板ガラスと防災 - 旭硝子の Glass Plaza

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板ガラスと防災
地震や台風でガラスが破損することは通常は心
表 1 防災対策をお勧めしたい施設
配ありませんが、想定を越えた地震や台風が発
生する可能性はあります。より一層の安全を確
保するために、特に不特定多数の人が集まる病
院、コンビニエンスストアや競馬場など、また
学校、市民会館、福祉施設などの公共施設、特
特に安全への配慮が必要な施設
災害復旧など緊急時の重要性の高い建物
大勢の人が集い、事故の発生頻度が高い施設
に災害時に避難場所となる施設においてガラス
が破損した場合の安全対策が不可欠となります
表 2 災害の種類と求められるガラスの分類
( 表 1 )。
災害の種類
ここでは財団法人日本建築防災協会が策定し
た「防災に有効なガラスのガイドライン」講習会
地震
として取り込まれています。
1.
災害の種類と求められるガラスの分類
防火・防災関連
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建築に用いられるガラスの破損を防ぐには様々
飛来物の衝突など
ブラウン管・液晶テレビ:台の上から飛来する、倒れる
10〜80kg前後
ピアノ:床の上を滑ってくる
200kg〜500kg
棚・本棚:倒れかかる
10〜100kg以上
参考文献
「板ガラスの衝撃強度の研究」
(湯浅他 日本建築学会大会学術講演梗概集S45.9)
「板ガラスの衝撃強度
(その1.
ガラスの曲げ破壊)
(白橋他 日本建築学会大会学術講演梗概集S53.9)
」
表 4 ガラスの種類と被害の評価
(地震被害)
(ガラスの衝撃実験および過去の知見を基に作成)
た、万が一としてガラスの破損を想定すると、破
損したガラスが人に危害を加えることのないよ
強風時に有効なガラス
風圧
表 3 地震時にガラスに衝突する可能性のある代表的な物品と想定荷重
な外力によってガラスに過大な応力・変形を生
じないように計画することが基本となります。ま
地震時に有効なガラス
層間変位
強風
ており、その中で「防災に有効なガラスのガイド
ン」と「強風時に有効なガラスのガイドライン」
求められるガラス
(適正なクリアランスを設けて破損させないのが基本)
に「安全・安心ガラス設計施工指針」を策定し
ライン」は「地震時に有効なガラスのガイドライ
作用する外力
家具、什器の衝突など
テキストの内容等を抜粋して紹介します。
なお、(財)
日本建築防災協会では、2011年2月
具体的な施設
保育園・幼稚園、小・中・高等学校(体育館)、病院・医療施
設、老人福祉施設
警察・消防施設、市役所・町役場、
市民会館・町民会館(避難場所として使用)
百貨店・スーパー・コンビニエンスストア、コンサートホール、
ショッピングモール
衝突物による
破片の
飛散脱落した
貫通防止 飛散脱落防止 破片自体の安全性
ガラスの種類
フロート5ミリ
×
×
×
網入6.8ミリ
×
△
△
ガラスに損傷を与える恐れのある自然災害と
フロート5ミリ+ガラス飛散防止フィルム50μm
△
○
△
して代表的なものに地震、強風があります。発
薄い膜の合わせ
(FL3+15mil+FL3)
△
○
○
厚い膜の合わせ
(防犯合わせ)
(FL3+30mil, 60mil+FL3)
◎
◎
○
強化
×
×
◎
うに計画する必要があります。
生する外力として、地震は家具等(以下、
「衝突
物」)
の衝突や層間変位に伴う強制変形、強風は
風によって飛ばされたもの
(以下、
「飛来物」)の
衝突や風圧があります。それぞれの災害に対し
ては、 表 2 のように「地震時に有効なガラス」、
「強風時に有効なガラス」が求められます。
2.
地震時の衝突物に対して有効なガラス
(1)
地震時に想定されるガラスへの衝撃荷重
凡例 ◎:高い安全性が得られる。 ○:効果が期待できる。 △:ある程度効果がある。 ×:効果が期待できない。
表 5 地震時の衝突物に対して有効なガラスの選定
最も有効なガラス
新築の場合
合わせガラス
(中間膜30mil以上)
改修の場合
合わせガラス
(中間膜30mil以上)
に交換
地震、強風時に想定される荷重などのうち、衝
有効なガラス
合わせガラス
(中間膜15mil)
飛散防止フィルム貼りガラス
合わせガラス
(中間膜15mil)
に交換
合わせガラスに交換できない場合は、ガラス飛散防止フィル
ムを貼る
突による衝撃はある程度の想定はできますが正
確に捉えることは難しいです。地震時にガラス
に衝突する可能性のある代表的な物品と想定荷
重は 表 3 のとおりです。 (2)
地震時に有効なガラスとその選び方
室内の家具等の衝突への対策は、家具の固定
た衝撃実験結果(参考資料1)と層間変位によ
が基本となりますが、固定が不十分であったり、
る面内変形破損試験(参考資料2)を基に、
「地
想定以上の揺れが生じた場合に備えて、家具の
衝突を想定したガラスの選択が必要です。
ここでは 表 3 に示すような家具の重量を考慮
し、平均値として質量100kgの加撃体を選定し
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震時に有効なガラス」の選定を提案しています
( 表 4 、 表 5 )。