インドネシア・マレーシア海外ミッション - 中国経済産業局

特集
インドネシア・マレーシア海外ミッション
~中国地域の自動車部品サプライヤー海外展開支援~
地域経済部 参事官(産学官連携・産業クラスター担当)
TEL 082-224-5760
インドネシアは、ASEAN最大の2億4千万人の人口、豊富な労働力や近年の安定した政治情勢を
背景に、日本企業の有望な市場として注目を集めています。当地域との関わりとしては、三菱自動
車工業(株)関連の合弁企業が車両組立を行っています。
また、マレーシアは、国内経済の順調な成長を受け、2012年度自動車販売台数は過去最高60
万台を記録し、タイ、インドネシアに続くASEANで3番目の自動車市場です。マツダ(株)は、来年春に
車両組立新工場の稼働を予定しています。
今後大きな需要が期待される両国において、現地の自動車メーカーやサプライヤー、政府機関等
への訪問を通じて、投資環境、現地企業のニーズ等の把握及びネットワーク構築を図ることにより、
中国地域サプライヤーの両国への展開を支援することを目的にミッションを派遣しました。その概要
を以下のとおり報告します。
なお、本ミッションは平成25年度地域新産業戦略推進事業として実施したものです。
訪問日程
平成25年9月22日(日)~29日(日)
<インドネシア:ジャカルタ、マレーシア:クアラルンプール、ペナン>
訪問メンバー
18名
<行政機関、産業支援機関、大学、企業、金融機関>
クアラルンプール
MIDA、MAI
プロドュア
APM
Sapura Industrial
ペナン Penang
イノコム
パナソニック AS マレーシア
ジャカルタ
ダイキョーニシカワテンマ
KRM、MKM
BKPM
日本大使館
ジェトロ
インドネシアモーターショー
旬レポ中国地域 2013 年 11 月号
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日時
9 月 22 日(日)
9 月 23 日(月)
9:00-11:00
13:00-16:00
17:30-21:00
9 月 24 日(火)
8:30-9:30
10:00-11:00
12:00-14:00
9 月 25 日(水)
9:00-11:00
14:00-17:00
9 月 26 日(木)
9:00-11:30
13:30-16:00
9 月 27 日(金)
9:00-12:00
14:00-17:00
9 月 28 日(土)
→29 日(日)
訪問先
関空→ジャカルタ(インドネシア)
ジャカルタ
■ダイキョーニシカワ・テンマ・インドネシア
■KRM(クラマ・ユダ・ラトゥ・モーター、完成車メーカー)
、
■MKM(三菱・クラマ・ユダ・モーターズ・マニュファクチャリング:日系サプライヤー)
■インドネシア国際モーターショー
ジャカルタ
■インドネシア日本大使館
■インドネシア投資調整庁(BKPM)
■ジェトロ ジャカルタ事務所
クアラルンプール
■マレーシア投資開発庁(MIDA)、マレーシア自動車研究所(MAI)
■プロドュア(ダイハツ合弁)
クアラルンプール
■Auto Parts Manufacturers、APM Plastics(APM グループ、現地サプライヤー)
■Sapura Industrial(現地サプライヤー)
ペナン
■イノコム(マツダ生産委託)
■パナソニックASマレーシア(カーオーディオ等サプライヤー)
ペナン空港→関空
まとめ:訪問企業・機関からのコメント等
【インドネシア概況 】
2010年以降年6%を超える経済成長率を維持していたが、今年の経済成長は若干減速
する見込み、踊り場的な状況。2013年の自動車販売台数は、内需の減退等から前年並
みに留まる模様。
構造的な課題は、①インフラ不足(交通、エネルギー)と、②法的不透明性。加えて、
労働組合の力が強くデモが活発化、その結果もたらされた最低賃金の上昇が大きな問
題となっている。
一方、サプライチェーンは未整備、新規参入は可能。850tを超える金型や樹脂成形機
の大型のものなど大型パーツは国内では難しい。親日的なマーケット。
但し、経済情勢等から、今から進出する企業は黒字転換が遅れる場合もある。
インドネシア国内市場と輸出機能を念頭に事業内容を検討すること、日本国内の系列
を超えて事業拡大を図ることを検討する必要がある。
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【ジャカルタ市内】
【ジャカルタ市内の交通渋滞】
【インドネシア国際モーターショー】
■主な訪問先と概要
(1)ダイキョーニシカワ・テンマ・インドネシア
ダイキョーニシカワ(広島)と天馬(東京)との合弁
会社。2013年に設立。現在は営業拠点のみ。工業団地に
新工場の建設を検討中。エンジン回りの樹脂部品などを
生産予定。
天馬インドネシアはテレビ、プリンターの筐体等を生産。
