国際食品関連産業労働組合連合会 (IUF)

国際食品関連産業労働組合連合会 (IUF)
)
International Union of Food, Agricultural, Hotel, Restaurant,
Catering, Tobacco and Allied Workers’ Associations
2007 年 ジュネーブ
労働者のための
労働者のためのプライベート
のためのプライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収に
買収に対するガイド
するガイド
目
次
はじめに
プライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収
1. 株式の非公開化
2.価値の解除
3. 出口
2
4
〃
5
7
II.
組合に
組合に及ぶ影響:
影響:継続的な
継続的なリストラ、
リストラ、消える使用者
える使用者
1. 見えない使用者?
2. ゲート・グルメの争議
3. 東急観光の争議
9
11
〃
13
III.
切り崩される公益
される公益
1. 閉ざされたドアの向こうに
2. 国庫収入に対する攻撃
15
16
17
IV.
労働組合の
労働組合の行動 - 組織的課題
18
V.
労働組合の
労働組合の行動 - 再規制のための
再規制のための動員及
のための動員及び
動員及び介入
20
添付
プライベート・エクイティ買収ファンドのトップ 50 社
IUF のプライベート・エクイティ監視ウェブサイト
用語解説
23
25
26
I.
このプライベート・エクイティ買収に対する労働者のためのガイドを、できるだけ多くの人に
配布するよう IUF からお願いします。
このガイドの作成に当たり、IUF スタッフのヒダヤット・グリーンフィールドおよびピーター・ロ
スマン、そしてイラストを提供してくれたウィリー・ガーバーに謝意を表します。
1
はじめに
IUF は世界中の加盟組織からの高まる要請に応え、プライベート・エクイティ買収とそ
れが我々のメンバーの組織化並びに団体交渉に対しどのような影響を及ぼすのか、こ
のガイドに簡潔にまとめました。この影響について誇張しているわけではありません。僅
か 5 年間でプライベート・エクイティ・ファンドは、全世界の IUF の何十万人ものメンバー
を雇用する企業の主な短期オーナーの座を確立しました。
2006 年、プライベート・エクイティ・ファンドが企業買収に投じた額は 7250 億米ドル
以上に達します。この額はオランダの国家経済を買収するのと同等、あるいはアルゼン
チン、ポーランド、南アフリカの 3 カ国を合わせた国家経済に何十億ドルもの予算を足し
た額と同等な価値に匹敵します。
現在の買収ファンドは 2 兆米ドルを超える購買力を有します。このプライベート・エクイ
ティの買い物熱を企業の現在の市場価値で測ると、ユニリーバならば 22 社、ブリティッ
シュ・アメリカン・タバコ(BAT)は 31 社、マクドナルドは 38 社、InBevs ならば 47 社を、
それぞれ買収できる規模です。
過去 2 年間だけ見ても、個別の買収の規模も大幅に拡大し、2006 年には 350 億米
ドルを超えるという過去最高の買収高を記録しました。2007 年には更にその規模が
500 億ドル、1000 億ドルまでに達するのではと騒がれています。これは事実上、我々
のメンバーが働く企業の全てがプライベート・エクイティ・ファンドによる買収の対象にな
ることを意味します。
元々プライベート・エクイティ・ファンドは欧米諸国に基盤を置いていましたが、その範
囲は急速に拡大し、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、インド、日本、ポーランド、
南アフリカの企業だけでなく、世界規模で事業展開する多国籍企業も買収対象になっ
ています。我々の職場そして労働組合に対する脅威は、明らかにグローバル規模で起
きています。
プライベート・エクイティ買収事業は投資家に平均 20~25%、最高では驚異的な
40%という非常に高い配当を売りにしています。我々のメンバーの苦い経験から明らか
なように、このような天文学的な配当は、買収した企業から多額の現金を搾り出す短期
的活動でのみ達成されます。その主な手法は、長期的視野に立った生産的投資をは
じめ雇用とその安定を犠牲にし、買収した企業に借金を負わせることです。このような
短期的なスーパー利益をだすために、プライベート・エクイティ・ファンドは組合が長年
闘って築き上げてきた団体交渉の基盤を徹底的に弱体化させます。
2
その特性上プライベート・エクイティ買収企業は、組合員の権利や利益を認めるような
長期的視野を持っていません。彼らの残酷な計算式にはめられれば、職場は雇用の場
ではなく、投資を「処理」するまでの短い間に操作し出来るだけ多額のキャッシュを生み
出すための、単なる「一束の資産」に過ぎないのです。
このガイドはプライベート・エクイティ買収によるグローバルな脅威に直面するなか、何が
起きているのか、そして労働者、職場、組合、社会全体に及ぼす影響とは何かを概観し、
その概要を労働組合活動家のために提供します。プライベート・エクイティ・ファンドの巨
大な規模と範囲に拘わらず、我々は組合の活動を通して彼らに挑み、反撃することが可
能だと信じています。
IUF 書 記 長
ロン・オズワルド
2007 年 5 月
3
I. プライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収
1.
株式非公開化
プライベート・エクイティ・ファンドは企業の支配株式、あるいは株式市場に上場された全株
式を取得することで、企業(又は事業部門)を買収する。通常、支配株式の取得が企業の完
全掌握に向けた第一歩となる。プライベート・エクイティ・ファンドが狙った企業の株を全て買い
上げてしまうと、買収ファンドが唯一の株主となり、株式市場での取引は行なわれなくなる。これ
を「
「企業の
企業の株式非公開化」
株式非公開化」と呼ぶ。
プライベート・
プライベート・エクイティ・
エクイティ・ファンドとは
ファンドとは何
とは何か?
プライベート・エクイティとは投資のために集められた共同資金で、民間企業に直接投資をする事
を目的とし運用される。プライベート・エクイティ・ファンドとは、この資金を積極的に管理するファンド・
マネージャーあるいは管理会社を言う。プライベート・エクイティ・ファンドの投資家は株式市場よりも
大幅に高い配当を期待する。プライベート・エクイティ・ファンドが株式市場に上場されている企業を
買収すると、その企業は「株式非公開化」されたこととなり、株式市場からは消える。プライベート・
エクイティ・ファンドの投資家には企業年金基金、個人年金基金、公的年金基金、商業銀行、投
資銀行、保険会社、富裕層、寄付基金やその他の基金などが挙げられる。
プライベート・エクイティ・ファンドの企業買収は、原則的に借入れ、即ち「
「レバレッジ
レバレッジ」
レッジ」で資金
調達される。プライベート・エクイティ買収は 1980 年代にはレバレッジド・バイアウト(
LBO)
(LBO
)と呼ば
れていたが、90 年代半ばにアメリカで起きた大々的な失敗や刑事訴訟の後、より親しみやすい
「プライベート・エクイティ」と名前を変えた。しかし変わったのは名称だけで、借入れが彼らの攻
撃的な買収の秘訣であることには変わりない。
通常、企業は 80%の株式に対し 20%の負債を持ち、それに金利を支払う。プライベート・エ
クイティ買収においてはこの比率は反転し、買収の 80~90%は借入れで資金調達される。プ
ライベート・エクイティ・ファンドは通常、買収株式の 10~20%のみを現金で提供し、残りは借
入金である。買収される企業の資産は借金の担保にされ、一旦買収されると、その企業(プラ
イベート・エクイティ・ファンドではなく)が代わりにこの負債を背負い、金利を支払わなくてはなら
ない。
4
事例:
事例: デニッシュ・
デニッシュ・テレコム
2005 年、デンマークの通信事業会社 TDC は、ペルミラ, Apax, ブラックストーン・グループ、
KKR、プロビデンス・エクイティのプライベート・エクイティ・ファンド大手 5 社により 120 億ユーロ
で買収された。その際買収価格の 80%以上が借入れで資金調達された。その結果、同社の
資産に対する負債の比率は 18%から 90%以上に跳ね上がった。そして同社の資産の半分
以上が新たなオーナーや取締役たちに株として直ちに分配された。この借金返済のため、同
社は長期的開発のために取っておいた現金準備金を充てたため、その資金は瞬く間に減少し
た。オーナーは買収後 5 年以内に売却する予定である。
2.
