4 アメリカ サンフランシスコ市における視察.

Ⅳ アメリカ
1.市の概要
サンフランシスコ市における視察
【概 況】
サンフランシスコは北緯 37 度、東経 122
度に位置し、緯度で言うとほぼ福島県と変わ
らない位置にある。日本の国土の約 25 倍とい
う広大なアメリカ大陸の西海岸に位置し、カ
リフォルニア州北部の中心都市となっている。
同じカリフォルニア州の全米第 2 位の都市、
ロサンゼルスまでは車で約 6 時間、オレゴン
州を挟んでカナダのバンクーバーまでは、車
で約 15 時間の位置。サンフランシスコからロ
サンゼルスの海岸線沿いの道は、風光明媚な
景色が続く。
サンフランシスコは、カリフォルニア州北部では最大、全米 2 位のロサンゼルスに次ぐ
約 76 万人の人口をかかえるが、全米で見ると 13 位と、その知名度から考えるほど高くは
ない。しかしながら、サンフランシスコ市を中心にサンフランシスコ湾を挟んで対岸のオ
ークランド、南岸のサンノゼを加え、サンフランシスコ・ベイエリアと呼ばれる、一大都
市圏を形成している。その人口は合計で 700 万人を超え、広域都市圏としては、全米 6 位
に浮上する。また、ハイテク企業の集まるシリコンバレーも、サンフランシスコから車で
約 1 時間半と近く、このエリアはアメリカ経済の重要な地域となっている。日本ではサン
フランシスコを略して「シスコ」とも呼ばれるが、ロサンゼルスの「ロス」と同様、アメ
リカではそのように呼ばれることはなく、略す場合は、頭文字の「SF(エスエフ)」、又は
「サンフラン」と呼ばれている。日本とは大阪市と姉妹都市提携を行っている。
アメリカは様々な人種が住む他民族国家であるが、このサンフランシスコも例外ではな
い。人口の約 50%が、ヒスパニック系を含む白人、アジア系が約 31%、アフリカ系が約 8%、
残りはその他となっている。西海岸という地理的なものからか、アジア系が他のアメリカ
大都市と比較して多く、その中で最も多いのは中華系の住民、サンフランシスコの全人口
の約 20%を占め、アメリカでは最大のコミュニティを形成する。サンフランシスコに 3 ヶ月
以上の長期滞在する日本人は、アメリカではニューヨーク、ロサンゼルスに次いで多い約 1
万人、全世界ではシドニーに次いで 11 位となっている。隣町であり、同じサンフランシス
コ・ベイエリアのサンノゼにも、サンフランシスコとほぼ同数の約 1 万人の日本人が住む。
サンフランシスコの市内、及び近郊の公共交通機関は、他のアメリカ大都市と比較して、
比較的整備されている。サンフランシスコ市内は、坂の多いサンフランシスコの街を 3 路
線のケーブルカーが走り、旅行者にとっても気軽に乗ることのできる交通機関となってお
り、そのケーブルカー自体もサンフランシスコ名物ともなっている。その他サンフランシ
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ス市内と近郊を結ぶライトレールのミュニ・メトロ、サンフランシスコとオークランド、
バークレイなどの近郊の都市を結ぶ列車 BART(バート)
、サンフランシスコとサンノゼを結
ぶカルト・トレインなどがある。
サンフランシスの経済の中心として、まず同じカリフォルニア州のロサンゼルスと並ん
で、金融業があげられる。サンフランシスコの金融都市としての歴史は、20 世紀初頭のゴ
ールドラッシュより始まる。サンフランシスコのダウンタウン、ファイナンシャル・ディ
ストリクトは、別名「西のウォール街」と呼ばれ、ウェルズ・ファーゴ等の巨大銀行の本
社をはじめ、銀行、証券など金融関係の企業の本社、支社が集まる。
サンフランシスコ市内ではないが、サンフランシスコと同じ経済圏内、サンフランシス
コ・ベイエリアのサンノゼ、そしてサンフランシスコより 1 時間半ほど郊外にあるシリコ
ンバレーの存在も大きい。このサンノゼ、シリコンバレーには、アメリカを代表する、あ
るいはこれから急成長するであろうハイテク企業が集まり、そして新興企業に出資する投
資ファンドの事務所などがある。2000 年の IT バブル崩壊でその勢いは多少落ちたといえる
が、それでもアメリカの経済を引っ張る、ハイテク産業の中心地であることは、今でも代
わりはない。
【自治の特徴】
サンフランシスコ市は、City and County of San Francisco と称し、市とカウンテ
ィ(郡)の二重の政機構となっている。
市長は、市民による直接選挙で選ばれ、任期は 4 年。
市長は、すべての市法令を執行する義務を負うとともに、自己の管理下にある責任を
負う。また、市議会を通過したいかなる条例も拒否する権利を持ち、拒否した条例の再