日本国内では、Tier2の立場で自動車用にもプラスチック部品
を納品している。
【天馬インドネシア(ジャカルタ)
】
自動車部品の開発力があり、自動車メーカーと直接取引するダイキョーニシカワと組んだ。
(2)KRM、MKM
KRM(1973年設立)は現地のクラマ・ユダグループ・三菱自
工・三菱商事が合弁で設立した車両組立工場。
商用車4車種、乗用車1車種(RVR)の組立生産を行っている。
MKM(1973年設立)はエンジン、トランスミッションの組立
生産を行い、KTBは現地総販売代理店、全体の調達権限をもつ。
MKM、KRMともに三菱グループとクラマ・ユダグループの合弁
企業。
【MKM(ジャカルタ)
】
当初8万台の生産目標、今年と来年は当初目標を上回る生産を予定。
休日出勤を行い、フル操業に近い状態。将来は乗用車の生産台数を伸ばしたい。
(3)在インドネシア日本国大使館
人口ボーナス(※1)をテコに成長戦略を描いてきたが、これまで経済のリスク要因と
言われてきた様々なことが顕在化。特に、インフラ整備の問題と、法令等社会ルールの
不確実性が大きい。
これまでは6%超の経済成長を維持してきたが、5%台に減速する見込み。
国際収支では経常赤字が拡大している。外貨準備高が急減していることも大きな問題点。
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インフラの未整備が経済成長のボトルネック。
(※1)生産年齢人口(15~64歳)が従属人口(15歳未満+65歳以上)の2倍以上となる期間
自動車に関しては、日系メーカーのシェア(95%)が圧倒的であり、親日度合いが高い。
自動車産業はこれまで急拡大していたが、政府による頭金規制(※2)で販売の伸びが抑
制される可能性がある。 (※2)自動車の購入額に対して一定の頭金を求める規制
労働組合の力が強くデモが活発化。その結果もたらされた最低賃金の上昇も大きな問題。
日本大使館が窓口となって、マレーシア政府に対しきちんとした賃金決定メカニズムを
構築してもらうよう要請している。
(4)インドネシア投資調整庁(BKMP)
BKPMは投資許認可、事業設立の認可、税制優遇策の決定等の総合窓口。BKPMの中にJICA
のジャパンデスクがあり、日本人アドバイザーが常駐。
自動車分野では、低価格で環境に配慮した優遇政策、LCGC(Low Cost Green Car)に対応
し、現地調達率を高めることが必要。
(5)ジェトロ・ジャカルタ事務所
労働賃金が上昇し、安くはなくなっている。来年大統領選挙があることに加え、経済
規模がより小さいフィリピンと最低賃金が同じであり、安すぎる賃金が補正されつつ
あるという見方もある。但し、タイに比べるとまだ安く、ブルーワーカーが最低賃金
で確保できるメリットはある。
資源価格の下落等により 2012 年国際収支が赤字化。ルピア安が進行。資本収支の黒字
でもっている。日系企業の投資ラッシュが今のインドネシアを支えている。インフレ
率が高伸(8 月 8.79%)し、少し踊り場的な状況。
【マレーシア概況】
2010年以降経済成長率は堅調に推移。インドネシア政府と比較すると、マレーシア投資
開発庁は積極的に投資勧誘している。ウェブサイトにおいて投資情報やサプライヤー
情報を提供し、マッチングの設定も行う。100%外資での事業展開が可能であり、法人
税の免税など優遇措置も充実している。
政府の人材育成プログラム、自動車メーカーの技術指導により、競争力のあるローカル
サプライヤーが一部存在する。
一方、自動車メーカーはマレーシア国内のサプライヤーから調達したいが、現実は競争
力がある海外からの仕入れ先が増えている。
建設中のマツダ(株)新工場は来年春に稼働予定。CX-5を生産、タイ向けにも輸出する
計画。現地調達率アップのため広島地域サプライヤーとのマッチング活動、技術提携を
促進している。
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■主な訪問先と概要
(1)マレーシア投資開発庁(MIDA)
MIDAは製造業・サービス業の投資を管轄する政府
機関。以下4つの機能を持つ。
①ビジネスマッチング。Websiteでサプライヤー
情報を提供しビジネスマッチングが可能。MIDA
に連絡すればFace to faceでのマッチングも
可能。
②投資や企業の評価。税制等の優遇措置の付与。
【MIDA(クアラルンプール)
】
③産業振興のための政策、戦略の作成。
④フォローアップ。コーディネータの派遣、助言等。
投資環境は、100%外資による会社設立が可能。日本への送金規制もない。
主な投資優遇措置としては、①パイオニア・ステータス(PS)は、法人税免税70%又は
100%を5年間又は10年間、②投資税額控除(ITA)は、適格資本的支出の60%又は100%を
5年間又は10年間。③輸入税の免税(原材料)、輸入税と販売税の免税(機械と機器)
