the Report

Financial Services
リスクデータのアジェンダ
新たな優先課題
著者
ポール ミー, パートナー
パンカ カーンナ, プリンシパル
パトリック ライアン, プリンシパル
はじめに
データそのものが銀行における最優先の経営
各 国 の 監 督 当 局 は、 デ ー タ、 特 に デ ー タ の
あ り え な い こ と で し た。 近 年、 世 界 中 の
リスクマネジメントの効果をどれほど制限
課題(アジェンダ)になるなどということは
質とそれに基づく意思決定力の貧弱さが
銀行家の脳裏に焼き付いてきたものといえば、 したり妨げたりしているかについて大変興味を
財政危機と経済の低迷、そしてその政治的、 持つようになっています。バーゼル銀行監督
社 会 的 影 響 で し た。 ほ と ん ど の 銀 行 は、 委員会 (BCBS) は、リスクデータ管理に関わる
デ ー タ の 重 要 性 を 認 識 し て は い る も の の、 ガバナンスと能力、データの収集方法、報告
経営を調べてみると、実際にはさほど重きを
置 い て い な い こ と は 明 ら か で す。 デ ー タ の
方 法、 遵 守 を 確 か に す る た め の 監 督 当 局 の
役割などの分野を網羅する 14 の “ 原則 ” を
1
取得・集計プロセスが目的に適っておらず、 発 表 し ま し た。 外 見 上 リ ス ク デ ー タ に
デリケートな経営報告を作成するために
相当なデータ “ クレンジング ” が必要と
フ ォ ー カ ス し て い る よ う に も 見 え ま す が、
それらの原則は、突き詰めると、銀行業務の
なるのはよくあることです。多くの銀行では、 全 般 に わ た り 質 の 高 い 情 報 に 基 づ き、 意 思
入力や報告で辻褄合せの調整をするといった
対 症 的 な 方 策 に 注 力 し、 根 本 的 な 解 決 を
決定が適時的かつ整合的に行われるように
するためのものです。Exhibit 1 に示すように、
図ろうとしてきませんでした。残念ながら、 銀 行 運 営 全 般 に わ た っ て 広 く、 深 い 影 響 が
経営者は大なり小なり不完全または不正確、 あるものと我々は考えています。
あるいは旧いデータに基づいて意思決定を
行うこととなっています。
まず初めに、この原則はグローバルにシステム上
そ の 結 果、 ど の よ う な こ と が 生 じ る か に
銀 行 に適 用され、2015 年 末まで に 順 守され
つ い て は 予 想 に 難 く あ り ま せ ん。 銀 行 の
重要な金融機 関(G-SIBs)に指定されている
な け れ ば な ら な い こ と に な って い ま す。
パフォーマンスは保有するデータの完全性、 そのために自己 評 価 を実 施し、 是 正 計 画 を
整 合 性、 適 時 性、 正 確 性 に よ っ て 様 々 に
今年後半に策定することが期待されています。
制 限 さ れ ま す。 質 の 悪 い デ ー タ に よ っ て、 国 内 の シ ス テ ム 上 重 要 な 金 融 機 関
関連する運用やコンプライアンス上のコストが
SIB (D-SIBs) にもやがて同様の要求がなされる
増大する一方で、価格設定、融資限度枠、資本 ことに なるでしょう。BCBS の 文 書 は G-SIBs
配 賦 な ど が す べ て 不 適 切 な も の に な っ て ま た は D-SIBs へ の 指 定 か ら 3 年 以 内 に
しまいます。オリバーワイマンの経験では、 順守することを求めています。 より一 般 的に
データの貧弱な管理と質によって銀行の
利益は 10% までも減少しています。
言えば、BCBS 原 則 は、 す で にデータの 質 を
高 め ることを求 めてい る国 内 の 監 督 当 局 に
とって、 最小 限の標 準を与えるものになると
期待されます。
Copyright © 2013 Oliver Wyman1
Exhibit 1: リスクデータの集計と報告に関する BCBS 原則の影響
原則
影響*
ガバナンスとインフラ
1. ガバナンス
2. データ構造とIT基盤
リスクデータ集計
3. 正確性と信頼性
4. 完全性
5. 適時性
6. 適応性
リスク報告
7. 正確性
8. 網羅性
9. 明瞭性
10. 頻度
11. 配付
監督当局のレビュー、
ツール、協力
12-14. 監督当局のテストと
コンプライアンス
• プロセス グループに亘るプロセスには、”最初から正しい”
データ取得ルーティン、高度な自動化、妥当性の向上、
財務データや報告との照合が必要」とされるでしょう。
• データ管理(例えば、グループや「本源的な情報」の
データ蓄積に亘るデータを定義する網羅的な分類法など) は
拡張され、整合性を保って行われる必要があります。
• データ構造 は”唯一の正しいデータのバージョン”を
可能にし、時とともに変化する要求に合致するもので
なければなりません。一次データ源、種々の銀行機能に
