2016/1/14 1 疫学・保健統計 間違うパターンは3通り 記憶するために

2016/1/14
疫学:人口に関連する pitfall
 人口静態統計と人口動態統計:違いは?
 人口静態統計:国勢調査(悉皆調査)による
 5年ごとに行われる
 人口動態統計:人口の増減に関わる統計
統合型講義
疫学・保健統計
 毎年調査される
 出生・死亡・死産・婚姻・離婚
 高齢化に関係する指標
年少人口+老年人口
×100
生産年齢人口
従属人口指数
老年化指数
老年人口
年少人口
×100
間違うパターンは3通り
疫学:人口動態の pitfall
 用語の定義を正確に覚えていない
 出生数と死亡数
どっちが多い?
 紛らわしい表現があって惑わされる
 出生数>死亡数なのは、2004(平成16)まで
 場合分けがある(分野で表現が異なる)
 乳児死亡数<周産期死亡数
 内容が難しい(?)
 疫学・統計はやさしいが、見た目が難しいよ
うにみえる
 単なる苦手意識
 人工妊娠中絶数>死産数
 合計特殊出生率は減少?
 2007年以降微増傾向(ただし 2008=2009)
 母親の年齢 :30~34>25‐29>35‐39>20‐24>40‐45
 純粋たる統計学の話題
合計特殊出生率
母親の年齢別出生率
年齢別女子人口 15
49歳の合計
記憶するために・・・
母親の年齢別出生率のうち、女児の出生率を合計したもの
疫学:母性関係死亡率の
pitfall
(女性が一生のうち次世代の母を産む指数)
 視写すること
 総再生産率と純再生産率
 音読すること(黙読より効果が大きい)
 繰り返すこと(3回以上)
 純再生産率では、女児が妊娠可能年齢をす
ぎるまでの死亡率を考慮している
 周産期死亡率と乳児死亡率
周産期死亡率
妊娠満 週以降の死産数+早期新生児死亡数
× 1000
出産 出生数+妊娠満 週以降の死産数
早期新生児死亡:生後1週未満
乳児死亡率
乳児(生後1年未満、新生児を含む)の死亡数
× 1000
出生数
1
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疫学:死産と周産期死亡 pitfall
疫学:有病率の pitfall
 用語が意味する時期が微妙に違う
 有病率が低いことは良いことか?
満・週数
12
22
出生
1
有病率
人口動態統計
←
死産(自然+人工)
自然死産
人工死産
そのときの人口
 疾病にかかった人の死亡率上昇
 健康な人の流入(移民が多い)
 患者の流出(患者が国外に逃げる)
→
周産期死亡
ある時点での疾患罹患数
人工妊娠中絶
・・・有病率は低くなる
← 母体保護統計
有病率 ≒
罹患率 × 平均有病期間
疫学:死産と周産期死亡 pitfall
有病率・罹患率・致命率の pitfall
 用語が意味する時期が微妙に違う
 違いはわかる?
満・週数
12
22
出生
有病率
人口動態統計
←
死産(自然+人工)
自然死産
人工死産
→
周産期死亡
人工妊娠中絶
1
罹患率
ある時点での疾患罹患数
そのときの人口
1時点の調査で
求められる
一定期間における新たな疾病の発生件数 1時点の調査では
求められない
1人ひとりの観察期間の総和
致命率
← 母体保護統計
死亡者数
死亡率 ≒ 罹患率
致命率
罹患者数
急性疾患の重症度を示す指標として用いられる
疫学:死亡状況の変化
死亡割合
 死亡率の変遷
 PMIが高いとは良いこと?
 昭和20年代:全年齢階級で死亡率低下
 昭和40年代:中高年層の死亡率改善
50歳以上の死亡割合(
)
50歳以上死亡数
× 100
全死亡数
 最近:70~80歳代の死亡率が着実に改善
 平均寿命の延びの要因
高いほど、健康水準がよく、公衆衛生が普及していることを意味する
 昭和40年代前半まで:乳児死亡率の改善
 最近:60歳年代以上の死亡率の改善
 似たような言葉でPMRとは?
死因別死亡割合(Proportional Mortality Rate) の略
年齢別死亡の状況についても暗記しておくこと
30歳代まで:自殺/40歳代以降:悪性新生物
死因別死亡割合(
)
ある死因による死亡数
× 100
全死亡数
2
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疫学研究
この表に2つの解釈があり得る
 観察研究
疾病あり 疾病なし
 研究者は対象者の行動を調査する(観察する)
ことで研究とする。
 記述研究と分析研究に分けられる。後者には、
コホート研究、症例対照研究、相関研究、断面
研究が含まれる。
 介入研究
計
曝露あり
A
B
A+B
曝露なし
C
D
C+D
計
A+C
B+D
A+B+C+D
 どちらが先かで研究の仕方、求められる
 研究者が予防・治療を行う(介入する)。
リスク(相対危険)が異なる
記述研究と分析研究
コホート研究
 記述研究 (≒ 質的研究)
 危険因子の曝露の有無を調べ、長期間にわたり
観察する
後で調査
 事例報告も記述研究の一つ
 1981年に、高齢者に多いまれな皮膚がんが、
疾病あり 疾病なし
20~30歳の男性に8例経験された
 分析研究 (≒ 量的研究)
先に調査
計
曝露あり
A
B
A+B
曝露なし
C
D
C+D
 統計学的な手法を用いて、危険因子と疾患の
因果関係を明らかにする
みなさんの卒業研究はどっち?