がある。
MAIは自動車メーカーの支援、外資・外国からの技術導入の活動を行う。2012年からG4
という人材育成プロジェクトを実施。ローカルサプライヤーに人材を派遣して、現場改
善・人材育成を図る。対象は20社、プログラムは3~4年継続する。
(2)プロデュア
政府とダイハツ工業との合弁会社。
1993年設立。プロトン社に続く第二の国民車メーカー。
国民に手が届く車を生産するというコンセプトの下、
ミラ、ブーン等のベースとした小型車を生産・販売。
2006年に販売台数でプロトンを抜き、国内最大の自動
車メーカーになった。
工場の年間生産能力は25万台、製造部門は6800人。
【プロデュア(クアラルンプール)
】
工場の敷地内に新工場を建設中、来年8月に稼働。
新工場のマザー工場は九州の大分工場。立ち上げ時の調達先は決まっているが、
次の車種では新たなサプライヤーの可能性はある。
日本の製造現場をモデルに5つの取り組みを実施中。①4Sの徹底、②品質不具合防止、
③コミュニケーションの活性化(強化)、④設備の正常化、⑤教育施設「DOJYO」を設
置。重要部品の機能を把握できるように見える化し、仕事の重要性を認識させている。
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(3)APM
APMは大手自動車部品製造グループ。シート、ドアパネル、
バンパー等の内外装プラスチック部品、バネ等のサスペン
ション部品、ラジエーター等の熱交換器部品を生産。
1971年設立。従業員2,475人。
バンコク、ジャカルタ、ベトナムにも生産拠点をもつ。
技術開発の重要性に気づき、研究開発センターを設立する
【APM(クアラルンプール)】
計画。
マレーシア政府と日本政府は共同でMAJAIKOプログラム(日本・マレーシア自動車産業
協力事業)を2011年6月までの5年間実施。同社も元日系自動車メーカーの技術者が来
て技術指導を受けた。今年10月からはMAIの人材育成プログラムG4を受ける予定。
(4)サプラ
インダストリアル
サプラグループはマレーシアの有力企業グループ。
サプラ・インダストリアル(1984年設立)は、プロトン
設立当時に日系自動車メーカーから技術指導を受けた。
エンジン部品、トランスミッション部品、ブレーキ部品
を生産。エンジン部品のレーザー加工や鍛造を行う技術
を有する。1993年プロドュア設立時に、ドイツの企業か
ら技術提携を受けて、焼結・鍛造技術を用いた部品生産
を始めた。
【サプラ(クアラルンプール)
】
MAJAIKOプログラムにおいては、ローカルサプライヤーの現場改善指導を5年間受けた。
MAIのG4プログラムではローカルサプライヤーに教える立場になる。
(5)イノコム
1993年設立。プロトン、プロドュアに次ぐ第三の国
民車メーカー。マツダ、BMW、ヒュンダイの3社の
ほか、中国メーカーを含め、7ブランドの組立生産
委託を受けている。従業員1684人。
2011年1月よりマツダのアクセラを組立生産開始。
2013年4月よりCX-5の生産開始、タイ向けにも輸出
している。建設中のマツダ新工場は来年春に稼働予定。
新工場には現在イノコム社に生産委託している
【イノコム(ペナン)】
CX-5を移管する計画。
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(6)パナソニックASマレーシア
パナソニック・オートモティブ・システムズ社の海外生産拠点。カーオーディオを製
造。元はフォード・マツダ・三洋電機の3社出資によるFMSオーディオとして1990年
に設立。2000年に三洋電機100%出資の三洋オートメディアに移行後、2013年8月にパ
ナソニックASマレーシアに社名変更。
主にマツダ向けにオーディオシステムを生産。従業員は2,200人程度。ほぼ100%輸出。
マレーシアのインフラには特に問題がない。
今後の取組み
当局では、地域サプライヤーが競争力強化を高めていくための各種の施策を推進してい
ます。今回の自動車分野ミッションではインドネシア、マレーシアへの最初のミッション
であり、投資環境、現地企業のニーズ等の把握及びネットワーク構築を図ることができま
した。
今後とも地域サプライヤーの意向を踏まえた上で、現地企業の動き、現地のニーズ、進
出可能な領域など引き続き情報収集を行うとともに、自治体等関係機関と連携しながら企
業マッチングの機会を設けるなど、適切な施策展開を図る予定です。
経済産業省 中国経済産業局 広報誌
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Copyright 2013 Chugoku Bureau of Economy , Trade and Industry.
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