またがるデータ集積のポリシーや標準、自動化された
データ供給などの鍵となる構成要素もまた同様に
強化されなければなりません。
• リスクエンジン は、主に単発およびまとまったストレス
シナリオのモデリングとテスト、より粒度の細かいデータ
出力、より広い範囲のデータの集積と分析を可能にする
ために、より柔軟性を有することが必要とされるでしょう。
• 報告 は、適切な情報がそれを必要としている意思決定者に
必要な時に提供されるように、臨機応変な統計解析と
より広い範囲でリスクをカバーし配布できる仕組みを
可能にするように拡張されねばならないでしょう。
さらに、報告の仕組みは、様々なユーザーのグループや
管轄範囲をサポートできるよう、柔軟かつスリムな
ものでなければなりません。
• ガバナンス(銀行全体に亘るリスクデータ管理とシステム
構造のためのもの)は明確にされ、定着され、上位の
経営者に対し説明責任を果たせるものとなる必要が
あります。さらに、妥当性評価や承認の統制は財務会計
標準の水準にまで引き上げられねばなりません。全体を
通して網羅的な文書化が必要とされています。
* オリバーワイマン分析 – 影響は潜在的な向上、事業化、是正を考慮したものです。
多くの銀行では、現在のリスクデータの集計と
失敗した銀行は、より質が高く迅速なデータに
遠 く 及 ば な い 状 況 で あ り、 相 当 に 広 範 囲 で
決定の利を得られる他行に遅れをとる
リ ス ク 報 告 の 体 制 は BCBS 標 準 の 水 準 に
大きな変革が求められます。これらの銀行に
と っ て は、 決 め ら れ た 時 間 内 で 原 則 に 従 う
基づく情報戦略により進歩した意思
ことになるでしょう。このレポートにおいて、
オ リ バ ー ワ イ マ ン は、 原 則 を 順 守 す る
こ と は 困 難 で あ る こ と が 分 か る で し ょ う。 た め だ け に と ど ま ら ず、 銀 行 の 意 思 決 定 と
また、それが達成できない場合、監督当局から
パフォーマンスを改善する戦略的能力を
なるでしょう。原則が至極妥当なものであると
確かに厳しい課題ではありますが、優先度の
何らかのペナルティーが課せられることに
す る と、 こ れ に 適 合 し て 進 歩 す る こ と に
構 築 す る た め の 3 点 プ ラ ン を 提 言 し ま す。
高い課題であることに違いはありません 。
2
2 オリバーワイマンの最近のレポート “ 金融サービス業界の現状 , 2013” を参照。業界における情報の重要性が議論されています。
http://www.oliverwyman.com/state-of-financial-services-2013.htm
Copyright © 2013 Oliver Wyman2
1. 自己評価
我 々 は、BCBS 原 則 に 適 合 す る た め の 準 備
利用されています。ケーススタディ 1 に示す
提案します。まず、現在のキーデータの集計や
予備的な自己評価の終了時に、我々はまさに
評 価 を 二 段 階 の ア プ ロ ー チ で 行 うこ とを
報告の問題点を鑑みて、
リスク管理の運用モデル
( ポリシー、 プロセス、 システム ) にわたって
高いレベルで各々の原則を満足できる能 力が
あるかを調べます。次に、現実目標の隔たりの
大 き さ や 範 囲 を 詳 細 に 把 握 す る た め に、
よ う に、 あ る G-SIB が BCBS 原 則 に 対 す る
この問題について提言を行いました。
次に原則 3 と原則 4 について考えてみましょう :
••
代 表 的 な リス ク 管 理 プ ロ セ ス を 選 択 して
信 頼 で きるデ ー タを 生 成 で き な け れ ば
なりま せ ん。 過 失 の 確 率 を 最 小 化 する
原則 1 について考察します :
た め にデ ー タは 大 部 分 が 自 動 化 さ れ た
ガバナンス – 銀 行 のリスクデータの 集 計
能 力 とリスク 報 告 の 実 践 は、 バ ー ゼ ル
委 員 会 が 定 めた 他 の 原 則 や ガ イダ ンス
に沿った強いガバナンスに従わなければ
なりません。
リスクデータの管理、集計、報告の能力改善に
誰 が 責 任 を も つ べ き で し ょ う か? 答 え が
明確になっていることはあまりありません。
リスクデータは、その性質上、共有資産です。
トランザクションデータはフロント関連
部門のシステムを起源とするものです。様々な
データソースから入力された顧客データ
みならず 緊 迫した状 況 / 危 機 的な状 況に
おいても正確な報告ができるように、正確で
徹底的に深く調査します。
••
正 確 性 と 信 頼 性 – 銀 行 は、 通 常 時 の
仕組みで集計されるべきです。
••
完 全 性 – 銀 行 は グ ル ープ の 全 体 に
わたって 重 要 なリスクデ ー タを 取 得し、
集計できなければなりません。データは、