考を市議会に命じることもある。市長の主な権限は、市職員、委員会などのメンバーの
任命権と、市議会に提案する年間予算の編成である。
市街地全景
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2.「ICTによる産業興し」-サンフランシスコの事例から学ぶー
事務所スペース、会議室、打合せスペー
スなどを共有しながら独立した仕事を行う
共働ワークスタイル。
コスト削減や利便性といったメリットだけ
ではなく、才能ある他の分野の人たちと刺
激し合い、仕事上での相乗効果が期待でき
るという面も併せ持つ。視点を変えた「雇
用創出」の先進的取り組み。
1)「Tech Shop」視察
インターネット系の活発な動きが著しいサンフランシスコを発祥とするコワーキングス
ペースは、事務所スペース、会議室、打合せスペースなどを共有しながら独立した仕事を
行う共働ワークスタイル。
コスト削減や利便性といったメリットだけではなく、才能ある他の分野の人たちと刺激
し合い、仕事上での相乗効果が期待できるという面も併せ持つ。視点を変えた「雇用創出」
の先進的取り組みである。今回、訪問先として選定した「Tech Shop」は、2006 年にカリフ
ォルニア州のメンロパークに開設されたのがはじまりであり、現在は全米で 8 か所の姉妹
店、来年(2016 年)には 2 カ所を新規にオ
ープンさせる予定である。また、来年の 4
月に「Tech Shop Japan」を東京での開設を
目途に、日本進出プロジェクトを推進中で
ある。なお、日本でのパートナーは富士通
株式会社ということで、過去に本町でも発
注したことのある業者であることから、今
後、本町おとの関係性についてコミットす
る価値があると思われる。
【対応してくれた方々】
-------------------------------------------------------------------------------[代表 エミリー・ウッズ氏 Emily Woods]
サンフランシスコ「Tech Shop」の代表者。
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【対談の主な内容】
「Tech Shop」が有する機器や利用者等の状況について、施設内の案内をいただきながら
説明を受け、意見交換を行った。
○
基本的に施設利用ができるのはメンバーシ
ップ会員となるが、メンバー以外の者も受け入
れ可能としている。24 時間利用可能で、月額
150$(2 万円)の料金設定。
○ 最新式 3Dプリンタや陶芸・木工業・板金に
関する各種工具など、高性能機器が多数設置さ
れている。
↓レーザーカッター
↑3Dターニングマシン
○
施設内には、ワークショップとして技術を教えてくれるスペース、オープンスペー
スがそれぞれ設置されており、自由な活動場所を提供している。ワークショップにつ
いては、1 クラス当たり 90 分程度で少人数の体制で学習している。5 人以上となるケ
ースはめずらしいとのこと。
○
メンバーシップ会員の中には、他の事業者等と契約を締結し、ここのオフィスで仕
事をしている方も多数いる。
○ 「Tech Shop」が個々と契約をし、その方が講師として配置している。契約までには、
個人が直接申し込んでくるケース、も
う一つは、物理的ネットワーク(横の
つながり)により、つながっていくケ
ースと二つのパターンがある。
○ ここで勉強し、知識や技術を習得し
起業していく方も多数いる。技術者と
して世界から声がかかるような優秀
な人材を輩出している。起業家の集ま
り。
↑メンバー同士での意見交換の様子
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ここは、空間と機械、それを活用するための知識が得られるとともに、アイデアを創出
する機会(スペース)を有する場である。また、お金を払えば誰でもメンバーシップにな
れるというものではなく、将来に「夢」を持っている人でないとメンバーにしないとのこ
と。決して、職業訓練のための学校でもなく、就職するための技術習得が目的ではない。
こういった確固たるポリシーが、多くの方々に求められ、世界に人材を発信しているとい
う、成功の秘訣が潜んでいると感じた。
最後に、
「Tech Shop」の誘致に向け、町長のトップセールスで栗山町の魅力をお伝えし
たところ、エミリー氏も興味をいただいている様子だった。
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