がん治療の基本 –集学的治療の実際 – (藤原恵一) 第21回がん臨床

がん治療の基本 –集学的治療の実際 – (藤原恵一)
第21回がん臨床試験セミナー
癌とは?
がん治療の基本
集学的治療の実際
上皮細胞から発生した悪性腫瘍
 間質細胞から発生した悪性腫瘍 = 肉腫だが、悪性腫瘍
全体を「癌」と総称することが多い
良性腫瘍との違い
 歯止めなく増殖する
• 生体の秩序を無視した増殖
埼玉医科大学国際医療センター
包括的がんセンター
婦人科腫瘍科
藤原恵一
 境界が不明瞭
 周囲組織へ浸潤
 遠隔臓器へ転移する
これら要因の一つ以上
を有している
(全てを満たす必要なし)
• リンパ行性
• 血行性
• 播種性
悪性腫瘍と良性腫瘍の
増殖形態
腫瘍境界
周辺臓器への浸潤
遠隔転移
悪性腫瘍
無秩序
不明瞭
あり
あり
良性腫瘍
ある程度増殖したら止る
ある程度増殖
たら止る
明瞭
なし
なし
22才女性
巨大卵巣腫瘍
PET像
卵巣がんの広がり方の特徴
腹腔内播種
原発巣が小さくても腹腔内に広がる場合がある
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
1
がん治療の基本 –集学的治療の実際 – (藤原恵一)
第21回がん臨床試験セミナー
境界明瞭な子宮筋腫
大網転移を伴った子宮体癌
子宮体部親展を伴った子宮頸癌
一見子宮頸部、体部に止まっているように見えるが、
実は、子宮頸部傍組織、腹腔播種を伴っていた
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
2
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第21回がん臨床試験セミナー
リンパ行性転移
子宮体部癌肉腫
リンパ節転移
血行性転移
肺転移
大腸癌脳転移
PSTTの骨転移
子宮頸癌骨転移による骨破壊
卵巣癌肝転移+鎖骨上リンパ節転移
腸骨転移
癌治療法の基本的考え方 -1-
癌治療の種類
局所療法
 手術療法
 放射線療法
座骨転移
手術療法
比較的早期の癌に適応される
限局した組織の切除
手術よりも広範囲だが依然として領域的
 Pro (利点)
• これができれば癌細胞は引き算で0にすることができるので、
最も理想的
 Con (欠点)
全身療法
進行癌 血液癌に適応される
進行癌、血液癌に適応される
 化学療法
 ホルモン療法
 免疫療法
それぞれの基本的考え方、適応、問題点
• 安全域をとらなければならない
– 浸潤の境界が不明瞭であるため
• 切除範囲が広くなると、癌周囲組織を犠牲にしなければならな
い
• すでに遠隔転移を伴っている可能性もある
 Consensus (共通認識)
• きわめて限局した癌組織の切除にのみ有効
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
3
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第21回がん臨床試験セミナー
癌治療法の基本的考え方 -2放射線、化学療法などの治療
 幾何級数的に細胞数が減少するので、理論的には癌細
胞数を限りなく0に近づけることはできるが、完全に0にす
るのは不可能
頼
 最終的には細胞性免疫の力に頼らなければならない?
 癌治療(特に放射線療法、化学療法、免疫療法)において最も問題に
なるのは、癌細胞が宿主の細胞から派生してできた、つまり、患者自
身の細胞によって形成されているということ
手術療法
根治手術
 拡大手術: 根治が期待できるが手術による、半永久的な
機能障害などの後遺症が問題となる
• 広汎子宮全摘による膀胱障害、直腸障害など
 適正な切除範囲を決定することが重要
• 根治を目指した縮小手術
姑息手術
 癌に対する根治性はないが、患者のQOLの改善に有効
な手術
• 消化管閉塞に対する人工肛門、バイパス手術など
放射線療法
子宮頸癌放射線療法照射野
放射線照射範囲内のみに有効
 全身的毒性は少ない
 癌が照射野外に広がっていた場合は無効
癌細胞は正常細胞よりも放射線感受性が高い
 とはいえ、治療量の照射が行われた場合、照射範囲内に
なんらかの障害が起こる
• 急性放射線障害: 放射線宿酔、下痢など
• 遅発性放射線障害: 直腸出血、皮下組織の線維化など
癌組織の放射線感受性の有無
 扁平上皮癌:
 腺癌:
高感受性
低感受性
手術か放射線か?