商 品、 法 人、 資 産 タイプ、 業 界、 地 域、
その他リスクのエクスポージャー、集中度、
将 来 リ ス ク を 特 定・ 報 告 可 能 な そ の
他 のグル ープに対して入手され なければ
なりません。
こ れ らデ ー タ の 正 確 性 と 信 頼 性 の 基 準 に
適 合 す る た め に、 ほ と ん ど の 銀 行 は 単 に
莫 大 な 数 の デ ー タレコ ード や 欠 落 し た
ベ ー ス は、 フ ロ ン ト 関 連 部 門 ま た は 管 理・ データフィールドを修 復しなければならない
運営部門によって維持されています。同様に、 だけではありません。銀 行は問題をより深く
リスクデータの出力はリスク管理部門以外でも
利 用 さ れ ま す。 重 要 な デ ー タ の 構 成 要 素 は
しばしば財務部門とトレジャリー部門からの
入力と比較して照合され、報告される必要が
あ り ま す。 リ ス ク に 基 づ い た 価 格 設 定 の
掘り下 げ てデ ー タ品 質 に か か わ る 問 題 の
根 本 的 原 因 を 特 定 す る 必 要 が あ り ま す。
問 題 は、 典 型 的 には、 不十 分な 取 得・保 存
システム、 データ定義と参 照データセットの
不 整 合、 人 手 に よ るプ ロ セ ス、 限 ら れ た
一 部 分 は フ ロ ン ト 関 連 部 門 が 担 当 し ま す。 モニタリングや不十分なインセンティブなどに
リ ス ク 計 量 は 各 ビ ジ ネ ス の 責 任 者 や 財 務、 由来しています。
トレジャリー部門を含む銀行全体に周知され
Copyright © 2013 Oliver Wyman3
ケーススタディ 1: G-SIB の自己評価
リスク管理部門と財務部門の責任範囲
財務部門
損益の報告
会計ポリシー
目標設定と
予算設定
パフォーマンス
管理
コントロールと
照合
リスク管理部門
財務/規制の報告
戦略計画
流動性リスク管理
状況と限界の
モニタリング
リスクパラメータ
リスクのモデリング
とシナリオ分析
上級経営者および
委員会への報告
財務リソース
(資本と流動性)の管理
リスクへの備え
ストレステスト
リスクポリシーの
策定
フロント関連
部門のリスク
決定の支援
オリバーワイマンは、BCBS 原則の草案に対する G-SIB の
自己 評 価 をサポートしました。 責 任 や 相 互依 存 関 係 の
著しい重複が認められるリスク管理、財務、トレジャリー
部門にまたがったプロセス、システム、データ、報告の
横断的な調査です ( 図参照 )。
我々は、部門内および部門間の問題を特定し、リスク管理
プロセスについて選 択的にいくつかの “ 深 堀り ” 調査を
実施しました。銀行に共通の二つの基本的な問題について
発 見 がありました。 一 つは、 設 定されている仕 組 み は
全体としては BCBS 原則に合致するようになっていましたが、
多大な人の労力に依存していることで、漸く受け入れられる
も の で あ っ た に 過 ぎ な い と い う こ と で す。 従 って、
現 状に対 する如 何 なる変 更も、 好まれず、 支 持されず、
多 大 な 運 用 上 の 調 整 で 何 と か し ようと す る こと に
データとプロセスの部門間の依存関係
財務部門
リスク管理部門
管理会計
監督当局への報告
IR
資本管理
トレジャリー
戦略計画
• リスク調整された
パフォーマンスの計測
• 時価会計
• 経済資本の枠組
• バーゼル II, バーゼル III,
ソルヴェンシー II
• ステークホルダーへの
リスクと資本の状況の報告
• リスクアペタイトにそった
資本とバランスシート構造
• バランスシートの状態の
評価方法
• 流動性とALMの動的管理
• 戦略に対するリスク
アペタイトの調整
なるでしょう。
二つ目の発見は、商品、帳簿の階層、顧客 / 取引先 ID などの
共 通の 参 照データセットのため のデータ定義について、
組織間で調整されておらず、銀行全体に亘るガバナンスが
欠如していることです。実際、この問題がリスク管理、財務、
トレジャリー部門だけにとどまらず、セールス関連部門や
運営部門にまで及 んでおり、これらの部門のプロセスや
システム が 同じデータに依 存しているにもか かわらず、
デ ー タ の 定 義 は 異 な って い る こ と が よくあ り ま す。
データ定 義 が 調 整されていないことにより、 ポリシー、
プロセス、データ構造の標準が銀行内で異なることになり、
さらには、 部 門 間で 戦 略 を摺 合 せたり、 能 力を 一 斉に
向上させたりする仕事が複雑になってしまっています。
我々は顧客に対し、リスク管理、財務、トレジャリー部門に
亘 るデ ー タに 影 響 を 及 ぼ す ポ リシ ー、 設 計、 投 資 に
関 する意 思 決 定 を 調 整し、 将 来 ビ ジ ネ ス に 浸 透 する
ような ガ バ ナ ンス の 仕 組 み を 設 ける べ き で あ る と