価値の
価値の解除
プライベート・エクイティ・ファンドは企業から「
「価値を
価値を解除」
解除」し、それをファンドの投資家たちに
解放することができる特異性を持っているといわれている。通常、一般の上場企業なら潜在的
な配当を完全に取り出す事は禁じられているが、株式非公開化することでこのような圧力から
企業を遮断させる。これを簡単に言うと、できるだけ多額の借入れを会社に負わせることで巨
額のキャッシュを絞り出し、それを法外な配当金として支払う、ということである。企業を「株式
非公開化」する主な目的は、閉ざされたドアの向こうで透明性もなく、また報告義務や公的説
明責任も負わず、キャッシュ・フローに焦点を当ててキャッシュを作り出すことで企業の価値を
解除することである。
また、企業に借入れを負わせるのに加え、プ
ライベート・エクイティ・ファンドは取引の「アドバイ
ス」料として多額の費用を対象企業に請求する。
そのよい例は、2004 年、プライベート・エクイテ
ィ・ファンドのブラックストーン・グループがセラニ
ーズ・コーポレーションを買収した際、ブラックス
トーン・グループは自らの買収に対し、同社に
「顧問料」の 4500 万米ドルを請求したことだ!
プライベート・エクイティ・ファンド・マネージャーは年間 1~2%の管理費を手に入れるのに加
え、追加の金融サービス 1 件ごとに追加費用を得ており、これらは買収された企業の会計帳簿
に更なる負債上乗せに通ずる。買収費、管理費、そして「財務顧問料」など合計すると、管理
下におかれたファンドの額の5%に達することもある。管理下にあるファンド額が数十億ドル規模
になれば、これらの手数料は容易に何億ドルにも及ぶ。従ってこれらの手数料だけ見ても、買
5
収した企業がもはや収益があがらなくなったとしても、プライベート・エクイティ・ファンドにとって
買収は非常に高い収益性が見込めるものなのだ。
買収された企業が売却されると、プライベート・エクイティ・ファンド・マネージャーは「キャリー
キャリー
ド・インタ
インタレスト
レスト(繰越持ち分)」として知られる利益の一部を受け取る。これは通常 20%前後で
レスト
ある。
これが、プライベート・エクイティ買収が通常の企業合併や買収の形態と基本的に異なる部
分である。通常、合併の費用は買収側が支払うが、プライベート
プライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収の
買収の場合は
場合は買収
対象となる
となる企業自体
企業自体が
借入れや
れや手数料
手数料などを
などを介
負担する
する。
対象
となる
企業自体
が借入
れや
手数料
などを
介し負担
する
。
多くの場合、会社の不動産資産は経営事業と切り離され、買収資金のためのキャッシュを
作るために再び担保にされる。これはプライベート・エクイティ・ファンドに買収されたホテル・レ
ストラン・チェーンや、スーパーマーケットやデパートなどの小売業に良く見られる。不動産は売
却された上で借用され、ファンド・マネージャーに手数料や現金報酬を作り出すが、長期的に
は企業の運営費が増加し負担増となる。買収の資金のために不動産を担保や再担保に入れ
ることは、持続不可能な高額の借入れを更に増加させるだけである。
しかし借入れはそれで終わりではない。一旦会社がプライベート・エクイティ・ファンドにより買
収されると、新しいオーナーは即座に「
配当リキャピタリゼーション
リキャピタリゼーション(
配当リキャップ
リキャップ)」
)」というメカ
「 配当
リキャピタリゼーション
(配当
リキャップ
)」
ニズムを使い、多額の配当金を賄うために借入れの追加を行なう。簡単に言うと、会社が借金
をして、その借りたお金が配当金としてプライベート・エクイティ・ファンドに支払われる、ということ
である。これも従来の企業会計の認識と大きく異なる点である。通常、配当金は良好なバラン
ス・シートを反映するのに対し、プライベート・エクイティは借入金を使って配当金とボーナスを
支払うのだ。現在この「配当リキャピタリゼーション」は、世界のプライベート・エクイティ分野の新
たなオーナーに返還される全所得の 3 分の 1 を占めている。
事例:
事例: 配当リキャピタリゼーション
配当リキャピタリゼーションを
リキャピタリゼーションを介した「
した「キャッシング
キャッシング」
シング」
2004 年 9 月、KKR、カーライル・グループ、プロビデンス・エクイティの 3 つのプライベート・エ
クイティ・ファンドが 550 万米ドルを拠出し、41 億米ドル規模の通信衛星会社 PanAmSat コー
ポレーションを買収した。残りの資金は「レバレッジド」、つまり借入れで調達した。その僅か一ヵ
月後、PanAmSat コーポレーションは借入れを追加し、KKR、カーライル・グループ、プロビデン
ス・エクイティはそれぞれ 2 億 5000 万米ドルの配当金を自社に支払った。
2001 年、ヨーロッパのプライベート・エクイティ・ファンドのペルミラは、ドイツの化学会社
Cognis の 25 億ユーロ規模の買収に 4 億 5000 万ユーロで買収した。その前年 Cognis 社は
1 億 900 万ユーロの税引き後利益を計上していたが、ペルミラによる買収後、配当リキャピタリ
6
ゼーションの結果金利の支払いが膨らみ、売上が増加したにも拘らず、2005 年には 1 億 3600
万ユーロの損失を計上した。それにも拘らずペルミラとゴールドマン・サックスは同社からすでに
8 億 5000 万ユーロを回収している。この債務のため 2007 年 5 月、16 億 5000 万ユーロ相
当の新たな借入れと手形が発行された。
配当リキャピタリゼーションはプライベート・エクイティ・ファンドにとって、売却に至る前の段階
から会社の一時的的所有権を現金化するための最短直行ルートである。そしてこれは、会社
の貸借対照表上に負債をどんどん増やすことで、プライベート・エクイティのオーナーが迅速に
現金化を進められる手段なのだ。従来のレバレッジド買収では資産・負債比率が 20%対 80%
とされるが、前述の二つの事例が示すように、配当リキャピタリゼーションは借入れを増加させ
るため、この比率の負債側をさらに大きくする。負債が更に拡大することで、労働者に強いられ
る負担は増加し、破産だけが制限を設ける。
短期的・持続不可能な配当リキャピタリゼーションのシステムは、プライベート・エクイティ買
収の論理を完全に例証している。プライベート・エクイティ・ファンドは短期間に新たなオーナー
に即キャッシュ・フローが発生するよう、企業を金融資産として買うのである。コストを削減する
ための強引なリストラや、多額の借入れに基づく財政再建を通じ、巨額の配当が生み出される。
このような何十億ドルもの取引を生産的な投資と混同してはいけない。このような取引の目的