同じ子宮癌Ib期でも (同様の治癒率が期待できる)
 高年齢、肥満、合併症を持った患者では、放射線療法を
選択する
• 手術を行うリスクが高いから
 若年者では手術法が選択される
若年者
手術法 選択される
• 放射線照射による腟萎縮などで、治療後の性交障害などQOL
が損なわれることを防ぐため
化学療法
抗癌剤などを用いた治療
適応
 血行を介して全身に薬剤が分布するので、血液癌や転
移性癌など、手術、放射線では根治が望めない患者
(Induction chemotherapy)
 原発巣は手術、放射線で完全緩解にもって行けても、微
小転移が疑われる症例 (Adjuvant chemotherapy)
 腫瘍が大きく、化学療法でまず腫瘍を縮小させておいて
から、手術、放射線療法を行う症例(Neoadjuvant
chemotherapy)
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
4
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化学療法の理論と問題点
理論
殺細胞性抗癌剤
 化学療法 → 増殖中の細胞の分裂を阻害する
 増殖速度:
癌細胞>正常細胞
問題点
 癌細胞は、宿主の細胞から派生したもの
癌細胞
宿
細胞
も
• 増殖能の高い正常細胞の分裂が阻害される = 副作用
• 細菌をターゲットとした抗生物質と異なり、薬剤の治療量と危険量と
の差、つまり「投与量の安全域」が狭い
 癌細胞によって抗癌剤に対する感受性は異なるが、副作用
はほとんど100%確実に発現する
化学療法の有効性と疾患
著効
 急性白血病
 絨毛癌
 精巣腫瘍 など
有効
 卵巣癌
 乳癌
 子宮頸癌
 子宮体癌
 小細胞性肺癌 など
ほとんど無効
 胃癌
 大腸癌
 膵臓癌
 肝臓癌
 脳腫瘍 など
化学療法剤の種類







アルキル化剤 (cyclophosphamideなど)
代謝拮抗剤 (methotrexateなど)
坑癌抗生物質 (mitomycin Cなど)
植物アルカロイド (vincristineなど)
プラチナ製剤 (cisplatin, carboplatinなど)
Topoisomerase阻害剤 (etoposide, CPT-11など)
Tublin阻害剤 (taxol, taxotereなど)
絨毛癌腹腔内転移巣より大出血 術中
新薬登場
組織型によって異なる
 肺癌
 非小細胞肺癌
 小細胞肺癌
転移性絨毛癌化学療法前
βーhCG(ng/ml)
UCG(IU/l)
1000
100000
MEA療法
100
MTX : 450mg / body X
( 2コース以降は100mg
ETP : 100mg / body X
Act-D: 0.5mg / body X
10
β- hCG
1day
/ body )
5days
5days
10000
UCG
1000
1
0.1
100
MEA療法
0.01
10
6回 目
5回 目
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
4回 目
(11/7)
3回 目
2回目
1回目
手術
(9/22)
(12/3)
5
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絨毛癌抗腫瘍効果
化学療法前
化学療法後
化学療法前
絨毛癌抗腫瘍効果
化学療法後
10年後
絨毛癌抗腫瘍効果
1996.9.26
1997.4.16
化学療法後
化学療法前
β- hCG < 0.1 ng/ml
抗癌剤の投与
ー
投与方法
 単剤
 多剤併用
 疾患によって用いられる薬剤が異なる
•
•
•
•
•
など
急性白血病: daunorubicin, 6-MP, Ara-C, prednisolone
肺癌: etoposide, doxorubicin, vincristine, cisplatin
乳癌 cyclophosphamide,
乳癌:
l h
h id d
doxorubicin,
bi i 5FU
5FU, ttaxotere
t
卵巣癌: platinum, paclitaxel
絨毛癌: methotrexate, actinomycin-D, etoposide
多剤併用療法の原則
ー
有効性が確認された薬剤
作用機序が異なった薬剤
 耐性、抵抗性の克服
毒性が重ならない薬剤
 できるだけ多量が投与できる
が
相乗効果、相加効果が期待できる
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
6
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標準治療はどのようにして確立されたか
GOG 111: DESIGN
卵巣癌に対する標準的初回化学療法の変遷





Cisplatin - doxorubicin - Cyclophosphamide
Cisplatin - Cyclophosphamide
Carboplatin - Cyclophosphamide
Cisplatin - Taxol
Carboplatin - Taxol
R
A
N
D
O
M
I
Z
E
Stage
g III suboptimal
p
and stage IV disease
CP
Cyclophosphamide 750 mg/m² IV +