提言しました。我々はさらに、能力を向上させ、最重要
課 題となっているプロセスを解決する変革プログラムの
設計について支援させて頂きました。
Copyright © 2013 Oliver Wyman4
Exhibit 2: しばしば悪いデータ品質の根本原因となる人手によるプロセス
重要統計 (月次)
手作業による
データ転送
• 与信格付け作業
• 国際会計基準対応
• 顧客セグメンテーション
手作業による
データ調整
• 顧客個別情報の喪失
• 無担保クレジットスワップ契約
• 経理情報の入力 (Prod. Ctrl IT)
• 不動産担保ローンの倒産時損失率 (LGD) の
算出 (Data Mart IT)
データの
手渡し
• データウェアハウスへのマニュアル転送が
正確に実施されたかどうかの確認作業
• データマート表のデータとバーゼル入力表の
データとの突合作業
チェック作業
の重複
0
50
手作業の数
例 え ば、Exhibit
100
150
2 に 示 す よ う に、 我 々 が 影 響 を 受 ける こと は ほ と ん ど ありま せ ん。
担当したある事例においては、月次の一つの
経営者にもデータの品質を確 認しようとする
作 業 工 程 が 300 -400 あ る こ と が 明 ら か に
改善する努力やコンプライアンスを動機付ける
プ ロ セ ス を 実 行 す る た め に、 人 手 に よ る
な り ま し た。 も ち ろ ん こ れ は そ の よ う に
設 計 さ れ た も ので は ありません。 これら の
人手 による 作 業 工 程 は、 デ ータと報 告 へ の
要 請 が 拡 張 さ れ、 そ れ を 支 えるシステムや
明 確 な 動 機 が あ りま せ ん。 デ ー タ 品 質 を
ためには、粗 悪なデータに課税するといった
突 飛 なアイデ アを広く導入するようなことも
やむを得ないかもしれません。
ガバナンスの 仕 組みでは対応できなくなった
企業全体にわたるリスクデータの管理、集計、
資本賦課や多数の報告の誤り、運営コストの
すると、改善に責任を持つ経営者には、必要な
結果なのです。データの問題が過 剰なリスク
増 大 を も た らして い る こと は 驚 くに は
当たりません。
報 告 が本 質 的 に 異 なる性 格 の ものであると
変革を牽引するための権限が与えられなければ
なりません。
データの正確性の問題は、システムの問題である
上 記 の議 論のように銀 行 が 充 足すべき 11 の
よくありま す 。 デ ー タを 生 成して い る人々
適用されるもの ) のうちの 3 つに過ぎないことを
だけでなく、インセンティブの問題であることが
3
原 則 (14 あ る 原 則 のうち 3 つ は 監 督 当 局 に
( 例 え ば、 支 店 の 窓 口 担 当、 ロ ーン 担 当 者、 考 え る と、 必 要 と さ れ る 変 革 の 大 き さ が
トレーダー ) は一 般的に品質の悪いデータに
3
より明確になってきます。
オリバーワイマンの観点による論文 “ データ品質 : 真実はそこにはない ” 参照。
http://www.oliverwyman.com/ow_data-quality-risk-management.htm
Copyright © 2013 Oliver Wyman5
Exhibit 3: 選択した報告プロセスに対する深堀り評価の概要
PRINCIPLE
× Lack of comprehensive governance framework that spans entire data lifecycle
× Lack of consistent senior management oversight
× Documentation is incomplete and in some instances misaligned to actual
process steps performed
× Current regulatory
COMPLETENESS
ASSESSMENT
be materially complete by Group× Overarching process controls not in place; each business unit has separate
review and challenge procedures with weak sign-off
× Piece-meal capability improvement initiatives not suffciently sponsored at the
v Current regulatory requirements for reporting
Group level and of limited efficacy
- Resourcing adequate for the current state,
PRINCIPLE
PRINCIPLE
COMPREHENSIVE
ASSESSMENT