は会社から
から現金を吸い取ることであり、生産、サービス、労働者に対
する投資ではないからだ。
から
対する
次に述べるように、ファンドの金融政策における重大な要素は、自分たちと投資家に入る莫大
なキャッシュ・フローに掛けられる税金を回避する能力である。
「プライベート・エクイティ会社は、企業の資産を貪り食う巧妙な新トリックを使い、売却する企業
を枯渇させる一方、多額の手数料で自分たちの懐を肥やしている」
2006 年 10 月 30 日、ビジネス・ウィーク誌より
3.出口
買収会社が企業を買収する目的は、単にキャッシュを作り出す短期的能力を活用するに留
まらない。彼らは買収時にすでに企業の売却を計画している。これを「
出口」
「出口
」と言う。企業の買
収から出口まで通常 3~5 年、あるいはそれ以下の場合も往々にしてある。
この点も、プライベート・エクイティ買収と従来の M&A との大きな違いである。アルメディア・キ
7
ャピタルの用語集では、次のように解説されている:
出口:
出口 : プライベート・エクイティの専門家らは、ビジネス計画を見た瞬間から「出口」に着
目する。「出口」はファンドが投資を回収できる手段であり、その手法には新規株式公開
(IPO)、仲間取引、別のプライベート・エクイティ会社への転売、あるいは買い戻しなどがあ
る。投資に対し明らかな出口へのルートがない場合、ファンド・マネージャーはその投資に
手を出さない。
プライベート・エクイティ・ファンドは企業買収後その株式を非公開にし、借入れ、配当、手数
料、配当リキャピタリゼーションなどの手法を用いて「価値の解除」を行う。その後、新規株式公
開(IPO)で再び上場させたり、別のプライベート・エクイティ・ファンド(第二買収)に売却して「フリ
ッピング」を行ったりして、出口に達する。そして次のファンドは新な借入れや、(資産売却、余
剰金の使い果たしによる)資産の剥奪で新た
なキャッシュ・フローを作り出す。世界的に見
て、現在買収ファンドに所有される 40%の企
業が第 2、第 3 もしくはそれ以上の回数の買
収段階にあると推測されており、金融メリーゴ
ーラウンドの罠にかけられている。企業がファ
ンドからファンドへ渡るたびに、雇用削減はよ
り深刻に、負債レベルは更に高くなる。
売却
2003 年、イギリスの主力デパート・チェーンのデベンハムズは、CVC、テキサス・パシフィック・グル
ープ、メリルリンチのプライベート・エクイティ・ファンド 3 社により株式を非公開にされた。これは 14
億ポンドの借入れと、わずか 6 億ポンドの株式で行なわれた。この買収にはデベンハムズ・デパー
トの所在する土地の不動産を担保に入れ、また同社の資産を担保に借入れを行ない、ここか
ら得た資金が用いられた。同社の負債は 3 社のプライベート・エクイティ会社に対する 12 億ポン
ドの配当金支払いを用意するため、配当リキャピタリゼーションにより 19 億ポンドに膨れ上がった。
同プライベート・エクイティ3社はデベンハムズの株式を市場に売り出し、同社買収後僅か 30 ヶ
月で投資から「撤退」した。12 億ポンドの配当だけでも、このプライベート・エクイティ 3 社は 30 ヶ
月で資金を倍増させ、デベンハムズは深刻な負債を抱え込んでしまった。
8
II. 組合に
組合に及ぶ影響:
影響: 継続的な
継続的なリストラ、
リストラ、消える使用者
える使用者
組合はコスト削減や利益の極大化に終始する経営側と常に闘ってきた。容赦なきリストラの
圧力は今に始まったことではない。しかしプライベート・エクイティのオーナーの下、経営側の優
先事項は劇的に変化した。買収ファンドが支配し始めると、経営側の焦点は製造やサービス提
供をはじめ営業利益の向上など実際の事業から、生産活動、生産性、収益性に及ぼす長期
的な影響など一切関係なく、如何に迅速に企業から最大の利益を抽出するかだけに向けられ
るようになった。
土地や建物を含む資産は借入れを増
やすために使われるため、負債額を増大
させている。個々の職場は生産性や業績
のレベルに関係なく、リストラ、閉鎖あるい
は売却の対象とされかねない。閉鎖、解
雇、大規模な外注化により会社は骨抜き
にされることもしばしばだ。1988 年、それま
でで最大規模の KKR による RJR ナビスコ
の買収の一部として敢行されたナビスコの
レバレッジド買収はナビスコのブランドは残
ったものの、生産能力と組織化された雇
用の大部分を喪失した。
キャッシュが配当、配当リキャピタリゼーション、手数料、負債の利払いなどに充てられる中、
実物投資は必然的に減少している。なぜならプライベート・エクイティ会社に買収された企業で
は、キャッシュが会社の外部に流用されるため、新しい機械や訓練、研究、製品開発などに対
する投資がストップするからだ。この実物投資の減少は雇用の保障をむしばみ、工場やホテル
などの長期的な存続能力に影を落とす。売上高は増加するかもしれないが、累積する負債や
手数料の負担により、貸借対照表を赤字に染めてしまう。
減少する
減少する投資
する投資:
投資: Eircom の事例
アイルランドの国営通信プロバイダー会社 Eircom は長期的な戦略投資を必要としていた。1998
年に民営化され、2001 年にはプライベート・エクイティ共同体ヴァレンティアにより買収された。Eirom
は債券を発行し借入れの支払いを行なったため、資産に占める負債比率が 25%から 70%に増加
した。Eircom の資本支出は 2001 年に 7 億ユーロあったが、2002 年には 3 億ユーロ、更に 2003
年および 2004 年には 2 億ユーロに減少した。このように同社の投資が劇的に縮小される一方、ヴァ
レンティアには 4 億ユーロの配当が支払われた。
9
プライベート・エクイティ会社は買収対象企業を単なる「
「一束の
一束の資本」
資本」としか見ておらず、サー
ビス提供会社、製造会社、あるいは雇用の場としては全く捉えていない。経営陣は最大の短期
キャッシュ・フローを生み出すために財政を再編成させ、この一束の資産運用にのみ腐心する。
これが経営陣をリストラ敢行の決断に追いやるのだ。この方程式では労働者の数は経費として
扱われ、資産同様切り離し、売却し、担保にしたり再売却することになる。
プライベート・エクイティ・ファンドは一般的に買収から 2~3 年以内に投資から撤退する。ステーク
ホールダーの複雑な関係に煩わされることもなく、従業員との関係もあまり気に掛けない。基本的に
従業員は単なる支出と考える傾向がある。
2006 年 8 月号:ビジネス・レビュー・ウィークリー誌(BRW)より
労働組合そして
労働組合そして団体交渉
そして団体交渉にとってどんな
団体交渉にとってどんな意味
にとってどんな意味を
意味を持つか?
つか?