Cisplatin 75 mg/m² IV
q 3 weeks x 6
TP
Taxol 135 mg/m² IV over 24 hr
Cisplatin 75 mg/m² IV
q 3 weeks x 6
N=384
抗癌剤の投与
GOG111: Overall Survival
1.0
No. Pts
0.9
0.8
0.7
Proportion su
urviving
Alive
Died
Total
Median
Survival (mo)
Relative
Risk
Cisplatin/
cyclophosphamide
28
174
202
24.8
–
Cisplatin/paclitaxel
35
150
184
36.9
0.69
Treatment
0.6
- 投与量
-
投与量
 標準治療量
 High Dose
• 総投与量が多量
 High Dose-Intensity
• 単位時間内の総投与量を高める
05
0.5
 Dose-Dense 療法
0.4
• 比較的高用量の薬剤を頻繁に投与する
0.3
骨髄機能のサポート
0.2
0.1
0.0
0
6
12
18
24
30
36
42
48
54
60
66
72
78
84
 G-CSF (granulocyte colony stimulating factor)
 末梢血幹細胞移植
 骨髄移植
Months from entry into study
New Ovarian Elaborate trial
trial:: NOVEL trial
Ovarian Epithelial, Primary Peritoneal, or
Fallopian Tube cancer
FIGO Stage II
II--IV
Randomization
Stratification;
Residual disease: <1cm, > 1cm
FIGO Stage:
Stage: II vs. III vs. IV
Histology:: clear cell/mucinous vs.serous/others
Histology
Conventional TC (c
(c--TC)
Paclitaxel 180mg/m2, day 1
Carboplatin AUC 6.0, day 1
every 21 days for 6
6--9 cycles
Dose-dense weekly TC (dd
Dose(dd--TC)
Paclitaxel 80mg/m2, days 1,8,15
Carboplatin AUC 6.0, day 1
every 21 days for 6
6--9 cycles
Treatment
c-TC
dd-TC
n
319
312
Event
200
160
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
Median PFS
17.2 mos.
28.0 mos.
P value
HR
95%CI
0.0015
0.714
0.581-0.879
7
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抗癌剤の投与
ー
投与経路
ー
0.2
0.4
0.6
0.8
静脈注射(点滴)
動脈内注入
局所注射
腹腔内注入
内服
0.0
Proportionsurvivingprogression-free
1.0
Overall Survival
0
6
12
18
24
30
36
42
48
54
薬剤によって最も適した剤形と投与経路を選択
することが重要
60
Months from randomization
Treatment
c-TC
dd-TC
n
319
312
Event
124
96
3-yr survival
65.1%
72.1%
P value
HR
95%CI
0.0325
0.749
0.574-0.976
GOG172 試験
III 期 卵巣癌
残存腫瘍径<1cm
残存腫瘍径
<1cm
Median OS
IV 49.7 IP 65.6 RR= 0.75 (0.58–0.97)
パクリタキセル 135 mg/m2/24h
シスプラチン 75 mg/m2 IV
21日毎
21
日毎 6コース
パクリタキセル135 mg/m2/24h
パクリタキセル135
シスプラチン 100 mg/m2 IP D2
パクリタキセル 60 mg/m2 IP D8
21日毎
21
日毎 6コース
Armstrong et al. N Engl J Med 354:34-43, 2006
Armstrong et al. ASCO2002 N Engl J Med 354:34-43, 2006
IP療法Meta-Analysis
化学療法効果の判定
RECIST 基準
 CR (Complete Response)
• 腫瘍の完全消失が28日以上持続
 PR (Partial Response)
• 腫瘍の30%以上縮小が28日以上持続
 SD (Stable Disease)
 PD (Progressive Disease)
2 heterogeneity (5 d.f.)= 3.1, p=0.68
Hazard ratio is not reported for the GONO study but it is calculated from the available data reported.