GOVERNANCE
ASSESSMENT
DATA ARCHITECTURE × Lack of integrated data taxonomies, identifiers and definitions across business
units/functions and up to the regulatory level. Data fields defined precisely in
AND IT STRUCTURE
v Current regulatory requirements some areas, but not elsewhere
× Lack of integrated data architecture (data supplied from a number of
- Consensus among process owners
crisis, even with radically reduced architecturally different/independent systems). Leading to data inconsistencies
Current regulatory requirements for
reporting
terms
of reduced accuracy (no sign and increased effort for data aggregation and validation
- Data ownership/responsibilities are defined at BU-level, performed to good
resources
standards
v Areas within Risk function do take ownership for their sub-processes, understand
them suffciently, perform them diligently, and initiate process improvement
- BU- and area-specific sign-off procedures and review and review and challenge
- Consensus among process owners procedures are in place, but lack of process-wide visibility as to their
ADAPTABILITY
limited changes, produce custom effectiveness
However trade-offs would have
timeliness,
increased
resources
Consensus is that the GIIPS reporting
processand/or
can provide
output
in times of
× Process-level escalation procedures not in place
ACCURACY
crises, even with radically reduced turn-around
times,AND
but meaningful trade-offs
× Data definitions iterative and often ambiguous (e.g. areas report different data
INTEGRITY
would have to be made in terms of reduced
accuracy (no sign-off procedures)
than that asked for by the regulator as data definitions inconsistent)
and/or in terms of increased
× Golden sources of data designated and understood for most areas. However,
Ability to produce reports with shorter turnthese aren’t consistent for different types of data (e.g. market risk and credit risk
× Process-wide accuracy requirementsclassify products differently)
ACCURACY
× Process-wide reconciliation procedures not in place
× Process-level checks, verification
× Data aggregation and report generation processes largely manual, with some
place, even though area-specific review
lacking
