばれる微粒子の運動も発見した.
バンクス邸宅に収蔵されていた当時のイギリスで最も充実した植物・動物などのコレクションの管
理を前任者ソランダーD. C. Solander (1736-1782)等に次いで任せられた. 世界の広い範囲の植物を対
象とした植物分類学のヴェテランであった.
ブラウンは, バンクスの遺言によりその蔵書と標本のすべてを贈られるが, 1827 年それらを大英
博物館に寄付して, 自分も大英博物館植物部部長に就いた.
― 72 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
著『ニューオランダ植物誌序説』(Prodromus Florae Novae Hollandiae, 1810)
ブラウンは来日していないが, 日本に自生する植物のかなり多くの学名(属名や種形容語)に著者
としてその名を残しているので, 以下にその一部を紹介する:
「属名」…ツクバネウツギ属(Abelia )・ヤマガラシ属(Barbarea )・エビネ属(Calanthe )・ヒル
ガオ属(Calystegia )・シナクスモドキ属(Cryptocarya )・リシリシノブ属(Cryptogramma )・
カリマタガヤ属(Dimeria )・ハリイ属(Eleocharis )・トラキチラン属(Epipogium )・イモネヤガ
ラ属(Eulophia )・オニノヤガラ属(Gastrodia )・ドジョウツナギ属(Glyceria )・シュスラン属
・ムカゴソウ属
(Goodyera )・テガタチドリ属(Gymnadenia )・ウシノシッペイ属(Hemarthria )
(Herminium )
・コウボウ属(Hierochloe )
・サクララン属(Hoya )
・オギノツメ属(Hygrophila )・
ウスユキソウ属(Leontopodium )
・シソクサ属(Limnophila )
・ヒンジガヤツリ属(Lipocarpha )・
フタバラン属(Listera )・ビロウ属(Livistona )・タケニグサ属(Macleaya )・ハクセンナズナ属
(Macropodium )・キジョラン属(Marsdenia )・ガガイモ属(Metaplexis )・スズメノハコベ属
(Microcarpaea )・ニラバラン属(Microtis )・オランダガラシ属(Nasturtium )・イソフサギ属
(Philoxerus )・カヤラン属(Sarcochilus )・ネズミノオ属(Sporobolus )・オオカモメヅル属
(Tylophora )・イワデンダ(Woodsia )等
(科和名)
(種和名)
アブラナ
ヤマガラシ
ラン
エビネ
ヒルガオ
ヒルガオ
カヤツリグサ
ハリイ
ラン
テガタチドリ
ガガイモ
サクララン
ラン
フタバラン
ヤシ
ビロウ
ケシ
タケニグサ
ガガイモ
ソメモノカズラ
ガガイモ
キジョラン
アブラナ
オランダガラシ
ヒルガオ
マメダオシ
タヌキモ
タデ
タヌキモ
ヤンバルミチヤナギ
マチン
アイナエ
(学
名)
Barbarea orthoceras Ledeb.
Calanthe discolor Lindl.
Calystegia japonica Choisy
Eleocharis congesta D. Don
Gymnadenia conopsea (L.) R. Brown
Hoya carnosa (L. f.) R. Br.
Listera cordata (L.) R. Br. var. japonica H. Hara
Livistona subglobosa (Hassk.) H. E. Mart.
Macleaya cordata (Willd.) R. Br.
Marsdenia tinctoria R. Br.
var. tomentosa Masamune
Marsdenia tomentosa Morr. et Decne.
Nasturtium officinale R. Br.
Cuscuta australis R. Br.
Utricularia australis R. Br.
Polygonum plebeium R. Br.
Mitrasacme pygmaea R. Br.
種形容語:orthoceras(直立する角のある), discolor(二色の,異なる色の), congestus(集積した,積み重なった), conopseus
(円錐形の), carnosus(肉質の, 多肉質の), subglobosus(やや球形の), tinctorius(染色用の, 染料の), tomentosus
(細綿毛[ ビロード毛 ]が密生した), officinalis(薬用の, 薬効のある), australis(南の, 南方系の), plebeius(普通
の, 並の), pygmaeus(矮小な,低小な)
注
1 英国学士院の最年少会員であったが, 亡くなるまでの 41 年間その総裁を務めるなど, 若くしてイギリスに
おける科学界の大御所であった.
キャプテン・クック(J. Cook, 1728-1779 ) の第一回航海のエンデヴァー号
にバンクスはリンネの弟子(使徒)ソランダー(D. C. Solander, 1736-1782 ) と共に乗り込み, ニュー
ジーランド等の植物標本を多数持ち帰り, この航海での収集品を収めたバンクスの自宅は植物学研究の一大
拠点となった.
バンクスの死後, ブラウンの尽力でこのコレクション(収集品と蔵書)は散逸を免れ,
― 73 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
1827 年大英博物館に全て寄贈された.
ソランダーはウプサラ大学で博物学に魅せられリンネの研究の補助をした.
1760 年ロンドンに出て, 大英
博物館(1753 年創立, 1759 年一般公開) に勤め, 博物標本の整理にあたり, 更に, バンクスの秘書となって
バンクスの植物標本をリンネの体系に従って整理し, また, キュー植物園(1759 年創立) に持ち込まれる植
物の鑑定にあたるなどして, イギリスに“リンネ植物学”を広める上で大きく貢献した.
注
2 ラフレシア科
ラフレシア Rafflesia arnoldii
て, 光合成をしない植物.
R. Br.
無茎, 無葉でブドウ科植物の根に寄生し
赤い花は直径約 80cm から 90cm に達し, 重さ 7kg くらいになり, 腐敗臭を
放ってハエを誘引して受粉する.
属名は発見者である英国の Sir T. S.
マライ半島, インドネシア産.
Raffles(1781-1826, 英国の植民地行政官で Java 副総督を務め, Singapore の創設者)に因む.
ラフレシアは, 無茎,無葉のため形態からの分類が難しく, 他の植物との類縁関係がよくわからなかった.
そのため, 発見から約 190 年も宙ぶらりんの状態で, これまでは独立したラフレシア科として扱われてきた
が, 2007/01/12 付朝日新聞(朝刊)は, 米ハーヴァード大などのグループが「ラフレシアは DNA の解析に
よりポインセチアなど花の小さな植物がほとんどを占めるトウダイグサ科に属すると判定した.
ラフレシ
アの花がなぜこれほど巨大化したのか, 進化の謎はかえって深まった」と 01/11 付米科学誌サイエンス電子
版で報告すると報じている.
注
3 気体, 液体中に浮遊する微小粒子が行う不規則なジグザグ運動.
鏡で観察中に発見した.
1827 年, R. Brown が水中の花粉を顕微
熱運動をしている流体の分子が絶えず粒子に衝突し粒子が大きいうちは衝突が平
均化されるため動かないが, 微小な粒子では分子の衝突が少ないため平均化されず不規則な運動を生ずる.
15.フッカー
W. J. Hooker
( 1785-1865 )
1820 年グラスゴー大学の植物学教授となり, 主な関心はシダ・コケ・カビ類で T. テーラー博士
との共著『イギリスの蘚類』(1818) がある.
1821 年『スコットランド植物誌』を, 更に『イギリス植
物の概要』(A Synopsis of British Flora, 1829- ) を公刊した植物学界の重鎮の一人であった.
1841 年
王立キュー植物園初代園長に就任し, 死去するまで同園長を務めた. C. P. Hodgson の著『ホジソン長
崎箱館滞在記』(1861) 巻末に載せられた 24 頁に亘る日本産植物目録(Catalogue of Japan Plants)
は William Hooker によって分類整理されたものである.
『蘭科百選』
(A century of orchidaceous plants, London, 1849)はランばかり 100 枚を収録した
手彩色石版画集である. カーチス William Curtis の『植物学雑誌』( ‘Botanical Garden’ ) (注1)中の
図版から選択したもので, フィッチ画. 本文はライオンズとフッカーが担当. 続編 A second century
of orchidaceous plants (1867) がベイトマンによって著されている.
フッカー
J. D. Hooker
( 1817-1911 )
(上記 W. J. Hooker の次男)
グラスゴー大学で医学を学び, 1865 年父 W. J. Hooker の後を継いで王立キュー植物園園長に就任
した植物分類学者・探検家で, 22 歳の時, 海軍の外科補としてジェームズ・ロスの南極探検船に参加した
(1839-1843).
南半球の植物調査をした J. D. Hooker は,『南極植物誌』(Flora Antarctica, 1844-1847),『ニュー
ジーランド植物誌』(Flora Novae Zelandiae, 1851-1853),『タスマニア植物誌』(Flora Tasmanica, 1860)
等を刊行した後, 1847 年当時ヨーロッパの誰もが訪れたことのない東ヒマラヤの中心にあった未知の領
域シッキム・ヒマラヤへと向かい, インドのダージリンを基地にしてネパールとシッキムの植物採集・
調査を始めた.
フッカーはこの探検旅行(1848-1850)で採集した ‘Sikkim –Rhododendron’ をキュー植物園に持ち
込み栽培をした. シャクナゲの仲間だけでも 20 種以上の新種を記載し, サクラソウについても同様で
― 74 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
あった. 彼が精力的に記載したおびただしい数の新植物の中には園芸植物として驚嘆すべき魅力に溢
れた植物も多々あり, ヒマラヤはたちまちヨーロッパの園芸植物界にセンセーションを起こした. ヒ
マラヤの高山植物の多くがヨーロッパの戸外でも育つ点が, 栽培には温室を必要とする熱帯の植物とは
大きく違っているからである.
1855 年に著した『インド植物誌』(Flora Indica)で, フッカーはシッキムと日本の植物相の注目す
べき類似性を多くの事例をあげて指摘したが, 当時はほとんど顧みられなかった. その後,レバノン山
脈(1860) , アトラス山脈(モロッコ, 1871) と北米ロッキー山脈(1877)でも採集・調査をした. 『シッキ
ム・ヒマラヤのシャクナゲ』を皮切りに, ヒマラヤの植物研究の成果を矢継ぎ早に出版し, その集大成
がインドの植物相を詳細に調査した『英領インド植物誌』(Flora of British India, 7 巻, 1872-1897)で,
総頁数 5,600 を超える大作である.
現在に於いても植物分類の一つの指標とされている大著, ベンサム George Bentham(注2)
との共著『植物の種類(属)』(Genera Plantarum, 1862-1883) を著した. それは 19 世紀植物学界の
代表書の一つで, 199 科 7,569 属と 97,000 種類の種について記述したものである. 『キュー植物目録』
全 4 巻 (Index Kewensis, 1893-1895.
補遺編あり) のほか, 『植物図誌』
(‘Hooker’s Icones
Plantarum’)の責任編集にもあたった.
彼は, 進化論を唱えたダーウィン(注3)の友人の 1 人としても有名であるが, 1848 年から 3 年にわ
たって, 当時の欧米人には未知の地域とも言えるシッキム・ヒマラヤを自ら踏査して, ヒマラヤの植物
研究の基礎を築いたのである. 『ヒマラヤ紀行』(Himalayan journals, 2 vols., John Murray, 1854 )
にヒマラヤ植物相の多様さとその実体を書き記した.
父の W. J. フッカー編『シッキム・ヒマラヤのシャクナゲ』 ( The Rhododendrons of
Sikkim-Himalaya, London, 1849-1851 ) には, 30 枚の手彩色石版画が収録された. これは J. D. フッ
カーが東ヒマラヤ探検調査の際, 野外でスケッチした原画をもとに, フィッチが石版画にしたものであ
る.
・タニギキョウ属(Peracarpa )・
フッカー父子がが命名した「属名」…ノブキ属(Adenocaulon )
スガモ属(Phyllospadix )・クロヅル属(Tripterygium )等
(科和名)
(種和名)
ニシキギ
コバノクロヅル
オシダ
ホソバヤブソテツ
カヤツリグサ
ネムロスゲ
キク
ヤマハハコ
ウェルウィッチア
ウェルウィッチア
(学
名)
Tripterygium doianum Ohwi
日本固有種
Cyrtomium hookerianum (Pr.) C. Chr.
Carex gmelinii Hook. et Arn.
Anaphalis margaritacea (L.) Benth. et Hook. f.
Welwitschia bainesii Hook. fil.(注4)
種形容語:Doianus(土井美夫[1901-1986], 九州の旧制伊集院中学校他教諭), margaritaceus(真珠のような), Baines
(南西アフリカの植物学者)
注
1 これはリンネ派の植物研究者 W. Curtis (1746-1799, The Flora Londinensis ) が, 1787 年に創刊した月刊
誌で, イギリスで刊行された植物学雑誌の最も早いもので, 200 年以上も歴史を持ち現在も続く定評ある雑
誌である.
注
未知の珍しい植物を簡潔な記述と美しい挿絵入りで掲載するのが特徴である.
2 G. Bentham (1800 -1884 ) 主な著書に,『ピレネー山脈の植物誌』, Handbook of the British Flora
(1858), 『香港植物誌』Flora Hongkongensis (1861), 『オーストラリア植物誌』Flora Australiensis 全 7
巻 (1863-1878) 等がある.
ベンサムが命名した「属名」
:ヒキヨモギ属( Siphonostegia )
ゴマノハグサ科
ヒキヨモギ
Siphonostegia chinensis Bentham
― 75 ―
第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
注
アカネ科
シマザクラ
Hedyotis grayi Bentham
イラクサ科
キミズ
Pellionia scabra Bentham
3 ダーウィンは植物についても重要な研究をいくつも発表していたが, 学名が混乱していることに困惑して,
1881 年キュー植物園園長である親友の J. D. フッカーに, 地球上の植物を総覧できるような, できるだけ
完璧な学名目録を作るよう進言した.
1882 年ダーウィンから必要な経費の支援を受け, フッカー(監修)の指揮の下でジャクソン B. D. Jackson
(1846-1927)(編集) の協力を得てキュー植物園の研究者により目録作りが始まった.
19 世紀の進化論者
ダーウィンが 18 世紀の神の力を称える創造論者リンネに由来する学名の目録作りに力を添えたのである.
それが『キュー植物目録』全 4 巻 (Index Kewensis, 1893-1895, 2,567 頁, 約 38 万 5,000 件余) である.
ここには, リンネの『植物の種』が出版された 1753 年から 1885 年までに出版物に現れた種子植物の学名
の全てがアルファベット順に並べられ, その出典とその植物の原産地が記されている.
更に, それ以降に
登場した学名を掲載するために, その続編(補遺)の出版(原則 5 年ごと)が現在まで続いている.
『キュー植物目録』は, すでに補遺だけでも 4,978 頁に達し, 本冊と合わせると 7,545 頁に 100 万件を超
える情報が記載されていることになる(『キュー植物目録』CD-ROM 版が刊行されている).
この『キュー植物目録』の存在が, 実際上, キュー植物園を植物の新種の登録所にしてしまい, 植物の新種
名の登録は現在ではキュー植物園の最も大切な事業の一つになっている.
資料標本を収納するハーバリウ
ムと並んで, 文献情報の世界一完璧なコレクションをつくるための事業ともなっている.
物の世界』(1997) 朝日新聞社
注
28 号.
週間朝日百科『植
岩槻邦男「『キュー植物目録』の 100 年」pp. 126-128 参照.
4 園芸和名では“サバクオモト or 奇想天外”といい, 南部アフリカのナミブ砂漠にのみ自生する雌雄異株の
裸子植物であるが, 虫媒花で被子植物の前駆者と考えられ, 炭素 14 の測定では約 1500 年生株が知られ,
2000 年は生き続けると推定されている1科1属1種の超珍稀植物. 現在の学名は Welwitschia mirabilis
Hook. f. が使われ, 上記の W. bainesii は異名とされている.
属名は, この植物を最初にイギリスに紹介
したオーストリアのナチュラリスト F. M. J. Welwitsch (1806-1872) に因んで J. D. Hooker. が命名した.
16.リンドレイ
J. Lindley
( 1799-1865 )
1829 年から 1860 年までロンドン大学の植物学教授・王立園芸協会理事長を務め, ランの分類体系
をつくった植物学者で, 彼によって同定・命名された日本産植物が沢山ある. 植物知識の普及や大衆化
にも強い関心をもち, 園芸雑誌の出版に熱心で, 特に 1841 年, パクストン J. Paxton と共に創刊した
「ガードナーズ・クロニクル」( ‘ The Gardener’s Chronicle ’, 園芸家の雑誌) は, 現在も続く長命の雑
誌で園芸知識の大衆化に貢献した.
著『植物自然体系入門』(An introduction to the natural system
of botany, 1830),『植物の世界』(Vegetable Kingdom, 1848)
リンドレイが命名した「「属名」…マタタビ属(Actinidia )・ボケ属(Chaenomeles )・サイハイ
ラン属(Cremastra )・オサラン属(Eria )・ビワ属(Eriobotrya )・ツワブキ属(Farfugium )・
ヨウラクラン属(Oberonia )・コケイラン属(Oreorchis )・カナメモチ属(Photinia )・シャリンバ
イ属(Rhaphiolepis )・ムカデラン属(Sarcanthus )・ネッタイラン属(Tropidia )・キヌラン属
(Zeuxine )等
(科和名)
(種和名)
バラ
クサボケ
ラン
サイハイラン
ラン
オサラン
ラン
コケイラン
バラ
オオカナメモチ
(学
名)
Chaenomeles japonica (Thunb.) Lindl. ex Spach
Cremastra appendiculata (D. Don) Makino
Eria reptans (Franch. et Sav.) Makino
Oreorchis patens (Lindl.) Lindl.
Photinia serrulata Lindl.
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第4章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(1)
ラン
ムカデラン
バラ
シャリンバイ
キク
サワヒヨドリ
スイカズラ
ラン
ソクズ
サルメンエビネ
Sarcanthus scolopendrifolius Makino
Rhaphiolepis umbellata (Thunb.) Makino
Eupatorium lindleyanum DC.
Sambucus chinensis Lindl.
Calanthe tricarinata Lindl.
種形容語:appendiculatus(付属物のある), reptans(匍匐する), patens(拡がった, 開出した), serrulatus(細鋸
歯のある), scolopendrifolius(ムカデ状の葉の), umbellatus(散形花序の), tricarinatus(三背稜ある)
17.フォーチュン
R. Fortune
( 1813-1880 )
園芸学者・植物採集家. 中国を 5 回(1843 -1861) も訪れ, 内陸部にも入り込んだ中国産植物採集
の時代を画した人物である. 観賞用に価値の高い植物である園芸植物を入手することに努めた. ま
た, チャノキの栽培・育種にも努め, 中国からインドへの移植を図り, インドの紅茶生産のもとをつ
くった.
フォーチュンは 1860 (万延元) ・1861(文久元)年に来日し, 丁度再来日していたシーボルトを鳴
滝塾に訪ねた. 訪日の目的の一つは, 当時英国にはアオキは雌株しかなかったのでアオキの雄株を入
手し, 本国へ送り赤い実を付けさせることであった. 各所で雄株や斑入りのアオキを収集し, ロンドン
へ送った. 日本の果物や野菜の種類が多いことにも気づき, ギンナン・スイカ・シイの実・ユリ根・ハ
ス・カブ・ヤマノイモ・ゴボウ等の名を挙げている.
彼は, 長崎から太平洋経由で横浜に入り, 近郊の豊願寺(横浜市営地下鉄三ツ沢上町駅直ぐ南)
でコウヤマキを, 江戸高輪の東禅寺(JR 品川駅近くで, 駐英公使館として使われた)でシイノキの巨樹
に感心し, 団子坂(東京都文京区)の植木屋や染井・王子の植木村も訪ねて買い付けもして, 多量の園
芸種のキクを英国へ送った. 浅草の浅草寺では, 境内の菊展に並ぶ精巧華麗なキクに魅了された.
フォーチュンは針葉樹の観賞用品種・観葉植物(豊富な斑入り品種等)や日本の進んだ園芸技術・文化
に強い関心を寄せていた. しかし, フォーチュンの植物採集歴は中国が圧倒的に長いので, 彼の名が学
名に残るのは中国で採集した植物に多い.
著『中国での三年間の放浪』( Three Years’ Wandering in the Northern Provinces of China,
London. 1847),『中国の茶の産地への旅』( A Journey to the Tea Countries of China, London. 1852),
『中国人の中での居住』(1857),『江戸と北京』(Yedo and Peking : A Narrative of a Journey to the
Capitals of Japan and China, London. 1863)
(科和名)
(種和名)
オシダ
ヤブソテツ
サクラソウ
ヌマトラノオ
ヤシ
シュロ
(学
名)
Cyrtomium fortunei J. Sm.
Lysimachia fortunei Maxim.
Trachycarpus fortunei (Hook.) H. Wendl.
― 77 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
第5章
学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
前章に引続き日本の植物の「学名」にその名を残している研究者・プラントハンター達の一部を簡
単に紹介しよう.
1. P. Miller
2. J. Burmann
3. G. W. Steller
4. J. G .Gmelin
5. Sir John Hill
6. M. Adanson 7. W. Aiton
8. P. S. Pallas 9. A. Michaux 10. W. Roxburgh
11. G. H. von Langsdorff 12. A. von Chamisso 13. C. F. von Ledebour
14. F. E. L. von Fischer 15. A. von Bunge 16. N. S. Turczaninov
17. E. R. von Trautvetter 18. J. Decaisne 19. E. P. Boissier 20. C. Wright
21. S. W. Williams 22. J. Morrow 23. F. J. Ruprecht 24. E. A. von Regel
25. E. A. Carrière 26. M. Albrecht 27. J. E. Planchon 28. R. Maack
29. G. Radde
30. M. Fr. Schmidt 31. P. von Glehn 32. H. Weyrich 33. P. Jolkin ( Yolkin )
34. C. Wilford 35. H. Hance 36. J. G. Veitch 37. M. E. Wichura 38. Kramer
39. C. P. Hodgeson 40. Vidal 41. M. A. S. von Brandt 42. G. E. Simon
43. F. V. Dickins 44. C. Maries 45. J. J. Rein 46. V. L. Komarov 47. E. H. Wilson
1. P. Miller
(1692-1771 )
ロンドンのチェルシー薬園の園芸主任を務め, 世界で最初の『園芸家辞典』(Gardener’s and
Florist’s Dictionary, 1724)を刊行した. リンネはこの書を「園芸の辞書であるだけでなく, 植物の辞
書である」と賞賛した.
ミラーが命名した「属名」…モミ属(Abies )
・イチビ属(Abutilon )・アカシア属(Acacia )・
ハンノキ属(Alnus )
・ミスミソウ属(Hepatica )
・カラマツ属(Larix )
・イソマツ属(Limonium )・
ウンラン属(Linaria )
・トマト属(Lycopersicon )
・リンゴ属(Malus )
・シナガワハギ属(Melilotus )
・
ウチワサボテン属(Opuntia )・ハマナツメ属(Paliurus )・イヌタデ属(Persicaria )・オキナグサ
属(Pulsatilla )・ノヂシャ属(Valerianella )・ナツメ属(Ziziphus, 異綴:Zizyphus)等
(科和名)
(種和名)
ゴマノハグサ
ホソバウンラン
クロウメモドキ
ナツメ
(学
名)
Linaria vulgaris Miller
Ziziphus jujuba Mill.
種形容語 :vulgaris(普通の,広く分布する), jujuba(ナツメのアラビア名)
2. J. Burmann
(1706-1779 )
リンネの友人で, オランダのアムステルダム大学・同植物園の植物学者. 著『喜望峰植物誌』(1767)
息子 N. J. Burmann(1734-1793)は Flora Indica (1768)を著した. ツュンベルクは, 1770 年この父子
― 78 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
に知遇を得て, 更に三人のオランダの植物愛好家(p56, 注 4)から南アフリカの喜望峰と日本に行く機
会を提供された. 後日, ツュンベルクは, 来日の機会を与えてくれたブルマン父子と上記三名に自著
『日本植物誌』( Flora Iaponica )を献呈した.
(科和名)
(種和名)
ヒナノシャクジョウ
(学
シロシャクジョウ
名)
Burmannia cryptopetala Makino
腐生植物
属名はリンネによる Burmann 父への献名
イノモトソウ
ホコシダ
クワ
オオバイヌビワ
Pteris ensiformis Burmann f.
Ficus septica Burm. f.
種形容語 :cryptopetalus(隠れた花弁の), ensiformis(剣形の), septicus(腐敗させる, 腐敗物に生ずる)
3. G. W. Steller
(1709-1746 )
ドイツ人分類学者. 優秀な採集・探険家で, 第 2 次カムチャツカ探検(1733-1743, 「第一次
科学アカデミー探検」とも呼ばれる)に参加.
1738 年ペテルブルクを出発してカムチャッカ植物を採
集しているが, 非業の死を遂げた.
著『ベーリング海の海獣』(1752), 『カムチャツカ誌』(1747), 『ベーリング島誌』(1781),『カムチャ
ツカからアメリカへの航海日誌』(1793)
(科和名)
(種和名)
(学
ホウライシダ
ヤツガタケシノブ
キク
シロヨモギ
ツツジ
ジムカデ
アカネ
エゾノヨツバムグラ
4.
J. G .Gmelin
名)
Cryptogramma stelleri (Gmel.) Prantl
Artemisia stelleriana Besser
Harrimanella stelleriana (Pall.) Coville
Galium kamtschaticum Steller
(1709-1755 )
ドイツの分類学者. チュービンゲン大学で医学を学び, 同大学化学・博物学・医学教授になり, G.
W. Steller 等の協力を得てシベリアの植物調査をした(1733-1743). 『シベリア植物誌』(Flora Sibirica ,
1747-49, 全 4 巻). 観察鋭く, 多くの新種が発表されており, 記載もよく, よい図譜があり, リンネも
これを引用して新学名をつくっていることが多い. 他に『シベリア旅行記』(1751, 全 4 巻)
グメリンが命名した「属名」…チシマツガザクラ属(Bryanthus )「1属 1 種のみでアジア北東部の寒
帯や高山に分布:千島・カムチャツカ・北海道・岩手県早池峰.
早池峰にあるのは氷河期に本州まで広がったものの生
き残りと思われる.」佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・亘理俊次・富成忠夫編『日本の野生植物―草本
(1981) 平凡社.
(科和名)
ツツジ科
山崎
敬
Ⅲ
p.9
(種和名)
ツツジ
チシマツガザクラ
タデ
カラフトダイオウ
ホウライシダ
ヒメウラジロ
(学
名)
Bryanthus gmelinii D. Don
1属1種
Rumex gmelinii Turcz.
Cheilanthes argentea (Gmel.) Kunze
種形容語 :argenteus(銀白色の)
― 79 ―
合弁花類』
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
5.
Sir John Hill
(1716-1775 )
ロンドンのキュー(Kew) 植物園の管理にあたり, イギリスでリンネの分類法による最初の『イギリ
ス植物誌』(Flora Britannica, 1760) を, 1768 年には最初の『キュー植物誌』をつくった. しかし, 次
の『植物のシステム』(The Vegetable System, 1759- 1775) は不評であった.
ヒルが命名した「属名」…シマセンブリ属(Centaurium )・ゴゼンタチバナ属
(Chamaepericlymenum )・アサザ属(Nymphoides )・ジンヨウスイバ属(Oxyria )・フキ属
(Petasites )
(科和名)
アカバナ
(種和名)
(学
名)
Oenothera laciniata Hill
コマツヨイグサ
種形容語 :laciniatus(細かく分裂した, 条裂した)
6.
M. Adanson
(1727 - 1806 )
フランスの植物学者で,「類型分類」を提唱した. 多数の形質にもとづいて原型を探し, 帰納に
よって自然の秩序を知ろうとした. この分類法を「類型分類」という. リンネが各種生物の差異に
注目したのに対して, 彼は共通性, 同一性に重きを置いた. 特定の性質だけに注目したリンネの「性の
体系」は, 自然の類縁関係を反映しない人為的な体系であると批判した. 分類上の門(Division)・綱
(Class)・目(Order)・科(Family)・属(Genus)・種(Species) の「綱」と「属」をつくったのはフランス
植物学の父トゥルヌフォール(J. P de Tournefort, 1656~1708, 主著『基礎植物学』全 3 巻, 1694.
フ
ランス語で書かれ, 彼自身によるラテン語訳は 1700 年に出版されて, リンネが最も精読した植物学書
といわれる)であり,「科」という階級を設けたのは, リンネではなくアダンソンの著作『植物の諸科』
が最初である.
1749-1759 年博物収集のため西アフリカ・セネガルを探検し, 熱帯の生物を研究した.
著『セネガル自然誌』(Histoire naturelle du Sénégal, 1757),『植物の諸科』(Familles des plantes,
1763-64)
・ノガリヤス属(Calamagrostis )・
アダンソンが命名した「属名」…ヒオウギ属(Belamcanda )
モクマオウ属(Casuarina )
・アザミ属(Cirsium )
・オシダ属(Dryopteris )
・モダマ属(Entada )・
ハス属(Nelumbo )
・ヨシ属(Phragmites )
・ナルコユリ属(Polygonatum )
・ヤブジラミ属(Torilis )
・
ショウガ属(Zingiber )・モジゴケ属( Graphis, 地衣類 )等
(科和名)
パンヤ
(種和名)
バオバブ
(学
名)
Adansonia digitata L.
アフリカ原産
英名 baobab
世界最大級の巨樹の一種といわれ, サン= テグジュペリ A. de Saint-Exupéry( 1900-1944 ) の童話
「星の王子さま」(Le Petit Prince, 1943)
アヤメ
ヒオウギ
ユリ
ナルコユリ
セリ
ヤブジラミ
植物以外では, ハエトリグモ科
にも登場し, 属名はリンネによるアダンソンへの献名.
Belamcanda chinensis (L.) DC.
Polygonatum falcatum A. Gray
Torilis japonica (Houtt.) DC.
アダンソンハエトリグモ
英名 Adanson's House Jumping Spider
Hasarius adansoni (Audouin)
家の中にも普通にいるハエトリグモの仲間で, ピョンピョンと跳ねる
動きをする.
種形容語:digitatus(指・掌状の), falcatus(鎌形の)
― 80 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
7.
W. Aiton
( 1731 - 1793 )
1759 年キュー植物園園長に就任した. 『キュー植物誌』(3 巻, 1773. 公式版)を刊行した.
その息子 W. T. Aiton (1766-1849) も『キュー植物誌』(1810-1813) を出版した.
エイトンが命名した「属名」…シバネム属(Smithia )
(科和名)
(種和名)
マメ
クララ
フトモモ
テンニンカ
(学
名)
Sophora flavescens Ait.
Rhodomyrtus tomentosa (Ait.) Hassk.
種形容語:flavescens(淡黄色の, クリーム色の), tomentosus(細綿毛[ビロード毛] が密生した)
8.
P. S. Pallas
(1741-1811 )
ロシアの植物を調べたドイツの動物・植物学者. ベルリン大学で医学と自然科学を学び, ペテ
ルブルクの博物学教授. ペテルブルク科学アカデミーによる第二次科学アカデミー探検(1768-177)に
同行し南ロシア及びシベリアの植物調査をした.
著『ロシア帝国内各地方の旅行』(1771, 全 4 巻),『ロシア植物誌』(Flora Rossica, 第 1 巻. 1784, 第
2 巻. 1788), 『全世界言語比較辞典』(1789), 『ロシアーアジア動物図誌』(Zoographia Rosso -
Asiatica, 1811-1842)
(科和名)
(種和名)
マメ
ムラサキモメンヅル
リンドウ
チシマセンブリ
ユキノシタ
トカチスグリ
植物以外では,
イタチ科
イタチ
ナキウサギ科
エゾナキウサギ
(学
名)
Astragalus adsurgens Pallas
Swertia tetrapetala Pall.
Ribes triste Pall.
Mustela sibirica
Pallas
Ochotona hyperborea (Pallas) yesoensis Kishida
北海道に生息する本種は, 1811 年パラスにより命名された東部シベリアのキタナキウサギの一亜種
種形容語:adsurgens(斜上する, 段々に立ち上がる), tetrapetalus(四枚の花弁の), tristis(暗色の,くすんだ),
hyperboreus(極北の, はるか北方の)
9.
A. Michaux
(1746-1803 )
フランス植物採集の歴史で先駆的役割を果たした専門的採集家.
著『アメリカ北部のカシ類誌』(1801),『アメリカ北部の植物誌』(1803)
その息子 F. A. Michaux (1770-1855) は父の研究を引き継ぎアメリカの森林研究をした.
著『アレゲニー山脈西部旅行記』(1804. 1805 年英訳版),『北米森林樹誌』(1810-1813. 4 年後に英訳版)
ミショー父が命名した「属名」…ノブドウ属(Ampelopsis )・アズマザサ属(Arundinaria )・
ルイヨウボタン属(Caulophyllum )・サンカヨウ属(Diphylleia )・カナダモ属(Elodea )・ハギ属
(Lespedeza )・フッキソウ属(Pachysandra )・マツブサ属(Schisandra )・タケシマラン属
(Streptopus )・リシリソウ属(Zygadenus )
― 81 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
(科和名)
(種和名)
(学
カヤツリグサ
ミタケスゲ
バラ
ナニワイバラ
カヤツリグサ
ホロムイクグ
シソ
エゾシロネ
名)
Carex michauxiana Bocklr. var. asiatica (Hult.) Ohwi
Rosa laevigata Michaux
Carex oligosperma Michx.
Lycopus uniflorus Michx.
種形容語:laevigatus(無毛の, 平滑な), oligospermus(少数の種子をもつ), uniflorus(単花をつける)
10.
W. Roxburgh
(1751-1815)
スコットランドに生れ, エジンバラ大学で医学を修め東インド会社の船医となり, カルカッタ
植物園園長を務めた植物学者で, インド植物の調査・分類の草分けの一人.
著『コロマンデル沿岸の植物』(The Plants of the Coast of Coromandel, 1795-1819),『ベンガル植物誌』
(Hortus Bengalensis, 1814),『インド植物誌』(Flora Indica, 1820-1832)
(科和名)
(種和名)
(学
カヤツリグサ
カンガレイ
クワ
インドゴムノキ
種形容語:triangulatus(三稜[角]形の),
11.
G. H. von Langsdorff
名)
Scirpus triangulatus Roxb.
Ficus elastica Roxb.
(インド原産)
elasticus(弾力[性]のある, ゴム質の)
(1774-1852 )
ドイツの博物学者,医師. クルーゼンシュテルン (Kruzenstern , 1770-1846 ) 提督率いるロシア最
初の世界周航艦隊(1803-1806 ) ナデジュダ号軍医として参加し, 北米大陸を旅行し, アラスカ・カムチ
ャツカ・千島・樺太・北海道等の沿岸を探検・植物採集をして, 遣日レザノフ使節(the Rezanov mission)
一行と 1804(文化元)年長崎にも来航した. ケンペル, ツュンベルク以降, ラングスドルフは外国人が
日本産植物を採集しヨーロッパ世界に報告した第 1 号となった
蝦夷地の先住民を「アイヌ」と呼称記載した最初の文献はその著『世界周航記』(1812) で, 1805 年
に蝦夷地の現在の宗谷地方と, サハリンのアニワ湾の北部を訪れたときの見聞から, アイヌという民族
名を用いた.
(科和名)
(種和名)
(学
イネ
イワノガリヤス
スミレ
コスミレ
12.
A. von Chamisso
名)
Calamagrostis langsdorffii (Link) Trinius
Viola japonica Langsd.
(長崎での採集品)
(1781-1838 )
フランス革命の時, 両親と共にドイツに逃れプロシア軍隊を経験し, その後はロマンティックな
物語詩人として名を知られた(『影をなくした男』(1814)). スイスで植物学を学び, 1815 年コツェブ
エ Otto von Kotzebue, (1787-1846) の第一回の探検船(1815-1818, 太平洋から北極洋への通路発見と
大洋州の未知の部分の探索が目的)に乗り込み, その後ベルリン植物園の管理者となった.
(科和名)
スイカズラ
オオバコ
(種和名)
(学
名)
チシマヒョウタンボク Lonicera chamissoi Bunge
エゾオオバコ
Plantago camtshatica Chamisso
― 82 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
13.
C. F. von Ledebour
(1785-1851 )
ドルパット大学の植物学教授で, 弟子のブンゲと 1826-27 年にアルタイ山脈で植物採集を行った.
これは 19 世紀のロシアでの植物採集の始まりであった.
著『アルタイの植物』(全 4 巻,1829-1834),『ロシア植物誌』
(全 3 巻,1842-1852)
レデブァが命名した「属名」…エゾノシシウド属(Coelopleurum )
(科和名)
(種和名)
(学
キンポウゲ
レブンキンバイソウ
セリ
エゾボウフウ
キク
ハハコヨモギ
キク
チシマアザミ
リンドウ
コケリンドウ
名)
Trollius ledebourii Reichb.
Aegopodium alpestre Ledeb.
Artemisia glomerata Ledeb.
Cirsium kamtschaticum Ledeb.
Gentiana squarrosa Ledeb.
種形容語:alpestris(亜高山帯の), glomeratus(球状に集まった), squarrosus(表面がざらざらした, 縮れた)
14.
F. E. L. von Fischer
( 1782-1854 )
ドイツの大学で医学博士となり, 1850 年退職するまで 27 年間ペテルブルクの王立植物園園長を
務め, 中国産の植物を同植物園に収めることに主力を注いだ.
フィッシャーが命名した「属名」「属名」…ツリガネニンジン属(Adenophora )・ミヤマセンキュウ
(Conioselinum )
・イワレンゲ属(Orostachys )
・モミジカラマツ属(Trautvetteria )最後の属名は
Mey. との共同命名である.
(科和名)
(種和名)
(学
シソ
ムシャリンドウ
キキョウ
ヤツシロソウ
名)
Dracocephalum argunense Fisch.
Campanula glomerata L. var. dahurica Fisch.
種形容語:argunensis(黒龍江支流の Argun 河の), dahuricus(シベリア:ダフリア地方の)
15.
A. von Bunge
( 1803-1890 )
1836 年レデブァの後を継いでドルパット大学の植物学教授になった. (ドルパットは現在エス
トニアのタルツ)
蒙古や中国北部植物の権威であった. ブンゲの授業に接し, マキシモヴィッチは
医学から植物分類学に転じた.
著『ロシア植物誌』,「中国北部採集植物目録」(1831)
ブンゲが命名した「属名」…ハナイバナ属(Bothriospermum )
・カリガネソウ属(Caryopteris )・
キツネアザミ属(Hemistepta )・コシオガマ属(Phtheirospermum )
(科和名)
イネ
ウマノスズクサ
(種和名)
(学
Hierochloe bungeana Trin.
Aristolochia contorta Bunge
Oxalis fontana Bunge
Hemistepta lyrata Bunge
コウボウ
マルバノウマノスズクサ
カタバミ
エゾタチカタバミ
キク
キツネアザミ
名)
― 83 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
マメ
Astragalus membranaceus Bunge
タイツリオウギ
種形容語: contortus(よじれた, 捩れた, 回旋した), fontanus(湧泉[水]池に生える), lyratus(頭大羽裂の),
membranaceus(膜質の, 膜状の)
16.
N. S. Turczaninov
( 1796- 1864 )
Bunge の後, バイカル湖の周辺ならびにアムール河流域で植物採集を行い, 多くの種を発見した
植物研究家. 著『バイカル・ダフリア植物誌』
トゥルツァニノフが命名した「属名」…ツルマオ属(Gonostegia )
(科和名)
(種和名)
カバノキ
イワシデ
キンポウゲ
ハルカラマツ
マメ
イネ
カヤツリグサ
シソ
ヤマハギ
マコモ
アサマスゲ
シロネ
(学
名)
Carpinus turczaninovii Hance
Thalictrum baicalense Turcz.
Lespedeza bicolor Turcz.
Zizania latifolia Turcz.
Carex lithophila Turcz.
Lycopus lucidus Turcz.
種形容語:baicalensis(バイカル湖地方の), bicolor(二色の), latifolius(広葉の), lithophilus(岩上に生える), lucidus
(強い光沢のある)
17.