Hazard ratio is not reported for the Greek study.
HR=0.784 (95%CI 0.693-0.886)
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
8
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抗癌剤の骨髄抑制とその対策
抗癌剤の副作用
 骨髄障害 (白血球、好中球、血小板減少)
 悪心嘔吐 (cisplatin, hexamethylmelamine)
 口内炎 (methotrexate, 5-FU)
 手足症候群 (liposomal doxorubicin など)
 肺毒性 (bleomycin, peplomycin)
 心毒性 (doxorubicinなど)
(d
bi i など)
 肝毒性 (methotrexate, 6-MP)
 腎毒性 (cisplatin)
 神経毒性 (vincristine, taxol, cisplatin)
 脱毛 (doxorubicin, etoposide, taxol)
 皮下壊死 (mitomycin C, doxorubicin)
 その他
白血球減少、好中球減少
 G-CSF投与による骨髄刺激
 抗生剤、坑真菌剤投与による感染予防と治療
血小板減少
 血小板輸血
骨髄移植と末梢血幹細胞移植
抗癌剤による悪心嘔吐
発現機序
型
伝達路
特徴
精神・
心理型
血液→CTZ
抗癌剤投与後、比較的短時間で出
消化管→迷走神経および 現
交感神経求心路
感覚・情動→大脳皮質
抗癌剤投与による嘔吐経験者に多
い
遅延型
即時型+精神・心理型
即時型
嘔吐が数日に及ぶ。抗癌剤の代謝
産物や精神的因子の関与
化学療法時の悪心嘔吐の治療
 ベンザミド (メトクロプラミド)
 大量投与で錐体外路症状
 ベンゾジアゼピン (ジアゼパムなど)
 大量投与により睡眠誘導
ステロイド (デキサメサゾン、ベタメサゾンなど)
 遅延性嘔吐に有効。長期間投与は不可
5-HT3受容体拮抗剤
 グラニセトロン、オンダンセトロン
 パロノセトロン
ニューロキン(NK-1)受容体拮抗薬
 アプレピタント
癌の免疫療法 -1免疫 (Immune)とは?
 非自己を認識し、それを排除しようとする宿主の反応
癌の免疫療法
• (例) 細菌、ウイルスに対する生体反応
癌細胞
 宿主から発生した細胞のため
• 非自己とは認識されにくい
• 癌細胞に特有で正常組織には欠けている特異的抗原が乏しい
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
9
がん治療の基本 –集学的治療の実際 – (藤原恵一)
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癌の免疫療法 -3-
癌の免疫療法 -2癌の免疫療法
種類
 宿主の免疫能を高めようとする
 癌組織をできる限り非自己として認識させようとする
例
能動的
免疫療法の種類
非特異的
特異的
BCG、丸山ワクチン
HPVワクチン(予防的)
ペプチドワクチン(治療的)
プ ド
治療的
抗体
モノクローナル抗体
ミサイル療法
養子免疫療法
 能動免疫療法
• 宿主の免疫能そのものを高め、癌細胞を直接排除させようとす
る治療
受動的
 受動免疫療法
• 腫瘍細胞で感作し、腫瘍細胞を認識できるようにしたリンパ球
や抗体を宿主に戻し直接的、間接的に腫瘍細胞を破壊する
細胞
Development of HPV vaccine
Assembly of Virus-Like Particle (VLP)
Z-100 高用量 対 低用量
第Ⅲ相比較試験
Fig. 3. Kaplan-M eier estimates of overall survival
100
Survivval rate (%)
子宮頸癌IIIB期
Randomization
Radiation Therapy
+
Z-100 0.2μg
Group L
Radiation Therapy
+
Z-100 40μg
Group H
二重盲検試験
Group H
Group L
75
50
25
Log-rank test p =0.039
0
00
365
1
730
2
1460
4
1825
5
2190
6
2555
7
17
25
1
1
Time (years)
Num bers at risk
Group H
Group L
1095
3
108
109
88
94
74
78
63
71
43
56
29
40
Noda et al. Gynecol Oncol 2006
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