これまで殆どの国において、団体交渉は使用者が投資をするという前提に基づき行なわれ
てきた。そしてこの投資が生産性を上げることで利益を生み、労働者は組合の団体交渉力を
介しこの利益を生活水準や労働条件の改善へと変えていった。しかしレバレッジド買収の目的
ができるだけ短期間に借入れからキャッシュを抽出することが狙いであることから、プライベー
ト・エクイティは組合が 1 世紀以上掛けて勝ち取った生産性・利益・賃金の連鎖を断ち切ってし
まった。
職場が
職場が単なる「
なる「一束の
一束の資産」
資産」扱いされると、
いされると、労働者たちは
労働者たちは以下
たちは以下のことに
以下のことに直面
のことに直面する
直面する:
する:
10
キャッシュ・フローを捻出するため継続的にリストラが行なわれる
生産的投資が縮小する
短期主義が慣行化される
コスト削減のために外注化・非正規雇用化が促進される
生産性や収益性に関わらず売却や閉鎖が行なわれる
労働条件が悪化する
雇用保障がないがしろにされる
使用者が明確でなくなる
1. 見えない使用者
えない使用者?
使用者?
プライベート・エクイティ買収と M&A による企業買収との重大な違いは他にもある。殆どの国
の法律では、プライベート
プライベート・
エクイティ買収
買収においては
においては労使関係
労使関係に
影響を
えるオーナーシップ
プライベート
・エクイティ
買収
においては
労使関係
に影響
を与える
オーナーシップ
の変更は
もこの点で同様であり、使用者の責任の認識と実施を規制し
変更は無いものと扱
いものと扱われる。EU
われる
ていない。買収が行われる際、雇用に関する諸条件の継続を保証するはずの EU 既得権指令
は、大規模な株式所有権の譲渡の際には適用されない。
このように所有者の変更が法的に認証されないと、団体交渉においてプライベート・エクイテ
ィ会社は使用者
使用者として
使用者としての責任を回避できるため、組合にとって広範囲に影響が及ぶことになる。
として
次に述べる事例のように組合がプライベート・エクイティ・ファンドに団体交渉に臨むよう要請し
ても、彼らは会社の「財政立て直し」に関与しただけで、単なる「株主」に過ぎないと言い放すだ
ろう。
プライベート・エクイティ・ファンドは使用者として区分される事をかたくなに拒否し、「
「 投資の
投資の
区分」
区分
」とか投資会社など、単なる金融用語で表現される事を好む。現行の法律や規制もこの
作り話を支持している。しかし職場や労使関係から見れば、使用者が消えてしまったことにな
る。
ブラックストーン・
ブラックストーン・グループ:
グループ: 使用者ではない
使用者ではない?
ではない?
世界的に主要なプライベート・エクイティ会社のひとつであるブラックストーン・グループは、合算す
ると全世界で 38 万人の労働者を雇用する企業を所有している。そして同グループは賃金カットや
解雇などを伴うリストラ計画を容赦なく施行するよう、職場の経営判断に積極的に介入している一
方、自らを使用者とは認めない。ブラックストーン・グループの会社概要を見ると、従業員数は僅か
750 名とある!
2.ゲート・
ゲート・グルメの
グルメの争議
2002 年、スイス航空のケータリング部門であるゲート・グルメ社は、多額の借入れで資金調
達したプライベート・エクイティ会社テキサス・パシフィック・グループ(TPG)により買収された。
TPG はこの投資から実入りのよい「出口」を追求するべく同社のリストラに乗り出し、卑劣な世界
11
規模のコスト削減プログラムを指示した。イギリスでは雇用の 3 分の 1 を削減する計画が出され
た。ドイツではデュッセルドルフで 25%、その他の拠点で 20%の賃金カットが目標に掲げられ
た。
同プライベート・エクイティ会社はゲート・グルメ社の組合と真っ向から対峙した。イギリスのヒ
ースロー空港では、会社が団体交渉の最中に何百人もの契約社員を密かに採用したことを知
った組合が争議を開始した。そして組合に対する攻撃はドイツのデュッセルドルフ空港に飛び
火した。労働協約で保障された枠組に真っ向から挑むがごとく、会社は労働時間、休暇、シフト
手当について企業レベルの譲歩を要求した。これを受け、食品関連労組 NGG は 2005 年 10
月 7 日、ストライキを開始した。
プライベート・
プライベート・エクイティの
エクイティの「経営指針」
経営指針」
「我々は自社のポートフォリオ企業の日常的経営に関与することを追求しませんが、我々の豊富な
経験、深い業界の専門知識、関連パートナーとの大規模なグローバル・ネットワークが重要なリソース
となり、そこから経営陣は戦略的、財政的かつ経営指針を引き出すことができます」
テキサス・パシフィック・グループのホームページより
ストライキが始まってから 8 週間後の 2005 年 12 月上旬、組合と地元の経営陣は交渉の
末妥協案に合意した。しかしテキサス・パシフィック・グループが介入し、この和解はゲート・グル
メ本社によって一方的に破棄されてしまった。NGG が TPG に交渉の場に出るよう要請した所、
このプライベート・エクイティ会社はゲート・グルメの労使関係に対する責任を拒否した。
6 ヶ月に及んだ厳しいストライキは 2006 年 4 月、和解で幕を閉じた。組合員の団結と決意
が賃金削減を 10%に押さえ、会社の要求に反撃することに成功した。
密かに「
かに「出口」
出口」へ
2007 年 3 月 2 日、ロイター記事によると:
「テキサス・パシフィック・グループは他の主力プライベート・エクイティ・ファンドと共に更な
る透明性を呼びかけた翌日、同社によるゲート・グルメの謎の売却が明らかになった。今後
の同業界に期待される努力の大きさが推し量られる。TPG は 2002 年末スイス航空から航
空ケータリング部門を買収し、その後全く情報開示することなく同社の株を密かに縮小させ、
木曜日に残りの株をメリルリンチに売却していた。
ゲート・グルメの労働者は、この事実を報道で知った!
買収時、ゲート・グルメは 29 カ国に 140 の機内食用の厨房を持ち、25,000 人以上の従業
員を雇用していた。現在、厨房数は 97、従業員数は 20,000 人に減少した。
12
3.東急観光の
東急観光の争議
2004年3月、プライベート・エクイティ・ファンドのアクティブ・インベストメント・パートナーズ(ア
クティブ社)による東急観光の買収劇を参考に、如何に労働組合の諸権利や団体交渉に広範
囲な影響を及ぼすかを例示する。
サービス連合に加盟する東急観光労働組合は、買収前日に始めて買収を知らされた。組
合は直ちに現行の労働協約および組合員の労働条件の維持を確認するとともに、今回の株式
売却は、単に株主が変わっただけであり、ほかには何も変わらないことを会社と確認した。しか
し、株主の変更は東急観光の労使関係や団体交渉に対する認識を劇的に変えることとなっ
た。
アクティブ社は当初より組合との協議を行うことなく労働条件に関わる労働協約の一方的な
改訂に着手した。その結果、それに抵抗する組合に対し一連の攻撃を開始した。そのひとつが
2004年12月、会社主導で第二組合である「社員会」を結成させ、社員会会員にのみ一時金
を支給することを表明し、一時金支給を希望するのなら組合を脱退して社員会に加入するよう
組合員たちに圧力を掛けるとともに、管理職に対して組合脱退工作を社長命令として実行させ
た。その後も賃金や手当に対する組織的な攻撃が続いた。
ひろばユニオン2006年1月号によれば、同労組の中央執行委員長、松本達也氏は「アク
ティブ社は会社の財務状況のみならず労組についても情報を収集していたようで、当社の再建
に「労組は阻害要因だ」と決めてかかって来たようです」と言及している。
アクティブ社がこの「阻害要因」を一連の不当労働行為で排除しようとする一方、組合は職
場の組合員たちの団結を維持し、この不当労働行為に対する闘いをつづけた。
これらの現場での闘いに対する支援の輪は、上部団体であるサービス連合のみならず連合
にも広がり、形を変えて国政レベルでも取り上げられることになった。その結果、2005年5月厚
生労働省にプライベート・エクイティ・ファンドの使用者責任についての研究会が設置され、議
論が行われることとなった。
研究会の結論は、プライベート・エクイティ・ファンドを含む大株主は単に株主だと主張するこ
とで使用者責任を回避することはできないという結論に達したものの、法制化については見送ら
れることとなった。プライベート・エクイティ・ファンドを使用者として認識させ、彼らに労働組合の
諸権利および労働協約に関わる法律や規制を順守させるためにも、このように導き出した結論
を法的枠組みで施行させる必要がある。しかし日本およびその他の国々の組合にとって、この
課題は未解決のままである。
13
だれが “使用者”
使用者”?