E. R. von Trautvetter
( 1809-1889 )
ドルパット大学で自然科学を学び, 1838 年キエフ大学の植物学教授となり, 同大学に植物園を
つくり, 大学の学長を務めた. 引退後はペテルブルク植物園園長を務めた.
(科和名)
(種和名)
ユリ
ツバメオモト
カエデ
オガラバナ
(学
名)
Clintonia udensis Trautv. et C. A. Mey.
Acer ukurunduense Trautv. et C. A. Mey.
種形容語:udensis(ロシア:ウダ河地方の), ukurunduensis(シベリア: Ukurundu の)
18.
J. Decaisne
( 1809-1882 )( Decne.
と略記)
ブリュッセルに生まれ, パリ植物園に勤め 1851 年パリ自然科学博物館の教授兼植物園園長に
なった. 園芸の技術者として, 同時に植物分類学者として「自然科学年報」(1844-1882) を編集し,
「温室の花」
(1853~)と「園芸評論」(1841-1855) の共同編集者になった. 「日本植物の観察」を
友人の Ch. Morren と一緒に自然科学年報(1834)に発表した.
ドゥケーヌが命名した「属名」…アケビ属(Akebia )
・カマツカ属(Pourthiaea …現在は Aronia
属に編入されている )
・カクレミノ属(Dendropanax )
・ヤツデ属(Fatsia ), 後の二属名は Planchon
との共同命名である.
(科和名)
ヤマノイモ
キンポウゲ
(種和名)
ナガイモ
カザグルマ
(学
名)
Dioscorea batatas Decne.
Clematis patens Morren et Decne.
― 84 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
メギ
Epimedium diphyllum (Morr. et Decne.) Lodd.
バイカイカリソウ
種形容語:batatas(イモの南米現地語), patens(拡がった,開出した), diphyllus(二枚の葉をもつ)
19.
E. P. Boissier
(1810-1885 )
ジュネーヴ生まれのスイスの植物学者で, 彼の残した標本は地中海と東洋の植物が中心になって
いる. 主著『東洋の植物』(1867-1884)
(科和名)
イネ
ユキノシタ
(種和名)
(学
名)
Anthoxanthum aristatum Boiss.
Mitella stylosa Boiss.
ヒメハルガヤ
タキミチャルメルソウ
種形容語:aristatus(芒のある), stylosus(顕著な花柱をもつ)
20.
C. Wright
(1811-1885 )
1854(安政元)年に来日したロジャーズ Captain J.
Rodgers 率いるアメリカ合衆国北太平洋探検隊(第二次遠征隊)に乗船していた植物学者で, 香港・上海・
小笠原・函館・下田・横須賀・鹿児島・種子島・奄美大島・沖縄等で海藻類を含む多くの植物を採集し,
本国へ持ち帰った.
(科和名)
(種和名)
(学
バラ
シマカナメモチ
チャセンシダ
クルマシダ
コケシノブ
コケシノブ
21.
名)
Photinia wrightiana Maxim.
(小笠原父島・琉球に自生)
Asplenium wrightii Eaton ex Hook.
Mecodium wrightii (U. D. Bosch) Copel.
S. W. Williams
(1812-1884 )
ペリー( M. C. Perry,
1794-1858 ) 提督率いる「米国北太平洋遠征隊」( The United States
North Pacific Exploring Expedition )の艦隊(1853 年, 1854 年. 第一次遠征隊)に J. Morrow と共に
乗り込んだプラントハンターの一人. 彼は宣教師として中国で過ごしたことがあり, 主席通訳官を務
めた.
また中国学者として 『中国総論』(The Middle Kingdom, New York, 1895) を著し, その第 6 章は
中国の博物学 (鉱物・動物・植物・鳥・昆虫) についての記述である. 小笠原諸島・琉球・横浜・下田・
函館を中心とする北海道などで植物を採集した.
著『ペリー日本遠征随行記』(新異国叢書, 1970. 雄松堂出版社)
(科和名)
キンポウゲ
22.
(種和名)
シロバナハンショウヅル
J. Morrow
(学
名)
Clematis williamsii A. Gray
(1820-1865 )
S. W. Williams と共に同上の艦隊に乗り込んだプラントハンターの一人. ジョージア大学を
卒業し, ペンシルヴェニア大学でも学び医学の学位を取得している.
ペリー艦隊が収集した植物標本を同定したのはハーヴァード大学の植物学教授 A. グレー Asa
Gray である.
ペリー遠征隊の目的は, 日本との通交・通商のための条約締結であったが, 総合的な日
本情報収集の一つとして日本産植物のかなり大掛かりな調査・採集(植物学的探検)が行われた.
― 85 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
(科和名)
(種和名)
(学
カヤツリグサ
カンスゲ
スイカズラ
キンギンボク
23.
F. J. Ruprecht
名)
Carex morrowii Boott
Lonicera morrowii A. Gray
別名ヒョウタンボク
( 1814-1870 )
オーストリアで生まれ, プラハで医学を学び(医学博士), ロシア・アカデミーの植物博物館館長
になった. 東アジアと中央アジアの植物, 中国北部の地衣類や隠花植物の研究をした.
ルプレヒトが命名した「属名」…イヌエンジュ属(Maackia, マキシモヴィッチとの共同命名)
・キハダ
属(Phellodendron )
(科和名)
ミカン
チャセンシダ
モクセイ
(種和名)
(学
名)
Phellodendron amurense Rupr.
Asplenium ruprechtii Kurata
Fraxinus mandshurica Rupr. var. japonica Maxim.
キハダ
クモノスシダ
ヤチダモ
Fraxinus 属名は女性
種形容語:amurensis(アムール河流域の)
24.
E. A. von Regel
( 1815-1892 )
ドイツ人分類学者・医師であり, 1855 年ペテルブルク植物園園長になった.
G. Radde の収集
品の多くに学名を与えた.
レーゲルが命名した「属名」…シラネニンジン属(Tilingia )
(科和名)
(種和名)
セリ
シラネニンジン
アブラナ
ニシキギ
ユリ
スミレ
オオバコンロンソウ
クロヅル
ノビル
タチスミレ
(学
名)
Tilingia ajanensis Regel
Cardamine regeliana Miq.
Tripterygium regelii Sprague et Takeda
Allium grayi Regel
Vilola raddeana Regel
種形容語:ajanensis (シベリアの Ajan 湾の)
25.
E. A. Carrière
( 1818-1896 )
フランスの J. Decaisne の後継者として, 特に園芸界で多くの研究を発表した.
著『針葉樹概論』(1867)
カリエールが命名した「属名」…トガサワラ属(Pseudotsuga )・ツガ属(Tsuga )
(科和名)
(種和名)
クルミ
オニグルミ
カエデ
オオモミジ
(学
名)
Juglans ailanthifolia Carr.
Acer amoenum Carr.
種形容語:ailanthifolius(ニワウルシ属[ Ailanthus ]に似た葉の), amoenus(魅力的な, 好ましい)
― 86 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
26.
M. Albrecht
(1821-1865 )
エストニア生まれで, ドルパット大学で医学を修めロシア海軍の外科医になり, 1858(安政 5)
年函館に新設されたロシア領事館付の医官に任命され 5~6 年滞在した.
(科和名)
(種和名)
ツツジ
27.
(学
ムラサキヤシオ
J. E. Planchon
名)
Rhododendron albrechtii Maxim.
(1823-1900 )
モンペリエ大学で自然科学, 特に植物学を学びゲント(ベルギー)の王立園芸研究所植物学教授,
モンペリエ大学医学部の植物学教授兼大学植物園園長を務めた.
著『インドのアザレアの植物史と園芸史』(1853),「ハルニレの研究」
プランションが命名した「属名」…ムクノキ属(Aphananthe ),ツタ属(Parthenocissus ),
オオカナダモ属(Egeria )
(科和名)
(種和名)
ブドウ
ツタ
マタタビ
サルナシ
(学
名)
Parthenocissus tricuspidata (Siebold et Zucc.) Planch.
Actinidia arguta (Siebold et Zucc.) Planch.
種形容語:tricuspidatus(三尖頭の, 三凸頭の), argutus(鋭鋸歯をもつ)
28.
R. Maack
(1825-1886 )
ペテルブルク大学で自然科学を学び, イルクーツクの高等学校の自然科学教授になった.
著『1855 年に於けるアムールの旅行』,『ウスリー渓谷の旅行』
(科和名)
(種和名)
マメ
シソ
キク
スイカズラ
29.
(学
イヌエンジュ
ヒメシロネ
ヒゴシオン
ハナヒョウタンボク
G. Radde
名)
Maackia amurensis Rupr. et Maxim.
Lycopus maackianus (Maxim.) Makino
Aster maackii Regel
Lonicera maackii (Rupr.) Maxim.
( 1831-1903 )
東部シベリア, アムール河・ウスリー河流域, ブレヤ山脈を探検し植物採集を行った.
(科和名)
(種和名)
(学
キンポウゲ
アズマイチゲ
キンポウゲ
チチブシロカネソウ
キンポウゲ
キタミフクジュソウ
30.
M. Fr. Schmidt
名)
Anemone raddeana Regel
Enemion raddeanum Regel
Adonis amurensis Regel et Radde
( 1832-1908 )
1861 年満州の沿岸を, 1862 年アムグンの渓谷とブレヤ Bureya(いずれもアムール河左岸の
― 87 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
採集地として重要であった)でグレン P. von Glehn と一緒に植物採集を行った. 更に, この両者に
よる 1863 年にかけての植物調査が樺太(サハリン)植物研究の本格的なスタートとなった.
著『アムールランドとサハリン島旅行記(サハリン植物誌)』(1868)
Fr. シュミットが命名した「属名」…ホガエリガヤ属(Brylkinia )・ハマボウフウ属(Glehnia )
(科和名)
(種和名)
(学
カバノキ
オノオレカンバ
マツ
(アカ)トドマツ
ユキノシタ
ヤマハナソウ
名)
Betula schmidtii Regel
Abies sachalinensis (Fr. Schm.) Masters
Saxifraga sachalinensis Fr. Schm.
種形容語:sachalinensis(サハリン[樺太]の)
31.
P. von Glehn
( 1835-1876? )
主に樺太(サハリン) の植物を研究したロシアの採集家.
(科和名)
(種和名)
セリ
ハマボウフウ
マツ
アカエゾマツ
スイカズラ エゾヒョウタンボク
ユリ
オオウバユリ
カヤツリグサ
グレーンスゲ
(学
名)
Glehnia littoralis Fr. Schm. ex Miq. 1 属 1 種
Picea glehnii (Fr. Schm.) Masters
Lonicera alpigena L. ssp. glehnii (Fr. Schm.) Nakai
Lilium cordatum (Thunb.) Koidz. var. glehnii
(新属名:Cardiocrinum )
(Fr. Schm.) H. Hara
Carex parciflora Boott
種和名は Glehn に因んだもの
種形容語:littoralis(海岸に生える), alpigenus = alpinus(高山の), cordatus(心臓形の), parciflorus(小花の)
32.
H. Weyrich
(1828-1863 )
ペリーが第一回の日本遠征(1853 年)で浦賀に現れた後, プチャーチン (E. V. Putyatin) 提督率い
るロシア艦隊ディアナ号が 1854 年長崎に来航した. その極東遠征隊にウェイリヒが外科医(軍医)
として参加していた. 彼は,樺太(サハリン)の西と北の沿岸や五島列島・長崎で植物採集をして,
その標本はシュミット (Fr. Schmidt, 1832-1908 ) によって研究された.
(科和名)
(種和名)
タデ
オンタデ
ツツジ
オンツツジ
(学
名)
Aconogonon weyrichii (Fr. Schm.) H. Hara
var. alpinum (Maxim.) H. Hara
Rhododendron weyrichii Maxim.
種形容語:alpinus(高山生の)
33.
P. Jolkin ( Yolkin )
(生没年未詳)
前記のプチャーチン提督率いるロシア艦隊ディアナ号に乗り組んでいた海軍将校で, 寄港地:
函館・下田で植物採集をした.
(科和名)
トウダイグサ
(種和名)
イワタイゲキ
(学
名)
Euphorbia jolkinii
― 88 ―
Boiss.
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
34.
C. Wilford
( ?-1893 )
イギリスのキュー植物園に勤務し, 日本(対馬・函館)や香港・台湾などで採集活動をして, 台湾
では最初に本格的採集を行った人である.
(科和名)
(種和名)
チャセンシダ
アオガネシダ
ガガイモ
コイケマ
35.
H. Hance
(学
名)
Asplenium wilfordii Mett. ex Kuhn
Cynanchum wilfordii Hemsley
( 1827-1888 )
広東ほか中国各地の領事を務め, 中国北部の植物を研究した. 多くの採集家達から寄せられた
彼の標本コレクションは中国の殆ど全部の種を含む 22,437 種にも及び, 新種の同定・命名を現地中国
で行った最初の学者であった. 中国との共通種に彼の命名した種名が見られる.
著『植物学評論』,「中国と日本のモチノキ属( Ilex ) について」
(科和名)
(種和名)
マメ
イタチササゲ
チャセンシダ
トキワトラノオ
(学
名)
Lathyrus davidii Hance
Asplenium pekinense Hance
種形容語:David([1826-1900]), pekinensis(北京の)
36.
J. G. Veitch
(1839-1870 )
1860(万延元)年に来日した英国人園芸商で, ロンドンの園芸商
ヴェイッチ商会(注1)設立者の曾孫にあたり, プラントハンティングを自らも行う経営者であった. 彼
の来日目的は, 日本産園芸植物の収集で, 英国で特に人気の高かったシダ類の収集に熱心だった.
英国公使オールコック R. Alcock はヴェイッチに「江戸英国領事館付植物学者」 (Botanist to Her
Britannic Majesty’s Legation at Jedo) の公式の肩書をつくって与え, 富士登山に同行させた. ヴェイ
ッチは富士登山の道中で登山道から離れることは許されなかったが観察した植物の詳細な報告書を作
成している. 彼の報告で注目に値するのは,富士山の植生分布図をつくったことであり, この当時, 植
生の垂直分布・高度山岳地帯における森林限界という発想は日本には無く富士山の植生分布図はこれが
最初である.
ヴェイッチが採集した針葉樹(約 25 種のマツ類の種子) や作物についての詳しい記録は,「日本の農
業・植物に関する覚え書き」と題して, オールコック『大君の都―幕末日本滞在記』に巻末付録として
添付されている(注2).
図表: Vegetation as noted at the different elevations on Mount “Fusi Yama,” the highest
mountain in Japan (1860)
(科和名)
(種和名)
ウラボシ
ミヤマウラボシ
イネ
クマザサ
注
(学
名)
Crypsinus veitchii (Bak.) Copeland
Sasa veitchii (Carr.) Rehder
1 ヴェイッチ一族による会社で, 頻繁に海外に植物採集者を送り出した.
22 人に達し, その中の 3 人はヴェイッチ一族であった.
― 89 ―
その数は 1840~1905 年までに
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
W. Rob(チリとカリフォルニア)1840-1857.
T. Rob(インド奥地)1848.
J. G. Veitch(日本)1860[日本が神奈川・長崎・函館を開港した翌年に来日し, 外国の植物採集家として
開港後一番乗りであった.
その時, 彼は 21 歳であった.] , (オーストラリア・ポリネシア諸島)1864-65
C. Maries(日本と中国)1877-1880, 日本開港後二番目の採集者
J. H. Veitch(日本)1891-1893.
注
E. H. Wilson (中国)1899-1902 等
2 「岩波文庫版のオールコック『大君の都』は全訳ではなく, 原書巻末の付録個所がほんの一部分しか訳出さ
れていない.
原書(1863 年初版) は1・2巻併せて 1008 頁で, 巻末の付録はその約 1 割にあたる 99 頁に
及び, 日本植物の詳細で, 新鮮な記述がある.」
白幡洋三郎『プラントハンター』(1994) 講談社.
pp. 207-208
37.
M. E. Wichura
(1817-1866 )
マキシモヴィッチが来日中の 1861(文久元)年にプロシア政府使節が長崎に着き,ヴィックラ,
Schottmueller)が植物採集をした.
ショットミュラー(Otto
(科和名)
(種和名)
(学
アオギヌゴケ
ヒツジゴケ(蘚類)
イワデンダ
ノコギリシダ
バラ
テリハノイバラ
38.
Kramer
名)
Brachythecium wichurae (Broth.) Par.
Diplazium wichurae (Mett.) Diels
Rosa wichuraiana Crépin
(生没年不詳)
ハンガリー生まれで, 群馬県富岡の官営製糸工場の「お雇い外国人」クラマーは, 群馬県内で
よく採集しており, フランシェとサヴァチェの『日本植物目録』に彼の名前が頻繁に登場する.
(科和名)
(種和名)
(学
ラン
ジガバチソウ
ムラサキ
ルリソウ
39.
C. P. Hodgson
イギリスの外交官.
名)
Liparis krameri Franch. et Sav.
Omphalodes krameri Franch. et Sav.
(1821-1865 )
1859(安政 6)年イギリス軍艦サムソン号でオールコック(初代英国駐日
公使)と共に来日し, 長崎領事(事務取扱)・函館駐在領事を務め, のちフランス領事をも兼任. 在任
中, 函館および付近の植物採集をして, 本国のキュー植物園に送り, 1861(文久元)年離日した.
著『ホジソン長崎箱館滞在記』(A Residence at Nagasaki and Hakodate in 1859-1860, with accout
of Japan generally and a series of letters on Japan by the author’s wife, London, Richard Bentley,
1861) 巻末には, William Hooker (1785-1865) によって分類整理された 24 頁に亘る「日本産植物目録」
(Catalogue of Japan Plants)が付されている.
ホジソンが王立キュー植物園園長 W. フッカーに送った北海道産植物標本は, イギリスに気候が
似ている北方寒冷地の標本として重視された. その標本は王立キュー植物園に保管されている.
その著は蝦夷地(北海道)の事情を記述し, 北方の日本産植物を採集・記載した貴重な文献である.
駒ヶ岳登山・オーク材資源の豊富さ・海浜植物採集(恵山岬)・アイヌ部落訪問等も記す.
(科和名)
キク
(種和名)
トウゲブキ
(学
名)
Ligularia hodgsonii Hook. fil.
― 90 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
40.
Vidal
(生没年未詳)
官営富岡製糸工場勤務のフランス人専属医師. 富岡や浅間山, 新潟で植物採集を行った.
サヴァチェとフランシェは共著『日本植物目録』の中で, 採集協力者として彼に謝辞を呈している.
(科和名)
(種和名)
(学
イワデンダ
ヤマイヌワラビ
スイカズラ
オニヒョウタンボク
41.
M. A. S. von Brandt
名)
Athyrium vidalii (Franch. et Sav.) Nakai
Lonicera vidalii Franch. et Sav.
(1835-? )
北京公使も務めたことのあるドイツ駐日公使. サヴァチェとフランシェは共著『日本植物目録』
の中で, 採集協力者として上記のウィダルと併記してブラントにも謝辞を呈している. ブラントは函
館や九州の植物をサヴァチェに提供したほか, その職権を利用してサヴァチェが横須賀から離れて日本
の辺地を旅行するための許可を得られるよう日本政府に働きかけ, 側面からも支援を行った.
(科和名)
ホウライシダ
42.
(種和名)
(学
ミヤマウラジロ
G. E. Simon
名)
Cheilanthes brandtii Franch. et Sav.
(1829-? )
シモンはヴェルサイユの農業経済学校に学び, 1860 年フランス農務省から中国・日本の農業事情
の調査をすべく派遣され, 1862-1863(文久 2-3)年に滞日した. 開港地のほか各地の植物を精力的
に収集し, 乾燥標本のほか生きたままの植物も本国へ送り出したので, フランスでの中国・日本植物の
研究を強く刺激した. 中国の寧波(ニンポー)や福州の領事を務め, 一旦帰国した後シドニーの領事
も務めた外交官プラントハンターであった.
(科和名)
(種和名)
イネ
メダケ
43.
F. V. Dickins
(学
名)
Pleioblastus simonii (Carr.) Nakai
(1838-1915 )
1861(文久元)年頃来日, 中国・日本を勤務地とした海軍軍医で植物学にも詳しく, アーネスト・
サトウ E. M. Satow が採集した植物の同定をした. 日本のシダ類に特に注目して採集を行い, その標
本や自ら描いた植物図をロンドンのキュー植物園園長の J. D. Hooker に送っていた. 後に, ロンド
ン大学事務総長を務めた.
ディキンズは植物の分野だけでなく日本のカナ文字の歴史や日本文学の研究・翻訳も行った. ロン
ドン滞在中の南方熊楠と文通を通して無二の親友となり, 熊楠から日本の文化・風習について多くの知
識を吸収した. 一方, 熊楠はディキンズから経済的援助を得た.
『百人一首』(Hyaku Nin Isshu, 1866),『仮名手本忠臣蔵』(Chiushingura, 1876),『竹取物語』(The
Old Bamboo-Hewer’s Story, 1888) ,『日本古文編』(Primitive and Medieval Japanese Text, 1903),
『方丈記』
(Japanese Thoreau of the Twelfth Century, 1905. 南方熊楠との共訳)等の英訳本を出版し
たほか, 『パークス伝』(オールコック R. Alcock についで駐日公使を務めたハリー・パークス Harry
Smith Parkes の伝記)も記した.
― 91 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
(科和名)
(種和名)
(学
カヤツリグサ
オニスゲ
バラ
イワキンバイ
44.
C. Maries
名)
Carex dickinsii Franch. et Sav.
Potentilla dickinsii Franch. et Sav.
(1850-1902 )
1877 年ヴェイッチ商会は, 中国・日本の植物採集を目指しマリーズを送り出した. マリーズは
北海道の針葉樹の採集を目指し, 日光・仙台・盛岡・青森へと陸路を辿った. 更に函館・札幌・十勝
方面で多数の針葉樹の種子を採集し, 母国イギリスへ送った.
(科和名)
(種和名)
(学
マツ
オオシラビソ
シノブ
シノブ
45.
J. J. Rein
名)
Abies mariesii Masters
別名アオモリトドマツ
Davallia mariesii Moore ex Baker
(1857-1918 )
ドイツの地理学者で, マーブルク大学の地質学教授. ラインは 1874(明治 7)年ドイツ政府
から派遣されて, 日本の物産全般を調査する目的で来日した. 帰国後に著した大著『日本』(全 2 巻,
1881-1887) は日本の農産物・工芸品・鉱物資源・地質・気候などその内容は極めて広範囲に及ぶが
植物についても詳しい. 東北から九州(信濃御岳・箱根・日光・四国・天草島等)まで, 地質・地理の
専門家らしく交通不便な地域へも足を延ばし植物も多数収集し, その採集品は フランシェとサヴァ
チェ両氏の著作にも引用されている.
(科和名)
(種和名)
(学
カヤツリグサ
コカンスゲ
ヒメハギ
カキノハグサ
サクラソウ
コイワザクラ
46.
V. L. Komarov
名)
Carex reinii Franch. et Sav.
Polygala reinii Franch. et Sav.
Primula reinii Franch. et Sav.
( 1869-1945 )
ペテルブルク大学で自然科学を学び, ペテルブルク植物園で仕事をした. 満州鉄道沿線地方の
調査をした. 著『満州の植物』(1903-1947,
(科和名)
(種和名)
853 頁の大著)
(学
アカザ
オカヒジキ
フウロソウ
アサマフウロウ
名)
Salsola komarovii Iljin
Geranium soboliferum Komar.
種形容語:sobolifer(根元から勢いの良い徒長枝を出す)
47.
E. H. Wilson
(1876-1930 )
イギリスに生まれアメリカに帰化した植物学者で, 中国四川省の奥地で採集し, ヨーロッパに
紹介した「リーガル・リリー」で有名. サージェント園長のアーノルド樹木園(Arnold Arboretum)
の採集員となって二回(1907-1909, 1910-1911)中国への採集旅行をした. ウィルソンはサクラの品種
収集のため, 1914(大正 3)年来日した.
1915 年九州産のクルメツツジをアメリカに送り, サンフ
ランシスコで開催された万国博覧会「パナマ・太平洋博」に出品し人気を博した.
― 92 ―
第5章 学名に名を残す日本植物研究の先駆者達(2)
著『日本のサクラ』(The Cherries of Japan, 1916) は,日本の美しいサクラを世界に広く紹介するきっ
かけになった.
1918 年再来日.
江戸時代に,薩摩藩が屋久島島民の年貢として米の代わりに杉の平板を納めさせたために切り倒さ
れたヤクスギの中で屋久島最大の伐根は, 1914 年来島したウィルソンによって世界に紹介されて有名に
なり,“ウィルソン株”と呼ばれるようになった. 推定樹齢 3,000 年から 4,000 年, 高さ 2.3m, 胸高周
囲 13.8m, 根回り 32m, 切り口の周囲 13.8m の大きな切り株である.
1927 年園長サージェントの後, アーノルド樹木園の管理者となったが, 1930 年交通事故で死去.
著『中国―庭園の母』(China: Mother of Garden.
初版では A Naturalist in Western China,
London, 1913) は中国植物ハンティングを記したもの. 他に Aristocrats of the Garden, Boston,
1917. や 論文:The Conifers and Taxads of Japan
(Publications of The Arnold Arboretum, No.8,
1916) などがある.
(科和名)
(種和名)
カエデ
三峡カエデ
バラ
オクチョウジザクラ
(学
名)
Acer wilsonii de Jong
(中国産で雲南省を中心に分布し, 日本には自生しない)
Prunus(Cerasus) apetala (Siebold et Zucc.)
Franch. et Sav. var. pilosa (Koidz.) Wilson
種形容語( apetalus ) は「無弁の」の意味である.
チョウジザクラは有花弁の植物であるが,
著者が花弁の脱落した標本を見て, 無花弁花と誤認したことが原因であると推定されている.
ツツジ
ヤマツツジ
ユリ
リーガル・リリー
Rhododendron obtusum Planchon
var. kaempferi (Planch.) Wilson
Lilium regale Wilson
(中国四川省産)
1904 年中国とチベットの国境地域で採取され, イギリスへはユリの仲間では一番遅く導入された.
種形容語:pilosus(長軟毛に覆われた, 粗い長毛がある), obtusus(鈍形の, 円味を帯びた), regalis(王の, 極めて
価値がある)
― 93 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
第6章
学名に名を残す日本人植物研究者達
――日本人名に由来する属名・種形容語――
人名(小野蘭山・宇田川榕菴・伊藤圭介等)が種形容語ではなく, 属名に記載された稀有な学名が
ある. 日本産植物の学名に名を残す日本人研究者は多数いるが, その一部を紹介する.
1. 小野蘭山
7. 田中芳男
2. 水谷豊文 (通称;助六) 3. 飯沼慾齋 4. 岩崎灌園 5. 宇田川榕菴 6. 伊藤圭介
8. 矢田部良吉 9. 田代安定 10. 松村任三 11. 宮部金吾 12. 三好 學
13. 牧野富太郎
18. 早田文蔵
19. 柴田桂太
23. 澤田武太郎
29. 初島住彦
14. 白井光太郎
20. 中井猛之進
24. 館脇 操
30. 田川基二
35. 須川長之助(採集者)
15. 池野成一郎
25. 三木
31. 原
寛
茂
16. 南方熊楠 17. 岡村金太郎
21. 小泉源一・秀雄
26. 本田正次
32. 倉田
悟
22. 武田久吉
27. 大井次三郎
33. 前川文夫
28. 北村四郎
34. 北川政夫
36. 山本 一(採集者)
1. 小野蘭山 (1729-1810)
江戸中期の本草学者. 薬用にとらわれず, 日本産の動植鉱物を実証的かつ網羅的に研究整理し,
江戸時代の本草学を大成し, シーボルトにより「東洋のリンネ」と称された.
主著書に島田充房(みつふさ)との共著『花彙(かい)』8 巻(1759-1763) [草・木各 100 種の植物図と解
説]と『本草綱目啓蒙』48 巻(1803-1806) とがある. 後者は, 明の李時珍(1518-1596) の著した『本草
綱目』(1596)を小野蘭山が江戸の医学館で注釈講義し, 孫の小野職孝(もとたか)と門人の岡村春益に筆
録させ補訂して, 1,880 種余を記載し編集刊行したもの.
桂川甫賢(1797-1844)が『花彙』を蘭訳してシーボルトに贈り, サヴァチェ( P. Savatier ) による『日
本植物学
花彙の巻』のフランス語訳本(図版省略)が 1873(明治 6)年にパリで出版されて, 日本産
植物が海外に広く紹介された. 蘭山学派の実証的研究レベルの高さを示すものであり, 日本の科学的
植物図鑑の嚆矢と目される.
(科和名)
メギ
(種和名)
トガクシショウマ
(学
名)
Ranzania japonica (T. Ito) T. Ito
(トガクシソウともいう)
属名に
(トガクシショウマ属は日本固有属で,1 属1種)
(著者の伊藤篤太郎は伊藤圭介の孫)
シソ
ハルノタムラソウ
2. 水谷豊文(1779-1833)
通称
Salvia ranzaniana Makino
助六
蘭山に私淑した門人の一人で, 蘭学を学び, 自邸内に植物園を作り, 伊勢, 近江, 美濃, 木曾な
どに採集旅行も行っている. 豊文の門人に伊藤圭介等がおり, 尾張本草界の中心人物となり, 江戸へ向
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第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
かうシーボルトを熱田に迎え, 自製の植物標本類を示し, 両者の交流が始まる. 彼は, リンネの『自然
の体系』のオランダ語版ともいうべきハウトイン M. Houttuyn の『自然誌』をすでに入手していて, 植
物の学名鑑定を本書に基づいてやっていたので, 植物名を学名で示し, リンネの分類体系で整理してあ
った. 彼の優れた知識はシーボルトにも感銘を与えた. 助六には植物を正確に描写する資質もあった.
著『木曾採薬記』(1810 成稿),『物品識名』(1809),『物品識名拾遺』(1825),『本草綱目記聞』60
冊(未刊)
(科和名)
モチノキ
(種和名)
アカミノイヌツゲ
(学
名)
Ilex sugerokii Maxim. var. brevipedunculata
(Maxim.) S. Y. Hu
姓(水谷)ではなく, 名(助六)が献名されている
種形容語:brevipedunculatus(短い花柄をもつ)
3. 飯沼慾齋 (1783-1865)
大垣で医学を修め, 小野蘭山に本草学を学び, 更に宇田川榕菴に師事して西洋の植物学を受け継
いだ江戸時代の本草学者・蘭学医・化学者. 著書に『草木圖説』「草部」(20 巻,1856-1862 )があり,こ
れは精密な観察に基づくわが国最初のリンネ分類法(雄しべと雌しべの数を指標とする“二十四綱分類
体系”)による植物図鑑である. リンネの分類体系をとったのは, ハウトインの『リンネ自然体系』
(オ
ランダ語本)によったからである. 当時知られていた日本の全植物がリンネの分類体系の順序で配列さ
れ記述されたことは画期的なことである.(同書の「木部」10 巻は彼の手では未完であったが 1977 年に
北村四郎編注で出版された)
1,250 種の草類・600 種の木類が, 漢名ではなく日本名で分類配列されている. 一つ一つの草木を
自分の目で仔細に観察し, 画家の手を借りずに, 自ら写生し, 花の構造は顕微鏡で確かめた. その顕微
鏡はオランダ書に従い, 職人につくらせたものである. 日本の植物図としては初めて部分の解剖図も
付けられている. 植物図はすべて 1 頁大で, 葉の表面と裏面が白と黒で表してあって, 西洋では日本独
特の描き方だと賞賛された. この描き方は, 小野蘭山・島田充房の『花彙』に始まったものである.
(科和名)
バラ
ラン
バラ
(種和名)
ノウゴウイチゴ
イイヌマムカゴ
ツルキンバイ
(学
名)
Fragaria iinumae Makino
Tulotis iinumae (Makino) H. Hara
Potentilla yokusaiana Makino
姓(飯沼)ではなく, 名(慾齋)が献名されている
キク
アオヤギバナ
Solidago yokusaiana Makino
4. 岩崎灌園 (1786-1842)
小野蘭山に入門し, 大山や日光など関東一円をよく採薬して歩き, 又優れた絵心を持っていた. シ
ーボルトが日本を去る前年の 1828 年に, 日本で最初の植物図譜である『本草圖譜』全 96 巻 92 冊を完
成させた.(出版は 1830-1844 年)
全体の構成は『本草綱目』の分類によっている. 本書には野生種
のみでなく園芸品種・外国種の草木も含む約 2,000 種の植物を自ら描いて記載する江戸時代最大の彩色
植物図鑑である. 掲載種の殆どが自園で鉢植えされ, 直接目にした草本の写生図で, あまりに膨大な著
作であったため印刷販売することが出来ず, やむを得ず原本を模写して販売した.
著『草木育種』(1818),『武江産物志』(1824)
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第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
(科和名)
カヤツリグサ
(種和名)
(学
名)
カンエンガヤツリ Cyperus exaltatus Retz. var. iwasakii (Makino) T. Koyama
5. 宇田川榕菴 (1798-1846)
江戸末期の津山藩江戸詰めの蘭医. 僅か 1,178 文字の漢字経文の文体で, 当時の西洋植物学の
要点を簡潔に纏めて論じた異色の書『菩多尼訶経(ぼたにかきょう)
』(1822) を著した. その書名は植
物学を意味するラテン語 botanica によっている. シーボルトから医学とオランダ語を学び, 後に
シーボルトから譲られた植物書(スプレンゲル P. J. Sprengel[ 1766-1833 ]著『植物学入門』3 巻,
1802-1804. ドイツ語本の第 2 版, 1817)を独力で判読し,『(理学入門) 植学啓原』3 巻(1835) を, また,
日本最初の化学書『舎密開宗(せいみかいそう)』(1837) を著した.
『植学啓原』は, 本草学ではない西洋植物学を本格的に紹介した“近代科学的な植物学”の日本に
おける第一書で, 漢文で書かれ, 分類よりも形態や生理に重点を置いた総合的な植物学書ある. 『植学
啓原』以降,江戸時代には西洋植物学の解説書はほかに現れなかった.
シーボルトは, 江戸の長崎屋の宿で, 多くの腊葉標本を得たが, 桂川甫賢と宇田川榕菴のものが最
も優れていたと日記に記している. 江戸から帰路につく際, 持参のバスター (J. Baster,
1711-1775) の 2 巻本『科学の楽しみ』( Natuurkundige uitspanningen, 1762. 1765 ) と題する動
植物記述の本を宇田川榕菴に贈った.
シーボルトが 2 回目の来日・江戸参府の折には, 西洋学術について質疑するなど親しくシーボルト
と交流した.
分類階級の名称として「類」ではなく「属」を使うのは『菩多尼訶経』に始まり,「葯」(雄しべの
先端の花粉ができる部分),「柱頭」
(雌しべの先端),「花柱」(柱頭より下の部分)などの用語も同書
に始まり,現在も使われている.
(科和名)
ラン
(種和名)
ショウキラン
(学
名)
Yoania japonica Maxim.
属名に
6. 伊藤圭介 (1803-1901)
水谷豊文を盟主とする尾張学派の伝統を継承する幕末から明治前・中期の植物学者. 吉雄常三
に洋学を学び, 江戸参府途中のシーボルトに会って感銘を受け, 後に出島にシーボルトを訪ね, 彼に西
洋植物学を半年間学び(1827-28), また, シーボルトの研究を助けもしたので, シーボルトも伊藤圭介か
ら学ぶものがあった. 伊藤圭介が長崎の出島まで持っていった水谷豊文の著『物品識名』とシーボルト
が国から持ってきていたツュンベルクの『日本植物誌』の引き合わせから, 後のシーボルト自身の『日
本植物誌』も, 伊藤圭介の『泰西本草名疏』も生まれたのである.
シーボルトが帰国する前年(1828)に, 伊藤圭介が長崎を去るにあたり, 伊藤圭介はツュンベルクの
著書『日本植物誌』(Flora Japonica, 1784 )とツュンベルクの肖像画一葉(ツュンベルクの『旅行記』
の口絵を切り取ったもの)を餞別として贈られた(注1). この肖像は日本で銅版画に彫り直して『泰
西本草名疏』を飾っている.
伊藤圭介はそこからリンネの分類体系を学び, これを翻訳注解して, リンネの分類体系を紹介した
『泰西本草名疏』2 巻 (1829 ) を刊行し, 生物分類の基本を「種」(species)という概念におくことを初
めて日本語で示した. 宇田川榕菴の『植学啓原』(1835) に先んじること 6 年である. これが植物分類
― 96 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
体系を紹介する日本で最初の出版物であり, 日本自然誌の近代化の第一歩である. 『泰西本草名疏』
(1829, 書名の「疏」とは注釈のこと) はツュンベルクの『日本植物誌』の学名をアルファベット順に並べ,
それに和名を付し対照させたもので, その付録にリンネの雌雄蕊による「二十四綱分類体系」を, 色彩
図で丁寧に解説した. 「しかし,リンネの体系に従った順序, つまり綱目順に植物名が配列されていない
ので, 西欧植物学を取り入れたことの印象が薄れたのは残念である.」(注2)
シーボルトの帰国後, 伊藤圭介は多くの植物を各地で採集し, その 600 点以上の標本に目録を付け
てシーボルトに送った. それは現在も国立ライデン植物博物館に保存されている.
1877(明治 10)年に東京帝国大学が設立されると, 同年員外教授(後に教授)になり, 小石川植物
園の植物調査に当たった. 初代の学士会院院長を務め, 男爵に叙せられた. 学位令ができたとき, 日
本最初の理学博士となり, 医師としても日本で初めて種痘を採用した. 「雄花」,「雌花」,「雄蕊」,「雌
蕊」,「花粉」,「花糸」などの用語は伊藤圭介が創案したもので現在もそのまま使われている. シソ科
シモバシラ属 ( Keiskea ) ほかに, 姓(伊藤)ではなく, 名(圭介)の方を学名に残す.
(科和名)
シソ
キク
ユリ
ツツジ
注
(種和名)
シモバシラ
イヌヨモギ
スズラン
ヒカゲツツジ
(学
名)
Keiskea japonica Miquel
Artemisia keiskeana Miq.
Convallaria keiskei Miq.
Rhododendron keiskei Miq.
属名に
1 「伊藤圭介がシーボルトからツュンベルクの著書『日本植物誌』を譲り受けるまで, 日本の本草学者はこの
著作を知らなかった.
…… この時代蘭学者は多数輩出したものの学術研究に欠かせないラテン語を学ん
だ本草学者は知られていない.」(大場秀章編『日本植物研究の歴史―小石川植物園 300 年の歩み』(1996)
東京大学出版会.
注
大場秀章「日本の本草学の歩みと小石川薬園の歴史」 pp.28-29
2 木村陽二郎『生物学史論集』(1987) 八坂書房 p.377
7. 田中芳男 (1838-1916)
伊藤圭介に師事し, 医学・博物学を学ぶ. 幕府の蕃書調所物産局に仕え, 維新後, 新政府の役
人になって殖産振興に尽力した応用博物学者で, 博物学の啓蒙活動にあたった. 自ら昆虫採集も行い,
1867 年パリ万国博覧会に昆虫標本を携行し渡仏. そのおり国立自然史博物館(パリ植物園)を見学し,
日本にも同様な研究機関が必要であると痛感した. 明治新政府でも, ウィーン(1873 年)とフィラデル
フィア(1876 年)の万国博覧会に派遣され, 新知識を吸収した. 駒場農学校(東大農学部の前身)や東京
上野に科学博物館・動物園の創設に尽力し, 教科用図書・掛図作成などの教育部門や農業の振興にも貢
献した. セイヨウリンゴ・田中ビワ(枇杷)を広めた. 著『有用植物図説』(1891)
(科和名)
アブラナ
アブラナ
(種和名)
マルバコンロンソウ
クモイナズナ
(学
名)
Cardamine tanakae Franch. et Sav.