10
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ホルモン感受性腫瘍
女性 (Estrogen感受性腫瘍)
癌のホルモン療法
 乳癌
 子宮体癌
男性 (Androgen感受性腫瘍)
 前立腺癌
ホルモン治療剤と疾患
種類
Antiestrogen
薬剤
Tamoxifen等
Medroxyprogesterone Acetate
適応症
分子標的療法
乳癌
子宮体癌
Aromatase Inhibitor Aminoglutethimide等
乳癌
Gn-RH
Leuprolide, Goserelin等
乳癌
前立腺癌
Antiandrogen
Flutamide, Casodex
前立腺癌
抗癌効果発揮の機序
従来の抗癌剤
 前提
分子標的薬剤の作用機序
癌細胞特有の増殖信号伝達系の一部や、増殖に不
可欠な血管新生機序をターゲットとしてその癌細胞
の増殖を抑制
• 癌細胞は正常細胞よりも細胞分裂が盛んである。
 細胞分裂の過程を阻害する
細胞分裂 過程を阻害す
分子標的薬
薬剤の癌細胞に対する選択性が高いことから正常
細胞への副作用が少ない事が期待される
 癌細胞特有の分子機序をねらい打ちして増殖を阻害する
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
11
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分子標的薬剤(Targeting Agent)
標的(Target)となるのは
Anti-ligand
Therapeutics
Receptor
Tyrosine Kinase
Inhibitors
PTEN
• ErbB, insulin growth factor, c-kitなどの増殖因子に対するレセ
プター
• Ras, Rafなどの遺伝子
• MAPK, PI3Kなどの酵素
• Akt pathway等
 癌細胞と宿主の相互作用に関わるサイトカイン
• 血管新生、細胞接着に関わる増殖因子
– VEGF 抗体、VEGFレセプター阻害TKI
PI3K
SH2
PI3K
Inhibitors
Akt
TYR
Kinase
TYR
Kinase
P
P
SH2
 細胞内信号伝達に関わるレセプターや様々な酵素な
ど
Activation of
Anti-apoptotic
Proteins
癌細胞特異的に作用する
 有効性が高い
 副作用が少ない
癌細胞特異的に作用する
 有効性が高い?
• 信号伝達バイパスバイパス経
路の存在が明らかとなり、複
数のターゲット薬剤が必要で
あったり、抗癌剤との併用が
必要
 副作用が少ない?
• 期待はされたが、現実は分子
標的薬特有の毒性が出現する
など問題点が明らかとなって
いる。
Ras
GTP
Ras
GDP
Raf
Ras
Inhibitor
MAPK
mTOR
Inhibitors
ERK
Inhibitors
Cyclin D
p70s6k
SOS
Raf Kinase
Inhibitors
MAPK
Inhibitors
Erk
CDK4
4E-BP1
Transcription Factors
現実
SH2
P
PLCγ
分子標的薬剤
Hope
P
Akt
Inhibitors
mTOR
Inhibitor of
Ras Farnesylation
Anti-receptor
Antibody
Mitosis, Gene Expression,
Anabolism, Growth, Survival,
Angiogenesis
Multitargeted TKI 毒性
高血圧
疲労
血栓症の頻発
出血 (鼻出血, 肺出血, 腫
瘍からの出血)
頭痛
神経毒性
消化管穿孔
肝機能酵素値異常
腫瘍部の疼痛
蛋白尿
甲状腺機能低下?
さらに . . .
 皮疹
 骨髄抑制
 悪心・嘔吐
 下痢
 その他、抗癌剤でも見られる副
作用
癌の集学的治療
集学的治療とは
癌に対する集学的治療
 手術、放射線療法、化学療法など複数の治療手段を組
み合わせて行うこと
Pro (利点)
 お互いの欠点を補完する
Con (欠点)
 副作用が増強する
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
12
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癌の集学的治療の例
子宮頸癌における広汎子宮全摘後の術後放射線
療法
化学療法併用放射線療法
Chemoradiation Therapy
 化学療法剤を放射線に同時併用
• 放射線療法の効果を増強?
• 照射範囲外の微小転移巣に化療が有効?