分析研究
 生態学的研究:
 信頼性が高い寄与危険度が算出できるが、
長期間の調査期間が必要
コホート研究と相対危険
研究対象が集団(市町村な
ど)である研究
 相対危険度:ある危険因子に暴露した人
と暴露していない人の罹患率の比
 横断研究:
ある時点における疾患の有無と
危険因子の有無を調査し、原因を推定する
 コホート研究(前向き研究が多い):
危険
因子の暴露の有無を調査開始時点で調べ、そ
の後に曝露群と非曝露群との比較を行う
 症例対照研究:
既に発病している患者群と
その対照群を設定し、危険因子に対する暴露
の有無を比較する
疾病あり 疾病なし
先に調査
計
曝露あり
A
B
A+B
曝露なし
C
D
C+D
計
A+C
B+D
A+B+C+D
相対危険度
A
A B
C
C D
3
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そのほかの用語
 寄与危険度
暴露群の疾病頻度
スクリーニング
 感度(敏感度)
ー
非暴露群の疾病頻度
 特異度
 陽性反応的中度
 寄与危険割合
寄与危険度 ÷ 暴露群の疾病頻度
 陰性反応的中度
 偽陽性率
疾病あり 疾病なし
 偽陰性率
 リスク比
相対危険と同じ
検査陽性
A
B
検査陰性
C
D
症例対照研究
スクリーニング
 すでに発病している人を研
究対象とし、危険因子の曝
露の有無を発病していない
人と比較する。
 感度(敏感度):「疾病あり」の陽性割合
後で調査
先に調査
疾病あり 疾病なし
 特異度
:「疾病なし」の陰性割合
 陽性反応的中度:陽性中の「疾病あり」割合
 陰性反応的中度:陰性中の「疾病なし」割合
曝露あり
A
B
 偽陽性率:「疾病なし」の「検査陽性」割合
曝露なし
C
D
 偽陰性率:「疾病あり」の「検査陰性」割合
計
A+C
B+D
疾病あり 疾病なし
 バイアスがかかりやすい
欠点が生じる
症例対象研究とオッズ比
A
B
検査陰性
C
D
スクリーニング(答え合わせ)
 オッズ比:ある危険因子に暴露した人と
感度(敏感度)
暴露していない人の罹患率の比で代用
特異度
疾病あり 疾病なし
検査陽性
計
A
× 100 (%)
A C
D
× 100 (%)
B D
曝露あり
A
B
A+B
陽性的中度
A
× 100 (%)
A B
曝露なし
C
D
C+D
陰性的中度
D
× 100 (%)
C D
計
A+C
B+D
A+B+C+D
オッズ比
A
B
C
D
で代用
B
× 100 (%)
B D
C
× 100 (%)
A C
偽陽性率
偽陰性率
偽陽性率 = 100 - 特異度
偽陰性率 = 100 - 感度
疾病あり 疾病なし
検査陽性
A
B
検査陰性
C
D
4
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統計:代表値
 平均値でいいのか?
平均と標準偏差
平均15万円
正規分布
学生の貯金額
人
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
‐2SD ~+2SDに 95%
平均
人数
‐SD ~+SDに 68%
万円
‐2SD ‐SD
統計:代表値
尺度と統計
 平均値:
 名義尺度
はずれ値の影響を受けやすい
はずれ値の影響を受けにくい
はずれ値の影響を受けにくい
 中央値:
 最頻値:
 色、位置、模様などを置き換えた数字
 運動会の順位、アンケートで好き嫌いを質問し、
 間隔尺度
平均値 =75,
 比例尺度
中央値=85, 最頻値=90
嫌い(‐1)~好き(+1)のように回答した数字
 気温など(30°は、10°の3倍ではない )
 身長、体重など
統計:散布度(データのばらつき)
尺度と統計
 範囲:
 名義尺度
はずれ値の影響を直接受ける
 分散:
(標本値ー平均)の二乗の総和
を標本数で割る・・・はずれ値の影響大
 標準偏差(S.D.): 分散の平方根
+2SD
 順序尺度
(例題)次のデータの平均値、中央値、最
頻値を求めよ
80, 90, 100, 90, 80, 0, 90, 70
代表値として平均値が用いられることが多いが、
上記の場合は、中央値が適切である。
+SD
 ²検定による
 順序尺度
 Wilcoxon の検定、正規分布するなら、t‐検定
 間隔尺度・比例尺度
(参考)偏差値
平均(M)が50、M+SDが60になるよ
うにした数字
 正規分布するなら、t‐検定
 正規分布しないなら、Wilcoxon の検定
Wilcoxon とMann‐Whitney U‐検定は、数学的に等価
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²検定
統計学における有意差とは
 危険因子の曝露の有無を調べ、長期間にわた
り観察する
疾病あり 疾病なし
計
23
39
62
曝露あり
36
132
168
曝露なし
59
171
230
計
 A組とB組の生徒の点数に差がないという
 上記に差がないと仮定したときに、どれぐら
いの確率で起こりえるかを計算する。
仮説を立てる。
 差がないという前提で、先の差がつく確
率pを計算する。
 確率pが、もしも5%以下のときには、
仮説が間違っていると結論づける。
 ²値を計算できるので、確率に換算できる。
²検定(つづき)
実は、Excel で検定できる
 下記の例では、²値=5.8293
疾病あり 疾病なし
23
39
曝露あり
36
132
曝露なし
計
59
171
計
62
168
p<0.000001
とてつもない
差があることが
わかる
230
 p=0.05 のとき、 ²値=3.841
 p=0.01 のとき、 ²値=6.635
次の成績に差があるか?
 Aクラス:
 Bクラス:
 12人 85点
 12人 80点
 12人 90点
 12人 85点
 12人 80点
 12人 75点
 平均 85点
 平均 80点
平均値の差は、5点だが・・・・
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