Arabis tanakana Makino
8. 矢田部良吉 (1851-1899)
植物分類学者.
1870(明治 3)年外交官として渡米後に辞職して, コーネル大学で, 更にハー
ヴァード大学の博物学教授 A. Gray のもとで植物学を学んだ.
1876 年帰国し, 1877 年東京帝國大学
(以下, 東京大学と略記)創設とともに 26 歳で, 東京大学理学部植物学科の初代植物学教授となった. 帰
― 97 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
国後, 最初に行われたことは日本植物の分類についての研究であった. 初めは外国の植物学者が命名
した分類群に精通するのに手間取り, 標本を外国の専門家に送って鑑定してもらうしかなかった(注1).
矢田部良吉は 1890 年 10 月, 植物学雑誌(4 巻 44 号)に英文で「泰西植物学者諸氏に告ぐ(矢田部宣
言)」(‘ A few words of explanation to European botanists ’ )を発表して, 日本でも「種」の同定ができ
ることを宣言した.
矢田部良吉はこの宣言を踏まえて, シチョウゲ, ヒナザクラの二新種を公表し, 次いで 1890 年 12
月キレンゲショウマ(Kirengeshoma palmata Yatabe)を新属新種として発表した(注 2).
この宣
言は東京大学つまり日本における研究水準がようやく植物学といえる状態になったという研究内容へ
の自己評価であり, Herbarium (標本室)と Library (図書館)が充実してきたことも示している. 矢田部
宣言以降, 矢田部良吉を中心に松村任三・宮部金吾・牧野富太郎等により日本からの新植物の記載・命名
が盛んに行われ, 全国規模での日本の植物相の全貌解明に向けての研究が緒についた.
著『日本植物圖解』(Iconographia Florae Japonicae ; or Descriptions with Figures of Plants
indigenous to Japan, 1891-93. 第 3 号で中断. 第 60 図で終わった),
Bentham & Hooker の分類法による『日本植物篇』(1900) ,
A. Gray の植物学教科書を翻訳した『植物通解』(1885)等がある.
後年, 彼は東京高等師範学校校長・東京博物館館長等を歴任した. また,ローマ字論者であり, 1882
年井上哲次郎・外山正一等と新体詩運動に加わり『新体詩抄』(1882)を刊行した.
(科和名)
ユキノシタ
(種和名)
キレンゲショウマ
(学
名)
Kirengeshoma palmata Yatabe
1属1種
属名は日本名「キレンゲショウマ」(黄蓮華升麻)から
ラン
キバナノアツモリソウ
ラン
タカネフタバラン
アカネ
シチョウゲ
サクラソウ
ヒナザクラ
ユリ
チャボホトトギス
カワノリ
カワノリ
Cypripedium yatabeanum Makino
Listera yatabei Makino
Leptodermis pulchella Yatabe
Primula nipponica Yatabe
Tricyrtis nana Yatabe
Prasiola japonica Yatabe
淡水生の緑藻類
種形容語:palmatus(掌状の), pulchellus(小さく美しい, 可愛い), nanus(矮性の,小さく低い)
注
1 東京帝國大学創設時には,"本草学の時代" から継承した標本は無く, ツュンベルク・シーボルトとツッカ
リーニ・マキシモヴィッチ・ミクエル・そしてサヴァチェとフランシェら日本植物の外国人研究者達が記載・
命名したもとになる標本も日本には 1 点も無かったので, 矢田部良吉や松村任三, 大久保三郎らは早速精力
的に採集を行い, 日本各地からの標本の収集に努めた.
注
2 日本人として新種を最初に発表したのは矢田部良吉ではない.
英国留学中の伊藤篤太郎(1868-1941, 伊藤
圭介の孫)が 1888 年に信州戸隠山産のトガクシショウマ Ranzania japonica (T. Ito) T. Ito を新種・新属として
ロンドンの植物学雑誌に記載・発表した.
また,「矢田部宣言」の前年 1889 年に, 大久保三郎(1857-1914)と
牧野富太郎は日本国内で日本人として初めて日本産の植物ヤマトグサ(Theligonum japonicum Okubo et Makino)
を新種として共同発表・命名した.
「矢田部宣言」直前の 1890 年」9 月には, 三好 學(当時大学院生)がタヌキモ科コウシンソウ( Pinguicula
ramosa Miyoshi ) を新種として公表した.
種形容語:ramosus(分枝した)
9. 田代安定 (1856-1928)
田中芳男の下で植物学を研修し, 沖縄・南洋諸島・台湾等の南方植物の調査, 研究や栽培に従事
― 98 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
し, 八重山地方の人類学・民俗学的研究もした. また, マキシモヴィッチの知遇を得て, 訪露した最初
の植物研究者であった. (その 5 年後に宮部金吾がロシアに同氏を訪ねた.)
著『鹿児島県草本譜内編』(1883),「恒春熱帯植物殖育場報告」(1911-1917),『台湾行道樹及市村
植樹要鑑』(1920),『沖縄県宮古島及沖縄島対訳方言集』(1888)
(科和名)
キンポウゲ
サクラソウ
ツツジ
10.
(種和名)
オトコゼリ
オニコナスビ
サクラツツジ
(学
名)
Ranunculus tachiroei Franch. et Sav.
Lysimachia tashiroi Makino
Rhododendron tashiroi Maxim.
(綴り字の違いに注意)
松村任三(じんぞう) (1856-1928)
植物分類学者. 東京大学で矢田部良吉の後, 植物学教授となった. ドイツに学んで植物解剖
学の手法を導入し, 近代植物学研究を先導した. 著『日本植物名彙』(1884)は, 日本人の手になる
最初の日本植物の総覧であり, 東京大学での研究成果を中心にまとめられた最初の研究書であった.
小石川植物園初代園長.
著『植物学教科書』上・下巻(1892-1893),『帝国植物名鑑』(Index plantarum japonicarum)
(1905-1912),『新撰日本植物図編』( Icones plantarum koisikavenses )(1911-1921)
松村任三が命名した「属名」……アブラナ科ワサビ属(Wasabia )…「日本名(ワサビ)」による
(科和名)
アブラナ
イネ
カヤツリグサ
バラ
カバノキ
キク
イワタバコ
(種和名)
ワサビ
ムツノガリヤス
キノクニスゲ
ウラジロナナカマド
ヒメヤシャブシ
ミミコウモリ
マツムラソウ
(学
名)
Wasabia japonica (Miq.) Matsumura
Calamagrostis matsumurae Maxim.
Carex matsumurae Franch.
Sorbus matsumurana (Makino) Koehne
属名は女性
Alnus pendula Matsum.
属名は女性
Cacalia auriculata DC. var. kamtschatica
(Maxim.) Matsumura
Titanotrichum oldhamii Solereder
種和名は松村任三を記念したもの
種形容語:pendulus(下垂する), auriculatus(耳形の, 耳状の付属体をもつ), kamtschaticus(カムチャツカ半島の),
Oldham(英国人園芸家[1838-1864])
11.
宮部金吾 (1860-1951)
北海道大学教授. 札幌農学校に学んだ樺太・千島・北海道植物の研究者で,「高山植物」という
用語を日本で初めて使ったとされ, 生物分布境界線(宮部線)を設定.
1886(明治 19)年, A. Gray の
知遇を得てハーヴァード大学に留学し, ファーロー(Farlow)博士に菌類および藻類を学び,グレーの
もとで北海道千島の植物の研究をして, 論文「千島列島植物誌」(The Flora of the Kurile Islands, 1890.
53 科 317 種 ) を完成させた. 米国留学後, 欧州経由の帰国の途, イギリスのキュー植物園とペテルス
ブルクにマキシモヴィッチを訪ねた.
日本の植物病理学の先駆者として伊藤誠哉をはじめとする多くの菌類学者や植物学者,藻類学者を
育て,植物病理学や菌学の基礎を築いた植物病理学者・植物分類学者・海藻学者・菌学者であった. 北
海道主要樹木の選定解剖,図譜作成を行うなど北海道の植物学の発展に寄与し, また,コンブ科の分類
― 99 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
学的研究をした.
1946 年文化勲章を受け,1949 年札幌市名誉市民第 1 号となった.
著『北海道主要樹木図譜』(1920-1933)
(科和名)
キンポウゲ
カエデ
イグサ
コンブ
(種和名)
ヒダカソウ
クロビイタヤ
チシマスズメノヒエ
ガゴメ(コンブ)
(学
名)
Callianthemum miyabeanum Tatewaki
Acer miyabei Maxim.
日本固有種
Luzula kjellmanniana Miyabe
Kjellmaniella crassifolia Miyabe
(褐藻類)
種形容語:Kjellmannianus(海藻学者シャルマンの), crassifolius(厚い葉の)
12.
三好 學 (1861-1939)
東京大学教授. ドイツに留学し, 日本に植物生理学・生態学を導入し,「生態学( Biology )」と
いう用語の創案者であり, サクラ(『桜花図譜』1920)とショウブ(『花菖蒲図譜』1921)の研究者で, 1910
(明治 43)年天然記念物の保存を提唱し, 植物の系統保存にも尽力した. 小石川植物園第二代園長.
著『植物学講義』 (1899),『中等教育植物学教科書』上・下(1900),『実験植物学』(1902),『日本植
物景観』(1905),『植物生態美観』(1912),『最新植物学講義』(1931),『最新実験植物学』(1932),『櫻』
(1938)
(科和名)
ウラボシ
13.
(種和名)
クラガリシダ
(学
名)
Drymotaenium miyoshianum (Makino) Makino
牧野富太郎 (1862-1957)
植物分類学者. 小学校中退. 小野蘭山の『重訂本草綱目啓蒙』等を読み, 植物採集に励み, 独
学で植物分類学を研究し, 描画の技術も身に付けた. 「植物学雑誌」(1887)の創刊に加わり, 1888
(明治 21)年から処女作『日本植物志圖篇』(Illustrations of the Flora of Japan)を自費出版する
(第 11 集, 1892. で中断. 全部で 75 図). 1899 年『新撰日本植物圖説
顕花及羊歯類部』(1903 年
第 2 巻第 8 集で中断)を,1902(大正元)-1911(昭和 14)年『大日本植物志』(注1)(第 1 巻. 1-4 集の
み刊)を出版し, 1912-1939 年東京大学植物学教室講師を務め, 1927 年理学博士の学位を取得した.
日本全国の植物を精力的に採集して, 日本人植物学者で最も多くの日本産植物種を記載した.
604
種の新種を発見して, 日本産の植物およそ 5,500 種のうち, 新種・新変種併せて記載・命名した植物は
2,500 以上といわれる. 牧野富太郎は本草学と近代植物学を学び, 彼自身常に野山で採集して植物を熟
知していたので, 内外の著書を比較対比しつつ(注2), 多くの種を英語で記載し発表した. 日本で本草
家に知られていてもラテン語の学名で欧米流に発表していなかったものは学界にとって新種とされた
のである(注3).
牧野富太郎の収集した標本の多くは首都大学東京(旧東京都立大学)牧野標本館に
所蔵されている.
また, 標本を生き生きと活写した優れた植物図を作成し『牧野日本植物圖鑑』(1940)を著し,「植物
研究雑誌」(1916)を創刊した. 更に, 民間の植物同好会による採集会を指導して, 植物知識の啓蒙・普
及活動にも貢献した(注4). 1951 年第一回文化功労者に選ばれ, 1953 年東京都名誉都民第一号となり,
没後, 1957 年文化勲章(追贈)を受けた. 高知市には県立牧野植物園, 東京都練馬区には牧野記念庭園が
ある.
― 100 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
牧野富太郎が命名した「属名」…ササ属(Sasa )[柴田桂太との連名で]・ケイビラン属
(Alectorurus )
・ エキサイゼリ属(Apodicarpum )
・カンチク属 (Chimonobambusa )
・クラガリ
シダ属(Drymotaenium )・ウラハグサ属 (Hakonechloa )
・ ヤッコソウ属(Mitrastemon )・
イガホオズキ属(Physaliastrum )・ ヤダケ属(Pseudosasa )・ヒメウズ属 (Semiaquilegia )・
ナリヒラダケ属(Semiarundinaria )・ オカメザサ属(Shibataea )・ ハダカホオズキ属
(Tubocapsicum )等
(科和名)
リンドウ
ユキノシタ
スミレ
キク
チャセンシダ
バショウ
ツチトリモチ
モクセイ
キキョウ
ツツジ
ベンケイソウ
ユキノシタ
スミレ
(種和名)
オヤマリンドウ
シコクチャルメルソウ
マキノスミレ
ホソバニガナ
オオタニワタリ
バショウ
ツチトリモチ
ヤマトレンギョウ
ヒナシャジン
ツガザクラ
タイトゴメ
ヒトツバショウマ
ノジスミレ
(学
名)
Gentiana makinoi Kusnez.
日本固有種
Mitella makinoi H. Hara
Viola makinoi H. Boiss.
Ixeris makinoana (Kitam.) Kitam.
Asplenium antiquum Makino
Musa basjoo Makino
Balanophora japonica Makino
Forsythia japonica Makino
日本固有種
Adenophora maximowicziana Makino
Phyllodoce nipponica Makino
Sedum oryzifolilum Makino
Astilbe simplicifolia Makino
Viola yedoensis Makino
種形容語:antiquus(古代の, 古い), basjoo(バショウ[日本名]), oryzifolius(イネ属 [ Oryza ] のような葉の),
simplicifolius(単葉をもつ),
注
yedoensis(江戸の)
1 「ヤマザクラからホテイランまで, わずかに 9 種を記載したにとどまったが, その完璧の記載文・精巧な図
版よりなるこのフォーリオ版 4 冊はわが植物記載学を中外に示して誇るに足るものであった.」上野益三『日
本博物学史』(1973) 平凡社,
p.152
var. speciosa (Schltr.) Makino
注
ラン科
ホテイラン Calypso bulbosa
(L.) Reichb. fil.
種形容語:bulbosus(鱗茎・球根状の), speciosus(華やかな, 美しい)
2 牧野富太郎は全国を踏査するため巡歴し, 採集に明け暮れる生涯を送ったが, また一方で, 4 万 5,000 冊の
蔵書を誇る書斎の人でもあった.
植物研究にとって内外の書籍を博覧することは必須なことであった.
私財を投じて形成した幅広く多様な蔵書の世界は, 植物研究の枠を超えている.
高知県立牧野植物園に
所蔵.
注
3 木村陽二郎『生物学史論集』(1987) 八坂書房, p. 321 参照.
注
4 「牧野富太郎は植物採集を通じて全国の植物同好の人たちと交わり, その人たちの地方に於ける植物研究を
指導した.
植物分類学の研究には標本の集積が必要で, それは大学や博物館の少数の専門家だけでは決し
てできない.
事実, 日本の植物研究の進歩は, 各地の同好研究者の努力によって得られた標本や情報の提
供によって支えられてきた.
てた.」
14.
牧野富太郎はそのような各地の植物研究熱に火をつけ, 研究会や研究者を育
田村道夫編『日本の植物
研究ノート
分類・系統学へのアプローチ』(1981) 培風館,
p.10
白井光太郎 (1863-1932)
明治時代の植物病理学者・樹木学者で, 博物学史研究の草分け. 旧東京帝国大学農科大学・東
京大学教授.
南方熊楠とも交際があった.
著『日本博物学年表』(1891, 改訂増補 1934),『最新植物病理学』(1903),『日本菌類図譜』(1905),
講演集『日光』(1915),『植物妖異考』(1925),『植物渡来考』(1929),『樹木和名考』(1933)等
― 101 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
(科和名)
エゴノキ
ヤナギ
ユキノシタ
(種和名)
コハクウンボク
シライヤナギ
ウメウツギ
(学
名)
Styrax shiraianus Makino
Salix shiraii Seemen
Deutzia uniflora Shirai
日本固有種
種形容語:uniflorus(単花をつける)
15.
池野成一郎 (1866-1943)
旧東京帝國大学農科大学教授.
1896(明治 29)年ソテツの精子を発見した.
[イチョウの精子を発見したのは平瀬作五郎(1856-1925) ]
種子植物とシダ植物の類縁を明確に
して, 植物分類学に貢献した.
平瀬作五郎や牧野富太郎等不遇の学者をかばい育てた進歩的なヒューマニストといわれる. ローマ字
論者でローマ字書きの遺伝学書『Zikken‐Idengaku』(1928)がある.
「博物学的植物学及び精密学的植物学」(東洋学芸雑誌 29 巻 373 号, 1912),『植物系統學』(1914)
(科和名)
ヤナギ
セリ
16.
(種和名)
イケノヤナギ
エキサイゼリ
(学
名)
Salix ×ikenoana Kimura
Apodicarpum ikenoi Makino
南方熊楠 (1867-1941)
博物学者・生物学者・民俗学者で, 生物, 民俗, 鉱物, 文学, 宗教学などほとんど独学での研究
であった. 大学予備門(後の旧制第一高等学校)を中退して渡米したが, アメリカの大学も中退.
菌類や地衣類のような隠花植物を収集・研究し, 西インド諸島等を旅行後渡英し, 大英博物館などで
独学した. 在英研究 8 年にも及び, 同博物館の東洋調査部員として考古学や人類学を研究し, 彼の
論文多数が科学雑誌「ネイチャー」に掲載された(注1).
南方熊楠は十数ヶ国語に通じ, 孫文との親交も有名. 帰国(1900 年)後は, 田辺市で粘菌学者として
菌類の採集・研究に力を注ぎ 70 種もの新種を発見した.
1905(明治 38)年秋, 46 点の粘菌標本を大英
博物館に寄贈. これがイギリス菌学会会長アーサー・リスター Arthur Lister(1830-1908) の目にとま
り, イギリスの植物学雑誌に発表され, リスタ-父娘との交流が始まった.
1917(大正 6)年, 自宅の柿の木から新属新種となる粘菌を発見した. この粘菌はアーサーの娘
グリエルマ・リスター Gulielma Lister(1860-1949) によって記載され,“Minakatella longifila”G.
Lister という学名が付けられた(和名:ミナカタホコリ).
南方熊楠は日本民俗学にも貢献し, 博覧強記・奇行の人として知られているが, 明治政府が蛮行す
る神社合祀政策は, 豊かな自然と歴史の宝庫である“鎮守の杜”を破壊するものであると強く抗議して,
神社合祀反対意見を記したいわゆる『南方二書』
(1911, 松村任三宛の, 協力を要請した 2 通の長文書簡)
を 50 部限定版の 42 ページの小冊子として自費出版した(それを印刷し, 各方面の識者に配布して南方
熊楠の運動を助けたのが柳田國男である). この運動が縁で柳田國男(当時内閣法制参事官)や植物学
者白井光太郎・松村任三らと親しく頻繁に文通をするようになった. 彼は, 2005 年登録の世界文化
遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれる“熊野の森”を研究フィールドとして, 万物に興味をもち
森羅万象を探求した在野の研究者で, 自然保護の大切さを強く訴えた.
「訂正本邦産粘菌目録」(1913), 「現今本邦に産すと知れた粘菌種の目録」(1927)の他, 著書には
『十二支考』
(1914 年 6 月より雑誌「太陽」に 10 年にわたり連載),『南方閑話』(1926),『南方随筆』
(1926)など多数ある.
― 102 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
(科和名)
キセルゴケ
(種和名)
クマノチョウジゴケ
(学
名)
Buxbaumia minakatae
S. Okam.
(蘚類)
南方熊楠が発見・採集して, 岡村周諦が記載・命名をした.
北海道~四国;中国, 朝鮮, シベリアと北米東部に隔離分布する
注
1 南方熊楠の「ネイチャー」誌(1869 年創始した週刊科学雑誌)への投稿は, 帰国後も続き生涯に 51 本にも及
び,「1985 年に調べたところ, 1 人で書いた論文の掲載数では, 世界の誰よりも多かった」という.(ネイ
チャー誌の日本特派員だったアラン・アンダーソン氏 [ 現ニューサイエンティスト編集長 ] )朝日新聞
2005 年1月 15 日付(夕刊)科学劇場記者席の項
「ネイチャー」誌に熊楠が寄稿した英文論考および関連文章全 63 編の完訳が『南方熊楠英文論考
[ネイ
チャー] 誌編』(2005) として集英社から刊行された.
17.
岡村金太郎 (1867-1935)
矢田部良吉のもとで藻類学を研究し, 日本海藻学を開拓した海藻学者. 水産講習所(現東京海洋
大学)教授・所長.
著『海藻学汎論』(1900),『日本海藻図説』1~6 冊(1900-1902),『「日本海藻図譜』1~7 巻(1907-1942),
『日本藻類図譜』(1907-1935),『浅草海苔』(1909),『藻類系統学』(1930),『日本海藻誌』(1936)
(科和名)
ツカサノリ
ムカデノリ
ムチモ
(種和名)
キヌハダ
キョウノヒモ
ムチモ(褐藻類)
(学
名)
Callophyllis okamurae Silva
Grateloupia okamurae Yamada
Cutleria cylindrica Okamura
(紅藻類)
(紅藻類)
種形容語:cylindricus (円柱状の)
18.
早田文蔵 (1874-1934)
松村任三を継いで分類学を担当した東京大学植物学科教授. 松村任三に師事し, 台湾植物と
インドシナ植物の解析的研究をした.
著『台湾植物誌』(1906, 松村任三との共著),『台湾植物図説』全 10 巻(1911-1921)
早田文蔵が命名した「属名」……ヒメタニワタリ属( Boniniella )・ホウビシダ属
( Hymenasplenium )
(科和名)
(種和名)
イネ
ミヤマクマザサ
ウマノスズクサ オオカンアオイ
ラン
リュウキュウエビネ
19.
(学
名)
Sasa hayatae Makino
Heterotropa hayatana (F. Maek.) F. Maek.
Calanthe okinawensis Hayata
柴田桂太(1877-1949)
東京大学植物学科教授. わが国の植物生理化学の基礎を築いた.
竹の解剖学的研究をしたので,オカメザサの属名にその名を残す.
― 103 ―
初め牧野富太郎と共に
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
(科和名)
イネ
イネ
20.
(種和名)
オカメザサ
ミヤコザサ
(学
名)
Shibataea kumasaca Zoll.
属名に
Sasa nipponica (Makino) Makino et Shibata
中井猛之進 (1882-1952)
東京大学教授の植物分類学者. 上高地の河原で, 日本で初めてケショウヤナギを発見.
インドネシアのボゴール植物園の 12 代園長(1944-1946) を務めた.
著『大日本樹木誌』改訂版(1927),『朝鮮植物誌』(1909-1911),『朝鮮森林植物編』22 巻(1913-1939),
『東亜植物図説』(1935-1950)
中井猛之進が命名した「属名」……ウスヒメワラビ属 (Acystopteris )・ヨコグラノキ属
(Berchemiella
)・ケショウヤナギ属(Chosenia )・シケチシダ属(Cornopteris )
・アゼトウナ属
(Crepidiastrum )・タカノツメ属(Evodiopanax )・オゼソウ属(Japonolirion )・
チャボツメレンゲ属(Meterostachys
(科和名)
アブラナ
タデ
キク
ニレ
21.
(種和名)
ソウウンナズナ
オヤマソバ
アゼトウナ
エノキ
)・メダケ属(Pleioblastus )・スズタケ属(Sasamorpha )
(学
名)
Draba nakaiana H. Hara
Aconogonon nakaii (H. Hara) Ohwi
Crepidiastrum keiskeanum (Maxim.) Nakai
Celtis sinensis Pers. var. japonica (Planch. ) Nakai
小泉源一 (1883-1953)
京都大学理学部植物学科の植物分類学者で, カエデ科, バラ科を専攻した. 「襲速紀(そはやき)
」
要素という用語の命名者で,「襲」は熊襲の襲で南九州一帯を指し,「速」は速水瀬戸(豊後水道, 四国と
九州の間),「紀」は紀の国(紀州)を指す植物分布標識のひとつ.
『日本薔薇科植物考』(1913),『東亜植物考察』ほか論文多数あり.
大井次三郎・北村四郎・田川基二・
岡本省吾等多くの研究者を育てた.
小泉源一が命名した「属名」…ツクシガヤ属(Chikusichloa )
(科和名)
ゴマノハグサ
キク
(種和名)
ベニシオガマ
オオバヨモギ
キク
カンサイタンポポ
小泉秀雄 (1886-1945 )
(学
名)
Pedicularis koidzumiana Tatewaki et Ohwi
Artemisia koidzumii Nakai
var. megalophylla Kitam.
Taraxacum japonicum Koidz.
は小泉源一の弟で, 寒地植物採集家. 北海道上川中学校教諭
の頃, 大雪山や南・北アルプスへよく出かけた.
後に, 松本女子師範学校教諭・東京の共立女子薬学専
門学校教授. 大雪山系の“小泉岳”(標高 2,158m)の山名にも彼の名を残す.
(科和名)
イネ
(種和名)
ユキクラヌカボ
(学
名)
Agrostis hideoi Ohwi
― 104 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
ヤナギ
エゾミヤマヤナギ
Salix hidewoi Koidz.
(綴り字の違いに注意)
兄(小泉源一)には姓が, 弟(秀雄)には名が献名されている
キク
Taraxacum yuparense H. Koidz.
タカネタンポポ
種形容語:yuparensis (夕張[岳]の)
22.
武田久吉 (1883-1972)
高山植物の研究者で, 北大水産専門部講師・京都大学農学部林学科講師・日本山岳会会長等を務め
た. 英国公使 アーネスト・サトウ E. M. Satow の次男で, 尾瀬の自然保護運動の先駆者. 「池塘」
という用語の命名者. 論文「色丹島植物誌」(1914)でロンドン大学から学位を得た. その中で顕花
植物とシダ類とを併せて 324 種を記載・報告した.
和名:“ハヤチネウスユキソウ”(キク科)の命名者.
著『高山植物圖彙』(1932), 田辺和雄との共著『日本高山植物図鑑』(1950),『高嶺の花』(1956),
『尾瀬と鬼怒沼』,『尾瀬』,『民俗と植物』等
(科和名)
ウルップソウ
サクラソウ
ツツジ
23
(種和名)
ユウバリソウ
テシオコザクラ
シラタマノキ
(学
名)
Lagotis takedana Miyabe et Tatewaki
Primula takedana Tatewaki
Gaultheria miqueliana Takeda
澤田武太郎 (1899-1938)
箱根植物の研究者. シーボルトの『日本植物誌』に‘オタクサ’とあるのを, シーボルトの「お瀧
夫人」つまり‘お瀧さん’の意味であることを明らかにした. 著『箱根植物雑記』ⅰ~ⅵ
(科和名)
キク
ラン
24
(種和名)
キントキヒゴタイ
ハコネラン
(学
名)
Saussurea sawadae Kitam.
Ephippianthus sawadanus Ohwi
館脇 操 (1899-1976)
北海道大学教授で, 同大付属植物園園長を歴任. 「根室落石岬のアカエゾマツ林」 ・「北日本
に於けるハヒマツの分布」・「 南千島国後島に於ける湿原と砂丘上のアカエゾマツ林」等の論文を発表
し北海道高山帯植物の分類学的研究・森林生態学, 特にアカエゾマツ林の群落学的研究をした.
著『日高様似アポイヌプリの植物』(1928),『色丹島植物調査報告』(1940),『植物誌北方篇』(1945),『千
島列島の植物地理学的研究』(1957),『 北太平洋諸島の森林生態学的研究』(1960),『北海道の植物』非
売品(1964),『北方植物の旅』(1971)
(科和名)
イネ
キンポウゲ
(種和名)
エゾミヤマザサ
シレトコトリカブト
(学
名)
Sasa tatewakiana Makino
Aconitum misaoanum Tamura et Namba
姓(館脇)ではなく,名(操)が献名されている
ホシクサ
コケヌマイヌノヒゲ
(知床半島の固有種)
Eriocaulon satakeanum Tatew. et K. Ito
― 105 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
25 三木
茂 (1901-1974)
大阪教育大・大阪市立大教授の古植物学者. 日本の植物遺体の研究を続け,1941(昭和 16)年
スバールバル諸島産の化石種 Sequoia disticha O. Heer に近縁のものが日本(新生代三紀鮮新世の地
層中)にもあることを認め,それらが対生葉をもつ点に着目して葉が互生の北アメリカに現生するセコ
イア属 Sequoia から分け,新属 Metasequoia
Miki を設けた.
‘ Meta ’とは“後の”の意味.
その 4 年後の 1945 年, 中国四川省の長江(揚子江)支流磨刀渓村(現湖北省)の奥地で,林務官の王
戦によって発見された生木の針葉樹が,この属のものであることがわかって一躍世界の注目を浴びた.
スギ科セコイア(Sequoia sempervirens (Lamb.) Endl. ) は南部オレゴンと中部カリフォルニアに至る海岸地方の
標高 900m 以上の高地に自生する常緑の大高木針葉樹(世界一の巨木)で, その名はアメリカ先住民の指導者であったセ
コイア Sequoya (1843 年没)に因む. 材は深褐赤色で‘ Red wood ’といわれ, 材質がよい.
(科和名) (種和名)
スギ
メタセコイア
スイレン
オグラコウホネ
(学
名)
Metasequoia glyptostroboides Hu et Cheng
Nuphar oguraense Miki
属名は中性
種形容語:sempervirens(常緑の), glyptostroboides(Glyptostrobus 属に似ている), oguraensis(京都巨椋池の)
このように生きたものよりも化石の方が先に発見されて命名されたのは非常に珍しいことである.
メタセコイア(別名アケボノスギ)は, 1949 年にアメリカで育てた苗が日本にも伝えられ(皇居吹上御苑),
現在では広く各地の庭園・公園などに植えられている.
著『山城水草誌』(1937),「生きていた化石植物 Metasequoia に就いて」(植物学雑誌
61:108.
1948),『メタセコイア(生ける化石植物)』(1953), 英文『日本のヒシ属』(Trapa of Japan, 1952)
26.
本田正次 (1897-1984)
東京大学教授.
著『大綱日本植物分類学』(1930)向坂道治との共著,『色彩図版全植物辞典』(1932),『大日本植物誌』(1938)
中井猛之進との共監修,『日本植物名彙』(1939)
本田正次が命名した「属名」…アマナ属(Amana )
(科和名)
ブナ
ヒノキ
(種和名)
ハナガガシ
ヒノキアスナロ
ホシクサ
ゴマシオホシクサ
(学
名)
Quercus hondae Makino
Thujopsis dolabrata (L. f.) Siebold et Zucc.
var. hondae Makino
Eriocaulon senile Honda
種形容語:dolabratus(斧オノ形の), senilis (老人の,白毛をもつ)
27.
大井次三郎 (1905-1977)
カヤツリグサ科を専門とする植物分類学者.
著『日本植物誌』顕花編(Flora of Japan, 1953 )・シダ編(1957)(注1),「外人による日本植物の採集
史」(自然科学と博物館 35 巻 9-10 号,1968), 編著『日本の野生植物―草本編』(1981)全 3 巻
― 106 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
(科和名)
カヤツリグサ
ユリ
ツチトリモチ
注
(種和名)
ツクシオオガヤツリ
ナガバジャノヒゲ
キュウシュウツチトリモチ
(学
名)
Cyperus ohwii Kuekenthal
Ophiopogon ohwii Okuyama
Balanophora kiusiana Ohwi
1 これは日本人の手による初めての日本の植物誌であった.
いて出版された.
同著はさらに英語版, 第二版, 増補版と引き続
本書で扱われていないトカラ列島以南の南西諸島の植物については, 初島住彦
(1906 - 2008 )によって 1971 年に『琉球植物誌』が, 次いでそれの増補版が出版された.
更に, 米国国立
標本館(スミソニアン研究所)のウォーカー(E. H. Walker, 1899-1991)による“ Flora of Okinawa and
Southern Ryukyu Islands ”と豊田武司(1934- ) の『小笠原植物図譜』(1981) が刊行されて,“日本の
植物(相)の 全貌”をほぼ窺うことができるようになった.
28.
北村四郎 (1906-2002)
京都大学教授. キク科(アザミ属)の分類専攻. カラコルム・ヒンズークシ学術探検隊に
参加し, アフガニスタンを調査した. その後もヒマラヤ等世界各地を現地調査で訪れた.
著『日本菊科植物誌』,『菊』, 編著『ネパールヒマラヤの顕花植物』, 編著『アフガニスタン植物誌』
共著『原色日本植物図鑑・草本』全 3 巻(1957-1964), 共著『原色日本植物図鑑・木本』全 2 巻(1979),
編著『滋賀県植物誌』(1968),『北村四郎選集』全 5 巻(1982-90)
北村四郎が命名した「属名」……ミヤマヨメナ属(Miyamayomena )
・スイラン属(Hololeion
)・
オオモミジガサ属(Miricacalia )・ハマギク属(Nipponanthemum )…以上全てキク科
(科和名)
メギ
キク
キク
(種和名)
サイコクイカリソウ
シマトウヒレン
ヒメウスユキソウ
(学
名)
Epimedium kitamuranum Yamanaka
Saussurea insularis Kitamura
Leontopodium shinanense Kitam.
種形容語:insularis(島の), shinanensis(信州[信濃]の)
29.
初島住彦 (1906-2008 )
戦前はニューギニア等で熱帯植物の研究に従事, 戦後鹿児島大・琉球大教授. 南方植物の研究者.
著『琉球植物誌』(1975),『日本の樹木』(1976), 中島邦雄との共著『琉球の植物』(1979),「鹿児島県
植物目録」(1986),『鹿児島の植物』(1981)など.
(科和名)
(種和名)
(学
名)
ウマノスズクサ ハツシマカンアオイ
Heterotropa hatsushimae F. Maek.
ラン
ハツシマラン
Odontochilus hatusimanus Ohwi et T. Koyama
ミズキ
リュウキュウハナイカダ
Helwingia liukiuensis Hatusima
30. 田川基二 (1908-1978)
京都大学教授でシダ植物研究者. 著『原色日本羊歯植物図鑑』(1959)
― 107 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
(科和名)
ゴマノハグサ
オシダ
オシダ
(種和名)
キノクニスズカケ
イノデモドキ
オニイノデ
(学
名)
Veronicastrum tagawae (Ohwi) Yamazaki
Polystichum tagawanum Kurata
Polystichum rigens Tagawa
種形容語:rigens (硬い)
31.
原
寛 (1911-1986)
東京大学教授. 国際植物命名規約に基づき, 日本の植物の学名を正した業績は大きい. また,
日本植物の進化に関連した植物相(北米東部と周北極地域, 中国とヒマラヤ地域)に着目し, 戦後, 海外
での植物研究の実現に奔走し, 東ヒマラヤの植物相解明に努めた.
著『日本種子植物集覧』(1948-54), 編著『ヒマラヤ東部の植物』(1966-75)
原
寛が命名した「属名」……ユキノシタ科ヤワタソウ属(Peltoboykinia )
(科和名)
ミズキ
ミズキ
ユキノシタ
(種和名)
ヤマボウシ
アメリカヤマボウシ
ハナネコノメ
(学
名)
Benthamidia japonica H. Hara
Benthamidia florida (L.) Spach (別名ハナミズキ)
Chrysosplenium album Maxim.
var. stamineum (Franch. et Sav.) H. Hara
種形容語:floridus(花満開の, 花で一杯の), albus(白色の), stamineus(顕著な雄しべをもつ)
32. 倉田
悟 (1922-1978)
東京大学農学部教授で樹木・シダ植物研究者.
著『原色日本林業樹木図鑑』第 1-5 巻(1976),『樹木と方言』正・続,『日本主要樹木名方言集』,
『植物と文学の旅』,『植物と民俗』,『樹木民俗誌』(1975),『シダ讃歌』(1978)
(科和名)
サトイモ
イワデンダ
ウラボシ
33.
(種和名)
(学
名)
アマギテンナンショウ Arisaema kuratae
Serizawa
アリサンイヌワラビ
Athyrium kuratae Serizawa
ミカワノキシノブ
Lepisorus mikawanus Kurata
前川文夫 (1908-1984)
東京大学教授. 牧野富太郎等の指導を受け, 系統学的観点から植物界を見直し, 植物系統学・
分類学に新しい発想を導入した.
著『日本の植物区系』(1977),『日本固有の植物』(1978)
前川文夫が命名した「属名」……ウスバサイシン属(Asiasarum )・サワラン属(Eleorchis )・
ハクウンラン属(Vexillabium )
(科和名)
シソ
(種和名)
ホナガタツナミソウ
ラン
ミスズラン
(学
名)
Scutellaria maekawae H. Hara
Androcorys japonensis F. Maekawa
― 108 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
ユリ
34.
キヨスミギボウシ
Hosta kiyosumiensis F. Maekawa
北川政夫 (1910-1995)
横浜国立大学教授. セリ科の分類専攻.
北川政夫が命名した「属名」……セリモドキ属(Dystaenia )・シムラニンジン属
(Pterygopleurum )・カノツメソウ属(Spuriopimpinella )…以上全てセリ科
(科和名)
セリ
セリ
(種和名)
ミヤマウイキョウ
ホソバトウキ
(学
名)
Tilingia tachiroei (Franch. et Sav.) Kitagawa
Angelica stenoloba Kitagawa
種形容語:stenolobus (狭浅裂の)
☆
35.
植物採集者として二人を挙げる:
須川長之助(1841-1925)
岩手県紫波町出身で, ロシアの分類学者 Maximowicz のために日本の植物を採集し, マキシモ
ヴィッチが死去するまで標本を送り続けた.
バラ科
1978(昭和 35)年, 紫波町名誉町民.
チョウノスケソウ(前掲 p.50)の「種和名」は, 長之助の貢献を記念し牧野富太郎が
付けた.
(科和名)
ツツジ
カバノキ
ユリ
メギ
(種和名)
コメツツジ
イヌシデ
ミヤマエンレイソウ
オオバメギ
(学
名)
Rhododendron tschonoskii Maxim.
Carpinus tschonoskii Maxim.
Trillium tschonoskii Maxim.
Berberis tschonoskyana Regel
姓(須川)ではなく,名(長之助)が献名されている
36.
山本 一(生没年不詳)
高知師範学校の教諭で, 1906(明治 39)年土佐清水市加久見天満宮のスダジイの根に寄生してい
る新植物を発見・採集し, 草野俊助に托し牧野富太郎に研究を依頼した. 牧野富太郎は山本 一の
貢献を記念し「種形容語」に彼の名を残した.
(科和名)
ラフレシア
(種和名)
ヤッコソウ
(学
名)
Mitrastemon yamamotoi Makino
― 109 ―
第6章 学名に名を残す日本人植物研究者達
◎
顕花植物・シダ植物以外でも属名に日本人名が当てられているものがある.
ミヤベゴケ属
Miyabea
(宮部金吾)
マルバミヤベゴケ
Miyabea rotundifolia Card.
蘚類 ナンジャモンジャゴケ科 ナンジャモンジャゴケ属 Takakia
(高木典雄)
Takakia lepidozioides Hatt. et Inoue
ナンジャモンジャゴケ
苔類 マキノゴケ科
マキノゴケ属
Makinoa
(牧野富太郎)
マキノゴケ
Makinoa crispata (Steph.) Miyake (三宅驥一)
Kintarosiphonia fibrillosa
紅藻類(海藻)
ケハネグサ属
ケハネグサ
(Okamura) Uwai et Masuda (岡村金太郎)
紅藻類(海藻)
ヤタベグサ属
ヤタベグサ
Yatabella hirsuta Okamura
蘚類
シノブゴケ科
(矢田部良吉)
粘菌類(変形菌)
ミナカタホコリ属
ミナカタホコリ Minakatella longifila G. Lister(注1)
(南方熊楠)
植物以外にも, タテハチョウ科
オオムラサキ(蝶)Sasakia charonda (Hewitson, 1863) (養蚕学者佐々木忠次郎)
記載に使われた材料は 1861(文久元)年 5-7 月来日した R. Fortune によって横浜付近で採集されたもの
種形容語:rotundifolius(円形葉の), lepidozioides(スギバゴケ属 [ Lepidozia ] に似た), crispatus(縮れた), fibrillosus
(繊維質の), hirsutus(毛が多い), longifilus(長い糸状のものをもつ), charonda(BC.6 世紀, イタリアのシシリア
出身で, ギリシャの立法学者 Charondas に因む)
注
1 Gulielma Lister
(1860-1949) と, 彼女の父 Arthur Lister (1830-1908) は 共に菌類研究者で, A. Lister
は『粘菌誌』(1894) を出版し, 娘 G. Lister は 1911 年と 1925 年にその改訂版を出した.