ある日突然、投資ファンドがやってきて会社の株式を大量に手に入れる。労組法上、投資会社
は株主に過ぎず、使用者ではない。使用者はあくまでも会社で、労組の交渉相手も会社だ。しか
し実態は、会社は投資ファンドに支配されるため限定的な権限しか委譲されていない。言い換えれ
ば会社は使用者としての権限を行使できない。そのような状況に置かれた会社との交渉は、非常
に空虚と言える。
14
III. 切り崩される
される公益
プライベート・エクイティ・ファンドは
「バッタ」、「資産剥奪者」などと呼ばれ
批判が高まる中、株式の非公開化は
会社のスリム化を図り競争力をつけ、
最大限の成長を可能にすると彼らの
ロビィストと共に主張している。そしてプ
ライベート・エクイティの所有下にある
会社は、スタッフを新に雇用し売上も
増加し、あるいは株式市場で順調に
株式を発行していると指摘する。
しかしこの主張は買収事業の基本
を述べていない。プライベート・エクイ
ティ買収産業の一握りの「成功物語」は短期的な視野に立ったもので、買収された企業の存続
理由は投資家やファンド・マネージャーのために最大限の短期収益を供給することなのだ。現
実はと言えば:
プライベート・エクイティのビジネス・モデルは、会社から短期間に最大の利益を抽
出するため多額の借金をすることに基づいており、これは職場に根本的な変革を
強いる。
莫大な借入れは、成功物語と吹聴されるこれらの会社の持続性に疑問を投げか
ける。
雇用が増加したとしても、それは雇用保障、労働条件、賃金水準、企業の長期
的将来を犠牲にして達成されている。
借入れで資金調達されるプライベート・エクイティ買収の勢いは、リスクの高い低
級な社債の広がりを加速させ、金融システム全体の存続に脅威を与える。大規
模な債務不履行や投資ファンドの一つでも崩壊すれば、多数の雇用と官民双方
の労働者年金を破壊し、金融危機を引き起こしかねない。
短期主義が職場や社会で慣行化されている。巨額の負債、最低レベルあるいは
全く課せられない税金、そして短期的な財政収入への偏重は、社会全体に損害
を与える。
15
買収 vs ベンチャー・
ベンチャー・キャピタル
プライベート・エクイティ会社は資産を剥ぎ取る「バッタ」のイメージを払拭するため、新規ビジネス
の立ち上げのためのベンチャー・キャピタルの重要性を強調する。しかしベンチャー・キャピタルのファン
ドとプライベート・エクイティ買収ファンドは全く違う世界で運用されている。プライベート・エクイティ会
社が集めるファンドの 70%は既存の企業の買収に使われる。これは新規ビジネスの長期的開発に
焦点を当てる純粋なベンチャー・キャピタル・ファンドから投資をそらすことになる。
ベンチャー・キャピタル・ファンドは新規事業に資本を投じるため、雇用創出に貢献する一方、プライ
ベート・エクイティ買収ファンドは、買収対象企業からキャッシュを吸い取るための行為の中で雇用を
破壊し雇用保障を弱体化してしまう傾向を持つ。過去 5 年間でベンチャー・キャピタルは、買収のた
めに集められるファンドに比べ減少している。イギリスはアメリカに次いでプライベート・エクイティ買収
が急速に拡大している国だが、ベンチャー・キャピタルはプライベート・エクイティ投資の7%以下にま
で減少した。それにも拘らずプライベート・エクイティ会社は「ベンチャー・キャピタル協会」と呼ばれる
団体を通して政治的ロビィ活動を続けている。
1. 閉ざされたドア
ざされたドアの
ドアの向こうに
過去何十年に亘り、上場企業の説明責任、情報開示、報告などがより強制化される中、こ
れらの手段は企業の力にある程度歯止めをかけ、また公益を守るために不可欠なツールとな
っている。しかしプライベート・エクイティ買収により会社の株式が非公開化されると、これらの制
約は一挙に消えてしまう。ファンドが唯一の株主となるため、株主総会も開かれない。情報開
示の必要もなくなるため、従業員やその会社の事業活動に影響される広範な一般人に、財政
的な指標を測る会社の業績に関する定期的な情報が入らなくなる。
プライベート・エクイティ会社は必要な情報は全て投資家に与えていると言い、運用の透明
性の要請を拒んでいる。このような反応は、雇用に及ぶファンドの影響に関する論点から見ると
基本的問題を避けている。
プライベート・エクイティ投資は非常に制限的で、巨大な機関投資家と超裕福層にのみに門
戸を開ている投資である。これと反対に株式を公開している企業の情報は、株主以外にも公
開され誰もがアクセスできる。プライベート・エクイティの業界構造はファンド・マネージャーが買
収した企業に対し自らが選択した経営陣を押し付け、自由に采配できるようになっている。ファ
ンド・マネージャーの要求は1つのみで、それは会社に借入れをさせることで高額の配当をファ
ンドにもたらすことである。
16
2. 国庫収入に
国庫収入に対する攻撃
する攻撃
プライベート・エクイティ会社の急速な拡大は、税金に関する非常に有利な政策によって後
押しされてきた。借入金の金利に対する税の控除はどの企業にも与えられているが、買収ファ
ンドは企業の資産「価値解除」のツールとしての借入れに全面的に依存していることから、税控
除の恩恵ははるかに大規模であることは明らかだ。実際、税制度の抜け穴や企業の資産負債
率を規制する特別な規制がないがため、借入れによる買収力が機能する。
それに加え、プライベート・エクイティ会社は所得よりむしろ、「
「キャピタル・
キャピタル・ゲイン」
ゲイン」(資産売却
益)として手数料、リキャピタリゼーション、キャリード・インタレストを得ることができる。殆どの国で
はキャピタル・ゲインより所得に課せられる税率のほうが高い。そのためプライベート・エクイティ
会社は巨大な税の抜け道を通り、徹底的にこれを利用する。最近の例で、アメリカに拠点を置
くブラックストーン・グループは、所得(税率 35%)ではなくキャピタル・ゲイン(税率 15%)として
手数料を報告し、2006 年だけで「キャリード・インタレスト」料で得た 15 億 5000 万米ドルに対し、
3 億 1000 万ドルの税金を節約したと試算されている。
買収ファンドは海外のタックス・ヘブン(税金避難地)を通じて最大の税的メリットも利用する。
プライベート・エクイティ会社は主要な金融センターに所在する一方、彼らが管理するファンドは
海外のタックス・ヘブンに登録されている。あらゆる税金の抜け道を悪用することで、買収会社
は天文学的配当を得るだけでなく、国庫収入をも弱体化させる。例えば 2005/2006 年、イギ
リスのプライベート・エクイティに所有される企業トップ 10 のうち 5 社は実質上法人税を全く払っ
ていない。これらの企業の売上高と営業利益はそれぞれ 120 億ポンドと 4 億ポンドを超えてい
るにも拘らず、これら 10 社を合わせて 1100 万ポンドの法人税還付を受け取っているのだ!
