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2015 February Special-1
東京海上日動 WINクラブ
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テロ動向と海外における安全対策
フランス・パリで 2015 年 1 月 7 日、白昼堂々と 2 人組の男が新聞社「シャルリ・エブド」本社建物に押し入り銃
を乱射、社員 10 人と警察官 2 人が死亡するテロが発生しました。犯人はアルジェリア系フランス人の兄弟で過去にイ
スラム過激派組織と関わりを持っていました。この事件のように、これまでテロのリスクがさほど高いとはされて来な
かった先進国においてテロが発生する例が相次いでおり、テロの発生傾向が変化していることが指摘されています。海
外に進出される企業としては、赴任者(駐在員・帯同家族)や出張者の安全を守るために、テロに関する最新動向を把
握し、安全対策を見直すことが急務となっています。
Ⅰ.最近のテロ動向
テロとは、
「非戦闘員に対する計画的かつ政治的動機に基づく暴力行為」と定義されます。1990 年代以降、世界的
に大規模テロが大幅に増加し、特に「アルカイダ」
(Al-Qaida)等をはじめとするイスラム過激思想に基づくテロ組織
が活発に無差別大量殺戮を狙ったテロを行ってきました。
近年のテロに大きな影響を与えている組織としてシリア・イラクで勢力を拡大しているイスラム過激派組織「イスラ
ム国」
(Islamic State:IS)が挙げられます。
「イスラム国」は 2014 年 6 月に一方的に国家樹立宣言を行い、世界中
に対してインターネットを通じた巧妙な宣伝活動を展開しています。
「イスラム国」の宣伝によりイスラム過激思想に感
化された多くの若者が世界中から「イスラム国」に参加しており、シリアの内戦で戦闘経験を積んだ彼らが自国に戻っ
てテロを行う事態が欧米・アジアの多くの国で懸念されています。
図 世界各国からシリア内戦へ参加する外国人の国・地域別推定人数
英国
488
オランダ
152
ベルギー
296
フランス
412
84
ロシア
800
ウクライナ
50
オーストリア
60
スペイン
95
スウェーデン
80
デンマーク
ドイツ
240
イタリア
50
米国
130
中国
100
アルバニア
148
モロッコ
1,500
トルコ
400
チュニジア
3,000
アルジェリア
250
イラク
247
レバノン
890
リビア
556
エジプト
358
パキスタン
330
ヨルダン
2,089
インドネシア
60
サウジアラビア
2,500
オーストラリア
250
スーダン
96
国名
1,000人以上
国名
500-999人
国名
100-499人
イエメン
110
出典:ロンドン大学・過激化・
政治暴力研究国際センター
(ICSR)
、 the Soufan Group
資料より弊社作成
国名
50-99人
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「ホームグロウンテロ」
(Homegrown Terrorism)と呼ばれ、海外からテロリストが侵入しテロを行うのではなく、
自国民がインターネット等を通じてイスラム過激思想に傾倒し、自国でテロを行うようになる、こういった形態のテロ
が欧米等の先進国やアジアで増加しているとされ、
「テロの拡散」が起こっているとされます。以下は最近の主なホーム
グロウンテロの事例です。
発生時期
発生した国
事例の概要
2014 年5 月
ベルギー
首都ブリュッセルのユダヤ博物館で男が自動小銃を発砲し、4 人が死亡した。犯人はシリアで「イスラム国」の
戦闘員として戦闘経験を積んでいた。
2014 年10 月
カナダ
ケベック州で男が兵士 2 人を車ではね、1 人が死亡した。射殺された犯人は、トルコ経由シリアへの入国を計画
し、旅券を没収されていた。
2014 年12 月
オーストラリア
最大都市シドニー中心部で銃を持った男がカフェに押し入り、客・従業員等 17 人を人質に立てこもった。犯人
は射殺され、人質2 人が死亡した。
2014 年12 月
フランス
中部トゥールで男が警察署を襲撃し、警官 3 人を刺した。射殺された男は SNS に「イスラム国」の旗を掲載し
ていた。
2015 年1 月
フランス
首都パリで新聞社「シャルリ・エブド」が 2 人組の男に襲撃された。2 日後には食料品店で立てこもり事件等が
発生し、一連の事件で計17 人が死亡した。
Ⅱ.日本人・日本企業が狙われるリスク
2015 年 1 月、
「イスラム国」を名乗る組織が拘束した日本人 2 人を人質に取り身代金や死刑囚の解放を要求し、そ
の後殺害する事件が発生しました。同組織は人質殺害後の声明で日本政府・日本人に対し「お前たちがいるところは、
どこでも虐殺が続くだろう。日本にとっての悪夢が始まる」と述べました。イスラム過激派組織が日本をテロの標的と
して非難した例は過去にもあるものの、2014 年 6 月の「イスラム国」による国家樹立宣言以降では、イスラム過激
派が日本を名指ししてテロを予告したのは初めてです。前述のとおり、
「イスラム国」は巧妙な宣伝活動で「ホームグロ
ウンテロ」を煽っているとともに、世界各国のイスラム過激派組織にも強い影響を与え、テロ活動を活発化させていま
す。上記声明により、今後はこれらのテロの標的として、日本人・日本企業・日本政府関連施設等が加わったとみられ、
警戒が必要です。
Ⅲ.企業として求められる対策
海外に進出する日本企業の対策としては、日本人・日本企業等が標的とされる可能性が高まった状況を踏まえ、現状
の安全対策を見直し、必要に応じて対策を強化する必要があります。
まずは、外務省「海外安全ホームページ」等を参考に拠点地域や出張先のテロ・治安に関する最新情報を把握するこ
とが重要です。加えて、緊急連絡網の更新、会社拠点や駐在員の住居等の警備・防犯対策を再確認・見直します。
多くの人が集まる場所で、日本人であることを示す、例えば日本語で大声で話す、パスポートを見せる等の行為は避
ける必要があります。見知らぬ人から日本語で話しかけられても応対せず、速やかにその場を離れることも必要です。
テロに狙われやすいとされる、政府・警察・治安関連の建物・施設や、宗教関連施設には、なるべく近寄らないよう
にします。また、不特定多数の人が集まる場所(例えばショッピングセンター、鉄道駅・バスターミナル等の公共交通
機関施設等)には長時間滞在せず、利用する場合は周囲の状況に常に注意することを、赴任者・出張者に徹底すること
が重要です。
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