― 110 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
第7章
日本植物:学名あれこれ
1. 日本名起源の属名
(科和名)
アケビ
ユリ
ミズキ
イネ
ウコギ
(属 名)
(属名命名者)
Akebia Decaisne
Amana Honda
Aucuba Thunb.
Chikusichloa
Koidz.
Fatsia Decne. et Planch.
日本名「アケビ」から
日本名「アマナ」から
日本名の方言「アオキバ」から.
常緑低木.
Chikusi(筑紫)+ chloe(草)
ヤツデ(八手)の「八」に由来.
一説には
ハッシュ(八手)の読みからきたという.
イチョウ
Ginkgo
L.
中国語「銀杏」(ギンナン)の誤った音読み(ギンキョウ)に
基づく. Kaempfer が自著『廻国奇観』に Ginkjo とするべきを Ginkgo と誤植
されたのに由るとも.
リンネは出典をあげ, それがケンペルに拠っていることを
示している.
イネ
イシゲ
Hakonechloa Makino
Ishige Yendo
Hakone(箱根) + chloa(若草).
日本名「イシゲ」(石の毛)から.
潮間帯中部の
岩上に生える褐藻類で, からだは硬く,不規則な樹枝状に枝を出す.
乾くと黒くて堅く干からびたようになり,濡れるとやや褐色になる.
マツブサ
Kadsura
Juss.
日本名「サネカズラ」から.
cf. コショウ科
キク
メギ
ミカン
フウトウカズラ
Miyamayomena Kitamura
Nandina
Thunb.
Orixa
Thunb.
Piper kadzura (Chois.) Ohwi
日本名「ミヤマヨメナ」から.
日本名「ナンテン」(南天)から.
日本名「コクサギ」の片仮名文字を見誤ってヲリサギと読ん
だことから.
イネ
ミカン
Sasa Mak. et Shibata
Skimmia Thunb.
日本名「ササ」(笹)から.
日本名「ミヤマシキミ」の一部をとる.
注意:シキミ(シキミ科)は別科の植物.
マツ
ツツジ
Tsuga Carrière
Tsusiophyllum Maxim.
この属の一種の日本名「ツガ」による.
Tsutsuzi(ツツジ)+phyllon (葉).
葉の感じがサツキなどのツツジに似るから.
アブラナ
フジマツモ
Wasabia Matsum.
Benzaitenia Yendo
日本名「ワサビ」から.
日本名「ベンザイテン」(弁財天)から.
潮間帯下部に生育するユナ(紅藻類)に寄生する海藻.
された神奈川県江ノ島の弁財天裏に因る.
(科和名)
アケビ
ユリ
ミズキ
(種和名)
アケビ
アマナ
アオキ
(学
名)
Akebia quinata (Thunb.) Decaisne
Amana edulis (Miquel) Honda
Aucuba japonica Thunb.
― 111 ―
最初に採集
第7章 日本植物:学名あれこれ
イネ
ツクシガヤ
ウコギ
イチョウ
ヤツデ
イチョウ
Chikusichloa aquatica Koidz.
Fatsia japonica (Thunb.) Decne. et Planch.
Ginkgo biloba L.
(1 科 1 属 1 種の裸子植物,中国原産)
日本には野生がなく, 室町時代から植栽されている.
現在, 中国安徽(アンホイ)省・
浙江省天目山にわずかに自生しているだけといわれる.
ヨーロッパには,ケンペルに
よって初めて紹介されて, リンネが記載・命名した.
イネ
Hakonechloa macra (Munro) Makino
ウラハグサ
葉の表面は白味を帯びて常に裏を向き, 本当の裏がかえって表向きになる
(ウラハグサ属は本州[関東~紀伊半島]の太平洋側のみに生育する日本固有属で 1 属 1 種)
イシゲ(褐藻類) Ishige okamurae Yendo
サネカズラ
Kadsura japonica (Thunb.) Dunal
イシゲ
マツブサ
cf. コショウ
Piper kadzura (Chois.) Ohwi
フウトウカズラ
下線部‘z’ に注意
Miyamayomena savatieri (Makino) Kitam.
ナンテン
Nandina domestica Thunb. ナンテン属は東アジアにこれ 1 種のみ
コクサギ
Orixa japonica Thunb.
アポイザサ
Sasa samaniana Nakai
ミヤマシキミ
Skimmia japonica Thunb.
ツガ
Tsuga sieboldii Carrière
ハコネコメツツジ
Tsusiophyllum tanakae Maxim.
ベンテンモ(紅藻類) Benzaitenia yenoshimensis Yendo
キク
ミヤマヨメナ
メギ
ミカン
イネ
ミカン
マツ
ツツジ
フジマツモ
種形容語:quinatus(五小葉の, 五数の), edulis(食用の,食べられる), aquaticus([淡]水生の), bilobus(二浅裂の),
macer(痩せた, 貧弱な), Okamura(岡村金太郎), domesticus(国内の, 家庭の), samanianus(北海道様似の),
yenoshimensis(神奈川県江ノ島の)
属名と種形容語の両方に「日本」が入る学名
(科和名) (種和名)
キク
ハマギク
(学
名)
Nipponanthemum nipponicum (Franch. ex Maxim.) Kitam.
日本固有の属で, 1 属 1 種.
キンポウゲ
ミシマバイカモ
植物以外では,
トキ科
クシカマアシムシ科
スズキ科
Ranunculus nipponicus (Makino) Nakai
var. japonicus H. Hara
トキ
ヨシイムシ(昆虫)
アラ(魚)
チョウチョウウオ科
次例は種形容語と変種名に「日本」が入る
シラコダイ(魚)
Nipponia nippon
(Temminck)(注1)
1属1種の鳥
Nipponentomon nippon (Yosii) Imadaté et Yoshii
Niphon spinosus Cuvier et Valenciennes
Chaetodon nippon Steindachner et Döderlein
種形容語の nippon は語尾が付いていないので属名と同格に置かれた単数主格の名詞である.
種形容語:entomon(昆虫), spinosus(刺の多い)
注
1 属名変更の場合, 動物では一般に最初の命名者名に丸括弧を付けるだけで済ませることもある.
シーボルトが送ったトキの剥製標本をライデン博物館館長 Temminck
が研究し, 1835 年トキを
Ibis 属として発表したが, 1852 年 Reichenbach は Nipponia 属を新規に設け, 1871 年大英博物館の
グレーが Nipponia nippon として分類した.
― 112 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
2. 日本名起源の種形容語
種形容語に日本での呼称をそのまま使用している学名がある. その綴り字には注意が必要である.
(科和名)
キク
ジンチョウゲ
アオイ
ベニタケ
ベンケイソウ
キク
バラ
コショウ
cf. マツブサ
クワ
(種和名)
フクド
コガンピ
ハマボウ
ハツタケ(菌類)
イワレンゲ
イワヨモギ
ヤマザクラ
フウトウカズラ
(学
名)
Artemisia fukudo Makino
Diplomorpha ganpi (Siebold et Zucc.) Nakai
Hibiscus hamabo Siebold et Zucc.
Lactarius hatsudake Tanaka
Orostachys iwarenge (Makino) H. Hara
Artemisia iwayomogi Kitamura
Prunus(Cerasus) jamasakura Siebold ex Koidz.
Piper kadzura (Chois.) Ohwi
サネカズラ
Kadsura japonica (Thunb.) Dunal 下線部‘s’ に注意
ヒメコウゾ
Broussonetia kazinoki Siebold
同属のカジノキ B. papyrifera (L.) Vent. と近似している
アカネ
キヌタソウ
ヤナギ
キヌヤナギ
ヤナギ
コリヤナギ
カヤツリグサ
コウボウムギ
ラン
クモキリソウ
コンブ
クロメ(褐藻類)
ナガマツモ
クロモ(褐藻類)
キシメジ
マツタケ(菌類)
ショウガ
ミョウガ
マキ
ナギ
モエギタケ
ナメコ(菌類)
ツバキ
サザンカ
ナデシコ
センノウ
キシメジ
ホンシメジ(菌類)
キク
シオギク
トベラ
トベラ
ヤマノイモ
オニドコロ
サトイモ
ウラシマソウ
ヤドリギ
オオバヤドリギ
植物以外では, コオロギ科
エンマコオロギ
カネタタキ科
カネタタキ
Galium kinuta Nakai et H. Hara
Salix kinuyanagi Kimura
Salix koriyanagi Kimura
Carex kobomugi Ohwi
Liparis kumokiri F. Maekawa
Ecklonia kurome Okamura
Papenfussiella kuromo (Yendo) Inagaki
(日本固有 1 属 1 種)
Tricholoma matsutake (S. Ito et Imai) Sing.
Zingiber mioga (Thunb.) Roscoe
Podocarpus nagi (Thunb.) Zoll. et Moritzi
Pholiota nameko (T. Ito) S. Ito et Imai ex Imai
Camellia sasanqua Thunb.
Lychnis senno Siebold et Zucc.
Lyophyllum shimeji (Kawam.) Hongo
Dendranthema shiwogiku (Kitam.) Kitam.
Pittosporum tobira (Thunb.) Aiton
Dioscorea tokoro Makino
Arisaema thunbergii Blume
subsp. urashima H. Hara
Taxillus yadoriki (Siebold) Danser
Teleogryllus emma (Ohmachi et Matsuura) 閻魔大王
Ornebius kanetataki
― 113 ―
(Matsumura)
鉦叩き
第7章 日本植物:学名あれこれ
3. 神話・伝説に由来する属名
(科和名)
キク
キンポウゲ
ツツジ
ラン
ツツジ
ジンチョウゲ
ユリ
(種和名)
ノコギリソウ
フクジュソウ
ヒメシャクナゲ
ヒメホテイラン
イワヒゲ
オニシバリ
キキョウラン
(学
名)
Achillea alpina L.
Adonis ramosa Franch.
Andromeda polifolia L.
Calypso bulbosa (L.) Reichb. fil.
Cassiope lycopodioides (Pall.) D. Don
Daphne pseudo-mezereum A. Gray
Dianella ensifolia (L.) DC.
バラ
チョウノスケソウ
セリ
ハナウド
シソ
ヒメハッカ
ヒガンバナ
スイセン
ラン
ヨウラクラン
ツツジ
アセビ
Dryas octopetala L. var. asiatica (Nakai) Nakai
Heracleum nipponicum Kitagawa
Mentha japonica (Miquel) Makino
Narcissus tazetta L. var. chinensis M. Roem.
Oberonia japonica (Maxim.) Makino
Pieris japonica (Thunb.) D. Don
種形容語:alpinus(高山の), ramosus(分枝した), polifolius(灰白色の葉をもつ), bulbosus(鱗茎状の), lycopodioides
(ヒカゲノカズラ属[Lycopodium ]に類する), pseudo - (偽の), ensifolius(剣形の葉の), octopetalus(八枚花弁の),
tazetta(小さな杯)
Achilles
古代ギリシャの医師 Achilles により, その有効成分(健胃, 強壮剤 achillein )を発見されたことに
よる.
あるいはギリシャ軍最大のトロイア戦争の英雄戦士アキレウス Achilles に因む.
彼はこ
の草(セイヨウノコギリソウ, yarrow, sneeezewort)で部下の兵士達の傷を治したという.
Adonis
ギリシャ神話に出てくる美青年.
彼は女神アフロディーテ Aphrodite に熱愛された.
欧州産の本
属のものは赤花をつけるので, これを狩りで猪に突き殺されたときのアドーニス Adonis の血にた
とえた.
Andromeda
ギリシャ神話のケーペウス Kepheus とカッシオペ Cassiopeia の娘.
美女で, 海の魔神への人
身御供にされ海辺の岩に鎖で縛られたがペルセウス Perseus に救われ, 妻となり, 死後星座になっ
た.
Calypso
ギリシャ神話の女神(妖精).
アトラス Atlas の娘で, Odysseus を 7 年間 Ogygia 島に引き留め
た海のニンフ(妖精).
Cassiope
ギリシャ神話の女神.
ケーペウス王の妃で, Andromeda の母親の Cassiopeia の名から. ヒメシ
ャクナゲ 属( Andromeda ) に類縁(同じツツジ科)のこのイワヒゲ属の属名に用いられている.
Daphne
ギリシャ神話の女神. Peneus 川の河神 ペーネイオス Peneios の娘. Apollon 神に愛されたが,
それを嫌い月桂樹に化身し, 転じてゲッケイジュ(月桂樹)のギリシャ名.
葉形の類似から再転し
てこの属に使用した.
Dianella
ローマ神話の女神ディアナ Diana (処女と狩猟の守護神で, ギリシャ神話の Artemis)の縮小形.
Dryas
ギリシャ神話の森の女神(樹の精).
-ella は縮小辞.
とから来たもの.
Heracles
転じてカシの木を指す.
葉が小さなカシの葉に似ているこ
蝶のチャイロドクチョウの属名 Dryas は同名である.
ユピテル Jupiter 大神とアルクメ-ナ Alcmena との息子でギリシャ伝説中の最大勇士. 彼に捧げ
られ, panakes herakleion (ヘラクレスの万能薬)といったことからついた名で, Pliny が最も
薬効の高い種類に対して与えたもの.
― 114 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
Menthe
地獄の女王 ペルセポネー Persephone に, ハッカに変えられたといわれるニンフのメンテー
Menthe に因む.
Narcissus
Theophrastus が付けた名.
ギリシャ神話の美青年(ケーピーソス Kephisos 河神とニンフのレイリオペーLeiriope の息子).
泉に映った自分の姿に恋をして死に, その後にこの花が咲き出したという神話がある.
また, こ
の植物が麻酔性(催眠性)をもつことに由来して, ギリシャ語 narkao (硬直する, 麻痺する,し
びれる)から, ヒポクラテス Hippocrates によって用いられたギリシャ古語より.
Oberon
中世ドイツ・フランスの伝説に出てくる妖精の王.
森や洞穴に住み,愉快な樹上の小人として描か
れる.
Pieris
ギリシャ神話の詩・芸術の女神ムーサ Musa 達の呼称ピーエリデス Pierides に因んで.
ロチョウの属名 Pieris と同名である..
参考:植物学名の由来比率
日本野生植物の学名由来を調べた一例を次に示す.
日本産シダ植物・顕花植物の 4,351 種(大井次三郎『日本植物誌』シダ篇及び顕花植物篇から)
属名
植物の形態・性情を表現したもの…………………………………約 53%
人名に由来したもの………………………………………………
約 17%
意味不明(語意は分かっても植物との繋がりが不明なものを含む)
約 9%
ギリシャ神話・ローマ神話や伝説に由来するもの………………約 8%
古い植物名をそのまま属名にしたもの……………………………約 5%
各地の土名をラテン語化して用いたもの…………………………約 5%
和名をラテン語化して用いたもの…………………………………約 1%
地名に由来するもの…………………………………………………約 1%
種形容語
植物の形態・性情を表現したもの………………………………
約 60%+
地名に由来するもの(最初の発見地名)…………………………… 約 20%+
人名に由来したもの…………………………………………………約 14%
植物の生態的特性(湿地・岩上生の等)…………………………… 約 2%
和名をラテン語化して用いたもの…………………………………約 2%
意味不明(語意は分かっても植物との繋がりが不明なものを含む)……約 1%
各地の土名をラテン語化して用いたもの…………………………約 1%
ギリシャ神話・ローマ神話や伝説に由来するもの………………約 0.5%
4. 色彩を示す属名・種形容語
4.1(属名)
( < g.はギリシャ語由来を示す )
(科和名)
(種和名)
(学
名)
モクセイ
ヒトツバタゴ
Chionanthus retusus Lindl. et Paxton
― 115 ―
モンシ
第7章 日本植物:学名あれこれ
< g. chion (雪)+ anthos (花)
樹上の白い花のかたまりを雪にたとえたもの.
この種の別和名は“ナンジャモンジャ”で, 長野県・岐阜県・愛知県の一部に遺存し,
対馬(長崎県)・朝鮮・台湾・中国大陸の一部に隔離分布する珍しい植物である.
ユリ
チャボシライトソウ Chionographis koidzumiana
< g. chion (雪)+ graphe (筆)
センリョウ
ヒトリシズカ
Ohwi
多数の小白花をつけた花穂を筆にたとえたもの.
Chloranthus japonicus Siebold
< g. chloros (黄緑)+ anthos(花)
ユキノシタ
シロバナネコノメ
Chrysosplenium album Maxim.
< g. chrysos (金色の)+ spleen (脾臓).
恐らく花の色と属中に薬効のある種を含むことによるもの.
ユリ
カタクリ
Erythronium japonicum Decne.
< g. erythros (赤色)
ゴマノハグサ
ツシマママコナ
赤紫色の花をつけるヨーロッパ種に付けられた.
Melampyrum roseum Maxim.
< g. melas (黒い)+ pyros (小麦)
ミカン
サンショウ
ある種の種子の色が黒いことからきた名.
Zanthoxylum piperitum (L.) DC.
< g. xanthos (黄色)+ xilon (材, 木質)
造語上は誤りで, Xantho- が正しい.
平嶋義宏『生物学名命名法辞典』(1994) 平凡社. p.266
種形容語:retusus(微凹形の,微凹頭の), roseus(バラ色の), piperitus(コショウ属[ Piper ]のような辛味のある)
4.2 (種形容語)
(科和名)
(種和名)
アカザ
シロザ
ヒユ
ノゲイトウ
ガガイモ
フナバラソウ
ユリ
ヤマユリ
ツツジ
キバナシャクナゲ
カヤツリグサ
コゴメスゲ
(学
名)
Chenopodium album L.
Celosia argentea L.
Cynanchum atratum Bunge
Lilium auratum Lindl.
Rhododendron aureum Georgi
Carex brunnea Thunb.
種形容語:albus(白色の), argenteus(銀白色の), atratus(黒くなった), auratus(黄金色の), aureus(黄金色の),
brunneus(濃褐色の)
Amethystea caerulea L.
ユリ
キチジョウソウ
Reineckea carnea (Andr.) Kunth
ハラタケ
クリイロカラカサタケ(菌類) Lepiota castanea Quel.
キク
ユキバヒゴタイ
Saussurea chionophylla Takeda
ホシクサ
ホシクサ
Eriocaulon cinereum R. Br.
ゼンマイ
ヤマドリゼンマイ
Osmunda cinnamomea L.
タコウキン
ヒイロタケ(菌類)
Pycnoporus coccineus (Fr.) Bond et Sing.
イッポンシメジ コンイロイッポンシメジ(菌類) Rhodophyllus cyanoniger (Hongo) Hongo
シソ
ルリハッカ
種形容語:caeruleus(青色の), carneus(肉紅色の), castaneus(栗色の), chinophyllus(雪白色葉の), cinereus
(灰色の), cinnamomeus(肉桂色の), coccineus(緋紅色の), cyanoniger(青黒い)
キンポウゲ
アカミノルイヨウショウマ
ユリ
キバナノホトトギス
ユリ
ヤブカンゾウ
キンポウゲ
クロバナハンショウヅル
Actaea erythrocarpa Fischer
Tricyrtis flava Maxim.
Hemerocallis fulva L. var. kwanso Regel
Clematis fusca Turcz.
― 116 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
ブナ
アラカシ
Quercus glauca Thunb.
種形容語: erythrocarpus(赤色果実の), flavus(黄色の), fulvus(褐色の), fuscus(暗茶色の), glaucus(灰白色
の, 帯白色の)
イチヤクソウ
ベニタケ
ヒユ
ユリ
ニシキギ
イワデンダ
Pyrola incarnata Fisch.
ルリハツタケ(菌類) Lactarius indigo (Schw.) Fr.
イヌビユ
Amaranthus lividus L.
キバナノアマナ
Gagea lutea (L.) Ker-Gawl.
Euonymus melananthus Franch. et Sav.
日本固有種
サワダツ
ミヤマメシダ
Athyrium melanolepis (Franch. et Sav.) Christ
ベニバナイチヤクソウ
種形容語:incarnatus(肉色の), indigo(藍色の), lividus(鉛色の, 青灰色の), luteus(黄色の), melananthus(黒
い花の), melanolepis(黒い鱗片の)
ガンコウラン
ガンコウラン
イラクサ
カラムシ
オシダ
ムラサキベニシダ
シソ
ヒメオドリコソウ
ベンケイソウ
イワベンケイ
ユリ
ヒメサユリ
ヤマモモ
ヤマモモ
Empetrum nigrum L. var. japonicum K. Koch
Boehmeria nipononivea Koidz.
Dryopteris purpurella Tagawa
Lamium purpureum L.
Rhodiola rosea L.
Lilium rubellum Baker
日本固有種
Myrica rubra Siebold et Zucc.
種形容語:niger(黒色の), niveus(雪白色の), purpurellus(帯紅紫色の), purpureus(紅紫色の,紫色の), roseus
(バラ色の, 淡紅色の), rubellus(帯紅色の), ruber(赤色の)
ベニタケ
ヒガンバナ
イネ
スミレ
イボタケ
ユリ
ヒメシダ
イネ
Russula sanguinaria (Bull.) Fr.
キツネノカミソリ
Lycoris sanguinea Maxim.
カリヤス
Miscanthus tinctorius (Steud.) Hack.
シハイスミレ
Viola violacea Makino
スミレハリタケ(菌類)Bankera violascens (Alb. et Schw. ex Fr.) Pouz.
Disporum viridescens (Maxim.) Nakai
オオチゴユリ
ミドリヒメワラビ
Thelypteris viridifrons Tagawa
エノコログサ
Setaria viridis (L.) Beauv.
チシオハツ(菌類)
種形容語:sanguinarius(血紅色の), sanguineus(血紅色の), tinctorius(染色用の), violaceus(紫紅色の, スミレ
色の), violascens(淡紫紅色の), viridescens(淡緑色の), viridifrons(緑色葉状体の), viridis(緑色の)
5. 産地を示す種形容語
国内外の産地名を示す種形容語を用いた学名は極めて多数あり, その種の分布域を知る手がかりになる
場合が多いが, 注意すべき点は, その種が生育しているのは種形容語に用いられた産地のみに必ずしも
限られているものではないということである. その植物の最初の採集地であったり, 基準標本になっ
た植物の産地(地名)であることもある.
(科和名)
ツツジ
キク
(種和名)
アオノツガザクラ
イズカニコウモリ
(学
名)
Phyllodoce aleutica (Spreng.) A. Heller
Cacalia amaginensis Kitam.
― 117 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
イワデンダ
ヤマゴボウ
オシダ
モウセンゴケ
ナデシコ
カバノキ
キク
ユリ
キク
ヤシ
タコノキ
Diplazium amamianum Tagawa
ヨウシュヤマゴボウ
Phytolacca americana L.
オクヤマシダ
Dryopteris amurensis Christ
ナガバノモウセンゴケ Drosera anglica Hudson
アオモリマンテマ
Silene aomorensis Mizushima
Betula apoiensis Nakai
アポイカンバ
アシズリノジギク
Dendranthema occidentali-japonense
(Nakai) Kitam. var. ashizuriense Kitam.
キンコウカ
Narthecium asiaticum Maxim.
日本固有種
ビッチュウアザミ
Cirsium bitchuense Nakai
オガサワラビロウ
Livistona boninensis Nakai
Pandanus boninensis Warb.
タコノキ
アマミシダ
産地名:(アルファベト順)綴り字に注意する.
アリューシャン列島, 伊豆天城, 奄美大島, アメリカ, アムール河流域,
イギリス, 青森, 北海道アポイ岳, 西日本, 四国足摺(岬), アジア, 備中地方, 小笠原諸島
ユリ
ツツジ
ミズキ
クワ
カバノキ
ドクダミ
キク
アカネ
カヤツリグサ
バラ
スミレ
アカザ
ショウガ
ハイゴケ
Fritillaria camtschatcensis Ker-Gawler
エゾツツジ
Therorhodion camtschaticum (Pall.) Small
ゴゼンタチバナ
Cornus canadensis L.
ケグワ
Morus cathayana Hemsl.
チチブミネバリ
Betula chichibuensis H. Hara
日本固有種
ハンゲショウ
Saururus chinensis (Lour.) Baill.
チョウカイアザミ
Cirsium chokaiense Kitam.
ミサオノキ
Randia cochinchinensis (Lour.) Merrill
ダイセンスゲ
Carex daisenensis Nakai
カラフトイバラ
Rosa davurica Pallas
エイザンスミレ
Viola eizanensis (Makino) Makino
アッケシソウ
Salicornia europaea L.
クマタケラン
Alpinia formasana K. Schum.
フジハイゴケ(蘚類) Hypnum fujiyamae (Broth.) Paris
クロユリ
産地名:カムチャツカ(半島), カナダ, 中国, 秩父地方, 鳥海山, ヴェトナム南部, 伯耆大山, シベリアのダフリア地方
(バイカル湖以東), 比叡山, ヨーロッパ, 台湾, 富士山
ナデシコ
キク
ラン
カヤツリグサ
バラ
バラ
ホシクサ
キク
イネ
ヤナギ
キク
キク
ユリ
Silene gallica L.
ガンジュアザミ
Cirsium ganjuense Kitamura
ハチジョウシュスラン Goodyera hachijoensis Yatabe
イトキンスゲ
Carex hakkodensis Franch.
ミヤマフユイチゴ
Rubus hakonensis Franch. et Sav.
カライトソウ
Sanguisorba hakusanensis Makino
ヤクシマホシクサ
Eriocaulon hananoegoense Masam.
ハヤチネウスユキソウ Leontopodium hayachinense (Takeda) H. Hara et Kitam.
ナンブソモソモ
Poa hayachinensis Koidz.
ヒダカミネヤナギ
Salix hidaka-montana H. Hara
ノブキ
Adenocaulon himalaicum Edgew.
フタマタタンポポ
Crepis hokkaidoensis Babcock
ヤマトユキザサ
Smilacina hondoensis Ohwi
シロバナマンテマ
― 118 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
産地名:フランス, 岩手(岩鷲)山, 八丈島, 八甲田山, 箱根, 白山, 屋久島花之江河湿原, 岩手県早池峰, 北海道日高山
地, ヒマラヤ, 北海道, 本州
Aconitum ibukiense Nakai
ハマウツボ
ナンバンギセル
Aeginetia indica L.
ヤスデゴケ
イリオモテヤスデゴケ(苔類) Frullania iriomotensis Hatt.
シソ
シマジタムラソウ
Salvia isensis Nakai
サトイモ
イシヅチテンナンショウ Arisaema ishizuchiense Murata
(Arisaema 属は中性)
ウメノキゴケ
マキバエイランタイ(地衣類) Cetraria islandica (L.) Ach.
var. orientalis Asah.
アマモ
スガモ
Phyllospadix iwatensis Makino
Calanthe izu-insularis (Satomi) Ohwi et Satomi
ラン
ニオイエビネ
コバノイシカグマ
オドリコカグマ
Microlepia izu-peninsulae Kurata
カエデ
ハウチワカエデ
Acer japonicum Thunb.
日本固有種
ゼンマイ
ゼンマイ
Osmunda japonica Thunb.
ウルシ
ヌルデ
Rhus javanica L. var. roxburgii (DC.) Rehd. et Wils.
マツ
エゾマツ
Picea jezoensis (Siebold et Zucc.) Carr.
キンポウゲ
イブキトリカブト
産地名:伊吹山, インド, 西表島, 伊勢地方, 石鎚山, アイスランド, 東洋, 岩手(県), 伊豆諸島, 伊豆半島, ジャワ島,
蝦夷地(北海道)
バラ
キク
カヤツリグサ
ラン
ユキノシタ
キンポウゲ
キク
アブラナ
クマツヅラ
シソ
マツ
イネ
バラ
コンブ
サルオガセ
Filipendula kamtschatica (Pall.) Maxim.
カワラノギク
Aster kantoensis Kitam.
ヒメマツカサススキ
Scirpus karuizawensis Makino
キイムヨウラン
Lecanorchis kiiensis Murata
ボタンネコノメソウ
Chrysosplenium fauriei Franch.
var. kiotense (Ohwi) Ohwi
キタダケキンポウゲ
Ranunculus kitadakeanus Ohwi
キタダケヨモギ
Artemisia kitadakensis H. Hara et Kitam.
Cardamine kiusiana H. Hara
タカチホガラシ
ビロードムラサキ
Callicarpa kochiana Makino
オチフジ
Meehania montis-koyae Ohwi
チョウセンゴヨウ
Pinus koraiensis Siebold et Zucc.
チシマザサ
Sasa kurilensis (Rupr.) Makino et Shibata
チシマザクラ
Prunus nipponica Matsum.
var. kurilensis (Miyabe) Wilson
クロシオメ(褐藻類) Hedophyllum kuroshioense Segawa
クシロサルオガセ(地衣類) Usnea kushiroensis Asahina
オニシモツケ
産地名:カムチャツカ(半島), 関東地方, 軽井沢, 紀伊地方, 京都, 南アルプス北岳, 九州, 高知, 高野山, 高麗(朝鮮,韓国), 千島列島, 黒潮流域, 釧路
Musa liukiuensis (Masam.) Makino
ハスノハギリ
テングノハナ
Illigera luzonensis (Presl.) Merr.
イワデンダ
フクロシダ
Woodsia manchuriensis Hook.
シロソウメンタケ
メアカンナギナタタケ(菌類)Clavaria meakanensis Imai
スジゴケ
ナガサキテングサゴケ(苔類)
Riccardia nagasakiensis (Steph.) Hatt.
バショウ
イトバショウ
― 119 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
キク
ナンブタカネアザミ
ウマノスズクサ
ナンカイアオイ
ゴマノハグサ
ミゾホオズキ
キンポウゲ
イチリンソウ
カエデ
メグスリノキ
シシガシラ
シシガシラ
Cirsium nambuense Nakai
Heterotropa nankaiensis (F. Maekawa) F. Maekawa
Mimulus nepalensis Bentham
Anemone nikoensis Maxim.
Acer nikoense Maxim.
日本固有種
Struthiopteris niponica (Kunze) Nakai
綴り字に注意
サトイモ
コンブ
ユリ
クスノキ
スミレ
ユリ
日本固有種
Symplocarpus nipponicus Makino
リシリコンブ(褐藻類)Laminaria ochotensis Miyabe
タカクマホトトギス
Tricyrtis ohsumiensis Masam.
オキナワニッケイ
Cinnamomum okinawense Hatusima
Vilola orientalis (Maxim.) W. Becker
キスミレ
オゼソウ
Japonolirion osense Nakai
ヒメザゼンソウ
(オゼソウ属は日本固有属で, オゼソウは 1 属 1 種の固有種)
カヤツリグサ
オタルスゲ
Carex otaruensis Franch.
産地名:琉球, ルソン島, 旧満州, 雌阿寒岳, 長崎, 南部(盛岡)地方, 南海地方, ネパール, 日光, 日本, オホーツク,
大隈半島, 沖縄, 東洋, 尾瀬, 小樽
キク
ゴマノハグサ
カヤツリグサ
キク
マメ
ハマウツボ
イノモトソウ
タデ
カヤツリグサ
ツバキ
オシダ
スミレ
オトギリソウ
イワヒバ
Dendranthema pacificum (Nakai) Kitam.
オオイヌノフグリ
Veronica persica Poiret
キンスゲ
Carex pyrenaica Wahlenb.
フタナミソウ
Scorzonera rebunensis Tatew. et Kitam.
リシリゲンゲ
Oxytropis rishiriensis Matsum.
オニク
Boschniakia rossica (Cham. et Schlt.)
Fedtschenko et Flerov
リュウキュウイノモトソウ Pteris ryukyuensis Tagawa
オオイタドリ
Reynoutria sachalinensis (Fr. Schm.) Nakai
サドスゲ
Carex sadoensis Franch.
Eurya sakishimensis Hatusima
サキシマヒサカキ
ナンゴクオオクジャク Dryopteris ×satsumana Kurata
セナミスミレ
Viola senamiensis Nakai
センカクオトギリ
Hypericum senkakuinsulare Hatusima
ヒモカズラ
Selaginella shakotanensis (Fr.) Miyabe et Kudo
イソギク
産地名:太平洋沿岸, ペルシャ, ピレネー山脈, 礼文島, 利尻島, ロシア, 琉球, 樺太(サハリン),佐渡ヶ島, 先島諸島,
薩摩, 新潟県瀬波海岸, 尖閣諸島, 北海道積丹半島
Abies shikokiana Nakai
キク
シコタンタンポポ
Taraxacum shikotanense Kitam.
ナデシコ
シナノナデシコ
Dianthus shinanensis (Yatabe) Makino
Astragalus shiroumensis Makino
マメ
シロウマオウギ
ユリ
リシリソウ
Zygadenus sibiricus (L.) A. Gray
キク
ホソバノギク
Aster sohayakiensis Koidz.
イタチゴケ
ヨコグライタチゴケ(蘚類)Leucodon sohayakiensis Akiyama
ミズキ
エゾゴゼンタチバナ
Cornus suecica L.
ウマノスズクサ タマノカンアオイ
Heterotropa tamaensis Makino
マツ
シコクシラベ
― 120 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
キク
Ixeris tamagawaensis (Makino) Kitam.
タテヤマヌカボ
Agrostis tateyamensis Tateoka
タニヘゴ
Dryopteris tokyoensis (Matsum. ex Makino) C. Chr.
トリガタハンショウヅル Clematis tosaensis Makino
ツガルミセバヤ
Hylotelephium tsugaruense (H. Hara) H. Ohba
カワラニガナ
イネ
オシダ
キンポウゲ
ベンケイソウ
産地名:四国, 色丹島, 信州信濃, 白馬岳, シベリア, 襲速紀地域(注1), スウェーデン, 多摩地域, 多摩川, 立山, 東京,
土佐, 津軽
セリ
Angelica ubatakensis (Makino) Kitagawa
ウゴアザミ
Cirsium ugoense Nakai
ヒメニクイボゴケ(地衣類) Ochrolechia upsaliensis (L.) Mass.
Tulotis ussuriensis (Regel) H. Hara
トンボソウ
キバナノマツバニンジン Linum virginianum L.
ヤエヤマノボタン
Bredia yaeyamensis (Masam.) Li
琉球の固有種
Gentiana yakushimensis Makino
ヤクシマリンドウ
コスギイタチシダ
Dryopteris yakusilvicola Kurata
ホソバウルップソウ
Lagotis yesoensis Takeda
ヒカゲスミレ
Viola yezoensis Maxim.
ヨコグラハネゴケ(苔類) Plagiochila yokogurensis Steph.
ヘビノネゴザ
Athyrium yokoscense (Franch. et Sav.) Christ
シソバキスミレ
Viola yubariana Nakai
ウスバルリソウ
Cynoglossum zeylanicum (Vahl.) Thunb.
ウバタケニンジン
キク
トリハダゴケ
ラン
アマ
ノボタン
リンドウ
オシダ
ウルップソウ
スミレ
ハネゴケ
イワデンダ
スミレ
ムラサキ
産地名:九州姥岳(祖母山), 羽後地方, スウェーデン: ウプサラ, ウスリー河流域, (北米)ヴァージニア州, 八重山諸島,
屋久島, 屋久島森林生, 蝦夷地(北海道), 四国:横倉山, 神奈川県横須賀, 北海道夕張岳, セイロン(スリランカ)
注 1 「襲速紀の名は小泉源一の提唱(1931 年)によるもので, この地域中での特色のある中心三ヶ所の頭文字を連
ねて作られた.
西から南九州の古名:襲ソの国(熊襲が住んだ国の意), 速吸瀬戸ハヤスイノセト(豊予海峡, 潮流
が速いことからついたものと思われるが, その速の文字を採る), 紀伊の国(和歌山県と三重県の南部)の紀
の文字を組み合わせたもの.
この地域は極めて豊富なフロラ(flora, 植物相) が発達していて, 多くの種は
その近縁種を遠く中国大陸の西南部に持つ点でまことに特殊である.」
前川文夫『日本の植物区系』(1977)
玉川選書 47, p.128
6. 生育地環境を示す種形容語
(科和名)
リンドウ
ユリ
キク
ツツジ
(種和名)
トウヤクリンドウ
ミヤマバイケイソウ
タカネヤハズハハコ
ウラシマツツジ
ゴマノハグサ
キク
キタミソウ
サマニヨモギ
イラクサ
ハマヤブマオ
(学
名)
Gentiana algida Schneid.
Veratrum alpestre Nakai
Anaphalis alpicola Makino
Arctous alpinus (L.) Niedenzu
var. japonicus (Nakai) Ohwi
Limosella aquatica L.
Limosella 属にはこれ 1 種のみ
Artemisia arctica Less.
subsp. sachalinensis Hulten
Boehmeria arenicola Satake
― 121 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
トクサ
スギナ
サクラソウ
カエデ
ルリハコベ
ナンゴクミネカエデ
アブラナ
エゾイヌナズナ
Equisetum arvense L.
Anagallis arvensis L.
Acer australe Momotani
Draba borealis DC.
種形容語:algidus(寒冷地を好む), alpestris(亜高山帯の), alpicola(高山に生えるもの), alpinus(高山生の), aquaticus
(水生の), arcticus(北極地方の), arenicola(砂地に生えるもの), arvensis(耕地[原野]生の), australis(南方の,
南方系の), borealis(北方の,北方系の),
Hylotelephium cauticolum (Praeger) H. Ohba
Athyrium clivicola Tagawa
マツモ
マツモ
Ceratophyllum demersum L.
Equisetum fluviatile L.
トクサ
ミズドクサ
スベリヒユ
ヌマハコベ
Montia fontana L.
ラン
シロウマチドリ
Platanthera hyperborea (L.) Lindl.
イチヤクソウ
シャクジョウソウ
Monotropa hypopithys L.
ツヅラフジ
ミヤコジマツヅラフジ Cyclea insularis (Makino) Hatusima
ヒカゲノカズラ ヤチスギラン
Lycopodium inundatum L.
カヤツリグサ
ヤチスゲ
Carex limosa L.
アオギリ
サキシマスオウノキ
Heritiera littoralis Dryland
イネ
ツキイゲ
Spinifex littoreus (Burm. fil.) Merr.
ベンケイソウ
イワデンダ
ヒダカミセバヤ
カラクサイヌワラビ
種形容語:cauticolus(凹地生の, 割目に生ずる), clivicola(斜面・丘に生える), demersus(水中生の, 沈水性の),
fluviatilis(川辺の, 川水生の), fontanus(湧泉[水]池に生える), hyperboreus(極北の, 遥か北方の), hypopithys(針
葉樹の下に生える), insularis(島嶼に生える), inundatus(洪水地生の, 湿った所に生える), limosus(湿地・泥地に
生える), littoralis(海岸に生える), littoreus(海岸に生える)
ムラサキ
ハマベンケイソウ
キク
ハマアザミ
グミ
マメグミ
キク
キオン
ラン
ヤチラン
サトイモ
ヒメカイウ
マメ
キバナノレンリソウ
ツツジ
キシツツジ
イワデンダ
ミヤマヘビノネゴザ
キク
イワインチン
Mertensia maritima (L.) S. F. Gray subsp.
asiatica Takeda
Cirsium maritimum Makino
Elaeagnus montana Makino
Senecio nemorensis L.
Malaxis paludosa (L.) Sw.
Calla palustris L.
Lathyrus pratensis L.
Rhododendron ripense Makino
Athyrium rupestre Kodama
Dendranthema rupestre (Matsum. et Koidz.) Kitam.