イギリスの最大ビスケット製造会社ユナイテド・ビスケッツはブラックストーン・グループと PAI パー
トナーズに所有されており、2006 年、12 億ポンドの売上高と 2 億 2 百万ポンドの営業利益を
計上した。それにも拘らず同社は 2200 万ポンド以上の税金還付を受け取っている。
法人税の極小化や削減はレバレッジド買収の根幹的要素であり、結果的に他の企業や社会
全体にこの不足額を負担させている。2006 年だけで 7250 億米ドルのファンドを使いプライベ
ート・エクイティ会社が買収した企業が、税金をほとんどあるいは全く支払わなければ、医療、
教育、年金に向けられる公的資金の将来はいったいどうなるのだろう? 各国政府が必須の社
会的サービスのための予算が足りないと公言しているまさにその時、プライベート・エクイティは
国庫収入を攻撃しているのである。
17
IV. 労働組合の
労働組合の行動 - 組織的課題
プライベート・エクイティ買収が、組合の活動及び交渉の環境を根底から変化させることは明
らかである。
労働組合はどう
労働組合はどう対応
はどう対応するべきか
対応するべきか?
するべきか?
事実上全ての一般企業がプライベート・エクイティ買収の対象になりえることから、労働組合
は常に買収の脅威下で活動しなければならない。買収の前に組合が防衛的交渉に用いる戦
術では、次の点に注視することが必要だ:
労働協約の格差を是正し交渉能力を結束させるため、会社および産別レベルの労働協
約を強化する。企業の労働協約や組合の組織力に格差があったり、全国レベルあるいは
産別レベルの協約が脆弱だと反組合的攻撃を招いてしまう。その良い例がゲート・グルメ
の争議であり、新たなオーナーは一番強固な協約と組合組織を意識的に狙いそこを切り
離し、会社全体の条件を後退させた。
買収に際し所有権が変更しても、雇用保障と組合承認の継続を保証する条項を設けるよ
う交渉する。
またそのような条項は、経営陣が潜在的プライベート・エクイティ買収を持ちかけられたとき、
法的拘束力を持つ売却条件として必ず尊重されるようにする。
プライベート・エクイティ・ファンドにとって会社の魅力を減らすため、「ポイズン・ピル」として
作用するより包括的な条項を交渉する(上場企業における株主の権利や株主議決権計
画に類似)。例えば、「買収の前後にリストラや職員の異動、工場移転、資本引き上げなど
を行なう場合、事前に組合の合意が必要とする」と規定する条項など。
リンデ社
リンデ社におけるプライベート
におけるプライベート・
プライベート・エクイティとの
エクイティとの交渉
との交渉
2006 年、ドイツのリンデ・コーポレーションがフォークリフト部門であるキオン社をプライベート・エクイ
ティに売却を決定した際、組合は入札プロセスの条件として潜在的買収会社が提示する事業計
画の検証を要請し、受け入れられた。最終的にプライベート・エクイティ会社 KKR が落札し、2011
年まで投資と雇用を維持することに合意した。キオン社の事例は、潜在的プライベート・エクイティ・
オーナーを交渉プロセスに直接引き込み、組合が充分な交渉力ならびに動員力を発揮できる交
渉議題に会社の財政を加えることができる事を実証した。
18
団体交渉戦略は、株主戦略やより広範な法的戦略と合わせて使うことができる:
組合の企業年金資金投資を使用し、あるいは他の株主と連携して、又はその両方を行な
うことで、組合の株主戦略が首尾よくプライベート・エクイティ買収を阻止した事例もある。
プライベート・エクイティ買収が独占禁止法を侵害したり、年金資金計画を脅かしたり、ある
いは法律で規定される公的サービスを提供できないことが実証された場合、法律および規
制に基づき挑むことができる。
すでに買収されてしまったら、組合は以下を模索する:
団体交渉を通じ、使用者としてのプライベート・エクイティ・ファンドに強行に狙いを定め、直
接立ち向かう。
新経営戦略を決定付ける財政措置に団体交渉プロセスを通じ挑み、雇用および労働条
件に与える影響について交渉する。例えば配当リキャピタリゼーションなどを使った借入れ
の増加を阻止し、会社の資源を略奪させないために、組合の交渉力を行使しなければな
らない。
新たな金融オーナーと効果的に交渉するためには、殆どの労働組合が今持っている対応能力
を超える脅威に迅速に対処できる能力と調整が必要である。そのためにまず、国レベルと国際
レベルでの調査および組織化のリソースを増強するため、これらの分野における組合活動を早
急に強化しなければならない。
19
V. 労働組合の
労働組合の行動 - 再規制のための
再規制のための動員
のための動員および
動員および介入
および介入
プライベート・エクイティ買収ファンドがあらゆる「創造的な金融」手法を用い、公益を破壊し
たり何百万もの労働者の権利と雇用保障を弱体化させるなか、労働組合は公益を回復するた
めに「
「創造的な
創造的な組織」
組織」戦略を開発する必要がある。
プライベート・エクイティの力と領域が拡大してきたのは、金融市場や年金資金投資、法人
税などを統治するルールが変更になったことが有利に絡み合ったことに依存する。つまり規制
緩和のおかげと言うことだ。
プライベート・エクイティ買収の成長は、プライベート・エクイティ買収業界が戦略的なロビィ活
動や政治的に活発な活動を展開した結果、特定の法律や規制が改正されたことに基づいてい
る。これらの改正は買収ファンドに対する資本源を増大させ、相当額の債務や事業売却などに
関わる法人税を減額あるいは廃止するように策定されている。そのような法改正や規制改正
は国により詳細は異なるものの、おおよそ同様のパターンを持っている。
組合は下記に基づく生産的な投資を推進させるため、政治的に動員を掛け、規制環境を構築
する必要がある:
労働者の長期的利益
長期的雇用保障
デーセント・ワークの議題に基づく雇用創出
労働組合権の包括的保護
例えば 2003 年、アメリカは税法改正により税の対象となる法人所得を再定義し、レバレッジ
ド買収取引における配当リキャピタリゼーションの拡大を助長した。同じく 2003 年、ドイツの社会
民主政権は企業売却に対するキャピタル・ゲイン税を廃止した。この改正は金融界のロビィ活
動にせき立てられ導入されたもので、これによりプライベート・エクイティがドイツで台頭する道が
開かれた。ドイツは 2007 年後半に新法制を施行するが、それはプライベート・エクイティ・ファン
ドを有限責任パートナーと認めることから、この拡大を更に促進させることとなる。
オーストラリアでは 2006 年 12 月に税法改正が導入され、海外の投資家に対し 30%のキャ
ピタル・ゲイン税の免除を認めた。これにより海外からのプライベート・エクイティ買収入札が急
増し、買収申し入れが 2005 年に総額 19 億オーストラリアドルだったのに対し、334 億オースト
ラリアドルに跳ね上がった。
20
買収ファンドの成長の各段階には、事前に法的および規制改正による下準備がされている。
これらを覆すためには政治的行動をとる必要がある。
プライベート・エクイティ買収を推進する税体制や金融市場の規制が一歩一歩変革される
中、その重要な段階を特定することが、労働組合が反撃するために必須の戦略である。これら
の変化を理解することは、このような規制改正を破棄させる一助となる。そして社会的富を破
壊するプライベート・エクイティ買収ファンドの真相を明確に公表することで、一般の支持を構築
することができる。
1980 年代、アメリカで盛んに行なわれたレバレッジド買収は、買収ビジネスにとって金利と株
式市場の動きが不利だったため消滅した。ファンドによっては破産し、あるいは活動を縮小した
ものもあったが、今日彼らは復讐の意を持って戻り、グローバルに攻撃を展開している。しかし
1980 年代、企業が被った損失を取り戻すことはできない。企業は打撃を受け、何千人もの組
合員の仕事が失われた。ジャンク債券のディーラーの何人かが投獄されたが、再発防止のた