documentation and robust controls. Manual processes generally not
Current regulatory requirements for
reporting
distribution
are met (report
sent
Group
Level and
on BU level)
to users as required). Distribution architecture flexibility would enablescalable
×
No
process-wide
metrics in place to monitor data accuracy
reasonable changes to distribution requirements in future
TIMELINESS
CLARITY
v
FREQUENCY
-
×
DISTRIBUTION
v
銀行が現在まだ充足していない部分を幅広く
現 実 と 目 標 の 隔 た り を 短 期 間 で 評 価 で き、
プロセスに対する深く掘り下げた調査を
ための十分な事実認識が得られます
概観した後は、選択した代表的なリスク管理
さらにその概略調査によって再調整計画の
行うべきでしょう。このアプローチによって、 (Exhibit 3 参照 )。
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2. ビジネス上の利点の特定
ほ と ん ど の 銀 行 は 現 在、 必 要 な デ ー タ の
その影響は合計で利益を ~5-10% 減少させる
データ交換の仕組みを信頼して、リスク計量を
原則を順守すること、また厳密に要求されている
もしデータが不正確であれば、それに基づく
資本賦課がどれほど減少し、収入がそのぐらい
入力、集計のための複雑なプロセス、システム、 ものであると試算されます。銀行は、BCBS
ビジネスの意思決定のために利用しています。 以上のことを行うことで、運営コスト、損失率、
意 思 決 定 は 誤 っ た も の に な る で し ょ う。 増 加 するの かを 試 算してみ るべきでしょう。
Exhibit 4 に 示 す よ う に、 リ ス ク デ ー タ の 銀行は、BCBS 原則に従わなければならないの
質 が 悪 い た め に、 そ れ を 適 用 し た 業 務 の
パフォーマンスが損なわれています。
であれば、それからできるだけ多くの 価 値を
引き出すように努めなければなりません。
Exhibit 4: 貧弱なリスクデータ管理の利益への影響
ビジネス上の影響と収益機会の逸失
• リスクベースの価格付け
‒ データの欠如による価格差別化の制約
‒ 適正価格を上回る価格設定による
売れ残りや低価格設定による
逸失利益
• 貸出限度枠管理
‒ 見かけの利用残高による不適切な
限度枠設定や担保管理に伴う
追加的なリスクテイクの障害
• マーケットセグメンテーション
‒ リスク別の顧客の分類が不可能な
ことによる非効率な営業推進と
クロスセリング
• 資本の配賦
‒ 誤ったデータによって部門や商品の
収益性が不正確になり資本配賦が
最適化できない
• 業績評価管理
‒ 間違ったKPIによる不適切な
インセンティブが誤った行動と
ビジネス判断を招来
ビジネス上の影響と収益機会の逸失
~1%
~1%
~1%
• リスクアセットの超過
‒ データ問題に起因する
リスクアセットの超過による資本
コストの増加
• コンプライアンス・リスク管理
‒ 監督当局からのペナルティ、
リスク
防止のための強化策等のコスト、
レピュテーションのダメージによる
損害
• オペレーションコスト
‒ データの訂正、照合作業に携わる
スタッフの機会費用
1-2%
1-4%
<1%
~1%
N/M
出典 : クライアントデータ , オリバーワイマン分析。計測されていないパフォーマンス管理の影響。
Copyright © 2013 Oliver Wyman7
3. 戦略と具体化プラン
銀 行 は、BCBS 原 則 に 対 する 現 在 の 能 力 を
( サンディ ) による被害やタイの洪水など最近の
改 善 す る た め の 戦 略 を 策 定 して 準 備 を
これらの事件に際して 100% の機能を発揮する
評価した後、リスクデータの管理、集計、報告を
自然災害も当てはまるでしょうか?多くの銀行は
完 了 す る よう に すべ き で す。 そ の 戦 略 は、 ことが出来なかっただけでなく、もたらされた
特 定 さ れ た 問 題 や 機 会 に つ い て 言 及 し、 リスクやビジネス上の影 響に上手く対処する
すべてのステークホルダーのグループにわたる
こ と が 出 来 ま せ んで し た。 個 々 の 危 機 に
システム、 報 告ツール の 目 標 設 計と 具 体 化
よりは、様々な状 況に対応できる「脚 本」を
ケーススタディ 2 に示すように、BCBS 原 則に
提 言しています。 銀 行 は、 過 去 に苛まれ た、
銀行もあります。