(属名は中性)
種形容語:maritimus(海の, 海岸の), montanus(山地に生える), nemorensis(森林に生える), paludosus(湿地・
沼地に生える), palustris(沼地に生える, 沼地を好む), pratensis(草原に生える), ripensis(川岸に生える), rupestris
(岩上に生える, 岩を好む)
イネ
ワセオバナ
カヤツリグサ
ジングウスゲ
イネ
イネ
カヤツリグサ
クロアブラガヤ
Saccharum spontaneum L. var. arenicola (Ohwi) Ohwi
Carex sacrosancta Honda
Oryza sativa L.
Scirpus sylvaticus L. var. maximowiczii Regel
― 122 ―
第7章 日本植物:学名あれこれ
ウルシ
アヤメ
ハマビシ
サンゴゴケ
タヌキモ
オトギリソウ
Rhus sylvestris Siebold et Zucc.
Iris tectorum Maxim.
ハマビシ
Tribulus terrestris L.
ツンドラサンゴゴケ(地衣類)Sphaerophorus turfaceus Asah. (大雪山系に)
ムラサキミミカキグサ Utricularia uliginosa Vahl
Hypericum vulcanicum Koidz.
オシマオトギリ
ヤマハゼ
イチハツ
種形容語:spontaneus(野生の,自生の), arenicola(砂地生のもの), sacrosanctus(神聖な場所の), sativus(栽培・
耕作された), sylvaticus(森林に生える), sylvestris(森林に生える), tectorum(屋根に生える), terrestris(地面の,
地上の), turfaceus(泥炭[地]生の), uliginosus(湿地・沼地に生える), vulcanicus(火山の,火山岩生の)
― 123 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
第8章
日本植物:学名探訪( 263 種 )
1. 植物の特徴を示す属名・種形容語
植物の特徴をとらえた属名・種形容語を知ることは, 学名を理解するために必要不可欠である. そ
れぞれの植物の形態的・生態的・生理的特徴等について多岐に亘る記載・命名が行われているので,
慎重に調べる必要がある. 第 1 章の「学名の変遷」の項で述べたように転属などによる属名と種形容語
との組み合わせの変更や,“既存の属名+新種形容語”という結合により元の意味とかけ離れていたり,
意味不明になる場合もある.
以下に掲載した学名の中には, その植物の特徴を真にうまく表現したものが多くあり, 命名の妙に
感心するばかりではなく, 学名への興味・関心をますますそそられ, 学名を読み解く楽しみが実感でき
るのである. 植物をよく知るには, 対象となる植物そのものをよく観察し, その特徴(形態・生理・色
彩・生育環境・分布等など)を捉え出来る限り多角的に, 継続的に観察することが大切なことは言うま
でもない.
(属名の語源・由来とその意味については, 別巻 CD-ROM 版「日本産野生植物:植物学名一覧」の
「属名一覧」ファイルの中で詳しく解説しています.)
Ⅰ
合成された属名 ( < g.はギリシャ語由来を示す )
(科和名)
クマツヅラ
属名<
ラン
属名<
キク
属名<
ムラサキ
属名<
ツゲ
属名<
クルミ
属名<
ヒルギ
属名<
ヤマグルマ
属名<
(種和名)
(学
名)
Callicarpa japonica Thunb.
g. callos(美しい)+ carpos(果実)
果実が美しく熟する
セッコク
Dendrobium moniliforme (L.) Sw.
g. dendron(樹木)+ bion(生活する)
樹上で生活するもの
ウスユキソウ
Leontopodium japonicum Miquel
g.leon(ライオン)+ podium(小足)
綿毛の密生した苞葉状の葉と頭花をライオンの足首にたとえた
ムラサキ
Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zucc.
g.lithos(石)+ sperma( 種子)
小堅果を結ぶ性質がある
フッキソウ
Pachysandra terminalis Siebold et Zucc.
g. pachys(太い)+ andros(雄しべ)
雄蕊の花糸が目立って太い
サワグルミ
Pterocarya rhoifolia Siebold et Zucc.
g. pteron(翼)+ caryon(堅果)
果実に二枚の膜状翼がある
ヤエヤマヒルギ
Rhizophora mucronata Lam. [胎生する]
g. rhiza(根)+ phoreo(有する)太い枝から伸びた気根は海中に入って支柱根となる
ヤマグルマ
Trochodendron aralioides Siebold et Zucc.
g. trochos(車輪)+ dendron(樹木)
雄蕊と子房とが車状に付く
ムラサキシキブ
1 属 1 種の東アジアの固有種.
被子植物でありながら導管がなく, 裸子植物的特徴がある.
― 124 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
種形容語:moniliformis(首飾り・念珠状の), erythrorhizon(根が赤色の), terminalis(頂生の), rhoifolius(ウル
シ属[ Rhus ] に似た葉の), mucronatus(微突形の,微凸頭の), aralioides(タラノキ属[ Aralia ] に似た)
植物用語集:顕花植物の外形
1
植物の学名を読み解くのに必要なラテン語の基礎的植物用語を覚えよう. 用語の意味不明の
場合は, 図鑑や辞典などの植物記載用語の解説と図を参照してほしい.
「植物学名を構成する属名と種形容語の意味を充分理解するには, 植物の外部形態を記述する際に用い
られる記載学上の術語を解する必要がある. 以下に形態学的術語をラテン語で示し, 名詞は大文字で
はじめ, 主格・単数で, 形容詞は小文字で綴り, 男性語尾で示す.」
大井次三郎著・北川政夫改訂『新日本植物誌 顕花篇』(1953, 至文堂͵ pp.21-27) より(一部改変・省略)
(名
詞)主格・単数
Amentum
尾状花序
Fruticulus
小低木
Ramus
枝
Anthera
葯
Glandula
腺
Receptaculum
花托
Glomerulus
団集花序
Rhizoma
根茎
Arbor
Axilla
葉腋
Gluma; Lemma
頴
Semen
種子
Bacca
液果, 漿果
Herba
草本
Sepalum
萼片
Bractea
苞(鱗)
Involucrum
総苞
Spadix
肉穂花序
Bulbus
鱗茎
Legumen
莢果
Spica
穂状花序
Calyx
萼
Lobus
裂片
Spina
刺針
Capitulum
頭状花序
Nervus
葉脈
Squama
鱗状葉
Capsula
蒴果
Nodus
節
Stamen
雄しべ
Corolla
花冠
Nux
Stigma
柱頭
Corymbus
Ⅱ
高木
散房花序
堅果
Ovarium
子房
Stipula
托葉
Cyma
集散花序
Ovulum
胚珠
Stolo
匍枝
Dens
歯牙
Panicula
円錐花序
Stylus
花柱
Discus
花盤
Partitio
深裂片
Suffrutex
半低木
Drupa
核果, 石果
Pedunculus
総花梗
Thyrsus
密錐花序
Filamentum
花糸
Perianthium
花被
Truncus
幹
Flos
花
Petalum
花弁
Tuber
塊茎
Foliolum
小葉
Petiolus
葉柄
Umbella
散形花序
Fructus
果実
Pollen
花粉
Unguis
爪部
Frutex
低木
Racemus
総状花序
Vagina
(葉)鞘
合成された種形容語……極めて多い
(科和名)
(種和名)
以下, 学名の後ろに種形容語の意味を略記する.
(学
名)
1 フサザクラ
フサザクラ
Euptelea polyandra Siebold et Zucc. 多くの雄しべのある
2 ツバキ
モッコク
Ternstroemia gymnanthera (Wight et Arn.) Bedd.雄しべの葯が裸の
― 125 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
3 ジンチョウゲ
ミツマタ
Edgeworthia chrysantha Lindl.
4 アリノトウグサ
アリノトウグサ
Haloragis micrantha (Thunb.) R. Br.
5 シソ
キセワタ
Leonurus macranthus Maxim.
リュウキュウバライチゴ Rubus croceacanthus Lev.
6 バラ
黄金色の花の
小さい花の
大きな花をもつ
サフランの黄色の花の (花弁は白色)
7 ツツジ
ツリガネツツジ
Menziesia cilicalyx (Miq.) Maxim.
8 ウマノスズクサ
コシノカンアオイ
Heterotropa megacalyx F. Maekawa 大きな萼片をもつ
9 キキョウ
イワギキョウ
Campanula lasiocarpa Chamisso 長軟毛のある果実をもつ
10 オシダ
クロミノイタチシダ
Dryopteris melanocarpa Hayata 黒い果実をもつ
11 トウダイグサ
ヤマアイ
Mercurialis leiocarpa Siebold et Zucc.
12 シソ
ホトケノザ
Lamium amplexicaule L.
13 ハナヤスリ
イオウジマハナヤスリ
14 ユキノシタ
ギンバイソウ
Deinanthe bifida Maxim. 二裂の
15 ユリ
ヒメカカラ
Smilax biflora Siebold ex Miquel 二花(一対の花)をもつ
16 カバノキ
アカシデ
Carpinus laxiflora (Siebold et Zucc.) Bl. まばらについた花をもつ
17 ツツジ
18 ユリ
Ophioglossum nudicaule L. f.
Lilium longiflorum Thunb.
テッポウユリ
無毛果の
抱茎の
Menziesia multiflora Maxim.
ウラジロヨウラク
縁毛のある萼をもつ
裸の茎をもつ
多花の
長い花をもつ
Casuarina equisetifolia Forster トクサ属 ( Equisetum ) の葉のような
19 モクマオウ
モクマオウ
20 ユリ
タマガワホトトギス
Tricyrtis latifolia Maxim. 広葉の
21 カバノキ
ヤチカンバ
Betula ovalifolia Rupr.
22 ユリ
ヒメマイヅルソウ
Maianthemum bifolium (L.) F. W. Schm.
23 ウリノキ
ウリノキ
Alangium platanifolium (Siebold et Zucc.) Harms
var. trilobum (Miq.) Ohwi
広楕円形葉の
二葉の
スズカケノキ属 ( Platanus ) のような葉の;三個の裂片をもつ
24 ツツジ
シロヤシオ(ゴヨウツツジ)
Rhododendron quinquefolium Bisset et Moore 五葉の
25 ツヅラフジ
イソヤマアオキ
Cocculus laurifolius DC. ゲッケイジュのような葉の
26 マタタビ
マタタビ
Actinida polygama (Siebold et Zucc.) Planch.
27 ウマノスズクサ
サンコカンアオイ
Heterotropa trigyna (F. Maek.) Araki 三雌しべの
28 キク
モリアザミ
29 オシダ
雑居性花の
Cirsium dipsacolepis (Maxim.) Matsum. ナベナ属 ( Dipsacus ) のような鱗片の
ミヤマクマワラビ
Dryopteris polylepis (Franch. et Sav.) C. Chr. 多くの鱗片の
30 イラクサ
ラセイタソウ
Boehmeria biloba Wedd.
31 カエデ
ウリハダカエデ
Acer rufinerve Siebold et Zucc.
32 リョウブ
リョウブ
Clethra barbinervis Siebold et Zucc. 脈にひげのある
33 クスノキ
アオモジ
Lindera citriodora (Siebold et Zucc.) Hemsl. レモンの香りする
ボロボロノキ
Schoepfia jasminodora Siebold et Zucc. ジャスミンの匂いある
34 ボロボロノキ
二浅裂の
赤褐色の脈のある
35 アヤメ
ヒメシャガ
Iris gracilipes A. Gray 細長い(花)柄のある
36 バラ
チングルマ
Geum pentapetalum (L.) Makino 五花弁の
37 ツリフネソウ
ハガクレツリフネ
Impatiens hypophylla Makino 葉の下面に生ずる
38 ザクロソウ
ザクロソウ
Mollugo pentaphylla L.
39 ラン
トラキチラン
Epipogium aphyllum (F. W. Schm.) Swartz 無葉の
40 ウラボシ
マメヅタ
Lemmaphyllum microphyllum Pr.
41 キク
タテヤマギク
Aster dimorphophyllus Franch. et Sav.
五葉の
小さい葉の
二形葉の
富山の立山には産せず, 富士・箱根・丹沢・天城に
― 126 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
42 ユズリハ
ユズリハ
Daphniphyllum macropodum Miq. 長い柄の
43 ニシキギ
ヒロハツリバナ
Euonymus macropterus Rupr.
44 ヒルギ
オヒルギ
Bruguiera gymnorhiza (L.) Lam.
45 ウキクサ
ウキクサ
Spirodela polyrhiza (L.) Schleid 多くの根をもつ
46 オシダ
オシダ
Dryopteris crassirhizoma Nakai 太い根(茎)の
47 スイカズラ
オオツクバネウツギ
Abelia tetrasepala (Koidz.) H. Hara et Kurosawa 四萼片ある
48 オシダ
ベニシダ
Dryopteris erythrosora (Eat.) O. Kuntze 赤い胞子嚢がある
49 キンポウゲ
コゴメカラマツ
Thalictrum microspermum Ohwi 小さな種子の
50 アブラナ
ハクセンナズナ
Macropodium pterospermum Fr. Schm. 有翼種子の
51 アカネ
ヨツバムグラ
Galium trachyspermum A. Gray 粗面の種子をもつ
52 カバノキ
ジゾウカンバ
Betula globispica Shirai 球形の穂をもった
53 シソ
オカタツナミソウ
Scutellaria brachyspica Nakai et H. Hara 短穂状の
54 アカバナ
イワアカバナ
Epilobium cephalostigma Hausskn.
55 カエデ
ヒトツバカエデ
Acer distylum Siebold et Zucc.
― 127 ―
大きい翼の
裸出根の
日本固有種
頭状柱頭の
二花柱の
日本固有種
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
植物用語集:顕花植物の外形
2
植物の学名を読み解くのに必要なラテン語の基礎的植物用語を覚えよう. 日本語の意味は
形容詞に読み替える.
laevis 平滑 → 平滑な,無毛の
(形 容 詞)男性語尾で示す
acicularis
針形
incisus
鋭浅裂
quinquenervius
5脈
acuminatus
鋭尖形
induplicatus
内向敷石状
ramosus
分枝
acutus
鋭形
infundibularis
漏斗状
reniformis
腎臓形
adnatus
沿着
integer
全縁
repandus
波状歯縁
alternatus
互生
laevis
平滑
repens
匍匐
amplexicaulis
抱茎
lanceolatus
披針形
retusus
微凹形
annuus
一年生
lepidotus
鱗片状
rotundatus
円形
aristatus
芒形
lignosus
木質
rugosus
皺
ascendens
斜上
linearis
線形
sagittatus
箭形
auriculatus
耳形
lobatus
分裂
sectus
全裂
axillaris
腋生
lucidus
有光沢
serratus
鋸歯縁
biennis
二年生
membranaceus
sessilis
無柄
bijugus
二対
multilobus
多裂
sinuatus
深波状縁
bipinnatus
二回羽状
obcordatus
倒心形
spathulatus
箆形
campanulatus
鐘状
oblongus
長楕円形
squamosus
鱗片
caudatus
尾状
obovatus
倒卵形
stellatus
星状
cordatus
心(臓)形
obtusus
鈍形
striatus
線条
crenatus
鈍鋸歯縁
oppositus
対生
suspensus
懸垂
cuneatus
楔形
ovatus
卵形
terminalis
頂生
cuspidatus
凸形
palmatus
掌状
ternatus
三出(葉)
decurrens
沿下
papilionaceus
trifidus
三中裂
dentatus
歯牙縁
partitus
深裂
trilobus
三裂
dioicus
雌雄異株
pedatus
鳥足状
tripartitus
三深裂
divaricatus
広く開出
peltatus
楯状着
tripinnatus
三回羽状
ellipticus
楕円形
pendulus
下垂
truncatus
切形
emarginatus
凹形
perennis
多年生
tubulosus
筒状
erectus
直立
perfoliatus
貫通
undulatus
波状歯縁
glaber
無毛
personatus
仮面状
urceolatus
壷状
hastatus
鉾形
petiolatus
有柄
valvatus
敷石状
herbaceus
草質
pinnatus
羽状
versatilis
丁字着
imbricatus
瓦重ね状
procumbens
伏臥
verticillatus
輪生
imparipinnatus
奇数羽状
punctatus
膜質
蝶状
細点
― 128 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
Ⅲ
植物の特徴を表す種形容語
(科和名)
(種和名)
(合成された種形容語も含む)
(学
名)
1 タデ
スイバ
2 スミレ
エゾノタチツボスミレ Viola acuminata
3 ブナ
アカガシ
Rumex acetosa L.
酸っぱい
Ledeb.
鋭先形の
Quercus acuta Thunb.
鋭形の
4 ツツジ
アカモノ
Gaultheria adenothrix Maxim.
5 ユキノシタ
クサアジサイ
Cardiandra alternifolia Siebold et Zucc.
6 アブラナ
ハタザオガラシ
Sisymbrium altissimum L. 非常に丈の高い(最上級)
腺毛のある
7 ガマ
ヒメガマ
Typha angustata L.
8 アカバナ
ヤナギラン
Epilobium angustifolium L.
9 イネ
スズメノカタビラ
Poa annua L.
10 ラン
ハクサンチドリ
Orchis aristata Fisch.
11 イネ
クサヨシ
Phalaris arundinacea L.
12 ニレ
ムクノキ
Aphananthe aspera (Thunb.) Planch.
13 ゴマノハグサ
トラノオスズカケ
互生葉の
細く(狭く)なった
細葉の
一年生の
芒形の, 芒(穂)のある
アシのような
粗面の
Veronicastrum axillare (Siebold et Zucc.) Yamaz. 葉腋生の
14 リンドウ
アケボノソウ
Swertia bimaculata (Siebold et Zucc.) Hook. fil. et Thoms.
15 キク
ハチジョウナ
Sonchus brachyotus DC. 短耳の
16 ユキノシタ
キヨシソウ
Saxifraga bracteata D. Don 苞葉のある
17 ベンケイソウ
コモチマンネングサ
Sedum bulbiferum Makino むかごのある
18 カヤツリグサ
ミネハリイ
Scirpus cespitosus L.
19 マメ
ガクタヌキマメ
Crotalaria calycina Schrank 萼の, 萼の残る
20 イネ
イブキカモジグサ
Elymus caninus (L.) L.
二個の斑点がある
21 カヤツリグサ
タカネシバスゲ
Carex capillaris L.
群生した, 叢生する
犬の, 極めて普通の
細毛状の, 糸のような
22 ユリ
カンザシギボウシ
Hosta capitata (Koidz.) Nakai 頭状花序の, 頭状の
23 ガガイモ
イケマ
Cynanchum caudatum (Miq.) Maxim.
24 ツツジ
アラゲナツハゼ
Vaccinium ciliatum Thunb. 縁毛のある
25 ツユクサ
ツユクサ
Commelina communis L.
26 タデ
サクラタデ
Persicaria conspicua (Nakai) Nakai 目立った
27 ユリ
ウバユリ
Lilium cordatum (Thunb.) Koidz.
28 カタバミ
カタバミ
Oxalis corniculata L.
29 ナデシコ
ガンピ
Lychnis coronata Thunb. 花冠のある
30 エゴノキ
アサガラ
Pterostyrax corymbosus Siebold et Zucc. 散房花序の
31 スッポンタケ
キイロスッポンタケ(菌類)
尾状の
普通の, 共通した
心臓形の
小角状の
Phallus costatus (Penzig) Lloyd 中脈のある
32 ヤブコウジ
マンリョウ
Ardisia crenata Sims 鈍鋸歯のある, 円鋸歯状の
33 ホウライシダ
リシリシノブ
Cryptogramma crispa (L.) R. Br. ex Richa 縮れた
34 サクラソウ
エゾコザクラ
Primula cuneifolia Ledeb.
35 ウマノスズクサ
カギガタアオイ
Heterotropa curvistigma F. Maekawa 曲がった柱頭の
36 イチイ
イチイ
Taxus cuspidata Siebold et Zucc. 凸頭の, 急に尖った
37 カヤツリグサ
シオカゼテンツキ
Fimbristylis cymosa (Lam.) R. Br.
― 129 ―
楔クサビ形の葉をもつ
集散花序の
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
38 キンポウゲ
ヒメイチゲ
Anemone debilis Fischer 軟弱な, 細小な
39 セリ
セントウソウ
Chamaele decumbens (Thunb.) Makino 横臥した
日本固有属で 1 種を含む
40 アミガサタケ
アシボソアミガサタケ(菌類) Morchella deliciosa
41 キク
マルバダケブキ
Fr.
美味しい
Ligularia dentata (A. Gray) H. Hara (鋭)鋸歯のある
[鋸歯の先は開出し, 葉の先を向かない]
42 コンブ
オニコンブ(褐藻類)
Laminaria diabolica Miyabe 大きくて荒々しい
43 カヤツリグサ
テンツキ
Fimbristylis dichotoma (L.) Vahl 二股になった
44 キク
エゾノチチコグサ
Antennaria dioica (L.) Gaertn. 雌雄異株の
45 イネ
キシュウスズメノヒエ
Paspalum distichum L.
46 ヒルムシロ
ヒルムシロ
Potamogeton distinctus A. Benn.
47 セリ
オオハナウド
Heracleum dulce Fisch.
48 ブナ
マテバシイ
Lithocarpus edulis (Makino) Nakai
49 イグサ
ミヤマイ
50 ウコギ
タラノキ
51 テングサ
マクサ(紅藻類)
Gelidium elegans Kuetzing 優美な
52 ツバキ
ハマヒサカキ
Eurya emarginata (Thunb.) Makino 凹頭の
53 オトギリソウ
オトギリソウ
54 ノボリリュウタケ
二列(生)の
独生の, 明瞭な
甘い
食用になる
Juncus effusus L. 疎らに拡がった, 非常に開いた
Aralia elata (Miq.) Seemann 背の高い
Hypericum erectum Thunb.
シャグマアミガサタケ(菌類)Gyromitra esculenta
寒天の材料
直立した
(Pers.) Fr.
食用になる
[種形容語の意味とは正反対に有毒である]
55 イワタケ
イワタケ(地衣類)
Umbilicaria esculenta (Miyoshi) Mink.
56 キク
ハバヤマボクチ
Synurus excelsus (Makino) Kitam. 高い, 隆起した
57 ユリ
ムサシノワスレグサ
Hemerocallis exilis Satake 細い, 弱い
58 タヌキモ
ミカワタヌキモ
Utricularia exoleta R. Brown 成熟した
59 オシダ
オニヤブソテツ
Cyrtomium falcatum (L. f.) Pr. 鎌形(状)の
60 イネ
カラスムギ
Avena fatua L.
61 イネ
ネズミノオ
Sporobolus fertilis (Steud.) W. Clayton 多産の
62 イグサ
エゾホソイ
Juncus filiformis L.
63 キンポウゲ
ニリンソウ
Anemone flaccida Fr. Schm.
64 アブラナ
スズシロソウ
Arabis flagellosa Miq.
65 ウキゴケ
ウキゴケ(苔類)
Riccia fluitans L.
66 サトイモ
ザゼンソウ
Symplocarpus foetidus Nutt. var. latissimus
珍味
実らない, 空の
糸状の
軟弱な, 柔らかい
匍匐枝(走出枝)の多い
浮遊する
(Makino) H. Hara 悪臭のある;非常に幅広い(最上級)
67 クサトベラ
クサトベラ
Scaevola frutescens (Mill.) Krause 低木状の
68 ヘリトリゴケ
チズゴケ(地衣類)
Rhizocarpon geographicum (L.) DC.
69 マメ
ムニンモダマ
Mucuna gigantea
70 キンポウゲ
エゾノレイジンソウ
Aconitum gigas Lév. et Van. 巨大な, 巨人の
71 センリョウ
センリョウ
Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai 無毛の, 平滑な
72 ミクリ
タマミクリ
Sparganium glomeratum Laest.
73 サトイモ
セキショウ
Acorus gramineus Soland.
74 キンポウゲ
オオウマノアシガタ
Ranunculus grandis Honda 大形の
― 130 ―
(Willd.) DC.
地図の
巨大な, 巨人の
球状に集まった
イネ科の草のような
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
75 カバノキ
ミズメ
Betula grossa Siebold et Zucc. 大きな, 太い, 厚い
76 アカザ
ホコガタアカザ
Atriplex hastata L.
77 ゴマノハグサ
フラサバソウ
Veronica hederifolia L.
78 ツルシダ
ヤンバルタマシダ
Nephrolepis hirsutula (Forst.) Pr.
79 ユキノシタ
コアジサイ
Hydrangea hirta (Thunb.) Sieb.
80 イラクサ
ケナガヤブマオ
Boehmeria hirtella Satake やや毛が多い
81 イネ
コブナグサ
Arthraxon hispidus (Thunb.) Makino 剛毛のある
82 スイカズラ
タニウツギ
Weigela hortensis (Siebold et Zucc.) K. Koch 庭園(園芸)の
83 イチヤクソウ
ギンリョウソウ
Monotropastrum humile (D. Don) H. Hara 低い, 小さい
84 トクサ
トクサ
Equisetum hyemale L.
85 ツチグリ
ツチグリ(菌類)
Astraeus hygrometricus (Pers. ) Morgan 乾湿計の
86 アセタケ
ササクレトマヤタケ(菌類)
日本固有種
矛ホコ形の, 槍形の
キヅタ属の如き葉の
やや毛が多い
毛の多い
冬の
Inocybe hystrix (Fr.) Karst. ヤマアラシのような,
剛毛をもつ
87 アカウキクサ
アカウキクサ
Azolla imbricata (Roxb.) Nakai 瓦重ねになった
88 スッポンタケ
スッポンタケ(菌類)
Phallus impudicus Pers.
89 シソ
ヒイラギソウ
Ajuga incisa Maxim.
恥を知らない, 厚顔の
鋭浅裂の, 欠刻のある
90 ヤナギ
イヌコリヤナギ
Salix integra Thunb. 全縁の, 完全な
91 ユリ
ステゴビル
Caloscordum inutile (Makino) Okuyama et Kitag. 無用な
92 ユキノシタ
タマアジサイ
Hydrangea involucrata Siebold 総苞のある
93 ニレ
オヒョウ
Ulmus laciniata (Trautv.) Mayr 条裂した, 細分裂した
94 ベニタケ
ユキハツ(菌類)
Russula lactea Fr.
95 オオバコ
ヘラオオバコ
Plantago lanceolata L.
96 ガマ
ガマ
Typha latifolia L.
97 カヤツリグサ
ナキリスゲ
Carex lenta D. Don 強靭な,しなやかな
97 ウマノスズクサ
オナガサイシン
Asarum leptophyllum Hayata 細葉の
98 サクラソウ
サワトラノオ
Lysimachia leucantha Miq. 白花の
99 カヤツリグサ
サツマスゲ
Carex ligulata Nees 舌状の
100 イネ
リュウキュウチク
Pleioblastus linearis (Hack.) Nakai 線形の
101 ラン
サワトンボ
Habenaria linearifolia Maxim.
102 マメ
クズ
Pueraria lobata (Willd.) Ohwi 浅裂した
103 クスノキ
バリバリノキ
Actinodaphne longifolia (Bl.) Nakai 長い葉の
104 サルオガセ
ナガサルオガセ(地衣類) Usnea longissima
105 ハイノキ
クロキ
Symplocos lucida Siebold et Zucc.
106 ナス
ヒヨドリジョウゴ
Solanum lyratum Thunb.
107 イラクサ
ミヤマイラクサ
Laportea macrostachya (Maxim.) Ohwi 大形穂状の
108 ユリ
エゾスカシユリ
Lilium maculatum Thunb. subsp. dauricum (Baker) H. Hara
109 イネ
コバンソウ
Briza maxima L.
110 マメ
レブンソウ
Oxytropis megalantha H. Boiss.
111 スミレ
ヒメスミレ
Viola minor (Makino) Makino より小さい(比較級)
112 アカバナ
ミズタマソウ
Circaea mollis Siebold et Zucc.
日本固有種
乳白色の
披針形の
広葉の
線形葉をもつ
Ach. 非常に長い(最上級)
強い光沢のある
頭大羽裂の
斑点(まだら)のある;(シベリア)ダフリア地方の
― 131 ―
最大の
大きな花の
柔軟毛のある
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
113 イノモトソウ
イノモトソウ
Pteris multifida Poir.
114 バラ
シモツケソウ
Filipendula multijuga Maxim.
115 サンショウモ
サンショウモ
Salvinia natans (L.) All.
116 バラ
イブキシモツケ
Spiraea nervosa Franch. et Sav.
117 ヒトエグサ
ヒトエグサ(緑藻類)
118 ユリ
タモトユリ
Lilium nobilissimum Makino 最も高貴な(最上級)
119 ツリフネソウ
キツリフネ
Impatiens noli-tangere L. “触れるな”の意 英名:”Touch-me-not”
120 マツバラン
マツバラン
Psilotum nudum (L.) Beauv.
121 イネ
コメガヤ
Melica nutans L.
122 イチイ
カヤ
Torreya nucifera (L.) Siebold et Zucc.
123 アブラナ
トモシリソウ
Cochlearia oblongifolia
124 ボタン
ベニバナヤマシャクヤク
125 ヒカゲノカズラ
マンネンスギ
Lycopodium obscurum L. 不明瞭な, 目立たない
126 バラ
ナンブトウウチソウ
Sanguisorba obtusa Maxim. 鈍形の, 鈍頭の
127 クスノキ
ダンコウバイ
Lindera obtusiloba Blume 鈍頭の裂片をもつ
128 イネ
ハルガヤ
Anthoxanthum odoratum L.
129 ショウガ
ショウガ
Zingiber officinale (Willd.) Roscoe 薬用の, 薬効のある
130 キク
ノゲシ
Sonchus oleraceus L. 畑に栽培の, 食用・料理用の
131 ウコギ
ムニンヤツデ
Fatsia oligocarpella Koidz.
132 ゴマノハグサ
トウテイラン
Pseudolysimachion ornatum (Monjus.) Holb. 華やかな
133 バショウ
バナナ
134 マツ
キタゴヨウ
多中裂の, 多裂の
多対の
浮遊する, 水に浮かぶ
脈状になった
Monostroma nitidum Wittrock 光沢のある
裸の, 飾り気のない
点頭する, 垂頭の
DC.
堅果をもった
長楕円形の葉のある
Paeonia obovata Maxim.
倒卵形の
芳香のある
少数心皮の
Musa paradisiaca L. var. sapientum Kuntze 楽園のような;賢人の
Pinus parviflora Siebold et Zucc. var. pentaphylla
(Mayr) Henry 小形の花の;五葉の
135 ツツジ
サカイツツジ
Rhododendron parvifolium Adams 小さな葉の
136 マンサク
ヒュウガミズキ
Corylopsis pauciflora Siebold et Zucc. 少数の花をもつ
137 キク
クシバタンポポ
Taraxacum pectinatum Kitam.
138 ホウライシダ
クジャクシダ
Adiantum pedatum L.
139 ムラサキ
キュウリグサ
Trigonotis peduncularis (Trevir.) Benth. 花柄のある
140 モチノキ
ソヨゴ
Ilex pendunculosa Miq.
141 タコウキン
オツネンタケ(菌類)
Coltricia perennis (L.: Fr.) Murr.
142 タデ
イシミカワ
Persicaria perfoliata (L.) H. Gross 貫き葉をもつ
143 マメ
ネコハギ
Lespedeza pilosa (Thunb.) Siebold et Zucc. 長軟毛に覆われた
144 チガイソ
ワカメ(褐藻類)
Undaria pinnatifida (Harvey) Suringar 羽状中裂の
145 マツ
ハリモミ
Picea polita (Siebold et Zucc.) Carr. 平滑で光沢のある
146 クスノキ
アブラチャン
Parabenzoin praecox (Siebold et Zucc.) Nakai 早咲きの
147 キク
ヨモギ
Artemisia princeps Pampan. 最初の, 筆頭の, 豪華な
148 ツツジ
ミネズオウ
Loiseleuria procumbens (L.) Desvaux 平臥の
149 チャセンシダ
ヒノキシダ
Asplenium prolongatum Hook. 延長した, 引き伸ばした
150 キク
ネコノシタ
Wedelia prostrata Hemsley 平伏の, 平臥した
151 マツ
ハイマツ
Pinus pumila (Pall.) Regel 低い, 小さい, 矮形の
152 キキョウ
ホタルブクロ
Campanula punctata Lam.
― 132 ―
櫛歯状の
鳥足状の
花柄のある
多年生の
細点(斑点)のある
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
Hydrobryum puncticulatum Koidz.
153 カワゴケソウ
ヤクシマカワゴロモ
154 ウスバゼニゴケ
ウスバゼニゴケ(苔類)
155 カエデ
ハナノキ
Acer pycnanthum K. Koch 密に花のある
156 マメ
レンリソウ
Lathyrus quinquenervius (Miq.) Litw. 五脈ある
157 ハナゴケ
ハナゴケ(地衣類)
158 ユリ
タチギボウシ
Blasia pusilla L.
細点ある
非常に小さい(弱い・細い・薄い)
Cladonia rangiferina (L.) Web.
日本固有種
トナカイの
Hosta sieboldii (Paxton) J. Ingram
var. rectifolia (Nakai) H. Hara 直立した葉の
159 コンブ
ホソメコンブ(褐藻類) Laminaria religiosa
160 イワヒバ
クラマゴケ
Selaginella remotifolia Spring 疎らに葉をつけた
161 キク
ハマニガナ
Ixeris repens (L.) A. Gray 地に這う
162 モクセイ
ハシドイ
Syringa reticulata (Bl.) H. Hara 網状の
163 ウコギ
キヅタ
Hedera rhombea (Miq.) Bean 菱形の
164 キク
カシワバハグマ
Pertya robusta (Maxim.) Beauv.
165 モウセンゴケ
モウセンゴケ
Drosera rotundifolia L.
166 クマツヅラ
ハマゴウ
Vitex rotundifolia L. f.
167 ブドウ
アマヅル
Vitis saccharifera Makino 甘味のある
168 クロオコックス
スイゼンジノリ(藍藻類) Aphanothece sacrum
169 バラ
ホザキシモツケ
Spiraea salicifolia L.
170 アカネ
ヘクソカズラ
Paederia scandens (Lour.) Merrill 登攀性のある
171 モジゴケ
モジゴケ (地衣類)
Graphis scripta (L. ) Ach.
172 イチヤクソウ
コイチヤクソウ
Orthilia secunda (L.) House 偏側生の
173 メギ
トキワイカリソウ
Epimedium sempervirens Nakai 常緑の
174 イイギリ
クスドイゲ
Xylosma senticosum Hance 刺の密生した
175 ニレ
ケヤキ
Zelkova serrata (Thunb.) Makino 鋸歯のある
176 ヒカゲノカズラ
トウゲシバ
Lycopodium serratum Thunb.
177 キキョウ
サワギキョウ
Lobelia sessilifolia Lamb.
178 アヤメ
ヒオウギアヤメ
Iris setosa Pall.
179 スイカズラ
ツクバネウツギ
Abelia spathulata Siebold et Zucc.
180 ゴマノハグサ
ホザキシオガマ
Pedicularis spicata Pallas 穂状花序の
181 キク
オイランアザミ
Cirsium spinosum Kitam.
182 ヘゴ
ヘゴ
Cyathea spinulosa Wall. ex Hook.
183 ウマノスズクサ
ホシザキカンアオイ
Heterotropa stellata F. Maekawa 星形の, 星状の
184 ユキノシタ
ユキノシタ
Saxifraga stolonifera Meerb. 匍匐枝をもった
185 ラン
シラン
Bletilla striata (Thunb.) Reichb. f. 縞模様のある
186 イネ
ドクムギ
Lolium temulentum L. 酩酊する, 目眩を起こす
187 ウシケノリ
アサクサノリ(紅藻類)
Miyabe
宗教儀式等に使う
大形の, 頑丈な
円形葉の
(Suringar) Okada 神聖な
ヤナギ属(Salix)のような葉の
描かれた, 彫刻のある
[鋸歯の先は葉先を向く]
無柄葉の
剛毛の多い, 刺毛状の
Porphyra tenera
へら形の
針・刺のある
Kjellman
やや刺のある
柔らかい, 薄い
[絶滅危惧Ⅰ類]
188 ハナヤスリ
フユノハナワラビ
Botrychium ternatum (Thunb.) Sw.
189 オモダカ
オモダカ
Sagittaria trifolia L.
190 ハマウツボ
キヨスミウツボ
Phacellanthus tubiflorus Siebold et Zucc. 漏斗状花の
191 カヤツリグサ
イワヤスゲ
Carex tumidula Ohwi やや膨れて厚くなった
192 センボンゴケ
ネジクチゴケ(蘚類)
Barbula unguiculata Hedw.
― 133 ―
日本固有種
三出の
三葉の
爪状となった
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
193 カヤツリグサ
ワタスゲ
Eriophorum vaginatum L.
葉鞘のある
194 ラン
シュスラン
Goodyera velutina Maxim.
ビロードの手触りの
195 キク
シュウブンソウ
Rhynchospermum verticillatum Reinw.
196 コウヤマキ
コウヤマキ
Sciadopitys verticillata (Thunb.) Siebold et Zucc.
輪生の
(コウヤマキ科は日本固有の科で, 1 属1種のみである)
197 ユリ
ギョウジャニンニク
Allium victorialis
L. var. platyphyllum
(Hultén) Makino
勝利の;幅広の葉をもつ
Camarophyllus virgineus (Wulf.: Fr.) Kummer 乙女らしい
198 ヌメリガサ
アケボノオトメノカサ(菌類)
199 セリ
ドクゼリ
Cicuta virosa L.
200 タヌキモ
ムシトリスミレ
Pinguicula vulgaris L. var. macroceras Herder
有毒の
普通の, 広く分布する;長(大)角の
本書で学名を取り上げた種は 1,356 で, その内訳はシダ植物を含む維管束植物, 菌類, 蘚苔類, 地衣
類, 海藻類, その他の藻類で 1,322 種, 動物(哺乳類・昆虫類・爬虫類・鳥類・両生類・恐竜類・甲殻類・
環形動物・その他)は 34 種です. 種形容語を中心にして植物ラテン語の意味を辿ってきました. 日本
野生植物の学名(属名・種形容語)とその著者(命名者)の一端を窺い知ることが出来たことでしょう.
但し, 学名は不変のものではなく, 植物学諸分野での研究の進展に伴う正当な理由により学名の
改訂(新属・新種の創設や転属などによる組み換え等)も起こります. このことに注意を払い, 別巻
CD-ROM 版『日本産野生植物:植物学名一覧』を活用して, それぞれの植物の学名検索・解読を継続さ
れると学名への興味が一段と増し, 植物自体への理解も深まることと思います.
― 134 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
植物学名に関する参考文献
本書『植物の学名を読み解く―リンネの「二名法」―』を執筆に当たり参考にした文献を以下に
列記し, 多々教示を受けたことに厚く謝意を表します.