めの規制はほとんど施行されていない。ここから学ぶことは大きい。金融専門家やアナリストた
ちが同様の状況が発生する可能性が高まっていると予測する中、労働者そして社会全体は成
り行きをただ見ているわけには行かない。
現在プライベート・エクイティ買収に対する非難が増加しており、買収ファンドは守りの体制に
ある。これに対し産業界は「自主規制」を擁護しながら従来通りの運営を継続する姿勢で対応
している。労働組合は自主規制(あるいは行動規範)の試みを拒否し、政府による規制のため
の政治的キャンペーンを追及するべきである。
過去数年間に行なわれた規制緩和を覆し再規制
再規制できれば、投資家たちの資本をさらに破
再規制
壊的な方向へと向かわせる道をふさぎ、持続可能な長期的成長に貢献する社会全体にとっ
て有益な投資へと還元させることができる。そのためには、拘束力のある政府の規制が唯一の
買収ファンドに対抗する防衛策である。
再規制を求めるキャンペーンの中で重要な要素は、上場企業に適用されるのと同様の情報
開示条件を、プライベート・エクイティ・ファンドに買収された企業にも適用することを要請するこ
とである。これらの規制がいくら不十分だとしても、一定の透明性や情報開示を確実にするよう
策定されているので、プライベート・エクイティ買収ファンドにも適用されるべきである。
透明性はファンド活動全体を明確にするためだけでなく、彼らが売買する個々の企業の財務
状況の公的精査を可能にするためにも不可欠である。前述のリンデ/キオンの事例が示すよう
に、会社の資産の即刻の剥奪を阻止し雇用を保証するためには、買収前に事業計画の開示
が重要な要素となることを見てきた。またレバレッジやリキャピタリゼーション、有用な資産の売
却などを通し骨抜きにされた企業の例も紹介してきた。このような大規模な財政的略奪を阻止
21
するためには、不十分かもしれないが透明性を強化することが必要である。
市場、特に金融市場は、自滅から保護するためには特に、これまで規制が必要だった。プラ
イベート・エクイティ会社とその観念論者および擁護者らは、投資家が最も良く投資のやり方を
熟知しているのだから、投資家に「価値」を戻すことはみんなの利益であると主張する。これは、
過去並びに現在のレバレッジド買収ブームの経験が証明するように、明らかに誤りである。個々
の投資家に最善なことが必ずしも個々の企業、労働者、社会あるいは経済全体にとって最善
だとは限らない。買収ビジネスとその金融活動の規制は社会的自衛の緊急課題である。
ファンドを確実に阻止し後退させるために、労働組合がこの課題に国レベルおよび国際レベ
ルで立ち向かわなければならない。
22
■ プライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収ファンド
買収ファンドの
ファンドのトップ50
トップ50社
50社
2002-2006 年、プライベート・エクイティ買収ファンドは全世界の買収行為の 75%を占め
る 5510 億米ドルを集めた。控えめに 5 倍と見ても、ファンドは 2 兆 7600 億米ドルの買収力を
行使した。
ランキング・
ランキング・トップ50
トップ50
(億米ドル
億米ドル)
ドル)
1 The Carlyle Group
325
2 Kohlberg Kravis Roberts
311
3 Goldman Sachs Principal Investment Area
310
4 The Blackstone Group
283.6
5 TPG
235
6 Permira
214.7
7 Apax Partners
188.5
8 Bain Capital
173
9 Providence Equity Partners
163.6
10 CVC Capital Partners
156.5
11 Cinven
150.7
12 Apollo Management
139
13 3i Group
133.7
14 Warburg Pincus
133
15 Terra Firma Capital Partners
129
16 Hellman & Friedman
120
17 CCMP Capital
117
18 General Atlantic
114
19 Silver Lake Partners
110
20 Teachers' Private Capital
107.8
21 EQT Partners
102.8
22 First Reserve Corporation
101
23 American Capital
95.7
24 Charterhouse Capital Partners
90
25 Lehman Brothers Private Equity
85
26 Candover
82.9
27 Fortress Investment Group
82.6
28 Sun Capital Partners
80
29 BC Partners
79
30 Thomas H. Lee Partners
75
23
31 Leonard Green & Partners
71.5
32 Madison Dearborn Partners
65
33 Onex
63
34 Cerberus Capital Management
61
35 PAI Partners
60.5
36 Bridgepoint
60.5
37 Doughty Hanson & Co
59
38 AlpInvest Partners
54
39 TA Associates
52
40 Berkshire Partners
48
41 Pacific Equity Partners
47.4
42 Welsh, Carson, Anderson & Stowe
47
43 Advent International
46
44 GTCR Golder Rauner
46
45 Nordic Capital
45.4
46 Oak Investment Partners
40.6
47 Clayton, Dubilier & Rice
40
48 ABN AMRO Capital
39.3
49 Oaktree Capital Management
39.3
50 Summit Partners
38.8
(出典:プライベート・エクイティ・インターナショナル:http://www.six-uk.com/PEI/PEI50_Brochure_final.pdf)
24
■ IUF のプライベート・
プライベート・エクイティ監視
エクイティ監視ウェブサイト
監視ウェブサイト
2007 年 2 月、IUF は組合活動家のために新たなウェブサイト The IUF’s
IUF s Private Equity
Buyout Watch を立ち上げた。このウェブサイトの目的はプライベート・エクイティ買収およびそれ
が労働者に与える影響を監視するためである。このウェブサイトにはこのガイドを補完するリソー
スも含まれる。
ニュース – IUF セクターの企業を中心にプライベート・エクイティ会社の主な買収のニュー
スにリンク
調査および
調査および分析
および分析 – 買収ファンドの対象にされている特定のセクター(食品、飲料、ホテル、
ケータリング産業など)の背景資料、調査報告や分析
規制・
規制・政治行動 – 労働組合がプライベート・エクイティ買収の規制を要請し、それに対す
る業界および政府の対応を記した書類、提出、書簡、報告書、メディア記事
WWW.BUYOUTWATCH.INFO
IUF について
国際食品関連産業労働組合連合会(IUF)は以下の分野に従事する労働者を代表す
る労働組合の国際組織である:
農業・農園
食品飲料の加工製造
ホテル、レストラン、ケータリング、観光産業
たばこ栽培、製造、販売
現在 IUF は 122 カ国、366 の労働組合から構成され、1100 万人のメンバーを代表し
ている。
IUF 本部:
Email: [email protected]