ことにもなるでしょう。それは、リスク管理や
ガバナンス、 重 要なプロセス、 データ構 造、 対 するコンテンジェンシープランを策 定する
計 画 を 含 む も の で な くて は な り ま せ ん。 作 成 することをオリバーワイマ ン は 銀 行 に
対 し 野 心 的 で 戦 略 的 な 対 応 を 考 えて い る
つ ぎ のような 重 大 な 問 題 に 直 面 する
財 務、 トレ ジャリー 部 門 間 で、 経 営 情 報 や
BCBS 原則の広範な狙いを考慮すると、銀行は、 報告について共通の考えを持たせたり、共通する
目 標 を 設 計 す る 際 に、 い くつ か の 仮 定 を
デ ー タ構 造 やプ ロセ ス に お いて 共 通 の
設 け な け れ ば な ら な いで し ょう。 例 え ば、 構 成 要 素 を 用 い た り す る に は ど の よう に
BCBS 239 は、 緊 迫 し た 状 況 や 危 機 的 な す れ ば よ い か と い うこ と で す。 す な わ ち、
状 況を何がもたらしているかを特定できない
銀 行 は、 投 資 コ ス ト と 価 値 創 造 の
状況下においてもデータの適 応力とデータが
宿 命 的 なトレ ード オ フ の バ ランスを
集 計・ 報 告 さ れ る 能 力 を 求 め て い ま す。 取りながら、自分たちの戦略が柔軟で頑健な
リーマンショック以後の著しい市場の流動化の
ものであるかを確かめるために様々な角度から
ような状 況です。 ニューヨークのハリケーン
*
銀 行は、リスクデータの管理、集計、報告の
能 力 向 上、 および そ れ により得 ら れる意 思
“ ストレステスト ” を行うべきなのです。
*
*
コンプ ライ ア ンス 強 化 の 単 なる 延 長として
捉 え る の で は な く、 網 羅 的 で 戦 略 的 な
決定とビジネスパフォーマンスの改善により、 アプローチをとれば、多くの利益が 得られる
明らかな 競 争 優 位 を 手 に 入 れ ること が
できます。監督当局の関心事が、特に緊迫した
でしょう。結局、有効なデータ主導型の意思
決定は、危機に際しての命綱であり、長期戦略の
状 況 に お いて、 銀 行 が 正 確 で、 適 時 的 で、 策 定 や 日 々 の 経 営 に お い て も 肝 要 な
網 羅 的 なリスク報 告 に 基づ いて意 思 決 定を
ものなのです。実際、データがなぜこんなに長く
原 則 を 採 用 す る に あ た って、 こ れ ま で の
と不思議に思うくらいです。
行うにあることは明らかです。銀 行は、BCBS
アジェンダ(経営課題)とならなかったのだろう、
Copyright © 2013 Oliver Wyman8
ケーススタディ 2 : G-SIB の戦略と計画
BCBS 原 則 に 適 合 す る た め に、 著 し い 能 力 の 向 上 が 戦略と計画を調整することです。各部門はそれぞれの要求、
望まれます。これを念頭において、野心的な銀行は、単に
問 題、 方 向 性を持っています。 我々は、 複 数フェーズの
観点で BCBS 原則に応えようとしており、組織全体の効率と
定義を調整することから始め、次第に、銀行全体に亘って、
コンプライアンスで自らを規制するというよりは、戦略的な
アプローチ、つまり主要な部門間でデータのガバナンスと
スピードの実質的な改善を目指しています。その一例として、 整合性のある(必ずしも共有している必要はない)データ
オリバーワイマ ン は、 デ ー タとそ れ に 関 するプ ロセス、 構造や経営能力の向上が実現される方向に移行していく
システム、 ア プ リケ ー ション ソ フトウェア が 各 業 務 を
やり方の採用を、顧客に提言しています。
顧客に提言しています。
必ずしもすべての銀行が、最終的にこのような結論に至る
特に大きな課 題は、 フロント関 連部門やオペレーション
アプローチを検討すべきであると、我々は考えています。
越えてどのように共有され統制されるのかを考え直すよう、
部門だけでなくリスク管理、財務、トレジャリー部門に亘る
入力とデータガバナンスに
おける財務部門と
リスク管理部門の調整
再編に意欲を持っているとは限りませんが、銀行はこうした
利用サイドから技術
サイドにわたる財務部門と
リスク管理部門の調整
フロント関連部門と
オペレーション部門への
調整の拡張
利用サイドから技術
サイドにわたる調整の
実質的完成
リスク管理部門
財務部門
オペレーション部門
フロント関連部門
リスク管理部門
財務部門
オペレーション部門
フロント関連部門
リスク管理部門
財務部門
オペレーション部門
フロント関連部門
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トランザクション
データ
参照データ
結果データ
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データ