(順不同)
牧野富太郎・清水藤太郎共著『植物学名辞典』(1977, 復刻版)
第一書房
巻末の「著者名表」には植物の著者名とその略記を記す
朝比奈泰彦・清水藤太郎共著『植物薬物学名典範―科学ラテン・ギリシャ語法』(1981, 復刻版)
牧野富太郎『牧野新日本植物図鑑』(1977)
北隆館
牧野富太郎『普通植物検索図説』(1970, 復刻新版)
巻末に属名と種形容語の「学名解説」あり
高陽書院
牧野富太郎『CD-ROM 版 原色牧野植物大圖鑑』(2000)
大井次三郎著・北川政夫改訂『日本植物誌
有明書房
巻末にごく簡単な学名解あり
北隆館
顕花篇』( Flora of Japan, 1953 )
至文堂
巻頭に「日本植物の概要」,「日本植物調査研究史」,「顕花植物の外形」,「植物の分類と学名」の章が,
巻末に「植物命名者表」がある
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・亘理俊次・富成忠夫編『日本の野生植物―草本編』(1981) 全 3 巻 平凡社
佐竹義輔・原
寛・亘理俊次・富成忠夫編『日本の野生植物―木本編』(1989)
全 2 巻 平凡社
岩槻邦男編『日本の野生植物―シダ』(1992) 平凡社
岩月善之助編『日本の野生植物―コケ』(2001) 平凡社
清水建美編『日本の帰化植物』(2003)
平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七『日本帰化植物写真図鑑』(2001) 全国農村教育協会
北村四郎他編『原色日本植物図鑑―草本編Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ.』(1957) 保育社
北村四郎他編『原色日本植物図鑑―木本編Ⅰ.Ⅱ.』(1979) 保育社
北村四郎『北村四郎選集Ⅳ
花の研究史』(1990) 保育社
奥山春季『原色日本野外植物図譜』(1984)
全3巻
田川基二『原色日本羊歯植物図鑑』(1959)
保育社
誠文堂新光社
服部新佐監修,岩月善之助・水谷正美共著『原色日本蘚苔類図鑑』(1972) 保育社
吉村庸『原色日本地衣植物図鑑』(1974)
保育社
今関六也・大谷吉雄・本郷次郎編『日本のきのこ』(1994) 山と溪谷社
全2巻
今関六也・本郷次郎編『原色日本新菌類図鑑』(1997)
今関六也・本郷次郎・椿
啓介編『標準原色図鑑全集 14 菌類』(1970)
瀬川宗吉『原色日本海藻図鑑』(1958)
生物図鑑
保育社
保育社
千原光雄『標準原色図鑑全集 15 海藻・海浜植物』(1970)
千原光雄監修『学研
保育社
保育社
海藻』(1983) 学習研究社
千原光雄監修『日本の海藻』(2002) 学習研究社
田中次郎・中村庸夫『日本の海藻』(2004)
林
平凡社
室井
弥栄・古里和夫監修『原色世界植物大図鑑』(1986)
綽他 6 名共著『図解植物観察事典』(1982) 地人書館
週間朝日百科『植物の世界』(1997)
堀田
北隆館
1 – 145 号 朝日新聞社
満『日本列島の植物』(1974) カラー自然ガイド
11 保育社
前川文夫『日本の植物区系』(1977) 玉川選書 47 玉川大学出版部
前川文夫『日本固有の植物』(1978) 玉川選書 75 玉川大学出版部
田村道夫編『日本の植物
研究ノート
分類・系統学へのアプローチ』(1981)
― 135 ―
培風館
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
岩槻邦男『植物とつき合う本―植物分類学への序章』(1983) 研成社
長田武正『野草の自然史』(1979) 講談社
長田武正『野草図鑑』Ⅰ.Ⅴ (1984) 保育社
中尾佐助『花と木の文化史』(1986) 岩波新書(黄版) 357
岩波書店
本田政次『日本植物名彙』(1957) 恒星社
本田政次『植物学のおもしろさ』(1988) 朝日選書 366
上村
登『なんじゃもんじゃ―植物学名の話』(1976)
井上
浩『こけ』(1969)
北隆館
伊藤
洋『しだ』(1973)
北隆館
平嶋義宏『学名の話』(1989)
朝日新聞社
北隆館
九州大学出版会
平嶋義宏『生物学名命名法辞典』(1994)
平凡社
平嶋義宏『生物学名概論』(2002) 東京大学出版会
田中秀央編『羅和辞典』(1970) 研究社
豊国秀夫『植物学ラテン語辞典』(1987)
至文堂
ラテン語による植物の記載文の例もある
山田晴美編『園芸植物学名辞典』(1975)
農業図書
園芸関係の植物の属名のみを解説する
塚本洋太郎総監修『園芸植物大事典』(1989) 小学館
万谷幸男『植物学名大辞典』(1995) 大阪府堺市 植物学名大辞典刊行会
土橋
豊『ビジュアル
園芸・植物用語事典』(1999) 家の光協会
由田宏一『有用植物和・英・学名便覧』(2004) 北大図書刊行会
L. H. Bailey 『植物の名前のつけかた―植物学名入門』(1996) 八坂書房
巻末の付表に
「属名一覧」と「種の形容詞(種形容語)一覧」あり,長母音・短母音の符号を付けている
大橋広好訳『国際植物命名規約(東京規約)』(1997), 津村研究所(原著:International Code of
Botanical Nomenclature (Tokyo Code) 1994, International Association for Plant Taxonomy (Europe).
W. T. Stearn,
Botanical Latin (4th Edition) 1993, David & Charles
Liddell & Scott,
Greek-English Lexicon 1963, Oxford, at the Clarendon Press
C. T. Lewis, Elementary Latin Dictionary
E. H. Wilson,
1966, Oxford, at the Clarendon Press
The Conifers and Taxads of Japan (Publications of The Arnold Arboretum, No.8, 1916)
高津春繁『ギリシャ・ローマ神話辞典』(1960) 岩波書店
ハインツ・ゲールケ『リンネ―医師・自然研究者・体系家』(1994)
博品社
上野益三『日本博物学史』(1973) 平凡社
上野益三『博物学史散歩』(1978) 八坂書房
上野益三『博物学史論集』(1984) 八坂書房
上野益三『博物学者列伝』(1991) 八坂書房
木村陽二郎『日本自然誌の成立』(1974)
中央公論社
木村陽二郎『シーボルトと日本の植物―東西文化交流の源泉』(1981)
恒和選書 5 恒和出版
木村陽二郎『ナチュラリストの系譜』(1983) 中公新書 680 中央公論社
木村陽二郎『生物学史論集』(1987) 八坂書房
木村陽二郎『江戸期のナチュラリスト』(1988) 朝日選書 363 朝日新聞社
木村陽二郎・大場秀章解説『日本植物誌―シーボルト「フローラ・ヤポニカ」』(1992) 八坂書房
大場秀章編『日本植物研究の歴史―小石川植物園 300 年の歩み』(1996) 東京大学出版会
大場秀章『江戸の植物学』(1997) 東京大学出版会
大場秀章編『シーボルト
日本植物コレクション』(2000) 東京大学総合研究博物館/東京大学出版会
― 136 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
大場秀章『花の男 シーボルト』(2001)
文春新書 215
文芸春秋
大場秀章『サラダ野菜の植物史』(2004)
新潮選書
大場秀章『花に魅せられた人々』(2005)
自然の中の人間シリーズ
大場秀章『大場秀章著作選集Ⅰ
新潮社
花と人間編(第 7 巻)農文協
植物学史・植物文化史』(2006) 八坂書房
写真 木原浩 / 解説 大場秀章・川崎哲也・田中秀明『新日本の桜』(2007) 山と溪谷社
杉本つとむ『江戸の博物学者たち』(1985)
青土社
杉本つとむ『江戸洋学事情』(1990) 八坂書房
南方熊楠『原本翻刻
南方二書―松村任三宛南方熊楠原書簡』(2006)
西村三郎『未知の生物を求めて―探検博物学に輝く三つの星』(1987)
西村三郎『リンネとその使徒たち―探検博物学の夜明け』(1989)
西村三郎『文明のなかの博物学―西欧と日本』(1999)
南方熊楠顕彰会学術部編
自然叢書 1 平凡社
人文書院
紀伊国屋書店
中西啓『長崎のオランダ医たち』(1975 ) 岩波新書 942
岩波書店
石山禎一『シーボルト―日本の植物に賭けた生涯』(2000) 里文出版
高橋輝和『シーボルトと宇田川榕菴―江戸蘭学交遊記』(2002) 平凡社新書 129
平凡社
兼重護『シーボルトと町絵師慶賀』(2003) 長崎新聞新書 008 長崎新聞社
加藤僖重『牧野標本館所蔵のシーボルトコレクション』(2003) 思文閣出版
小山鐵夫『黒船が持ち帰った植物たち』(1996) アポック社出版局
春山行夫『花の文化史―花の歴史をつくった人々』(1980) 講談社
麓
次郎『四季の花事典
花のすがた・花のこころ』(1985)
八坂書房
M. タイラー・ホイットル(白幡洋三郎・白幡節子訳)『プラントハンター物語』
(The Plant Hunters , London, 1970 )(1980 )
白幡洋三郎『プラントハンター』(1994)
八坂書房
選書メチエ 6 講談社
現代新書 1110 講談社
松永俊男『博物学の欲望―リンネと時代精神』(1992)
F. キングドン-ウォード(塚谷祐一訳)『植物巡礼―プラント・ハンターの回想』(1999) 岩波文庫(青版 478-1) 岩波書店
F. キングドン-ウォード(金子民雄訳)『ツアンポー渓谷の謎』(2000) 岩波文庫(青版 478-2) 岩波書店
P. レイビー(高田
朔訳)『大探検時代の博物学者たち』( Bright Paradise: Victorian Scientific
Travellers, Chatto & Windus Ltd., Randam House, 1996 ) ( 2000 )
冨田
仁・西堀
河出書房新社
昭『横須賀製鉄所の人びとー花ひらくフランス文化』(1983) 有隣新書 25 有隣堂
ヨーゼフ・クライナー『黄昏のトクガワ・ジャパン―シーボルト父子の見た日本』(1998) 日本放送出版協会
齋藤静明『メタセコイア
昭和天皇の愛した木』(1995)
山口隆男『CALANUS』シーボルトと日本の植物学
中公新書 1224 中央公論社
特別号Ⅰ(1997)
山口隆男・加藤僖重『CALANUS』シーボルトと日本の植物学(その2) 特別号Ⅱ(1998)
山口隆男・加藤僖重『CALANUS』シーボルトならびに関連した人々が収集した植物標本類
特別号Ⅴ(2003)
上記 3 点は熊本大学理学部付属合津臨海実験所刊
大場達之他編『リンネと博物学―自然誌科学の源流』(1994) 千葉県立中央博物館
コマロフ植物研究所所蔵『シーボルト旧蔵日本植物図譜コレクション』(1994)
『シーボルトと日本』(1988)
日本・オランダ修好 380 年記念
『シーボルト父子のみた日本』(1996)
生誕 200 年記念
丸善
東京国立博物館
江戸東京博物館
『シーボルトの愛した日本の自然―紫陽花・山椒魚・煙水晶』(2000)
茨城県自然博物館
『シーボルトの 21 世紀』(2003) 東京大学コレクション XVI 東京大学総合研究博物館
上記 6 点は展覧会図録・目録・解説
― 137 ―
第8章 日本植物:学名探訪( 263種 )
ケンペル
齋藤信訳『江戸参府旅行日記』(1977) 東洋文庫 303 平凡社
高橋文訳『江戸参府随行記』(1994) 東洋文庫 535
ツュンベリー
平凡社
ジーボルト
齋藤信訳『江戸参府紀行』(1967) 東洋文庫 87 平凡社
シーボルト
木村陽二郎・大場秀章解説『日本植物誌』(1992) 博物図譜ライブラリー 6 八坂書房
シーボルト
大場秀章監修・解説
R. フォーチュン
瀬倉正克訳『日本の植物』(1996)
八坂書房
三宅馨訳『江戸と北京』(Yedo and Peking; A Narrative of a Journey to the Capitals
of Japan and China. London, 1863 ) (1969) 廣川書店
J.-J. ルソー
今野一雄訳『孤独な散歩者の夢想』(1956) 河出文庫 2012
N. レザーノフ
R. オールコック
河出書房
大島幹雄訳『日本滞在日記(1804-1805 年)』岩波文庫(青版 479-1)
岩波書店
山口光朔訳『大君の都―幕末日本滞在記』上・中・下 (1962)
岩波文庫(青版 424-1. 2. 3) 岩波書店
S. W. ウィリアムズ
洞富雄訳『ペリー日本遠征随行記』(1970)
新異国叢書 8
雄松堂出版
E. サトウ
坂田精一訳『一外交官の見た明治維新』上・下 岩波文庫(青版 425-1. 2) 岩波書店
E. サトウ
庄田元男訳『日本旅行日記』1・2 (1992) 東洋文庫 550. 554 平凡社
(追補)
『牧野日本植物圖鑑』(1940)北隆館
『園芸植物大事典』(2004) 全 3 巻,
コンパクト版
小学館
(ウィーン)規約 2006 日本語版』(2007) 日本植物分類学会
『国際植物命名規約
『国立科学博物館叢書
⑪
日本の固有植物』(2011)
東海大学出版会
― 138 ―
あとがき
あとがき
人間は太古から現在に至るまで, 日々の暮らしの中で衣・食・住の根幹を成すものとして数多くの
植物を利用し, 植物と深い関わりを持って暮してきています. 植物の用途は食料・飼料・医薬用・香料・
衣料・染料や建材・燃料等の産業用資源として, また装飾・園芸・日用雑貨等の実用に限らず, 宗教儀
式や人間の芸術的精神活動にも深く関わっています. 地球環境の保全に果たす植物の役割の大きいこ
とは言うまでもなく, 植物を抜きにして人間(動物)の暮らしは成り立ちません.
植物への関心の高まりから「世界の植物調査」の遂行を望み, 未知の植物を求め, 地球の果てにま
で命がけの冒険に出かけたプラントハンター・植物研究者はこれまで数多くいました. 大きな困難にも
めげず壮絶な任務に挑んだ先人達の研究・採集活動の一端を植物学名から窺うことが出来ます. 学名に
名を残した人達に限らず, 彼らを援助した無名の人達の献身的な活動も今日までの植物研究に寄与して
きました.
18 世紀中葉, リンネに始まった植物学名の「二名法」は, 一つの種を「一語の属名 + 一語の種形容
語」のラテン語で表記するという簡便で, 検索性に優れたものです. 今日では, 記載・命名された植物で
あれば日本の植物に限らず, 地球上のすべての植物学名を知ることが出来るようになりました.
私が自然観察を続ける中で,植物学名に興味を覚えた数点を記します.
*
シモバシラ(シソ科)Keiskea japonica Miq. ……関東地方以西の太平洋側と四国・九州の山地
だけに分布する日本固有種のひとつで, 山中の木陰や林縁に生える多年草です. 株によって, 雄しべが
長く, 花柱が短いものと, その逆のものとがあります. 秋に, 葉腋に偏側生の花穂に白色または淡紫色
の花を沢山付けます. 初冬の凍てつく日の朝早い時間帯に, 地際の枯れた四角い茎が毛細管現象で地
中の水分を吸い上げ, それが外気の冷たさで凍り, 膨張して, 茎を破って四方に氷が出てくると, 霜柱
のように見えるので, この和名があります. 氷の結晶は, ガラス細工のようなさまざまな形の‘氷の華’
に生長しますが, 気温が上昇するにつれて少しずつ融けて華麗な氷の姿は消えていきます.
Keiskea 属は東アジアの固有属で, 属名・種名の命名者はともにミクェル F. A. W. Miquel である.
その和名の妙に加え, 幕末から明治にかけて活躍し, リンネの学説(分類体系)を紹介した植物(本草)
学者伊藤圭介の,「姓」ではなく「名」の方が属名に献名されています.
*
リンネソウ(スイカズラ科)Linnaea borealis
L. ……北半球の寒冷な地域に 1 種が分布し, 日本
では, 長野県以北の本州と北海道の高山ハイマツ帯の下や針葉樹林帯などに見かける氷河時代の残存植
物のひとつで, 東アジアでは果実が熟すことが少ない. つる性の地を這う茎から 10cm 弱位の花柄を立
て, その二分岐した先に鐘形の淡紅色の小花を下向きにつける可愛い植物で, 英名は ‘ Twin Flower ’
です. その属名は本書で詳しく紹介をしたリンネ Carl von Linné への献名で, その種形容語
( borealis, 北方の )とセットで日本の高山帯と世界の亜寒帯とが繋がっていることを実感します.
*
エゾゴゼンタチバナ(ミズキ科)Cornus suecica L. ……日本では北海道(道北・道東)の冷涼
な湿った地に, 矮生の茎に暗紫色の花をつけます. ユーラシア大陸北部と北アメリカにも分布する第
三紀周北極要素の植物で, 英名は ‘ Eurasian dwarf cornel ’ です. その種形容語にリンネの生国 :ス
ウェーデンの国名がつきます. 属名の命名者もリンネで, Cornus 属の性( gender )は女性で, 同属にゴ
ゼンタチバナ Cornus canadensis
L. があり, 両者ともに赤い実を付ける多年草植物です. ミズキ科
の植物はミズキ・ヤマボウシ等ほとんどが木本で, 草本はごく稀です.
― 139 ―
あとがき
トモシリソウ(アブラナ科)Cochlearia oblongifolia DC. ……ロシア沿海地方~北アメリカ西北
*
部の海岸に広がる極北要素の植物で, 日本では北海道道東部の沿岸地帯に分布し, 和名は最初の発見地,
根室市友知の地名に由来します. 属名の命名者はリンネで, 属名は本属の多くの種類のものの葉の形
が, 匙 spoon の凹みに似ていることを表し, ヨーロッパ西部・スイス以北に C. officinalis
L. (英名
‘ Spoon Wort ’… その多肉な葉や茎は薬用やサラダ用に栽培もされる)が, 日本にはトモシリソウ 1 種
のみ自生します. 種形容語はその葉が長楕円形であることを表します.
北海道の海岸は, 短い夏の間コンブ漁で賑わい, 陸揚げされたコンブを, 玉砂利を敷き詰めた干し
場に引き伸ばし天日乾燥するのに家族総出で大忙しです. その脇の海崖の岩の割れ目に, 張り付くよ
うに根を下ろしてトモシリソウが生育しています.
6~7 月に白花が密集して咲き, 葉は多肉質で, 根
出葉には長い柄があり, 花序は果時には伸びるので, 見分けることは難しくありません.
ハヤチネウスユキソウ(キク科)Leontopodium hayachinense
*
(Takeda) H. Hara et Kitam. …
…東北の名峰, 早池峰(標高 1,914m)の蛇紋岩地帯だけに特産する固有種で, その山名が種形容語に
付きます. 白い綿毛の密生した総苞葉に支えられた星形の花序は, 寒気・強風・乾燥に耐えて生きる高
山植物を代表する姿で, 属名はギリシャ語「leon(ライオン)+ podium(小足)」で, 英名は ‘ Lion’s Foot ’
です. 頭花は管状花から成り, 周辺部に雌花を, 中心部に雄花を付けます.
ヨーロッパの乾燥した草原や石灰岩地に生え, スイスの国花に選定されているエーデル・ワイス
(Edelweiss, 「高貴な」+「白」)と呼ばれる Leontopodium alpinum
Cass. も同属のものです.
早池峰山頂の避難小屋に連泊して, 早池峰の中腹部・山頂部の貴重な種(注1)をつぶさに観察でき
たことは大きな収穫でありました.
注1
(科和名)
(学
名)
Bryanthus gmelinii D. Don
リンドウ
ミヤマアケボノソウ
Swertia perennis L.
subsp. cuspidata (Maxim.) H. Hara
Draba japonica Maxim.
アブラナ
ナンブイヌナズナ
バラ
ナンブトウウチソウ
Sanguisorba obtusa Maxim.
バラ
ミヤマヤマブキショウマ
Aruncus dioicus (Walt.) Fernald
var. astilboides (Maxim.) H. Hara
タデ
ナンブトラノオ
Bistorta hayachinensis (Makino) H. Gross
カヤツリグサ
タカネシバスゲ
Carex capillaris L.
イネ
ナンブソモソモ
Poa hayachinensis Koidz.
ホウライシダ
リシリシノブ
Cryptogramma crispa (L.) R. Br. ex Rich. 等々
ツツジ
(種和名)
チシマツガザクラ
種形容語,変種形容語:perennis(多年生の)
; cuspidatus(凸形の,凸頭の)
; obtusus(鈍形の, 円味を帯びた)
; dioicus
(雌雄異株の)
; astilboides(ユキノシタ科チダケサシ属 Astilbe に似た)
;capillaris(細毛状の, 糸のよう
な);crispus(縮れた,波打つ)
*
ヒトツバタゴ(モクセイ科)Chionanthus retusus Lindl. et Paxton ……雌雄異株の落葉高木で,
なかなかお目にかかれない珍しい木であることから‘ナンジャモンジャ’(注 2)と呼ばれることがあり
ます. 日本では, 岐阜県南部とそこに接する長野・愛知両県の一部と対馬の北端, 鰐浦にのみ遺存分布
し, 国外では, 朝鮮・台湾・中国大陸の一部にあり, 日本の産地では, それぞれ天然記念物に指定されて
います. 花冠は白色で 4 深裂し, その裂片は線状倒披針形で長さ 1.5~2cm.
5 月, 樹冠一面に白花を
咲かせ, 雪が降り積もったように見えます. 属名の命名者はリンネで, ギリシャ語で「chion(雪)+
anthos(花)」を意味する属名で, その姿に由来し, 英名は ‘ Snow Flower or Fringe Tree ’ です. 種形
容語は「微凹形の, 微凹頭の」の意味で, その葉先の形を表していますが, 葉先の「微凹形,微凹頭」は注意
― 140 ―
あとがき
深く観察しないと見落とすほどのものです.
ヒトツバタゴは庭木や公園樹として各地に植栽されていて, この珍木の花を, 市内の寺院境内で毎
年観察しています. しかし, その木は単木で植えられた雄株のため, 果実を見ることができないのが残
念です.
中国原産のロウバイ(ロウバイ科)Chimonanthus praecox
(L.) Link は江戸時代初期に日本に
入った香木で, 12 月~2 月の冬枯れの庭に, 葉に先立って黄色の花弁を開き, 花の香りを一帯に漂わせ
遠くはるかな春の息吹を告げます. その枝には黒褐色のミノムシの巣に似た長卵形の果実がぶら下が
っています. ロウバイをヨーロッパに最初に紹介したのは, 1690 年に来日した E. ケンペルで, その著
『廻国奇観』(1712)に ‘ Robai (ロウバイ)
’
と日本名を記しています. 属名はギリシャ語「cheimon(冬)
+ anthos(花)」の意味で, 英名は ‘ Winter Sweet or Winter Shrub ’ です.
ヒトツバタゴとロウバイの属名はよく似ているので注意して区別します. 両者の種形容語を比べ
れば混乱することはありません. 学名の語源を理解して, 学名を「属名」+「種形容語」で捕らえるこ
との大切さをこの両種は示唆している例といえます.
注
2 その土地で不明の植物を‘ナンジャモンジャ’と呼んでいて, 地方によって樹種が違う. ヒトツバタゴの
ほか, アブラチャン, ヤブニッケイ, イスノキ, クスノキ, カツラ, イヌザクラ, ホルトノキ(ホルトノ
キ科) Elaeocarpus sylvestris (Lour.) Poir. var. ellipticus (Thunb.) H. Hara , カゴノキ(クスノキ科)
Actinodaphnelancifolia (Siebold et Zucc.) Meisn.などを‘ナンジャモンジャ’と云う地方がある.
種形容語:praecox 早咲きの;sylvestris 森林生の;ellipticus 楕円形の;lanifolius 披針形の葉をもつ
*
アカヤシオ(ツツジ科)Rhododendron pentaphyllum
Maxim. var. nikoense Komatsu ……属
名の命名者はリンネで, 属名はギリシャ語「rhodon(バラ, バラ色)+ dendron(樹木)」の意味です.
種形容語はギリシャ語「penta(5)+ phyllum(葉)」の意味で, 変種名は栃木県日光地方を表してい
ます. 本州(福島県~三重県)・四国の太平洋側に分布して, 開葉前に赤紫色の花を咲かせます.
シロヤシオ(ツツジ科)Rhododendron quinquefolium
Bisset et Moore ……種形容語はラテン
語「quinque(5)+ folium(葉)」の意味です. 本州(岩手県以南)・四国の太平洋側の山地に分布
して, 日光ではアカヤシオの花が終わると白色の花を枝一面に付けるシロヤシオが咲き始めます. 葉
は枝先に 5 枚輪生状に付くので, 別名:五葉ツツジと, また, 老木の樹皮はマツ肌のように割れ目が入る
ことがあるので,‘マツハダ’の名もあります.
アカヤシオもシロヤシオも共に 5 枚の輪生する葉をもつことから, それぞれの種形容語に「5 枚の
葉」を表すの種形容語(ギリシャ語起源とラテン語起源)が同属の中で使い分けられています.
*
ムラサキ(ムラサキ科)Lithospermum erythrorhizon
Siebold et Zucc. ……この属名の命名者も
リンネで, 属名はギリシャ語「lithos(石)+ sperma( 種子) 」の意味で, 灰白色で小さな石粒のよう
な堅い種子を, 種形容語はギリシャ語「erythro(赤い)+rhizon(根)
」の意味で, 根が赤いことをそ
れぞれ表しています. 属名・種形容語に植物の特徴がうまく盛り込まれている学名といえます. 英名
は‘ Gromwell ’ です.
以前は日本国内でも広くムラサキの自生地があり, その根にはシコニン( shikonin )という色素が
含まれ, 紫根染めの染料や薬草としても利用され,「江戸紫」として商人達が盛んに商いをしました. 伝
統のある紫根染めの作業は, 現在でも東北のごく限られた地方で小規模ながら継続されています.
ムラサキの自生地としてかつては‘ 武蔵野 ’が有名で, いくつかの学校の校章のデサインにその
白い小花は生かされています(私が 8 年間勤務した東京都立保谷高等学校もそのひとつです)が, その
自生地は現在ではごく限られ, 風前の灯です. 人があまり立ち入らない冷涼で貧栄養地の荒野(富士山
麓)にわずかに点在しているのを観察・記録しました.
― 141 ―
あとがき
*
ステゴビル(ユリ科)Caloscordum inutile (Makino) Okuyama et Kitag.…… 主に本州中部(福
島県~広島県)の石灰岩地を中心に, 人里に近い原野の道端や畑の縁等に遺存的に分布し, 稀に産する
日本固有種です. 9月中・下旬頃, 白色または淡紫色の花冠をつけます. 属名の意味はギリシャ語
「callos(美しい)+ skorodon(ニンニク, ニラ)」で, 英名は ‘ False Garlic ’ です. 一見ニラによく
似たところがあるが臭いがなく, 貧弱で食用にもならず見捨てられてしまいそうな植物で, 捨てても惜
しくないと有難くない和名(「捨小蒜」,「捨子蒜」)が付いています. 和名同然の種形容語( ‘ inutilis ’
「役に立たない, 無用な」の意)をあたえたのは牧野富太郎です. ステゴビルは県指定天然記念物にな
っていていますが, 絶滅が危惧されていて, バイオテクノロジーを使って球根を増やしその保護と再生
に取り組む人たちがいます. 農家の庭隅で, 下草が混じり小塚になっている落葉樹の下で観察しまし
た.
一方, ‘ utilis (
’ 有用な)の種形容語が付くのはシーボルトノキ(クロウメモドキ科)Rhamnus utilis
Decaisne で, 当初牧野富太郎は Rhamnus sieboldiana
Makino と命名しました. シーボルトノキ
(中国原産)は雌雄異株の落葉小高木で, おそらくシーボルトが二度目に来日した折, 中国から取り寄
せ長崎出島の商館の庭や鳴滝塾の敷地に植えたので, この和名があるという. 鳴滝の原木は枯れ, その
一部は長崎大学医学分館に保存されていて, 同大学医学部のロゴマークにシーボルトノキが用いられて
います.
*
キタミソウ(ゴマノハグサ科)Limosella aquatica
L.…… 属名の命名者はリンネで, 属名は
limosus(沼地の)の縮小形で, 湿地に生えるものを, 種形容語は水(中)生であることを表しています.
北半球に広く分布しているが, 他に類似種がなく, 1 種からなるキタミソウ属 ( Limosella ) に分類さ
れています. 主な自生地は, 北千島・択捉島・シベリア・樺太などの亜寒帯からツンドラにかけての寒
冷な湿地ですが, 日本では, 北海道網走地方北見で最初に見つかったので「北見草」の名があります.
しかし, 現在は同地方には自生は確認されず, 胆振地方の一部と温暖な気候の九州熊本地方と関東地
方に隔離分布する種(1 属 1 種)で, その種子の伝播には水鳥が関係していると考えられています. 北
方系植物であるキタミソウは利水サイクルに適応して生育していて, 水環境(雪・水)との密接な生活
史をその学名が如実に物語っています.
関東地方の農業灌漑用水には 4 月下旬水が入り, 9 月上旬に稲刈りのため上流側の水門を閉じる人
為的な水位管理がなされています. キタミソウはこのような場所の, 深さ 2~3m 以上になる場所に限
られている水底で暑さから逃れて種子で越夏し, 北方の夏と同じ気候条件となる秋に発芽・開花・結実
し, 真冬にはほとんど枯れるが, 春になると再び発芽・開花・結実して種子は河床とともに再び水中に
没します. 花の時期は 10 月~11 月と 3 月~4 月の二期ありますが, 春の発芽・開花前に用水に水が入
ると開花・結実できずに水底に没し, 秋に水底が干上がってから発芽・開花する一季咲きになります..
晩秋の頃, 用水の水は落ちてはいるが, まだぬかるみの個所が散在する用水路敷にゴム長靴を履
いて降りて, 泥土の上に張り付くようにへら形で, 長さ 3cm 程度の細い葉を四方に伸ばし, 短い花茎の
先に径 5mm 位の白い小花をつけたキタミソウをかがみこんで, 目を凝らして観察しました. キタミ
ソウは絶滅危惧ⅠA 類(最も絶滅の危機に瀕している種)に指定されている貴重な植物で, その培養増
殖に取り組む人たちの活動が注目されています.
─18 世紀を代表する博物学者リンネを評した言葉の一つ:神が自然を創造し, リンネが配列する─
( God creates; Linnaeus disposes. )
2007 年はリンネ(1707.5.23-1778.1.10) 生誕 300 年の, また, 日本人植物学者で最も多くの日本産
植物種を記載・命名した牧野富太郎(1862.5.22-1957.1.18) 没後 50 年の節目になる年であります.
― 142 ―
あとがき
これを機会に, リンネが提唱・実践した「二名法」で表される植物学名を詳しく知ることは大きな
楽しみとなるでしょう. リンネの「二名法」は, 簡便・明快で検索性に優れた学名表記のシステムで
あり, コンピュータが使えるようになった今日, その利便性はますます高くなっています.
植物愛好家の方々が植物学名に関心を持ち, 属名解説と種形容語解説の資料を手元に置き, 学名の
意味・由来などを知れば個々の植物が一層身近に感じられるようになるだけでなく, 学名にまつわる
思いがけない発見があったりして, 驚きもし嬉しくもなることでしょう. 植物の学名を読み解くには
ギリシャ語とラテン語の基礎を学び, 植物記載用語(ラテン語)を覚える必要があり, 学名命名者にも
関心をもちましょう. 難儀することがあっても, 一歩でも前へ進めたら収穫です.
季節毎に, 心に留まる植物の学名を知る手だてに, 本書 ( 及び別巻 CD-ROM 版「日本産野生植
物:植物学名一覧」) を活用して下さり, 読者各位の植物学名へのご理解と関心の深化に少しでもお役
に立てば嬉しい限りです. 誤りの個所にお気づきの方はご教示・ご指摘下さるようお願い致します.
巻頭に掲載したリンネの肖像画像(銅版画)には, リンネの自信に満ちた様子が窺えます. 千葉県
立中央博物館の承諾を得て掲載することができました. リンネの左胸を飾る小さな植物がリンネソウ
(スイカズラ科)Linnaea borealis
L.です.
本書カバーの写真を含め口絵の写真はすべて著者が撮影したものです.
本書出版の企画の各段階で, 朝日新聞社書籍編集部出版サービスの赤岩なほみ・山本美由紀・菊地
聡の三氏には懇切なご助言・指導を頂きました. また, 亀書房の亀井哲治郎氏には, 編集の実務面で細
部にわたり適切なご指摘・ご提案を頂き出版に生かすことができました. ブックデザイナーの熊澤正人
氏には装丁でお世話を頂きました. みなさまに, 厚くお礼を申し上げます.
最後に, 妻(田中初枝)は植物への関心をいつも持ち続けて, 植物観察の時間を私と楽しく共有し,
私たちの日常の暮らしをしっかり支えてくれていることに深く感謝しています.
