『珍獣の医学』

ピュア☆アニマルの顧問獣医
田園調布動物病院院長
田向先生の新刊です!
獣医は医療か、ビジネスか。
現役獣医師が多様化するペット医療の知られざる現場を描く
『珍獣の医学』
貧血のトカゲに輸血、体長2㎝のアマガエルを開腹手術、ヘビの大腸ガン摘出 etc
ペットとして飼育される動物は、犬や猫だけでなく、ウサギ、モルモットをはじめ、カメ
レオンやカメ、カエル、プレーリードッグ、サル、珍しいものではアリクイなど、さまざ
まな種類に及ぶ。
そして、最新のペット医療では、血液検査はもちろん、CTやMRIなど人間に行うのと
ほとんど同じ検査や治療を動物も受けることができる。
しかし、いわゆる「動物病院」は、その大多数が犬と猫を中心に診療しており、エキゾチ
ックペットと呼ばれるこのような変わったペットが病気になったとき、診療してくれる動
物病院は少ない。
田園調布動物病院の院長、田向健一氏は、自らが変わった動物が好きだということもあり、
哺乳類から爬虫類、無脊椎動物まで、ほとんどすべてのペットの診察を行っている。
「具合が悪いアリクイ」や「元気がないタランチュラ」など、初めて診察する動物が来た
ときに、いったいどのように診断し、治療を行うのだろうか。
悪性腫瘍ができてしまったハツカネズミから、ビー玉を飲み込んだカエル、ハリネズミの
爪切りなど、「珍獣」診療の、驚愕かつユーモアたっぷりな最新現場をお届けする。
動物を飼うとはどういうことなのか、考えさせられる1冊でもある。
著者プロフィール★田向健一
愛知県出身。98 年麻布大学獣医学科卒業。幼少時の動物好きが高じて獣医師に。大学時代は探検
部に所属し、アマゾンやガラパゴス、ボルネオなど海外の秘境に動物訪問。卒業後は東京、神奈
川の動物病院勤務を経て、田園調布動物病院を開業。ペットとして飼育されている動物のほどん
どを診療対象としており、無脊椎動物、爬虫類から哺乳類までと守備範囲は広い。その専門知識
を生かし一般書、専門書、論文まで動物に関する著書を多数執筆、監修を行う。
★体裁
・四六版 296ページ 巻頭カラー、本文1色(一部カラー)
・定価 1570円(税込み) 12 月 27 日発売
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動物病院へやっ て く るさ まざまな動物たち
健康診断から重篤な病気まで、さまざまな理由でいろんな動物たちが田園調布動物病院へ
やってくる。こんな動物たちに、こんな治療が行えるとご存知でしたか?
★「なんだか様子がヘン」と連れられてきた、地中で暮らすフクラガエル。
問診&触診で問題がなさそうだと、様子を見ることになった
★「お腹がゴロゴロしていてエサを食べない」と来院したカメレオン。
卵詰まりを起こしていたと判明し、手術で取り除いた。
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★エサを食べないと来院
したタランチュラ。脱水を起こして
いるとわかり、注射で水分補給。
★犬の伝染病、ジステンパーに感染して
しまったフェネック(キツネの仲間)。
異種間でも感染し、死亡率が高い怖い病気。
★大きなガンができてしまった
パンダマウス。重さたったの 22g
だったが、無事腫瘍は摘出できた。
★パイプを加えているウサギ……
ではなく、不正咬合をおこし、前歯が
伸びすぎてしまった。
★レンコンを食べ過ぎて胃が働かなくなり
結局手術でレンコンを摘出した犬。
★難産で帝王切開となったリスザル。
生まれたばかりのリスザルの赤ちゃん。
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★カエルは目が悪いため、動く物があるとエサだと思って飲み込んでしまう。
このアフリカツノガエルは自分と同じ大きさのトカゲのおもちゃを飲み込んでいた。
★カメのレントゲンを撮るときは
パン屋で使うトングを使う。このカメは大きな卵が
2個お腹に詰まっていた。
★ペットとして人気のウーパールーパー。お腹に腫瘍ができてしまい、手術で摘出した。
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★麻酔をかけられる
ソバージュネコメガエル。
こうした小動物の麻酔は、犬の麻酔用の
マスクを代用する。
★複雑骨折した左後肢を
切断したフクロモモンガ。
ケガした脚を長期に治療する
よりも、断脚したほうが
動物にとって負担が少ないことも
多いという。このモモンガも
走ったり木に登ったり、見た目に
脚がないことは全くわからない。
★貧血のフトアゴヒゲトカゲに、同種の
トカゲから輸血。トカゲの血液型などは
わかっていないことが多いが、このフトア
ゲゴヒゲトカゲは田向氏が100匹のトカ
ゲの血液検査をし、血液基準値を作成した
ため、「貧血」だということが判明した。
犬猫以外のエキゾチックペットは、診察方
法がわからないことも多い。しかし、かわい
がっている飼い主さんと動物のため、手探り
で治療法を研究している。
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★本書「もくじ」より
一章 毎日が未知との闘い、「珍獣の診療」
「ウチのカエル、具合が悪そうなんです」
牛や馬、鯛や蜂の病気も習うが、カメは教えない獣医学部
診療の根底には飼育スキルもものをいう
タランチュラもアリクイも脱水になる
珍獣は、診察にこぎつくまでも大変
獣医師は常に悩み、悔やみ、そして間違う
二章 動物の診療は科学捜査に通ずる
動物病院の一日
ノリでベタベタになったハムスターには片栗粉
たまたまジステンパーと判明したフェネック
血液の顔色をうかがいながら診断・治療を行う
黄疸で瀕死のネコがなぜか奇跡の生還
足を引きずって家出から戻ってきたネコ
「なんとなく」系症状の難しさ
「治れば結果オーライ」では割り切れない獣医師の心情
三章 イグアナたちの卵詰まりと不妊手術
がんばって自然環境に近づけるほど、卵が詰まってしまう
避妊・去勢手術は「病気を防ぐため」が主流
イヌのシッポを切る理由は……?