Post: Rampe du Pont-Rouge, 8, CH-1213, Petit-Lancy (Switzerland)
Phone: + 41 22 793 22 33
Fax: + 41 22 793 22 38
www.iuf.org
25
■ 用語解説:
用語解説: プライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収の
買収の関連用語
アセット・
アセット・クラス
asset class
投資の区分: 例えば株式(普通株)、債権(固定所得)、現金
買収
buyout
企業又は企業の支配株式の取得
キャピタル・
キャピタル・ゲイン税
ゲイン税
capital gains tax
より低い価格で購入した資産を売却する際発生する利益に課せ
キャリード・
キャリード・インタレスト
carried interest
(金融市場)など
られる税金。一般的なキャピタル・ゲインは株や債券、貴金属、不
動産などの売却から得られる。
ファンド・マネージャーに支払われるプライベート・エクイティ・ファンド
の利益の分け前。キャリード・インタレストは(目標利回りに基づく)
ファンドの全利益の利率で表記され、通常 20%である。つまり投
資ファンドで生まれた利益の 20%がファンド・マネージャーに渡り、
残りの 80%が投資家たちに配分される。
配当リキャピタリゼーション
配当リキャピタリゼーション(
リキャピタリゼーション(リ 所有権を有するプライベート・エクイティ会社にキャッシュを支払うた
キャップ)
めに、買収された会社が借入れをすること。この配当金の支払い
キャップ
)
dividend recapitalization
はその会社の貸借対照表に負債として盛り込まれる。これは買収
側企業が売却までに投資から利益を得る手法のひとつである。
出口
exit
プライベート・エクイティ・ファンドが投下投資から利益を得るための
戦略。手法としては、1)買収した会社を別の会社に転売、2)別
の会社と合併、3)別のプライベート・エクイティ・ファンドへ売却、
4)新規株式公開(IPO)を通じ株式を発行することで再び公開す
る、などが挙げられる。
フリッピング flipping
利食い売りのために短期間でエクイティを売買すること。
株式非公開化
private
going pr
ivate
プライベート・エクイティ・ファンドが会社(あるいは事業部門)の支
配株式又は上場された全公開株式を買い上げることで企業を買
収すること。これにより買収対象会社の株主は買収ファンドだけと
なり、株式市場で取引されなくなる。
ヘッジファンド
hedge funds
管理チームが外国為替、商品、デリバティブ(金融派生商品)、
株式などを含む様々な市場で積極的に投資をするために集めら
れた資金。管理チームはそこから手数料を得る。通常短期で、大
部分がレバレッジされる。この投資は規制されておらず複雑で、借
入れに基づくことからリスクが高いため通常、専門家や機関投資
家、あるいは公認された投資家のみを対象にしている。一般的に
運用費として総利益の 20%がヘッジファンドに支払われる。ヘッジ
ファンドによる公開株式市場での買い増しがプライベート・エクイテ
ィ買収の資金調達を助長しているものの、プライベート・エクイティ・
ファンドとはまったく別の投資区分である。
26
ジャンク債券
ジャンク債券
ジャンク・
ボンド)
(ジャンク
・ボンド
)
債券とは債権証券であり、発行者は後日その投資家に元本と利
junk bonds
等級”以下の債券を言う。投資等級債券はリスクが最低あるいは
低いとされているが、ジャンク債券は投機要素が大きいため利回り
息を支払う義務がある。ジャンク債券とは格付機関が言う“投資
もその分高いものを提供するが、リスクも高くなる。ジャンク債券は
プライベート・エクイティ買収の資金調達のための借入れに使われ
ている。
レバレッジ
leverage
資産取得、経営構築、収益増加のために借入れをすること。
レバレッジド買収
レバレッジド買収(LBO)
買収(LBO)
leveraged buyout
借入金(債券又は融資)を使って企業買収をすること。通常、買
収対象企業の資産が融資のための担保に使われる。借入額は
買収対象企業の資本の 90~95%に達することもある。この借入
額は、買収対象企業の貸借対照表に明記され、買収された企
業のフリー・キャッシュ・フローは借入金の返済に使われる。レバレッ
ジド買収の目的は多額の資本を用意しなくとも大きな買収を可
能にすることである。
プライベート・
プライベート・エクイティ
private equity
非上場企業の株式保有。その投資資金は公募でなく私募(プラ
イベート)で調達されることからこう呼ばれる。エクイティとは株式の
こと。
プライベート・
プライベート ・ エクイティ・
エクイティ ・ ファ プライベート・エクイティ会社によって投資される合同資本。プライ
ベート・エクイティ・ファンドは通常リミテッド・パートナーッシップあるい
ンド
は有限会社によって組成され、それをプライベート・エクイティ会社
private equity fund
がジェネラル・パートナー(事業の経営を行い、その債務について無
限責任を負う)として管理する。すべての投資はポートフォリオと呼
ばれるファンド投資も管理するジェネラル・パートナーが決定する。
殆どのプライベート・エクイティ・ファンドは機関投資家と相当額の
資金を有する個人にのみにオファーされる。通常のミューチュアル・
ファンド(投資信託会社)ほど規制されていないため、法整備の必
要がある。
会社の
会社の資産価値の
資産価値の解除
unlocking value
会社のキャッシュ・フローを買収資本に流用すること。価値を解除
する手法には、1)不動産資産の売却(そしてその上賃借する場
合もある)、2)不動産以外の物的資産の売却、3)余剰金の使
用、4)新たな借入れのため資産を利用、などが含まれる。これら
の手法はより多くのフリー・キャッシュ・フローを利用するため、「会社
の資産価値が解除される」と言われている。
ベンチャー・
ベンチャー・キャピタル
venture
venture capital
新たな成長ビジネスに対し主に専門家、機関投資家などが提供
する一種のプライベート・エクイティ資本
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この小冊子
この小冊子は
小冊子はプライベート・
プライベート・エクイティ買収
エクイティ買収による
買収によるグローバル
によるグローバルな
グローバルな
脅威に
脅威 に 直面するなか
直面 するなか、
するなか 、 何 が 起 きているのか、
きているのか 、 そして労働者
そして 労働者、
労働者 、
職場、
職場、組合、
組合、社会全体に
社会全体に及ぼす影響
ぼす影響とは
影響とは何
とは何かを概観
かを概観し
概観し、その
概要を
概要を労働組合活動家のために
労働組合活動家のために提供
のために提供します
提供します。
します。プライベート・
プライベート・エ
クイティ・
クイティ ・ ファンドの
ファンド の 巨大な
巨大 な 規模と
規模 と 範囲に
範囲 に 拘 わらず、
わらず 、 我 々 は 組
合の活動を
活動を通して彼
して彼らに挑
らに挑み、反撃することが
反撃することが可能
することが可能だと
可能だと信
だと信じて
います。
います。
日本語版発行者
住
所
国際食品労連日本加盟労組連絡協議会 IUFIUF-JCC
17三栄ビル
ビル別館
別館2
東京都中央区京橋 2-17
-11 三栄
ビル
別館
2階
電
話
フ ァ ッ ク ス
E - M a i l
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編 集 責 任 者
行
発
見里 朝士
2007 年 6 月
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