2006 年 12 月 25 日
田中
― 143 ―
學
本書に学名を記載した 種和名索引
種 和 名 索 引
本書に学名を記載した ア 行
アイナエ 73
アイヌソモソモ 68
アオガネシダ 89
アオキ 23, 110 アオノツガザクラ 117 アオモジ 126
アオモリマンテマ 118
アオヤギバナ 95
アカウキクサ 131
アカエゾマツ 44, 88 アカガシ 129
アカギ 63
アカシデ 126
アカバナ 66
アカマツ 34, 61
アカミノイヌツゲ 95
アカミノルイヨウショウマ 116
アカモノ 129
アカヤシオ 34, 141
アキカラマツ 42
アキグミ 55
アキタブキ 30
アギナシ 46
アキノキリンソウ 47
アキノノゲシ 11
アケビ 111
アケボノソウ 129
アサガラ 129
アサギリソウ 65
アサザ 37
アサマスゲ 84
アサマフウロ 92
アジサイ 21, 58, 59
アシズリノジギク 118
アスナロ 61
アズマイチゲ 87
アズマギク 55
アゼトウナ 104
アセビ 114
アッケシソウ 118
アツバクコ 71
アブラチャン 132
アベマキ 64
アポイカンバ 118
アポイザサ 112
アマギコアジサイ 31
アマギテンナンショウ 108
アマチャヅル 64
アマヅル 133
アマナ 111
アマミシダ 118
アマモ はしがき
アラカシ 117
アラゲナツハゼ 129
アリサンイヌワラビ 108
アリノトウグサ 126
アレチウリ 35
アワブキ 61
アンズ 62
イイギリ 65
イイヌマムカゴ 95
イオウジマハナヤスリ 126
イカリソウ 34
イケノヤナギ 102
イケマ 129
イシヅチテンナンショウ 119
イシミカワ 132
イズカニコウモリ 117
イスノキ 60
イソギク 120
イソヤマアオキ 126
イタチササゲ 89
イチイ 129
イチイガシ 64
イチゲイチヤクソウ 34, 50
イチハツ 123
イチョウ 13, 112
イチリンソウ 120
イトキンスゲ 118
イトバショウ 119
イナモリソウ 69
イヌエンジュ 87
イヌガシ 64
イヌコリヤナギ 131
イヌザクラ 63
イヌシデ 109
イヌツゲ 56
イヌノヒゲ 45
イヌビユ 117
イヌビワ 55
イヌブナ 29
イヌマキ 39
イヌヨモギ 97
イノデモドキ 108
イノモトソウ 132
イブキカモジグサ 129
イブキシモツケ 132
イブキトリカブト 119
イラクサ 55
イロハカエデ 9
イワアカバナ 127
イワイチョウ 68
イワインチン 122
イワガネ 64
イワガラミ 61
イワカンスゲ 51
イワギキョウ 126
イワキンバイ 92
イワシデ 84
― 144 ―
イワシャジン 44
イワタイゲキ 88
イワタバコ 60
イワノガリヤス 82
イワヒゲ 114
イワヒトデ 55
イワブクロ 25
イワベンケイ 117
イワヤスゲ 133
イワユキノシタ 38
イワヨモギ 113
イワレンゲ 113
ウキクサ 127
ウゴアザミ 121
ウコギ 45
ウシクグ 48
ウスバサイシン 44
ウスバルリソウ 121
ウスユキソウ 124
ウダイカンバ 65
ウツクシザサ 41
ウバタケニンジン 121
ウバユリ 129
ウマノスズクサ 61
ウマノチャヒキ 49
ウメ 62
ウメウツギ 102
ウメモドキ 56
ウラシマソウ カバー裏, 113
ウラシマツツジ 121
ウラジロガシ 64
ウラジロタデ 44
ウラジロナナカマド 99
ウラジロモミ 48
ウラジロヨウラク 126
ウラハグサ 112
ウリノキ 126
ウリハダカエデ 126
ウワミズザクラ 71
ウンゼンツツジ 70
エイザンスミレ 118
エキサイゼリ 102
エゴノキ 36
エゾアジサイ 34
エゾイヌナズナ 122
エゾウスユキソウ 30
エゾオオバコ 82
エゾキンポウゲ 67
エゾコザクラ 129
エゾゴゼンタチバナ 口絵, 120, 139
エゾゴマナ 21, 44 エゾシロネ 82
エゾスカシユリ 131
エゾスズラン 66
エゾタチカタバミ 83
エゾツツジ 118
本書に学名を記載した 種和名索引
エゾツリバナ 42
エゾノタチツボスミレ 129
エゾノチチコグサ 130
エゾノヨツバムグラ 79
エゾノレイジンソウ 130
エゾハナシノブ 30
エゾヒナノウスツボ 44
エゾヒメクラマゴケ 45
エゾヒョウタンボク 88
エゾボウフウ 83
エゾホソイ 130
エゾマツ 119
エゾミヤマザサ 105
エゾミヤマヤナギ 105
エゾヤマザクラ 72
エノキ 104
エノコログサ 117
エビネ 73
エンジュ 62
エンレイソウ 65
オイランアザミ 133
オオイタドリ 120
オオイヌノフグリ 120
オオウバユリ 88
オオウマノアシガタ 130
オオカナメモチ 76
オオカンアオイ 103
オオサクラソウ 70
オオシケシダ 48
オオシラタマホシクサ 50
オオシラビソ 92
オオタニワタリ 101
オオチゴユリ 117
オオツクバネウツギ 127
オオバイヌビワ 79
オオバウマノスズクサ 53
オオバグミ 55
オオバコ 21, 42
オオバコンロンソウ 86
オオバスノキ 71
オオハナウド 130
オオバボダイジュ 45
オオバメギ 109
オオバヤシャブシ 29
オオバヤドリギ 113
オオバヨモギ 104
オオモミジ 86
オオモミジガサ 51
オオヤマレンゲ 30
オガサワラビロウ 118
オカタツナミソウ 127
オガタマノキ 72
オカヒジキ 92
オカメザサ 104
オガラバナ 84
オキナグサ 39
オキナワニッケイ 120
オクチョウジザクラ 93
オクヤマシダ 118
オグラコウホネ 106
オケラ 37
オサバグサ 60
オサラン 76
オシダ 127
オシマオトギリ 123
オシャグジデンダ 68
オゼソウ 120
オタルスゲ 120
オチフジ 119
オトギリソウ 130
オトコゼリ 99
オトメアオイ 66
オドリコカグマ 119
オナガサイシン 34, 131
オニイノデ 108
オニク 120
オニグルミ 86
オニコナスビ 99
オニコバノガマズミ 31
オニシバリ 114
オニシモツケ 119
オニスゲ 92
オニドコロ 113
オニノヤガラ はしがき
オニバス はしがき
オニヒョウタンボク 91
オニヤブソテツ 130
オニユリ 39
オノオレカンバ 88
オヒョウ 131
オヒルギ 127
オミナエシ 47
オモダカ 133
オヤマソバ 104
オヤマリンドウ 101
オランダガラシ 73
オンタデ 88
オンツツジ 88
カ 行
カエデドコロ 50
カギガタアオイ 129
カキノキ 62
カキノハグサ 92
カキラン 71
ガクウツギ 30
ガクタヌキマメ 129
カクレミノ 49
カゴノキ 141
カザグルマ 84
カジカエデ(オニカエデ) 39
カジノキ 11, 113
ガジュマル 25
カシワ 10
カシワバハグマ 133
カタクリ カバー裏, 116
カタバミ 129
カツラ 28
カテンソウ 64
― 145 ―
カナウツギ 44
カネコシダ 41, 68
カノコソウ 68
カノコユリ 28
ガマ 34, 131
ガマズミ 55
カヤ 132
カライトソウ 118
カラクサイヌワラビ 122
カラクサキンポウゲ 44
カラスノエンドウ 49
カラスムギ 130
カラフトイチゴツナギ 48
カラフトイチヤクソウ 68
カラフトイバラ 118
カラフトダイオウ 79
カラマツ 53
カラムシ 117
カリヤス 117
カワラニガナ 121
カワラノギク 119
カワラヨモギ 55
カンエンガヤツリ 96
カンガレイ 82
ガンコウラン 117
カンサイタンポポ 104
カンザシギボウシ 129
ガンジュアザミ 118
カンスゲ 86
ガンピ 129
カンヒザクラ 65
カンボク 12
ギーマ 71
キイムヨウラン 119
キイレツチトリモチ 48
キオン 122
キキョウ 37
キキョウラン 114
キクバドコロ 50
キササゲ 25
ギシギシ 57
キシツツジ 122
キシュウスズメノヒエ 130
キジョラン 73
キスミレ 120
キセルアザミ 61
キセワタ 126
キタゴヨウ 132
キタダケキンポウゲ 119
キタダケソウ 45
キタダケヨモギ 119
キタミソウ 121, 142
キタミフクジュソウ 87
キチジョウソウ 116
キヅタ 133
キツネアザミ 83
キツネノカミソリ 117
キツリフネ 132
キヌタソウ 113
本書に学名を記載した 種和名索引
キヌヤナギ 113
キノクニスゲ 99
キノクニスズカケ 108
キハギ 24
キハダ 86
キバナシャクナゲ 116
キバナシュスラン 45
キバナノアツモリソウ 98
キバナノアマナ 117
キバナノコマノツメ 50
キバナノホトトギス 116
キバナノ マツバニンジン 121
キバナノレンリソウ 122
キビ 11
キブシ 30
キミズ 76
キュウシュウツチトリモチ 107
キュウリグサ 132
ギョウギシバ 47
ギョウジャニンニク 134
キヨシソウ 129
キヨスミウツボ 133
キヨスミギボウシ 109
ギョリュウ 41
キランソウ 55
キリ 28
キレンゲショウマ 98
キンギンボク 86
キンコウカ 118
キンスゲ 120
キントキヒゴタイ 105
ギンバイソウ 126
ギンリョウソウ 口絵, 131
クグスゲ 47
クサアジサイ 129
クサイチゴ 29
クサギ 55
クサトベラ 130
クサノオウ 42
クサボケ 76
クサボタン 61
クサヤツデ 69
クサヨシ 129
クシバタンポポ 132
クジャクシダ 132
クシロチドリ 47
クシロハナシノブ 口絵, 30
クズ 131
クスドイゲ 133
クスノキ 47
クヌギ 29, 41
クマガイソウ 口絵, 55
クマザサ 89
クマタケラン 118
クマノミズキ 29
クモイナズナ 97
クモキリソウ 113
クモノスシダ 86
クラガリシダ 100
クラマゴケ 133
クララ 81
クリ 28
クリンソウ 71
クルマシダ 85
グレーンスゲ 88
クロアブラガヤ 122
クロガネモチ 56
クロキ 131
クロヅル 86
クロバイ 46
クロバナハンショウヅル 116
クロビイタヤ 100
クロホシクサ 42
クロマツ 10
クロミサンザシ 29
クロミノイタチシダ 126
クロモジ 54
クロユリ 118
ケグワ 118
ケショウヤナギ 38
ケナガヤブマオ 131
ケヤキ 133
ケンサキタンポポ 48
ゲンノショウコ 44
ケンポナシ 54
コアジサイ 131
コイケマ 89
コイチヤクソウ 133
コイヌノヒゲ 50
コイワザクラ 92
コウシンソウ 98
コウボウ 83
コウボウムギ 113
コウヤマキ 134
コウヨウザンカズラ 46
コオロギラン 65
コカンスゲ 92
コガンピ 113
コクサギ 112
コケイラン 76
コケシノブ 85
コケヌマイヌノヒゲ 105
コケリンドウ 83
コゴメカラマツ 127
コゴメスゲ 116
コシノカンアオイ 126
コスギイタチシダ 121
コスギダニキジノオ 48
コスミレ 82
ゴゼンタチバナ 118, 139
コバイケイソウ 39
コハクウンボク 102
コバノクロヅル 75
コバンソウ 42, 131
コブシ 41
コブナグサ 131
ゴマシオホシクサ 106
コマツヨイグサ 80
ゴマナ 21
コミネカエデ 61
コミヤマスミレ 46
コメガヤ 132
― 146 ―
コメツツジ 109
コモチマンネングサ 129
ゴヨウアケビ 50
ゴヨウイチゴ 51
コリヤナギ 113
サ 行
サイコクイカリソウ 107
サイハイラン 76
サカイツツジ 132
サカキ 54
サカネラン 47
サキシマスオウノキ 122
サキシマヒサカキ 120
サクライソウ 44
サクラソウ 28 サクラタデ 129
サクラツツジ 99
サクララン 73
ザクロソウ 126
ササバギンラン 64
ササユリ 57
サザンカ 113
サジオモダカ 47
ザゼンソウ カバー裏, 130
サツマスゲ 131
サトウキビ 49
サドスゲ 120
サネカズラ 112, 113 サマニヨモギ 121
サラシナショウマ 30
サルナシ 87
サルメンエビネ 77
サワギキョウ 133
サワグルミ 124
サワダツ 117
サワトラノオ 131
サワトンボ 131
サワヒヨドリ 77
サワルリソウ 65
サンカヨウ 71
サンコカンアオイ 126
サンショウ 116
サンショウモ 132
シーボルトノキ 35, 142
シオカゼテンツキ 129
シオギク 113
シオジ 35
ジガバチソウ 90
シコクシラベ 120
シコクチャルメソウ 101
シコタンタンポポ 120
シシアクチ 26
シシウド 30
シシガシラ 120
シシンラン 65
ジゾウカンバ 127
シソバキスミレ 121
シダレヤナギ 62
シチョウゲ 98
本書に学名を記載した 種和名索引
シデコブシ 55
シデシャジン 36
シナノナデシコ 120
シノブ 92
シハイスミレ 117
シマカコソウ 48
シマカナメモチ 85
シマザクラ 76
シマジタムラソウ 119
シマトウヒレン 107
ジムカデ 79
シムラニンジン 20
シモツケソウ 132
シモバシラ 97, 139
シャガ 55
シャクジョウソウ 122
ジャケツイバラ 50
シャリンバイ 77
ジュウニヒトエ 45
シュウブンソウ 134
ジュズダマ 47
シュスラン 134
シュロ 77
ショウガ 132
ショウキラン 96
ショウジョウスゲ 67
ショウジョウバカマ 71
ショウベンノキ 38
ジョウロウホトトギス 65
シライヤナギ 102
シラカバ 34
シラタマカズラ 11
シラタマノキ 105
シラネアオイ 口絵, 60
シラネニンジン 86
シラベ 44
シラン 133
シレトコスミレ 45
シレトコトリカブト 105
シロイヌナズナ 13
シロウマオウギ 120
シロウマチドリ 122
シロザ 116
シロシャクジョウ 79
シロネ 84
シロバナネコノメ 116
シロバナハマナス 31
シロバナハンショウヅル 85
シロバナマンテマ 118
シロヤシオ 34, 126, 141
シロヤマブキ 61
シロヨモギ 79
ジングウスゲ 122
ジングウツツジ 37
ジンヨウイチヤクソウ 34
ジンヨウスイバ 49
スイセン 47, 114
スイバ 129
スエコザサ 45
スガモ 119
スギ 23
スギナ 122
ススキ 28
スズコウジュ 30
スズシロソウ 130
スズムシソウ 45
スズムシバナ 64
スズメノカタビラ 129
スズメハコベ 42
スズラン 97
ステゴビル 口絵, 131,142
セイタカトウヒレン 66
セイヨウノコギリソウ 50
セキショウ 130
セッコク 124
セツブンソウ 口絵, 28
セナミスミレ 120
センカクオトギリ 120
セントウソウ 130
センニンソウ 25
センノウ 113
センボンヤリ 38
ゼンマイ 119
センリョウ 130
ソウウンナズナ 104
ソクズ 77
ソテツ 55
ソメイヨシノ 31
ソメモノカズラ 73
ソヨゴ 132
タ 行
ダイセンスゲ 118
タイツリオウギ 84
タイトゴメ 101
タカクマホトトギス 120
タカサゴイヌワラビ 48
タカチホガラシ 119
タカトウダイ 45
タカネクロスゲ 68
タカネサトメシダ 49
タカネシバスゲ 129, 140
タカネスミレ 39
タカネタンポポ 105
タカネフタバラン 98
タカネヤハズハハコ 121
タキミチャルメルソウ 85
タケシマラン 46
タケニグサ 73
タコノキ 118
タチギボウシ 133
タチスミレ 86
タチツボスミレ 71
タチデンダ 48
タチバナ 25
タテヤマウツボグサ 46
タテヤマギク 126
タテヤマヌカボ 121
タニウツギ カバー裏, 131
タニジャコウソウ 69
タニヘゴ 121
― 147 ―
タヌキマメ 11
タヌキモ 73
タブノキ 55
タマアジサイ 131
タマガワホトトギス 126
タマノカンアオイ 120
タマミクリ 130
タムシバ 65
タモトユリ 41, 132
タラノキ 130
タラヨウ 56
ダンコウバイ 132
ダンチク 47
チゴザサ 36
チシマアザミ 83
チシマザクラ 22, 119
チシマザサ 119
チシマスズメノヒエ 100
チシマセンブリ 81
チシマツガザクラ 79, 140
チシマヒョウタンボク 82
チシマミクリ 49
チチブシロカネソウ 87
チチブミネバリ 118
チドリノキ 61
チャノキ 20
チャボシライトソウ 116
チャボホトトギス 98
チョウカイアザミ 118
チョウセンゴヨウ 119
チョウノスケソウ 50, 114
チングルマ 126
ツガ 112
ツガザクラ 101
ツガルフジ 68
ツガルミセバヤ 121
ツキイゲ 122
ツクシオオガヤツリ 107
ツクシガヤ 112
ツクバネウツギ 133
ツクバネソウ 71
ツシマヒョウタンボク 44
ツシマママコナ 116
ツタ 87
ツチアケビ 25
ツチトリモチ 101
ツノハシバミ 61
ツバメオモト 84
ツボスミレ 71
ツユクサ 129
ツリガネツツジ 126
ツリバナ 36
ツリフネソウ 70
ツルアジサイ 61
ツルカノコソウ 41
ツルキンバイ 95
ツルグミ 55
ツルコウゾ 53
ツルコケモモ 47
ツルタデ 49
ツルボ 46
本書に学名を記載した 種和名索引
ツルマメ 47
ツルリンドウ 64
ツワブキ 9
テイショウソウ 34
テガタチドリ 73
テシオコザクラ 105
テッポウユリ 126
テリハノイバラ 90
テングノハナ 119
デンジソウ 50
テンツキ 130
テンニンカ 81
テンリュウカンアオイ 48
トウゲシバ 133
トウゲブキ 90
トウダイグサ 11
トウテイラン 132
トウフジウツギ 25
トウヤクリンドウ 121
トガクシショウマ(トガクシソウ) 94. 98
トカチスグリ 81
トキワイカリソウ 133
トキワトラノオ 89
ドクウツギ 口絵, 71
トクサ 131
ドクゼリ 134
ドクダミ 54
ドクムギ 133
トゲナシヤマカシュウ 31
トサミズキ 60
トダスゲ 68
トチノキ 29
トドマツ(アカトドマツ) 88
トネリコ 64
トベラ 113
トモシリソウ 口絵, 132, 140
トラキチラン 126
トラノオスズカケ 129
トリガタハンショウヅル 121
ドロノキ 44
トンボソウ 121
ナンゴクウラシマソウ 48
ナンゴクオオクジャク 120
ナンゴクミネカエデ 122
ナンテン 112
ナンバンギセル 119
ナンブイヌナズナ 65, 140
ナンブソモソモ 118, 140
ナンブタカネアザミ 120
ナンブトウウチソウ 132, 140
ナンブトラノオ 140
ニオイエビネ 119
ニシキギ 61
ニョホウチドリ 35
ニリンソウ 130
ヌマトラノオ 77
ヌマハコベ 122
ヌルデ 119
ネコノシタ 132
ネコハギ 132
ネコヤナギ 39
ネジバナ 37
ネズ 35
ネズミノオ 130
ネムロスゲ 75
ネムロホシクサ 41
ノアザミ 9
ノイバラ 28
ノウゴウイチゴ 95
ノギラン 65
ノグルミ 60
ノゲイトウ 116
ノゲシ 132
ノコギリシダ 90
ノコギリソウ 114
ノジスミレ 101
ノジトラノオ 48
ノハラアザミ 34
ノビル 86
ノブキ 118
ノボタン 37
ノボロギク 11
ノリウツギ 61
ナ 行
ハ 行
ナガイモ
ナガバコウゾリナ
ナガバジャノヒゲ
ナガバノモウセンゴケ
ナギ
ナキリスゲ
ナズナ
ナツグミ
ナツハゼ
ナツメ
ナナカマド
ナニワイバラ
ナリヒラタケ
ナルコユリ
ナワシログミ
ナンカイアオイ
ナンカイアジサイ
バイカアマチャ 60
バイカイカリソウ 85
ハイマツ 132
ハウチワカエデ 119
ハガクレツリフネ 126
ハカタシダ 41
ハクウンボク 61
ハクサンチドリ 129
ハクセンナズナ 127
バクチノキ 70
ハクモクレン 50
ハコネウツギ 54
ハコネコメツツジ 112
ハコネラン 105
ハシドイ 133
バショウ 101
― 148 ―
ハシリドコロ 65
ハス 38
ハスノハギリ 47
ハゼ 11
ハタザオガラシ 129
ハチジョウシダ 68
ハチジョウシュスラン 118
ハチジョウススキ 39
ハチジョウナ 129
ハツシマカンアオイ 107
ハツシマラン 107
ハナウド 114
ハナガガシ 106
ハナシノブ 46
バナナ 132
ハナネコノメ 108
ハナノキ 133
ハナヒョウタンボク 87
ハナヒリノキ 71
ハナミョウガ 38
ハナムグラ 46
ハハコグサ 25
ハハコヨモギ 83
ハバヤマボクチ 130
ハマアザミ 122
ハマギク カバー裏, 26, 112
ハマゴウ 133
ハマナス 55
ハマニガナ 133
ハマヒサカキ 130
ハマビシ 123
ハマベンケイソウ 122
ハマボウ カバー表, 113
ハマボウフウ 88
ハマボッス 25
ハマヤブマオ 121
ハヤチネウスユキソウ 口絵, 118, 140
ハリイ 73
ハリギリ 69
バリバリノキ 131
ハリブキ 69
ハリモミ 132
ハルガヤ 132
ハルカラマツ 84
ハルジオン 34
ハルニレ 29, 72
ハルノタムラソウ 94
ハンゲショウ 118
ハンノキ 35
ヒイラギソウ 131
ヒエガエリ 30
ヒオウギ 80
ヒオウギアヤメ 133
ヒカゲスミレ 121
ヒカゲツツジ 97
ヒキヨモギ 75
ヒゴシオン 87
ヒサカキ 54
ヒゼンマユミ 43
ヒダカソウ 100
ヒダカミセバヤ 122
本書に学名を記載した 種和名索引
ヒダカミネヤナギ 118
ビッチュウアザミ 118
ヒトツバカエデ 127
ヒトツバショウマ 101
ヒトツバタゴ 口絵, 115, 140
ヒトツバヨモギ 34, 49
ヒトリシズカ 116
ヒナウチワカエデ 34
ヒナザクラ 98
ヒナシャジン 101
ヒナラン 37
ヒノキアスナロ 106
ヒノキシダ 132
ヒメイタビ 65
ヒメイチゲ 130
ヒメイワカガミ 36
ヒメウスユキソウ 107
ヒメウメバチソウ 38
ヒメウラジロ 79
ヒメオドリコソウ 117
ヒメカイウ 122
ヒメカカラ 126
ヒメガマ 129
ヒメコウゾ 113
ヒメコウホネ 41
ヒメコマツ 61
ヒメザゼンソウ 120
ヒメサユリ 117
ヒメシャガ 126
ヒメシャクナゲ 114
ヒメシャラ 61
ヒメシロネ 87
ヒメスミレ 131
ヒメタニワタリ 34
ヒメツゲ 29
ヒメハギ 57
ヒメハッカ 114
ヒメハルガヤ 85
ヒメヘビイチゴ 50
ヒメホテイラン 114
ヒメマイヅルソウ 126
ヒメマツカサススキ 119
ヒメミクリ 34
ヒメヤシャブシ 99
ヒモカズラ 120
ヒュウガミズキ 132
ヒヨドリジョウゴ 131
ヒルガオ 73
ヒルムシロ 130
ヒレアザミ 11
ビロウ 73
ビロードムラサキ 119
ヒロハツリバナ 127
ビワ 62
フウトウカズラ 112, 113 フォーリーアザミ 68
フガクスズムシソウ 25
フキ 37
フクジュソウ 114
フクド 113
フクロシダ 119
フサザクラ 125
フシグロセンノウ 70
ブタクサ 41
フタナミソウ 120
フタバアオイ 30
フタバラン 73
フタマタイチゲ 11
フタマタタンポポ 118
フタリシズカ 37
フッキソウ 124
ブナ 口絵, 10
フナバラソウ 116
フモトスミレ 65
フユイチゴ 63
フユノハナワラビ 133
フラサバソウ 131
ヘクソカズラ 133
ヘゴ 133
ベニシオガマ 104
ベニシダ 127
ベニバナイチヤクソウ 117
ベニバナヤマシャクヤク 132
ヘビノネゴザ 121
ヘビノボラズ 70
ヘラオオバコ 131
ホオノキ 61
ホクリクネコノメソウ 68
ホコガタアカザ 131
ホコシダ 79
ホザキシオガマ 133
ホザキシモツケ 133
ホシクサ 116
ホシザキカンアオイ 133
ホソコウガイゼキショウ 51
ホソバウキミクリ 34
ホソバウルップソウ 121
ホソバウンラン 78
ホソバスズタケ 41
ホソバツルリンドウ 65
ホソバトウキ 109
ホソバニガナ 101
ホソバノギク 120
ホソバノキリンソウ 47
ホソバヤブソテツ 75
ホソバリュウビンタイ 68
ホタルブクロ 132
ボタンネコノメソウ 119
ホツツジ 61
ホテイラン 101
ホトケノザ 126
ホナガタツナミソウ 108
ホルトノキ 141
ボロボロノキ 126
ホロムイクグ 82
ホンモンジスゲ 46
マ 行
マキノスミレ 101
マコモ 84
― 149 ―
マサキ 55
マシカクイ 50
マタタビ 126
マツグミ 53
マツバラン 132
マツムラソウ 99
マツモ 122
マテバシイ 130
マメガキ 47
マメグミ 122
マメザクラ 55
マメダオシ 73
マメヅタ 126
マユミ 61
マルバウツギ 54
マルバイチヤクソウ 34
マルバコンロンソウ 97
マルバダケブキ 130
マルバノウマノスズクサ 83
マルバノキ 65
マルバマンネングサ 44
マンサク 61
マンネンスギ 132
マンリョウ 129
ミカワタヌキモ 130
ミカワノキシノブ 108
ミサオノキ 118
ミシマバイカモ 112
ミスズラン 108
ミズタマソウ 131
ミズドクサ 122
ミズバショウ 37
ミズメ 131
ミソガワソウ 49
ミゾホオズキ 120
ミタケスゲ 82
ミチノクエンゴサク 67
ミツガシワ 50
ミツバツツジ 10
ミツマタ 126
ミドリヒメワラビ 117
ミネカエデ 65
ミネザクラ 29
ミネズオウ 132
ミネハリイ 129
ミミコウモリ 99
ミヤギノハギ 55
ミヤコグサ 47
ミヤコザサ 104
ミヤコジマツヅラフジ 122
ミヤマアケボノソウ 140
ミヤマイ 130
ミヤマイタチシダ 67
ミヤマイラクサ 131
ミヤマウイキョウ 109
ミヤマウコギ 48
ミヤマウスユキソウ 68
ミヤマウラジロ 91
ミヤマウラボシ 89
ミヤマエンレイソウ 109
ミヤマキタアザミ 67
本書に学名を記載した 種和名索引
ミヤマキリシマ 28
ミヤマクマザサ 103
ミヤマクマワラビ 126
ミヤマクロスゲ 66
ミヤマザクラ 65
ミヤマシキミ 112
ミヤマタンポポ 48
ミヤマニガウリ 65
ミヤマバイケイソウ 121
ミヤマハンノキ 65
ミヤマフユイチゴ 118
ミヤマベニシダ 48
ミヤマヘビノネゴザ カバー表, 122
ミヤマメシダ 117
ミヤマヤチヤナギ 48
ミヤマヤナギ 66
ミヤマヤマブキショウマ 140
ミヤマヨメナ 112
ミヤマラッキョウ 30
ミョウガ 113
ムカデラン 77
ムクノキ 129
ムクロジ 38
ムサシアブミ 37
ムサシノワスレグサ 130
ムシトリスミレ 134
ムシャリンドウ 83
ムツノガリヤス 99
ムニンシダ 48
ムニンベニシダ 68
ムニンモダマ 130
ムニンヤツデ 132
ムベ 50
ムヨウラン 64
ムラサキ 124, 141
ムラサキサギゴケ 70
ムラサキシキブ 124
ムラサキベニシダ 117
ムラサキミミカキグサ 123
ムラサキモメンヅル 81
ムラサキヤシオ 87
メギ 55
メグスリノキ 120
メダケ 91
メハジキ 9
モウセンゴケ 133
モクマオウ 126
モダマ 30
モチノキ 56
モッコク 125
モミ 口絵, 28
モモ 62
モリアザミ 126
モロコシソウ 70
ヤ 行
ヤエヤマノボタン 121
ヤエヤマヒルギ 124
ヤクシマカワゴロモ 133
ヤクシマホシクサ 118
ヤクシマラン 63
ヤクシマリンドウ 121
ヤグルマソウ 71
ヤシャブシ 61
ヤセウツボ 42
ヤチカンバ 126
ヤチスギラン 122
ヤチスゲ 122
ヤチダモ 86
ヤチツツジ 36
ヤチラン 122
ヤツガタケシノブ 79
ヤツガタケタンポポ 25
ヤッコソウ 109
ヤツシロソウ 83
ヤツデ 112
ヤナギラン 129
ヤブカンゾウ 116
ヤブコウジ 64
ヤブジラミ 80
ヤブソテツ 77
ヤブツバキ 9
ヤブニッケイ 25
ヤブミョウガ 54
ヤブレガサ 65
ヤマアイ 126
ヤマイヌワラビ 91
ヤマウコギ 69
ヤマウルシ 29
ヤマオオイトスゲ 49
ヤマガラシ 73
ヤマグルマ 124
ヤマザクラ 113
ヤマシグレ 61
ヤマツツジ 93
ヤマトグサ 口絵, 19-20, 98
ヤマトミクリ 30
ヤマトユキザサ 118
ヤマトリカブト 55
ヤマドリゼンマイ 116
ヤマトレンギョウ 101
ヤマナラシ 61
ヤマハギ 84
ヤマハゼ 123
ヤマハナソウ 88
ヤマハハコ 75
ヤマブキ 9
ヤマブキソウ 55
ヤマフジ 48
ヤマボウシ 108
ヤマモモ 117
ヤマユリ 116
ヤンバルタマシダ 131
ヤンバルミチヤナギ 73
ユウスゲ 35
ユウバリソウ 105
ユキクラヌカボ 104
ユキノシタ 133
ユキバタツバキ 31
ユキバヒゴタイ 116
ユキモチソウ 46
― 150 ―
ユキヤナギ 55
ユキワリイチゲ 45
ユキワリコザクラ 31
ユズリハ 127
ユリノキ 37, 41
ヨウシュヤマゴボウ 118
ヨウラクラン 114
ヨコグラノキ 47
ヨツバムグラ 127
ヨモギ 132
ラ 行
ラセイタソウ 126
ランヨウアオイ 64
リシリゲンゲ 120
リシリシノブ 120, 140
リシリソウ 120
リシリヒナゲシ 68
リュウキュウイノモトソウ 120
リュウキュウエビネ 103
リュウキュウチク 131
リュウキュウハナイカダ 107
リュウキュウバライチゴ 126
リュウノウギク 37
リョウブ 126
リンドウ 65
リンネソウ カバー裏, 11, 139, 143
ルリソウ 90
ルリハコベ 122
ルリハッカ 116
レブンキンバイソウ 83
レブンソウ 131
レンギョウ 55
レンゲショウマ 60
レンリソウ 133
ロウバイ 141
ワ 行
ワサビ 99
ワセアキグミ 49
ワセオバナ 122
ワタスゲ 134
ワニグチソウ 65
園芸・栽培種
アメリカヤマボウシ 108
インドゴムノキ 82
関山カンザン 31
三色スミレ(パンジー) 32
リーガル・リリー 93
リトル・ジェム 26
明石潟アカシガタ 31
イネ 122
コムギ 12, 22 イヨカン(伊予柑) 32
ゴボウ 47
小松菜 31
笹錦ササニシキ 31
本書に学名を記載した 種和名索引
ダイズ 52
トマト 22
ニンジン 47
苔 類
外国産種
Cochlearia オフィキナーリス 140
Goethea カウリフローラ 13
Goethea ストリクティフローラ 13
Linnaea アメリカーナ 11
ウェルウィッチア 75, 76
エーデルワイス 140
三峡カエデ 93
セイヨウオオバコ 21
セコイア 106
バオバブ 80
バンウコン 52
ハンカチノキ 67
メタセコイア 106
ヤハズカズラ 57
ラフレシア 74
菌類・粘菌類
アケボノオトメノカサ 134
アシボソアミガサタケ 130
オツネンタケ 132
キイロスッポンタケ 129
キヌガサタケ 26
クリイロカラカサタケ 116
コンイロイッポンシメジ 116
ササクレトマヤタケ 131
シャグマアミガサタケ 130
スッポンタケ 131
スミレハリタケ 117
チシオハツ 117
ツキヨタケ 36
ツチグリ 131
ドクベニタケ 26
ナメコ 113
ハツタケ 113
ヒイロタケ 116
ホンシメジ 113
マツタケ 113
マメツブタケ 36
メアカンナギナタタケ 119
ユキハツ 131
ルリハツタケ 117
ミナカタホコリ(粘菌類) 102, 110
蘚類
クマノチョウジゴケ 103
ナンジャモンジャゴケ 110
ネジクチゴケ 133
ヒツジゴケ 90
フジハイゴケ 118
マルバミヤベゴケ 110
ヨコグライタチゴケ 120
ヨコスカテングゴケ 66
イリオモテヤスデゴケ 119
ウキゴケ 130
ウスバゼニゴケ 133
ナガサキテングサゴ 119
ヒロハヤスデゴケ 51
フォーリーツボミゴケ 51
マキノゴケ 110
ヨコグラハネゴケ 121
動 物
環形動物
シーボルトミミズ 61
陸貝類
シーボルトコギセル 61
魚類
アラ 112
シラコダイ 112
地衣類
イワタケ 130
ウメノキゴケ 49
クシロサルオガセ 119
チズゴケ 130
ツンドラサンゴゴケ 123
ナガサルオガセ 131
ハナゴケ 133
ヒメニクイボゴケ 121
マキバエイランタイ 119
モジゴケ 133
藍藻類(淡水産藻類)
スイゼンジノリ 133
甲殻類
タカアシガニ 53
昆虫類
オオミスジ 53
オオムラサキ 110
ナガサキアゲハ 56
キリギリス 63 ヒメカメノコテントウ 56
オニヤンマ 61 ヘビトンボ 56
セイヨウミツバチ 26
ニイニイゼミ 53
エンマコオロギ 113
カネタタキ 113
ヨシイムシ 112
緑藻類(淡水産藻類)
クモ類
アダンソンハエトリグモ 80
カワノリ 98
マリモ 11, 14
緑藻類(海藻類)
ヒトエグサ 132 褐藻類(海藻類)
イシゲ 112
オニコンブ 130
ガゴメ(コンブ) 100
クロシオメ 119
クロメ 113 クロモ 113
ホソメコンブ 133
ムチモ 103
ヤバネモク 25
リシリコンブ 120
ワカメ 132
細菌類
プロテウスの1 種 26
哺乳類
イタチ 81
イヌ 32
エゾナキウサギ 81
ニホンカモシカ 26
ハイイロオオカミ 32
ヒト 5, 32
鳥類
アオバト 61 アカヒゲ 26
オオハクチョウ 32
カササギ 32
コマドリ 26
トキ 112
ヤイロチョウ 61
紅藻類(海藻類)
アサクサノリ 133
キヌハダ 103
キョウノヒモ 103 ケハネグサ 110
ベンテンモ 112
マクサ 130
ヤタベグサ 110
― 151 ―
爬虫類(恐竜化石)
フタバスズキリュウ 26
両生類
カジカガエル 26
本書に掲載した 学名索引
本書に掲載した 学 名 索 引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
A
Abelia
Abelia
Abies
Abies
Abies
Abies
Abies
Abies
Acanthopanax
Acanthopanax
Acanthopanax
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Acer
Achillea
Achillea
Aconitum
Aconitum
Aconitum
Aconitum
Aconogonon
Aconogonon
Aconogonon
Acorus
Actaea
Actinidia
Actinidia
Actinodaphne
Actinodaphne
Adenocaulon
Adenophora
Adenophora
Adiantum
Adonis
Adonis
Aeginetia
Aegopodium
Aesculus
Agrostis
Agrostis
Ainsliaea
Ajuga
Ajuga
Ajuga
tetrasepala
spathulata
firma
homolepis
mariesii
sachalinensis
shikokiana
veitchii
sieboldianus
spinosus
trichodon
amoenum
australe
carpinifolium
diabolicum
distylum
japonicum
micranthum
miyabei
nikoense
palmatum pycnanthum
rufinerve
tenuifolium
tschonoskii
ukurunduense
alpina
millefolium
gigas
ibukiense
japonicum
misaoanum
nakaii
weyrichii
weyrichii var. alpinum
gramineus
erythrocarpa
arguta
polygama
lancifolia
longifolia
himalaicum
maximowicziana
takedae
pedatum
amurensis
ramosa
indica
alpestre
turbinata
hideoi
tateyamensis
cordifolia
boninsimae
decumbens
incisa
口絵 3
127
133
28
48
92
88
120
44
45
69
48
86
122
61
39
127
119
61
100
120
9
34, 133
126
34
65
84
114
50
130
119
55
105
104
44
88
130
116
87
126
141
131
118
101
44
132
87
114
119
83
29
104
121
34
48
55
131
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Ajuga
Akebia
Akebia
Alangium
Alisma
nipponensis
×pentaphylla
quinata
platanifolium var. trilobum
plantago-aquatica
var. orientale
Allium
Allium
Allium
Alnus
Alnus
Alnus
Alnus
Alnus
Alpinia
Alpinia
Amana
Amaranthus
Ambrosia
Amethystea
Amitostigma
Anagallis
Anaphalis
Anaphalis
Ancystrocarya
Androcorys
Andromeda
Anemone
Anemone
Anemone
Anemone
Anemone
Anemone
Anemonopsis
Angelica
Angelica
Angelica
Angiopteris
Anoectochilus
Antennaria
Anthoxanthum
Anthoxanthum
Aphananthe
Apodicarpum
Apostasia
Arabidopsis
Arabis
Arabis
Arachniodes
Aralia
Arctous
Ardisia
Ardisia
Ardisia
Arisaema
Arisaema
Arisaema
Arisaema
Arisaema
― 152 ―
45
50
111
126
grayi
splendens
victorialis var. platyphyllum
firma
japonica
maximowiczii
pendula
sieboldiana
formosana
japonica
edulis
lividus
artemisiifolia var. elatior
caerulea
gracile
arvensis
alpicola
margaritacea
japonica
japonensis
polifolia
debilis
dichotoma
flaccida
keiskeana
nikoensis
raddeana
macrophylla
pubescens
stenoloba
ubatakensis
palmiformis
formosanus
dioica
aristatum
odoratum
aspera
ikenoi
nipponica
thaliana
flagellosa
tanakana
simplicior
elata
alpinus var. japonicus
crenata
japonica
quiquegona
ishizuchiense
kuratae
ringens
sikokianum
thunbergii ssp. urashima カバー裏
47
86
30
134
61
35
65
99
29
118
38
111
117
41
116
37
122
121
75
65
108
114
130
11
130
45
120
87
60
30
109
121
68
45
130
85
132
129
102
63
13
130
97
41
130
121
129
64
26
119
108
37
46
113
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Arisaema
Aristolochia
Aristolochia
Aristolochia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Artemisia
Arthraxon
Aruncus
Arundo
Asarum
Asarum
Asiasarum
Asplenium
Asplenium
Asplenium
Asplenium
Asplenium
Asplenium
Asplenium
Asplenium
Aster
Aster
Aster
Aster
Aster
Aster
Astilbe
Astragalus
Astragalus
Astragalus
Athyrium
Athyrium
Athyrium
Athyrium
Athyrium
Athyrium
Athyrium
Athyrium
Atractylodes
Atriplex
Aucuba
Avena
Azolla
thunbergii
contorta
debilis
kaempferi
arctica ssp. sachalinensis
capillaris
fukudo
glomerata
iwayomogi
keiskeana
kitadakensis
koidzumii var. megalophylla
monophylla
princeps
schmidtiana
stelleriana
hispidus
dioicus var. astilboides
donax
caulescens
leptophyllum
sieboldii
antiquum
cardiophyllum
pekinense
polyodon
prolongatum
ruprechtii
wilfordii
wrightii
dimorphophyllus
glehni
glehni var. hondoensis
kantoensis
maackii
sohayakiensis
simplicifolia
adsurgens
membranaceus
shiroumensis
clivicola
kuratae
melanolepis
pinetorum
rupestre
silvicola
vidalii
yokoscense
japonica
hastata
japonica
fatua
imbricata
カバー表
48
83
61
53
121
55
113
83
113
97
119
104
34, 49
132
65
79
131
140
47
30
34, 131
44
101
34
89
48
132
86
89
85
126
21, 44
21
119
87
120
101
81
84
120
122
108
117
49
122
48
91
121
37
131
23, 111
130
131
B
Balanophora
Balanophora
Balanophora
Barbarea
Belamcanda
Benthamidia
Berberis
japonica
kiusiana
tobiracola
orthoceras
chinensis
japonica
sieboldii
101
107
48
73
80
108
70
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Berberis
Berberis
Berchemia
Betula
Betula
Betula
Betula
Betula
Betula
Betula
Betula
Bischofia
Bistorta
Bletilla
Blumea
Boehmeria
Boehmeria
Boehmeria
Boehmeria
Boschniakia
Botrychium
Bredia
Briza
Bromus
Broussonetia
Broussonetia
Broussonetia
Bruguiera
Bryanthus
Buddleja
Burmannia
Buxus
thunbergii
tschonoskyana
berchemiifolia
apoiensis
chichibuensis
globispica
grossa
maximowicziana
ovalifolia
platyphylla
schmidtii
javanica
hayachinensis
striata
conspicua
arenicola
biloba
hirtella
nipononivea
rossica
ternatum
yaeyamensis
maxima
tectorum
kaempferi
kazinoki
papyrifera
gymnorhiza
gmelinii
lindleyana
cryptopetala
microphylla
55
109
47
118
118
127
131
65
126
34
88
63
140
133
64
121
126
131
117
120
133
121
42, 131
49
53
113
11, 113
126
79, 140
25
79
29
C
Cacalia
Cacalia
Caesalpinia
Calamagrostis
Calamagrostis
Calanthe
Calanthe
Calanthe
Calanthe
Calla
Callianthemum
Callianthemum
Callicarpa
Callicarpa
Caloscordum
Calypso
Calypso
Calystegia
Camellia
Camellia
Camellia
Camellia
Campanula
Campanula
Campanula
Capsella
Cardamine
Cardamine
― 153 ―
amagiensis
auriculata var. kamtschatica
decapetala var. japonica
langsdorffii
matsumurae
discolor
izu-insularis
okinawensis
tricarinata
palustris
hondoense
miyabeanum
japonica
kochiana
inutile
bulbosa
bulbosa var. speciosa
japonica
sasanqua
japonica var. intermedia
japonica
sinensis
glomerata var. dahurica
lasiocarpa
punctata
bursa-pastoris
kiusiana
regeliana
口絵 4
117
99
50
82
99
73
119
103
77
122
45
100
124
119
131, 142
114
101
73
113
31
9
20
83
126
132
11
119
86
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Cardamine
Cardiandra
Carduus
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carex
Carpinus
Carpinus
Carpinus
Cassiope
Castanea
Casuarina
Catalpa
Celosia
Celtis
Cephalanthera
Cerasus
Ceratophyllum
Cercidiphyllum
Chaenomeles
Chamaedaphne
Chamaele
Cheilanthes
Cheilanthes
Chelidonium
Chelidonium
Chelonopsis
Chenopodium
Chikusichloa
Chimonanthus
Chionanthus
Chionographis
Chloranthus
Chloranthus
Chosenia
Chrysosplenium
Chrysosplenium
Chrysosplenium
Chrysosplenium
tanakae
alternifolia
crispus
aequialta
blepharicarpa
brunnea
capillaris
clivorum
daisenensis
dickinsii
flavocuspis
gmelinii
hakkodensis
kobomugi
lenta
ligulata
limosa
lithophila
makinoensis
matsumurae
michauxiana var. asiatica
morrowii
oligosperma
otaruensis
parciflora
pisiformis
pseudo-cyperus
pyrenaica
reinii
sacrosancta
sadoensis
tumidula
laxiflora
tschonoskii
turczaninovii
lycopodioides
crenata
equisetifolia
ovata
argentea
sinensis var. japonica
longibracteata
nipponica var. kurilensis
demersum
japonicum
japonica
calyculata
decumbens
argentea
brandtii
japonicum
majus var. asiaticum
longipes
album
aquatica
praecox
retusus
koidzumiana
japonicus
serratus
arbutifolia
album
album var. stamineum
fauriei
fauriei var. kiotense
口絵 1
97
129
11
68
67
116
129, 140
49
118
92
66
75
118
113
131
131
122
84
51
99
82
86
82
120
88
46
47
120
92
122
120
133
126
109
84
114
28
126
25
116
104
64
22
122
28
76
36
130
79
91
55
42
69
116
112
141
115, 140
116
116
37
38
116
108
68
119
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Cicuta
Cimicifuga
Cinnamomum
Cinnamomum
Cinnamomum
Circaea
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Cirsium
Citrus
Clematis
Clematis
Clematis
Clematis
Clematis
Clematis
Clerodendrum
Clethra
Cleyera
Clintonia
Cocculus
Cochlearia
Coix
Colysis
Commelina
Conandron
Convallaria
Coriaria
Cornus
Cornus
Cornus
Corydalis
Corylopsis
Corylopsis
Corylus
Crataegus
Cremastra
Crepidiastrum
Crepis
Crotalaria
Crotalaria
Crypsinus
Cryptogramma
Cryptogramma
virosa
simplex
camphora
japonicum
okinawense
mollis
bitchuense
chokaiense
dipsacolepis
ganjuense
japonicum
kamtschaticum
maritimum
nambuense
oligophyllum
sieboldii
spinosum
ugoense
tachibana
fusca
patens
stans
terniflora
tosaensis
williamsii
trichotomum
barbinervis
japonica
udensis
laurifolius
oblongifolia
lacryma-jobi
elliptica
communis
ramondioides
keiskei
japonica
canadensis
macrophylla
suecica
capillipes
pauciflora
spicata
sieboldiana
chlorosarca
appendiculata
keiskeanum
hokkaidoensis
calycina
sessiliflora
veitchii
crispa
stelleri
japonica
australis
spinulosa
revoluta
insularis
atratum
caudatum
wilfordii
japonica
dactylon
zeylanicum
Cryptomeria
Cuscuta
Cyathea
Cycas
Cyclea
Cynanchum
Cynanchum
Cynanchum
Cynocrambe
Cynodon
Cynoglossum
Cyperus
― 154 ―
exaltatus var. iwasakii
口絵 4
口絵 1
口絵 4
134
30
47
25
120
131
118
118
126
118
9
83
122
120
34
61
133
121
25
116
84
61
25
121
85
55
126
54
84
126
132, 140
47
55
129
60
97
71
118, 139
29
120, 139
67
34, 132
60
61
29
76
104
118
129
11
89
129, 140
79
23
73
133
55
122
116
129
89
20
47
121
96
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Cyperus
Cyperus
Cypripedium
Cypripedium
Cyrtomium
Cyrtomium
Cyrtomium
ohwii
orthostachyus
japonicum
yatabeanum
falcatum
fortunei
hookerianum
口絵 2
107
48
55
98
130
77
75
D
Daphne
Daphniphyllum
Davallia
Deinanthe
Dendranthema
Dendranthema
pseudo-mezereum
macropodum
mariesii
bifida
japonicum
Dendranthema
Dendranthema
Dendranthema
Dendrobium
Dendropanax
Deparia
Deutzia
Deutzia
Dianella
Dianthus
Diaspananthus
Dioscorea
Dioscorea
Dioscorea
Dioscorea
Diospyros
Diospyros
Diphylleia
Diplazium
Diplazium
Diplomorpha
Disanthus
Disporum
Distylium
Draba
Draba
Draba
Dracocephalum
Drosera
Drosera
Dryas
Drymotaenium
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
Dryopteris
pacificum
rupestre
shiwogiku
moniliforme
trifidus
bonincola
scabra
uniflora
ensifolia
shinanensis
palmatus
batatas
quinqueloba
septemloba
tokoro
kaki
lotus
grayi
amamianum
wichurae
ganpi
cercidifolius
viridescens
racemosum
borealis
japonica
nakaiana
argunense
anglica
rotundifolia
occidentali-japonense
var. ashizuriense
octopetala var. asiatica
miyoshianum
amurensis
crassirhizoma
erythrosora
insularis
melanocarpa
monticola
polylepis
purpurella
sabaei
tokyoensis
yakusilvicola
×satsumana
114
127
92
126
37
118
120
122
113
124
49
48
54
102
114
120
69
84
50
50
113
62
47
71
118
90
113
65
117
60
122
65, 140
104
83
118
133
50, 114
100
118
127
127
68
126
48
126
117
67
121
121
120
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Elaeagnus
Elaeagnus
Elaeagnus
Elaeagnus
Elaeagnus
Elaeagnus
Elaeagnus
Elaeocarpus
Eleocharis
Eleocharis
Elymus
Empetrum
Enemion
Entada
Ephippianthus
Epilobium
Epilobium
Epilobium
Epimedium
Epimedium
glabra
macrophylla
montana
Epimedium
Epimedium
Epipactis
Epipactis
Epipogium
Equisetum
Equisetum
Equisetum
Eranthis
Eria
Erigeron
Erigeron
Eriobotrya
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriocaulon
Eriophorum
Erythronium
Euonymus
Euonymus
Euonymus
Euonymus
Euonymus
Euonymus
Euonymus
Euonymus
Eupatorium
Euphorbia
Euphorbia
Euphorbia
Euptelea
Eurya
Eurya
Eurya
Euryale
E
Edgeworthia
55
55
122
55
55
55
49
141
73
50
129
117
87
30
105
129
127
66
85
multiflora var. crispa
pungens
umbellata
×praematura
sylvestris
congesta
tetraquetra
caninus
nigrum var. japonicum
raddeanum
phaseoloides
sawadanus
angustifolium
cephalostigma
pyrricholophum
diphyllum
grandifolium
var. thunbergianum
kitamuranum
sempervirens
papillosa
thunbergii
aphyllum
arvense
fluviatile
hyemale
pinnatifida
口絵 4
reptans
philadelphicus
thunbergii
japonica
cinereum
decemflorum
glaberrimum
hananoegoense
miquelianum
parvum
satakeanum
senile
sexangulare
vaginatum
japonicum
カバー裏
alatus
chibai
japonicus
macropterus
melananthus
oxyphyllus
oxyphyllus f. magnus
sieboldianus
lindleyanum
helioscopia
jolkinii
pekinensis
polyandra
emarginata
japonica
sakishimensis
ferox はしがき
34
107
133
66
71
126
122
122
131
28
76
35
55
62
116
50
41
118
45
42
105
106
50
134
116
61
43
55
127
117
36
42
61
77
11
88
45
125
130
54
120
F
chrysantha
126
Fagus
― 155 ―
crenata
口絵 3
10
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Fagus
Fallopia
Farfugium
Fatsia
Fatsia
Fauria
Ficus
Ficus
Ficus
Ficus
Filipendula
Filipendula
Fimbristylis
Fimbristylis
Forsythia
Forsythia
Fragaria
Fraxinus
Fraxinus
Fraxinus
Fritillaria
japonica
dumetorum
japonicum
japonica
oligocarpella
crista-galli
erecta
microcarpa
septica
thunbergii
kamtschatica
multijuga
cymosa
dichotoma
japonica
suspensa
iinumae
japonica
29
49
9
112
132
68
55
25
79
65
119
132
129
130
101
55
95
64
86
35
118
mandshurica var. japonica
spaethiana
camtshatcensis
G
Gagea
Galeola
Galium
Galium
Galium
Galium
Gastrodia
Gaultheria
Gaultheria
Gentiana
Gentiana
Gentiana
Gentiana
Gentiana
Geranium
Geranium
Geum
Ginkgo
Glaucidium
Glehnia
Gleichenia
Glycine
Gnaphalium
Goodyera
Goodyera
Gymnadenia
Gynostemma
lutea
septentrionalis
kamtschaticum
kinuta
tokyoense
trachyspermum
elata はしがき
adenothrix
miqueliana
algida
makinoi
scabra var. buergeri
squarrosa
yakushimensis
soboliferum
thunbergii
pentapetalum
biloba
palmatum
littoralis
laevissima
max ssp. soja
affine
hachijoensis
velutina
conopsea
pentaphyllum
口絵
2
117
25
79
113
46
127
129
105
121
101
65
83
121
92
44
126
13, 112
60
88
41, 68
47
25
118
134
73
64
H
Habenaria
Hakonechloa
Haloragis
Hamamelis
Harrimanella
Hedera
Hedyotis
Heloniopsis
Helwingia
Hemerocallis
linearifolia
macra
micrantha
japonica
stelleriana
rhombea
grayi
orientalis
liukiuensis
exilis
131
112
126
61
79
133
76
71
107
130
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Hemerocallis
Hemerocallis
Hemistepta
Heracleum
Heracleum
Heritiera
Herminium
Hernandia
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Heterotropa
Hibiscus
Hierochloe
Hosta
Hosta
Hosta
Houttuynia
Hovenia
Hoya
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrangea
Hydrobryum
Hylomecon
Hylotelephium
Hylotelephium
Hypericum
Hypericum
Hypericum
fulva var. kwanso
vespertina
lyrata
dulce
nipponicum
littoralis
monorchis
nymphaefolia
blumei
curvistigma
draconis
hatsushimae
hayatana
megacalyx
nankaiensis
savatieri
stellata
tamaensis
trigyna
hamabo
bungeana
capitata
kiyosumiensis
カバー表
sieboldii var. rectifolia
cordata
dulcis
carnosa
sp.