 若干の予後改善は認められるが、手術の後遺症と放射
線の晩期障害の二重苦
適応
卵巣癌における術後化学療法
 手術方法の進歩+化学療法剤の進歩により予後は確実
に改善
乳癌における術前化学療法と乳房温存手術+セン
チネルリンパ節生検
 予後を犠牲にすることなく、縮小手術が可能となった
 子宮頚癌
 肺癌
 頭頚部癌など
併用薬
 Cisplatin 併用が主流
子宮頸癌における化学療法併用放射線療法
卵巣癌治療
30年間の軌跡
IIB期ーIII期 (GOG120試験)
抗癌剤治療の進歩
 シスプラチン 1975年
 カルボプラチン 1980年代
• 嘔気嘔吐、腎毒性、神経毒性が軽い
• 抗腫瘍効果はシスプラチンと同じ
 パクリタキセル 1990年代
• シスプラチンとの併用で予後改善
• カルボプラチンとの併用でも
– 予後同等に良好
– 副作用軽減
 現在の標準治療薬は
• カルボプラチンとパクリタキセルの併用
30年前・・・・・
1975年




ベトナム戦争終結
山陽新幹線の岡山・博多間が開業。
大卒初任給 9万1272円
はやった歌 言葉
はやった歌、言葉
• シクラメンのかほり
• あんたヨーコのなんなのさ
手術療法の進歩
 Maximum Debulking
Effort
• 手術手技の進歩
–
–
–
–
腸管合併切除
横隔膜切除
肝切除
脾摘
 麻酔の進歩
 術後管理の進歩
30年前・・・・・
1976年




ロッキード事件
五つ子誕生
日本初の宅配便
はやった歌 言葉
はやった歌、言葉
• 昔の名前で出ています
• 記憶にございません
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
13
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第21回がん臨床試験セミナー
30年前・・・・・
1977年
30年前・・・・・
1978年
 日航機ハイジャック
 王貞治 通算本塁打756号達成
 円高進み、経済大打撃
円高進み 経済大打撃





• 1ドル240円を割る
 アップルコンピュータ創立
 カラオケ(ブーム)到来
 はやった歌、言葉
日中平和友好条約調印
成田空港開業
イギリスで試験管ベビー誕生
ノーパン喫茶開業(京都)
はやった歌、言葉
• いい日旅立ち
• 窓際族
• 勝手にしやがれ、あんたのバラード
• 普通の女の子に戻りたい
30年前・・・・・
1979年
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30年前・・・・・
1980年
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藤原恵一 無事大学卒業
ウォークマン登場
全国電話自動化完了
自動車電話開始
大卒初任給 11万2525円
はやった歌、言葉
イラン・イラク戦争
広州事件
富士見産婦人科乱診事件
巨人長嶋監督辞任、王引退
はやった歌、言葉
• 雨の慕情、恋人よ
• 赤信号みんなで渡れば恐こわくない
が痴漢を待っている
• ヤングマン、いとしのエリー
• シカト
気をつけよう、ブス
乳癌における術前薬物療法
卵巣癌の5年生存率の推移
60
50
40
20
術後薬物療法
あり
再発予防効果
10
わからない
個別治療効果
限定
乳房温存
大規模
時間がかかる
臨床試験
30
0
1973- 1976- 1979- 1982- 1987- 1990- 1993- 1996- 199975
78
81
86
89
92
95
98
2001
プラチナ前期
25th Annual Report. IJGO, 2007
プラチナ期
タキサン期
術前薬物療法
あり
原発巣の大きさの
変化で判定
可能性↑
小規模
短時間で可能
9
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
14
がん治療の基本 –集学的治療の実際 – (藤原恵一)
術前化学療法のlandmark trials
第21回がん臨床試験セミナー
乳癌手術療法の変遷
NSABP B-18, B-27
1990年頃
1990
年頃
Post-op AC
vs
Pre-op AC
Pre-op AC
vs
Pre-op AC→T
vs
Pre-op AC→Post-op T
J Clin Oncol; 26:778-785 2008
まとめ
癌治療は病期により治療法が異なる
極めて早期の癌以外は、集学的治療の適応である
集学的治療の発達により
 予後の改善
 予後を犠牲にすることなく縮小手術が可能
後を犠牲 す
な 縮
が 能
• QOLの改善
今後は分子標的薬、免疫療法を加えた集学的治療
の研究が進む
使用目的を研究者の自己学習用に限り、その他への転用を禁ずる
15