四章 命を「飼う」ということ
拾ってきた野鳥は誰が飼うのか
すべての命は等しく重い……とは限らない
獣医業界でも混同されるエキゾチックペットと野生動物
野生動物を飼うリスク
「かわいい~!」と安易に飼い、栄養失調になるスローロリス
動物の飼育には段階が必要
「馴れる」と「慣れる」は基本的に異なる
命を「飼う」ということ
五章 カメの手術方法と動物の結石
カメのおチンチンをハサミでチョキン!
カメは甲羅があるのに、どうやって診察するのか?
カメの結石は甲羅をパカッと開けて開腹手術する
新しく考案したカメの手術法にアメリカからも問い合わせが
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ウサギはカルシウム、カメは尿酸の結石ができる
六章 注意一秒ケガ一生、多くは飼い主の不注意による
ベランダからダイブし、甲羅が割れてしまったカメ
エラ呼吸のウーパールーパー用に麻酔装置を考案
ウサギの骨は割り箸よりも細く、もろい
難しい骨折の場合、「断脚」という選択肢もある
獣医師は外科医も内科医も歯科医も兼ねる
不正咬合をおこしたウサギの歯をカット
歯根が団子状になり気道をふさいでしまう難病
七章 なぜ、かくも食べられないものを飲み込むのか
ペットシーツを飲み込んでしまった3mの大蛇
カエルによくある誤飲。体長わずか2㎝のアマガエルを開腹手術
レンコンをつまみ食いしすぎて手術となったイヌ
吐き続ける60㎏キロの「ミニブタ」と格闘
八章 トカゲ百匹の血液検査をし、血液基準値を作成
とっさに行った自己血輸血で奇跡的に開腹したオオトカゲ
動物の血液型と輸血
トカゲの血液基準値を調べるため百匹のトカゲから採血
カエルの難病、カエルツボカビ症をアジア地域で最初に発見
マイナー志向こそが私の仕事の原動力
カエルにも白血病が……。これからの研究にひそかに胸躍らせる
九章 バレーボール大のイヌの腫瘍から、ヘビの大腸ガンまで
手術は無理かと一瞬絶望した巨大腫瘍を手で引きちぎる
犬猫の応用で、ヘビの大腸ガンを摘出
「プレーリードッグにサメ軟骨を飲ませてもいいですか?」
選択肢だけ提示する「逃げの姿勢」は意味がない
十章 動物病院で使う薬のほとんどは人間用
イヌに「流行中」の食物アレルギー
「ステロイド」は怖くない
薬の使用は最小限に越したことはない
イヌには使えるがウサギには使えないという薬もある
カエルの病気に人間用水虫薬
十一章 動物いろいろ、飼い主さんもいろいろ
「カメの手術」っていくら?
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動物病院のお財布事情
診療代の踏み倒し、バックレも少なくない
本当にペットのことを考えているのか首をかしげたくなる飼い主さんも
「ウチの子、手からしかご飯食べませんから」
飼い主さんの「心配」をすべて取り除いてあげるのは困難
十二 「楽にしてあげたい」と思うか「助かる」と信じるか
年に一、二度、スタッフに隠れて涙する
苦渋の選択をする飼い主さんの勇気
安易な安楽死は殺処分でしかない
絶対助けたいという信念は獣医学の常識を越える
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