hirta
involucrata
otaksa
paniculata
petiolaris
scandens
macrophylla var. macrophylla
macrophylla var. megacarpa
×amagiana
puncticulatum
japonica
cauticolum
tsugaruense
erectum
senkakuinsulare
vulcanicum
116
35
83
130
114
122
47
47
64
129
48
107
103
126
120
66
133
120
126
113
83
129
108
133
54
54
73
26
131
131
58, 59
61
61
30
21, 59
34
31
133
55
122
121
130
120
123
I
Idesia
Ilex
Ilex
Ilex
Ilex
Ilex
Ilex
Ilex
Illigera
Impatiens
Impatiens
Impatiens
Iris
Iris
Iris
Iris
Isachne
Ixeris
― 156 ―
polycarpa
crenata
integra
latifolia
pedunculosa
rotunda
serrata
sugerokii var. brevipedunculata
luzonensis
hypophylla
noli-tangere
textori
gracilipes
japonica
setosa
tectorum
globosa
makinoana
65
56
56
56
132
56
56
95
119
126
132
70
126
55
133
123
36
101
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Ixeris
Ixeris
repens
tamagawaensis
133
121
J
Japonolirion
Juglans
Juncus
Juncus
Juncus
Juniperus
osense
ailanthifolia
effusus
fauriensis
filiformis
rigida
120
86
130
51
130
35
K
Kadsura
Kalopanax
Keiskea
Kerria
Kirengeshoma
japonica
pictus
japonica
japonica
palmata
112, 113
69
97, 139
9
98
L
Lactuca
Lagotis
Lagotis
Lamium
Lamium
Laportea
Larix
Lathyrus
Lathyrus
Lathyrus
Lecanorchis
Lecanorchis
Leibnitzia
Lemmaphyllum
Leontopodium
Leontopodium
Leontopodium
Leontopodium
Leontopodium
Leonurus
Leonurus
Lepisorus
Leptodermis
Lespedeza
Lespedeza
Lespedeza
Lespedeza
Leucothoe
Ligularia
Ligularia
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Lilium
Limosella
Linaria
Lindera
indica
takedana
yesoensis
amplexicaule
purpureum
macrostachya
kaempferi
davidii
pratensis
quinquenervius
japonica
kiiensis
anandria
microphyllum
discolor
fauriei
hayachinense
japonicum
shinanense
japonicus
macranthus
mikawanus
pulchella
bicolor
buergeri
pilosa
thunbergii
grayana
dentata
hodgsonii
auratum
cordatum
cordatum var. glehnii
japonicum
lancifolium
longiflorum
maculatum ssp. dauricum
nobilissimum
rubellum
speciosum
aquatica
vulgaris
citriodora
口絵 1
11
105
121
126
117
131
53
89
122
133
64
119
38
126
30
68
118, 140
124
107
9
126
108
98
84
24
132
55
71
130
90
116
129
88
57
39
126
131
41, 132
117
28
121, 142
78
126
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Lindera
Lindera
Linnaea
Linum
Liparis
Liparis
Liparis
Liparis
Liriodendron
Listera
Listera
Lithocarpus
Lithospermum
Livistona
Livistona
Lobelia
Loiseleuria
Lolium
Lonicera
Lonicera
Lonicera
Lonicera
Lonicera
Lonicera
Lotus
Luzula
Lychnis
Lychnis
Lychnis
Lycium
Lycopodium
Lycopodium
Lycopodium
Lycopodium
Lycopus
Lycopus
Lycopus
Lycoris
Lysichiton
Lysimachia
Lysimachia
Lysimachia
Lysimachia
Lysimachia
Lysimachia
Lysionotus
obtusiloba
umbellata
borealis
virginianum
fujisanensis
krameri
kumokiri
makinoana
tulipifera
132
54
カバー裏
cordata var. japonica
yatabei
edulis
erythrorhizon
boninensis
subglobosa
sessilifolia
procumbens
temulentum
alpigena ssp. glehnii
chamissoi
harai
maackii
morrowii
vidalii
corniculatus var. japonicus
kjellmanniana
coronata
miqueliana
senno
sandwicense
cunninghamioides
inundatum
obscurum
serratum
lucidus
maackianus
uniflorus
sanguinea
camtschatcense
barystachys
fortunei
leucantha
mauritiana
sikokiana
tashiroi
pauciflorus
11, 139, 143
121
25
90
113
45
37, 41
73
98
130
124, 141
118
73
133
132
133
88
82
44
87
86
91
47
100
129
70
113
71
46
122
132
133
84
87
82
117
37
48
77
131
25
70
99
65
M
Maackia
Machilus
Macleaya
Macropodium
Magnolia
Magnolia
Magnolia
Magnolia
Magnolia
Magnolia
Maianthemum
Malaxis
Marsdenia
Marsdenia
Marsilea
Mazus
― 157 ―
amurensis
thunbergii
cordata
pterospermum
heptapeta
hypoleuca
praecocissima
salicifolia
sieboldii ssp. japonica
tomentosa
bifolium
paludosa
tinctoria var. tomentosa
tomentosa
quadrifolia
miquelii
87
55
73
127
50
61
41
65
30
55
126
122
73
73
50
70
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Mecodium
Meehania
Melampyrum
Melastoma
Melica
Meliosma
Mentha
Menyanthes
Menziesia
Menziesia
Mercurialis
Mertensia
Metanarthecium
Michelia
Microcarpaea
Microlepia
Mimulus
Miricacalia
Miscanthus
Miscanthus
Miscanthus
Mitella
Mitella
Mitrasacme
Mitrastemon
Miyamayomena
Mollugo
Moneses
Monotropa
Monotropastrum
Montia
Morus
Mucuna
Musa
Musa
Musa
Myrica
wrightii
montis-koyae
roseum
candidum
nutans
myriantha
japonica
trifoliata
cilicalyx
multiflora
leiocarpa
maritima ssp. asiatica
luteoviride
compressa
minima
izu-peninsulae
nepalensis
makineana
condensatus
sinensis
tinctorius
makinoi
stylosa
pygmaea
yamamotoi
savatieri
pentaphylla
uniflora
hypopithys
humile
fontana
cathayana
gigantea
口絵 1
paradisiaca var. sapientum
basjoo
liukiuensis
rubra
85
119
116
37
132
61
114
50
126
126
126
122
65
72
42
119
120
51
39
28
117
101
85
73
109
112
126
34, 50
122
131
122
118
130
132
101
119
117
N
Nandina
Nanocnide
Narcissus
Narthecium
Nasturtium
Nelumbo
Neolitsea
Neottia
Nepeta
Nephrolepis
Nipponanthemum
Nuphar
Nuphar
Nymphoides
domestica
japonica
tazetta var. chinensis
asiaticum
officinale
nucifera
aciculata
nidus-avis var. mandshurica
subsessilis
hirsutula
nipponicum
oguraense
subintegerrimum
peltata
カバー裏
112
64
47, 114
118
73
38
64
47
49
131
26, 112
106
41
37
O
Oberonia
Odontochilus
Oenothera
Omphalodes
Ophioglossum
Ophiopogon
Oplopanax
Orchis
japonica
hatusimanus
laciniata
krameri
nudicaule
ohwii
japonicus
aristata
114
107
80
90
126
107
69
129
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Orchis
Oreorchis
Orixa
Orobanche
Orostachys
Orthilia
Osmunda
Osmunda
Oxalis
Oxalis
Oxyria
Oxytropis
Oxytropis
joo-iokiana
patens
japonica
minor
iwarenge
secunda
cinnamomea
japonica
corniculata
fontana
digyna
megalantha
rishiriensis
35
76
112
42
113
133
116
119
129
83
49
131
120
P
Pachysandra
Paederia
Paeonia
Pandanus
Panicum
Papaver
Parabenzoin
Paris
Parnassia
Parthenocissus
Paspalum
Patrinia
Paulownia
Pedicularis
Pedicularis
Pellionia
Pentstemon
Perillula
Persicaria
Persicaria
Pertya
Petasites
Petasites
Petrosavia
Phacellanthus
Phalaris
Phellodendron
Photinia
Photinia
Phyllodoce
Phyllodoce
Phyllospadix
Phyteuma
Phytolacca
Picea
Picea
Picea
Pieris
Pinguicula
Pinguicula
Pinus
Pinus
Pinus
Pinus
Pinus
Pinus
Piper
Pittosporum
Plagiogyria
― 158 ―
terminalis
scandens
obovata
boninensis
miliaceum
fauriei
praecox
tetraphylla
alpicola
tricuspidata
distichum
scabiosaefolia
tomentosa
koidzumiana
spicata
scabra
frutescens
reptans
conspicua
perfoliata
robusta
japonicus ssp. giganteus
japonicus
sakuraii
tubiflorus
arundinacea
amurense
serrulata
wrightiana
aleutica
nipponica
iwatensis
japonicum
americana
glehnii
jezoensis
polita
japonica
ramosa
vulgaris var. macroceras
densiflora
koraiensis
parviflora var. pentaphylla
parviflora
pumila
thunbergii
kadzura
tobira
yakumonticola
124
133
132
118
11
68
132
71
38
87
130
47
28
104
133
76
25
30
129
132
133
30
37
44
133
129
86
76
85
117
101
119
36
118
44, 88
119
132
114
98
134
34. 61
119
132
61
132
10
112, 113
113
48
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Plantago
Plantago
Plantago
Platanthera
Platycarya
Platycodon
Platycrater
Pleioblastus
Pleioblastus
Poa
Poa
Poa
Poa
Podocarpus
Podocarpus
Polemonium
Polemonium
camtschatica
lanceolata
Polemonium
Pollia
Polygala
Polygala
Polygonatum
Polygonatum
Polygonum
Polypodium
Polypogon
Polystichum
Polystichum
Polystichum
Populus
Populus
Potamogeton
Potentilla
Potentilla
Potentilla
Primula
Primula
Primula
Primula
Primula
Primula
Primula
Primula
Prunella
Prunus (Cerasus)
Prunus (Armeniaca)
Prunus (Padus)
Prunus (Cerasus)
Prunus( Padus)
Prunus (Cerasus)
Prunus (Cerasus)
Prunus (Cerasus)
Prunus (Cerasus)
Prunus (Cerasus)
Prunus (Amygdalus)
Prunus (Cerasus)
Prunus (Laurocerasus)
Prunus (Armeniaca)
Prunus (Cerasus)
Pseudolysimachion
Pseudopyxis
Psilotum
Psychotria
Pteridophyllum
major var. asisatica
hyperborea
strobilacea
grandiflorus
arguta
linearis
simonii
annua
fauriei
hayachinensis
macrocalyx
macrophyllus
nagi
caeruleum ssp. yezoense
caeruleum ssp. yezoense
var. laxiflorum
口絵 4
kiushianum
japonica
japonica
reinii
falcatum
involucratum
plebeium
fauriei
fugax
deltodon
rigens
tagawanum
maximowiczii
sieboldii
distinctus
centigrana
dickinsii
yokusaiana
cuneifolia
japonica
jesoana
modesta var. fauriei
nipponica
reinii
sieboldii takedana
prunelliformis
apetala var. pilosa
armeniaca (vulgaris)
buergeriana
campanulata
grayana
incisa
jamasakura
maximowiczii
nipponica var. kurilensis
nipponica
persica
sargentii
zippeliana
mume
×yedoensis 'Somei-yoshino'
ornatum
depressa
nudum
serpens
racemosum
82
131
21, 42
122
60
37
60
131
91
129
68
118, 140
48
39
113
30
30
46
54
57
92
80
65
73
68
30
48
108
108
44
61
130
50
92
95
129
71
70
31
98
92
28
105
46
93
62
63
65
71
55
113
65
119
29
62
72
70
62
31
132
69
132
11
60
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Pteris
Pteris
Pteris
Pteris
Pterocarya
Pterostyrax
Pterygocalyx
Pterygopleurum
Pueraria
Pulsatilla
Pyrola
Pyrola
Pyrola
Pyrola
ensiformis
fauriei
multifida
ryukyuensis
rhoifolia
corymbosus
volubilis
neurophyllum
lobata
cernua
faurieana
incarnata
nephrolphylla
renifolia
79
68
132
120
124
129
65
20
131
39
68
117
34
34
Q
Quercus
Quercus
Quercus
Quercus
Quercus
Quercus
Quercus
Quercus
R
Randia
Ranunculus
Ranunculus
Ranunculus
Ranunculus
Ranunculus
Ranunculus
Ranzania
Reineckea
Reynoutria
Rhamnus
Rhaphiolepis
Rhizophora
Rhodiola
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhododendron
Rhodomyrtus
Rhodotypos
Rhus
Rhus
Rhus
Rhus
Rhynchospermum
Ribes
Rodgersia
― 159 ―
acuta
acutissima
dentata
gilva
glauca
hondae
salicina
variabilis
cochinchinensis
franchetii
gmelinii
grandis
kitadakeanus
nipponicus var. japonicus
tachiroei
japonica
carnea
sachalinensis
utilis
umbellata
mucronata
rosea
albrechtii
aureum
dilatatum
keiskei
kiusianum
obtusum var. kaempferi
parvifolium
pentaphyllum var. nikoense
quinquefolium
ripense
sanctum
serpyllifolium
tashiroi
tschonoskii
weyrichii
tomentosa
scandens
javanica var. roxburgii
succedanea
sylvestris
trichocarpa
verticillatum
triste
podophylla
129
29, 41
10
64
117
106
64
64
118
67
44
130
119
112
99
94, 98
116
120
35, 142
77
124
117
87
116
10
97
28
93
132
34, 141
34, 126, 141
122
37
70
99
109
88
81
61
119
11
123
29
134
81
71
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Rosa
Rosa
Rosa
Rosa
Rosa
Rosa
Rubus
Rubus
Rubus
Rubus
Rubus
Rumex
Rumex
Rumex
davurica
laevigata
multiflora
rugosa f. alba
rugosa
wichuraiana
buergeri
croceacanthus
hakonensis
ikenoensis
hirsutus
acetosa
gmelinii
japonicus
118
82
28
31
55
90
63
126
118
51
29
129
79
57
S
Saccharum
Saccharum
Sagittaria
Sagittaria
Salicornia
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salix
Salsola
Salvia
Salvia
Salvinia
Sambucus
Sanguisorba
Sanguisorba
Sapindus
Sarcandra
Sarcanthus
Sasa
Sasa
Sasa
Sasa
Sasa
Sasa
Sasa
Sasaella
Sasamorpha
Saururus
Saussurea
Saussurea
Saussurea
Saussurea
Saussurea
Saussurea
Saxifraga
Saxifraga
Saxifraga
Scaevola
Schizocodon
Schizopepon
officinarum
spontaneum var. arenicola
aginashi
trifolia
europaea
babylonica
gracilistyla
hidaka-montana
hidewoi
×ikenoana
integra
kinuyanagi
koriyanagi
paludicola
reinii
shiraii
komarovii
isensis
ranzaniana
natans
chinensis
hakusanensis
obtusa
mukorossi
glabra
scolopendrifolius
hayatae
kurilensis
nipponica
pulcherrima
samaniana
tatewakiana
veitchii
ramosa var. suwekoana
borealis var. angustior
chinensis
chionophylla
fauriei
franchetii
insularis
sawadae
tanakae
bracteata
sachalinensis
stolonifera
frutescens
ilicifolius
bryoniaefolius
49
122
46
133
118
62
39
118
105
102
131
113
113
48
66
102
92
119
94
132
77
118
132, 140
38
130
77
103
119
104
41
112
105
89
45
41
118
116
68
67
107
105
66
129
88
133
130
36
65
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Schizophragma
Schoepfia
Sciadopitys
Scilla
Scirpus
Scirpus
Scirpus
Scirpus
Scirpus
Scopolia
Scorzonera
Scrophularia
Scutellaria
Scutellaria
Sedum
Sedum
Sedum
Sedum
Selaginella
Selaginella
Selaginella
Semiarundinaria
Senecio
Senecio
Setaria
Shibataea
Sicyos
Silene
Silene
Siphonostegia
Sisymbrium
Skimmia
Smilacina
Smilax
Smilax
Solanum
Solidago
Solidago
Sonchus
Sonchus
Sophora
Sophora
Sorbus
Sorbus
Sparganium
Sparganium
Sparganium
Sparganium
Sparganium
Spinifex
Spiraea
Spiraea
Spiraea
Spiranthes
Spirodela
Sporobolus
Stachyurus
Stauntonia
Stephanandra
Stewartia
Stigmatodactylus
Streptopus
Strobilanthes
Struthiopteris
hydrangeoides
jasminodora
verticillata
scilloides
cespitosus
karuizawensis
maximowiczii
― 160 ―
sylvaticus var. maximowiczii
triangulatus
japonica
rebunensis
grayana
brachyspica
maekawae
aizoon
bulbiferum
makinoi
oryzifolium
helvetica
remotifolia
shakotanensis
fastuosa
nemorensis
vulgaris
viridis
kumasaca
angulatus
aomorensis
gallica
chinensis
altissimum
japonica
hondoensis
biflora
sieboldii f. inermis
lyratum
virgaurea ssp. asiatica
yokusaiana
brachyotus
oleraceus
flavescens
japonica
commixta
matsumurana
angustifolium
fallax
glomeratum
hyperboreum
stenophyllum
littoreus
nervosa
salicifolia
thunbergii
sinensis var. amoena
polyrhiza
fertilis
praecox
hexaphylla
tanakae
monadelpha
sikokianus
streptopoides var. japonicus
oligantha
niponica
61
126
134
46
129
119
68
122
82
65
120
44
127
108
47
129
44
101
45
133
120
20
122
11
117
104
35
118
118
75
129
112
118
126
31
131
47
95
129
132
81
62
29
99
34
30
130
49
34
122
132
133
55
37
127
130
30
50
44
61
65
46
64
120
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Styrax
Styrax
Styrax
Swertia
Swertia
Swertia
Symplocarpus
Symplocarpus
Symplocos
Symplocos
Syneilesis
Synurus
Syringa
japonicus
obassia
shiraianus
bimaculata
perennis ssp. cuspidata
tetrapetala
foetidus var. latissimus
カバー裏
nipponicus
lucida
prunifolia
palmata
excelsus
reticulata
36
61
102
129
140
81
130
120
131
46
65
130
133
T
Tamarix
Tanakaea
Taraxacum
Taraxacum
Taraxacum
Taraxacum
Taraxacum
Taraxacum
Taraxacum
Taxillus
Taxillus
Taxus
Ternstroemia
Thalictrum
Thalictrum
Thalictrum
Thea
Theligonum
Thelypteris
Therorhodion
Thujopsis
Thujopsis
Tilia
Tilingia
Tilingia
Titanotrichum
Torilis
Torreya
Trachycarpus
Tribulus
Tricyrtis
Tricyrtis
Tricyrtis
Tricyrtis
Tricyrtis
Trigonotis
Trillium
Trillium
Tripetaleia
Tripterospermum
Tripterygium
Tripterygium
Trochodendron
Trollius
Tsuga
Tsusiophyllum
Tulotis
Tulotis
Turpinia
tenuissima
radicans
alpicola
ceratolepis
japonicum
pectinatum
shikotanense
yatsugatakense
yuparense
kaempferi
yadoriki
cuspidata
gymnanthera
baicalense
microspermum
minus var. hypoleucum
sinensis
japonicum
viridifrons
camtschaticum
dolabrata
dolabrata var. hondae
maximowicziana
ajanensis
tachiroei
oldhamii
japonica
nucifera
fortunei
terrestris
flava
latifolia
macrantha
nana
ohsumiensis
peduncularis
smallii
tschonoskii
paniculata
japonicum
doianum
regelii
aralioides
ledebourii
sieboldii
tanakae
iinumae
ussuriensis
ternata
口絵
4
41
38
48
48
104
132
120
25
105
53
113
129
125
84
127
42
20
19-20, 98
117
118
61
106
45
86
109
99
80
132
77
123
116
126
65
98
120
132
65
109
61
64
75
86
124
83
112
112
95
121
38
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Typha
Typha
angustata
latifolia
129
34, 131
U
Ulmus
Ulmus
Urtica
Utricularia
Utricularia
Utricularia
japonica
laciniata
thunbergiana
australis
exoleta
uliginosa
29, 72
131
55
73
130
123
ciliatum
oldhamii
oxycoccus
smallii
wrightii
fauriei
flaccidissima
alpestre
stamineum
hederifolia
persica
axillare
tagawae
dilatatum
urceolatum
×kiusianum
fauriei
sepium
frutescens
acuminata
biflora
crassa
eizanensis
grypoceras
japonica
kitamiana
makinoi
maximowicziana
minor
orientalis
raddeana
senamiensis
sieboldii
verecunda
violacea
yedoensis
yezoensis
yubariana
rotundifolia
saccharifera
129
70
47
71
71
68
41
121
39
131
120
129
108
55
12
61
31
68
49
64
129
50
39
118
71
82
45
101
46
131
120
86
120
65
71
117
101
121
121
133
133
japonica
prostrata
coraeensis
hortensis
brachybotrys
manchuriensis
99
132
54
131
48
119
V
Vaccinium
Vaccinium
Vaccinium
Vaccinium
Vaccinium
Valeriana
Valeriana
Veratrum
Veratrum
Veronica
Veronica
Veronicastrum
Veronicastrum
Viburnum
Viburnum
Viburnum
Viburnum
Vicia
Vicia
Villebrunea
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Viola
Vitex
Vitis
opulus var. calvescens
W
Wasabia (Eutrema)
Wedelia
Weigela
Weigela
Wisteria
Woodsia
― 161 ―
カバー裏
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語
X, Y, Z
Xylosma
Yoania
Zanthoxylum
Zelkova
Zingiber
Zingiber
Zizania
Zizyphus
Zostera
Zygadenus
senticosum
japonica
piperitum
serrata
mioga
officinale
latifolia
jujuba
marina はしがき
sibiricus
属 名
種形容語・亜種名・変種名・品種名
133
96
116
133
113
132
84
78
120
園芸・栽培種
Arctium
Benthamidia
Brassica
Camellia
Citrus
Daucus
Ficus
Glycine
Lilium
Lycopersicon
Oryza
Oryza
Prunus (Cerasus)
Sedum
Solanum
Triticum
Triticum
Viola
lappa
florida
rapa ‘Komatsuna’
sasanqua ‘Akashigata’
iyo
carota
elastica
max
regale
esculentum
sativa
sativa ‘Sasanishiki’
serrulata ‘Kanzan’
sp.‘Little Gem’
lycopersicum
aestivum
hybernum
×wittrockiana
47
108
31
31
32
47
82
52
93
22
122
31
31
26
22
12, 22
22
32
外国産種
Acer
Adansonia
Cochlearia
Davidia
Goethea
Goethea
Kaempferia
Leontopodium
Linnaea
Metasequoia
Plantago
Rafflesia
Sequoia
Thunbergia
Welwitschia
wilsonii
digitata
officinalis
involucrata
cauliflora
strictiflora
galanga
alpinum
americana
glyptostroboides
major var. major
arnoldii
sempervirens
alata
mirabilis
93
80
140
67
13
13
52
140
11
106
21
74
106
57
75, 76
菌類・粘菌類
Astraeus
Bankera
Camarophyllus
Clavaria
属 名
種形容語・亜種名・変種名
Coltricia
Dictyophora
Gyromitra
Hymenogaster
Inocybe
Lactarius
Lactarius
Lampteromyces
Lepiota
Lyophyllum
Morchella
Phallus
Phallus
Pholiota
Pycnoporus
Rhodophyllus
Russula
Russula
Russula
Tricholoma
Minakatella
perennis
indusiata
esculenta
arenarius
hystrix
hatsudake
indigo
japonicus
castanea
shimeji
deliciosa
costatus
impudicus
nameko
coccineus
cyanoniger
emetica
lactea
sanguinaria
matsutake
longifila
132
26
130
36
131
113
117
36
116
113
130
129
131
113
116
116
26
131
117
113
102, 110
蘚 類
Barbula
Brachythecium
Buxbaumia
Hypnum
Leucodon
Miyabea
Rhynchostegium
Takakia
unguiculata
wichurae
minakatae
fujiyamae
sohayakiensis
rotundifolia
savatieri
lepidozioides
133
90
103
118
120
110
66
110
pusilla
fauriana
iriomotensis
fauriana
crispata
yokogurensis
nagasakiensis
fluitans
133
islandica var. orientalis
rangiferina
scripta
upsaliensis
tinctorum
geographicum
turfaceus
esculenta
longissima
kushiroensis
119
133
133
121
49
130
123
130
131
119
sacrum
133
苔 類
Blasia
Frullania
Frullania
Jungermannia
Makinoa
Plagiochila
Riccardia
Riccia
51
119
51
110
121
119
130
地衣類
Cetraria
Cladonia
Graphis
Ochrolechia
Parmelia
Rhizocarpon
Sphaerophorus
Umbilicaria
Usnea
Usnea
藍藻類(淡水産藻類)
hygrometricus
violascens
virgineus
meakanensis
131
117
134
119
Aphanothece
― 162 ―
本書に掲載した 学名索引
属 名
種形容語(種小名)・亜種名
属 名
緑藻類(淡水産藻類)
Aegagropila
Prasiola
昆虫類
linnaei
japonica
11,14
98
緑藻類(海藻類)
Monostroma
nitidum
132
cylindrica
kurome
kuroshioense
cuneiformis
okamurae
crassifolia
diabolica
ochotensis
religiosa
kuromo
pinnatifida
103
113
119
25
112
100
130
120
133
113
132
褐藻類(海藻類)
Cutleria
Ecklonia
Hedophyllum
Hormophysa
Ishige
Kjellmaniella
Laminaria
Laminaria
Laminaria
Papenfussiella
Undaria
紅藻類(海藻類)
Benzaitenia
Callophyllis
Gelidium
Grateloupia
Kintarosiphonia
Porphyra
Yatabella
yenoshimensis
okamurae
elegans
okamurae
fibrillosa
tenera
hirsuta
112
103
130
103
110
133
110
動 物
環形動物
Pheretima
種形容語(種小名)・亜種名
sieboldi
61
sieboldii
61
Anotogaster
Apis
Gampsocleis
Neptis
Nipponentomon
Ornebius
Papilio
Platypleura
Propylea
Protohermes
Sasakia
Teleogryllus
sieboldii mellifera
buergeri alwina kaempferi
nippon
kanetataki
memnon thunbergii
kaempferi
japonica
grandis
charonda
emma
61
26
63
53
112
113
56
53
56
56
110
113
クモ類
Hasarius
adansoni
80
Proteus
morganii
26
哺乳類
Canis
Canis
Capricornis
Homo
Mustela
Ochotona
lupus familiaris
lupus lupus
crispus crispus
sapiens sapiens
sibirica
hyperborea yesoensis
32
32
26
5, 32
81
81
cygnus cygnus
akahige
komadori
nippon
pica sericea japonica
brachyura nympha
sieboldii
32
26
26
112
32
62
61
細菌類
鳥類
Cygnus
Erithacus
Erithacus
Nipponia
Pica
Pitta
Treron
陸貝類
Phaedusa
爬虫類(恐竜化石)
Futabasaurus
suzukii
26
buergeri
63
魚類
Chaetodon
Niphon
nippon
spinosus
112
112
kaempferi
53
両生類
Buergeria
甲殻類
Macrocheira
― 163 ―
本書に掲載した 学名索引
CD-ROM 版
「日本産野生植物:植物学名一覧」の
ご 案 内
CD-ROM 版には和名(科名・属名・種名)と学名(属名・種形容語)+ 著者[命名者]名を項目
ごとに一覧表示する「植物学名一覧」に加えて,「属名一覧」(属名の性と属名の意味・由来を解説)・
「種形容語解説〔植物ラテン語集〕」を添付していますので, 多様な検索・抽出ができ植物の学名を
多角的に読み解く手引きとなるでしょう.
次の四つのファイルを収録しています.
・
(Excel )
本書に学名掲載をした種一覧
和名(科名・属名・種名)と学名(属名・種形容語)+
・
著者[命名者]名
日本野生植物:学名一覧
和名(科名・属名・種名)と学名(属名・種形容語)+ 著者[命名者]名
・(シート)
種形容語解説〔植物ラテン語集〕
・(シート)
シダ植物・種子植物
・(シート)
蘚苔類
・(シート)
菌類
・(シート)
地衣類
・(シート)
海藻類
・
日本野生植物:
属名一覧(属名の性・属名の著者[命名者]名・属名の意味と由来の解説)
・
日本帰化植物:
学名一覧
和名(科名・属名・種名)と学名(属名・種形容語)+ 著者(命名者)名
CD-ROM 版「日本産野生植物:植物学名一覧」(2007. 5 作成, Win 版)をご希望の方には,
(送料込み)¥1,200 でお頒けいたしますので, ハガキに
郵便番号・住所・氏名・電話番号を
明記の上, 申込み票を貼付して著者宛郵送してください.
申込み票 は, 本書(書籍本)の
表紙帯の折返し部に, また著者の住所 は奥付にあります.
申込み票が到着次第, CD-ROM に郵便局払込み票を同封して発送いたします.
なお, 上記 CD-ROM の配布は 2020 年末(予定)で締め切らせていただきます.
― 164 ―
著
田中
者:
學(たなか
まなぶ)
の略歴
1936 年
東京都大田区に生まれる
1957 年~1961 年
青山学院大學第二部文学部英米文学科に学ぶ
1961 年~2002 年
東京都公立中学校(4年)・同高等学校(37 年)に勤務(英
語科教諭)
2002 年 3 月
東京都立井草高等学校 紀要 vol. 35 論文「齋藤秀三郎著
『齋藤和英大辞典』を読み解く資料」(『齋藤和英大辞典』
の例文を分野別に再構築した CD-ROM 版を併せて作成)
*************************
青年期から国内各地で自然に親しみ, 特に野生植物へ関心
を寄せ, 植物観察を楽しみながら日本列島の植生調査を継続しています.
フィールド図鑑
植物⑤ 奥田重俊・木原
浩『高山植物 Alpine Plants of Japan 』(1987)
東海大学出版会 に東北地方で撮影した写真 21 点を掲載
☆
このフィールド写真図鑑(植物①~⑤)の各分冊はハンディな版でありますが,
掲載しているすべての種に, 学名(科名・属名・種形容語)・ 著者(命名者)名が
付記されていて, 重宝しています.
******************************
「植物学名」に関する各学習講座で講師を務める( 2012 年 3 月現在)
2007 年 2 月~3 月(3 回講座) 東京都東久留米市:市民大学短期講座(引続き 2008.3, 2009.7, 2010,7. 2011,6)
2007 年 5 月,
2009 年 1 月
東京都西東京市:東京雑学大学
2008 年 10 月~ (6 回講座)東京都府中市:たま市民塾(引続き 2011 年 10 月~2012 年 3 月(10 回講座))
2008 年 10 月,
2010 年 11 月
東京都千代田区:日本ハーブ・スクール
2009 年 8 月
埼玉県朝霞市:環境市民会議自然部会
2010 年 5 月
神奈川県相模原市:市立博物館 相模原植物誌調査会
2010 年 11 月
NPO 法人 山と自然学:野外植物(学名)観察会他,
2008 年 10 月~ (20 回)
東久留米市:「植物の学名を知って, 植物に親しむ会」の学習会を主宰している(隔月)
2008 年 7 月
本書は『第 11 回(2008 年)日本自費出版文化賞:研究・評論部門』に入選
植物の学名を読み解く
発行日
各種植物学名学習会講座を担当
―リンネの「二名法」―
2007 年 6 月 30 日
第1刷発行
朝日新聞社
2012 年 4 月 17 日
第2刷発行
朝日新聞出版
2012 年 5 月 23 日(リンネ生誕 305 年の誕生日) 増補改訂 電子書籍版 発行
著
者 ・ 発行者
田中
〒
學
203-0053 東京都東久留米市本町3-12-2
ユアコート東久留米707号
E-mail : tnkm @ r9.dion.ne.jp
電子書籍版編集
株式会社
〒
清水工房
192-0056 東京都八王子市追分町10-4-101
TEL 042-620-2626
頒価:3400円
1:ザゼンソウ Symplocarpus foetidus Nutt. var. latissimus
(Makino)Hara サトイモ科(130頁)
2:タニウツギ Weigela hortensis(Siebold et Zucc.)K. Koch
スイカズラ科(131頁)
3:ウラシマソウ(♂株)Arisaema thunbergii Blume subsp.
urashima Hara サトイモ科(113頁)
4:ウラシマソウ(♀株)Arisaema thunbergii Blume subsp.
1
urashima Hara サトイモ科(113頁)
5:ハマギク Nipponanthemum nipponicum(Franch. ex Maxim.)
2
3
4
5
6
7
Kitamura キク科(26, 112頁)
6:リンネソウ Linnaea borealis L. スイカズラ科(11, 139, 143頁)
7:カタクリ Erythronium japonicum Decne. ユリ科(116頁)