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結果データ
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データガバナンスと
品質管理
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品質管理
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品質管理
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技術
技術
技術
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APPENDIX A. 実効的なリスクデータ集計とリスク報告のための
14 ヵ条の BCBS 原則
全体的なガバナンスと基盤
1. ガバナンス
銀行のリスクデータの集計能力とリスク報告の実践は、バーゼル委員会が定めた他の原則やガイダンスに沿った
強いガバナンスに従わなければなりません。
2. データ構造と IT 基盤
銀行は、他の原則にも適合しつつ、通常時のみならず、緊迫した状況や危機的な状況においてもリスクデータの
集計能力とリスク報告の実践を完全にサポートするデータ構造とIT基盤を設計、構築、維持しなければなりません。
リスクデータ集計能力
3. 正確性と信頼性
銀行は、通常時のみならず緊迫した状況 / 危機的な状況においても正確な報告ができるように、正確で信頼できる
データを生成できなければいけません。過失の確率を最小化するためにデータは大部分が自動化された仕組みで
集計されるべきです。
4. 完全性
銀行はあらゆる取引グループにわたってリスクデータの材料を取得し、集計できなければいけません。データは、商品、
法人、資産タイプ、業界、地域、その他リスクのエクスポージャー、集中度、将来リスクを特定・報告可能なその他の
グループに対して入手されなければなりません。
5. 適時性
銀行は、正確性、信頼性、完全性、適応性にも適合しつつ、リスクデータを適時的に生成、集計、更新できなければ
いけません。タイミングの正確さは、銀行の全体的なリスクプロファイルへの影響度だけでなく、計測されたリスクの
本質的で潜在的なボラティリティに依存します。この適時性は、通常時および緊迫した状況下、危機的状況下のリスク
管理報告のために銀行が定めた頻度の要請に合致していなければいけません。
6. 適応性
銀行は、危機状況下や社内的な変更、監督当局からの質問など様々な管理報告の要請に必要に応じて臨機応変に
応じるようにリスクデータを生成しなければなりません。
リスク報告の実践
7. 正確性
リスク管理報告は、集計されたリスクデータの内容を正しく精確に伝え、リスクを過不足なく
反映したものでなくてはなりません。報告は比較調整され、正当化されたものでなくてはならない。
8. 網羅性
リスク管理報告は、組織内のすべての重要なリスク分野を網羅していなければなりません。これらの報告の深さと範囲は、
受け取り手の要求のみならず、銀行運営とリスクプロファイルのサイズと複雑さに整合したものでなければなりません。
9. 明瞭性
リスク管理報告は、情報を明確かつ簡潔に伝えるものでなければなりません。報告は、情報に基づく意思決定を
促進するに足る網羅性を具備し、かつ、理解しやすいものでなければなりません。報告は、リスクデータ・分析・解釈と
定性的な説明の適切なバランスを有するものでなくてはなりません。
10. 頻度
取締役会と上級経営者 ( または適切な他の受け取り手 ) は、リスク管理報告の作成と配布の頻度を定めなければなりません。
その頻度は、銀行全体にわたる健全なリスク管理と実効的かつ効率的な意思決定への寄与の観点からの報告の
重要度だけでなく、受け取り手の要求、リスク報告の性質、リスクの変化の速さが反映されたものである必要があります。
危機的状況下においては、報告の頻度は増やされなければなりません。
11. 配付
リスク管理報告は、関係部署に配布されなければならず、受け取り手の要求にあった意味のある情報を
含んでいなければいけませんが、一方で機密性は維持されていなければいけません。
リスクデータ集計能力
12. レビュー
監督当局は上記 11 ヵ条の原則にそって銀行のコンプライアンスのレビューと評価を定期的に行わなければなりません。
13. 是正措置と
監督当局は、リスクデータ集計能力とリスク報告の実践における欠点について言及し、実効的で適時的な是正を銀行に
求めるための適切なツールとリソースを保有して、使用しなければなりません。監督当局は、ピラー 2 を含む様々な
ツールを使用できるようでなければなりません。
14. ホーム / ホストの協力
監督当局は、原則の監督とレビュー、また必要ならば是正行動の実装において、管轄が異なる他の監督当局と
協力しなければなりません。
監督上の措置
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