平成25年度 - 高崎経済大学

(別紙)
平成 25 年度
(氏名) 大村
1
成果の説明書
和人
(学部)経済学部
重要事項
【外部研究費採択状況】
① 科学研究費補助金・若手研究(B)「中国斉梁時代の「艶詩」の新研究(研究課題番
号:22720143)」(2010 年度~2013 年度)
[概要] 中国の南朝時代(西暦 420-589 年)、中でも斉時代(479-502 年)と梁時代
(502-557 年)には、女性を主な題材とした艶詩が流行した(以後、斉梁艶
詩と呼ぶ)。従来の研究において、斉梁艶詩は作品の主な担い手であった皇帝、
皇族、貴族たちの頽廃した風俗が反映された無内容なものであり、儒教思想
から乖離したものとして厳しい批判にさらされてきたが、実際には、従来の
説と矛盾する事実が幾つか存在する。本研究はそれらの事実から出発し、斉
梁艶詩がどのような淵源に由来し、どのような目的で制作され、なぜ斉梁時
代に流行したのかということを、作品そのものや時代背景、作者たちの文学
思想などの点から多角的に考察し、斉梁艶詩の本質と中国文学史における位
置を再検討することを目的とする。
[参考 URI] http://kaken.nii.ac.jp/d/p/22720143.ja.html
【既発表学術論文】(上記科研費研究の成果である。)
① 「南朝梁・蕭綱の西曲模擬作品再考」(単著。『高崎経済大学論集』56-3、2013 年
12 月。査読有り)
[概要] 長江下流域の呉地方で生まれた呉歌と、長江中流域の襄陽等を中心とする雍
荊地方で生まれた西曲という二種の民間歌謡の主なテーマは男女の情愛である。ある
先行研究は、南朝宋時代に商業の発展に伴って商人ら所謂「寒人」が台頭し、彼らに
よって南朝楽府が宮廷にも齎されて流行し、南朝文人の詩歌がその影響を受けて「俗」
化したことが梁の簡文帝蕭綱らの「艶詩」の誕生に繋がったと概括する。本稿は蕭綱
の西曲模擬作品と原典とを比較することによって、上記の説の再検討を試みた。
【研究発表】
(上記科研費研究の成果である。)
① 「南朝梁・蕭綱「文章放蕩論」試論」
(単著。2014 年 3 月 15 日、六朝学術学会第 28
回例会、於:二松学舎大学)
[概要] 本研究者はこれまでに南朝斉梁時代の艶詩作品やその制作を支えた文学思想
に関する何篇かの小論を発表してきた。しかし、南朝梁時代の艶詩制作流行の領袖と
されてきた簡文帝蕭綱の有名な「文章放蕩」論についてはまだ触れたことがなかった。
先行研究において、「放蕩」の語の使用例から、蕭綱のこの説が儒教思想から離れた
艶詩の制作を思想面から裏付けるものであるとみなす説が大勢を占めてきた。しか
し、本研究者は既発表論文において、蕭綱の文学思想や幾つかの代表的艶詩作品群が
儒教思想を土台とするものであったことを論じてきたが、本発表では別の観点・方法
からその説を補強するために、正面から「文章放蕩」論における蕭綱の意図の再検討
を試みた。
【出版物】
(共著)
① 竹田晃編『柳宗元古文注釈―説・伝・騒・弔』
(新典社、2014 年 3 月)収録「蝜蝂傳」
注釈・日本語訳・解説執筆。
[概要]中唐の文人である柳宗元は、韓愈と並んで、いわゆる「古文運動」のリーダー
的存在として有名であり、彼の作品は後世の中国だけでなく、江戸時代の日本
でもよく読まれた。本書は彼の文学的営為の特徴が最もよく表れていると考え
られる四種類の文体の作品を選び、数名の担当者が注釈、日本語訳、解説を施
した。本研究者は、彼の作品の中でもこれまであまり注目されてこなかった「蝜
蝂傳(ふはんでん)」の注釈、日本語訳、解説を担当し、その題材や内容、構
成の特徴を指摘して、そこから垣間見ることができる彼の文学思想を論じた。
【現在進行中の研究課題】(全て上記科研費研究の研究課題である。)
① 南朝梁・蕭綱および周辺の人物の作品研究
[概要]南朝梁・蕭綱の臨終作品や、彼および周辺人物の制作した艶詩の中でも唱和や
即興の作品などを取り上げ、その特徴的表現やモチーフの源流や意味を探る
ことによって、彼らの文学の本質とその文学史的意味を考察している。
② 南朝梁・蕭綱および周辺の人物の文学思想研究
[概要]これまで、蕭綱の文学思想は儒教思想から乖離したものであるとされてきた
が、これまでの研究で論じてきたように、彼の文学思想は儒教思想に基づく
と考えられる。幾つかの文章を読み直すことによって、彼および周辺人物の
文学思想の核心について考察している。
2
その他の事項
① 高崎経済大学教員免許状更新講習「学ぶことと考えること」第 1 課「ある中国詩人の
学び」(2013 年 8 月 9 日、於:高崎経済大学)
[概要]教員免許状更新講習・選択科目「学ぶことと考えること」の一環として、
中国・南朝宋の詩人、鮑照の習作とその原作であるそれ以前の詩人の作品
および鮑照の代表作の三者を比較することにより、「学び」と「創造」の
関係について講義した。